(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】異物除去用タップ
(51)【国際特許分類】
B23G 1/44 20060101AFI20240305BHJP
B23G 9/00 20060101ALI20240305BHJP
B08B 1/32 20240101ALI20240305BHJP
F16B 25/02 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
B23G1/44 C
B23G9/00 Z
B08B1/32
F16B25/02
(21)【出願番号】P 2023142135
(22)【出願日】2023-09-01
【審査請求日】2023-10-30
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】523312772
【氏名又は名称】ライズワークス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165814
【氏名又は名称】中野 賢太
(72)【発明者】
【氏名】谷口 元昭
(72)【発明者】
【氏名】片山 大地
【審査官】増山 慎也
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-213540(JP,A)
【文献】実開平03-088626(JP,U)
【文献】特開2011-179611(JP,A)
【文献】特開昭59-126108(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23G 1/44
B23G 9/00
B23Q 11/00
B08B 1/32
F16B 25/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
雌ネジ表面に付着した異物を除去するための異物除去用タップであって、
テーパーネジ部と、雌ネジ係合部を有し、
上記テーパーネジ部は一部又は全部に螺旋状の溝部を有
し、
上記テーパーネジ部は、テーパー角度が6~30度であり、
上記雌ネジ係合部のタップ中心軸方向の長さは、上記雌ネジの谷径に対して0.30~1.50であり、
上記雌ネジ係合部のネジの山径は、上記雌ネジの谷径に対し0.90~1.00であり、
上記テーパーネジ部は、タップ先端方向に位置する上記溝部によって形成されるネジ山の、タップ中心軸方向に平行な方向の断面形状が略三角形である異物除去用タップ。
【請求項2】
上記テーパーネジ部は、タップ先端方向に位置する上記溝部によって形成されるネジ山の、タップ中心軸方向に平行な方向の断面形状が、上記雌ネジ係合部に設けられたネジ山の、タップ中心軸方向に平行な方向の断面形状と略同一である請求項1に記載の異物除去用タップ。
【請求項3】
上記雌ネジ係合部のネジの山径は、上記雌ネジの谷径に対し1.00である請求項1または2に記載の異物除去用タップ。
【請求項4】
一部または全部がテーパー状である先端ガイド部を有し、
上記テーパーネジ部は、一端が上記先端ガイド部と、他端が上記雌ネジ係合部と接続された請求項1または2に記載の異物除去用タップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雌ネジ部に付着した異物を除去するためのタップに関する。
【背景技術】
【0002】
金属材料、樹脂材料等にネジ穴を加工する場合、対象物に下穴を設けた後、タップを用いて雌ネジを形成する。金属材料に塗装等の表面加工が必要な場合、通常は雌ネジ形成後に塗装を行うこととなり、上記雌ネジのネジ面に塗料が付着してしまう。また、雌ネジ形成後に切り屑、粉体、液体等が付着することがある。それゆえ、雌ネジとして使用するには、異物を除去する必要があった。
【0003】
特許文献1は、雌ネジ部に付着した塗料の除去方法を開示する。特許文献1に記載の発明は、雌ネジ部に対し、塗料除去用タップを回転させながら挿入することで、雌ネジ部に形成された塗膜を除去するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
雌ネジに付着した異物は、形成済の雌ネジとかみあうような異物除去用タップを用い、雌ネジへ正確に挿入し、異物を切削除去していた。しかし、異物除去用タップの挿入する位置または角度がずれると、異物の除去が不十分となり、雌ネジとしての機能を十分に発揮できないという問題があった。また、雌ネジの損傷が発生して雌ネジ面を痛めてしまうという問題があった。
それゆえ、異物除去用タップは、雌ネジに対し正確に挿入する必要があり、熟練した工員が手作業で行う必要があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討を重ね、雌ネジへ挿入する位置及び角度を容易に調整可能な異物除去用タップを開発した。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、以下の[1]~[5]を提供する。
[1]雌ネジ表面に付着した異物を除去するための異物除去用タップであって、テーパーネジ部と、雌ネジ係合部を有し、上記テーパーネジ部は一部又は全部に螺旋状の溝部を有し、上記テーパーネジ部は、テーパー角度が6~30度であり、上記雌ネジ係合部のタップ中心軸方向の長さは、上記雌ネジの谷径に対して0.30~1.50であり、上記雌ネジ係合部のネジの山径は、上記雌ネジの谷径に対し0.90~1.00であり、上記テーパーネジ部は、タップ先端方向に位置する上記溝部によって形成されるネジ山の、タップ中心軸方向に平行な方向の断面形状が略三角形である異物除去用タップ。
【0008】
[2]上記テーパーネジ部は、タップ先端方向に位置する上記溝部によって形成されるネジ山の、タップ中心軸方向に平行な方向の断面形状が、上記雌ネジ係合部に設けられたネジ山の、タップ中心軸方向に平行な方向の断面形状と略同一である[1]に記載の異物除去用タップ。
【0009】
[3]上記雌ネジ係合部のネジの山径は、上記雌ネジの谷径に対し1.00である[1]または[2]に記載の異物除去用タップ。
【0010】
[4]一部または全部がテーパー状である先端ガイド部を有し、上記テーパーネジ部は、一端が上記先端ガイド部と、他端が上記雌ネジ係合部と接続された[1]または[2]に記載の異物除去用タップ。
【0011】
[5]一部または全部がテーパー状である先端ガイド部を有し、上記テーパーネジ部は、一端が上記先端ガイド部と、他端が上記雌ネジ係合部と接続された[3]に記載の異物除去用タップ。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、異物除去用タップの挿入する位置または角度がずれた場合でも、異物を十分除去でき、雌ネジの損傷の発生も抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、実施形態1にかかる異物除去用タップの正面図である。
【
図2】
図2は、
図1の異物除去用タップの使用状態を示す部分拡大図である。
【
図3】
図3は、
図1の異物除去用タップの使用状態を示す部分拡大図である。
【
図4】
図4は、
図1の異物除去用タップの使用状態を示す部分拡大図である。
【
図5】
図5は、
図1の異物除去用タップの使用状態を示す部分拡大図である。
【
図6】本発明の実施形態2にかかる異物除去用タップの正面図である。
【
図7】本発明の実施形態3にかかる異物除去用タップの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の異物除去用タップについて、必要に応じて図面を参照しつつ説明する。なお、本発明は各実施形態に限定されない。
【0015】
(実施形態1)
図1に記載の異物除去用タップ1は、雌ネジ12表面に付着した異物13を除去するための異物除去用タップであって、テーパーネジ部2と、雌ネジ係合部3を有し、上記テーパーネジ部2は一部又は全部に螺旋状の溝部5を有する。
【0016】
(テーパーネジ部)
上記テーパーネジ部2はテーパー状であり、基端部から先端部に向け径が細くなるよう形成される。上記テーパーネジ部2は、例えば線形テーパー、指数関数テーパー、放物線テーパー等とすることができる。
上記テーパーネジ部は、テーパー角度が6~30度である。上記雌ネジ12には上記異物13の付着するため、対応する規格の雄ネジは挿入できず、かつ径も表面形状も一様ではない。上記テーパーネジ部2のテーパー角度が上記範囲にあれば、上記雌ネジ12に対しても容易に挿入可能である。
【0017】
上記テーパーネジ部2の基端部の径は、上記雌ネジ係合部3の径と同じである。上記テーパーネジ部2と上記雌ネジ係合部3はなめらかに接続されている。
【0018】
上記テーパーネジ部2は、一部又は全部に螺旋状の溝部5を有する。上記溝部5は、例えば雄ねじと同様の形状とすることができる。
図2、3に示すように、上記タップ1の中心軸9と上記雌ネジ12の中心軸19がずれた場合、上記タップ1を正しい位置、角度で上記雌ネジ12に挿入できない。上記タップ1を回転しながら上記雌ネジ12に挿入する際、上記溝部5は上記雌ネジ12の溝と係合し、上記タップ1は上記雌ネジ12の溝に沿って挿入される。これにより、上記タップ1の挿入位置のずれ及び挿入角度を正しいものに補正することができる。また、上記雌ネジ係合部3が上記雌ネジ12の溝と正確に係合することで、上記雌ネジ12の表面に付着した異物を除去する機能が十分に発揮され、上記雌ネジ12のネジ面を痛めることもない。
また上記溝部5は、上記タップ1を回転しながら上記雌ネジ12に挿入する際、上記雌ネジ12の溝と係合し、上記雌ネジ12の表面に付着した異物を除去することができる。
【0019】
上記テーパーネジ部2のタップ中心軸方向の長さL2は、上記雌ネジ係合部3のタップ中心軸方向の長さL1に対し0.10~10.00であることが好ましく、0.50~1.50であることがより好ましい。上記テーパーネジ部2のタップ中心軸方向の長さL2が上記範囲であれば、異物除去能力を確保しつつ、位置・角度の補正機能を発揮することができる。
【0020】
上記雌ネジ係合部3のタップ中心軸方向の長さL1は、上記異物除去用タップ1の上記雌ネジ係合部3の径A1に対し0.10~10.00であることが好ましく、0.50~1.50であることがより好ましく、0.80~1.20であることが特に好ましい。上記範囲より小さいと、上記雌ネジ係合部3への有効係合部が不足し、十分な異物除去機能を発揮できない。また、上記範囲より大きいと、上記タップ1の全長が長くなるため、使用にはスペース性が悪くなり、好ましくない。
【0021】
(雌ネジ係合部)
上記雌ネジ係合部3は、上記雌ネジ12のネジ面と係合するよう設けられた螺旋状の溝である。上記雌ネジ係合部3は、例えば上記雌ネジ12のネジ立てに用いたタップ表面と同形状の溝を、径を小さくして形成したもの等である。
【0022】
上記テーパーネジ部2の一部又は全部は、切削面を有することが好ましい。また、上記雌ネジ係合部3の一部又は全部は、切削面を有することが好ましい。これにより、上記タップ1を回転しながら上記雌ネジ12に挿入する際、上記タップ1と上記雌ネジ12との間に存在する異物を切削等することで、主に物理的な作用により異物を除去することができる。
上記切削面は、雌ネジと係合する形状であればよく、螺旋状であってもよく、溝、刃、穴、爪等の形状であってもよい。
【0023】
上記雌ネジ係合部3のネジの山径A1は、上記雌ネジ12の谷径A2に対し0.90~1.00であり、1.00であることが好ましい。上記雌ネジ12の表面には上記異物13が付着していることから、上記雌ネジ係合部3のネジの山径A1は、上記雌ネジ12の谷径A2と同一またはより小さいことが好ましい。また、上記比率を0.80以上とすることで、上記雌ネジ係合部3を、上記雌ネジ12の表面の異物を除去するのに十分な大きさとすることができる。
上記雌ネジ係合部3のタップ中心軸方向の長さは、上記雌ネジ12の谷径A2に対し0.30~1.50である。上記雌ネジ係合部3のタップ中心軸方向の長さを上記範囲とすることで、上記タップ1を、上記雌ネジ12に応じた適切な大きさとすることができる。
【0024】
上記異物除去用タップ1は、先端ガイド部4を有し、上記テーパーネジ部2は、一端が上記先端ガイド部4と、他端が上記雌ネジ係合部3と接続される。
上記先端ガイド部4は、アジャスト部4Aと、ガイド部4Bと、ギャップ部4Cを有する。上記先端ガイド部4を備えることで、上記タップ1は雌ネジにスムーズに挿入することができる。
【0025】
(実施形態2)
異物除去用タップ101は、上記ガイド部4Bを有しないものである。タップの構造を単純化しつつ、タップの挿入位置及び挿入角度の補正機能を十分に確保することができる。
【0026】
(実施形態3)
異物除去用タップ201は、先端ガイド部4を有しないものである。タップの構造を単純化しつつ、タップの挿入位置及び挿入角度の補正機能を十分に確保することができる。
【0027】
被加工物11は、上記雌ネジ12が設けられている。上記異物13は、例えば金属片、金属カス、樹脂片、樹脂カス、塗膜、液体などであり、上記雌ネジ12以外にも上記被加工物11の表面に付着することもある。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明によれば、異物除去用タップの挿入する位置または角度がずれた場合でも、異物を十分除去でき、雌ネジの損傷も抑制できるため、産業上有用に利用できる。
【符号の説明】
【0029】
1 異物除去用タップ
2 テーパーネジ部
3 雌ネジ係合部
4 先端ガイド部
9 タップ中心軸
11 被加工物
12 雌ネジ
13 異物
19 雌ネジ中心軸
101 異物除去用タップ
201 異物除去用タップ
【要約】
【課題】異物除去用タップの挿入する位置または角度がずれると、異物の除去が不十分となり、雌ネジとしての機能を十分に発揮できないという問題があった。また、雌ネジの損傷が発生して雌ネジ面を痛めてしまうという問題があった。
【解決手段】本発明の異物除去用タップは、雌ネジ表面に付着した異物を除去するための異物除去用タップであって、テーパーネジ部と、雌ネジ係合部を有し、上記テーパーネジ部は一部又は全部に螺旋状の溝部を有する。上記テーパーネジ部は、テーパー角度が2~75度であることが好ましい。上記雌ネジ係合部のタップ中心軸方向の長さは、上記雌ネジの径に対して0.10~10.0であることが好ましい。上記雌ネジ係合部の径は、上記雌ネジの径に対し0.80~1.00であることが好ましい。
【選択図】
図1