(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】横型熱間鍛造機
(51)【国際特許分類】
B21K 27/00 20060101AFI20240305BHJP
B21K 1/56 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
B21K27/00 B
B21K1/56
(21)【出願番号】P 2021197357
(22)【出願日】2021-11-12
【審査請求日】2022-12-16
(73)【特許権者】
【識別番号】501347224
【氏名又は名称】株式会社阪村ホットアート
(72)【発明者】
【氏名】谷口 正弘
(72)【発明者】
【氏名】榎本 稔
(72)【発明者】
【氏名】榎本 大輔
【審査官】堀内 亮吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-193252(JP,A)
【文献】特開2002-001481(JP,A)
【文献】登録実用新案第3178517(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21K 27/00
B21K 1/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数段の鍛造ステーションを備えた機台
(2)の側方後部に設けられる素材導入口
(12)の後方に、バー材
(X)をバー材ヒーター
(19)で所定温度に加熱したうえで素材導入口
(12)に供給するバー材加熱供給装置
(15)を備えると共に、機台
(2)の鍛造ステーション側に設けられかつ素材導入口
(12)から供給されたバー材
(X)を所定寸法に切断するカッター
(8)を有し、このカッター
(8)で切断された切断素材を複数段の鍛造ステーションに順次移送して所定の形状に熱間鍛造する横型熱間鍛造機であって、
上記素材導入口
(12)とバー材加熱供給装置
(15)との間に、線材を予め切断処理してなるビレット
(Y)をビレットヒーター
(24)で所定温度に加熱したうえで素材導入口
(12)の直前において水平姿勢となるように供給するビレット加熱供給装置
(20)を設置すると共に、
このビレット加熱供給装置
(20)の供給側前端部を、素材導入口
(12)へのビレット
(Y)の挿入が可能な使用位置とバー材供給経路に対し
直交方向外方に離れて素材導入口
(12)へのバー材
(X)の供給動作の障害とならない待機位置とのいずれかに位置変更する
移動機構(34)を設け、
かつ、上記素材導入口
(12)直前の使用位置に位置するビレット加熱供給装置
(20)の供給側前端部分とバー材加熱供給装置
(15)との間に上下及び前後にそれぞれ一対のローラを備えたサーボモータ付正逆転送りローラ
(13)を設けて、
この
正逆転送りローラ
(13)によりバー材
Xの使用時には、バー材加熱供給装置
(20)により供給されるバー材
(X)を
正逆転送りローラ
(13)で挟持しながら間歇的に回転して素材導入口
(12)内に所定長さずつ送り込んで鍛造ステーション側に供給し、
またビレット
(Y)の使用時には、ビレット加熱供給装置
(20)により素材導入口
(12)の直前に供給される水平姿勢のビレット
(Y)を、バー材
(X)に代えて
正逆転送りローラ
(13)にセットされかつ正逆転送りローラ
(13)の正逆回転で前後動されるプッシュロッド
(14)により素材導入口
(12)内に1個ずつ押し込んで鍛造ステーション側に供給すべく構成し、
さらに、上記カッター
(8)と、ビレット
(Y)を保持して鍛造ステーションに供給するビレットチャッカー
(10)とを取り外し交換可能に設ける一方、
上記したビレット加熱供給装置(20)の供給側前端部に、ビレットヒーター(24)で加熱されたビレット(Y)をその軸方向に一列状に案内しかつ直立姿勢を保って素材導入口(12)側に落下搬送する筒状案内レール(26)と、
筒状案内レール(26)の下端部保留位置に落下して溜まる複数個のビレット(Y)のうち、最下部のビレット(Y)一個のみを先端に受孔(27a)をもつスライド体(27)とスライド体用の支持板(28)とにより直立姿勢のまま受け止めると共に、受け取ったビレット(Y)をスライド体(27)の支持板(28)に対する水平移動によりその保留位置から素材導入口(12)近くの真上位置に移動させかつその真上位置でスライド体(27)の受孔(27a)から支持板(28)に設けられた通孔(28a)を介して落下させるシリンダー付スライド機構(29)と、
上記移動機構(34)により素材導入口(12)と正逆転送りローラ(13)との間における使用位置と待機位置とのいずれかに選択的に移動配置されると共に、支持板(28)に設けられた通孔(28a)を介して素材導入口(12)直前に直立姿勢で落下供給されたビレット(Y)を直立姿勢のまま受け入れかつ素材導入口(12)側へ90度反転することによりその姿勢を水平方向に変更する反転ロータ(31)を有する反転用モータ付姿勢変更機構(30)とを設け、
さらに反転用モータ付姿勢変更機構(30)の反転ロータ(31)に、直立姿勢で落下供給されたビレット(Y)を一個受け入れるための収容穴(31a)を形成しかつ収容穴(31a)の底面にビレット(Y)の軸径よりも小径でかつ水平姿勢時にプッシュロッド(14)の挿入を許してビレット(Y)の素材導入口(12)内への押し込みを可能にする貫通孔(31b)を形成したことを特徴とする横型熱間鍛造機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボルトやナット、或いはその他のパーツ類を熱間鍛造する横型熱間鍛造機に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、横型熱間鍛造機においては、機台に相対向するダイとパンチとを備えた複数段の鍛造ステーションが備えられていると共に、機台の側方後部に設けられた素材導入口に近接してバー材をヒーターで所定温度に加熱したうえで素材導入口に供給するバー材加熱供給装置が配設されている。そして、使用時には、バー材加熱供給装置によってバー材をその供給途中においてバー材ヒーターにより所定温度に加熱すると共にこの加熱バー材を素材導入口からさらに鍛造ステーション側に供給する一方、その加熱状態で供給されたバー材を鍛造ステーション側に設けられたカッターにより所定寸法に切断し、かつ、その切断素材を鍛造ステーションで粗から精に段階的に熱間鍛造することにより所定形状の製品を連続して製造するようになされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記した横型熱間鍛造機にあっては、所定温度に加熱されたバー材を、鍛造ステーション側に設けられたカッターにより所定寸法に切断する構造上、その切断素材の切断面にカッターによる切断バリが残ったり或いは切り口に歪みなどが生じ易く、そのため切断素材の切断面に残って出っ張る切断バリや切り口の歪み、或いはカッターなどに付着するバリのカスなどがもとで、特に高い精度を求める製品などによっては熱間鍛造の精度にバラツキが生じたりするおそれがあった。
【0004】
そこで、本発明は、バー材を所定温度に加熱したうえで素材導入口に供給するバー材加熱供給装置を備えた横型熱間鍛造機において、バー材加熱供給装置に加えて線材を予め切断処理してなるビレットを所定温度に加熱したうえで素材導入口に供給するビレット供給装置を備えるように工夫して、製造すべき製品の変更や熱間鍛造の精度高さなどに応じバー材加熱供給装置とビレット加熱供給装置のうち、いずれか一方の最適な加熱供給装置を選択することにより一つの横型熱間鍛造機でありながらより多くの製品に対して幅広く適用させて求める精度の製品を熱間鍛造することができるようにし、その上、バー材加熱供給装置とバー材加熱供給装置の選択変更作業が簡単容易にかつ迅速に行うことができる横型熱間鍛造機の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記した問題を解決するため、本願の請求項1記載の発明は、複数段の鍛造ステーションを備えた機台2の側方後部に設けられる素材導入口12の後方に、バー材Xをバー材ヒーター19で所定温度に加熱したうえで素材導入口12に供給するバー材加熱供給装置15を備えると共に、機台2の鍛造ステーション側に設けられかつ素材導入口12から供給されたバー材Xを所定寸法に切断するカッター8を有し、このカッター8で切断された切断素材を複数段の鍛造ステーションに順次移送して所定の形状に熱間鍛造する横型熱間鍛造機であって、
上記素材導入口12とバー材加熱供給装置15との間に、線材を予め切断処理してなるビレットYをビレットヒーター24で所定温度に加熱したうえで素材導入口12の直前において水平姿勢となるように供給するビレット加熱供給装置20を設置すると共に、
このビレット加熱供給装置20の供給側前端部を、素材導入口12へのビレットYの挿入が可能な使用位置とバー材供給経路に対し直交方向外方に離れて素材導入口12へのバー材Xの供給動作の障害とならない待機位置とのいずれかに位置変更する移動機構34を設け、
かつ、上記素材導入口12直前の使用位置に位置するビレット加熱供給装置20の供給側前端部分とバー材加熱供給装置15との間に上下及び前後にそれぞれ一対のローラを備えたサーボモータ付正逆転送りローラ13を設けて、
この正逆転送りローラ13によりバー材Xの使用時には、バー材加熱供給装置20により供給されるバー材Xを正逆転送りローラ13で挟持しながら間歇的に回転して素材導入口12内に所定長さずつ送り込んで鍛造ステーション側に供給し、
またビレットYの使用時には、ビレット加熱供給装置20により素材導入口12の直前に供給される水平姿勢のビレットYを、バー材Xに代えて正逆転送りローラ13にセットされかつ正逆転送りローラ13の正逆回転で前後動されるプッシュロッド14により素材導入口12内に1個ずつ押し込んで鍛造ステーション側に供給すべく構成し、
さらに、上記カッター8と、ビレットYを保持して鍛造ステーションに供給するビレットチャッカー10とを取り外し交換可能に設ける一方、
上記したビレット加熱供給装置20の供給側前端部に、ビレットヒーター24で加熱されたビレットYをその軸方向に一列状に案内しかつ直立姿勢を保って素材導入口12側に落下搬送する筒状案内レール26と、
筒状案内レール26の下端部保留位置に落下して溜まる複数個のビレットYのうち、最下部のビレットY一個のみを先端に受孔27aをもつスライド体27とスライド体用の支持板28とにより直立姿勢のまま受け止めると共に、受け取ったビレットYをスライド体27の支持板28に対する水平移動によりその保留位置から素材導入口12近くの真上位置に移動させかつその真上位置でスライド体27の受孔27aから支持板28に設けられた通孔28aを介して落下させるシリンダー付スライド機構29と、
上記移動機構34により素材導入口12と正逆転送りローラ13との間に
おける使用位置と待機位置とのいずれかに選択的に移動配置されると共に、支持板28に設けられた通孔28aを介して素材導入口12直前に直立姿勢で落下供給されたビレットYを直立姿勢のまま受け入れかつ素材導入口12側へ90度反転することによりその姿勢を水平方向に変更する反転ロータ31を有する反転用モータ付姿勢変更機構30とを設け、
さらに反転用モータ付姿勢変更機構30の反転ロータ31に、直立姿勢で落下供給されたビレットYを一個受け入れるための収容穴31aを形成しかつ収容穴31aの底面にビレットYの軸径よりも小径でかつ水平姿勢時にプッシュロッド14の挿入を許してビレットYの素材導入口12内への押し込みを可能にする貫通孔31bを形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の請求項1記載の発明によれば、上記した構成のように横型熱間鍛造機において、バー材加熱供給装置に加えてビレットを所定温度に加熱したうえで素材導入口の直前において水平姿勢となるように供給するビレット加熱供給装置を備えるようにし、かつ、バー材の素材導入口への送り込み用のサーボモータ付正逆転送りローラを兼用してビレットを素材導入口内に押し込めるように構成したから、製造すべき製品の変更や熱間鍛造の精度高さなどに応じバー材加熱供給装置とビレット加熱供給装置のうち、いずれか一方の最適な加熱供給装置を選択することにより一つの横型熱間鍛造機でありながらより多くの製品に対して幅広く適用させて求める精度の製品を熱間鍛造することができる。その上、バー材の素材導入口への送り込み用のサーボモータ付正逆転送りローラを兼用してビレットを素材導入口内に押し込むように構成したことにより、バー材加熱供給装置とバー材加熱供給装置の選択変更作業を簡単容易にかつ迅速に行うことができると共に、既存のバー材を用いた横型熱間鍛造機をそのまま用いることができるので全体として安価に提供することができる。
【0008】
しかも、ビレット加熱供給装置の供給前端部を、筒状案内レールとシリンダー付スライド機構、反転ロータを有する反転用モータ付姿勢変更機構及び移動機構とにより構成したから、筒状案内レールによる加熱ビレットの供給がその軸方向に一列でかつ直立姿勢のもとで落下を利用してスムーズ行えながら、その直立姿勢で搬送された一つの加熱ビレットを反転ロータの収容穴で受け止めると共にこの反転ロータを反転用モータ付姿勢変更機構にて水平方向に姿勢変更し、かつ、この水平姿勢時にサーボモータ付正逆転送りローラにセットされるプッシュロッドの上記収容穴内への貫通孔を介する挿入動作をして一
つのビレットを素材導入口内に確実に供給することができる。
その上、ビレット加熱供給装置の供給前端部は、移動機構により素材導入口と正逆転送りローラとの間におけるビレット加熱供給装置の使用位置と、待機位置とのいずれかに簡単かつ迅速容易に位置変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明に係る横型熱間鍛造機の概略平面図である。
【
図2】同バー材に代えビレットを用いる際の概略平面図である。
【
図3】ビレット加熱供給装置によるビレットの供給状態の説明図である。
【
図4】反転用モータ付姿勢変更機構の反転ロータへビレットの移送状態説明図である。
【
図5】送りローラによるビレットの素材導入口への挿入状態説明図である。
【
図6】同バー材使用時でビレット加熱供給装置の待機状態説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。
【0011】
図1は本発明に係る横型熱間鍛造機の概略図を示す。この横型熱間鍛造機1は、機台2の所定位置に固設されたダイブロック3に複数のダイ4…4が備えられていると共に、このダイブロック3に対向して前進、後退するラム5の前面に各ダイ4…4に対向させて複数のパンチ6…6が取り付けられ、これらの対応するダイ4…4とパンチ6…6により所定形状のパーツ部品を粗から精に順次段階的に成形する複数の鍛造ステーション(図では3段)が構成されている。
【0012】
1段目の鍛造ステーションのクイル7近くには、所定温度に加熱供給されて突出するバー材Xを切断するためのカッター8が配設されていると共に、カッター8の前方側には、バー材Xなどの素材が突き当たるストッパー9が配置されている。また、ダイブロック3の前面側にはカッター8で切断された切断素材を各鍛造ステーションにわたって順次移送する素材移送手段(図示せず)が配設されている。
そして、本発明では、素材としてバー材Xに代え後述するビレットYを用いる場合、
図2に示すように上記カッター8と、ビレットチャッカー10とが取り外し交換可能に設けられている。ここでビレットYとは、予め棒状素材を冷間のもとで高精度に所定寸法に切断してなる短棒状の素材、またはこの素材に所定の加工が施されてなる素材である。
【0013】
一方、
図1に示すように、機台2の一側部には、クイル7と素材供給通路11と素材導入口12とが連通連設され、素材導入口12の後方には、バー材Xを挟持して素材導入口12から素材供給通路11及びクイル7を介してカッター8側に所定長さずつ送り出す正逆転可能なサーボモータ付送りローラ13が配設されている。この送りローラ13としては、上下及び前後にそれぞれ一対のローラ13a…13aを備えており、これらローラ13a…13aの正回転によるバー材Xの一定送り量とその送りタイミングなどがサーボモータ(図示せず)により制御される。
ここで、本発明では、サーボモータ付送りローラ13は、バー材Xに代わる素材としてビレットYを用いる場合、素材導入口12に水平状態で位置するビレットYをその後方から素材導入口12内に押し込むための押し込み手段を兼用している。その場合、
図2に示すように送りローラ13の各ローラ13a…13a間から一旦バー材Xを後方に引き出して抜き取り、そのうえで各ローラ13a…13a間にビレット専用のプッシュロッド14を挿入して挟持させ、このプッシュロッド14を送りローラ13を介して横型熱間鍛造機1の鍛造タイミングに合わせて前後移動させることによりビレットYを素材導入口12内に1個ずつ押し込めるようになされている。なお、プッシュロッド14の長さとしては、ビレットYを用いた熱間鍛造作業の終了時、機台2の素材供給通路11内に残るビレットYをすべて鍛造ステーション側に押し出すことができる長さのものを用いるのがこのましい。
【0014】
また、送りローラ13の後方には、バー材加熱供給装置15が備えられている。
バー材加熱供給装置15は、多数本のバー材X…を支持する支持棚16を有しかつ支持棚16からバー材Xを送りローラ13に供給するモータ付供給ローラ17…17を備えたバー材供給ラック18と、送りローラ13と供給ラック18との間に配置されかつ送りローラ13a…13aに供給されるバー材をその供給途中で所定温度に加熱するバー材ヒーター19とを備えている。
なお、バー材供給ラック18は新たなバー材の迅速な供給を行うため、バー材供給経路に対して直交する方向にレールなどを介して適宜移動可能に設けられる。
【0015】
そして、本発明では、素材導入口12と、送りローラ13との間に、上記バー材加熱供給装置15に加えて線材を予め切断処理してなるビレットYを加熱したうえで素材導入口12に供給するビレット加熱供給装置20が設置されている。
【0016】
このビレット加熱供給装置20は、
図2に示すようにホッパー(図示せず)から多量のビレットY…Yが供給されるストッカー21と、ストッカー21からビレットYを段階的に持ち上げて上方に搬送する第1コンベア22と、上方に搬送されたビレットYをそれぞれ軸方向で一列に整列する状態となるように受け取りかつ素材導入口12側に向って水平状に搬送する第2コンベア23と、その搬送途中で各ビレットY…Yを所定温度に加熱するビレットヒータ24と、ビレットヒータ24で加熱され押し出されたビレットYを受け取りかつ下向傾斜状に搬送する第3コンベア25と、第3コンベア25で搬送されるビレットYを受け取りかつ
図3に示す素材導入口12における側方上部の保留位置にビレットYを直立姿勢で一列に落下供給する筒状案内レール26と、筒状案内レール26の下端部保留位置に落下して溜まる複数個のビレットYのうち、最下部のビレットY一個のみを
図3に示すように先端に受孔27aをもつスライド体27とこれの支持板28とで直立姿勢のまま受け止めると共に受け取ったビレットYをその保留位置から
図4に示す素材導入口12近くの真上位置に水平移動させかつその真上位置でスライド体27の受孔27aから支持板28の通孔28aを介して落下させるシリンダー付スライド機構29と、素材導入口12とサーボモータ付送りローラ13…13との間に配置されると共に素材導入口12の真上位置から落下するビレットYを直立姿勢で受け止めかつ素材導入口12側へ90度反転することにより
図5に示すようにその姿勢を水平方向に変更する反転ロータ31を有する反転用モータ付姿勢変更機構30とを備えている。
この反転ロータ31には
図5に示すように直立姿勢のビレットYを一個受け入れる上方開口の収容穴31aが形成されていると共に、収容穴31aの底面中心部に水平姿勢時において上記プッシュロッド14の挿通を許す貫通孔31bが形成されている。この貫通孔31bの孔径はビレットYの軸径よりも小径に形成されている。また、この貫通孔31bは単純な円形状であってもよいが、
図5及び
図6に示す実施例ように円形孔からさらに上方に延びるL形状を呈する貫通孔31bとしてもよい。このように形成すれば、反転ロータ31の反転動作とプッシュロッド14の進退動作との両動作を同時的に行うに際して、両者における干渉時間を極力減らして動作の高速化を図ることができるのでこのましい。さらに、筒状案内レール26としては、滑り抵抗を極力少なくして高速でスムーズな落下移動が得られかつレール内のビレットYの落下状況を目視可能とするため、
図3のように縦方向に湾曲状に延びる線材を多数用い、これら線材を一定間隔おいて円筒状に組み合わせて構成してなる筒状案内レール26を用いるのがこのましい。
【0017】
また、ビレット加熱供給装置20における筒状案内レール26とシリンダー付スライド機構29及び反転用モータ付姿勢変更機構30とは、
図3に示すように支持台32上にバー材供給経路に対して直交方向に摺動可能に設けられる摺動台33にそれぞれ搭載される。そして、摺動台33は、支持台32に対しねじ式移動機構34を介してバー材供給経路に対して直交方向に位置変更可能に設けられている。これにより
図3及び
図4に示すように摺動台33つまり反転用モータ付姿勢変更機構30を、ねじ式移動機構34を介して素材導入口12へのビレットYの挿入が可能な使用位置と、
図6に示すように摺動台33つまり反転用モータ付姿勢変更機構30を、バー材供給経路に対し直交方向外方に離れてバー材Xの素材導入口12への送り込み動作の障害とならない待機位置とに位置変更可能となされている。
【0018】
なお、上記した筒状案内レール26とシリンダー付スライド機構29及び反転用モータ付姿勢変更機構30を位置変更する際、筒状案内レール26と第3コンベア25とが干渉する場合には、第3コンベア25を例えば上方などに適宜移動させておく。
また、上記した送りローラ13によるバー材の素材導入口12への送り動作、シリンダー付スライド機構29におけるスライド体27の移動動作、反転用モータ付姿勢変更機構30による反転ロータ31の反転動作及び送りローラ13の正逆回転に基づくプッシュロッド14の押し込み動作は、上記したサーボモータやシリンダーなどの駆動手段により鍛造機の鍛造タイミングに合わせて間歇的に回転又は前後移動するようになされている。
【0019】
次に、以上のように構成した横型熱間鍛造機の作用について説明する。
【0020】
まず、素材としてバー材を用いて横型熱間鍛造機1により熱間鍛造する場合について説明する。
図1及び
図6に示すようにビレット加熱供給装置20における反転用モータ付姿勢変更機構30及びシリンダー付スライド機構29などをねじ式移動機構34の操作によりバー材供給経路に対し半径方向外方に離れてバー材Xの素材導入口12への送り込み動作の障害とならない待機位置に位置させておく。
そのうえで、バー材加熱供給装置15に支持されたバー材Xを供給ローラ17…17により送りローラ13の送りローラ13a…13aに供給する。その際、バー材Xはその供給途中でバー材ヒーター19により所定温度に加熱されて供給されると共に、供給されたバー材Xは送りローラ13の各ローラ13a…13aで挟持される。そして、その挟持状態のもとで送りローラ13における各ローラ13a…13aの送り方向への回転によりバー材Xは素材導入口12から素材供給通路11及びクイル7を介して鍛造ステーション側に供給され、かつバー材Xの先端がストッパー9に当接する。そして、バー材Xはその先端がストッパー9に突き当てられた状態でカッター8によって一定寸法に切断され、加熱された切断素材が形成される。この切断素材は素材移送装置により各鍛造ステーションに順次移送され、各鍛造ステーションにおいて粗から精に段階的に熱間鍛造されて、所定形状の製品に成形される。
【0021】
次いで、特に精度高さが求められる製品を熱間鍛造するため、素材としてバー材に代えビレットを用いて横型熱間鍛造機により熱間鍛造する場合について説明する。
その場合、バー材XからビレットYへの変更作業として、まず、サーボモータ付送りローラ13及び供給ローラ17,17をそれぞれ逆回転操作させて、送りローラ13の各ローラ13a…13a間及びバー材供給経路内からバー材Xを引き出して抜き取り、そのうえで送りローラ13の各ローラ13a…13a間にビレット専用のプッシュロッド14を挿入して挟持させる。次に、ビレット加熱供給装置20における反転用モータ付姿勢変更機構30及びシリンダー付スライド機構28などを、ねじ式移動機構34による位置変更操作により、
図6に示すバー材供給経路に対し半径方向外方に離れた待機位置から
図2及び
図3に示す素材導入口12へのビレットYの挿入が可能となる使用位置に位置変更する。さらにビレットチャッカー10をカッター8と交換して配置する。
【0022】
以上の取替え作業後、
図2に示すようにビレット加熱供給装置20を作動させてストッカー21内のビレットY…Yを第1コンベア22により段階的に持ち上げて上方に搬送すると共に、上方に搬送されたビレットYを第2コンベア23によりそれぞれ軸方向で一列に整列する状態となるように受け取りかつ素材導入口12側に向って水平状に搬送する。その搬送途中でビレットヒータ24によりビレットYを所定温度に加熱する。ビレットヒータ24で加熱され順次押し出されるビレットYを第3コンベア25で受け取りかつ下向き傾斜状に搬送する。第3コンベア25で搬送されるビレットYを、
図3に示すように筒状案内レール26が受け取りかつ素材導入口12における側方上部の保留位置、つまり筒状案内レール26の下端部とスライド体27の基端側上面とで形成される保留位置にビレットYを高速かつスムーズに直立姿勢で一列に落下供給する。
【0023】
そして、
図3に示すように上記保留位置に溜まる複数個のビレットYのうち、最下部のビレットY一個を、シリンダー付スライド機構29により後退位置に位置するスライド体27の先端受孔27aと支持板28上面とで直立姿勢のまま受け止める。次に、
図4に示すようにシリンダー付スライド機構29によるスライド体27の前進動作によりスライド体27を素材供給経路側に移動させ、これにより受け止めたビレットYを上記保留位置から素材導入口12近くの真上位置に水平移動させかつその真上位置で支持板28の通孔28aを介して落下させる。
【0024】
素材導入口12の真上位置から落下するビレットYを反転用モータ付姿勢変更機構30の反転ロータ31の収容穴31aに直立姿勢で受け止め、その後、反転用モータ付姿勢変更機構30により、
図5に示すように反転ロータ31を素材導入口12側に90度反転してその姿勢を水平方向に姿勢変更する。
そして、反転ロータ31が90度反転して水平姿勢となったとき、送りローラ13の各ローラ13a…13aを回転させてプッシュロッド14を前進させ、プッシュロッド14を収容穴31aの底面の貫通孔31b内に挿し通してビレットYを収容穴31aから素材導入口12内に1個分ずつ押し込んで行く。
【0025】
また、反転ロータ31が90度反転して水平姿勢となるタイミングで、スライド体27はシリンダー付スライド機構29により
図3に示す後退位置に移動し、上記保留位置に溜まる最下部のビレットY一個をスライド体27の先端受孔27aと支持板28上面とで最下部(後続)のビレットY一個を直立姿勢のまま受け止める。一方、プッシュロッド14は反転ロータ31からビレットYを素材導入口12内に押し込んだ後送りローラ13の後転により反転ロータ31から後退する。このプッシュロッド14の後退と共に反転ロータ31は反転用モータ付姿勢変更機構30により
図4に示す元の収容穴31aが直立する位置に反転される。その後、ビレットYを受け取ったスライド体27がシリンダー付スライド機構29により素材供給経路側に前進して素材導入口12近くの真上位置に移動する。これにより
図4に示すようにビレットYが支持板28の通孔28aを介して落下し、反転ロータ31の収容穴31aに直立姿勢で受け止められることになる。
このようにして上記したビレット加熱供給装置20と送りローラ13とによる一連のビレットYの供給動作が繰り返し行われることになる。
【0026】
また、プッシュロッド14により繰り返し押し込まれる後続ビレットYによって先行ビレットYが鍛造ステーション側から押し出されたとき、先行ビレットYはストッパー9に当接して停止されると同時にビレットチャッカー10により挟持され、鍛造ステーション側に移送される。
なお、鍛造ステーション側に移送されたビレットYはその移送位置にて通常通り各鍛造ステーションに順次移送され、各鍛造ステーションにおいて粗から精に段階的に熱間鍛造されるのであり、このビレットYを用いる場合には、バー材Xに較べてより一層高精度に熱間鍛造された求める製品を得ることができる。
【0027】
以上のように、本発明の横型熱間鍛造装置1によれば、バー材加熱供給装置15に加えてビレットYを所定温度に加熱したうえで素材導入口12に供給するビレット供給装置20を装備し、かつ、バー材Xの素材導入口12への送り込み用のサーボモータ付正逆転送りローラ13を兼用してビレットYを素材導入口12内に押し込めるように構成したから、製造すべき製品の変更や熱間鍛造の精度高さなどに応じバー材加熱供給装置15とビレット加熱供給装置20のうち、いずれか一方の最適な加熱供給装置を選択することにより一つの横型熱間鍛造機でありながらより多くの製品に対して幅広く適用させて求める精度の製品を熱間鍛造することができる。その上、バー材Xの素材導入口12への送り込み用のサーボモータ付正逆転送りローラ13を兼用してビレットYを素材導入口12内に押し込むように構成したことにより、バー材加熱供給装置15とバー材加熱供給装置20の選択変更作業を簡単容易にかつ迅速に行うことができると共に、既存のバー材を用いた横型熱間鍛造機をそのまま用いることができるので全体として安価に提供することができる。
【符号の説明】
【0028】
1 横型熱間鍛造機
2 機台
8 カッター
9 ストッパー
10 ビレットチャッカー
12 素材導入口
13 サーボモータ付正逆転送りローラ
14 プッシュロッド
15 バー材加熱供給装置
19 バー材ヒーター
20 ビレット加熱供給装置
24 ビレットヒーター
26 筒状案内レール
30 反転用モータ付姿勢変更機構
31 反転ロータ
31a 収容穴
31b 貫通孔
34 ねじ式移動機構
X バー材
Y ビレット