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特許7448138スラリー状の埋没材の製造方法及びスラリー状の埋没材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】スラリー状の埋没材の製造方法及びスラリー状の埋没材
(51)【国際特許分類】
   B22C 9/08 20060101AFI20240305BHJP
   B22C 1/00 20060101ALI20240305BHJP
   B22C 1/18 20060101ALI20240305BHJP
   B22C 1/20 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
B22C9/08 102A
B22C1/00 B
B22C1/18
B22C1/20
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020046905
(22)【出願日】2020-03-17
(65)【公開番号】P2021146355
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2020-08-17
【審判番号】
【審判請求日】2022-09-29
(73)【特許権者】
【識別番号】391004034
【氏名又は名称】吉田キャスト工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591138038
【氏名又は名称】株式会社龍森
(74)【代理人】
【識別番号】100147326
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 純一
(72)【発明者】
【氏名】吉田 稔
(72)【発明者】
【氏名】中里 貴行
(72)【発明者】
【氏名】中島 信哉
【合議体】
【審判長】鈴木 貴雄
【審判官】刈間 宏信
【審判官】菊地 牧子
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-286121(JP,A)
【文献】特開平4-356405(JP,A)
【文献】特表2005-533765(JP,A)
【文献】特開2008-13451(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22C 9/08 B22C 1/00 B22C 1/18 B22C 1/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スラリー状の埋没材の製造方法であって、該スラリー状の埋没材は、消失模型として製作された樹脂製パターンを鋳枠の中に組み込み、該鋳枠に水で混練して前記スラリー状の埋没材を流し込んで生鋳型を形成し、該生鋳型の埋没材を脱水させた後に焼成炉内にて樹脂製パターンを加熱分解することで前記埋没材中の前記樹脂製パターンが分解消失して空洞化した鋳型を作り、該鋳型に溶解した高融点金属を流し込んで鋳造物を鋳造するためのものであり、
前記スラリー状の埋没材の製造方法は、該埋没材の主成分がシリカ粒子、マグネシア粒子、ジルコニア粒子、アルミナ粒子、ムライト粒子から形成されている粒子骨材を構成し、
該粒子骨材の粒子表面にシリコーン化合物からなる第一の結合材をコーティングして第一の結合材入り粒子骨材を構成し、
該第一の結合材入り粒子骨材にリン酸塩系化合物からなる第二の結合材を添加し水を加えて混練し前記スラリー状の埋没材を構成し、
前記第一の結合材は、前記樹脂製パターンが焼成炉内で加熱され分解消失する以前の250℃程度の低温域内にて、粒子表面にコーティングされているシリコーン化合物を溶解して、樹脂製パターンが焼成炉内で分解燃焼する際に生じる熱膨張に耐える結合力を発揮可能であり、
前記第二の結合材は、融点が1100℃以上の高融点金属の鋳造にも対応できるように焼成炉内の埋没材の温度が900℃以上にならないと埋没材の結合材として結合力を発揮しない構成を有しており、
前記スラリー状の埋没材が高融点金属の鋳造時において900℃以上の高温域で埋没材の結合力を発揮して鋳造圧力に耐え得る鋳型強度を維持可能で鋳造時に溶湯から受ける物理的な力で鋳型内部が損傷や崩壊することを防止でき高融点金属の鋳造を可能としたことを特徴とするスラリー状の埋没材の製造方法。
【請求項2】
スラリー状の埋没材であって、該スラリー状の埋没材は、消失模型として製作された樹脂製パターンを鋳枠の中に組み込み、該鋳枠に水で混練して前記スラリー状の埋没材を流し込んで生鋳型を形成し、該生鋳型の埋没材を脱水させた後に焼成炉内にて前記樹脂製パターンを加熱分解することで前記埋没材中の樹脂製パターンが分解消失して空洞化した鋳型を作り、該鋳型に溶解した高融点金属を流し込んで鋳造物を鋳造するためのものであり、
前記スラリー状の埋没材は、粒子骨材を主成分とし、第一の結合材と第二の結合材とを含み、
該粒子骨材は、シリカ粒子、マグネシア粒子、ジルコニア粒子、アルミナ粒子、ムライト粒子から形成され、
前記第一の結合材は、該粒子骨材の粒子表面にコーティングされたシリコーン化合物からなり、そのシリコーン化合物が250℃程度の低温域で溶解し、樹脂製パターンが焼成炉内で分解燃焼する際に生じる熱膨張に耐え得る結合力を発揮可能であり、
前記第二の結合材は、リン酸塩系化合物からなり、前記第一の結合材でコーティングされた粒子骨材に前記第二の結合材を添加して混練しスラリー状の埋没材を構成し、該スラリー状の埋没材は、融点が1100℃以上の高融点金属の鋳造時において900℃以上の高温域で埋没材の結合力を発揮して鋳造圧力に耐え得る鋳型強度を維持可能で鋳造時に溶湯から受ける物理的な力で鋳型内部が損傷や崩壊することを防止でき高融点金属の鋳造を可能としたことを特徴とするスラリー状の埋没材。
【請求項3】
前記粒子骨材の粒子表面にコーティングされているシリコーン化合物からなる第一の結合材はアルコキシシロキサンが使用され、また前記第二の結合材にはリン酸塩系化合物のリン酸アルミニウムが使用されていることを特徴とする請求項2に記載されたスラリー状の埋没材。
【請求項4】
前記粒子骨材の粒子表面にコーティングされているシリコーン化合物からなる第一の結合材はオルガノポリシロキサンが使用され、また前記第二の結合材にはリン酸塩系化合物のリン酸アルミニウムが使用されていることを特徴とする請求項2に記載されたスラリー状の埋没材。
【請求項5】
前記粒子骨材の粒子表面にコーティングされているシリコーン化合物からなる第一の結合材はポリエーテル変性アルコキシシランが使用され、また前記第二の結合材にはリン酸塩系化合物のリン酸アルミニウムが使用されていることを特徴とする請求項2に記載されたスラリー状の埋没材。
【請求項6】
前記粒子骨材の粒子表面にコーティングされているシリコーン化合物からなる第一の結合材はアミノ変性オルガノシロキサンが使用され、また前記第二の結合材にはリン酸塩系化合物のリン酸アルミニウムが使用されていることを特徴とする請求項2に記載されたスラリー状の埋没材。
【請求項7】
前記粒子骨材の粒子表面にコーティングされているシリコーン化合物からなる第一の結合材はグリコール系化合物が使用され、また、前記第二の結合材にはリン酸塩系化合物のリン酸アルミニウムが使用されていることを特徴とする請求項2に記載されたスラリー状の埋没材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消失模型として製作された樹脂製パターンを鋳枠の中に組み込み、埋没材を液で混練したスラリーを鋳枠に流し込んで生鋳型を形成し、その生鋳型の埋没材を脱水させた後に焼成炉内にて樹脂製パターンを加熱分解することで前記埋没材中の樹脂製パターンが分解消失して空洞化した鋳型を作り、該鋳型に溶解した高融点金属を流し込んで鋳造物を鋳造することのできる埋没材に関するものである。
【0002】
本発明は、加熱分解温度が300℃~500℃と高く、加熱分解中に大きな熱膨張を生じる樹脂パターンを、消失模型として鋳枠の中に組み込み消失性の鋳型として用いるための埋没材に関するものである。本発明は、埋没材の主成分となる耐火材のシリカ粒子、マグネシア粒子、ジルコニア粒子、アルミナ粒子、ムライト粒子から形成される骨材において、該粒子の骨材表面にシリコーン化合物をコーティングして第一の結合材(バインダー)を構成し、該第一の結合材は消失模型として埋没材中に組み込まれた樹脂製パターンが、焼成炉内で加熱分解する以前の比較的低温域内にて骨材の粒子同士が結合力を発揮することが可能な結合材となし、前記骨材の粒子同士が結合した第一の結合材は、樹脂製パターンが焼成炉内で分解燃焼する際に生じる熱膨張力に耐える結合力を有しており、樹脂製パターンが埋没材中で分解燃焼し空洞化した鋳型を作る際に鋳型内部において、樹脂パターンの熱膨張力により埋没材にヒビが入ることを防止すると共に、樹脂製パターンの分解燃焼時に熱膨張力により埋没材の一部が剥離して欠損し型崩れすることを防止し、鋳型内に型崩れの残留物として残らないようにして、良好な鋳造を可能にした樹脂製パターンを埋没し鋳造物を製作するためのスラリー状の埋没材を提供するものである。
【0003】
本発明の構成は、埋没材の主成分がシリカ粒子、マグネシア粒子、ジルコニア粒子、アルミナ粒子、ムライト粒子から形成されている骨材において、該粒子の骨材表面にシリコーン化合物をコーティングして第一の結合材(バインダー)となし、該第一の結合材は消失模型としての樹脂製パターンが焼成炉内で加熱され分解燃焼する際に生じる熱膨張力に耐える結合力を有して埋没材にヒビが入ることを防止すると共に、樹脂製パターンの分解燃焼時の熱膨張力により埋没材の一部が剥離し欠損する型崩れを防止しするための結合材であり、該第一の結合材は、樹脂パターンが焼成炉内で加熱される際に低温域内で骨材の粒子同士が結合力を発揮するシリカ粒子、マグネシア粒子、ジルコニア粒子、アルミナ粒子、ムライト粒子から形成される第一の結合材を埋没材に添加した構成とすると共に、前記第一の結合材を有した粒子の骨材に高融点金属を鋳込む際の鋳造圧力に耐え得る鋳型強度を発揮可能なリン酸塩系化合物からなる第二の結合材を添加して混練しスラリー状の埋没材を構成するもので、前記粒子の骨材に第一の結合材と第二の結合材を添加して混練した埋没材は、消失模型の樹脂製パターンを用いた鋳造物の鋳造において埋没材の高温鋳造特性を改善して、1100℃以上の高融点金属用の鋳造を良好な状態で実現可能にした樹脂製パターンを埋没し鋳造物を製作するためのスラリー状の埋没材を提供するものである。
【背景技術】
【0004】
従来、消失模型を用いたロストワックス鋳造法では、ロウ型を組み立ててワックス製パターンを作り、このワックス製パターンを鋳枠の中に組み込み、鋳枠の中に石膏等からなる埋没材を液で混練したスラリーを流し込んで生鋳型を形成し、その生鋳型の埋没材を脱水、凝固させた後に焼成炉内にてワックス製パターンを溶解燃焼させることでワックス製パターンの燃焼による空洞化した鋳型を作り、鋳造機により溶解した金属を鋳型内の空洞に鋳込んで歯科用の補綴物や貴金属の宝飾品、美術工芸品、部品等を製作している。
【0005】
而して、ロストワックス鋳造法では、ワックス製パターンが焼成炉内で60℃付近にて溶解し、徐々に溶融し燃焼するので埋没材にかかる熱膨張力等の負荷は少なくワックス製パターンの空洞化した鋳型を埋没材中に容易に形成することができる。従って、ロストワックス鋳造法においては、自硬性の石膏を結合材として用いた石膏系埋没材が使用されており、該石膏系埋没材は、結合材となる石膏と熱膨張性耐火材であるクリストバライトや石英の混合物から構成されている。
【0006】
然しながら、石膏系埋没材は、1000℃付近で石膏が分解し劣化するため、融点が1100℃以下の金属、例えば金、銀、銅合金等を鋳造する場合に用いられ、融点がこれより高い金属、例えば、プラチナやコバルト―クロム系合金、ニッケル―クロム合金等の高融点金属を溶解し鋳造する場合には、石膏系埋没材に比べて耐熱性が高いリン酸塩系埋没材の使用が知られている。そして、リン酸塩系埋没材は、耐火骨材としてシリカ粒子を使用し、該シリカ粒子の結合材としてリン酸塩系化合物を使用しており、この結合材は高温域、即ち、800℃から950℃で溶融し結合するバインダーで結合材の役割を果たすものである。従って、リン酸塩系埋没材は、リン酸塩系化合物からなるバインダーの焼結によりシリカ粒子同士を結合する高温耐熱用の埋没材となり、融点が1100℃以上の高融点金属の鋳造時において、バインダーが結合力を発揮して鋳造圧力に耐え得る鋳型強度を維持して鋳造時に溶湯から受ける物理的な力で鋳型内部の損傷や崩壊を防止する高融点金属用の埋没材が提供されている。
【0007】
また、最近では、ロストワックス鋳造法に代わりワックス製パターンが、3Dプリンターを用いて出力した精密な立体画像としての樹脂製パターンにより消失模型として製作され、前記樹脂製パターンを鋳枠の中に組み込み、埋没材を液で混練したスラリーを流し込んで生鋳型を形成し、その生鋳型の埋没材を脱水させた後に焼成炉内にて樹脂製パターンを加熱分解することで前記埋没材中に樹脂製パターンの空洞化した鋳型を作り、該鋳型に溶解した高融点金属を流し込んで鋳物を鋳造することのできる埋没材が注目されてきている。
【0008】
斯くして、上述した現況において、本発明は、3Dプリンターを用いて出力した立体画像としての樹脂製パターンの消失模型を鋳枠の中に組み込み埋没材を液で混練したスラリーを流し込んで生鋳型を形成し、その生鋳型の埋没材を脱水させた後に焼成炉内にて樹脂製パターンを加熱分解することで前記埋没材中に樹脂製パターンの空洞化した鋳型を作り、該鋳型に溶解した金属を流し込んで鋳物を鋳造するための埋没材に関するものである。また、本発明は、樹脂製パターンの加熱分解温度が300℃~500℃と高く、加熱され分解燃焼する際に熱膨張するので、埋没材は、この熱膨張力に耐え埋没材にヒビが入ることを防止できる工夫が必要である。そして、埋没材は、樹脂製パターンが熱分解する際に膨張力により一部が剥離して欠損することを防止し、鋳型内に型崩れの残留物として残らないように工夫することで良好な鋳造を可能にした樹脂製パターンを埋没し鋳造物を製作するための埋没材を提供するものである。
【0009】
本発明は、樹脂製パターンからなる消失性の鋳型から鋳造物を形成する埋没材において、融点が1100℃以上の高融点金属の鋳造時に埋没材のバインダーが結合力を発揮して鋳造圧力に耐え得る鋳型強度を維持可能とし、鋳造時に溶湯から受ける物理的な力で鋳型内部の損傷や崩壊を防止して良好な高融点金属用の埋没材を提供するものである。
【0010】
また、本発明は、埋没材の主成分となるシリカ粒子、マグネシア粒子、ジルコニア粒子、アルミナ粒子、ムライト粒子等の骨材表面にシリコーン化合物をコーティングして第一の結合材(バインダー)を構成し、該第一の結合材は消失模型として埋没材中に組み込まれた樹脂製パターンが、焼成炉内で加熱され300℃~500℃で分解消失する以前の250℃程度の低温域内にて前記骨材の粒子同士が結合力を発揮する結合材を構成した埋没材を提供するものである。
【0011】
更に、本発明は、埋没材の主成分となるシリカ粒子、マグネシア粒子、ジルコニア粒子、アルミナ粒子、ムライト粒子等の骨材表面にシリコーン化合物をコーティングして第一の結合材(バインダー)を構成し、該第一の結合材は消失模型として埋没材中に組み込まれた樹脂製パターンが、焼成炉内で加熱され300℃~500℃で分解消失する以前の250℃程の低温域内にてシリカ粒子等の骨材同士が結合力を発揮する結合材を添加した埋没材を構成し、また、第一の結合材を添加された埋没材に第二の結合材として融点が1100℃以上の高温域高融点金属を鋳込む際に鋳造圧力に耐え得る鋳型強度を発揮可能なリン酸塩系化合物からなる結合材を添加し、該第二の結合材が800℃~950℃の高温域内にてシリカ粒子等の骨材同士が結合力を発揮する埋没材を構成し、該埋没材を液で混練しスラリー状の埋没材を得て、該スラリー状の埋没材に消失性の樹脂製パターンを埋没し、良好な高融点金属用の鋳造を可能にした樹脂製パターンを埋没し鋳造物を製作するための埋没材を提供するものである。
【0012】
斯くして、石膏系鋳造用埋没材の組成をロストワックスパターンや3Dプリンターを用いて出力した樹脂製パターンにも適用でき、さらに鋳造する際における加熱方式が通常加熱である場合も急速加熱である場合でも対応できるように構成した石膏系鋳造用埋没材の従来技術が、特許第6082388号(以下、特許文献1と称する)により開示されている。
【0013】
特許文献1は、「ワックスパターンに変えてレジンパターンを使用した場合に、レジンパターンを完全に消失させるためには、その加熱温度をワックスパターンを消失させる場合よりも高くする必要があるのに加え、その消失挙動も従来のワックスパターンとは、全く異なる。さらに、処理の効率化を達成するために行われている急速加熱に対応し、鋳型にクラックや割れが生じることなく、寸法精度に優れる鋳造物を得ることができる好適な石膏系埋没材は、先に述べた通り、検討され提案されてはいるものの、いずれもレジンパターンへの適用を目的としたものではなく、十分に対応できるものではなかった。これに対して、急速加熱方式で、レジンパターンへの適用が可能な石膏系埋没材を提供することができれば、その実用価値は極めて高い。」としている。
【0014】
また、特許文献1における発明の目的は、「従来のワックスパターンを用いた場合に良好な鋳造ができることに加えて、ワックスパターンとは消失温度や消失挙動がことなるレジンパターンを用いた場合にも良好な鋳造をすることができる石膏系埋没材を提供することにある。さらに、本発明の目的は、石膏系埋没材でありながら、その処理効率に優れる急速加熱によって鋳造した場合にも、鋳型に生じるクラックや割れ等が抑制され、得られる鋳造物が所望した良好なサイズのものであり、かつ、バリやあれのない表面が滑沢なものになる石膏系埋没材を提供することにある。」としている。
【0015】
特許文献1は、上記目的を達成するための実施例として、「結合材である焼石膏と熱膨張性耐火材であるクリストバライトおよび石英と、平均粒子径が5~20μmの非熱膨張性耐火材とを主成分としてなり、該非熱膨張性耐火材が、溶融シリカおよびムライトから選ばれる1種類以上であり、該主成分の合計を100質量とした場合に、焼き石膏が25~40質量部、クリストバライトが15~40質量部、石英が15~30質量部、非熱膨張性耐火材の配分量が10~25質量部であることを特徴とする石英系鋳造用埋没材組成物。」としている。
【0016】
そして、段落番号(0020)には、「ワックスパターンでは、70℃付近で溶融し、炭化を経て560℃で完全に消失したのに対し、レジンパターンでは、420℃付近で軟化(形が崩れ始める)し、徐々に気化・消失(小さく)しながら660℃で完全に消失し、その挙動は大きく異なる。」としており、段落番号(0023)には、「種々の材料の適用について鋭意検討した結果、特定の平均粒径の非熱膨張性耐火材を特定の範囲内で利用することが有効であり、これによって急速加熱にも、レジンパターンにも対応でき、鋳型に、クラック、割れ、破壊などが起こらないものが得られることを見出した。」としており、自硬性で結合特性を有する石膏系埋没材において、如何に非熱膨張性耐火材を特定の範囲内で含有させて鋳型にクラック、割れ、破壊などが起こらないものが得られるかについての工夫がなされている。
【0017】
然しながら、特許文献1の発明においては、あくまでも石膏系埋没材の組成検討により石膏系埋没材の操作性(流動性)や鋳造物の掘出性、残留応力による変形や経時変化が少ないという特徴をいかしながら、レジンパターンの消失性鋳型を用いた石膏系埋没材の成分改善案であり、レジンパターンが加熱分解する際のクラック、割れ、破壊等の発生を抑制する石膏系埋没材に関する発明となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【文献】特許第6082388号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明は、3Dプリンターを用いて出力した立体画像としての樹脂製パターン及び射出成型にて大量に生産される樹脂製パターンの消失模型を鋳型の中に組み込み埋没材を液で混錬したスラリーを流し込んで生鋳型を形成し、その生鋳型の埋没材を脱水させた後に焼成炉内にて樹脂製パターンを加熱分解することで前記埋没材中に樹脂製パターンの空洞化した鋳型を作り、該鋳型に溶解した金属を流し込んで鋳物を鋳造するための埋没材を提供することにより、確実性のある精密で良好な鋳物を鋳造することが可能なスラリー状の埋没材の製造方法及びスラリー状の埋没材の提供するものである。
【0020】
樹脂製パターンからなる消失性の鋳型から鋳造物を形成する埋没材において、埋め込まれる樹脂製パターンの加熱分解温度が300℃~500℃と高く、焼成炉内で加熱され分解燃焼する際に大きく熱膨張するので、前記埋没材は、この熱膨張力に耐え埋没材にヒビが入ることを防止し、また、埋没材の一部が膨張力により剥離して欠損することを防止して、鋳型内に型崩れの残留物として残らないように工夫することが必要にとなる。本発明の埋没材は、埋没材の主成分を形成するシリカ粒子、マグネシア粒子、ジルコニア粒子、アルミナ粒子、ムライト粒子の正面にシリコーン化合物をコーティングして骨材を結合するための第一結合材のバインダーを有し、該第一結合材のバインダーは消失模型として埋没材中に組み込まれた樹脂製パターンが、焼成炉内で加熱され分解消失する以前の250℃程度の低温域内にて前記粒子の骨材同士が結合力を発揮する結合材のバインダーを構成したもので、該第一結合材のバインダーは、樹脂パターンを消失模型として用いた鋳造物の良好な鋳造を可能にする樹脂製パターンを埋没し鋳造物を製作するための埋没材を提供可能にするものである。
【0021】
また、本発明は、樹脂製パターンからなる消失性の鋳型から鋳造物を形成する埋没材において、埋没材を形成する主成分のシリカ粒子、マグネシア粒子、ジルコニア粒子、アルミナ粒子、ムライト粒子を結合するための結合材は、低温域でその結合力を発揮する前記第一結合材のバインダーと、高温域でその結合力を発揮するリン酸塩系化合物を第二結合材のバインダーとしてシリカ粒子等の骨材に混錬し、前記第一結合材のバインダーは樹脂パターンが焼成炉内で加熱分解する手前の温度で埋没材の結合材として結合力を発揮し、第二の結合材のバインダーは融点が1100℃以上の高融点金属の鋳造にも対応できるように焼成炉内の埋没材の温度が900℃以上にならないと埋没材の結合材として結合力を発揮しない構成を有しており、高融点金属の鋳造時において、埋没材中に混錬する第二結合材のバインダーが900℃以上の高温域で埋没材の結合力を発揮して鋳造圧力に耐え得る鋳型強度を維持可能とし、鋳造時に溶湯から受ける物理的な力で鋳型内部の損傷や崩壊を防止して良好な高融点金属の鋳物用埋没材を提供可能にするものである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明は、3Dプリンターを用いて出力した立体画像としての樹脂製パターン及び射出成型にて大量に生産される樹脂製パターンの消失模型を鋳枠の中に組み込み埋没材を液で混錬したスラリーを流し込んで生鋳型を形成し、その生鋳型の埋没材を脱水させた後に焼成炉内において樹脂パターンを加熱分解することで前記埋没材中に樹脂製パターンの空洞化した鋳型を作り、該鋳型に溶解した金属を流し込んで鋳物を鋳造するための埋没材を提供するものである。本発明は、樹脂製パターンからなる消失性の鋳型から鋳造物を形成する埋没材において、埋め込まれる樹脂製パターンの加熱分解温度が300℃~500℃と高く、焼成炉内で加熱され分解燃焼する際に大きく熱膨張するので、前記埋没材は、この熱膨張力に耐え埋没材にヒビが入ることを防止し、また、埋没材の一部が膨張力により剥離して欠損することを防止して、鋳型内に型崩れの残留物として残らないように工夫することが必要となり、埋没材は、埋没材の主成分を形成するシリカ粒子、マグネシア粒子、ジルコニア粒子、アルミナ粒子、ムライト粒子の表面にシリコーン化合物をコーティングして骨材を結合するための第一結合材のバインダーとなし、該第一結合材のバインダーは消失模型として埋没材中に組み込まれた樹脂製パターンが、焼成炉内で加熱され分解消失する以前の250℃程度の低温域内にてシリカ粒子等の骨材同士がコーティングされたシリコーン化合物の溶解により結合力を発揮する結合材のバインダーを構成したもので、該第一結合材のバインダーは、樹脂製パターンを消失模型として用いた鋳造物の良好な鋳造を可能にする樹脂製パターンを埋没し鋳造物を製作するための埋没材を提供するものである。
【0023】
また、本発明は、樹脂製パターンからなる消失性の鋳型から鋳造物を形成する埋没材において、埋没材を形成する主成分はシリカ粒子、マグネシア粒子、ジルコニア粒子、アルミナ粒子、ムライト粒子から形成されている骨材で、その骨材を結合するための結合材は、250℃程度の低温域でその結合力を発揮する前記第一結合材のバインダーと、900℃以上の高温域でその結合力を発揮するリン酸塩系化合物を第二結合材のバインダーとしてシリカ粒子等の骨材に混練し、前記第一結合材のバインダーは樹脂パターンが焼成炉内で加熱分解する手前の温度で埋没材の結合材として結合力を発揮し、第二の結合材のバインダーは融点が1100℃以上の高融点金属の鋳造にも対応できるように焼成炉内の埋没材の温度が900℃以上にならないと埋没材の結合材として結合力を発揮しない構成を有しており、石膏系埋没材に比較して1000℃付近で結合材が分解することもなく、高融点金属の鋳造時において、埋没材中に混練する第二結合材のバインダーが高温域で埋没材の結合力を発揮して鋳造圧力に耐え得る鋳型強度を維持可能として、鋳造時に溶湯から受ける物理的な力で鋳型内部が損傷や崩壊することを防止して、良好な高融点金属の鋳物用埋没材を提供にするものである。
【0024】
本発明における埋没材は、主成分がシリカ粒子、マグネシア粒子、ジルコニア粒子、アルミナ粒子、ムライト粒子から形成されている骨材において、該骨材の粒子の表面にシリコーン化合物をコーティングして埋没材の温度が焼成炉内で低温域の250℃程で溶解し結合力を発揮する第一結合材のバインダーを構成し、該第一結合材のバインダー入り結合材を混練しスラリー状に形成した埋没材であり、その用途は、樹脂製パターンを埋没し鋳造するための埋没材を提供するものである。
【0025】
また、本発明における埋没材は、主成分がシリカ粒子、マグネシア粒子、ジルコニア粒子、アルミナ粒子、ムライト粒子等の骨材において、該骨材の粒子の表面にシリコーン化合物をコーティングし、該シリコーン化合物が低温域で溶解し結合力を発揮する第一結合材のバインダーを構成し、該第一結合材のバインダー入りの埋没材に高温域で結合力を発揮するリン酸塩系化合物からなる第二結合材のバインダーを添加して混練しスラリー状に形成した埋没材を提供するものである。
【0026】
本発明において、前記シリカ粒子等の骨材の表面にコーティングされるシリコーン化合物の第一結合材のバインダーは、アルコキシシロキサン、オルガノポリシロキサン、ポリエーテル変性アルコキシシラン、アミノ変性オルガノシロキサン、グリコール系化合物等が使用されており、第二結合材のバインダーにはリン酸塩系化合物からなるリン酸アルミニウム等が使用されている樹脂製パターンを埋没し鋳造するための埋没材を提供するものである。
【0027】
而して、本発明において、シリカ粒子、マグネシア粒子、ジルコニア粒子、アルミナ粒子、ムライト粒子等の骨材の表面にシリコーン化合物をコーティングした第一結合材のバインダー、及び第二結合材のバインダーとして前記シリカ粒子等の骨材にリン酸塩系化合物からなるリン酸アルミニウム等を液で混練した埋没材に埋没される樹脂製パターンは、3Dプリンターにより造形される加熱分解可能な樹脂製パターン、及び射出成型等により形成される加熱分解可能な樹脂製パターン等を埋没して鋳造することが可能となる埋没材を提供するものである。
【発明の効果】
【0028】
本発明は、3Dプリンターを用いて出力した樹脂製パターンのみでなく、射出成型にて大量に生産される樹脂製パターンの消失模型を鋳枠の中に組み込み埋没材を液で混練したスラリーを流し込んで生鋳型を形成し、その生鋳型の埋没材を脱水させた後に焼成炉内にて樹脂製パターンを加熱分解することで前記埋没材中に樹脂製パターンの空洞化した鋳型を作り、該鋳型に溶解した金属を流し込んで鋳物を鋳造するための埋没材を提供するもので、確実性のある精密で良好な鋳造物を鋳造することが可能な樹脂製パターンを埋没し鋳造物を製作するための埋没材を提供可能である。
【0029】
樹脂製パターンからなる消失性の鋳型から鋳造物を形成する埋没材において、通常、埋め込まれる樹脂製パターンの加熱分解温度は300℃~500℃と高く、焼成炉内で加熱され分解燃焼する際に大きく熱膨張するので、前記埋没材は、この熱膨張力に耐え埋没材にヒビが入ることを防止し、また、埋没材の一部が膨張力により剥離して欠損することを防止して、鋳型内に型崩れの残留物として残らないように工夫することが必要となる。本発明の埋没材は、埋没材の主成分を形成するシリカ粒子、マグネシア粒子、ジルコニア粒子、アルミナ粒子、ムライト粒子から形成されている骨材の表面にシリコーン化合物をコーティングして骨材を結合するための第一結合材のバインダーを有し、該第一結合材のバインダーは消失模型として埋没材中に組み込まれた樹脂製パターンが、焼成炉内で加熱され分解消失する以前の250℃程度の低温域内にてシリカ粒子等の骨材同士が結合力を発揮する結合材のバインダーを構成するもので、該第一結合材のバインダーは、樹脂パターンを消失模型として用いた鋳造物の良好な鋳造を可能にする樹脂製パターンを埋没し鋳造物を製作するための埋没材を提供可能である。
【0030】
また、本発明は、樹脂製パターンからなる消失性の鋳型から鋳造物を形成する埋没材において、埋没材を形成する主成分のシリカ粒子等の骨材を結合するための結合材は、低温域でその結合力を発揮する前記第一結合材のバインダーと、高温域でその結合力を発揮するリン酸塩系化合物を第二結合材のバインダーとしてシリカ粒子等の骨材に混練し、前記第一結合材のバインダーは樹脂パターンが焼成炉内で加熱分解する手前の温度で埋没材の結合材として結合力を発揮し、第二の結合材のバインダーは融点が1100℃以上の高融点金属の鋳造にも対応できるように焼成炉内の埋没材の温度が900℃以上にならないと埋没材の結合材として結合力を発揮しない構成を有して、高融点金属の鋳造時において、埋没材中に混練する第二結合材のバインダーが900℃以上の高温域で埋没材の結合力を発揮して鋳造圧力に耐え得る鋳型強度を維持可能とし、鋳造時に溶湯から受ける物理的な力で鋳型内部の損傷や崩壊を防止して良好な高融点金属の鋳物用埋没材を提供可能である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の埋没材を説明する断面図である。
図2】樹脂製パターンを加熱分解して得られた鋳型を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明は、3Dプリンターを用いて出力した立体画像としての樹脂製パターン、及び射出成型にて大量に生産される樹脂製パターンの消失模型を鋳枠の中に組み込み埋没材を液で混練したスラリーを流し込んで生鋳型を形成し、その生鋳型の埋没材を脱水させた後に焼成炉内にて樹脂製パターンを加熱分解することで前記埋没材中に樹脂製パターンの空洞化した鋳型を作り、該鋳型に溶解した金属を流し込んで鋳物を鋳造するための埋没材を提供するものである。本発明は、樹脂製パターンからなる消失性の鋳型から鋳造物を形成する埋没材において、埋め込まれる樹脂製パターンの加熱分解温度が300℃~500℃と高く、焼成炉内で加熱され分解燃焼する際に大きく熱膨張するので、前記埋没材は、この熱膨張力に耐え埋没材にヒビが入ることを防止し、また、埋没材の一部が膨張力により剥離して欠損することを防止して、鋳型内に型崩れの残留物として残らないように工夫することが必要となり、埋没材は、埋没材の主成分を形成するシリカ粒子、マグネシア粒子、ジルコニア粒子、アルミナ粒子、ムライト粒子の表面にシリコーン化合物をコーティングして骨材を結合するための第一結合材のバインダーとなし、該第一結合材のバインダーは消失模型として埋没材中に組み込まれた樹脂製パターンが、焼成炉内で加熱され分解消失する以前の250℃程度の低温域内にてシリカ粒子等から成る骨材同士がコーティングされたシリコーン化合物の溶解により結合力を発揮する結合材のバインダーを構成したもので、該第一結合材のバインダーは、樹脂パターンを消失模型として用いた鋳造物の良好な鋳造を可能にする樹脂製パターンを埋没し鋳造物を製作するための埋没材に関するものである。
【0033】
また、本発明は、樹脂製パターンからなる消失性の鋳型から鋳造物を形成する埋没材において、埋没材を形成する主成分のシリカ粒子、マグネシア粒子、ジルコニア粒子、アルミナ粒子、ムライト粒子の骨材を結合するための結合材は、250℃程度の低温域でその結合力を発揮する前記第一結合材のバインダーと、900℃以上の高温域でその結合力を発揮するリン酸塩系化合物を第二結合材のバインダーとしてシリカ粒子等の骨材に混練し、前記第一結合材のバインダーは樹脂パターンが焼成炉内で加熱分解する手前の温度で埋没材の結合材として結合力を発揮し、第二結合材のバインダーは融点が1100℃以上の高融点金属の鋳造にも対応できるように焼成炉内の埋没材の温度が900℃以上にならないと埋没材の結合材として結合力を発揮しない構成を有しており、石膏系埋没材に比較して1000℃付近で結合材が分解することもなく、高融点金属の鋳造時において、埋没材中に混練する第二結合材のバインダーが高温域で埋没材の結合力を発揮して鋳造圧力に耐え得る鋳型強度を維持可能とし鋳造時に溶湯から受ける物理的な力で鋳型内部が損傷や崩壊することを防止して、良好な高融点金属の鋳物用埋没材を提供にする。
【0034】
本発明における埋没材は、主成分がシリカ粒子、マグネシア粒子、ジルコニア粒子、アルミナ粒子、ムライト粒子の骨材において、該骨材を形成する粒子の表面にシリコーン化合物をコーティングして埋没材の温度が焼成炉内で低温域の250℃程で溶解し結合力を発揮する第一結合材のバインダーを構成し、該第一結合材のバインダー入り結合材を混練しスラリー状に形成した埋没材であり、その用途は、樹脂製パターンを埋没し鋳造するための埋没材を提供する。
【0035】
また、本発明における埋没材は、主成分がシリカ粒子、マグネシア粒子、ジルコニア粒子、アルミナ粒子、ムライト粒子の骨材において、該シリカ粒子等の骨材の表面にシリコーン化合物をコーティングし、該シリコーン化合物が低温域で溶解し結合力を発揮する第一結合材のバインダーを構成し、該第一結合材のバインダー入りの埋没材に高温域で結合力を発揮するリン酸塩系化合物からなる第二結合材のバインダーを添加して混練しスラリー状に形成した埋没材を提供する。
【0036】
本発明において、前記シリカ粒子等の骨材表面にコーティングされるシリコーン化合物の第一結合材のバインダーは、アルコキシシロキサンが使用されており、第二結合材のバインダーにはリン酸塩系化合物のリン酸アルミニウムが使用されていることが好ましい。
【0037】
本発明において、前記シリカ粒子等の骨材表面にコーティングされるシリコーン化合物の第一結合材のバインダーは、オルガノポリシロキサンが使用されており、第二結合材のバインダーにはリン酸塩系化合物のリン酸アルミニウムが使用されていることが好ましい。
【0038】
本発明において、前記シリカ粒子等の骨材表面にコーティングされるシリコーン化合物の第一結合材のバインダーは、ポリエーテル変性アルコキシシランが使用されており、第二結合材のバインダーにはリン酸塩系化合物のリン酸アルミニウムが使用されていることが好ましい。
【0039】
本発明において、前記シリカ粒子等の骨材表面にコーティングされるシリコーン化合物の第一結合材のバインダーは、アミノ変性オルガノシロキサンが使用されており、第二結合材のバインダーにはリン酸塩系化合物のリン酸アルミニウムが使用されていることが好ましい。
【0040】
本発明において、前記シリカ粒子等の骨材表面にコーティングされるシリコーン化合物の第一結合材のバインダーは、グリコール系化合物が使用されており、第二結合材のバインダーにはリン酸塩系化合物のリン酸アルミニウムが使用されていることが好ましい。
【0041】
そして、本発明は、前記シリカ粒子等の骨材に第一結合材のバインダー、及び第二結合材のバインダーを添加して水を加え混練したスラリー状の埋没材を製作し、該埋没材に埋没される樹脂製パターンは、3Dプリンターにより造形される加熱分解可能な樹脂製パターン、及び射出成型により形成される加熱分解可能な樹脂製パターンとすることが好ましい。
【実施例1】
【0042】
図1は、本発明の埋没材を説明する断面図であり、1は鋳枠、2は埋没材、3は樹脂製パターン、4は樹脂製パターンに埋没材に埋没された鋳型、5は脱水紙、6は脱水用紛体、7は脱水用容器を示している。消失模型の樹脂製パターン3は脱水紙4上に配置され、筒状の鋳枠1をかぶせた後、鋳枠1内には本発明の埋没材、即ち、主成分がシリカ粒子、マグネシア粒子、ジルコニア粒子、アルミナ粒子、ムライト粒子の骨材から成る第一埋没材のバインダー、及び第二結合材のバインダーを添加して水を加え混練したスラリー状の埋没材2を注入し、脱水用紛体5(シリカ/但し、粒径は埋没材と異なる)を入れた脱水用容器6に載置してゆっくりと埋没材2の水分が脱水用紛体5に浸み込み鋳型4内の水分が脱水される。
【0043】
脱水完了の鋳型4は見かけ上は固まっているが、自硬性のある石膏とは異なり、実際には、主成分がシリカで水と混ぜた砂の造形物と同じ状態であるため凝固はしていない。本発明における埋没材2の完全凝固は、鋳枠1内に納められた鋳型4が焼成炉に入れられ鋳型4が加熱されることにより生じる。
【0044】
本発明において、鋳型4を形成する埋没材2の凝固は、主成分のシリカ粒子等の骨材にシリコーン化合物をコーティングした第一結合材のバインダー、及びシリカ粒子等の骨材に添加したリン酸系化合物からなる第二結合材のバインダーにより温度差を持って2回なされる。而して、第一結合材のバインダーは、焼成炉に入れられた埋没材2中に埋め込まれた樹脂製パターン3が熱分解する手前の250℃付近で、その結合力を発揮する。そして、樹脂製パターン3の加熱分解温度が300℃~500℃とされ、分解燃焼するまでにされ分解、燃焼するまでに樹脂製パターン3が大きく熱膨張し、埋没材2は、この熱膨張力に耐え埋没材にヒビが入ることを防止し、また、埋没材2の一部が膨張力により剥離して欠損することを防止して、鋳型内に型崩れの残留物として残らないように構成されている。
【0045】
また、前記第二結合材のバインダーは、第一の結合材のバインダーに加え、主成分がシリカ粒子等の骨材にリン酸系化合物を添加して混練したもので、該第二結合材のバインダーは、融点が1100℃以上の高融点金属の鋳造にも対応できるように焼成炉内の埋没材2の温度が900℃以上にならないと埋没材2の結合材として結合力を発揮しない構成を有しており、石膏系埋没材に比較して1000℃付近で結合材が分解することもなく、高融点金属の鋳造時において、埋没材2中に混練する第二結合材のバインダーが高温域で埋没材2の結合力を発揮して鋳造圧力に耐え得る鋳型強度を維持可能として、鋳造時に溶湯から受ける物理的な力で鋳型4内部が損傷や崩壊することを防止して、良好な高融点金属の鋳物用埋没材を提供にする。
【0046】
図2は、焼成炉内で、樹脂製パターン3を加熱分解して得られた鋳型4を説明する断面図である。図2において、1は鋳枠、8は結合材により凝固された埋没材、9は樹脂製パターンが消失して形成された消失鋳型、10は溶融金属を流し込むための湯口を示している。図2において、焼成炉内で、樹脂製パターン3を加熱分解して得られた鋳型4は、焼成炉内で更に温度を上げられて、融点が1100℃以上の高融点金属の鋳造にも対応できるように第二結合材のバインダーを発揮させ完全に凝固した消失鋳型9が構成される。
【0047】
斯くして、本発明は、3Dプリンターを用いて出力した立体画像としての樹脂製パターン及び射出成型にて大量に生産される樹脂製パターンの消失模型を鋳枠の中に組み込み埋没材を液で混練したスラリーを流し込んで生鋳型を形成し、その生鋳型の埋没材を脱水させた後に焼成炉内にて樹脂製パターンを加熱分解することで前記埋没材中に樹脂製パターンの空洞化した鋳型を作り、該鋳型に溶解した金属を流し込んで鋳物を鋳造するための埋没材を提供するものである。本発明は、樹脂製パターンからなる消失性の鋳型から鋳造物を形成する埋没材において、埋め込まれる樹脂製パターンの加熱分解温度が300℃~500℃と高く、焼成炉内で加熱され分解燃焼する際に大きく熱膨張するので、前記埋没材は、この熱膨張力に耐え埋没材にヒビが入ることを防止し、また、埋没材の一部が膨張力により剥離して欠損することを防止して、鋳型内に型崩れの残留物として残らないように工夫することが必要となり、埋没材は、埋没材の主成分がシリカ粒子、マグネシア粒子、ジルコニア粒子、アルミナ粒子、ムライト粒子から形成される粒子表面にシリコーン化合物をコーティングして骨材を結合するための第一結合材のバインダーとなし、該第一結合材のバインダーは消失模型として埋没材中に組み込まれた樹脂製パターンが、焼成炉内で加熱され分解消失する以前の250℃程度の低温域内にてシリカ粒子等の骨材同士がコーティングされたシリコーン化合物の溶解により結合力を発揮する結合材のバインダーを構成したもので、該第一結合材のバインダーは、樹脂パターンを消失模型として用いた鋳造物の良好な鋳造を可能にする樹脂製パターンを埋没し鋳造物を製作するための埋没材を提供するものである。
【0048】
また、本発明は、樹脂製パターンからなる消失性の鋳型から鋳造物を形成する埋没材において、埋没材を形成する主成分のシリカ粒子、マグネシア粒子、ジルコニア粒子、アルミナ粒子、ムライト粒子を結合するための結合材は、250℃程度の低温域でその結合力を発揮する前記第一結合材のバインダーと、900℃以上の高温域でその結合力を発揮するリン酸塩系化合物を第二結合材のバインダーとしてシリカ粒子等の骨材に混錬し、前記第一結合材のバインダーは樹脂パターンが焼成炉内で加熱分解する手前の温度で埋没材の結合材として結合力を発揮し、第二の結合材のバインダーは融点が1100℃以上の高融点金属の鋳造にも対応できるように焼成炉内の埋没材の温度が900℃以上にならないと埋没材の結合材として結合力を発揮しない構成を有しており、石膏系埋没材に比較して1000℃付近で結合材が分解することもなく、高融点金属の鋳造時において、埋没材中に混錬する第二結合材のバインダーが高温域で埋没材の結合力を発揮して鋳造圧力に耐え得る鋳造強度を維持可能として、鋳造時に溶湯から受ける物理的な力で鋳型内部が損傷や崩壊することを防止して、良好な高融点金属の鋳物用埋没材を提供するものである。
【0049】
本発明における埋没材は、主成分がシリカ粒子、マグネシア粒子、ジリコニア粒子、アルミナ粒子、ムライト粒子から成る骨材において、該シリカ粒子等の正面にシリコーン化合物をコーティングして埋没材の温度が焼成炉内で低温域の250℃程で溶解し結合力を発揮する第一結合材のバインダーを構成し、該第一結合材のバインダー入り結合材を混錬しスラリー状に形成した埋没材であり、その用途は、樹脂製パターンを埋没し鋳造するための埋没材を提供する。
【0050】
また、本発明における埋没材は、主成分がシリカ粒子、マグネシア粒子、ジリコニア粒子、アルミナ粒子、ムライト粒子から成る骨材において、該シリカ粒子等の表面にシリコーン化合物をコーティングし、該シリコーン化合物が低温域で、溶解し結合力を発揮する第一結合材のバインダーを構成し、該第一結合材のバインダー入りの埋没材に高温域で結合力を発揮するリン酸塩系化合物のリン酸アルミニウムを第二結合材のバインダーとして添加し混錬してスラリー状に形成した樹脂製パターンを埋没し鋳造するための埋没材を提供する。
【0051】
本発明において、前記シリカ粒子等の骨材表面にシリコーン化合物をコーティングして成る結合材で第一結合材のバインダーには、低温域の結合材としてアルコキシシロキサンが使用されており、第二結合材のバインダーには高温域の結合材としてリン酸塩系化合物のリン酸アルミニウムが使用されている埋没材を提供する。
【0052】
本発明において、前記シリカ粒子等の骨材表面にシリコーン化合物をコーティングして成る結合材で第一結合材のバインダーには、低温域の結合材としてオルガノポリシロキサンが使用されており、第二結合材のバインダーには高温域の結合材としてリン酸塩系化合物のリン酸アルミニウムが使用されている埋没材を提供する。
【0053】
本発明において、前記シリカ粒子等の骨材表面にシリコーン化合物をコーティングして成る結合材で第一結合材のバインダーには、低温域の結合材としてポリエーテル変性アルコキシシランが使用されており、第二結合材のバインダーには高温域の結合材としてリン酸塩系化合物のリン酸アルミニウムが使用されている埋没材を提供する。
【0054】
本発明において、前記シリカ粒子等の骨材表面にシリコーン化合物をコーティングして成る結合材で第一結合材のバインダーには、低温域の結合材としてアミノ変性オルガノシロキサンが使用されており、第二結合材のバインダーには高温域の結合材としてリン酸塩系化合物のリン酸アルミニウムが使用されている埋没材を提供する。
【0055】
本発明において、前記シリカ粒子等の骨材表面にシリコーン化合物をコーティングして成る結合材で第一結合材のバインダーには、低温域の結合材としてグリコール系化合物が使用されており、第二結合材のバインダーには高温域の結合材としてリン酸塩系化合物のリン酸アルミニウムが使用されている埋没材を提供する。
【0056】
そして、本発明は、前記シリカ粒子等の骨材に第一結合材のバインダー、及び第二結合材のバインダーを添加して水を加え混練したスラリー状の埋没材を製作し、該埋没材に埋没される樹脂製パターンは、3Dプリンターにより造形されてた加熱分解可能な樹脂製パターン、及び射出成型により形成される加熱分解可能な樹脂製パターンを使用する樹脂製パターンを埋没し鋳造するための埋没材を提供するものである。
【符号の説明】
【0057】
1 鋳枠
2 埋没材
3 樹脂製パターン
4 鋳型
5 脱水紙
6 脱水用紛体
7 脱水用容器
8 凝固された埋没材
9 消失鋳型
10 湯口
図1
図2