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  • 特許-ケーキ、及びガラスヤーンパッケージ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】ケーキ、及びガラスヤーンパッケージ
(51)【国際特許分類】
   C03B 37/12 20060101AFI20240305BHJP
   D02G 3/18 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
C03B37/12 Z
D02G3/18
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020087499
(22)【出願日】2020-05-19
(65)【公開番号】P2021181391
(43)【公開日】2021-11-25
【審査請求日】2023-05-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000004503
【氏名又は名称】ユニチカ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】305040569
【氏名又は名称】ユニチカグラスファイバー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】澤井 陸
(72)【発明者】
【氏名】関田 知喜
【審査官】玉井 一輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-011484(JP,A)
【文献】特開平05-254877(JP,A)
【文献】特開2011-140721(JP,A)
【文献】特開2007-162171(JP,A)
【文献】国際公開第2018/198492(WO,A1)
【文献】特開2004-225210(JP,A)
【文献】特開2004-060082(JP,A)
【文献】特開昭63-282056(JP,A)
【文献】特開2018-197411(JP,A)
【文献】特開2000-211813(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 37/12
D02G 3/18
B65H 55/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラスストランドが巻かれたケーキであって、
前記ケーキの巻き終わりから5m採取し、測定した番手であるTc1が、前記ケーキ中における前記ガラスストランドの全長の平均番手であって、前記ガラスストランドの全長に対して均等な間隔毎に20箇所、5mずつ採取してそれぞれ番手を測定し、その20箇所の番手の平均値であるTcより大きく、
前記Tcに対する、前記Tc1の比率(Tc1/Tc)が1.1~5.0であり、
前記Tcが0.3~4.5texである、ケーキ。
【請求項2】
ガラスヤーンが巻かれたガラスヤーンパッケージであって、
前記ガラスヤーンパッケージの巻き始めから5m採取し、測定した番手であるTp1が、前記ヤーンパッケージ中における前記ガラスヤーンの全長の平均番手であって、前記ガラスヤーンの全長に対して均等な間隔毎に20箇所、5mずつ採取してそれぞれ番手を測定し、その20箇所の番手の平均値であるTpより大きく、
前記Tpに対する、前記Tp1の比率(Tp1/Tp)が1.1~5.0であり、
前記Tpが0.3~4.5texである、ガラスヤーンパッケージ。
【請求項3】
ガラス溶融炉と、前記ガラス溶融炉に備えられ、前記ガラス溶融炉から溶融ガラスを吐出させてガラスフィラメントとする複数のノズルと、前記ガラスフィラメントを直接引きそろえて集束させガラスストランドとするギャザリングシューと、前記ガラスストランドをケーキボビンに左右方向に綾がけするトラバースと、ガラスストランドを巻き取るコレットと、を備える紡糸装置を用い、
前記ケーキボビンを前記コレットにセットし、前記コレットが回転するに伴って回転する前記ケーキボビンに前記ガラスストランドを巻き取るケーキの製造方法であって、
前記ガラスストランドの全長をLcとしたとき、前記ガラスストランドの巻き終わりからの長さLc1が下記式を満たす地点から前記コレットの回転数を小さくすることにより、
前記ケーキ中における前記ガラスストランドの全長の平均番手であって、前記ガラスストランドの全長に対して均等な間隔毎に20箇所、5mずつ採取してそれぞれ番手を測定し、その20箇所の番手の平均値であるTcに対する、前記ケーキの巻き終わりから5m採取し、測定した番手であるTc1の比率(Tc1/Tc)が1.1~5.0であるケーキを得る、ケーキの製造方法。
(式)0.001≦(Lc1/Lc×100)≦10
【請求項4】
ガラスヤーンが巻かれたガラスヤーンパッケージの製造方法であって、
請求項3に記載のケーキの製造方法で得られたケーキを用いることにより、前記ガラスヤーンパッケージにおける前記の全長の平均番手であって、前記ガラスヤーンの全長に対して均等な間隔毎に20箇所、5mずつ採取してそれぞれ番手を測定し、その20箇所の番手の平均値であるTpに対する、前記ガラスヤーンの巻き始めから5m採取し、測定した番手であるTp1の比率(Tp1/Tp)が1.1~5.0であるガラスヤーンを得る、ガラスヤーンの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーキ、及びガラスヤーンパッケージに関する。
【背景技術】
【0002】
ガラスヤーンは、多数のガラス単繊維(フィラメント)を撚りまとめて糸状にしたものである。ガラスヤーンは、電気絶縁性、寸法安定性、耐熱性、耐薬品性及び引張強度等の特性に優れることから、ガラスクロス、ガラステープ、ガラススリーブ、ゴム補強用コード等の原料糸として使用されている。そして、ガラスクロスは、その用途の一つとしてプリント配線板が挙げられ、プリント配線板の品質に大きく影響を与える。プリント配線板用ガラスクロスは薄型化が進み、それに伴い、原料糸であるガラスヤーンも低番手化(例えば0.3~5tex程度)されている。
【0003】
ガラスヤーンが巻かれるガラスヤーンパッケージは、以下のように、紡糸工程及び撚糸工程を経て製造される。
(1-1)紡糸工程
ガラス原料をガラス溶融炉で溶融してノズルから複数のガラス長繊維として引き出し、該複数のガラス長繊維に集束剤を付与して集束させてガラスストランドとする。そして、円筒状の巻き取りチューブを装着させたコレットを回転させて上記ガラスストランドを巻き取りチューブ上に巻き取り、ケーキ(紡糸工程で、ブッシングから繊維化された直後のストランドを巻き取った、筒状に巻かれた糸の塊)とする。
(1-2)撚糸工程
ケーキからガラスストランドを引き出し、撚糸機で撚りをかけて、ガラスヤーンとし、円筒状のボビンに巻き取ってガラスヤーンパッケージとする。
【0004】
ケーキに巻かれるガラスストランドの番手は、ガラス溶融炉におけるノズル温度、ガラスの液面高さ(ガラスヘッド)及びコレットによる巻き取り速度に大きく依存する。すなわち、ノズル温度を高くすれば、溶融したガラスの吐出量が増加するため、ガラスストランドを構成するフィラメントの直径及びガラスストランドの番手は大きくなる。また、ガラスヘッドを高くすることで溶融炉のノズルから吐出される時の押し出し圧が上昇しガラスの吐出量が大きくなって番手が大きくなる。一方、コレットによる巻き取り速度が大きくなれば、ガラスストランドを構成するフィラメントの直径及びガラスストランドの番手は小さくなる。そして、従来、ノズル温度、ガラスヘッド及びガラスストランドの巻取速度は一定となるように制御されるのが技術常識である。すなわち、ケーキ中のガラスストランドの番手は、巻き始めから巻き終わりまで一定とすることが技術常識である。
【0005】
上記のようなガラスストランドの巻き取り装置として、例えば、スパイラルワイヤの回転と軸心方向へのコレットに対する相対往復動作とによって繊維を綾振り、且つコレットを回転させながら、該コレットに外装したパッケージにその繊維を両端テーパ形状となるように巻き取るようにしたものにおいて、相対往復動作しているスパイラルワイヤのコレットに対する往復動作位置に応じてコレットの回転数を繊維の巻取速度が略一定となるように制御する繊維巻取装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。該繊維巻取装置によれば、パッケージが両端テーパ状に巻き太るような綾振りを行っても随所で紡糸速度を一定に保つことができ、テーパ部の直径差が極端に大きいような大重量ケーキ等を巻いても、フィラメント径が一定に保たれた高品質のものを提供することが可能となるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平11-49426号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ケーキを製造する紡糸工程では、ケーキ中に毛羽等が混入することを防ぐ等の目的で、水スプレーをガラスストランドに噴射しながら巻き取る。加えて、ガラスストランドに付与する集束剤は水系であることから、紡糸直後のケーキは多くの水分を含んだ状態となる。そして、得られたケーキは乾燥され、ある程度水分を揮発させてから撚糸工程に供されるところ、乾燥させたケーキ表面(ケーキ巻き終わり部分)においてガラスストランドに付与した集束剤が移行及び皮膜化しやすく、ケーキ表面において隣接するガラスストランド同士が当該皮膜によって一部接合されやすくなる。
【0008】
乾燥させたケーキを撚糸工程において撚糸機にセットする際、作業員が、ケーキの表面(外層側)からガラスストランドを引き出す、所謂口出しをおこない、口出ししたガラスストランドを撚糸機のガイド等に通し、撚糸機のリングにセットしたトラベラーに通して、ガラスヤーンパッケージの巻き芯であるボビンに複数回巻き付け、当該ボビンを撚糸機のスピンドルにセットして撚糸をおこない、ガラスヤーンパッケージとする。この場合、口出しされたケーキ巻き終わりの部分のガラスストランドは、位置的に、ガラスヤーンパッケージにおいては巻き始めの部分のガラスヤーンに相当する。
【0009】
ここで、本発明者等は、ケーキの表面からガラスストランドを口出しする際、前述のようにケーキ表面において隣接するガラスストランド同士がガラスストランドに付与した集束剤の皮膜化が進むことにより、ケーキから引き出されるガラスストランドを構成する複数のフィラメントの一部が、ケーキに依然巻かれているガラスストランドに接合し、上記引き出されるガラスストランドから当該一部のフィラメントが引き裂かれ欠損する現象(本明細書において当該現象を「遅れ糸」と表現する場合がある。)が発生する場合があること、とりわけ、遅れ糸の発生は、ガラスストランドの番手が小さい場合に顕著に発生しやすくなることを知得した。そして、本発明者等は、一旦ケーキ口出しにおいて遅れ糸が発生し、そのまま口出しを続けると、口出しされたガラスストランドにおいて欠損するフィラメントの数が増えていき、最終的には当該ストランドが切断し、ケーキ中の糸口が見つからなくなり、口出しが不可能になって、当該ケーキを廃棄せざるを得なくなる、口出し不良が生じる場合があるという問題があることを知得した。
【0010】
また、本発明者等は、撚糸工程において、撚糸機にセットしたケーキのガラスストランドの番手が小さくなると、作業者が撚糸機のトラベラーにセットする時間が比較的多く必要となり、作業性が低くなることを知得した。
【0011】
そこで、本発明は、上記問題を解決し、口出し不良の発生の低減、及び撚糸機トラベラーにセットする作業性の向上、に寄与するケーキに関する技術の提供、及び該ケーキを用いたガラスヤーンパッケージの提供を主な課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者等が上記問題を解決すべく鋭意検討したところ、例えば特許文献1に開示されているように、従来、ケーキに巻かれるガラスストランド全長においてフィラメント径及び番手は一定に保つのが技術常識であるところ、あえて、例えば、ケーキ製造において巻き終わり部分(最外層部に相当)のストランドを巻くタイミングで巻取速度を小さくする等し、ガラスストランドの巻き終わりの部分の番手が、ガラスストランドの全長の平均番手より大きいものとすることにより、上記問題を解決できることを見出した。
【0013】
すなわち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1.ガラスストランドが巻かれたケーキであって、前記ケーキ中における前記ガラスストランドの巻き終わりの部分の番手Tc1が、前記ケーキ中における前記ガラスストランドの全長の平均番手Tcより大きい、ケーキ。
項2.前記ガラスストランドの全長Lcに対する、前記巻き終わりの部分におけるガラスストランドの長さLc1の割合(Lc1/Lc×100)が0.001~10%である、項1に記載のケーキ。
項3.前記ガラスストランドの全長の平均番手Tcに対する、前記ガラスストランドの巻き終わりの部分の番手Tc1の比率(Tc1/Tc)が1.1~5.0である、項1又は2に記載のケーキ。
項4.前記平均番手Tcが0.3~4.5texである、項1~3のいずれか1項に記載のケーキ。
項5.ガラスヤーンが巻かれたガラスヤーンパッケージであって、前記ガラスヤーンパッケージ中における前記ガラスヤーンの巻き始めの部分の番手Tp1が、前記ヤーンパッケージ中における前記ガラスヤーンの全長の平均番手Tpより大きい、ガラスヤーンパッケージ。
項6.前記ガラスヤーンの全長Lpに対する、前記巻き始めの部分におけるガラスヤーンの長さLp1の割合(Lp1/Lp×100)が0.001~10%である、項5に記載のガラスヤーンパッケージ。
項7.前記ガラスヤーンの全長の平均番手Tpに対する、前記ガラスヤーンの巻き始めの部分の番手Tp1の比率(Tp1/Tp)が1.1~5.0である、項5又は6に記載のガラスヤーンパッケージ。
項8.前記平均番手Tpが0.3~4.5texである、項5~7のいずれか1項に記載のガラスヤーンパッケージ。
【発明の効果】
【0014】
本発明のケーキによれば、ガラスストランドが巻かれたケーキであって、前記ケーキ中における前記ガラスストランドの巻き終わりの部分の番手Tc1が、前記ケーキ中における前記ガラスストランドの全長の平均番手Tcより大きいことから、例えば、前記ガラスストランドの番手が小さい場合にも、口出し不良の発生の低減、及び撚糸機トラベラーにセットする作業性の向上、に寄与することができる。
【0015】
また、本発明のガラスヤーンパッケージによれば、上記ケーキを用いて撚糸することにより得られ、ケーキを撚糸機トラベラーにセットする際に、ケーキの巻き終わりの部分のガラスストランドに位置的に相当する、ガラスヤーンの巻き始めの部分の平均番手Tp1が、ヤーンパッケージ中におけるガラスヤーンの全長の平均番手Tpより大きいことから、当該巻き始めの部分のガラスヤーンがより確実にボビンにセットされやすくなり、ガラスヤーンパッケージの品質向上に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】紡糸工程における、好ましい実施形態のケーキの製造方法の一例を説明する模式図である。
図2図1のA-A線断面図であり、コレットから引き抜いたケーキを示す図である。
図3】撚糸工程における、好ましい実施形態のガラスヤーンパッケージの製造方法の一例を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
1.ケーキ
本発明のケーキは、ガラスストランドが巻かれたケーキであって、前記ケーキ中における前記ガラスストランドの巻き終わりの部分の番手Tc1が、前記ケーキ中における前記ガラスストランドの全長の平均番手Tcより大きい。以下、本発明のケーキの好ましい実施形態について詳述する。
【0018】
<本発明のケーキの好ましい実施形態>
本発明のケーキは、ガラスストランドが巻かれたものである。ガラスストランドは、ガラス溶融炉ノズルから引き出した複数のガラスフィラメントを直接引きそろえて集束した繊維束である。
【0019】
ガラスフィラメントを構成するガラス材料としては、特に制限されない。例えば、ガラス組成として、公知のガラス組成物であるガラス材料が挙げられ、例えば、Eガラス、Tガラス、Sガラス、Dガラス、NEガラス、Lガラス、Cガラス、または、ARガラス等が挙げられる。また、1MHzの周波数において室温で5以下の誘電率および5×10-4以下の誘電正接を有する、低誘電ガラス組成物、または、質量%で表示して、40≦SiO≦60、15≦B≦35、10≦Al≦20を含むガラス組成物、であるガラス材料も挙げられる。
【0020】
図1は、紡糸工程における、好ましい実施形態のケーキ1の製造方法の一例を説明する模式図である。なお、以下では、図1に示す方向、つまり上、下、右、左にしたがって説明を行うことがある。これらの方向にしたがって、説明を行うが、但し、この向きによって、本発明が限定されるものではない。好ましい実施形態の紡糸装置としては、上記ガラス材料を溶融するガラス溶融炉5と、ガラス溶融炉5に備えられ、ガラス溶融炉5から溶融ガラスを吐出させてガラスフィラメント4とする複数のノズル6と、ガラスフィラメント4に集束剤8を付与するアプリケーター7と、ガラスフィラメント4を直接引きそろえて集束させガラスストランド2とするギャザリングシュー9と、ガラスストランド2をケーキボビン3に左右方向に綾がけしながら巻き取るときのトラバース(図示しない)と、ガラスストランド2を巻き取るコレット10とを備える。また、図2は、図1のA-A線断面図であり、コレット10から引き抜いたケーキ1の断面形状を示す図である。図1及び図2において、ケーキ1は、ケーキボビン3と、ケーキボビン3に巻かれたガラスストランド2を備える。
【0021】
図1において、ケーキボビン3は、円筒形状であり、外形が円柱状であるコレット10に挿入されてセットされる。そして、コレット10が周方向に回転するに伴い、コレット10に挿入されたケーキボビン3も周方向に回転し、ガラスストランド2がケーキボビン3に巻き取られる。ここで、前述のように、ガラスストランド2の番手は、ノズル6の温度、ガラスヘッド、及びコレット10による巻き取り速度に依存する。例えば、ノズル6の温度及びガラスヘッドを一定に制御しつつ、コレット10の回転速度を小さくすれば、溶融ガラスの吐出量はそのままで、ガラスストランド2の巻き取り速度が小さくなることから、ガラスストランド2の番手は大きくなる。
【0022】
図1等に示すように、好ましい実施形態では、紡糸工程において、ケーキボビン3にガラスストランド2を巻くに従って、ガラスストランド2がケーキボビン3上に順次堆積されガラスストランド2を巻いた巻き糸部の外径が大きくなっていき、所定の巻き量となった時点で巻き取りが終了し、ケーキ1が得られる。そして、好ましい実施形態では、ガラスストランド2の巻き始めの部分から巻き終わりの部分に差しかかるまで、一定して所定の番手となるよう、ノズル6の温度、ガラスヘッド及びコレット10の回転速度が設定される。そして、ガラスストランド2の巻き終わり部分に至ったときからコレット10の回転速度を小さくし、ガラスストランド2の巻き終わり部分の番手Tc1を前記所定の番手より大きくすることができる。そして、本発明のケーキ1によれば、ガラスストランド2が巻かれたケーキであって、前記ケーキ中における前記ガラスストランド2の巻き終わりの部分の番手Tc1が、前記ケーキ中における前記ガラスストランド2の全長の平均番手Tcより大きいことから、例えば、前記ガラスストランド2の番手が小さい場合にも、口出し不良の発生の低減、及び撚糸機トラベラーにセットする作業性の向上、に寄与することができる。なお、本発明のケーキ1において、ケーキ1中におけるガラスストランド2の巻き終わりの部分の番手Tc1が、前記ケーキ中における前記ガラスストランド2の全長の平均番手Tcより大きければよく、当該巻き終わりの部分以外においてストランド2の番手がTcより高い部分を含んでもよいし、当該部分を含まなくともよい。
【0023】
本発明のケーキ1において、ガラスストランド2の全長Lcの平均番手Tcより大きい番手Tc1を有する巻き終わり部分のガラスストランド2の長さLc1としては、口出し不良の発生の低減を図ることができる長さがあれば、特に制限されない。例えば、上記Lc1に関し、ケーキ1に巻かれたガラスストランド2の全長Lcに対する、前記巻き終わりの部分のガラスストランド2の長さLc1の割合(Lc1/Lc×100)としては、0.001~10%が挙げられ、0.05~10%が好ましく挙げられる。また、当該割合(Lc1/Lc×100)の上限値としては、5%、1%、0.2%、0.1%又は0.01%も取り得る。また、上記Lcの具体的な長さとしては、例えば、40km~400kmが挙げられ、40~300kmが好ましく挙げられる。また、上記Lc1の具体的な長さとしては、0.002~40kmが挙げられ、0.02~30kmが好ましく挙げられる。また、Lc1は、0.002~3kmとすることもできるし、Lc1の上限値としては、1km、0.2km、0.1km又は0.01kmも取り得る。
【0024】
本発明のケーキ1において、ガラスストランド2の全長の平均番手Tcより大きい番手を有する巻き終わり部分のガラスストランド2の番手Tc1としては、上記Tcより大きければ特に制限されない。例えば、Tc1に関し、ガラスストランド2の全長の平均番手Tcに対する、前記ガラスストランド2の巻き終わりの部分の番手Tc1の比率(Tc1/Tc)が1.1~5.0であることが挙げられる。また、上記Tcの具体的な番手として、本発明の効果をより一層顕著なものとする観点から、0.3~4.5texが挙げられ、0.3~2.5texが好ましく挙げられ、0.8~2texがより好ましく挙げられる。また、上記Tc1の具体的な番手としては、同様の観点から、0.33~22.5texが挙げられ、0.33~12.5texが好ましく挙げられ、0.88~10texが挙げられる。なお、本発明において、番手は、JIS R 3420:2013 7.1に準じて測定される。上記Tcは、ケーキ1から、ガラスストランド2を、ガラスストランド2の全長に対して均等な間隔毎に20箇所、5~100mずつ、好ましくは10mずつ、より好ましくは5mずつ採取してそれぞれ番手を測定し、その20箇所の番手の平均値をTcとする。例えば、全長Lcが10kmの場合は、まず、ガラスストランド2を巻き終わり(0m地点)から5m採取する。次いで、ガラスストランド2を495m解舒した後5m採取し、これを残り18回繰り返して20箇所の番手を測定し、当該20箇所の番手の平均値をTcとする(すなわち、上記均等な間隔は10000m/20=500mであり、採取する長さ5m+解舒する長さ495mの和が上記500mになる。)。Tc1は、その長さLc1の範囲で、巻き終わりから5~100m、好ましくは10m、より好ましくは5m採取し、測定した番手をTc1とする。
【0025】
本発明のケーキ1において、ガラスストランド2を構成するフィラメントの平均直径としては、特に制限されない。例えば、ガラスストランド2の全長の平均番手Tcより大きい番手Tc1を有するガラスストランド2が巻かれた巻き終わり部分以外、の部分のガラスストランド2のフィラメント平均直径Dcに対する、番手Tc1を有する巻き終わり部分のガラスストランド2のフィラメント平均直径Dc1の比率(Dc1/Dc)が1.05~2.25であることが挙げられる。また、例えば、ガラスストランド2の全長の平均番手Tcより大きい番手Tc1を有するガラスストランド2が巻かれた巻き終わり部分以外、の部分におけるフィラメント平均直径Dcとしては、本発明の効果をより一層顕著なものとする観点から、3~5μmが挙げられ、3~4.5μmが好ましく挙げられる。また、ガラスストランド2の全長の平均番手Tcより大きい番手Tc1を有する巻き終わり部分のガラスストランド2のフィラメント平均直径Dc1としては、同様の観点から、3.2~11.3μmが挙げられ、4~8μmが好ましく挙げられる。なお、本発明において、フィラメント平均直径は、ガラスストランド等ガラス糸をエポキシ樹脂(丸本ストルアス株式会社製商品名3091)に包埋して硬化させ、ガラス糸断面が観察可能な程度に研磨し、SEM(日本電子株式会社製商品名JSM-6390A)を用い、倍率3000倍で観察、測定をおこなう。ガラス糸(ガラスストランド)を全箇所採取し、ガラス糸の全フィラメントの直径を測定して平均値を算出し、ガラス糸の平均フィラメント直径とする。
【0026】
本発明のケーキ1において、ガラスストランド2を構成するフィラメントの本数としては、特に制限されない。例えば、ガラスストランド2の全長の平均番手Tcより大きい番手Tc1を有するガラスストランド2が巻かれた巻き終わり部分以外、の部分におけるガラスストランド2のフィラメント本数、及び番手Tc1を有する巻き終わり部分のガラスストランド2のフィラメント本数が同一とすることができる。また、ガラスストランド2を構成するフィラメントの本数としては、25~100本が挙げられる。
【0027】
2.ガラスヤーンパッケージ
本発明のガラスヤーンパッケージは、ガラスヤーンが巻かれたガラスヤーンパッケージであって、前記ガラスヤーンパッケージ中における前記ガラスヤーンの巻き始めの部分の番手Tp1が、前記ヤーンパッケージ中における前記ガラスヤーンの全長の平均番手Tpより大きい。以下、本発明のケーキの好ましい実施形態について詳述する。
【0028】
<本発明のガラスヤーンパッケージの好ましい実施形態>
本発明のガラスヤーンパッケージは、ガラスヤーンが巻かれたものである。ガラスヤーンは、多数のガラス単繊維(フィラメント)を撚りまとめて糸状にしたものである。
【0029】
ガラスヤーンにおいて、ガラスフィラメントを構成するガラス材料としては、前述したガラスストランドと同様である。
【0030】
図3は、撚糸工程における、好ましい実施形態のガラスヤーンパッケージ11の製造方法の一例を説明する模式図である。なお、図3において、図(A)はケーキ1の巻き終わりの部分のガラスストランド2を引き出して撚糸してガラスヤーン12としガラスヤーンパッケージ11の巻き始めの部分として巻き取っている様子を示す図であり、図(B)はケーキ1の巻き始めの部分のガラスストランド2を引き出して撚糸してガラスヤーン12としガラスヤーンパッケージ11の巻き終わりの部分として巻き取っている様子を示す図である。好ましい実施形態の撚糸装置としては、給糸に用いる前述したケーキ1を取り付け、ケーキ1を周方向に回転させ回転速度に応じてガラスストランド2を引き出させるクリール(図示しない)、ケーキ1から引き出したガラスストランド2のバルーニングを調整するガイド14、上下方向(ガラスヤーンパッケージボビン13の軸方向)に往復移動するリング15、リング15に旋回自在に保持されるトラベラー(図示しない)、ガラスヤーンパッケージボビン13の空間部に挿入しガラスヤーンパッケージボビン13を固定して回転させ、ガラスヤーン12をガラスヤーンパッケージボビン13に巻き取るスピンドル(図示しない)と、を備える。
【0031】
図3(A)に示すように、前述した本発明のケーキ1のガラスストランド2の全長の平均番手Tcより大きい番手Tc1を有するガラスストランド2の巻き終わり部分は、ガラスヤーンパッケージ11においてガラスヤーン12の巻き始めの部分に位置的に相当する。すなわち、本発明のガラスヤーンパッケージ11は、本発明のケーキ1を用いて撚糸することにより得られ、ケーキ1を撚糸機トラベラーにセットする際に、ケーキ1の巻き終わりの部分のガラスストランド2に位置的に相当する、ガラスヤーン12の巻き始めの部分の番手Tp1が、ヤーンパッケージ11中におけるガラスヤーン12の全長の平均番手Tpより大きいことから、当該巻き始めの部分のガラスヤーン12がより確実にガラスヤーンパッケージボビン13にセットされやすくなり、ガラスヤーンパッケージ11の毛羽の低減等品質向上に寄与することができる。なお、本発明のガラスやーンパッケージ11において、ガラスヤーンパッケージ11中におけるガラスヤーン12の巻き始めの部分の番手Tp1が、前記ガラスヤーンパッケージ11中における前記ガラスヤーン12の全長の平均番手Tpより大きければよく、当該巻き始めの部分以外においてガラスヤーン12の番手がTpより高い部分を含んでもよいし、当該部分を含まなくともよい。
【0032】
本発明のガラスヤーンパッケージ11において、ガラスヤーン12の全長Lpの平均番手Tpより大きい番手Tp1を有する、巻き始め部分のガラスヤーン12の長さLp1としては、特に制限されない。例えば、Lp1に関し、ガラスヤーンパッケージ11に巻かれたガラスヤーン11の全長Lpに対する、前記巻き始めの部分におけるガラスヤーン11の長さLp1の割合(Lp1/Lp×100)が0.001~10%が挙げられ、0.05~10%が好ましく挙げられる。また、当該割合(Lp1/Lp×100)の上限値としては、5%、1%、0.2%、0.1%又は0.01%も取り得る。また、上記Lpの具体的な長さとしては、例えば、40km~400kmが挙げられ、40~300kmが好ましく挙げられる。また、上記Lp1の具体的な長さとしては、0.002~40kmが挙げられ、0.02~30kmが好ましく挙げられる。また、Lp1は、0.002~3kmとすることもできるし、Lp1の上限値としては、1km、0.2km、0.1km又は0.01kmも取り得る。
【0033】
本発明のガラスヤーンパッケージ11において、ガラスヤーン12の全長の平均番手Tpより大きい番手Tp1を有する、巻き始め部分のガラスヤーン12の番手Tp1としては、上記Tpより大きければ特に制限されない。例えば、Tp1に関し、ガラスヤーン12の全長の平均番手Tpに対する、前記ガラスヤーン12の巻き始めの部分の番手Tp1の比率(Tp1/Tp)が1.1~5.0であることが挙げられる。また、上記Tpの具体的な番手として、本発明の効果をより一層顕著なものとする観点から、0.3~4.5texが挙げられ、0.3~2.5texが好ましく挙げられ、0.8~2texがより好ましく挙げられる。また、上記Tp1の具体的な番手としては、同様の観点から、0.33~22.5texが挙げられ、0.33~12.5texが好ましく挙げられ、0.88~10texが挙げられる。なお、本発明において、番手は、JIS R 3420:2013 7.1に準じて測定される。上記Tpは、ガラスヤーンパッケージから、ガラスヤーン12を、ガラスヤーン12の全長に対して均等な間隔毎に20箇所、5~100mずつ、好ましくは10mずつ、より好ましくは5mずつ採取してそれぞれ番手を測定し、その20箇所の番手の平均値をTpとする。例えば、全長Lpが10kmの場合は、まず、ガラスヤーン12を巻き終わりから5m採取する。次いで、ガラスヤーン12を495m解舒した後5m採取し、これを残り18回繰り返して20箇所の番手を測定し、当該20箇所の番手の平均値をTpとする(すなわち、上記均等な間隔は10000m/20=500mであり、採取する長さ5m+解舒する長さ495mの和が上記500mになる。)。Tp1は、その長さLp1の範囲で、巻き始めから5~100m、好ましくは10m、より好ましくは5m採取し、測定した番手をTp1とする。
【0034】
本発明のヤーンパッケージ11において、ガラスヤーン12を構成するフィラメントの平均直径としては、特に制限されない。例えば、ガラスヤーン12の全長の平均番手Tpより大きい番手Tp1を有するガラスヤーン12が巻かれた巻き始めの部分以外、の部分のガラスヤーン12のフィラメント平均直径Dpに対する、番手Tp1を有する巻き始めの部分のガラスヤーン12のフィラメント平均直径Dp1の比率(Dp1/Dp)が1.1~5.0であることが挙げられる。また、例えば、ガラスヤーン12の全長の平均番手Tpより大きい番手Tp1を有するガラスヤーン12が巻かれた巻き始めの部分以外、の部分におけるフィラメント平均直径Dpとしては、本発明の効果をより一層顕著なものとする観点から、3~5μmが挙げられ、3~4.5μmが好ましく挙げられる。また、ガラスヤーン12の全長の平均番手Tpより大きい番手Tp1を有する巻き終わり部分のガラスヤーンのフィラメント平均直径Dp1としては、同様の観点から、3.2~11.3μmが挙げられ、4~8μmが好ましく挙げられる。
【0035】
本発明のヤーンパッケージ11において、ガラスヤーン12を構成するフィラメントの本数としては、特に制限されない。例えば、ガラスヤーン12の全長の平均番手Tpより大きい番手Tp1を有するガラスヤーン12が巻かれた巻き始めの部分以外、の部分におけるガラスヤーン12のフィラメント本数、及び番手Tp1を有する巻き始めの部分のガラスヤーン12のフィラメント本数が同一とすることができる。また、ガラスヤーン12を構成するフィラメントの本数としては、25~100本が挙げられる。
【0036】
本発明のヤーンパッケージ11において、ガラスヤーン12の撚り数としては特に制限されないが、例えば、0~1.5回/25mm、好ましくは0.3~1.0回/25mmが挙げられる。撚りの方向としては、S方向、Z方向のいずれであってもよい。
【0037】
本発明のヤーンパッケージ11の用途としては、特に制限されない。とりわけ、プリント配線板用ガラスクロスは薄型化が進み、それに伴い、原料糸であるガラスヤーンも低番手化(例えば0.3~5tex程度)されていること、ガラスヤーン12の番手が低くなるほど巻き始めの部分のガラスヤーンがより確実にボビンにセットされにくくなり、プリント配線板用ガラスクロスとして問題となる毛羽の発生等問題が生じやすくなること、に鑑みれば、本発明のヤーンパッケージ11をプリント配線板用ガラスクロスに用いることにより、本発明の効果をより一層顕著に発揮し得るので好ましい。また、本発明のヤーンパッケージ11を用いてガラスクロスを製織する場合、ガラスヤーン12の全長の平均番手Tpより大きい番手Tp1を有する巻き始めの部分のガラスヤーン12が、ガラスクロスに含まれないよう、製織することが好ましい。
【実施例
【0038】
以下に、実施例及び比較例を示して本発明を詳細に説明する。ただし、本発明は、実施例に限定されない。
【0039】
<実施例1>
1.ケーキの製造
図1に示す好ましい実施形態として前述した紡糸装置を用いてケーキを製造した。具体的に、ガラス材料としてEガラスを用い、ガラス溶融炉5でガラス材料を溶融し、ノズル6から吐出させ、フィラメント4とした。フィラメント4にアプリケーター7で集束剤8を付与し、ギャザリングシュー9でフィラメント40本を収束させてガラスストランド2とし、ケーキボビン3を挿入したコレット10を周方向に回転させ、トラバースで綾がけしながらガラスストランド2をケーキボビン3に巻き取り、ケーキ1を製造した。この際、ガラスストランド2の巻き始め(巻き始めから0m地点)から巻き終わりの部分に差しかかるまで(巻き始めから199.825km地点まで)、ガラスストランド2の全長の平均番手Tcが1.1texとなるよう、ノズル6の温度、ガラスヘッド及びコレット10の回転速度を調整して紡糸し、連続して、199.825km地点から、ノズル6の温度及びガラスヘッドはそのままにしつつ、コレット10の回転速度を2/5倍に小さくして、0.175km巻き、ケーキ1とした。得られたケーキ1は、ガラスストランド2の全長の平均番手Tcが1.1tex、全長の長さLcが200km、ガラスストランド2の巻き終わりの部分の番手Tc1が2.75tex、巻き終わりの部分におけるガラスストランド2の長さLc1が0.175km、ガラスストランド2の全長Lcに対する、巻き終わりの部分におけるガラスストランド2の長さLc1の割合(Lc1/Lc×100)が0.088%、ガラスストランド2の全長の平均番手Tcに対する、ガラスストランド2の巻き終わりの部分の番手Tc1の比率(Tc1/Tc)が2.5であった。物性等について表1に示す。
【0040】
なお、上記ケーキ1において、Tcは、ガラスストランド2の巻き終わり(巻き始めから200km地点、巻き終わりから0m地点)から、10000m毎に、5mずつ20箇所採取してそれぞれ番手を測定し、20箇所の番手の平均値をTcとした。具体的には、ガラスストランド2を巻き終わり(巻き終わりから0m地点)から5m採取した。次いで、ガラスストランド2を9995m解舒した後5m採取し、これを残り18回繰り返して20箇所の番手を測定し、当該20箇所の番手の平均値をTcとした。また、Tc1は、ストランド2の巻き終わり(0m地点)から5m採取し、測定した番手をTc1とした。
【0041】
2.口出し評価
上記製造したケーキ1を1000個準備し、それぞれ温度20℃、湿度50%の条件で24時間乾燥し、熟練した作業員により1000個のケーキの巻き終わり部分のストランド2の口出しをおこない、遅れ糸等の発生により糸口が見つからなくなる口出し不良となったケーキをカウントし、口出し不良率を算出した。結果、口出し不良率は0.7%であった。結果を表1に示す。
【0042】
3.ガラスヤーンパッケージの製造
上記口出ししたケーキ1を100個準備し、図2に示す好ましい実施形態として前述した撚糸機を用いてガラスヤーンパッケージ11を製造した。ケーキ1をクリールにセットした。
【0043】
3-1.撚糸準備作業の作業性の評価
熟練した作業員により、ケーキ1の巻き終わりの部分のガラスストランド2を引き出し、ガイド14に通し、円筒形のガラスヤーンパッケージボビン13に複数回巻き付けてスピンドルにセットし、ガイド14とボビン13に巻き付けた部分の間のガラスストランドをリング15に取り付けたコニカル型のトラベラーに通して、ガラスヤーンパッケージ11を製造する準備作業をおこなった。これを100個のケーキ1についておこない、100個全てセットするのに要する時間を集計し、当該時間を100で除することにより、ケーキ1の1個あたりのセットに要する平均作業時間を算出した。結果、平均作業時間は32秒であった。結果を表1に示す。
【0044】
3-2.ガラスヤーンパッケージ11の製造
上記撚糸準備作業をおこなったものについて、撚り数が0.5(回/25mm)となるように、クリールの回転速度、及びスピンドルの回転速度を調整して撚糸をおこない、ガラスヤーンパッケージ11を製造した。得られたガラスヤーンパッケージ11は、ガラスヤーン12の全長の平均番手Tpが1.1tex、全長の長さLpが175km、ガラスヤーン12の巻き始めの部分の番手Tp1が2.75tex、巻き始めの部分におけるガラスヤーン12の長さLp1が0.175km、ガラスヤーン12の全長Lpに対する、巻き始めの部分におけるガラスヤーン12の長さLp1の割合(Lp1/Lp×100)が0.1%、ガラスヤーン12の全長の平均番手Tpに対する、ガラスヤーン12の巻き始めの部分の番手Tp1の比率(Tp1/Tp)が2.5であった。
【0045】
なお、上記ヤーンパッケージ11において、Tpは、ヤーン12の巻き終わりから、8750m毎に、5mずつ20箇所採取してそれぞれ番手を測定し、20箇所の番手の平均値をTpとした。具体的には、ガラスヤーン12を巻き終わり(巻き終わりから0m地点)から5m採取した。次いで、ガラスヤーン12を8745m解舒した後5m採取し、これを残り18回繰り返して20箇所の番手を測定し、当該20箇所の番手の平均値をTpとした。また、Tp1は、ヤーン12の巻き始め(巻き始めから0m地点)から5m採取し、測定した番手をTp1とした。
【0046】
得られた100本のガラスヤーンパッケージ11は、いずれも巻き始めの部分のガラスヤーン12がより確実にボビン13にセットされており、毛羽の発生が少なく、プリント配線板用ガラスクロスに用いるのに問題ない品質であった。
【0047】
<実施例2>
1.ケーキの製造
図1に示す好ましい実施形態として前述した紡糸装置を用いてケーキを製造した。具体的に、ガラス材料としてEガラスを用い、ガラス溶融炉5でガラス材料を溶融し、ノズル6から吐出させ、フィラメント4とした。フィラメント4にアプリケーター7で集束剤8を付与し、ギャザリングシュー9でフィラメント40本を収束させてガラスストランド2とし、ケーキボビン3を挿入したコレット10を周方向に回転させ、トラバースで綾がけしながらガラスストランド2をケーキボビン3に巻き取り、ケーキ1を製造した。この際、ガラスストランド2の巻き始め(巻き始めから0m地点)から巻き終わりの部分に差しかかるまで(巻き始めから199.99125km地点まで)、ガラスストランド2の全長の平均番手Tcが1.1texとなるよう、ノズル6の温度、ガラスヘッド及びコレット10の回転速度を調整して紡糸し、連続して、199.99125km地点から、ノズル6の温度及びガラスヘッドはそのままにしつつ、コレット10の回転速度を2/5倍に小さくして、0.00875km巻き、ケーキ1とした。得られたケーキ1は、ガラスストランド2の全長の平均番手Tcが1.1tex、全長の長さLcが200km、ガラスストランド2の巻き終わりの部分の番手Tc1が2.75tex、巻き終わりの部分におけるガラスストランド2の長さLc1が0.00875km、ガラスストランド2の全長Lcに対する、巻き終わりの部分におけるガラスストランド2の長さLc1の割合(Lc1/Lc×100)が0.004%、ガラスストランド2の全長の平均番手Tcに対する、ガラスストランド2の巻き終わりの部分の番手Tc1の比率(Tc1/Tc)が2.5であった。物性等について表1に示す。
【0048】
なお、上記ケーキ1において、Tcは、ガラスストランド2の巻き終わり(巻き始めから200km地点、巻き終わりから0m地点)から、10000m毎に、5mずつ20箇所採取してそれぞれ番手を測定し、20箇所の番手の平均値をTcとした。具体的には、ガラスストランド2を巻き終わり(巻き終わりから0m地点)から5m採取した。次いで、ガラスストランド2を9995m解舒した後5m採取し、これを残り18回繰り返して20箇所の番手を測定し、当該20箇所の番手の平均値をTcとした。また、Tc1は、ストランド2の巻き終わり(0m地点)から5m採取し、測定した番手をTc1とした。
【0049】
2.口出し評価
上記ケーキを1000個準備し、それぞれ温度20℃、湿度50%の条件で24時間乾燥し、熟練した作業員により1000個のケーキの巻き終わり部分のストランド2の口出しをおこない、遅れ糸等の発生により糸口が見つからなくなる口出し不良となったケーキをカウントし、口出し不良率を算出した。結果、口出し不良率は1.0%であった。結果を表1に示す。
【0050】
3.ガラスヤーンパッケージの製造
上記口出ししたケーキ1を100個準備し、図2に示す好ましい実施形態として前述した撚糸機を用いてガラスヤーンパッケージ11を製造した。ケーキ1をクリールにセットした。
【0051】
3-1.撚糸準備作業の作業性の評価
熟練した作業員により、ケーキ1の巻き終わりの部分のガラスストランド2を引き出し、ガイド14に通し、円筒形のガラスヤーンパッケージボビン13に複数回巻き付けてスピンドルにセットし、ガイド14とボビン13に巻き付けた部分の間のガラスストランドをリング15に取り付けたコニカル型のトラベラーに通して、ガラスヤーンパッケージ11を製造する準備作業をおこなった。これを100個のケーキ1についておこない、100個全てセットするのに要する時間を集計し、当該時間を100で除することにより、ケーキ1の1個あたりのセットに要する平均作業時間を算出した。結果、平均作業時間は49秒であった。結果を表1に示す。
【0052】
3-2.ガラスヤーンパッケージ11の製造
上記撚糸準備作業をおこなったものについて、撚り数が0.5(回/25mm)となるように、クリールの回転速度、及びスピンドルの回転速度を調整して撚糸をおこない、ガラスヤーンパッケージ11を製造した。得られたガラスヤーンパッケージ11は、ガラスヤーン12の全長の平均番手Tpが1.1tex、全長の長さLpが175km、ガラスヤーン12の巻き始めの部分の番手Tp1が2.75tex、巻き始めの部分におけるガラスヤーン12の長さLp1が0.00875km、ガラスヤーン12の全長Lpに対する、巻き始めの部分におけるガラスヤーン12の長さLp1の割合(Lp1/Lp×100)が0.005%、ガラスヤーン12の全長の平均番手Tpに対する、ガラスヤーン12の巻き始めの部分の番手Tp1の比率(Tp1/Tp)が2.5であった。
【0053】
なお、上記ヤーンパッケージ11において、Tpは、ヤーン12の巻き終わりから、8750m毎に、5mずつ20箇所採取してそれぞれ番手を測定し、20箇所の番手の平均値をTpとした。具体的には、ガラスヤーン12を巻き終わり(巻き終わりから0m地点)から5m採取した。次いで、ガラスヤーン12を8745m解舒した後5m採取し、これを残り18回繰り返して20箇所の番手を測定し、当該20箇所の番手の平均値をTpとした。また、Tp1は、ヤーン12の巻き始め(巻き始めから0m地点)から5m採取し、測定した番手をTp1とした。
【0054】
得られた100本のガラスヤーンパッケージ11は、いずれも巻き始めの部分のガラスヤーン12がより確実にボビン13にセットされており、毛羽の発生が少なく、プリント配線板用ガラスクロスに用いるのに問題ない品質であった。
【0055】
<比較例1>
1.ケーキの製造
図1に示す好ましい実施形態として前述した紡糸装置を用いてケーキを製造した。具体的に、ガラス材料としてEガラスを用い、ガラス溶融炉5でガラス材料を溶融し、ノズル6から吐出させ、フィラメント4とした。フィラメント4にアプリケーター7で集束剤8を付与し、ギャザリングシュー9でフィラメント40本を収束させてガラスストランド2とし、ケーキボビン3を挿入したコレット10を周方向に回転させ、トラバースで綾がけしながらガラスストランド2をケーキボビン3に巻き取り、ケーキ1を製造した。この際、ガラスストランド2の巻き始め(巻き始めから0m地点)から巻き終わりまで(巻き始めから200km地点まで)、ガラスストランド2の全長の平均番手Tcが1.1texとなるよう、ノズル6の温度、ガラスヘッド及びコレット10の回転速度を調整して紡糸し、ケーキ1とした。得られたケーキ1は、ガラスストランド2の全長の平均番手Tcが1.1tex、全長の長さLcが200km、ガラスストランド2の巻き終わりの部分の番手Tc1も1.1texであった。物性等について表1に示す。
【0056】
なお、上記ケーキ1において、Tcは、ストランド2の巻き終わり(巻き始めから200km地点、巻き終わりから0m地点)から、10000m毎に、5mずつ20箇所採取してそれぞれ番手を測定し、20箇所の番手の平均値をTcとした。具体的には、ガラスストランド2を巻き終わり(巻き終わりから0m地点)から5m採取した。次いで、ガラスストランド2を9995m解舒した後5m採取し、これを残り18回繰り返して20箇所の番手を測定し、当該20箇所の番手の平均値をTcとした。また、Tc1は、ストランド2の巻き終わり(0m地点)から5m採取し、測定した番手をTc1とした。
【0057】
2.口出し評価
上記ケーキを1000個準備し、それぞれ温度20℃、湿度50%の条件で24時間乾燥し、熟練した作業員により1000個のケーキの巻き終わり部分のストランド2の口出しをおこない、遅れ糸等の発生により糸口が見つからなくなる口出し不良となったケーキをカウントし、口出し不良率を算出した。結果、口出し不良率は4.0%であった。結果を表1に示す。
【0058】
3.ガラスヤーンパッケージの製造
上記口出ししたケーキ1を100個準備し、図2に示す好ましい実施形態として前述した撚糸機を用いてガラスヤーンパッケージ11を製造した。ケーキ1をクリールにセットした。
【0059】
3-1.撚糸準備作業の作業性の評価
熟練した作業員により、ケーキ1の巻き終わりの部分のガラスストランド2を引き出し、ガイド14に通し、円筒形のガラスヤーンパッケージボビン13に複数回巻き付けてスピンドルにセットし、ガイド14とボビン13に巻き付けた部分の間のガラスストランドをリング15に取り付けたコニカル型のトラベラーに通して、ガラスヤーンパッケージ11を製造する準備作業をおこなった。これを100個のケーキ1についておこない、100個全てセットするのに要する時間を集計し、当該時間を100で除することにより、ケーキ1の1個あたりのセットに要する平均作業時間を算出した。結果、平均作業時間は55秒であった。結果を表1に示す。
【0060】
3-2.ガラスヤーンパッケージ11の製造
上記撚糸準備作業をおこなったものについて、撚り数が0.5(回/25mm)となるように、クリールの回転速度、及びスピンドルの回転速度を調整して撚糸をおこない、ガラスヤーンパッケージ11を製造した。得られたガラスヤーンパッケージ11は、ガラスヤーン12の全長の平均番手Tpが1.1tex、全長の長さLpが175km、ガラスヤーン12の巻き始めの部分の番手Tp1も1.1texであった。
【0061】
なお、上記ヤーンパッケージ11において、Tpは、ヤーン12の巻き終わりから、8750m毎に、5mずつ20箇所採取してそれぞれ番手を測定し、20箇所の番手の平均値をTpとした。具体的には、ガラスヤーン12を巻き終わり(巻き終わりから0m地点)から5m採取した。次いで、ガラスヤーン12を8745m解舒した後5m採取し、これを残り18回繰り返して20箇所の番手を測定し、当該20箇所の番手の平均値をTpとした。また、Tp1は、ヤーン12の巻き始め(巻き始めから0m地点)から5m採取し、測定した番手をTp1とした。
【0062】
【表1】
【0063】
表1から明らかなように、実施例1及び2は、ガラスストランドが巻かれたケーキであって、前記ケーキ中における前記ガラスストランドの巻き終わりの部分の番手Tc1が、前記ケーキ中における前記ガラスストランドの全長の平均番手Tcより大きいことから、口出し不良の発生の低減、及び撚糸機トラベラーにセットする作業性の向上、に寄与することができるものであった。
【0064】
一方、比較例1は、ガラスストランドが巻かれたケーキであって、前記ケーキ中における前記ガラスストランドの巻き終わりの部分の番手Tc1が、前記ケーキ中における前記ガラスストランドの全長の平均番手Tcと同一であった(ケーキに巻かれるガラスストランド全長においてフィラメント径及び番手が一定に保たれているものであった)ことから、口出し不良の発生が多く、及び撚糸機トラベラーにセットする作業性の向上を図ることができないものであった。
【符号の説明】
【0065】
1 ケーキ
2 ガラスストランド
3 ケーキボビン
4 ガラスフィラメント
5 ガラス溶融炉
6 ノズル
7 アプリケーター
8 集束剤
9 ギャザリングシュー
10 コレット
11 ガラスヤーンパッケージ
12 ガラスヤーン
13 ガラスヤーンパッケージボビン
14 ガイド
15 リング
図1
図2
図3