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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】シール性検査具
(51)【国際特許分類】
   G01M 3/26 20060101AFI20240305BHJP
【FI】
G01M3/26 P
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020103047
(22)【出願日】2020-06-15
(65)【公開番号】P2021196272
(43)【公開日】2021-12-27
【審査請求日】2023-04-28
(73)【特許権者】
【識別番号】520200584
【氏名又は名称】株式会社キーレックス・ワイテック・インターナショナル
(73)【特許権者】
【識別番号】500213915
【氏名又は名称】株式会社ワイテック
(73)【特許権者】
【識別番号】590000721
【氏名又は名称】株式会社キーレックス
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100170900
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 渉
(72)【発明者】
【氏名】岡村 寛之
【審査官】亀澤 智博
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-096308(JP,A)
【文献】特開2002-295441(JP,A)
【文献】特表2019-505810(JP,A)
【文献】実開平04-094540(JP,U)
【文献】特開平02-186232(JP,A)
【文献】米国特許第09097609(US,B1)
【文献】特公昭46-006342(JP,B1)
【文献】中国特許出願公開第112595470(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 3/00 - 3/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検査体における検査領域のシール性を検査可能なシール性検査具であって、
先端開口周縁に沿って延びる環状をなす第1可撓部を有する筒体と、
該筒体内方に筒中心線に沿ってスライド可能に嵌挿され、先端に上記筒体内周面に摺接可能で、且つ、当該筒体内周面との隙間を埋める第2可撓部を有するスライド棒と、
該スライド棒をその基端側に上記筒体の筒中心線に沿って付勢する第1付勢部材とを備え、
上記検査領域を囲うように上記第1可撓部を上記被検査体に押し付けた状態で上記第1付勢部材の付勢力により上記スライド棒を基端側にスライドさせて上記検査領域に面する上記筒体内方を負圧にするよう構成されていることを特徴とするシール性検査具。
【請求項2】
請求項1に記載のシール性検査具において、
上記被検査体は、締結部材の軸部を通し孔に挿通させるとともに当該通し孔周りに上記締結部材の頭部を溶着させたプレス部品であり、
上記スライド棒の棒中心線上には、当該スライド棒の先端に開口する収容凹部が形成され、該収容凹部は、上記第1可撓部を上記被検査体に押し付けた際、上記締結部材の軸部を収容可能に構成されていることを特徴とするシール性検査具。
【請求項3】
請求項2に記載のシール性検査具において、
上記筒体の先端側内径は、上記締結部材の頭部の外径より大きい寸法に設定されていることを特徴とするシール性検査具。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1つに記載のシール性検査具において、
上記スライド棒を上記第1付勢部材の付勢力に抗して先端側にスライドさせた状態で筒体の所定の位置に位置決めする位置決め手段と、
該位置決め手段による上記筒体に対する上記スライド棒の位置決め状態を解除操作可能な操作手段とを備えていることを特徴とするシール性検査具。
【請求項5】
請求項4に記載のシール性検査具において、
上記位置決め手段は、上記筒体の側壁に形成された筒中心線と直交する方向に延びて上記筒体内部に連通する連通孔と、上記スライド棒に形成され、棒中心線と直交する方向に延びて外周面に開口するガイド穴と、該ガイド穴に案内されるとともに先端側を上記連通孔に挿入可能な係合ピンと、当該係合ピンの先端側が上記ガイド穴の開口からはみ出す位置まで上記係合ピンを上記ガイド穴の開口側に付勢可能な第2付勢部材とを備え、
上記操作手段は、上記連通孔にスライド可能に嵌挿され、一方にスライドした状態で一端側が上記筒体の外周面からはみ出る状態になる一方、他方にスライドさせると他端が上記連通孔における上記筒体内部に連通する位置まで到達する寸法に設定された操作棒であることを特徴とするシール性検査具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、自動車製造ライン等で組み立てる組立部品の所定領域におけるシール性を検査するシール性検査具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動車製造ラインでは、ウェルドボルトと呼ばれる締結部材の軸部をプレス部品に形成された通し孔に挿通させるとともに、締結部材の頭部をプレス部品の通し孔周縁にプロジェクション溶接により溶着させ、その後、プレス部品に溶着させた締結部材を用いて他の車両部品をプレス部品に組み付けることが一般的に行われている。
【0003】
ところで、上述の如きプレス部品は、締結部材の軸部を挿通させる通し孔を介して水等の流体が漏れないように締結部材の頭部とプレス部品との間におけるシール性を要求される場合がある。
【0004】
これに対応するために、プレス部品に締結部材を溶着させた後、例えば、特許文献1の如きシール性検査装置を用いてプレス部品と締結部材との間においてシール性が確保されているか否かを検査することが考えられる。特許文献1の装置は、被検査体を載置する載置台を備え、該載置台には、上方に開口する検査空間が形成されている。該検査空間には、圧力調整手段と圧力測定手段とが接続され、検査空間の圧力を調整可能であるとともに検査空間の圧力を測定可能になっている。そして、被検査体を載置台に載置して被検査体の検査領域によって検査空間の上方開口を塞ぐ状態にし、且つ、圧力調整手段によって検査空間に予め決められた所定の圧力が加わるようにするとともに圧力測定手段で検査空間の圧力を所定時間測定して測定値が変化するか否かを観察することにより、被検査体における検査領域から流体漏れが発生しているか否かを検査するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平10-232180号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1の検査装置の場合、例えば、複雑な3次元形状のプレス部品において溶着させた締結部材が離れた位置に複数設けられているような場合には、検査のたびに検査領域が検査装置の検査空間に対応するようにプレス部品を載置台に載置し直す必要があるので、測定に時間が掛かり、製造ラインにおける生産性を低下させてしまうおそれがある。
【0007】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、複数個所の検査領域のシール性を簡単に、且つ、短時間で検査可能なシール性検査具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明は、被検査体の検査領域を囲うとともにその囲った空間を簡単な機構で負圧にして囲った空間の負圧状態が維持されるか否かで検査領域のシール性を評価するようにしたことを特徴とする。
【0009】
具体的には、被検査体における検査領域のシール性を検査可能なシール性検査具において、次のような解決手段を講じた。
【0010】
すなわち、第1の発明では、先端開口周縁に沿って延びる環状をなす第1可撓部を有する筒体と、該筒体内方に筒中心線に沿ってスライド可能に嵌挿され、先端に上記筒体内周面に摺接可能で、且つ、当該筒体内周面との隙間を埋める第2可撓部を有するスライド棒と、該スライド棒をその基端側に上記筒体の筒中心線に沿って付勢する第1付勢部材とを備え、上記検査領域を囲うように上記第1可撓部を上記被検査体に押し付けた状態で上記第1付勢部材の付勢力により上記スライド棒を基端側にスライドさせて上記検査領域に面する上記筒体内方を負圧にするよう構成されていることを特徴とする。
【0011】
第2の発明では、第1の発明において、上記被検査体は、締結部材の軸部を通し孔に挿通させるとともに当該通し孔周りに上記締結部材の頭部を溶着させたプレス部品であり、上記スライド棒の棒中心線上には、当該スライド棒の先端に開口する収容凹部が形成され、該収容凹部は、上記第1可撓部を上記被検査体に押し付けた際、上記締結部材の軸部を収容可能に構成されていることを特徴とする。
【0012】
第3の発明では、第2の発明において、上記筒体の先端側内径は、上記締結部材の頭部の外径より大きい寸法に設定されていることを特徴とする。
【0013】
第4の発明では、第1から第3のいずれか1つの発明において、上記スライド棒を上記第1付勢部材の付勢力に抗して先端側にスライドさせた状態で筒体の所定の位置に位置決めする位置決め手段と、該位置決め手段による上記筒体に対する上記スライド棒の位置決め状態を解除操作可能な操作手段とを備えていることを特徴とする。
【0014】
第5の発明では、第4の発明において、上記位置決め手段は、上記筒体の側壁に形成された筒中心線と直交する方向に延びて上記筒体内部に連通する連通孔と、上記スライド棒に形成され、棒中心線と直交する方向に延びて外周面に開口するガイド穴と、該ガイド穴に案内されるとともに先端側を上記連通孔に挿入可能な係合ピンと、当該係合ピンの先端側が上記ガイド穴の開口からはみ出す位置まで上記係合ピンを上記ガイド穴の開口側に付勢可能な第2付勢部材とを備え、上記操作手段は、上記連通孔にスライド可能に嵌挿され、一方にスライドした状態で一端側が上記筒体の外周面からはみ出る状態になる一方、他方にスライドさせると他端が上記連通孔における上記筒体内部に連通する位置まで到達する寸法に設定された操作棒であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
第1の発明では、筒体の第1可撓部を検査領域に押し付けると、第1可撓部が撓んで筒体先端と被検査体との間に隙間が無くなり、検査領域に面する筒体内方がスライド棒先端との間で密閉空間になる。したがって、筒体の第1可撓部を検査領域に押し付けた状態で第1付勢部材の付勢力によりスライド棒をその基端側にスライドさせると、検査領域に面する筒体内方が負圧になる。すると、シール性検査具が被検査体に吸着した状態になり、もし仮に、検査領域において流体漏れが発生していると、時間の経過とともに検査領域に面する筒体内方の負圧状態が解除され、シール性検査具が被検査体から外れるので、流体漏れの発生を確認することができる。このように、本発明のシール性検査具は、検査領域が複数個所あっても、特許文献1のように各検査領域の検査のたびに被検査体を載置台に載置し直すといった作業をする必要が無いので、各検査領域のシール性を簡単に、且つ、短時間で検査することができる。
【0016】
第2の発明では、プレス部品における締結部材が溶着された箇所のシール性を検査する際、締結部材の軸部を収容凹部に収容した状態で第1可撓部を検査領域に押し付けることができるようになる。したがって、検査具を筒体の筒中心線方向にコンパクトな形状にすることができるので、シール性検査具を作業者の扱い易いものにすることができる。
【0017】
第3の発明では、検査を行う際、プレス部品に溶着された締結部材の頭部を筒体の内側に収容した状態で筒体の先端を検査領域に押し付けることができるようになるので、プレス部品における締結部材が溶着された箇所のシール性検査の仕方の選択肢が増え、使い勝手の良い検査具にすることができる。
【0018】
第4の発明では、検査を行う際、位置決め手段によりスライド棒を検査開始待機状態に維持することができるので、筒体先端を被検査体に押し付ける作業が簡単になる。筒体先端を被検査体に押し付けた後、位置決め手段による位置決め状態を操作手段によって解除すると、第1付勢部材の付勢力によってスライド棒がその基端側にスライドして検査領域に面する筒体内方が負圧になる。このように、検査の際の検査具の操作が簡易なものになり、本発明の検査具を使用した検査において作業者にかかる負荷を減らすことができる。
【0019】
第5の発明では、スライド棒を第1付勢部材の付勢力に抗してその先端側にスライドさせると、筒体の側壁に形成された連通孔とスライド棒に形成されたガイド穴とが一致するので、第2付勢部材の付勢力により係合ピンがガイド穴に案内されて係合ピンの先端側が連通孔に入り込むようになる。したがって、係合ピンの先端側が連通孔内周面に係合して筒体に対するスライド棒の位置が決まるので、スライド棒を簡単に検査開始待機状態に維持することができる。また、操作棒における筒体外周面からはみ出す一方側部分を操作棒の他方側に押圧すると、操作棒が第2付勢部材の付勢力に抗して係合ピンを押圧して連通孔から押し出す。すると、係合ピンの連通孔内周面との係合状態が解除されてスライド棒が第1付勢部材の付勢力によってスライド棒の基端側にスライドするようになる。このように、検査時における作業者の行う操作を簡易なものにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施形態1に係るシール性検査具の概略断面図である。
図2図1の後、シール性検査を行う直前の状態を示す図である。
図3図2の後、シール性検査を行っている状態を示す図である。
図4】本発明の実施形態2の図1相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎない。
【0022】
《本発明の実施形態1》
図1は、本発明の実施形態1に係るシール性検査具1を示す。該シール性検査具1は、例えば、自動車製造ラインにおいて組み立てる組立部品10(被検査体)の所定の領域(以下、検査領域R1と呼ぶ)のシール性を検査するものであり、先端寄りの外周面がテーパ形状をなす円筒体2と、円筒体2の内方に筒中心線C1に沿ってスライド可能に先端側が嵌挿されたスライド棒3と、該スライド棒3の基端側に巻装された第1コイルバネ4(第1付勢部材)とを備えている。
【0023】
本発明の実施形態1に係る組立部品10は、ウェルドボルト11(締結部材)の軸部11aを通し孔12aに挿通させるとともに、当該通し孔12a周りにウェルドボルト11の頭部11bをプロジェクション溶接により溶着させたプレス部品12であり、該プレス部品12には、複数のウェルドボルト11が溶着されている。
【0024】
各ウェルドボルト11における頭部11bの裏面には、軸部11a周りに環状に延びるシール部11cが設けられ、該シール部11cがプレス部品12の通し孔12a周りに接触することにより、プレス部品12における通し孔12aを介した水等の流体漏れを発生させないような構造になっている。
【0025】
尚、本発明の実施形態1の検査領域R1は、プレス部品12における通し孔12aを含む領域とする。
【0026】
円筒体2の先端には、当該先端開口周縁に沿って延びる環状のゴム製第1可撓部2aが設けられ、該第1可撓部2aは、蛇腹形状をなしている。
【0027】
また、円筒体2の側壁2bにおける基端寄りの位置には、筒中心線C1と直交する方向にのびて円筒体2の内部に連通する連通孔2cが設けられ、該連通孔2cの内径は、側壁2bの内周面側よりも外周面側の方が小さくなっている。
【0028】
スライド棒3は、棒中心線C2が筒中心線C1に一致する棒状をなすスライド本体3aを備えている。
【0029】
該スライド本体3aにおける先端側略半分の棒中心線C2上には、当該スライド本体3aの先端に開口する収容凹部3bが形成され、該収容凹部3bの底面は、テーパ状をなしている。
【0030】
収容凹部3bの内径は、ウェルドボルト11の軸部11aの外径に対応しており、収容凹部3bは、ウェルドボルト11の軸部11aを収容可能になっている。
【0031】
スライド本体3aの先端には、収容凹部3bの開口周縁に沿って延びる環状をなすゴム製第2可撓部3cが設けられ、該第2可撓部3cは、円筒体2の内周面に摺接可能で、且つ、円筒体2の内周面との隙間を埋めるようになっている。
【0032】
また、スライド棒3の中途部には、棒中心線C2と直交する方向に延びて外周面に開口するガイド穴3dが形成されている。
【0033】
さらに、スライド棒3の基端寄りの位置には、棒中心線C2周りに環状に延びるリング部材3eが取り付けられている。
【0034】
第1コイルバネ4は、一端が円筒体2の基端側開口周縁に当接する一方、他端がリング部材3eに当接していて、スライド棒3をその基端側に円筒体2の筒中心線C1に沿って付勢するようになっている。
【0035】
スライド本体3aのガイド穴3dには、当該ガイド穴3dに案内されるとともに先端側を連通孔2cに挿入可能な略銃弾形状をなす係合ピン5と、該係合ピン5をガイド穴3dの開口側に付勢する第2コイルバネ6(第2付勢部材)とが収容され、該第2コイルバネ6は、係合ピン5の先端側がガイド穴3dの開口からはみ出す位置まで係合ピン5をガイド穴3dの開口側に付勢可能になっている。
【0036】
すなわち、係合ピン5及び第2コイルバネ6は、本発明の位置決め手段8を構成しており、スライド棒3を第1コイルバネ4の付勢力に抗してスライドさせると、スライド棒3のガイド穴3dが円筒体2の連通孔2cに対応する位置になったときに第2コイルバネ6に付勢される係合ピン5がガイド穴3dに案内されながら係合ピン5の先端側が連通孔2cに挿入されて連通孔2cの内周面に係合することにより、スライド棒3が円筒体2に対して位置決めされるようになっている。
【0037】
円筒体2の連通孔2cには、操作棒7がスライド可能に嵌挿され、該操作棒7は、一端から中途部までの外径が連通孔2cにおける側壁2bの外周面側の内径に対応する一方、他端側の外径が連通孔2cにおける側壁2bの内周面側の内径に対応している。
【0038】
操作棒7は、一方にスライドした状態で一端側が円筒体2の外周面からはみ出る状態になる一方、他方にスライドさせると他端が連通孔2cにおける円筒体2の内部に連通する位置まで到達する寸法に設定されている。
【0039】
操作棒7は、本発明の操作手段を構成しており、位置決め手段8によってスライド棒3が円筒体2に対して位置決めされている際、操作棒7における円筒体2の外周面からはみ出す一方側部分を押圧して操作棒7の他方側にスライドさせると、操作棒7が第2コイルバネ6の付勢力に抗して係合ピン5を押圧して連通孔2cから押し出すようになっていて、これにより、係合ピン5の連通孔2c内周面との係合状態が解除されてスライド棒3が第1コイルバネ4の付勢力によりその基端側にスライドするようになっている。
【0040】
つまり、操作棒7は、位置決め手段8によるスライド棒3の位置決め状態を解除操作可能になっている。
【0041】
そして、プレス部品12における検査領域R1のシール性を検査する際、図1乃至図3に示すように、ウェルドボルト11の軸部11aがスライド棒3の収容凹部3bに収容されるように、且つ、検査領域R1を囲うように第1可撓部2aをプレス部品12に押し付けた状態で第1コイルバネ4の付勢力によりスライド棒3を基端側にスライドさせて検査領域R1に面する円筒体2の内方を負圧にするよう構成されている。
【0042】
次に、本発明の実施形態1のシール性検査具1を用いたプレス部品12における検査領域R1の検査について詳述する。
【0043】
まず、作業者は、図1に示すように、円筒体2に対してスライド棒3をその先端側に第1コイルバネ4の付勢力に抗してスライドさせる。すると、円筒体2の側壁2bに形成された連通孔2cとスライド棒3に形成されたガイド穴3dとが一致したときに、第2コイルバネ6の付勢力により係合ピン5がガイド穴3dに案内されて係合ピン5の先端側が連通孔2cに入り込むので、係合ピン5の先端側が連通孔2cの内周面に係合して円筒体2に対するスライド棒3の位置が決まる。このように、作業者は、係合ピン5及び第2コイルバネ6からなる位置決め手段8により、シール性検査具1におけるスライド棒3を簡単に検査開始待機状態P1に維持することができる。
【0044】
次に、作業者は、円筒体2の第1可撓部2aを検査領域R1に押し付ける。このとき、スライド棒3の収容凹部3bにウェルドボルト11の軸部11aが収容されるようにする。このように、本発明の実施形態1に係るシール性検査具1は、プレス部品12におけるウェルドボルト11が溶着された箇所のシール性を検査する際、ウェルドボルト11の軸部11aを収容凹部3bに収容した状態で第1可撓部2aを検査領域R1に押し付けることができるので、シール性検査具1を円筒体2の筒中心線C1方向にコンパクトな形状にすることができ、シール性検査具1を作業者の扱い易いものにすることができる。
【0045】
円筒体2の第1可撓部2aを検査領域R1に押し付けると、図2に示すように、第1可撓部2aが撓んで円筒体2の先端とプレス部品12との間に隙間が無くなり、検査領域R1に面する円筒体2の内方がスライド棒3の先端との間で密閉空間S1になる。円筒体2の第1可撓部2aを検査領域R1に押し付ける際、位置決め手段8によりスライド棒3を検査開始待機状態P1に維持しているので、作業者は、円筒体2の先端をプレス部品12に押し付ける作業を簡単に行うことができる。
【0046】
しかる後、作業者は、操作棒7における円筒体2の外周面からはみ出す一方側部分を操作棒7の他方側に押圧する。すると、図3に示すように、操作棒7が第2コイルバネ6の付勢力に抗して係合ピン5を押圧して連通孔2cから押し出すので、係合ピン5の連通孔2c内周面との係合状態が解除される。
【0047】
すなわち、円筒体2の第1可撓部2aを検査領域R1に押し付けた状態で操作棒7によって係合ピン5及び第2コイルバネ6による円筒体2に対するスライド棒3の位置決め状態を解除すると、第1コイルバネ4の付勢力によってスライド棒3がその基端側にスライドして検査領域R1に面する円筒体2の内方が負圧になる。すると、シール性検査具1がプレス部品12に吸着した状態になり、もし仮に、検査領域R1において流体漏れが発生していると、時間の経過とともに検査領域R1に面する円筒体2の内方の負圧状態が解除され、シール性検査具1がプレス部品12から外れるので、流体漏れの発生を確認することができる。
【0048】
このように、検査の際のシール性検査具1の操作が簡易なものになり、シール性検査具1を使用した検査において作業者にかかる負荷を減らすことができる。
【0049】
以上より、本発明の実施形態1に係るシール性検査具1は、検査領域R1が複数あっても、特許文献1のように各検査領域の検査のたびに被検査体を載置台に載置し直すといった作業をする必要が無いので、各検査領域R1のシール性を簡単に、且つ、短時間で検査することができる。
【0050】
《発明の実施形態2》
図4は、本発明の実施形態2のシール性検査具1を示す。この実施形態2は、円筒体2の一部構造とスライド棒3の一部構造とが実施形態1と異なっている以外は実施形態1と同様であるので、実施形態1と同様の部分には同じ符号を付し、その他、異なる部分のみを説明する。
【0051】
実施形態2の円筒体2の先端側内径は、ウェルドボルト11の頭部11bの外径より大きい寸法に設定されている。
【0052】
実施形態2のスライド棒3における収容凹部3bの底面は、平坦になっている。また、実施形態2のスライド棒3の基端側の外径は、スライド棒3の先端から中途部に亘る部分の外径より小さい形状をなしている。
【0053】
そして、実施形態2に係るシール性検査具1は、円筒体2の先端側内径がウェルドボルト11の頭部11bの外径より大きい寸法に設定されているので、プレス部品12に溶着されたウェルドボルト11の頭部11bを円筒体2の内側に収容した状態で円筒体2の先端を検査領域R1に押し付けることができるようになっている。
【0054】
このように、本発明の実施形態2のシール性検査具1は、プレス部品12に溶着されたウェルドボルト11の軸部11a側から検査が可能なだけでなく、プレス部品12に溶着されたウェルドボルト11の頭部11b側からも検査が可能になるので、プレス部品12におけるウェルドボルト11が溶着された箇所のシール性検査の仕方の選択肢が増え、使い勝手の良いシール性検査具1にすることができる。
【0055】
尚、本発明の実施形態1,2では、第1可撓部2a及び第2可撓部3cをゴム材で形成したが、可撓性を有するのであればその他の材料で形成したものであってもよく、例えば、樹脂材で形成したものであってもよい。
【0056】
また、本発明の実施形態1,2では、スライド棒3を付勢する付勢部材として第1コイルバネ4を用いており、係合ピン5を付勢する付勢部材として第2コイルバネ6を用いているが、その他の付勢部材で付勢するようにしてもよく、例えば、弾性力の大きいゴム材からなるようなもので付勢するようにしてもよいし、その他の種類のバネを用いてもよい。
【0057】
尚、本発明の実施形態1,2では、プレス部品12に対してウェルドボルト11を溶着した箇所のシール性を検査するためにシール性検査具1を用いたが、本発明のシール性検査具1は、その他の構造物等のシール性を検査する場合にも使用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、例えば、自動車製造ライン等で組み立てる組立部品の所定領域におけるシール性を検査するシール性検査具に適している。
【符号の説明】
【0059】
1 シール性検査具
2 円筒体
2a 第1可撓部
2b 側壁
2c 連通孔
3 スライド棒
3b 収容凹部
3c 第2可撓部
3d ガイド穴
4 第1コイルバネ(第1付勢部材)
5 係合ピン
6 第2コイルバネ(第2付勢部材)
7 操作棒(操作手段)
8 位置決め手段
10 組立部品(被検査体)
11 ウェルドボルト(締結部材)
11a 軸部
11b 頭部
12 プレス部品
12a 通し孔
C1 筒中心線
C2 棒中心線
R1 検査領域
図1
図2
図3
図4