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特許7448158相転移材料として使用するための金属硝酸塩系組成物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】相転移材料として使用するための金属硝酸塩系組成物
(51)【国際特許分類】
   C09K 5/06 20060101AFI20240305BHJP
   F28D 20/02 20060101ALN20240305BHJP
【FI】
C09K5/06 Z
F28D20/02 D
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021515013
(86)(22)【出願日】2019-10-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-11
(86)【国際出願番号】 GB2019052851
(87)【国際公開番号】W WO2020074883
(87)【国際公開日】2020-04-16
【審査請求日】2022-10-07
(31)【優先権主張番号】1816380.8
(32)【優先日】2018-10-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】518455088
【氏名又は名称】サンアンプ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ビッセル、アンドリュー ジョン
(72)【発明者】
【氏名】オリヴァー、デイヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】プラム、コリン リチャード
(72)【発明者】
【氏名】ゴダード、エミリー ジェーン
(72)【発明者】
【氏名】オドリング、ギレン
(72)【発明者】
【氏名】フィッシャー、ケイト
【審査官】中野 孝一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0284970(US,A1)
【文献】特開昭51-126980(JP,A)
【文献】特開2000-026847(JP,A)
【文献】特表2005-533142(JP,A)
【文献】特開平07-026250(JP,A)
【文献】特表2005-524755(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硝酸カルシウム四水和物と、
核生成剤と
から構成されるPCMであって、
前記核生成剤は、
硝酸マグネシウム、または、その任意の水和物形態、および、
硝酸ストロンチウム、または、その任意の水和物形態、
の組み合わせから構成される混合物である、PCM。
【請求項2】
前記核生成剤は硝酸マグネシウム六水和物および硝酸ストロンチウム(無水)である、請求項1に記載のPCM。
【請求項3】
前記PCMは、選択された各成分の個々より低い融解温度を有する、請求項1又は2に記載のPCM。
【請求項4】
選択された金属硝酸塩および/またはその水和物の量を変更することによって、前記PCMの融点を、ある範囲内の値である特定の温度に調整可能である、請求項1から3のいずれか一項に記載のPCM。
【請求項5】
前記PCMは、共晶混合物である、請求項1から4のいずれか一項に記載のPCM。
【請求項6】
前記PCMは、三成分共晶混合物である、請求項1から5のいずれか一項に記載のPCM。
【請求項7】
前記PCMは、
99.2重量パーセントの硝酸カルシウム四水和物、0.4重量パーセントの硝酸ストロンチウム四水和物、および、0.4重量パーセントの硝酸マグネシウム六水和物、または、
99.4重量パーセントの硝酸カルシウム四水和物、0.3重量パーセントの硝酸ストロンチウム、および、0.3重量パーセントの硝酸マグネシウム二水和
ら構成される、請求項1から6のいずれか一項に記載のPCM。
【請求項8】
前記核生成剤は、前記PCMの少なくとも0.1重量パーセント存在する、請求項1からのいずれか一項に記載のPCM。
【請求項9】
請求項1からのいずれか一項に記載のPCMを調製する方法であって、
硝酸カルシウム四水和物の混合物と、
核生成剤と
を提供する段階であって、前記核生成剤は、
硝酸マグネシウム、または、その任意の水和物形態、および、
硝酸ストロンチウム、または、その任意の水和物形態、
の組み合わせから構成される混合物である、段階と、
前記混合物を、
硝酸マグネシウム、または、その任意の水和物形態、および、
硝酸ストロンチウム、または、その任意の水和物形態
うち1または複数の融解転移温度より高い温度に加熱し、撹拌して、単一の流し込み可能な液体を形成する段階と
を備えるPCM調製方法。
【請求項10】
無水金属硝酸塩、および/または、最終的な前記PCMの組成物において所望される数より少ない水和数を有する金属硝酸塩水和物が、ある量の水を追加されて、1または複数の種類の金属硝酸塩水和物の代わりに使用され、最終的な前記PCMの組成物が提供される、請求項に記載のPCM調製方法。
【請求項11】
前記PCMの組成物において所望される数より多くの水和数を有する金属硝酸塩水和物が使用され、余分な水が1または複数の種類の無水金属硝酸塩、および/または、より少ない水和数を有する金属硝酸塩水和物によって除去されるか、または飽和され、最終的な前記PCMの組成物が提供される、請求項または10に記載のPCM調製方法。
【請求項12】
金属硝酸塩溶液が使用され、余分な水が、1または複数の種類の無水金属硝酸塩、および/または、より少ない水和数を有する金属硝酸塩水和物で除去または飽和され、最終的な前記PCMの組成物が提供される、
請求項から11のいずれか一項に記載のPCM調製方法。
【請求項13】
硝酸マグネシウム、または、その任意の水和物形態、および、
硝酸ストロンチウム、または、その任意の水和物形態
、反応によって合成または生成される、請求項から12のいずれか一項に記載のPCM調製方法。
【請求項14】
前記PCMは、特定の組成物を実現するための正確な量の水の存在下で、対応する塩基性金属塩による硝酸の中和によって形成される、請求項から13のいずれか一項に記載のPCM調製方法。
【請求項15】
前記PCMは、余分な水の存在下で、対応する金属塩基による硝酸の中和によって形成され、前記余分な水は次に、1または複数の種類の無水金属硝酸塩、および/または、より少ない水和数を有する金属硝酸塩水和物で除去または飽和され、最終的な前記PCMの組成物が提供される、請求項から14のいずれか一項に記載のPCM調製方法。
【請求項16】
硝酸塩以外の任意のアニオンが、イオン交換、または、適切な金属塩を用いた沈殿およびその後に続く物理的分離によって除去される、請求項から15のいずれか一項に記載のPCM調製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、相転移材料(PCM)である金属硝酸塩水和物に関する。より具体的には、本発明は、過冷却を克服するための添加剤を有する、PCMである金属硝酸塩水和物に関する。
【背景技術】
【0002】
潜熱蓄熱は、熱エネルギーを貯蔵するため、第1種相転移(固体から固体、固体から液体、液体から気体)を使用する。最初の加熱により、材料は顕熱蓄熱(熱が吸収されるにつれて、材料の比熱容量にしたがって温度上昇すること)を示す。次に、熱エネルギーが吸収されるとき、特定の時点において相転移が生じるので、温度は一定の状態のままである。相転移が生じると、新しい相で顕熱蓄熱が生じるので、温度は再び上昇する。同様、またはより大きな量の熱を、はるかに小さい温度範囲において、より小さい体積に貯蔵することができるという点で、顕熱蓄熱より優れている。
【0003】
転移熱が大きい材料はいずれも、潜熱蓄熱のために使用できるが、技術および実用性に起因して、特定のシステムは他より運用に適している。固体から固体の相転移は比較的稀であり、液体から気体の相転移は、大きい体積変化を伴うので、大きい技術的な問題が存在する。蓄熱に利用されるPCMの大半は、固体から液体の遷移を示す。固体は融解しながら熱を貯蔵する(融解潜熱(ΔH))。液体が凝固するとき、貯蔵された熱を解放する。
【0004】
この分野において、金属硝酸塩水和物は、利用され得るPCMの類である。それらは一般に、費用が低く、多くの場合、非毒性であり、典型的には、大きい融解潜熱を示す。しかしながら、その応用のためには、克服する必要がある問題が存在する。塩水和物について典型的であるが、金属硝酸塩水和物は過冷却を示す。融点より低い温度においても、自発的に結晶化することなく、材料が液体状態を維持し得る減少である。溶液は準安定の状態で動力学的に捕らえられたままとなる。しかしながら、核生成中心の導入によって結晶化が達成され得る。
【0005】
核生成とは、分子、原子、またはイオンが連続的な高次構造に自らを配置するにつれて、固相の形成をもたらす開始プロセスである。最初の核生成中心は、固体/液体の境界にある溶解または融解された材料が配置されることができ、したがって結晶が成長する場所を提供する。核生成プロセスは、バルク液体において、または、特定の表面上のいずれかで生じることができる。
【0006】
核生成中心は、意図的に導入できる。ある形状の結晶子の追加(シーディングとしても知られている)は、核生成場所を提供し、いくつかの場合において、形成する結晶の晶癖に影響を及ぼすことができる。核生成中心はまた、超音波処理などの物理的プロセスから形成されることができる。特定の界面化学または形態を有する、当の材料以外の特定の剤(典型的には核生成剤と称される)も核生成を誘導し得る。
【0007】
しかしながら、多くの金属硝酸塩水和物では、過冷却の問題が対処され得る核生成剤は知られていない。更に、そのような材料の結晶化は、ゆっくり進み得るので、熱のパワーの出力(結晶化プロセスからの放熱の速度)が制限される。
【0008】
核生成剤は主として、過冷却の抑制を提供する材料に固有であり、いくつかの場合、同様の化学、格子構造、および、より高い融点を有する別の結晶材料において、剤を見つけることができる。
【0009】
別の問題は、金属硝酸塩水和物によって示される、異なる融解および結晶化温度の範囲である。これは範囲が幅広く、特定の用途には不適当な温度であり得る。
【0010】
本発明の少なくとも1つの態様の目的は、前述の問題の少なくとも1または複数を回避または緩和することである。
【0011】
本発明のさらなる目的は、示される過冷却が最低限である、または無い、改善されたPCMを提供することである。
【0012】
本発明のさらなる目的は、固体の形態と液体の形態との間で確実に熱サイクルを繰り返し得るPCMを提供することである。
【0013】
本発明のさらなる目的は、結晶化速度が非限定的な例として撹拌または超音波の適用などの物理的手段によって増加される、固体の形態と液体の形態との間で確実に熱サイクルを繰り返し得るPCMを提供することである。
【0014】
本発明のさらなる目的は、融解および結晶化の遷移の温度が降下もしくは調整された、または、1つより多くの金属硝酸塩および/または金属硝酸塩水和物成分の混合、または、融点降下効果を有する別の化合物の追加によって選択可能であるPCMを提供することである。
【発明の概要】
【0015】
本発明は、金属硝酸塩およびその水和物と、他の金属硝酸塩水和物および/または金属硝酸塩との組み合わせのPCMとしての使用に関する。これらの材料は、安価である可能性が高く、典型的には一致融解するという、良好なPCMの2つの重要な性質を有する。
【0016】
本発明はまた、相転移材料(PCM)である金属硝酸塩水和物に関する。下でより詳細に説明されるように、第2族金属硝酸塩を含む金属硝酸塩水和物PCMは、核生成剤として機能し得る。
【0017】
本発明は特に、金属硝酸塩PCMの核生成を誘導するように共に作用する、PCM調製物における複数の化学的シードの組み合わせに関する。
【0018】
本発明はまた、金属硝酸塩水和物系PCMの核生成および結晶化速度が増加される物理的機構に関する。
【0019】
本発明の第1態様によれば、過冷却を低減する、または無くすために金属硝酸塩水和物系PCMが改善されたPCM組成物が提供される。
【0020】
これらの理由から、本発明において説明される金属硝酸塩水和物系PCMは、異なる業界において、幅広い様々な応用の可能性を有する。非限定的な例として、開示されるPCMは、建物における温度制御または熱バッファのために使用され得る。また、それらは、水または他の流体を加熱するために、または、高温の材料を有害でない温度に急速に冷却することが達成され得る方法として使用され得る。本明細書に開示されるPCMの一部は、室温より低い融解転移を示し、従って、プロセス冷却、冷蔵、および、空調の応用に使用され得る。本明細書に説明されるように、硝酸塩系PCMの相転移温度が降下および調整され得る可能性に起因して、安価で効率的な低い温度のヒートポンプを使用するPCMの充熱を達成できる。従って、本発明は、低排出、低費用の加熱および冷却溶液を供給するための主な候補である。
【0021】
しかしながら、金属硝酸塩型PCMの有効な応用のために、過冷却の問題を克服する必要がある。
【0022】
金属硝酸塩型PCMは、当の金属硝酸塩水和物の結晶により、自己核生成し得ることが分かった。例えば、硝酸カルシウム四水和物の結晶は、シーディングとして知られるプロセスにおいて、硝酸カルシウム四水和物系PCMのための核生成剤として使用され得る。これにより、過冷却が回避されることが分かったが、この方法は、融解転移後に毎回シーディングを必要とする。材料が再充熱されるときにシード結晶も融解するからである。代替的に、固体の硝酸カルシウム四水和物の全体が融解されず、従って、常にシード結晶が存在するようにすることも可能であるが、この方法は信頼性が低く、欠陥のある設計につながり得る。
【0023】
シーディングによる核生成が生じ得る幅広い範囲のシナリオがある。くぼみ(例えば機械加工溝)を有するディスクなどの薄い金属プレートが、上記くぼみ(例えば溝)において高圧下でシード結晶を保持することによって、過冷却された融解物における結晶化を開始するために使用され得ることが本明細書において開示される。上記結晶を排出することにより、核生成点が生成され、バルク材料の結晶化が進行し得る。このプロセスは、繰り返される充熱‐放熱サイクルに対して実行でき、それにより、完全にサイクル可能なPCMシステムが達成されることが開示される。
【0024】
本発明はまた、異種の核生成剤の追加によって、過冷却を克服する方法に関する。
【0025】
本発明におけるさらなる開示は、核生成剤として使用され得る、第2族硝酸塩水和物、および、第2族硝酸塩の組み合わせである。本明細書において、金属硝酸塩水和物系PCMのための効果的核生成剤である、硝酸ストロンチウム、硝酸マグネシウム、または硝酸バリウムなどの材料が開示される。
【0026】
本発明はまた、撹拌、再循環、ポンピング、超音波処理、またはそれらの組み合わせなど、1または複数の金属硝酸塩水和物に基づくPCM系の結晶化速度が増加され得る物理的手段を含む。これらの方法は、成長する結晶子を破壊して、より多くの小さい結晶子にして、更なる結晶成長のためにより大きい表面積を提供するために、および、そのような粒子をPCM全体に分散させるために使用される。
【0027】
本発明の好ましい実施形態は、添加剤である硝酸ストロンチウムおよび/または硝酸マグネシウムを有する硝酸カルシウム四水和物を含む組成物、または、それぞれの水和物のいずれかであり、これらにより、最低限の過冷却を示す完全にサイクル可能なPCMを取得できる。実施形態の拡張では、ストロンチウムを、化学的に非常に類似しているバリウムと置換する。
【0028】
本発明はまた、金属硝酸塩水和物に基づく幅広い範囲のPCMに関し、PCM系の融解転移温度は、少なくとも1種類の他の金属硝酸塩またはその水和物の追加によって調整される。それにより、動作温度範囲が必要に応じて変更され得る様々な異なるPCMが開示される。本発明の一部であるさらなる開示は、本発明の一部として開示された核生成剤を用いた、そのような融点降下PCMの効果的な核生成である。
【0029】
本発明の第2態様によれば、相転移材料(PCM)である金属硝酸塩または金属硝酸塩水和物と、第2族金属硝酸塩または金属硝酸塩水和物に基づく核生成剤との使用が提供される。
【0030】
核生成は、過冷却を克服するために、シーディングプロセス(すなわち、PCMの成分と同一の化学的同一性を有する結晶の追加)によって達成され得る。 核生成剤は、1種類より多くの別のカチオンを有する硝酸塩であり得る。
【0031】
核生成剤は、1または複数の種類の第2族金属硝酸塩および/または金属硝酸塩水和物から構成され得る。
【0032】
PCMは、融解プロセス中に高圧(例えば大気圧より上)に維持される核生成剤で核生成され得る。
【0033】
核生成剤は、金属サンプルの表面上の裂け目において高圧の領域にあることによって、その融点より上で固体に維持されたPCMの1または複数の種類の成分の結晶であり得る。
【0034】
金属サンプルは例えば、核生成剤をバルクPCMに放出するように屈曲され得る機械加工溝を有する薄い金属ディスクであり得る。
【0035】
核生成剤は、硝酸マグネシウムなどの第2族金属硝酸塩、またはその任意の水和物形態から構成され得る。
【0036】
核生成剤は、硝酸ストロンチウムなどの第2族金属硝酸塩、またはその任意の水和物形態から構成され得る。
【0037】
核生成剤は、硝酸カルシウムなどの第2族金属硝酸塩、または、その任意の水和物形態から構成され得る。
【0038】
核生成剤は、硝酸バリウムなどの第2族金属硝酸塩、または、その任意の水和物形態から構成され得る。
【0039】
核生成剤は、2種類以上の第2族金属硝酸塩の組み合わせであり得、その無水物および水和物形態の任意の組み合わせを含む。
【0040】
核生成剤は、硝酸ストロンチウムおよび硝酸マグネシウム、または、その任意の水和物形態の組み合わせであり得る。
【0041】
核生成剤は、硝酸カルシウムおよび硝酸マグネシウム、または、その任意の水和物形態の組み合わせであり得る。
【0042】
核生成剤は、硝酸マグネシウムおよび硝酸バリウム、または、その任意の水和物形態の組み合わせであり得る。
【0043】
核生成剤は、硝酸ストロンチウムおよび硝酸バリウム、または、その任意の水和物形態の組み合わせであり得る。
【0044】
核生成剤は、硝酸ストロンチウム、硝酸バリウム、および硝酸マグネシウム、または、それらの任意の水和物形態の組み合わせであり得る。
【0045】
核生成剤ABは、バルクPCMにおいて、溶解限度より上の濃度で存在する。
【0046】
核生成剤は、重量パーセントで少なくともPCMの約5%、約1%、または、約0.1%存在し得る。
【0047】
本発明の第3態様によれば、硝酸リチウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸カルシウム、硝酸バリウム、硝酸スカンジウム、硝酸亜鉛、硝酸銅、硝酸鉄、硝酸マンガン、硝酸クロム、硝酸ストロンチウム、硝酸銀、硝酸イットリウム、硝酸ジルコニウム、硝酸チタン、任意の硝酸ランタニド金属、硝酸アンモニウム、硝酸アルミニウム、硝酸ビスマス、硝酸ガリウム、硝酸マグネシウム、硝酸鉛から構成される一覧のうちのいずれか1種類、または、それらの組み合わせから選択される少なくとも1種類の金属硝酸塩水和物、および/または、それらから形成される任意の水和物、ならびに、本明細書で定義されるいずれかによる核生成剤から構成されるPCMが提供される。
【0048】
核生成剤以外のPCMは1種類より多くの金属硝酸塩および/または金属硝酸塩水和物の混合物であり得る。 PCMは、各選択された成分の個々より低い融解温度を有し得る。
【0049】
典型的には、選択された金属硝酸塩および/またはその水和物の量を変更することによって、PCMの融点は、ある範囲内の値である特定の温度に調整されることが可能である。 PCMは、選択された成分の共晶混合物であり得る。PCMは、選択された成分の二成分、三成分または四成分共晶混合物であり得る。
【0050】
上記PCMは、約98~99.6重量パーセントの少なくとも1種類の金属硝酸塩水和物と、約0.2~1重量パーセントの硝酸ストロンチウムまたはその任意の水和物と、約0.2~1重量パーセントの硝酸マグネシウムまたはその任意の水和物から構成され得る。
【0051】
上記PCMは、約0~99.8重量パーセントの硝酸カルシウム四水和物、約0~1重量パーセントの硝酸ストロンチウム四水和物、約0~1重量パーセントの硝酸マグネシウム六水和物、約0~1重量パーセントの硝酸バリウム、約0~99.8重量パーセントの硝酸リチウム三水和物、約0~50重量パーセントの硝酸マンガン四水和物、約0~99.8重量パーセントの硝酸マンガン六水和物、約0~99.8重量パーセントの硝酸亜鉛六水和物、約0~99.8重量パーセントの硝酸銅六水和物、約0~40重量パーセントの硝酸銅三水和物、約0~40重量パーセントの硝酸銅ヘミ五水和物、約0~99.8重量パーセントの硝酸鉄九水和物、約0~10重量パーセントの硝酸ナトリウム、および、約0~30重量パーセントの硝酸カリウムから構成され得る。
【0052】
PCMは、約99.2重量パーセントの硝酸カルシウム四水和物、約0.4重量パーセントの硝酸ストロンチウム四水和物、および約0.4重量パーセントの硝酸マグネシウム六水和物から構成され得る。
【0053】
PCMは、約99.3重量パーセントの硝酸カルシウム四水和物、約0.3重量パーセントの硝酸バリウム、および、約0.4重量パーセントの硝酸マグネシウム六水和物から構成され得る。
【0054】
PCMは、約99.4重量パーセントの硝酸カルシウム四水和物、約0.3重量パーセントの硝酸ストロンチウム、および、約0.3重量パーセントの硝酸マグネシウム二水和物から構成され得る。
【0055】
PCMは、約57.2重量パーセントの硝酸カルシウム四水和物、約42.0重量パーセントの硝酸リチウム三水和物、約0.4重量パーセントの硝酸マグネシウム六水和物、および、約0.4重量パーセントの硝酸ストロンチウム四水和物から構成され得る。
【0056】
PCMは、約40.0重量パーセントの硝酸カルシウム四水和物、約29.4重量パーセントの硝酸リチウム三水和物、約29.8重量パーセントの硝酸銅六水和物、約0.4重量パーセントの硝酸マグネシウム六水和物、および、約0.4重量パーセントの硝酸ストロンチウム四水和物から構成され得る。
【0057】
PCMは、約32.1重量パーセントの硝酸カルシウム四水和物、約23.5重量パーセントの硝酸リチウム三水和物、約23.8重量パーセントの硝酸銅六水和物、約19.8重量パーセントの硝酸亜鉛六水和物、約0.4重量パーセントの硝酸マグネシウム六水和物、および、約0.4重量パーセントの硝酸ストロンチウム四水和物から構成され得る。
【0058】
PCM ABは、約24.0重量パーセントの硝酸カルシウム四水和物、約17.6重量パーセントの硝酸リチウム三水和物、約17.9重量パーセントの硝酸銅六水和物、約39.7重量パーセントの硝酸マンガン六水和物、約0.4重量パーセントの硝酸マグネシウム六水和物、および、約0.4重量パーセントの硝酸ストロンチウム四水和物から構成され得る。
【0059】
PCMは、約39.7重量パーセントの硝酸カルシウム四水和物、約59.5重量パーセントの硝酸銅六水和物、約0.4重量パーセントの硝酸ストロンチウム四水和物、および、約0.4重量パーセントの硝酸マグネシウム六水和物から構成され得る。
【0060】
PCMは、約59.5重量パーセントの硝酸カルシウム四水和物、約39.7重量パーセントの硝酸亜鉛六水和物、約0.4重量パーセントの硝酸ストロンチウム四水和物、および、約0.4重量パーセントの硝酸マグネシウム六水和物から構成され得る。
【0061】
PCMは、約44.6重量パーセントの硝酸カルシウム四水和物、約54.6重量パーセントの硝酸鉄九水和物、約0.4重量パーセントの硝酸ストロンチウム四水和物、および、約0.4重量パーセントの硝酸マグネシウム六水和物から構成され得る。
【0062】
PCMは、約69.4重量パーセントの硝酸亜鉛六水和物、約29.8重量パーセントの硝酸リチウム三水和物、約0.4重量パーセントの硝酸ストロンチウム四水和物、および、約0.4重量パーセントの硝酸マグネシウム六水和物から構成され得る。
【0063】
PCMは、約39.7重量パーセントの硝酸鉄九水和物、約34.1重量パーセントの硝酸カルシウム四水和物、約25.4重量パーセントの硝酸リチウム三水和物、約0.4重量パーセントの硝酸マグネシウム六水和物、および、約0.4重量パーセントの硝酸ストロンチウム四水和物から構成され得る。
【0064】
PCMは、約14.7重量パーセントの硝酸マンガン六水和物、約83.3重量パーセントの硝酸亜鉛六水和物、約1重量パーセントの硝酸ストロンチウム、および、約1重量パーセントの硝酸バリウムから構成され得る。
【0065】
本発明の第4態様によれば、撹拌、再循環、ポンピング、超音波処理、またはそれらの組み合わせを含む、核生成中心の機械的操作によって、上述の項目のいずれかによるPCMの結晶化の速度を増加させる方法が提供される。1または複数の成長する結晶子がPCM全体に分散され得る。核生成剤はPCM全体に分散され得る。1または複数の成長する結晶子は、より多くの数のより小さい結晶子に分割され得る。
【0066】
本発明の第5態様によれば、本明細書において定義され、第1から第4態様のいずれかにおいて定義される、PCMを調製する方法が提供され、当該方法は、少なくとも1種類の金属硝酸塩水和物および少なくとも1種類の他の金属硝酸塩および/または金属硝酸塩水和物を提供する段階と、1または複数の種類の上記成分の融解転移温度より高い温度に上記混合物を加熱し、撹拌して単一の流し込み可能な液体を形成する段階とを備える。
【0067】
無水金属硝酸塩、および/または、最終的なPCM組成物において所望される数より少ない水和数の金属硝酸塩水和物が、ある量の水を追加されて、1または複数の種類の金属硝酸塩水和物の代わりに使用され、上記最終的なPCM組成物が提供され得る。
【0068】
上記PCM組成物において所望される数より多くの水和数を有する金属硝酸塩水和物が使用され得、余分な水が1または複数の種類の無水金属硝酸塩、および/または、より少ない水和数を有する金属硝酸塩水和物によって除去されるか、または飽和 され、上記最終的なPCM組成物が提供される。
【0069】
金属硝酸塩溶液が使用され得、余分な水が、1または複数の種類の無水金属硝酸塩、および/または、水和数がより少ない 金属硝酸塩水和物で除去または飽和され、上記最終的なPCM組成物が提供される。金属硝酸塩および/または金属硝酸塩水和物は、反応によって合成または生成され得る。
【0070】
上記PCMは、特定の組成物を実現するための正確な量の水の存在下で、対応する塩基性金属塩による硝酸の中和によって形成され得る。
【0071】
上記PCMは、余分な水の存在下で、対応する金属塩基による硝酸の中和によって形成され得、上記余分な水は次に、1または複数の種類の無水金属硝酸塩、および/または、水和数がより少ない金属硝酸塩水和物で除去または飽和され、上記最終的なPCM組成物が提供される。
【0072】
硝酸塩以外の任意のアニオンは、イオン交換、または、適切な金属塩を用いた沈殿およびそれに続く物理的分離によって除去され得る。
【図面の簡単な説明】
【0073】
ここで、以下の図を参照して本発明を説明する。
図1】本発明の実施形態による、柔軟な金属ディスクが中に配置され、カルシウム四水和物で充填された袋の画像である。
図2】本発明の実施形態による、中に配置された金属ディスクを曲げることによって形成される核生成中心から成長する結晶を示す。
図3】金属ディスクが曲げられて硝酸カルシウム四水和物の核生成が開始された、図1に示される袋の画像である。核生成の温度である42.3℃への温度上昇を示す。
図4】材料を完全に結晶化させた後に温度を43℃前後に上昇させた、図2に示される袋の画像である。
図5】本発明の更なる実施形態による、硝酸ストロンチウム四水和物の2つの結晶(円で囲まれる)を含む融解塩のバイアルを示す。
図6】室温条件における、硝酸カルシウム四水和物を含むバイアルと、硝酸カルシウム四水和物、ならびに、核剤AおよびBのいずれかの個々を含むバイアルと、硝酸カルシウム四水和物、ならびに、核剤Aおよび核剤Bの両方を含むバイアルとの比較を共に示す。この図において、核剤AおよびBはそれぞれ、硝酸マグネシウム六水和物および硝酸ストロンチウム四水和物として定義される。
図7】純粋な硝酸カルシウム四水和物のサンプル、ならびに、硝酸マグネシウム六水和物および硝酸ストロンチウム四水和物核生成剤を含む硝酸カルシウム四水和物のサンプルの初期の熱サイクルを示す。
図8】200時間前後の熱サイクル後の、図6において定義されたものと同一のサンプルを示す。
図9】本発明において開示されるPCMで充填された熱バッテリの充熱および放熱サイクルを示す。
図10】硝酸カルシウム四水和物だけから成るPCMで充填された熱バッテリの2つの充熱および放熱サイクルを示す。
図11】硝酸ストロンチウム四水和物および硝酸マグネシウム六水和物核生成剤を追加した後の、図10おいて充熱および放熱されたものと同一の熱バッテリの2つの充熱および放熱サイクルを示す。
図12】様々な量の硝酸亜鉛六水和物を含む硝酸カルシウム四水和物の熱サイクルを示す。
図13】様々な量の硝酸亜鉛六水和物を含む硝酸カルシウム四水和物の熱サイクルを示す
図14】3層熱量測定の機器構成における、硝酸亜鉛六水和物および核生成剤を含む1種類の特定の硝酸カルシウム四水和物サンプルの熱サイクルを示す。x軸上で軸が途切れていることに留意すべきである。
図15】3層熱量測定の機器構成における、いずれの核生成剤も無く硝酸リチウム三水和物を含む硝酸カルシウム四水和物の特定の組成物の熱サイクルを示す。
図16】3層熱量測定の機器構成における核生成剤を有し硝酸リチウム三水和物を含む硝酸カルシウム四水和物の特定の組成物の熱サイクルを示す。
図17】様々な量の硝酸銅六水和物を含む硝酸カルシウム四水和物の熱サイクルの例を示す。
図18】様々な量の硝酸銅六水和物を含む硝酸カルシウム四水和物の熱サイクルの例を示す。
図19】様々な量の硝酸銅六水和物を含む硝酸カルシウム四水和物の熱サイクルの例を示す。
図20】3層熱量測定の機器構成における、核生成剤を有し硝酸銅六水和物を含む硝酸カルシウム四水和物の特定の組成物の熱サイクルを示す。
図21】様々な量の硝酸亜鉛六水和物を含む硝酸マンガン六水和物の熱サイクルを示す。
図22】様々な量の硝酸亜鉛六水和物を含む硝酸マンガン六水和物の熱サイクルを示す。
図23】3層熱量測定の機器構成における、核生成剤を有し硝酸マンガン六水和物を含む硝酸亜鉛六水和物の特定の組成物の熱サイクルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0074】
本発明はPCMとしての金属硝酸塩の使用に関する。特に、本発明は、PCMである1または複数の種類の金属硝酸塩、または、それらの水和物を含む金属硝酸塩水和物に関する。
【0075】
金属硝酸塩水和物は、室温付近から上の広い範囲の融点を有し、一般に、高い融解潜熱を有することが知られている。発明者は、これらの属性が、PCMとしての使用に非常に魅力的であることを予期せず発見した。なぜなら、これらの材料は典型的には、安価であり、一致融解する(すなわち、融解時に単一の均一液体相だけを形成する)からである。しかしながら、そのような金属硝酸塩水和物の多くは過冷却する。従って、開示された発明は、核生成剤の添加剤の導入に起因して核生成が生じるPCM組成物、および、そのような添加剤がPCMに導入され得る方法を説明する。それにより、発明者は、充熱状態と放熱状態との間で熱サイクルを繰り返し、各サイクルで確実に結晶化し得るPCMを開示する。
【0076】
金属硝酸塩型PCMのための様々な信頼できる核生成剤を提供することに加えて、多くの融点降下された金属硝酸塩型PCMが本明細書において開示される。本発明は、多くの金属硝酸塩および対応する水和物から選択することにより、融解転移が低い、例えば3℃であるPCMを開示する。開示されたPCM組成物は、本明細書に開示された金属硝酸塩水和物、少なくとも1種類の他の金属硝酸塩および/またはその水和物、ならびに核生成剤から構成される。
【0077】
添加剤がPCMの有効な融点降下剤であるためには、以下の性質を有するべきである。
・共通のイオン(例えばNO
・PCMの主成分と同様の密度
・PCMの主成分と同様のpH
・PCMの主成分に溶解可能
【0078】
金属硝酸塩および金属硝酸塩水和物の範囲の適格性は、金属硝酸塩水和物のための好適で調整可能な融点降下剤として本明細書において確立される。
【0079】
この目的で開示される材料は例えば、硝酸リチウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸カルシウム、硝酸バリウム、硝酸スカンジウム、硝酸亜鉛、硝酸銅、硝酸鉄、硝酸マンガン、硝酸クロム、硝酸銀、硝酸イットリウム、硝酸ジルコニウム、硝酸チタン、任意の硝酸ランタニド金属、硝酸アンモニウム、硝酸アルミニウム、硝酸ビスマス、硝酸ガリウム、またはそれらの任意の水和物のうちいずれか1種類またはそれらの組み合わせから選択される。これらの金属硝酸塩および/またはその水和物のいずれかは、本明細書において開示される核生成剤と共に、単独で、または、上記一覧における1または複数の種類の他のものとの混合物として使用され得る。
【0080】
複数の金属硝酸塩およびその水和物がPCM融解温度降下剤および/または核生成剤として発明者に知られている。しかしながら、それらは危険な性質に起因して無視されている。これらの材料は、硝酸ベリリウム、硝酸カドミウム、硝酸ニッケル、硝酸コバルト、硝酸水銀、および、任意の硝酸アクチニド、または、それらの任意の水和物である。
【0081】
本発明者は、過冷却が生じる金属硝酸塩水和物において核生成を誘導可能であり、その結果、それらが完全に熱サイクル可能なPCMとして使用され得ることを発見した。
【0082】
金属硝酸塩水和物から構成される系が、その結晶、すなわち、その金属硝酸塩水和物の固体形態の結晶で核生成され得る。本出願は、シーディングを使用することによって、すなわち、硝酸カルシウム四水和物の結晶を硝酸カルシウム四水和物の過冷却された融解物に追加することによって、金属硝酸塩水和物における過冷却を克服する方法を説明する。
【0083】
これに鑑み、本発明は、結晶化を開始するために、シード結晶をシステムに追加する方法を説明する。
【0084】
シード結晶を生成するために、前後に曲がり得る、くぼみ(例えば、機械加工溝などの溝)を有する薄い金属プレート(例えばディスク)が、金属硝酸塩水和物の存在下で使用され得る。機械加工溝の裂け目における結晶子は、高圧下にあり、従って、バルクが融解する加熱段階中に融解しないと考えられる。ディスクが曲げられるとき、結晶子がバルク中に放出され、更なる結晶が成長するための核生成中心が急速に生じることができる。
【0085】
発明者は、結晶金属硝酸塩水和物と接触するそのようなディスクを曲げることは、結晶子をディスクにおける前述の機械加工溝中にロードするために使用され得、その溝は、核生成場所を提供するために後に使用され得ることを発見した。
【0086】
したがって、溝内の十分な局所圧力において結晶子を維持することが可能な溝を有する柔軟な金属片を備えた容器における金属硝酸塩水和物の封入は、in situのシード結晶放出によって、核生成への経路を提供する。
【0087】
本発明はまた、バルクPCMの融解転移温度前後の温度で固相である材料として定義される金属硝酸塩水和物のための異種混合の核生成剤を開示する。本明細書において、個々の金属硝酸塩またはその水和物は核生成剤として作用しないことがあり得るが、そのようなシードが2種類以上存在するとき、最低限の過冷却で、または過冷却無しで確実に核生成するPCMが取得されることが開示される。
【0088】
1種類より多くの金属硝酸塩水和物または無水金属硝酸塩の組み合わせが、金属硝酸塩水和物、および、融解温度降下剤を有する金属硝酸塩水和物のための有効な核生成剤を提供することが分かった。異種混合の核剤として作用する任意の添加剤は、単独で機能すべきことが一般に期待されるが、驚くべきことに、個々の硝酸塩またはその水和物は、PCMを核生成せず、組み合わされたときだけ機能する。
【0089】
任意の特定の理論に拘束されることを望むものではないが、本明細書において、マグネシウムおよび硝酸ストロンチウムの硝酸カルシウムとの組み合わせは、ストロンチウム-マグネシウム-硝酸カルシウムから構成される三金属複合体を形成する。同様の三金属リン酸塩シードが存在することが知られている(CAS番号:61114-28-1)。発明者は、そのような三金属シードは、硝酸アニオンで形成し得ること、および、このシードは開示された金属硝酸塩型PCMについての活性核生成剤であることを示唆する。開示されたPCM調製物におけるこのシードの形成は、一対のカチオンが飽和硝酸カルシウム溶液に追加されるときに生じ得る。
【0090】
代替的な理論として、融解された硝酸カルシウム四水和物などの硝酸塩溶液に浸されるとき、1種類のカチオンが他の結晶子の結晶表面または面を変更する。
【0091】
本発明において、第2族金属硝酸塩およびそれぞれの水和物は、金属硝酸塩型PCMに対して効果的な核生成剤であり得ることが立証された。典型的には、第2族硝酸塩は金属硝酸塩水和物または無水金属硝酸塩として購入可能であり得る。これらの材料は、異なる結晶構造を有し、典型的には、異なる粒子サイズおよび寸法で形成されているので、したがって、核生成剤とは異なる挙動を示すことが知られている。水和または再結晶化により、選択された金属硝酸塩またはその水和物は、異なる水和物または無水形態に変換され得る。それにより、金属硝酸塩型PCMのための異なる潜在的な核生成剤に到達する。
【0092】
PCMの遅い結晶化は、上記PCMから構成されたエネルギー貯蔵システムの熱出力パワーを制限することが分かった。本発明のある態様では、成長する結晶子を多くの小さい結晶子に破壊して、結晶子をPCM全体に分散させ、核剤をPCM全体に分散させるための様々な方法の適用によってこの問題を克服する。撹拌、再循環、ポンピング、超音波処理、または、それらの組み合わせなどの方法は、金属硝酸塩型PCMの遅い結晶化に対する解決手段として、本発明の一部として開示される。
【0093】
本発明の更なる態様は、融点降下剤および/または効果的な核生成剤を含む金属硝酸塩水和物に基づくPCM系の調製方法である。
【0094】
本発明において開示されるPCM調製物は、金属イオン前駆体と、硝酸イオンのソースとの反応によって調製され得る。ここで、金属前駆体は金属酸化物、金属カーボネート、金属水酸化物、硝酸塩以外のアニオンを有する金属塩、またはそれらの組み合わせであり得る。
【0095】
本発明において開示されるPCM調製物は、市販の金属硝酸塩水和物または無水金属硝酸塩の追加によって、または、無水金属硝酸塩と金属硝酸塩水和物を与えるのに必要な量の水との組み合わせによって調製され得る。
【0096】
無水形態が必要な場合、金属硝酸塩水和物は、開示されたPCM調製物において使用するための無水塩を提供するために、減圧下の加熱によって脱水され得るか、in situで(すなわち、PCM内で)脱水され得るか、または、それらの組み合わせであり得る。
【0097】
本明細書に開示されるPCMを調製するために硝酸塩以外のアニオンを有する金属塩が使用されるとき、元のアニオンの除去は、イオン交換、または、物理的手段によって除去され得る不溶性生成物を生じさせる適切な金属硝酸塩を用いた沈殿によって達成され得る。 以下では、本発明の非限定的な例が提供される。
例1
【0098】
図1は、柔軟な金属ディスク12が内部に配置され、カルシウム四水和物で充填され、一般に10で表される袋の画像を示す。柔軟な金属ディスク12は表面に多くの溝を有する。
【0099】
そのようなシステムにおいて、熱で融着し、再融解し、袋を室温まで冷却した後、結晶化は、金属ディスク12を曲げて、図2に示されるように金属ディスク12の近くに核生成中心を生じさせることによって達成できる。放熱は、図3および図4に示されるように、サーマルイメージングカメラを使用してトラッキングされ得る。
【0100】
図3において、硝酸カルシウム四水和物(Ca(NO・4HO)の核生成は、金属ディスクを曲げることによって開始された。結晶が形成される領域において、温度が42.3℃に上昇する。 図3において、袋の完全結晶化時に、温度は42.8℃~42.9℃に上昇した。
【0101】
発明者は、この方法によって、袋の内容物が複数回にわたって再融解され、確実に結晶化され得ること、それにより、硝酸カルシウム四水和物の結晶化を開始するための技法が提供されることを発見した。
例2
【0102】
硝酸ストロンチウムは無水形態で容易に利用可能であり、四水和物は、低い温度で水から飽和溶液を再結晶化することによって形成できる。
【0103】
硝酸ストロンチウム四水和物を過冷却された硝酸カルシウム四水和物のバイアルに追加しても、結晶化は生じなかった。
【0104】
図5は、硝酸ストロンチウム四水和物の2つの結晶(円で囲まれる)を含む融解塩のバイアル20を示す。結晶化が生じなかったことが明らかに分かる。
【0105】
しかしながら、硝酸カルシウム四水和物および硝酸ストロンチウム四水和物の結晶のこの混合物への硝酸マグネシウム六水和物の追加は、硝酸カルシウム四水和物の核生成を生じさせることが分かった。
【0106】
図6は、硝酸カルシウム四水和物の凝固遷移温度より下の温度において、硝酸カルシウム四水和物、および、核生成剤の各々を個別に含む、ならびに、両方の核生成剤を含むバイアルの比較を示す。明らかに、純粋な硝酸カルシウム四水和物(30)のバイアル、および、硝酸マグネシウム六水和物(A)(40)だけ、または、硝酸ストロンチウム四水和物(B)(50)だけを含む硝酸カルシウム四水和物のバイアルは、両方とも過冷却されることが分かる。しかしながら、硝酸カルシウム四水和物、ならびに、AおよびBの両方の核生成剤を含むバイアル(60)は結晶化されたことが分かる。
【0107】
硝酸マグネシウム六水和物および硝酸ストロンチウム四水和物のこの組み合わせは、熱サイクルを繰り返すことが可能であり、確実に結晶化すること、純粋な硝酸カルシウム四水和物、または、2種類の核生成剤の成分のうち1種類だけを含む硝酸カルシウム四水和物のサンプルは、核生成することなく過冷却することが分かった。
【0108】
図7は、純粋な硝酸カルシウム四水和物のサンプル、ならびに、硝酸マグネシウム六水和物および硝酸ストロンチウム四水和物核生成剤を含む硝酸カルシウム四水和物のサンプルの初期の熱サイクルを示す。純粋な硝酸カルシウム四水和物の核生成は観察されないが、本明細書に開示される核剤を含むサンプルにおいては、結晶化の平坦域、および、その後の融解転移を見ることができる。
【0109】
図8は、200時間前後の熱サイクル後の、図6において定義されるものと同一のサンプルを示す。示されるサイクルと、図7に示されるものとの間には、融解および結晶化の平坦域における変化が見られなかった。従って、本発明において開示される核生成剤は、長期間の熱サイクルにわたって効果的であることが分かった。
例3
【0110】
カルシウムイオンと硝酸イオンとのモル比が約1:2を達成するように、ある量のカルシウムカーボネートが硝酸溶液に追加された。反応によって生成される中和の水の量を考慮に入れて、最終混合物における水の総含有量が、硝酸カルシウム四水和物の組成物と一致するように、硝酸溶液の濃度(水において30重量パーセント前後)が選択された。次に、ある量の無水硝酸ストロンチウム、および、硝酸ストロンチウムに関して約4当量に対応する量の水が、撹拌しながら追加された。次に、ある量の市販の硝酸マグネシウム六水和物が追加され、最終的なPCM組成物ができた。
例4
【0111】
硝酸カルシウム四水和物、硝酸ストロンチウム四水和物、および硝酸マグネシウム六水和物から構成されるPCMが、伝熱流体がバッテリを循環し得るための入口および出口管を有する熱交換器を備えた熱バッテリ装置に導入された。次に、加熱または冷却用の伝熱流体を熱交換器に循環させることによって、PCMの熱サイクルを行い、エネルギーは、熱交換器の入口および出口の流量および温度を測定することによって決定された。
【0112】
図9は、熱バッテリ-PCMの機器構成の標準的な充熱および放熱サイクルを示す。充熱時に43℃前後の平坦域が見られる。放熱のために低温の伝熱流体を熱交換器に通過させると、結晶化が生じ、35℃前後で結晶化の平坦域が生じる。
例5
【0113】
例4に説明されるものと同様であるが、純粋な硝酸カルシウム四水和物で充填された熱バッテリの機器構成が準備された。図10は、熱バッテリの2つの充熱および放熱サイクルを示す。放熱時に、材料は27℃前後まで過冷却され、その温度の後に核生成が生じ、30℃前後の平坦域温度を生じさせたことが分かった。核生成は、バッテリに存在するシード結晶によって促進された。放熱が開始する前にバルクPCMが完全に融解しなかったからである。
【0114】
次に、硝酸ストロンチウム四水和物および硝酸マグネシウム六水和物がバッテリに追加され、テストが繰り返された。核生成剤を追加した後のバッテリの充熱および放熱プロファイルが図11に示される。PCMが核生成した温度は、約31℃に上昇したことが分かった。平坦域温度は35℃に上昇することが分かった。ここでは、硝酸カルシウム四水和物に核生成剤を追加することは、PCMの核生成および結晶化のパフォーマンスを改善するための効果的な方法であることが実証される。
例6
【0115】
硝酸亜鉛の六水和物形態および硝酸カルシウムの四水和物形態から始める。サンプルの総重量の約5~50重量パーセントの範囲の量の硝酸亜鉛六水和物と、バランスをとるための量の硝酸カルシウム四水和物が共に混合された。硝酸塩水和物の混合物は、硝酸カルシウム四水和物の融解転移温度(43℃前後)より約2~5℃高い温度に加熱された。この温度を維持しつつ、無色透明の均一液体が取得されるまで混合物を撹拌した。次に、液体を熱サイクル制御装置に移し、熱電対を使用して内部温度を記録しつつ、冷却および加熱を繰り返した。熱サイクルの例が図12および図13に提供される。
【0116】
PCM混合物の核生成は、図12および図13と同様に低い温度で、シーディングによって、または、核生成剤の追加によって開始され得る。硝酸マグネシウム六水和物および硝酸ストロンチウム四水和物の少量の結晶を追加すると、過冷却された融解物において核生成が開始された。硝酸マグネシウム六水和物‐硝酸ストロンチウム四水和物核剤を含む、硝酸カルシウム四水和物および硝酸亜鉛四水和物の共晶混合物が調製され、ビニール袋に追加され、ビニール袋は続いてシーリングされ、3層熱量測定機器構成の中に配置され、熱サイクルが行われた。 熱サイクルの例は図14に提供される。 核生成剤の存在下では最低限の過冷却が観察された。
【0117】
それにより、硝酸カルシウム四水和物および硝酸亜鉛六水和物から構成される複数のPCM組成物が識別され、達成された融点降下の程度が定量化された。
例7
【0118】
無水硝酸リチウムおよび硝酸カルシウムの四水和物形態から始める。三水和物の組成物(56.79% LiNO、43.91% HO)が取得されるように、無水硝酸リチウムに水が追加された。生じるPCMが、約40%から95%の間の硝酸カルシウム四水和物およびバランスをとるための硝酸リチウム三水和物を含有するように、ある量の硝酸カルシウム四水和物がこの材料に追加された。硝酸塩水和物の混合物は、硝酸カルシウム四水和物の融解転移温度(43℃前後)より約2~5℃高い温度に加熱された。この温度を維持しつつ、無色透明の均一液体が取得されるまで混合物が撹拌された。次に、液体がビニール袋に移され、ビニール袋続いて、シーリングされ、3層熱量測定の機器構成の中に配置され、熱サイクルが行われた。1種類の特定のPCM組成物の熱サイクルの例が図15に提供される。
【0119】
硝酸マグネシウム六水和物および硝酸ストロンチウム四水和物の少量の結晶を追加すると、過冷却された融解物において核生成が開始され、非常に低い温度に冷却する必要は無かった。核生成剤の追加後の熱サイクルの例が図16に提供される。核生成剤の追加時に、過冷却の明確な低減が見られた。
【0120】
この方法を使用して、硝酸カルシウム四水和物および硝酸リチウム三水和物から構成される幅広い範囲の材料の融解/結晶化温度およびエネルギー密度が取得される。
例8
【0121】
硝酸銅のヘミ五水和物形態および硝酸カルシウム四水和物から始める。硝酸銅のヘミ五水和物に水が追加され、水の総量を追加すると、硝酸銅六水和物の組成物(63.44% Cu(NO、36.53% HO)が取得された。生じるPCMが、約20%から95%の間の硝酸カルシウム四水和物および硝酸銅六水和物を含有するように、ある量の硝酸カルシウム四水和物がこの材料に追加された。硝酸塩水和物の混合物は、硝酸カルシウム四水和物の融解転移温度(43℃前後)より約2~5℃高い温度に加熱された。この温度を維持しつつ、青色で透明の均一液体が取得されるまで混合物が撹拌された。次に、液体を熱サイクル制御装置に移し、熱電対を使用して内部温度を記録しつつ、冷却および加熱を繰り返した。PCM混合物の核生成は、低い温度、シーディング、または、核生成剤の追加によって開始され得る。熱サイクルの例が図17図18図19に提供される。
【0122】
硝酸マグネシウム六水和物および硝酸ストロンチウム四水和物の少量の結晶を追加すると、過冷却された融解物において核生成が開始された。次に、液体がビニール袋に移され、ビニール袋は続いて、シーリングされ、3層熱量測定の機器構成の中に配置され、熱サイクルが行われた。核生成剤を含むPCMの熱サイクルの例が図20に提供される。過冷却はほとんど見られなかった。
【0123】
それにより、硝酸カルシウム四水和物および硝酸銅六水和物から構成される複数のPCM組成物が識別され、達成された融点降下の程度が定量化された。
例9
【0124】
硝酸マンガンの四水和物形態および硝酸亜鉛六水和物から始める。硝酸マンガン四水和物に水を追加し、水の総量を追加すると、硝酸マンガン六水和物の組成物(62.37% Mn(NO、37.63% HO)が取得された。生じたPCMが、約15%から約85%の間の硝酸亜鉛六水和物、及び、バランスをとるための硝酸マンガン六水和物を含むように、ある量の硝酸亜鉛六水和物が材料に追加された。硝酸塩水和物の混合物が、40℃前後に加熱された。この温度を維持しつつ、わずかにピンク色の透明な均一液体が取得されるまで、混合物が撹拌された。次に、液体を熱サイクル制御装置に移し、熱電対を使用して内部温度を記録しつつ、冷却および加熱を繰り返した。PCM混合物の核生成は、低い温度、シーディング、または、核生成剤の追加によって開始され得る。
【0125】
核生成剤無しの熱サイクルの例が図21および図22に提供される。この場合、すべてのサンプルにおいて、融解転移はほぼ平坦な状態を維持したが、融点の変動が達成された。
【0126】
それにより、硝酸マンガン六水和物および硝酸亜鉛六水和物から構成される複数のPCM組成物が識別され、達成された融点降下の程度が定量化された。
【0127】
過冷却を克服するために、マグネシウム、ストロンチウム、および硝酸バリウムの組み合わせに基づく核生成剤が、硝酸マンガン六水和物および硝酸亜鉛六水和物の1つの組み合わせのサンプル(サンプル23)に追加された。生じたPCMは次に、3層熱量測定の機器構成を使用することによって、熱サイクルにかけられた。熱サイクルのデータは図23に提供される。過冷却はほとんど見られなかった。これは図21において詳細に説明された純粋なサンプル23とは明らかに対照的である。それにより、マグネシウム、ストロンチウム、および硝酸バリウムの組み合わせが、混合された硝酸亜鉛六水和物および硝酸マンガン六水和物PCMに効果的な核剤であることが立証された。
【0128】
本発明の具体的な実施形態が上述されたが、説明された実施形態から逸脱するものも、依然として本発明の範囲に含まれ得ることが理解されるであろう。例えば、金属硝酸塩または金属硝酸塩水和物の任意の好適な種類の組み合わせが使用され得る。更に、任意の好適な種類の第2族金属硝酸塩または金属硝酸塩水和物が核生成剤として使用され得る。
他の可能な請求項
【0129】
(項目1)
第2族金属硝酸塩または金属硝酸塩水和物に基づく核生成剤を伴う、相転移材料(PCM)としての金属硝酸塩または金属硝酸塩水和物の使用。
【0130】
(項目2)
核生成は、過冷却を克服するためにシーディングプロセス(すなわち、上記PCMの成分と同一の化学的同一性の結晶の追加)によって達成される、項目1に記載の使用。
【0131】
(項目3)
上記核生成剤は、1種類より多くの別のカチオンを有する硝酸塩である、上述の項目のいずれかに記載の使用。
【0132】
(項目4)
上記核生成剤は、1または複数の種類の第2族金属硝酸塩および/または金属硝酸塩水和物から構成される、上述の項目のいずれかに記載の使用。
【0133】
(項目5)
上記PCMは、融解プロセス中に高圧に維持される核生成剤を用いて核生成される、上述の項目のいずれかに記載の使用。
【0134】
(項目6)
上記核生成剤は、金属サンプルの表面上の裂け目における高圧の領域にあることによって、融点より上で固体の状態に維持される上記PCMの1または複数の種類の成分の結晶である、項目5に記載の核生成の方法。
【0135】
(項目7)
機械加工溝を有する薄い金属ディスクが曲げられ、上記核生成剤を上記バルクPCMに放出する、項目5および6のいずれかに記載の核生成の方法。
【0136】
(項目8)
第2族金属硝酸塩から構成される上記核生成剤は、硝酸マグネシウムまたはその任意の水和物形態である、上述の項目のいずれかに記載の使用。
【0137】
(項目9)
第2族金属硝酸塩から構成される上記核生成剤は、硝酸ストロンチウムまたはその任意の水和物形態である、上述の項目のいずれかに記載の使用。
【0138】
(項目10)
第2族金属硝酸塩から構成される上記核生成剤は、硝酸カルシウムまたはその任意の水和物形態である、上述の項目のいずれかに記載の使用。
【0139】
(項目11)
第2族金属硝酸塩から構成される上記核生成剤は、硝酸バリウムまたはその任意の水和物形態である、上述の項目のいずれかに記載の使用。
【0140】
(項目12)
上記核生成剤は、無水物およびその水和物形態の任意の組み合わせを含む、2種類以上の第2族金属硝酸塩の組み合わせである、上述の項目のいずれかに記載の使用。
【0141】
(項目13)
上記核生成剤は、硝酸ストロンチウムおよび硝酸マグネシウム、または、その任意の水和物形態の組み合わせである、上述の項目のいずれかに記載の使用。
【0142】
(項目14)
上記核生成剤は、硝酸カルシウムおよび硝酸マグネシウム、または、その任意の水和物形態の組み合わせである、上述の項目のいずれかに記載の使用。
【0143】
(項目15)
上記核生成剤は、硝酸マグネシウムおよび硝酸バリウム、または、その任意の水和物形態の組み合わせである、上述の項目のいずれかに記載の使用。
【0144】
(項目16)
上記核生成剤は、硝酸ストロンチウムおよび硝酸バリウム、または、その任意の水和物の形態の組み合わせである、上述の項目のいずれかに記載の使用。
【0145】
(項目17)
上記核生成剤は、硝酸ストロンチウム、硝酸バリウム、および硝酸マグネシウム、または、その任意の水和物形態の組み合わせである、上述の項目のいずれかに記載の使用。
【0146】
(項目18)
上記核生成剤は、バルクPCMにおいて、溶解限度より高い濃度で存在する、上述の項目のいずれかに記載の使用。
【0147】
(項目19)
上記核生成剤は、上記PCMの少なくとも約0.1重量パーセント存在する、上述の項目のいずれかに記載の使用。
【0148】
(項目20)
硝酸リチウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸カルシウム、硝酸バリウム、硝酸スカンジウム、硝酸亜鉛、硝酸銅、硝酸鉄、硝酸マンガン、硝酸クロム、硝酸ストロンチウム、硝酸銀、硝酸イットリウム、硝酸ジルコニウム、硝酸チタン、任意の硝酸ランタニド金属、硝酸アンモニウム、硝酸アルミニウム、硝酸ビスマス、硝酸ガリウム、硝酸マグネシウム、硝酸鉛から構成される一覧のうちのいずれか1種類、または、それらの組み合わせから選択される少なくとも1種類の金属硝酸塩水和物、および/または、それらから形成される任意の水和物、ならびに、
上述の項目のいずれかによる核生成剤
から構成されるPCM。
【0149】
(項目21)
上記核生成剤以外の上記PCMは、1種類より多くの金属硝酸塩および/または金属硝酸塩水和物の混合物である、項目20に記載のPCM。
【0150】
(項目22)
上記PCMは、選択された各成分の個々より低い融解温度を有する、項目20および21のいずれかに記載のPCM。
【0151】
(項目23)
選択された上記金属硝酸塩および/またはそれらの水和物の量を変更することによって、ある範囲内の値である特定の温度に上記PCMの融点を調整することが可能となる、項目20から22のいずれかに記載のPCM。
【0152】
(項目24)
上記PCMは選択された上記成分の共晶混合物である、項目20から23のいずれかに記載のPCM。
【0153】
(項目25)
上記PCMは、選択された上記成分の二成分、三成分または四成分共晶混合物である、項目20から24のいずれかに記載のPCM。
【0154】
(項目26)
上記PCMは、約98~99.6重量パーセントの少なくとも1種類の金属硝酸塩水和物と、約0.2~1重量パーセントの硝酸ストロンチウムまたはその任意の水和物と、約0.2~1重量パーセントの硝酸マグネシウムまたはその任意の水和物から構成される、項目20から25のいずれかに記載のPCM。
【0155】
(項目27)
上記PCMは、約0~99.8重量パーセントの硝酸カルシウム四水和物、約0~1重量パーセントの硝酸ストロンチウム四水和物、約0~1重量パーセントの硝酸マグネシウム六水和物、約0~1重量パーセントの硝酸バリウム、約0~99.8重量パーセントの硝酸リチウム三水和物、約0~50重量パーセントの硝酸マンガン四水和物、約0~99.8重量パーセントの硝酸マンガン六水和物、約0~99.8重量パーセントの硝酸亜鉛六水和物、約0~99.8重量パーセントの硝酸銅六水和物、約0~40重量パーセントの硝酸銅三水和物、約0~40重量パーセントの硝酸銅ヘミ五水和物、約0~99.8重量パーセントの硝酸鉄九水和物、約0~10重量パーセントの硝酸ナトリウム、および、約0~30重量パーセントの硝酸カリウムから構成される、項目20から26のいずれかに記載のPCM。
【0156】
(項目28)
上記PCMは、約99.2重量パーセントの硝酸カルシウム四水和物、約0.4重量パーセントの硝酸ストロンチウム四水和物、および、約0.4重量パーセントの硝酸マグネシウム六水和物から構成される、項目20から27のいずれかに記載のPCM。
【0157】
(項目29)
上記PCMは、約99.3重量パーセントの硝酸カルシウム四水和物、約0.3重量パーセントの硝酸バリウム、および、約0.4重量パーセントの硝酸マグネシウム六水和物から構成される、項目20から28のいずれかに記載のPCM。
【0158】
(項目30)
上記PCMは、約99.4重量パーセントの硝酸カルシウム四水和物、約0.3重量パーセントの硝酸ストロンチウム、および、約0.3重量パーセントの硝酸マグネシウム二水和物から構成される、項目20から29のいずれかに記載のPCM。
【0159】
(項目31)
上記PCMは、約57.2重量パーセントの硝酸カルシウム四水和物、約42.0重量パーセントの硝酸リチウム三水和物、約0.4重量パーセントの硝酸マグネシウム六水和物、および、約0.4重量パーセントの硝酸ストロンチウム四水和物から構成される、項目20から31のいずれかに記載のPCM。
【0160】
(項目32)
上記PCMは、約40.0重量パーセントの硝酸カルシウム四水和物、約29.4重量パーセントの硝酸リチウム三水和物、約29.8重量パーセントの硝酸銅六水和物、約0.4重量パーセントの硝酸マグネシウム六水和物、および、約0.4重量パーセントの硝酸ストロンチウム四水和物から構成される、項目20から31のいずれかに記載のPCM。
【0161】
(項目33)
上記PCMは、約32.1重量パーセントの硝酸カルシウム四水和物、約23.5重量パーセントの硝酸リチウム三水和物、約23.8重量パーセントの硝酸銅六水和物、約19.8重量パーセントの硝酸亜鉛六水和物、約0.4重量パーセントの硝酸マグネシウム六水和物、および、約0.4重量パーセントの硝酸ストロンチウム四水和物から構成される、項目20から32のいずれかに記載のPCM。
【0162】
(項目34)
上記PCMは、約24.0重量パーセントの硝酸カルシウム四水和物、約17.6重量パーセントの硝酸リチウム三水和物、約17.9重量パーセントの硝酸銅六水和物、約39.7重量パーセントの硝酸マンガン六水和物、約0.4重量パーセントの硝酸マグネシウム六水和物、約0.4重量パーセントの硝酸ストロンチウム四水和物から構成される、項目20から33のいずれかに記載のPCM。
【0163】
(項目35)
上記PCMは、約39.7重量パーセントの硝酸カルシウム四水和物、約59.5重量パーセントの硝酸銅六水和物、約0.4重量パーセントの硝酸ストロンチウム四水和物、および、約0.4重量パーセントの硝酸マグネシウム六水和物から構成される、項目20から34のいずれかに記載のPCM。
【0164】
(項目36)
上記PCMは、約59.5重量パーセントの硝酸カルシウム四水和物、約39.7重量パーセントの硝酸亜鉛六水和物、約0.4重量パーセントの硝酸ストロンチウム四水和物、および、約0.4重量パーセントの硝酸マグネシウム六水和物から構成される、項目20から35のいずれかに記載のPCM。
【0165】
(項目37)
上記PCMは、約44.6重量パーセントの硝酸カルシウム四水和物、約54.6重量パーセントの硝酸鉄九水和物、約0.4重量パーセントの硝酸ストロンチウム四水和物、および、約0.4重量パーセントの硝酸マグネシウム六水和物から構成される、項目20から36のいずれかに記載のPCM。
【0166】
(項目38)
上記PCMは、約69.4重量パーセントの硝酸亜鉛六水和物、約29.8重量パーセントの硝酸リチウム三水和物、約0.4重量パーセントの硝酸ストロンチウム四水和物、および、約0.4重量パーセントの硝酸マグネシウム六水和物から構成される、項目20から37のいずれかに記載のPCM。
【0167】
(項目39)
上記PCMは、約39.7重量パーセントの硝酸鉄九水和物、約34.1重量パーセントの硝酸カルシウム四水和物、約25.4重量パーセントの硝酸リチウム三水和物、約0.4重量パーセントの硝酸マグネシウム六水和物、および、約0.4重量パーセントの硝酸ストロンチウム四水和物から構成される、項目20から38のいずれかに記載のPCM。
【0168】
(項目40)
上記PCMは、約14.7重量パーセントの硝酸マンガン六水和物、約83.3重量パーセントの硝酸亜鉛六水和物、約1重量パーセントの硝酸ストロンチウム、および、約1重量パーセントの硝酸バリウムから構成される、項目20から39のいずれかに記載のPCM。
【0169】
(項目41)
撹拌、再循環、ポンピング、超音波処理、またはそれらの組み合わせを含む、核生成中心の機械的操作によって、上述の項目のいずれかによるPCMの結晶化の速度を増加させる方法。
【0170】
(項目42)
1または複数の成長する結晶子が上記PCM全体に分散される、結晶化速度を増加させる項目41に記載の方法。
【0171】
(項目43)
核生成剤が上記PCM全体に分散される、結晶化速度を増加させる項目41および42のいずれかに記載の方法。
【0172】
(項目44)
1または複数の成長する結晶子が、より多くの数の、より小さい結晶子に分割される、項目41から43のいずれかに記載の結晶化速度を増加させる方法。
【0173】
(項目45)
少なくとも1種類の金属硝酸塩水和物および少なくとも1種類の他の金属硝酸塩および/または金属硝酸塩水和物を提供する段階と、
1または複数の種類の上記成分の融解転移温度より高い温度に上記混合物を加熱し、撹拌して単一の流し込み可能な液体を形成する段階と
を備える、PCMを調製する項目20から40のいずれかに記載の方法。
【0174】
(項目46)
無水金属硝酸塩、および/または、最終的なPCM組成物において所望される数より少ない水和数の金属硝酸塩水和物が、ある量の水を追加されて、1または複数の種類の金属硝酸塩水和物の代わりに使用され、上記最終的なPCM組成物が提供される、PCMを調製する項目45に記載の方法。
【0175】
(項目47)
上記PCM組成物において所望される数より多くの水和数を有する金属硝酸塩水和物が使用され、余分な水が1または複数の種類の無水金属硝酸塩、および/または、より少ない水和数を有する金属硝酸塩水和物によって除去されるか、または飽和され、上記最終的なPCM組成物が提供される、PCMを調製する項目45または46のいずれかに記載の方法。
【0176】
(項目48)
金属硝酸塩溶液が使用され、余分な水が、1または複数の種類の無水金属硝酸塩、および/または、水和数がより少ない金属硝酸塩水和物を用いて除去または飽和されて上記最終的なPCM組成物が生じる、PCMを調製する項目45から47のいずれかに記載の方法。
【0177】
(項目49)
上記金属硝酸塩および/または金属硝酸塩水和物が反応によって合成または生成される、PCMを調製する項目45から48のいずれかに記載の方法。
【0178】
(項目50)
上記PCMは、特定の組成物を実現するための正確な量の水の存在下で、対応する塩基性金属塩による硝酸の中和によって形成される、PCMを調製する項目45から49のいずれかに記載の方法。
【0179】
(項目51)
上記PCMは、余分な水の存在下で、対応する金属塩基による硝酸の中和によって形成され、上記余分な水は次に、1または複数の種類の無水金属硝酸塩、および/または、水和数がより少ない金属硝酸塩水和物で除去または飽和され、上記最終的なPCM組成物が提供される、PCMを調製する項目45から50のいずれかに記載の方法。
【0180】
(項目52)
硝酸塩以外の任意のアニオンが、イオン交換、または、適切な金属塩を用いた沈殿およびその後に続く物理的分離によって除去される、PCMを調製する項目45から51のいずれかに記載の方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23