(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】傾いたチップを利用して測定対象の表面の特性を得る方法、この方法が遂行されるための原子顕微鏡及びこの方法が遂行されるために格納媒体に格納されたコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
G01Q 10/06 20100101AFI20240305BHJP
G01Q 60/34 20100101ALI20240305BHJP
【FI】
G01Q10/06
G01Q60/34
(21)【出願番号】P 2022540640
(86)(22)【出願日】2020-12-18
(86)【国際出願番号】 KR2020018707
(87)【国際公開番号】W WO2021145578
(87)【国際公開日】2021-07-22
【審査請求日】2022-07-05
(31)【優先権主張番号】10-2020-0005054
(32)【優先日】2020-01-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0017159
(32)【優先日】2020-02-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】515304628
【氏名又は名称】パーク システムズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジョ、アージン
(72)【発明者】
【氏名】パク、サン-イル
(72)【発明者】
【氏名】アン、ビョウン-ウーン
(72)【発明者】
【氏名】バイク、セウン フン
【審査官】野口 聖彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-172571(JP,A)
【文献】特開2005-283540(JP,A)
【文献】特開2011-022010(JP,A)
【文献】特開2010-060577(JP,A)
【文献】特表平10-507000(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01Q 10/00-90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象の表面と相互作用するチップを含む測定装置を利用して前記測定対象の表面の特性を得る方法であって、
第1制御方式を使用して、前記測定対象の表面に対して前記チップを第1方向に相対移動させながら前記測定対象の表面の特性を得る、正常測定ステップと、
前記正常測定ステップを遂行中に、前記チップにより得られる少なくとも一つの特性値が特定範囲を外れて異常状態と判定された場合、事前に定義された前記測定対象の表面の形状に基づいて設定された第2制御方式で前記チップが前記異常状態から外れるように制御される、脱出ステップと、
前記脱出ステップの後に、また前記正常測定ステップが遂行されるステップと、を含
み、
前記第2制御方式は、
前記測定対象の表面に対して前記チップを前記第1方向とは反対方向に相対移動させる第1動作と、
前記測定対象の表面に対して前記チップを離隔させる第2動作と
の組み合わせによりなされ、
前記第2制御方式は、前記第1動作と前記第2動作が同時に、または順次に遂行されるように定義されている、
測定対象の表面の特性を得る方法。
【請求項2】
前記事前に定義された表面の形状は、前記第1方向に対して開放されたアンダーカット構造の形状である、請求項1に記載の測定対象の表面の特性を得る方法。
【請求項3】
前記測定装置は、原子顕微鏡であり、
前記第1制御方式で、前記チップは、前記測定対象に対して非接触モードまたはタッピングモードで制御され、
前記第2制御方式で、前記チップは、特定周波数で振動するように制御され、
前記特性値は、振動する前記チップの振幅であり、
前記チップの振幅が前記特定範囲以下の閾値以下である場合、前記異常状態と判定される、請求項1または2に記載の測定対象の表面の特性を得る方法。
【請求項4】
前記チップは、カンチレバーから延びて尖部を有し、
前記正常測定ステップの遂行時に、前記第1方向に対して前記尖部が前記カンチレバーより先行して、前記チップが前記測定対象の表面と傾いた状態で相互作用する、請求項3に記載の測定対象の表面の特性を得る方法。
【請求項5】
前記チップは、前記カンチレバーから前記尖部が実質的に直線をなすように延びるように形成され、
前記測定装置は、前記チップの前記測定対象の表面に対するフィードバックのために第2方向に前記チップを移動させることができ、
前記第2方向は、前記第1方向と垂直をなすことなく傾いた方向である、請求項4に記載の測定対象の表面の特性を得る方法。
【請求項6】
前記チップは、前記カンチレバーから前記尖部が直線をなすことのないように傾いて形成され、
前記測定装置は、前記チップの前記測定対象の表面に対するフィードバックのために第2方向に前記チップを移動させることができ、
前記第2方向は、前記第1方向と実質的に垂直をなす、請求項4または5に記載の測定対象の表面の特性を得る方法。
【請求項7】
前記チップは、前記カンチレバーから前記尖部が直線をなすことのないように傾いて形成され、
前記測定装置は、前記チップの前記測定対象の表面に対するフィードバックのために第2方向に前記チップを移動させることができ、
前記第2方向は、前記第1方向と垂直をなすことなく傾いた方向である、請求項4から6のいずれか一項に記載の測定対象の表面の特性を得る方法。
【請求項8】
チップとカンチレバーを備える探針部により、測定対象の表面を測定するように構成された原子顕微鏡において、
前記チップが前記測定対象の表面に対して第1方向に相対移動するように、前記測定対象を移動させるように構成されるXYスキャナと、
前記探針部が取り付けられ得るように構成され、前記カンチレバーの振動または反りを測定できる光学システム及び前記光学システムにより得られるデータに基づいて前記チップと前記測定対象の表面間の距離を制御するように前記探針部を少なくとも第2方向及びその反対方向に移動させるように構成されるZスキャナを含むヘッドと、
前記XYスキャナ及び前記ヘッドを制御するコントローラと、を含み、
前記コントローラは、
第1制御方式を使用して、前記測定対象の表面に対して前記チップを第1方向に相対移動させながら前記測定対象の表面の特性を得る、正常測定制御
を遂行し、
前記正常測定制御を遂行中に、前記チップにより得られる少なくとも一つの特性値が特定範囲を外れて異常状態と判定された場合、事前に定義された前記測定対象の表面の形状に基づいて設定された第2制御方式で前記チップが前記異常状態から外れるように制御される、脱出制御
を遂行し、
前記脱出制御の後に、また前記正常測定制御を遂行する
ように、前記XYスキャナ及び前記ヘッドを制御
し、
前記第2制御方式は、
前記測定対象の表面に対して前記チップを前記第1方向とは反対方向に相対移動させる第1動作と、
前記測定対象の表面に対して前記チップを離隔させる第2動作と
の組み合わせによりなされ、
前記第2制御方式は、前記第1動作と前記第2動作が同時に、または順次に遂行されるように定義されている、
原子顕微鏡。
【請求項9】
前記事前に定義された表面の形状は、前記第1方向に対して開放されたアンダーカット構造の形状である、請求項8に記載の原子顕微鏡。
【請求項10】
前記チップが前記測定対象の表面に対して傾くようにアプローチされ得るように、前記ヘッドが傾くことができる、請求項
9に記載の原子顕微鏡
。
【請求項11】
請求項1から
7のいずれか一項に記載の測定対象の表面の特性を得る方法を遂行するために格納媒体に格納されたコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、傾いたチップを利用して測定対象の表面の特性を得る方法、この方法が遂行されるための原子顕微鏡及びこの方法が遂行されるために格納媒体に格納されたコンピュータプログラムに関し、より具体的には、アンダーカット(undercut)構造の内部まで深くイメージを得ることができ、チップがアンダーカット構造の内部から容易に脱出できる、傾いたチップを利用して測定対象の表面の特性を得る方法、この方法が遂行されるための原子顕微鏡及びこの方法が遂行されるために格納媒体に格納されたコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
試料の表面を測定する多様な方式の顕微鏡が存在する。大きく分類すると、光学顕微鏡、電子顕微鏡及び走査探針顕微鏡に分けられる。このような顕微鏡は、測定方式の差によって互いに異なる長短所を有し、特定の試料の形状に対して測定方式の差を考慮して適した顕微鏡が採択されて使用されたりする。
【0003】
一方、最近は、半導体、ディスプレイ産業の発展を通して、微細化された構造を測定しなければならない必要が増加しており、特に大きな平面構造で上側に突出した突出部を有し、この突出部の側部が窪んだ、微細なアンダーカット(undercut)構造の形状を正確に測定しなければならない必要が生じている。
【0004】
このようなアンダーカット構造を有する試料は、その構造的特性によって、上側ではアンダーカット構造が隠されているため、どのような顕微鏡でもアンダーカット構造の内部まで測定することは困難である。もちろん、アンダーカット構造の断面を走査電子顕微鏡(SEM;Scanning Electron Microscope)で測定することで形状を知ることはできるが、このような測定方式は、試料の破壊を伴わざるをえないので、試料に損傷を与えずにアンダーカット構造の形状を測定できる究極的なソリューションになることはできない。
【0005】
試料に損傷を与えずにアンダーカット構造を測定可能なソリューションとしては、走査探針顕微鏡が利用され得、特にチップ付きのカンチレバーを利用して試料を測定する原子顕微鏡が利用され得る。
【0006】
しかし、原子顕微鏡も試料に向かって垂直に伸びたチップを利用して試料の表面を測定することが一般的であるため、傾いた側壁の構造の測定のためには、チップを傾けるか、特殊なチップを使用する方式等の応用が行われなければならなかった。
【0007】
本特許の出願人は、原子顕微鏡を利用してチップを傾けて測定するオーバーハング表面構造を分析する技術を開発して「3DMTM」というモデル名で製品化に成功をしており、下記のような多数の特許を開示した。しかし、このようなチップを傾ける構造では、アンダーカット構造にチップが深く入ることができず、アンダーカット構造を十分に測定することは困難である短所がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】韓国登録特許第10-0761059号(発明の名称:オーバーハングサンプル測定が可能な走査探針顕微鏡)
【文献】米国登録特許US7,644,447B2(発明の名称:Scanning probe microscope capable of measuring samples having overhang structure)
【文献】米国公開特許US2009/0200462A1(発明の名称:SCANNING PROBE MICROSCOPE CAPABLE OF MEASURING SAMPLES HAVING OVERHANG STRUCTURE)
【文献】米国登録特許US8,209,766B2(発明の名称:Scanning probe microscope capable of measuring samples having overhang structure)
【文献】米国公開特許US2010/0218285A1(発明の名称:SCANNING PROBE MICROSCOPE CAPABLE OF MEASURING SAMPLES HAVING OVERHANG STRUCTURE)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、前記のような問題点を解決するために案出されたものであって、本発明において解決しようとする課題は、アンダーカット(undercut)構造の内部まで深くイメージを得ることができ、チップがアンダーカット構造の内部から容易に脱出できる、傾いたチップを利用して測定対象の表面の特性を得る方法、この方法が遂行されるための原子顕微鏡及びこの方法が遂行されるために格納媒体に格納されたコンピュータプログラムを提供することにある。
【0010】
本発明の課題は、以上において言及した課題に制限されず、言及されていないまた他の課題は、下記の記載から当業者に明確に理解され得るだろう。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するための本発明の一実施例に係る方法は、測定対象の表面と相互作用するチップ(tip)を含む測定装置を利用して前記測定対象の表面の特性を得る方法である。この方法は、第1制御方式を使用して、前記測定対象の表面に対して前記チップを第1方向に相対移動させながら前記測定対象の表面の特性を得る、正常測定ステップ;前記正常測定ステップを遂行中に、前記チップにより得られる少なくとも一つの特性値が特定範囲を外れて異常状態と判定された場合、事前に定義された前記測定対象の表面の形状に基づいて設定された第2制御方式で前記チップが前記異常状態から外れるように制御される、脱出ステップ;及び、前記脱出ステップ以後に、また前記正常測定ステップが遂行されるステップ;を含む。
【0012】
本発明の他の特徴によれば、前記事前に定義された表面の形状は、前記第1方向に対して開放されたアンダーカット(undercut)形状である。
【0013】
本発明のまた他の特徴によれば、前記測定装置は、原子顕微鏡であり、前記第1制御方式及び前記第2制御方式で、前記チップは、前記測定対象に対して非接触モード(non-contact mode)またはタッピングモード(tapping mode)で作動し、前記異常状態を判定する前記特性値は、振動する前記チップの振幅であり、前記チップの振幅が前記特定範囲より小さくなった場合、前記異常状態と判定される。
【0014】
本発明のまた他の特徴によれば、前記チップは、カンチレバーから延びて尖部(distal end)を有し、前記正常測定ステップの遂行時に、前記第1方向に対して前記尖部が前記カンチレバーより先行するように、前記チップが前記測定対象の表面と傾いた状態で相互作用するように構成される。
【0015】
本発明のまた他の特徴によれば、前記チップは、前記カンチレバーから前記尖部が実質的に直線をなすように延びるように形成され、前記測定装置は、前記チップの前記測定対象の表面に対するフィードバックのために第2方向に前記チップを移動させることができるように構成され、前記第2方向は、前記第1方向と垂直をなすことなく傾いた方向である。
【0016】
本発明のまた他の特徴によれば、前記チップは、前記カンチレバーから前記尖部が直線をなすことのないように傾いて形成され、前記測定装置は、前記チップの前記測定対象の表面に対するフィードバックのために第2方向に前記チップを移動させることができるように構成され、前記第2方向は、前記第1方向と実質的に垂直をなす。
【0017】
本発明のまた他の特徴によれば、前記チップは、前記カンチレバーから前記尖部が直線をなすことのないように傾いて形成され、前記測定装置は、前記チップの前記測定対象の表面に対するフィードバックのために第2方向に前記チップを移動させることができるように構成され、前記第2方向は、前記第1方向と垂直をなすことなく傾いた方向である。
【0018】
本発明のまた他の特徴によれば、前記第2制御方式は、前記測定対象の表面に対して前記チップを前記第1方向とは反対方向に相対移動させる第1動作と、前記測定対象の表面に対して前記チップを離隔させる第2動作の組み合わせによりなされる。
【0019】
本発明のまた他の特徴によれば、前記第2制御方式は、前記第1動作と前記第2動作は同時に、または順次に遂行されるように定義される。
【0020】
前記課題を解決するための本発明の一実施例に係る原子顕微鏡は、チップとカンチレバーを備えた探針部により、測定対象の表面を測定するように構成された原子顕微鏡である。この原子顕微鏡は、前記チップが前記測定対象の表面に対して第1方向に相対移動するように、前記測定対象を移動させるように構成されるXYスキャナ;前記探針部が取り付けられ得るように構成され、前記カンチレバーの振動または反りを測定できる光学システム及び前記光学システムにより得られるデータに基づいて前記チップと測定対象の表面間の距離を制御するように前記探針部を少なくとも第2方向及びその反対方向に移動させるように構成されるZスキャナを含むヘッド;及び、前記XYスキャナ及び前記ヘッドを制御するコントローラ;を含む。前記コントローラは、第1制御方式を使用して、前記測定対象の表面に対して前記チップを第1方向に相対移動させながら前記測定対象の表面の特性を得る、正常測定制御と、前記正常測定制御を遂行中に、前記チップにより得られる少なくとも一つの特性値が特定範囲を外れて異常状態と判定された場合、事前に定義された前記測定対象の表面の形状に基づいて設定された第2制御方式で前記チップが前記異常状態から外れるように制御される、脱出制御と、前記脱出制御以後に、また前記正常測定制御を遂行するように、前記XYスキャナ及び前記ヘッドを制御する。
【0021】
本発明の他の特徴によれば、前記事前に定義された表面の形状は、前記第1方向に対して開放されたアンダーカット(undercut)形状である。
【0022】
本発明のまた他の特徴によれば、前記チップが前記測定対象の表面に対して傾くようにアプローチされ得るように、前記ヘッドが傾くことができるように構成される。
【0023】
本発明のまた他の特徴によれば、前記第2制御方式は、前記XYスキャナにより前記測定対象の表面に対して前記チップを前記第1方向とは反対方向に相対移動させる第1動作と、前記Zスキャナにより前記測定対象の表面に対して前記チップを離隔させる第2動作の組み合わせによりなされる。
【0024】
前記課題を解決するための本発明の一実施例に係るコンピュータプログラムは、上述した方法を遂行するための格納媒体に格納される。
【発明の効果】
【0025】
本発明の方法によれば、アンダーカット構造の形状をさらに深くイメージングでき、アンダーカット構造の内部空間に進入したチップを自動で速くその内部空間から脱出させてイメージをまた測定することができ、作動が容易であって、スループットの向上を期待することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】XYスキャナとZスキャナが分離された原子顕微鏡の概略的な斜視図である。
【
図2】光学システムを利用して測定対象を測定する方式を説明した概念図である。
【
図3】ヘッドを傾けることができるように構成された原子顕微鏡の概略的な斜視図である。
【
図4】本発明の方法に利用可能な探針部の概略的な斜視図及び正面図である。
【
図5】本発明の方法が適用されるアンダーカット構造の例示的な断面図である。
【
図6】本発明の測定対象の表面の特性を得る方法のステップを示したフローチャートである。
【
図7】
図6の第1制御方式によるチップの相対移動を順に示した側面図である。
【
図8】
図6の第2制御方式によるチップの相対移動を順に示した側面図である。
【
図9】
図6のステップを遂行する時のXスキャン方向によるチップの非接触モード時の振幅を示したグラフである。
【
図10】本発明による方法を遂行するための制御に対するチップの振幅と速度間の関係を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の利点及び特徴、そして、それらを達成する方法は、添付の図面と共に詳細に後述されている実施例を参照すると、明確になるだろう。しかし、本発明は、以下において開示される実施例に限定されるものではなく、互いに異なる多様な形態に具現され、単に、本実施例は、本発明の開示が完全なものとなるようにし、本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者に発明の範疇を完全に知らせるために提供されるものであり、本発明は、請求項の範疇により定義されるだけである。
【0028】
第1、第2等が多様な構成要素を述べるために使用されるが、これらの構成要素は、これらの用語により制限されないことはもちろんである。これらの用語は、単に一つの構成要素を他の構成要素と区別するために使用するものである。従って、以下において言及される第1構成要素は、本発明の技術的思想内で第2構成要素であってもよいことはもちろんである。併せて、第1コーティング後、第2コーティングを行うと記載したとしても、その反対の順にコーティングを行うことも本発明の技術的思想内に含まれることはもちろんである。
【0029】
本明細書において図面符号を使用するにあたって、図面が異なる場合でも同じ構成を示している場合は、できるだけ同じ図面符号を使用する。
【0030】
図面で示された各構成の大きさ及び厚さは、説明の便宜のために示されたものであり、本発明は、示された構成の大きさ及び厚さに必ずしも限定されるものではない。
【0031】
[本発明を実行するための原子顕微鏡の構成]
まず、本発明の方法を遂行するための測定装置としての原子顕微鏡の構成について例示として説明する。本明細書においては、原子顕微鏡を例示として説明するだけであり、チップを使用する走査探針顕微鏡(SPM)でも後述する方法が遂行され得ることはもちろんである。
【0032】
図1は、XYスキャナとZスキャナが分離された原子顕微鏡の概略的な斜視図であり、
図2は、光学システムを利用して測定対象を測定する方式を説明した概念図であり、
図3は、ヘッドを傾けることができるように構成された原子顕微鏡の概略的な斜視図であり、
図4は、本発明の方法に利用可能な探針部の概略的な斜視図及び正面図である。
【0033】
図1を参照すると、原子顕微鏡100は、探針部110と、XYスキャナ120と、ヘッド130と、Zステージ140と、固定フレーム150と、コントローラ160を含んで構成される。
【0034】
探針部110は、チップとカンチレバーを備え、チップが測定対象1の表面に接触または非接触状態で沿うように構成される。探針部110は、以下の他の構成と別に提供され得、後述するヘッド130に固定して使用する。本発明に適した探針部110の構造は、
図4を参照して後述する。
【0035】
XYスキャナ120は、チップが測定対象1の表面に対して少なくとも第1方向に相対移動するように、測定対象1を移動させるように構成される。具体的に、XYスキャナ120は、測定対象1をXY平面でX方向及びY方向にスキャンするように機能する。
【0036】
ヘッド130は、探針部110が取り付けられ得るように構成され、カンチレバーの振動または反りを測定できる光学システム及びこの光学システムにより得られるデータに基づいてチップと測定対象の表面間の距離を制御するように探針部110を少なくとも第2方向及びその反対方向に移動させるように構成されるZスキャナを含む。光学システムは、
図2を参照して後述する。ここで、Zスキャナ131は、探針部110を比較的に小さな変位で移動させる。
【0037】
Zステージ140は、探針部110とヘッド130を相対的に大きな変位でZ方向に移動させる。
【0038】
固定フレーム150は、XYスキャナ120とZステージ140を固定する。
【0039】
コントローラ160は、少なくともXYスキャナ120、ヘッド130及びZステージ140を制御するように構成される。コントローラ160は、第1制御方式を使用して、測定対象1の表面に対してチップを第1方向に相対移動させながら測定対象1の表面の特性を得る、正常測定制御と、このような正常測定制御を遂行中に、チップにより得られる少なくとも一つの特性値が特定範囲を外れて異常状態と判定された場合、事前に定義された測定対象1の表面の形状に基づいて設定された第2制御方式でチップが異常状態から外れるように制御される、脱出制御と、このような脱出制御以後に、また正常測定制御を遂行するように、XYスキャナ120及びヘッド130を制御する。具体的な制御方法は、
図6から
図10を参照して後述する。
【0040】
一方、原子顕微鏡100は、大きな変位でXYスキャナ120をXY平面上で移動させることができるように構成される図示しないXYステージをさらに含むことができる。この場合、XYステージは、固定フレーム150に固定されるだろう。
【0041】
原子顕微鏡100は、測定対象1の表面を探針部110でスキャンしてトポグラフィー(topography)等のイメージを得る。測定対象1の表面と探針部110間の相対移動は、XYスキャナ120により行われ得、測定対象1の表面に沿うように探針部110を上下に移動させることは、Zスキャナ131により行われ得る。一方、探針部110とZスキャナ131は、プローブアーム(probe arm)132により連結される。
【0042】
図2を参照すると、XYスキャナ120は、測定対象1を支持し、測定対象1をXY方向にスキャンする。XYスキャナ120の駆動は、例えば、圧電アクチュエータ(piezoelectric actuator)により発生でき、本実施例のようにZスキャナ131と分離された場合は、積層された圧電駆動機(staced piezo)を使用することもできる。XYスキャナ120については、本出願人が登録権者である韓国登録特許第10-0523031号(発明の名称:走査探針顕微鏡でのXYスキャナ及びその駆動方法)及び第10-1468061号(発明の名称:スキャナの制御方法とそれを利用したスキャナ装置)を参照する。
【0043】
Zスキャナ131は、探針部110と連結され、探針部110の高さを調節できる。Zスキャナ131の駆動もXYスキャナ120のように圧電アクチュエータにより行われてもよい。Zスキャナ131については、本出願人が登録権者である韓国登録特許第10-1476808号(発明の名称:スキャナ装置及びそれを含む原子顕微鏡)を参照する。Zスキャナ131が収縮すると、探針部110は、測定対象1の表面から遠くなり、Zスキャナ131が拡張されると、探針部110は、測定対象1の表面に近くなる。
【0044】
XYスキャナ120とZスキャナ131は、
図1及び
図2のように分離されて別個の部材で存在することもできるが、チューブ型圧電アクチュエータにより一つの部材に統合されて存在することもできる。このようなチューブ型圧電アクチュエータの場合、XY方向の移動とZ方向の移動を共に行うことができるが、XY方向への挙動とZ方向への挙動がカップリングされてイメージを歪める問題を有している。しかし、このような限界にもかかわらず、このような構造が本発明に活用され得ることはもちろんである。このようなXYZ統合型スキャナは、米国特許公開第2012-0079635A1(発明の名称:Methods and devices for correcting errors in atomic force microscopy)等に開示されており、この他にも公知の原子顕微鏡の構造が使用され得る。
【0045】
ヘッド130は、探針部110のカンチレバーの振動または反りを測定できる光学システムを有し、この光学システムは、レーザ発生ユニット133とディテクタ(detector)134を含む。
【0046】
レーザ発生ユニット133では、レーザ光(点線で示す)を探針部110のカンチレバーの表面に照射し、カンチレバーの表面から反射したレーザ光は、PSPD(Position Sensitive Photo Detector)のような2軸のディテクタ134に結像する。このようなディテクタ134で検出される信号は、制御のためにコントローラ160に送られる。
【0047】
コントローラ160は、XYスキャナ120とZスキャナ131と連結されて、XYスキャナ120とZスキャナ131の駆動を制御する。また、コントローラ160は、ディテクタ134から得られた信号をADCコンバータによりデジタル信号に変換し、これを活用して探針部110のカンチレバーの反り、ねじれ等の程度を判断できる。コントローラ160には、コンピュータが統合されていてもよく、別途のコンピュータとコントローラ160と連結されていてもよい。コントローラ160は、一つに統合されてラックに入れられてもよいが、2つ以上に分割されて存在してもよい。
【0048】
コントローラ160は、測定対象1をXYスキャナ120によりXY方向にスキャンできるようにXYスキャナ120を駆動する信号を送る一方、探針部110が測定対象1の表面と一定の相互力を有するように(即ち、カンチレバーが一定の程度の反りを維持するように、またはカンチレバーが一定の振幅で振動するように)Zスキャナ131を制御する。即ち、コントローラ160は、ソフトウェア的なまたは電気回路的な閉ループフィードバックロジック(closed loop feedback logic)を有する。また、コントローラ160は、Zスキャナ131の長さ(またはZスキャナ131に使用されたアクチュエータの長さ)を測定するか、Zスキャナ131に使用されたアクチュエータに印加される電圧等を測定することで、測定対象1の表面の形状データ(topography)を得る。
【0049】
ここで、探針部110のチップは、測定対象1の表面と接触した状態で測定対象1の表面と相対移動をすることもでき(これを「接触モード」という)、表面と接触していない状態で振動しながら測定対象1の表面と相対移動をすることもでき(これを「非接触モード」という)、また測定対象1の表面を叩く状態で振動しながら測定対象1の表面と相対移動をすることもできる(これを「タッピングモード」(tapping mode)という)。このような多様なモードは、既存に開発されたモードに該当するので、詳細な説明は省略する。
【0050】
一方、コントローラ160が得る測定対象1の表面に関するデータは、形状データ以外に多様であり得る。例えば、探針部110に磁力を帯びるようにするか、静電力等を加える特殊な処理をすることで、測定対象1の表面の磁力に関するデータ、静電気力に関するデータ等を得ることができる。このような原子顕微鏡のモードは、MFM(Magnetic Force Microscopy)、EFM(Electrostatic Force Microscopy)等があり、これは公知の方法を使用して具現され得る。この他にも、測定対象1の表面に関するデータは、表面の電圧、表面の電流等であってもよい。
【0051】
一方、ヘッド130の構成は、説明の便宜上、必須な構成要素のみを記載しただけで、この他の光学システム等の具体的な構成は省略したことに留意すべきであり、例えば、ヘッド130には、韓国登録特許第10-0646441号に開示された構成がさらに含まれ得る。
【0052】
図3を参照すると、ヘッド130を傾けることができる原子顕微鏡100'の構成が示される。参考までに、
図1及び
図2においては、このような構成は省略しており、
図3においても、説明の便宜のために、レーザ発生ユニット133、ディテクタ134及びプローブアーム132等は省略している。
【0053】
原子顕微鏡100'は、探針部110のチップ(
図3においては図面番号図示しない、詳細は後述する)を傾けるためにヘッド130を傾けることができるように構成される。ヘッド130は、延長ブロック171により案内部172と連結され、案内部172は、特定回転半径を有するように円弧の形状になされ得る。
【0054】
延長ブロック171は、案内部172に沿ってスライド移動可能に構成され、延長ブロック171の移動によって探針部110のチップが傾くことができる。特定回転半径は、延長ブロック171の移動によって探針部110のチップの尖部(distal end)が移動しないように設定されることが好ましいが、そうしなくてもチップを特定の角度で傾くようにすることができれば、どのように設定しても関係ない。
【0055】
一方、ヘッド130が測定対象1から垂直方向からθだけ傾く場合、Zスキャナ131もθだけ傾くため、Zスキャナ131により誘発される探針部110の動きもθだけ傾くようになる。
【0056】
このようにヘッド130を傾くようにすることができる構成は、本発明の出願人が登録権者である韓国登録特許第10-0761059号等に開示されており、開示された構成は、参照として本発明に含まれる。
【0057】
図4の(a)及び(b)を参照すると、探針部110、110tは、カンチレバー111とチップ112、112tで構成される。カンチレバー111は、反りが起こるか振動が起こる部分であり、上述したレーザ発生ユニット133で発生したレーザスポット(laser spot)が結像することで、ディテクタ134により反りの程度及び振動が測定され得る。
【0058】
チップ112、112tは、カンチレバー111から延びて、
図4の(a)のようにX方向に対称に形成されることが一般的である。もちろん、このような探針部110も、
図3の原子顕微鏡100'を利用してヘッド130を傾けることで、本発明の方法に利用され得る。しかし、
図4の(b)のようにX方向に傾いたチップ112tを有する探針部110tを利用すれば、アンダーカット構造の形状をよりよく測定できる。具体的に、チップの尖部113がチップの中心Cから外れて斜めに形成され得る。
【0059】
図4の(c)を参照すると、X方向に対して多様な角度で傾いたチップが本発明に活用され得る。12゜、20゜、30゜等とチップの尖部113が傾いた探針部110t'、110t''、110t'''を本発明の方法に活用できる。もちろん、全く傾いていない探針部110も本発明の方法に活用され得る。
【0060】
後述する本発明の方法は、装置及び探針部の多様な組み合わせで遂行され得る。
【0061】
まず、チップ112がカンチレバー111から尖部113が実質的に直線をなすように延びるように形成された
図4の(a)のような探針部110と、チップ112の測定対象1の表面に対するフィードバックのために第2方向にチップ112を移動させることができるように構成される原子顕微鏡100'の組み合わせで本発明の方法が遂行され得る。ここで、第2方向は、Xスキャン方向(第1方向)と垂直をなすことなく傾いた方向であって、
図3の原子顕微鏡100'を利用してヘッド130を傾けることで得られる。即ち、まっすぐに伸びた探針部110と傾けたヘッド130によって本発明の方法が遂行され得る。ここで、「実質的に直線をなすこと」は、直線をなすことを目標として作製したが、設計誤差、公差、作製時の誤差等により発生した誤差によって正確に直線をなしてはいないことも含む。例えば、「実質的に直線をなすこと」は、チップ112の中心Cと尖部113間の誤差がチップ112の全長に対して5%以下をなすこと、さらに好ましくは、3%以下をなすことを意味し得る。
【0062】
次に、チップ112tがカンチレバー111から尖部113が実質的に直線をなすことのないように傾いて形成された
図4の(b)のような探針部110tと、チップ112tの測定対象1の表面に対するフィードバックのために第2方向にチップ112tを移動させることができるように構成される原子顕微鏡100の組み合わせで本発明の方法が遂行され得る。ここで、第2方向は、Xスキャン方向(第1方向)と実質的に垂直をなす方向であって、
図1の原子顕微鏡100を利用してヘッド130を傾けなくても得られる。即ち、反った探針部110tと傾けていないヘッド130によって本発明の方法が遂行され得る。ここで、「実質的に垂直」とは、垂直をなすことを目標として作製したが、設計誤差、公差、組み立て時の誤差等により発生した誤差によって正確に90゜をなしてはいないことも含む。例えば、「実質的に垂直」は、第1方向と第2方向が89゜以上、91゜以下をなすこと、さらに好ましくは、89.5゜以上、90.5゜以下をなすことを意味し得る。
【0063】
次に、チップ112tがカンチレバー111から尖部113が実質的に直線をなすことのないように傾いて形成された
図4の(b)のような探針部110tと、チップ112tの測定対象1の表面に対するフィードバックのために第2方向にチップ112tを移動させることができるように構成される原子顕微鏡100'の組み合わせで本発明の方法が遂行され得る。ここで、第2方向は、Xスキャン方向(第1方向)と垂直をなすことなく傾いた方向であって、
図3の原子顕微鏡100'を利用してヘッド130を傾けることで得られる。即ち、反った探針部110と傾けたヘッド130によって本発明の方法が遂行され得る。この方法で最も傾いた尖部113と測定対象1の表面間のアプローチが起こり得るので、最も深くアンダーカット構造を測定できる長所を有する。以下において、本組み合わせによる装置を活用して、アンダーカット構造を測定する方法を説明する。
【0064】
[アンダーカット構造を有する測定対象の表面の特性を得る方法]
以下、添付の図面を参考にして本発明の測定対象の表面の特性を得る方法の実施例について説明する。
【0065】
図5は、本発明の方法が適用されるアンダーカット構造の例示的な断面図であり、
図6は、本発明の測定対象の表面の特性を得る方法のステップを示したフローチャートであり、
図7は、
図6の第1制御方式によるチップの相対移動を順に示した側面図であり、
図8は、
図6の第2制御方式によるチップの相対移動を順に示した側面図であり、
図9は、
図6のステップを遂行する時のXスキャン方向によるチップの非接触モード時の振幅を示したグラフであり、
図10は、本発明による方法を遂行するための制御に対するチップの振幅と速度間の関係を示したグラフである。
【0066】
図5を参照すると、アンダーカット構造の形状は、XY平面構造でZ方向に突出した突出部Pを有し、この突出部Pの側部が窪んだ形状と定義し得る。測定のためにスキャン方向(本説明においては、-X方向、言い換えれば、チップの相対移動方向、「第1方向」と称する)に対して開放された凹んだ形状を含む構造と定義される。異に定義すると、Z方向に上がるほどX方向に突出した部分P'が存在する形状をアンダーカット構造の形状と定義することもできる。
【0067】
上のような定義に照らすとき、
図5の(a)のように内部空間Sを有し、X方向に突出した部分P'を有する形状をアンダーカット構造の形状といえる。また、
図5の(b)のように内部空間Sの内側の形状が屈曲してX方向に突出した部分P'を有する形状もアンダーカット構造の形状といえる。
【0068】
結局、言い換えれば、上側から測定対象の平面を眺めるとき、突出した部分P'のため下側に見えない内部空間Sを有する構造をアンダーカット構造といえる。このように定義は多様になされ得、このような多様な変形例示に対して本発明が適用され得る。
【0069】
以下の例示では、最も簡単なアンダーカット構造である
図5の(a)を測定することを例示として、本発明の方法について説明する。
【0070】
図6を参照すると、まず、探針部を準備する(S110)。探針部110、110t、110t''、110t'''は、
図4のように傾いていないか、多様な角度をもって傾いたチップを有する探針部の中から選択され得る。アンダーカット構造の形状によってさらに深い部分まで測定が必要である場合、さらに傾いたチップを使用すればよい。このような探針部110、110t、110t''、110t'''の選定は、アンダーカット構造の形状によって適宜決定され得る。
【0071】
このような探針部110、110t、110t''、110t'''は、
図1から
図3のヘッド130、さらに具体的にはプローブアーム132に取り付けられ、
図2のようにレーザ発生ユニット133からのレーザをカンチレバー111が反射してディテクタ134に結像するようにすることで、準備が終了する。
【0072】
以後、ヘッド130を傾けることで、チップ112、112tを傾ける(S120)。
図3の原子顕微鏡100'を利用すれば、ヘッド130が傾くことができ、傾ける角度は、測定しようとするアンダーカット構造の形状を考慮して適宜選定されればよい。もちろん、傾いていないヘッド130に傾いたチップ112tを含む探針部110t'、110t''、110t'''を取り付けることで、本ステップは省略されてもよい。
【0073】
以後、チップ112、112tを測定対象1の表面にアプローチする(S130)。チップ112、112tは、傾いた状態で測定対象1の表面にアプローチされるが、非接触モードやタッピングモード状態でアプローチされ得る。非接触モードやタッピングモードの場合、チップ112、112tが特定周波数で振動するようになり、特定周波数の振幅が特定値に達するまでチップ112、112tを測定対象1の表面に接近させることでアプローチが完了する。このようなアプローチする方法は、既存の非接触モードやタッピングモードでのアプローチ方法に従い、本方法にもそのまま適用される。
【0074】
以後、第1制御方式を使用して、測定対象1の表面に対してチップ112、112tを第1方向に相対移動させながら測定対象1の表面の特性を得る(S140)。
【0075】
第1方向は、測定対象1に対するチップ112、112tの相対移動方向を意味し、
図7及び
図8を参照すると、本説明においては、-X方向を意味する。このようなチップ112、112tの相対移動は、測定対象1が固定され、チップ112、112tが移動されながら達成されてもよいが、
図1から
図3のように、XYスキャナ120とZスキャナ131が分離された原子顕微鏡100、100'構造によれば、Zスキャナ131が測定対象1の表面と一定距離維持のための移動だけを担当し、XYスキャナ120のスキャンによって測定対象1が移動することで達成されてもよい。本説明においては、便宜上、チップ112、112tが移動するように説明するが、これは、相対移動を意味するだけであり、実際にチップ112、112tだけが移動するということを意味するものではない。
【0076】
第1制御方式は、非接触モードやタッピングモードでチップ112、112tが動作しながら測定対象1の表面と一定距離を維持するようにフィードバック制御をする制御方式を意味する。即ち、一般的な非接触モードやタッピングモードを利用した制御方式が第1制御方式であると理解してもよい。
【0077】
このように、本ステップ(S140)では、チップ112tが傾いたまま測定対象の表面と一定距離を維持しながら測定対象1の表面に追随しながら-X方向へのスキャンがなされる。
図7の(a)のようにチップ112tは-X方向に相対移動して、
図7の(b)のように+Z方向に突出した部分に当たるとZスキャナ131が収縮する方式で+Z方向にもチップ112tは測定対象1の表面に追随する。それで、
図7の(c)のように、チップ112tの尖部113でない側部が+X方向に突出した部分P'と近接するようになってチップ112tの振動に影響を与えるようになる。
【0078】
このとき、
図9を参照すると、振幅が特定範囲(約7.5~8.5nm)を維持しながら第1制御方式が遂行され(S140)、突出した部分P'がチップ112tの側部に影響を与えるようになる瞬間、非接触モードでのチップ112tの振幅が急に特定値(約2nm)以下に落ちるようになる(
図9において、一点鎖線は振幅を意味し、実線はチップの高さ(即ち、Zスキャナ131の高さ)を意味する)。第1制御方式で8nmの振幅を有するように制御されていたチップ112tの振幅は、約2nm以下に急激に落ちる。このような振幅の急激な低下は、チップ112tの尖部113でない「側部での非正常な接触」が起こったこと(以下、「異常状態」という)を意味する。このような非正常な接触であると判断できることは、事前に測定対象1の表面にアンダーカット構造が存在するという仮定に基づく。
【0079】
このように第1制御方式を通して測定対象1の表面を測定する途中で、異常状態が起こるかをリアルタイムでモニタリングし、異常状態が起こったら異常状態と判定する(S150)。
【0080】
異常状態が起こるかの判定は、チップ112tにより得られる少なくとも一つの特性値が特定範囲を外れる場合と定められ得る。このような特性値としては、チップ112tの尖部113でない側部での予期せぬ接触によって変動され得る全ての値ができる。本実施例においては、非接触モードやタッピングモードで振動するチップ112tの振幅をこのような特性値として活用することを例示する。
【0081】
図9をまた参照すると、チップ112tの尖部113でない部分の接触は、チップ112tの振幅を急減させる要因として作用し、これは第1制御方式がフィードバックできる制御の範囲を超えるようになる(A地点)。このようにチップ112tの振幅が特定値以下に落ちる場合、異常状態と判定できる。ここで
図9において、特定値は、5.0nmに設定してもよく、4.0nmあるいは3.0nmに設定してもよい。また、特定値は、第1制御方式によってフィードバック制御されて維持される振幅(Set Pointともいう)の50%の値、または40%の値等のように設定されてもよい。
【0082】
一方、異常状態と判定された以後にも第1制御方式でチップ112tを制御すれば、振幅の急減は、チップ112tが測定対象1の表面に急激に非常に近くなったことを意味するため、
図7の(d)のように、Zスキャナ131がチップ112tを急激に持ち上げるようになる。Zスキャナ131は、チップ112tの測定対象1の表面に対するフィードバックのためにチップ112tの中心Cに沿ってチップ112tを移動させることができるように構成されるため、チップ112tを急激に持ち上げる場合、チップ112tは、アンダーカット形状のX方向に突出した部分P'に衝突して損傷されやすい。これによって、異常状態と判定された以後には、第1制御方式によってチップ112tの挙動とXYスキャナ120を制御してはならない。
【0083】
これによって、異常状態と判定された以後には、第1制御方式とは異なる第2制御方式でXYスキャナとZスキャナを制御して異常状態を外れるための脱出ステップを遂行する(S160)。
【0084】
第2制御方式は、チップ112tの損傷を防ぐために異常状態の判定直後にZスキャナ131の収縮(チップ112tの持ち上げ)をしないか、最小化させながら第1方向と反対のスキャン方向である+X方向にチップ112tを相対移動することでなされる。
【0085】
言い換えれば、第2制御方式は、測定対象1の表面に対してチップ112tを第1方向(-X方向)とは反対方向(+X方向)に相対移動させる第1動作と、測定対象1の表面に対してチップ112tを離隔させる第2動作の組み合わせによりなされる。このような第1動作と第2動作は同時に、または順次に遂行されるように定義される。即ち、第1動作と第2動作が区分されず合わせられた一つの動作に具現されてもよく、第1動作、第2動作が交互に順次に遂行されてもよい。
【0086】
図8を参照して第2制御方式について具体的に説明する。
【0087】
図8の(a)のような異常状態と判定されると、
図8の(b)のようにXYスキャナ120により測定対象1を-X方向に移動させる方式で、+X方向にチップ112tを相対移動させながら、Zスキャナ131の収縮(チップの持ち上げ)をしないか最小とする。
【0088】
以後、
図8の(c)のようにZスキャナ131を収縮してチップ112tを持ち上げる。Zスキャナ131は、チップ112tの中心Cに沿って(第2方向に沿って)チップ112tを移動させる。即ち、Zスキャナ131により、チップ112tの尖部113は、+X方向及び+Z方向に相対移動される。チップ112tを持ち上げると、またチップ112tの側部が突出した部分P'に当たるようになる。
【0089】
またチップ112tの側部が突出した部分P'に接触したと判断されると、
図8の(d)のように、またチップ112tを+X方向に相対移動させる。以後、
図8の(e)のようにZスキャナ131を収縮してチップ112tをまた持ち上げる。このような動作を
図8の(f)、(g)のようにさらに繰り返す。
【0090】
このような動作を繰り返して、
図8の(g)のようにチップ112tの側部ではなく尖部113が突出した部分P'と相互作用するようになれば、チップ112tの振幅が第1制御方式により制御され得る振幅の範囲内に入ってくるようになる。すると、第2制御方式を終了する。これによって、脱出ステップ(S150)が完了する。
【0091】
以後、
図8の(h)及び(i)のように第1制御方式を使用して、測定対象1の表面をスキャンする。
【0092】
図10を参照して、第1制御方式と第2制御方式をまた具体的に説明する。
【0093】
第1制御方式は、一般的な非接触モードまたはタッピングモードによってチップ112tが測定対象1の表面に沿って特定振幅(Set Point)を有するように制御される方式をいう。第1制御方式は、一般的な原子顕微鏡の制御方式によって、測定される振幅が特定振幅(Set Point)より大きい場合、チップ112tが測定対象1の表面と遠くなったと判断して、Zスキャナ131を拡張することで、チップ112tを測定対象1の表面に近くなるように制御する(Set Pointの右側の線に沿って制御)。また、第1制御方式は、一般的な原子顕微鏡の制御方式によって、測定される振幅が特定振幅(Set Point)より小さい場合、チップ112tが測定対象1の表面と近くなったと判断して、Zスキャナ131を収縮することで、チップ112tを測定対象1の表面から遠くなるように制御する(Set Pointの左側の線に沿って制御)。
【0094】
このとき、XYスキャナ120は、一定の方向(X方向)に測定対象1を移動させるように制御される(実線で図示)。本実施例においては、X方向への移動は、一定の速度に制御されると例示したが、例示に過ぎず、スキャン方向さえ維持されればスキャン速度は変動可能である。
【0095】
このように、第1制御方式は、「第1制御方式区間」内において特定振幅(Set Point)でチップ112tが振動するようにZスキャナ131を収縮または拡張することで、測定対象1の表面とチップ112t間の距離を制御する。
【0096】
チップ112tの振幅が閾値より低くなると(即ち、異常状態と判定されると)、第2制御方式が適用される。第2制御方式は、
図8を参照して先に説明したように、XYスキャナ120によるX方向への移動及びZスキャナ131による第2方向への移動の組み合わせによりアンダーカット構造の内部空間からチップ112tの尖部113を脱出させるための制御方式である。
【0097】
チップ112tの振幅が閾値より低くなり始めると、まずXYスキャナ120によるX方向への移動速度は低下し始める(実線参照)。これと併せて、Zスキャナ131の収縮速度が低下する(一点鎖線参照)。このような方式で突出した部分P'とチップ112tの側部間の衝突が防止される。
【0098】
チップ112tの振幅がさらに低くなると、XYスキャナ120によるX方向への移動方向が反対に変わる。このような中でも、Zスキャナ131は収縮し続けて、チップ112tを持ち上げる。第1制御方式でのX方向へのスキャン方向と反対方向にX方向スキャンを遂行しながらZスキャナ131を収縮させるので、チップ112tは、アンダーカット構造から外れることができる。
【0099】
ここで、Zスキャナ131による収縮速度は、下限を設定することが好ましい。Zスキャナ131は、第2制御方式で拡張されるように制御されることはないが、下限が設定された収縮は遂行し続ける。
【0100】
閾値は、第2制御方式の目標値、即ち、セットポイント(set point)として機能できる。なぜなら、第2制御方式は過渡期的なステップであって、脱出が目標であるからである。結局、第2制御方式により第1制御方式区間内にチップ112tの振幅値が進入でき、進入後には第1制御方式が遂行されて通常のイメージ獲得が可能となる。
【0101】
また
図6を参照すると、第2制御方式でチップ112tを制御する途中でもチップ112tが異常状態にあるかを判定し続ける(S170)。このような判定により異常状態が続けられると、継続的に第2制御方式が遂行され、異常状態から外れたと判定(
図9のBのように振幅が第1制御方式で制御可能な範囲内に入ってきた場合)すると、第1制御方式に制御方式を変更する(S140)。即ち、第1制御方式が適用されるステップ(S140)及び第2制御方式が適用されるステップ(S160)の遂行時、異常状態の判定(S150、S170)が伴わなければならない。
【0102】
上述したような本発明の方法によれば、アンダーカット構造の形状をさらに深くイメージングでき、アンダーカット構造の内部空間に進入したチップを自動で速くその内部空間から脱出させてイメージをまた測定することができ、作動が容易であって、スループットの向上を期待することができる。
【0103】
以上、添付の図面を参照して本発明の実施例を説明したが、本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者は、本発明のその技術的思想や必須な特徴を変更することなく他の具体的な形態で実施され得るということが理解できるだろう。それゆえ、以上において記述した実施例は、全ての面で例示的なものであり、限定的ではないものと理解すべきである。