(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】唾液回収容器
(51)【国際特許分類】
G01N 1/10 20060101AFI20240305BHJP
G01N 35/02 20060101ALI20240305BHJP
G01N 1/00 20060101ALN20240305BHJP
【FI】
G01N1/10 V
G01N35/02 B
G01N1/00 101H
(21)【出願番号】P 2020114201
(22)【出願日】2020-07-01
【審査請求日】2023-05-22
(73)【特許権者】
【識別番号】504205521
【氏名又は名称】国立大学法人 長崎大学
(74)【代理人】
【識別番号】100077012
【氏名又は名称】岩谷 龍
(72)【発明者】
【氏名】山本 郁夫
(72)【発明者】
【氏名】大田 廉
(72)【発明者】
【氏名】▲柳▼原 克紀
(72)【発明者】
【氏名】河野 茂
(72)【発明者】
【氏名】盛永 明啓
【審査官】岩永 寛道
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-036732(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0054202(US,A1)
【文献】特開2001-004502(JP,A)
【文献】意匠登録第1386421(JP,S)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/00- 1/44
G01N 35/00- 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
閉鎖底部と開口頂部を有する容器部を含み、当該開口頂部下方は、漏斗状に緩やかに傾斜した第一傾斜部に引き続いて急な傾斜の第二傾斜部を経て閉鎖底部に達し、当該第二傾斜部と閉鎖底部
のあいだに略U字状断面の第一窪み部が形成されている
唾液回収容器において、容器部の開口頂部に係合可能な蓋部を含み、当該蓋部の中央部には下方に向かい且つ第一窪み部より曲率の小さい略U字状断面の第二窪み部が形成され、容器部の第一窪み部は蓋部の第二窪み部に挿入可能であることを特徴とする唾液回収容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、診断検査用に唾液を採取するための容器に関し、特に、PCR検査用に唾液を採取するための唾液回収容器に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の先行技術として、特許文献1には、
図14及び
図15に示す生物学的試料の収集装置130が記載されている。この収集装置130は円筒形状の試料容器131を含み、試料容器131の一方の端部132は閉鎖されており、他方の端部は、試料を内部に収集することができるように開口133が形成されている。漏斗134は、被験者から試料を採取するためのテーパ状の受取り部分135を含み、受取り部分135を貫通する通路136を有するチューブ137は試料容器131の開口133に嵌合することが可能である。漏斗134はカバー138で閉鎖することができる。さらに、試料容器131に試料を収集した後、試料容器131の閉鎖された端部132を受け止めて容器を垂直位置に支持するための基部139を備えている。
【0003】
また、特許文献2には、
図16、
図17、
図18、
図19及び
図20に示す唾液の前処理用具が記載されている。
図16に示す把持棒140の先端に軟質合成樹脂製スポンジ141を有する綿棒142と、
図17に示す開口部143、導入部144、括れ部145及び袋状部146を有する混和容器147を用いて、唾液を軟質合成樹脂製スポンジ141に吸収させた綿棒142を混和容器147内に挿入した後、
図18に示すように、軟質合成樹脂製スポンジ141が混和容器147の括れ部145に挿入された状態で括れ部145を指圧しながら綿棒142を混和容器147から抜き取ることによって軟質合成樹脂製スポンジ141に吸収されていた唾液を袋状部146に絞り出し、さらに、
図19に示すように、混和容器147内に水酸化ナトリウム水溶液A又は酸性水溶液Bのいずれか一方を滴下した後、
図20に示すように、袋状部146に指圧を加えて軟質合成樹脂製スポンジ141を押しつぶす操作を繰り返して、唾液と滴下した水酸化ナトリウム水溶液A又は酸性水溶液Bとが軟質合成樹脂製スポンジ141への排出及び吸入によって撹拌されて、唾液と滴下した水酸化ナトリウム水溶液A又は酸性水溶液Bとを混和することが記載されている。
【0004】
さらに、特許文献3には、
図21、
図22及び
図23に示すサンプル収集のためのデバイスが記載されている。
図21において、サンプル収集デバイス150は蓋151及び管152を有し、
図21の1A-1A線断面図である
図22に示すように、蓋151は、外壁153と内壁154により規定される内部チャンバー155を有する。内壁154内には内部空間156と遮断部材158を有し、遮断部材158は開口部157に嵌合することが可能である。管152は容器159を有し、
図22の1B-1B線断面図である
図23に示す十字部材160によって管152の内面にしっかりと固定された連結部材161と遮断部材158は連結することが可能である。蓋151の内部空間156に蓄えられた流体は、遮断部材158を開口部157から離脱することによって管152の容器159内に放出することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開昭61-54423号公報
【文献】特開2003-4605号公報
【文献】特開2020-12849号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載された収集装置は、漏斗134と試料容器131を主な構成部材としているが、試料として唾液を収集する場合、試料容器131が縦長形状をしているので、粘性が高い唾液が試料容器131の内壁面に付着することがあり、収集した唾液の回収が困難である。また、縦長形状である試料容器131に収集された唾液量を確認することが困難である。
【0007】
また、特許文献2に記載された唾液の前処理用具は、袋状部146に唾液を絞り出すために、括れ部145を指圧するという煩雑な操作が必要である。
【0008】
さらに、特許文献3に記載されたデバイスは構造が複雑であって、操作が煩雑である。
【0009】
本発明は、従来技術の前記問題点に鑑みてこれを改良したものであって、操作が簡単であって、唾液の採取量の確認が容易にできる唾液回収容器を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために本願第一発明の唾液回収容器は、閉鎖底部と開口頂部を有する容器部を含み、当該開口頂部下方は、漏斗状に緩やかに傾斜した第一傾斜部に引き続いて急な傾斜の第二傾斜部を経て閉鎖底部に達し、当該第二傾斜部と閉鎖底部にあいだに略U字状断面の第一窪み部が形成されていることを特徴とする。
【0011】
本願第二発明の唾液回収容器は、容器部の開口頂部に係合可能な蓋部を含み、当該蓋部の中央部には下方に向かい且つ第一窪み部より曲率の小さい略U字状断面の第二窪み部が形成され、容器部の第一窪み部は蓋部の第二窪み部に挿入可能であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本願第一発明によれば、開口頂部から直接唾液を投入することができる。しかも、緩やかな傾斜の第一傾斜部に引き続いて急な傾斜の第二傾斜部があり、唾液経路の傾斜角度が変化しているので、唾液の投入量を確認しやすい。唾液は略U字状断面の第一窪み部に集まるので、ピペット等の器具で唾液を回収しやすい。本願第二発明によれば、蓋部を容器部の開口頂部に係合して別の容器部の第一窪み部を当該蓋部の第二窪み部に挿入し、さらに、別の蓋部を上記の別の容器部の開口頂部に係合するという作業を繰り返すことにより、多数の容器部と蓋部を上下に積み重ねることが可能である。このようにして、唾液の収集サイトから検査サイトへの唾液回収容器の搬送効率が高くなる。しかも、第二窪み部は第一窪み部より曲率が小さいので、第一窪み部を第二窪み部に挿入したときに両者のあいだに隙間ができやすく、容器部と蓋部の離脱が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1(a)は本発明の唾液回収容器の蓋部の一実施形態の断面図、
図1(b)は本発明の唾液回収容器の容器部の一実施形態の断面図である。
【
図2】
図2は本発明の唾液回収容器の容器部と蓋部の一実施形態を上下に積み重ねた状態を示す断面図である。
【
図3】
図3(a)は本発明の唾液回収容器の容器部の一実施形態の斜視図、
図3(b)は本発明の唾液回収容器の蓋部の一実施形態の斜視図である。
【
図4】
図4(a)はマウスピースの一実施形態の斜視図、
図4(b)はマウスピースの別の実施形態の斜視図である。
【
図5】
図5はPCR検査前処理自動化装置の概略斜視図である。
【
図6】
図6はPCR検査前処理自動化装置における第一工程(作業開始)を示す斜視図である。
【
図7】
図7はPCR検査前処理自動化装置における第二工程(移送用シリンジ装着)を示す斜視図である。
【
図8】
図8はPCR検査前処理自動化装置における第三工程(検体回収容器への移動)を示す斜視図である。
【
図9】
図9はPCR検査前処理自動化装置における第四工程(検体の吸引)を示す斜視図である。
【
図10】
図10はPCR検査前処理自動化装置における第五工程(検査容器への移動)を示す斜視図である。
【
図11】
図11はPCR検査前処理自動化装置における第六工程(検査容器への検体の投入)を示す斜視図である。
【
図12】
図12はPCR検査前処理自動化装置の動作シーケンスの概略を示す図である。
【
図13】
図13はPCR検査における情報管理システムの一例の概念を示す図である。
【
図14】
図14は特許文献1に記載された生物学的試料の収集装置の分解斜視図である。
【
図15】
図15は特許文献1に記載された生物学的試料の収集装置を組み立てた状態を示す断面図である。
【
図16】
図16は特許文献2に記載された唾液の前処理用具の綿棒を示す斜視図である。
【
図17】
図17は特許文献2に記載された唾液の前処理用具の混和容器を示す斜視図である。
【
図18】
図18は特許文献2に記載された唾液の前処理用具において、軟質合成樹脂スポンジに吸収されている唾液を絞り出している状態を示す図である。
【
図19】
図19は特許文献2に記載された唾液の前処理用具において、アルカリ性水溶液又は酸性水溶液を混和容器内に滴下している状態を示す図である。
【
図20】
図20は特許文献2に記載された唾液の前処理用具において、袋状部に指圧を加えて唾液と滴下した液を混和している状態を示す図である。
【
図21】
図21は特許文献3に記載されたサンプル収集デバイスの分解側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明するが、本発明の技術的範囲を逸脱しない範囲において、様々な変形や修正が可能である。
【0015】
本発明はPCR検査用に唾液を採取するための唾液回収容器に関するものであり、PCR検査とはPolymerase Chain Reaction(ポリメラーゼ連鎖反応)をいい、遺伝子の特定の領域を「一対のプライマー」と「耐熱性DNAポリメラーゼ」で増幅させ、病原体の遺伝子が僅かでも存在すれば、増幅させることで病原体を特定することができる検査であり,PCR検査は、検体前処理、RNA抽出及びPCR検査の手順でおこなわれる。
【0016】
本発明は検体前処理に供される検体(唾液)を回収する容器に関する。
図1(a)は本発明の唾液回収容器の蓋部の一実施形態の断面図、
図1(b)は本発明の唾液回収容器の容器部の一実施形態の断面図である。
図1(b)に示ように、唾液回収容器1は閉鎖底部2と開口頂部3を有する容器部4を含む。開口頂部3の下方は、漏斗状に緩やかに傾斜した第一傾斜部5に引き続いて急な傾斜の第二傾斜部6を経て閉鎖底部2に達し、第二傾斜部6と閉鎖底部2のあいだには略U字状断面の第一窪み部7が形成されている。
【0017】
図1(a)に示すように、容器部4の開口頂部3に係合可能な蓋部8の中央部には下方に向かい且つ第一窪み部7より曲率の小さい略U字状断面の第二窪み部9が形成されている。容器部1の第一窪み部7は蓋部8の第二窪み部9に挿入可能である。
【0018】
図1(b)に示すように、唾液回収容器1の上端部は開口頂部3であって、頂部が開口しているので、被験者が唾液を投入しやすくなっている。開口頂部3から唾液を投入した場合、粘性の高い唾液は緩やかな傾斜の第一傾斜部5を経て、急な傾斜の第二傾斜部6に至ることが想定される。このように、第一傾斜部5から第二傾斜部6にかけて傾斜角度が変化しているので、唾液の投入量を目視で確認しやすい。
【0019】
第一傾斜部5は開口頂部3から投入された唾液を第二傾斜部6に導入する機能を果たすので、緩やかに傾斜していればよい。しかし、第一傾斜部5の傾斜角度が小さすぎると、第二傾斜部6への唾液の導入に時間を要する。一方、第一傾斜部5の傾斜角度が大きなって、第二傾斜部6の傾斜角度との差が小さくなると、唾液の投入量の確認が困難になる。そこで、第一傾斜部5の水平方向に対する傾斜角度θは10~40°が好ましく、20~30°がより好ましい。
【0020】
第二傾斜部6は略U字状断面の第一窪み部7に唾液を集めるためのもので、第一窪み部7に集められた唾液を回収しやすくする機能を備えていることが好ましい。そこで、第二傾斜部6の内面6aの水平方向に対する傾斜角度は、60~90°が好ましく、70~90°がより好ましく、80~90°がさらに好ましい。第二傾斜部6の内面6aの水平方向に対する傾斜角度が急であるほど、略U字状断面の第一窪み部7に集められた唾液をピペット等の器具で回収しやすいからである。しかし、第二傾斜部6の内面6aの水平方向に対する傾斜角度が90°を超えると、唾液の回収作業が困難になる。そこで、第二傾斜部6の内面6aの水平方向に対する傾斜角度は90°以下にするのが好ましい。
【0021】
略U字状断面の第一窪み部7の容積はPCR検査に必要な量の唾液を集めることができる容積であればよく、例えば、100~300mm3程度の容積でよい。第一窪み部7の容積が必要以上に大きくなると、PCR検査に必要な量の唾液を第一窪み部7から回収しても、相当量の唾液が第一窪み部7に残留するので、雑菌が繁殖しやすいという不都合がある。そこで、第一窪み部7の容積はPCR検査に必要な最小量の唾液を集めることができる容積であるのが好ましい。
【0022】
図1(a)に示す蓋部8の内径Dは
図1(b)に示す容器部4の開口頂部3の外径dと同じか又はごく僅か大きいことが好ましい。蓋部8を容器部4にしっかりと係合しやすく(はまりやすく)するためである。
【0023】
蓋部8は容器部4の開口頂部3に係合可能であって、容器部4の第一窪み部7は蓋部8の第二窪み部9に挿入可能であるから、
図2に示すように、蓋部8を容器部4の開口頂部3に係合して、別の容器部4aの第一窪み部7aを当該蓋部8の第二窪み部9(
図1(a)参照)に挿入し、さらに、別の蓋部8aを別の容器部4aの開口頂部3aに係合するという作業を繰り返すことにより、多数の容器部と蓋部を上下に積み重ねることが可能である。そこで、唾液の収集サイトから検査サイトへの唾液回収容器の搬送効率が高くなる。しかも、第二窪み部9(
図1(a)参照)は第一窪み部7aより曲率が小さいので(第一窪み部7aの先端部の曲率半径が第二窪み部9の先端部の曲率半径より小さいので)、第一窪み部7aを第二窪み部9に挿入したとき、第一窪み部7aの外側先端部と第二窪み部9の内側底面部とのあいだに隙間ができやすい。従って、容器部4aと蓋部8の離脱が容易である。
【0024】
図3(a)は本発明の唾液回収容器の容器部4の一実施形態の斜視図であり、
図3(b)は本発明の唾液回収容器の蓋部8の一実施形態の斜視図であり、
図4(a)はマウスピースの一実施形態の斜視図、
図4(b)はマウスピースの別の実施形態の斜視図である。容器部4と蓋部8の材質は限定されるものではなく、例えば、ポリプロピレン、シリコーン樹脂等を使用することができる。
【0025】
また、容器部4と蓋部8は透明であることが好ましい。外部から容器部4に集められている唾液量を確認できるからである。また、容器部4の開口頂部3は、柔らかいことが好ましい。被験者が口にくわえて唾液を投入しやすいからである。その点で、
図4(a)に示すマウスピース10の口に直接触れる部材11は開口部12を有し、開口部12から唾液を入れやすいので好ましい。また、
図4(b)に示すマウスピース15の口に直接触れる部材16は開口部17を有し、開口部17から唾液を入れやすいので好ましい。しかし、口に直接触れる部材11および16は口にくわえるものであるから、口に直接触れる部材11および16の素材としては、例えば、EVA(エチレン酢酸ビニル)樹脂、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、シリコーン樹脂、紙等を使用することができる。
【0026】
図4(a)に示すマウスピース10は、口に直接触れる部材11と、円筒状部材14と、部材11と部材14を接続する部材13を有するが、部材13と部材14は直接口に入れないので、口に直接触れる部材11と同じ素材であってもよいが、必ずしも同じ素材である必要はない。また、
図4(b)に示すマウスピース16は、口に直接触れる部材16と、円筒状部材18を有するが、部材18は直接口に入れないので、口に直接触れる部材16と同じ素材であってもよいが、必ずしも同じ素材である必要はない。しかし、塩化ビニルやビスフェノールAは人体へ悪影響を及ぼすことがあると言われているので、これらの素材は使用しない方が好ましい。
【0027】
図5はPCR検査前処理自動化装置の概略斜視図であり、
図1(a)、(b)に示す唾液回収容器を用いて、
図5に示す装置により、PCR検査の前処理を自動化で行うことができる。
図5において、PCR検査前処理自動化装置21は、移送ロボット22と、使い捨ての移送用シリンジ23と、
図1(a)、(b)に示す容器部と蓋部からなる検体(唾液)回収容器24と、PCR検査用容器25を有する。移送ロボット22は上下方向に移動すると共に、一対のレール26aと26bに沿って支持部材27の左右方向に移動することが可能である。また、一対のレール26aと26bを備えた支持部材27は一対の柱状部材28aと28bに沿って上下方向に移動させて全体の高さ調整をすることが可能である。さらに、一対の柱状部材28aと28bはそれぞれ、レール29a、29bに沿って移動することが可能である。このように、移送ロボット22は、上下、左右及び前後にわたる三次元方向に移動することが可能である。
【0028】
移送用シリンジ23、検体(唾液)回収容器24、PCR検査用容器25は、それぞれ、コンベア30、コンベア31、コンベア32上に、前後方向の手前側(
図5を横長方向に見た場合の右下方向)から投入され、前後方向の奥側(
図5を横長方向に見た場合の左上方向)に移送される。
【0029】
検体(唾液)回収容器24の側面には、被験者情報と関連づけるためのバーコード33が貼られている。バーコードリーダ34は、検体(唾液)回収容器24を垂直軸回りに回転させながらバーコード33を読み取る。また、加振装置35は、検体(唾液)回収容器24に振動を与えて、唾液が第一窪み部7(
図1(b)参照)に落ち込むことを促進する。さらに、PCR検査用容器25の上方には、前処理の進行度合いを観察するためのカメラ37が設けられている。
【0030】
次に、
図6~
図11を用いて、PCR検査の前処理の自動化工程について説明する。
図6は作業開始時を示す図で、まず、
図5に示すPCR検査前処理自動化装置21に装備した蓋部脱着装置(図示せず)と移送ロボット22を用いて、検体(唾液)回収容器24の蓋部を離脱する操作を行う。次に、
図7に示すように、移送ロボット22を用いて1個の移送用シリンジ23をつかみ、
図8に示すように、検体(唾液)回収容器24へ移動し、
図9に示すように、検体(唾液)回収容器24の容器部から唾液を吸引して移送用シリンジ23を上昇させる。移送用シリンジ23を上昇させた状態で、液漏れ検出器36により、移送用シリンジ23の先端からの液漏れの有無を確認する。液漏れがないことを確認したら、
図10に示すように、PCR検査用容器25へ移動する。PCR検査用容器25には、溶解剤投入装置(図示せず)により、予め前処理用の粘液溶解剤が所定量だけ投入されている。その上に、
図11に示すように、移送用シリンジ23からPCR検査用容器25内へ検体(唾液)を投入する。粘液溶解剤と検体(唾液)が投入されると、PCR検査用容器25の中で前処理が進行する。
図5に示すカメラ37でPCR検査用容器25を観察することで、前処理の終了を判定する。前処理の終了が判定されたPCR検査用容器25に、キャップ(図示せず)をキャップ脱着装置(図示せず)により装着する。以上のようにして、検体(唾液)と前処理用の粘液溶解剤を投入したPCR検査用容器25をPCR検査装置へ移動させてPCR検査を行う。
図12には、以上のようなPCR検査前処理自動化装置の動作シーケンスの概略を示す。
図12において、*1は移送ロボット、*2は蓋部脱着装置、*3はキャップ脱着装置、*4は溶解剤投入装置により行われる。
【0031】
図13はPCR検査における情報管理システムの一例の概念を示す図である。唾液回収容器24には被験者情報を反映したバーコード33が貼られており、バーコードリーダ34によりバーコード33が読み取られて情報管理装置40に送信される。一方、PCR検査容器25には、バーコード38が貼られており、移送ロボット22によって、唾液回収容器24からPCR検査容器25に検体(唾液)が投入されたら、バーコードリーダ39によりバーコード38が読み取られて情報管理装置40に送信され、バーコード33の情報と当該バーコード38の情報が紐づけされる。以上がPCR検査前処理自動化装置21の中で実行される。その後のPCR検査装置50において、PCR検査容器25に貼られたバーコード38はバーコードリーダ51により読み取られて情報管理装置40に送信され、検査結果等と被験者情報が紐づけされる。
【0032】
バーコード33は検体(唾液)回収容器24の側面ではなく、蓋部8の上面に貼られてもよい。この場合、バーコードリーダ34は蓋部脱着装置(図示せず)に設けることができる。またバーコード38はPCR検査容器25の側面ではなく、キャップ(図示せず)の上面に貼られてもよい。この場合、バーコードリーダ39はキャップ脱着装置(図示せず)に設けることができる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は、唾液によるPCR検査システムにおける唾液回収容器として有用である。
【符号の説明】
【0034】
1 唾液回収容器
2 閉鎖底部
3、3a 開口頂部
4、4a 容器部
5 第一傾斜部
6 第二傾斜部
7、7a 第一窪み部
8、8a 蓋部
9、9a 第二窪み部
10 マウスピース
15 マウスピース
21 PCR検査前処理自動化装置
22 移送ロボット
23 移送用シリンジ
24 唾液回収容器
25 PCR検査容器
33 バーコード
34 バーコードリーダ
36 液漏れ検出器
37 カメラ
38 バーコード
39 バーコードリーダ
40 情報管理装置
50 PCR検査装置
51 バーコードリーダ