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特許7448219ADAM10の生物学的活性を阻害するための方法および組成物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】ADAM10の生物学的活性を阻害するための方法および組成物
(51)【国際特許分類】
   C07K 14/705 20060101AFI20240305BHJP
   C12N 9/50 20060101ALI20240305BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20240305BHJP
   C12N 15/57 20060101ALI20240305BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240305BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240305BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240305BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20240305BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20240305BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20240305BHJP
   A61P 11/06 20060101ALI20240305BHJP
   A61K 38/17 20060101ALI20240305BHJP
   A61K 47/60 20170101ALI20240305BHJP
【FI】
C07K14/705 ZNA
C12N9/50
C12N15/12
C12N15/57
A61P43/00 111
A61P43/00 105
A61P35/00
A61P29/00
A61P37/08
A61P31/00
A61P17/02
A61P11/06
A61K38/17
A61K47/60
【請求項の数】 46
(21)【出願番号】P 2020520057
(86)(22)【出願日】2018-10-02
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-01-07
(86)【国際出願番号】 US2018053938
(87)【国際公開番号】W WO2019070685
(87)【国際公開日】2019-04-11
【審査請求日】2021-10-01
(31)【優先権主張番号】62/589,842
(32)【優先日】2017-11-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/566,580
(32)【優先日】2017-10-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】520116791
【氏名又は名称】ヴェラ セラピューティクス エルエルシー
【住所又は居所原語表記】127 Asbury Rd.,Ithaca,NY 14882,United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】マルシア エル モス
(72)【発明者】
【氏名】ロバート ラスムッセン
(72)【発明者】
【氏名】クリス プリンス
【審査官】植原 克典
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0059788(US,A1)
【文献】国際公開第2012/064865(WO,A1)
【文献】Furin is an endogenous regulator of α-secretase associated APP processing,Biochemical and Biophysical Research Communications,2006年,Vol. 349,p. 654-659
【文献】The substrate degradome of meprin metalloproteases reveals an unexpected proteolytic link between meprin β and ADAM10,Cellular and Molecular Life Sciences,2013年,Vol. 70,p. 309-333
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 38/00- 38/58
A61K 47/00- 47/69
A61P 1/00- 43/00
C07K 1/00- 19/00
C12N 9/00- 9/99
C12N 15/00- 15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ADAM10活性を特異的に調節するADAM10調節ペプチドであって、
前記ADAM10調節ペプチドがフリンによる切断に対して感受性が低く、かつメプリンによる切断に対して感受性が低くなるように、配列番号1のアミノ酸配列を含み、かつアミノ酸位置26~29のうちの少なくとも1つのフリン認識部位にアミノ酸置換、および配列番号1のアミノ酸位置52~55のうちの少なくとも1つのフリン認識部位にアミノ酸置換、および少なくとも1つのメプリン認識部位にアミノ酸置換をさらに含む、ADAM10調節ペプチド。
【請求項2】
前記ADAM10調節ペプチドがメプリンによる切断に対して感受性が低くなるように、(i)配列番号1のアミノ酸位置34~36、(ii)アミノ酸位置62および/または63、(iii)アミノ酸位置88および/または89、(iv)アミノ酸位置136~138、(v)アミノ酸位置169および/または170、または(vi)アミノ酸位置176~178のうちの少なくとも1つのメプリン認識部位にアミノ酸置換を含む、請求項1に記載のADAM10調節ペプチド。
【請求項3】
配列番号1のシステイン151の修飾をさらに含み、該システイン151が、アラニン、セリン、グリシンまたはスレオニンで置換されているかまたはペグ化されている、請求項1または2に記載のADAM10調節ペプチド。
【請求項4】
前記ADAM10調節ペプチドが、配列番号3に記載のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載のADAM10調節ペプチド。
【請求項5】
少なくとも1つの修飾が、
(i)配列番号3の位置26、28および29の1またはそれ以上のアラニン、セリン、グリシンまたはリシン、
(ii)配列番号3の位置52、54および55の1またはそれ以上のアラニン、セリン、グリシンまたはリシン、
(iii)配列番号3の位置88および89の一方または両方にアラニン、セリン、グリシンまたはアスパラギン置換、
(iv)配列番号3の位置176~178に1またはそれ以上のアラニン、セリン、グリシンまたはアスパラギン置換、および
(v)配列番号3のシステイン151にアラニン、セリン、グリシンまたはスレオニン置換、
またはそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項4に記載のADAM10調節ペプチド。
【請求項6】
前記ADAM10調節ペプチドが、配列番号3の位置26、28または29の1またはそれ以上にアラニン、配列番号3の位置52、54または55の1またはそれ以上にアラニン、またはそれらの任意の組み合わせを含むアミノ酸配列を含む、請求項4に記載のADAM10調節ペプチド。
【請求項7】
配列番号3において、アミノ酸位置29および55の一方または両方が、アラニンおよびリジンからなる群から独立して選択される、請求項4に記載のADAM10調節ペプチド。
【請求項8】
前記ADAM10調節ペプチドが、さらに、配列番号3の位置88、89、177および178の1またはそれ以上に、またはそれらの任意の組み合わせに、アラニンを含む、請求項7に記載のADAM10調節ペプチド。
【請求項9】
前記ADAM10調節ペプチドが、さらに、アミノ酸151のシステインに修飾を含み、該修飾が、該システインのセリン、グリシン、アラニンまたはスレオニンによる置換、および該システインのペグ化からなる群から選択される、請求項7に記載のADAM10調節ペプチド。
【請求項10】
前記アミノ酸151がセリンである、請求項9に記載のADAM10調節ペプチド。
【請求項11】
前記システイン151がペグ化されている、請求項9に記載のADAM10調節ペプチド。
【請求項12】
前記ADAM10調節ペプチドが、さらに、アミノ酸151のシステインに修飾を含み、該修飾が、該システインのセリン、グリシン、アラニンまたはスレオニンによる置換、および該システインのペグ化からなる群から選択される、請求項8記載のADAM10調節ペプチド。
【請求項13】
前記アミノ酸151がセリンである、請求項12に記載のADAM10調節ペプチド。
【請求項14】
前記システイン151がペグ化されている、請求項12に記載のADAM10調節ペプチド。
【請求項15】
配列番号3において、アミノ酸位置29および55の一方または両方が、セリン、グリシンおよびスレオニンからなる群から独立して選択される、請求項4に記載のADAM10調節ペプチド。
【請求項16】
配列番号3のアミノ酸位置151がセリン、グリシン、アラニンまたはスレオニンである、請求項4に記載のADAM10調節ペプチド。
【請求項17】
配列番号3のアミノ酸位置151がペグ化されている、請求項4に記載のADAM10調節ペプチド。
【請求項18】
N末端、C末端またはこれらの両方がペグ化されている、請求項4に記載のADAM10調節ペプチド。
【請求項19】
配列番号3において、
(i)アミノ酸位置26はアルギニンではなく、アミノ酸位置27はアラニンではなく、アミノ酸位置28はリジンではなく、および/またはアミノ酸位置29はアルギニンではない、および/または
(ii)アミノ酸位置52はアルギニンではなく、アミノ酸位置53はメチオニンではなく、アミノ酸位置54はリジンではなく、および/またはアミノ酸位置55はアルギニンではない、および/または
(iii)アミノ酸位置34はグルタミン酸ではなく、アミノ酸位置35はアスパラギン酸ではなく、および/またはアミノ酸位置36はグルタミンではない、
(iv)アミノ酸位置62はアスパラギン酸ではなく、および/またはアミノ酸位置63はグルタミン酸ではない、および/または
(v)アミノ酸位置88は、アラニン、セリン、グリシン、スレオニンおよびアスパラギンからなる群から選択され、および/またはアミノ酸位置89は、アラニン、セリン、グリシン、スレオニンおよびアスパラギンからなる群から選択される、および/または
(vi)アミノ酸位置136はグルタミン酸ではなく、アミノ酸位置137はアスパラギン酸ではなく、および/またはアミノ酸位置138はアスパラギン酸ではない、および/または
(vii)アミノ酸位置151がシステインではない、および/または
(viii)アミノ酸位置169がグルタミン酸ではなく、および/またはアミノ酸位置170がグルタミン酸ではない、および/または
(ix)配列番号3のアミノ酸位置176~178は、それぞれ独立して、グルタミン、アラニン、セリン、グリシン、スレオニンおよびアスパラギンからなる群から選択される、ただし、該アミノ酸配列の位置176~178がグルタミン/グルタミン酸/グルタミン酸ではない、
請求項4に記載のADAM10調節ペプチド。
【請求項20】
位置151のアミノ酸がセリン、グリシン、アラニンおよびスレオニンからなる群から選択される、請求項19に記載のADAM10調節ペプチド。
【請求項21】
N末端、C末端、位置151のシステイン、またはそれらの任意の組み合わせがペグ化されている、請求項19に記載のADAM10調節ペプチド。
【請求項22】
前記ADAM10調節ペプチドが、
(i)配列番号1のアミノ酸位置26~29および52~55のフリン認識部位の両方、並びに
(ii)配列番号1のアミノ酸位置88および/または89、およびアミノ酸位置176~178のメプリン認識部位を不活性化する、
複数の修飾を含む、請求項1に記載のADAM10調節ペプチド。
【請求項23】
前記ADAM10調節ペプチドが、配列番号5~54、56、または58~71、814のいずれかに示されるアミノ酸配列を含む、請求項4に記載のADAM10調節ペプチド。
【請求項24】
前記ADAM10調節ペプチドが、さらに、配列番号1のN末端、C末端、アミノ酸位置151またはそれらの任意の組み合わせにおいてPEG部分を含む、請求項23に記載のADAM10調節ペプチド。
【請求項25】
前記ADAM10調節ペプチドが、配列番号5~56、または58~71、814のいずれかと少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項1に記載のADAM10調節ペプチド。
【請求項26】
配列番号5~6、281のアミノ酸配列について、配列番号3で定義されるアミノ酸位置26、28、29、34~36、52、54、55、62、63、88、89、136~138、151、169~178、182および183において1またはそれ以上のアミノ酸置換を含む、請求項1に記載のADAM10調節ペプチド。
【請求項27】
配列番号5、6、9、34、36および62~71のいずれか1つに記載のアミノ酸配列を含む、ADAM10調節ペプチド。
【請求項28】
前記ペプチドが、配列番号62または配列番号63に記載のアミノ酸配列を含む、請求項27に記載のADAM10調節ペプチド。
【請求項29】
配列番号5、6、9、34、36および62~71のいずれか1つと少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む、ADAM10調節ペプチド。
【請求項30】
前記アミノ酸配列が、配列番号62または63と少なくとも90%同一である、請求項29に記載のADAM10調節ペプチド。
【請求項31】
前記アミノ酸配列が、そのN末端、C末端またはこれらの任意の組み合わせにおいて、内部へ、少なくとも1つのシステインの導入を含み、該少なくとも1つの導入されたシステインが、配列番号5、6、9、34、36および62~71の1またはそれ以上のアミノ酸の置換、配列番号5、6、9、34、36および62~71のいずれか1つへのシステインの挿入、またはそれらの任意の組み合わせから生じる、請求項29に記載のADAM10調節ペプチド。
【請求項32】
前記導入されたシステインがペグ化されている、請求項31に記載のADAM10調節ペプチド。
【請求項33】
前記ペグ化され導入されたシステインが、配列番号5、6、9、34、36および62~71のいずれか1つの最初の20のアミノ酸内、または配列番号5、6、9、34、36および62~71のいずれか1つの最後の20のアミノ酸内に存在する、請求項32に記載のADAM10調節ペプチド。
【請求項34】
前記ADAM10調節ペプチドが、保存的アミノ酸置換、非天然アミノ酸置換、アミノ酸置換から形成されたD-またはD、L-ラセミ混合物異性体、アミノ酸化学的置換、カルボキシまたはアミノ末端修飾、1またはそれ以上のグリコシル基の付加、分子(脂肪酸、PEG、糖、蛍光分子、ADAM10調節ペプチドの精製および/または単離に使用できるタグ、および抗体またはそのパラトープ含有フラグメントまたはその誘導体からなる群から選択される)への結合、および発色団または放射性核種への結合、からなる群から選択される1またはそれ以上の修飾を含む、請求項1~33のいずれか一項に記載のADAM10調節ペプチド。
【請求項35】
請求項1に記載のADAM10調節ペプチドを含む組成物。
【請求項36】
請求項1に記載のADAM10調節ペプチドおよび薬学的に許容される担体または賦形剤を含む医薬組成物。
【請求項37】
前記医薬組成物がヒトにおける使用のために医薬的に許容される、請求項36に記載の医薬組成物。
【請求項38】
インビトロでADAM10の生物学的活性を調節する方法であって、ADAM10ポリペプチドを含む溶液または細胞を、請求項1~33のいずれか一項に記載のADAM10調節ペプチドまたは請求項35~37のいずれか一項に記載の組成物と接触させる段階を含み、該接触させる段階が、該ADAM10ポリペプチドを、ADAM10ポリペプチドの生物学的活性を調節するのに十分な量のADAM10調節ペプチドと接触させる段階を含む、方法。
【請求項39】
請求項1~33のいずれか一項に記載のADAM10調節ペプチドを含む、インビボでADAM10の生物学的活性を阻害するための組成物。
【請求項40】
前記ADAM10調節ペプチドがペグ化されている、請求項39に記載の組成物。
【請求項41】
請求項1~33のいずれか一項に記載のADAM10調節ペプチドを含む、患者における疾患、障害または症状に関連するADAM10の生物学的活性を阻害するための組成物であって、該疾患、障害または症状が、癌、炎症、アレルギー反応、狼瘡、喘息、感染症および線維症からなる群から選択される、組成物。
【請求項42】
前記疾患、障害または症状が、少なくとも部分的に、ADAM10の生物学的活性に関連する過剰な細胞増殖に起因する、請求項41に記載の組成物。
【請求項43】
前記疾患、障害または症状が、少なくとも部分的に、過剰なADAM10の生物学的活性またはタンパク質の存在を特徴とする、請求項41に記載の組成物。
【請求項44】
インビトロにおける細胞からのADAM10基質の放出を阻害する方法であって、該細胞を、該細胞からのADAM10基質の放出を阻害するのに十分な量の請求項1~33のいずれか一項に記載のADAM10調節ペプチドと接触させる段階を含む方法。
【請求項45】
前記ADAM10基質が、CD23、IL6-R、EGF、Her-2、HB-EGf、ベータセルリン、ジャギド1、Notch受容体1、Notch受容体3、RAGE、フラクタルカイン、MICA A、I-TAC、HGFR、GITR、GM-CSF、IGF可溶性受容体およびTGFベータからなる群から選択される、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
請求項1~33のいずれか一項に記載のADAM10調節ペプチドを含む、患者に存在する細胞からのADAM10基質の放出を阻害するための組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
【0002】
本出願は、2017年10月2日に出願された米国仮特許出願第62/566,580号および2017年11月22日に出願された米国仮特許出願第62/589,842号の利益を主張する。これらの出願の各々の開示は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
本発明は、ADAM10の生物学的活性の阻害に関する組成物および方法に関する。特に、本発明は、修飾の結果として、フリンおよびフリン様プロテアーゼならびにメプリンおよびメプリン様プロテアーゼによる切断に対して高い安定性を示す、修飾ADAM10プロドメインペプチドに関する。さらに、本発明は、この修飾ADAM10プロドメインペプチドの細胞アッセイにおける使用に関し、かつこの修飾ADAM10プロドメインペプチドの望ましくないADAM10の生物学的活性に関連する疾患、障害および症状(例えば、癌、炎症、アレルギー反応、狼瘡、喘息、感染症、線維症など)を治療するための使用に関する。
【背景技術】
【0004】
ADAM10は、TACE(ADAM17)、ADAM8およびADAM9などの酵素を含むディスインテグリンおよびメタロプロテイナーゼ(ADAM)ファミリー(Edwardsら, 2008)の1メンバーである。人間の場合、全部で33のADAMファミリーがある。これらのADAMタンパク質は、適正な折りたたみのためおよび酵素が細胞を通過するために重要なプロドメイン、典型的なHEXXHモチーフを含む触媒ドメイン、インテグリンと相互作用するために使用されるディスインテグリンドメイン、基質認識に重要であると考えられているシステインリッチ領域、膜貫通ドメイン、およびシグナル伝達現象に関与する細胞質側末端を含む。
【0005】
ADAMファミリーのメンバーは、細胞からタイプIおよびタイプIIの単一膜貫通タンパク質を切断して、さまざまな生理学的役割を持つ可溶性成熟タンパク質を生成することが知られている(Edwardsら, 2008)。例えば、TACEは、TGF-α、アンフィレグリンおよびHB-EGFなどの可溶性上皮成長因子(EGF)リガンドを生成することが知られている(Sahinら, 2004)。同様に、ADAM10活性は可溶性タンパク質を生成し、この可溶性タンパク質には、EGFリガンド、EGF、HB-EGF、ベータセルリン(Sahinら、2004)、Notch、アミロイド前駆体タンパク質、エフリン、カドヘリン、プロトカドヘリン、CXCL16、CX3CL1、HER2、AXL、cMET、およびCD23などのケモカイン、およびIgEの低親和性受容体(Pruessmeyer & Ludwig, 2009で概説されている)が含まれるがこれらに限定されない。ADAM10活性の破壊は、インビボおよび細胞ベースの両アッセイにおいて、可溶性非アミロイド生成APPの濃度を低下させることが示されており、ADAM10活性の維持は、可溶性APP-αの正常プロセシングのためにアルツハイマー病において保護的な役割を果たす可能性があることを示唆している。これとは対照的に、過剰なADAM10活性は、可溶性上皮細胞増殖因子(EGF)リガンドの産生の増加とNotchおよびTGFベータシグナル伝達経路の活性化により、癌増殖アッセイにおいて細胞増殖を促進する可能性がある。
【0006】
TACE活性の阻害は、腫瘍細胞増殖アッセイの有益な効果と相関している(Wittersら, 2008)。腫瘍細胞増殖のこの阻害の機序は、EGFリガンド放出の阻止によると考えられている。例えば、TGF-α、アンフィレギュリン、HB-EGF、EGF、およびベータセルリンなどのEGFリガンドは、一旦放出されると、EGF受容体を活性化することができ、次に癌増殖をもたらす(Pruessmeyer & Ludwig, 2009)。TACEと類似して、ADAM10は、EGF、HB-EGF、およびベータセルリンなどの可溶性EGFリガンドの産生を促進するが、しかしTACEとは異なって、ADAM10は、腫瘍細胞増殖のプロモーターとして知られている可溶性NotchおよびAXLも生成する(Pruessmeyer & Ludwig, 2009)。ADAM10を阻害することにより、腫瘍増殖が阻止される(Crawfordら, 2009)。
【0007】
EGFリガンドに加えて、ADAM10も可溶性CD23を生成する(Lemieuxら, 2007)。CD23の放出により、IgEの活性化によるアレルギー反応が促進される。メタロプロテアーゼ阻害剤は、インビトロアッセイおよびインビボアッセイの両方でCD23シェディングをブロックし、アレルギー反応を阻止することが示されている(Mathewsら, 2011)。
【0008】
したがって、ADAM10活性を特異的に調節する機能は、タンパク質の生物学的機能を研究するために、および、これに限定されないが、癌、喘息、感染症およびアレルギー反応を含む障害の治療のために有用である。
【0009】
残念ながら、現存している小分子阻害剤は、ADAM10活性に特異的でない。例えば、GSKにより開発されたヒドロキサメートは、ADAM10ならびにマトリックスメタプロテアーゼファミリーの他のメンバーも阻害する(Ludwigら, 2005)。Incyteにより開示された阻害剤も、マトリックスメタプロテアーゼ(MMP)、およびおそらく他のADAM10ファミリーメンバーも阻害する(Zhouら, 2006)。そのような非特異的阻害は、望ましくない副作用をもたらすことが多く、この場合は、化合物が医薬品に発展するのを妨げてきた(Mossら, 2008)。
【0010】
ADAMファミリーは、酵素を潜伏状態に維持するプロドメインを有するチモーゲンとして発現する。例えば、TACEのプロドメインは、その触媒ドメインの活性を50nMのKで抑制し、インビボでTACE活性を阻害する(Wongら, 2016)。しかし、TACEの野生型プロドメインには、良好な薬物動態特性がない。上流のフリン部位およびシステイン残基を修飾した変異プロドメインは、インビボでの用途のためにTACEプロドメインを安定させた(Wongら, 2016)。同様に、ADAM10の野生型プロドメインには、良好な薬物動態特性がなく、そのために、薬剤として使用することは困難である。薬物動態学が悪い理由は、上流の切断部位(アミノ酸48~51)でのフリンコンバターゼによるプロセシング、および/またはインビトロでADAM10のプロドメインをアミノ酸109と110との間で切断することが明らかされているメプリンメタロプロテアーゼによるプロセシングに起因することがあり得る。加えて、位置173の1つだけのシステインは、酸化してプロドメインの二量体形を形成し得るので、良好な薬物動態特性を有するプロドメインの能力を妨害することがある。
【0011】
したがって、当技術分野では、タンパク質の生物学的機能を研究するため、ならびに望ましくないADAM10の生物学的活性に関連する疾患、障害、および症状を治療するためにADAM10の選択的阻害剤を必要としている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の概要では、本発明のいくつかの実施形態を記載し、多くの場合、これらの実施形態の変形例および置換例を記載する。本発明の概要は単に、多数の多様な実施形態の例示である。所定の実施形態の1またはそれ以上の代表的な特徴の記載も、同様に例示である。そのような実施形態は、記載の特徴の有無にかかわらず、一般的に存在し得、同様に、これらの特徴は、本発明の概要に記載されているか否かにかかわらず、本発明の他の実施形態に適用し得る。過剰な反復を避けるために、本発明の概要は、そのような特徴のすべての可能な組み合わせの記載または提案を行わない。
【0013】
一部の実施形態では、本発明は、ADAM10調節ペプチドを提供する。一部の実施形態では、ADAM10調節ペプチドがフリンによる、および任意にフリンとメプリンの両方による切断に対して感受性が低くなるように、ADAM10調節ペプチドは、配列番号1または配列番号2の少なくとも1つのフリン認識部位に少なくとも1つのアミノ酸置換を含むアミノ酸配列を含み、本質的にそれからなり、またはそれのみからなり、任意にさらに、配列番号1または配列番号2の少なくとも1つのメプリン認識部位に少なくとも1つのアミノ酸置換、およびその組み合わせを含む。一部の実施形態では、少なくとも1つのフリン認識部位は、配列番号1または配列番号2のアミノ酸位置26~29およびアミノ酸位置52~55からなる群から選択され、ならびに少なくとも1つのメプリン認識部位は、配列番号1のアミノ酸位置34~36、アミノ酸位置62/63、アミノ酸位置88/89、アミノ酸位置136~138、アミノ酸位置169/170、およびアミノ酸位置176~178、または配列番号2のアミノ酸位置34~36、アミノ酸位置62/63、アミノ酸位置88/89、アミノ酸位置136~138、およびアミノ酸位置169/170からなる群から選択される。一部の実施形態では、配列番号1または配列番号2のシステイン151は、アラニン、セリン、グリシンまたはトレオニンで置換される、またはペグ化される。一部の実施形態では、ADAM10調節ペプチドは、配列番号3および4のいずれかに記載のアミノ酸配列を含む、本質的にそれからなる、またはそれのみからなる。一部の実施形態では、ADAM10調節ペプチドは、配列番号3または配列番号4の位置26、28および29のうちの1つまたはそれ以上でアラニンを、配列番号3または配列番号4の位置52、54および55のうちの1つまたはそれ以上で、もしくはそれらの任意の組み合わせでアラニンを、および位置88/89の1つもしくは両方でアラニンを、配列番号3の位置176~178のうちの1つまたはそれ以上で、もしくはそれらの任意の組み合わせでアラニンを含む、アミノ酸配列を含む、本質的にそれからなる、またはそれのみからなる。一部の実施形態では、配列番号3または配列番号4のシステイン151は、アラニン、セリン、グリシンまたはトレオニンで置換される、またはペグ化される。一部の実施形態では、ADAM10調節ペプチドは、配列番号3または配列番号4の位置26、28または29のうちの1つまたはそれ以上でアラニンを、配列番号3または配列番号4の位置52、54または55のうちの1つまたはそれ以上でアラニンを、もしくはその任意の組み合わせを含むアミノ酸配列を含む、本質的にそれからなる、またはそれのみからなる。一部の実施形態では、配列番号3または配列番号4に関して、アミノ酸位置29および55の1つまたは両方は、独立して、アラニンおよびリジンからなる群から選択される。一部の実施形態では、ADAM10調節ペプチドは、配列番号3の位置88、89、177および178の1つまたはそれ以上で、および/または配列番号4の位置88/89で、もしくはその任意の組み合わせでアラニンをさらに含む。一部の実施形態では、ADAM10調節ペプチドは、アミノ酸151のシステインにおいて、システインのセリン、グリシン、アラニンまたはトレオニンでの置換、およびシステインのペグ化からなる群から選択される修飾をさらに含む。一部の実施形態では、アミノ酸151は、セリンであり、またはシステイン151はペグ化される。
【0014】
一部の実施形態では、ADAM10調節ペプチドは、アミノ酸151のシステインにおいて、システインのセリン、グリシン、アラニンまたはトレオニンでの置換、およびシステインのペグ化からなる群から選択される修飾をさらに含む。一部の実施形態では、アミノ酸151はセリンであり、一部の実施形態では、アミノ酸151はペグ化される。
【0015】
一部の実施形態では、配列番号3または配列番号4に関して、アミノ酸位置29および55の1つまたは両方は、独立して、セリン、グリシンおよびトレオニンからなる群から選択される。一部の実施形態では、配列番号3または配列番号4のアミノ酸位置151は、セリン、グリシン、アラニンまたはトレオニンである。一部の実施形態では、配列番号3または配列番号4のアミノ酸位置151は、ペグ化される。一部の実施形態では、N末端、C末端または両方とも、ペグ化される。
【0016】
一部の実施形態では、配列番号3または配列番号4に関して、アミノ酸位置26はアルギニンではなく、アミノ酸位置27はアラニンではなく、アミノ酸位置28はリジンではなく、および/またはアミノ酸位置29はアルギニンではない;および/またはアミノ酸位置52はアルギニンではなく、アミノ酸位置53はメチオニンではなく、アミノ酸位置54はリジンではなく、および/または、アミノ酸位置55はアルギニンではない;および/またはアミノ酸位置34はグルタミン酸ではなく、アミノ酸位置35はアスパラギン酸ではなく、および/またはアミノ酸位置36はグルタミンではない;アミノ酸位置62はアスパラギン酸ではなく、および/またはアミノ酸位置63はグルタミン酸ではない;および/またはアミノ酸位置88はアラニン、セリン、グリシン、トレオニン、およびアスパラギンからなる群から選択され、および/またはアミノ酸位置89はアラニン、セリン、グリシン、トレオニン、およびアスパラギンからなる群から選択される;および/またはアミノ酸位置136はグルタミン酸ではなく、アミノ酸位置137はアスパラギン酸ではなく、および/またはアミノ酸位置138はアスパラギン酸ではない;および/またはアミノ酸位置151はシステインではない;および/またはアミノ酸位置169はグルタミン酸ではなく、および/またはアミノ酸位置170はグルタミン酸ではない;および/または配列番号3のアミノ酸位置176~178は、それぞれ独立して、グルタミン、アラニン、セリン、グリシン、トレオニン、およびアスパラギンからなる群から選択されるが、ただし、位置176~178のアミノ酸配列はグルタミン/グルタミン酸/グルタミン酸ではない。一部の実施形態では、アミノ酸位置151は、セリン、グリシン、アラニンおよびトレオニンからなる群から選択される。一部の実施形態では、N末端、C末端、位置151のシステイン、またはそれらの任意の組み合わせはペグ化される。
【0017】
一部の実施形態では、ADAM10調節ペプチドは、配列番号1または配列番号2のアミノ酸位置26~28でフリン認識部位を、配列番号1または配列番号2のアミノ酸位置52~54でフリン認識部位を、または両部位を不活性化する1またはそれ以上の修飾を含む、本質的にそれからなる、またはそれのみからなる。
【0018】
一部の実施形態では、ADAM10調節ペプチドは、配列番号1または配列番号2のアミノ酸位置34~36、配列番号1または配列番号2のアミノ酸位置62/63、配列番号1または配列番号2のアミノ酸位置88/89で、配列番号1または配列番号2のアミノ酸位置136~138、配列番号1または配列番号2のアミノ酸位置169/170、配列番号1のアミノ酸位置176~178、またはそれらの任意の組み合わせにおいて、メプリン認識部位を不活性化する1つまたはそれ以上の修飾を含む、本質的にそれからなる、またはそれのみからなる。
【0019】
一部の実施形態では、ADAM10調節ペプチドは、配列番号1のアミノ酸位置88/89、および配列番号1のアミノ酸位置176~178でメプリン認識部位を不活性化する少なくとも2つの修飾を含む、本質的にそれからなる、またはそれのみからなる。
【0020】
一部の実施形態では、ADAM10調節ペプチドは、配列番号1または配列番号2のアミノ酸位置26~28および52~54でフリン認識部位を、および配列番号1または配列番号2のアミノ酸位置34~36、62/63、88/89、136~138、および169/170でメプリン認識部位を不活性化する、ならびに任意にさらに、配列番号1のアミノ酸位置176~178でメプリン認識部位を不活性化する複数の修飾を含む、本質的にそれからなる、またはそれのみからなる。
【0021】
一部の実施形態では、ADAM10調節ペプチドは、配列番号1または配列番号2のアミノ酸位置26~28および52~54でフリン認識部位を、ならびに配列番号1のアミノ酸位置88/89および176~178でメプリン認識部位を不活性化する複数の修飾を含む、本質的にそれからなる、またはそれのみからなる。
【0022】
一部の実施形態では、ADAM10調節ペプチドは、配列番号1に関して、アミノ酸位置26~29の1つまたはそれ以上、およびアミノ酸位置52~55の1つまたはそれ以上、およびアミノ酸位置88/89、およびアミノ酸位置176~178において、配列番号3に定義するアミノ酸置換を含むアミノ酸配列を含む、本質的にそれからなる、またはそれのみからなる。一部の実施形態では、アミノ酸位置151は、セリン、グリシン、アラニンおよびトレオニンからなる群から選択され、またはアミノ酸位置151のシステインは、ペグ化される。一部の実施形態では、ADAM10調節ペプチドは、N末端、C末端、アミノ酸位置151、またはそれらの任意の組み合わせにおいて、PEG部分をさらに含む。一部の実施形態では、ADAM10調節ペプチドは、N末端、C末端、アミノ酸位置151、またはそれらの任意の組み合わせにおいて、PEG部分をさらに含む。
【0023】
一部の実施形態では、ADAM10調節ペプチドは、配列番号1または配列番号2のアミノ酸位置34~36、62/63、136~138、および169/170、ならびに任意に、配列番号1の176~178の1つまたはそれ以上のメプリン認識部位に、配列番号3で定義される1つまたはそれ以上のアミノ酸置換をさらに含む。一部の実施形態では、アミノ酸置換の少なくとも1つはアラニン置換である。一部の実施形態では、ADAM10調節ペプチドは、N末端、C末端、アミノ酸位置151、またはそれらの任意の組み合わせにおいて、PEG部分をさらに含む。一部の実施形態では、ADAM10調節ペプチドは、N末端、C末端、アミノ酸位置151、またはそれらの任意の組み合わせにおいて、PEG部分をさらに含む。
【0024】
一部の実施形態では、ADAM10調節ペプチドは、配列番号5~71,814のいずれかに記載のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、配列番号1に関して、アミノ酸位置29および55のそれぞれは、保存的アミノ酸変化で置換されたセリン、グリシン、トレオニンまたはセリンであり;アミノ酸位置34~36のそれぞれの少なくとも1つは、保存的アミノ酸変化で置換されたアスパラギン、セリン、グリシン、トレオニンまたはセリンであり;アミノ酸位置62および63の少なくとも1つは、保存的アミノ酸変化で置換されたアスパラギン、セリン、グリシン、トレオニンまたはセリンであり;アミノ酸位置88および89の少なくとも1つは保存的アミノ酸変化で置換されたアスパラギン、セリン、グリシン、トレオニンまたはセリンであり;アミノ酸位置136~138の少なくとも1つは保存的アミノ酸変化で置換されたアスパラギン、セリン、グリシン、トレオニンまたはセリンであり;アミノ酸位置169および170の少なくとも1つは保存的アミノ酸変化で置換されたアスパラギン、セリン、グリシン、トレオニンまたはセリンであり;アミノ酸位置176~178の少なくとも1つは保存的アミノ酸変化で置換されたアスパラギン、セリン、グリシン、トレオニンまたはセリンである。一部の実施形態では、ADAM10調節ペプチドは、配列番号1のN末端、C末端、アミノ酸位置151、またはそれらの任意の組み合わせにおいて、PEG部分をさらに含む。
【0025】
一部の実施形態では、ADAM10調節ペプチドは、配列番号5~71,814のいずれかと少なくとも87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、アミノ酸配列は、これらのアミノ酸位置について配列番号3に定義される、アミノ酸位置26、28、29、34~36、52、54、55、62、63、88、89、136~138、151、169~178、182、および183からなる群から選択されるアミノ酸位置で、配列番号5~6,281のうちの1つまたはそれ以上のアミノ酸置換を含む。一部の実施形態では、アミノ酸位置151は、セリン、グリシン、アラニン、およびトレオニンからなる群から選択され、またはアミノ酸位置151でシステインはペグ化される。一部の実施形態では、配列番号1に関して、アミノ酸26、28および29のうちの少なくとも1つおよび/またはアミノ酸52、54および55のうちの少なくとも1つは、保存的アミノ酸変化で置換されたセリン、グリシン、トレオニンまたはセリンであり、ならびにアミノ酸位置88/89および/または176~178のうちの少なくとも1つは、保存的アミノ酸変化で置換されたアスパラギン、セリン、グリシン、トレオニンまたはセリンである。一部の実施形態では、ADAM10調節ペプチドは、配列番号1のN末端、C末端、アミノ酸位置151、またはそれらの任意の組み合わせにおいて、PEG部分をさらに含む。
【0026】
本発明は、一部の実施形態では、PEG部分に結合された配列番号1または配列番号2を含む、本質的にそれからなる、またはそれのみからなるADAM10調節ペプチドも提供する。一部の実施形態では、PEG部分は、配列番号1または配列番号2のアミノ酸位置151でシステインに結合される。
【0027】
本発明は、一部の実施形態では、配列番号5、6、9、34、36、および62~71のいずれか1つに記載のアミノ酸配列を含む、本質的にそれからなる、またはそれのみからなるADAM10調節ペプチドも提供する。一部の実施形態では、ペプチドは、配列番号62または配列番号63に記載のアミノ酸配列を含む、本質的にそれからなる、またはそれのみからなる。
【0028】
本発明は、一部の実施形態では、配列番号5、6、9、34、36、および62~71のいずれか1つと少なくとも87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列を含む、本質的にそれからなる、またはそれのみからなるADAM10調節ペプチドも提供する。一部の実施形態では、アミノ酸配列は、配列番号62または配列番号63と少なくとも87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一である。
【0029】
本発明は、一部の実施形態では、配列番号3または配列番号4と少なくとも87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列を含む、本質的にそれからなる、またはそれのみからなるADAM10調節ペプチドも提供する。一部の実施形態では、配列番号3と比較して、アミノ酸配列は、配列番号3の位置39、48、73、107、115、126、135、171~175、182、および183、または配列番号4でこれらに対応する位置からなる群から選択される1またはそれ以上の位置で、1またはそれ以上の保存的アミノ酸置換を含む。一部の実施形態では、配列番号3と比較して、アミノ酸配列は、アミノ酸位置39にロイシン置換、アミノ酸位置48にアラニン置換、アミノ酸位置73にプロリン置換、アミノ酸位置107にリジン置換、アミノ酸位置115にイソロイシン置換、アミノ酸位置126にイソロイシン置換、またはそれらの任意の組み合わせを含む。一部の実施形態では、配列番号3と比較して、アミノ酸配列は、配列番号64~66からなる群から選択される。一部の実施形態では、アミノ酸配列は、N末端、C末端、またはその任意の組み合わせにおいて、配列番号5、6、9、34、36、および62~71のいずれか1つの内部への少なくとも1つのシステインの導入を含み、ならびにさらに、少なくとも1つの導入されたシステインは、配列番号5、6、9、34、36、および62~71のうちの1つまたはそれ以上のアミノ酸の置換、配列番号5、6、9、34、36、および62~71のいずれか1つへのシステインの挿入、またはそれらの任意の組み合わせから生じる。一部の実施形態では、導入されたシステインは、ペグ化される。一部の実施形態では、ペグ化され導入されたシステインは、配列番号5、6、9、34、36、および62~71のいずれか1つの最初の20のアミノ酸内、配列番号5、6、9、34、36、および62~71のいずれか1つの最後の20のアミノ酸内に位置する。
【0030】
一部の実施形態では、アミノ酸配列は、N末端、C末端、またはその任意の組み合わせにおいて、配列番号5~6,281のいずれか1つの内部への少なくとも1つのシステインの導入を含み、ならびにさらに、少なくとも1つの導入されたシステインは、配列番号5~6,281の1またはそれ以上のアミノ酸の置換、またはそれらの任意の組み合わせから生じる。一部の実施形態では、導入されたシステインは、ペグ化される。一部の実施形態では、ペグ化され導入されたシステインは、配列番号5~6,281のいずれか1つの最初の20のアミノ酸内、配列番号5~6,281のいずれか1つの最後の20のアミノ酸内に位置する。
【0031】
一部の実施形態では、アミノ酸配列は、N末端、C末端、またはその任意の組み合わせにおいて、配列番号6,282~71,814のいずれか1つの内部への少なくとも1つのシステインの導入を含み、ならびにさらに、少なくとも1つの導入されたシステインは、配列番号6,282~71,814の1またはそれ以上のアミノ酸の置換、またはそれらの任意の組み合わせから生じる。一部の実施形態では、導入されたシステインは、ペグ化される。一部の実施形態では、ペグ化され導入されたシステインは、配列番号6,282~71,814のいずれか1つの最初の20のアミノ酸内、配列番号5~6,281のいずれか1つの最後の20のアミノ酸内に位置する。
【0032】
一部の実施形態では、アミノ酸配列は、N末端、C末端、またはその任意の組み合わせにおいて、配列番号3および配列番号4のいずれか1つの内部への少なくとも1つのシステインの導入を含み、ならびにさらに、少なくとも1つの導入されたシステインは、配列番号3および配列番号4の1つまたはそれ以上のアミノ酸の置換、またはそれらの任意の組み合わせから生じる。一部の実施形態では、導入されたシステインは、ペグ化される。一部の実施形態では、ペグ化され導入されたシステインは、配列番号3および4のいずれか1つの最初の20のアミノ酸内、配列番号3および4のいずれか1つの最後の20のアミノ酸内に位置する。
【0033】
本発明のADAM10調節ペプチドの一部の実施形態では、ADAM10調節ペプチドは、保存的アミノ酸置換、非天然アミノ酸置換、D-もしくはD,L-ラセミ混合物異性体型アミノ酸置換、アミノ酸化学置換、カルボキシ末端修飾またはアミノ末端修飾、1またはそれ以上のグリコシル基の付加、および分子(脂肪酸、PEG、糖、蛍光分子、発色団、放射性核種、バイオ結合体、ADAM10調節ペプチドの精製および/または単離に使用できるタグ、および抗体またはそのパラトープ含有フラグメントもしくはその誘導体からなる群から選択される)への結合、からなる群から選択される1またはそれ以上の修飾を含む。
【0034】
本発明は、以下からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、本質的にそれからなる、またはそれのみからなるADAM10調節ペプチドも提供する:(i)配列番号3または配列番号4と少なくとも87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一であるアミノ酸配列、(ii)配列番号1または配列番号2と少なくとも87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一であり、配列番号1または配列番号2のアミノ酸位置26~29、34~36、52~55、62/63、88/89、136~138および169/170、および/または配列番号1のアミノ酸位置176~178のうちの1つまたはそれ以上において少なくとも1つのアミノ酸置換を含む、アミノ酸配列、(iii)配列番号1または2のN末端もしくはその近傍で、C末端もしくはその近傍で、Cys151で、またはそれらの任意の組み合わせにおいて、ペグ化される上記(i)または(ii)のアミノ酸配列、ならびに(iv)配列番号1または配列番号2に記載のアミノ酸配列であって、該アミノ酸配列が、配列番号1または配列番号2のN末端もしくはその近傍で、C末端もしくはその近傍で、Cys151で、またはそれらの任意の組み合わせにおいて、ペグ化されるアミノ酸配列。
【0035】
本発明は、一部の実施形態では、本明細書に開示される1またはそれ以上のADAM10調節ペプチドを含む組成物も提供する。
【0036】
本発明は、一部の実施形態では、本明細書に開示される1またはそれ以上のADAM10調節ペプチドおよび薬学的に許容される担体または賦形剤を含む医薬組成物も提供する。一部の実施形態では、医薬組成物は、ヒトでの使用が薬学的に許容されている。
【0037】
本発明は、一部の実施形態では、配列番号5~71,814のいずれかに記載のアミノ酸配列を含む、本質的にそれからなる、またはそれのみからなるポリペプチドも提供する。一部の実施形態では、ポリペプチドは、ペグ化される。
【0038】
本発明は、一部の実施形態では、配列番号5~6,281のいずれかに記載のアミノ酸配列を含む、本質的にそれからなる、またはそれのみからなるポリペプチドも提供する。一部の実施形態では、ポリペプチドはペグ化される。一部の実施形態では、ポリペプチドは、さらにタグを含み、任意に、該ポリペプチドの精製および/または単離に使用できるHisタグもしくは任意の他のペプチドタグもしくは非ペプチドタグを含む。一部の実施形態では、タグは、タンパク質分解的切断によりポリペプチドから放出可能である。
【0039】
一部の実施形態では、ポリペプチドはインビトロでの使用に適合する。一部の実施形態では、ポリペプチドはインビボでの使用に適合する。
【0040】
本発明は、一部の実施形態では、配列番号1または配列番号2を含む、本質的にそれからなる、またはそれのみからなるポリペプチドも提供し、該ポリペプチドにおいて少なくとも1つのメプリン切断部位および少なくとも1つのフリン切断部位が、配列番号3または配列番号4に記載のアミノ酸置換を含み、それにより、メプリンおよびフリンによる切断に対してポリペプチドの感受性が低くなる。一部の実施形態では、ポリペプチドはペグ化される。一部の実施形態では、システイン151は、野生型ADAM10ポリペプチドと比較して、ポリペプチドの効力、溶解性または薬物動態特性を改善する部分、発色団、フルオロフォア、および放射性ヌクレオチドからなる群から選択される1またはそれ以上の部分に結合し、該1またはそれ以上の部分が、該ポリペプチドの薬物動態学的および/または薬力学的特性の研究を容易にする。
【0041】
本発明は、配列番号6,282~71,814の1つに記載のアミノ酸配列を含む、本質的にそれからなる、またはそれのみからなるポリペプチドも提供し、該ポリペプチドは、そのN末端、C末端、または両方に付加されたAsp、Glu、Arg、およびLysからなる群から選択される1またはそれ以上の荷電残基を含有するスペーサーをさらに含み、さらに、付加された1またはそれ以上の荷電残基の存在により、1またはそれ以上の荷電残基が付加されてないポリペプチドと比較して、該ポリペプチドの溶解性が向上している。
【0042】
本発明は、一部の実施形態では、配列番号5~6,281の1つに記載のアミノ酸配列を含む、本質的にそれからなる、またはそれのみからなるポリペプチドも提供し、該ポリペプチドは、そのN末端、C末端、または両方に付加されたAsp、Glu、Arg、およびLysからなる群から選択される1またはそれ以上の荷電残基を含有するスペーサーをさらに含み、さらに、付加された1またはそれ以上の荷電残基の存在により、1またはそれ以上の荷電残基が付加されてないポリペプチドと比較して、該ポリペプチドの溶解性が向上している。
【0043】
本発明は、一部の実施形態では、ADAM10生物学的活性をインビトロ、エキソビボ、またはインビボで調節する方法も提供する。一部の実施形態では、該方法は、ADAM10ポリペプチドを含む溶液または細胞を、本明細書に開示される1またはそれ以上のADAM10調節ペプチドまたは本明細書に開示される組成物と接触させることを含み、該接触させることは、ADAM10ポリペプチドを、ADAM10ポリペプチドの生物学的活性を調節するのに十分な量のADAM10調節ペプチドと接触させることを含む。
【0044】
本発明は、一部の実施形態では、ADAM10生物学的活性をインビボで阻害する方法も提供する。一部の実施形態では、該方法は、本明細書に開示される1またはそれ以上のADAM10調節ペプチドを含む、本質的にそれからなる、またはそれのみからなる組成物を、患者においてADAM10ポリペプチドの生物学的活性を阻害するのに十分な経路および量で、患者に投与することを含む。一部の実施形態では、ADAM10調節ペプチドは、ペグ化される。
【0045】
本発明は、一部の実施形態では、患者における疾患、障害、または症状と関連したADAM10生物学的活性を阻害する方法も提供する。一部の実施形態では、該方法は、患者内に存在するADAM10ポリペプチドを、有効量の本明細書に開示される1またはそれ以上のADAM10調節ペプチドと接触させることを含み、疾患、障害、または症状は、癌、炎症、アレルギー反応、狼瘡、喘息、感染症および線維症からなる群から選択され、さらに該患者は該疾患、障害、または症状を有する、またはそれらの素因を有する。一部の実施形態では、疾患、障害、または症状は、少なくとも一部は、ADAM10生物学的活性と関連した過剰な細胞増殖から生じる。一部の実施形態では、疾患、障害、または症状は、少なくとも一部は、ADAM10生物学的活性またはタンパク質の過剰な存在を特徴とする。
【0046】
本発明は、一部の実施形態では、細胞からのADAM10基質の放出を阻害する方法も提供する。一部の実施形態では、該方法は、細胞を、本明細書に開示される1またはそれ以上のADAM10調節ペプチドと、ADAM10基質が細胞から放出されるのを阻害するのに十分な量で、接触させることを含む。一部の実施形態では、ADAM10基質は、CD23、IL6-R、EGF、Her-2、HB-EGF、ベータセルリン、ジャギド1、Notch受容体1、Notch受容体3、RAGE、フラクタルカイン、MICA A、I-TAC、HGFR、GITR、GM-CSF、IGF可溶性受容体、およびTGFベータからなる群から選択される。一部の実施形態では、細胞は、患者内に存在する、または患者から単離されている。
【0047】
したがって、本発明の一目的は、修飾ADAM10ペプチドが、修飾がない同様のペプチドと比較して、フリンおよび/またはメプリンによる切断に対してより抵抗性であるように、1またはそれ以上のフリン部位および/または1またはそれ以上のメプリン部位において修飾を含む、ADAM10調節ペプチドを提供することである。
【0048】
上述した本発明の一目的、他の目的および利点は、以下の詳細な説明および実施例のレビューに基づいて、とりわけ、図面を考慮して、明白となる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
図1】クーマシー染色したSDS-PAGEゲルの画像である。野生型ヒトADAM10プロドメインのアミノ酸23~211(すなわち、配列番号1)に対応する、C末端Hisタグ付き野生型(WT)のフリン切断およびペグ化(Peg)ヒトADAM10ペプチド染色の結果を0、13、26、および60分で示す。一番左のレーンは、種々の分子量マーカーの位置を示す。非切断ペプチドは約25キロダルトン(kDa)で移動し、その位置は、図の右側の上段矢印と中段矢印の間に見ることができる。図の右側の矢印は、Hisタグを結合するためにNi-NTA樹脂を用いての切断およびC末端切断産物の回収後、切断されペグ化されたペプチドの位置(上段矢印)、非ペグ化野生型ヒトADAM10プロドメインのアミノ酸51と52との間(すなわち、配列番号1のアミノ酸29と30との間、中段矢印)の切断により生成された19.7kDa産物、および非ペグ化野生型ヒトDAM10プロドメインのアミノ酸77と78との間(すなわち、配列番号1のアミノ酸55と56との間、下段矢印)の切断により生成された16.5kDa産物を示す。N末端にはタグが付けられてないので、切断反応あたり、わずかに1つの切断産物が回収されたことに着目されたい。レーン2、4、6、および8の野生型ヒトADAM10プロドメイン(すなわち、配列番号1)のアミノ酸23~211に対応するペグ化(Peg)ヒトADAM10ペプチドは、10kDaのPEG部分が存在するため、約40kDaで移動した。
図2】クーマシー染色したSDS-PAGEゲルの画像である。配列番号6(本明細書ではmut2とも称する)および配列番号1(すなわち、野生型)の非ペグ化ペプチドのフリン切断の結果を示す。レーン1は、配列番号6の負の対照(すなわちフリンを含まない)を示す。レーン2は、配列番号6にフリンを加えたものを示す。レーン3は、野生型の負の対照(すなわち、フリンを含まない)を示す。レーン4は、配列番号1にフリンを加えたものを示す。
図3】クーマシー染色したSDS-PAGEゲルの画像である。配列番号1のメプリン切断の結果を示す。レーン1は、メプリンで切断された配列番号1である。レーン2は、メプリンを活性化するために使用したフリンとともに活性化緩衝液を含む、負の対照である。レーン3は、メプリンを含む活性化緩衝液である。レーン4は空白である。レーン5は、種々の分子量マーカーの位置を示す。配列番号1には複数のメプリン認識部位があり、レーン1に示す切断パターンとなる。切断フラグメントは、非切断配列番号1(非切断)、および配列番号1のアミノ酸1~177(1~177)、配列番号1のアミノ酸1~169(1~169)、配列番号1のアミノ酸34/35~189(~34~189)、配列番号1のアミノ酸1~136(1~136)、配列番号1のアミノ酸88~189(88~189)を含んだフラグメント、ならびに配列番号1内の複数の切断部位での切断から由来すると推定されるいくつかの小さいフラグメントに対応した。
図4】クーマシー染色したSDS-PAGEゲルの画像である。配列番号1または配列番号9のペプチドのメプリン切断の結果を示す。本明細書ではmut3とも称する、配列番号9は、配列番号1の2つのフリン部位(配列番号1のアミノ酸28および54で)を不活性化したアラニン置換、および配列番号1の2つのメプリン部位(配列番号1のアミノ酸88および177で)を不活性化したアラニン置換を含んだ。レーン1は、メプリンのない配列番号1である。レーン2は、メプリンを加えた配列番号1である。レーン3は、メプリンのない配列番号7である。レーン4は、メプリンを加えた配列番号7である。
図5A】配列番号1(WT)、システイン151でペグ化配列番号1(WT PEG)、配列番号5(MUT1)、配列番号6(MUT2)、またはペグ化配列番号5(MUT1 PEG)の存在下でのMDA-MB468細胞増殖の阻害パーセントの棒グラフである。エラーバーは、4組で実行した試料から算出した平均値±標準誤差(SEM)である。
図5B】溶媒(20mMのTris、40mMのNaCl、10%グリセロール)または配列番号62の存在下でのMDA-MB-468の細胞増殖速度の棒グラフである。P<0.0001。エラーバーは、4組で実行した試料から算出した平均値±標準誤差(SEM)である。
図6図6A図6D。ADAM10活性を阻害するために種々の修飾ADAM10ペプチドの単回腹腔内投与を投与されたマウスから単離された血清の能力により測定された、種々の修飾ADAM10ペプチドの薬物動態特性を試験した実験の結果を示す棒グラフである。図6Aは、修飾ADAM10ペプチドの血清レベル(μMで)を示す棒グラフである。図6Bは、修飾ADAM10ペプチドの血清レベル(nMで)を示す棒グラフである。図6Cは、修飾ADAM10ペプチドの血清濃度(nMで)を示す棒グラフである。図6Dは、修飾ADAM10ペプチドの血清濃度(nMで)を示す棒グラフである。
図7】修飾ADAM10ペプチドの血清濃度(nMで)を示す棒グラフである。
図8図8A図8C。クーマシー染色したSDS-PAGEゲルの画像である。記載の配列番号のフリンによる切断に対する抵抗性についての試験結果を示す。図8Aは、配列番号62、63、34、およびペグ化バージョンの配列番号71にフリンを添加してから、3、10、20、および120分後の試験結果を示す。図8Bは、配列番号62、65、および68にフリンを添加してから、0,20、40、および120分後の試験結果を示す。図8Cは、配列番号63、およびペグ化バージョンの配列番号69、70および71にフリンを添加してから0、30、および120分後の試験結果を示す。
図9図9A図9C。クーマシー染色したSDS-PAGEゲルの画像である。記載の配列番号のメプリンによる切断に対する抵抗性についての試験結果を示す。図9Aは、配列番号5、62、63、および34にメプリンを添加してから、0および10分後の試験結果を示す。図9Bは、配列番号34、66、67、および68にメプリンを添加してから、0および17分後の試験結果を示す。図9Cは、配列番号63、およびペグ化バージョンの配列番号69(69P)、70(70P)および71(71P)にメプリンを添加してから2および10分後の試験結果を示す。
図10】、配列番号62対負の溶媒対照のHollow Fiber Model試験の結果を示す棒グラフである。:P<0.05。エラーバーは、6組で実行した試料から算出した平均値±標準誤差(SEM)である。
図11】負の溶媒対照(各対の左側のバー)および配列番号1の野生型配列(各対の右側のバー)と比較して、mut2/配列番号6(各対の中央のバー)によるインビボでのCD23シェディングの阻害の程度を24時間と48時間で示す棒グラフである。エラーバーは、3組で実行した試料から算出した平均値±標準誤差(SEM)である。
【0050】
コンパクトディスクで提出されるシーケンシング・リストへの参照
本開示と関連するシーケンス・リストを123.3MBファイルとしてコンパクトディスクで提出した。コンパクトディスクには、出願者、表題、ファイル名(FINAL_3217-2PCT_ST25.txt)、作成日(2018年10月2日)、コンピュータシステム(IBM-PC/MS-DOS/MS-Windows)、整理番号(3217/2 PCT)、および対応するPCT国際特許出願番号を確認するために、改ざん防止インクで記載されている。コンパクトディスクで提出したシーケンス・リストは、参照により本開示に組み込まれる。
【0051】
シーケンス・リストの簡単な説明
配列番号1は、野生型ヒトADAM10プロドメインペプチドのアミノ酸配列である。GENBANK(登録商標)バイオシーケンスデータベースの受入番号NP_001101.1のアミノ酸23~211に対応する。
配列番号2は、野生型マウスADAM10プロドメインペプチドのアミノ酸配列である。GENBANK(登録商標)バイオシーケンスデータベースの受入番号NP_031425.2のアミノ酸23~212に対応する。
配列番号3は、配列番号1に基づく本発明のADAM10調節ペプチドのコンセンサスアミノ酸配列である。配列番号1と比較して、配列番号3は、個々に、または任意の組み合わせ、もしくは部分的組み合わせで置換されることができる24のアミノ酸位置を含む。24のアミノ酸位置は、2つのフリン認識部位、6つのメプリン認識部位、および配列番号1の位置151に存在する1つのシステインに対応する。
配列番号4は、配列番号2に基づく本発明のADAM10調節ペプチドのコンセンサスアミノ酸配列である。配列番号2と比較して、配列番号4は、個々に、または任意の組み合わせ、もしくは部分的組み合わせで置換されることができる21のアミノ酸位置を含む。21のアミノ酸位置は、2つのフリン認識部位、5つのメプリン認識部位、および配列番号2の位置151に存在する1つのシステインに対応する。
配列番号5~71,814は、配列番号3または配列番号4の実施形態に対応する、本発明の例示的なADAM10調節ペプチドのアミノ酸配列である。
【発明を実施するための形態】
【0052】
ここで本発明を以下により詳細に述べ、本発明のすべてではないが一部の実施形態を説明する。実際、本発明は、多くの異なる形態で具体化されることができ、本明細書に記載の実施形態に限定されると解釈されるべきではなく、むしろ本開示が適用できる法的要件を満たすように、これらの実施形態は提供される。
【0053】
I.定義
本明細書で用いる用語は、特定の実施形態のみを説明する目的であり、本発明を限定することを意図するものではない。
【0054】
以下の用語は当業者によって十分に理解されるものと考えられ、以下の定義は本発明の説明を容易にするために記載される。
【0055】
本明細書で用いるすべての技術的および科学的用語は、以下に別段の定義がない限り、当技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有するように意図される。本明細書で使用する技術への参照は、当技術分野で一般に理解されている技術、例えば、それらの技術の変形例、または当業者には明らかである同等の代替技術を指すことが意図される。次の用語は当技術分野の当業者によって十分に理解されると考えられるが、次の定義は本発明の説明を容易にするために記載される。
【0056】
本発明を説明するに際しては、いくつかの技術およびステップが開示されることが理解されよう。これらの各々には個々の利点があり、各々を他の開示されている技術の1つまたはそれ以上と、あるいは場合によってはすべてと組み合わせて用いることもできる。
【0057】
したがって、分かりやすくするために、この説明は、個別のステップのあらゆる可能な組み合わせを不必要に繰り返すことを控えることにする。それにもかかわらず、明細書および特許請求の範囲は、そのような組み合わせが完全に本発明および請求項の範囲内であることを理解して読む必要がある。
【0058】
長年の特許法慣例に従って、特許請求の範囲を含み、本出願で用いる場合、用語「a」、「an」、「the」とは、「1またはそれ以上」を指す。例えば、「抗体」という句は、複数の同じ抗体を含めて、1つまたはそれ以上の抗体を指す。同様に、本明細書で存在物を指すために使用する場合、句「少なくとも1つ」とは、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、75、100、またはそれ以上のその存在物を指し、1と100との間および100を超える全数値を含むが、これに限定されるものではない。
【0059】
別段の指示がない限り、本明細書および特許請求の範囲で用いられる成分の量、反応条件などを表すすべての数は、いかなる場合も、「約」という用語によって修正されると理解されるべきである。測定可能な値、例えば、質量、重量、時間、容量、濃度、またはパーセンテージの量を指すとき、本明細書で用いる場合、「約」という用語は、一部の実施形態では±20%、一部の実施形態では±10%、一部の実施形態では±5%、一部の実施形態では±1%、一部の実施形態では±0.5%、一部の実施形態では±0.1%の指定量からの変形例を包含し、そのような変形例は開示される方法を実施するのに適切であることを意味する。したがって、特にそれとは反対の指示がない限り、本明細書および添付の特許請求の範囲に記載の数値パラメータは、本発明によって得ることを求められる所望の特性に応じて変化し得る近似値である。
【0060】
本明細書で用いる場合、「アミノ酸」という用語は、本発明のADAM10調節ペプチドを生成する際に使用することができるα-アミノ酸を指す。ポリペプチドに天然に生じる「標準」アミノ酸は20種類あり、これらを表1にまとめる。
【0061】
【表1】
【0062】
本明細書で用いる場合、存在物の一覧と関連して用いる場合、「および/または」という用語は、単独でまたは組み合わせで存在する存在物を指す。したがって、例えば、「A、B、Cおよび/またはD」という句は、A、B、CおよびDを個別に含むだけでなく、A、B、およびDのありとあらゆる組み合わせと部分的組み合わせを含む。
【0063】
「含める」、「含有する」、または「特徴とする」と同義である「含む」という用語は、包括的すなわち非限定的であり、追加の非列挙された要素および/または方法ステップを除外しない。「含む」は、専門用語であり、挙げた要素および/またはステップが存在するが、他の要素および/またはステップも加えることができ、さらに関連する主題の範囲内に入ることを意味する。
【0064】
本明細書で用いる場合、「それのみからなる」という句は、具体的に列挙されていないいずれの要素、ステップ、または成分を除外する。「それのみからなる」という句が、前提部分の直後よりはむしろ、請求項本文の節に現れるとき、その節に記載の要素だけが限定され、他の要素は全体としてその請求項から除外されないことに着目されたい。
【0065】
本明細書で用いる場合、「本質的にそれからなる」という句は、指定された物質および/またはステップに加えて、開示されるおよび/または主張される主題の基本的および新規の特徴(複数可)に物質的に影響を及ぼさないものに関連した開示または請求項の範囲を限定する。例えば、医薬組成物は、「本質的に」薬学的活性剤または複数の薬学的活性剤「からなる」ことができ、これは、列挙された薬学的活性剤(複数可)がその医薬組成物中に存在する唯一の薬学的活性剤(複数可)であることを意味する。しかし、担体、賦形剤、および他の不活性剤がその医薬組成物に存在し得る、および存在する可能性があることに着目されたい。
【0066】
「含む」、「それのみからなる」、および「本質的にそれからなる」の用語に関して、これらの3つの用語の1つが本明細書で用いられる場合、本開示および主張の主題は、他の2つの用語のうちのいずれか、または両方の使用を含み得る。例えば、一部の実施形態では、本発明はペプチドを含む組成物に関する。したがって、本開示のレビュー後に、本発明が本質的に本発明のペプチドからなる組成物、ならびに本発明のペプチドからなる組成物を包含することを当業者は理解するであろう。
【0067】
本明細書で用いる場合「患者」という用語は、あらゆる無脊椎動物種または脊椎動物種のメンバーを指す。したがって、「患者」という用語は、脊索門(例えば、硬骨魚網(硬骨魚)、両生網(両生類)、爬虫網(爬虫類)、鳥網(鳥類)、および哺乳網(哺乳類)のメンバー)、ならびにそれに包含される目および科すべてを含むがこれに限定されない動物界のあらゆるメンバーを包含することを意図する。
【0068】
本発明の組成物および方法は、温血脊椎動物に特に有用である。したがって、本発明は、哺乳類および鳥類に関する。より詳細には、ヒトおよび他の霊長類などの哺乳類において、ならびに絶滅の危機に瀕しているために重要な哺乳類(例えばアムールトラ)、経済的に重要な哺乳類(ヒトによって消費のために養殖されている動物)および/またはヒトにとって社会的に重要な動物(ペットとしてまたは動物園で飼育されている動物)、例えば、ヒト以外の肉食動物(ネコ、イヌなど)、家畜の豚(ブタ、食用ブタ、イノシシ)、反芻動物(畜牛、雄牛、ヒツジ、キリン、シカ、ヤギ、バイソン、ラクダなど)、齧歯動物(マウス、ラット、ウサギなど)、有袋類、およびウマにおいての使用に由来する、および/または使用するための組成物および方法が提供される。例えば、絶滅の危機に瀕している、動物園で飼育されている鳥の種類、ならびに家禽、より具体的には、家畜化された家禽、例えば、七面鳥、ニワトリ、アヒル、ガチョウ、ホロホ鳥などの飼鳥類を含む、ヒトにとって経済的に重要である鳥類について開示される方法および組成物の用途も提供される。したがって、家畜の豚(ブタ、食用ブタ)、反芻動物、ウマ、飼鳥類などを含むがこれらに限定されない家畜について開示される方法および組成物の用途も提供される。
【0069】
同様に、本明細書で開示される遺伝子、遺伝子名、遺伝子産物のすべては、本明細書で開示される組成物および方法が適用可能なあらゆる種からの相同分子種に対応することが意図される。したがって、この用語には、ヒトおよびマウス由来の遺伝子、遺伝子産物が含まれるが、これらに限定されるものではない。当然のことながら、特定の種由来の遺伝子または遺伝子産物が開示される場合、この開示は例示的であることのみを意図し、それが現れる文脈で明白に指示されない限り、限定として解釈されるべきではない。したがって、例えば、本明細書に提示された遺伝子について、開示されたヒトアミノ酸配列は、これらに限定されないが、他の哺乳動物、魚、両生類、爬虫類、および鳥類を含む他の動物由来の相同遺伝子および遺伝子産物を包含することを意図される。また、対応するGENBANK(登録商標)バイオシーケンスデータベースエントリーに開示されているものを含むがこれに限定されない、開示されたアミノ酸配列をコードするすべてのヌクレオチド配列を包含する。
【0070】
「癌」および「腫瘍」という用語は、本明細書では同じ意味で用いられ、乳房;結腸;直腸;肺;中咽頭;下咽頭;食道;胃;膵臓;肝臓;胆嚢;胆管;小腸;腎臓、膀胱と尿路上皮を含む尿路;頸部、子宮、卵巣(例えば、絨毛癌と妊娠性絨毛疾患)を含む女性生殖器;前立腺、精嚢、精巣と胚細胞性腫瘍を含む男性生殖器;甲状腺、副腎と下垂体を含む内分泌腺;皮膚(例えば、血管腫と黒色腫)、骨または軟組織;血管(例えば、カポシ肉腫);脳、神経、眼と髄膜(例えば、星細胞腫、神経膠腫、膠芽細胞腫、網膜芽細胞腫、神経腫、神経芽細胞腫、神経鞘腫と髄膜腫)を含むがこれらの限定されない、患者におけるあらゆる組織の原発固形腫瘍と転移固形腫瘍、および癌の両方を指す。本明細書で用いる場合、「癌」および「腫瘍」という用語は、また、多細胞腫瘍、ならびに個別の腫瘍性細胞または前腫瘍性細胞を指すことを意図される。一部の実施形態では、癌または腫瘍は、これに限定されないが癌腫などの上皮組織の癌または腫瘍を含む。一部の実施形態では、腫瘍は腺癌であり、一部の実施形態では、これは、膵臓、乳房、卵巣、結腸もしくは直腸、および/またはこれらに由来する転移細胞の腺癌である。
【0071】
II.ADAM10調節ペプチドとその結合体、組成物、医薬組成物、およびポリペプチド
II.AADAM10調節ペプチド、ポリペプチド、およびその結合体
ADAM10生物学的活性は、癌、神経障害、喘息、およびアレルギー応答などの疾患、ならびに炎症、過剰な細胞増殖、血管新生、および過剰な可溶性CD23のうちの1つまたはそれ以上の存在により少なくとも一部はそれを特徴とする障害に関係づけられてきた。一般に、ADAM10を含むADAMファミリーメンバーは、酵素を潜伏状態に維持するプロドメインを有するチモーゲンとして発現される。一部の実施形態では、本発明のADAM10調節ペプチドは、ADAM10プロドメイン配列に基づいているが、野生型ADAM10プロドメイン配列と比較して、1またはそれ以上の修飾を有し、それに基づいて、安定性およびADAM10阻害活性の増加となる。
【0072】
より具体的に、配列番号1は、ヒトADAM10ポリペプチドのアミノ酸23~211(すなわち、野生型ヒトADAM10プロドメインを表す)に対応し、配列番号2は、マウスADAM10ポリペプチドのアミノ酸23~212に対応する。したがって、一部の実施形態では、本発明のADAM10調節ペプチドは、配列番号1または配列番号2と比較して、1またはそれ以上の修飾を含むアミノ酸配列を有する。配列番号1内には、2つのフリン認識配列と、6つのメプリン認識配列とがあり、配列番号2には、配列番号1のフリン認識配列とともに最初の5つのメプリン認識配列が含まれることが決定されている。
【0073】
任意に1またはそれ以上のメプリン認識配列の修飾と組み合わせて、1またはそれ以上のフリン認識配列を修飾することで、フリンおよび/またはメプリンによる切断に対して本発明のADAM10調節ペプチドの感受性が低くなることがさらに決定された。フリンおよび/またはメプリンによる切断に対してこの感受性の低下は、本発明のADAM10調節ペプチドの安定性を向上させ、これによりADAM10ポリペプチドの生物学的活性を阻害する本発明のADAM10調節ペプチドの能力の増加ももたらされる。
【0074】
配列番号1に関して、第1の(すなわち、N末端)フリン認識配列は、配列番号1のアミノ酸26~29に対応し、第2の(すなわち、C末端)フリン認識配列は、配列番号1のアミノ酸52~55に対応する。配列番号1のアミノ酸26~29および/またはアミノ酸52~55のうちの1つまたは複数でアミノ酸配列を修飾することで、本発明のADAM10調節ペプチドを切断するフリンの能力を低減させ得ることが決定された。
【0075】
したがって、一部の実施形態では、本発明はADAM10調節ペプチドを提供し、ADAM10調節ペプチドは、配列番号1のアミノ酸26~29および/またはアミノ酸52~55などに限定されないが、少なくとも1つのフリン認識部位に少なくとも1つのアミノ酸置換を含むアミノ酸配列を含み、本質的にそれからなり、またはそれのみからなり、少なくとも1つのフリン認識部位に少なくとも1つのアミノ酸置換により、フリンによる切断に対してADAM10調節ペプチドの感受性が低くなる。フリン認識部位に対する例示的な非限定的アミノ酸修飾を表2に示す。
【0076】
【表2】
【0077】
アミノ酸位置26~29および52~54に関して、本発明のADAM10調節ペプチドの安定性を向上させるために、アミノ酸位置1、2、3、4、5、6、7、または8すべてのアミノ酸位置を修飾することができ、および一部の実施形態では、これらの位置の各々で表2に一覧のいずれのアミノ酸置換を使用することができることに着目されたい。
【0078】
さらに、メプリン認識部位に関して、一部の実施形態では、本発明はADAM10調節ペプチドを提供し、ADAM10調節ペプチドは、配列番号1または配列番号2の少なくとも1つのメプリン認識部位に少なくとも1つのアミノ酸置換を含むアミノ酸配列を含み、本質的にそれからなり、またはそれのみからなり、少なくとも1つのメプリン認識部位に少なくとも1つのアミノ酸置換により、メプリンによる切断に対してADAM10調節ペプチドの感受性が低くなる。メプリン認識部位に対する例示的な非限定的アミノ酸修飾を表3に示す。
【0079】
【表3】
【0080】
したがって、一部の実施形態では、ADAM10調節ペプチドがフリンによる、任意にフリンおよびメプリンの両方による切断に対して感受性が低くなるように、本発明のADAM10調節ペプチドは、少なくとも1つのフリン認識部位に少なくとも1つのアミノ酸置換を含むアミノ酸配列を含み、本質的にそれからなり、またはそれのみからなり、任意に、配列番号1または配列番号2の少なくとも1つのメプリン認識部位に少なくとも1つのアミノ酸置換、およびその組み合わせを含む。
【0081】
さらに、一部の実施形態では、非アミノ酸置換修飾も、本発明のADAM10調節ペプチドに含めることができる。限定ではなく例として、本発明のADAM10調節ペプチドは、ポリエチレングリコール(PEG)部分に結合されることができる(すなわち、該ADAM10はペグ化されることができる)。一部の実施形態では、本発明のADAM10調節ペプチドは、N末端もしくはその近傍で、および/またはC末端もしくはその近傍でペグ化されることができる。「もしくはその近傍で」という句は、ADAM10調節ペプチドの最初の約20のアミノ酸の1つにおよび/またはADAM10調節ペプチドの最後の約20のアミノ酸の1つにPEG部分を結合することを包含することを意図する。配列番号1および2においてアミノ酸位置151には単一システインアミノ酸もあり、一部の実施形態では、PEG部分はシステインのスルフヒドリル基を介してADAM10調節ペプチドに結合されることができる。PEG部分以外の他の部分も、これらの位置で結合されることができ、糖、糖鎖、ポリサルコシン、ポリオール、それらを含有するプロリン、アラニン、およびセリン(PAS)などの短鎖ペプチドが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0082】
一部の実施形態では、ADAM10調節ペプチドが一部の実施形態において、それに結合される1、2、または3つのPEG部分を有することができるように、本発明のADAM10調節ペプチドは、N末端もしくはその近傍で、C末端もしくはその近傍で、および/またはCys151での任意の組み合わせでペグ化されることができる。一部の実施形態では、PEG部分は、分子量が約キロダルトン(kDa)であるが、より大きいあるいはより小さいPEG部分も用いることができる。
【0083】
一部の実施形態では、Cys151もアミノ酸置換によって修飾されることができる。Cys151での例示的な置換は、セリン、グリシン、アラニン、およびレオニンを含む。したがって、0~3PEG部分をそれに結合させることに加えて、本発明のADAM10調節ペプチドは、一部の実施形態では151位置に加えて、表2~3に一覧したアミノ酸位置1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、または23のすべてにおいて修飾を含むことができる。このように、一部の実施形態では、本発明のADAM10調節ペプチドは、配列番号1の位置26~29、34~36,52~55、62、63、88、89、136~138、151、169、170、および176~178で1~24のアミノ酸置換を含む。配列番号3および4は、位置151に加えて表2~3に明確にされたこれらのアミノ酸位置とともに、それぞれ、ヒトおよびマウスのADAM10アミノ酸配列に基づいた共通配列を提供する。
【0084】
当然のことながら、これらの位置でのアミノ酸置換の任意の組み合わせが可能であり、一部の実施形態では、アミノ酸置換は、位置151でのセリン、グリシン、アラニンまたはトレオニンに加えて表2~3に記載のものから選択される。本発明のADAM10調節ペプチドのための可能なアミノ酸配列の非限定的なサブセットは、配列番号5~71,814に示される。本発明のADAM10調節ペプチドのさらなる非限定的な例は、以下の通りである。
【0085】
一部の実施形態では、本発明はADAM10調節ペプチドを提供する。一部の実施形態では、ADAM10調節ペプチドがフリンによる、および任意にフリンとメプリンの両方による切断に対して感受性が低くなるように、ADAM10調節ペプチドは、配列番号1または配列番号2の少なくとも1つのフリン認識部位に少なくとも1つのアミノ酸置換を含むアミノ酸配列を含み、本質的にそれからなり、またはそれのみからなり、任意にさらに、配列番号1または配列番号2の少なくとも1つのメプリン認識部位に少なくとも1つのアミノ酸置換、およびその組み合わせを含む。一部の実施形態では、少なくとも1つのフリン認識部位は、配列番号1または配列番号2のアミノ酸位置26~29およびアミノ酸位置52~55からなる群から選択され、ならびに少なくとも1つのメプリン認識部位は、配列番号1のアミノ酸位置34~36、アミノ酸位置62/63、アミノ酸位置88/89、アミノ酸位置136~138、アミノ酸位置169/170、およびアミノ酸位置176~178、または配列番号2のアミノ酸位置34~36、アミノ酸位置62/63、アミノ酸位置88/89、アミノ酸位置136~138、およびアミノ酸位置169/170からなる群から選択される。一部の実施形態では、配列番号1または配列番号2のシステイン151は、アラニン、セリン、グリシンまたはトレオニンで置換される、またはペグ化される。一部の実施形態では、ADAM10調節ペプチドは、配列番号3および4のいずれかに記載のアミノ酸配列を含む、本質的にそれからなる、またはそれのみからなる。一部の実施形態では、ADAM10調節ペプチドは、配列番号3または配列番号4の位置26、28および29のうちの1つまたはそれ以上でアラニンを、配列番号3または配列番号4の位置52、54および55のうちの1つまたはそれ以上で、またはその任意の組み合わせでアラニンを、ならびに配列番号3の位置88および89の1つまたは両方でアラニンを、位置176~178のうちの1つまたはそれ以上で、またはその任意の組み合わせでアラニンを含むアミノ酸配列を含む、本質的それからなる、またはそれのみからなる。一部の実施形態では、配列番号3または配列番号4のシステイン151は、アラニン、セリン、グリシンもしくはトレオニンで置換される、またはペグ化される。一部の実施形態では、ADAM10調節ペプチドは、配列番号3または配列番号4の位置26、28または29のうちの1つもしくはそれ以上でアラニンを、配列番号3または配列番号4の位置52、54または55のうちの1つもしくはそれ以上で、またはその任意の組み合わせでアラニンを含むアミノ酸配列を含む、本質的にそれからなる、またはそれのみからなる。一部の実施形態では、配列番号3または配列番号4に関して、アミノ酸位置29および55の1つまたは両方は、独立して、アラニンおよびリジンからなる群から選択される。一部の実施形態では、ADAM10調節ペプチドは、配列番号3の位置88、89、177および178、および/または配列番号4の位置88および89のうちの1つまたはそれ以上でアラニンをさらに含む。一部の実施形態では、ADAM10調節ペプチドは、アミノ酸151でシステインに、システインのセリン、グリシン、アラニンまたはトレオニンでの置換、およびシステインのペグ化からなる群から選択される修飾をさらに含む。一部の実施形態では、アミノ酸151はセリンであり、またはシステイン151はペグ化される。
【0086】
一部の実施形態では、ADAM10調節ペプチドは、アミノ酸151でシステインに、システインのセリン、グリシン、アラニンまたはトレオニンでの置換、およびシステインのペグ化からなる群から選択される修飾をさらに含む。一部の実施形態では、アミノ酸151はセリンであり、一部の実施形態では、アミノ酸151はペグ化される。
【0087】
一部の実施形態では、配列番号3または配列番号4に関して、アミノ酸位置29および55の1つまたは両方は、独立して、セリン、グリシン、およびトレオニンからなる群から選択される。一部の実施形態では、配列番号3または配列番号4のアミノ酸位置151は、セリン、グリシン、アラニンまたはトレオニンである。一部の実施形態では、配列番号3または配列番号4のアミノ酸位置151は、ペグ化される。一部の実施形態では、N末端、C末端または両方とも、ペグ化される。
【0088】
一部の実施形態では、配列番号3または配列番号4に関して、アミノ酸位置26はアルギニンではなく、アミノ酸位置27はアラニンではなく、アミノ酸位置28はリジンではなく、および/またはアミノ酸位置29はアルギニンではなく;および/またはアミノ酸位置52はアルギニンではなく、アミノ酸位置53はメチオニンではなく、アミノ酸位置54はリジンではなく、および/またはアミノ酸位置55はアルギニンではなく;および/またはアミノ酸位置34はグルタミン酸ではなく、アミノ酸位置35はアスパラギン酸ではなく、および/またはアミノ酸位置36はグルタミンではなく;アミノ酸位置62はアスパラギン酸ではなく、および/またはアミノ酸位置63はグルタミン酸ではなく;および/またはアミノ酸位置88はアラニン、セリン、グリシン、トレオニン、およびアスパラギンからなる群から選択され、および/またはアミノ酸位置89はアラニン、セリン、グリシン、トレオニン、およびアスパラギンからなる群から選択され;および/またはアミノ酸位置136はグルタミン酸ではなく、アミノ酸位置137はアスパラギン酸ではなく、および/またはアミノ酸位置138はアスパラギン酸ではなく;および/またはアミノ酸位置151はシステインではなく;および/またはアミノ酸位置169はグルタミン酸ではなく、および/またはアミノ酸位置170はグルタミン酸ではなく;および/または配列番号3のアミノ酸位置176~178は、それぞれ独立して、グルタミン、アラニン、セリン、グリシン、トレオニン、およびアスパラギンからなる群から選択されるが、ただし、位置176~178のアミノ酸配列はグルタミン/グルタミン酸/グルタミン酸ではない。一部の実施形態では、位置151のアミノ酸は、セリン、グリシン、アラニン、およびトレオニンからなる群から選択される。一部の実施形態では、N末端、C末端、位置151のシステイン、またはその任意の組み合わせは、ペグ化される。
【0089】
一部の実施形態では、ADAM10調節ペプチドは、配列番号1または配列番号2のアミノ酸位置26~28でフリン認識部位を不活性化する、配列番号1または配列番号2のアミノ酸位置52~54でフリン認識部位を不活性化する、またはこれらの両方である、1またはそれ以上の修飾を含む、本質的にそれからなる、またはそれのみからなる。
【0090】
一部の実施形態では、ADAM10調節ペプチドは、配列番号1または配列番号2のアミノ酸位置34~36、配列番号1または配列番号2のアミノ酸位置62/63、配列番号1または配列番号2のアミノ酸位置88/89、配列番号1または配列番号2のアミノ酸位置136~138、配列番号1または配列番号2のアミノ酸位置169/170、配列番号1のアミノ酸位置176~178、またはその任意の組み合わせにおいてメプリン認識部位を不活性化する、1またはそれ以上の修飾を含む、本質的にそれからなる、またはそれのみからなる。
【0091】
一部の実施形態では、ADAM10調節ペプチドは、配列番号1のアミノ酸位置88/89ならびに配列番号1のアミノ酸位置176~178でメプリン認識部位を不活性化する、少なくとも2つの修飾を含む、本質的にそれからなる、またはそれのみからなる。
【0092】
一部の実施形態では、ADAM10調節ペプチドは、配列番号1または配列番号2のアミノ酸位置26~28および52~54のフリン認識部位、ならびに配列番号1または配列番号2のアミノ酸位置34~36、62/63、88/89、136~138、および169/170でメプリン認識部位を不活性化する、ならびに任意にさらに、配列番号1のアミノ酸位置176~178でメプリン認識部位を不活性化する、複数の修飾を含む、本質的にそれからなる、またはそれのみからなる。
【0093】
一部の実施形態では、ADAM10調節ペプチドは、配列番号1または配列番号2のアミノ酸位置26~28および52~54のフリン認識部位、ならびに配列番号1のアミノ酸位置88/89および176~178でメプリン認識部位を不活性化する、複数の修飾を含む、本質的にそれからなる、またはそれのみからなる。
【0094】
一部の実施形態では、ADAM10調節ペプチドは、配列番号1に関して、アミノ酸位置26~29、およびアミノ酸位置52~55のうちの1つまたはそれ以上、およびアミノ酸位置88/89、およびアミノ酸位置178~178のうちの1つまたはそれ以上で、配列番号3で定義されるアミノ酸置換を含むアミノ酸配列を含む、本質的にそれからなる、またはそれのみからなる。一部の実施形態では、アミノ酸位置151は、セリン、グリシン、アラニン、およびトレオニンから選択され、またはアミノ酸位置151のシステインはペグ化される。一部の実施形態では、ADAM10調節ペプチドは、N末端、C末端、アミノ酸位置151、またはその任意の組み合わせにおいて、PEG部分をさらに含む。一部の実施形態では、ADAM10調節ペプチドは、N末端、C末端、アミノ酸位置151、またはその任意の組み合わせにおいて、PEG部分をさらに含む。
【0095】
一部の実施形態では、ADAM10調節ペプチドは、配列番号1または配列番号2のアミノ酸位置34~36、62/63、136~138、および169/170、ならびに任意に、配列番号1の176~178のうちの1つまたはそれ以上のメプリン認識部位に、配列番号3で定義される1つまたはそれ以上のアミノ酸置換をさらに含む。一部の実施形態では、アミノ酸置換の少なくとも1つは、アラニン置換である。一部の実施形態では、ADAM10調節ペプチドは、N末端、C末端、アミノ酸位置151、またはその任意の組み合わせにおいて、PEG部分をさらに含む。一部の実施形態では、ADAM10調節ペプチドは、N末端、C末端、アミノ酸位置151、またはその任意の組み合わせにおいて、PEG部分をさらに含む。
【0096】
一部の実施形態では、ADAM10調節ペプチドは、配列番号5~71,814のいずれかに記載のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、配列番号1に関して、アミノ酸位置29および55のそれぞれは、保存的アミノ酸変化で置換されたセリン、グリシン、トレオニンまたはセリンであり、アミノ酸位置34~36のそれぞれの少なくとも1つは保存的アミノ酸変化で置換されたアスパラギン、セリン、グリシン、トレオニンまたはセリンであり、アミノ酸位置62および63の少なくとも1つは保存的アミノ酸変化で置換されたアスパラギン、セリン、グリシン、トレオニンまたはセリンであり、アミノ酸位置88および89の少なくとも1つは保存的アミノ酸変化で置換されたアスパラギン、セリン、グリシン、トレオニンまたはセリンであり、アミノ酸位置136~138の少なくとも1つは保存的アミノ酸変化で置換されたアスパラギン、セリン、グリシン、トレオニンまたはセリンであり、アミノ酸位置169および170の少なくとも1つは保存的アミノ酸変化で置換されたアスパラギン、セリン、グリシン、トレオニンまたはセリンであり、アミノ酸位置176~178の少なくとも1つは保存的アミノ酸変化で置換されたアスパラギン、セリン、グリシン、トレオニンまたはセリンである。一部の実施形態では、ADAM10調節ペプチドは、配列番号1のN末端、C末端、アミノ酸位置151、またはその任意の組み合わせにおいて、PEG部分をさらに含む。
【0097】
一部の実施形態では、AMAD10調節ペプチドは、配列番号5~71,814のいずれかと少なくとも、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、アミノ酸配列は、アミノ酸位置について配列番号3で定義されるアミノ酸位置26、28、29、34~36、52、54、55、62、63、88、89、136~138、151、169~178、182、および183からなる群から選択されるアミノ酸位置で、配列番号5~6,281のうちの1つまたはそれ以上のアミノ酸置換を含む。
【0098】
2つのタンパク質配列と関連して、「同一性パーセント」および「同一パーセント」という句は、以下の配列比較アルゴリズムの1つを用いて、または目視検査によって測定し、最大一致のために比較および整列させたとき、一部の実施形態では少なくとも60%、一部の実施形態では少なくとも70%、一部の実施形態では少なくとも80%、一部の実施形態では少なくとも85%、一部の実施形態では少なくとも87%、一部の実施形態では少なくとも88%、一部の実施形態では少なくとも89%、一部の実施形態では少なくとも90%、一部の実施形態では少なくとも91%、一部の実施形態では少なくとも92%、一部の実施形態では少なくとも93%、一部の実施形態では少なくとも94%、一部の実施形態では少なくとも95%、一部の実施形態では少なくとも96%、一部の実施形態では少なくとも97%、一部の実施形態では少なくとも98%、および一部の実施形態では少なくとも99%のヌクレオチド残基同一性またはアミノ酸残基同一性を有する2つ以上の配列または部分配列を指す。同一性パーセントは、一部の実施形態では、長さが少なくとも約50残基である配列の領域にわたり存在し、一部の実施形態では、少なくとも約100残基の領域にわたり存在し、および一部の実施形態では、同一性パーセントは、少なくとも約150残基にわたり存在する。一部の実施形態では、同一性パーセントは、比較される配列の1つの全長にわたり存在する。一部の実施形態では、同一性パーセントは、ADAM10調節ペプチドのアミノ酸配列の全長にわたり算出される。
【0099】
配列比較に関して、一般的に1つの配列は、試験配列が比較される参照配列としての役割を果たす。配列比較アルゴリズムを使用する場合、試験配列および参照配列をコンピュータに入力し、必要に応じて配列座標を指定して、配列アルゴリズムプログラムパラメータを指定する。次いで、配列比較アルゴリズムは、指定されたプログラムパラメータに基づいて、参照配列と比較して試験配列(複数可)の配列同一性パーセントを算出する。
【0100】
比較のための配列の最適的なアライメントは、例えば、Smith & Waterman, 1981に記載の局所相同性アルゴリズムによって、Needleman & Wunsch, 1970に記載の相同性アライメントアルゴリズムによって、Pearson & Lipman, 1988に記載の類似性方法の検索によって、これらのアルゴリズム(Accelrys, Inc., San Diego, California, United States of Americaから入手可能なGCG(登録商標)WISCONSIN PACKAGE(登録商標)のGAP、BESTFIT、FASTA、およびTFASTA)のコンピュータ化された実装によって、または目視検査によって行われることができる。一般に、Ausubelら, 1989を参照されたい。
【0101】
配列同一性パーセントおよび配列類似性を決定するのに適しているアルゴリズムの一例は、BLASTアルゴリズムであり、Altschulら, 1990に記載されている。BLAST解析を行うためのソフトウェアは、World Wide Webを介して、National Center for Biotechnology Informationから公的に入手可能である。このアルゴリズムは、最初に、データベースの配列中の同じ長さのワードとともに整列すると、ある正値の閾値スコアTに一致する、またはこれを満たす、のいずれかのクエリー配列中の短いワードの長さWを特定することによる高スコア配列対(HSP)を特定することを含む。Tは、隣接ワードスコア閾値(Altschulら, 1990)と称される。これらの最初の隣接ワードヒットは、それらを含むさらに長いHSPを見つけるために検索を開始するためのシードとしての役割を果たす。次いで、ワードヒットは、累積アライメントスコアが増加可能な限り、それぞれの配列に沿って両方向に伸長される。ヌクレオチド配列の場合、累積スコアは、パラメータM(一致する残基の対に対するリワードスコア、常に>0)およびN(不一致残基に対するペナルティースコア、常に<0)を用いて算出される。アミノ酸配列の場合、累積スコアを算出するために、スコア行列を用いる。各方向でのワードヒットの伸長は、累積アライメントスコアがその最大達成値から量X低下した場合、1またはそれ以上の負スコアの残基アライメントの蓄積のため、累積スコアがゼロ以下になった場合、またはいずれかの配列の末端に達した場合、停止する。BLASTアルゴリズム・パラメータW、T、およびXは、アライメントの感度および速度を決定する。BLASTNプログラム(ヌクレオチド配列の場合)は、デフォルトとしてワード長(W)11、期待値(E)10、カットオフ100、M=5、N=4、および両鎖の比較を使用する。アミノ酸配列の場合、BLASTPプログラムは、デフォルトとしてワード長(W)3、期待値(E)10、およびスコア行列BLOSUM62を用いる。Henikoff & Henikoff, 1992を参照されたい。
【0102】
配列同一性パーセントの算出に加えて、BLASTアルゴリズムも2つの配列間の類似性の統計的解析を行う。例えば、Karlin & Altschul. 1993を参照されたい。BLASTアルゴリズムによって提供される類似性の1つの尺度は、最小和確率(P(N))であり、これにより2つのヌクレオチド配列間またはアミノ酸配列間の一致が偶然に起こる確率の指標が提供される。例えば、参照核酸配列に対する試験核酸配列の比較における最小和確率が、一部の実施形態では約0.1未満、一部の実施形態では約0.01未満、一部の実施形態では約0.001未満である場合に、試験核酸配列は参照配列に類似しているとみなされる。
【0103】
一部の実施形態では、アミノ酸位置151は、セリン、グリシン、アラニン、およびトレオニンからなる群から選択され、またはアミノ酸位置151でシステインはペグ化される。一部の実施形態では、配列番号1に関して、アミノ酸26、28および29の少なくとも1つ、および/またはアミノ酸52、54および55のうちの少なくとも1つは、保存的アミノ酸変化で置換されたセリン、グリシン、トレオニンまたはセリンであり、ならびに位置88/89および/または176~178の少なくとも1つのアミノ酸は、保存的アミノ酸変化で置換されたアスパラギン、セリン、グリシン、トレオニンまたはセリンである。一部の実施形態では、ADAM10調節ペプチドは、配列番号1のN末端、C末端、アミノ酸位置151、またはその任意の組み合わせにおいて、PEG部分をさらに含む。
【0104】
本発明は、一部の実施形態において、PEG部分に結合された配列番号1または配列番号2を含む、本質的にそれからなる、またはそれのみからなるADAM10調節ペプチドも提供する。一部の実施形態では、PEG部分は、配列番号1または配列番号2のアミノ酸位置151のシステインに結合される。
【0105】
本発明は、一部の実施形態では、配列番号5、6、9、34、36、および62~71のいずれか1つに記載のアミノ酸配列を含む、本質的にそれからなる、またはそれのみからなるADAM10調節ペプチドも提供する。一部の実施形態では、ペプチドは、配列番号62または配列番号63に記載のアミノ酸配列を含む、本質的にそれからなる、またはそれのみからなる。
【0106】
本発明は、一部の実施形態では、配列番号5、6、9、34、36、および62~71のいずれか1つと少なくとも87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列を含む、本質的にそれからなる、またはそれのみからなるADAM10調節ペプチドも提供する。一部の実施形態では、アミノ酸配列は、配列番号62または配列番号63と少なくとも87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一である。
【0107】
本発明は、一部の実施形態では、配列番号3または配列番号4と少なくとも87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列を含む、本質的にそれからなる、またはそれのみからなるADAM10調節ペプチドも提供する。一部の実施形態では、配列番号3と比較して、アミノ酸配列は、配列番号3の位置39、48、73、107、115、126、135、171~175、182、および183、または配列番号4でこれらに対応する位置からなる群から選択される1またはそれ以上の位置で、1またはそれ以上の保存的アミノ酸置換を含む。一部の実施形態では、配列番号3と比較して、アミノ酸配列は、アミノ酸位置39にロイシン置換、アミノ酸位置48にアラニン置換、アミノ酸位置73にプロリン置換、アミノ酸位置107にリジン置換、アミノ酸位置115にイソロイシン置換、アミノ酸位置126にイソロイシン置換、またはそれらの任意の組み合わせを含む。一部の実施形態では、配列番号3と比較して、アミノ酸配列は、配列番号64~66からなる群から選択される。一部の実施形態では、アミノ酸配列は、配列番号5、6、9、34,36、および62~71のいずれか1つと少なくとも87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一である。一部の実施形態では、アミノ酸配列は、N末端、C末端、またはその任意の組み合わせにおいて、配列番号5、6、9、34、36、および62~71のいずれか1つの内部への少なくとも1つのシステインの導入を含み、ならびにさらに、少なくとも1つの導入されたシステインは、配列番号5、6、9、34、36、および62~71のうちの1つまたはそれ以上のアミノ酸の置換、配列番号5、6、9、34、36、および62~71のいずれか1つへのシステインの挿入、またはそれらの任意の組み合わせから生じる。一部の実施形態では、導入されたシステインはペグ化される。一部の実施形態では、ペグ化され導入されたシステインは、配列番号5、6、9、34、36、および62~71のいずれか1つの最初の20のアミノ酸内、配列番号5、6、9、34、36、および62~71のいずれか1つの最後の20のアミノ酸内に位置する。
【0108】
配列番号1~71,814の1つと87~100%同一性(例えば、少なくとも87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一)を有するADAM10調節ペプチドに関して、一部の実施形態では、アミノ酸置換は、配列番号1または配列番号2のフリン認識部位の1つ、メプリン認識部位の1つ、またはCys151以外の位置で起こる。このように、一部の実施形態では、本発明のADAM10調節ペプチドは、配列番号1~4の別のアミノ酸位置で、アミノ酸置換、任意に保存的アミノ酸置換を含む。本明細書で用いる場合、「保存的アミノ酸置換」および「保守的アミノ酸変化」という句を同じ意味で用いて、ADAM10調節ペプチドの生物学的活性に、可能な限り少ないインパクトを与えることが予想されるアミノ酸置換を指す。表4に、例示的な保存的アミノ酸置換を記載する。
【0109】
【表4】
【0110】
本発明のADAM10調節ペプチドのフリンおよび/またはメプリンの認識部位を修飾する際に用いられ得るものなどのアミノ酸置換は、一般に、しかし必ずしもではないが、アミノ酸側鎖置換の相対的類似性、例えば、それらの疎水性、親水性、電荷、サイズなどに基づく。アミノ酸側鎖置換基のサイズ、形状およびタイプの解析により、アルギニン、リジン、およびヒスチジンがすべて正荷電残基であり、アラニン、グリシン、およびセリンは、すべて同じようなサイズであり、ならびにフェニルアラニン、トリプトファン、およびチロシンは、すべてほぼ同じ形状を有することが明らかになった。したがって、これらの考慮に基づいて、アルギニン、リジン、およびヒスチジン;アラニン、グリシン、およびセリン;フェニルアラニン、トリプトファン、およびチロシンは、本明細書では生物学的に機能的同等物と定義する。他の生物学的に機能する同等物の変化は、当技術分野の当業者によって理解される。しかし、保存的置換よりはむしろラジカル置換が特定の状況で是認され得ることを当業者が理解できることを上記の考察に暗に含んでいる。本発明の配列番号5~71,814のいずれかのあらゆる位置での非保存的置換も、本発明の一態様である。
【0111】
生物学的に機能的同等のアミノ酸置換を作製する際に、アミノ酸の疎水性親水性指標を考慮することができる。各アミノ酸は、それらの疎水性特性および電荷特性に基づいて、疎水性親水性指標が割り当てられている。割り当てられた疎水性親水性指標は以下の通りである:イソロイシン(+4.5);バリン(+4.2);ロイシン(+3.8);フェニルアラニン(+2.8);システイン(+2.5);メチオニン(+1.9);アラニン(+1.8);グリシン(-0.4);トレオニン(-0.7);セリン(-0.8);トリプトファン(-0.9);チロシン(-1.3);プロリン(-1.6);ヒスチジン(-3.2);グルタミン酸(-3.5);グルタミン(-3.5);アスパラギン酸(-3.5);アスパラギン(-3.5);リジン(-3.9);およびアルギニン(-4.5)。
【0112】
タンパク質に相互作用的な生物学的機能を与えることにおける疎水性親水性アミノ酸指標の重要性は、当技術分野で一般に理解されている(Kyte & Doolittle, 1982)。特定のアミノ酸が、類似の疎水性親水性指標またはスコアを有する他のアミノ酸で置換され得、かつ依然として類似の生物学的活性を保持し得ることが知られている。疎水性親水性指標に基づいて変更を行うとき、アミノ酸置換の疎水性親水性指標は、一実施形態では、元の値±2以内であり得、別の実施形態では、元の値±1以内であり得、およびさらに別の実施形態では、元の値±0.5以内であり得る。
【0113】
アミノ酸のような置換が親水性に基づいて効果的に行われ得ることも、当技術分野で理解されている。参照によって本明細書に組み込まれた、Hoppに付与された米国特許第4,554,101号は、その隣接するアミノ酸の親水性によって支配されるタンパク質の最大局所平均親水性が、その免疫原性および抗原性、すなわち、そのタンパク質の生物学的性質と相関することを述べている。当然のことながら、アミノ酸が類似の親水性値を有する別のアミノ酸に置換され得、かつ依然として生物学的に同等のタンパク質を得ることができる。
【0114】
米国特許第4,554,101号に詳述されるように、以下の親水性値がアミノ酸残基に割り当てられている:アルギニン(+3.0);リジン(+3.0);アスパラギン酸(+3.0±1);グルタミン酸(+3.0±1);セリン(+0.3);アスパラギン(+0.2);グルタミン(+0.2);グリシン(0);トレオニン(-0.4);プロリン(-0.5±1);アラニン(-0.5);ヒスチジン(-0.5);システイン(-1.0);メチオニン(-1.3);バリン(-1.5);ロイシン(-1.8);イソロイシン(-1.8);チロシン(-2.3);フェニルアラニン(-2.5);およびトリプトファン(-3.4)。
【0115】
類似の親水性値に基づいて変更を行うとき、アミノ酸置換の親水性値は、一実施形態では、元の値±2以内であり得、別の実施形態では、元の値±1以内であり得、およびさらに別の実施形態では、元の値±0.5以内であり得る。
【0116】
一部の実施形態では、アミノ酸配列は、N末端、C末端、またはその任意の組み合わせにおいて、配列番号5~6,281のいずれか1つの内部への少なく1つのシステインの導入を含み、ならびにさらに少なくとも1つの導入されたシステインが配列番号5~6,281のうちの1つまたはそれ以上のアミノ酸の置換、またはそれらの任意の組み合わせから生じる。一部の実施形態では、導入されたシステインはペグ化される。一部の実施形態では、ペグ化され導入されたシステインは、配列番号5~6,281のいずれか1つの最初の20のアミノ酸内、配列番号5~6,281のいずれか1つの最後の20のアミノ酸内に位置する。
【0117】
一部の実施形態では、アミノ酸配列は、N末端、C末端、またはその任意の組み合わせにおいて、配列番号6,282~71,814のいずれか1つの内部への少なく1つのシステインの導入を含み、ならびにさらに少なくとも1つの導入されたシステインが配列番号6,281~71,814のうちの1またはそれ以上のアミノ酸の置換、またはそれらの任意の組み合わせから生じる。一部の実施形態では、導入されたシステインはペグ化されている。一部の実施形態では、ペグ化され導入されたシステインは、配列番号6,282~71,814のいずれか1つの最初の20のアミノ酸内、配列番号5~6,281のいずれか1つの最後の20のアミノ酸内に位置する。
【0118】
一部の実施形態では、アミノ酸配列は、N末端、C末端、またはその任意の組み合わせにおいて、配列番号3および4のいずれか1つの内部への少なく1つのシステインの導入を含み、ならびにさらに少なくとも1つの導入されたシステインが配列番号3および4の1つまたはそれ以上のアミノ酸の置換、またはそれらの任意の組み合わせから生じる。一部の実施形態では、導入されたシステインはペグ化される。一部の実施形態では、ペグ化され導入されたシステインは、配列番号3および4のいずれか1つの最初の20のアミノ酸内、配列番号3および4のいずれか1つの最後の20のアミノ酸内に位置する。
【0119】
本発明は、本明細書に開示される1またはそれ以上のADAM10調節ペプチドを含む組成物、任意に医薬組成物も提供する。
【0120】
本発明のADAM10調節ペプチドの一部の実施形態では、ADAM10調節ペプチドは、保存的アミノ酸置換、非天然アミノ酸置換、D-もしくはD,L-ラセミ混合物異性体型アミノ酸置換、アミノ酸化学置換、カルボキシ末端修飾またはアミノ末端修飾、1またはそれ以上のグリコシル基の付加、および分子(脂肪酸、PEG、糖、蛍光分子、発色団、放射性核種、バイオ結合体、ADAM10調節ペプチドの精製および/または単離に使用できるタグ、および抗体またはそのパラトープ含有フラグメントもしくはその誘導体からなる群から選択される)への結合からなる群から選択される1またはそれ以上の修飾を含む。
【0121】
II.B組成物と医薬組成物およびポリペプチド
一部の実施形態では、本発明のADAM10調節ペプチドは、組成物または医薬組成物中に単独で、または互いに組み合わせて存在する。一部の実施形態では、医薬組成物は、本明細書に記載の1またはそれ以上のADAM10調節ペプチドおよび薬学的に許容される担体または賦形剤を含む組成物である。一部の実施形態では、医薬組成物は、ヒトでの使用が薬学的に許容されている。適切な製剤は、抗酸化剤、緩衝液、静菌薬、殺菌性抗生物質を含むことができる水性および非水溶無菌注射溶液、および製剤を意図されたレシピエントの体液と等張にする溶質、ならびに懸濁化剤と増粘剤を含むことができる水性および非水溶無菌懸濁液を含む。製剤は、単位用量容器または多用量容器、例えば、密封されたアンプルおよびバイアルで提供することができ、使用直前に、無菌液体担体、例えば注射用蒸留水の添加のみを必要とする凍結またはフリーズドライ(凍結乾燥した)状態で保存することができる。一部の例示的な成分は、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)(一部の実施形態では0.1~10mg/mL、一部の実施形態では、約2.0mg/mLの範囲で)および/またはマンニトールもしくは糖(一部の実施形態では、10~100mg/mL、一部の実施形態では、約30mg/mLの範囲で)、および/またはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)がある。問題の製剤のタイプを考慮して、従来の任意の他の薬剤も使用することができる。
【0122】
III本開示のADAM10調節ペプチド、組成物、医薬組成物、およびポリペプチドを用いる方法
一部の実施形態では、本発明は、本開示のADAM10調節ペプチドを用いる方法も提供する。
【0123】
一部の実施形態では、本発明は、ADAM10生物学的活性をインビトロで阻害する方法に関する。一部の実施形態では、該方法は、ADAM10ポリペプチドを含む溶液または細胞を、本明細書に開示される1またはそれ以上のADAM10調節ペプチドと接触させることを含み、該接触させることは、ADAM10ポリペプチドを、ADAM10ポリペプチドの生物学的活性を調節するのに十分な量のADAM10調節ペプチドと接触させることを含む。
【0124】
一部の実施形態では、本発明は、ADAM10生物学的活性をインビボで阻害する方法に関する。一部の実施形態では、該方法は、本発明の1またはそれ以上のADAM10調節ペプチドを含む、本質的にそれからなる、またはそれのみからなる組成物を、患者においてADAM10ポリペプチドの生物学的活性を阻害するのに十分な経路および量で、患者に投与することを含む。
【0125】
III.A患者における疾患、障害、および症状に関連するADAM10生物学的活性を含む、ADAM10生物学的活性を阻害する方法
一部の実施形態では、本発明は、患者における疾患、障害、または症状に関連するADAM10生物学的活性を阻害する方法に関する。一部の実施形態では、該方法は、患者内に存在するADAM10ポリペプチドを、有効量の本明細書に開示される1またはそれ以上のADAM10調節ペプチドと接触させることを含み、該疾患または障害は、癌、炎症、アレルギー反応、狼瘡、喘息、感染症および線維症からなる群から選択され、さらに該患者は該疾患、障害、または症状を有する、またはそれらの素因を有する。一部の実施形態では、疾患、障害、または症状は、少なくとも一部は、ADAM10生物学的活性と関連した過剰な細胞増殖から生じる。一部の実施形態では、疾患、障害、または症状は、少なくとも一部は、ADAM10生物学的活性またはタンパク質の過剰な存在を特徴とする。
【0126】
III.BADAM10基質の放出を阻害する方法
一部の実施形態では、本発明は、細胞からのADAM10基質の放出を阻害するための方法に関する。一部の実施形態では、方法は、細胞を、本明細書に開示される1またはそれ以上のADAM10調節ペプチドと、細胞からのADAM10基質の放出を阻害するのに十分な量で接触させることを含む。本明細書で用いる場合、「ADAM10基質」という句は、ADAM10ポリペプチドがそれに作用することができ、および細胞からその基質が放出されるあらゆる基質を指す。例示的、非限定的なADAM10基質には、CD23、IL6-R、EGF、Her-2、HB-EGf、ベータセルリン、ジャギド1、Notch受容体1、Notch受容体3、RAGE、フラクタルカイン、MICA A、I-TAC、HGFR、GITR、GM-CSF、IGF可溶性受容体、およびTGFベータが挙げられる。一部の実施形態では、細胞は患者内に存在し、ADAM10基質は患者の血行に放出される。
【実施例
【0127】
以下の実施例は、具体的な実施形態を提供する。本開示および当技術分野の一般水準の技能の観点から、以下の実施例は例示であることのみを意図するものであり、多くの変化、修正、および変更を本発明の範囲から逸脱することなく用いることができることを当業者なら理解するであろう。
実施例1
ADAM10の非ペグ化ヒトプロドメインは、インビトロでADAM10を阻害し、選択的阻害剤である
【0128】
ADAM10プロドメインペプチドを、GENBANK(商標登録)バイオシーケンスデータベース(配列番号1)の受入番号NP_001101.1に記載のヒトADAM10ポリペプチドのアミノ酸23~211をコードするヌクレオチド配列をHisタグとともにプラスミドベクターにクローニングすることによって調製した。プロドメインペプチドは、BL21DE3細胞を形質転換し、続いて16℃で発現させることによって調製した。これにより、封入体中の可溶性プロドメインペプチドおよびプロドメインペプチドが得られた。可溶性プロドメインペプチドを、1mg/mLのリゾチーム(Sigma-Aldrich Corp., St. Louis, Missouri, United States of America)、ベンゾナーゼ、(Sigma-Aldrich)プロテアーゼ阻害剤カクテル(Gold Biotechnology)、および1×CELLYLYTIC(登録商標)溶液(Sigma-Aldrich)とともに、5mMのトリス(2-カルボキシエチル)ホススフィン(TCEP;Gold Biotechnology, Inc., St. Louis, Missouri, United States of America)を含む、または含まない50mMのトリス(pH8)中で、15~20分間、室温で細菌を壊すことによって精製した。遠心分離の後ペレットを再び、同じ緩衝液で処理し、次いでもう一度遠心分離した。両方の上清をNi-NTAカラムに加えた。洗浄後、プロドメインペプチドを、5mMのTCEPを含む、または含まない1Mのイミダゾール、20mMのトリス(pH8)で溶出した。次いで、この物質を、20mMのトリス(pH8)と40mMのNaClで平衡化したSUPERDEX(登録商標)200ブランドのカラム(GE Healthcare Bio-Sciences, Pittsburgh, Pennsylvania, United States of America)上に通した。濃縮し、エンドトキシンを除去した後、グリセロールを10%まで加え、この物質を-20℃で保存した。
【0129】
不溶性プロドメインは、尿素で可溶化し、次いでNi-NTAビーズ上でリフォールディングした後、封入体から調製した。次いで、不溶性プロドメインを、上記のようにSUPERDEX(登録商標)200ブランドのカラムに通すか、または20mMのトリス(pH8)および40mMのNaCl緩衝液で平衡化したZEBA(商標)ブランドのスピンカラムに直接通した(7K分画分子量)。下記の表5は、ADAM10ペプチドに対するIC50値および一部の阻害剤の選択性プロファイルを示す。
実施例2
【0130】
ペグ化
【0131】
プロドメインペプチドを、4mMのTCEPを含む、または含まない、20mMのホスフェート(pH7.2)に平衡化したZEBA(商標)ブランドのスピンカラムに通した。10kDaのマレイミドPEG(Nanocs Inc. Boston, Massachusetts, United States of America)の1.2倍~5倍の過剰量を加えた。2~8時間後に、反応進行をSDS PAGEゲル電気泳動でモニターした。時々、さらにマレイミドPEGを加え、反応を冷所で終夜、進行させておいた。次いで、この物質を、20mMのトリス(pH8)および40mMのNaClで平衡化したSUPERDEX(登録商標)200ブランドのG200カラム上に2回通し、純粋なペグ化物質含有画分を濃縮し、エンドトキシン除去カラムを用いて反応させて、グリセロールを10%まで添加した後、-20℃で凍結させた。プロドメインペプチドを上記のように調製し、ペグ化を10kDaのマレイミドPEGを用いて行った。
実施例3
酵素阻害アッセイ
【0132】
ADAMファミリーメンバー用の蛍光エネルギー移動基質のPEPDAB064(BioZyme Inc., Apex, North Carolina, United States of America)を10mMのDMSO原液から、25mMのトリス(pH8)1.5mLおよび0.001%BRIJ(登録商標)35ブランドの界面活性剤に、15μMの最終濃度まで希釈した。ADAM10のプロドメインペプチドまたはペグ化プロドメインを、基質を含まないトリス/BRIJ(登録商標)緩衝液で希釈した後に、3倍に段階希釈した。96ウェル黒色コーティングプレートに60μLの基質/緩衝液の混合液と10μLのプロドメインペプチドを加えた。R&D Systems(Minneapolis, Minnesota, United States of America)からヒトADAM10を2μMで、同じトリス/BRIJ(登録商標)緩衝液に160倍に希釈した。総計5μLを添加して、反応を開始した。蛍光測定値は、CambridgeまたはFLUOstar蛍光光度計を用いて励起485nmおよび発光530nmで測定し、測定値を2分毎に読み取った。データをExcelおよびPrismソフトウェアを用いて解析した。実験は、2連で実施した。表5は、試験したプロドメインペプチドのためのADAM10に対する阻害定数を示す。
【0133】
【表5】
実施例4
選択性プロファイル
【0134】
ヒトプロドメインペグ化ペプチドまたは非ペグ化ペプチドを、ADAM10について記載のものと同じ基質緩衝液の混合液とともにR&D Systems(Minneapolis, Minnesota, United States of America)からのADAM17、ADAM9、またはADAM8と反応させた。変異体およびペグ化バージョンに対してほんのわずかな阻害があった。変異体およびペグ化バージョンも、NaClを150mMまで、CaClを10mMまで加えたことを除いて同じトリス/BRIJ(登録商標)ブランドの緩衝液とともに15μMのPEPDAB064を使用して、R&D SystemsからのADAM8およびADAM9に対して試験した。4~10μMで、これらの酵素に対して阻害がない、またはわずかな阻害がある、のいずれかであった。
【0135】
加えて、MMPの阻害を、ADAM8について上記と同じ緩衝液とともに15μMのPEPDAB008を使用して、本発明のADAM10ペプチドとMMPを反応させることで行った。表6は、代表的な試料を要約する。
【0136】
【表6】
【0137】
ADAM10プロドメインとして試験したメプリンもこの酵素のための基質である。メプリンをR&D Systemsから購入し、同メーカーの説明書に従って活性化させた。20mMのトリス緩衝液(pH8)と1mMの4-(2-アミノエチル)ベンゼンスルホニルフルオリド塩酸塩(AEBSF)(Gold Biotechnology)に、PEPDAB022(BioZyme Inc.)を15μMの最終濃度まで加えた。次いで、変異体もしくは野生型(すなわち配列番号1)ADAM10調節ペプチドもしくはそのペグ化バージョンを加えた。メプリンをトリプシンで活性化し、その後AEBSFでのクエンチを行うので、緩衝液コントロールはメプリンとの反応と同量のトリプシンおよびAEBSFを含んでいた。ADAM10調節ペプチドの切断を最小限に抑えるために反応は、室温で、少量のメプリンの存在下および短い反応時間で行った。表7は、ADAM10調節ペプチドによるメプリンの阻害に対するIC50値を示す。最もメプリン安定なADAM10調節ペプチドは、29位および55位(配列番号62および配列番号63)に二重フリン変異を有する、またはマウスプロドメイン(配列番号64)およびマウスC末端尾部(配列番号67)を有するものであった。さらに、配列番号63のようなADAM10調節ペプチドがN末端もしくはC末端もしくはC151でペグ化された場合、IC50は約5~7μMまで増加し、ペグ化がメプリンに対する効力を低下させたことを示す。
【0138】
【表7】
実施例5
ヒトADAM10のプロドメインはインビトロで細胞増殖を阻害する
【0139】
1日目に細胞をその最適な細胞濃度で96ウェルプレートに播種した。10%血清を補充した完全増殖培地に細胞を蒔いた(100μL/ウェル)。翌日(2日目)、培地を除去し、血清を含まない培地で細胞を洗浄し、次いで3%血清を補充した培地で細胞を24時間飢餓状態にした。被験物質は、培地に希釈することで調製した。飢餓状態の後、培地を除去し、100μLの新たな飢餓培地と交換した。2つの被験物質と2倍濃度の溶媒を飢餓培地に希釈し、100μLの2×被験物質または溶媒を適切なウェルに充填した。被験物質と溶媒を同じ血清飢餓培地に10倍希釈し、それぞれ100μLを加えた。最終濃度は、2μMと0.2μMであった。
【0140】
各処理条件を最低4回実施した。細胞を37℃で48時間インキュベートさせておいた。
【0141】
定量的評価:72時間のインキュベーション時間の終わりに、Cell gloアッセイを用いて、細胞数を定量化した。培地を採取し、ELISAを行って、プロドメインペプチドまたは溶媒対照の処理後の培地中のADAM10基質の濃度を決定した。 変異ADAM10調節ペプチドおよびペグ化ADAM10調節ペプチドは、MDA-MB468細胞の増殖を野生型プロドメインペプチドよりもかなり阻害した(図5Aを参照されたい)。
【0142】
別の実験では、ADAM10調節ペプチドを試験したように、MDA-MB-468細胞の増殖への効果を、配列番号62を用いて決定した。細胞を96ウェルプレート中の100μLの増殖培地に播種した。細胞を、5%COおよび95%空気を含む加湿インキュベーターに入れて37℃で24時間インキュベートした。24時間のインキュベーションの後、細胞を無血清培地で洗浄して、飢餓培地で48時間インキュベートした。次いで、飢餓培地を除去し、Nuclight Red染料を含有する新たな飢餓培地(180μL)を各ウェルに加えた。細胞数を、72時間にわたりINCUCYTE(登録商標)ブランドの生細胞解析システム(Essen BioScience, Ann Arbor, Michigan, United States of America)を用いて定量化した。
【0143】
細胞増殖の速度を図5Bに示す。配列番号62のADAM10調節ペプチドは、溶媒対照と比較して、10μMで細胞増殖をかなり減少させた(78%)(図5Bを参照されたい)。
実施例6
ADAM10調節ペプチドの薬物動態特性が改善した
【0144】
最良の候補をマウスでの薬物動態試験に検討した。手短に言うと、Balb/C雌マウス(3/群)にADAM10調節ペプチドまたは溶媒対照の単回腹腔内(i.p.)投与を施した。血液試料を採取して、血清を調製し、-80℃で保存した。ADAM10調節ペプチドの血清濃度を、ADAM10酵素活性に対する血清の阻害効力に基づいてバイオアッセイを用いて間接的に決定した。2~5μLの血清を、プロテアーゼ阻害剤、ペプスタチン、AEBSF、ベスタチン、およびE-64を含有する20μMの基質、PEPDAB064(BioZyme Inc.)を35μL、10μLのヒトADAM10とともに、既知の濃度でADAM10調節ペプチドの濃度を変えて添加してインキュベートした。血清へのADAM10プロドメインの既知の濃度を用いて標準曲線を作成するために、パーセントADAM10阻害を決定した。2~5μLの試料を採取し、上記で用いた緩衝液を、ADAM10調節ペプチドを(20mMのトリス緩衝液(pH8)、4mMのNaCl、10%グリセロール)に1:3.5の比率で溶解させた緩衝液に希釈して調製した45μLの基質溶液に加えた。溶媒対照を注入されたマウスの対照群から採取した血清と比較して、パーセント阻害を決定した。
【0145】
図6A~6Dおよび7に実験結果をまとめる。大部分の二重フリン変異体と単一フリン変異体およびペグ化バージョンは、ADAM10の野生型プロドメイン(配列番号1)よりも良好な薬物動態特性を有していた。例外は、配列番号68であった。これは、フリンに安定であるが、メプリンによって急速に分解され、野生型タンパク質に類似の薬物動態特性を有した変異体である。システインがC151、またはN末端もしくはC末端で組み入れられ得るように、配列番号63を有するプロドメインを、配列番号69~71に記載のように修飾した。配列番号69~71のペグ化バージョンのすべては、配列番号63と比較して、薬物動態特性が改善しており(図7)、以下にさらに詳述するようにフリンおよびメプリン切断により安定していた。
実施例7
切断実験
【0146】
メプリンおよびフリンを用いて、ADAM10のプロドメインを切断した。図1および3は、野生型タンパク質(配列番号1)がメプリンおよびフリンによって急速に分解されたことを示す。フリン実験のため約20~50μgの野生型(WT)、ペグ化WT、または例示的なADAM10調節ペプチド(mut2;配列番号6)およびメプリン実験のため別の例示的なADAM10調節ペプチド(mut3;配列番号9)をほぼ100μLの量で、1.7mLのエッペンドルフチューブ中でフリンまたはメプリンと反応させた。対照試料にはメプリンまたはフリンが含まれていなかったが、並べて実験を行った。試料を37℃でインキュベートし、次いで、およそ20~30μLの溶液を取り出し、10μLの4×染料充填溶液でクエンチングを行った。試料を16%Nowexゲル上に流し、Simply Blueで染色した。図1、2および4に示した結果は、変異ADAM10調節ペプチドがメプリンおよび/またはフリンによる切断に対して抵抗性があることを示した。
【0147】
二重フリン変異体である配列番号62、およびペグ化配列番号69~71は、フリン切断およびメプリン切断に対して最も抵抗性があった(図8A~8Cおよび図9A~9Cを参照されたい)。両フリン変異を有することにより、メプリン切断に対しても配列番号62が安定した(図8Aにおいて、単一フリン変異体である配列番号34を、ともに二重フリン変異体である配列番号62および63と配列番号63と比較されたい)。
【0148】
加えて、フリン変異の位置はメプリン切断に影響を及ぼした。RXKR>RXARのフリン部位修飾を有する、mut2/配列番号6は、配列番号62(RXKR>RXKA)および配列番号63(RXKR>RXKK)と比較して、フリン切断に対して抵抗性が低かった。さらに、AXKR変異体はかなり安定していたにもかかわらず、配列番号62は、AXKR変異を含有するフリン変異体、例えば配列番号65および配列番号68、(図8Bを参照されたい)に対して、より安定であった。
【0149】
配列番号64および配列番号67は、そのC末端尾部の176~178にメプリン部位がない、マウスADAM10プロドメイン配列を有する(配列番号1を配列番号2と比較されたい)。配列番号67は、ヒトプロドメインがそのC末端尾部を対応するマウスプロドメイン配列に置き換えられた、マウス/ヒトのハイブリッドである。これらの配列も、野生型(配列番号1)、Mut2(配列番号6)、および配列番号34と比較して、メプリン切断に対してはるかに抵抗性であった(図9Aおよび9Bを参照されたい)。
【0150】
Mut3/配列番号9は、二重メプリン二重フリン変異体(K28A;K54A;E88A;E177A;)である。それは、試験した実験条件下で、メプリン切断に対して完全に抵抗性であった(図4を参照されたい)。上記の蛍光アッセイにおいてメプリンに対して極めて阻害性でなかった(表7を参照されたい)ペグ化配列番号69~71は、メプリン切断(図9Cを参照されたい)フリン切断(図8Cを参照されたい)に対して極めて抵抗性であった。
実施例8
ADAM10調節ペプチドは細胞シェディング現象をインビトロおよびインビボで阻害する
【0151】
MDA-MB-468細胞を96ウェルプレートに播種した。終夜のインキュベーションの後、細胞を無血清培地で洗浄して、飢餓培地で24時間インキュベートした。さらに48~72時間後、培地を細胞から除去し、Norcross, Georgia, United States of AmericaのRayBiotech, Inc.から提供されたアレイとともにインキュベートした。
【0152】
表8は、Notch1、Notch3、ジャギド1、ベータセルリン,およびMica Aのシェディングの阻害に対するIC50値を示す。Mut2/配列番号6およびすべての他の構築物と比較して、フリン切断およびメプリン切断に対してはるかに抵抗性である配列番号62は、Notch3のIC50が10倍以上(890vs.76nM)改善した。
【0153】
【表8】
【0154】
5μMの配列番号62で処理した細胞からの培地、対する5μMの配列番号65で処理した細胞からの培地も、RayBioTechからの増殖因子アレイにかけた。表9は、溶媒対照と比較して、培地中で増加または減少したいくつかの因子を要約する。より安定な配列番号62は細胞によって放出された調節因子に最も高い影響を与えたことに着目されたい。
【0155】
【表9】
【0156】
薬物動態実験から溶媒で処置された動物から、または配列番号62で処置された動物から血清を採取して、RayBiotechからの100タンパク質アレイにかけた。表10は、溶媒と比較して、配列番号62の処置により調節された統計的に有意な因子を要約する。ADAM10用の2つの既知の基質、RAGEおよびフラクタルキンはともに血清中でかなり減少し、変異プロドメインがADAM10活性をインビボで阻害することができることを示している。
【0157】
【表10】
実施例9
インビボ試験
【0158】
中空繊維モデル。1日目に、細胞MDA-MB-468、BT-20、およびA549を中空繊維に充填し、培地を含んでいる細胞培養ディッシュに入れて、37℃で、5%COのインキュベーターで終夜、平衡化した。次いで、腫瘍細胞を、培地を用いてKROSFLO(登録商標)ブランドの中空繊維膜に充填した。手術1~2時間前に、マウスにMeloxicam(5mL/kg中1mg/kg)を皮下に投与した。マウスが吸入イソフルラン麻薬下にある間に、移植を行った。MDA-MB-468細胞、A549細胞またはBT-20細胞のいずれかを含んでいる3個の繊維を2つの異なる区画、すなわち皮下区画と腹腔内区画に移植した。したがって、各マウスには6個の繊維が移植されている。
【0159】
詳細には、繊維を含んでいる外套針を皮膚切開により挿入し、繊維を、同じ皮膚切開を用いて皮下に設置し、さらに腹膜を穿孔することによって腹腔に設置した。縫合クリップを使用して皮膚を閉じた。10mg/kgで配列番号62または溶媒対照の腹腔内投与を3日ごとに2週間の投薬を開始した。体重を週に3回計量した。15日目(治療後14日)に、動物を頸椎脱臼法によって犠牲にし、繊維を抽出した。下記に記載のCELLTITER-GLO(登録商標)ブランドのルミネセンス細胞生存アッセイプロトコールに従って各繊維を処理した。
【0160】
CELLTITER-GLO(登録商標)ブランドのルミネセンス細胞生存アッセイ。各繊維を4片に切断し、それを1mLのエキソビボルシフェラーゼ緩衝液(25mMのトリス-ホスファート(pH7.8)、2mMのEDTA、2mMのDTT、0.1%のTRITON(商標)X-100)を4℃で含んでいる2mL溶解マトリックスAバイアル(カタログ番号6910, MP Biomedicals, Santa Ana, California, United States of America)に直接入れた。繊維をFASTPREP-24(登録商標)ブランドの均質化システム(MP Biomedicals, Santa Ana, California, United States of America)を用いて30秒間、5m/sで破壊し、その後10000rpm、4℃で10分間遠心分離させた。周囲温度で、上清をCELLTITER-GLO(登録商標)ブランドのルミネセンス細胞生存アッセイ緩衝液(1:10)とともに振盪させながら、暗所で10分間インキュベートした。ルミネセンスをEnSpireプレートリダー(Perkin Elmer, Waltham, Massachusetts, United States of America)を用いて検出した。個々の群のデータは、説明的データ解析(標準誤差を含む平均値、中央値)を用いて解析した。有効性データの統計的解析は、マン・ホイットニー検定および独立スチューデントt検定を用いて行った。
【0161】
結果を図10に示す。配列番号62は、溶媒対照と比較して、MDA-MB-468細胞のin vovでの増殖をおよそ20%減少させた。
【0162】
CD23シェディングの阻害。本発明のADAM10調節ペプチドがインビボでCD23シェディングを阻害するかどうかを決定するために、動物に配列番号1(野生型)またはMut2/配列番号6のいずれかを腹腔内に投与した。24時間後および48時間後に血清を採取し、CD23の濃度をELISAで決定した。溶媒対照と比較してのシェディングのパーセント阻害を決定し、結果を図11に示す。Mut2/配列番号6はCD23シェディングを阻害したが、他方、配列番号1は阻害しなく、フリン部位の変異およびシステイン残留物が、ADAM10がインビボで阻害するプロドメインの能力を改善したことを示している。
【0163】
腫瘍異種移植モデル。本発明のADAM10調節ペプチドがインビボでの腫瘍増殖阻害への治療可能性を有するかどうかを決定するために、有効性試験を胸腺欠損マウスでMDA-MB-468由来、A549由来、またはHC116由来の異種移植腫瘍モデルを用いて行った。手短に言うと、1×10細胞を6週齢の雌の胸腺欠損nu/nuマウスの側腹部に皮下移植する。二次元の腫瘍サイズをノギスで測定して、体積を算出する。腫瘍サイズが約200mmに到達したとき、処置を開始する。薬物動態データから決定されるように、単独の溶媒対照およびADMA10プロドメインペプチドを2つの投与量で投与する。各処置群(群あたりn=6)を7~8週間までモニターする。体重および腫瘍を週2回測定し、腫瘍増殖速度と退縮速度を決定する。実験の終わりに動物を安楽死させて、肝臓、心臓、内臓脂肪、腎臓、脳を保持し、組織損傷および毒性のために調べる。
【0164】
適切な用量が判明すると、1またはそれ以上のADAM10調節ペプチドを、異種腫瘍モデルで他の抗癌薬と組み合わせて用いる。抗癌剤を単独で、または1もしくはそれ以上のADAM10調節ペプチドと組み合わせて投与し、上記のように実験を行う。
【0165】
喘息モデル。本発明のADAM10調節ペプチドが喘息において治療可能性を有するかどうかを決定するために、有効性試験を、TH依存性であるオボアルブミンモデルを用いて行う。手短に言うと、肥満細胞/IgE依存性マウスモデルを用いる。以前にこのモデルを用いて、他の選択性の低い小分子ADAM10阻害剤(Mathewsら, 2011)を試験した。1日目、3日目、5日目、7日目、9日目、11日目、および13日目に、10μgのオボアルブミンを、群あたり6匹の雌のBalb/Cマウスに腹腔内注入する。ペグ化ADAM10調節ペプチド(2.5mg/kg)または溶媒対照を1日おきに、または3日ごとに鼻腔内または腹腔内に投与する。オボアルブミン鼻腔内曝露(20μg)を40日目、43日目、および46日目に行う。47日目に、最終曝露後の気道抵抗を測定する。ケタミン207mg/kgおよびキラシジン42mg/kgを腹腔内注入することでマウスに麻酔をかける。カニューレを挿入し麻痺させた後、マウスに酸素を補給して、ベースライン肺機能を測定する。次いで、マウスをアセチルβメチルコリンクロリドに曝す。ニュートン抵抗、組織ダンピング、および組織エラスタンスを測定する。肺機能の判定後、気管支肺胞洗浄液を収集して、サイトカインおよびケモカイン解析のために保存する。細胞をペレット化し染色して、計数し、存在する細胞型および細胞量を決定する。多重比較を作成したら、Bonferroni補正とともに両側t検定を用いてすべての統計を行う。さらに、マウスでの急性忍容性試験によって最大耐量を決定する。異なる薬物用量に反応しての苦痛の臨床徴候について、マウスを毎日モニターする。実験の終わりに動物を安楽死させて、肝臓、腸、心臓、内臓脂肪、腎臓、脳を保持し、組織損傷および毒性について調べる。
【0166】
狼瘡モデル。The Jackson Laboratory(Bar Horbor, Maine, United States of America)からの18~22週齢の雌のマウス(NZBWF1)を、それらの背部に3×3cmの小部分を10回テープ剥離して、損傷およびCLE症状の発症を誘発させた後、溶媒対照または化合物のいずれかを腹腔内投与する。この品種の雄のマウスはCLEを発症しなく、ヒトにおいてもCLE患者の大部分は女性なので、雌のマウスだけを用いる。このモデルは以前にCLEのためのモデルとして使用されてきた(Guiducciら, 2010)。CLE発症を確実にし、マウスの状態をモニターするための投薬の前に、最初の実験を5匹だけのマウスで行う。最初の実験が完了すると、投薬を開始する。2~3日ごとの投薬を3週間行った後、スコアリングを行う。生検組織をホルマリンで固定し、パラフィンに包埋する。切片をヘマトキシリンとエオジンで染色する。群あたりの11匹のマウスの複数の皮膚片を盲検形式で評価する。以下の組織学的特徴を評価して、1~3まで類別する:(a)表皮の厚さ;(b)潰瘍の程度;(c)上皮内炎症;(d)皮膚炎症;および(e)脂肪層の炎症。
組織学的悪性度分類を次のとおりに割り当てる:0:正常な皮膚構造、少数の真皮白血球、通常の付属器;1:軽度の炎症、軽微な表皮過形成、皮膚線維芽細胞増殖の徴候;2:中等度の炎症、過角化を伴う顕著な表皮過形成(表皮の厚さが2~4倍増加)、少数のマクロファージとともにかなりの白血球/好中球顆粒球の真皮内浸潤、中等度の真皮線維性硬化症、付属器の数の減少、および皮下脂肪組織の軽微な退行性変化;ならびに3:重度の炎症、過角化を伴う顕著な表皮過形成(表皮の厚さが4倍以上増加)、ケラチン充填クレーターと嚢胞の形成、表皮層のびまん性不連続(潰瘍形成)、大量の好中球とマクロファージを伴う広範囲な真皮内浸潤、顕著な皮膚線維性硬化症、付属器の消滅、および皮下脂肪組織の明白な退行性変化。異なるパラメータを別々にスコアし、総計して、総疾患スコアを得る。群間の統計的有意性をマン・ホイットニーのU検定で算出する。CLEの変化のための試験に加えて、腎機能および抗核抗体量を他の狼瘡の影響がプロドメイン処置によって減弱されるかを見るためにも決定する。ビリルビン、血液、血糖値、ケトン、pH、タンパク質、比重、尿沈渣、ウロビリノーゲンと尿沈渣、色、およびと外見を調べる尿検査を行う。臓器重量を測定し、脾臓、腎臓、肝臓、リンパ節、腸間膜、心臓の変化の解析および確認のために、組織を保存する。
実施例10
ADAM10調節ペプチドはイエダニ抗原に対するアレルギー反応を減少させる
【0167】
1日目~3日目に、野生型C57Bl/6マウスおよび/またはBalb/cマウスの鼻腔内に、40μLの1またはそれ以上のADAM10調節ペプチド、または溶媒対照を曝露し、続いて4日目に25μLの生理食塩水または15μg/25μLのイエダニ抗原抽出物を曝露する。気管支収縮を、FLEXIVENT(商標)ブランドの呼吸解析システム(SCIREQ(登録商標)Scientific Respiratory Equipment Inc., Montreal, Quebec, Canada)を使用して評価する。気道抵抗(Rr)を、メタコリンの投与量の増加(5、10、25mg/mL)で決定し、PBSベースラインからのパーセント増加として示す。
【0168】
BALF上清を、上記のようにELISAによってMUC5ACタンパク質を解析し、細気管支周囲の血管周囲炎症性細胞浸潤について肺の形態を評価する。
【0169】
参考文献
以下に記載するすべの参考文献、ならびに本開示に引用されたすべての参考文献は、これらに限定されないが、すべての特許、特許出願およびそれらの公開、科学誌の論文、ならびにデータベースエントリー(例えば、GENBANK(登録商標)データベースエントリーおよびその中の利用可能なすべてのアノテーション)を含んでおり、それら全体を参照により、本明細書で使用する技術、および/または組成物の背景、または教示方法を補充する、説明する、提供する程度まで本明細書に組み込まれている。

【表11】
【0170】
当然ながら、本発明の種々の詳細は、本発明の範囲から逸脱することなく変更されることが可能である。さらに、前述の説明は、説明のためだけであり、限定を目的としていない。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図6C
図6D
図7
図8A
図8B
図8C
図9A
図9B
図9C
図10
図11
【配列表】
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