(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】ノズルチップならびに発泡プラスチック成型用フィーダーおよび発泡プラスチック成型用フィーダーを生産する方法
(51)【国際特許分類】
B29C 44/44 20060101AFI20240305BHJP
B29C 44/00 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
B29C44/44
B29C44/00 G
(21)【出願番号】P 2021196308
(22)【出願日】2021-12-02
【審査請求日】2023-05-12
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 [試験日] 令和3年6月16日 [試験場所] 株式会社エスポ(愛知県春日井市下津町字丸野381) [試験を行った者] 株式会社エスポ [刊行物等] [試験日] 令和3年7月30日 [試験場所] ダイリュウ滋賀株式会社(滋賀県東近江市五個荘七里町95) [試験を行った者] ダイリュウ滋賀株式会社 [刊行物等] [試験日] 令和3年7月30日 [試験場所] 恵那スチロール株式会社(岐阜県恵那市長島町正家1067の56) [試験を行った者] 恵那スチロール株式会社 [刊行物等] [試験日] 令和3年9月7日 [試験場所] 株式会社積水化成品群馬(群馬県邑楽郡大泉町坂田3-3-1) [試験を行った者] 株式会社積水化成品群馬 [刊行物等] [試験日] 令和3年10月7日 [試験場所] 株式会社JSP栃木第一工場(栃木県鹿沼市さつき町5番地) [試験を行った者] JSPモールディング株式会社 [刊行物等] [試験日] 令和3年10月8日 [試験場所] 金山化成株式会社犬山工場(愛知県犬山市大字羽黒字河北東25の1) [試験を行った者] 金山化成株式会社 [刊行物等] [試験日] 令和3年10月12日 [試験場所] 株式会社積水化成品東部(茨城県猿島郡境町塚崎1370) [試験を行った者] 株式会社積水化成品東部 [刊行物等] [試験日] 令和3年10月21日 [試験場所] 笠原工業株式会社(福島県須賀川市上人坦161番地) [試験を行った者] 笠原工業株式会社 [刊行物等] [試験日] 令和3年10月22日 [試験場所] JSPモールディング株式会社三重工場(三重県四日市市北小松町字扇廣1600) [試験を行った者] JSPモールディング株式会社 [刊行物等] [試験日] 令和3年11月19日 [試験場所] 龍野コルク工業株式会社(兵庫県たつの市龍野町島田321) [試験を行った者] 龍野コルク工業株式会社 [刊行物等] [試験日] 令和3年11月19日 [試験場所] 株式会社谷口化成工業所(兵庫県加西市朝妻町川原953-2) [試験を行った者] 株式会社谷口化成工業所 [刊行物等] [試験日] 令和3年11月20日 [試験場所] 玉井化成株式会社(北海道小樽市銭函3丁目524-9) [試験を行った者]
(73)【特許権者】
【識別番号】503206019
【氏名又は名称】三興技研株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】榎吉 清一
(72)【発明者】
【氏名】水谷 明
(72)【発明者】
【氏名】原田 実
【審査官】芦原 ゆりか
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-105036(JP,A)
【文献】特開2001-1359(JP,A)
【文献】実開平7-35013(JP,U)
【文献】特開平10-52848(JP,A)
【文献】特開平7-40418(JP,A)
【文献】実公平6-15033(JP,Y2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 44/00-44/60
B29C 31/00-31/10
C08J 9/00-9/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡プラスチックの金型成型において金型の内部にビーズ状の原料を充填する用に供され、かつ、二重管における外パイプと内パイプとの間の空隙から前記内パイプの軸線側に抜けるエアーの流れにより原料の金型への充填と余剰の原料の返戻とを実現させる発泡プラスチック成型用フィーダーに適用されるノズルチップであって、
前記エアーの流れにおいて前記空隙から前記内パイプの軸線側に抜ける部分に配設されるノズルチップ本体と、
撥水撥油性ならびに自己潤滑性および耐スクラッチ性を有した状態で前記ノズルチップ本体の表面を覆う導体の被膜と、
を備えている、ノズルチップ。
【請求項2】
請求項1に記載されたノズルチップであって、
複数がアレー配置されて、それぞれに前記エアーが通されることで当該エアーの流れを1か所に収束させる小孔を備え、
前記被膜が、複数の前記小孔における各内面および当該各小孔における開口の縁部を含む前記表面を覆っている、
ノズルチップ。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載されたノズルチップであって、
前記ノズルチップ本体が軽金属または軽合金のいずれかからなり、
前記被膜の表面硬度が前記ノズルチップ本体の表面硬度よりも硬い、
ノズルチップ。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のうちのいずれか1項に記載されたノズルチップであって、
前記被膜が、
無電解ニッケルめっきの析出物に由来する析出部と、
前記析出部に含浸された状態の、フッ素樹脂に由来する樹脂部と、
を有する熱処理複合膜である、ノズルチップ。
【請求項5】
発泡プラスチックの金型成型において、金型の内部にビーズ状の原料を充填する用に供される発泡プラスチック成型用フィーダーであって、
互いに別体とされた外パイプおよび内パイプが空隙をあけた状態で配設されてなる二重管と、
前記内パイプに対する前記原料の出し入れを実現させる原料出入口と、
前記金型に接続されたときに、当該金型の内部に前記原料を充填することを可能とする原料充填口と、
前記空隙から前記内パイプの軸線側に抜け、そこから前記原料出入口および前記原料充填口に連通されるエアーの流路と、
前記流路において前記空隙から前記内パイプの軸線側に抜ける部分に配設されるノズルチップ本体と、
撥水撥油性ならびに自己潤滑性および耐スクラッチ性を有した状態で前記ノズルチップ本体の表面を覆う導体の被膜と、
を備えている、発泡プラスチック成型用フィーダー。
【請求項6】
請求項5に記載された発泡プラスチック成型用フィーダーを生産する方法であって、
前記表面が前記被膜に覆われた状態の前記ノズルチップ本体を、前記外パイプおよび前記内パイプのいずれに対しても付け外し可能な状態で配設するステップと、
前記内パイプの内部を前記原料出入口および前記原料充填口のいずれにも連通された状態とし、もって前記流路を構成するステップと、
を有している、発泡プラスチック成型用フィーダーを生産する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、発泡プラスチックの金型成型において金型の内部にビーズ状の原料を充填する用に供され、かつ、二重管における外パイプと内パイプとの間の空隙から内パイプの軸線側に抜けるエアーの流れにより原料の金型への充填と余剰の原料の返戻とを実現させる発泡プラスチック成型用フィーダー、この発泡プラスチック成型用フィーダーに適用されるノズルチップ、および、上記発泡プラスチック成型用フィーダーを生産する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の技術としては、例えば以下の特許文献1に開示されている技術が知られている。この技術においては、発泡プラスチック成型用フィーダーは、外パイプと内パイプとが空隙をあけた状態で配設された二重管を備えている。また、発泡プラスチック成型用フィーダーは、上記空隙から内パイプの軸線側に抜けるエアーの流路を備えて、このエアーの流れにより原料の金型への充填と余剰の原料の返戻とを実現させる。また、発泡プラスチック成型用フィーダーは、上記流路において上記空隙から前記内パイプの軸線側に抜ける部分に、複数の小孔にエアーを通す構成によりエアーの流れを1か所に収束させるノズルチップを備えている。また、発泡プラスチック成型用フィーダーは、内パイプの内部を通って進退運動し、金型への原料充填口をふさぐプランジャーを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、発泡プラスチックの金型成型は、一般に、予備発泡工程を経て多孔質とされたビーズ状の原料を金型の内部に充填し、これにスチームを適用することによってなされる。このため、金型の内部にビーズ状の原料を充填する発泡プラスチック成型用フィーダーにおいては、その内部に異物が入り込むことがあった。この異物は、例えば、ビーズ状の原料が砕けた破片に由来するカス、エアーの供給源たるコンプレッサーに適用される機械油に由来するオイルミスト、および/または、スチーム由来のスケール(主成分はカルシウム塩)などである。これら異物は、発泡プラスチックの金型成型を多数回(例えば1万回のオーダーで)繰り返し実行する繰り返し成型においては、しばしば発泡プラスチック成型用フィーダーのノズルチップにこびりついた状態にたまる。
【0005】
ここで、上記特許文献1の従来技術においては、上記繰り返し成型にあたり、上記異物が発泡プラスチック成型用フィーダー内におけるエアーの流れに乱れを生じさせることがあった。この乱れは、成型される発泡プラスチックの性状が所望のものとならなくなるという不具合を生じさせるおそれがあるものである。言いかえると、上記従来技術においては、上記繰り返し成型にあたり、成型される発泡プラスチックの性状が所望のものとならなくなる不具合が生じるおそれがあった。
【0006】
上記不具合の具体例について説明する。上記従来技術においては、上記繰り返し成型にあたり、上記異物が発泡プラスチック成型用フィーダー内におけるエアーの流れを弱め、原料の金型への充填、および/または、余剰の原料の返戻が不十分になる場合があった。原料の金型への充填が不十分になったときには、発泡プラスチックの密度が所望のものよりも低くなる充填不良が生じることがあった。また、余剰の原料の返戻が不十分になったときには、この余剰の原料により進退運動が妨げられたプランジャーおよび/または余剰の原料そのものが上記原料充填口を詰まらせることで原料の充填が十全に行われなくなる充填不良が生じることがあった。また、余剰の原料の返戻が不十分になったときには、この余剰の原料が金型に詰め込まれてスチームの行きわたりが不十分になることで、原料の発泡および融着が不十分になる過充填不良が生じることがあった。
【0007】
なお、上記特許文献1においては、二重管のパーツを丸ごと交換する技術のみが開示されている。また、仮に上記不具合に対してこびりついた異物をこそぎ取る対処をとった場合には、しばしば、ノズルチップに傷および/または変形が生じる。この傷および/または変形は、原料の金型への充填および/または余剰の原料の返戻を不十分とする、新たな要因となるものである。
【0008】
本開示は、発泡プラスチックの金型成型を多数回繰り返し実行する繰り返し成型を行った場合に、成型される発泡プラスチックの性状が所望のものとならなくなるという不具合が生じるおそれを低減させることを可能とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示における1つの特徴によると、発泡プラスチック成型用フィーダーに適用されるノズルチップが提供される。ここで、発泡プラスチック成型用フィーダーは、発泡プラスチックの金型成型において金型の内部にビーズ状の原料を充填する用に供されるものである。また、発泡プラスチック成型用フィーダーは、二重管における外パイプと内パイプとの間の空隙から内パイプの軸線側に抜けるエアーの流れにより原料の金型への充填と余剰の原料の返戻とを実現させるものである。また、ノズルチップは、上記エアーの流れにおいて上記空隙から内パイプの軸線側に抜ける部分に配設されるノズルチップ本体を備えている。また、ノズルチップは、撥水撥油性ならびに自己潤滑性および耐スクラッチ性を有した状態でノズルチップ本体の表面を覆う導体の被膜を備えている。
【0010】
ここで、「撥水撥油性」とは、ある物質が水も油もはじく性質のことをいう。また、「自己潤滑性」とは、ある物質においてその摩擦係数が小さくほとんど摩耗しない性質のことをいう。また、「耐スクラッチ性」とは、ある物質においてその表面硬度が硬く、引っかき傷がつきにくい性質のことをいう。
【0011】
上記のノズルチップによれば、ノズルチップ本体の表面を覆う被膜は、その撥水撥油性により水も油も寄せ付けないため、ほとんどの物質に対する自浄性表面を構成する。また、上記被膜は、その自己潤滑性によって、異物の引っかかりおよびへばりつきを抑える。また、上記被膜は、その耐スクラッチ性によって、異物の引っかかりの原因となる引っかき傷の発生を抑える。また、上記被膜は、導体であるため、帯電した異物がその電荷の作用により被膜に付着した場合に、この電荷を異物から逃がすことで帯電した異物が被膜に付着し続ける状態となることを抑制する。したがって、上記のノズルチップにおいては、ノズルチップ本体に異物がこびりついてエアーの流れに乱れが生じることが抑えられる。これにより、上記のノズルチップは、これを発泡プラスチック成型用フィーダーに適用して発泡プラスチックの金型成型を多数回繰り返し実行する繰り返し成型を行った場合に、成型される発泡プラスチックの性状が所望のものとならなくなるという不具合が生じるおそれを低減させることができる。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、発泡プラスチックの金型成型を多数回繰り返し実行する繰り返し成型を行った場合に、成型される発泡プラスチックの性状が所望のものとならなくなるという不具合が生じるおそれを低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本開示の一実施形態にかかる発泡プラスチック成型用フィーダー10の使用状態を表した説明図である。
【
図2】
図1の発泡プラスチック成型用フィーダー10を表した縦断面図である。
【
図4】
図3の第2のノズルチップ20を単体で表した正面図である。
【
図5】
図3の第2のノズルチップ20を単体で表した右側面図である。
【
図7】
図6の被膜22を模式的に表した説明図である。
【
図8】
図1の発泡プラスチック成型用フィーダー10を生産する方法を説明するための説明図である。
【
図9】
図1の発泡プラスチック成型用フィーダー10を生産する方法を説明するための説明図である。
【
図10】
図1の発泡プラスチック成型用フィーダー10を生産する方法を説明するための説明図である。
【
図11】
図1の発泡プラスチック成型用フィーダー10を生産する方法を説明するための説明図である。
【
図12】
図1の発泡プラスチック成型用フィーダー10を生産する方法を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
上記のノズルチップは、複数がアレー配置されて、それぞれにエアーが通されることでこのエアーの流れを1か所に収束させる小孔を備えるものであってもよい。この場合においては、被膜が、複数の小孔における各内面およびこれら各小孔における開口の縁部を含む上記表面を覆っている。
【0015】
上記のノズルチップによれば、エアーの流れを1か所に収束させるための複数の小孔に対する異物のこびりつきを抑え、もって上記エアーの流れに乱れが生じることを抑えることができる。
【0016】
上記のノズルチップは、そのノズルチップ本体が軽金属または軽合金のいずれかからなるものであってもよい。この場合においては、被膜の表面硬度がノズルチップ本体の表面硬度よりも硬い。
【0017】
軽金属または軽合金は、他の種類の合金(例えば銅合金)よりも比重が小さいため、パーツの素材としたときにはこのパーツの軽量化に資するというメリットを有する。しかるに、軽金属または軽合金は、他の種類の合金よりも表面硬度が柔らかいというデメリットを有するため、傷および/または変形が不具合につながるパーツへの使用はさけられるものであった。ここで、上記のノズルチップによれば、ノズルチップ本体は比較的表面硬度が柔らかい軽金属または軽合金からなるものでありながら、これが比較的表面硬度が硬い被膜によって補われる。これにより、上記のノズルチップは、傷および/または変形が不具合につながるパーツであるにもかかわらず、軽金属または軽合金の採用による、パーツの軽量化に資するというメリットを享受することができる。
【0018】
上記のノズルチップは、被膜が、無電解ニッケルめっきの析出物に由来する析出部と、この析出部に含浸された状態の、フッ素樹脂に由来する樹脂部と、を有する熱処理複合膜であるものであってもよい。
【0019】
無電解ニッケルめっきは、熱処理膜に有される場合においては、そうでない場合よりも表面硬度が硬くなるものであることが知られている。また、フッ素樹脂を有する膜は、そうでない膜よりも摩擦係数が小さくなることが知られている。ここで、上記のノズルチップによれば、析出部と樹脂部とが複合化されることで表面硬度の硬さと摩擦係数の小ささとが兼ね備えられ、もって被膜の自己潤滑性が向上されたノズルチップを提供することができる。
【0020】
また、発泡プラスチックの金型成型において、金型の内部にビーズ状の原料を充填する用に供される発泡プラスチック成型用フィーダーの開示も提供される。この発泡プラスチック成型用フィーダーは、互いに別体とされた外パイプおよび内パイプが空隙をあけた状態で配設されてなる二重管を備えている。また、発泡プラスチック成型用フィーダーは、内パイプに対する原料の出し入れを実現させる原料出入口を備えている。また、発泡プラスチック成型用フィーダーは、金型に接続されたときに、この金型の内部に原料を充填することを可能とする原料充填口を備えている。また、発泡プラスチック成型用フィーダーは、上記空隙から内パイプの軸線側に抜け、そこから原料出入口および原料充填口に連通されるエアーの流路を備えている。また、発泡プラスチック成型用フィーダーは、上記流路において上記空隙から内パイプの軸線側に抜ける部分に配設されるノズルチップ本体を備えている。また、発泡プラスチック成型用フィーダーは、撥水撥油性ならびに自己潤滑性および耐スクラッチ性を有した状態でノズルチップ本体の表面を覆う導体の被膜を備えている。
【0021】
上記の発泡プラスチック成型用フィーダーによれば、ノズルチップ本体の表面を覆う被膜は、その撥水撥油性により水も油も寄せ付けないため、ほとんどの物質に対する自浄性表面を構成する。また、上記被膜は、その自己潤滑性によって、異物の引っかかりおよびへばりつきを抑える。また、上記被膜は、その耐スクラッチ性によって、異物の引っかかりの原因となる引っかき傷の発生を抑える。また、上記被膜は、導体であるため、帯電した異物がその電荷の作用により被膜に付着した場合に、この電荷を異物から逃がすことで帯電した異物が被膜に付着し続ける状態となることを抑制する。したがって、上記の発泡プラスチック成型用フィーダーにおいては、ノズルチップ本体に異物がこびりついてエアーの流れに乱れが生じることが抑えられる。これにより、上記の発泡プラスチック成型用フィーダーは、発泡プラスチックの金型成型を多数回繰り返し実行する繰り返し成型を行った場合に、成型される発泡プラスチックの性状が所望のものとならなくなるという不具合が生じるおそれを低減させることができる。
【0022】
また、上記の発泡プラスチック成型用フィーダーを生産する方法の開示も提供される。この発泡プラスチック成型用フィーダーを生産する方法は、表面が上記被膜に覆われた状態のノズルチップ本体を、外パイプおよび内パイプのいずれに対しても付け外し可能な状態で配設するステップを有している。また、発泡プラスチック成型用フィーダーを生産する方法は、内パイプの内部を原料出入口および原料充填口のいずれにも連通された状態とし、もって上記流路を構成するステップを有している。
【0023】
上記の発泡プラスチック成型用フィーダーを生産する方法によれば、生産された発泡プラスチック成型用フィーダーから、そのノズルチップ本体を、二重管の外パイプおよび内パイプの取り外しという比較的簡単な作業により回収することができる。これにより、生産された発泡プラスチック成型用フィーダーにおいて、そのノズルチップ本体のメンテナンスを容易とすることができる。
【0024】
続いて、本開示の一実施形態にかかる発泡プラスチック成型用フィーダー10の概要について、
図1ないし
図7を用いて説明する。この発泡プラスチック成型用フィーダー10は、
図1に示すように、発泡プラスチックの金型成型において金型92の内部に原料91Aを充填する用に供されるものである。ここで、原料91Aは、予備発泡工程を経て多孔質とされたビーズ状(
図3参照)のプラスチックである。この原料91Aは、ホッパー91に貯留された状態から、発泡プラスチック成型用フィーダー10を介して金型92の内部に充填される。
【0025】
なお、以下においては、便宜的に、発泡プラスチック成型用フィーダー10による原料91Aの充填にあたり金型92が位置される側(
図1では左側)を「一方側」とし、その反対側(
図1では右側)を「他方側」とする。
【0026】
発泡プラスチック成型用フィーダー10は、
図2に示すように、二重管11と、アクチュエーター12と、ブラケット13と、第1のノズルチップ14と、第2のノズルチップ20とを備えている。ここで、第2のノズルチップ20は、本開示の一実施形態にかかるノズルチップである。言いかえると、本開示の一実施形態にかかるノズルチップである第2のノズルチップ20は、発泡プラスチック成型用フィーダー10に適用される。
【0027】
第1のノズルチップ14は、
図3に示すように、発泡プラスチック成型用フィーダー10における一方側の端(
図3では左側の端)に配設される、金属製(本実施形態では快削黄銅製)の円筒部材である。この第1のノズルチップ14における一方側の端には、金型92に接続されたときに、この金型92の内部に原料91Aを充填することを可能とする原料充填口14Aが開口されている。本実施形態においては、原料充填口14Aは、所定の内径を有する円筒形状に形成される。
【0028】
また、第1のノズルチップ14において他方側となる部分は、その外側面にねじ山を有する外ねじ部14Bとされている。本実施形態においては、外ねじ部14Bは、他方側に向かうにつれて薄肉となるように形成され、もって第1のノズルチップ14の円筒の内径が他方側に向かうにつれて大径となるようにする。また、外ねじ部14Bの内側面における他方側の端には、円筒形状の段付き隅部14Cが形成されている。
【0029】
二重管11は、互いに別体となる円筒として形成された外パイプ11Aおよび内パイプ11Eが空隙11Dをあけた状態で配設されてなるものである。ここで、内パイプ11Eは、その外径が外パイプ11Aの内径よりも小さく、かつ、その内径が原料充填口14Aの内径よりも大きくなるように形成される。本実施形態においては、外パイプ11Aおよび内パイプ11Eは、それぞれ、金属によりヒトが容易に持ち上げることが可能な重量となるように形成される。また、外パイプ11Aおよび内パイプ11Eは、その軸線が一致される(
図3の軸線11Hを参照)ように配設される。この軸線11Hは、原料充填口14Aの軸線とも一致される。
【0030】
また、外パイプ11Aにおいて一方側となる部分は、第1のノズルチップ14の外ねじ部14Bと螺合するねじ山を内側面に有する内ねじ部11Bとされている。また、外パイプ11Aにおける他方側の端部は、その外側面にねじ山を有する外ねじ部11C(
図2参照)とされている。
【0031】
また、内パイプ11Eにおける一方側の端は、その内側面に段付け加工が施されたヤロー11Fとされている。このヤロー11Fは、第1のノズルチップ14の段付き隅部14Cよりも他方側となる位置に位置される。これにより、内パイプ11Eにおける他方側の端11Gは、
図2に示すように、外パイプ11Aの外ねじ部11Cよりも他方側に突出した状態とされる。
【0032】
ブラケット13は、
図2に示すように、両Y型の管継手であり、その直管部分が一方側から他方側に延び、かつ、その2つの分岐管部分が他方側に傾いた状態に延びるように配設されるものである。
【0033】
ここで、ブラケット13の直管部分における一方側の端は、一方側に向かって大径となる段付き穴13Aと、この段付き穴13Aの開口を取り巻いて一方側に突出する内ねじ部13Bと、を備えた構成となっている。この内ねじ部13Bは、外パイプ11Aの外ねじ部11Cと螺合することで、この外パイプ11Aをブラケット13に取り付けられた状態にする。また、段付き穴13Aは、そのうちのりが内パイプ11Eの端11Gの外径に対応するように形成されて、この端11Gに対してすきまばめのはめあいをなすことで、内パイプ11Eをブラケット13に取り付けられた状態にする。この状態においては、段付き穴13Aは、ブラケット13を内パイプ11Eの内部に連通させる連通口として機能する。また、段付き穴13Aの軸線は、内パイプ11Eの軸線11Hと一致された状態となる。
【0034】
また、ブラケット13における2つの分岐管部分の1つは、段付き穴13Aよりも他方側となる位置から延びだされて、その先端の原料出入口13Cにて外部に開口される構成となっている。この原料出入口13Cは、適宜の手段(本実施形態では例えば透明なコルゲートチューブ)によってホッパー91に接続されて、このホッパー91に対する原料91Aの出し入れを可能とする。
【0035】
また、ブラケット13における2つの分岐管部分のもう1つは、段付き穴13Aの開口の縁部であって内ねじ部13Bに囲われた位置から延びだされて、その先端のエアー供給口13Dにて外部に開口される構成となっている。このエアー供給口13Dは、適宜の手段によってコンプレッサー90に接続されて、このコンプレッサー90が出力するエアー90Aを二重管11の空隙11Dに流すようになっている。この構成は、発泡プラスチック成型用フィーダー10に、空隙11Dから内パイプ11Eの軸線11H側に抜け、そこから原料出入口13Cおよび原料充填口14Aに連通されるエアー90Aの流路10Aを備えさせる。
【0036】
本実施形態においては、コンプレッサー90は、エアー90Aをそれぞれ独立した複数の系統で出力することが可能なエアーコンプレッサーのアッセンブリである。このコンプレッサー90は、その各系統につき、エアー90Aの出力の有無ならびに出力の流速および圧力を独立にコントロールすることが可能に構成されている。
【0037】
また、ブラケット13の直管部分における他方側の端は、アクチュエーター12が取り付けられる取り付け口13Eとされている。このアクチュエーター12は、取り付け口13Eを閉塞することで、ブラケット13の直管部分において他方側となる部分を、有底管形状を呈する収納穴13Fとする。
【0038】
また、アクチュエーター12は、ブラケット13の直管部分における一方側に突出されるロッド12Aを備えて、このロッド12Aを一方側と他方側とに進退運動させる(図示省略)。本実施形態においては、アクチュエーター12は、コンプレッサー90が出力する2系統のエアー90Aによってロッド12Aの進退運動を実現させる、複動式のエアーシリンダーである。このアクチュエーター12に出力される2つのエアー90Aの系統は、いずれも、エアー供給口13Dに出力されるエアー90Aの系統から独立したものとされている。
【0039】
また、アクチュエーター12のロッド12Aには、その一方側の先端に、略円柱形状に形成されたプランジャー12Bが取り付けられている。このプランジャー12Bは、ロッド12Aに対して一体に取り付けられて、このロッド12Aと一緒に内パイプ11Eの軸線11H上を進退運動する(図示省略)ように構成されている。この進退運動において、ロッド12Aが他方側に(すなわち、アクチュエーター12内に)引き込まれたときには、プランジャー12Bは、ブラケット13の収納穴13Fに引き込まれた状態に収納される。また、プランジャー12Bは、その外径が原料充填口14Aの内径に対応するように形成されて、上記進退運動においてロッド12Aが一方側に押し出されたときに原料充填口14Aとすきまばめのはめあいをなすように構成されている。これは、プランジャー12Bによる原料充填口14Aの閉塞を実現させる。
【0040】
第1のノズルチップ14および第2のノズルチップ20は、
図3に示すように、発泡プラスチック成型用フィーダー10内のエアー90Aの流路10Aにおいて、空隙11Dから内パイプ11Eの軸線11H側に抜ける部分に配設される。また、第2のノズルチップ20は、円環形状(
図4参照)を呈するノズルチップ本体21に複数の小孔21Aを形成した構成を備えている。これら小孔21Aは、それぞれにエアー90Aが通されることで、このエアー90Aの流れを1か所(
図3の収束エリア20Bを参照)に収束させる。ここで、エアー90Aの流れが収束される収束エリア20Bは、原料充填口14Aよりも一方側となる位置(すなわち金型92の内部となる位置)に位置される。
【0041】
本実施形態においては、第2のノズルチップ20は、
図5および
図6に示すように、ノズルチップ本体21の円環における軸線方向の片側(
図5では右側)に向かって延びる円筒形状のヤロー20Aを備えている。このヤロー20Aおよびノズルチップ本体21は、軽合金(具体的には例えばアルミニウムマグネシウム合金)によって一体に成形されている。
【0042】
また、ヤロー20Aは、
図3に示すように、その外側面に内パイプ11Eのヤロー11Fに対応する形状の段付け加工が施されて、このヤロー11Fに対し滑合のはめあいをなすように構成されている。この「滑合のはめあい」は、内パイプ11Eおよび第2のノズルチップ20を、これらの自重によっては分離されないが、ヒトが加える外力によっては容易に分離できる程度の接合強度で接合された状態とする。
【0043】
また、ノズルチップ本体21は、その外径が段付き隅部14Cの内径に対応するように形成されて、この段付き隅部14Cに対しすきまばめのはめあいをなすように構成されている。また、ノズルチップ本体21およびヤロー20Aは、その内径が内パイプ11Eの内径と等しくなるように形成され、かつ、その軸線が内パイプ11Eの軸線11Hに一致するように配設されている。また、複数の小孔21Aは、
図4に示すように、12穴がノズルチップ本体21の円環上に等間隔で並ぶようにアレー配置されている。
【0044】
上記各構成は、発泡プラスチック成型用フィーダー10に、二重管11における外パイプ11Aと内パイプ11Eとの間の空隙11Dから内パイプ11Eの軸線11H側に抜けるエアー90Aの流れにより原料91Aの金型92への充填および余剰の原料91Aの返戻を行う機能を実現させる。
【0045】
すなわち、発泡プラスチック成型用フィーダー10による原料91Aの充填を行う場合であって、金型92の内部に十分な量の原料91Aが充填されていないときには、
図3に実線で示すように、空隙11Dから内パイプ11Eの軸線11H側に抜けたエアー90Aは、金型92の内部にある収束エリア20Bに向かって流れる。この流れは、内パイプ11E内の空気を金型92の内部へと吸い出す吸引力を発生させる。この吸引力は、原料出入口13Cを介してホッパー91内の原料91Aに作用し(
図2参照)、この原料91Aを金型92の内部に向かって移動させる。これは、原料91Aの金型92への充填を実現させる。
【0046】
また、発泡プラスチック成型用フィーダー10による原料91Aの充填を行う場合であって、金型92の内部に十分な量の原料91Aが充填されたときには、
図3に仮想線で示すように、空隙11Dから内パイプ11Eの軸線11H側に抜けたエアー90Aは、金型92内に充填された原料91Aによって行く手を遮られ、内パイプ11Eの内部を他方側に向かって流れる。この流れは、内パイプ11E内に残留する余剰の原料91Aを巻き込みながら、原料出入口13Cを通ってホッパー91にまで達する(
図3では図示せず)。これは、余剰の原料91Aのホッパー91への返戻を実現させる。
【0047】
ところで、第2のノズルチップ20は、
図6に示すように、その表面の全体を覆う被膜22を備えている。すなわち、被膜22は、複数の小孔21Aにおける各内面21Cおよびこれら各小孔21Aにおける開口の縁部21Bを含む、ノズルチップ本体21の表面の全体を覆う。また、被膜22は、ヤロー20Aの表面の全体も覆う。
【0048】
ここで、被膜22は、撥水撥油性ならびに自己潤滑性および耐スクラッチ性を兼ね備えた、導体の被膜である。本実施形態においては、被膜22は、軽合金(具体的には例えばアルミニウムマグネシウム合金)によって構成されるノズルチップ本体21およびヤロー20Aと比して、その表面硬度がより硬いものとされる。また、被膜22は、その厚さが、第2のノズルチップ20のいずれの部分においても10[μm]となるように調製される。
【0049】
上記の要件を満たす被膜としては、例えば、ジェネラル・マグナプレイト・コーポレイションおよびそのライセンシーであるアルバックテクノ株式会社が、「NEDOX(登録商標)」のサービス名で提供する膜被着処理加工の役務によって被着される被着被膜(本明細書においては、単に「被着被膜」とも称する。)が存在する。この被着被膜は、対象物(本実施形態では第2のノズルチップ20)の表面に無電解ニッケルめっきを施し、これにポリマー(例えばフッ素樹脂)を熱処理によって複合化(含浸)させることによって得られるとも言われている。この場合、上記被着被膜(すなわち被膜22)は、無電解ニッケルめっきの析出物に由来する析出部22Aと、この析出部22Aに含浸された状態の、フッ素樹脂に由来する樹脂部22Bと、を有する熱処理複合膜(
図7参照)であるということができる。なお、ジェネラル・マグナプレイト・コーポレイションは、上記被着被膜の具体的な構成および被着方法について、これを公開していない。
【0050】
続いて、上述した発泡プラスチック成型用フィーダー10を生産する方法の一例について、
図8ないし
図12に基づいて説明する。ここで、以下においては、発泡プラスチック成型用フィーダー10を構成する各機械要素および/またはモジュールについて、これらの生産があらかじめ完了されているものとし、これらを組み立てる方法についての説明を重点的に行う。
【0051】
発泡プラスチック成型用フィーダー10を生産するにあたっては、生産者(図示省略)は、
図8に示すように、ロッド12Aの先端にプランジャー12Bが取り付けられた状態のアクチュエーター12を、ブラケット13の取り付け口13Eに取り付け、もってこの取り付け口13Eを閉塞する。この際、生産者は、アクチュエーター12を、そのロッド12Aの先端がブラケット13内に位置されるように取り付ける。また、生産者は、アクチュエーター12を、そのロッド12Aにおける進退運動の方向が、ブラケット13における段付き穴13Aの軸線が延びる方向と一致されるように取り付ける(
図8では図示省略)。
【0052】
また、生産者は、
図9に示すように、第2のノズルチップ20のヤロー20Aを内パイプ11Eのヤロー11Fにはめ入れ、これらの間に滑合のはめあいを成立させる。これは、表面が被膜22に覆われた第2のノズルチップ20のノズルチップ本体21(
図6参照)を、内パイプ11Eに対して付け外し可能な状態で取り付けることを実現させる。また、上記滑合のはめあいは、第2のノズルチップ20におけるノズルチップ本体21およびヤロー20Aの軸線を、内パイプ11Eの軸線11Hに一致させる。
【0053】
続いて、生産者は、
図10に示すように、第2のノズルチップ20が取り付けられた内パイプ11Eを外パイプ11Aの中に挿入し、もって二重管11を構成する。この際、内パイプ11Eは、そのヤロー11Fが内ねじ部11B側を向き、反対側の端11Gが外ねじ部11C側を向いた状態となるように、外パイプ11Aの中に挿入される。また、内パイプ11Eの端11Gは、外パイプ11Aの外ねじ部11Cから突出した状態に配設される。
【0054】
続いて、生産者は、
図11に示すように、第1のノズルチップ14の外ねじ部14Bを二重管11における内ねじ部11Bに螺合させ、もって第1のノズルチップ14を二重管11に取り付けられた状態にする。これは、内パイプ11Eの内部を第1のノズルチップ14の原料充填口14Aに連通された状態とする。
【0055】
この際、外ねじ部14Bと内ねじ部11Bとの螺合構造は、外パイプ11Aの軸線と原料充填口14Aの軸線とを一致させる。また、外ねじ部14Bの端に形成された段付き隅部14Cは、第2のノズルチップ20のノズルチップ本体21とすきまばめのはめあいをなすことで、第2のノズルチップ20および内パイプ11Eの軸線11Hを原料充填口14Aの軸線と一致させる。したがって、外パイプ11Aおよび内パイプ11Eは、これらの軸線が軸線11Hとして一致されるように配設される。また、表面が被膜22に覆われた第2のノズルチップ20のノズルチップ本体21(
図6参照)は、外パイプ11Aおよび内パイプ11Eのいずれに対しても付け外し可能な状態で配設される。
【0056】
続いて、生産者は、
図12に示すように、内パイプ11Eの端11Gをブラケット13の段付き穴13Aにはめ入れ、これらの間にすきまばめのはめあいを成立させる。これは、内パイプ11Eの内部をブラケット13の原料出入口13Cおよび第1のノズルチップ14の原料充填口14Aのいずれにも連通された状態とし、もって上述したエアー90Aの流路10A(
図2参照)を構成する。また、生産者は、外パイプ11Aの外ねじ部11Cをブラケット13の内ねじ部13Bに螺合させ、この外パイプ11Aをブラケット13に取り付けられた状態にする。これにより、
図1に示す発泡プラスチック成型用フィーダー10は完成する。
【0057】
上述した第2のノズルチップ20およびこの第2のノズルチップ20が適用された発泡プラスチック成型用フィーダー10によれば、ノズルチップ本体21の表面を覆う被膜22は、その撥水撥油性により水も油も寄せ付けないため、ほとんどの物質に対する自浄性表面を構成する。また、被膜22は、その自己潤滑性によって、異物の引っかかりおよびへばりつきを抑える。また、被膜22は、その耐スクラッチ性によって、異物の引っかかりの原因となる引っかき傷の発生を抑える。また、被膜22は、導体であるため、帯電した異物がその電荷の作用により被膜に付着した場合に、この電荷を異物から逃がすことで帯電した異物が被膜に付着し続ける状態となることを抑制する。したがって、上述した第2のノズルチップ20およびこの第2のノズルチップ20が適用された発泡プラスチック成型用フィーダー10においては、ノズルチップ本体21に異物がこびりついてエアー90Aの流れに乱れが生じることが抑えられる。これにより、上述した第2のノズルチップ20およびこの第2のノズルチップ20が適用された発泡プラスチック成型用フィーダー10は、発泡プラスチックの金型成型を多数回繰り返し実行する繰り返し成型を行った場合に、成型される発泡プラスチックの性状が所望のものとならなくなるという不具合が生じるおそれを低減させることができる。
【0058】
また、上述した第2のノズルチップ20によれば、エアー90Aの流れを1か所に収束させるための複数の小孔21Aに対する異物のこびりつきを抑え、もってエアー90Aの流れに乱れが生じることを抑えることができる。
【0059】
また、上述した第2のノズルチップ20によれば、ノズルチップ本体21は比較的表面硬度が柔らかい軽合金からなるものでありながら、これが比較的表面硬度が硬い被膜によって補われる。これにより、上述した第2のノズルチップ20は、傷および/または変形が不具合につながるパーツであるにもかかわらず、軽金属または軽合金の採用による、パーツの軽量化に資するというメリットを享受することができる。
【0060】
また、上述した第2のノズルチップ20によれば、析出部22Aと樹脂部22Bとが複合化されることで表面硬度の硬さと摩擦係数の小ささとが兼ね備えられ、もって被膜22の自己潤滑性が向上された第2のノズルチップ20を提供することができる。
【0061】
また、上述した発泡プラスチック成型用フィーダー10を生産する方法によれば、生産された発泡プラスチック成型用フィーダー10から、ノズルチップ本体21を備えた第2のノズルチップ20を、二重管11の外パイプ11Aおよび内パイプ11Eの取り外しという比較的簡単な作業により回収することができる。これにより、生産された発泡プラスチック成型用フィーダー10において、ノズルチップ本体21を備えた第2のノズルチップ20のメンテナンスを容易とすることができる。
【0062】
本開示は、上述した一実施形態で説明した外観、構成に限定されず、本開示の要旨を変更しない範囲で種々の変更、追加、削除が可能である。例えば、以下のような各種の態様を実施することができる。
【0063】
(1)エアーの流れを1か所に収束させるノズルチップ(上述した第2のノズルチップ20に相当する。)に代えて、または該ノズルチップに加えて、金型の内部に原料を充填するためのノズルチップ(上述した第1のノズルチップ14に相当する。)の表面を、撥水撥油性ならびに自己潤滑性および耐スクラッチ性を兼ね備えた導体の被膜によって覆った態様。
【0064】
(2)ノズルチップ本体の表面を覆う被膜を、上述した被着被膜とは別種の、撥水撥油性ならびに自己潤滑性および耐スクラッチ性を兼ね備えた導体の被膜とした態様。この条件を満たす被膜としては、例えば、フッ素樹脂が分散された無電解ニッケルめっき浴による共析めっきを熱処理して得られる熱処理複合膜が挙げられる。この熱処理複合膜は、無電解ニッケルめっきの析出物に由来する析出部と、析出部に含浸された状態の、フッ素樹脂に由来する樹脂部とを有する。
【0065】
(3)被膜に覆われるノズルチップ本体を、アルミニウムマグネシウム合金とは別種の軽金属または軽合金(具体的には例えばアルミニウムまたはアルミニウム合金)からなるものとした態様。
【0066】
(4)発泡プラスチック成型用フィーダーのアクチュエーターを、複動式のエアーシリンダーとは別種のアクチュエーター(具体的には例えば複動式のエアーシリンダーまたは電動シリンダー)からなるものとした態様。
【0067】
(5)発泡プラスチック成型用フィーダーを生産する方法において、その各ステップの実行順を変更した態様。例えば、金型の内部に原料を充填するためのノズルチップ(上述した第1のノズルチップ14に相当する。)は、内パイプおよび外パイプをブラケットに取り付けた後にその取り付け作業を行ってもよい。
【符号の説明】
【0068】
10 発泡プラスチック成型用フィーダー
10A 流路
11 二重管
11A 外パイプ
11B 内ねじ部
11C 外ねじ部
11D 空隙
11E 内パイプ
11F ヤロー
11G 端
11H 軸線
12 アクチュエーター
12A ロッド
12B プランジャー
13 ブラケット
13A 段付き穴
13B 内ねじ部
13C 原料出入口
13D エアー供給口
13E 取り付け口
13F 収納穴
14 第1のノズルチップ
14A 原料充填口
14B 外ねじ部
14C 段付き隅部
20 第2のノズルチップ
20A ヤロー
20B 収束エリア
21 ノズルチップ本体
21A 小孔
21B 縁部
21C 内面
22 被膜
22A 析出部
22B 樹脂部
90 コンプレッサー
90A エアー
91 ホッパー
91A 原料
92 金型