(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】低エネルギーギャップ小分子材料及びこれを応用した有機光電子デバイス
(51)【国際特許分類】
C07D 519/00 20060101AFI20240305BHJP
H10K 30/50 20230101ALI20240305BHJP
H01L 31/04 20140101ALI20240305BHJP
【FI】
C07D519/00 301
C07D519/00 CSP
H10K30/50
H01L31/04
(21)【出願番号】P 2022111656
(22)【出願日】2022-07-12
【審査請求日】2022-08-18
(32)【優先日】2021-08-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514238696
【氏名又は名称】レイナジー テック インコーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】李威龍
(72)【発明者】
【氏名】廖椿毅
(72)【発明者】
【氏名】蕭育堂
(72)【発明者】
【氏名】蔡佳樺
【審査官】吉森 晃
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第103374116(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第108101930(CN,A)
【文献】特開2019-036724(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第112225882(CN,A)
【文献】ZHANG, L et al.,Rational design of novel A-A-D-A-A type electron donors for small molecule organic solar cells,Chemical Physics Letters,2012年,Vol.543,pp.199-204
【文献】ZHOU, X et al.,Thieno[3,2-b]indole (TI) bridged A-π-D-π-A small molecules: Synthesis, characterizations and organic solar cell applications,Dyes and Pigments,2019年,Vol.160,pp.16-24
【文献】LU, C et al.,Phenothiazine Functionalized Multifunctional A-π-D-π-D-π-A-Type Hole-Transporting Materials via Sequential C-H Arylation Approach for Efficient and Stable Perovskite Solar Cells,ACS Applied Materials & Interfaces,2019年,Vol.11,pp.14011-14022
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
H01L
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式1(化1)の構造を
有し、
【化1】
式中
、m、n
、x及びyは独立して、0~2から選択されるいずれか1つの整数であり
、o=p=1であり;
Ar
0、Ar
1及びAr
2は
前記式1の構造中の前記Ar
0
、複数の前記Ar
1
及び複数の前記Ar
2
が互いに同じでも異なっていてもよく、前記Ar
0
、各前記Ar
1
及び各前記Ar
2
は独立して、以下の群から選択される1つであり、
【化2】
各構造中の複数の前記R
0
は互いに同じでも異なっていてもよく、各前記R
0
は独立して、C1-C30のアルキル基、C3-C30の分岐アルキル基、C1-C30のシラン基、C2-C30のエステル基、C1-C30のアルコキシ基、C1-C30のアルキルチオ基、C1-C30のハロゲン化アルキル基、C2-C30のアルケン、C2-C30のアルキン、シアノ基を含むC2-C30の炭素鎖、ニトロ基を含むC1-C30の炭素鎖、ヒドロキシ基を含むC1-C30の炭素鎖、ケトン基を含むC3-C30の炭素鎖、ハロゲン、シアノ基、水素原子、1つ若しくは複数のR
1
置換基を有するか又は置換基を有さない芳香環、1つ若しくは複数のR
1
置換基を有するか又は置換基を有さない複素環、1つ若しくは複数のR
1
置換基を有するか又は置換基を有さない縮合環、1つ若しくは複数のR
1
置換基を有するか置換基を有さない縮合複素環からなる群から選択される1つであり、複数の前記R
1
置換基が互いに同じでも異なっていてもよく、各前記R
1
置換基が独立して、C1-C30のアルキル基、C3-C30の分岐アルキル基、C1-C30のシラン基、C2-C30のエステル基、C1-C30のアルコキシ基、C1-C30のアルキルチオ基、C1-C30のハロゲン化アルキル基、C2-C30のアルケン、C2-C30のアルキン、シアノ基を含むC2-C30の炭素鎖、ニトロ基を含むC1-C30の炭素鎖、ヒドロキシ基を含むC1-C30の炭素鎖、ケトン基を含むC3-C30の炭素鎖、ハロゲン、シアノ基及び水素原子からなる群から選択される1つであり;
A
0は置換基を有するか又は有さず、ヘテロ原子を含む三環構造であり、前記ヘテロ原子がS、N、Si及びSeのうち少なくとも1つを含み、
前記式1の構造中の複数の前記A
0
が互いに同じでも異なっていてもよく、各前記A
0
は独立して以下の群から選択される1つであり、
【化3】
及び
式中zは1~8のいずれか1つの整数であり;
Ar
3
及びAr
4
は独立して、1つ若しくは複数のR
2
置換基を有するか又は置換基を有さない芳香環、1つ若しくは複数のR
2
置換基を有するか又は置換基を有さない複素環、1つ若しくは複数のR
2
置換基を有するか又は置換基を有さない縮合環、1つ若しくは複数のR
2
置換基を有するか又は置換基を有さない縮合複素環からなる群から選択される1つであり;
Ar
5
は独立して、C1-C30のアルキル基、C3-C30の分岐アルキル基、C1-C30のシラン基、C2-C30のエステル基、C1-C30のアルコキシ基、C1-C30のアルキルチオ基、C1-C30のハロゲン化アルキル基、C2-C30のアルケン、C2-C30のアルキン、シアノ基を含むC2-C30の炭素鎖、ニトロ基を含むC1-C30の炭素鎖、ヒドロキシ基を含むC1-C30の炭素鎖、ケトン基を含むC3-C30の炭素鎖、ハロゲン、シアノ基、水素原子、1つ若しくは複数のR
3
置換基を有するか又は置換基を有さない芳香環、1つ若しくは複数のR
3
置換基を有するか又は置換基を有さない複素環、1つ若しくは複数のR3置換基を有するか又は置換基を有さない縮合環、1つ若しくは複数のR
3
置換基を有するか又は置換基を有さない縮合複素環からなる群から選択される1つであり;
各構造中の複数の前記R
2
及び複数の前記R
3
は互いに同じでも異なっていてもよく、各前記R
2
及び各前記R
3
は独立して、C1-C30のアルキル基、C3-C30の分岐アルキル基、C1-C30のシラン基、C2-C30のエステル基、C1-C30のアルコキシ基、C1-C30のアルキルチオ基、C1-C30のハロゲン化アルキル基、C2-C30のアルケン、C2-C30のアルキン、シアノ基を含むC2-C30の炭素鎖、ニトロ基を含むC1-C30の炭素鎖、ヒドロキシ基を含むC1-C30の炭素鎖、ケトン基を含むC3-C30の炭素鎖、ハロゲン、シアノ基及び水素原子からなる群から選択される1つであり;
A
1は
前記式1の構造中の複数の前記A
1
が互いに同じでも異なっていてもよく、各前記A
1
は独立して以下の群から選択される1つであり、
【化4】
複数の前記R
4
は互いに同じでも異なっていてもよく、各前記R
4
は独立して、C1-C30のアルキル基、C3-C30の分岐アルキル基、C1-C30のシラン基、C2-C30のエステル基、C1-C30のアルコキシ基、C1-C30のアルキルチオ基、C1-C30のハロゲン化アルキル基、C2-C30のアルケン、C2-C30のアルキン、シアノ基を含むC2-C30の炭素鎖、ニトロ基を含むC1-C30の炭素鎖、ヒドロキシ基を含むC1-C30の炭素鎖、ケトン基を含むC3-C30の炭素鎖、ハロゲン、シアノ基及び水素原子からなる群から選択される1つである、低エネルギーギャップ小分子材料。
【請求項2】
前記式1の構造において、m=n、o=p、x=yである、請求項1に記載の低エネルギーギャップ小分子材料。
【請求項3】
前記式1の構造において、Ar
1=Ar
2である、請求項1に記載の低エネルギーギャップ小分子材料。
【請求項4】
前記式1の構造において、m+n+o+p≠0である、請求項1に記載の低エネルギーギャップ小分子材料。
【請求項5】
前記式1の構造において、x+y≠0である、請求項1に記載の低エネルギーギャップ小分子材料。
【請求項6】
透明電極を含む第1電極と;
第1キャリア輸送層と;
請求項1に記載の低エネルギーギャップ小分子材料を少なくとも含む活性層と;
第2キャリア輸送層と;
第2電極と、を含み、
前記第1キャリア輸送層が前記第1電極及び前記活性層の間に位置し、前記活性層が前記第1キャリア輸送層及び前記第2キャリア輸送層の間に位置し、前記第2キャリア輸送層が前記活性層及び前記第2電極の間に位置する、有機光電子デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機光電子デバイスに応用される低エネルギーギャップ小分子材料、及びこの低エネルギーギャップ小分子材料を含む有機光電子デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
世界の温暖化により、気候変動はすでに国際社会が共に直面する難題となっている。1997年、「国連気候変動枠組条約(United Nations Framework Convention on Climate Change、UNFCCC)の締結国」が提出した京都議定書は2005年に正式に発効され、二酸化炭素の排出を減少させることを目的とする。これに対して各国は、石化燃料の使用を減少させるために、再生エネルギーの発展に重点を置いている。このうち、太陽は人々の現在及び未来のエネルギー需要をはるかに満たすため、再生エネルギーに属する太陽光発電は大いに重視されている。太陽光発電技術において、太陽光を電力に変換する有機光電子デバイスは、主要な開発目標となっている。
【0003】
現在、高性能有機光電子デバイスを作製する主要な方法は、高分子ポリマー電子供与体材料及び非フラーレン電子受容体材料を使用して活性層を作製する。しかし高分子ポリマー材料は調製過程で、分子量及び分散度を精確に制御するのが難しい、精製が難しい、材料のロット安定性が劣るなどの問題が通常存在し、これにより作製した有機光電子デバイスの効率の再現性が対応して低くなり、大規模、商業的な応用に不利である。相対して、有機小分子の分子量を確定すると、精確に合成することができ、精製が容易であり、ロット安定性が高く、さらには大規模な調製に有利である。従って、有機小分子材料で作製した有機光電子デバイスは商業化への応用に対して比較的高い将来性を有する。
【0004】
近年、例えば非フラーレン材料などの有機小分子材料は、有機太陽電池及び有機光検出器中に応用され、これは調整可能な構造、高い消光係数などの利点を有するため、良好な性能を有する。可視光波長は400~700nmであり、現在の太陽電池の吸収波長の範囲は320~1100nmで、1200nmを超えた赤外線に対して吸収能力を有さない。このことから、太陽光は電流又は信号に変換されない多くの赤外線の光子をさらに有することがわかり、従って、赤外線を吸収することができる有機小分子材料を開発して、有機光電子デバイスに応用することは、現在非常に重要な課題である。
【0005】
このほか、有機光検出器で検出する必要がある波長範囲も1000nm以内に制限されない。例えば、インテリジェントドライブ及びドローンはより良好な透過度及び長距離の検出を必要とし、使用する波長は1000nmを超える必要がある。水は波長1350nmで吸収があり、検出器で食品又は薬品の湿った程度を検出することができ、誤食して人体に影響を及ぼすのを防止する。波長1000nm以上の光はバイオアッセイでより深い組織への透過力を有し、画像のコントラストを高めることができる。さらに有機光電子デバイスは比較的良好なたわみ性を有し、ウェアラブル型健康管理装置の製造に有利である。現在、多数の有機小分子材料の光に対する吸収範囲の波長は、多くても800nmに達することができる程度であるため、吸収することができる波長が1000nmを超える有機高分子ポリマー材料を使用材料とすることが多い。上記2つの大きな原因により、1000nmより大きな光に応答する有機小分子材料を開発することは、現在、非常に重要なもう1つの課題である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このことを考慮して、本発明の範疇は低エネルギーギャップ小分子材料を提供し、既存技術における赤外線領域の吸収能力を超えることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の具体的な実施例に基づくと、低エネルギーギャップ小分子材料は化1の構造を含む。
【0008】
【0009】
式中、o、m、n、p、x及びyは、独立して0~2から選択されるいずれか1つの整数である。Ar0、Ar1及びAr2は電子供与性基である。A0は置換基を有するか又は有さず、ヘテロ原子を含む三環構造であり、該ヘテロ原子はS、N、Si及びSeのうち少なくとも1つを含む。A1は置換基を有するか又は有さない電子求引性基であり、該電子求引性基の構造にS、N、Si、Se、C=O、-CN及びSO2のうち少なくとも1つが含まれる。
【0010】
Ar0、Ar1及びAr2はヘテロ原子を含む複素環であり、ヘテロ原子はS、N、Si及びSeのうち少なくとも1つを含む。
【0011】
化1の構造におけるAr0、Ar1及びAr2は互いに同じでも異なっていてもよく、Ar0、Ar1及びAr2は独立して以下の群から選択される1つである。
【0012】
【0013】
各構造中のR0は互いに同じでも異なっていてもよく、R0は独立して、C1-C30のアルキル基、C3-C30の分岐アルキル基、C1-C30のシラン基、C2-C30のエステル基、C1-C30のアルコキシ基、C1-C30アルキルチオ基、C1-C30のハロゲン化アルキル基、C2-C30のアルケン、C2-C30のアルキン、シアノ基を含むC2-C30の炭素鎖、ニトロ基を含むC1-C30の炭素鎖、ヒドロキシ基を含むC1-C30の炭素鎖、ケトン基を含むC3-C30の炭素鎖、ハロゲン、シアノ基、水素原子、1つ若しくは複数のR1置換基を有するか又は置換基を有さない芳香環、1つ若しくは複数のR1置換基を有するか又は置換基を有さない複素環、1つ若しくは複数のR1置換基を有するか又は置換基を有さない縮合環、1つ若しくは複数のR1置換基を有するか又は置換基を有さない縮合複素環からなる群から選択される1つである。R1置換基は互いに同じでも異なっていてもよく、R1置換基は独立して、C1-C30のアルキル基、C3-C30の分岐アルキル基、C1-C30のシラン基、C2-C30のエステル基、C1-C30のアルコキシ基、C1-C30のアルキルチオ基、C1-C30のハロゲン化アルキル、C2-C30のアルケン、C2-C30のアルキン、シアノ基を含むC2-C30の炭素鎖、ニトロ基を含むC1-C30の炭素鎖、ヒドロキシ基を含むC1-C30の炭素鎖、ケトン基を含むC3-C30の炭素鎖、ハロゲン、シアノ基及び水素原子からなる群から選択される1つである。
【0014】
化1の構造中のA0は互いに同じでも異なっていてもよく、A0は独立して以下の群から選択される1つである。
【0015】
【0016】
式中zは1~8のいずれか1つの整数である。Ar3及びAr4は独立して、1つ若しくは複数のR2置換基を有するか又は置換基を有さない芳香環、1つ若しくは複数のR2置換基を有するか又は置換基を有さない複素環、1つ若しくは複数のR2置換基を有するか又は置換基を有さない縮合環、1つ若しくは複数のR2置換基を有するか又は置換基を有さない縮合複素環からなる群から選択される1つである。Ar5は独立して、C1-C30のアルキル基、C3-C30の分岐アルキル基、C1-C30のシラン基、C2-C30のエステル基、C1-C30のアルコキシ基、C1-C30のアルキルチオ基、C1-C30のハロゲン化アルキル基、C2-C30のアルケン、C2-C30のアルキン、シアノ基を含むC2-C30の炭素鎖、ニトロ基を含むC1-C30の炭素鎖、ヒドロキシ基を含むC1-C30の炭素鎖、ケトン基を含むC3-C30の炭素鎖、ハロゲン、シアノ基、水素原子、1つ若しくは複数のR3置換基を有するか又は置換基を有さない芳香環、1つ若しくは複数のR3置換基を有するか又は置換基を有さない複素環、1つ若しくは複数のR3置換基を有するか又は置換基を有さない縮合環、1つ若しくは複数のR3置換基を有するか又は置換基を有さない縮合複素環からなる群から選択される1つである。各構造中のR2及びR3は互いに同じでも異なっていてもよく、R2及びR3は独立して、C1-C30のアルキル基、C3-C30の分岐アルキル基、C1-C30のシラン基、C2-C30のエステル基、C1-C30のアルコキシ基、C1-C30のアルキルチオ基、C1-C30のハロゲン化アルキル基、C2-C30のアルケン、C2-C30のアルキン、シアノ基を含むC2-C30の炭素鎖、ニトロ基を含むC1-C30の炭素鎖、ヒドロキシ基を含むC1-C30の炭素鎖、ケトン基を含むC3-C30の炭素鎖、ハロゲン、シアノ基及び水素原子からなる群から選択される1つである。
【0017】
化1の構造中のA1は互いに同じでも異なっていてもよく、A1は独立して以下の群から選択される1つである。
【0018】
【0019】
R4は互いに同じでも異なっていてもよく、R4は独立して、C1-C30のアルキル基、C3-C30の分岐アルキル基、C1-C30のシラン基、C2-C30のエステル基、C1-C30のアルコキシ基、C1-C30のアルキルチオ基、C1-C30のハロゲン化アルキル基、C2-C30のアルケン、C2-C30のアルキン、シアノ基を含むC2-C30の炭素鎖、ニトロ基を含むC1-C30の炭素鎖、ヒドロキシ基を含むC1-C30の炭素鎖、ケトン基を含むC3-C30の炭素鎖、ハロゲン、シアノ基及び水素原子からなる群から選択される1つである。
【0020】
化1の構造において、m=n、o=p、x=yである。
【0021】
化1の構造において、Ar1=Ar2である。
【0022】
化1の構造において、m+n+o+p≠0である。
【0023】
化1の構造において、x+y≠0である。
【0024】
本発明のもう1つの範疇は、第1電極、第1キャリア輸送層、活性層、第2キャリア輸送層及び第2電極を含む有機光電子デバイスを提供することにある。第1電極は透明電極である。活性層は、前記低エネルギーギャップ小分子材料を少なくとも含む。第1キャリア輸送層は第1電極及び活性層の間に位置し、活性層は第1キャリア輸送層及び第2キャリア輸送層の間に位置し、第2キャリア輸送層は活性層及び第2電極の間に位置する。
【発明の効果】
【0025】
既存技術と比較して、本発明の低エネルギーギャップ小分子材料で作製した有機光電子デバイスは赤外線領域で良好な吸光度を有し、EQE及び暗電流も良好な性能を有する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】
図1は、本発明の有機光電子デバイスの具体的な実施例における構造概要図を示す。
【
図2】
図2は、本発明の低エネルギーギャップ小分子材料の具体的な実施例Q1~Q4をクロロホルムに溶解した溶液におけるUV-Vis-NIR吸収スペクトルを示す。
【
図3】
図3は、本発明の低エネルギーギャップ小分子材料の具体的な実施例Q1~Q4の薄膜におけるUV-Vis-NIR吸収スペクトルを示す。
【
図4】
図4は、本発明の低エネルギーギャップ小分子材料の具体的な実施例Q1~Q4におけるエネルギー準位位置の概要図を示す。
【
図5】
図5は、本発明の有機光電子デバイスの具体的な実施例P1、P2、Q2、Q3における材料エネルギー準位の概要図を示す。
【
図6】
図6は、本発明の有機光電子デバイスの具体的な実施例P2:Q2におけるEQE試験の結果を示す。
【
図7】
図7は、本発明の有機光電子デバイスの具体的な実施例P2:Q2における暗電流試験の結果を示す。
【
図8】
図8は、本発明の有機光電子デバイスの具体的な実施例P1:Q3におけるEQE試験の結果を示す。
【
図9】
図9は、本発明の有機光電子デバイスの具体的な実施例P1:Q3における暗電流試験の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の利点、趣旨及び特徴をより容易に、明確に理解できるようにするため、以下に実施例を用いて、さらに図を参照して詳述及び討論を行う。これらの実施例は本発明の代表的な実施例に過ぎないことに注意すべきである。しかしこれらは多くの異なる形式で実現することができ、本明細書に記載する実施例に制限されない。反対に、これらの実施例を提供する目的は、本発明の開示内容をより徹底的、全面的にすることである。
【0028】
本発明で開示する各実施例で使用する用語は特定の実施例を説明するために用いたに過ぎず、本発明に開示する各実施例を制限しない。例えばここで使用する単数形は、文脈に明確に指示しない限り複数形も含む。他に限定していなければ、本明細書で使用するすべての用語(技術的用語及び科学的用語を含む)は、本発明で開示する各種実施例の当業者が通常理解する意味と同じ意味を有する。上記用語(例えば一般的に使用される辞典中で限定される用語)は、同じ技術分野での文脈の意味と同じ意味を有すると解釈され、さらに本発明で開示する各種実施例で明確に限定されない限り、理想化した意味又は過度に正式な意味を有すると解釈されない。
【0029】
本明細書の記載において、「実施例」、「具体的な実施例」などの記載は、該実施例に記載する具体的な特徴、構造、材料又は長所の組合せが、本発明の少なくとも1つの実施例に包含されることを意味している。本明細書において、上記用語に対する概略的な表現は同じ実施例を指すとは限らない。さらに、記載する具体的な特徴、構造、材料又は長所は、いかなる1つ又は複数の実施例中でも、適した方式により組み合わせることができる。
【0030】
定義:
本文で使用する化合物は「環境で安定」又は「環境条件下で安定」と見なされ、化合物を組み合わせて、半導体材料のトランジスタとするとき、該化合物が環境条件、例えば空気、周囲温度及び湿度に一定時間暴露された後、キャリア移動度がその初期値を維持することを指す。例えば、一化合物を環境で安定と見なすことができ、該化合物を組み合わせたトランジスタを、空気、湿度及び温度を含む環境条件に3日間、5日間又は10日間暴露した場合、キャリア移動度の変化は初期値の20%を超えないか、又は10%を超えない。
【0031】
本文で使用する外部量子効率(EQE、External Quantum Efficiency)は、スペクトル応答Amp/Wattであり、アンペアAmpを単位時間当たりの電子数(electron/sec)に換算し、ワットWattを単位時間当たりの光子数(Photons/sec)に換算し、上記公式に代入して得られる量子効率である。一般的に、量子効率(QE)が指すのは外部量子効率(EQE)であり、入射光子-電子変換効率(IPCE、Incident Photon-Electron Conversion Efficiency)とも称する。
【0032】
本文で使用する部材(例えば薄膜層)について、光子を吸収することができ、光電流を生成するための励起子を生成する化合物を1つ又は1つ以上含む場合、「光活性」と見なすことができる。
【0033】
本文で使用する「溶液加工」は、化合物(例えばポリマー)、材料又は組成物を溶液状態で用いることができる工程を指し、例えばスピンコーティング、プリント法(例えばインクジェットプリント、凹版印刷、平版印刷など)、スプレーコーティング法、エレクトロスプレーコーティング法、ドロップキャスティング法、ディップコーティング法及びブレードコーティング法である。
【0034】
本文で使用する「アニール」は、環境中又は減圧若しくは加圧下で、半結晶ポリマー薄膜を一定時間浸漬させた後熱処理することを指し、「アニール温度」は、該アニール過程で該ポリマー薄膜又は該ポリマー及びその他の分子の混合薄膜が、小規模な分子運動及び再配列することができる温度を指す。いずれの特定理論の束縛も受けなければ、報告によると、アニールは可能な状況で、ポリマー薄膜中の結晶度を増加させることができ、ポリマー薄膜又は該ポリマー及びその他の分子の混合薄膜における材料のキャリア移動度が上昇し、さらに分子の交互配列を形成し、有効電子及び正孔の独立した輸送経路の効果を達成する。
【0035】
現在の技術では、多くが「電子供与体-π-電子受容体」の有機高分子構造の設計により、近赤外線を吸収することができる能力を達成しており、他にその他の技術は、「電子供与体-電子受容体-電子供与体」の有機小分子構造の設計を利用して、600~800nmの光を吸収することができることを達成している。本発明は低エネルギーギャップ小分子材料を提供し、分子構造設計の概念は、この低エネルギーギャップ小分子材料の外側構造に2つの強い電子求引性基を有し、接続する中心構造はπ電子又は多電子を有するシステムである。さらに、本発明の分子構造設計はA1-A0-Ar0-A0-A1であり、中心構造に位置するAr0はπであるか、又は比較的電子供与性の能力を有する縮合環でよく、A0は多縮合環であり、最も外側構造に位置するA1は複数の電子求引性基を有する縮合環ユニットである。本発明の複数の電子求引性の官能基を使用する構造において、このような設計は単一の強い電子求引性基を使用する設計と比較して、より容易に近赤外線波長の吸収を達成する。
【0036】
具体的な実施例において、本発明の低エネルギーギャップ小分子材料は化5の構造を含む。
【0037】
【0038】
式中、o、m、n、p、x及びyは独立して、0~2から選択されるいずれか1つの整数である。Ar0、Ar1及びAr2は電子供与性基である。A0は置換基を有するか又は有さず、ヘテロ原子を含む三環構造であり、ヘテロ原子はS、N、Si及びSeのうち少なくとも1つを含む。ヘテロ原子を調整することにより、吸光特性及び溶解度を調整することができる。A1は置換基を有するか又は有さない電子求引性基であり、電子求引性基の構造にS、N、Si、Se、C=O、-CN及びSO2のうち少なくとも1つが含まれる。実際の応用において、化5の二重結合は置換基を有するか又は有さない二重結合でよく、これに制限されない。電子求引性基は電子求引力が水素より強い基又は原子であり、すなわち電子求引性の誘起効果を有し;電子供与性基は電子供与力が水素より強い基又は原子であり、すなわち電子供与性の誘起効果を有する。誘起効果は、分子中の原子又は基の極性(電気陰性度)が異なることにより、結合の電子雲が原子結合上である方向に移動する効果である。電子雲は電気陰性度が比較的強い基又は原子に移動する。
【0039】
具体的な実施例において、Ar0、Ar1及びAr2はヘテロ原子を含む複素環であり、該ヘテロ原子はS、N、Si及びSeのうち少なくとも1つを含む。
【0040】
具体的な実施例において、化5の構造中のAr0、複数のAr1及び複数のAr2は互いに同じでも異なっていてもよく、Ar0、各Ar1及び各Ar2は独立して以下の群から選択される1つである。
【0041】
【0042】
各構造中の複数のR0は互いに同じでも異なっていてもよく、各R0は独立して、C1-C30のアルキル基、C3-C30の分岐アルキル基、C1-C30のシラン基、C2-C30のエステル基、C1-C30のアルコキシ基、C1-C30のアルキルチオ基、C1-C30のハロゲン化アルキル基、C2-C30のアルケン、C2-C30のアルキン、シアノ基を含むC2-C30の炭素鎖、ニトロ基を含むC1-C30の炭素鎖、ヒドロキシ基を含むC1-C30の炭素鎖、ケトン基を含むC3-C30炭素鎖、ハロゲン、シアノ基、水素原子、1つ若しくは複数のR1置換基を有するか又は置換基を有さない芳香環、1つ若しくは複数のR1置換基を有するか又は置換基を有さない複素環、1つ若しくは複数のR1置換基を有するか又は置換基を有さない縮合環、1つ若しくは複数のR1置換基を有するか又は置換基を有さない縮合複素環からなる群から選択される1つである。上記複数のR1置換基は互いに同じでも異なっていてもよく、各R1置換基は独立して、C1-C30のアルキル基、C3-C30の分岐アルキル基、C1-C30のシラン基、C2-C30のエステル基、C1-C30のアルコキシ基、C1-C30のアルキルチオ基、C1-C30のハロゲン化アルキル基、C2-C30のアルケン、C2-C30のアルキン、シアノ基を含むC2-C30の炭素鎖、ニトロ基を含むC1-C30の炭素鎖、ヒドロキシ基を含むC1-C30の炭素鎖、ケトン基を含むC3-C30の炭素鎖、ハロゲン、シアノ基及び水素原子からなる群から選択される1つである。
【0043】
具体的な実施例において、化5の構造中の複数のA0は互いに同じでも異なっていてもよく、各A0は独立して以下の群から選択される1つである。
【0044】
【0045】
式中zは1~8のいずれか1つの整数である。Ar3及びAr4は独立して、1つ若しくは複数のR2置換基を有するか又は置換基を有さない芳香環、1つ若しくは複数のR2置換基を有するか又は置換基を有さない複素環、1つ若しくは複数のR2置換基を有するか又は置換基を有さない縮合環、1つ若しくは複数のR2置換基を有するか又は置換基を有さない縮合複素環からなる群から選択される1つである。Ar5は独立して、C1-C30のアルキル基、C3-C30の分岐アルキル基、C1-C30のシラン基、C2-C30のエステル基、C1-C30のアルコキシ基、C1-C30のアルキルチオ基、C1-C30のハロゲン化アルキル基、C2-C30のアルケン、C2-C30のアルキン、シアノ基を含むC2-C30の炭素鎖、ニトロ基を含むC1-C30の炭素鎖、ヒドロキシ基を含むC1-C30の炭素鎖、ケトン基を含むC3-C30の炭素鎖、ハロゲン、シアノ基、水素原子、1つ若しくは複数のR3置換基を有するか又は置換基を有さない芳香環、1つ若しくは複数のR3置換基を有するか又は置換基を有さない複素環、1つ若しくは複数のR3置換基を有するか又は置換基を有さない縮合環、1つ若しくは複数のR3置換基を有するか又は置換基を有さない縮合複素環からなる群から選択される1つである。各構造中の複数のR2及び複数のR3は互いに同じでも異なっていてもよく、各R2及び各R3は独立して、C1-C30のアルキル基、C3-C30の分岐アルキル基、C1-C30のシラン基、C2-C30のエステル基、C1-C30のアルコキシ基、C1-C30のアルキルチオ基、C1-C30のハロゲン化アルキル基、C2-C30のアルケン、C2-C30のアルキン、シアノ基を含むC2-C30の炭素鎖、ニトロ基を含むC1-C30の炭素鎖、ヒドロキシ基を含むC1-C30の炭素鎖、ケトン基を含むC3-C30の炭素鎖、ハロゲン、シアノ基及び水素原子からなる群から選択される1つである。
【0046】
具体的な実施例において、化5の構造中の複数のA1は互いに同じでも異なっていてもよく、各A1は独立して以下の群から選択される1つである。
【0047】
【0048】
複数のR4は互いに同じでも異なっていてもよく、各R4は独立して、C1-C30のアルキル基、C3-C30の分岐アルキル基、C1-C30のシラン基、C2-C30のエステル基、C1-C30のアルコキシ基、C1-C30のアルキルチオ基、C1-C30のハロゲン化アルキル基、C2-C30のアルケン、C2-C30のアルキン、シアノ基を含むC2-C30の炭素鎖、ニトロ基を含むC1-C30の炭素鎖、ヒドロキシ基を含むC1-C30の炭素鎖、ケトン基を含むC3-C30の炭素鎖、ハロゲン、シアノ基及び水素原子からなる群から選択される1つである。
【0049】
具体的な実施例において、本発明の低エネルギーギャップ小分子材料は以下の構造を含むことができる。
【0050】
【0051】
【0052】
【0053】
【0054】
【0055】
【0056】
【0057】
【0058】
【0059】
【0060】
【0061】
【0062】
【0063】
【0064】
【0065】
【0066】
【0067】
【0068】
【0069】
【0070】
【0071】
【0072】
【0073】
【0074】
【0075】
【0076】
【0077】
【0078】
上記実施例は、以下の条件、m=n、o=p、x=y;m≠n、o≠p、x≠yの3つのうち少なくとも1つ;Ar1=Ar2;Ar1≠Ar2のうち少なくとも1つを含む。このほか、実際の応用において、以下の条件、m+n+o+p≠0及びx+y≠0のうち少なくとも1つをさらに含む。上記の実施例は、当業者がより明確に本発明の構造組成を理解できるようにするために過ぎず、これにより制限されないことを理解する必要がある。
【0079】
図1を参照されたい。
図1は、本発明の有機光電子デバイス1の具体的な実施例における構造概要図を示す。
図1に示すように、別の実施例において、本発明は第1電極11、第2電極15及び活性層13を含む有機光電子デバイス1をさらに提供する。活性層13は第1電極11及び第2電極15の間に位置し、活性層13は前述の低エネルギーギャップ小分子材料を含む。本具体的な実施例において、有機光電子デバイス1は積層構造でよく、順に基板10、第1電極11(透明電極)、第1キャリア輸送層12、活性層13、第2キャリア輸送層14及び第2電極15を含む。実務では、有機光電子デバイス1は有機光起電デバイス、有機光検出デバイス、有機発光ダイオード及び有機薄膜トランジスタ(OTFT)を含むことができる。
【0080】
実際の応用において、本発明の有機光電子デバイス1の活性層13は、前記化5の低エネルギーギャップ小分子材料を含む。
【0081】
本発明の低エネルギーギャップ小分子材料をより明確に説明するため、4つの具体的な実施例Q1~Q4を用い、本発明の低エネルギーギャップ小分子材料を活性層のN型材料とし、さらに有機光電子デバイスを作製して実験を行う。
【0082】
活性層を調製する。
C3を合成する。
【0083】
【0084】
C1(10g、86.3mmol)を500mlの4つ口反応フラスコに入れる。撹拌下、無水のTHFを50ml添加して溶解し、15℃まで温度を下げる。34.5mLのn-BuLi(n-ブチルリチウム)をゆっくりと滴加し、その過程は約60分間であり、溶液は薄橙色を呈し、温度は17℃を超えない。室温まで戻し、1時間撹拌する。15℃下、C2(19.81g、5.62mmol)を滴加し、その過程は約2分間であり、溶液は薄黄色を呈して澄んでいる。室温に戻し、20時間撹拌する。5mLの水を添加して反応を止め、ロータリエバポレータで有機溶剤を除去した後、100mLのヘプタンを添加し、20mLの水で3回抽出する。有機層を採取して脱水し、ロータリエバポレータで有機溶剤を除去して粗生成物約20gを得る。減圧蒸留方式で出発物質及び不純物を除去する(0.25torr、80~100℃)。残渣(約10g)をシリカゲルカラムに通し、溶出液はヘプタン(約150mL)である。主要部分を収集し、有機溶剤を除去し、真空、50℃で乾燥させ、薄黄色の油状物C3を得る。収率:9.3g、51%。1H NMR(500MHz、CDCl3)δ7.09(d,J=6.5Hz,1H),6.85(d,J=6.5Hz,1H),2.72(d,J=7.0Hz,2H),1.68(m,1H),1.27(m,24H),0.88(m,6H)。
【0085】
C4を合成する。
【0086】
【0087】
C3(20g、58.31mmol)を250mLの3つ口反応フラスコに入れる。160mLのTHF(テトラヒドロフラン)を添加する。氷浴下(<10℃)、n-BuLi(23.32mL、58.31mmol)を添加する。氷浴下(<10℃)を保持し、1時間撹拌を続ける。他にCuBr(臭化銅(I))(8.36g、58.31mmol)及びLiBr(臭化リチウム)(5.06g、58.31mmol)を別の500mLの3つ口反応フラスコに入れ、氷浴下で160mLのTHFを添加する。2つのフラスコの反応混合物を氷浴下で1時間混合撹拌する。氷浴下で、塩化オキサリル(3.36g、2.27mL、26.5mmol)を添加し、室温まで戻して18時間撹拌する。100mLの水を添加して反応を止め、ロータリエバポレータで大方のTHFを除去し、200mLのヘプタンを添加し、100mLの水で3回抽出する。有機層を収集して脱水し、濃縮する。シリカゲルカラムで精製し、溶出液はHep/DCM(n-ヘプタン/ジクロロメタン)=4/1である。主要部分を収集し、濃縮して山吹色の油状液体C4を得る。収率:12g、61.2%。1H NMR(500MHz,CDCl3)δ7.88(s,2H),2.80(d,J=7.0Hz,4H),1.76(m,2H),1.29(m,48H),0.88(m,12H)。
【0088】
C7を合成する。
【0089】
【0090】
C5(2g、5.21mmol)を100mLの3つ口反応フラスコに入れる。60mLの氷酢酸を添加する。マグネットスターラーで激しく撹拌し、撹拌下で鉄粉(5.83g、104.4mmol)を添加する。80℃まで加熱し、16時間反応させる。室温まで低下させ、反応混合物を200mLの氷水に流し込んでろ過し、蒸留水で固体を洗浄してから水気を切る。200mLのTHFで粗生成物を溶解してろ過し、鉄粉を除去する。有機溶液を減圧濃縮してC6を得、さらに真空乾燥させる。C6の中間体を得、収率:1.35g、80%である。C4(2.7g、3.65mmol)及び40mLの氷酢酸を添加する。マグネットスターラーで激しく撹拌し、撹拌下で120℃まで加熱し、16時間反応させる。室温まで低下させ、反応混合物を50mLの氷水に流し込む。DCM(ジクロロメタン)で抽出し、50mLの蒸留水で有機層を3回洗浄する。有機層を無水硫酸マグネシウムで脱水し、減圧濃縮して粗生成物を得る。シリカゲルカラムで精製し、溶出液はHep/DCM(n-ヘプタン/ジクロロメタン)=4/1である。主要部分を収集し、濃縮して暗赤色の固体を得、真空乾燥してC7を得る。収率:2.4g、61.6%。1H NMR(500MHz,CDCl3)δ7.45(s,2H),2.83(d,J=7.0Hz,4H),1.83(m,2H),1.30(m,48H),0.89(m,12H)。
【0091】
C9を合成する。
【0092】
【0093】
C7(1g、0.97mmol)及びC8(1.05g、2.52mmol)を100mLの3つ口反応フラスコに入れ、30mLのTHFを添加する。アルゴンガス下で、15分間脱気する。Pd2(dba)3(トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0))(0.036g、0.039mmol)及びP(o-tolyl)3(トリス(2-メチルフェニル)ホスフィン)(0.048g、0.158mmol)を添加し、66℃まで加熱し、2時間撹拌する。温度が低下した後、セライト(珪藻土)でろ過し、ヘプタンで洗浄し、有機溶液はロータリエバポレータで除去する。シリカゲルカラムクロマトグラフィを行い、溶出液はDCM/Hep=1/9である。主要部分を収集し、濃縮して褐色の粘稠液体C9を得る。収率:1.23g、92.2%。1H NMR(500MHz,CDCl3)δ8.70(s,2H),7.40(s,2H),7.29(s,2H),2.83(d,J=7.0Hz,4H),2.76(t,J=7.0Hz,4H),1.76(m,6H),1.42(m,84H),0.85(m,18H)。
【0094】
C10を合成する。
【0095】
【0096】
C9(1.23g、0.90mmol)を100mLの3つ口反応フラスコに入れ、窒素ガス下、61.5mLのDCE(1,2-ジクロロエタン)を添加する。窒素ガス下で、POCl3(塩化ホスホリル)(0.503mL、5.38mmol)及びDMF(ジメチルホルムアミド)(3.47mL、4.5mmol)を混合し、室温下で10分間撹拌する。上記2種の混合物溶液を混合し、60℃まで撹拌加熱して15時間持続させる。100mLの水を添加して反応を止め、さらに200mLのDCMを添加する。有機層を100mLの水で3回抽出し、有機層を無水硫酸マグネシウムで脱水し、ろ過、濃縮する。シリカゲルカラムクロマトグラフィを行い、溶出液はDCM/Hep=5/5である。主要部分を収集し、濃縮して暗褐色の粘稠液体C10を得る。収率:1.17g、93.2%。1H NMR(500MHz,CDCl3)δ10.19(s,1H),8.80(s,1H),8.77(s,1H),7.47(s,1H),7.46(s,1H),7.37(s,1H),3.11(m,2H),2.80(m,6H),1.80(m,6H),1.30(m,84H),0.85(m,18H)。
【0097】
C11を合成する。
【0098】
【0099】
C10(1.17g、0.84mmol)を100mLの3つ口反応フラスコに入れ、窒素ガス下で、35mLのCFを添加する。氷浴下(<10℃)、NBS(N-ブロモスクシンイミド)(0.193g、1.08mmol)を添加する。室温下で18時間撹拌する。ロータリエバポレータで有機溶剤を除去する。シリカゲルカラムクロマトグラフィを行い、溶出液はDCM/Hep=5/5である。主要部分を収集し、濃縮して暗褐色の粘稠液体C11を得る。収率:1.22g、98.7%。1H NMR(500mHz,CDCl3)δ10.19(s,1H),8.79(s,1H),8.76(s,1H),7.46(s,1H),7.44(s,1H),3.10(m,2H),2.87(m,4H),2.76(m,2H),1.80(m,6H),1.30(m,84H),0.86(m,18H)。
【0100】
C13を合成する。
【0101】
【0102】
C11(0.18g、0.12mmol)及びC12(0.028g、0.06mmol)を100mLの3つ口反応フラスコに入れる。アルゴンガス下で、2mLのTHFを添加し、15分間脱気する。Pd2(dba)3(0.002g、0.0024mmol)及びP(o-tolyl)3(0.003g、0.0096mmol)を添加し、66℃まで加熱し、2時間撹拌する。温度が下がった後、セライトでろ過し、DCMで洗浄し、有機溶液をロータリエバポレータで除去する。100gのシリカゲルでカラムクロマトグラフィを行い、溶出液はDCM/Hep=5/5である。主要部分を収集し、濃縮して褐色の粘稠液体C13を得る。収率:0.14g、82.3%。1H NMR(500MHz,CDCl3)δ10.18(s,2H),8.90(s,2H),8.72(s,2H),7.59(s,2H),7.47(s,2H),7.44(s,2H),3.10(m,4H),2.87(m,8H),2.76(m,4H),1.80(m,12H),1.30(m,168H),0.84(m,36H)。
【0103】
Q1を合成する。
【0104】
【0105】
C13(0.14g、0.047mmol)及びC14(0.043g、0.188mmol)を100mLの3つ口反応フラスコに入れる。アルゴンガス下、2.8mLのCF(クロロホルム)を添加する。ピリジン(0.07mL、0.5V)を添加する。65℃まで撹拌加熱し、2時間持続させる。5mLのMeOH(メタノール)を添加して反応を止め、粗生成物を析出させてろ過する。粗生成物固体のシリカゲルカラムクロマトグラフィを行い、溶出液はCF/Hep=1/1である。主要部分を収集し、濃縮して黒色固体を得、アセトン及びMeOHを使用して超音波洗浄し、ろ過して黒色固体Q1を得る。収率:0.135g、84.2%。1H NMR(600MHz,TCE-d2,100℃)δ8.69(br,6H),8.60(s,2H),8.09(s,2H),7.78(s,2H),7.60(br,4H),2.95(br,12H),1.95(m,16H),1.40(m,168H),0.89(m,36H)。
【0106】
C16を合成する。
【0107】
【0108】
C15(0.356g、0.53mmol)を100mLの3つ口反応フラスコに入れ、7mLの無水THFを添加する。氷浴下(<10℃)で、n-BuLi(0.96mL、2.39mmol)を滴加した後、1時間撹拌する。2mLの無水THFに溶解したMe3SnCl(塩化トリメチルスズ)(0.53g、2.66mmol)を添加した後、室温まで戻す。2時間撹拌した後、10mLの水を添加して反応を止め、20mLのヘプタンを添加する。10mLの水で3回抽出する。有機層を収集し、脱水して濃縮し、黄橙色の油状液体C16を得る。収率:0.52g、97.4%。1H NMR(500MHz,CDCl3)δ7.00(s,2H),6.81(s,6H),2.46(t,J=7.5Hz,8H),1.50(br,8H),1.26(br,24H),0.86(m,12H),0.35(m,18H)。
【0109】
C17を合成する。
【0110】
【0111】
C11(0.98g、0.66mmol)及びC16(0.328g、0.33mmol)を100mLの3つ口反応フラスコに入れる。アルゴンガス下、30mLのTHFを添加し、15分間脱気する。Pd2(dba)3(0.012g、0.013mmol)及びP(o-tolyl)3(0.016g,0.052mmol)を添加し、66℃まで加熱し、6時間撹拌する。温度が下がった後、セライトでろ過し、DCMで洗浄し、有機溶液をロータリエバポレータで除去する。シリカゲルカラムクロマトグラフィを行い、溶出液はDCM/Hep=5/5である。シリカゲルカラムクロマトグラフィを行い、溶出液はトルエン/Hep=4/6である。主要部分を収集し、濃縮して褐色の粘稠液体を得る。収率:0.9g、78.4%。1H NMR(500MHz,CDCl3)δ10.19(s,2H),8.94(s,2H),8.80(s,2H),7.60(s,2H),7.48(s,2H),7.31(s,2H),6.97(s,4H),6.95(s,2H),3.10(m,4H),2.97(m,8H),2.83(m,4H),2.52(m,8H),1.95(m,16H),1.30(m,196H),0.80(m,48H)。
【0112】
Q2を合成する。
【0113】
【0114】
C17(0.9g、0.26mmol)及びC18(0.274g、1.04mmol)を100mLの3つ口反応フラスコに入れる。アルゴンガス下、18mLのCFを添加する。ピリジン(0.45mL、0.5V)を添加する。65℃まで撹拌加熱し、1.5時間持続させる。36mLのMeOHを添加して反応を止め、粗生成物を析出させてろ過する。EA(酢酸エチル)を2回及びアセトンを使用して超音波洗浄し、ろ過して黒色固体を得る。収率:0.91g、88.1%。1H NMR(600MHz,TCE-d2,100℃)δ9.10(br,6H),8.81(s,2H),8.08(s,2H),8.03(s,2H),7.63(s,2H),7.42(s,2H),7.04(s,4H),6.96(s,2H),3.14(m,4H),2.87(m,8H),2.59(m,8H),1.90(m,20H),1.30(m,196H),0.85(m,48H)。
【0115】
C20を合成する。
【0116】
【0117】
C11(0.5g、0.49mmol)及びC19(0.121g、0.32mmol)を100mLの3つ口反応フラスコに入れ、25mLのTHFを添加する。アルゴンガス下、15分間脱気する。Pd2(dba)3(0.006g、0.007mmol)及びP(o-tolyl)3(0.008g、0.026mmol)を添加し、66℃まで加熱し、2時間撹拌する。温度が下がった後、セライトでろ過し、ヘプタンで洗浄し、有機溶液をロータリエバポレータで除去する。中間体の主要部分を収集し、褐色の粘稠液体を得、真空乾燥させて0.21gを得る。窒素ガス下で、10.5mLのDCEを添加する。窒素ガス下で、POCl3(0.114mL、1.22mmol)及びDMF(0.79mL、10.2mmol)を混合する。上記2種の混合物溶液を混合し、60℃まで撹拌加熱して48時間持続させる。10mLの水を添加して反応を止め、さらに20mLのDCMを添加する。有機層を10mLの水で3回抽出し、有機層を採取して、無水硫酸マグネシウムで脱水し、ろ過、濃縮する。シリカゲルカラムクロマトグラフィを行い、溶出液はDCM/Hep=1/1である。主要部分を収集し、濃縮して暗褐色の粘稠液体C20を得る。収率:0.14g、40.8%。1H NMR(500MHz,CDCl3)δ10.08(s,1H),8.94(d,J=4.0Hz,1H),7.92(d,J=4.0Hz,1H),7.48(s,1H),7.47(s,1H),2.88(d,J=7.0Hz,2H),2.85(d,J=7.0Hz,2H),1.83(m,2H),1.29(m,48H),0.84(m,12H)。
【0118】
C21を合成する。
【0119】
【0120】
C20(0.14g、0.132mmol)及びC16(0.07g、0.066mmol)を100mLの3つ口反応フラスコに入れる。アルゴンガス下、4.2mLのTHFを添加し、15分間脱気する。Pd2(dba)3(0.003g、0.003mmol)及びP(o-tolyl)3(0.004g、0.012mmol)を添加し、66℃まで加熱し、2時間撹拌する。温度が下がった後、セライトでろ過し、DCMで洗浄し、有機溶液をロータリエバポレータで除去する。シリカゲルカラムクロマトグラフィを行い、溶出液はDCM/Hep=1/1である。主要部分を収集し、濃縮して褐色の粘稠液体C21を得る。収率:0.145g、79.4%。1H NMR(500MHz,CDCl3)δ10.07(s,2H),9.28(s,2H),8.99(d,J=4.0Hz,2H),7.96(d,J=4.0Hz,2H),7.51(s,2H),7.45(s,2H),7.16(s,4H),7.16(s,2H),2.94(m,4H),2.78(m,4H),2.50(m,8H),1.81(m,4H),1.30(m,16H),0.85(m,124H),0.73(m,24H)。
【0121】
Q3を合成する。
【0122】
【0123】
C21(0.145g、0.055mmol)及びC18(0.058g、0.22mmol)を100mLの3つ口反応フラスコに入れる。アルゴンガス下、2.9mLのCFを添加する。ピリジン(0.072mL、0.5V)を添加する。65℃まで撹拌加熱し、1.5時間持続させる。10mLのMeOHを添加して反応を止め、粗生成物を析出させてろ過する。粗生成物固体のシリカゲルカラムクロマトグラフィを行い、溶出液はCF/Hep=8/2である。主要部分を収集し、濃縮して黒色固体を得、EAを使用して超音波洗浄し、ろ過して黒色固体Q3を得る。収率:0.154g、89.5%。1H NMR(600MHz,TCE-d2,100℃)δ9.36(s,2H),9.23(s,2H),8.93(s,2H),8.78(s,2H),8.35(s,2H),8.07(s,2H),7.91(s,2H),7.63(s,2H),7.24(br,4H),6.97(s,2H),2.95(m,4H),2.85(s,4H),2.59(br,8H),1.91(m,4H),1.40(m,140H),0.91(m,24H)。
【0124】
C23を合成する。
【0125】
【0126】
C22(1g、2,23mmol)及びC8(2.4g、5.79mmol)を100mLの3つ口反応フラスコに入れ、45mLのTHFを添加する。アルゴンガス下、15分間脱気する。Pd2(dba)3(0.082g、0.089mmol)及びP(o-tolyl)3(0.108g、0.355mmol)を添加し、66℃まで加熱し、2時間撹拌する。温度が下がった後、セライトでろ過し、ヘプタンで洗浄し、有機溶液をロータリエバポレータで除去する。シリカゲルカラムクロマトグラフィを行い、溶出液はDCM/Hep=1/4である。主要部分を収集し、濃縮して青色固体C23を得る。収率:1.64g、93.2%。1H NMR(500MHz,CDCl3)δ8.69(s,2H),7.23(s,2H),4.91(d,J=6.0Hz,2H),2.76(m,4H),1.74(m,5H),1.36(m,44H),1.07(m,3H),0.87(m,9H)。
【0127】
C24を合成する。
【0128】
【0129】
C23(0.2g、0.25mmol)を100mLの3つ口反応フラスコに入れ、窒素ガス下で、10mLのDCEを添加する。窒素ガス下で、POCl3(0.0234mL、0.25mmol)及びDMF(0.155mL、2mmol)を混合し、室温下で10分間撹拌する。<10℃において、上記2種の混合物溶液を混合し、1時間撹拌を続ける。20mLの水を添加して反応を止め、さらに40mLのDCMを添加する。有機層を20mLの水で3回抽出し、有機層を採取して無水硫酸マグネシウムで脱水し、ろ過、濃縮する。シリカゲルカラムクロマトグラフィを行い、溶出液はDCM/Hep=1/1である。主要部分を収集し、濃縮して青色の粘稠液体を得る。収率:0.14g、67.6%。1H NMR(500MHz,CDCl3)δ10.16(s,1H),8.77(s,2H),7.31(s,1H),4.94(d,J=6.5Hz,2H),3.10(s,2H),2.78(s,2H),1.77(m,5H),1.40(m,44H),1.11(m,3H),0.91(m,9H)。
【0130】
C25を合成する。
【0131】
【0132】
C24(0.14g、0.17mmol)を100mLの3つ口反応フラスコに入れ、窒素ガス下で、7mLのTHFを添加する。氷浴下(<10℃)で、NBS(0.030g、0.17mmol)を添加する。室温下で18時間撹拌する。ロータリエバポレータで有機溶剤を除去する。シリカゲルカラムクロマトグラフィを行い、溶出液はDCM/Hep=1/1である。主要部分を収集し、濃縮して暗青色の固体C25を得る。収率:0.15g、99.1%。1H NMR(500MHz,CDCl3)δ10.16(s,1H),8.77(s,1H),8.63(s,1H),4.93(d,J=6.5Hz,2H),3.09(s,2H),2.72(s,2H),1.77(m,5H),1.40(m,44H),1.07(m,3H),0.88(m,9H)。
【0133】
C26を合成する。
【0134】
【0135】
C25(0.15g、0.167mmol)及びC16(0.083g、0.084mmol)を100mLの3つ口反応フラスコに入れる。アルゴンガス下で、30mLのTHFを添加し、15分間脱気する。Pd2(dba)3(0.0031g、0.0033mmol)及びP(o-tolyl)3(0.0041g、0.0134mmol)を添加し、66℃まで加熱し、17時間撹拌する。温度が下がった後、セライトでろ過し、DCMで洗浄し、有機溶液をロータリエバポレータで除去する。シリカゲルカラムクロマトグラフィを行い、溶出液はEA:Hep=1:9である。主要部分を収集し、濃縮して黒色固体C26を得る。収率:0.14g、75.5%。1H NMR(500MHz,CDCl3)δ10.16(s,2H),8.80(s,2H),8.75(s,2H),7.30(s,2H),6.95(s,4H),6.92(s,2H),4.94(m,4H),3.09(m,4H),2.94(m,4H),2.53(m,8H),2.02(m,2H),1.85(m,8H),1.28(m,120H),1.10(m,6H),0.85(m,30H)。
【0136】
Q4を合成する。
【0137】
【0138】
C26(0.9g、0.26mmol)及びC14(0.274g、1.04mmol)を100mLの3つ口反応フラスコに入れる。アルゴンガス下で、18mLのCFを添加する。ピリジン(0.45mL、0.5V)を添加する。65℃まで撹拌加熱し、1.5時間持続させる。36mLのMeOHを添加して反応を止め、粗生成物を析出させてろ過する。EAを2回及びアセトンを使用して超音波洗浄し、ろ過して黒色固体を得る。収率:0.91g、88.1%。1H NMR(600MHz,TCE-d2,100℃)δ9.06(s,2H),8.95(m,4H),8.56(m,2H),7.76(s,2H),7.41(s,2H),7.04(s,4H),6.98(s,2H),5.05(m,4H),3.15(br,4H),3.02(br,4H),2.64(m,8H),2.46(m,2H),1.93(m,8H),1.40(m,120H),1.19(m,6H),0.91(m,30H)。
【0139】
低エネルギーギャップ小分子材料Q1、Q2、Q3及びQ4の特性試験:
図2から
図4及び表1を参照されたい。
図2は、本発明の低エネルギーギャップ小分子材料の具体的な実施例Q1~Q4をクロロホルムに溶解した溶液におけるUV-Vis-NIR吸収スペクトルを示し、
図3は、本発明の低エネルギーギャップ小分子材料の具体的な実施例Q1~Q4の薄膜におけるUV-Vis-NIR吸収スペクトルを示し、
図4は、本発明の低エネルギーギャップ小分子材料の具体的な実施例Q1~Q4におけるエネルギー準位位置の概要図を示し、表1は
図2から
図4のデータ結果を示している。
【0140】
【0141】
図2、
図3及び表1から、本発明で設計した低エネルギーギャップ小分子材料が効果的に吸収ピークを1000nm以降まで延伸し、さらにQ1を除いて、Q2~Q4の最大吸収の吸収係数が10万を超えることを理解することができる。実施例Q1~Q4の薄膜試験の吸収範囲(
図3の通り)は、分子間の積み重ねにより吸収ピークが赤方偏移する。Q2を例とすると、Q2薄膜の最大吸収ピークは約200nm赤方偏移し、有機光検出器の材料のEQEが1600nmまで応答可能であることを予測することができる。
図4を合わせて参照されたい。実施例Q1~Q4はサイクリックボルタンメトリーを利用して酸化特性を測定し、計算(HOMO=-|4.71+E
ox-E
ferroncene|eV)により、最高被占軌道(Highest Occupied Molecular Orbital、HOMO)を得、さらに材料の薄膜状態におけるUV-Vis-NIR吸収スペクトルの吸収開始位置(λ
film
onset)により、材料の光学エネルギーギャップ(E
g=1241/λ
film
onseteV)及び最低空軌道(Lowest Unoccupied Molecular Orbital、LUMO、LUMO=HOMO+E
geV)がわかる。本発明の実施例のエネルギーギャップはいずれも0.9eVより小さく、吸収応答の位置は1000nm以上に達する。
【0142】
環境に優しい溶剤を使用してコーティングすることができるかどうかを確認するために、表1中の溶解度の測定は、サンプル8mgを1mLのo-キシレン(o-xylene)に完全に溶解することができるかどうかを基準とする。「〇」は完全に溶解したことを表し、「X」は溶解が不完全であることを表す。表1から、本発明の低エネルギーギャップ小分子材料の実施例Q1~Q4は、いずれもo-キシレン(o-xylene)に完全に溶解することができることを理解することができ、この証明により本発明の低エネルギーギャップ小分子材料はo-キシレン(o-xylene)を利用してコーティングすることができる。本分野において、非ハロゲン溶剤のグリーンソルベントを使用することが、業界の傾向である。グリーンソルベントは、一般的に再生可能資源、或いは土壌生物又はその他の物質に分解されることができ、半減期が短く、容易に低毒、無毒に壊変する物質由来である。従って、容易に塩素化される、又は毒性が比較的高い一般的な溶剤と比較して、グリーンソルベントは通常生物に対して安全で、環境に対する損害が比較的小さい。グリーンソルベントは、環境に優しい溶剤とも呼ばれる。o-キシレン(o-xylene)は、非ハロゲンのグリーンソルベントに属する。
【0143】
有機光電子デバイスの作製及び試験:
~15Ω/sqのシート抵抗を有し、プリパターン化し、酸化インジウムスズ(indium tin oxide、ITO)コーティングしたガラスを基板として使用する。順番通りに石鹸を含む脱イオン水、脱イオン水、アセトン及びイソプロパノール中で超音波振動処理し、各工程で15分間洗浄する。UV-ozoneクリーナを使用して、洗浄した基材を30分間さらに処理する。AZO(Aluminum-doped zinc oxide)溶液のトップコートを、3000rpmの速度でITO基板に40秒間コーティングし、その後、空気中、120℃下で5分間焼き付ける。o-キシレン中で活性層溶液を調製する。活性層は前記有機半導体材料を含む。活性層を完全に溶解させるため、活性層溶液はホットプレート上、100℃下で少なくとも1時間撹拌する必要がある。その後、活性層を室温に戻してスピンコーティングを行う。最後に、コーティングが完了した活性層が形成する薄膜を100℃下で5分間熱アニーリングし、その後真空蒸着コーティング装置に送る。3×10-6Torrの真空度下、MoO3の薄層(8nm)を蒸着させてアノード中間層とし、その後100nmの厚さの銀を蒸着させて上電極とする。グローブボックス内でエポキシ樹脂を使用してすべての電池を封止し、有機電子デバイス(ITO/ETL/活性層/MoO3/Ag)を作製する。
【0144】
図5を参照されたい。
図5は、本発明の有機光電子デバイスの具体的な実施例P1、P2、Q2、Q3における材料エネルギー準位の概要図を示している。有機光電子デバイスの作製において、P1又はP2をP型高分子材料とし、本発明の低エネルギーギャップ小分子材料Q2、Q3と組み合わせて使用する。P1及びP2の構造は以下の通りである。
【0145】
【0146】
図5に示すように、有機光電子デバイスの試験で使用するのは、P2をQ2と組み合わせ、P1をQ3と組み合わせたものでよい。Q2のエネルギー準位を組み合わせたP型高分子材料P2であるため、P2及びQ2はHOMO及びLUMOのエネルギー準位差により十分な駆動力を有し、励起子に対して電子正孔対を解離させることができる。P1及びQ3もこれを組み合わせの原則とする。
【0147】
P2:Q2の有機光電子デバイスの作製において、P2:Q2=1:1であり、濃度は14mg/mLでo-キシレン(o-xylene)中で調製する。P1:Q3の有機光電子デバイスの作製において、P1:Q3=1:1であり、濃度は10mg/mLでo-キシレン(o-xylene)中で調製する。上記の活性層の厚さは約100nmであり、有機光電子デバイスの構造はそれぞれglass/ITO/AZO/P2:Q2/MoO3/Ag及びglass/ITO/AZO/P1:Q3/MoO3/Agである。
【0148】
有機光電子デバイスの性能分析:
本発明の有機光電子デバイスの性能分析は、主に外部量子効率(EQE)及び暗電流(Jd)に対して分析を行う。
【0149】
一般的に、量子効率(QE)が指すのは外部量子効率(EQE)である。量子効率/スペクトル応答は、有機光電子デバイスの異なる波長に対する光電変換効率に応答し、すなわち照光するとき、効果的に光子を電子に変換する能力を指す。有機光電子デバイスの変換効率の優劣は、それ自体の材料、製造工程、構造などの要因の影響を受け、異なる波長は異なる変換効率を有する。有機光検出器の応用において、外部量子効率(EQE)が大きいほど、有機光検出器を表している信号は良好である。
【0150】
暗電流(dark current)(Jd)は、ダークカレントとも称し、光照射がない状態で、光電子デバイス中を流れる電流を指す。暗電流の試験において、有機光電子デバイスが照光していない状況でバイアス電圧が付加される。有機光検出器の応用において、生成される電流が大きいほど、有機光検出器のノイズは大きくなる。
【0151】
図6及び
図7を参照されたい。
図6は、本発明の有機光電子デバイスの具体的な実施例P2:Q2におけるEQE試験の結果を示している。
図7は、本発明の有機光電子デバイスの具体的な実施例P2:Q2における暗電流試験の結果を示している。
図6に示すように、P2:Q2で作製した有機光電子デバイスのEQE応答について、1050nmは-2Vのバイアス電圧下で3.7%に達することができ、-10Vのバイアス電圧下で12.0%に達する。1350nmは-2Vのバイアス電圧下で2.3%に達することができ、-10Vのバイアス電圧下で7.9%に達する。
図7に示すように、本発明の有機光電子デバイスの具体的な実施例P2:Q2における暗電流は、-1Vから-2.5Vでいずれも10
-4A/cm
2レベルを示す。
【0152】
図8及び
図9を参照されたい。
図8は、本発明の有機光電子デバイスの具体的な実施例P1:Q3におけるEQE試験の結果を示している。
図9は、本発明の有機光電子デバイスの具体的な実施例P1:Q3における暗電流試験の結果を示している。
図8に示すように、P1:Q3で調製した有機光電子デバイスのEQE応答について、1050nmは-5Vバイアス電圧下で2.4%に達することができ、-20Vバイアス電圧下で40.4%に達する。1350nmは-5Vバイアス電圧下で2.1%に達することができ、-20Vバイアス電圧下でさらに37.5%に達することができる。このことから、P1:Q3で調製した有機光電子デバイスは、バイアス電圧の増加に伴って、EQEも増加する現象を有することがわかる。この現象は、P1:Q3で調製した有機光電子デバイスが、光電子が倍増する効果を有することを表す。
図9に示すように、暗電流は-1Vで10
-7A/cm
2レベルを示し、-2Vから-2.5Vはいずれも10
-6A/cm
2レベルを示す。
【0153】
【0154】
表2を参照されたい。現在、文献で報告されている1050nmにおけるEQE応答の性能と比較すると、1350nmにおいて、P2:Q2で調製した有機光電子デバイスのEQE応答は12.0%に達することができ、暗電流は10-5A/cm2レベルである。P1:Q3で調製した有機光電子デバイスのEQE応答は、光電子が倍増する効果を有し、40.4%に達することができ、暗電流は10-6A/cm2レベルである。このことから、既存技術と比較して、本発明の有機光電子デバイスの具体的な実施例P2:Q2及びP1:Q3は、EQE及び暗電流が良好な性能を有することがわかる。さらに、本発明の有機光電子デバイスは、-10V及び-20Vの状況でもEQE応答があり、これは本発明の有機光電子デバイスが広い範囲の電圧耐性を有することを表す。このほか、既存技術と比較して、本発明が開発した低エネルギーギャップ小分子材料は非ハロゲン溶剤に良好な溶解度を有し、さらに非ハロゲン溶剤(環境に優しい溶剤)を使用してコーティング工程を行うことができる。
【0155】
【0156】
表3を参照されたい。現在、文献で報告されている1350nmにおけるEQE応答の性能と比較すると、1350nmにおいて、P2:Q2で調製した有機光電子デバイスのEQE応答は7.9%に達することができ、暗電流は10-5A/cm2レベルである。P1:Q3で調製した有機光電子デバイスのEQE応答は、光電子が倍増する効果を有し、37%に達することができ、暗電流は10-6A/cm2レベルである。このことから、既存技術と比較して、本発明の有機光電子デバイスの具体的な実施例P2:Q2及びP1:Q3はEQE及び暗電流が良好な性能を有することがわかる。さらに、本発明の有機光電子デバイスは、-10V及び-20Vの状況でもEQE応答があり、これは本発明の有機光電子デバイスが広い範囲の電圧耐性を有することを表す。このほか、既存技術と比較して、本発明が開発した低エネルギーギャップ小分子材料は、非ハロゲン溶剤に良好な溶解度を有し、さらに非ハロゲン溶剤(環境に優しい溶剤)を使用してコーティング工程を行うことができる。
【0157】
上記実験結果をまとめると、本発明の低エネルギーギャップ小分子材料は、非ハロゲン溶剤(環境に優しい溶剤)に溶解することができる以外に、光に対する吸収範囲も1000nm以上に達することができる。このほか、この低エネルギーギャップ小分子材料で調製した有機光電子デバイスは、1050nm及び1350nm下で、良好なEQE及び暗電流の性能を有する。
【0158】
上記明細書中の置換基は明確に説明したものでない場合、該置換基は独立して、C1-C30のアルキル基、C3-C30の分岐アルキル基、C1-C30のシラン基、C2-C30のエステル基、C1-C30のアルコキシ基、C1-C30のアルキルチオ基、C1-C30のハロゲン化アルキル基、C2-C30のアルケン、C2-C30のアルキン、シアノ基を含むC2-C30の炭素鎖、ニトロ基を含むC1-C30の炭素鎖、ヒドロキシ基を含むC1-C30の炭素鎖、ケトン基を含むC3-C30の炭素鎖、ハロゲン、シアノ基及び水素原子からなる群から選択される1つであることを指摘する必要がある。
【0159】
以上の具体的な実施例の詳述により、より明確に本発明の特徴及び主旨を記載したが、上記の開示した具体的な実施例は、本発明の範疇を制限しない。反対に、その目的は、各種変更及び同等性を有する措置が、本発明が出願しようとする特許請求の範囲の範疇に包含されることである。
【符号の説明】
【0160】
1 有機光電子デバイス
10 基板
11 第1電極
12 第1キャリア輸送層
13 活性層
14 第2キャリア輸送層
15 第2電極