(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】リサイクルされたアルミニウム合金ホイール断片と合金化補充物とを含む製品、その製造方法、及びシステム
(51)【国際特許分類】
C22B 21/00 20060101AFI20240305BHJP
C22B 1/00 20060101ALI20240305BHJP
C22B 7/00 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
C22B21/00
C22B1/00 601
C22B7/00 A
(21)【出願番号】P 2022507317
(86)(22)【出願日】2020-07-31
(86)【国際出願番号】 CA2020051052
(87)【国際公開番号】W WO2021022364
(87)【国際公開日】2021-02-11
【審査請求日】2022-09-21
(32)【優先日】2019-08-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506081725
【氏名又は名称】ハウス オブ メタルズ カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】HOUSE OF METALS COMPANY LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100140671
【氏名又は名称】大矢 正代
(72)【発明者】
【氏名】ビトン,ダニエル
【審査官】藤長 千香子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0173636(US,A1)
【文献】特開2011-006756(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103173622(CN,A)
【文献】特表2007-504936(JP,A)
【文献】特表2019-503850(JP,A)
【文献】特開2001-107150(JP,A)
【文献】米国特許第05405578(US,A)
【文献】国際公開第2018/125199(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22B 21/00
C22B 7/00
C22B 1/00
C22C 1/02
B09B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム合金ホイールをリサイクルする方法であって、
アルミニウム合金ホイールからなる供給物を供給することと、
前記アルミニウム合金ホイールを複数の断片に断片化することと、
前記複数の断片をショットブラストに供し、前記複数の断片から表面不純物を除去して複数のショットブラスト片とすることと、
前記複数のショットブラスト片
の総質量の測定値である一つの推定質量を決定することと、
前記複数のショットブラスト片の総質量の一部について測定された複数の元素それぞれの元素濃度の測定値である組成測定値に基づいて推定された、前記複数のショットブラスト片
の全体について
の一つの総合組成の推定値、すなわち、複数の元素それぞれについての元素濃度の推定値である元素濃度推定値の複数で構成される総合組成の推定値、を決定することと、
前記総合組成の推定値に少なくとも部分的に基づいて、
複数の元素それぞれの元素濃度の範囲が既知のアルミニウム合金であるターゲット合金の複数の中から、一つの被選択ターゲット合金、すなわち、複数の元素それぞれについての元素濃度の範囲である元素濃度範囲の複数を有している被選択ターゲット合金、を選択することと、
複数の元素のそれぞれについて、その元素についての前記元素濃度推定値と、前記被選択ターゲット合金におけるその元素についての前記元素濃度範囲との間のずれであって、少なくとも一種類の元素についての前記元素濃度推定値と、前記被選択ターゲット合金におけるその元素についての前記元素濃度範囲との間のゼロではないずれを決定することによって、ずれ推定値を決定することと、
前記ずれ推定値と前記複数のショットブラスト片についての前記推定質量に基づいて、前記総合組成の推定値を一つの調整済み組成推定値に変化させるために前記複数のショットブラスト片に含有させるための一つの合金化補充物であって、補充物質量及び補充物組成を有している合金化補充物を、複数の元素のそれぞれについて、前記調整済み組成推定値におけるその元素についての元素濃度推定値が、前記被選択ターゲット合金におけるその元素についての前記元素濃度範囲内となるように決定することと、
前記被選択ターゲット合金製の部品を製造する際の使用のために、i)アルミニウム合金ホイールからなる供給物以外の供給源に由来する前記合金化補充物と、ii)前記複数のショットブラスト片と、を供給することと、
を備える方法。
【請求項2】
前記被選択ターゲット合金を選択すること、及び前記ずれ推定値を決定することは、前記総合組成の推定値と複数のターゲット合金それぞれの組成との比較を行うことを含み、
この比較を行うことは、複数の元素それぞれについての元素濃度の範囲である元素濃度範囲の複数を有している前記ターゲット合金の複数のそれぞれについて、前記ずれ推定値を決定することを含んでおり、
前記被選択ターゲット合金を選択することは、更に前記比較に基づいて行われる、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記比較を行うことは、複数の前記ターゲット合金のそれぞれについて、そのターゲット合金に特有な合金固有ずれ推定値の決定を行うことを含み、
この決定を行うことは、前記複数の元素それぞれについて、その元素についての元素濃度推定値と、そのターゲット合金におけるその元素についての元素濃度範囲との間のずれを決定することと、
複数の前記ターゲット合金それぞれについて、少なくとも一種類の元素についての前記元素濃度推定値と、そのターゲット合金におけるその元素についての元素濃度範囲との間の、ゼロではないずれを決定することとを含み、
前記ずれ推定値は、前記被選択ターゲット合金についての前記合金固有ずれ推定値である、
請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記複数の元素のうち少なくとも幾種類かの元素のそれぞれについて、その元素の質量が調合質量のプラス・マイナス1%以内の精度で調合可能であるように、その元素についての調合可能な量を維持することによって、前記合金化補充物の供給源を維持することを更に備える、
請求項2または請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記複数の元素のうち少なくとも幾種類かの元素は、ケイ素、鉄、マグネシウム、マンガン、チタン、ストロンチウム、亜鉛、銅、クロム、ニッケル、及びスズのうちの少なくとも一種類を含む、
請求項4に記載の方法。
【請求項6】
ケイ素、鉄、マグネシウム、マンガン、チタン、ストロンチウム、亜鉛、銅、クロム、ニッケル、及びスズのうちの少なくとも一種類からなる最小調合単位を供給することと、
前記最小調合単位と前記複数のショットブラスト片の前記推定質量とを共に制御して、前記複数のショットブラスト片の前記推定質量の所定値に対し、前記ターゲット合金のために調合される元素の最小組成値から、前記ターゲット合金のために調合されるその元素の最大組成値まで、調合される元素の組成を増加させるために必要な量より、前記最小調合単位を小さくすることと、を更に備える
請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記合金化補充物の供給源を維持することは、前記合金化補充物中に含有させるためのアルミニウム供給物を維持することを含む、
請求項2または請求項3に記載の方法。
【請求項8】
前記調整済み組成推定値または前記被選択ターゲット合金の表示が、前記合金化補充物及び前記複数のショットブラスト片と共に提供される、
請求項3に記載の方法。
【請求項9】
i)前記合金化補充物と、ii)前記複数のショットブラスト片と、iii)前記被選択ターゲット合金についての前記調整済み組成推定値の表示と、を提供することは、出荷時の汚染を妨げるために、前記合金化補充物と前記ショットブラスト片とを出荷用の容器の中に密閉することと、前記調整済み組成推定値の表示、及び/又は、前記被選択ターゲット合金の表示を、前記容器に表示することと、を含む、
請求項8に記載の方法。
【請求項10】
複数の前記ターゲット合金のそれぞれについて、そのターゲット合金についての前記元素濃度範囲の複数を、コンピュータプロセッサと電子的に通信している電子的に読み出し可能な非一時的メモリに記憶させること、を更に含み、
前記複数のショットブラスト片について前記総合組成の推定値を決定することは、前記コンピュータプロセッサを動作させて、前記複数のショットブラスト片の材料の組成測定値の複数から前記総合組成の推定値を決定することを含み、
前記総合組成の推定値と複数の前記ターゲット合金のそれぞれとの比較を行うことは、前記コンピュータプロセッサを動作させて、前記総合組成の推定値と、前記電子的に読み出し可能な非一時的メモリから得られたそのターゲット合金についての前記元素濃度範囲の複数とに基づいて、前記比較を行うことを含み、
前記ずれ推定値を決定することは、前記コンピュータプロセッサを動作させて、前記比較に基づいて前記ずれ推定値を決定することであって、前記複数の元素それぞれについて、その元素についての前記元素濃度推定値と、被選択ターゲット合金におけるその元素についての前記元素濃度範囲との間のずれを決定することを含み、
前記補充物質量及び前記補充物組成を有する前記合金化補充物を決定することは、前記コンピュータプロセッサを動作させて、前記補充物質量及び前記補充物組成を決定することを含む、
請求項3に記載の方法。
【請求項11】
前記電子的に読み出し可能な非一時的メモリを動作させて、
複数の前記ターゲット合金のそれぞれについて、そのターゲット合金の単位質量当たりの
経済的価値を含む
経済的価
値情報と、
前記複数の元素のうちの少なくとも幾種類かの元素について、前記合金化補充物に含まれているその元素の単位質量当たりの価格を含む価格情報と、を記憶させることを更に備え、
複数の前記ターゲット合金から前記被選択ターゲット合金を選択することは、前記コンピュータプロセッサを動作させて、前記ずれ推定値と、前記電子的に読み出し可能な非一時的メモリから得た前記
経済的価値情報及び
前記価格情報とに少なくとも部分的に基づいて、前記被選択ターゲット合金を選択することを含む、
請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記複数のショットブラスト片について総合組成の推定値を決定することは、前記複数のショットブラスト片の材料について組成測定値の複数を決定することを含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項13】
アルミニウム合金製品を提供するためのシステムであって、
複数のアルミニウム合金ホイールからなる供給物を供給するためのアルミニウム合金ホイール移送機構と、
前記複数のアルミニウム合金ホイールを複数の断片に断片化し、次に前記複数の断片を清浄化して複数の清浄化された断片とするためのアルミニウム合金ホイール処理装置と、
複数のターゲット合金のそれぞれについて、複数の元素それぞれの元素濃度の範囲である元素濃度範囲の複数を記憶させるための電子的に読み出し可能な非一時的メモリと、
前記複数の清浄化された断片の
総質量の一部について
元素組成を測定して、複数の
元素それぞれの元素濃度の測定値である組成測定値を決定するための組成分析装置と、
前記複数の清浄化された断片の質量を決定するための質量計測器と、
前記電子的に読み出し可能な非一時的メモリ、前記質量計測器、及び前記組成分析装置と電子的に通信しているコンピュータプロセッサであって、動作時には、
前記組成分析装置か
ら複数の
元素についての前記組成測定値を受け取り、前記複数の清浄化された断片
の全体についての総合組成の推定値、すなわち、前記複数の元素それぞれについての元素濃度の推定値である元素濃度推定値の複数で構成される総合組成の推定値を決定し、
前記総合組成の推定値に少なくとも部分的に基づいて、
複数の元素それぞれの元素濃度の範囲が既知のアルミニウム合金であるターゲット合金の複数の中から、被選択ターゲット合金、すなわち、前記複数の元素それぞれの元素濃度の範囲である元素濃度範囲の複数を有している前記被選択ターゲット合金を選択し、
前記複数の元素のそれぞれについて、その元素の元素濃度推定値と前記被選択ターゲット合金におけるその元素の元素濃度範囲との間のずれであって、少なくとも一種類の元素についての元素濃度推定値と前記被選択ターゲット合金におけるその元素についての元素濃度範囲との間のゼロではないずれ、を決定することによってずれ推定値を決定し、
前記ずれ推定値と前記複数の
清浄化された断片の
総質量の測定値である推定質量とに基づいて、前記総合組成の推定値を一つの調整済み組成推定値に変化させるために、前記複数の
清浄化された断片に含有させるための一つの合金化補充物であって補充物質量及び補充物組成を有する合金化補充物を、複数の元素のそれぞれについて、前記調整済み組成推定値におけるその元素についての元素濃度推定値が、前記被選択ターゲット合金におけるその元素についての前記元素濃度範囲内となるように決定するためのコンピュータプロセッサと、
を含むシステム。
【請求項14】
前記コンピュータプロセッサは、動作時に、前記総合組成の推定値と複数の前記ターゲット合金それぞれとの比較を更に行い、複数の前記ターゲット合金のそれぞれが、前記複数の元素それぞれについての元素濃度の範囲である元素濃度範囲の複数を有しており、前記被選択ターゲット合金の選択は、更に前記比較に基づいて行われる
請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
複数の前記ターゲット合金のそれぞれについて前記比較を行うことは、前記複数の元素のそれぞれについて、そのターゲット合金に特有な合金固有ずれ推定値の決定を行うこと、すなわち、前記複数の元素それぞれについて、その元素についての元素濃度推定値と、そのターゲット合金におけるその元素についての元素濃度範囲との間のずれを決定することであって、少なくとも一種類の元素についての前記元素濃度推定値と、そのターゲット合金におけるその元素についての前記元素濃度範囲との間の、ゼロではないずれを決定すること含み、
前記ずれ推定値は、前記被選択ターゲット合金についての前記合金固有ずれ推定値である、
請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
前記電子的に読み出し可能な非一時的メモリが、
複数の前記ターゲット合金のそれぞれについて、そのターゲット合金の単位質量当たりの
経済的価値を含む
経済的価値情報と、
前記複数の元素のうちの少なくとも幾種類かの元素について、前記合金化補充物に含まれているその元素の単位質量当たりの価格を含む価格情報と、を記憶し、
前記コンピュータプロセッサは、動作時に、前記ずれ推定値と、前記電子的に読み出し可能な非一時的メモリから得た前記
経済的価値情報及び前記価格情報とに少なくとも部分的に基づいて、前記被選択ターゲット合金を選択する、
請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記被選択ターゲット合金と、前記合金化補充物の前記補充物質量及び前記補充物組成とを、ユーザまたはオペレータに知らせるためのユーザインタフェースであって、前記コンピュータプロセッサと電子的に通信しているユーザインタフェースを更に備える、
請求項13に記載のシステム。
【請求項18】
密閉された容器であって、前記容器の外部に由来して前記容器の内部が汚染することを妨げるための容器と、
前記容器の内部にあるアルミニウム合金ホイール由来の複数のショットブラスト片と、
前記容器の内部にある合金化補充物であって、アルミニウム合金ホイールに由来するものは一片も含んでいない合金化補充物と、を含む製品
であり、
前記合金化補充物は、前記複数のショットブラスト片に対して補充されることにより、前記合金化補充物と前記複数のショットブラスト片とから得られる合金における複数の元素それぞれの濃度を、ターゲット合金におけるその元素についての元素濃度の範囲内とするためのものである
製品。
【請求項19】
前記合金化補充物の質量は、アルミニウムホイール由来の前記複数のショットブラスト片の質量の5%未満である、
請求項18に記載の製品。
【請求項20】
前記合金化補充物の質量は、アルミニウムホイール由来の前記複数のショットブラスト片の質量の1%未満である、
請求項18に記載の製品。
【請求項21】
前記合金化補充物の質量の少なくとも50%は、ケイ素、鉄、マグネシウム、マンガン、チタン、及び/又はストロンチウムで構成されている、
請求項19または請求項20に記載の製品。
【請求項22】
前記合金化補充物の質量の少なくとも80%は、ケイ素、鉄、マグネシウム、マンガン、チタン、及び/又はストロンチウムで構成される、
請求項21に記載の製品。
【請求項23】
ショットブラスト片と合金化補充物との組み合わせ物の組成推定値が、密閉された前記容器に表示されていることを更に備える、
請求項18に記載の製品。
【請求項24】
前記合金化補充物は
、複数の元素のうちの少なくとも二種類の元素が一緒に混合され溶融された合金インゴットを含む、
請求項18に記載の製品。
【請求項25】
合金化補充物を供給する方法であって、
アルミニウム合金ホイール由来の複数のショットブラスト片についての
総質量の測定値である一つの
推定質
量を受け取ることと、
前記複数のショットブラスト片の総質量の一部について測定された複数の元素それぞれの元素濃度の測定値に基づいて推定された、前記複数のショットブラスト片
の全体についての総合組成の推定値、すなわち、複数の元素のそれぞれの元素濃度の推定値である元素濃度推定値の複数で構成される総合組成の推定値を受け取ることと、
前記総合組成の推定値と、
複数の元素それぞれの元素濃度の範囲が既知のアルミニウム合金であるターゲット合金の複数の中から選択された、前記複数の元素のそれぞれの元素濃度の範囲である元素濃度範囲の複数を有する被選択ターゲット合金と、に少なくとも部分的に基づいて、前記複数の元素のそれぞれについて、その元素についての元素濃度推定値と前記被選択ターゲット合金におけるその元素の元素濃度範囲との間のずれであって、少なくとも一種類の元素についての前記元素濃度推定値と、前記被選択ターゲット合金におけるその元素についての前記元素濃度範囲との間のゼロではないずれ、を決定することによって、ずれ推定値を決定することと、
前記ずれ推定値と前記複数のショットブラスト片の前記推定質量とに基づいて、前記総合組成の推定値を一つの調整済み組成推定値に変化させるために、前記複数のショットブラスト片に含有させるための一つの合金化補充物であって、補充物質量及び補充物組成を有している合金化補充物を、複数の元素のそれぞれについて、前記調整済み組成推定値におけるその元素についての前記元素濃度推定値が、前記被選択ターゲット合金におけるその元素についての前記元素濃度範囲内となるように決定することと、
前記被選択ターゲット合金製である部品を製造するために、前記複数のショットブラスト片と組み合わせて使用するために前記合金化補充物を供給することと、
を備える方法。
【請求項26】
前記合金化補充物は、第三パーティのファウンドリに提供され、
前記合金化補充物の供給源とは異なる供給源から前記第三パーティが受け取る前記複数のショットブラスト片と、前記合金化補充物を関連付けるための表示を、前記合金化補充物と共に提供すること、を更に備える
請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記総合組成の推定値に少なくとも部分的に基づいて、前記複数の元素のそれぞれの元素濃度の範囲である元素濃度範囲の複数を有している被選択ターゲット合金を選択すること、を更に備える
請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記被選択ターゲット合金を選択すること、及び前記ずれ推定値を決定することは、前記総合組成の推定値と複数のターゲット合金それぞれの組成との比較を行うことを含み、
この比較を行うことは、複数の元素それぞれについての元素濃度の範囲である元素濃度範囲の複数を有している前記ターゲット合金の複数のそれぞれについて、前記ずれ推定値を決定することを含んでおり、
前記被選択ターゲット合金を選択することは、更に前記比較に基づいて行われる、
請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記合金化補充物は、ケイ素、鉄、マグネシウム、マンガン、チタン、ストロンチウム、亜鉛、銅、クロム、ニッケル、及びスズのうちの少なくとも二種類を含む、
請求項25に記載の方法。
【請求項30】
前記合金化補充物を供給することは、前記複数の元素のうちの少なくとも二種類の元素を溶融し混合して、少なくとも一種類の合金インゴットとすること含む、
請求項25に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、参照によって内容が全体として本明細書に組み込まれる、共に係属中の2019年8月7日出願の米国特許出願公開第62/883,742号、及び2019年12月10日出願の米国特許出願公開第62/946,119号の優先権を主張するものであり、これらの出願の内容全体が参照として本明細書に組み込まれる。
【0002】
ここに記載される実施形態は、リサイクルの分野、特に、廃棄金属をリサイクルし、リサイクルプロセスの際に廃棄金属に合金を補充する分野に関する。
【背景技術】
【0003】
近年の廃棄物管理において、新しい材料または製品を形成するために、そのままでは廃棄材料となるものをリサイクルすることは重要である。多くの異なる材料、例えばガラス、紙、段ボール、金属、プラスチック、タイヤ、繊維、バッテリー、及び電子機器がリサイクルされ得る。廃棄材料をリサイクルするための典型的な方法は、ピッキング、分別、洗浄、及び加工処理を含む。
【0004】
金属は、リサイクルにとって特に価値がある。他の材料と異なり金属は、それらの供給源である金属と実質的に同様な品質の製品にリサイクルされ得る。
【0005】
元素組成の僅かな差異が、材料特性を大きく異ならせる結果となり得る。特定の高価値合金は、きわめて特異的な元素組成を有する。リサイクルのために供給される金属は、元素組成が所望の高価値合金からずれている場合がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本概要は、出願人の教示のさまざまな態様を読者に紹介することを目的としているが、いかなる特定の実施形態に限定しようとするものではない。概して、ここで開示しているのは、廃棄金属をリサイクルする一つ以上の方法である。
【0007】
第一の態様において、本発明のいくつかの実施形態は、アルミニウム合金ホイールをリサイクルする方法を提供する。この方法は、アルミニウム合金ホイールからなる供給物を供給することと、前記アルミニウム合金ホイールを複数の断片に断片化することと、前記複数の断片をショットブラストに供し、前記複数の断片から表面不純物を除去して複数のショットブラスト片とすることと、前記複数のショットブラスト片について一つの推定質量を決定することと、前記複数のショットブラスト片について一つの総合組成の推定値、すなわち、複数の元素それぞれについての元素濃度の推定値である元素濃度推定値の複数で構成される総合組成の推定値、を決定することと、前記総合組成の推定値に少なくとも部分的に基づいて、一つの被選択ターゲット合金、すなわち、複数の元素それぞれについての元素濃度の範囲である元素濃度範囲の複数を有している被選択ターゲット合金、を選択することと、複数の元素のそれぞれについて、その元素についての前記元素濃度推定値と、前記被選択ターゲット合金におけるその元素についての前記元素濃度範囲との間のずれであって、少なくとも一種類の元素についての前記元素濃度推定値と、前記被選択ターゲット合金におけるその元素についての前記元素濃度範囲との間のゼロではないずれを決定することによって、ずれ推定値を決定することと、前記ずれ推定値と前記複数のショットブラスト片についての前記推定質量に基づいて、前記総合組成の推定値を一つの調整済み組成推定値に変化させるために前記複数のショットブラスト片に含有させるための一つの合金化補充物であって、補充物質量及び補充物組成を有している合金化補充物を、複数の元素のそれぞれについて、前記調整済み組成推定値におけるその元素についての元素濃度推定値が、前記被選択ターゲット合金におけるその元素についての前記元素濃度範囲内となるように決定することと、前記被選択ターゲット合金製の部品を製造する際の使用のために、i)アルミニウム合金ホイールからなる供給物以外の供給源に由来する前記合金化補充物と、ii)前記複数のショットブラスト片と、を供給することと、を備える。
【0008】
本発明のいくつかの実施形態のいくつかの態様によれば、前記被選択ターゲット合金を選択すること、及び前記ずれ推定値を決定することは、前記総合組成の推定値と複数のターゲット合金それぞれの組成との比較を行うことを含み、この比較を行うことは、複数の元素それぞれについての元素濃度の範囲である元素濃度範囲の複数を有している前記ターゲット合金の複数のそれぞれについて、前記ずれ推定値を決定することを含んでおり、前記被選択ターゲット合金を選択することは、更に前記比較に基づいて行われる。
【0009】
本発明のいくつかの実施形態のいくつかの態様によれば、前記比較を行うことは、複数の前記ターゲット合金のそれぞれについて、そのターゲット合金に特有な合金固有ずれ推定値の決定を行うことを含み、この決定を行うことは、前記複数の元素それぞれについて、その元素についての元素濃度推定値と、そのターゲット合金におけるその元素についての元素濃度範囲との間のずれを決定することと、複数の前記ターゲット合金それぞれについて、少なくとも一種類の元素についての前記元素濃度推定値と、そのターゲット合金におけるその元素についての元素濃度範囲との間の、ゼロではないずれを決定することとを含み、前記ずれ推定値は、前記被選択ターゲット合金についての前記合金固有ずれ推定値である。
【0010】
本発明のいくつかの実施形態のいくつかの態様によれば、本方法は、前記複数の元素のうち少なくとも幾種類かの元素のそれぞれについて、その元素の質量が調合質量のプラス・マイナス1%以内の精度で調合可能であるように、その元素についての調合可能な量を維持することによって、前記合金化補充物の供給源を維持することを更に備える。
【0011】
本発明のいくつかの実施形態のいくつかの態様によれば、前記複数の元素のうち少なくとも幾種類かの元素は、ケイ素、鉄、マグネシウム、マンガン、チタン、ストロンチウム、亜鉛、銅、クロム、ニッケル、及びスズのうちの少なくとも一種類を含む。
【0012】
本発明のいくつかの実施形態のいくつかの態様によれば、本方法は、ケイ素、鉄、マグネシウム、マンガン、チタン、ストロンチウム、亜鉛、銅、クロム、ニッケル、及びスズのうちの少なくとも一種類からなる最小調合単位を供給することと、前記最小調合単位と前記複数のショットブラスト片の前記推定質量とを共に制御して、前記複数のショットブラスト片の前記推定質量の所定値に対し、前記ターゲット合金のために調合される元素の最小組成値から、前記ターゲット合金のために調合されるその元素の最大組成値まで、調合される元素の組成を増加させるために必要な量より、前記最小調合単位を小さくすることと、を更に備える。
【0013】
本発明のいくつかの実施形態のいくつかの態様によれば、前記合金化補充物の供給源を維持することは、前記合金化補充物中に含有させるためのアルミニウム供給物を維持することを含む。
【0014】
本発明のいくつかの実施形態のいくつかの態様によれば、前記調整済み組成推定値または前記被選択ターゲット合金の表示が、前記合金化補充物及び前記複数のショットブラスト片と共に提供される。
【0015】
本発明のいくつかの実施形態のいくつかの態様によれば、i)前記合金化補充物と、ii)前記複数のショットブラスト片と、iii)前記被選択ターゲット合金についての前記調整済み組成推定値の表示と、を提供することは、出荷時の汚染を妨げるために、前記合金化補充物と前記ショットブラスト片とを出荷用の容器の中に密閉することと、前記調整済み組成推定値の表示、及び/又は、前記被選択ターゲット合金の表示を、前記容器に表示することと、を含む。
【0016】
本発明のいくつかの実施形態のいくつかの態様によれば、本方法は、複数の前記ターゲット合金のそれぞれについて、そのターゲット合金についての前記元素濃度範囲の複数を、コンピュータプロセッサと電子的に通信している電子的に読み出し可能な非一時的メモリに記憶させること、を更に含み、前記複数のショットブラスト片について前記総合組成の推定値を決定することは、前記コンピュータプロセッサを動作させて、前記複数のショットブラスト片の材料の組成測定値の複数から前記総合組成の推定値を決定することを含み、前記総合組成の推定値と複数の前記ターゲット合金のそれぞれとの比較を行うことは、前記コンピュータプロセッサを動作させて、前記総合組成の推定値と、前記電子的に読み出し可能な非一時的メモリから得られたそのターゲット合金についての前記元素濃度範囲の複数とに基づいて、前記比較を行うことを含み、前記ずれ推定値を決定することは、前記コンピュータプロセッサを動作させて、前記比較に基づいて前記ずれ推定値を決定することであって、前記複数の元素それぞれについて、その元素についての前記元素濃度推定値と、被選択ターゲット合金におけるその元素についての前記元素濃度範囲との間のずれを決定することを含み、前記補充物質量及び前記補充物組成を有する前記合金化補充物を決定することは、前記コンピュータプロセッサを動作させて、前記補充物質量及び前記補充物組成を決定することを含む。
【0017】
本発明のいくつかの実施形態のいくつかの態様によれば、本方法は、前記電子的に読み出し可能な非一時的メモリを動作させて、複数の前記ターゲット合金のそれぞれについて、そのターゲット合金の単位質量当たりの値を含む価情報と、前記複数の元素のうちの少なくとも幾種類かの元素について、前記合金化補充物に含まれているその元素の単位質量当たりの価格を含む価格情報と、を記憶させることを更に備え、複数の前記ターゲット合金から前記被選択ターゲット合金を選択することは、前記コンピュータプロセッサを動作させて、前記ずれ推定値と、前記電子的に読み出し可能な非一時的メモリから得た前記値情報及び価格情報とに少なくとも部分的に基づいて、前記被選択ターゲット合金を選択することを含む。
【0018】
本発明のいくつかの実施形態のいくつかの態様によれば、前記複数のショットブラスト片について総合組成の推定値を決定することは、前記複数のショットブラスト片の材料について組成測定値の複数を決定することを含む。
【0019】
本発明のいくつかの実施形態によれば、アルミニウム合金製品を供給するためのシステムが提供される。本システムは、複数のアルミニウム合金ホイールからなる供給物を供給するためのアルミニウム合金ホイール移送機構と、前記複数のアルミニウム合金ホイールを複数の断片に断片化し、次に前記複数の断片を清浄化して複数の清浄化された断片とするためのアルミニウム合金ホイール処理装置と、複数のターゲット合金のそれぞれについて、複数の元素それぞれの元素濃度の範囲である元素濃度範囲の複数を記憶させるための電子的に読み出し可能な非一時的メモリと、前記複数の清浄化された断片の少なくともいくつかについて組成を測定して、複数の組成測定値を決定するための組成分析装置と、前記複数の清浄化された断片の質量を決定するための質量計測器と、前記電子的に読み出し可能な非一時的メモリ、前記質量計測器、及び前記組成分析装置と電子的に通信しているコンピュータプロセッサであって、動作時には、前記組成分析装置から前記複数の組成測定値を受け取り、前記複数の清浄化された断片についての総合組成の推定値、すなわち、前記複数の元素それぞれについての元素濃度の推定値である元素濃度推定値の複数で構成される総合組成の推定値を決定し、前記総合組成の推定値に少なくとも部分的に基づいて、被選択ターゲット合金、すなわち、前記複数の元素それぞれの元素濃度の範囲である元素濃度範囲の複数を有している前記被選択ターゲット合金を選択し、前記複数の元素のそれぞれについて、その元素の元素濃度推定値と前記被選択ターゲット合金におけるその元素の元素濃度範囲との間のずれであって、少なくとも一種類の元素についての元素濃度推定値と前記被選択ターゲット合金におけるその元素についての元素濃度範囲との間のゼロではないずれ、を決定することによってずれ推定値を決定し、前記ずれ推定値と前記複数のショットブラスト片の前記推定質量とに基づいて、前記総合組成の推定値を一つの調整済み組成推定値に変化させるために、前記複数のショットブラスト片に含有させるための一つの合金化補充物であって補充物質量及び補充物組成を有する合金化補充物を、複数の元素のそれぞれについて、前記調整済み組成推定値におけるその元素についての元素濃度推定値が、前記被選択ターゲット合金におけるその元素についての前記元素濃度範囲内となるように決定するためのコンピュータプロセッサと、を含む。
【0020】
アルミニウム合金製品を提供するためのシステムのいくつかの変形例において、前記コンピュータプロセッサは、動作時に、前記総合組成の推定値と複数の前記ターゲット合金それぞれとの比較を更に行い、複数の前記ターゲット合金のそれぞれが、前記複数の元素それぞれについての元素濃度の範囲である元素濃度範囲の複数を有しており、前記被選択ターゲット合金の選択は、更に前記比較に基づいて行われる。
【0021】
アルミニウム合金製品を提供するためのシステムのいくつかの変形例において、複数の前記ターゲット合金のそれぞれについて前記比較を行うことは、前記複数の元素のそれぞれについて、そのターゲット合金に特有な合金固有ずれ推定値の決定を行うこと、すなわち、前記複数の元素それぞれについて、その元素についての元素濃度推定値と、そのターゲット合金におけるその元素についての元素濃度範囲との間のずれを決定することであって、少なくとも一種類の元素についての前記元素濃度推定値と、そのターゲット合金におけるその元素についての前記元素濃度範囲との間の、ゼロではないずれを決定すること含み、前記ずれ推定値は、前記被選択ターゲット合金についての前記合金固有ずれ推定値である。
【0022】
アルミニウム合金製品を提供するためのシステムのいくつかの変形例において、前記電子的に読み出し可能な非一時的メモリが、複数の前記ターゲット合金のそれぞれについて、そのターゲット合金の単位質量当たりの値を含む値情報と、前記複数の元素のうちの少なくとも幾種類かの元素について、前記合金化補充物に含まれているその元素の単位質量当たりの価格を含む価格情報と、を記憶し、前記コンピュータプロセッサは、動作時に、前記ずれ推定値と、前記電子的に読み出し可能な非一時的メモリから得た前記値情報及び前記価格情報とに少なくとも部分的に基づいて、前記被選択ターゲット合金を選択する。
【0023】
アルミニウム合金製品を提供するためのシステムのいくつかの変形例において、前記被選択ターゲット合金と、前記合金化補充物の前記補充物質量及び前記補充物組成とを、ユーザまたはオペレータに知らせるためのユーザインタフェースであって、前記コンピュータプロセッサと電子的に通信しているユーザインタフェースを更に備える。
【0024】
本発明のいくつかの実施形態のいくつかの態様によれば、製品が提供される。本製品は、密閉された容器であって、前記容器の外部に由来して前記容器の内部が汚染することを妨げるための容器と、前記容器の内部にあるアルミニウム合金ホイール由来の複数のショットブラスト片と、前記容器の内部にある合金化補充物であって、アルミニウム合金ホイールに由来するものは一片も含んでいない合金化補充物と、を含む。
【0025】
本発明のいくつかの実施形態のいくつかの態様によれば、前記合金化補充物の質量は、アルミニウムホイール由来の前記複数のショットブラスト片の質量の5%未満である。
【0026】
本発明のいくつかの実施形態のいくつかの態様によれば、前記合金化補充物の質量は、アルミニウムホイール由来の前記複数のショットブラスト片の質量の1%未満である。
【0027】
本発明のいくつかの実施形態のいくつかの態様によれば、前記合金化補充物の質量の少なくとも50%は、ケイ素、鉄、マグネシウム、マンガン、チタン、及び/又はストロンチウムで構成されている。
【0028】
本発明のいくつかの実施形態のいくつかの態様によれば、前記合金化補充物の質量の少なくとも80%は、ケイ素、鉄、マグネシウム、マンガン、チタン、及び/又はストロンチウムで構成されている。
【0029】
本発明のいくつかの実施形態のいくつかの態様によれば、本製品は、ショットブラスト片と合金化補充物との組み合わせ物の組成推定値が、密閉された前記容器に表示されていることを更に備える。
【0030】
本発明のいくつかの実施形態のいくつかの態様によれば、前記合金化補充物は、前記複数の元素のうちの少なくとも二種類の元素が一緒に混合され溶融された合金インゴットを含む。
【0031】
本発明のいくつかの実施形態のいくつかの態様によれば、合金化補充物を供給する方法が提供される。本方法は、アルミニウム合金ホイール由来の複数のショットブラスト片についての質量の測定値である一つの質量推定値を受け取ることと、前記複数のショットブラスト片についての総合組成の推定値、すなわち、複数の元素のそれぞれの元素濃度の推定値である元素濃度推定値の複数で構成される総合組成の推定値を受け取ることと、前記総合組成の推定値と、前記複数の元素のそれぞれの元素濃度の範囲である元素濃度範囲の複数を有する被選択ターゲット合金と、に少なくとも部分的に基づいて、前記複数の元素のそれぞれについて、その元素についての元素濃度推定値と前記被選択ターゲット合金におけるその元素の元素濃度範囲との間のずれであって、少なくとも一種類の元素についての前記元素濃度推定値と、前記被選択ターゲット合金におけるその元素についての前記元素濃度範囲との間のゼロではないずれ、を決定することによって、ずれ推定値を決定することと、前記ずれ推定値と前記複数のショットブラスト片の前記推定質量とに基づいて、前記総合組成の推定値を一つの調整済み組成推定値に変化させるために、前記複数のショットブラスト片に含有させるための一つの合金化補充物であって、補充物質量及び補充物組成を有している合金化補充物を、複数の元素のそれぞれについて、前記調整済み組成推定値におけるその元素についての前記元素濃度推定値が、前記被選択ターゲット合金におけるその元素についての前記元素濃度範囲内となるように決定することと、前記被選択ターゲット合金製である部品を製造するために、前記複数のショットブラスト片と組み合わせて使用するために前記合金化補充物を供給することと、を備える。
【0032】
本発明のいくつかの実施形態のいくつかの態様によれば、前記合金化補充物は、第三パーティのファウンドリに提供され、前記合金化補充物の供給源とは異なる供給源から前記第三パーティが受け取る前記複数のショットブラスト片と、前記合金化補充物を関連付けるための表示を、前記合金化補充物と共に提供すること、を更に備える。
【0033】
本発明のいくつかの実施形態のいくつかの態様によれば、本方法は、前記総合組成の推定値に少なくとも部分的に基づいて、前記複数の元素のそれぞれの元素濃度の範囲である元素濃度範囲の複数を有している被選択ターゲット合金を選択すること、を更に備える。
【0034】
本発明のいくつかの実施形態のいくつかの態様によれば、前記被選択ターゲット合金を選択すること、及び前記ずれ推定値を決定することは、前記総合組成の推定値と複数のターゲット合金それぞれの組成との比較を行うことを含み、この比較を行うことは、複数の元素それぞれについての元素濃度の範囲である元素濃度範囲の複数を有している前記ターゲット合金の複数のそれぞれについて、前記ずれ推定値を決定することを含んでおり、前記被選択ターゲット合金を選択することは、更に前記比較に基づいて行われる。
【0035】
本発明のいくつかの実施形態のいくつかの態様によれば、前記合金化補充物は、ケイ素、鉄、マグネシウム、マンガン、チタン、ストロンチウム、亜鉛、銅、クロム、ニッケル、及びスズのうちの少なくとも二種類を含む。
【0036】
本発明のいくつかの実施形態のいくつかの態様によれば、前記合金化補充物を供給することは、前記複数の元素のうちの少なくとも二種類の元素を溶融し混合して、少なくとも一種類の合金インゴットとすること含む。
【0037】
本発明のこれらの利点及びその他の利点は、本発明の実施形態および態様についての以下の詳細な説明とともに以下の図面を参照してより十分にかつより完全に理解される。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】廃棄金属片をリサイクルする方法をフローチャートで例示する。
【0039】
【
図2】アルミニウム合金ホイールをリサイクルする方法をフローチャートで例示する。
【0040】
【
図3】フローチャートにおいて追加の任意選択のステップを有する、
図2のアルミニウム合金ホイールをリサイクルする方法を、選択的に追加し得るステップと共にフローチャートで例示する。
【0041】
【
図4】アルミニウム合金ホイールをリサイクルするためのシステムを例示するブロック図である。
【0042】
【
図5】アルミニウムホイールをリサイクル方法によって製造された製品を例示するブロック図である。
【0043】
【
図6】合金化補充物を供給する方法をフローチャートで例示する。
【発明を実施するための形態】
【0044】
本明細書に記載される例示的な実施形態の十分な理解を提供するために、多数の特定の詳細が記載されることは言うまでもない。しかし、本明細書に記載される実施形態がこれらの特定の詳細なしで実施され得ることは、当業者によって理解される。他の例では、本明細書に記載される実施形態を不明瞭にしないように、周知の方法、手順及び構成要素は詳細に記載していない。更に、ここでの記載及び図面は、いかなる意味でも本明細書に記載された実施形態の範囲を限定するものとみなされるべきではなく、単に本明細書に記載されたさまざまな実施形態の実施を説明しているとみなされるべきである。
【0045】
最初に、廃棄金属片をリサイクルするための方法100を、
図1に示す。この方法100は、廃棄金属片からなる供給物の供給102で開始される。ステップ102において供給される廃棄金属片は、特定の合金製である。例えば、廃棄金属片からなる供給物は、アルミニウム合金で構成された廃棄金属片からなる供給物のことがある。他の例において、廃棄金属片からなる供給物は、ビスマス合金、真鍮合金、コバルト合金、銅合金、ガリウム合金、金合金、インジウム合金、鉄合金、鉛合金、マグネシウム合金、水銀合金、ニッケル合金、カリウム合金、銀合金、鋼合金、スズ合金、チタン合金、亜鉛合金、ジルコニウム合金等のいずれか一つの種類で構成された廃棄金属片からなる供給物であり得る。
【0046】
方法100のいくつかの例では、供給物中の廃棄金属片のそれぞれは同一の合金製であるが、その組成は、供給物中の他の廃棄金属片のうちの少なくとも一つの組成と異なることがある。いくつかの例では、一つの廃棄金属片は、供給物中に存在する二つの異なる組成のうちの一方の組成であり得る。他の例では、ある廃棄金属片は、廃棄金属供給物中に存在する任意の数の異なる組成のうちの一つの組成を有することがある。廃棄金属片のバッチは、異なる廃棄金属片の異なる組成、及び、それらの廃棄金属片の相対質量に基づいて、総合組成(aggregate composition)またはバッチ組成を有する。例えば、全ての廃棄金属片が溶融され混合されて均一な集合体または混合物が提供された場合、この総合組成(バッチ組成)は、その均一な混合物の組成である。廃棄金属片からなる供給物のこのバッチ組成は、廃棄金属片が最初に供給される時点では不明であることがある。
【0047】
廃棄金属からなるこの供給物は、全てがリサイクルされる同じ種類の部品に由来することがある。例えば、アルミニウム合金356.2のような特定の合金製のアルミニウム合金ホイールの供給物である。全てのホイールが特定の合金タイプ製であったにも関わらず、それでも組成が僅かに異なることがある。材料特性は、組成が僅かに変動するだけで顕著に異なることがある。ある特定の元素組成を有する合金が、僅かに異なる元素組成を有する合金より著しく望ましい材料特性を示す結果となることがある。これらの材料特性は、機械的強度特性、化学的抵抗特性、腐食抵抗特性、及びその他の特性を含むことがある。例えば、ある特定の元素組成が、引張りにおいてはっきりと大きな機械的降伏強度を示す結果となることがある。
【0048】
ステップ104において、廃棄金属片は複数の断片に断片化される。いくつかの例では、断片化装置に廃棄金属片を通過させることによって、断片を生じさせることができる。断片化装置は、破砕機とすることができる。当分野において公知である適当な破砕機は、何れも使用可能である。例えば、廃棄金属片は、SSIシリーズ45Hシュレッダーのような従来の破砕機のホッパーに供給することができる。この破砕機は、米国、97070-9286、オレゴン州ウィルソンビル(Wilsonville)、SWフリーマン(Freeman)ドライブ、9760のSSIシュレッディングシステムズ社(Shredding Systems Inc.)から入手可能である。この破砕機は、相反する方向である水平方向に回転する平行なシャフト上に装着することができるカッターを収容するカッターボックスを備えている。供給物用のホッパーは、カッターボックスの上に配置することができる。供給物用のホッパー中に置かれたリムは、重力により、カッターとかみ合う適切な位置まで下方に向かって送られ、引き裂かれるか寸断される。
【0049】
ステップ106において、断片はショットブラストに供される。ステップ102において供給された廃棄金属片には、塗料、金属電気めっき、セラミックコーティング、またはプラスチックコーティングのような複数のコーティングが施されていることがある。同様に、廃棄金属片の外表面は、腐食や環境汚染物(不純物)によって特徴付けられていることがある。断片化プロセス104の後に、それまで廃棄金属片の外表面であった断片の表面は、依然としてコーティングされていたり、腐食していたり、そうでなければ汚染されていることがある。断片化プロセス104によって新たに生じた露出表面は、コーティングを有していないことが多い。
【0050】
廃棄金属片、または廃棄金属片から得た断片がリサイクル用に供給されるとき、リサイクルプロセスは、断片を溶融してバルク体または一塊の金属(塊状金属)とすることを含んでもよい。塊状金属の組成は、供給された廃棄金属片の外表面に存在するあらゆるコーティングまたは表面不純物中に存在する元素を含み、基材である合金の組成とは相違している。材料特性は元素組成に鋭敏に影響を受けるため、これは好ましくない。外表面のコーティング、腐食物、及び表面不純物を除去し、不純物、コーティングまたは腐食物のない剥き出しの金属表面を残すことが望ましい。
【0051】
ショットブラストプロセス106では、研磨粒子を高速で断片に投射する。研磨材は、断片の表面に衝突する。これらの衝突で、断片の表面に堆積していたコーティング、腐食物、不純物、及びクズ片を取り除くことができ、コーティング、腐食物、環境汚染物、及びクズ片がほとんどない剥き出しの金属表面を有する断片を生じさせる結果となる。
【0052】
ショットブラストは、適宜のショットブラスト装置によって行うことができる。例えば、モデル(FB-4/28/E/MR)フレックスベル(Flexbel)システムのような遠心ブラスト装置を使用することができる。この装置は、カナダ、L7L 5V5、オンタリオ州バーリングトン(Burlington)、1219コーポレートドライブ(Corporate Drive)のBCPホイーラブレータ(Wheelabrator)から入手可能であり、小さな部品をブラスト清浄するのに適している。研磨材は、鋼ショット、アルミナ、シリカ、及び他の研摩材料を、任意のサイズで含むものとすることができる。好ましくは、(1/2)インチ以上のS330鋼ショットを用いることができ、これは同じくBCPホイーラブレータから入手可能である。
【0053】
ステップ106では、単一の断片が複数のショットブラスト片(ショットブラストされた片)に分断されるように、研磨材を十分に高いエネルギーで断片に衝突させる。いくつかの例において、断片は、実質的に同じ質量をもつショットブラスト片に分断されることがある。例えば、ショットブラストプロセスの際に、単一の断片がショットブラスト片の二つに分断されることがある。これらの二つの片はそれぞれ、元の断片の質量のほぼ半分の質量である。他の例において、単一の断片が、一方の片は元の断片と実質的に同じ質量であり、他方の片は著しく小さな質量であるような二つの片に分断されることがある。他の例において、単一の断片が、種々の質量を有する複数のショットブラスト片に分断されることがある。いくつかの実施形態において、ステップ106では、ステップ104において得られた複数の断片の何れかよりも、はるかに小さなショットブラスト片が得られる。
【0054】
ステップ106において、いくつかの断片は研磨材によって衝撃を受けてもそのままのことがある。例えば、ショットブラストプロセスの際に、単一の断片が研磨材によって衝撃を受け、単一のショットブラスト片だけが生じることがある。結果として得られたショットブラスト片は、元の断片と実質的に同じ質量である。質量に差異があるとすれば、ショットブラスト操作時に除去された可能性があるもので、基材としての金属材料の比較的薄い層がなくなったことに加えて、ショットブラスト操作の前に断片の表面に存在していた何らかの表面コーティング、腐食物、不純物、及びクズ片の除去によるものと考えられる。
【0055】
ショットブラストプロセス106の後に、研磨材粒子と、ショットブラストプロセスの際に生じたクズ片とを除去するために、追加のステップを行うことができる。これらのステップは、ショットブラスト片から研磨材粒子及びクズ片を除去するために、空気、水、鉱油のような加圧流体で洗浄するか、またはすすぐこと、或いは、ショットブラストされた部品をスクリーン、メッシュまたは格子の上で篩分するか、または振動させること、或いは、ショットが鋼などの適当な材料で製作されているとき、ショットブラスト片からショットを除去するために磁石を用いること、を含むものとすることができる。
【0056】
ステップ108では、複数のショットブラスト片について一つの推定質量が決定される。いくつかの例では、複数のショットブラスト片の質量は、個々に測定されることがある。個々のショットブラスト片それぞれの質量は合計され、結果として複数のショットブラスト片の総質量とされる。他の例において、ショットブラスト片のバルクバッチが全体として測定され、一回の操作で複数のショットブラスト片の総質量が決定される。物体の質量を測定する方法として、当分野において公知の方法を何れも使用することができ、これらの方法には、機械バネばかり、機械天秤ばかり、水力学的はかり、歪みゲージ型電子ばかり、またはロードセル型電子ばかりを使用する方法が含まれるが、これに限定されるものではない。
【0057】
ステップ110では、複数のショットブラスト片についての総合組成の推定値が決定される。上記の推定質量は、複数のショットブラスト片についての総合組成を推定するために使用される。複数のサンプルの組成測定値から総合組成の推定値を決定するために、統計学的な方法を使用することができる。より小さなサンプル母集合からより大きな母集合の属性を推定する統計学的な方法として、当分野において公知の任意の方法を使用することができる。総合組成の推定値の不確かさの値を提供するために、統計学的な方法が用いられることもある。方法100のいくつかの実施形態において、複数のショットブラスト片についての総合組成の推定値を決定することは、複数のショットブラスト片の材料について複数の組成測定値を決定することを含む。例えば、いくつかの実施形態において、ショットブラスト片の少なくとも50%の組成が測定されると、その複数の組成測定値に基づいて総合組成が推定される。別の実施形態において、ショットブラスト片の少なくとも80%の組成が測定されると、その複数の組成測定値に基づいて総合組成が推定される。更に別の実施態様において、ショットブラスト片の少なくとも95%の組成が測定されると、その複数の組成測定値に基づいて総合組成が推定される。
【0058】
材料試料の組成を測定する方法として、当分野において公知の任意の方法を、使用することができる。いくつかの例において、複数のショットブラスト片の組成を測定するためにレーザスキャナを用いることができる。このことは、レーザを使用して、ショットブラスト片の表面のある点で材料を加熱し、その材料が冷却される過程で特性放射を放出するような温度とすることを含んでよい。その場合、その特性放射を検出し、種々の周波数における信号の大きさのスペクトルを提供するために、センサを動作させることができる。種々の周波数における信号の大きさであるこのスペクトルは、次に、合金内の種々の元素の相対濃度を推定するために、コンピュータプロセッサによって分析することができる。このことは、例えば、参照によって本明細書に組み込まれる米国特許第10,220,418号に記載されている。
【0059】
方法100の一つの例では、レーザ・ディスタンス・スペクトロメトリー(Laser Distance Spectrometry)によって製造された「レーザ誘起ブレークダウン分光法(Laser-Induced Breakdown Spectroscopy)」(「LIBS」)組成分析装置を、レーザスキャナ及びセンサとして採用することができる。LIBS組成分析装置は、放射放出体、例えばNd:YAGレーザを備えるものとすることができる。このレーザは、1~20ヘルツの周波数範囲で発光し、それによってショットブラスト片とレーザとの間の接触点における温度を摂氏30,000度より高め、プラズマを発生させる。プラズマは急速に冷却され、励起されたイオンを低エネルギー状態に戻す。低エネルギー状態に戻る際、イオンは特性放射を放出する。LIBS組成分析装置は、特性放射を検出する一つ以上のセンサを含むものとすることができる。次に、センサが計測した値をプロセッサで分析し、その結果から、温度変化を受ける材料中に含有される成分の濃度を決定することができる。プロセッサは、組成分析装置内に配置されていてもよい。或いは、プロセッサは、リモートプロセッサであってもよい。
【0060】
他の適当な組成分析装置は、ショットブラスト片それぞれの材料によって放出される特性放射をそのショットブラスト片の表面において誘起し、その材料の組成を決定するためにその特性放射を検出及び分析するレーザ分光法、または他の方法に依拠する他のシステムを使用する組成分析装置であってもよい。組成分析装置は、いずれかの適当なセンサを使用することによって特性放射を検出することができる。適当なセンサは、例えば、相補型金属酸化膜半導体(CMOS)、高密度短チャンネル金属酸化膜半導体(HMOS)、電荷結合素子(CCD)、及びその他のタイプのセンサを含んでいてもよい。
【0061】
適当な組成分析装置は、例えば、プラズマや電子線などの放射放出体、または、他のいずれかの放射放出体、すなわち、断片それぞれの材料をその断片の表面上の少なくとも一つの点において、その材料が冷却する過程で十分な量及び質の特性放射を放出する点(温度)まで加熱し、センサがその特性放射を検出することを可能にし、プロセッサがその特性放射から材料の組成を決定することを可能にするのに適している放射放出体を使用するものとすることができる。組成分析装置は、連続使用、ならびに特定のアルミニウム合金製リムのリサイクル作業において存在し得る典型的なコンディションに耐えるように、適合させることができる。そのようなコンディションは、アルミニウム合金製リムの移送機構の運転に起因する振動と、リサイクルプロセスにおいて生じる塵及び他の粒子を含むことがある。
【0062】
ステップ112では、被選択ターゲット合金が選択される。その選択を行う際に、複数のターゲット合金の候補について規格が考慮されることがある。これらのターゲット合金候補のそれぞれが、異なる元素組成を有することがある。元素組成の小さな変化が、材料特性に大きな変化を生じる結果となることがある。材料特性のある組み合わせが、他の組み合わせより望ましいことがある。より望ましい特性は、換言すると、より高い経済的価値を有する材料のことである。ターゲット合金は、材料特性、経済的価値、市場需要、ファウンドリオペレータなどの顧客からの喫緊の要請、またはその他の因子によって選択され得る。いくつかの実施形態において、ターゲット合金は、ステップ110において得られた総合組成の推定値に少なくとも部分的に基づいて、選択されることがある。
【0063】
ステップ114では、ずれ推定値が決定される。ステップ110において総合組成の推定値を得るために測定された複数の元素のそれぞれについて、その元素についての元素濃度推定値と、被選択ターゲット合金におけるその元素についての元素濃度範囲と、の間のずれが推定される。このずれは、ターゲット合金における特定のターゲット元素の組成値と、ステップ110で得られた複数のショットブラスト片の総合組成の推定値との間で測定されたずれであるから、推定値であるとみなされる。被選択ターゲット合金の組成値は、数値範囲で表し得る。例えば、特定の合金が、ケイ素の組成として許容される範囲9.8~10.4質量%を有することがある。ずれの推定値は、被選択ターゲット合金の組成範囲における最も近い限界値と、総合組成の推定値との間のずれに基づいて定めることができる。前述の例を使用し、総合組成の推定値が9.6質量%のケイ素を含むとする。その場合、ケイ素についてのずれの推定値は、組成推定値と被選択ターゲット合金の組成範囲における最も近い限界値(9.8質量%)との間のずれとして測定されるものであり、0.2%である。他の例において、ずれの推定値は、被選択ターゲット合金の組成範囲における最も遠い限界値と、総合組成の推定値との間のずれに基づいて定めることができる。被選択ターゲット合金として前述の例を用いると、総合組成の推定値は、9.6質量%のケイ素を含む。その場合、ケイ素についてのずれの推定値は、組成推定値と被選択ターゲット合金の組成範囲における最も遠い限界値(10.4質量%)との間のずれによって測定され、0.8%である。他の例において、ずれの推定値は、被選択ターゲット合金の組成範囲における中間値と組成推定値との間のずれに基づいて定めることができる。被選択ターゲット合金として前述の例を用いると、総合組成の推定値が9.6質量%のケイ素を含む。その場合、ケイ素についてのずれは、0.5%である。それがケイ素の組成推定値である9.6質量%と、被選択ターゲット合金の組成範囲における中間値である10.1質量%ケイ素との間のずれだからである。中間値によるずれの測定は、総合組成の推定値が不確かであり、その不確かさが比較的対称な場合(すなわち、正方向と負方向との両方で不確かさが同等の場合)に有利である。最も遠い限界値または最も近い限界値によるずれの測定は、総合組成の推定値の不確かさが非対称であり、特定の方向に不確かさの生じる可能性が高い場合に有利である。
【0064】
ステップ116では、合金化補充物が決定される。この合金化補充物は、ステップ108において決定された複数のショットブラスト片の推定質量と、ステップ114において決定されたずれの推定値とに基づいて決定することができる。合金化補充物中の各元素の量は、その量が複数のショットブラスト片と組み合わされたとき、複数のショットブラスト片と合金化補充物との組み合わせによる総合組成の総計が、被選択ターゲット合金の規格内におさまるように決定される。
【0065】
例えば、ステップ112において被選択ターゲット合金がエッコメルト(Eccomelt)(登録商標)356.2であるとする。エッコメルト(登録商標)356.2は、以下の元素組成の規格を有する。Si:6.5%~7.5%、Cu:0%~0.02%、Fe:0%~0.14%、Mg:0.25%~0.4%、Zn:0%~0.018%、Mn:0%~0.03%、Ni:0%~0.008%、Cr:0%~0.03%、Sn:0%~0.01%、Ti:0%~0.15%、Sr:0%~0.02%、Al:最低91.674%。
【0066】
ステップ110において、一セットのショットブラスト片について、総合組成の推定値が以下のように決定されたとする。Si:6.312%、Cu:0.015%、Fe:0.13%、Mg:0.312%、Zn:0.015%、Mn:0.015%、Ni:0.004%、Cr:0.021%、Sn:0.008%、Ti:0.02%、Sr:0.019%、Al:91.721%、その他:1.408%。
【0067】
ステップ114では、ずれの推定値が決定される。Siの濃度値(6.312%)は、エッコメルト(登録商標)356.2の規格内(6.5%~7.5%)に入らない。他の全ての元素の濃度値は、エッコメルト(登録商標)の規格内にある。最も近い限界値(6.5%)までのずれを測定すると、Siの濃度値は、0.188%小さい。
【0068】
ステップ108で、複数のショットブラスト片の総質量が、1000ポンドと推定されたとする。この値を、ステップ110において決定された総合組成の推定値とともに用いると、組成物中の各構成元素の質量を推定することができる。現在の例では、組成百分率の推定値それぞれについて、推定された総質量1000ポンドを乗算する。例えば、ケイ素については、一バッチ当たり、6.312%×1000ポンド=63.12ポンドである。この計算を各構成元素について同様に行うと、以下の値が得られる。Si:63.12ポンド、Cu:0.15ポンド、Fe:1.3ポンド、Mg:3.12ポンド、Zn:0.15ポンド、Mn:0.15ポンド、Ni:0.04ポンド、Cr:0.21ポンド、Sn:0.08ポンド、Ti:0.2ポンド、Sr:0.19ポンド、Al:917.21ポンド、その他:14.08ポンド。
【0069】
ターゲット合金の規格に適合するような組成に調整するために、合金化補充物が決定される。次に示す例において、プロセスの実用性のために、合金化補充物が1ポンド単位で調合されるとする。他の例では、補充物について他の単位が規定されることがある。すなわち、これら他の例では、(1/2)ポンドを最小単位として、または他の量を最小単位として、合金化補充物がバッチに加えられる。合金化補充物は、次式を使用して計算することができる。
【0070】
【0071】
この式において、X=合金化補充物の質量、t=ターゲット組成割合、m=バッチ総質量、及び、c=補充元素の現在質量である。以下の値を代入する。t=0.065、m=1000、及びc=63.12。
【0072】
上記の値をこの式に代入すると、ケイ素の補充量の最小値2.01ポンドが得られる。現在の例では、調合の最小単位は1ポンドであるため、2ポンドの補充物では不十分であり、3ポンドの補充物が必要である。調合の最小単位がより小さいことが必要とされる他の例では、より小さなサイズの補充物を供給すればよい。例えば、調合の最小単位が(1/2)ポンドの場合、補充物は2.5ポンドとすることができる。調合の最小単位が0.1ポンドの場合、補充物は2.1ポンドとすることができる。補充物のために必要なケイ素の量がより小さければ、材料の価格が低減されるため、経済的に有利である。
【0073】
いくつかの元素、及びいくつかの合金については、最小の百分率組成の要件はなく、最大の百分率組成の要件のみがあることがある。例えば、エッコメルト(登録商標)356.2は、銅、鉄、亜鉛、マンガン、ニッケル、及びスズについて、最大百分率を規定しているが、最小百分率は規定していない。少なくとも一種類のターゲット合金が、ある元素についてゼロではない最小百分率を要していない限り、ショットブラスト片にその元素を加える必要はなく、従ってその元素をストックしておく必要もないだろう。特定の元素についてゼロではない最小百分率の要件を有しているターゲット合金について、これらの元素を特定のバッチサイズで補充するとき、調合の最小単位が1ポンドでは大き過ぎるかもしれない。すなわち、規定された元素濃度範囲内にある元素組成を実際に得るために必要な量を、調合することが不可能なことがある。例えば、エッコメルト(登録商標)356.2について、マグネシウム組成の規格は、0.25%~0.4%である。500ポンドのバッチサイズにおいて、マグネシウムの総質量が1.1ポンドであると組成は0.22%である。この場合、規格の範囲内にはないため、マグネシウムは補充されなければならない。しかしながら、マグネシウムの補充量として可能な最小量が1ポンドであると、バッチ総質量501ポンド中のマグネシウムの総質量は2.1ポンドとなる。2.1を501で除算すると、マグネシウム組成0.42%となる。これではエッコメルト(登録商標)規格を上回る。この例においては、許容される組成に到達するためには、より小さな補充物の調合単位が用いられるか、または他の元素のさらなる補充(例えば、余剰のマグネシウムを相殺するために、より多くのアルミニウムが後から補充される)が行なわれるかのどちらかでなければならない(或いは、バッチ総質量を増加させなければならない)。
【0074】
特定のターゲット合金が与えられたら、その合金に関して、ゼロではない最小百分率の要件が規定されているあらゆる元素について、許容される最小調合単位の最大値を決定することができる。許容される最小調合単位の最大値は、特定のターゲット合金及び総バッチサイズに関して、その元素について許容される組成百分率の範囲に依存する。例えば、許容される最小調合単位の最大値は、ある元素の総合組成が(許容される組成百分率の範囲の)最小組成値より高くかつ最大組成値より低くなるように、合金化補充物中に含まれるその元素の量が調整されることが可能となる限度で、十分に小さくなければならない。許容される最小調合単位の最大値は、バッチの総質量と、所定の元素についての組成上限値と組成下限値との間の差異によって変化し得る。再び、以下の元素組成の要件を有しているエッコメルト(登録商標)356.2について例にとる。Si:6.5%~7.5%、Cu:0%~0.02%、Fe:0%~0.14%、Mg:0.25%~0.4%、Zn:0%~0.018%、Mn:0%~0.03%、Ni:0%~0.008%、Cr:0%~0.03%、Sn:0%~0.01%、Ti:0%~0.15%、Sr:0%~0.02%、Al:最低91.674%。エッコメルト(登録商標)356.2の場合、ケイ素、マグネシウム、及びアルミニウムのみが、規定されたゼロではない組成最小値を有しており、それ故に許容される最小調合単位の最大値を有している。エッコメルト(登録商標)356.2に関係する他の元素の何れについても、バッチ組成を修正するために補充される必要はない。
【0075】
この許容される最小調合単位の最大値は、次式を使用して計算することができる。
【0076】
【0077】
この式において、X=許容される最小調合単位の最大値[質量]、r=元素割合範囲(その元素の総質量に対する割合または比の上限値マイナス下限値)、及び、m=総初期質量サイズ[質量]。エッコメルト(登録商標)356.2の場合、ケイ素は、組成の下限値6.500%、及び組成の上限値7.500%を有する。7.500%-6.500%=1.000%、または比0.01。従って、バッチサイズ1000ポンドの場合、以下の値が上式に代入される。r=0.01、m=1000。そうすると、結果として許容される最小調合単位の最大値は10.101ポンドと計算される。この合金が含有しなければならないあらゆる元素について、対応する値が計算される。エッコメルト(登録商標)356.2のバッチ質量が1000ポンドの場合、これらの元素は、それぞれ以下の許容される最小調合単位の最大値を有する。Si:10.101ポンド、Mg:1.502ポンド、Al:90.822ポンド。
【0078】
他のターゲット合金が異なる組成の規格を有することがある。このことは、どの元素が許容される最小調合単位の最大値を有するかということと、どの元素について補充物の在庫が維持されなければならないかということに影響を及ぼす。オーラル2(Aural2)は、以下の元素組成の要件を有する。Si:9.800%~10.400%、Cu:0%~0.030%、Fe:0.160%~0.200%、Mg:0.270%~0.350%、Zn:0%~0.030%、Mn:0.470%~0.550%、Ni:0%~0.030%、Cr:0%~0.030%、Sn:0%~0.030%、Ti:0.050%~0.080%、Sr:0.015%~0.025%、Al:88.245%~89.235%。オーラル2は、以下の元素について(ゼロではない)組成最小値を有している。ケイ素、鉄、マグネシウム、マンガン、チタン、ストロンチウム、及びアルミニウム。従って、合金化補充物を供給するために、これらの元素の在庫だけが保持される必要がある。最小組成百分率の要件が上記で規定されておらずゼロである元素は、組成を調整するためにバッチに加えられる必要がない。
【0079】
この許容される最小調合単位の最大値を計算する式を、再度示す。
【0080】
【0081】
この式において、X=許容される最小調合単位の最大値[質量]、r=元素割合範囲(その元素の総質量に対する割合または比の上限値マイナス下限値)、及び、m=総初期質量サイズ[質量]。オーラル2の場合、鉄は、組成の下限値0.160%、及び組成の上限値0.200%を有する。0.200%-0.160%=0.040%、または比0.0004。従って、1000ポンドのバッチサイズの場合、以下の値が上式に代入される。r=0.0004、m=1000。上式によれば、許容される最小調合単位の最大値は0.400ポンドとの結果となる。この値は、合金が含有しなければならないあらゆる元素について計算される。オーラル2のバッチ質量が1000ポンドの場合、これらの元素は、それぞれ以下の許容される最小調合単位の最大値を有する。Si:6.036ポンド、Fe:0.400ポンド、Mg:0.801ポンド、Mn:0.801ポンド、Ti:0.300ポンド、Sr:0.100ポンド、Al:9.999ポンド。
【0082】
バッチ総質量が変化すれば許容される最小調合単位の最大値が変化することに注意する。いくつかの例において、バッチは、何回か繰り返しで補充され、繰り返し毎にバッチ総質量が増加する。許容される最小調合単位の最大値は、繰り返し毎に増加することがある。
【0083】
この式はまた、ある元素の組成値が高すぎ、その組成値を許容されるレベルまで低減させるために、他の元素が補充されなければならない場合に適用されることがある。例えば、ケイ素の組成が高すぎ、これを修正するためにバッチにアルミニウムが補充されなければならない場合に、上式が適用されることがある。その場合、ケイ素についての範囲値(組成の下限値、上限値)が用いられるが、許容される最小調合単位の最大値は、高いケイ素濃度を相殺するために加えられる元素に対応し、この場合ではアルミニウムである。
【0084】
複数のショットブラスト片の総質量が1000ポンドであると推定され、組成が次のようである上記の例を再び考慮する。Si:63.12ポンド、Cu:0.15ポンド、Fe:1.3ポンド、Mg:3.12ポンド、Zn:0.15ポンド、Mn:0.15ポンド、Ni:0.04ポンド、Cr:0.21ポンド、Sn:0.08ポンド、Ti:0.2ポンド、Sr:0.19ポンド、Al:917.21ポンド、その他:14.08ポンド。この1000ポンドのショットブラスト片について、最小の位を一の位として(四捨五入して)、3ポンドのケイ素の合金化補充物が決定される。
【0085】
3ポンドのケイ素を加えた後、バッチの総質量は3ポンド増加して合計1003ポンドとなる。結果として得られた各構成元素の質量は、Si:66.12ポンド、Cu:0.15ポンド、Fe:1.3ポンド、Mg:3.12ポンド、Zn:0.15ポンド、Mn:0.15ポンド、Ni:0.04ポンド、Cr:0.21ポンド、Sn:0.08ポンド、Ti:0.2ポンド、Sr:0.19ポンド、Al:917.21ポンド、その他:14.08ポンドである。
【0086】
合金化補充物を加えた後、組成値は再計算されなければならない。例えば、ケイ素の新しい質量は、1003ポンドのバッチ総質量中66.12ポンドである。66.12ポンドを1003ポンドで除算すると、結果としてケイ素についての組成百分率は6.592%となる。
【0087】
この計算は、バッチ中に存在する各元素について繰り返される。結果として、再計算されたバッチの組成値は以下のようである。Si:6.592%、Cu:0.015%、Fe:0.13%、Mg:0.311%、Zn:0.015%、Mn:0.015%、Ni:0.004%、Cr:0.021%、Sn:0.008%、Ti:0.020%、Sr:0.019%、Al:91.447%、その他:1.404%。
【0088】
上記で分かるように、単一の元素からなる合金化補充物の添加で、他の全ての元素の組成をずらすことができる。バッチ総質量と比較して合金化補充物のサイズが小さいこと(総バッチ1003ポンドにおいて3ポンド)、及び、いくつかの元素の量が比較的小さいことに起因して組成百分率に生じる変化は、小さいことがある。しかしながら、バッチにおいて比較的高い質量を占める元素、例えばアルミニウムは、合金化補充物の添加によって百分率が顕著にずらされることがある。
【0089】
最初に使用される合金化補充物を添加した後、最終的なバッチ組成がターゲット合金の規格内にあることを確実にするために、組成百分率がターゲット合金の規格と再度、比較されることがある。
【0090】
上記の例において、最終的なアルミニウム組成は、91.447%である。エッコメルト(登録商標)356.2規格によれば、アルミニウム組成は、91.674%を上回らなければならない。結果として生じるずれは、0.227%である。組成がターゲット合金の規格内にあることを確実にするために、組成は再び修正されなければならない。
【0091】
追加の合金化補充物が決定されなければならない。アルミニウム組成は低過ぎるため、アルミニウムからなる補充物がバッチに加えられなければならない。定義を前述した式を使用して、最小の位を一の位として、補充物は24ポンドと決定することができる。最小調合単位は1ポンドであるため、補充物の質量は、一の位に繰り上げなければならない。他の例では、より小さな最小調合単位が用いられることがある。
【0092】
24ポンドのアルミニウムの添加後、バッチの総質量はその時点で1027ポンドである。アルミニウムの総質量は今、941.21ポンドである。この値を使用して、バッチ中に含有されるアルミニウムの質量をバッチ総質量で除算することによって、バッチ中のアルミニウムの組成が再度計算される。941.21ポンドを1027ポンドで除算した結果、アルミニウムの最終組成は91.674%となる。これは、エッコメルト(登録商標)356.2の規格(Al組成の最小値91.674%)内にある。
【0093】
合金化補充物の添加は、他の全ての元素の組成をずらすことがあるので、全ての元素の組成は再計算されなければならない。バッチ中の各元素の既知の質量と、新しい総質量(1027ポンド)とを使用して、バッチの組成を計算することができる。各元素の質量を総質量で除算すると、各元素についての組成百分率が得られる。この操作を行うと、以下の例について次の組成値が得られる。Si:6.438%、Cu:0.015%、Fe:0.127%、Mg:0.304%、Zn:0.015%、Mn:0.015%、Ni:0.004%、Cr:0.020%、Sn:0.008%、Ti:0.019%、Sr:0.019%、Al:91.647%、その他:1.371%。
【0094】
前述のように合金化補充物を補充した後、ケイ素の組成は、エッコメルト(登録商標)356.2の規格に規定されている最小閾値未満に低減された。ケイ素の組成はこの時点で6.438%であり、エッコメルト(登録商標)356.2の規格における最小値(6.500%)より、0.062%小さい。
【0095】
バッチ組成をターゲット合金の組成規格に合わせて修正するために、ケイ素についての合金化補充物がもう一度計算されなければならない。これは、前回ケイ素補充物を決定した操作に従って実行することができる。これによって、他の元素、例えばアルミニウムに再度のずれが生じることがあり、これは再度補充されなければならない。特定の有限回数の繰り返しの後、バッチ組成は、ターゲット合金の組成規格に合致する組成に収束する。
【0096】
次の例の場合、この繰り返しプロセスが行われた後に、ケイ素8ポンドとアルミニウム83ポンドとの総補充物の補充の結果、ターゲット合金の組成規格を満たす組成となる。このとき、バッチ総質量は、1091ポンドである。各元素の質量組成は、以下の通りである。Si:71.12ポンド、Cu:0.15ポンド、Fe:1.3ポンド、Mg:3.12ポンド、Zn:0.15ポンド、Mn:0.15ポンド、Ni:0.04ポンド、Cr:0.21ポンド、Sn:0.08ポンド、Ti:0.2ポンド、Sr:0.19ポンド、Al:1000.21ポンド、その他:14.08ポンド。各元素の組成値は、バッチ中の各元素の質量をバッチ総質量1091ポンドで除算することによって決定される。その計算を行うことにより、以下の組成が得られる。Si:6.519%、Cu:0.014%、Fe:0.119%、Mg:0.286%、Zn:0.014%、Mn:0.014%、Ni:0.004%、Cr:0.019%、Sn:0.007%、Ti:0.018%、Sr:0.017%、Al:91.678%、その他:1.291%。これらの値は、上記で概説したエッコメルト(登録商標)356.2の規格に適合する。
【0097】
先の例は、最小調合質量を1ポンドとしていた。より小さな調合質量が採用可能である他の例では、合金化補充物が異なることがある。より小さな調合質量を使用することは、合金化補充物の量が減るため、プロセスの価格を低減でき経済的に有利である。
【0098】
いくつかの例において、特定の元素が、ターゲット合金の規格で規定されている最大値を超えることがある。例えば、ステップ110において、以下のような総合組成の推定値が決定されることがある。Si:6.741%、Cu:0.021%、Fe:0.13%、Mg:0.39%、Zn:0.015%、Mn:0.015%、Ni:0.004%、Cr:0.021%、Sn:0.008%、Ti:0.02%、Sr:0.019%、Al:91.721%、その他:0.895%。この例におけるターゲット合金は、エッコメルト(登録商標)356.2である。バッチ総質量は、約1000ポンドである。現在の例において、銅の組成値は高過ぎ、許容される最大量(最大値0.02%)からのずれは、0.001%である。合金から元素を除去することは困難で、かつ費用がかかるおそれがある。より容易で、かつ費用がかからない代替手段は、バッチ中の他の元素のうちの少なくともいくつかの質量を増加させることにより、銅の割合を許容される範囲内となるように減少させることである。
【0099】
そのような場合、最適な合金化補充物を決定するために、種々のプロセスが採用されることがある。例えば、チタンの組成は、許容される最大量(最大値0.15%)より0.13%低い。加えて、アルミニウム組成は、組成最小値(6.5%)を上回る。しかし、エッコメルト(登録商標)356.2の規格によれば、アルミニウムには組成最大値がない。バッチ組成をターゲット合金の規格に近付けるように調整するために、バルク合金に補充する元素としてどちらかの元素(または、ターゲット合金における組成の最大値未満である他の元素のうちの何れか、例えばスズ)を使用することができる。補充の目的では、特定の合金がより望ましいことがある。ステップ118で提供される最終製品の経済的価値は、ターゲット合金の経済的価値と同等である。従って、最終的な価値は、固定しておくことができる。本方法の他の態様は、利益、例えばプロセスの価格を低減するために最適化することができる。利益を最大にするために、合金化補充物は価格を最小にするように選択されることがある。
【0100】
現在の例において、バッチ組成を修正し、これによってバッチ組成がターゲット合金の組成の規格と揃うように、チタンとアルミニウムの両方をバッチに補充するために使用することができる。単位質量当たりでは、アルミニウムの方がチタンよりはるかに価格が低い。従って、主としてアルミニウムである合金化補充物を使用して組成を調整する方が好ましい。他の例では、補充するために他の元素が使用されることがある。
【0101】
合金化補充物の量は、決定されなければならない。現在の例において、アルミニウムは、1ポンド単位で調合される。合金化補充物の質量は、次の式を使用して計算される。
【0102】
【0103】
この式において、X=合金化補充物の質量、t=過剰な元素の目標組成割合、m=バッチ総質量、及びc=過剰な元素の現在の質量である。エッコメルト(登録商標)について、銅組成の最大値は0.02%である一方、ショットブラスト片における銅の組成百分率は0.021%であることを先に述べた。以下の値、t=0.0002、m=1000ポンド、及びc=0.210ポンドを式に代入すると、ターゲット合金の組成規格を満たすように銅濃度を低減させるために必要なアルミニウム補充物は、最小の位を一の位として50ポンドと計算される。合金化補充物の添加後のバッチは、1050ポンドの総質量を有する。
【0104】
このようにアルミニウムが加えられた後、バッチ中の関連する各元素の質量組成は、以下の通りである。Si:67.41ポンド、Cu:0.21ポンド、Fe:1.3ポンド、Mg:3.9ポンド、Zn:0.15ポンド、Mn:0.15ポンド、Ni:0.04ポンド、Cr:0.21ポンド、Sn:0.08ポンド、Ti:0.2ポンド、Sr:0.19ポンド、Al:967.21ポンド、その他:8.950ポンド。次に、各構成元素の質量がバッチ総質量1050ポンドで除算されて、以下の組成百分率が決定される。Si:6.420%、Cu:0.020%、Fe:0.124%、Mg:0.371%、Zn:0.014%、Mn:0.014%、Ni:0.004%、Cr:0.020%、Sn:0.008%、Ti:0.019%、Sr:0.018%、Al:92.115%、その他:0.852%。
【0105】
ここから明らかなように、50ポンドのアルミニウムを加えることで、他の全ての元素の組成がずれる。従って、これらの組成元素をターゲット合金の組成規格と再度比較して、規格に適合するか否かを決定しなければならない。上記の組成をエッコメルト(登録商標)356.2の規格と比較すると、ケイ素の組成値が0.080%だけ低過ぎることが分かる。何が正しい合金化補充物であるか決定するために、さらなる合金化補充物が加えられなければならない。これは、もう一度、次式で計算されることがある。
【0106】
【0107】
この式において、X=合金化補充物の質量、t=ターゲット組成割合、m=バッチの総質量、及び、c=補充元素の現在質量である。以下の値、t=0.065、m=1050ポンド、及びc=67.410ポンドを代入すると、得られる最終的な値は、0.898ポンドである。一の位に繰り上げると、結果として1ポンドの補充物となる。その値(Xの値)は、補充物の最小調合単位1ポンドと一致するように、一の位に繰り上げられる。
【0108】
この1ポンドのケイ素補充物をバッチに加えると、バッチ総質量1077ポンドという結果となる。関連する各元素の質量は、以下の通りである。Si:68.41ポンド、Cu:0.21ポンド、Fe:1.3ポンド、Mg:3.9ポンド、Zn:0.15ポンド、Mn:0.15ポンド、Ni:0.04ポンド、Cr:0.21ポンド、Sn:0.08ポンド、Ti:0.2ポンド、Sr:0.19ポンド、Al:967.21ポンド、その他:8.950ポンド。各構成元素の質量は、バッチ総質量1051ポンドで除算され、以下の組成百分率が決定される。Si:6.509%、Cu:0.020%、Fe:0.124%、Mg:0.371%、Zn:0.014%、Mn:0.014%、Ni:0.004%、Cr:0.020%、Sn:0.008%、Ti:0.019%、Sr:0.018%、Al:92.028%、その他:0.852%。
【0109】
上記の組成をエッコメルト(登録商標)356.2規格と比較すると、この組成が今度はエッコメルト(登録商標)356.2規格に適合している。
【0110】
前の例において、ケイ素の組成値は当初は規格内にあったものの、銅の組成値を修正するために十分な量の別の元素を加えることで、組成値がずれ、ケイ素の組成値がもはや規格内ではなくなった。そのため、ケイ素の補充物も必要となった。いくつかの例において、合金化補充物は、このような元素の組成のずれを考慮して、補充物元素の価格が最小になるように最適化されることがある。例えば、ケイ素の組成値が閾値に達するように、アルミニウムが加えられることがある。具体的には、ケイ素の組成がターゲット合金の規格によれば許容される閾値(範囲の下限値)である6.500%となるまで、アルミニウムが補充される。その時点で、銅組成が許容レベルに達するまで、ケイ素とアルミニウムとの両方を、特定の割合でバッチに加えることができる。各補充元素の価格と各元素の最小調合単位とに応じて、合金をそのような方法で補充すると、経済的に有利となり得る。例えば、アルミニウムがケイ素より単位質量当たり低い価格で入手できる場合、必要なケイ素の量を最小にするために、この方法でバッチ組成を補充することが望ましい。
【0111】
別の例において、ステップ112で選択された被選択ターゲット合金が、オーラル2であるとする。オーラル2は、以下の元素組成の要件を有する。Si:9.800%~10.400%、Cu:0%~0.030%、Fe:0.160%~0.200%、Mg:0.270%~0.350%、Zn:0%~0.030%、Mn:0.470%~0.550%、Ni:0%~0.030%、Cr:0%~0.030%、Sn:0%~0.030%、Ti:0.050%~0.080%、Sr:0.015%~0.025%、Al:88.245%~89.235%。
【0112】
ステップ110で、ショットブラスト片のバッチについて以下の総合組成の推定値が決定されるとする。Si:9.846%、Cu:0.015%、Fe:0.2%、Mg:0.35%、Zn:0.03%、Mn:0.5%、Ni:0.004%、Cr:0.021%、Sn:0.008%、Ti:0.075%、Sr:0.01%、Al:88.941%、その他:0%。
【0113】
ステップ114では、ずれ推定値が決定される。Sr濃度値は、オーラル2の規格内にない。他の全ての元素濃度値は、オーラル2の規格内にある。最も近い限度値(下限値)との差を測定すると、Sr値は0.005%だけ低過ぎる。
【0114】
ステップ108では、複数のショットブラスト片の総質量は、1000ポンドと推定された。この値をステップ110において決定された総合組成の推定値と共に用いると、組成中の各構成元素の質量を推定することができる。現在の例では、推定された組成百分率のそれぞれに推定総質量1000ポンドを乗算することができる。例えば、0.010%ストロンチウム×1000ポンド=バッチ中のストロンチウム0.100ポンド。この計算を各構成元素について繰り返すと以下の値が得られる。Si:98.46ポンド、Cu:0.15ポンド、Fe:2ポンド、Mg:3.5ポンド、Zn:0.3ポンド、Mn:5ポンド、Ni:0.04ポンド、Cr:0.21ポンド、Sn:0.08ポンド、Ti:0.75ポンド、Sr:0.1ポンド、Al:889.41ポンド、その他:0ポンド。
【0115】
合金化補充物は、組成を調整してターゲット合金の規格に適合するように決定される。次の例では、プロセスの実用性のために、合金化補充物は1ポンド単位で調合される。他の例では、他の補充物単位が規定されることがある。他の例においては、(1/2)ポンド、または他の質量の最小調合単位の合金化補充物が、バッチに加えられる。合金化補充物は、次式を使用して計算することができる。
【0116】
【0117】
ここで、X=補充物質量、t=目標百分率、m=バッチ総質量、及びc=補充元素の現在の質量。以下の値を代入する。t=0.00015、m=1000、及びc=0.100。これらの値を式に代入した計算の結果、補充物の質量は0.05ポンドとなる。
【0118】
ここまでの例においては、最小調合単位として1ポンドを使用していた。これは、次のような場合では、実行可能な単位でない。例示すれば、1ポンドの補充物を加えると、バッチ質量1001ポンド中のSrの総質量は1.1ポンドという結果となる。百分率として表すと、この組成は0.110%となる。これは、組成中のストロンチウムの許容される最大量(0.025%)をはるかに上回る。
【0119】
この例においては、0.01ポンドの最小調合質量が選択される。この場合の合金化補充物は、上記で計算された値を用いると0.05ポンドである。この補充物をバッチに加えると、バッチ質量1000.05ポンド中、ストロンチウム総質量は0.15ポンドという結果となる。関連する各元素のバッチ中の総質量は、以下の通りである。Si:98.46ポンド、Cu:0.15ポンド、Fe:2ポンド、Mg:3.5ポンド、Zn:0.3ポンド、Mn:5ポンド、Ni:0.04ポンド、Cr:0.21ポンド、Sn:0.08ポンド、Ti:0.75ポンド、Sr:0.15ポンド、Al:889.41ポンド、その他:0ポンド。
【0120】
合金化補充物の添加は、他の全ての元素の組成をずらすことがあるので、組成百分率は、新たなバッチ総質量を使用して再推定されなければならない。しかし、補充物質量は、バッチ中に存在する元素の質量と比較して相対的に小さいので、大部分の元素の割合は僅かにしか変化しない。組成百分率は、バッチ中に存在する各元素の質量をバッチ総質量1000.05ポンドで除算することによって計算される。この計算により、以下の値となる。Si:9.846%、Cu:0.015%、Fe:0.2%、Mg:0.35%、Zn:0.03%、Mn:0.5%、Ni:0.004%、Cr:0.021%、Sn:0.008%、Ti:0.075%、Sr:0.015%、Al:88.937%、その他:0%。
【0121】
これらの値の全てがオーラル2の規格内にある。これ以上の組成調整は必要ない。
【0122】
ステップ118では、複数のショットブラスト片と合金化補充物とが、合金金属の部品を製造するために供給される。いくつかの実施形態において、合金化補充物と複数のショットブラスト片と共に、調整済み組成推定値または被選択ターゲット合金の表示が提供されることがある。新たな部品を製造する目的で、複数のショットブラスト片と合金化補充物とが公知のプロセス(鋳造など)によって均一な集合体に溶融されると、その均一な集合体は、調整済み組成推定値の組成を有する。合金化補充物は、合金化補充物と複数のショットブラスト片とを組み合わせることによって形成されるバルク集合体の組成が、被選択ターゲット合金と同様の組成となるように選択することができる。その場合、複数のショットブラスト片と合金化補充物との組み合わせにおける特定の調整済み組成推定値の代わりに、被選択ターゲット合金の表示を提供することができるだろう。そのとき、複数のショットブラスト片と合金化補充物との均一な総合組成は、被選択ターゲット合金の元素組成の規格内にある。
【0123】
金属部品の製造のために複数のショットブラスト片と共に合金化補充物を供給することによって、これらが合金金属の部品を製造するために供給されるとき、その部品が最終的に製造されることになる合金の組成を特定の組成に調整することができる。合金の材料特性は、元素組成の僅かな差で大きく変化することがあるので、このことは有利である。合金化補充物の添加による総合組成の調整で、総合組成の合金が特定の使用のためにより望ましくなるように材料特性を変化させることができる。例えば、合金化補充物は、均一な集合体の組成を修正し、これによって、その組成をエッコメルト(登録商標)356.2のアルミニウム合金の組成規格に合わせることができる。この合金は、特定の使用のために好適な材料特性を有することがある。例えば、その降伏強度は、ショットブラスト片単独からなる総合組成のときの降伏強度を超えて増加する。このことは、最終製品の経済的価値を増加させる。他の例において、特定の製品に使用するために、特定の合金または特定の元素組成を顧客が要求することがある。この特定の需要に起因して、特定の合金の製品を製造するための供給物製品を供給することができれば、このリサイクルプロセスからより大きな経済的価値を引き出すことができる場合がある。このことは、合金化補充物を供給しないとすれば、更なるプロセスを行わなければ可能とならないかもしれない。
【0124】
次に、
図2を参照すると、アルミニウム合金ホイールをリサイクルする方法200が示される。アルミニウム合金ホイールをリサイクルする方法200は、金属片をリサイクルする方法100を適用した例である。従って、下記で考察される例のいずれも方法100に適用されることがあり、方法100を参照して上記で考察されたいずれの例も方法200に適用することができる。更に、下記の考察は、本明細書に記載される方法を、アルミニウム合金ホイールをリサイクルするものに限定するものではない。例えば、本明細書に記載される方法は、鋼合金、銅合金、または任意の他の適当な金属で製造された物をリサイクルするための方法に適用し得る。方法200のステップ202では、特定の合金製のアルミニウムホイールからなる供給物が供給される。ステップ204では、ホイールは、複数の断片に断片化される。ステップ206では、断片はショットブラストに供され、表面不純物が除去されて複数のショットブラスト片となる。ステップ210では、複数のショットブラスト片について、総合組成の推定値が決定される。ステップ212では、被選択ターゲット合金が選択される。ステップ214では、ずれ推定値が決定される。ステップ216では、合金化補充物が決定される。ステップ218では、ショットブラスト片と合金化補充物とが、アルミニウム合金製の部品を製造するために供給される。
【0125】
次に、
図3を参照すると、アルミニウム合金ホイールをリサイクルする方法300が示される。アルミニウム合金ホイールをリサイクルする方法300は、金属片をリサイクルする方法100を適用した例である。従って、下記で考察される例のいずれも方法100に適用されることがあり、方法100を参照して上記で考察されたあらゆる例が方法300に適用されることがある。更に、下記の考察は、本明細書に記載される方法を、アルミニウム合金ホイールをリサイクルするものに限定するものではない。例えば、本明細書に記載される方法は、鋼合金、銅合金または任意の他の適当な金属で製作された物をリサイクルするための方法に適用し得る。方法300のステップ302では、特定の合金製のアルミニウムホイールからなる供給物が供給される。ステップ304では、ホイールは、複数の断片に断片化される。ステップ306では、断片はショットブラストに供され、表面不純物が除去されて複数のショットブラスト片となる。ステップ310では、複数のショットブラスト片について、総合組成の推定値が決定される。ステップ314では、ずれ推定値が決定され、被選択ターゲット合金が選択される。いくつかの例において、ターゲット合金の選択は、組成推定値とターゲット合金の組成範囲との比較に基づいて行われる。いくつかの例において、このことは、組成推定値が最も近接して揃っているか、または必要な調整量が最小であるような、組成範囲の組み合わせを有するターゲット合金を選択することを含むことがある。他の例において、このことは、経済的最適化の形をとることがある。合金化補充物は、単位質量当たり特定のコストがかかる。ターゲット合金は、単位質量当たり特定の値を有する。ターゲット合金は、ターゲット合金の値を最適化する一方で、合金化補充物のコストを最小にするように選ばれることがある。
【0126】
ステップ316では、合金化補充物が決定される。ステップ318では、ショットブラスト片と合金化補充物とがアルミニウム合金製の部品を製造するために供給される。
【0127】
方法300のいくつかの例では、合金化補充物にアルミニウムを含められるように、合金化補充物の供給が維持される。
【0128】
方法300のいくつかの例では、合金化補充物の供給源が維持される。いくつかの例において、合金化補充物は以下の元素、ケイ素、鉄、マグネシウム、マンガン、チタン、ストロンチウム、亜鉛、銅、クロム、ニッケル、及びスズを含むことがある。
【0129】
いくつかの例では、合金化補充物の量は、添加される質量のプラス・マイナス1%の精度で元素が調合されるように維持される。いくつかの例では、合金化補充物は、補充物のリスト中の複数の元素のうちの少なくとも二種類を、共に溶融し混合して構成された一種類以上のインゴットとして供給されることがある。
【0130】
次に、
図4を参照すると、そこにはアルミニウム合金製品を提供するためのシステムのブロック図が示される。図示のように、アルミニウム合金製品を提供するためのシステム400は、アルミニウム合金ホイール移送機構402と、アルミニウム合金ホイール処理装置404と、質量計測器406と、組成分析装置408と、メモリ410と、プロセッサ412と、を備えている。いくつかの例では、ユーザインタフェース414をも備えるものとすることができる。
【0131】
移送機構402は、廃棄金属片、例えば特定の合金製のアルミニウム合金ホイールであるが、これには限定されない廃棄金属片からなる供給物を供給する。廃棄金属片は、任意の適当な手段(例えば、移送機構402の一端に接続されたホッパに廃棄金属片を投下するトラックによる手段、または廃棄金属片をコンベヤの上に手作業で置く作業者による手段であるが、これに限定されるものではない)によって、移送機構402に導入される。
【0132】
システム400のいくつかの例では、ホイール処理装置404は、廃棄金属片からなる供給物を移送機構402から受け取る。ホイール処理装置404は、廃棄金属片を複数の断片に断片化することができる。いくつかの例では、ホイール処理装置404の断片化ユニットは、シュレッダーまたはカッターとすることができ、廃棄金属片を複数の断片に分断するために複数の刃を使用するものとすることができる。他の例において、断片化装置は、ウォータージェットカッターであってもよい。
【0133】
ホイール処理装置404内には、ブラストチャンバも収容されている。ブラストチャンバは、断片からなる供給物を断片化ユニットから受け取る。ブラストチャンバ内では、断片に向けて、それらの表面を清浄にするためにショットなどの研磨材が投射される(ショットブラスト)。ショットとこれらの表面との衝突により、コーティング、腐食物、環境汚染物、及びクズ片を表面から除去することができる。システム400のいくつかの例では、ブラストチャンバは、遠心ブラスト装置とすることができる。(1/2)インチ以上のS330鋼ショットを使用することができる。
【0134】
ホイール処理装置404中の遠心ブラスト処理装置は、予め定められた経路に沿った移動のために、エンドレスチェーンの間で横方向に延在している複数のフライトで形成された搬送手段を完全に囲むハウジングを備えるものとすることができる。このハウジングは、四つのコンパートメントに区画されて、一つの入口チャンバ、二つのブラストチャンバ、及び一つのシェークアウトチャンバ(振り出しチャンバ)を含むものとすることができる。ブラストチャンバ内のフライトは、ブラストに耐性を有するマンガンロッドで形成することができ、一方、シェークアウトチャンバおよび入口チャンバ内のフライトは、より安価でより軽量の材料で形成することができる。廃棄金属片から除去されたクズ片は、シェークアウトチャンバ内から排出してシステムから除去することができ、使用済みの研磨材はブラストホイールに戻して再循環させることができる。
【0135】
ホイール処理装置404におけるショットブラストプロセスの際に、研磨材は、断片を複数に分断して元の断片より質量の小さいショットブラスト片とするのに十分なエネルギーで、断片に衝撃を与える。ショットブラスト片は、種々のサイズとなることがある。
【0136】
システム400のいくつかの例では、質量計測器406は、清浄化されたアルミニウム断片からなる供給物を受け取る。質量計測器406は、受け取った清浄化されたアルミニウム断片の質量を決定するために、当分野において公知の任意の方法を使用するものとすることができ、機械バネばかり、機械式天秤ばかり、水力学的はかり、歪ゲージ型電子ばかり、またはロードセル型電子ばかりを含むが、これに限定されるものではない。
【0137】
システム400のいくつかの例では、ホイール処理装置404によって得られた複数の清浄化されたアルミニウム断片を検知し、清浄化されたアルミニウム断片の材料について複数の組成測定値を決定するために、組成分析装置408を使用することができる。組成分析装置408は、材料試料の組成を測定するために、当分野において公知の任意の方法を使用するものとすることができる。
【0138】
システム400は、電子的に読み出し可能な非一時的メモリ410を含む。メモリ410には、複数のターゲット合金に関する情報が記憶される。各ターゲット合金についてのこの情報と共に、各合金についての組成範囲もメモリ410に記憶させることができる。
【0139】
プロセッサ412は、メモリ410、組成分析装置408、及び質量計測器406と電子的に通信している。プロセッサは、複数の試料についての組成測定値を組成分析装置408から受け取る。これらの試料の組成を使用して、総合組成の推定値が計算される。いくつかの例では、複数の試料から総合組成の推定値を決定するために、統計学的な方法を使用することができる。システム400のいくつかの実施形態では、複数のショットブラスト片について総合組成の推定値を決定することは、複数のショットブラスト片の材料について複数の組成測定値を決定することを含む。
【0140】
プロセッサ412は、メモリ410と通信して、メモリ410に記憶されているターゲット合金に関連付けられた組成範囲と、総合組成の推定値を比較することができる。これらの比較を使用して、プロセッサ412は組成のずれ推定値を計算することができる。
【0141】
総合組成の推定値に少なくとも部分的に基づいて、プロセッサ412は、被選択ターゲット合金を選択する。いくつかの例では、被選択ターゲット合金は、その組成範囲が総合組成の推定値に最も近接して揃っているか、または他の何らかの類似の属性を理由として選ぶことができる。
【0142】
いくつかの例では、少なくとも一種類の元素について、総合組成とターゲット合金の組成範囲との間のずれは、ゼロではないことがある。
【0143】
プロセッサ412は、質量計測器406によって決定された推定質量と、先に計算されたずれと、メモリ410に記憶された被選択ターゲット合金におけるターゲット合金の組成範囲とに基づいて、合金化補充物を計算する。
【0144】
システム400のいくつかの例では、メモリ410には、各ターゲット合金の単位質量当たりの値を含む複数のターゲット合金についての値情報と、ターゲット合金に関連するいくつかの元素の単位質量当たりの元素価格を含む価格情報と、を記憶させる。これにより、プロセッサ412は、ずれ推定値と、メモリ410に記憶された値情報及び価格情報とに少なくとも部分的に基づいて、ターゲット合金を選択することができる。例えば、既知のターゲット合金単価と、合金元素価格と、総合組成のずれ推定値とに基づいて、プロセッサ412は、システム400によって行われるプロセスによって生み出される利益が最大となるように、ターゲット合金を選択する。このことは、価格を最小にする一方で、被選択ターゲット合金の価値を最大とする、最適化プロセスを含むことがある。想定される複数のターゲット合金から、最適な選択肢を選択することができる。
【0145】
システム400のいくつかの例では、システムは、ユーザインタフェース414を更に含むことがある。ユーザインタフェースは、被選択ターゲット合金、プロセッサ412によって計算された合金化補充物の質量を、システム400のユーザまたはオペレータに知らせる。
【0146】
次に、
図5を参照すると、そこには製品500が示される。製品500は、容器502を備えている。いくつかの実施形態では、容器502は、密閉されることがある。容器502内で、製品は、アルミニウム合金ホイール由来の複数のショットブラスト片504と、合金化補充物506とを含む。合金化補充物506は、アルミニウム合金ホイール504に由来するあらゆる片を除外したものである。
【0147】
製品500のいくつかの実施形態では、合金化補充物506とアルミニウム合金ホイール由来の複数のショットブラスト片504との組み合わせ物の組成推定値の表示508を、容器502に備えていることがある。いくつかの例では、表示508は、合金化補充物506とアルミニウム合金ホイール由来の複数のショットブラスト片504との組み合わせ物の中に有意な量で存在している元素それぞれについての総重量の組成百分率の形をとることがある。いくつかの例では、有意量とは、合金化補充物506とアルミニウム合金ホイール由来の複数のショットブラスト片504との組み合わせ物の総質量の0.01%より多い量で存在するあらゆる元素を含む量、と定義することができる。いくつかの例では、これらの組成値は、不確かさの値を伴うことがある。いくつかの例では、表示508は、名称付けられた被選択ターゲット合金の形をとることがある。例えば、合金化補充物506とアルミニウム合金ホイール由来の複数のショットブラスト片504との組み合わせ物の元素濃度範囲が、アルミニウム合金エッコメルト(登録商標)356.2の規格内にあるような組成を有することを、表示508で特定することができる。
【0148】
いくつかの例では、表示508は、合金化補充物506とアルミニウム合金ホイール由来の複数のショットブラスト片504との組み合わせ物の総質量を更に含むことがある。いくつかの例では、表示508は、合金化補充物506の質量と、アルミニウム合金ホイール由来の複数のショットブラスト片504の質量とを更に含むことがある。合金化補充物は、いくつかの別々の合金元素で構成されることがある。例えば、合金化補充物は、鉄及びマンガンを含むことがある。合金化補充物の質量を、副成分に更に細かく分けると、合金化補充物におけるそれぞれの成分の質量を決定することを可能にすることがある。
【0149】
製品500のいくつかの例では、合金化補充物506の質量は、アルミニウムホイール由来のショットブラスト片504の質量の5%未満である。製品500のいくつかの例では、合金化補充物506の質量は、アルミニウムホイール由来のショットブラスト片504の質量の1%未満である。
【0150】
製品500のいくつかの例では、合金化補充物506の質量の少なくとも50%は、ケイ素、鉄、マグネシウム、マンガン、チタン、及び/又はストロンチウムで構成される。製品500のいくつかの例では、合金化補充物506の質量の少なくとも80%は、ケイ素、鉄、マグネシウム、マンガン、チタン、及び/又はストロンチウムで構成される。
【0151】
製品500のいくつかの例では、合金化補充物506は、一種類以上のインゴットの形で供給されることがある。これら一種類または複数種類のインゴットは、合金化補充物506の複数の元素のうちの少なくとも二種類の元素が、混合され溶融されたものである。製品500のいくつかの例では、合金化補充物506は、複数の元素のそれぞれがまとめて混合され溶融されている単一の合金インゴットのことがある。
【0152】
次に、
図6を参照すると、合金化補充物を供給する方法600が示される。方法600は、ステップ602において推定質量を受け取ることから始まる。ステップ602で受け取られる推定質量は、アルミニウム合金ホイール由来の複数のショットブラスト片の質量の測定値である。方法600における次のステップは、複数のショットブラスト片についての総合組成の推定値を受け取ることを含むステップ604である。ステップ604で受け取られる総合組成の推定値は、複数の元素それぞれについての元素濃度の推定値である元素濃度推定値の複数で構成される。本発明のいくつかの実施形態では、アルミニウム合金ホイール由来のショットブラスト片は、リサイクルステーションにおいて第一のパーティによって供給される。この第一のパーティは、例えば、アルミニウム合金ホイールリサイクル会社のことがある。この第一のパーティはまた、総合組成の推定値を決定することがある。アルミニウム合金ホイールリサイクル会社は、次に、アルミニウム合金ホイール由来の複数のショットブラスト片の質量の測定値と総合組成の推定値との両方を第二のパーティ、例えば合金化補充物を供給する事業を行う会社に送る。次に、この第二のパーティは、アルミニウム合金ホイール由来の複数のショットブラスト片の推定質量と総合組成の推定値との両方を、ステップ602及びステップ604のそれぞれにおいて上記のように受け取る。
【0153】
図6を更に参照すると、ステップ604に引き続いて、ステップ606ではずれ推定値が決定される。ずれ推定値は、ステップ604において受け取られた総合組成の推定値と被選択ターゲット合金とに少なくとも部分的に基づいて決定される。被選択ターゲット合金は、複数の元素それぞれの元素濃度の範囲である元素濃度範囲の複数を含んでいる。ずれ推定値を決定することはまた、複数の元素それぞれについて、その元素についての元素濃度推定値と被選択ターゲット合金におけるその元素についての元素濃度範囲との間のずれを決定することを含む。いくつかの実施形態では、少なくとも一種類の元素について、元素濃度推定値と、被選択ターゲット合金におけるその元素についての元素濃度範囲との間のずれは、ゼロではない。
【0154】
方法600のステップ608では、ステップ606において決定されるずれ推定値と、ステップ602において受け取った複数のショットブラスト片の推定質量とに基づいて、合金化補充物が決定される。合金化補充物は、補充物質量と補充物組成とを有している。合金化補充物は、複数のショットブラスト片と混合されて、総合組成の推定値を変化させて調整済み組成推定値とする。合金化補充物を複数のショットブラスト片に混入することにより、複数の元素のそれぞれについて、調整済み組成推定値におけるその元素についての元素濃度推定値が、ターゲット合金におけるその元素についての元素濃度範囲内となるように調整される。
【0155】
方法600のステップ610では、被選択ターゲット合金製の部品を製造するために、複数のショットブラスト片と組み合わせて使用するために、合金化補充物が供給される。いくつかの実施形態では、合金化補充物は、第三のパーティであるファウンドリ(製造工場)に供給される。この実施形態において、方法600は、合金化補充物と共に表示を提供することを更に含む。この表示は、第三のパーティであるファウンドリにおいて、合金化補充物の供給源とは異なる供給源から受け取られる複数のショットブラスト片と、合金化補充物とを関連付けるためのものである。例えば、ショットブラスト片は、第三のパーティによって上記の第一のパーティ(例えば、アルミニウム合金ホイールのリサイクル会社)から受け取られる一方、合金化補充物は、第三のパーティによって上記の第二のパーティ(例えば、合金化補充物を供給する事業を行う会社)から受け取られる。いくつかの場合に、第三のパーティは、ショットブラスト片のいくつかのバッチを第一のパーティから受け取ることがあり、各バッチは、それ自体の組成と被選択ターゲット合金とを有することがある。従って、合金化補充物を特定の複数のショットブラスト片、すなわちバッチと関連付けるための表示を提供する第二のパーティは、第三のパーティがターゲット合金を得るために合金化補充物を割り当て、適切なバッチと混合することを助ける。
【0156】
方法600のいくつかの実施形態では、ターゲット合金が選択される。ターゲット合金は、総合組成の推定値に少なくとも部分的に基づいて選択することができる。被選択ターゲット合金は、複数の元素のそれぞれについて、組成中のその元素の濃度が、複数の元素それぞれについての元素濃度範囲内に入るような組成を有するものと定義することができる。このようにすると、被選択ターゲット合金は、複数の元素のそれぞれについて、その元素についての元素濃度の範囲である元素濃度範囲の複数という観点で定義することができる。
【0157】
方法600のいくつかの実施形態では、被選択ターゲット合金は、複数のターゲット合金から選択することができる。各ターゲット合金は、そのターゲット合金についての特定の元素濃度範囲の複数という観点で定義される。被選択ターゲット合金を選択し、ずれ推定値を決定することは、総合組成の推定値と複数のターゲット合金それぞれの組成との比較を行うことを含むものとすることができ、これは、被選択ターゲット合金についてずれ推定値を決定することを含んでいる。複数のターゲット合金のそれぞれは、複数の元素それぞれの元素濃度の範囲である元素濃度範囲の複数を有している。方法600のこの実施形態では、ステップ610において、被選択ターゲット合金を選択することは、更にこの比較に基づいて行われる。例えば、上記のように、被選択ターゲット合金は、そのターゲット合金の単位質量当たりの値、ならびに総合組成がその被選択ターゲット合金について許容される範囲内となるように調整するために必要な合金化元素の価格に基づいて、選択することができる。
【0158】
方法600のいくつかの実施形態では、ステップ610において、合金化補充物を供給することは、複数の元素のうちの少なくとも二種類の元素を溶融し混合して、少なくとも一種類の合金インゴットとすることを含む。
【0159】
方法600のいくつかの実施形態では、合金化補充物は、ケイ素、鉄、マグネシウム、マンガン、チタン、ストロンチウム、亜鉛、銅、クロム、ニッケル、及びスズのうちの少なく二種類を含む。
【0160】
本明細書においては例のみにより本発明を記載した。添付の請求項によってのみ限定される本発明の要旨および範囲から逸脱することなく、これらの例示的な実施形態に対して種々の変更や変形を施すことができる。