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特許7448257画角及びコヒーレンス能動制御ランダム屈折素子及びその製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】画角及びコヒーレンス能動制御ランダム屈折素子及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/13 20060101AFI20240305BHJP
   G02F 1/13357 20060101ALI20240305BHJP
   G02F 1/139 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
G02F1/13 505
G02F1/13357
G02F1/139
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2022516294
(86)(22)【出願日】2020-08-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-17
(86)【国際出願番号】 KR2020011330
(87)【国際公開番号】W WO2021049778
(87)【国際公開日】2021-03-18
【審査請求日】2022-04-21
(31)【優先権主張番号】10-2019-0113032
(32)【優先日】2019-09-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和1年8月27日開催の19th International Meeting on Information Display(IMID 2019)におけるカンファレンスにおいて発表
(73)【特許権者】
【識別番号】521026585
【氏名又は名称】キョンブク ナショナル ユニヴァーシティ インダストリー-アカデミック コオペレーション ファウンデーション
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】キム,ハク-リン
(72)【発明者】
【氏名】ジョー,キュン-イル
(72)【発明者】
【氏名】リー,テ-ヒュン
(72)【発明者】
【氏名】パク,ミン-キュ
【審査官】岩村 貴
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2018-0099138(KR,A)
【文献】特開平06-082635(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2010-0122315(KR,A)
【文献】特開昭61-289619(JP,A)
【文献】特開平09-152579(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0046897(US,A1)
【文献】韓国登録特許第10-1886793(KR,B1)
【文献】特開平05-204001(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0169965(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/13
G02F 1/1335-1/13357
G02F 1/139
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画角及びコヒーレンス能動制御が可能であり、カラーモアレ(color moire)除去が可能である能動形ランダム屈折素子であって、光の偏光方向に関わらず同一な屈折率を特性を有する等方性媒質で成されるランダム構造体と、前記ランダム構造体上に配向され、前記光の偏光方向に応じて屈折率特性が変化する液晶相高分子と、
前記光の偏光方向を互いに直交する第1の方向及び第2方向との間にスイッチングする偏光スイッチング素子と、を含み、前記ランダム構造体と前記液晶相高分子との間の屈折面は、光の入射方向と垂直になる水平方向に沿って傾斜角度がランダムに分布され、前記能動形ランダム屈折素子は、前記光の偏光に応じて透過モードと屈折モードとの間に転換され、
前記透過モードは、前記ランダム構造体と前記液晶相高分子との間の屈折率マッチングによって前記屈折面で前記光が屈折されなく、透過されるモードであり、前記屈折モードは、前記ランダム構造体と前記液晶相高分子との間の屈折率不調和によって前記屈折面で前記光が屈折されるモードであり、
前記ランダム構造体は、基板の第1面上に提供される第1ランダム構造体及び前記基板の第2面上に提供される第2ランダム構造体を含み、単一のランダム構造体より広い視野角確保が可能であり、前記単一のランダム構造体より高いコヒーレンス特性制御性能を有する、能動形ランダム屈折素子。
【請求項2】
前記ランダム構造体は、一方向にランダム構造を有する1次元配列ランダム構造体又は両方向にランダム構造を有する2次元配列ランダム構造体を含み、前記ランダム構造は、レンズ構造又はピラミッド構造を有する請求項1に記載の能動形ランダム屈折素子。
【請求項3】
前記偏光スイッチング素子は、液晶及び前記液晶に電圧を印加する一対の電極を含み、前記ランダム構造体と分離された構造によって18m/s以上の高速応答速度を有し、5V以下の低電圧駆動が可能である請求項1に記載の能動形ランダム屈折素子。
【請求項4】
前記ランダム構造体上に塗布された前記液晶相高分子の重合反応を通じた配向のために前記液晶相高分子を覆うフィルム基板をさらに含み、前記能動形ランダム屈折素子の厚さ減少及び透過度改善のために、前記フィルム基板は、前記液晶相高分子が配向された後、前記液晶相高分子から分離可能に提供される請求項1に記載の能動形ランダム屈折素子。
【請求項5】
前記液晶相高分子は、前記第1ランダム構造体上に提供される第1液晶相高分子及び前記第2ランダム構造体上に提供される第2液晶相高分子を含む請求項1に記載の能動形ランダム屈折素子。
【請求項6】
前記第1ランダム構造体と前記第1液晶相高分子との間の屈折面は、光の入射方向と垂直になる水平方向に沿って傾斜角度がランダムに分布され、前記第2ランダム構造体と前記第2液晶相高分子との間の屈折面は、前記水平方向に沿って傾斜角度がランダムに分布される請求項に記載の能動形ランダム屈折素子。
【請求項7】
前記能動形ランダム屈折素子は、直進性を有する指向性バックライトユニットの光を直進性を有するコヒーレンスモードと、広視野角を有し、コヒーレンスが制御された面光源モードとの間に転換する能動形バックライトユニットである、請求項1に記載の能動形ランダム屈折素子。
【請求項8】
入射偏光維持が可能な画角及びコヒーレンス制御のために、前記偏光スイッチング素子は、前記ランダム構造体及び前記液晶相高分子を基準に反対側に提供されて積層される第1偏光スイッチング素子及び第2偏光スイッチング素子を含む請求項1に記載の能動形ランダム屈折素子。
【請求項9】
前記第1偏光スイッチング素子及び前記第2偏光スイッチング素子は、前記光の偏光方向を互いに直交する第1の方向及び第2方向との間にスイッチングする請求項に記載の能動形ランダム屈折素子。
【請求項10】
前記第1偏光スイッチング素子は、前記ランダム構造体に入射される光の偏光をスイッチングするように前記光の進行方向を基準に前記液晶相高分子及び前記ランダム構造体の前方に提供され、前記第2偏光スイッチング素子は、前記液晶相高分子から出力された光の偏光をスイッチングするように前記光の進行方向を基準に前記ランダム構造体及び前記液晶相高分子の後方に提供される請求項に記載の能動形ランダム屈折素子。
【請求項11】
前記第2偏光スイッチング素子は、前記第2偏光スイッチング素子を通過した光の偏光状態が前記第1偏光スイッチング素子に入射される前の光の偏光状態と同一になるように、前記光の偏光をスイッチングする請求項10に記載の能動形ランダム屈折素子。
【請求項12】
前記能動形ランダム屈折素子は、偏光板を具備する液晶表示装置(LCD)又は空間光変調器(SLM)パネルに対する能動形バックライトユニット(BLU)である、請求項に記載の能動形ランダム屈折素子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画角及びコヒーレンス能動制御ランダム屈折素子及びその製造方法に関し、より詳細にはランダム構造体と分離された構造を有し、電気的にスイッチング可能な能動形偏光スイッチング素子を利用して、高い視野角を確保することと共に高電圧駆動及び低い応答速度問題を解決することができる能動形ランダム屈折素子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図1は電界を利用したポリマー安定化コレステリックフィルム(PSCT;polymer stabilised cholesteric texture films)の概念図である。PSCTはコレステリック(cholesterics)液晶にポリマーが混合されている構造であって、初期電界が印加されないオフ状態(off state)では図1の(a)に図示されたようにコレステリック液晶がランダムに分布されているポカルコニック状態を有し、入射する光を散乱させる散乱モード(scattering mode)になる。PSCTは電界が印加されるオン状態(on state)では図1の(b)に図示されたようにすべての液晶が電極と垂直になる方向に整列され、入射する光は散乱無しで透過する透過モード(transparent mode)になる。PSCTはコレステリック液晶を安定化するために使用されるポリマーの量が少ないので、斜めの光線(oblique ray)に対するヘイズ(haze)特性が少ない長所を有している。しかし、視野角(散乱度)を確保するためには液晶素子のセルギャップが大きくなければならなく、これによってオン/オフ(on/off)転換のための駆動電圧が増加するようになる。即ち、駆動電圧と視野角特性はトレードオフ(trade off)関係を有し、低い駆動電圧と高い視野角を同時に確保することは不可能である。
【0003】
図2は電界を利用したポリマー分散液晶(PDLC;Polymer Dispersed Liquid Crystal)の概念図である。PDLCは高分子物質内に微細な液晶滴が形成されている構造であって、光硬化性高分子物質が液晶と混合された後、紫外線(UV)によって高分子物質の原料が重合反応(polymerization)する。重合される前に液晶分子と高分子は上分離を引き起こして高分子ネットワークの間に小さい液晶滴を形成する。初期電界が印加されないオフ状態(off state)で、液晶滴内の液晶は図2の(a)に図示されたように方向性がない整列で平均屈折率を有するようになり、入射される光は屈折率の不調和(index mismatching)に応じて不透明に散乱するようになる。電界が印加されるオン状態(on state)で、液晶滴の液晶は図2の(b)に図示されたように電界方向に整列され、液晶滴の有効屈折率は高分子の屈折率と同一になり、入射する光は屈折率不調和による屈折率の差を受けずに素子を透過するようになる。PDLCは液晶配向のための工程が省略されるので、製造工程が簡単であるという長所があり、透過モード(transparent mode)である時に高い透過特性を示す。しかし、PDLSはPSCTと同様に高い視野角を確保するために、高い駆動電圧を要求するという短所があり、液晶と混合する高分子物質の濃度が相当に高いので、透過状態である時に斜めの光線にヘイズ(haze)特性が存在するようになる。したがって、低い駆動電圧と高い視野角を同時に確保するのが不可能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は視野角と駆動電圧との間のトレードオフ(trade off)関係を解決することができ、既存技術の駆動電圧対比高い視野角を有する能動形ランダム屈折素子を提供することにある。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は以上で言及された課題に制限されない。言及されない他の技術的課題は以下の記載から本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者に明確に理解されるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による能動形ランダム屈折素子は画角及びコヒーレンス能動制御が可能であり、カラーモアレ(color moire)除去が可能である能動形ランダム屈折素子であって、光の偏光方向に関わらず同一な屈折率を特性を有する等方性媒質で成されるランダム構造体と、前記ランダム構造体上に配向され、前記光の偏光方向に応じて屈折率特性が変化する液晶相高分子と、前記光の偏光方向を互いに直交する第1の方向及び第2方向との間にスイッチングする偏光スイッチング素子と、を含む。前記ランダム構造体と前記液晶相高分子との間の屈折面は光の入射方向と垂直になる水平方向に沿って傾斜角度がランダムに分布される。前記能動形ランダム屈折素子は前記光の偏光に応じて透過モードと屈折モードとの間に転換される。前記透過モードは前記ランダム構造体と前記液晶相高分子との間の屈折率マッチングによって前記屈折面で前記光が屈折されなく、透過されるモードであり、前記屈折モードは前記ランダム構造体と前記液晶相高分子との間の屈折率不調和によって前記屈折面で前記光が屈折されるモードである。
【0007】
前記ランダム構造体は一方向にランダム構造を有する1次元配列ランダム構造体又は両方向にランダム構造を有する2次元配列ランダム構造体を含むことができる。前記ランダム構造はレンズ構造又はピラミッド構造を有することができる。
【0008】
前記ランダム構造体は、視野角確保及び干渉性特性制御が可能であるように、<110>シリコン基板の異方性選択化学エッチングを通じて設定値以上の充填因子及び傾斜角度を有するように製作されたランダムピラミッド構造体に対するインプリンティング工程を通じて、前記設定値以上の充填因子及び傾斜角度のピラミッド構造を有することができる。
【0009】
前記偏光スイッチング素子は、液晶及び前記液晶に電圧を印加する一対の電極を含み、前記ランダム構造体と分離された構造によって18m/s以上の高速応答速度を有し、5V以下の低電圧駆動が可能することができる。
【0010】
本発明の実施形態による能動形ランダム屈折素子は前記ランダム構造体上に塗布された前記液晶相高分子の重合反応を通じた配向のために前記液晶相高分子を覆うフィルム基板をさらに含むことができる。前記能動形ランダム屈折素子の厚さ減少及び透過度改善のために、前記フィルム基板は前記液晶相高分子が配向された後、前記液晶相高分子から分離可能に提供されることができる。
【0011】
前記ランダム構造体は、基板の第1面上に提供される第1ランダム構造体及び前記基板の第2面上に提供される第2ランダム構造体を含むことができる。前記ランダム構造体は、単一のランダム構造体より広い視野角確保が可能であり、前記単一のランダム構造体より高いコヒーレンス特性制御性能を有することができる。
【0012】
前記液晶相高分子は、前記第1ランダム構造体上に提供される第1液晶相高分子及び前記第2ランダム構造体上に提供される第2液晶相高分子を含むことができる。
【0013】
前記第1ランダム構造体と前記第1液晶相高分子との間の屈折面は光の入射方向と垂直になる水平方向に沿って傾斜角度がランダムに分布されることができる。前記第2ランダム構造体と前記第2液晶相高分子との間の屈折面は前記水平方向に沿って傾斜角度がランダムに分布されることができる。
【0014】
前記能動形ランダム屈折素子は、直進性を有する指向性バックライトユニットの光を直進性を有するコヒーレンスモードと、広視野角を有し、コヒーレンスが制御された面光源モードとの間に転換する能動形バックライトユニットとして使用されることができる。
【0015】
入射偏光維持が可能な画角及びコヒーレンス制御のために、前記偏光スイッチング素子は、前記ランダム構造体及び前記反応性メソゲンを基準に反対側に提供されて積層される第1偏光スイッチング素子及び第2偏光スイッチング素子を含むことができる。
【0016】
前記第1偏光スイッチング素子及び前記第2偏光スイッチング素子は前記光の偏光方向を互いに直交する第1の方向及び第2方向との間にスイッチングすることができる。
【0017】
前記第1偏光スイッチング素子は前記ランダム構造体に入射される光の偏光をスイッチングするように前記光の進行方向を基準に前記反応性メソゲン及び前記ランダム構造体の前方に提供されることができる。前記第2偏光スイッチング素子は前記反応性メソゲンから出力された光の偏光をスイッチングするように前記光の進行方向を基準に前記ランダム構造体及び前記反応性メソゲンの後方に提供されることができる。
【0018】
前記第2偏光スイッチング素子は、前記第2偏光スイッチング素子を通過した光の偏光状態が前記第1偏光スイッチング素子に入射される前の光の偏光状態と同一になるように、前記光の偏光をスイッチングすることができる。
【0019】
前記能動形ランダム屈折素子は、偏光板を具備する液晶表示装置(LCD)又は空間光変調器(SLM)パネルに対する能動形バックライトユニット(BLU)として使用されることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の実施形態によれば、視野角と駆動電圧との間のトレードオフ(trade off)関係を解決することができ、既存技術の駆動電圧対比高い視野角を有する能動形ランダム屈折素子が提供される。
【0021】
本発明の効果は上述した効果によって制限されない。上述されない効果は本明細書及び添付された図面から本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者に明確に理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】電界を利用したポリマー安定化コレステリックフィルム(PSCT;polymer stabilised cholesteric texture films)の概念図である。
図2】電界を利用したポリマー分散液晶(PDLC;Polymer Dispersed Liquid Crystal)の概念図である。
図3】本発明の実施形態による能動形ランダム屈折素子システムの構造を示した図面である。
図4A-4D】本発明の実施形態による能動形ランダム屈折素子の製作方法を示した図面である。
図5】ランダム屈折素子をインプリンティング方式に製作するために使用されたランダムモールドテンプレート(random-mold template)の電子顕微鏡写真である。
図6】本発明の実施形態によって製作された能動形ランダム屈折素子のランダム屈折モードである時の視野角特性を示す。
図7】マッハツェンダー干渉計実験のセットアップ模式図である。
図8】撮影されたフリンジパターンとフリンジ可視性値を示す。
図9】透過モードで能動形ランダム屈折素子がない時のフリンジパターンのフリンジ可視性値と能動形ランダム屈折素子がある時のフリンジパターンのフリンジ可視性値を比較したイメージである。
図10】能動形ランダム屈折素子のランダム屈折モードと能動形周期的屈折素子の周期的屈折モードのフリンジパターンを撮影するための実験セットアップを示した模式図である。
図11】撮影されたイメージである。
図12】ランバシアン形態に表示されるディスプレー上で、能動形ランダム屈折素子のランダム屈折モード及び透過モードに応じる結像を確認するための模式図と、カメラによって撮影されたイメージである。
図13】ランバシアン形態に表示されるディスプレー上に白色イメージを表示した後、能動形ランダム屈折素子のランダム屈折モードと能動形周期的屈折素子の周期的屈折モードの結像特性を確認したイメージである。
図14A-14B】能動形ランダム屈折素子として使用される2D形ランダム構造体の実施形態である。
図15】能動形ランダム屈折素子として使用される2D形ランダム構造体の実施形態である。
図16】本発明の他の実施形態による積層構造の能動形ランダム屈折素子を示した図面である。
図17】本発明のその他の実施形態による入射偏光維持が可能な能動形ランダム屈折素子の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の他の長所及び特徴、そしてそれらを達成する方法は添付される図面と共に詳細に後述される実施形態を参照すれば、明確になる。しかし、本発明は以下では開示される実施形態に限定されなく、本発明は請求項の範疇によって定義される。もし定義されてなくても、ここで使用されるすべての用語(技術或いは科学用語を含む)はこの発明が属する従来技術で普遍的な技術によって一般的に収容されることと同一な意味を有する。公知された構成に対する一般的な説明は本発明の要旨をぼかさないために省略されることができる。本発明の図面で同一であるか、或いは相応する構成に対してはなるべく同一な図面符号が使用される。本発明の理解を助けるために、図面で一部構成は若干誇張されるか、或いは縮小されて図示されることができる。
【0024】
本出願で使用した用語は単なる特定な実施形態を説明するために使用されたことであり、本発明を限定しようとする意図ではない。単数の表現は文脈の上に明確に異なりに表現しない限り、複数の表現を含む。本出願で、“含む”、“有する”又は“具備する”等の用語は明細書上に記載された特徴、数字、段階、動作、構成要素、部分品、又はこれらを組み合わせたものが存在することを指定しようとすることがであり、1つ又はそれ以上の他の特徴や数字、段階、動作、構成要素、部分品、又はこれらを組み合わせたものの存在又は付加可能性を予め排除しないことと理解されなければならない。
【0025】
図3は本発明の実施形態による能動形ランダム屈折素子システムの構造を示した図面である。本発明の実施形態による能動形ランダム屈折素子システム100はランダムな構造体(ランダム構造プリズム)に液晶相高分子(RM;reactive mesogen)が配向された構造であって、反応性メソゲン110、ランダム構造体120、露出ガラス基板130及び偏光スイッチング素子(TN cell)140を含む。反応性メソゲン110は偏光方向に応じて屈折率特性が変わる複屈折媒質である。ランダム構造体120は偏光方向に関わらず、同一な屈折率を特性を有する等方性(isotropic)媒質である。露出ガラス基板(bare glass)130はランダム構造体のインプリンティングのための基板として使用される。偏光スイッチング素子(TN cell)140は偏光をスイッチングするための素子として使用される。入射する光は複屈折媒質の長軸方向と同一な方向に入射され、偏光スイッチング素子(TN cell)140は液晶に印加される電圧をオン/オフ(on/off)することによって、偏光方向を互いに直交(orthogonal)する状態に変換させる。偏光スイッチング素子140は液晶に選択的に電圧を印加する一対の電極を含むことができる。
【0026】
本発明の実施形態による能動形ランダム屈折素子システムは入射する光の偏光に応じって透過する透過モード(transparent mode)、ランダムに屈折するランダム屈折モード(random-refraction mode)を有する。複屈折特性を有する反応性メソゲン(RM)110の長軸方向屈折率をn、短縮方向屈折率をnであるとすれば、入射する光の偏光方向が短縮方向と一致する場合(図3の(a))、RMの屈折率はnであり、これはランダム構造体の屈折率nと一致して屈折しない(transparent mode)。入射する光の偏光方向が長軸方向と一致する場合(図3の(b))、RMの屈折率はnであり、これはレンズ構造体120の屈折率nと差を有するようになり、ランダム構造体120の傾斜角度(slope angle)に応じて屈折するようになる(random-refraction mode)。
【0027】
本発明の実施形態によってランダム構造体120を導入することによって、既存の能動形プリズムの周期的な構造で発生する干渉(coherence)特性及びディスプレーイメージ(display image)上で発生するカラーモアレ(color moire)現象制御が可能である。本発明の実施形態によるランダム屈折素子は偏光依存特性に応じてモードが変わり、入射する光の偏光転換のための偏光スイッチング素子(TN cell)140を具備する。本発明の実施形態によるランダム屈折素子は液晶基盤のスイッチング素子であるので、低い駆動電圧(~5V)と速い応答速度(~18.6m/s)を有する。また、視野角特性がランダム構造体120の充填因子(fill-factor)及び傾斜角度(slope angle)変化に応じて制御されるので、別に存在する偏光スイッチング部の駆動電圧は影響を受けない。即ち、視野角と駆動電圧との間のトレードオフ関係を解決することができる。
【0028】
図4A乃至図4Dは本発明の実施形態による能動形ランダム屈折素子の製作方法を示した図面である。図5はランダム屈折素子をインプリンティング方式に製作するために使用されたランダムモールドテンプレート(random-mold template)の電子顕微鏡写真である。ランダムモールドテンプレートはサンドブラスト(sandblast)技法で微細に蝕刻して製作したサンドブラストテンプレート(図5の(a))、ビーズ(bead)を利用して製作したランダムビーズテンプレート(図5の(b))、又は<110>si wafer基板を異方性選択化学エッチング(anisotropic selective chemical etching)して製作したランダムピラミッド(pyramid)テンプレート(図5の(c))等が使用されることができる。
【0029】
ランダム屈折素子を製作するために、ガラス(Glass)基板10に光硬化性物質20(例えば、NOA 89(n=1.51))を塗布した後、ランダムモールドテンプレート(random mold template)30を覆い、紫外線(UV)を照射(20mW/cm、2分)した後に、ランダムモールドテンプレート30を分離することによってランダムモールドテンプレート30の逆像を有するランダム構造体120を製造することができる(図4A)。その後、RM(reactive mesogen)配向用親水性ポリビニルアルコール(PVA)薄膜形成のために、UVオゾン処理をした後、PVAをコーティング及び熱処理(9℃、30分)した後、ラビング工程を進行する(図4B)。その後、RM110をランダム構造体120上に落とし、フィルム基板40を覆ってUV照射(20mW/cm、1分)した後、上部フィルム基板40を分離する(図4C)。上部フィルム基板40もまた下部基板10と同様に配向のための工程処理過程を進行する。その後、分離された素子の下部に偏光スイッチング素子(TN_cell)140を付着させるために、UV硬化性接着層(adhesive layer)150(例えば、NOA 69)を塗布した後、分離した素子を付着し、UV硬化させる(図4D)。
【0030】
図6は本発明の実施形態によって製作された能動形ランダム屈折素子のランダム屈折モードである時の視野角特性を示す。視野角特性は充填因子(fill-factor)が大きく、高い傾斜角度(slope angle)を有するランダムピラミッドテンプレート(random pyramid template)を適用する時、最も高い特性を示している。製作された能動形ランダム屈折素子はスイッチング素子部とランダム構造体部が分離されているので、駆動電圧と関わらずランダムモールドテンプレートの充填因子が大きく、傾斜角度が高いほど、視野角が向上される。
【0031】
図7はマッハツェンダー干渉計実験のセットアップ(set up)模式図である。本発明の実施形態によって製作された能動形ランダム屈折素子の干渉(coherence)特性を評価するために、マッハツェンダー干渉計を利用してフリンジ(fringe)パターンを形成し、能動形ランダム素子のスイッチング部に印加される電圧別にフリンジ可視性(fringe visibility)を評価するための実験をした。図8は撮影されたフリンジパターンとフリンジ可視性値を示す。ランダム屈折モード(random-refraction mode)で透過モード(transparent mode)に転換されるほど、フリンジ可視性(fringe visibility)値が増加されたことを確認した。即ち、スイッチング部の電圧に応じて干渉(coherence)特性の制御が可能である。
【0032】
図9は透過モードで能動形ランダム屈折素子がない時のフリンジパターンのフリンジ可視性値(図9の左側図面)と能動形ランダム屈折素子がある時のフリンジパターンのフリンジ可視性値(図9の右側図面)を比較したイメージで、どちらの場合に大きな差がないことを確認することができる。即ち、透過モード(transparent mode)である時、干渉(coherence)特性が良く維持されることを示す。
【0033】
図10は能動形ランダム屈折素子(Active switching random-refraction device)のランダム屈折モード(random-refraction mode)と能動形周期的屈折素子(Active switching periodic-refraction device)の周期的屈折モード(periodic-refraction mode)のフリンジパターンを撮影するための実験セットアップを示した模式図であり、図11は撮影されたイメージを示す。能動形ランダム屈折素子の場合、干渉(coherence)特性が制御されてフリンジパターンがなくなり、能動形周期的屈折素子の場合、規則的な構造によって干渉特性が制御されないので、フリンジパターンが残っていることを示す。
【0034】
図12はランバシアン形態に表示されるディスプレー上で、能動形ランダム屈折素子100のランダム屈折モード及び透過モードに応じる結像を確認するための模式図であり、カメラによって撮影されたイメージである。透過モードでは透過された光が屈折率マッチング(index matching)を満足して、歪みのないイメージが獲得され、屈折モードでは透過された光が屈折率不調和(index mismatching)になって、屈折によって重畳されたぼやけたイメージが観測された。
【0035】
図13はランバシアン形態に表示されるディスプレー上に白色イメージ(white image)を表示した後、能動形ランダム屈折素子100のランダム屈折モードと能動形周期的屈折素子の周期的屈折モードの結像特性を確認したイメージである。非周期的な構造体の場合、白色イメージがそのまま結像されたが、能動形周期的屈折素子の場合、周期的な構造体によってカラーモアレ現象が観測されることを確認することができる。即ち、非周期的な構造体を適用する時、カラーモアレ現象を除去することができることを示す。
【0036】
図14A及び図14Bは能動形ランダム屈折素子として使用される2D形ランダム構造体(random-mold template)の実施形態である。2D形ランダム構造体を有する能動形ランダム屈折素子によれば、垂直(vertical)方向と水平(horizontal)方向全ての屈折が発生することができる。2D配列ランダム構造体はレンズ、ピラミッド等の様々な形状で製作されることができる。図14Aはランダムなレンズ構造体であって、短い焦点距離及び高い配向性を通じて、高い視野角特性を確保することができる。しかし、短い焦点距離を有するレンズを直接蝕刻するためには工程上の難しさと多い費用がかかる。図14Bはピラミッド構造物形状のランダム構造体であって、異方性選択化学エッチング(anisotropic selective chemical etching)工程を通じて大きい充填因子(fill-factor)及び高い傾斜角度(slope angle)を有することができ、比較的簡単な工程と少ない費用がかかる。また、特定方向に中心軸が偏ったピラミッド構造体を適用すれば、特定方向に高い視野角特性要求する応用先(自動車、display等)で使用が可能である。また、ピラミッド構造体は斜方形形態の構造を有するので、配向方向に応じてその特性が変わる。したがって、ピラミッド構造体の構造を把握した後、配向を行うことによって、さらに高い配向性を確保することができ、視野角を向上させることができる。
【0037】
図15は能動形ランダム屈折素子として使用される2D形ランダム構造体(random-mold template)の実施形態である。1D形ランダム構造体は垂直(vertical)方向又は水平(horizontal)方向の中で望む方向に視野角確保が可能である。1D形ランダム構造体は2D形ランダム構造体に比べて製作工程が簡単であり、谷方向に沿って配向が可能であるので、液晶相高分子の配向性がさらに向上されることができる。また、中心軸が特定方向に偏った1D形ランダム構造体(図15の(b))を利用して特定方向に視野角を確保することができる。1D形ランダム構造体はレンズ形状の構造体で提供されてもよい。
【0038】
図16は本発明の他の実施形態による積層構造の能動形ランダム屈折素子を示した図面である。図16は2つのランダム屈折素子が露出ガラス基板(bare glass)の両面に積層された構造を示す。能動形ランダム屈折素子はガラス基板130の第1面上に提供される第1ランダム構造体120、ガラス基板130の第2面上に提供される第2ランダム構造体120’、第1ランダム構造体120上に提供される第1液晶相高分子110、第2ランダム構造体120’上に提供される第2液晶相高分子110’及び偏光スイッチング素子140を含むことができる。
【0039】
第1ランダム構造体120と第1液晶相高分子110との間の屈折面は光の入射方向と垂直になる水平方向に沿って傾斜角度がランダムに分布されることができる。第2ランダム構造体120’と第2液晶相高分子110’との間の屈折面は光の入射方向と垂直になる水平方向に沿って傾斜角度がランダムに分布されることができる。積層構造を利用すれば、ランダム構造体の充填因子(fill factor)を上昇させ、傾斜角(slope angle)を高める方法より比較的簡単な工程で視野角を向上させることができる。また、積層構造に応じて透過度の低下が発生するので、露出ガラス(bare glass)の両面をインプリンティング基板として使用することができ、光硬化性液晶相高分子の上板フィルム分離を通じて透過度低下の問題を改善することができる。
【0040】
図17は本発明のその他の実施形態による入射偏光維持が可能な能動形ランダム屈折素子の模式図である。図17に図示された能動形ランダム屈折素子はランダム屈折素子の両面に各々偏光スイッチング素子140、140’を積層した構造を有する。
【0041】
能動形ランダム屈折素子はランダム構造体120及び反応性メソゲン110を基準に反対側に提供される第1偏光スイッチング素子140及び第2偏光スイッチング素子140’を含むことができる。第1偏光スイッチング素子140及び第2偏光スイッチング素子140’は光の偏光方向を互いに直交する第1の方向及び第2方向との間にスイッチングすることができる。第1偏光スイッチング素子140はランダム構造体120に入射される光の偏光をスイッチングするように光の進行方向を基準に反応性メソゲン110及びランダム構造体120の前方に提供されることができる。第2偏光スイッチング素子140’は反応性メソゲン110から出力された光の偏光をスイッチングするように光の進行方向を基準にランダム構造体120及び反応性メソゲン110の後方に提供されることができる。
【0042】
第2偏光スイッチング素子140’は第2偏光スイッチング素子140’を通過した光の偏光状態が第1偏光スイッチング素子140に入射される前の光の偏光状態と同一になるように、光の偏光をスイッチングすることができる。図17の実施形態によれば、入射前の偏光状態と入射後の偏光状態を同様に維持させることができる。即ち、入射前と後の偏光を維持したまま、画角及びコヒーレンス制御が可能であるので、偏光フィルターを使用するディスプレー装置(LCD;Liquid crystal display、SLM;Spatial Light Modulator)に使用が可能である。
【0043】
上述したように、本発明の実施形態による能動形ランダム屈折素子は偏光スイッチング部とランダム構造体部分が分離されているので、ランダム構造体の表面モルフォロージー(mopology)特性と液晶基盤の偏光スイッチング素子を通じて、低い駆動電圧、速い応答速度、速いモード転換速度、及び高い視野角特性を得ることができる。本発明の実施形態によれば、偏光スイッチング部の電圧調節及びランダム構造体導入によって入射ビームのランダム屈折を発生させることができ、周期的な構造が有する干渉(coherence)特性の制御が可能であり、ディスプレーイメージに適用する時、カラーモアレ現象を防止することができる。
【0044】
また、積層構造を利用して能動形ランダム屈折素子を製作する時、光硬化性液晶相高分子の基板フィルム除去とガラス基板両面インプリンティングが可能である。したがって、透過率の減少を最小化することができる。本発明の実施形態による能動形ランダム屈折素子は直進性を有する指向性BLU(back light unit)を広視野角を有する面光源モードに変換することができる。本発明の実施形態による能動形ランダム屈折素子は1D配列のレンズ形状(lenticular)のランダム構造体又は2D配列ランダム構造体(lens、pyramid等)で製作されることができる。本発明の実施形態による能動形ランダム屈折素子は<110>シリコンウエハ基板工程を通じて大きいfill-factor及び高い傾斜角度を有するランダムピラミッド構造体基板のインプリンティングを通じて比較的簡単な工程及び低コストで製作が可能である。また、偏光スイッチング部をランダム屈折素子の両面に積層することによって、入射偏光状態を維持したまま、画角及びコヒーレンス制御が可能である。本発明の実施形態による能動形ランダム屈折素子はスマートウインドー(smart window)、自動車ディスプレー、モバイルディスプレー等の様々な分野に応用されることができる。
【0045】
以上の実施形態は本発明の理解を助けるために提示されたことであって、本発明の範囲を制限しなく、これから多様な変形可能な実施形態も本発明の範囲に属することであることを理解しなければならない。本発明の保護範囲は請求範囲の技術的思想によって定められなければならないものであり、本発明の保護範囲は請求範囲の文言的記載その自体に限定されることではなく、実質的には技術的価値が均等な範疇の発明まで及ぶことであることを理解しなければならない。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14A
図14B
図15
図16
図17