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特許7448264チケット流通管理システム、チケット流通管理方法及びチケット流通管理プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】チケット流通管理システム、チケット流通管理方法及びチケット流通管理プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/10 20120101AFI20240305BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20240305BHJP
   G06T 7/20 20170101ALI20240305BHJP
   G06V 40/16 20220101ALI20240305BHJP
   G06V 40/20 20220101ALI20240305BHJP
   G06V 40/40 20220101ALI20240305BHJP
【FI】
G06Q50/10
G06T7/00 350B
G06T7/00 510F
G06T7/20 300A
G06V40/16 A
G06V40/20
G06V40/40
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2023048464
(22)【出願日】2023-03-24
【審査請求日】2023-03-24
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519344969
【氏名又は名称】株式会社PocketRD
(74)【代理人】
【識別番号】230112911
【弁護士】
【氏名又は名称】三和 圭二郎
(72)【発明者】
【氏名】松本 晃宏
(72)【発明者】
【氏名】内田 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】籾倉宏哉
【審査官】庄司 琴美
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2022/014062(WO,A1)
【文献】特開2022-117025(JP,A)
【文献】特開2022-100522(JP,A)
【文献】国際公開第2021/111653(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2021/0006558(US,A1)
【文献】特開2020-003927(JP,A)
【文献】国際公開第2020/022014(WO,A1)
【文献】特開2021-051585(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
G06T 7/00
G06T 7/20
G06V 40/16
G06V 40/40
G06V 40/20
G06F 21/00
H04L 12/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第三者が提供するサービスの利用権限を表章するチケットの所有権の移転を管理するチケット流通管理システムであって、
チケットの譲受予定者に対し、自身を逐次的に撮影したリアルタイム映像の入力を指示する映像入力指示手段と、
前記譲受予定者に対し、複数の候補の中から選択した身体部位の動作を内容とする身体動作を行うよう指示する身体動作指示手段と、
前記映像入力指示手段の指示に応じて入力された認証用映像中の人物における前記身体部位の動作と、前記身体動作指示手段によって指示された身体動作とを比較分析する動作映像分析手段と、
前記動作映像分析手段の分析結果に基づき、前記認証用映像がリアルタイム映像であるか否かを判定する映像判定手段と、
前記映像判定手段によって前記認証用映像がリアルタイム映像であると判定された場合に、前記認証用映像中の人物の顔画像と、前記譲受予定者の本人確認用の顔画像とを比較分析して本人認証を行う本人認証手段と、
前記認証映像中における人物が前記譲受予定者本人であると認証できた場合に前記譲受予定者に対する前記チケットの所有権の移転を有効と判定する移転判定手段と、
対応関係にあるチケットの所有者の変動に応じて変更後の所有者と一致するよう、分散型ネットワーク上に保存された分散型台帳に記録された、非代替トークンである対応トークンの保有名義を変更する情報である保有名義変更情報を生成するよう指示する変更情報生成指示手段と、
前記変更情報を前記分散型ネットワークに対し出力するよう指示する出力指示手段と、
を備え、
前記身体動作指示手段は、前記身体動作に関する指示のうち少なくとも一部において実現不可能な内容からなる身体動作を行うよう指示し、
前記身体動作指示手段が実現不可能な内容からなる身体動作を指示したときに前記認証用映像中の人物の顔面の表情変化を分析する顔面映像分析手段をさらに備え、
前記映像判定手段は、前記動作映像分析手段の分析結果、前記譲受予定者が身体部位以外の異物を操作する映像を分析する異物近傍映像分析手段の分析結果及び前記顔面映像分析手段の分析結果の全てに基づき前記認証用映像がリアルタイム映像であるか否かを判定することを特徴とするチケット流通管理システム。
【請求項2】
前記譲受予定者に対し、複数の候補の中から選択した身体部位以外の異物に対する操作を内容とする異物操作を行うよう指示する異物操作指示手段と、
前記映像入力指示手段の指示に応じて入力された認証用映像中における前記異物及び前記異物周辺に対応した異物近傍映像を分析する異物近傍映像分析手段と、
をさらに備え、
前記映像判定手段は、前記動作映像分析手段の分析結果及び前記異物近傍映像分析手段の分析結果の双方に基づき前記認証用映像がリアルタイム映像であるか否かを判定することを特徴とする請求項1記載のチケット流通管理システム。
【請求項3】
コンピュータを用いて構築されたチケット流通管理システムにおいて第三者が提供するサービスの利用権限を表章するチケットの所有権の移転を管理するチケット流通管理方法であって、
チケットの譲受予定者に対し、自身を逐次的に撮影したリアルタイム映像の入力を指示する映像入力指示ステップと、
前記譲受予定者に対し、複数の候補の中から選択した身体部位の動作を内容とする身体動作を行うよう指示する身体動作指示ステップと、
前記映像入力指示ステップにおける指示に応じて入力された認証用映像中の人物における前記身体部位の動作と、前記身体動作指示ステップにおいて指示された身体動作とを比較分析する動作映像分析ステップと、
前記動作映像分析ステップにおける分析結果に基づき、前記認証用映像がリアルタイム映像であるか否かを判定する映像判定ステップと、
前記映像判定ステップにおいて前記認証用映像がリアルタイム映像であると判定された場合に、前記認証用映像中の人物の顔画像と、前記譲受予定者の本人確認用の顔画像とを比較照合して本人認証を行う本人認証ステップと、
前記認証用映像中における人物が前記譲受予定者本人であると認証できた場合に前記譲受予定者に対する前記チケットの所有権の移転を有効と判定する移転判定ステップと、
対応関係にあるチケットの所有者の変動に応じて変更後の所有者と一致するよう、分散型ネットワーク上に保存された分散型台帳に記録された、非代替トークンである対応トークンの保有名義を変更する情報である保有名義変更情報を生成するよう指示する変更情報生成指示ステップと、
前記変更情報を前記分散型ネットワークに対し出力するよう指示する出力指示ステップと、
を含み、
前記身体動作指示ステップにおいて前記身体動作に関する指示のうち少なくとも一部において実現不可能な内容からなる身体動作を行うよう指示し、
前記身体動作指示ステップにおいて実現不可能な内容からなる身体動作が指示されたときに前記認証用映像中の人物の顔面の表情変化を分析する顔面映像分析ステップをさらに含み、
前記映像判定ステップにおいて、前記動作映像分析ステップの分析結果及び前記顔面映像分析ステップの分析結果の双方に基づき前記認証用映像がリアルタイム映像であるか否かを判定することを特徴とするチケット流通管理方法。
【請求項4】
第三者が提供するサービスの利用権限を表章するチケットの所有権移転の管理をコンピュータに行わせるチケット流通管理プログラムであって、
前記コンピュータに対し、
チケットの譲受予定者に対し、自身を逐次的に撮影したリアルタイム映像の入力を指示する映像入力指示機能と、
前記譲受予定者に対し、複数の候補の中から選択した身体部位の動作を内容とする身体動作を行うよう指示する身体動作指示機能と、
前記映像入力指示機能の指示に応じて入力された認証用映像中の人物における前記身体部位の動作と、前記身体動作指示機能によって指示された身体動作とを比較分析する動作映像分析機能と、
前記動作映像分析機能の分析結果に基づき、前記認証用映像がリアルタイム映像であるか否かを判定する映像判定機能と、
前記映像判定機能によって前記認証用映像がリアルタイム映像であると判定された場合に、前記認証用映像中の人物の顔画像と、前記譲受予定者の本人確認用の顔画像とを比較照合して本人認証を行う本人認証機能と、
前記認証映像中における人物が前記譲受予定者本人であると認証できた場合に前記譲受予定者に対する前記チケットの所有権の移転を有効と判定する移転判定機能と、
対応関係にあるチケットの所有者の変動に応じて変更後の所有者と一致するよう、分散型ネットワーク上に保存された分散型台帳に記録された、非代替トークンである対応トークンの保有名義を変更する情報である保有名義変更情報を生成するよう指示する変更情報生成指示機能と、
前記変更情報を前記分散型ネットワークに対し出力するよう指示する出力指示機能と、
を実行させ
前記身体動作指示機能は、前記身体動作に関する指示のうち少なくとも一部において実現不可能な内容からなる身体動作を行うよう指示し、
前記身体動作指示機能が実現不可能な内容からなる身体動作が指示されたときに前記認証用映像中の人物の顔面の表情変化を分析する顔面映像分析機能をさらに実行させ、
前記映像判定機能は、前記動作映像分析機能の分析結果及び前記顔面映像分析機能の分析結果の双方に基づき前記認証用映像がリアルタイム映像であるか否かを判定することを特徴とするチケット流通管理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チケットの所有権移転の際において適切に本人確認を行う技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンサートの鑑賞券、美術館への入場券、ホテルの宿泊券さらには映画館での映画の鑑賞券などのサービス利用券としてのチケットに関して、いわゆるペーパーレス化、電子化が進められている。
【0003】
たとえば、特許文献1には、チケットIDを電子データである非対応トークン(Non-Fungible Token)に紐づけた上で、チケットの所有権移転に関する情報を非対応トークンに対応した分散型台帳に保存する電子チケット管理システムに関する技術が開示されている。また、特許文献2には、非対応トークンにてチケットを構成した上で、チケットの所有権移転に関する情報及び使用済みになったチケットについて使用済みであることの情報を非対応トークンに対応した分散型台帳に保存する電子チケット管理方法に関する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2021-051585号公報
【文献】特許第6967116号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1、2に開示された技術は、チケットの所有権が移転する際に、譲受人に関する本人確認処理を行わないという問題がある。チケットと紐づけられた非対応トークンの保有権限の移転情報にてチケットの所有権管理を行った場合、非対応トークンを保有するアカウントは高い匿名性を有することから、いかなる者がチケットを所有しているかをイベント開催者等が把握することは困難である。このことは、年齢、性別、属性等に応じて利用権限を設定した場合に、譲受人がこれらの条件を満たしているか否か判断できず、条件を満たさぬ者がイベント等に参加してしまう弊害が生ずる。対策としてサービス利用の現場にて条件を満たすか否か逐一確認することも考えられるものの、たとえば1万人を収容する会場でのコンサートで個々の来場者に対し逐一条件確認を行うことはあまりに煩雑であり、また、十分な確認ができない場合(たとえば来場者が身分証を持参していなかった場合など)に利用権限を有すると主張する来場者との間でトラブルが発生するリスクもある。
【0006】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであって、チケットの所有権移転において譲受人について適切に本人確認する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1にかかるチケット流通管理システムは、第三者が提供するサービスの利用権限を表章するチケットの所有権の移転を管理するチケット流通管理システムであって、チケットの譲受予定者に対し、自身を逐次的に撮影したリアルタイム映像の入力を指示する映像入力指示手段と、前記譲受予定者に対し、複数の候補の中から選択した身体部位の動作を内容とする身体動作を行うよう指示する身体動作指示手段と、前記映像入力指示手段の指示に応じて入力された認証用映像中の人物における前記身体部位の動作と、前記身体動作指示手段によって指示された身体動作とを比較分析する動作映像分析手段と、前記動作映像分析手段の分析結果に基づき、前記認証用映像がリアルタイム映像であるか否かを判定する映像判定手段と、前記映像判定手段によって前記認証用映像がリアルタイム映像であると判定された場合に、前記認証用映像中の人物の顔画像と、前記譲受予定者の本人確認用の顔画像とを比較分析して本人認証を行う本人認証手段と、前記認証映像中における人物が前記譲受予定者本人であると認証できた場合に前記譲受予定者に対する前記チケットの所有権の移転を有効と判定する移転判定手段と、対応関係にあるチケットの所有者の変動に応じて変更後の所有者と一致するよう、分散型ネットワーク上に保存された分散型台帳に記録された、非代替トークンである対応トークンの保有名義を変更する情報である保有名義変更情報を生成するよう指示する変更情報生成指示手段と、前記変更情報を前記分散型ネットワークに対し出力するよう指示する出力指示手段と、を備え、前記身体動作指示手段は、前記身体動作に関する指示のうち少なくとも一部において実現不可能な内容からなる身体動作を行うよう指示し、前記身体動作指示手段が実現不可能な内容からなる身体動作を指示したときに前記認証用映像中の人物の顔面の表情変化を分析する顔面映像分析手段をさらに備え、前記映像判定手段は、前記動作映像分析手段の分析結果、前記異物近傍映像分析手段の分析結果及び前記顔面映像分析手段の分析結果の全てに基づき前記認証用映像がリアルタイム映像であるか否かを判定することを特徴とする。
【0008】
また、上記目的を達成するため、請求項2にかかるチケット流通管理システムは、上記の発明において、前記譲受予定者に対し、複数の候補の中から選択した身体部位以外の異物に対する操作を内容とする異物操作を行うよう指示する異物操作指示手段と、前記映像入力指示手段の指示に応じて入力された認証用映像中における前記異物及び前記異物周辺に対応した異物近傍映像を分析する異物近傍映像分析手段とをさらに備え、前記映像判定手段は、前記動作映像分析手段の分析結果及び前記異物近傍映像分析手段の分析結果の双方に基づき前記認証用映像がリアルタイム映像であるか否かを判定することを特徴とする。
【0010】
また、上記目的を達成するため、請求項にかかるチケット流通管理方法は、コンピュータを用いて構築されたチケット流通管理システムにおいて第三者が提供するサービスの利用権限を表章するチケットの所有権の移転を管理するチケット流通管理方法であって、チケットの譲受予定者に対し、自身を逐次的に撮影したリアルタイム映像の入力を指示する映像入力指示ステップと、前記譲受予定者に対し、複数の候補の中から選択した身体部位の動作を内容とする身体動作を行うよう指示する身体動作指示ステップと、前記映像入力指示ステップにおける指示に応じて入力された認証用映像中の人物における前記身体部位の動作と、前記身体動作指示ステップにおいて指示された身体動作とを比較分析する動作映像分析ステップと、前記動作映像分析ステップにおける分析結果に基づき、前記認証用映像がリアルタイム映像であるか否かを判定する映像判定ステップと、前記映像判定ステップにおいて前記認証用映像がリアルタイム映像であると判定された場合に、前記認証用映像中の人物の顔画像と、前記譲受予定者の本人確認用の顔画像とを比較照合して本人認証を行う本人認証ステップと、前記認証映像中における人物が前記譲受予定者本人であると認証できた場合に前記譲受予定者に対する前記チケットの所有権の移転を有効と判定する移転判定ステップと、対応関係にあるチケットの所有者の変動に応じて変更後の所有者と一致するよう、分散型ネットワーク上に保存された分散型台帳に記録された、非代替トークンである対応トークンの保有名義を変更する情報である保有名義変更情報を生成するよう指示する変更情報生成指示ステップと、前記変更情報を前記分散型ネットワークに対し出力するよう指示する出力指示ステップと、を含み、前記身体動作指示ステップにおいて前記身体動作に関する指示のうち少なくとも一部において実現不可能な内容からなる身体動作を行うよう指示し、前記身体動作指示ステップにおいて実現不可能な内容からなる身体動作が指示されたときに前記認証用映像中の人物の顔面の表情変化を分析する顔面映像分析ステップをさらに含み、前記映像判定ステップにおいて、前記動作映像分析手段の分析結果及び前記顔面映像分析手段の分析結果の双方に基づき前記認証用映像がリアルタイム映像であるか否かを判定することを特徴とする。
【0012】
また、上記目的を達成するため、請求項にかかるチケット流通管理プログラムは、第三者が提供するサービスの利用権限を表章するチケットの所有権移転の管理をコンピュータに行わせるチケット流通管理プログラムであって、前記コンピュータに対し、チケットの譲受予定者に対し、自身を逐次的に撮影したリアルタイム映像の入力を指示する映像入力指示機能と、前記譲受予定者に対し、複数の候補の中から選択した身体部位の動作を内容とする身体動作を行うよう指示する身体動作指示機能と、前記映像入力指示機能の指示に応じて入力された認証用映像中の人物における前記身体部位の動作と、前記身体動作指示機能によって指示された身体動作とを比較分析する動作映像分析機能と、前記動作映像分析機能の分析結果に基づき、前記認証用映像がリアルタイム映像であるか否かを判定する映像判定機能と、前記映像判定機能によって前記認証用映像がリアルタイム映像であると判定された場合に、前記認証用映像中の人物の顔画像と、前記譲受予定者の本人確認用の顔画像とを比較照合して本人認証を行う本人認証機能と、前記認証映像中における人物が前記譲受予定者本人であると認証できた場合に前記譲受予定者に対する前記チケットの所有権の移転を有効と判定する移転判定機能と、対応関係にあるチケットの所有者の変動に応じて変更後の所有者と一致するよう、分散型ネットワーク上に保存された分散型台帳に記録された、非代替トークンである対応トークンの保有名義を変更する情報である保有名義変更情報を生成するよう指示する変更情報生成指示機能と、前記変更情報を前記分散型ネットワークに対し出力するよう指示する出力指示機能と、を実行させ、前記身体動作指示機能は、前記身体動作に関する指示のうち少なくとも一部において実現不可能な内容からなる身体動作を行うよう指示し、前記身体動作指示機能が実現不可能な内容からなる身体動作が指示されたときに前記認証用映像中の人物の顔面の表情変化を分析する顔面映像分析機能をさらに実行させ、前記映像判定機能は、前記動作映像分析機能の分析結果及び前記顔面映像分析機能の分析結果の双方に基づき前記認証用映像がリアルタイム映像であるか否かを判定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、チケットの所有権移転において譲受人について適切に本人確認できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施の形態1にかかるチケット流通管理システムの構成を示す模式図である。
図2】実施の形態1にかかるチケット流通管理システムにおける動作映像分析処理を示すフローチャートである。
図3】実施の形態1にかかるチケット流通管理システムにおける異物近傍映像分析処理を示すフローチャートである。
図4】実施の形態2にかかるチケット流通管理システムの構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の実施の形態においては、本発明の実施の形態として最も適切と考えられる例について記載するものであり、当然のことながら、本発明の内容を本実施の形態にて示された具体例に限定して解すべきではない。同様の作用・効果を奏する構成であれば、実施の形態にて示す具体的構成以外のものであっても、本発明の技術的範囲に含まれることは勿論である。
【0016】
(実施の形態1)
まず、実施の形態1にかかるチケット流通管理システムについて説明する。図1に示すとおり、本実施の形態1にかかるチケット流通管理システムは、流通管理の対象となるチケットに関する情報を入力するチケット情報入力部1と、入力されたチケット情報と1対1の対応関係を有する対応トークンを生成する対応トークン生成部2と、当該チケットの所有権の移転に関する情報を入力する所有権移転情報入力部3と、所有権移転情報に従った所有権の移転を認めるか否かを判定する所有権移転判定部4と、所有権の移転が認められた場合に所有権移転に関する情報を含むトランザクションを生成するトランザクション生成部5と、トランザクションの内容がチケットの所有者の意向に従ったものであることを証明するデータである電子署名を生成する電子署名生成部6と、トランザクション及び電子署名を対応トークンと対応関係にある分散型ネットワークに対し出力するよう指示する出力指示部7と、チケットにかかるサービスを提供する事業者の要求に応じ、所有権移転判定処理に用いた情報のうち現所有者に関する映像を提供する所有者映像提供部8とを備える。
【0017】
チケット情報入力部1は、本実施の形態1において流通管理対象であり第三者が提供するサービスの利用権限を表章する物(有体物、無体物の双方を含む)であるチケットに関する情報を入力するためのものである。具体的には、チケット情報入力部1は、たとえば、チケット発行主体やチケット所有者に対し提供されるサービスの提供団体等から、当該チケットが対象とするイベントの日程・内容、チケット購入資格、情報入力時におけるチケット所有者などの情報を含むチケット情報を入力する機能を有する。ここでチケットが対象とするサービスとは、音楽コンサート、美術品の展覧会、映画上映といったイベント的なものの他、電車・タクシー等の旅客輸送サービス、ホテル・旅館等の宿泊サービス、レストラン・飲食店等における飲食提供サービス等を含むものであり、チケットを提示(物理的なチケットを提示する場合の他、スマホ等に保存された電子情報を提示する場合等を含む。)することによって提供を受けられるサービス形態のものであれば、いかなるサービスであってもよい。
【0018】
対応トークン生成部2は、チケット情報と1対1の対応関係にある非代替性トークンである対応トークンを生成するためのものである。「非代替性トークン」とはいわゆるNFT(Non-Fangible Token)、すなわち固有のデータを備えることで他のトークンと代替不能な性質を有するトークンを意味し、たとえばEthereum(登録商標)の規格であるERC721に基づいて発行されるものである。本実施の形態1にける対応トークンは、ERC721またはその他の所定の規格に基づき発行されるものであり、その取引履歴がブロックチェーン上に保存される構成となっている。
【0019】
「ブロックチェーン」とは、分散型ネットワークを構成する複数のコンピュータ間において暗号技術を活用しつつデータ同期を行う技術である。具体的には、合意された取引記録の集合体と、各ブロックを接続させるための情報(前のブロックの情報)により各ブロックが構成され、当該各ブロックが複数連結されることによってブロックチェーンが構成される。複数のコンピュータの一部でデータ改ざんが行われても他のコンピュータとの間で多数決によって正しいデータが選択されるため、データの破壊・改ざんが極めて難しいという特徴を有している。
【0020】
対応トークンとチケット情報の対応関係としては、対応トークンの識別子とチケットの識別情報とを1対1で紐づける形式とする。より直接的に、対応トークンの識別子とチケットの識別情報を同一内容とすることとしてもよいし、それぞれ異なる文字列等によって構成したものについて対応関係を設定する態様でも問題ない。また、チケットが保存されているインターネット空間上のURL情報と紐づける形式としてもよい。なお、対応関係にあるチケットは、本実施の形態では電子データによって構成されたチケットとするが、紙媒体等物理的に構成されたものでもよい。電子データによって構成する場合、対応トークン中にチケットに必要な情報を格納する態様にてチケットと対応トークンを一体的に構成することとしてもよい。
【0021】
また、対応トークンの生成時には、対応トークンの初期保有名義として、対応関係にあるチケットのトークン生成当時における所有者、たとえばサービス提供者あるいはチケット発行者に関する情報が生成される。初期保有名義に関する情報は、分散型台帳を構成するブロックに格納する情報の一部としてブロックチェーン上に保存する。なお、対応トークンの保有名義に関する情報は、個人であれば(生成当時におけるチケットの所有者の)具体的な氏名(法人の場合は商号)と直接関係する文字列によって構成してもよいが、具体的な氏名等とは異なる文字列等からなるアカウント等によって構成し、別途、当該アカウント等と保有名義の対応関係を設定する態様でも問題ない。このように初期状態においてチケットの所有者を対応トークンの保有名義として設定し、後述するようにチケットについて取引が行われてチケットの所有者が交代するごとに対応トークンの保有名義についても同様に交代させることによって、本実施の形態1では、チケットの所有者と対応トークンの保有名義の同一性を維持している。
【0022】
なお、対応トークンの生成については、対応トークン生成部2が自ら行う態様でもよいし、対応トークン生成部2と直接的または間接的に接続された外部システムに対し所定の指令を行うことによって、外部システムが生成する態様としてもよい。また、対応トークンの具体的形式についても、Ethereum(登録商標)の規格であるERC721に準拠したものに限定されず、非代替性の性質を有し、取引履歴がブロックチェーン上に保存されるものであれば任意の形式のものとしてよい。
【0023】
所有権移転情報入力部3は、流通管理の対象となっているチケットの販売・転売等による所有権移転に関する情報を入力するためのものである。具体的には、所有権移転情報入力部3は、たとえばインターネット等のネットワークを通じてチケットの所有者及び/又はチケットの譲受予定者が保持する情報端末等の電子機器と接続され、これらの者の電子機器から出力された情報に基づき、所有権移転の対象となるチケットの情報、当該チケットの所有者・譲受予定者に関する情報、価格等の所有権移転に関する情報等からなる所有権移転情報を入力する。なお本実施の形態1において「所有権移転」とは、サービスを提供する事業者等によるサービス利用希望者等に対するチケットの販売及びチケット所有者による第三者に対する当該チケットの転売を含む、チケットに関する所有権の移転全般を含む概念とする。
【0024】
所有権移転判定部4は、所有権移転情報入力部3にて情報が入力されたチケットの所有権移転の是非について判定するためのものである。具体的には、所有権移転判定部4は、譲受予定者が自身について撮影した認証用映像を入力する映像入力指示部10と、認証用映像を撮影中の譲受予定者に対し逐次的に身体的な動作指示を行う身体動作指示部11と、動作指示に対する認証用映像中の反応について分析する動作映像分析部12と、認証用映像を撮影中の譲受予定者に対し装身具等の身体以外の異物に対する操作指示を行う異物操作指示部13と、認証用映像のうち譲受予定者によって操作される異物近傍の映像部分を分析する異物近傍映像分析部14と、動作映像分析部12と異物近傍映像分析部14の分析結果に基づき認証用映像の真実性を判定する映像判定部15と、真実性が認められた認証用映像について、本人映像と比較照合して本人認証を行う本人認証部16と、本人認証部16によって本人と認証された場合にチケットの所有権移転が有効であると判定する移転判定部17とを備える。
【0025】
映像入力指示部10は、譲受予定者に対し、自身を逐次的(リアルタイム)に撮影した映像であるリアルタイム映像を入力するよう指示するためのものである。具体的には、映像入力指示部10は、たとえばインターネット等のネットワークを通じて譲受予定者が保持する情報端末等の電子機器と接続され、当該電子機器に対し映像入力を指示することとし、また、当該指示に応じて当該電子機器から出力された認証用映像を入力する機能を有する。
【0026】
身体動作指示部11は、譲受予定者に対し、あらかじめ記憶した複数の候補の中から選択した特定の身体部位における特定の動作を行うよう指示するためのものである。具体的には、身体動作指示部11は、譲受予定者に対し、特定の身体の部位を指定した上で当該部位に関する所定の動作を行うよう指示する機能を有する。身体の部位及び動作については複数パターンのものをあらかじめ記憶し、好ましくは無作為に選択した上で指示内容を決するものとする。たとえば、身体動作指示部11は、身体の部位として右腕を選択し、動作については左右に振ることを選択することで、右腕を左右に振るよう指示を行う。望ましい態様としては、実現不可能な動作指示となるような部位・動作の組み合わせ(たとえば「右耳」と「開閉する」の組み合わせ)が選択された場合は再度部位と動作について選択することとする。より簡易な構成として、身体の部位及び動作についてあらかじめ組み合わせたものを複数パターン用意し、かかる組み合わせについて無作為に選択することとしてもよい。
【0027】
動作映像分析部12は、認証用映像のうち身体動作指示部11による動作指示に対応した時間帯における映像内容を比較分析するためのものである。具体的には、認証映像中の人物について、指示の対象となった身体的部位の位置・態勢等の状況が指示前から変化したか否か、変化している場合は指示内容に沿った変化であるか否かを分析する機能を有する。動作映像分析部12による映像分析は、たとえば機械学習あるいは深層学習(ディープラーニング)を用いた画像認識技術を活用して、映像中における特定部位の位置及び形状を認識し、事前に記憶した当該部位・動作指示における指示前・指示後の基本形状を認証用映像にあわせて拡大・縮小等したものと比較分析して一致割合を算出する。一致割合が所定の閾値を超えており認証用映像中の人物において身体動作指示部11の指示に従った動作がなされたと認定できる場合、当該認証用映像は事前に収録されたものでなく映像入力指示部10の指示に応じて逐次的に撮影されたリアルタイム映像であり、譲受予定者を騙る者が過去に別目的で撮影された映像を流用した等の不正がないことが推定されることとなる。
【0028】
なお、身体動作指示部11による動作指示及び動作映像分析部12による映像分析は1回のみ行うこととしてもよいが、好ましくは動作指示及び映像分析を複数回繰り返し、その都度基本形状との一致割合を算出することとする。算出結果については、映像判定部15に対し出力される。
【0029】
異物操作指示部13は、メガネ、イヤリング等の装身具その他の身体部位以外の異物について、譲受予定者に対し所定の操作を行うよう指示するためのものである。具体的には、異物操作指示部13は、譲受予定者に対し特定の異物を指定した上で当該異物に関する所定の操作を行うよう指示する機能を有する。異物の種類及び操作の内容については複数パターンのものをあらかじめ記憶し、それぞれについて無作為に選択した上で指示内容を決するものとする。身体動作指示部11の場合と同様に、異物と操作をあらかじめ組み合わせた者を複数パターン容易する構成としてもよい。
【0030】
なお、異物操作指示部13が指定する異物は、たとえば譲受予定者が身に着けている眼鏡、イヤリング等の認証用映像中に存在するものの中から選択する方法としてもよいし、認証用映像の撮影前に譲受予定者に対し特定の異物を用意しておくよう指示することとしてもよいが、本実施の形態1では、指示時点に認証用映像中に存在しない物であって、紙(材質、大きさを問わない)、筆記具(ボールペン、鉛筆等の種別を問わない)、書籍(内容、大きさ、厚みを問わない)等の一般的な物の中から無作為に選択した上で異物として指定するものとする。
【0031】
また、異物操作指示部13が指示する操作は、右手で保持して自身の顔の前に提示する、左手で保持して上下に動かすなど、認証用映像の視野の範囲内で位置を移動させることを内容とする。異物操作指示部13は、かかる条件を満たす操作態様をあらかじめ複数記憶しておいた上で、操作指示のたびに複数の操作態様の中から無作為に一つの操作態様を選択し、譲受予定者に対し当該操作態様について指示を行う。
【0032】
異物近傍映像分析部14は、異物操作指示部13の指示にしたがって認証用映像中の人物が異物を操作した際に、認証用映像のうち当該異物が表示された部分である異物近傍映像の内容を分析するためのものである。具体的には、異物近傍映像分析部14は、異物そのもの及び異物の近傍(特に異物と背景の境界近傍)に関する映像表示について、通常の撮影映像として不合理な点の有無、特に映像に対する加工・合成等の処理の有無について分析を行う。具体的には、異物近傍映像分析部14は、たとえば異物の周縁部におけるエッジ部分のコントラスト比が他のエッジ部分と比較して不自然に高い値を示していないか、異物そのもの及び異物の近傍領域において色相、明度、彩度等について他領域と比較して不自然に均一化された部分が存在しないか、ノイズパターンが他領域と不自然に異なっていないかなどを確認し、異物そのもの及び異物の近傍領域に対応した映像部分の修正・改竄の有無について分析する。
【0033】
認証用映像に関しては、譲受予定者を騙る者が本人に似せた精巧な虚偽画像(コンピュータグラフィックス画像等)を生成し、身体動作指示部11からの指示に従って虚偽画像を動作させることで映像を人工的に生成することが考えられる。しかしながら、虚偽画像に基づき認証用映像を偽造した場合でも、想定外の異物をリアルタイムで認証用映像中に表示することは容易ではない。仮に認証用映像中に表示できた場合でも、異物に関する実映像とコンピュータグラフィックス等による虚偽画像を自然に違和感なく合成した映像をリアルタイムで生成することは極めて困難である。そのため、本実施の形態1では、特に異物そのもの及び異物近傍の映像について不自然な点の有無を分析し、不自然な点がある場合は、当該認証用映像は譲受予定者をリアルタイムで撮影した映像ではない、すなわち真に認証用映像として生成されたものではないと判断される。
【0034】
映像判定部15は、動作映像分析部12及び異物近傍映像分析部14の分析結果に基づき、認証用映像が映像入力指示部10の指示に応じて逐次的に撮影されたリアルタイム映像であるか否かを判定するためのものである。本実施の形態1における映像判定部15は、動作映像分析部12により算出された、認証用映像中の人物の動作と当該動作について事前に用意された基本形状の一致割合が所定の閾値を上回り、かつ、異物近傍映像分析部14により異物近傍映像にて修正・改竄がなされた可能性が低いとの分析結果を取得した場合に、当該認証用映像が映像入力指示部10の指示に応じて逐次的に撮影されたリアルタイム映像であると判定する。
【0035】
本人認証部16は、映像判定部15によってリアルタイム映像であると判定された認証用映像について、当該認証用映像中の人物の顔画像と、別途用意された譲受予定者本人の本人確認用の顔画像とを比較分析することにより、本人認証を行うためのものである。具体的には、本人認証部16は、たとえば機械学習・深層学習等を用いた画像認識技術を活用して各顔画像における目、鼻、口等の各構成要素の位置関係及び形状等を指標する数値をそれぞれ導出した上で両者の一致割合を算出し、一致割合が所定の閾値を上回った場合に、認証用映像中の人物が譲受予定者本人であると認証する機能を有する。なお、本人認証に用いる本人の顔画像に関しては、本人の顔画像であることが確認できる運転免許証、マイナンバーカード等の顔写真付きの本人確認書類を用いることが好ましい。
移転判定部17は、本人認証部16による本人認証がなされた場合、当該譲受予定者に対するチケットの所有権移転が有効であると判定する機能を有する。移転判定部17によって移転の有効性が認められた場合は、トランザクション生成部5以下の処理によりチケットの所有権移転に対応した、対応トークンの保有名義の変更処理が行われる。
【0036】
トランザクション生成部5は、特許請求の範囲における変更情報生成手段の一態様に相当するものであり、本実施の形態1においては変更情報の生成を指示するのみならず、自ら情報生成を行う機能を有する。具体的には、トランザクション生成部5は分散型台帳内のブロックに格納されるトランザクション(特許請求の範囲における保有名義変更情報の一態様に相当する。)を生成する機能を有し、トランザクションの内容として、少なくとも対応トークンの保有名義の変更に関する情報を含めるものとする。具体的には、トランザクション生成部5は、対応トークンの保有名義をチケットの所有権を譲り受ける者に変更する旨の情報を少なくとも含む情報を生成するものとする。
【0037】
電子署名生成部6は、特許請求の範囲における変更情報生成手段の一態様に相当するものであり、本実施の形態1においては情報生成を指示するのみならず、自らトランザクションに含まれる情報の作成・出力が対象となる対応トークンの保有名義者(現時点におけるチケットの所有者)の意向に従ったものであることを証明するデータである電子署名(特許請求の範囲における保有名義変更情報の一態様に相当する。)を生成する機能を有する。具体的には、電子署名生成部6は、トランザクション生成部5によって生成されたトランザクションのハッシュ値を生成し、保有名義者が保有する秘密鍵にて当該ハッシュ値を暗号化することにより電子署名を生成する機能を有する。なお、「ハッシュ値」とは元データに対し一定計算手順を施すことにより得られた固定長の値である。当該計算手順が不可逆なものであるため、ハッシュ値から元データを復元することは不可能とされている。また、「秘密鍵」とは暗号化処理に用いられる数列であって、対応関係にある「公開鍵」により復号することが可能な構成となっている。なお、本実施の形態1においてはトランザクション生成部5及び電子署名生成部6は、保有名義変更情報の一態様であるトランザクション及び電子署名の作成まで自ら行う構成としているがこれに限定する必要はなく、トランザクション生成部5及び電子署名生成部6が外部の所定機器に対しトランザクション及び電子署名の作成を指示するのみの機能を有することとしてもよい。
【0038】
出力指示部7は、トランザクション生成部5にて生成されたトランザクション及び電子署名生成部6にて生成された電子署名を、対応トークンと関連付けられた分散型ネットワークに対し出力するよう指示するためのものである。なお本実施の形態1において出力指示部7は出力機能そのものも備えることとし、具体的には出力指示部7は、分散型ネットワークに対し直接的または間接的に接続されており、分散型ネットワークに対し所定のデータを出力可能な態様にて構成されている。分散型ネットワークは、出力されたトランザクションのハッシュ値を生成するとともに、電子署名を公開鍵にて復号したデータ(=トランザクションのハッシュ値)と対比し、両者が異なる値となる場合は対象となる有体物の所有者によるトランザクションではないと判定して登録を拒否し、両者が一致する場合は所有者によるトランザクションと判定し、トランザクションにより構成される情報を、分散型台帳を構成するブロックに格納する。出力指示部7が出力するトランザクションには保有名義の変更に関する情報が含まれており、トランザクションが分散型ネットワークに対し出力されることにより、これらの情報が分散型ネットワーク上に設けられた分散型台帳を構成するブロックに格納される。
【0039】
所有者映像提供部8は、チケットにかかるサービスを提供する事業者等から要求がなされた場合に、要求時におけるチケットの所有者に関する認証用映像を事業者等に提供するためのものである。具体的には、所有者映像提供部8は、サービス提供時における本人確認用の資料として、当該本人を撮影した映像である認証用映像を、サービスを提供する事業者等に提供するためのものである。具体的には、所有者映像提供部8は、たとえば認証用映像を記録する機能を有し、新しい所有権移転情報が入力され所有権移転判定部4により移転が認められるたびに、当該移転にかかる譲受予定者の認証用映像を記録する機能を有する。かかる機能により所有者映像提供部8は直近の譲受予定者(正確にはチケットの現所有者)に関する認証用映像を保持することとなり、かかる映像を事業者等に提供することで、事業者等はサービスを受けるために来場したチケット所持者がチケットの所有者であるか否かについて正確に本人認証処理を行うことが可能となる。
【0040】
次に、本実施の形態1にかかるチケット流通管理システムにおける動作映像分析処理及び操作映像分析処理について説明する。図2に示すとおり、まず身体動作指示部11において、指示対象となる身体部位の選択(ステップS101)と、動作の選択(ステップS102)を行う。本実施の形態1において身体部位および動作の選択は、あらかじめ記憶した複数の身体部位・動作の中から不作為抽出することにより行う。
【0041】
その後、身体動作指示部11は、特定した身体部位と動作の組合せが実現可能な身体動作であるか否かを判定する(ステップS103)。実現不可能な場合(ステップS103、No)はステップS101に戻って身体部位及び動作の特定をやり直し、実現可能な場合(ステップS103、Yes)は譲受予定者に対し身体動作の指示を行う(ステップS104)。そして、動作映像分析部12は、指示後の時間帯における認証用映像中の人物の動作について画像認識処理を行い、予め保持していた身体動作における基本形状を適宜拡大・回転等して認証用映像と位置合わせを行った上で、基本形状との異同を比較分析した上で一致割合を算出する(ステップS105)。以上の処理を所定回数(図2においてN回)完了したか否か判定し(ステップS106)、N回未満の場合(ステップS106、No)は再度ステップS101に戻って同様の処理を行い、N回完了した場合(ステップS106、Yes)は各回にて導出した一致割合の平均値を算出し(ステップS107)、映像判定部15に対し出力する。
【0042】
次に、図3に示すように、異物操作指示部13は、操作対象となる異物の選択(ステップS201)を行い、特定した異物が認証用映像中に存在するか否かを判定する(ステップS202)。認証映像中に存在する場合(ステップS202、Yes)はステップS201に戻って再度異物の選択を行い、認証映像中に存在しない場合(ステップS202、No)は、操作の選択を行う(ステップS203)。なお、本実施の形態1における異物及び操作の選択は、あらかじめ記憶した複数の異物・操作態様の中から不作為抽出することにより行う。
【0043】
そして、異物操作指示部13は、特定した異物及び操作を組み合わせた異物操作を行うよう譲受予定者に指示し(ステップS204)、異物近傍映像分析部14により異物操作時における異物近傍(異物そのもの及び異物の周辺領域)の映像分析を行い(ステップS205)、分析結果を導出する。以上の処理を所定回数(図3においてM回)完了したか否か判定し(ステップS206)、M回未満の場合(ステップS206、No)は再度ステップS201に戻って同様の処理を行い、M回完了した場合(ステップS206、Yes)、各回にて導出した映像分析結果の平均値を算出し(ステップS207)、分析結果を映像判定部15に対し出力する。映像分析は異物そのもの及び異物の近傍領域に対応した映像部分の修正・改竄を検出するためのものであり、具体的には、色相、明度、彩度等について他領域と比較して不自然に均一化された部分が存在しないか、ノイズパターンが他領域と不自然に異なっていないかなどの確認を行う。分析結果を出力された映像判定部15は、当該分析結果と動作映像分析部12から出力された分析結果に基づき、認証用映像の真実性、すなわち認証用映像が真に譲受予定者を撮影したもので、映像に加工・修正等がなされていないか否かの判定を行う。
【0044】
次に、本実施の形態1にかかるチケット流通管理システムの利点について説明する。まず、本実施の形態1にかかるチケット流通管理システムでは、チケットの所有権移転を認めるか否か判定するにあたって譲受予定者の容貌等をリアルタイムで撮影した認証用映像を提供するよう求めるとともに、提供された映像が真に譲受予定者の容貌等をリアルタイムで撮影しているものであるか否かを判定する構成を採用している。認証用映像が真に譲受予定者をリアルタイムで撮影されたものでない場合は、第三者が譲受予定者に成りすましたうえで、映像を別途調達あるいは虚偽映像を生成した上で不正にチケットの購入等を試みていることが推定されるため、本実施の形態1にかかるチケット流通管理システムは、上述の構成を採用することによって、かかる不正なケースにおけるチケットの所有権移転を防げるという利点がある。
【0045】
また、本実施の形態1にかかるチケット流通管理システムは、認証用映像の真実性を判定するにあたって、身体動作指示部11が選択した身体的動作を行うよう指示し、これに対する認証用映像中の人物の動作を分析する構成を採用している。事前に用意された映像の場合はリアルタイムの指示に応じることは困難であるから、身体的動作の指示に対する認証用映像中の人物の動作について分析することで、当該認証用映像がリアルタイムに撮影されているものか、それとも事前に別目的で撮影された映像を流用等するなどの不正な方法により作成されたものであるかを高確度で判定できるという利点を有する。さらに本実施の形態1では、身体動作指示部が身体部位及び身体動作を複数の態様の中から無作為抽出する態様にて身体的動作を決定する構成を採用することで、指示対称の身体的動作の予測可能性がさらに低減されることから、さらに認証用映像の真実性の判断を高確度にて行えるという利点がある。
【0046】
さらに、本実施の形態1にかかるチケット流通管理システムは、認証用映像が指示に従い逐次的に撮影されたリアルタイム映像であるか否かを判定するにあたって、異物操作指示部13によって身体部位以外の異物に対し所定の操作を行うよう指示し、これに対する認証用映像中の対応において、異物近傍の映像部分を分析する構成を採用している。まず、本人認証手続において敢えて異物を撮影させるケースは珍しくあらかじめ準備することは困難であることから、リアルタイムでなく事前に映像を撮影した場合やコンピュータグラフィックス技術等により虚偽映像を生成するような不正のケースにおいて、特定の異物を映像中に表示させることは一般に困難である。また、たとえばコンピュータグラフィック技術等により異物を含む映像をリアルタイムで生成しようとしても、事前にコンピュータグラフィックスに適合した当該異物の映像を用意しておくことは困難であり、異物についてのみ別途実写映像を組み込む、あるいは異物映像をリアルタイムで生成することが必要となるところ、そのような場合は、異物の映像部分と他の映像部分の間で不自然な相違が生ずることは避けられない。このため、本実施の形態1に係るチケット流通管理システムでは、異物近傍映像分析部14が異物そのもの及びその周辺領域における映像的な不自然さ(異物の周縁部におけるエッジ部分のコントラスト比が他のエッジ部分と比較して不自然に高い値を示していないか、異物そのもの及び異物の近傍領域において色相、明度、彩度等について他領域と比較して不自然に均一化された部分が存在しないか、ノイズパターンが他領域と不自然に異なっていないか等)を分析することとし、不自然さが存在する場合には認証用映像が本人をリアルタイムに撮影したものでなく、コンピュータグラフィックス技術等により生成された虚偽の映像であると高確度にて判定できるという利点を有する。
【0047】
さらに、本実施の形態1にかかるチケット流通管理システムは、映像判定及び本人認証に利用した認証用映像を、所有者映像部8によりチケットの所有者の映像としてチケットの対象となるサービスの実施者等に提供する構成を採用している。かかる構成を採用することによって、本実施の形態1にかかるチケット流通管理システムでは、チケット使用時(=サービス受領時)におけるチケット持参者の本人確認(チケット持参者がチケットの所有者であるか否か)を容易に行うことができるという利点が生ずる。イベント会場等では多数のチケット持参者が来場するため精密な本人認証処理を一から行うことは容易ではないし、そもそもチケット持参者が写真入りの身分証等を保持していないケースもあり得る。そのため、本実施の形態1では映像判定部15により真に本人をリアルタイムに撮影したものと判定された認証用映像をサービス事業者等に提供することで、事業者等において簡易活迅速に本人認証処理を行うことを可能としている。特に、本実施の形態1においては本人認証部16にて顔面の各構成要素の位置関係及び形状等を指標する数値をそれぞれ導出済であることから、当該数値を合わせて提供することによって本人認証処理をより迅速かつ簡易に行えるという利点がある。
【0048】
(実施の形態2)
次に、実施の形態2にかかるチケット流通システムについて説明する。実施の形態2において、実施の形態1と同一名称かつ同一符号を付した構成要素に関しては、特に言及しない限り、実施の形態1における構成要素と同一の機能を発揮するものとする。
【0049】
図4は、実施の形態2にかかるチケット流通システムの構成を示す模式図である。図4に示すとおり、実施の形態2にかかるチケット流通システムは所有権移転判定部20において、複数回にわたり身体動作を指示する際に、少なくとも一部において敢えて実現不可能な身体動作を指示する身体動作指示部21と、認証用映像のうち動作不可能な身体動作を指示された譲受予定者の表情変化を分析する顔面映像分析部22と、顔面映像分析部22における分析結果をも考慮して認証用映像の真実性について判定する映像判定部23とをさらに備える。
【0050】
身体動作指示部21は、実施の形態1における身体動作指示部11の機能に加え、実現可能な身体動作の指示だけでなく、動作不可能な身体動作についても指示を行う機能を有する。もっとも簡易な構成としては、身体動作指示部21は実施の形態1におけるステップS103の動作を行って身体部位及び身体動作の組み合わせた動作が実現不可能な身体動作であった場合に、そのまま動作指示の内容として譲受予定者に伝えると共に顔面映像分析部22に対し譲受予定者の表情の変化を分析するよう指示を行う。この他、身体動作指示部21の機能として、動作指示の内容として動作可能な身体動作と動作不可能な身体動作が一定の比率(たとえば9:1)となるよう調整した上で身体動作指示を行うこととしてもよい。
【0051】
顔面映像分析部22は、身体動作指示部21が動作不可能な身体動作を内容とする動作指示を行った場合に、認証用映像のうち、当該動作指示を受けた譲受予定者の表情を分析するためのものである。具体的には、顔面映像分析部22は、身体動作指示部21から動作不可能な身体動作を内容とする動作指示を行ったとの情報が伝達された際に、当該動作指示前における譲受予定者の顔面映像と、指示後における譲受予定者の顔面画像を比較対照し、表情の変化について分析する。より具体的には、顔面映像分析部22は、画像認識技術を用いて目、眉毛、額等の身体部位の位置及び形状について認識した上で、動作指示によってそれらがどの程度の時間でどの程度形状変化したか、たとえば眉をしかめた、眉間にしわが寄った、目を大きく開いた、あるいはそれまでと異なる頻度で瞬きを繰り返した等の変化と、当該変化までに要した時間を計測する。その上で、通常人が驚いた際の表情の変化と対比して、形状の変化量が所定の閾値以上であるか否か、形状が変化するまでの反応時間が不自然に短い又は不自然に長くなく、所定の範囲内に収まるか否かといった情報を導出し、映像判定部23に対し出力する。
【0052】
映像判定部23は、実施の形態1における映像判定部15の機能に加え、顔面映像分析部22から提供された情報も考慮した上で、認証用映像の真実性の有無について判定処理を行う。具体的には、動作映像分析部12、異物近傍映像分析部14による分析結果に基づく判定処理の他に、たとえば顔面映像分析部22の分析結果として顔面における各部位の形状の変化量が所定の閾値未満であるか、形状の変化量が閾値以上であるものの形状変化までの時間が所定の範囲外であった場合には、認証用映像の真実性を否定する旨の判定結果を出力する。
【0053】
次に、本実施の形態2にかかるチケット流通システムの利点について説明する。本実施の形態2にかかるチケット流通システムは、実施の形態1における利点に加えて、敢えて不可能な身体動作指示を行い当該指示に対する譲受予定者の反応映像を分析することを通じて、認証用映像の真実性について判定する構成を採用する。一般に、予想外の指示がなされた人物は驚き、嫌悪といった反応を反射的に(意識的ではなく無意識に)行うものとされ、その際には表情変化が伴うものである。そのため本実施の形態2では、不可能な身体動作指示を行った際に認証用映像中の本人の顔面映像について自然な表情変化がなされているか否か分析し、表情の変化量が著しく少ない、あるいは表情変化までに長時間を要する(あるいは不自然に短い時間で変化している)場合は、認証用映像中の本人映像は真に本人を撮影したものではなく、コンピュータグラフィックス等により生成された虚偽画像の可能性があると判断することとしている。かかる構成を採用することにより、より正確に認証用映像の真実性について判定できるという利点が生ずる。
【0054】
以上、実施の形態1、2にわたり本発明の内容について説明したが、もとより本発明の技術的範囲は実施の形態に記載した具体的構成に限定して解釈されるべきではない。本発明の機能を実現できるものであれば、上記実施の形態に対する様々な変形例、応用例についても、本発明の技術的範囲に属することはもちろんである。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、チケットの所有権移転において譲受人に関する適切な本人確認を実現する技術として利用可能である。
【符号の説明】
【0056】
1 チケット情報入力部
2 対応トークン生成部
3 所有権移転情報入力部
4、20 所有権移転判定部
5 トランザクション生成部
6 電子署名生成部
7 出力指示部
8 所有者映像提供部
10 映像入力指示部
11、21 身体動作指示部
12 動作映像分析部
13 異物操作指示部
14 異物近傍映像分析部
15、23 映像判定部
16 本人認証部
17 移転判定部
22 顔面映像分析部
【要約】
【課題】チケットの所有権移転において譲受人について適切に本人確認する技術を提供する。
【解決手段】チケットに関する情報を入力するチケット情報入力部1と、入力されたチケット情報と1対1の対応関係を有する対応トークンを生成する対応トークン生成部2と、当該チケットの所有権の移転に関する情報を入力する所有権移転情報入力部3と、所有権移転情報に従った所有権の移転を認めるか否かを判定する所有権移転判定部4を備える。所有権移転判定部4は、譲受予定者が自身について撮影した認証用映像を入力する映像入力指示部10と、認証用映像を撮影中の譲受予定者に対し逐次的に身体的な動作指示を行う身体動作指示部11と、動作指示に対する認証用映像中の反応について分析する動作映像分析部12等を備える。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4