(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】紐状磁石とその着磁方法、磁気治療具及び着磁器
(51)【国際特許分類】
A61N 2/08 20060101AFI20240305BHJP
【FI】
A61N2/08 Z
(21)【出願番号】P 2023125474
(22)【出願日】2023-08-01
【審査請求日】2023-08-01
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】398044938
【氏名又は名称】株式会社コラントッテ
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100093997
【氏名又は名称】田中 秀佳
(72)【発明者】
【氏名】塚田 渉
【審査官】羽月 竜治
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-142466(JP,A)
【文献】特開2009-207647(JP,A)
【文献】特開2004-147859(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0133872(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0159317(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0163305(US,A1)
【文献】特開2016-041107(JP,A)
【文献】国際公開第2020/024723(WO,A1)
【文献】特開平07-100327(JP,A)
【文献】特開2019-071953(JP,A)
【文献】特開2019-042235(JP,A)
【文献】特開2019-048007(JP,A)
【文献】特開2019-058255(JP,A)
【文献】特開2009-247410(JP,A)
【文献】特開2007-111322(JP,A)
【文献】国際公開第2021/246299(WO,A1)
【文献】特開2013-105964(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
索条体の長手方向に複数の着磁部が配設された紐状磁石であって、
前記着磁部の極性は前記長手方向でN極とS極が交互に配列されると共に、前記索条体の径方向を少なくとも二分する極性境界面を挟んでN極とS極が配列され、
前記極性境界面の径方向両端縁で形成される中立線の位置が、前記索条体の捻りがない自然状態で前記長手方向で変化することを特徴とする紐状磁石。
【請求項2】
索条体の長手方向に着磁部と非着磁部が交互に配設された紐状磁石であって、
前記着磁部の極性は、前記非着磁部を挟む前記長手方向で逆極性かつ前記索条体の径方向を少なくとも二分する極性境界面を挟む前記径方向でも逆極性とされ、
前記極性境界面の径方向両端縁で形成される中立線の位置が、前記索条体の捻りがない自然状態で前記長手方向で変化することを特徴とする紐状磁石。
【請求項3】
前記中立線の位置が前記索条体の長手方向で螺旋状に段階的に変化することを特徴とする請求項1又は2の紐状磁石。
【請求項4】
前記中立線の位置が前記索条体の長手方向で螺旋状に連続的に変化することを特徴とする請求項1又は2の紐状磁石。
【請求項5】
前記長手方向における前記着磁部の長さよりも前記非着磁部の長さが短いことを特徴とする請求項2の紐状磁石。
【請求項6】
前記索条体が磁性粉又は磁性体を有する可撓性材料で構成されていることを特徴とする請求項1又は2の紐状磁石。
【請求項7】
請求項1又は2の紐状磁石を環状に曲げて首部に装着可能にしたことを特徴とする磁気ネックレス。
【請求項8】
磁性粉又は磁性体を有する可撓性材料で構成された索条体の長手方向に複数の着磁部が配設された紐状磁石を製造するために前記索条体の長手方向にN極とS極を着磁器によって交互に着磁する着磁方法であって、
前記着磁部の極性は前記長手方向でN極とS極が交互に配列されると共に、前記索条体の径方向を少なくとも二分する極性境界面を挟んでN極とS極が配列され、
前記索条体に捻りを加えた加捻状態で前記索条体を前記着磁器に連続的又は間欠的に通して前記磁性粉又は前記磁性体を着磁することで、前記加捻状態を解除した後の前記極性境界面の径方向両端縁で形成される中立線の位置が、前記索条体の捻りがない自然状態で前記長手方向で変化することを特徴とする着磁方法。
【請求項9】
磁性粉又は磁性体を有する可撓性材料で構成された索条体の長手方向に着磁部と非着磁部が交互に配設された紐状磁石を製造するために前記索条体の長手方向にN極とS極を着磁器によって交互に着磁する着磁方法であって、
前記着磁部の極性は、前記非着磁部を挟む前記長手方向で逆極性かつ前記索条体の径方向を少なくとも二分する極性境界面を挟む前記径方向でも逆極性とされ、
前記索条体に捻りを加えた加捻状態で前記索条体を前記着磁器に連続的又は間欠的に通して前記磁性粉又は前記磁性体を着磁することで、前記加捻状態を解除した後の前記極性境界面の径方向両端縁で形成される中立線の位置が、前記索条体の捻りがない自然状態で前記長手方向で変化することを特徴とする着磁方法。
【請求項10】
前記中立線の位置が前記索条体の長手方向で螺旋状に段階的に変化することを特徴とする請求項8又は9の着磁方法。
【請求項11】
前記中立線の位置が前記索条体の長手方向で螺旋状に連続的に変化することを特徴とする請求項8又は9の着磁方法。
【請求項12】
前記長手方向における前記着磁部の長さよりも前記非着磁部の長さが短いことを特徴とする請求項9の着磁方法。
【請求項13】
請求項8又は9の着磁方法に使用する前記着磁器であって、当該着磁器は、前記索条体を通すための貫通孔と、当該貫通孔の内周面に沿って配設された複数の着磁ヨークとを有し、前記貫通孔の長手方向に沿ってN極を着磁するN極着磁ヨークとS極を着磁するS極着磁ヨークが交互に配設され、前記N極着磁ヨークと前記S極着磁ヨークは前記貫通孔を間に挟んで対向配置され、かつ、前記N極着磁ヨークと前記S極着磁ヨークの間を前記貫通孔の径方向で仕切る仕切部の角度が前記貫通孔の長手方向に沿って連続的に変化することを特徴とする着磁器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は紐状磁石とその着磁方法、磁気治療具及び着磁器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、永久磁石が磁気治療具(磁気ネックレス等)として用いられており、例えば
図11、
図12に示す紐状磁石1が磁気ネックレス等の材料として使用されている(特許文献1参照)。この紐状磁石1は磁性粉を含む可撓性索条体2を有し、当該索条体2の長手方向に着磁部3、4と非着磁部7が交互に形成されている。この紐状磁石1は磁力線J1、J2を広範囲に発生することができ、例えば身体の首部に装着した状態で磁気により血行を促進したり、筋肉を弛緩させたりして肩こりを治療することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5544082号公報
【文献】特公昭7-101650号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の紐状磁石1は
索条体2の径方向を二分する極性境界面5、6が紐状磁石1の長手方向で面一状に連続していた。したがって、紐状磁石1を例えば首部に装着するために
図13のように環状に曲げて使用する場合、極性境界面5、6の径方向両端縁で形成される中立線NLの位置が
図13(a)、(b)又は(c)のように周方向で一定位置になる。
【0005】
中立線NLは磁気ビュワシート上で
図13(a)に示すように環状の白線として現れる。このことから分るように中立線NL付近では磁気が非常に弱いので、
図13(a)のように環状にした紐状磁石1を
図14のように首部に装着すると、鎖骨部から下の胸部にかけて中立線NLが接することになる。また、
図13(b)の紐状磁石1では首部の後ろ側に中立線NLが接し、
図13(c)の紐状磁石1では側頸部に中立線NLが接することになる。(x:前方、y:右方、z:上方)
【0006】
このように、従来の紐状磁石1では
図13(a)(b)(c)のように環状の曲げ方によって中立線NLの位置が異なるが、首部の周囲の特定箇所に必ず中立線NLが接することになる。このような特定箇所では磁気を身体深く浸透させることができないので、磁気治療効果が低下するおそれがある。本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、中立線の位置が長手方向で一定にならない紐状磁石を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するための本発明の紐状磁石は、索条体の長手方向に複数の着磁部が配設された紐状磁石であって、前記着磁部の極性は前記長手方向でN極とS極が交互に配列されると共に、前記索条体の径方向を少なくとも二分する極性境界面を挟んでN極とS極が配列され、前記極性境界面の径方向両端縁で形成される中立線の位置が前記索条体の自然状態で前記長手方向で変化することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の紐状磁石は中立線の位置が索条体の長手方向で変化するので、磁気治療具として使用する場合に特定箇所で磁気治療効果が低下するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態に係る紐状磁石の模式的断面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る紐状磁石の模式的斜視図である。
【
図3】本発明の別の実施形態に係る紐状磁石の模式的斜視図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る紐状磁石を使用した磁気ネックレスの平面図である。
【
図5】非着磁部を省略した変形実施形態に係る紐状磁石の模式的断面図である。
【
図8】加捻着磁状態における
索条体の直径変化を示す図である。
【
図9A】非着磁部を越える磁力線の状態を示す図であって、(a)は加捻状態の図であり(b)は加捻解除状態の図である。
【
図9B】磁力線の方向を示す
索条体の断面図であって、(a)は加捻状態の図であり(b)は加捻解除状態の図である。
【
図10A】加捻着磁を使用しない着磁器の斜視図である。
【
図10B】着磁ヨークの配列状態を示す着磁器の断面図である。
【
図13】従来の紐状磁石を使用した磁気ネックレスの平面図である。
【
図14】従来の紐状磁石を使用した磁気ネックレスの使用状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
●紐状磁石
以下に、本発明の実施形態に係る紐状磁石を図面を参照して説明する。
図1は紐状磁石1の模式的断面図であり、(a)~(e)は着磁部3、4の断面図である。また、
図2は紐状磁石1の模式的斜視図である。
【0011】
紐状磁石1は可撓性の索条体2を有する。索条体2は任意の材料で形成可能であって、例えば合成樹脂で形成可能である。具体的には、可撓性を有するオレフィン系ゴムと、熱可塑性合成樹脂であるエチレン系樹脂と、磁性粉であるフェライト粉末とを混合機により混合して押出し成形することで索条体2を形成することができる。
【0012】
オレフィン系ゴムとしては、エチレン-プロピレン共重合体ゴム、エチレン-ブチレン共重合体ゴム等などを挙げることができる。エチレン系樹脂としては、低密度ポリエチレン樹脂、高密度ポリエチレン樹脂、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂などを挙げることができ、これらはオレフィン系ゴムとの混和性が良好である。
【0013】
索条体2は磁性粉を含む可撓性の紐状体であり、断面円形状に形成される。索条体2の長手方向の所定間隔毎に、複数の第1着磁部3と第2着磁部4が非着磁部7を間に挟んで交互に配設されている。
【0014】
索条体2の磁性粉を着磁器によって着磁することによって、第1着磁部3と第2着磁部4を形成することができる。また、着磁器の励磁コイルに対する通電をオフにすることで非着磁部7を形成することができる。
【0015】
長手方向における第1着磁部3と第2着磁部4の長さはほぼ同じ長さにすることができる。一方、非着磁部7の長さは第1着磁部3や第2着磁部4の長さよりも大幅に短くすることができ、例えば非着磁部7を1.0~1.5mmの長さで形成することができる。非着磁部7は特許文献1に記載のように磁力線を広範囲に発生するためのものであるので、長手方向に必要以上に伸ばす必要はない。
【0016】
第1着磁部3は、索条体2の長手方向(軸方向)に沿って磁気の極性境界面5が平面状に形成されるように着磁器で着磁されている。この極性境界面5は第1着磁部3を径方向に二等分するように形成されている。極性境界面5より片側の半円柱部がN極、反対側の半円柱部がS極となるように着磁されている。
【0017】
第2着磁部4も、索条体2の長手方向(軸方向)に沿って磁気の極性境界面6が平面状に形成されるように着磁器で着磁されている。この極性境界面6は第2着磁部4を径方向に二等分するように形成されている。極性境界面6より片側の半円柱部がN極、反対側の半円柱部がS極となるように着磁されている。
【0018】
●N極S極交互配列
第1着磁部3と第2着磁部4の極性は、非着磁部7を挟む長手方向で逆極性かつ極性境界面5、6を挟む径方向でも逆極性となるように着磁されている(N極S極交互配列)。また、第1着磁部3の極性境界面5と第2着磁部4の極性境界面6は、
索条体2の長手方向で異なる平面となるように構成されている。すなわち、
図1と
図2に示すように、極性境界面5、6の径方向両端縁で形成される中立線NLの位置が、
索条体2の長手方向で変化するように極性境界面5、6が構成されている。
【0019】
●中立線の位置
図1と
図2の例では、中立線NLの位置が紐状磁石1(
索条体2)の長手方向で螺旋状に段階的に変化するようにしている。この段階的に変化する割合は任意である。すなわち、第1着磁部3の極性境界面5から第2着磁部4の極性境界面6に傾斜角が変化する割合は、
図1に示すように約15度でもよいし
図2に示すように約30度でもよい。
【0020】
中立線NLの位置は
図1と
図2の例に限らず、
図3のように紐状磁石1(
索条体2)の長手方向で螺旋状に連続的に変化するようにしてもよい。
図3のように中立線NLの位置が螺旋状に連続的に変化する場合は、索条体2の長手方向でN極とS極が中立線NLを挟んでトルネード状に満遍なく入れ替わるので、磁気治療効果の更なる増進が期待できる。
【0021】
図4は、環状にした紐状磁石1(磁気ネックレス)の一部を磁気ビュワシートで観察した状態を示す。白線として現れる中立線NLの位置が、紐状磁石1の長手方向で螺旋状に連続的に変化する様子を確認することができる。この中立線NLの白線に隣接する黒線は、トルネード状に伸びるN極とS極である。
【0022】
各第1着磁部3のN極から発生した磁力線は、
図11と同様に、当該第1着磁部3のS極だけでなく、長手方向に隣接する第2着磁部4のS極にも到達する。また、隣接する第2着磁部4のN極から発生した磁力線は、当該第2着磁部4のS極だけでなく、長手方向に隣接する第1着磁部3のS極にも到達する。
【0023】
長手方向に発生する磁力線は、隣接する各着磁部3、4の長手方向の中心部の間(非着磁部7の周囲)において最大となる。この最大磁力線によって磁気治療効果を高めることができる。
【0024】
しかしながら、中立線NL付近では磁気が非常に弱くなるので、
図11、
図12のように中立線NLの位置が一定であると、首部の周囲の特定箇所に必ず中立線NLが接することになり、当該特定箇所で磁気治療効果が低下するおそれがある。これに対して本実施形態では中立線NLの位置を
図1~
図3のように変化させているので、首部の周囲の特定箇所で磁気治療効果が低下するのを防止することができる。
【0025】
●紐状磁石の変形実施形態
次に、
図1の非着磁部7を省略した変形実施形態に係る紐状磁石1を
図5の模式的断面図により説明する。
図1の非着磁部7は磁力線を広範囲に発生するために有効であるが、磁力線を必ずしもそれほど広範囲に発生する必要性がない場合は、非着磁部7を
図5のように省略することも可能である。この場合、紐状磁石1の長手方向で第1着磁部3と第2着磁部4が直接隣接することになる。
【0026】
●極性境界面の変形例
また、極性境界面は
索条体2の径方向を
図1~
図3のように二分する構成(極性境界面5、6による二極着磁)の他に、例えば
図6(a)~(f)に示すようにN極とS極を多極着磁する構成も可能である。すなわち、
図6(a)の極性境界面8は十字状(4壁)であり、この十字状の極性境界面8によってN極とS極を4極に分割着磁している。
【0027】
図6(b)の極性境界面9は6壁でN極とS極を6極で分割着磁している。
図6(c)の極性境界面10は8壁でN極とS極を8極で分割着磁している。このように多極着磁することによって磁気治療効果の更なる増進が期待できる。
【0028】
また、索条体2の断面は円形状、多角形状又は楕円形状など任意である。
図6(d)は断面が正四角形の
索条体2を使用した紐状磁石1の例である。
図6(d)の極性境界面11は4壁でN極とS極を4極で分割着磁している。
図6(e)は断面が正六角形の
索条体2を使用した紐状磁石1の例である。
図6(e)の極性境界面12は6壁でN極とS極を6極で分割着磁している。
【0029】
図6(f)は断面が正八角形の
索条体2を使用した紐状磁石1の例である。
図6(f)の極性境界面13は8壁でN極とS極を8極で分割着磁している。また、
図6(g)は断面が楕円形の
索条体2を使用した紐状磁石1の例である。
図6(g)の極性境界面14はX字状(4壁)であり、この極性境界面14によってN極とS極を4極で分割着磁している。
【0030】
●紐状磁石の製造ライン
次に、紐状磁石1の製造ラインと加捻着磁方法を
図7(a)(b)によって説明する。
図7(a)の紐状磁石1の製造ラインは、押出成形機20、冷却装置30、引取機40、60、着磁器50、巻取機70を有する。
【0031】
着磁器50は公知の各種着磁器を使用可能であり、例えば特許文献2に開示された着磁器を使用可能である。特許文献2の着磁器は、製造ラインの長手方向に等間隔に配設された複数の磁極片を有する。これら磁極片によって、索条体2が所要の保磁力を持つような磁界を発生させるため、着磁電源から電流を瞬間的に放電させる。
【0032】
索条体2の材料(磁性粉又は磁性体含有の溶融樹脂)は、混合機により混合された後に押出成形機20から紐状に連続的又は間欠的に押出される。その後冷却装置30で冷却され、引取機40を通して着磁器50に連続的又は間欠的に導入される。この着磁器50で索条体2の磁性紛が着磁された後、索条体2(紐状磁石1)が引取機60を通して巻取機70によって巻取られる。
【0033】
●加捻着磁方法
着磁器50の入口側と出口側には、
図7(b)のように加捻装置80が配設されている。この加捻装置80によって索条体2に連続的又は間欠的に捻りが加えられる。すなわち、加捻装置80によって、索条体2の加捻状態で着磁する加捻着磁方法を行うことができる。索条体2の捻りの度合いによって、紐状磁石1(
索条体2)の長手方向で中立線NLの位置が螺旋状に連続的又は段階的に変化する割合が決まる。
【0034】
索条体2の加捻状態は、索条体2が後段の加捻装置80を通過した後に自然に解除される(索条体2の弾性復帰)。これにより、
図1~
図3に示すように中立線NLの位置が螺旋状に連続的又は段階的に変化する紐状磁石1が得られる。
【0035】
●加捻着磁の作用
加捻装置80によって索条体2が捻られると、
図8に示すように索条体2の直径がD1からD2に減少する。捻りによって索条体2の長手方向に張力が作用するからである。このように索条体2の直径がD2に減少することで、加捻しない場合(直径D1)に比べて第1着磁部3と第2着磁部4をより高密度で形成することができる。
【0036】
また、索条体2が加捻装置80を通過して索条体2の捻りと長手方向の張力が解除されると、索条体2の弾性復帰(自己収縮)によって
図9A(a)⇒(b)に示すように非着磁部7の幅がW1⇒W2に減少すると共に、中立線NLが螺旋状に傾斜する。そして、当該中立線NLの傾斜方向に沿ってN極S極交互配列による強力な磁力線J1を形成することができる。ここで、加捻状態のW1は例えば2.0~2.2mmとすることができ、加捻解除状態のW2は例えば0.5~1.5mmとすることができる。
【0037】
また、
図9Bは磁力線の方向を示す
索条体2の断面図であって、(a)は加捻状態の図であり(b)は加捻解除状態の図である。(a)の加捻状態では磁力線の方向が極性境界面5、6に対して垂直である。これは着磁器50の着磁ヨークの配置、すなわち貫通孔50aの径方向での対向配置によるものである。
【0038】
これに対して、(b)の加捻解除状態では磁力線の方向が索条体2の中心から拡がる放射状になる。これは、(a)の加捻状態から(b)の加捻解除状態で索条体2の直径が径方向に均等に拡大するためである。(b)のように磁力線を周方向に広範囲に発生させることで、(a)の状態よりも磁気治療効果を高めることができる。
【0039】
●加捻着磁以外の着磁方法
螺旋状の中立線NLは、索条体2を加捻着磁する方法の他に、着磁器50の複数の磁極片(着磁ヨーク)を少しずつズラして配設することでも形成可能である。
図10Aと
図10Bはこのような着磁器50の構成を示すもので、着磁器50は細長矩形状に構成されている。
【0040】
そして着磁器50の長手方向に沿って、索条体2を連続的又は間欠的に通すための貫通孔50aが形成されている。この貫通孔50aの内周面に沿って、
図10Bのように複数の着磁ヨーク50b、50cが配設されている。
【0041】
着磁ヨーク50bがN極着磁用であり、着磁ヨーク50cがS極着磁用である。N極着磁ヨーク50bとS極着磁ヨーク50cは貫通孔50aを間に挟んで貫通孔50aの径方向で対向配置され、かつ、N極着磁ヨーク50bとS極着磁ヨーク50cが貫通孔50aに沿って交互に配設されている。なお、貫通孔50aを間に挟んで対向するN極着磁ヨーク50bとS極着磁ヨーク50cの間には径方向の仕切部50dが設けられている。
【0042】
図10Bでは、貫通孔50aの長手方向に5つの着磁ヨーク50b、50cが等間隔で配設されているが、着磁ヨーク50b、50cの数は任意である。着磁ヨーク50b、50cは6つ以上で配設してもよいし、4つ以下で配設することも可能である。なお、貫通孔50aの長手方向で隣接する着磁ヨーク50b、50c相互間には、非着磁部7を形成するための隙間が形成されている。
【0043】
着磁ヨーク50b、50cの位置(位相)は、着磁器50の長手方向に沿って変化している。すなわち、
図10Bの(a)から(e)にかけて、着磁ヨーク50bと50cの間の仕切部50dの角度が時計方向に少しずつズレて成形されている。
【0044】
図示例では、仕切部50dが時計方向に約15°ずつズレて成形されている。仕切部50dの変化する角度は任意であって、15°に限られるものではないことは勿論である。
【0045】
このように、複数の着磁ヨーク50b、50cを少しずつズラして配設することで、索条体2を加捻着磁することなく螺旋状の中立線NLを形成することができる。したがって、
図10Bの着磁器50を使用する場合は
図7の加捻装置80は省略可能である。
【0046】
以上、本発明を実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載の技術的思想の範囲内で種々変更可能であることは言うまでもない。例えば前記実施形態では、中立線NLの位置を索条体2の長手方向で螺旋状に段階的又は連続的に変化させたが、中立線NLの位置は索条体2の長手方向で変化させればよいので、中立線NLの位置を索条体2の長手方向で例えばジクザグ状に変化させてもよい。また、第1着磁部3と第2着磁部4は非着磁部7を間に挟んで索条体2の長手方向で必ずしも所定間隔毎に配設する必要はない。第1着磁部3と第2着磁部4は等間隔に形成してもよいし、不等間隔(ランダム間隔)で配設してもよい。
【0047】
また、第1着磁部3と第2着磁部4は、索条体2の磁性粉を着磁器によって着磁することによって形成してもよいし、索条体2の長手方向に等間隔又は不等間隔で配設した磁性体を着磁器によって着磁することによって形成してもよい。磁性体は硬磁性体が好適であり、電磁ステンレス鋼、ケイ素鉄、ネオジム磁石、サマリウムコバルト磁石(サマコバ磁石)などの希土類磁石、フェライト磁石、アルニコ磁石等を使用することができる。
【0048】
さらに、本発明の紐状磁石1は首部に巻き掛ける磁気治療具(磁気ネックレス)の他、手首、腕、肘、膝、腰又は足首等に巻き掛ける磁気治療具や、トレーニングマット、フィットネスマット、ヨガマット等に使用する磁気マットレスにも適用することもできる。また、本発明の紐状磁石1は、前記磁気治療具以外の種々の用途にも適用することができる。
【符号の説明】
【0049】
1:紐状磁石 2:索条体
3:第1着磁部 4:第2着磁部
5、6:極性境界面 7:非着磁部
20:押出成形機 30:冷却装置
40、60:引取機 50:着磁器
50a:貫通孔 50b:N極着磁ヨーク
50c:S極着磁ヨーク 50d:仕切部
70:巻取機 80:加捻装置
J1、J2:磁力線 NL:中立線
【要約】
【課題】N極とS極の間にある中立線の位置が長手方向で一定にならない紐状磁石を提供する。
【解決手段】本発明は、索条体2の長手方向に複数の着磁部3、4が配設された紐状磁石1であって、着磁部3、4の極性は長手方向でN極とS極が交互に配列されると共に、索条体の径方向を少なくとも二分する極性境界面を挟んでN極とS極が配列され、極性境界面5、6の径方向両端縁で形成される中立線NLの位置が索条体2の自然状態で長手方向で変化することを特徴とする。
【選択図】
図1