(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】油水分離装置及び油水分離方法
(51)【国際特許分類】
B01D 17/025 20060101AFI20240305BHJP
B01D 17/032 20060101ALI20240305BHJP
B01D 17/028 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
B01D17/025 502D
B01D17/032 501Z
B01D17/028 D
(21)【出願番号】P 2023171832
(22)【出願日】2023-10-03
【審査請求日】2023-10-17
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】509133850
【氏名又は名称】永進テクノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100153811
【氏名又は名称】青山 高弘
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 道雄
【審査官】池田 周士郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-331641(JP,A)
【文献】特開2001-321765(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 17/00-17/12
C02F 1/40
E02B 15/00-15/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被分離液を流入させる第1分離槽と、
前記第1分離槽の底面より高い位置の底面、及び、前記第1分離槽の側壁面でオーバーフローする前記被分離液である第1分離槽上層液が流入し、流入した前記第1分離槽上層液を折り返して流す流路を形成する流路仕切り板、を有する第2分離槽と、を備え
、
前記第2分離槽の底面積は、前記第1分離槽の底面積の2倍以上であり、前記第1分離槽の水深は、前記第2分離槽の水深の2倍以上である油水分離装置。
【請求項2】
前記第1分離槽は、
前記被分離液の流入及び前記第1分離槽上層液のオーバーフローが行われる側である前記第1分離槽の上流側に対して、前記第1分離槽の底面近くの一部を空けて仕切って下流側を形成する第1連通仕切り板と、
前記第1連通仕切り板の下流側に流れ込む第1分離槽下層液をオーバーフローさせると共に、水位を調整する第1水位調整部と、を有し、
前記第2分離槽は、
前記第2分離槽の前記流路の下流端で、前記第2分離槽の底面近くの一部を空けて仕切る第2連通仕切り板と、
前記第2連通仕切り板の下流側に流れ込む第2分離槽下層液をオーバーフローさせると共に、水位を調整する第2水位調整部と、を有する請求項1に記載の油水分離装置。
【請求項3】
前記第1水位調整部でオーバーフローした第1分離水を、前記第2水位調整部でオーバーフローした第2分離水と合流させる第1分離水環水口と、
前記第2分離水及び合流した前記第1分離水を環水する共通環水口と、
を更に備える、請求項2に記載の油水分離装置。
【請求項4】
前記第2分離槽は、前記共通環水口と同じ側壁面に、前記第2連通仕切り板を挟んで設けられる排油口を更に有している、請求項3に記載の油水分離装置。
【請求項5】
前記第1分離槽上層液のオーバーフローは、前記第1分離槽及び前記第2分離槽の互いに隣り合う側壁面又は共通する側壁面である一体型側壁面を介して行われ、
前記第1連通仕切り板及び前記流路仕切り板は、それぞれ前記一体型側壁面から延び、
前記第1分離水は、前記第1分離槽上層液がオーバーフローする位置とは、前記第1連通仕切り板を挟んだ反対側で、前記一体型側壁面を介して前記第2分離槽に流入することにより、前記第2分離水と合流する、請求項3に記載の油水分離装置。
【請求項6】
前記第1水位調整部は、
前記第1分離槽の底面近くから伸び、前記第1連通仕切り板の下流側のオーバーフローの高さを上端とする管である第1分離槽水位調整管と、
前記第1分離槽水位調整管の上端の周囲を囲う側壁面、及び前記第1分離槽水位調整管が貫通している底面を有することにより、オーバーフローした第1分離水を受ける第1分離水用容器と、
を有している、請求項2に記載の油水分離装置。
【請求項7】
前記第2水位調整部は、
前記第2分離槽の底面近くから伸び、前記第2連通仕切り板の下流側のオーバーフローの高さを上端とする管である第2分離槽水位調整管と、
前記第2分離槽水位調整管の上端の周囲を囲う側壁面、及び前記第2分離槽水位調整管が貫通している底面を有することにより、オーバーフローした第2分離水を受ける第2分離水用容器と、
を有している、請求項2に記載の油水分離装置。
【請求項8】
前記第1分離槽の前記第1連通仕切り板の上流側に載置された円柱形状の磁石を更に備える、請求項2に記載の油水分離装置。
【請求項9】
被分離液が第1分離槽に流入し、
前記第1分離槽の底面より高い位置に底面を有する第2分離槽に、前記第1分離槽の側壁面でオーバーフローした前記被分離液である第1分離槽上層液が流入し、
前記第1分離槽上層液は、前記第2分離槽において、流路仕切り板により形成された流路により折り返して流れ
、
前記第2分離槽の底面積は、前記第1分離槽の底面積の2倍以上であり、前記第1分離槽の水深は、前記第2分離槽の水深の2倍以上である、油水分離方法。
【請求項10】
前記第1分離槽の底面近くの一部を空けて仕切られた第1連通仕切り板の下流側に移動した第1分離槽下層液が、第1分離水としてオーバーフローし、
前記第2分離槽の前記流路の下流端において、前記第2分離槽の底面近くの一部を空けて仕切られた第2連通仕切り板の下流側に移動した第2分離槽下層液が、第2分離水としてオーバーフローし、
オーバーフローした前記第1分離水及び前記第2分離水は、共通の環水口で環水される、請求項9に記載の油水分離方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油水分離装置及び油水分離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
工業プロセスや環境保全の分野においては、油と水が混ざった液体を分離するため油水分離装置が利用されている。例えば、工作機械を使用する工場においては、工作機械で使用する切削油や洗浄液(以下「水溶性クーラント等」という。)に混入した作動油や潤滑油といった油分を除去して、水溶性クーラント等をリサイクルして利用する油水分離装置が用いられている。
【0003】
特許文献1は、複数個の垂直方向の仕切板によって直列に区画されたことによって設けられた複数個の分離室よりなる槽であって、その最上流槽壁面に被処理油水混合液導入口を有し、その仕切板に設けた通孔は上流から下流に至る程次第に下位に位置し、かつ千鳥上に配置されていて、最下流分離室にはその底面上に開口する排出管を備えていることを特徴とする油水分離槽について開示している(特許文献1、第1図、第2図)。
【0004】
特許文献2は、油とこれよりも比重の大きい液が混合した混合液を流入させて油を液面L1~L3近くへ上昇分離させる液槽1内に、複数の仕切壁21~23により区画された複数の回収室C1~C3を形成し、清浄液排出管41~43は、各回収室C1~C3の側壁から上方の所定高さ位置へ立ち上げられて各回収室C1~C3の液面高を決定するとともに、液面L1~L3近く以外の混合液を清浄液としてオーバーフローさせることについて開示している(特許文献2、
図2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】実開昭50-33872号公報
【文献】特開2000-135404号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
例えば、多くの工作機械がフル稼働している工場等では、作動油や潤滑油が混入した水溶性クーラント等(以下「油水混合液」という。)が日常的に発生して、常に油水分離装置を使用してリサイクルした水溶性クーラント等を利用する機会があるものと考えられる。
【0007】
しかしながら、町工場を含む多くの工作機械を備える工場では、日常的にリサイクルして活用したい量の油水混合液が発生していることは少なく、この場合には、工場内に常時固定され、広い場所を占有する油水分離装置は設置されず、油水混合液は、リサイクルされることなく廃棄されてしまうことが多かった。
【0008】
しかしながら、サステナビリティの観点からも、少ない油水混合液であっても、ある程度の量がまとまった時点で、効率的に油水分離を行い、できるだけリサイクルしたいという要求がある。一方で、リサイクルして活用するためには、油水分離後の液体に水溶性クーラント等としての十分な品質が必要であり、高い分離精度が要求される。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、省スペースでありながら高い分離精度で油水分離を行う油水分離装置及び油水分離方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の油水分離装置は、被分離液を流入させる第1分離槽と、前記第1分離槽の底面より高い位置の底面、及び、前記第1分離槽の側壁面でオーバーフローする前記被分離液である第1分離槽上層液が流入し、流入した前記第1分離槽上層液を折り返して流す流路を形成する流路仕切り板、を有する第2分離槽と、を備える油水分離装置である。
【0011】
また、本開示の油水分離装置においては、前記第1分離槽は、前記被分離液の流入及び前記第1分離槽上層液のオーバーフローが行われる側である前記第1分離槽の上流側に対して、前記第1分離槽の底面近くの一部を空けて仕切って下流側を形成する第1連通仕切り板と、前記第1連通仕切り板の下流側に流れ込む第1分離槽下層液をオーバーフローさせると共に、水位を調整する第1水位調整部と、を有し、第2分離槽は、前記第2分離槽の前記流路の下流端で、前記第2分離槽の底面近くの一部を空けて仕切る第2連通仕切り板と、前記第2連通仕切り板の下流側に流れ込む第2分離槽下層液をオーバーフローさせると共に、水位を調整する第2水位調整部と、を有してもよい。
【0012】
また、本開示の油水分離装置においては、前記第1水位調整部でオーバーフローした第1分離水を、前記第2水位調整部でオーバーフローした第2分離水と合流させる第1分離水環水口と、前記第2分離水及び合流した前記第1分離水を環水する共通環水口と、を更に備えることとしてもよい。
【0013】
また、本開示の油水分離装置においては、前記第2分離槽は、前記共通環水口と同じ側壁面に、前記第2連通仕切り板を挟んで設けられる排油口を更に有していてもよい。
【0014】
また、本開示の油水分離装置においては、前記第1水位調整部は、前記第1分離槽の底面近くから伸び、前記第1連通仕切り板の下流側のオーバーフローの高さを上端とする管である第1分離槽水位調整管と、前記第1分離槽水位調整管の上端の周囲を囲う側壁面、及び前記第1分離槽水位調整管が貫通している底面を有することにより、オーバーフローした前記第1分離水を受ける第1分離水用容器と、を有していてもよい。
【0015】
また、本開示の油水分離装置においては、前記第2水位調整部は、前記第2分離槽の底面近くから伸び、前記第2連通仕切り板の下流側のオーバーフローの高さを上端とする管である第2分離槽水位調整管と、前記第2分離槽水位調整管の上端の周囲を囲う側壁面、及び前記第2分離槽水位調整管が貫通している底面を有することにより、オーバーフローした前記第2分離水を受ける第2分離水用容器と、を有していてもよい。
【0016】
また、本開示の油水分離装置においては、前記第1分離槽上層液のオーバーフローは、前記第1分離槽及び前記第2分離槽の互いに隣り合う側壁面又は共通する側壁面である一体型側壁面を介して行われ、前記第1連通仕切り板及び前記流路仕切り板は、それぞれ前記一体型側壁面から延び、前記第1分離水は、前記第1分離槽上層液がオーバーフローする位置とは、前記第1連通仕切り板を挟んだ反対側で、前記一体型側壁面を介して前記第2分離槽に流入することにより、前記第2分離水と合流することとしてもよい。
【0017】
また、本開示の油水分離装置においては、前記第1分離槽の前記第1連通仕切り板の上流側に載置された円柱形状の磁石を更に備えることとしてもよい。
【0018】
また、本開示の油水分離装置においては、前記第2分離槽の各側壁は透明な材料で形成されていてもよい。
【0019】
また、本開示の油水分離装置においては、前記第1分離槽及び前記第2分離槽は、それぞれ透明な材料からなる蓋を有していてもよい。
【0020】
また、本開示の油水分離装置においては、前記第2分離槽の底面積は、前記第1分離槽の底面積の2倍以上であり、前記第1分離槽の水深は、前記第2分離槽の水深の2倍以上であってもよい。
【0021】
また、本開示の油水分離装置においては、前記第2分離槽の真下の空間に配置され、前記第1分離槽に前記被分離液を送るポンプを更に備えることとしてもよい。
【0022】
本開示の油水分離方法は、被分離液が第1分離槽に流入し、前記第1分離槽の底面より高い位置に底面を有する第2分離槽に、前記第1分離槽の側壁面でオーバーフローした前記被分離液である第1分離槽上層液が流入し、前記第1分離槽上層液は、前記第2分離槽において、流路仕切り板により形成された流路により折り返して流れる油水分離方法である。
【0023】
また、本開示の油水分離方法においては、前記第1分離槽の底面近くの一部を空けて仕切られた第1連通仕切り板の下流側に移動した第1分離槽下層液が、第1分離水としてオーバーフローし、前記第2分離槽の前記流路の下流端において、前記第2分離槽の底面近くの一部を空けて仕切られた第2連通仕切り板の下流側に移動した第2分離槽下層液が、第2分離水としてオーバーフローし、オーバーフローした前記第1分離水及び前記第2分離水は、共通の環水口で環水されることができる。
【発明の効果】
【0024】
本開示の油水分離装置及び油水分離方法によれば、省スペースでありながら高い分離精度で油水分離を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の一実施形態に係る油水分離装置の正面、左側面及び上面を視認できる方向からの斜視図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る油水分離装置の正面図である。
【
図3】第1分離槽及び第2分離槽における油水分離の機能を説明するために、液体の流れを2次元的に(紙面の横方向をXY方向として)示す模式図である。
【
図4】第1分離槽及び第2分離槽の上面からの視野による模式図であり、液体の流れを説明するためのものである。
【
図5】第1分離槽の他の例について示す斜視図である。
【
図6】本発明の他の実施形態に係る油水分離装置の正面及び右側面を視認できる方向からの斜視図である。
【
図7】本発明の他の実施形態に係る油水分離装置の裏面及び左側面を視認できる方向からの斜視図である。
【
図8】
図6及び
図7の実施形態に係る油水分離装置の使用例について示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本開示の油水分離装置について、図面を参照して説明する。説明において同様の要素には同一の符号を付して、重複する説明を適宜省略する。図においてXYZで示される矢印は、座標軸の方向を示し、図面の視野を分かりやすくするために示すものである。
【0027】
図1は、本発明の一実施形態に係る油水分離装置1の正面、左側面及び上面を視認できる方向からの斜視図であり、
図2は油水分離装置1の正面図である。
図3は、第1分離槽2及び第2分離槽3における油水分離の機能を説明するために、液体の流れを2次元的に(紙面の横方向をXY方向として)示す模式図である。
【0028】
図1及び
図2に示されるように、油水分離装置1は、第1分離槽2及び第2分離槽3を有している。本実施形態においては、第1分離槽2及び第2分離槽3は、それぞれ異なる直方体の形状であり、第1分離槽2の側面の一部に第2分離槽3が接している構成となっている。しかしながら、このような構成に限られず、第1分離槽2及び第2分離槽3は、一部の角が丸い等の直方体以外の形状であってもよいし、第1分離槽2及び第2分離槽3との間には距離があってもよい。油水分離装置1においては、第1分離槽2に被分離液91(
図3参照)が流入し、第2分離槽3から分離後の液体が排出される構成となっている。
図1において一点鎖線で記載された被分離液流入口24は、説明のための仮想的な流入口であり、被分離液流入口24の位置の例を示すものである。
【0029】
ここで、第2分離槽3は、第1分離槽2の底面より高い位置に底面を有し、第1分離槽2の側壁面でオーバーフローする被分離液91である第1分離槽上層液93(
図3参照)が流入し、流入した第1分離槽上層液93を折り返して流す流路を形成する流路仕切り板31を有している。ここで「側壁面でオーバーフロー」とは、側壁面の上端でのオーバーフローの他、側壁面に開けられた穴(本実施形態における第1分離槽上層液流出口25)によるオーバーフローも含む意味である。なお、本実施形態においては、流路を形成する流路仕切り板31を一枚としているが、例えば、更に、流路仕切り板31とは垂直方向(Y方向)に延びる流路仕切り板31を追加することにより、蛇行する流路を形成することとしてもよい。
【0030】
ここで、第2分離槽3は、第1分離槽2の下流側に配置されるため、第2分離槽3での水位の高さは、第1分離槽2の水位の高さより低くなる。また、第2分離槽3の底面の高さは、第1分離槽2の底面より高い位置であるため、結果として、第2分離槽3の水深は、第1分離槽2の水深より浅く設定される。つまり、より深い第1分離槽2と、流路が形成された、より浅い第2分離槽3を備える油水分離装置1となる。
【0031】
第1分離槽2では、深さがあるため、被分離液91が油水混合液である場合、水分比率の高い水相を短時間で第1分離槽2の底付近に集めることができ、集められた第1分離槽下層液92(
図3参照)を第1分離水96(
図3参照)として効率的に再利用することができる。また、より浅い第2分離槽3では、水分比率の低い第1分離槽上層液93を、流路仕切り板31で形成された流路により、距離及び時間をかけて、比重の違いによる分離を行うため、コンパクトな構成であっても、高い精度で分離することができ、分離された分離水を再利用することができる。
【0032】
このような構成により、被分離液91が油水混合液である場合には、油水混合液に含まれる油を効率的に取り除き、分離水をリサイクルすることができる。なお、第2分離槽上層液(分離油)95を(単独で又は分離水と共に)リサイクルして活用するものであってもよい。
【0033】
また、本実施形態の油水分離装置1においては、第2分離槽3の底面積を、第1分離槽2の底面積より大きく、また、第1分離槽2の水深を、第2分離槽3の水深より大きくすることができる。更に好ましくは、第2分離槽3の底面積を、第1分離槽2の底面積の2倍以上とし、第1分離槽2の水深を、第2分離槽3の水深の2倍以上としてもよい。ここで、「水深」とは、各分離槽において、槽の底からオーバーフローの水位までの(鉛直)距離を意味する。このような構成とすることにより、第1分離槽2は、より深い分離槽であるため、比重の違いによる分離を、より短時間に分離精度高く行うことができ、効率的に、分離水としてリサイクルできる第1分離槽下層液92を生成することができる。また、第2分離槽3では、流路仕切り板31で形成された流路も活用することにより、より距離及び時間をかけて比重の違いによる分離を行うことができるため、比重差の小さな油水混合液であっても、分離精度の高い分離水である第2分離槽下層液94を生成することができる。
【0034】
また、第1分離槽2は、被分離液91の流入及び第1分離槽上層液93のオーバーフローが行われる側である第1分離槽2の上流側に対して、第1分離槽2の底面近くの一部を空けて仕切って下流側を形成する第1連通仕切り板21と、第1連通仕切り板21の下流側に流れ込む第1分離槽下層液92をオーバーフローさせると共に、水位を調整する第1水位調整部22と、を有していてもよい。また、第2分離槽3は、第2分離槽3の流路の下流端で、第2分離槽3の底面近くの一部を空けて仕切る第2連通仕切り板32と、第2連通仕切り板32の下流側に流れ込む第2分離槽下層液94をオーバーフローさせると共に、水位を調整する第2水位調整部33と、を有していてもよい。
【0035】
ここで「底面近く」とは、液面と底面との間において、これらの中央より底面側であることを意味する。第1連通仕切り板21は、底面から距離を置いて配置されることにより第1連通口211を形成することとしてもよいし、底面近くに穴の開いた板であることにより、穴の位置に第1連通口211を形成するものであってもよい。第2連通仕切り板32においても、底面から距離を置いて配置されることにより、第2連通口321を形成することとしてもよいし、底面近くに穴の開いた板であることにより、穴の位置に第2連通口321を形成するものであってもよい。第1連通仕切り板21や第2連通仕切り板32により、被分離液91が油水混合液である場合に、十分に油分が除かれた分離水のみを仕切り板の下流側に流入させることができ、また、オーバーフローする構成により、各分離槽における油水分離に必要な水位を画定させることができる。
【0036】
また、油水分離装置1は、第1水位調整部22でオーバーフローした第1分離水96を、第2水位調整部33でオーバーフローした第2分離水97と合流させる第1分離水環水口23と、第2分離水97及び合流した第1分離水96を環水する共通環水口34と、を更に備えていてもよい。
【0037】
ここで「合流」とは、第2分離水97が流れる領域に、第1分離水96が流れるという意味であり、実際に第1分離水96と第2分離水97とが合流しなくともよい。このように、第1分離水96と第2分離水97を同一の共通の共通環水口34で環水することにより、環水口を一つとすることができ、それぞれに別個のホースや管を必要としないため、装置全体を、よりコンパクトな構成とすることができる。
【0038】
第2分離槽3は、共通環水口34と同じ側壁面に、第2連通仕切り板32を挟んで設けられる排油口35を更に有していてもよい。ここで、排油口35は、例えば手動のバルブが取り付けられて開閉可能とされていてもよいし、スラッジ等の固体が含まれていても排出可能な大きめの口の斜面からなるシューター式等その他の構成とすることができる。また、排油口35により排出された油はリサイクルされる構成としてもよい。排油口35により分離油95を排出することにより、第2分離槽3の油分の量を低減することができるため、第2分離槽下層液94及び第2分離水97の分離精度を高めることができる。
【0039】
第1水位調整部22は、第1分離槽2の底面近くから伸び、第1連通仕切り板21の下流側のオーバーフローの高さを上端とする管である第1分離槽水位調整管221と、第1分離槽水位調整管221の上端の周囲を囲う側壁面、及び第1分離槽水位調整管221が貫通している底面を有することにより、オーバーフローした第1分離水96を受ける第1分離水用容器222と、を有していてもよい。ここで、第1分離水用容器222の側壁面は、第1分離槽2の側壁面や第1連通仕切り板21により構成されていてもよい。第1分離水用容器222は、第1分離水環水口23を有していてもよい。
【0040】
ここで「上端」は、穴がなく伸びる管である場合にはその上端を意味し、途中で管内の液体が流出する穴がある場合には、穴の位置を意味する。このような構成により、第1連通仕切り板21の下流側に偶発的に入り込んだ油が環水されることを抑制することができる。第1水位調整部22は、このような構成に限られず、例えば第1分離槽2の側壁面でオーバーフローさせる等の他の構成とすることができる。
【0041】
また、第2水位調整部33は、第2分離槽3の底面近くから伸び、第2連通仕切り板32の下流側のオーバーフローの高さを上端とする管である第2分離槽水位調整管331と、第2分離槽水位調整管331の上端の周囲を囲う側壁面、及び第2分離槽水位調整管331が貫通している底面を有することにより、オーバーフローした第2分離水97を受ける第2分離水用容器332と、を有していてもよい。ここで、第2分離水用容器332の側壁面は、第2分離槽3の側壁面や第2連通仕切り板32により構成されていてもよい。また、第2分離水用容器332は、共通環水口34を有していてもよい。
【0042】
ここで「上端」は、第1水位調整部22の場合と同様に、穴がなく伸びる管である場合にはその上端を意味し、途中で管内の液体が流出する穴がある場合には、穴の位置を意味する。第2分離水用容器332の底面(の下側の面)、第2連通仕切り板32の下縁及び第2分離槽水位調整管331の下縁を同一平面で形成することにより、第2分離水97を効率よく回収することができる。第2水位調整部33は、このような構成に限られず、例えば第2分離槽3に底面から延びる新たな仕切り板を設けてオーバーフローさせる等の他の構成とすることができる。
【0043】
ここで、第1分離槽上層液93のオーバーフローは、第1分離槽2及び第2分離槽3の互いに隣り合う側壁面又は共通する側壁面である一体型側壁面8を介して行われることとしてもよい。この場合に、第1連通仕切り板21及び流路仕切り板31は、それぞれ一体型側壁面8から延びるものとし、第1分離水96は、第1分離槽上層液93がオーバーフローする位置とは、第1連通仕切り板21を挟んだ反対側で、一体型側壁面8を介して第2分離槽3に流入することにより、第2分離水97と合流することとしてもよい。
【0044】
ここで、「一体型側壁面8」は、一枚の板材からなる構成や複数枚の板材が接触するように並ぶ構成だけでなく、第1分離混合液のオーバーフローが第2分離槽3に流入するように構成された流路で接続された第1分離槽2及び第2分離槽3のそれぞれの側壁面を含むものであってもよい。第1分離水96は、一体型側壁面8を介して、第2分離水97が生成される領域と近い位置で生成されるため、ホースや管を追加的に用いることなく、簡易な構成で第2分離水97と合流させることができるため、よりコンパクトな構成とすることができる。
【0045】
また、第2分離槽3の各側壁は、透明な材料で形成されていてもよい。各側壁を透明とすることにより、分離の状態を目視で把握することができる。これにより、目視で確認された状態によっては、被分離液91の流入量の調整し、精度の高い分離の状態を保つことができる。また、排油口35に手動のバルブが設けられている場合には、排油口35の開け閉めのタイミングを認知しやすくすることができる。
【0046】
次に、液体の流れを2次元的かつ模式的に示した
図3を用いて、油水分離装置1の油水分離について説明する。まず、被分離液91が、被分離液流入口24を介して、第1分離槽2に流入する(F1)。被分離液91のうち、比較的比重の小さな第1分離槽上層液93は、第1分離槽2において上方に移動し、第1分離槽2の側壁面(一体型側壁面8)の第1分離槽上層液流出口25でオーバーフローして第2分離槽3に流入する(F21)。第2分離槽3に流入した第1分離槽上層液93は、流路仕切り板31により形成された流路に沿って流れ、比重の違いによる油水分離が時間をかけて行われる(F22)。第2分離槽3の流路の下流端において、底面付近に沈んだ比較的比重の大きな水分を多く含む第2分離槽下層液94は、第2連通口321通って(F23)、第2水位調整部33でオーバーフローし(F24)、第2分離水97として共通環水口34で環水される。また、第2分離槽3の流路の下流端において、油分を多く含んだ比較的比重の小さな第2分離槽上層液(分離油)95は、排油口35により排油される。
【0047】
一方、被分離液91のうち、比較的比重の大きな水分を多く含む第1分離槽下層液92は、第1連通口211を通って(F11)、第1水位調整部22でオーバーフローする(F12)。第1水位調整部22でオーバーフローした第1分離水96は、第1分離槽2の側壁面(一体型側壁面8)にある第1分離水環水口23を通って(F13)、第2分離水97と合流して、共通環水口34で環水される。
【0048】
図4は、第1分離槽2及び第2分離槽3の上面からの視野による模式図であり、液体の流れを説明するためのものである。この図に示されるように、本実施形態に係る油水分離装置1においては、被分離液91が第1分離槽2に流入すると(F1)、第1分離槽上層液93は、
図6において反時計回りに移動し(F21~F24)、第2分離水97として環水される(F2)。一方で、第1分離槽下層液92は、時計回りに移動し(F11~F13)、第1分離水96として環水される(F2)。このように短い経路で短時間に分離される第1分離水96は、長い経路で長時間かけて分離される第2分離水97が生成される領域の(一体型側壁面8を隔てた)隣りで生成されるため、第2分離水97と同一の共通環水口34で環水させることができ、別個のホースや管を追加的に用いることなく、よりコンパクトな構成とすることができる。また、排油口35についても、共通環水口34と同一の側面に形成することができるため、出力側を一方向とすることができるため、使用時においても省スペースを実現することができる。
【0049】
図5は、第1分離槽2の他の例について示す斜視図である。この図に示されるように、第1分離槽2は、第1分離槽2の第1連通仕切り板21の上流側に載置された円柱形状の磁石27を更に有していてもよい。このような構成とすることにより、被分離液91が流入した直後に例えばスラッジ等の金属片を吸着させることができ、第1分離槽上層液93や第1分離槽下層液92に混じる可能性のある金属固形物を除去できる。これにより、より精度の高い油水分離を行うことができる。また、磁石27を円柱状とすることで、円柱側面の広い面積を利用して金属片を吸着させることができる。また、円柱が底面付近から液面に向かって伸びるように載置することにより、沈む金属片だけでなく、油や空気等が付着すること等により浮遊する金属片も吸着させることができる。なお、大きな金属片については、第1分離槽2に流入する前に後述するストレーナ7等により分離しておくこととしてもよい。
【0050】
図6及び
図7は、油水分離装置1における、他の実施形態に係る図であり、
図6は油水分離装置1の正面及び右側面を視認できる方向からの斜視図であり、
図7は油水分離装置1の裏面及び左側面を視認できる方向からの斜視図である。
【0051】
図6及び
図7に示されるように、本実施形態の油水分離装置1は、第1分離槽2及び第2分離槽3に加えて、空気分離部4、ポンプ収納部5、ポンプ6、ストレーナ7、ポンプ上流側ホース15及びポンプ下流側ホース16を有している。
【0052】
ポンプ上流側ホース15は、ポンプ6の流入口に接続されると共に、ストレーナ7の流出口に接続される。ポンプ下流側ホース16は、ポンプ6の流出口に接続されると共に、空気分離部4の流入口に接続される。ポンプ6は、第2分離槽3の下側に配置されたポンプ収納部5に配置され、負圧を形成することにより、ストレーナ流入口71に接続されたホース(不図示)の先から、ストレーナ7及びポンプ上流側ホース15を介して被分離液(例えば、油水混合液)91を吸い込む。ストレーナ7は、ストレーナ流入口71から流入した被分離液91から、ポンプ6の駆動に影響を与えないように、例えばスラッジなどの大きめの金属片等の固形物を取り除く。
【0053】
空気分離部4は、ポンプ6からポンプ下流側ホース16を介して流入した油水混合液に対して、邪魔板(不図示)等を用いて、含まれる空気をできるだけ分離し、被分離液91として第1分離槽2に、被分離液流入口24を介して流入させる。ここで空気分離部4は、分離した空気と共に、被分離液91を第1分離槽2に流入させる構成であってもよいし、分離した空気は大気中に放出する構成であってもよい。
図7において、共通環水口34には、リサイクルされる分離水を目的の位置に流すホースを取り付けるための共通環水口ノズル341が取り付けられ、排油口35には、排油を溜める領域に排油を落とすための排油排出管351が取り付けられている。
【0054】
また、本使用例の油水分離装置1においては、ポンプ6を、第2分離槽3の真下の空間に配置している。これは、第2分離槽3は、第1分離槽2の底面より高い位置に底面を有するため、より大きなスペースを確保することができ、このスペースにポンプ6等の比較的大きな部品を配置することができる。このような配置とすることにより、装置全体をよりコンパクトな構成とすることができる。
【0055】
第1分離槽2及び第2分離槽3は、それぞれ透明な材料からなる蓋としての、第1分離槽蓋部26及び第2分離槽蓋部36を有していてもよい。これらの蓋により、被分離液91や第1分離槽上層液93に多くの泡が発生した場合でも分離槽の外への溢れを抑制することができる。また、油水分離装置1においては、液体の状態において適切な分離を行う装置であるため、分離工程の妨げとなる泡はない方がよい。蓋を用いることにより、泡が分離槽の外へ溢れずに集積度が高められ、互いの接近した泡は消滅しやすくなるため、結果として泡を減らして、分離精度を高めることができる。
【0056】
第1分離槽2及び第2分離槽3、並びにこれらに流入する液体の流れは、
図1~
図4を用いた上述の説明の通りであるため、繰り返しの説明は省略する。ここで、油水分離装置1は、第1分離槽2及び第2分離槽3の構成を有していればよく、他の構成は、任意の他の構成に置き換えられていてもよいし、なくてもよい。
【0057】
図8は、
図6及び
図7の実施形態に係る油水分離装置1の使用の一例について示す斜視図である。この図に示されるように、貯留槽14に溜められた使用済クーラント液17には、ストレーナ流入口71に接続された吸入ホース12が入れられている。吸入ホース12の先端には、使用済クーラント液17の上澄み液を流入させる浮上混合液回収部13が取り付けられ、使用済クーラント液17の上澄み部分を吸入ホース12で吸い込むようになっている。また、共通環水口ノズル341には、環水用ホース11が取り付けられ、共通環水口34から流出する分離水は貯留槽14内に戻されるようになっている。また、排油口35から流出する分離油95は、(排油排出管351を介して)廃油用容器18に溜められる。
図8に示す例は、一例であり、このような構成に限られない。例えば、共通環水口34から流出する分離水を別の貯留槽14に溜めてもよいし、分離油95をリサイクルする構成とすることもできる。
【0058】
なお、本実施形態においては、使用済クーラント液等の油水混合液を用いて説明したが、油水分離装置は、互いに混じり合った比重の異なる液体の分離に用いることができる。また、主に分離水をリサイクルする場合について述べたが、分離油をリサイクルすることとしてもよい。
【符号の説明】
【0059】
1 油水分離装置
2 第1分離槽
21 第1連通仕切り板
211 第1連通口
22 第1水位調整部
221 第1分離槽水位調整管
222 第1分離水用容器
23 第1分離水環水口
24 被分離液流入口
25 第1分離槽上層液流出口
26 第1分離槽蓋部
27 磁石
3 第2分離槽
31 流路仕切り板
32 第2連通仕切り板
321 第2連通口
33 第2水位調整部
331 第2分離槽水位調整管
332 第2分離水用容器
34 共通環水口
341 共通環水口ノズル
35 排油口
351 排油排出管
36 第2分離槽蓋部
4 空気分離部
5 ポンプ収納部
6 ポンプ
7 ストレーナ
71 ストレーナ流入口
11 環水用ホース
12 吸入ホース
13 浮上混合液回収部
14 貯留槽
15 ポンプ上流側ホース
16 ポンプ下流側ホース
17 使用済クーラント液
18 廃油用容器
8 一体型側壁面
91 被分離液
92 第1分離槽下層液
93 第1分離槽上層液
94 第2分離槽下層液
95 第2分離槽上層液(分離油)
96 第1分離水
97 第2分離水
【要約】
【課題】より小型でかつより分離精度の高い油水分離装置を提供する。
【解決手段】油水分離装置1は、被分離液91を流入させる第1分離槽2と、第1分離槽の底面より高い位置に底面を有し、第1分離槽の側壁面でオーバーフローする第1分離槽上層液が流入し、流入した第1分離槽上層液を折り返して流す流路を形成する流路仕切り板31を有する第2分離槽3と、を備える。
【選択図】
図1