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特許7448273睡眠中の被験者の呼吸努力を軽減するための装着可能な装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】睡眠中の被験者の呼吸努力を軽減するための装着可能な装置
(51)【国際特許分類】
   A61N 1/36 20060101AFI20240305BHJP
   A61N 1/04 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
A61N1/36
A61N1/04
【請求項の数】 26
(21)【出願番号】P 2023519359
(86)(22)【出願日】2021-10-01
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-07
(86)【国際出願番号】 EP2021077190
(87)【国際公開番号】W WO2022069748
(87)【国際公開日】2022-04-07
【審査請求日】2023-03-31
(31)【優先権主張番号】20199684.0
(32)【優先日】2020-10-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521437655
【氏名又は名称】サンライズ エスエー
(74)【代理人】
【識別番号】110003007
【氏名又は名称】弁理士法人謝国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】マーティノット、ピエール
【審査官】鈴木 敏史
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0230702(US,A1)
【文献】特表2017-533752(JP,A)
【文献】特開2014-158607(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0272118(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0126107(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0208287(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 1/04
A61N 1/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者の睡眠における呼吸努力を軽減するための装着可能な装置(10)であって、該装置は、
被験者の左咬筋、左翼突筋、及び/または左側頭筋を含む少なくとも1つの左標的筋の位置に対応する皮膚の選択された部分に取り付けるように構成された少なくとも1つの左双極電極(100)、
被験者の右咬筋、右翼突筋、及び/または右側頭筋を含む少なくとも1つの、左標的筋と反対に位置する右標的筋の位置に対応する皮膚の選択された部分に取り付けるように構成された少なくとも1つの右双極電極(100)、
ここで、前記左右の双極電極(100)は、10mm~30mmの電極間距離を有する、少なくとも2つの導電性要素(110)を含み、前記導電性要素(110)の位置及び方向は、第1導電性要素(110)が標的筋の運動点に取り付けられ、第2導電性要素(110)が同じ標的筋の繊維の方向とそれに合わせるように取り付けられるように適合され、;及び
前記左右の双極電極(100)の2つの導電性要素(110)の間に印加される二相性の経皮的電気刺激を生成するように構成された刺激器
を備え、
ここで、前記刺激器は、少なくとも1つの刺激プログラムに従って前記電気刺激を生成するように構成され、該刺激プログラムは、次の刺激パラメーターを含む 1 つの刺激プログラム: 1mA~50mA の電流強度、1Hz~150Hz の周波数、50μs~1000μs のパルス幅、及び1秒間~20秒間の刺激期間及び/又は1秒間~20秒間の休息期間を有するデューティサイクルを含み、少なくとも左右の双極電極の周波数、パルス幅、及びデューティサイクルが等しく、
前記電気刺激を印加することは、被験者の下顎骨を挙上して呼吸努力を軽減させるように反対側の標的筋の同時収縮を引き起こす、
装着可能な装置(10)。
【請求項2】
前記刺激プログラムが、以下の刺激パラメーター:
5mA~10mA、好ましくは6mA~10mAの電流強度;
15Hz~50Hz、好ましくは25Hz~45Hz、より好ましくは30Hz~40Hzの周波数;及び
50μs~300μs、好ましくは225μs~275μs、より好ましくは200μs~250μsのパルス幅
によって定義された電気刺激を生成するように構成された少なくとも1つの筋肉リクルートプログラムを含む、前記請求項1に記載の装着可能な装置(10)。
【請求項3】
前記刺激プログラムが、以下の刺激パラメーター:
1mA~4mA、好ましくは2mA~4mAの電流強度;
15Hz~50Hz、好ましくは20Hz~45Hz、より好ましくは30Hz~40Hzの周波数;及び
50μs~300μs、好ましくは225μs~275μs、より好ましくは200μs~250μsのパルス幅
によって定義された電気刺激を生成するように構成された少なくとも1つの筋肉リハビリプログラムを含む、前記請求項1または2のいずれか1項に記載の装着可能な装置(10)。
【請求項4】
前記刺激プログラムが、以下の刺激パラメーター:
1mA~4mA、2mA~4mAの電流強度;
50Hz~150Hz、好ましくは70Hz~130Hz、さらにより好ましくは90Hz~110Hzの周波数;及び
500μs~1000μs、好ましくは600μs~900μs、より好ましくは700μs~800μsのパルス幅
によって定義された電気刺激を生成するように構成された少なくとも1つの神経筋再訓練プログラムを含む、前記請求項1~3のいずれか1項に記載の装着可能な装置(10)。
【請求項5】
少なくとも1つの電極(100)の少なくとも2つの導電性要素(110)間の電極間距離は、15mm~25mm、好ましくは16mm~24mm、より好ましくは17mm~23mm、さらにより好ましくは18mm~22mm、さらにより好ましくは19mm~21mm、さらにより好ましくは約20mmである、前記請求項1~4のいずれか1項に記載の装着可能な装置(10)。
【請求項6】
少なくとも1つの電極(100)の少なくとも1つの導電性要素(110)の直径は、10mm~20mm、好ましくは11mm~19mm、より好ましくは12mm~18mm、さらよりに好ましくは13mm~17mm、さらにより好ましくは14mm~16mmである、前記請求項1~5のいずれか1項に記載の装着可能な装置(10)。
【請求項7】
被験者の下顎骨運動を記録するように構成された感知ユニット及び該感知ユニットに動作可能に接続された処理ユニットを備え、該処理ユニットは、該感知ユニットから下顎骨活動データを受信し、該下顎骨活動データから、好ましくは少なくとも被験者の下顎骨及び/または頭部の位置、回転及び/または変位を含む1つまたは複数の下顎骨の特徴を測定するように構成される、前記請求項1~6のいずれか1項に記載の装着可能な装置(10)。
【請求項8】
前記感知ユニットが、下顎骨運動を記録するように構成された少なくとも1つのジャイロスコープ及び/または加速度計を含み、前記感知ユニットが、被験者の下顎に取り付けられる、前記請求項7に記載の装着可能な装置(10)。
【請求項9】
前記感知ユニットが、左電極及び/または右電極(100)に、好ましくは左咬筋及び/または右咬筋に取り付けられる、前記請求項7または8のいずれか1項に記載の装着可能な装置(10)。
【請求項10】
前記処理ユニットが、好ましくは1つまたは複数の下顎骨の特徴から、被験者の下顎骨活動データにおける呼吸努力の増加を検出し、1つまたは複数の刺激パラメーター及び/または刺激プログラムを調整し、呼吸努力を低減するように構成された呼吸努力検出モジュールを備える、前記請求項7~9のいずれか1項に記載の装着可能な装置(10)。
【請求項11】
前記呼吸努力検出モジュールが、呼吸努力の増加を検出すると、前記電流強度を10%、20%、30%、40%、50%、またはそれ以上増加し、前記デューティサイクルの刺激期間を10%、20%、30%、40%、50%、またはそれ以上延長し、かつ/または前記デューティサイクルの休息期間を10%、20%、30%、40%、50%、またはそれ以上短縮するように構成される、前記請求項10に記載の装着可能な装置(10)。
【請求項12】
前記呼吸努力検出モジュールが、呼吸努力の減少を検出すると、前記電流強度を10%、20%、30%、40%、50%、またはそれ以上低減し、前記デューティサイクルの刺激期間を10%、20%、30%、40%、50%、またはそれ以上短縮し、かつ/または前記デューティサイクルの休息期間を10%、20%、30%、40%、50%、またはそれ以上延長するように構成される、前記請求項10または11のいずれか1項に記載の装着可能な装置(10)。
【請求項13】
前記処理ユニットが、好ましくは1つまたは複数の下顎骨の特徴から被験者の下顎骨活動データにおける呼吸障害の存在を検出し、1つまたは複数の刺激パラメーター及び/または刺激プログラムを調整して、呼吸障害の発生を減少し、好ましくは防止するように構成された呼吸障害検出モジュールを備える、前記請求項7~12のいずれか1項に記載の装着可能な装置(10)。
【請求項14】
前記呼吸障害検出モジュールが、呼吸障害を検出すると、前記電流強度を10%、20%、30%、40%、50%、またはそれ以上増加し、前記デューティサイクルの刺激期間を10%、20%、30%、40%、50% 、またはそれ以上延長し、かつ/または前記デューティサイクルの休息期間を10%、20%、30%、40%、50%、またはそれ以上短縮するように構成される、前記請求項13に記載の装着可能な装置(10)。
【請求項15】
前記処理ユニットが、好ましくは1つまたは複数の下顎骨の特徴から被験者の下顎骨活動データにおける筋肉疲労の存在を検出し、1つまたは複数の刺激パラメーター及び/または刺激プログラムを調整して、筋肉疲労を軽減するように構成された筋肉疲労検出モジュールを備える、前記請求項7~14のいずれか1項に記載の装着可能な装置(10)。
【請求項16】
前記筋肉疲労検出モジュールが、筋肉疲労を検出すると、前記電流強度を10%、20%、30%、40%、50%、またはそれ以上減少し、前記デューティサイクルの刺激期間を10%、20%、30%、40%、50%、またはそれ以上短縮し、かつ/または前記デューティサイクルの休息期間を10%、20%、30%、40%、50%、またはそれ以上延長するように構成される、前記請求項15に記載の装着可能な装置(10)。
【請求項17】
前記筋肉疲労検出モジュールが、筋肉疲労を検出すると、前記リクルートプログラムを終了し、かつ/または前記リハビリプログラムを開始するように構成される、前記請求項15または16のいずれか1項に記載の装着可能な装置(10)。
【請求項18】
前記筋肉疲労検出モジュールが、末梢筋肉または繊維の疲労の存在を検出し、また、末梢筋肉または繊維の疲労を検出すると、前記電流強度を好ましくは10%、20%、30%、40%、50%、またはそれ以上減少することにより、好ましくは、前記電気刺激の電流強度の減少を含む1つまたは複数の刺激パラメーターによって定義された刺激を開始することにより、1つまたは複数の刺激パラメーターを調整するように構成される、前記請求項15~17のいずれか1項に記載の装着可能な装置(10)。
【請求項19】
前記筋肉疲労検出モジュールが、脊椎または脊椎上部の疲労の存在を検出し、また、脊椎または脊椎上部の疲労を検出すると、前記電気刺激の周波数を好ましくは10%、20%、30%、40%、50%、またはそれ以上増加し、かつ/またはそのパルス幅を好ましくは10%、20%、30%、40%、50%、またはそれ以上増加することにより、好ましくは、前記電気刺激の周波数の増加及び/またはそのパルス幅の増加を含む1つまたは複数の刺激パラメーターによって定義された刺激を開始することにより、1つまたは複数の刺激パラメーターを調整するように構成される、前記請求項15~18のいずれか1項に記載の装着可能な装置(10)。
【請求項20】
前記処理ユニットが、少なくとも覚醒中の状態及び睡眠中の状態を含む被験者の睡眠段階を測定し、睡眠段階の変化が測定された場合、1つまたは複数の刺激パラメーター及び/または刺激プログラムを調整するように構成された睡眠段階測定モジュールを備える、前記請求項7~19のいずれか1項に記載の装着可能な装置(10)。
【請求項21】
前記睡眠段階測定モジュールが、覚醒段階を検出すると、前記電気刺激を終了し、かつ/または好ましくは前記リクルートプログラムを終了するか、かつ/または前記電流強度を10%、20%、30%、40%、50%、またはそれ以上減少し、前記デューティサイクルの刺激期間を10%、20%、30%、40%、50%、またはそれ以上短縮し、かつ/または前記デューティサイクルの休息期間を10%、20%、30%、40%、50%、またはそれ以上延長することにより、1つまたは複数の刺激パラメーター及び/または刺激プログラムを調整して、刺激効率を低下させるように構成される、前記請求項20に記載の装着可能な装置(10)。
【請求項22】
前記睡眠段階測定モジュールが、睡眠段階を検出すると、前記電気刺激を開始し、かつ/または好ましくは前記リクルートプログラムを開始するか、かつ/または前記電流強度を10%、20%、30%、40%、50%、またはそれ以上増加し、前記デューティサイクルの刺激期間を10%、20%、30%、40%、50%、またはそれ以上延長し、かつ/または前記デューティサイクルの休息期間を10%、20%、30%、40%、50%、またはそれ以上短縮することにより、1つまたは複数の刺激パラメーター及び/または刺激プログラムを調整して、刺激効率を向上させるように構成される、前記請求項20または21のいずれか1項に記載の装着可能な装置(10)。
【請求項23】
前記睡眠段階測定モジュールが、浅い睡眠(N1及び/またはN2)段階及び/またはREM段階を測定するようにさらに構成され、ここで、浅い睡眠(N1及び/またはN2)段階及び/またはREM段階を検出すると、前記睡眠段階測定モジュールが、前記電気刺激を開始し、かつ/または好ましくは前記電流強度を10%、20%、30%、40%、50%、またはそれ以上増加し、前記デューティサイクルの刺激期間を10%、20%、30%、40%、50%、またはそれ以上延長し、かつ/または前記デューティサイクルの休息期間を10%、20%、30%、40%、50%、またはそれ以上短縮することにより、1つまたは複数の刺激パラメーターを調整して、刺激効率を向上させるように構成される、前記請求項20~22のいずれか1項に記載の装着可能な装置(10)。
【請求項24】
前記睡眠段階測定モジュールが、浅い睡眠(N1及び/またはN2)段階及び/またはREM段階を測定するようにさらに構成され、ここで、浅い睡眠(N1及び/またはN2)段階及び/またはREM段階を検出すると、前記睡眠段階測定モジュールが、前記リクルートプログラムを開始し、かつ/または前記再訓練プログラムを終了するように構成される、前記請求項20~23のいずれか1項に記載の装着可能な装置(10)。
【請求項25】
前記睡眠段階測定モジュールが、深い睡眠(N3)段階を測定するようにさらに構成され、ここで、深い睡眠(N3)段階を検出すると、前記睡眠段階測定モジュールが、好ましくは前記電流強度を10%、20%、30%、40%、50%、またはそれ以上減少させ、前記デューティサイクルの刺激期間を10%、20%、30%、40%、50%、またはそれ以上短縮し、かつ/または前記デューティサイクルの休息期間を10%、20%、30%、40%、50%、またはそれ以上延長することにより、1つまたは複数の刺激パラメーターを調整して、刺激効率を低下させるように構成される、前記請求項20~24のいずれか1項に記載の装着可能な装置(10)。
【請求項26】
前記睡眠段階測定モジュールが、深い睡眠(N3)段階を測定するようにさらに構成され、ここで、深い睡眠(N3)段階を検出すると、前記睡眠段階測定モジュールが、前記リクルートプログラムを終了し、かつ/または前記再訓練プログラムを開始するように構成される、前記請求項20~25のいずれか1項に記載の装着可能な装置(10)。
【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
本開示は、睡眠及び呼吸ケアの分野に属する。特に、本開示は、被験者の睡眠中における呼吸努力を軽減するための手段及び方法を提供する。本開示はまた、被験者の睡眠中におけるいびきを治療するための手段及び方法も提供する。
【背景】
【0002】
呼吸努力の増加を特徴とする睡眠障害呼吸(SDB)は、睡眠の質に影響を与え、日中に交通事故の原因となる過度の眠気を引き起こす状態である。持続陽圧呼吸療法(CPAP)は、SDBの最も効果的な治療法であるが、長期間の付着に限界がある。新しい治療アプローチ及び使い易いシステムが大規模で緊急に必要とされている。
【0003】
睡眠中に上気道で発生するSDBの治療のための電気刺激が調査されている。舌の構成筋である頤舌筋は、特定の目的のための上気道の主な散大筋のように考えられていた。以前の試験では、舌をより対称的な動きにするために、舌を口腔内のより前方の位置に、片側または両側に移動させることを目的としていた。舌下神経の埋め込み型刺激器を介した舌の片側刺激は、呼吸努力を効果的に減少させ得ることが確認されたが、提案された治療法は、その関連費用及び侵襲性のため、深刻な症例のみへの印加に制限される。頤舌筋により対称的な筋肉緊張を提供し、その結果、上気道の開通性をより大幅かつ一貫して増加させようとする舌の両側刺激が提案されている。これまで、この好ましい両側刺激は、移植可能な舌下神経刺激技術を用いて検討されてきた。
【0004】
しかし、ヒト科サピエンスの上気道は、咀嚼、嚥下、発話、呼吸に必要な機能として、その解剖学的構造は複雑である。睡眠中における上気道閉塞は、他の霊長類よりも一般的である。これは、人間の咽頭が、骨(上部)と軟骨(喉頭)に尾側で固定されている頭側と尾側の端を除いて、堅固な支持がないためである。
【0005】
従って、咽頭は、睡眠中に呼吸の過程で収縮可能な管のように振る舞っている。一方、咽頭の構築筋肉のほとんどは、舌骨を介して直接的または間接的に、人間が持っている他の可動骨である下顎骨に固定されている。気道の閉塞や虚脱等の呼吸障害の発生、及び睡眠中における脳幹からの呼吸努力の増加を防ぐために、頤舌筋のみを標的とすることは失敗にさらされた。これは、咽頭は舌以外の他の部分からも虚脱し得るためである。確かに、今まで、両側頤舌筋刺激器は、大部分の患者において有意な生理学的及び臨床的な利点を示すことができなかった。従って、呼吸努力を特徴とするSDBの最先端の治療法の問題及び限界を改善する必要がある。
【発明の概要】
【0006】
上述のように、呼吸努力を特徴とする睡眠障害呼吸(SDB)の最先端の治療法の問題及び限界を改善する必要がある。本開示は、睡眠中の被験者の呼吸努力を軽減し、かつ/または睡眠時呼吸障害の発生を防止するための手段及び方法に関する。特に、本開示は、被験者の咬筋、翼突筋、及び/または側頭筋に経皮的電気刺激を提供して、これらの睡眠呼吸活動への寄与を調整し、被験者の睡眠中における呼吸努力を軽減することを目的とする。さらに、本開示は、提供された電気刺激を通じて被験者の脳を再訓練し、咬筋、翼突筋、及び/または側頭筋の中枢性呼吸駆動を低減させるための手段及び方法を提供することを目的とする。
【0007】
本開示の一態様は、被験者の睡眠中における呼吸努力を軽減するための装着可能な装置に関し、該装置は、
- 被験者の左側の咬筋、翼突筋、及び/または側頭筋の運動点から下顎骨の左後角までの範囲の皮膚の選択された部分と電気的に接触するように配置されるように適合された少なくとも1つの左電極;
- 被験者の右側の咬筋、翼突筋、及び/または側頭筋の運動点から下顎骨の右後角までの範囲の皮膚の選択された部分と電気的に接触するように配置されるように適合された少なくとも1つの右電極;及び
- 前記左電極と少なくとも1つの左側の咬筋、翼突筋、及び/または側頭筋との間、ならびに前記右電極と少なくとも1つの右側の咬筋、翼突筋、及び/または側頭筋との間に経皮的な電気刺激を印加するように構成された刺激器
を備え、
ここで、前記印加された電気刺激は、前記刺激された左右の咬筋、翼突筋、及び/または側頭筋の収縮を促進し、上気道が開放するように被験者の下顎骨を制御可能に挙上する。
【0008】
本開示の一態様は、被験者の睡眠における呼吸努力を軽減するための装着可能な装置に関し、該装置は、
- 被験者の左咬筋、左翼突筋、及び/または左側頭筋を含む少なくとも1つの左標的筋の位置に対応する皮膚の選択された部分に取り付けるように構成された少なくとも1つの左双極電極;
- 被験者の右咬筋、右翼突筋、及び/または右側頭筋を含む少なくとも1つの右標的筋の位置に対応する皮膚の選択された部分に取り付けるように構成された少なくとも1つの右双極電極;
- ここで、前記双極電極は、少なくとも2つの導電性要素を含み、第1導電性要素は、前記標的筋の運動点に取り付けるように構成され、第2導電性要素は、前記標的筋繊維の方向に沿って取り付けるように構成され;及び
- 前記双極電極の2つの導電性要素の間に印加される二相性の経皮的電気刺激を生成するように構成された刺激器(ここで、前記刺激器は、前記標的筋の収縮を促進し、呼吸努力が軽減されるように被験者の下顎骨を制御可能に挙上する)
を備える。
【0009】
一実施形態では、前記電気刺激は、二相性の不連続的な電流である。
【0010】
一実施形態では、前記電気刺激は、少なくとも1mA~最大で50mA、好ましくは1mA~30mAの電流強度を有する。
【0011】
一実施形態では、前記電気刺激は、少なくとも1Hz~最大で100Hz、好ましくは30Hz~50Hzのパルス周波数を有する。
【0012】
一実施形態では、前記電気刺激は、少なくとも100μs~最大で400μs、好ましくは200μs~300μsのパルス幅を有する。
【0013】
一実施形態では、前記電気刺激は、少なくとも1秒間~最大で20秒間、好ましくは5秒間~10秒間の刺激期間を有する。
【0014】
一実施形態では、前記刺激器は、少なくとも1つの刺激プログラムに従って前記電気刺激を生成するように構成され、該刺激プログラムは、1秒間~20秒間の刺激期間及び/または1秒間~20秒間の休息期間を有するデューティサイクルで電気刺激を生成するように構成される。
【0015】
一実施形態では、前記刺激器は、少なくとも1つの刺激プログラムに従って前記電気刺激を生成するように構成され、該刺激プログラムは、以下の刺激パラメーターによって定義された電気刺激を生成するように構成された少なくとも1つの筋肉リクルートプログラムを含む:5mA~10mA、好ましくは6mA~10mAの電流強度;15Hz~50Hz、好ましくは25Hz~45Hz、より好ましくは30Hz~40Hzの周波数;及び50μs~300μs、好ましくは225μs~275μs、より好ましくは200μs~250μsのパルス幅。
【0016】
一実施形態では、前記刺激器は、少なくとも1つの刺激プログラムに従って前記電気刺激を生成するように構成され、該刺激プログラムは、以下の刺激パラメーターによって定義された電気刺激を生成するように構成された少なくとも1つの筋肉リハビリプログラムを含む:1mA~4mA、好ましくは2mA~4mAの電流強度;15Hz~50Hz、好ましくは20Hz~45Hz、より好ましくは30Hz~40Hzの周波数;及び50μs~300μs、好ましくは225μs~275μs、より好ましくは200μs~250μsのパルス幅。
【0017】
一実施形態では、前記刺激器は、少なくとも1つの刺激プログラムに従って前記電気刺激を生成するように構成され、該刺激プログラムは、以下の刺激パラメーターによって定義された電気刺激を生成するように構成された少なくとも1つの神経筋再訓練プログラムを含む:1mA~4mA、2mA~4mAの電流強度;50Hz~150Hz、好ましくは70Hz~130Hz、さらにより好ましくは90Hz~110Hzの周波数;及び500μs~1000μs、好ましくは600μs~900μs、より好ましくは700μs~800μsのパルス幅。
【0018】
一実施形態では、前記刺激器は、強度測定プログラムに従って電流強度を設定するように構成され、該電流強度は、刺激知覚の閾値と刺激不快感の閾値との間の値に調整される。
【0019】
一実施形態では、前記刺激器は、少なくとも2回の睡眠セッションの間に電気刺激の強度を選択的に増加させ、好ましくは前記電気刺激を1%~25%増加させるように構成される。
【0020】
一実施形態では、前記刺激器は、連続する睡眠セッションごとに電気刺激の強度を選択的に増加させ、好ましくは前記電気刺激を1%~25%増加させるように構成される。
【0021】
一実施形態では、前記刺激器は、前記左電極及び/または右電極と被験者の皮膚との間に時間制限付きの事前刺激電流を印加し、皮膚インピーダンスを低下させるように構成される。
【0022】
一実施形態では、前記刺激器は、前記左電極及び/または右電極と被験者の皮膚との間に時間制限付きの事前刺激電流を印加するように構成され、該電流は、約100μs及び/またはそれ以下のパルス幅、及び/または約100Hz及び/またはそれ以上のパルス周波数を有する。
【0023】
一実施形態では、少なくとも1つの電極の少なくとも2つの導電性要素間の電極間距離は、15mm~25mm、好ましくは16mm~24mm、より好ましくは17mm~23mm、さらにより好ましくは18mm~22mm、さらにより好ましくは19mm~21mm、さらにより好ましくは約20mmである。
【0024】
一実施形態では、少なくとも1つの電極の少なくとも1つの導電性要素の直径は、10mm~20mm、好ましくは11mm~19mm、より好ましくは12mm~18mm、さらにより好ましくは13mm~17mm、さらにより好ましくは14mm~16mmである。
【0025】
一実施形態では、前記装着可能な装置は、被験者の下顎骨運動を記録するように構成された感知ユニット及び該感知ユニットに動作可能に接続された処理ユニットを備え、該処理ユニットは、該感知ユニットから下顎骨活動データを受信し、そして、該下顎骨活動データから、1つまたは複数の下顎骨の特徴を測定するように構成される。一実施形態では、前記下顎骨の特徴は、少なくとも下顎骨の位置、回転、または変位を含む。
【0026】
一実施形態では、前記装着可能な装置は、被験者の下顎骨運動を記録するように構成された感知ユニット及び該感知ユニットに動作可能に接続された処理ユニットを備え、該処理ユニットは、該感知ユニットから下顎骨活動データを受信し、そして、該下顎骨活動データから、好ましくは少なくとも被験者の下顎骨及び/または頭部の位置、回転及び/または変位を含む1つまたは複数の下顎骨の特徴を測定するように構成される。
【0027】
一実施形態では、前記装着可能な装置は、下顎骨運動を記録するように構成された少なくとも1つのジャイロスコープ及び/または加速度計を含む感知ユニットを備え、該感知ユニットは、被験者の下顎に取り付けられる。
【0028】
一実施形態では、前記装着可能な装置は、左電極及び/または右電極に、好ましくは左咬筋及び/または右咬筋に、好ましくは左咬筋及び/または右咬筋に取り付けられた左電極及び/または右電極に取り付けられた感知ユニットを備える。
【0029】
一実施形態では、前記処理ユニットは、前記感知ユニットから呼吸活動データを受信し、そして、該呼吸活動データから1つまたは複数の呼吸の特徴を測定するように構成される。一実施形態では、前記呼吸の特徴は、少なくとも呼吸努力の増加及び/または睡眠時呼吸障害を特徴とする睡眠障害呼吸を含む。
【0030】
一実施形態では、前記処理ユニットは、前記呼吸活動データから刺激応答を測定し、該刺激応答を、睡眠中の被験者の呼吸努力の減少からなる所望の応答と比較し、そして、該刺激応答と前記所望の応答との間の差が測定される場合、少なくとも1つの刺激パラメーターを調整して、前記所望の応答を達成するように構成される。一実施形態では、前記所望の応答は、少なくとも1つの刺激パラメーターの調整、好ましくは電流強度の調整を含む。
【0031】
一実施形態では、前記処理ユニットは、好ましくは1つまたは複数の下顎骨の特徴から、被験者の下顎骨活動データにおける呼吸努力の増加を検出し、1つまたは複数の刺激パラメーター及び/または刺激プログラムを調整し、呼吸努力を低減するように構成された呼吸努力検出モジュールを備える。
【0032】
一実施形態では、前記呼吸努力検出モジュールは、呼吸努力の増加を検出すると、前記電流強度を10%、20%、30%、40%、50%、またはそれ以上増加し、前記デューティサイクルの刺激期間を10%、20%、30%、40%、50%、またはそれ以上延長し、かつ/または前記デューティサイクルの休息期間を10%、20%、30%、40%、50%、またはそれ以上短縮するように構成される。
【0033】
一実施形態では、前記呼吸努力検出モジュールは、呼吸努力の減少を検出すると、前記電流強度を10%、20%、30%、40%、50%、またはそれ以上減少し、前記デューティサイクルの刺激期間を10%、20%、30%、40%、50%、またはそれ以上短縮し、かつ/または前記デューティサイクルの休息期間を10%、20%、30%、40%、50%、またはそれ以上延長するように構成される。
【0034】
一実施形態では、前記処理ユニットは、好ましくは1つまたは複数の下顎骨の特徴から被験者の下顎骨活動データにおける呼吸障害の存在を検出し、1つまたは複数の刺激パラメーター及び/または刺激プログラムを調整して、呼吸障害の発生を減少し、好ましくは防止するように構成された呼吸障害検出モジュールを備える。
【0035】
一実施形態では、前記呼吸障害検出モジュールは、呼吸障害を検出すると、前記電流強度を10%、20%、30%、40%、50%、またはそれ以上増加し、前記デューティサイクルの刺激期間を10%、20%、30%、40%、50% 、またはそれ以上延長し、かつ/または前記デューティサイクルの休息期間を10%、20%、30%、40%、50%、またはそれ以上短縮するように構成される。
【0036】
一実施形態では、前記処理ユニットは、好ましくは1つまたは複数の下顎骨の特徴から被験者の下顎骨活動データにおける筋肉疲労の存在を検出し、1つまたは複数の刺激パラメーター及び/または刺激プログラムを調整して、筋肉疲労を軽減するように構成された筋肉疲労検出モジュールを備える。
【0037】
一実施形態では、前記筋肉疲労検出モジュールは、筋肉疲労を検出すると、前記電流強度を10%、20%、30%、40%、50%、またはそれ以上減少し、前記デューティサイクルの刺激期間を10%、20%、30%、40%、50%、またはそれ以上短縮し、かつ/または前記デューティサイクルの休息期間を10%、20%、30%、40%、50%、またはそれ以上延長するように構成される。
【0038】
一実施形態では、前記筋肉疲労検出モジュールは、筋肉疲労を検出すると、前記リクルートプログラムを終了し、かつ/または前記リハビリプログラムを開始するように構成される。
【0039】
一実施形態では、前記筋肉疲労検出モジュールは、末梢筋肉または繊維の疲労の存在を検出し、また、末梢筋肉または繊維の疲労を検出すると、前記電流強度を好ましくは10%、20%、30%、40%、50%、またはそれ以上減少することにより、好ましくは、前記電気刺激の電流強度の減少を含む1つまたは複数の刺激パラメーターによって定義された刺激を開始することにより、1つまたは複数の刺激パラメーターを調整するように構成される。
【0040】
一実施形態では、前記筋肉疲労検出モジュールは、脊椎または脊椎上部の疲労の存在を検出し、また、脊椎または脊椎上部の疲労を検出すると、前記電気刺激の周波数を好ましくは10%、20%、30%、40%、50%、またはそれ以上増加し、かつ/またはそのパルス幅を好ましくは10%、20%、30%、40%、50%、またはそれ以上増加することにより、好ましくは、前記電気刺激の周波数の増加及び/またはそのパルス幅の増加を含む1つまたは複数の刺激パラメーターによって定義された刺激を開始することにより、1つまたは複数の刺激パラメーターを調整するように構成される。
【0041】
一実施形態では、前記処理ユニットは、前記感知ユニットから睡眠活動データを受信し、該睡眠活動データからより多くの睡眠の特徴を測定するように構成される。一実施形態では、前記下顎骨の特徴は、少なくとも被験者の睡眠状態及び/または睡眠段階を含む。
【0042】
一実施形態では、前記処理ユニットは、前記睡眠活動データから、少なくとも覚醒中の状態及び/または睡眠中の状態を含む被験者の睡眠状態を測定し、睡眠中の状態に電気刺激を開始するように、かつ/または覚醒中の状態に電気刺激を終了するように、前記刺激器に指示するように構成される。
【0043】
一実施形態では、前記処理ユニットは、前記睡眠活動データから、少なくとも浅い睡眠(N1)段階、浅い睡眠(N2)段階、REM段階、及び/または深い睡眠(N3)段階を含む被験者の睡眠段階を測定し、浅い睡眠(N1及び/またはN2)段階及び/またはREM段階中に電気刺激を開始するように、かつ/または深い睡眠(N3)段階中に電気刺激を終了するように、前記刺激器に指示するように構成される。
【0044】
一実施形態では、前記処理ユニットは、少なくとも覚醒中の状態及び睡眠中の状態を含む被験者の睡眠段階を測定し、睡眠段階の変化が測定された場合、1つまたは複数の刺激パラメーター及び/または刺激プログラムを調整するように構成された睡眠段階測定モジュールを備える。
【0045】
一実施形態では、前記睡眠段階測定モジュールは、覚醒段階を検出すると、前記電気刺激を終了し、かつ/または好ましくは前記リクルートプログラムを終了するか、かつ/または前記電流強度を10%、20%、30%、40%、50%、またはそれ以上減少し、前記デューティサイクルの刺激期間を10%、20%、30%、40%、50%、またはそれ以上短縮し、かつ/またはデューティサイクルの休息期間を10%、20%、30%、40%、50%、またはそれ以上延長することにより、1つまたは複数の刺激パラメーター及び/または刺激プログラムを調整して、刺激効率を低下させるように構成される。
【0046】
一実施形態では、前記睡眠段階測定モジュールは、睡眠段階を検出すると、前記電気刺激を開始し、かつ/または好ましくは前記リクルートプログラムを開始するか、かつ/または前記電流強度を10%、20%、30%、40%、50%、またはそれ以上増加し、前記デューティサイクルの刺激期間を10%、20%、30%、40%、50%、またはそれ以上延長し、かつ/または前記デューティサイクルの休息期間を10%、20%、30%、40%、50%、またはそれ以上短縮することにより、1つまたは複数の刺激パラメーター及び/または刺激プログラムを調整して、刺激効率を向上させるように構成される。
【0047】
一実施形態では、前記睡眠段階測定モジュールは、浅い睡眠(N1及び/またはN2)段階及び/またはREM段階を測定するようにさらに構成される。ここで、浅い睡眠(N1及び/またはN2)段階及び/またはREM段階を検出すると、前記睡眠段階測定モジュールは、前記電気刺激を開始し、かつ/または好ましくは前記電流強度を10%、20%、30%、40%、50%、またはそれ以上増加し、前記デューティサイクルの刺激期間を10%、20%、30%、40%、50%、またはそれ以上延長し、かつ/または前記デューティサイクルの休息期間を10%、20%、30%、40%、50%、またはそれ以上短縮することにより、1つまたは複数の刺激パラメーターを調整して、刺激効率を向上させるように構成される。
【0048】
一実施形態では、前記睡眠段階測定モジュールは、浅い睡眠(N1及び/またはN2)段階及び/またはREM段階を測定するようにさらに構成される。ここで、浅い睡眠(N1及び/またはN2)段階及び/またはREM段階を検出すると、前記睡眠段階測定モジュールは、前記リクルートプログラムを開始し、かつ/または前記再訓練プログラムを終了するように構成される。
【0049】
一実施形態では、前記睡眠段階測定モジュールは、深い睡眠(N3)段階を測定するようにさらに構成される。ここで、深い睡眠(N3)段階を検出すると、前記睡眠段階測定モジュールは、好ましくは前記電流強度を10%、20%、30%、40%、50%、またはそれ以上減少させ、前記デューティサイクルの刺激期間を10%、20%、30%、40%、50%、またはそれ以上短縮し、かつ/または前記デューティサイクルの休息期間を10%、20%、30%、40%、50%、またはそれ以上延長することにより、1つまたは複数の刺激パラメーターを調整して、刺激効率を低下させるように構成される。
【0050】
一実施形態では、前記睡眠段階測定モジュールは、深い睡眠(N3)段階を測定するようにさらに構成される。ここで、深い睡眠(N3)段階を検出すると、前記睡眠段階測定モジュールは、前記リクルートプログラムを終了し、かつ/または前記再訓練プログラムを開始するように構成される。
【0051】
一実施形態では、前記処理ユニットは、
- 下顎骨活動データを特定の時間のエポックに分割し、そして、
- 数学モデルを適用して、睡眠状態及び/または睡眠段階をすべてのエポックに割り当てること
によって、睡眠状態及び/または睡眠段階を測定するように構成される。
ここで、前記数学モデルは、以下のステップを含む:
- エポックごとに記録された下顎骨運動データから少なくとも1つの特徴を抽出するステップ;
- すべてのエポックにわたって抽出された特徴の値を追跡するステップ;
- 特徴に固有の閾値を設定するステップ;及び
- 抽出された特徴値が特徴に固有の閾値を超える場合、エポックの睡眠状態及び/または睡眠段階を調整するステップ。
【0052】
一実施形態では、前記感知ユニットは、被験者の下顎骨の動きを記録するように構成された少なくとも1つのジャイロスコープを備える。
【0053】
一実施形態では、前記感知ユニットは、少なくとも1つのジャイロスコープ、少なくとも1つの加速度計、及び任意に少なくとも1つの磁力計も備える。
【0054】
一実施形態では、前記感知ユニットは、前記左電極及び/または右電極に設けられる。
【0055】
一実施形態では、前記装着可能な装置は、前記刺激器を収容するための襟を備え、該襟は、被験者の首の周り及び/または被験者の肩の上に配置するように適合される。
【0056】
一実施形態では、前記左電極及び/または右電極は、長さを調整できる接続ケーブルで前記襟に接続される。
【0057】
本開示の一態様は、被験者の咬筋の位置に対応する皮膚の選択された部分に電極を取り付けるための方法に関し、該方法は、以下のステップを含む:
(i) 下顎角 (Go)、好ましくは下顎骨の角を特定するステップ;
(ii) 頬骨弓(Za)、好ましくは目の外側の角を特定するステップ;
(iii)前記下顎角(Go)から前記頬骨弓(Za)に向かって伸びる咬筋を特定するステップ;
(iv) 好ましくは下顎角(Go)から咬筋繊維の方向に沿った下顎角(Go)と頬骨弓(Za)との間の距離の約半分途中までの範囲にある前記咬筋上の標的刺激ゾーン(S)を特定するステップ;及び
(v) 前記標的刺激ゾーン(S)の上に前記電極を取り付けるステップ。
【0058】
前記電極を取り付けるための方法の一実施形態では、2つの導電面を備える双極電極があり、第1導電性要素は、咬筋の運動点、好ましくは下顎角(Go)に隣接して取り付けられ、第2導電性要素は、咬筋繊維の方向に沿って、好ましくは咬筋繊維の方向に沿った下顎角(Go)と頬骨弓(Za)との間の距離の約半分途中に取り付けられる。
【0059】
本開示の一態様は、被験者の睡眠中における呼吸努力を軽減するための方法に関し、該方法は、以下を含む:
- 左咬筋、左翼突筋、及び/または左側頭筋を含む少なくとも1つの左標的筋の位置に対応する被験者の皮膚部分を選択し、該選択された皮膚部分に少なくとも2つの導電性要素を備える少なくとも1つの左双極電極を取り付けること;(ここで、第1導電性要素は、左標的筋の運動点に取り付けられ、第2導電性要素は、左標的筋繊維の方向に沿って取り付けられる);
- 右咬筋、右翼突筋、及び/または右側頭筋を含む少なくとも1つの右標的筋の位置に対応する被験者の皮膚部分を選択し、該選択された皮膚部分に少なくとも2つの導電性要素を備える少なくとも1つの右双極電極を取り付けること;(ここで、第1導電性要素は、右標的筋の運動点に取り付けられ、第2導電性要素は、右標的筋繊維の方向に沿って取り付けられる);及び
- 前記左右の双極電極の2つの導電性要素の間に二相性の経皮的電気刺激を印加すること(ここで、該電気刺激は、前記標的筋の収縮を促進し、呼吸努力が軽減されるように被験者の下顎骨を制御可能に挙上する。また、該電気刺激は、1秒間~20秒間の刺激期間及び/または1秒間~20秒間の休息期間を有するデューティサイクルに従って生成される)。
【0060】
本開示の一態様は、標的筋を動員し、被験者の睡眠中における呼吸努力を軽減するための方法に関し、該方法は、以下を含む:
- 左咬筋、左翼突筋、及び/または左側頭筋を含む少なくとも1つの左標的筋の位置に対応する被験者の皮膚部分を選択し、該選択された皮膚部分に少なくとも2つの導電性要素を備える少なくとも1つの左双極電極を取り付けること;(ここで、第1導電性要素は、左標的筋の運動点に取り付けられ、第2導電性要素は、左標的筋繊維の方向に沿って取り付けられる);
- 右咬筋、右翼突筋、及び/または右側頭筋を含む少なくとも1つの右標的筋の位置に対応する被験者の皮膚部分を選択し、該選択された皮膚部分に少なくとも2つの導電性要素を備える少なくとも1つの右双極電極を取り付けること;(ここで、第1導電性要素は、右標的筋の運動点に取り付けられ、第2導電性要素は、右標的筋繊維の方向に沿って取り付けられる);及び
- 前記左右の双極電極の2つの導電性要素の間に二相性の経皮的電気刺激を印加すること(ここで、該電気刺激は、前記標的筋の収縮を促進し、呼吸努力が軽減されるように被験者の下顎骨を制御可能に挙上する。)
- ここで、前記電気刺激は、次の刺激パラメーターに従って生成される:5mA~10mA、好ましくは6mA~10mAの電流強度;15Hz~50Hz、好ましくは25Hz~45Hz、より好ましくは30Hz~40Hzの周波数;50μs~300μs、好ましくは225μs~275μs、より好ましくは200μs~250μsのパルス幅;及び1秒間~20秒間の刺激期間及び/または1秒間~20秒間の休息期間を有するデューティサイクル。
【0061】
本開示の一態様は、標的筋の筋機能をリハビリして、被験者の睡眠中における呼吸努力を軽減するための方法に関し、該方法は、以下を含む:
- 左咬筋、左翼突筋、及び/または左側頭筋を含む少なくとも1つの左標的筋の位置に対応する被験者の皮膚部分を選択し、該選択された皮膚部分に少なくとも2つの導電性要素を備える少なくとも1つの左双極電極を取り付けること;(ここで、第1導電性要素は、左標的筋の運動点に取り付けられ、第2導電性要素は、左標的筋繊維の方向に沿って取り付けられる);
- 右咬筋、右翼突筋、及び/または右側頭筋を含む少なくとも1つの右標的筋の位置に対応する被験者の皮膚部分を選択し、該選択された皮膚部分に少なくとも2つの導電性要素を備える少なくとも1つの右双極電極を取り付けること;(ここで、第1導電性要素は、右標的筋の運動点に取り付けられ、第2導電性要素は、右標的筋繊維の方向に沿って取り付けられる);及び
- 前記左右の双極電極の2つの導電性要素の間に二相性の経皮的電気刺激を印加すること(ここで、該電気刺激は、前記標的筋の収縮を促進し、呼吸努力が軽減されるように被験者の下顎骨を制御可能に挙上する。)
- ここで、前記電気刺激は、次の刺激パラメーターに従って生成される:1mA~4mA、好ましくは2mA~4mAの電流強度;15Hz~50Hz、好ましくは20Hz~45Hz、より好ましくは30Hz~40Hzの周波数;50μs~300μs、好ましくは225μs~275μs、より好ましくは200μs~250μsのパルス幅;及び1秒間~20秒間の刺激期間及び/または1秒間~20秒間の休息期間を有するデューティサイクル。
【0062】
本開示の一態様は、神経筋関連回路を再訓練して、被験者の睡眠中における呼吸努力を軽減するための方法に関し、該方法は、以下を含む:
- 左咬筋、左翼突筋、及び/または左側頭筋を含む少なくとも1つの左標的筋の位置に対応する被験者の皮膚部分を選択し、該選択された皮膚部分に少なくとも2つの導電性要素を備える少なくとも1つの左双極電極を取り付けること;(ここで、第1導電性要素は、左標的筋の運動点に取り付けられ、第2導電性要素は、左標的筋繊維の方向に沿って取り付けられる);
- 右咬筋、右翼突筋、及び/または右側頭筋を含む少なくとも1つの右標的筋の位置に対応する被験者の皮膚部分を選択し、該選択された皮膚部分に少なくとも2つの導電性要素を備える少なくとも1つの右双極電極を取り付けること;(ここで、第1導電性要素は、右標的筋の運動点に取り付けられ、第2導電性要素は、右標的筋繊維の方向に沿って取り付けられる);及び
- 前記左右の双極電極の2つの導電性要素の間に二相性の経皮的電気刺激を印加すること(ここで、該電気刺激は、前記標的筋の収縮を促進し、呼吸努力が軽減されるように被験者の下顎骨を制御可能に挙上する。また、該電気刺激は、以下の刺激パラメーターに従って生成される:1mA~4mA、2mA~4mAの電流強度;50Hz~150Hz、好ましくは70Hz~130Hz、さらにより好ましくは90Hz~110Hzの周波数;500μs~1000μs、好ましくは600μs~900μs、より好ましくは700μs~800μsのパルス幅;及び1秒間~20秒間の刺激期間及び/または1秒間~20秒間の休息期間を有するデューティサイクル。
【図面の簡単な説明】
【0063】
本開示の特定の実施形態の図面に関する以下の説明は、本質的に単なる例示であり、本教示、それらの応用または使用を限定することを意図するものではない。
【0064】
対応する参照番号は、図面を通して次の部品及び特徴を示す:
刺激領域(S);表在咬筋(SM);内側翼突筋 (MP);前側頭筋 (AT);下顎角 (Go);頬骨弓 (Za);装着可能な装置(10);電極(100);導電性要素(110);接続ケーブル (150);着用可能な衣服(200)、例えば、襟またはヘッドバンド。
【0065】
図1は、本発明の好ましい実施形態に従って電極(100)の位置を決めるための被験者の皮膚上の刺激領域(S)の図である。
【0066】
図2は、本発明の好ましい実施形態に従って咬筋を刺激するように構成された装着可能な装置(10)の概略図である。
【0067】
図3は、本発明の別の好ましい実施形態に従って咬筋を刺激するように構成された装着可能な装置(10)の斜視図である。
【0068】
図4は、本発明の別の好ましい実施形態に従って咬筋を刺激するように構成された装着可能な装置(10)の斜視図である。
【0069】
図5は、本発明の別の好ましい実施形態に従って咬筋及び/または側頭筋を刺激するように構成された装着可能な装置(10)の斜視図である。
【0070】
図6は、本発明の別の好ましい実施形態に従って翼突筋を刺激するように構成された装着可能な装置(10)の斜視図である。
【0071】
図7は、本発明の別の好ましい実施形態に従って刺激領域(S)を特定するための参照目印及び線を有する頭蓋骨の側面図である。
【0072】
図8は、本発明の別の好ましい実施形態に従って刺激領域(S)を特定するための参照目印及び線を有する頭部の側面図である。
【0073】
図9は、本発明の別の好ましい実施形態に従って刺激領域(S)上に電極(100)を配置する方法を示す配置ガイドである。
【0074】
図10は、本発明の好ましい実施形態による双極電極(100)の図である。
【0075】
図11は、本発明の好ましい実施形態による装着可能な装置(10)の動作原理の概略図である。
【0076】
図12は、実施例6で議論された睡眠段階試験のために顎センサーによって記録された下顎骨運動(MMデータ)を示す。
【0077】
図13は、実施例6で議論された睡眠段階試験のために頬センサーによって記録された下顎骨運動(MMデータ)を示す。
【0078】
図14は、実施例6で議論された睡眠(明)状態及び覚醒(暗)状態の両方の標準偏差(SD)値の周波数分布を示す。
【0079】
図15は、実施例6で議論された睡眠段階試験のための睡眠及び覚醒状態を検出するためのすべての可能なSD値にわたる感度/特異性を示す。
【0080】
図16は、実施例6で議論された睡眠(明)状態及び覚醒(暗)状態の両方の最大(MAX)値の周波数分布を示す。
【0081】
図17は、実施例6で議論された睡眠及び覚醒状態を検出するためのすべての可能なMAX値にわたる感度/特異性を示す。
【0082】
図18は、実施例6で議論された、固定されたカットオフモデルのカットオフ構成パラメーターを示す。
【0083】
図19は、実施例6で議論された、固定されたカットオフモデルの覚醒状態を検出するために構成されたデータ分析アルゴリズムを有する表を示す。
【0084】
図20は、実施例6で議論された、固定されたカットオフモデルの平衡された覚醒/睡眠状態を検出するために構成されたデータ分析アルゴリズムを有する表を示す。
【0085】
図21は、実施例6で議論された、固定されたカットオフモデルの睡眠状態を検出するために構成されたデータ分析アルゴリズムを有する表を示す。
【0086】
図22は、実施例6で議論された、個別化されたカットオフモデルのカットオフ構成パラメーターを示す。
【0087】
図23は、実施例6で議論された、個別化されたカットオフモデルの覚醒状態を検出するために構成されたデータ分析アルゴリズムを有する表を示す。
【0088】
図24は、実施例6で議論された、個別化されたカットオフモデルの平衡された覚醒状態/睡眠状態を検出するために構成されたデータ分析アルゴリズムを有する表を示す。
【0089】
図25は、実施例6で議論された、個別化されたカットオフモデルの睡眠状態を検出するために構成されたデータ分析アルゴリズムを有する表を示す。
【0090】
図26は、顎センサーデータと頬センサーデータのアルゴリズムデータ分析との比較のブランド・アルトマングラフを示す。
【0091】
図27は、頬センサーデータの標準偏差(SD)に基づく、顎センサーデータと睡眠/覚醒検出規則との比較のブランド・アルトマングラフを示す。
【0092】
図28は、頬センサーデータの最大値(MAX)に基づく、顎センサーデータと睡眠/覚醒検出規則との比較のブランド・アルトマングラフを示す。
【発明の詳細な説明】
【0093】
特定の実施形態に関して本開示を説明するが、本開示はそれらに限定されず、請求項のみによって限定される。請求項中の参照記号は、その範囲を限定するものと解釈してはならない。
【0094】
本明細書で使用される場合、単数形「1つ」及び「この」は、文脈が明らかに他のことを示さない限り、単数及び複数の参照物を両方含む。
【0095】
本明細書で使用される「含んでいる」、「含む」及び「からなる」という用語は、「包含している」、「包含する」、「含有している」、または「含有する」と同義であり、それらは包括的または無制限であり、追加の列挙されていない構成員、要素、または方法ステップを除外しない。列挙された構成員、要素または方法ステップに言及するときの「含んでいる」、「含む」及び「からなる」という用語は、該列挙された構成員、要素、または方法ステップを「からなる」実施形態も含む。
【0096】
エンドポイントによる数値範囲の列挙には、列挙されたエンドポイントだけでなく、それぞれの範囲内に包含されるすべての数値と分数が含まれる。
【0097】
さらに、本明細書及び請求項における第1、第2、第3等の用語は、類似の要素を区別するために使用され、特定されない限り、必ずしも順序または時系列を説明するために使用されるわけではない。そのように使用される用語は、適切な状況下で交換可能であり、本明細書に記載された開示の実施形態は、本明細書に記載または例示された以外の順序で操作可能であることを理解されたい。
【0098】
別段の定義がない限り、技術用語及び科学用語を含む、本発明の開示に使用されるすべての用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般的に理解される意味を有する。さらなる指針として、本発明の教示をよりよく理解するために、本明細書で使用される用語の定義が含まれる。本明細書で使用される用語または定義は、本発明の理解を助けるためにのみ提供される。
【0099】
本明細書を通じて「一実施形態」または「1つの実施形態」への言及は、その実施形態に関連して説明される特定の特徴、構造または特性が本発明の少なくとも一実施形態に含まれることを意味する。従って、本明細書全体の様々な場所での「一実施形態では」または「1つの実施形態では」という語句の出現は、必ずしもすべてが同じ実施形態を指しているとは限らない。さらに、本開示から当業者には明らかなように、1つまたは複数の実施形態において、特定の特徴、構造、または特性を任意の適切な方法で組み合わせることができる。さらに、当業者には理解されるように、本明細書に記載されるいくつかの実施形態は、他の実施形態に含まれる他の特徴を含まず、いくつかの特徴を含むが、異なる実施形態の特徴の組み合わせは、本発明の範囲内にあり、異なる実施形態を形成することを意味する。例えば、以下の請求項及び明細書では、請求または記載された実施形態のいずれも、任意の組み合わせで使用することができる。
【0100】
本明細書及び請求項(存在する場合)における「左」、「右」、「前」、「後」、「上」、「下」等の用語は、説明を目的としたものであり、必ずしも持続的な相対位置を説明するためのものではない。そのように使用される用語は、適切な状況下で交換可能であるため、本明細書に記載の実施形態は、例えば、本明細書に図示または記載されたもの以外の向きで動作できることを理解されたい。本明細書で使用される「結合された」という用語は、電気的または非電気的(即ち物理的)な方法で直接的または間接的に接続されると定義される。互いに「隣接する」と本明細書で説明される物体は、その語句が使用される文脈に応じて、互いに物理的に接触している、互いに近接している、または互いに同じ一般的な領域または区域にある可能性がある。本明細書における「一実施形態では」または「一態様では」という語句の出現は、必ずしもすべてが同じ実施形態または態様を指すわけではない。
【0101】
本明細書で使用される「実質的に」という用語は、作用、特徴、特性、状態、構造、項目、または結果の完全またはほぼ完全な範囲または程度を指す。例えば、「実質的に」囲まれている物体は、該物体が完全に囲まれているか、ほぼ完全に囲まれていることを意味する。絶対的な完全性からの逸脱の正確な許容範囲は、特定の文脈に依存する場合がある。しかし、一般的に言えば、完了が近いということは、絶対のかつ完全な完了が得られたかのように、全体的な結果が同じになるということである。「実質的に」の使用は、作用、特徴、特性、状態、構造、項目、または結果の完全またはほぼ完全な欠如を指すために否定的な意味合いで使用される場合にも同様に適用される。例えば、粒子を「実質的に含まない」組成物は、粒子を完全に欠いているか、または粒子を完全に欠いている場合と同じ効果になるほど粒子をほぼ完全に欠いている。換言すれば、ある成分または要素を「実質的に含まない」組成物は、その測定可能な影響がない限り、実際にはそのような品目をまだ含んでいてよい。
【0102】
本明細書で使用される場合、用語「約」は、所与の値がエンドポイントを「少し上回る」または「少し下回る」場合があることを提供することによって、数値範囲のエンドポイントに柔軟性を与えるために使用される。特に明記しない限り、特定の数値または数値範囲に従って「約」という用語を使用することは、「約」という用語を使用せずにそのような数値用語または数値範囲をサポートすることも理解されるべきである。例えば、便宜上及び簡潔にするために、「約50オングストローム~約80オングストローム」の数値範囲は、「50オングストローム~80オングストローム」の範囲のサポートを提供すると理解されるべきである。さらに、本明細書では、「約」という用語が使用されている場合でも、実際の数値のサポートが提供されることを理解されたい。例えば、「約」30という記述は、30を少し上回る値と30を少し下回る値をサポートするだけでなく、30という実際の数値もサポートするものと解釈する必要がある。
【0103】
本明細書における参照は、「改善された」性能を提供する装置、構造、システム、または方法に対して行われる場合がある。特に明記しない限り、そのような「改善」は、先行技術における装置、構造、システム、または方法との比較に基づいて得られる利点の尺度であることを理解されたい。さらに、改善された性能の程度は、開示された実施形態間で変化する可能性があり、改善された性能の量、程度、または実現における平等性または一貫性は普遍的に適用可能であると想定されるべきではないことを理解されたい。
【0104】
また、本開示の実施形態は、ハードウェア、ソフトウェア、及び電子部品またはモジュールを含んでもよいを理解されたい。しかし、当業者は、この詳細な説明を読むと認識できるように、少なくとも一実施形態では、本開示の電子ベースの態様は、マイクロプロセッサ及び/または特定用途向け集積回路(「ASIC」)等の1つまたは複数の処理ユニットによって実行可能なソフトウェア(例えば、非一時的なコンピュータ可読媒体に格納された命令)で実行され得る。従って、複数のハードウェア及びソフトウェアベースの装置、ならびに複数の異なる構造部品を利用して、本発明を実行できることに留意されたい。例えば、本明細書に記載の「サーバー」及び「コンピューティング装置」は、1つまたは複数の処理ユニット、1つまたは複数のコンピュータ可読媒体モジュール、1つまたは複数の入力/出力インターフェース、及び部品を接続する様々な接続部(例えば、システムバス)を含むことができる。
【0105】
上述のように、呼吸努力を特徴とする睡眠障害呼吸(SDB)の最先端の治療法の問題及び限界を改善する必要がある。本開示は、睡眠中の被験者の呼吸努力を軽減し、かつ/または睡眠時呼吸障害の発生を防止するための手段及び方法に関する。特に、本開示は、被験者の下顎骨の動きを制御する筋肉に経皮的電気刺激を提供して、睡眠呼吸活動への寄与を調整し、被験者の睡眠中または睡眠後の呼吸努力を軽減することを目的とする。
【0106】
筋肉への電気刺激は、本開示を通じて刺激セッションと呼ばれる時間制限のあるセッション中に印加されてもよい。本開示による刺激セッションは、例えば、睡眠呼吸障害または睡眠障害呼吸の発生を低減するために、治療効果をもたらすように構成されてもよく、あるいは、いびきや睡眠に関連する騒音の低減、または睡眠の質の改善等、治療以外の目的で構成されてもよい。該セッションの制限時間は、あらかじめ決められていても可変であってもよい。
【0107】
従って、本開示は、被験体の下顎骨の動きを制御する筋肉に経皮的電気刺激を提供し、該被験体の睡眠中における呼吸努力を軽減し、かつ/または睡眠時呼吸障害の発生を防止する装着可能な装置に関する。さらに、本開示は、提供された電気刺激を通じて前記被験者の脳の再訓練を提供し、刺激された筋肉の中枢性呼吸駆動を減少することを目的とする。
【0108】
さらに、本開示はまた、好ましくは経皮的電気刺激を提供するための本明細書で開示される装着可能な装置によって提供される経皮的電気刺激に応答して、睡眠中の被験者の刺激応答を監視するための装着可能な装置にも関する。前記装着可能な装置は、睡眠中の被験者の電気刺激に対する生理学的応答を通じて直接に、または前記被験者の呼吸努力及び/または睡眠時呼吸障害の発生の減少等、電気刺激によってもたらされる効果を通じて間接的に、刺激応答を測定するように構成されてもよい。
【0109】
さらに、本開示は、睡眠中の被験者の呼吸活動を監視する装着可能な装置にも関する。該装着可能な装置は、呼吸努力の増加を特徴とする睡眠障害呼吸及び/または睡眠時呼吸障害の発生を測定するように構成されてもよい。睡眠中の被験者の呼吸活動を監視する装着可能な装置は、本明細書で説明するように、経皮的電気刺激を提供するための装着可能な装置と連結または組み合わせてもよい。
【0110】
さらに、本開示は、睡眠中の被験者の睡眠活動を監視する装着可能な装置にも関する。該装着可能な装置は、被験者の、浅い睡眠(N1)段階、浅い睡眠(N2)段階、REM段階、及び/または深い睡眠(N3)段階を含み得る睡眠状態を測定するように構成されてもよい。睡眠中の被験者の睡眠活動を監視する装着可能な装置を使用して、前記経皮的電気刺激を調整することができる。睡眠中の被験者の睡眠活動を監視する装着可能な装置は、本明細書で説明するように、経皮的電気刺激を提供するための装着可能な装置と連結または組み合わせてもよい。
【0111】
下顎骨の動きを制御する筋肉の選択的電気刺激により、下顎骨を上昇前方位置に制御可能に動かし、その後被験者の睡眠中に前記上昇前方位置に安定させることができる。下顎骨は、下顎弓に固定され、上気道の開口部を制御する咽頭筋組織全体を強化するためのレバーとして使用できる。下顎骨の位置を微調整することで、筋線維の張力とその長さの関係、及び筋力とその速度の関係を制御することができる。頤舌筋は、それ自体を下顎の高い位置に固定し、これにより、上気道の開放にさらに寄与し得る。また、付着した筋肉が舌骨をさらに上方の位置に挙上することがある。その機能的な結果として、上気道を実質的に開くように咽頭が膨張し、必要なレベルの呼吸努力を軽減するように脳に指示する。
【0112】
下顎骨の動きを制御するための筋肉には、咬筋、側頭筋、内側翼突筋、及び外側翼突筋の上腹部を含む挙上筋(即ち、収縮によって下顎骨の位置を上げる筋肉)、及び/または前顎二腹筋、オトガイ舌骨筋、顎舌骨筋、及び外側翼突筋の下腹部を含む抑圧筋(即ち、収縮によって下顎骨の位置を下げる筋肉)が含まれ得る。理解されるように、本明細書で使用される「筋肉」の電気刺激への言及は、列挙された挙上筋及び/または抑圧筋の刺激を指す。本開示の実施形態は、例えば、咬筋のみ、翼突筋のみ、または側頭筋のみ等、単一の筋肉のタイプの刺激を提供し得る。咬筋のみの刺激の例を図2に示し、翼突筋のみの刺激の例を図6に示す。本開示の別の実施形態は、2つの異なる筋肉のタイプの二重刺激を提供し得る。例えば、咬筋と側頭筋、咬筋と翼突筋、側頭筋と翼突筋、または咬筋と側頭筋と翼突筋を刺激し、順次または同時に下顎骨を挙上して安定させる。咬筋及び側頭筋の二重刺激の例を図5に示す。本開示の別の実施形態は、3つの異なる筋肉のタイプの三重刺激を提供し得る。例えば、咬筋、側頭筋、及び翼突筋を刺激し、順次または同時に下顎骨を挙上して安定させる。
【0113】
下顎骨の動きを制御するための筋肉への電気刺激は、下顎骨に接続している他の筋肉にも二次的な影響を与え得る。例えば、オトガイ舌骨筋は、オトガイ舌骨の内側でオトガイ棘(オトガイ舌筋がぶら下がっている骨点である、オトガイの正中線の内面)に固定されている。その結果、挙上時に下顎骨を動かすと、本開示による刺激は、オトガイ舌骨筋の前方付着点の空間位置を変化させる。これは、牽引によって頤舌筋線維の静止長を変化させ得る。これは、固定された線維の収縮を誘発すること(筋反射)がよく知られる状態である。口が閉じていると、舌が乾くリスクが最小である。舌が口腔内の前方位置に保持されるため、窒息やあえぎが回避される。
【0114】
さらに、口腔底筋肉群(顎舌骨筋、オトガイ舌骨筋、前顎二腹筋)について:挙上すると、下顎骨が口腔底筋肉に対して梃子作用を発達させ、これらの筋肉が収縮でき、上気道を硬くさせるようになる。一方で、舌骨の位置は、他の後部及び下部の筋肉によって規制される。基本的に、下顎骨は可動骨であり、周囲の場所からいくつかの上気道の筋肉が付着している。下顎骨は、アクティブな筋肉の収縮に応答して動く。この動きにより、上気道全体で一方向から発生した負荷が他の領域に伝達される。咬筋は、下顎骨を上前方位置に移動させ、これにより、他の可動舌骨も上気道の開通性を改善する。横隔膜が収縮して上気道に大気圧以下の圧力を発生させようとしている間、下顎骨に直接的または間接的に付着しているこれらの筋肉は、局所的な気流の循環を確保するために、睡眠中に最終目標と複雑で入り組んだ関係にある。
【0115】
咬筋、翼突筋、及び/または側頭筋の刺激、具体的には表在咬筋(SM)、内側翼突筋(MP)、及び前側頭筋(AT)の刺激は、下顎骨の挙上を制御及び安定化するのに特に効果的であることが発見され、従って、本開示の好ましい実施形態を形成する。詳しく説明すると、咬筋、翼突筋、及び/または側頭筋は、特に下顎骨の挙上、従って口の閉鎖に専属している。これらの筋肉は、このタスクを実行するために高度に専門化され、訓練されている。それらは、人体の他の筋肉群には存在しない特定の繊維筋アイソフォームにより、持久力と抵抗力において効率が優れている。また、それらは、咀嚼、嚥下、発話等、他の重要な生活機能にも関与している。咬筋及び/または側頭筋が刺激されると、神経細胞は、舌と同様に運動皮質の表現領域で発達する - 運動学習 (顎の筋肉の皮質運動制御で誘発される神経可塑性 - 皮質神経可塑性は、練習によって特別なスキルを強化し、感覚入力の変化に適応または補償する脳の能力である)。
【0116】
また、咬筋、翼突筋、及び/または側頭筋のみに刺激を集中させると、被験者が経験する不快感が軽減され、筋肉疲労の蓄積が減少し得る。これらの影響は、例えば、同時に非常に多くの異なる筋肉に焦点を当てた刺激、及び/または舌等の不快及び/または疲労し易いと考えられる筋肉に焦点を当てた刺激で観察され得る。従って、咬筋、翼突筋、及び/または側頭筋の排他的刺激は、本開示の別の好ましい実施形態を形成する。
【0117】
筋肉の電気刺激を実行するために様々な方法があり、それぞれの方法は、様々な技術的効果と利点をもたらし得る独自の生理学的応答を引き起こす。本開示では、電気刺激を実行するための少なくとも3つの異なる方法が企図され、具体的には、筋繊維を動員する方法、筋機能をリハビリする方法、及び(筋肉の刺激によって)神経筋関連回路を再訓練する方法である。
【0118】
詳しく説明すると、筋繊維を動員することは、直接に測定可能な効果を伴う電気刺激に対する直接的かつ急性の筋肉応答を指す。従って、動員は、刺激セッション中に下顎骨の動きを制御するための「基本的な」プログラムと見なすことができるが、通常、刺激セッションが終了した後 (即ち、刺激器がオフになったとき) には効果が持続しない。
【0119】
筋機能をリハビリすることは、連続の刺激セッションで刺激の有益な効果を改善し得る電気刺激による筋肉のトレーニングを指す。従って、リハビリテーションは、遅延し、有利に持続する効果を提供し得る「高度な」プログラムと見なすことができるが、前記効果を達成するには、複数の連続した刺激セッションのような、複数の刺激セッションが必要になり得る。
【0120】
神経筋関連回路の再訓練することは、主に、刺激セッションが終了または中止された後に持続的な応答を達成することを目的とする、中枢ドライブに対する電気刺激の中枢効果を指す(被験者の脳からの三叉神経の運動枝の呼吸活動に関与する中枢神経回路に向けられる)。従って、再訓練は、刺激セッションが終了した後(即ち、刺激器がオフになったとき)に持続的な効果を提供し得る「高度な」プログラムと見なすことできが、前記効果を達成するには、複数の連続した刺激セッションのような、複数の刺激セッションが必要になり得る。
【0121】
理解されたいこととして、この刺激方法に関する最初の概要は、読者が方法間の相違をより早く理解するのを助けることのみを意図している。各方法の特定の実施形態は、例えば、本明細書に開示された刺激器によって実行されるプログラムの形で、本開示を通して議論される。
【0122】
一般的な刺激の間、本開示は、中枢呼吸ドライブの調節プロセスを提供して、呼吸に必要な能動的な努力を軽減し、その結果、睡眠中の被験者を呼吸障害によって引き起こされる有害な交感神経ストレスから解放し得る。さらに、本開示は、中枢呼吸駆動力の再訓練プロセスを提供し、筋肉の自然な駆動力を減少させ、呼吸換気を回復させ得る。これらの利点は、刺激後も持続し得る。これらのプロセスは、気流、Sp0、騒音、口腔内運動障害等の改善にも役立つことがある。従って、本開示は、気道閉塞または虚脱等の呼吸努力(SDB)を特徴とする睡眠障害呼吸に関連する様々な障害の治療に応用することができる。また、前記装置は、いびきの発生及び/または強さを軽減するのに役立つことがある。
【0123】
本開示によって達成される下顎挙上は、上気道の幅を増加させ、かつ/またはその虚脱を減少させることによって、上気道または上気道を開くことがある。下顎挙上の程度は、最大突出能力の百分率として、または/及びミリメートル(mm)で表し得る。最大突出能力の百分率は、潜在的な副作用に関連し得る。その百分率またはミリメートルは、上気道を開く有効性に関連し得る。例示的な突出位置は、最大下顎突出の10%~90%を含み得る。
【0124】
「軽度の」経皮的電気刺激による下顎骨の動きを制御するための筋肉の動員及び再訓練では、適切な結果が得られないことが観察されている。しかし、本開示は、下顎骨が十分に長い期間にわたって十分強力に閉鎖すると、短期的及び/または長期的な結果が改善され得るという証拠を提示する。これらの結果は、本質的に、例えば、睡眠時呼吸障害や睡眠障害呼吸の発生を減少するため、治療用の場合もあれば、睡眠に関連する騒音の量を減らし、睡眠の質を改善するため、非治療用の場合もある。有利には、短期及び/または長期を組み合わせて、最初に刺激された筋肉を動員し、これらの刺激された筋肉をさらに再訓練して、刺激応答を改善し、かつ/または刺激の終了後に持続的な効果を達成することによって、効率的な刺激応答を達成し得る。このようにして、当技術分野の局所刺激方法の利点を超える相乗効果を達成することができる。
【0125】
電気刺激の文脈において、「十分に強い閉鎖」は、自然な (自発的ではない) 口の閉鎖の傾向として、刺激の開始時に使用者が入眠する直前に静かな体位で経験する電流強度に関連する。この閉鎖の強さは、フォースゲージ(最小収縮力(F)、最小筋繊維の%)または下顎骨運動(振幅の変化、下顎骨の位置)の手段で臨床的に測定できる。電気刺激の文脈において、「十分に長い閉鎖」は、下顎骨が空気循環を確保できる高くで前方の位置に維持される時間に関連する。例えば、デューティサイクルの刺激期間中に下顎骨が挙上されて、口を閉じることができ、次に、デューティサイクルの休息期間中に下顎が挙上されたままにすることができる。閉鎖の長さは、気流計(気流の振幅 (%)) または下顎骨運動(時間と周波数、下顎骨の位置)の手段で臨床的に測定できる。刺激効力の測定は、実施例3で議論されている。
【0126】
本開示の様々な態様の最初の概要を以下に提供し、その後、特定の実施形態をさらに詳細に説明する。この最初の概要は、読者が技術的概念をより早く理解するのを助けることを意図しているが、その主要または本質的な機能を特定することを意図したものではなく、主張された主題の範囲を制限することを意図したものでもない。特に明記しない限り、様々な態様を組み合わせることができることを当業者は理解する。従って、特定の態様の任意の特定の実施形態は、明示的に議論しなくても、別の態様の特定の実施形態を構成すると理解され得る。例えば、以下に説明する装置の実施形態は、前記装置の製造、前記装置の使用等のための実施形態も形成する。
【0127】
本開示の一態様は、被験者の睡眠中における呼吸努力を軽減するための装着可能な装置に関し、該装置は、
- 左筋運動点から下顎骨の左後角までの範囲の被験者の皮膚の選択された部分と電気的に接触するように配置されるように適合された少なくとも1つの左電極;
- 右筋運動点から下顎骨の右後角までの範囲の被験者の皮膚の選択された部分と電気的に接触するように配置されるように適合された少なくとも1つの右電極;及び
- 前記左電極から少なくとも1つの左筋肉へ、及び前記右電極から少なくとも1つの右筋肉へ経皮的電気刺激を印加するように構成された刺激器(ここで、印加された電気刺激は、刺激された前記左筋及び右筋の収縮を促進し、上気道が開放するように被験者の下顎骨を制御可能に挙上する)
を備える。
【0128】
一実施形態では、少なくとも1つの左電極は、左咬筋、翼突筋、及び/または側頭筋の運動点から下顎骨の左後角までの範囲の被験者の皮膚の選択された部分と電気的に接触するように配置されるように適合され得る。また、前記刺激器は、左電極から少なくとも1つの左咬筋、翼突筋、及び/または側頭筋に経皮的電気刺激を印加するように構成される。
【0129】
一実施形態では、少なくとも1つの右電極は、右咬筋、翼突筋、及び/または側頭筋の運動点から下顎骨の右後角までの範囲の被験者の皮膚の選択された部分と電気的に接触するように配置されるように適合され得る。また、前記刺激器は、右電極から少なくとも1つの右咬筋、翼突筋、及び/または側頭筋に経皮的電気刺激を印加するように構成される。
【0130】
前記電極、好ましくは左電極及び右電極は、前記刺激器によって生成された電気刺激を標的筋に送達し得る。一実施形態によれば、標的筋が両側から刺激されるように、2つ以上の電極、下顎骨の各側に少なくとも1つ、具体的には左電極及び右電極を提供し得る。
【0131】
一実施形態では、前記電極は、直径が10mm~20mm、好ましくは11mm~19mm、より好ましくは12mm~18mm、さらに好ましくは13mm~17mm、さらに好ましくは14mm~16mm、例えば約15mmの導電性要素を有してもよい。典型的には、円形の導電性要素、即ち円形の表面を有する導電性要素を使用してもよいが、他の幾何学的形状、例えば、楕円形、正方形、または三角形等の要素も考えられる。これにより、最も顕著な筋肉塊を覆って、効率的な刺激応答を実現できる。別の実施形態では、10 mm以下の直径のものを使用することができ、側頭筋の表面のようなより小さいまたはより狭い筋肉を標的として刺激するために、最も顕著な筋肉塊を覆うことができる。
【0132】
一実施形態では、前記電極は、双極電極であってもよい。そこで、各電極は、標的刺激ゾーンと腱との間に印加される2つの導電性要素を備える。2つの隣接して配置された導電性要素を有する双極電極の例が図10に示されている。前記双極電極の隣接する導電性要素間の距離は、電極間距離として定義される。電極間距離は、刺激の快適性に重要な影響を与える。この快適性が改善されれば、患者は、より高い電流強度に到達し、これによって、治療の有効性が向上し得る。一実施形態では、前記電極間距離は、10mm~30mm、好ましくは15mm~25mm、好ましくは16mm~24mm、より好ましくは17mm~23mm、さらに好ましくは18mm~22mm、さらにより好ましくは19mm~21mm、より好ましくは約20mmであってよい。典型的には、より小さい筋肉を刺激する場合は、より短い電極間距離、例えば10mm~15mmを選択してもよく、また、側頭筋のようなより大きな筋肉を刺激する場合は、より長い電極間距離、例えば20mm~30mm を選択してもよい。有利なことに、隣接する表面電極を筋繊維の方向に整列させて、同じ運動単位応答を2回刺激してもよいが、筋肉に沿って空間的にシフトさせてもよい。
【0133】
一実施形態では、前記電極は、皮膚に反復して取り付けることができる。反復して取り付けられると、前記装置が連続した睡眠セッションで再利用できるという利点がある。前記電極は、頭部と身体が通常に動く間に、所定の位置にとどまるように便利に取り付けられる。前記電極には、皮膚へ容易に取り付けられる接着面を設け得る。各電極には、皮膚から取り外せるのに適した表面を設け得る。有利なことに、各電極は、快適性及び有効性が改善されるように、導電性を確保するように構成され得る。
【0134】
一実施形態では、電極表面には、接着性のヒドロゲルを設けてもよく、前記電極と皮膚との間で低い抵抗性で接触することを確実にする。電極表面は、反復使用で接着剤層が消耗した場合に交換可能であってもよく、または該接着剤層を補充してもよい。代替の実施形態では、使い捨ての電極が考えられる。別の実施形態では、使い捨ての交換可能な表面を備えた電極が考えられる。
【0135】
刺激手段または本明細書で使用される「刺激器」は、通常、電流を生成するように構成された電源と、該電源に動作可能に接続されたコントローラとを備え得る。前記コントローラは、前記電源を制御し、本明細書に開示された刺激パラメーターに従って電流を生成し、刺激された筋肉の収縮を促進してもよい。前記装置が睡眠中に自由に装着できるように、前記電源はバッテリで動作する場合がある。前記電極は、ワイヤーで前記刺激器に接続することができる。その例示的な実施形態を以下でさらに説明する。
【0136】
前記双極電極は、反対側の左右の筋肉に同時に刺激を与え得る。一実施形態では、左電極と右電極に沿って提供される刺激は、等しいであり得る。しかし、他の実施形態では、左電極と右電極に沿った刺激は、異なってもよく、これにより、治療タイプに応じて異なるプログラムをプログラムしてもよい。例えば、下顎骨の片側により明確な筋肉を有する被験者の場合、解剖学的構造の違いに従って、左電極と右電極に対して別個の刺激プログラムを実行するように構成された複数のコントローラまたは単一のコントローラを使用して、この等しくない刺激を実行してもよい。
【0137】
前記コントローラは、本明細書で提示される方法を実行するために構成され得る。実施形態は、コードで実施してもよく、システムをプログラムし、命令を実行するように使用できる命令を格納した記憶媒体に格納してもよい。本開示の目的のために、「コード」または「プログラム」という用語は、アプリケーション、ドライバ、プロセス、ルーチン、メソッド、モジュール、及びサブプログラムを含む幅広い部品及び構築物を包含する。従って、用語「コード」または「プログラム」は、処理システムによって実行されるときに、所望の操作を実行する命令の任意の集合を指すために使用され得る。また、代替の実施形態として、開示されたすべての操作よりも少ない操作を使用するプロセス、追加の操作を使用するプロセス、同じ操作を異なる順序で使用するプロセス、及び本明細書に開示された個々の操作が組み合わされ、分割され、または別の方法で変更されるプロセスが含まれ得る。当業者は、本明細書に提示された方法をコードまたはプログラムとして実行し、それらに対する多数の修正及び改変を理解することができる。
【0138】
生成された電流を使用して標的筋を経皮的に刺激する方法は、複数の要因の影響を受ける可能性がある。閉塞した気道の再開を開始するよりも開いた上気道を維持する方が簡単であるため、連続的な低電流の使用は、通常、断続的な刺激よりも少ない力で済む。それにもかかわらず、筋肉疲労や睡眠の質に悪影響を与える可能性があるため、長時間の連続的な刺激を避けることは有益である。従って、電流強度 (mA)、パルス周波数 (Hz)、パルス幅 (μs)、及び/または刺激期間 (例えば、連続、断続、トリガー) を含む最適な刺激パラメーターの選択は、効率的な筋肉応答を促進し、しかも悪影響を回避する。さらに、特定の刺激パラメーターの選択は、異なる生理学的応答、具体的には、筋繊維の動員、筋機能のリハビリテーション、及び(筋肉の刺激による)神経筋関連回路の再訓練を引き起こす可能性がある。
【0139】
制御されたリズムを有する規則的な刺激パターンに従って電流を印加して、パルス電流を形成し得る。一実施形態では、前記電流は、二相性電流強度、パルス周波数、パルス幅、及び/または刺激期間等の1つまたは複数の刺激パラメーターによって特徴付けられる二相性電流である。信号パラメーターの様々な組み合わせは、年齢、体重、肌のタイプ等の被験者固有の要因に応じて、様々な被験者に適する傾向がある。例えば、二相性電流は、筋肉を動員し、リハビリし、かつ/または再訓練することに特に適する場合がある。しかし、上記で論議したように、特定の刺激パラメーターは、筋肉疲労を誘発し、睡眠の質に影響を与えるリスクがある。以下に、高い有効性と副作用のリスクとの間で特に優れた両立できない関係性を提供することが判明された様々な刺激パラメーターを示す。
【0140】
一般的な実施形態では、前記電流強度は、少なくとも1mA~最大で50mA、または1mA~45mA、または1mA~40mA、または1mA~35mA、より好ましくは、1mA~30mA、または1mA~25mA、または5mA~25mA、さらにより好ましくは、10mA~20mA、または15mA~20mA、または10mA~15mAから選択してもよい。前記信号強度の変動は、筋肉の収縮力に影響を与え得る。刺激強度は、典型的には、被験者のニーズ及び不快感の閾値に応じて最初に調整される刺激パラメーターであり得る。
【0141】
一般的な実施形態では、前記パルス周波数は、少なくとも1Hz~最大で100Hz、より好ましくは、10Hz~90Hz、または10Hz~85Hz、または10Hz~80Hz、または15Hz~75Hz、または15Hz~70Hz、さらにより好ましくは、20Hz~60Hz、または25Hz~55Hz、さらに好ましくは、30Hz~50Hz、さらにより好ましくは、約40Hz、例えば35Hz~45Hzから選択してもよい。信号周波数の変動は、筋肉の収縮力に影響を与え得る。適切な収縮を達成するために、適切な周波数を上記の広い範囲内で選択してもよく、また、より適切な周波数を好ましい狭い範囲内で選択してもよい。
【0142】
一般的な実施形態では、前記パルス幅は、少なくとも50μs~最大1000μs、好ましくは、100μs~500μs、または100μs~400μs、より好ましくは、125μs~375μs、または150μs~350μs、または175μs~325μs、さらにより好ましくは、200μs~300μs、さらにより好ましくは、約250μs、例えば225μs~275μsから選択してもよい。信号パルス幅の変動は、筋肉の収縮時間に影響を与え得る。信号パルス幅は、被験者のニーズ及び不快感の閾値に応じて変えることもできる。
【0143】
刺激期間は、2つの反復フェーズまたは期間、具体的には、刺激のない休息期間 (即ち、「オフ」期間) が続く刺激期間 (即ち、「オン」期間) からなるように、二相性であってもよい。刺激期間と休息期間の差は、デューティサイクルとして定義される。一実施形態では、前記刺激期間は、少なくとも1秒間~最大で20秒間、または1秒間~15秒間、または1秒間~10秒間、より好ましくは2秒間~8秒間、さらにより好ましくは3秒間~7秒間、さらに好ましくは4秒間~6秒間、さらに好ましくは5秒間であってよい。一実施形態では、前記休息期間は、少なくとも1秒間~最大で20秒間、または1秒間~15秒間、または1秒間~10秒間、より好ましくは2秒間~8秒間、さらにより好ましくは3秒間~7秒間、さらにより好ましくは4秒間~6秒間、さらにより好ましくは5秒間であってもよい。刺激時間と休息時間の長さは、対称的、例えば5秒間の刺激に続いて5秒間の休息であってもよく、または非対称的、例えば5秒間の刺激に続いて10秒間の休息、または10秒間の刺激に続いて5秒間の休息であってもよい。特定の生理学的効果に合わせて刺激期間及び休息期間の長さ及び/または相対比率を調整してもよい。例えば、筋肉刺激を促進するために、刺激期間を延長し、かつ/または休息期間を短縮してもよい。例えば、筋肉疲労を軽減するために、刺激期間を短縮し、かつ/または休息期間を延長してもよい。
【0144】
上記の特定の値は、睡眠中の被験者から生理学的応答をもたらすのに適した1つまたは複数の刺激パラメーターを選択するための一般的なガイドラインを提供する。しかし、より具体的な刺激パラメーターを選択することにより、生理学的応答を特定の生理学的効果に導き得る。当業者は、これらの刺激パラメーターが、実行可能な刺激プログラムの形で、本明細書で開示される装着可能な刺激装置によって実行され得ることを理解するであろう。電気刺激を達成するために、少なくとも3つの異なる刺激プログラム、具体的には、筋線維の動員、筋機能のリハビリテーション、及び神経筋関連回路の再訓練のプログラムが本開示で企図される。しかし、本開示の装着可能な装置は、これらの3つの異なる刺激プログラムのみに限定されないことが理解される。一実施形態では、本明細書で「リクルートプログラム」と呼ばれる、筋繊維を動員するための刺激は、(リハビリプログラム及び再訓練プログラムと比較して)狭いパルス幅、低い周波数、及び高い電流強度での経皮的電気刺激を含み得る。該リクルートプログラムは、刺激セッション中に下顎骨の動きを制御するための直接測定可能な効果を持つ直接的かつ急性の筋肉応答を提供することを目的としているが、通常、刺激セッション後(即ち、刺激器がオフになっているとき)に持続的な効果を提供することはない。
【0145】
前記リクルートプログラムの精確なパラメーターは、被験者によって異なり、それらは、被験者の身体的な刺激応答と不快感の程度に依存する。一実施形態では、前記リクルートプログラムの電流強度は、5mA~10mA、好ましくは6mA~10mA、例えば7mA、8mA、または9mAから選択してもよい。一実施形態では、前記リクルートプログラムの周波数は、10Hz~50Hz、好ましくは15Hz~50Hz、または20Hz~50Hz、または25Hz~45Hz、または25Hz~45Hz、または30Hz~40Hz、例えば 30Hzから選択してもよい。一実施形態では、前記リクルートプログラムのパルス幅は、25μs~300μs、好ましくは50μs~275μs、50μs~250μs、または75μs~275μs、または100μs~275μs、125μs~275μs、150μs~275μs、175μs~275μs、200μs~275μs、または200μs~250μs、例えば210μs、220μs、230μs、240μs、または250μsから選択してもよい。
【0146】
一実施形態では、本明細書で「リハビリプログラム」と呼ばれる、筋機能をリハビリするための刺激は、(リクルートプログラム及び再訓練プログラムと比較して)狭いパルス幅、低い周波数、及び低い電流強度での経皮的電気刺激を含み得る。該リハビリプログラムは、刺激された筋肉の筋機能を改善すること、即ち、収縮力を改善し、かつ/または知覚される不快感の程度を軽減することを目的としてもよい。該リハビリプログラムにより、刺激に対する筋肉応答が改善され得る。これは、複数の、好ましくは連続したセッションにわたって刺激の有益な効果を改善し得る。
【0147】
前記リハビリプログラムの正確なパラメーターは、被験者によって異なる。それらは、被験者の身体的刺激応答と知覚される不快感の程度に依存する。例えば、被験者が筋肉や呼吸器の病気にかかっている場合等。一実施形態では、前記リハビリプログラムの電流強度は、1mA~4mA、好ましくは2mA~4mA、例えば3mAから選択してもよい。一実施形態では、前記リハビリプログラムの周波数は、10Hz~50Hz、好ましくは15Hz~50Hz、または20Hz~50Hz、または25Hz~45Hz、または25Hz~45Hz、または30Hz~40Hz、例えば30Hzから選択してもよい。一実施形態では、前記リハビリプログラムのパルス幅は、25μs~ 300μs、好ましくは50μs~275μs、50μs~250μs、または75μs~275μs、または100μs~275μs、125μs~275μs、150μs~275μs、175μs~275μs、200μs~275μs、または200μs~250μs、例えば210μs、220μs、230μs、240μs、または250μsから選択してもよい。
【0148】
一実施形態では、本明細書で「再訓練プログラム」と呼ばれる、神経筋回路を再訓練するための刺激は、(リクルートプログラム及びリハビリプログラムと比較して)広いパルス幅、高い周波数、及び低い電流強度での経皮的電気刺激を含み得る。該再訓練プログラムは、神経筋関連回路を再訓練して、中枢ドライブに対する刺激の中枢効果を変更することを目的とし得る。即ち、これは、被験者の脳からの三叉神経の運動枝の呼吸活動に関与する中枢神経回路に向けられる。該再訓練プログラムは、セッションが終了または中止された後も持続的な応答を達成し得るが、複数の、好ましくは連続したセッションが必要になる場合がある。
【0149】
前記リクルートプログラムの精確なパラメーターは、被験者によって異なり、それらは、被験者の身体的刺激応答と知覚される不快感の程度に依存する。例えば、被験者が筋肉や呼吸器の病気にかかっている場合等。一実施形態では、前記再訓練プログラムの電流強度は、1mA~4mA、好ましくは2mA~4mA、例えば3mAから選択してもよい。一実施形態では、前記再訓練プログラムの周波数は、50Hz~150Hz、好ましくは60Hz~140Hz、または70Hz~130Hz、または80Hz~120Hz、または90Hz~110Hz、例えば100Hzから選択してもよい。一実施形態では、前記再訓練プログラムのパルス幅は、500μs~1000μs、好ましくは550μs~950μs、より好ましくは600μs~900μs、さらにより好ましくは650μs~850μs、さらにより好ましくは700μs~800μs、例えば750 μsから選択してもよい。
【0150】
前記刺激器は、前記刺激強度パラメーターに従って電気刺激の強度を設定するように構成されてもよく、ここで、前記刺激強度パラメーターは、刺激知覚の閾値及び刺激不快感の閾値に従って測定される。経皮的電気刺激の電流強度は、被験者の感度閾値と馴化に依存し得る。最適な刺激強度は、皮膚伝導率、筋肉の厚さ、脂肪または脂肪組織の厚さ等の変動等、被験者固有のパラメーターに対応するためのユーザー個別化プログラムを提供し得る。一実施形態では、電気刺激の電流強度は、刺激知覚の閾値と刺激不快感の閾値の間の値に調整される。例えば、前記電流強度は、刺激知覚の閾値と刺激不快感の閾値との中間値、即ち、刺激知覚の閾値(mA)と刺激不快感の閾値(mA)との合計の半分(1/2)に設定され得る。代替として、前記電流強度パラメーターは、治療タイプに応じて、刺激知覚の閾値と刺激不快感の閾値との間の4分の1(1/4)または4分の3(3/4)に設定され得る。
【0151】
前記刺激強度パラメーターは、ユーザー入力を介して測定してもよい。一実施形態では、前記刺激器は、スマートフォン等の入力装置に接続し、該入力装置から被験者固有の入力を受信するように構成されてもよい。前記入力装置は、ユーザーに、被験者が電気刺激を知覚して標的筋の収縮を促進する電気刺激の最小強度に対応する刺激知覚の閾値、及び被験者が睡眠の質に影響を与え得る筋肉痛等のパルス電流による不快感の程度を知覚する電気刺激の最大強度に対応する刺激不快感の閾値を入力するように促し得る。
【0152】
前記刺激器には、最適な刺激強度パラメーターを自動的に測定するように構成された刺激強度測定プログラムを設け得る。例えば、前記刺激器は、年齢や性別等の被験者固有のパラメーターに基づいて、事前定義された強度を設定し、そして、被験者が知覚された不快事象の発生を報告するまで、電流を徐々に増加させ、その後、被験者が該刺激を知覚していないことを報告するまで、電流を徐々に低減させてもよい。次に、前記刺激器は、不快感報告値及び知覚の閾値に基づいて、最適な刺激強度パラメーターを計算してもよい。あるいは、前記刺激器はまた、ユーザー入力に従って刺激強度を印加するために、ユーザーによって選択的に操作可能であり得る。これにより、例えば前回のセッション等で最適な強度パラメーターが既知の場合、ユーザーは装置をすばやくセットアップできる。当業者は、該測定プログラムが、パルス周波数またはパルス幅等の他の刺激パラメーターに対しても提供され得ることを理解するであろう。
【0153】
前記刺激器は、装置及び/またはユーザーのフィードバックに応じて、電気刺激強度を選択的に増加させるように構成されてもよい。経皮的電気刺激のセッションを繰り返すと、経時的に筋肉応答が低下し、それによって刺激知覚の閾値が上昇し得る。また、被験者はまた、電気刺激に慣れるようになり、それによって刺激不快感の閾値を増加させ得る。ユーザーによる再キャリブレーションの必要性を回避するために、少なくとも2回の睡眠セッションの間に刺激強度を自動的に調整するように、前記刺激器を構成してもよい。好ましくは、刺激強度は、連続する2つの睡眠セッションごとに調整される。あるいは、刺激強度は、いびき強度の%減少または筋力の%増加等の特定の治療目標が達成されたときに調整され得る。一実施形態では、前記刺激器は、一定の割合で刺激強度を自動的に増加させ得る。例えば、各睡眠セッションで1% ~25%増加させる。あるいは、刺激強度を手動で調整するようにユーザーを促してもよい。
【0154】
前記刺激器は、刺激前電流を印加し、経皮的電気刺激に対する刺激された筋肉の応答を改善するように構成されてもよい。特に、前記刺激器は、時間制限された高周波電流を左電極及び/または右電極から被験者の皮膚に印加して、皮膚インピーダンスを低下させるように構成されてもよい。皮膚は通常、電流の通過に対して一定の抵抗率を示し、これは、一定時間後に低下すると予想される場合がある。しかし、皮膚抵抗率がより高い特定の被験者群(高齢者や有色人種等)の電気的皮膚インピーダンスは、皮膚抵抗率が低下するのにより多くの時間を要する場合がある。さらに、高い抵抗率は、電流が主に皮膚表面に確立され、不快感を引き起こすことを意味する。
【0155】
従って、刺激前プロトコルを実行して皮膚インピーダンスを低下させ、電気刺激に対する筋肉の適切な応答を確保することで、皮膚インピーダンスを低下させることが有益である。前記刺激前プロトコルは、例えば、装置が最初に起動されたとき、かつ/または被験者が目標とする睡眠サイクルに入る直前に適用され得る。一実施形態では、前記刺激前プロトコルは、パルス幅が低く、周波数が高く(電源能力と被験者が知覚する不快感の閾値に応じて)、1分間~5分間等の限定された時間の刺激前電流であってもよい。例えば、前記刺激前電流は、パルス幅100μs及びパルス周波数100Hzの電流であり、前記電極によって1~2分間印加される。
【0156】
前記刺激器は、刺激器のメモリ装置上に提供された事前設定プログラムを介して刺激パラメーターを測定し、調整してもよい。事前に設定されたプログラムを順守することは、睡眠サイクル全体にわたって連続的な刺激が望まれる実施形態に適している場合がある。それにもかかわらず、前記刺激器は、感知ユニットによるデータに基づいて刺激を提供するように構成されてもよい。
【0157】
咬筋、翼突筋、及び/または側頭筋を刺激する目的は、正常な呼吸を実現し、呼吸努力を軽減するように顎を配置することである。従って、最適な刺激のために、電極は、これらの筋肉に有利に配置されるべきである。これらの筋肉の特定は、特に装着可能な装置を自宅で使用するため、医学的訓練を受けていない被験者にとっては困難な場合がある。それにもかかわらず、表在咬筋と前側頭筋に電極を配置する方法は、解剖学的ランドマーク、特に頬骨弓(Za)と下顎角(Go)に基づいて定式化できる。解剖学的ランドマークを参照として使用することで、標的筋に電極を配置する際の再現性を確保することができる。電極配置の再現性は、特定の筋肉部分の場所の刺激を確実にするための縦方向の刺激に有利であり得る(運動単位の活動電位の空間分布は、筋肉の伸張全体を通して均一ではない)。
【0158】
一実施形態では、咬筋に電極を配置する方法は、以下のステップを含んでもよい:
(i) 下顎角、好ましくは下顎骨のコーナー角を特定するステップ;
(ii) 頬骨弓、好ましくは目の外側のコーナーを特定するステップ;
(iii)前記下顎角から前記頬骨弓に向かって伸びる咬筋を特定するステップ;
(iv) 前記咬筋上の標的刺激ゾーン、好ましくは前記下顎角から、筋繊維方向に沿って該下顎角と頬骨弓との間の距離の中間までの範囲を特定するステップ;及び
(v) 任意選択で、本開示による電極を前記標的刺激ゾーンに配置するステップ。
【0159】
一実施形態では、前記電極は、2つの導電面を含む双極電極であり、ここで、第1導電性要素は、咬筋の運動点の上に、好ましくは下顎角に隣接して取り付けられ、第2導電性要素は、咬筋繊維の方向に沿って、好ましくは、筋繊維方向に沿って下顎角と頬骨弓との間の距離の中間に取り付けられる。咬筋に電極を配置する方法の1例を図9に示す。
【0160】
有利なことに、前記電極は、触診または目視観察によって決められるように、筋肉の腹に、筋肉の中点に、または筋繊維の方向に沿って配置することができる。それにもかかわらず、電極と筋肉の界面間の異なる組織は、異方性を示すため、前記電極を筋繊維と同じ方向に配置することが望ましい。これにより、一対の電極が同じ筋繊維束からの活動電位の拡散をピックアップして、従って、対応する筋肉体積の拡散をピックアップし、刺激効率を促進することができる。
【0161】
有利なことに、前記表面電極は、筋肉収縮の瞬間に最も顕著な領域の上に、筋繊維に沿って配置することができる。好ましくは、前記電極表面は、筋肉の主運動神経細胞の近く(筋肉の運動点の近く)になるように配置されてもよく、これにより、エネルギーは、主な運動点から運動神経細胞の軸索によって伝導され、繊維の長さに沿って放出することができる。エネルギーを運動神経細胞に直接伝達することにより、前記電極は、皮膚(真皮)を通って、収縮して、まぶたや唇、他の感覚末端を挙上し、感覚異常等の不快感を引き起こし得る頭部の他の筋肉(例えば、 輪筋、口唇筋等)への電流の散逸を減少することができる。
【0162】
理解されるように、標的筋の精確な解剖学的構造は独特であり、従って被験者間で異なる。従って、目的の筋肉に密接に関連せず、または個別化されていない解剖学的ランドマークに基づく表面電極の配置に関する推奨事項は、電極を筋線維と平行に、その最大体積にわたって有利に配置できるという原則を尊重しない。双極構成の表面電極は、刺激される筋肉の解剖学的構造に直接依存して、神経支配ゾーンと腱挿入部との間に有利に配置され得る。咬筋、翼突筋、及び/または側頭筋の神経支配ゾーンは、通常、広く分散しており、推奨される最適な解剖学的領域への電極配置を妨げている。簡単に触知できる(筋肉収縮時の触診で)と特定の解剖学的参照/ランドマーク(頬骨弓と下顎角)に基づく1つまたは2つの異なる場所に表面電極を配置して、被験者をルーチン的に指導し、刺激の質を確保してもよい。これにより、刺激の効率がさらに向上し、局所的な副作用による不快感が軽減し得る。
【0163】
前記感知ユニット、または本明細書で使用される「センサー」は、呼吸活動/努力及び/または刺激応答等、被験者の様々な活動に関連するデータを記録してもよい。記録後、感知データは、処理ユニット、具体的には、例えばデータリンクを介して前記刺激器に動作可能に接続されるか、あるいはコントローラ等の刺激器の一部であるデータ分析ユニットによって処理され得る。該刺激器は、この目的のために、前記データ分析ユニットからフィードバックを命令の形で受信し、刺激を調整するように適合され得る。前記データリンクは、有線または無線接続であってもよい。
【0164】
有利なことに、前記センサーは、刺激効果を直接監視できるように、装着可能な装置の少なくとも1つの電極に取り付けてもよい。とはいえ、測定する被験者の活動や感度に応じて、顎や胸等被験者の別の部位に前記センサーを設けてもよい。以下のセンサーに関する実施形態は、標的筋の経皮的刺激のために、前記装置と組み合わせて特に適していると考えられる。
【0165】
有利なことに、被験者の下顎骨の動きを制御する筋肉に経皮的電気刺激を提供して、睡眠中の被験者の呼吸努力を軽減し、かつ/または睡眠時呼吸障害の発生を防止するために、前記感知ユニットを前記装着可能な装置に統合してもよい。これには、刺激中にデータを記録できるという利点がある。これにより、刺激プログラムの時間遅延や不一致の可能性を減少させる。また、睡眠中の被験者の呼吸活動を監視かつ/または分析するための装着可能な装置は、統合された感知ユニットを備えてもよい。また、睡眠中の被験者の睡眠活動を監視かつ/または分析するための装着可能な装置は、統合された感知ユニットを備えていてもよい。
【0166】
本開示の装着可能な装置は、被験者の下顎骨及び/または頭部の動きを記録し、該動きを1つまたは複数の下顎骨の特徴(被験者の下顎骨の位置、回転または変位等)及び/または1つまたは複数の頭部の特徴(被験者の頭部の位置、回転または変位等)を含む下顎骨活動データとして記録するためように構成された感知ユニットを備えてもよい。
【0167】
一実施形態では、前記下顎骨活動データは、刺激効力、具体的には、被験者の印加された刺激に対する筋肉応答に関する情報も提供してもよい。該情報は、睡眠中の下顎骨及び/または頭部の変位、呼吸努力及び/または中枢ドライブの変化等、派生した下顎骨の特徴から測定してもよい。
【0168】
一実施形態では、前記下顎骨活動データは、被験者の筋肉疲労に関する情報も提供してもよい。該情報は、睡眠中の下顎骨及び/または頭部の変位、呼吸努力及び/または中枢ドライブの変化等、派生した下顎骨の特徴から測定してもよい。
【0169】
一実施形態では、前記下顎骨活動データは、被験者のいびきまたは睡眠関連の騒音及び/または一般的な睡眠の質に関する情報も提供してもよい。該情報は、睡眠中の下顎骨及び/または頭部の変位等の下顎骨の特徴に関連し得る。
【0170】
一実施形態では、前記感知ユニットは、下顎骨の動きを記録するために構成されてもよく、前記処理ユニットは、前記感知ユニットに動作可能に接続される。ここで、前記処理ユニットは、前記感知ユニットから下顎骨活動データを受信し、そして、該下顎骨活動データから、被験者の呼吸活動を示す1つまたは複数の呼吸の特徴及び/または被験者の睡眠活動を示す1つまたは複数の睡眠の特徴を測定するように構成される。本発明者らは、下顎骨データが、例えば、特定の派生された下顎骨活動特徴の閾値ベースの検出によって直接的に、または下顎骨活動データのパターン認識によって間接的に、呼吸パラメーター及び/または睡眠パラメーターにリンクされ得ることを測定した。このような構成の例示的な実施形態を以下でさらに説明する。
【0171】
前記センサーは、被験者の下顎骨の回転運動を記録するために構成された少なくとも1つのジャイロスコープを備えてもよい。記録された回転運動データは、下顎骨運動クラスに関連付けられた下顎回転の少なくとも1つの速度、速度変化、頻度、及び/または振幅を示し得る一連の回転値を含む様々な下顎骨運動クラスにリンクされ得る。記録された回転運動を分析して、上述のように下顎骨活動データ、呼吸活動データ、及び/または睡眠活動データを測定してもよい。有利なことに、前記ジャイロスコープは、電極と一緒に配置して装置の複雑さを軽減できるように、左電極及び/または右電極に設けられる。
【0172】
感知装置にジャイロスコープを設けることは、加速度計、力/圧力センサー、または磁気センサー等、当技術分野で通常適用される他の感知装置と比較して、下顎骨運動の記録に特に適していることが分かった。例えば、加速度計は、線形加速度の測定しかできないため、下顎骨の回転変位の測定には適していない。さらに、加速度計は、呼吸中の胸部や気管等、身体や頭部の動きの影響を受ける可能性があり、データの出所を識別することは難しく、システムに不要な騒音と複雑さを加える。これは、測定されたデータ ストリームに基づく診断に悪影響を及ぼす。本発明者らは、ジャイロスコープによって記録された下顎骨の回転が、上記で説明した下顎骨活動データ、呼吸活動データ、及び/または睡眠活動データを正確な評価するために必要な情報を運ぶことを発見した。
【0173】
好ましい実施形態では、前記感知装置は、少なくとも1つのジャイロスコープ、少なくとも1つの加速度計、及び任意選択で少なくとも1つの磁力計も備えてもよい。本発明者らは、加速度計が頭部の動き及び位置を測定するのに特に適していることを発見した。本システムに加速度計を追加することで、頭部の動きを顎の動きから識別できるようになり、それによって睡眠中の下顎骨の挙動をより正確に評価できるようになり得る。さらに、磁力計を設けることにより、コンパスのような感知ユニットの向きを評価して、ジャイロスコープ及び/または加速度計によって記録された動きの方向を測定できるようになり得る。従って、好ましい実施形態は、下顎骨運動の記録に特に適し得る。
【0174】
いくつかの実施形態では、前記センサーは、酸素センサー(オキシメーター等)、温度センサー(温度計等)、音声センサー(マイク等)、筋肉活動センサー(筋電図ユニット等)、脳活動センサー、心臓活動センサー、血液センサー(パルスフォトプレチスモグラフィー等)を含むリストから選択された装置も備えてもよい。追加の感知装置を提供することで、いびきの検出等、患者固有の目的に合わせて、センサーをカスタマイズできる場合がある。
【0175】
さらに、本明細書に記載の装着可能な装置は、他のシステムまたは方法と組み合わせて使用され得る。これらのシステムは、本質的に治療用であってもよい。例えば、呼吸装置 (CPAP、BiPAP、適応サポート換気)、経皮的または埋め込み式の、特定の神経及び/または他の筋肉を刺激するための装置、睡眠中に身体及び/または頭部の姿勢及び/または位置を矯正するための装置。いくつかの実施形態では、アラームを前記システムに結合することができ、かつ/または前記システムを、アラーム機能を有する装置に接続してもよく、または前記システムは、該装置を備えてもよい。
【0176】
本開示の装着可能な装置は、データ分析ユニットとも呼ばれ、前記感知ユニットから、下顎骨活動データを受信し、そして、該下顎骨活動データから、被験者の下顎骨の位置、回転または変位等の1つまたは複数の下顎骨の特徴、及び/または被験者の頭部の位置、回転または変位等の1つまたは複数の頭部の特徴を測定するように構成された処理ユニットを備えてもよい。
【0177】
一実施形態では、前記装着可能な装置は、被験者の呼吸活動を記録するために構成された感知ユニット、及び該感知ユニットに動作可能に接続された処理ユニットを備えてもよい。ここで、前記処理ユニットは、前記感知ユニットから呼吸活動データを受信し、該呼吸活動データから、呼吸の頻度または強度、呼吸努力の増加を特徴とする睡眠障害呼吸の発生、及び/または気道閉塞や虚脱等の呼吸障害の発生のような1つまたは複数の呼吸の特徴を測定するように構成される。
【0178】
いくつかの実施形態では、前記呼吸活動データは、装置に刺激効力に関するフィードバックを提供してもよいが、呼吸障害を治療するための特定のプログラムを開始するように装置をトリガーし得る。特定の実施形態では、前記呼吸活動データは、睡眠中における呼吸努力の増加等の呼吸の特徴に関連し得る被験者のいびきに関する情報も提供してもよい。
【0179】
前記装着可能な装置は、被験者の睡眠活動を記録するように構成された感知ユニット、及び該感知ユニットに動作可能に接続された処理ユニットを備えてもよい。ここで、前記処理ユニットは、前記感知ユニットから睡眠活動データを受信し、該睡眠活動データから、睡眠状態の検出、特定の睡眠段階の測定、及び/または睡眠の質の評価等、1つまたは複数の睡眠の特徴を測定するように構成される。前記睡眠活動データは、装置に刺激効力に関するフィードバックを提供してもよいが、特定の睡眠状態または段階を標的にするように装置をトリガーし得る。睡眠の質のパラメーターには、例えば、総睡眠時間 (TST)、入眠潜時 (SOL)、入眠後の覚醒時間(WASO)、覚醒または覚醒指数、睡眠効率(SE)、REMの比率、非REM睡眠、REM睡眠潜時、及びその他の睡眠の質の指標が含まれ得る。
【0180】
前記データ分析ユニットは、下顎骨活動データ、呼吸活動データ、及び/または睡眠活動データ等、上記の1つまたは複数の感知データから複数の値を導出し、導出された値を事前に定義されたクラスと照合するように構成され得る。好ましくは、前記感知データは、例えば、1.0~100.0Hz、または2.0~50.0Hz、または5.0~25.0Hz、好ましくは10.0Hzであり得る特定のサンプリングレートでサンプリングされる。サンプリングされたまたはサンプリングされていない感知データからの値は、離散化、時間平均化、正規化、(高速) フーリエ変換等、1つまたは複数の数学的手順を含んでもよい。当業者が理解するように、それらに対して多くの修正及び改変はできる。
【0181】
前記照合は、機械学習モデルの提供によって完全または部分的に自動化され得る。これにより、データ分析ユニットは、周波数及び時間ドメインで信号の特性を取得し、睡眠段階、呼吸努力、筋肉疲労等の特定の事象に対する回転信号のパターンを識別するために、いくつかの統計的及び/または物理的メトリックを学習するように構成される。一実施形態では、前記機械学習モデルは、極端勾配ブースティング、深層ニューラルネットワーク、畳み込みニューラルネットワーク、ランダムフォレストのリストから選択されてもよい。本発明者らは、これらのモデルが、記録された下顎骨活動データ、呼吸活動データ、及び/または睡眠活動データを対応するクラスに分類するのに特に適していることを発見した。しかし、当業者が理解するように、それらに対して多くの修正及び改変はできる。従って、機械学習モデルの提供は、関連情報の自動解釈及び/または特性データと睡眠障害事象との照合を提供し得る。
【0182】
一実施形態では、前記データ分析ユニットは、好ましくは記録された下顎骨活動データによって、特に被験者の睡眠中に、被験者のフィードバックを必要とせずに刺激効力を測定するように構成され得る。下顎骨の不規則な動きが経時的に減少し、好ましくは印加された電気刺激の選択された刺激パラメーターと同期するとき、刺激の高い有効性を測定することができる。一方、不規則な下顎骨運動の発生率が高いことは、被験者の筋肉が印加された電気刺激に十分に応答していないことを示している可能性があり、そのため、例えば電流強度を増加させることによって、1つまたは複数の刺激パラメーターを調整する必要がある場合がある。
【0183】
一実施形態では、前記感知ユニットは、好ましくは記録された下顎骨活動データによって、特に被験者の睡眠中に、被験者のフィードバックを必要とせずに筋肉疲労を測定するように構成され得る。筋肉疲労は、下顎骨の上昇が経時的に減少するときに測定できるが、刺激パラメーターは特定の期間または睡眠段階で変化しない。
【0184】
一実施形態では、筋肉疲労は、好ましくは加速度計によって下顎骨の変位を追跡することによって、及び/または好ましくはジャイロスコープによって中枢ドライブ及び/または呼吸努力を追跡することによって、より正確に測定することができる。従って、好ましくは同じ位置に取り付けられた、加速度計及びジャイロスコープを備えた感知ユニットの実施形態が企図される。
【0185】
一実施形態では、以下のパラメーターは、筋肉疲労のタイプを測定することを可能にすることができる:
・明確な口の閉鎖が観察できる場合 (通常、記録された加速度計データにおいて、明確な下顎骨の変位の形で)、及び/または中枢ドライブ/呼吸努力が軽減している場合 (通常、記録されたジャイロスコープ データのピーク間の振幅から導出される)、筋肉疲労がないことと判断され得る。
・明確な口の閉鎖が観察できない場合(通常、記録された加速度計データにおいて、下顎骨の変位が減少する)、及び/または中枢ドライブ/呼吸努力が増加している場合 (通常、記録されたジャイロスコープ データのピーク間の振幅の増加によって示される)、末梢筋肉及び/または繊維の疲労と判断され得る。
・明確な口の閉鎖が観察できない場合 (通常、記録された加速度計データにおいて、下顎骨の変位が減少する) 及び/または中枢ドライブ/呼吸努力が軽減する場合 (通常、記録されたジャイロスコープ データのピーク間の振幅の減少によって示される)、脊椎または脊椎上部の疲労と判断され得る。
【0186】
記録されたデータを分析して、前記装着可能な装置にフィードバック ループを提供し、1つまたは複数の刺激パラメーターを調整することによって被験者の下顎骨の制御を改善し、装置の有効性を有利に改善し得る。一実施形態では、前記装着可能な装置は、前記刺激器に動作可能に接続され、感知データから刺激応答を測定し、該刺激応答を所望の応答と比較するように構成された処理ユニットを備えてもよい。さらに、前記処理ユニットは、刺激応答と所望の応答との差が測定された場合、少なくとも1つの電気刺激パラメーターを調整して、所望の応答を実現するように、あるいは、少なくとも1つの電気刺激パラメーターに対する調整を決定して、所望の応答を達成し、刺激装置に前記調整を命令として提供するように構成され得る。一実施形態では、刺激強度を調整してもよい。それにもかかわらず、パルス周波数、パルス幅及び/または刺激期間も調整してもよい。呼吸フィードバック ループの例示的な実施形態は、以下で議論される。
【0187】
一実施形態では、前記処理ユニットは、下顎骨活動データから刺激に対する下顎骨の応答を測定し、該下顎骨の刺激応答を所望の応答と比較するように構成されてもよく、該所望の応答は、上気道を開くための被験者の下顎骨の挙上からなる。一実施形態では、前記処理ユニットは、呼吸活動データから刺激応答を測定し、該呼吸刺激応答を所望の応答と比較するように構成されてもよく、該所望の応答は、睡眠中の被験者の呼吸努力の減少からなる。一実施形態では、前記処理ユニットは、睡眠活動データから刺激に対する睡眠応答を測定し、該睡眠刺激応答を所望の応答と比較するように構成されてもよく、該所望の応答は、睡眠中の被験者の睡眠の質の改善からなる。また、前記装置は、いびきの減少等の他の応答を測定するために構成されてもよい。
【0188】
下顎骨活動データを分析して、筋肉疲労を追跡してもよい。前記装着可能な装置は、被験者の下顎骨活動データにおける筋肉疲労を測定し、好ましくは電気刺激の1つまたは複数の刺激パラメーターを調整するように構成された筋肉疲労検出モジュールを備えてもよい。神経筋電気刺激を最適化された利点のために調整し、特に口の閉鎖を改善し、かつ/または筋肉疲労を軽減または防止するための、個別にまたは組み合わせて調整できる様々な刺激パラメーターがある。これらのパラメーターには、電流強度、パルス幅と周波数、デューティサイクル、異なる標的筋の刺激、標的の関数としての刺激の連続期間、特定の期間または睡眠段階の標的、監視された加速度計の振幅とドライブ応答が含まれ得る。例えば、筋肉疲労が検出された場合、電流強度を、好ましくは10%、20%、30%、40%、50%、またはそれ以上減少させ、かつ/または、デューティサイクルを変更し、具体的にはデューティサイクルの休息期間を、好ましくは10%、20%、30%、40%、50%、またはそれ以上延長し、例えば、5秒間~10秒間延長することが可能である。あるいは、筋肉疲労を検出すると、前記検出モジュールは、電気刺激を一時的に中断して、例えば 1分間または2分間の休憩を提供することにより、筋肉を回復させ得る。刺激が再開されると、前記筋肉疲労検出モジュールは、刺激応答が改善したかどうかを判断し、改善が不十分である場合は、別の休息、好ましくはより長い休息を提供してもよい。
【0189】
一実施形態では、前記筋肉疲労検出モジュールは、特定の睡眠段階が検出されたときに、1つまたは複数の刺激プログラム、具体的にはリクルートプログラム、リハビリプログラム、及び/または再訓練プログラムを変更するように構成されてもよい。このセッションは通常、リクルートプログラム及び/またはリハビリプログラムで開始される。しかし、これらのプログラムは、筋肉を疲労させる可能性があるため(比較的に狭いパルス及び/またはより高い電流強度が原因で)、前記筋肉疲労モジュールは、例えば、中枢疲労が検出された場合に、筋肉疲労を軽減するために、前記刺激器を再訓練プログラム(比較的に広いパルス及び/またはより低い電流強度で)に切り替えるように構成されてもよい。
【0190】
一実施形態では、前記筋肉疲労検出モジュールは、筋肉疲労のタイプ、具体的には末梢筋肉及び/または繊維の疲労、及び/または脊椎または脊椎上部の疲労を測定するように構成されてもよい。筋肉疲労を検出する方法は、本開示の前半で議論されている。一実施形態では、前記筋肉疲労検出モジュールは、末梢筋肉及び/または繊維の疲労を検出するとき、好ましくは、現在のプログラムよりも、低い電流強度及び/または広いパルスによって定義されたプログラムを起動することによって、刺激の電流強度を減少させ、かつ/またはパルス幅を増加させてもよい。
【0191】
一実施形態では、前記筋肉疲労検出モジュールは、脊椎または脊椎上部の疲労を検出するとき、好ましくは、現在のプログラムよりも、高い周波数及び/または広いパルスによって定義されたプログラムを起動することによって、刺激の周波数を増加させ、かつ/またはパルス幅を増加させてもよい。
【0192】
特定の実施形態では、前記処理ユニットは、不十分な筋肉収縮を検出し、セッションを調整し、リハビリプログラムを開始するように構成されてもよい。明確にするために、無呼吸または低呼吸の重度のエピソードがない軽度の疾患の場合では、標的筋をリハビリする時間がある。従って、1つまたは複数の刺激パラメーターを調整して、(例えば、電流強度及び/または周波数を増加することで)、電気刺激の効率を高める代わりに、より強い刺激を受けるために筋繊維の強度が構築されるように、電気刺激を減少させることが好ましいであり得る。これにより、筋肉疲労のリスクがある被験者や、セッションを中止すると高電流強度に非常に敏感な被験者の不快感が軽減され得る。有利なことに、例えば、臨床医が咬筋の収縮不良または一部の基礎疾患を診断したときに、該機能を前記装着可能な装置に含めて、必要に応じて活性化してもよい。また、前記リハビリプログラムは、2mAを超える電流強度に敏感な被験者に、具体的には、刺激が被験者の入眠及び/またはランプ期間後に被験者の覚醒を妨害する場合に提案できる。
【0193】
前記装着可能な装置は、被験者の呼吸データにおける呼吸努力のレベルを測定するように構成された呼吸努力検出モジュールを備えてもよい。一実施形態では、前記呼吸努力検出モジュールは、被験者の呼吸データにおける呼吸努力の増加を検出し、1つまたは複数の刺激パラメーター及び/または刺激プログラムを調整し、呼吸努力を軽減するように構成されてもよい。刺激は、記録された呼吸努力/中枢ドライブに基づいて、好ましくは、呼吸努力/中枢ドライブの増加が検出されたときに刺激の効率を向上させることによって、及び/または呼吸努力/中枢ドライブの減少が検出されたときに刺激の効率を低下させることによって、調整することができる。
【0194】
一実施形態では、前記呼吸障害検出モジュールは、好ましくはベースライン値と比較して、呼吸努力の増加を示すより高い周波数及び/またはより高い振幅(ピーク間の振幅)を検出し、好ましくは同じ周波数とパルス幅を維持するが、電流強度を増加させ、より好ましくは電流強度を10%、20%、30%、40%、50%、またはそれ以上増加させ、かつ/またはデューティサイクルの休息期間を10%、20%、30%、40%、50%、またはそれ以上短縮することにより、1つまたは複数の刺激パラメーターを調整して、刺激を促進するように構成されてもよい。これにより、刺激の効率が向上し、かつ/または呼吸努力/中枢ドライブが減少し得る。前記ベースライン値は、例えば予想される人口平均に基づく標準値であってもよいが、好ましくは、被験者の呼吸プロファイルに基づく個別化された値である。有利には、前記ベースライン値は、セッションの開始時に標準値として開始され、記録されたデータに基づいて適応される。
【0195】
一実施形態では、前記呼吸障害検出モジュールは、好ましくはベースライン値と比較して、呼吸努力の減少を示すより低い周波数及び/またはより低い振幅(ピーク間の振幅)を検出し、好ましくは同じ周波数とパルス幅を維持するが、電流強度を減少させ、より好ましくは電流強度を10%、20%、30%、40%、50%、またはそれ以上減少させ、かつ/またはデューティサイクルの休息期間を10%、20%、30%、40%、50%、またはそれ以上延長することにより、1つまたは複数の刺激パラメーターを調整して、刺激を低減するように構成されてもよい。これにより、被験者の快適性が向上し、かつ/または筋肉疲労の可能性が減少し得る。
【0196】
呼吸活動データを分析して、気道閉塞や虚脱等の特定の呼吸障害に選択的に焦点を当ててもよい。前記装着可能な装置には、呼吸障害が検出されたときに電気刺激を開始または調整できるように、被験者の呼吸データにおける呼吸障害の存在を測定するように構成された呼吸障害検出モジュールを設けてもよい。刺激は、気道閉塞や虚脱等の呼吸障害の検出に基づいて、好ましくは、1つまたは複数の呼吸障害の振幅、周波数及び/または期間の増加が検出された場合に、刺激の効率を向上させることによって、及び/または1つまたは複数の呼吸障害の振幅、周波数及び/または期間の減少が検出された場合、刺激の効率を低下させることによって、調整することができる。
【0197】
一実施形態では、前記呼吸障害検出モジュールは、ベースライン値と比較して、より高い周波数、より高い振幅(ピーク間の振幅)、及び/または呼吸障害の期間の増加を検出し、好ましくは同じ周波数とパルス幅を維持するが、電流強度を増加させ、より好ましくは、電流強度を10%、20%、30%、40%、50%、またはそれ以上増加させ、かつ/またはデューティサイクルの休息期間を10%、20%、30%、40%、50%、またはそれ以上短縮させることにより、1つまたは複数の刺激パラメーターを調整して、刺激を促進するように構成されてもよい。これにより、刺激の効率が向上し、かつ/またはさらなる呼吸障害の発生が減少され、好ましくは防止され得る。前記ベースライン値は、例えば予想される人口平均に基づく標準値であってもよいが、好ましくは、被験者の呼吸プロファイルに基づく個別化された値である。有利には、前記ベースライン値は、セッションの開始時に標準値として開始され、記録されたデータに基づいて適応される。
【0198】
一実施形態では、前記呼吸障害検出モジュールは、ベースライン値と比較して、呼吸障害の頻度、重症度、及び/または期間の減少を検出し、好ましくは同じ周波数とパルス幅を維持するが、電流強度を減少させ、より好ましくは電流強度を10%、20%、30%、40%、50%、またはそれ以上減少させ、かつ/またはデューティサイクルの休息期間を10%、20%、30%、40%、50%、またはそれ以上延長することによって、1つまたは複数の刺激パラメーターを調整して、刺激を低減するように構成されてもよい。これにより、被験者の快適性が向上し、かつ/または筋肉疲労の可能性が減少し得る。
【0199】
呼吸活動データを分析して、いびき及び/または睡眠関連の騒音に選択的に焦点を当ててもよい。前記装着可能な装置には、いびき/睡眠関連の騒音が検出されたときに電気刺激を開始または調整できるように、いびき/睡眠関連の騒音の発生を測定するように構成されたいびき検出モジュールを設けてもよい。いびきの検出は、任意選択で、例えば特定の音量を超えた場合等に、閾値に基づいてもよい。刺激は、記録されたいびきや睡眠関連の騒音に基づいて、好ましくは、いびき/睡眠関連騒音の増加が検出された場合、刺激の効率を向上させることによって、及び/またはいびき/睡眠関連騒音の減少が検出された場合、刺激の効率を低下させることによって、好ましくは、同じ周波数とパルス幅を維持するが、電流強度を増加させることによって、より好ましくは、電流強度を10%、20%、30%、40%、50%、またはそれ以上増加させ、かつ/またはデューティサイクルの休息期間を10%、20%、30%、40%、50%、またはそれ以上短縮させることによって、調整することができる。これにより、刺激の効率が向上し、かつ/またはさらなるいびきや睡眠関連騒音の発生が減少し、好ましくは防止され得る。
【0200】
前記装着可能な装置には、被験者者が入眠するときに電気刺激を開始でき、患者が覚醒するときに電気刺激を終了できるように、被験者の覚醒状態及び睡眠状態を測定するように構成された睡眠段階測定モジュールを設けてもよい。特定の被験者は、電気刺激が入眠の妨げになると感じ得る。少なくとも覚醒段階と睡眠段階の検出により、被験者は、刺激が開始される前により容易に入眠することができる。また、電気刺激は、例えば、刺激強度を徐々に増加させることによって、装置の起動によって被験者を覚醒させることを回避するために、徐々に開始されてもよい。
【0201】
前記装着可能な装置には、被験者が特定の睡眠段階に入ったときに電気刺激を開始、調整、及び/または終了できるように、被験者の1つまたは複数の睡眠段階を測定するように構成された睡眠段階測定モジュールを設けてもよい。正確な睡眠状態の検出は、刺激応答を改善し、それにより、治療目的または非治療目的のセッションの効率を向上させ得る。さらに、正確な睡眠段階の検出は、特に深い睡眠中(N3等)及び/または覚醒状態または覚醒中の刺激を軽減または防止することにより、セッションの安全性と快適性を向上させ得る。これにより、装置は刺激のために被験者の特定の睡眠段階に焦点を当てることができるため、被験者はまだ簡単に入眠できるか、より深い段階で覚醒しない。さらに、正確な睡眠状態の検出は、具体的には、特定の深い睡眠中の刺激(例えば、N3)を軽減または防止することによって、及び/または、より浅い睡眠中に可変な刺激を提供することによって、例えば電流強度を漸進的に増加/減少させることによって、筋肉疲労の発生を軽減または防止し得る。
【0202】
前記睡眠検出モジュールは、次の(計算の複雑さのレベルが上がることによってソートされる)分類に従って特定の睡眠段階を検出するように構成されてもよい:
- 被験者における覚醒状態または睡眠状態を検出した場合は、2クラスのスコアリング(即ち、バイナリ);
- 被験者における覚醒状態、浅い睡眠(N1及びN2)段階、及び/または非浅い睡眠(N1及びN2)段階を含む睡眠段階を分類する場合は、3クラスのスコアリング;
- 被験者における覚醒状態、深い睡眠(N3)段階、及び/または非深い睡眠(N3)段階を含む睡眠段階を分類する場合は、3クラスのスコアリング。
- 被験者の覚醒状態、REM睡眠段階、及び/または非REM睡眠段階を含む睡眠段階を分類する場合は、3クラスのスコアリング;
- 被験者における覚醒状態、浅い睡眠(N1及びN2)段階、深い睡眠(N3)段階、及び/またはREM睡眠段階を含む睡眠段階を分類する場合は、4クラスのスコアリング。
- 被験者における覚醒状態、N1睡眠段階、N2睡眠段階、N3睡眠段階、及び/またはREM睡眠段階を含むすべての睡眠段階を分類する場合は、5クラスのスコアリング。
【0203】
当業者は理解するように、必要なデータ処理の複雑さに応じて、データ分析は、前記装着可能な装置上に提供される処理ユニットによって実行されてもよく、または、より複雑な計算が必要な場合は、該計算は、被験者のスマートフォンやサーバー等、前記装着可能な装置に接続されている外部装置で計算を実行されてもよい。それにもかかわらず、本開示では便宜上、すべての必要な計算は、本明細書に開示される睡眠段階測定モジュールによって実行できると仮定する。
【0204】
一実施形態では、前記睡眠段階測定モジュールは、浅い睡眠(N1及び/またはN2)段階及び/またはREM段階の発生を測定し、被験者が前記浅い睡眠(N1及び/またはN2)段階及び/またはREM段階に入るとき、印加される電気刺激を開始または調整するように構成されてもよい。浅い睡眠(N1及び/またはN2)段階では、筋肉は再訓練の目的のためより敏感であり、刺激強度の増加等、1つまたは複数の刺激パラメーターの調整に役立つ可能性があることが発見された。浅い睡眠(N1及び/またはN2)段階及び/またはREM段階は、特定の下顎骨の顆状突起回転に関連付けることができ、従って、下顎骨活動データから測定することができる。さらに、浅い睡眠(N1及び/またはN2)段階及びREM睡眠段階では、(深いN3睡眠段階と比較して)無呼吸/低呼吸のリスクが増加する。これは基本的に、咽頭筋組織に向けられた代償的なドライブが減少するか、非常に変化しやすく、効率が低下する(REM睡眠)ためである。
【0205】
N3睡眠段階は、通常、安定した下顎骨の動きによって特徴付けられる。従って、一実施形態では、前記睡眠段階測定モジュールは、安定したピーク間の振幅及び/または呼吸頻度に基づいてN3を測定するように構成されてもよい。N3睡眠段階の検出後、前記睡眠段階測定モジュールは、好ましくは同じ周波数とパルス幅を維持するが、電流強度を減少させ、より好ましくは電流強度を10%、20%、30%、40%、50%、またはそれ以上減少させ、かつ/またはデューティサイクルの休息期間を10%、20%、30%、40%、50%、またはそれ以上延長することによって、リハビリプログラムに切り替えるように構成されてもよい。または、N3睡眠段階の検出後、前記睡眠段階測定モジュールは、好ましくは周波数とパルス幅を増加させ、任意選択で電流強度を減少させことによって、好ましくは周波数を10%、20%、30%、40%、50%、またはそれ以上増加させ、パルス幅を10%、20%、30%、40%、50%、またはそれ以上増加させ、デューティサイクルの休息期間を10%、20%、30%、40%、50%、またはそれ以上延長し、かつ/または電流強度を10%、20%、30%、40%、50%、またはそれ以上減少させることによって、再訓練プログラムに切り替えるように構成されてもよい。
【0206】
REM睡眠段階は、通常、不安定な下顎骨の動きによって特徴付けられる。従って、一実施形態では、前記睡眠段階測定モジュールは、不安定なピーク間の振幅及び/または呼吸頻度に基づいてREMを測定するように構成されてもよい。REM睡眠段階の検出後、前記睡眠段階測定モジュールは、好ましくは、同じ周波数とパルス幅を維持するが、電流強度を増加させることによって、より好ましくは、電流強度を10%、20%、30%、40%、50%、またはそれ以上増加し、かつ/またはデューティサイクルの休息期間を10%、20%、30%、40%、50%、またはそれ以上延長することによって、リクルートプログラムに切り替えるように構成されてもよい。あるいは、前記刺激器が前記リクルートプログラムで既に動作している場合、好ましくは、電流強度を10%、20%、30%、40%、50%、またはそれ以上増加させ、かつ/またはデューティサイクルの休息期間を10%、20%、30%、40%、50%、またはそれ以上短縮することによって、該リクルートプログラムの1つまたは複数のパラメーターを調整して、刺激を増大してもよい。
【0207】
一実施形態では、前記睡眠段階測定モジュールは、不適切な覚醒の発生を防止するために、次の睡眠段階を見越して、N1睡眠段階中にゆっくりランプアップするように構成されてもよい。成人では、典型的な N1睡眠段階は、比較的短くて浅い。睡眠段階は、数分で深くなると予想され得る。従って、前記睡眠段階測定モジュールは、好ましくは本明細書で開示される睡眠段階センサーによって、所定量の連続睡眠量を検出するランピングアルゴリズムに従って構成されてもよい。特定の睡眠段階が検出されると、前記ランピングアルゴリズムは、例えば、20分間にわたって、電流強度を0%から100%まで直線的に増加することによって、特定の時間の長さにわたって1つまたは複数の刺激パラメーターを調整することができる。
【0208】
一実施形態では、前記睡眠段階測定モジュールは、深い睡眠(N3)段階の発生を測定し、被験者が前記深い睡眠(N3)段階に入ると、印加された電気刺激を終了するように構成されてもよい。深い眠り(N3)の段階において、換気の中枢モーター制御が上気道筋のレバーで安定し(化学的と圧受のドライブの安定性)、また、上気道の開通性(V、XII、及びVII脳神経の運動前神経細胞による)は、呼吸を調節する神経細胞によって最適化されるため、事故及び重大なSDBのリスクが減少することが発見された。従って、深い睡眠(N3)段階の間、電気刺激を減少するか、または終了させることができる。これにより、筋肉疲労を防ぐために刺激された筋肉を弛緩させ得る。深い睡眠(N3)段階も、特定の下顎骨の顆状突起回転に関連付けることができ、従って、下顎骨活動データから測定することができる。
【0209】
一実施形態では、被験者の睡眠状態または段階は、以下のプログラムによって測定してもよい:
- 前記感知データを特定の時間(例えば30秒間)のエポックに分割し(ここで、該感知データは、好ましくは、下顎骨活動データ、呼吸活動データ、及び/または睡眠活動データから選択される)、そして
- 数学モデルを適用して、各エポックに睡眠状態を割り当てる。
ここで、前記数学モデルは、以下のステップを含む:
- 各エポックのために、記録された感知データから少なくとも1つの特徴を抽出するステップ;
- すべてのエポックにわたって、前記抽出された特徴の値を追跡するステップ;
- 特徴固有の閾値を設定するステップ;及び
- 前記抽出された特徴値が前記特徴固有の閾値を超えた場合、エポックの睡眠状態を調整するステップ。
【0210】
記録された感知データから睡眠検出モデルによって抽出される典型的な特徴には、最大値と最小値 (ジャイロスコープによって記録された下顎骨活動データ等)、平均値、中央値、標準偏差が含まれ得る。好ましくは、前記睡眠検出モデルは、複数の特徴を抽出して、前記睡眠検出モジュールの感度及び信頼性を向上させる。本発明者らは、ジャイロスコープによって記録された下顎骨の活動が、特に信頼できる覚醒状態の検出を提供し得ることを発見した。具体的には、次の特徴固有の閾値が特定された。ジャイロスコープ標準の標準偏差が、閾値を少なくとも1.10~最大で1.50、好ましくは1.15~1.25、より好ましくは約1.20、例えば1.17超えたときに、覚醒状態と判定してもよい。ジャイロスコープ標準の最大値が、閾値を少なくとも14.0~最大で15.0、好ましくは14.1~14.9、または14.2~14.8、より好ましくは14.3~14.5、または14.3~14.4超えたときに、覚醒状態と判定してもよい。
【0211】
睡眠時呼吸障害に関連する測定基準には、睡眠中における呼吸努力の 1 時間ごとの発生率と累積期間が含まれ得る。前記分析ユニットは、解釈された被験者固有のパラメーターを報告するために構成されてもよい。該報告は、コンピュータやスマートフォン等の装置へ出力を提供することを含んでもよい。該報告はまた、前記被験者固有のパラメーターの視覚的または文書による報告を、例えばヒプノグラムの形式で提供することを含んでもよい。
【0212】
一実施形態では、前記睡眠検出モジュールは、特定の睡眠段階が検出されたときに、1つまたは複数の刺激プログラム、具体的にはリクルートプログラム、リハビリプログラム、及び/または再訓練プログラムを変更するように構成されてもよい。セッションは通常、初期の睡眠段階(N1、N2等)に適用されるリクルートプログラム及び/またはリハビリプログラムで開始されてもよい。しかし、より深い睡眠段階、特にN3では、通常、換気と筋肉の咽頭壁(気道の開存に貢献)がより安定しているため、有益な応答を生み出すために必要な電気刺激は少なくなる。従って、前記睡眠検出モジュールは、起こり得る筋肉疲労を防止し、かつ/または前記装着可能な装置のバッテリを節約するために、前記刺激器を再訓練プログラムに切り替えるように構成されてもよい。
【0213】
前記装着可能な装置は、衣服、具体的には、前記刺激器の少なくとも一部を保持し、かつ/または電極を支持するために構成された、装着可能な衣服を備えてもよい。一実施形態では、前記装着可能な装置は、襟を備えてもよく、前記襟は、被験者の首の少なくとも一部の周りに配置されるように構成される。一実施形態では、前記襟は、被験者の肩の上に配置できるように、強固なものであってもよい。そのような実施形態の一例が図2に示されている。別の実施形態では、前記襟は、被験者の首の周りにスナップでき、有利には、睡眠中に襟が首の周りに保持されるように被験者の首に圧縮力を提供するように、可撓性のものであってもよい。そのような実施形態の一例が図4に示されている。一実施形態では、前記装着可能な装置は、ヘッドバンドを備えてもよく、前記ヘッドバンドは、被験者の頭部の少なくとも一部の周りに配置されるように構成される。前記ヘッドバンドは、同様に、強固なもの、可撓性のもの、またはその両方の組み合わせであってもよい。そのような実施形態の一例が図5に示されている。
【0214】
前記衣服は、被験者の身体部分、好ましくは首または頭部の周りにフィットできるように、湾曲した強固な本体を有してもよい。有利なことに、前記衣服は、半円形またはアーチ型の形状を有し、これにより人間工学的なデザインが改善され、睡眠中に脱落するのを防止し得る。前記衣服には、首の周りにフィットし易いように隙間を設けてもよい。
【0215】
好ましくは、衣服本体は、内部の電子機器を保護するのに十分な硬さであるが、被験者の動きに確実に順応するのに十分に柔軟である。一実施形態では、前記衣服は、シリコンシェルで覆われた硬質のポリマーコアを有する。シリコンは、肌と快適に接触することを確保するのに特に適した素材である。この部品は、例えば、大規模生産のために、3Dプリントまたは成形品であってもよい。前記衣服の内側部分には、被験者の皮膚と快適に接触することを改善するだけでなく、睡眠中の身体の回転による衣服のずれを防止するのに十分な表面摩擦を提供するように適合された材質を提供してもよい。一実施形態では、前記衣服は、長時間皮膚と接触し得るため、材質が呼吸できるようにポリエステルまたはポリアミド等の織物で覆われる。
【0216】
一実施形態では、前記衣服は、被験者の身の部分、具体的には首及び/または頭部に(軽く)押して、圧縮力を生み出すように構成されてもよい。これには、例えば睡眠中の動きにおいて、前記衣服をより簡単に所定の位置に固定できるという利点がある。さらに、電極が標的刺激ゾーンに押し付けられるように、圧縮力を電極に拡大することができる。電極を圧縮すると、皮膚との接触が改善され、皮膚抵抗が低減し、かつ/または運動神経により近い刺激が可能になる。結果として、これは、刺激応答を増加させ、かつ/または局所的な副作用または不快感を減少させ得る。
【0217】
前記電極は、接続ケーブルで前記衣服に電気的に接続してもよい。一実施形態では、前記装着可能な装置には、フレキシブルケーブルを設けてもよい。被験者の皮膚上への電極の配置を容易にするために、及び/または頭部または体の回転等の被験者の動きに対応するために、その長さを調節することができる。フレキシブルケーブルの長さを調節すると、電極が被験者の皮膚から外れにくくなる場合がある。前記衣服には、ケーブルを引っ張る、かつ/または余分なケーブルをケーブルハウジングに巻き込むことによって引っ込めるように適合されたケーブルハウジングを設けてもよい。任意選択で、ロック機構を前記衣服に設けて、ケーブルを異なる長さで固定することができる。または、前記ケーブルは、強固なものであってもよいが、睡眠の質を低下させ得る。前記ケーブルには電気ケーブルを設けてもよい。これにより、前記衣服に配置された刺激器から電極まで電流を流せるようにする。そのような実施形態の一例が図2に示されている。前記電極は、使用済みまたは欠陥のある電極を交換できるために、ケーブルに取り外し可能に取り付けてもよい。別の実施形態では、前記ケーブルは、前記衣服の一部であり得るハウジングと一体化してもよい。そのような実施形態の一例が図5に示されている。
【0218】
前記衣服には、バッテリパック及び任意選択で、プラグを設けてもよい。これにより、装置を使用していないときに、通常は日中に、バッテリを充電することができる。任意選択で、前記衣服には、電源ボタン等のユーザー インターフェース ボタンを設けてもよい。さらに、選択されたプログラム、バッテリ寿命または充電時間等に関する情報等、1つまたは複数のアクションを被験者に知らせる表示画面を設けてもよい。
【0219】
前記装着可能な装置は、スマートフォン等の出力装置に接続し、該出力装置にデータを送信するように構成されてもよい。前記出力装置には、受信したデータを分析し、任意選択で該データから様々な特徴を測定するように構成されたアプリケーション等の分析ソフトウェアを設けてもよい。前記装着可能な装置は、前記刺激器によって生成された刺激パラメーターの概要等の刺激データを保存するための保存手段を備えてもよく、保存されたデータは、分析のために前記出力装置に搬出してもよい。前記装着可能な装置にセンサーが設けられる実施形態では、感知データを保存するための保存手段を備えてもよく、同様に分析のために前記出力装置に搬出してもよい。
【0220】
前記出力装置は、例えば、パルス電流の1つまたは複数の1つのパルス固有のパラメーターを調整するために、または睡眠検出モジュールの1つまたは複数の特徴固有の閾値を調整するために使用され得る被験者固有のプロファイルを測定するように構成されてもよい。また、前記被験者固有のプロファイルを使用して、例えば、神経認知、生活の質、気分、及びその他の生物学的/生理学的尺度を調査するゲームまたはアンケートの形で、睡眠の質の改善を促進するためのユーザー フィードバックを提供してもよい。
【0221】
また、前記出力装置は、例えば機械学習モデルによって、受信データからより複雑な特徴を測定するように構成された外部サーバー等の専用のデータ分析装置に受信データを送信するように構成されてもよい。
【0222】
本開示の一態様は、睡眠中の被験者の呼吸努力を軽減するための方法に関し、該方法は、以下を含む:
- 被験者の左側の、好ましくは咬筋、翼突筋、及び/または側頭筋の筋運動点から下顎骨の左後角までの範囲の皮膚部分を選択し、該選択した皮膚部分に左電極を配置し、かつ、被験者の右側の、好ましくは咬筋、翼突筋、及び/または側頭筋の運動点から下顎骨の右後角までの範囲の皮膚部分を選択し、該選択した皮膚部分に右電極を配置すること;及び
- 左電極から少なくとも1つの左側の、好ましくは咬筋、翼突筋、及び/または側頭筋に経皮的電気刺激を印加し、かつ、右電極から少なくとも1つの右側の、好ましくは咬筋、翼突筋、及び/または側頭筋に経皮的電気刺激を印加すること。
ここで、前記印加された電気刺激は、刺激された前記左側及び右側の筋肉、好ましくは咬筋、翼突筋、及び/または側頭筋の収縮を促進し、上気道が開放するように被験者の下顎骨を制御可能に挙上する。
【0223】
本開示の一態様は、被験者の睡眠中の下顎骨の動きを検出するために構成されたセンサーを備えた被験者の呼吸努力を軽減するための方法に関し、該方法は、以下を含む:
- 前記センサーによって、下顎骨の活動を示す信号を出力するこよ;
- 信号処理ユニットによって、前記下顎骨の活動を示す信号を受信すること;
- 前記信号処理ユニットによって、前記下顎骨の活動を示す信号を処理し、下顎骨活動データを測定すること;
- 前記信号処理ユニットによって、制御信号で刺激器を作動させること(該制御信号は、前記信号処理ユニットによって、測定された下顎骨活動データに基づいて生成される);及び
- 前記刺激器によって、好ましくは咬筋、翼突筋、及び/または側頭筋の収縮を促進し、上気道が開放できるように被験者の下顎骨を制御可能に挙上するのに適したもう1つの刺激パラメーターによって特徴付けられる電気刺激を生成すること。
【0224】
本開示の一態様は、被験者の睡眠中の下顎骨の動きを検出するために構成されたセンサーを備えた被験者の呼吸努力を軽減するための方法に関し、該方法は、以下を含む:
- 前記センサーによって、下顎骨の活動を示す信号を出力すること;
- 信号処理ユニットによって、前記下顎骨の活動を示す信号を受信すること;
- 前記信号処理ユニットによって、前記下顎骨の活動を示す信号を処理し、呼吸活動データを測定すること;
- 任意選択で、前記信号処理ユニットによって、呼吸努力の増加を特徴とする睡眠障害呼吸の発生を測定すること;
- 任意選択で、前記信号処理ユニットによって、睡眠時呼吸障害の発生を測定すること;
- 前記信号処理ユニットによって、制御信号で刺激器を作動させること(該制御信号は、前記信号処理ユニットによって、測定された呼吸活動データに基づいて、任意選択で、測定された睡眠障害呼吸及び/または測定された睡眠時呼吸障害に基づいて生成される);及び
- 前記刺激器によって、好ましくは咬筋、翼突筋、及び/または側頭筋の収縮を促進し、上気道が開放できるように被験者の下顎骨を制御可能に挙上するのに適したもう1つの刺激パラメーターによって特徴付けられる電気刺激を生成すること。
【0225】
本開示の一態様は、被験者の睡眠中の下顎骨の動きを検出するために構成されたセンサーを備えた被験者の呼吸努力を軽減するための方法に関し、該方法は、以下を含む:
- 前記センサーによって、下顎骨の活動を示す信号を出力すること;
- 信号処理ユニットによって、前記下顎骨の活動を示す信号を受信すること;
- 前記信号処理ユニットによって、前記下顎骨の活動を示す信号を処理し、睡眠活動データを測定すること;
- 任意選択で、前記信号処理ユニットによって、覚醒状態と睡眠状態を含む睡眠状態を測定すること;
- 任意選択で、前記信号処理ユニットによって、浅い(N1)睡眠段階、浅い(N2)睡眠段階、深い(N3)睡眠段階(N3)、及び/またはREM睡眠から選択される少なくとも1つの段階を含む睡眠段階を測定すること;
- 前記信号処理ユニットによって、制御信号で刺激器を作動させること(該制御信号は、前記信号処理ユニットによって、測定された睡眠活動データに基づいて、任意選択で、測定された睡眠状態及び/または測定された睡眠段階に基づいて生成される);及び
- 前記刺激器によって、好ましくは咬筋、翼突筋、及び/または側頭筋の収縮を促進し、上気道が開放できるように被験者の下顎骨を制御可能に挙上するのに適したもう1つの刺激パラメーターによって特徴付けられる電気刺激を生成すること。
【0226】
いくつかの好ましい実施形態では、上記の被験者の呼吸努力を軽減するための方法は、さらに以下を含んでもよい:
- 刺激器によって、生成された電気刺激を、左側の、好ましくは咬筋、翼突筋、及び/または側頭筋の筋運動点から下顎骨の左後角までの範囲の被験者の皮膚の選択された部分に配置された左電極に送信すること;
- 刺激器によって、生成された電気刺激を、右側の、好ましくは咬筋、翼突筋、及び/または側頭筋の筋運動点から下顎骨の右後角までの範囲の被験者の皮膚の選択された部分に配置された右電極に送信すること;
- 左電極によって、少なくとも1つの左、好ましくは咬筋、翼突筋、及び/または側頭筋に経皮的電気刺激を印加して、前記左筋、好ましくは咬筋、翼突筋、及び/または側頭筋の収縮を促進すること;及び
- 右電極によって、少なくとも1つの右、好ましくは咬筋、翼突筋、及び/または側頭筋に経皮的電気刺激を印加して、前記右、好ましくは咬筋、翼突筋、及び/または側頭筋の収縮を促進すること。
ここで、刺激された左右の筋肉、好ましくは咬筋、翼突筋、及び/または側頭筋が、上気道が開放するように被験者の下顎骨を制御可能に挙上する。
【0227】
本開示の一態様は、被験者の睡眠中における呼吸努力を軽減するための方法に関し、該方法は、以下を含む:
- 被験者の左咬筋、左翼突筋、及び/または左側頭筋を含む少なくとも1つの左標的筋の位置に対応する皮膚部分を選択し、該選択された皮膚部分に、少なくとも2つの導電性要素を備える少なくとも1つの左双極電極を取り付けること(ここで、第1導電性要素は左標的筋の運動点に取り付けられ、第2導電性要素は左標的筋繊維の方向に沿って取り付けられる);
- 被験者の右咬筋、右翼突筋、及び/または右側頭筋を含む少なくとも1つの右標的筋の位置に対応する皮膚部分を選択し、該選択された皮膚部分に、少なくとも2つの導電性要素を備える少なくとも1つの右双極電極を取り付けること(ここで、第1導電性要素は右標的筋の運動点に取り付けられ、第2導電性要素は右標的筋繊維の方向に沿って取り付けられる);及び
- 左右の双極電極の2つの導電性要素の間に二相性の経皮的電気刺激を印加すること(該電気刺激は、被験者の標的筋肉の収縮を促進し、被験者の呼吸努力が減少できるように下顎骨を制御可能に挙上する。また、前記電気刺激は、1秒間~20秒間の刺激期間及び/または1秒間~20秒間の休息期間を有するデューティサイクルに従って生成される)。
【0228】
本開示の一態様は、被験者の睡眠中における呼吸努力を軽減するための方法に関し、該方法は、以下を含む:
- 被験者の左咬筋、左翼突筋、及び/または左側頭筋を含む少なくとも1つの左標的筋の位置に対応する皮膚部分を選択し、該選択された皮膚部分に、少なくとも2つの導電性要素を備える少なくとも1つの左双極電極を取り付けること(ここで、第1導電性要素は左標的筋の運動点に取り付けられ、第2導電性要素は左標的筋繊維の方向に沿って取り付けられる);
- 被験者の右咬筋、右翼突筋、及び/または右側頭筋を含む少なくとも1つの右標的筋の位置に対応する皮膚部分を選択し、該選択された皮膚部分に、少なくとも2つの導電性要素を備える少なくとも1つの右双極電極を取り付けること(ここで、第1導電性要素は右標的筋の運動点に取り付けられ、第2導電性要素は右標的筋繊維の方向に沿って取り付けられる);及び
- 左右の双極電極の2つの導電性要素の間に二相性の経皮的電気刺激を印加すること(該電気刺激は、被験者の標的筋肉の収縮を促進し、被験者の呼吸努力が減少できるように下顎骨を制御可能に挙上する。また、前記電気刺激は、1秒間~20秒間の刺激期間及び/または1秒間~20秒間の休息期間を有するデューティサイクルに従って生成される)。
【0229】
本開示の一態様は、被験者の睡眠中における呼吸努力を軽減する標的筋を動員するための方法に関し、該方法は、以下を含む:
- 被験者の左咬筋、左翼突筋、及び/または左側頭筋を含む少なくとも1つの左標的筋の位置に対応する皮膚部分を選択し、該選択された皮膚部分に、少なくとも2つの導電性要素を備える少なくとも1つの左双極電極を取り付けること(ここで、第1導電性要素は左標的筋の運動点に取り付けられ、第2導電性要素は左標的筋繊維の方向に沿って取り付けられる);
- 被験者の右咬筋、右翼突筋、及び/または右側頭筋を含む少なくとも1つの右標的筋の位置に対応する皮膚部分を選択し、該選択された皮膚部分に、少なくとも2つの導電性要素を備える少なくとも1つの右双極電極を取り付けること(ここで、第1導電性要素は右標的筋の運動点に取り付けられ、第2導電性要素は右標的筋繊維の方向に沿って取り付けられる);及び
- 左右の双極電極の2つの導電性要素の間に二相性の経皮的電気刺激を印加すること(該電気刺激は、被験者の標的筋肉の収縮を促進し、被験者の呼吸努力が減少できるように下顎骨を制御可能に挙上する)。
- 前記電気刺激は、以下の刺激パラメーターに従って生成される:5mA~10mA、好ましくは6mA~10mAの電流強度;15Hz~50Hz、好ましくは25Hz~45Hz、より好ましくは30Hz~40Hzの周波数;50μs~300μs、好ましくは225μs~275μs、より好ましくは200μs~250μsのパルス幅;及び1秒間~20秒間の刺激期間及び/または1秒間~20秒間の休息期間を有するデューティサイクル。
【0230】
本開示の一態様は、被験者の標的筋の筋機能をリハビリして、被験者の睡眠中における呼吸努力を軽減するための方法に関し、該方法は、以下を含む:
- 被験者の左咬筋、左翼突筋、及び/または左側頭筋を含む少なくとも1つの左標的筋の位置に対応する皮膚部分を選択し、該選択された皮膚部分に、少なくとも2つの導電性要素を備える少なくとも1つの左双極電極を取り付けること(ここで、第1導電性要素は左標的筋の運動点に取り付けられ、第2導電性要素は左標的筋繊維の方向に沿って取り付けられる);
- 被験者の右咬筋、右翼突筋、及び/または右側頭筋を含む少なくとも1つの右標的筋の位置に対応する皮膚部分を選択し、該選択された皮膚部分に、少なくとも2つの導電性要素を備える少なくとも1つの右双極電極を取り付けること(ここで、第1導電性要素は右標的筋の運動点に取り付けられ、第2導電性要素は右標的筋繊維の方向に沿って取り付けられる);及び
- 左右の双極電極の2つの導電性要素の間に二相性の経皮的電気刺激を印加すること(該電気刺激は、被験者の標的筋肉の収縮を促進し、被験者の呼吸努力が減少できるように下顎骨を制御可能に挙上する)。
- 前記電気刺激は、以下の刺激パラメーターに従って生成される:1mA~4mA、好ましくは2mA~4mAの電流強度;15Hz~50Hz、好ましくは20Hz~45Hz、より好ましくは30Hz~40Hzの周波数;50μs~300μs、好ましくは225μs~275μs、より好ましくは200μs~250μsのパルス幅;及び1秒間~20秒間の刺激期間及び/または1秒間~20秒間の休息期間を有するデューティサイクル。
【0231】
本開示の一態様は、被験者の睡眠中における呼吸努力を軽減する神経筋関連回路を再訓練するための方法に関し、該方法は、以下を含む:
- 被験者の左咬筋、左翼突筋、及び/または左側頭筋を含む少なくとも1つの左標的筋の位置に対応する皮膚部分を選択し、該選択された皮膚部分に、少なくとも2つの導電性要素を備える少なくとも1つの左双極電極を取り付けること(ここで、第1導電性要素は左標的筋の運動点に取り付けられ、第2導電性要素は左標的筋繊維の方向に沿って取り付けられる);
- 被験者の右咬筋、右翼突筋、及び/または右側頭筋を含む少なくとも1つの右標的筋の位置に対応する皮膚部分を選択し、該選択された皮膚部分に、少なくとも2つの導電性要素を備える少なくとも1つの右双極電極を取り付けること(ここで、第1導電性要素は右標的筋の運動点に取り付けられ、第2導電性要素は右標的筋繊維の方向に沿って取り付けられる);及び
- 左右の双極電極の2つの導電性要素の間に二相性の経皮的電気刺激を印加すること(該電気刺激は、被験者の標的筋肉の収縮を促進し、被験者の呼吸努力が減少できるように下顎骨を制御可能に挙上する。また、前記電気刺激は、以下の刺激パラメーターに従って生成される:1mA~4mA、2mA~4mAの電流強度;50Hz~150Hz、好ましくは70Hz~130Hz、さらにより好ましくは90Hz~110Hzの周波数;500μs~1000μs、好ましくは600μs~900μs、より好ましくは700μs~800μsのパルス幅;及び1秒間~20秒間の刺激期間及び/または1秒間~20秒間の休息期間を有するデューティサイクル。
【0232】
本開示の一態様は、被験者のいびきを治療することに関する。いびきの治療は、いびきの強さの減少、例えば、いびきの強さの半分、またはいびきの完全な防止、例えば、いびきの強さの完全な減少と見なし得る。従って、いびきの防止は、いびきの減少と見なしてもよい。いくつかの好ましい実施形態では、上記の被験者の呼吸努力を軽減するための方法は、被験者のいびきを治療するための方法であり得る。本発明者らは、好ましくは咬筋、翼突筋、及び/または側頭筋に経皮的電気刺激を印加して、好ましくは上気道が開放するように被験者の下顎骨を制御可能に挙上することは、被験者のいびきを防止し得るか、少なくとも被験者のいびきの強さを軽減し得ることを発見した。
【0233】
一実施形態では、いびきを治療するための方法は、以下を含み得る:
- 左側の、好ましくは咬筋、翼突筋、及び/または側頭筋の筋運動点から下顎骨の左後角までの範囲の被験者の皮膚の一部を選択し、該選択された皮膚部分に左電極を配置し、また、右側の、好ましくは咬筋、翼突筋、及び/または側頭筋の運動点から下顎骨の右後角までの範囲の被験者の皮膚部分を選択し、該選択された皮膚部分に右電極を配置すること;及び
- 前記左電極から少なくとも1つの左側の、好ましくは咬筋、翼突筋、及び/または側頭筋に、また、前記右電極から少なくとも1つの右側の、好ましくは咬筋、翼突筋、及び/または側頭筋に、経皮的電気刺激を印加すること。
- 前記印加された電気刺激は、刺激された前記左右の筋肉、好ましくは咬筋、翼突筋、及び/または側頭筋の収縮を促進し、上気道が開放され、かついびきが軽減及び/または防止されるように被験者の下顎骨を制御可能に挙上する。
【0234】
前記被験者に、いびきを検出するために構成されたセンサーを提供してもよい。いびき信号は、上述のように、下顎骨活動データから、または被験者に、またはその近くに設けられたマイクロホン等の専用のいびきセンサーによって導出され得る。
【0235】
一実施形態では、前記いびきを治療するための方法は、以下を含み得る:
- 信号処理ユニットによって、前記いびきを示す信号を受信すること;
- 前記信号処理ユニットによって、前記いびきを示す信号を処理すること;
- 前記信号処理ユニットによって、制御信号で刺激器を作動させること(該制御信号は、前記信号処理ユニットによって、前記いびきを示す信号に基づいて生成される);及び
- 前記刺激器によって、好ましくは咬筋、翼突筋、及び/または側頭筋の収縮を促進し、上気道が開放でき、いびきが軽減または防止されるように被験者の下顎骨を制御可能に挙上するのに適したもう1つの刺激パラメーターによって特徴付けられる電気刺激を生成すること。
【0236】
本開示の一態様は、被験者の睡眠中のいびきを治療するための方法に関し、該方法は、以下を含む:
- 被験者の左咬筋、左翼突筋、及び/または左側頭筋を含む少なくとも1つの左標的筋の位置に対応する皮膚部分を選択し、該選択された皮膚部分に、少なくとも2つの導電性要素を備える少なくとも1つの左双極電極を取り付けること(ここで、第1導電性要素は左標的筋の運動点に取り付けられ、第2導電性要素は左標的筋繊維の方向に沿って取り付けられる);
- 被験者の右咬筋、右翼突筋、及び/または右側頭筋を含む少なくとも1つの右標的筋の位置に対応する皮膚部分を選択し、該選択された皮膚部分に、少なくとも2つの導電性要素を備える少なくとも1つの右双極電極を取り付けること(ここで、第1導電性要素は右標的筋の運動点に取り付けられ、第2導電性要素は右標的筋繊維の方向に沿って取り付けられる);及び
- 左右の双極電極の2つの導電性要素の間に二相性の経皮的電気刺激を印加すること(電気刺激は、被験者の標的筋肉の収縮を促進し、いびきが軽減または防止されるように被験者の下顎骨を制御可能に挙上する。また、該電気刺激は、1秒間~20秒間の刺激期間及び/または1秒間~20秒間の休息期間を有するデューティサイクルに従って生成される)。
【0237】
本開示の一態様は、被験者の睡眠中の下顎骨の動きを検出するために構成されたセンサーを備えた被験者の呼吸努力の特徴付けを支援するための方法に関し、該方法は、以下のステップを含む:
- 前記センサーによって、下顎骨の活動を示す信号を出力すること;
- データ分析ユニットによって、前記下顎骨の活動を示す信号を受信すること;
- 前記データ分析ユニットに含まれるメモリユニットによって、N個の下顎骨活動クラスを記憶すること(ここで、Nは1より大きい整数である。また、N個の下顎骨活動クラスのうちの少なくとも1つが睡眠障害呼吸を示す);
ここで、各j番目(1<<N)の下顎骨活動クラスは、回転値のj番目のセットで構成され、回転値の各j番目のセットは、少なくとも1つの下顎骨の回転速度を示し、j番目のクラスに関連付けられ;
- 前記データ分析ユニットに含まれるサンプリング要素によって、サンプリング期間中に下顎骨活動データをサンプリングし、それによって、サンプリングされた下顎骨活動データを取得すること;
- 前記データ分析ユニットによって、前記サンプリングされた下顎骨活動データから複数の下顎骨活動値を導出すること;及び
- 前記データ分析ユニットによって、前記下顎骨活動値を、N個の下顎骨活動クラスのうちの少なくとも1つが睡眠障害呼吸を示すN個の下顎骨活動クラスと照合すること。
【0238】
いくつかの実施形態では、前記N個の下顎骨活動クラスのうちの少なくとも1つが、呼吸努力の増加を特徴とする睡眠障害呼吸を示す。
【0239】
いくつかの実施形態では、前記N個の下顎骨活動クラスのうちの少なくとも1つが、睡眠時呼吸障害を示している。
【0240】
本開示の一態様は、被験者の睡眠中の下顎骨の動きを検出するために構成されたジャイロスコープを備えるセンサーを備えた被験者の呼吸努力の特徴付けを支援するための方法に関し、該方法は、以下のステップを含む:
- 前記センサー、好ましくはジャイロスコープによって、下顎骨の活動を示す信号を出力するステップ;
- データ分析ユニットによって、前記下顎骨の活動を示す信号を受信するステップ;
- 前記データ分析ユニットに含まれるメモリユニットによって、N個の下顎骨活動クラスを記憶するステップ(ここで、Nは1より大きい整数である。また、N個の下顎骨活動クラスのうちの少なくとも1つが睡眠障害呼吸を示す);
ここで、各j番目(1<<N)の下顎骨運動クラスは、回転値のj番目のセットで構成され、回転値の各j番目のセットは、少なくとも1つの下顎骨の回転速度を示し、j番目のクラスに関連付けられ;
- 前記データ分析ユニットに含まれるサンプリング要素によって、サンプリング期間中に下顎骨活動データをサンプリングし、それによって、サンプリングされた下顎骨活動データを取得するステップ;
- 前記データ分析ユニットによって、前記サンプリングされた下顎骨活動データから複数の下顎骨活動値を導出するステップ;及び
- 前記データ分析ユニットによって、前記下顎骨活動値を、N個の下顎骨活動クラスのうちの少なくとも1つが睡眠障害呼吸を示すN個の下顎骨活動クラスと照合するステップ。
【実施例
【0241】
本開示の特性、利点、及び特徴をよりよく説明するために、添付の図面を参照して、いくつかの好ましい実施形態を例として開示する。しかし、本開示の範囲は、以下に記載される例示的な実施例に決して限定されない。
【0242】
実施例1:装着可能な装置の設計
図2を参照すると、本開示の一実施形態による装着可能な装置(10)が示されている。該装着可能な装置(10)は、少なくとも1つの左電極(100)及び少なくとも1つの右電極(図示せず)を備える。各電極(100)は、衣服(200)、具体的には、少なくとも1つの接続ケーブル(150)で襟に接続される。該襟は、前記刺激器及び任意の補助装置(電源等、例えば、該刺激器に電力を供給するように構成されたバッテリパック、及び電源によって生成された刺激を制御するためのコントローラ)を収納し得る。次いで、前記接続ケーブル(150)は、前記電極(100)と前記刺激器との間の電気的な接続を提供する。
【0243】
図3を参照すると、本開示の別の実施形態による装着可能な装置(10)が示されている。該装着可能な装置(10)はまた、少なくとも1つの左電極(100)及び少なくとも1つの右電極(図示せず)を備え、これらは、衣服(200)に、具体的には襟に、該襟から横向きに延びる強固なハウジングによって接続される。前記接続されたハウジングにより、1つまたは複数のケーブルを内部に統合することができる。前記襟は、所定の位置に固定されたままになるように、被験者の首を(軽く)押すように構成されてもよい。さらに、前記襟は、前記電極に、刺激応答を増加させ、かつ/または不快感を減少させ得る圧縮を生じさせるように構成されてもよい。
【0244】
図5を参照すると、本開示の別の実施形態による装着可能な装置(10)が示されている。該装着可能な装置(10)はまた、少なくとも1つの左電極(100)及び少なくとも1つの右電極(図示せず)を備え、これらは、衣服(200)に、具体的にはヘッドバンドに、該ヘッドバンドから下向きに延びる強固なハウジングによって接続される。前記ヘッドバンドは、所定の位置に固定されたままになるように、被験者の頭部を(軽く)押すように構成されてもよい。
【0245】
実施例2:刺激ゾーン
最適な刺激応答及び/または刺激による不快感の軽減を達成するために、前記装着可能な装置の各電極(100)は、選択された被験者の皮膚部分と電気的に接触するように配置されてもよい。好ましい皮膚部分が図1に示され、被験者の咬筋運動点から被験者の下顎骨の後角までの範囲である。
【0246】
表在咬筋(SM) 上の関心領域を特定するために、簡単に触知できる解剖学的ランドマークから1本の直線を測定することができる。図7を参照すると、これらのランドマークを識別することができる。具体的には、図7Aは、基準線、TL、TL、及びMLを有する頭蓋骨の側面図を示す。小さな太い線は、ゴニオン(Go)から咬筋線(ML)の約40%の長さの交点を表す。図7Bはさらに、前側頭筋(AT)及び表在咬筋(SM)の筋肉ならびに解剖学的ランドマーク及び採用された基準線とのそれらの関係を証明する深部顔面平面の側面図を示す。さらに図8を参照すると、被験者の人の顔に同じランドマークが描かれている。具体的には、図8Aは、同じ基準線、TL、TL、及びMLを有する被験者の頭部の側面図を示す。さらに、図8Bは、AT及びSM筋肉上の電極の配置を示す。臨床現場では、表在咬筋 (SM) 筋肉、ゴニオン - 下顎骨の角度 (ゴニアル角) に位置する - 及び頬骨の本体上の電極の最適な配置は、解剖学的参照ランドマークを識別するために触診によって実行することができる。表在咬筋線は、これらの参照ランドマークから、軟部組織にスポットされたゴニオンを結合して、両方とも触診によって識別される頬骨の下部後縁と頬骨弓の間の中間点まで引き出される。
【0247】
この線は、表在咬筋の繊維方向に調整されており、その起始と挿入に一致する。表在咬筋は、頬骨からその長さの1/3から1/2まで伸びる腱層で覆われている。腱領域に電極を配置することは推奨されないため、基準点はゴニオンまたは下顎角(Go)から線の長さの40%で識別される。電極は、前記基準線に沿って配置され、マーク上の配置位置は、この線の40%に対応する。
【0248】
すべての基準点と基準線を設定した後、提案された解剖学的ランドマークについて調整が必要かどうかを確認するために、被験者に歯を食いしばるように求めてもよい。
【0249】
表面電極は、刺激応答を改善するために、筋肉収縮の瞬間に最も顕著な領域の上に、筋繊維に沿って有利に配置される。収縮中に筋肉を触診しながら、電極の位置を確認し、必要な修正を実行することが可能となり得る。家庭での設定では、より簡単なユーザー ガイドの手順に従うことで、推奨刺激ゾーン(S)への電極の最適な配置を実現できる。図9を参照すると、この配置ガイドは、以下のステップを含む方法として説明される:
図9(i)では、下顎角(Go)、好ましくは下顎骨の外側の角を特定する;
図9(ii)では、頬骨弓(Za)、好ましくは目の外側の角を特定する;
図9(iii)では、GoからZaに向かって伸びる筋肉を、好ましくは歯を食いしばってこの筋肉を収縮させることによって、特定する;
図9(iv)では、Goから筋繊維の方向に沿って決定された特定された筋肉の中心に向かう標的刺激ゾーン(S)を特定する;
図9(v)では、前記刺激ゾーン(S)上に少なくとも1つの電極、好ましくは双極電極を配置する。ここで、一方の電極が下顎角(Go)に隣接して配置され、他方の電極が筋線維の方向に沿って決定された特定された筋肉の中心に隣接して配置される。双極電極の一例が図9に示されている。
【0250】
異なる解剖学的ランドマークを特定することによって、同じ標的刺激を特定するために、上記方法の変形を開発できることが理解される。それにもかかわらず、この方法は、前記装着可能な装置の家庭用及び/または臨床用のための特に順守し易いガイドを提示し、従って、本開示の好ましい実施形態を形成する。
【0251】
実施例3:刺激効果
(実施例2で定義された)標的刺激ゾーンにおける電気刺激の実行可能性を評価するために、様々な刺激パラメーターを用いて様々な被験者に対して多数の研究プロトコルが設定された。記録されたデータは、後述する。
【0252】
短期効果
狭いパルス幅及び低い周波数での高電流強度の経皮的電気刺激効力を検証して、筋線維の動員が睡眠障害の発生を防ぐための直接的かつ急性の応答を提供できるかどうかを判断した。
【0253】
終夜刺激のために1人の被験者を選択した。該被験者は、BMIが26.2kg/mの53歳の女性ボランティアであった。睡眠段階は、検査室ポリソムノグラフィーを使用して監視した。気流は、圧力トランスデューサとサーミスタで測定した。
【0254】
電気刺激は、それぞれ筋肉の運動点の上と下顎骨の後角に配置された2つの電極を介して咬筋に印加した。これらの電極は、20mmの電極間距離、14mmの導電領域直径、粘着性湿潤ゲル、及び裏打ちされた泡沫バッキングの双極表面電極から構成されていた。刺激は、40Hzの周波数、7mAの電流強度、250μsのパルス幅、及び5秒間の刺激と5秒間の休息の活性化期間の二相性パルス電流から構成されていた。
【0255】
その結果は、電気刺激が直接的な筋肉応答を引き起こし、即ち、あらゆる睡眠段階を通じて、特にN2段階、良好な気流を維持するのに十分な下顎骨の上昇をもたらすことが示された。従って、印加された電気刺激によって睡眠障害の発生を防止することができた。
【0256】
長期効果
終夜刺激のために2人の被験者を選択した。最初の被験者は、BMIが24.8kg/mの61歳の男性ボランティアであった。2番目の被験者は、BMIが29.8kg/mの38歳の男性ボランティアであった。呼吸事象指数(OAHI-閉塞性無呼吸低呼吸指数)及び睡眠断片化指数(ArI-覚醒指数)は、刺激の1週間後(1週目)と刺激のスイッチを切った後の1週間の後に(2週目)、ベースライン(0週目)で、両方の患者について、検査室ポリソムノグラフィー中に測定した。
【0257】
電気刺激は、それぞれ筋肉の運動点の上と下顎骨の後角に配置された2つの電極を介して咬筋に印加した。これらの電極は、20mmの電極間距離、14mmの導電領域直径、粘着性湿潤ゲル、及び裏打ちされた泡沫バッキングの双極表面電極から構成されていた。刺激は、40Hzの周波数、250μsのパルス幅、5秒間の刺激と5秒間の休息の活性化期間、及びそれぞれ6mAと8mAの電流強度の二相性パルス電流で構成されていた。最初の被験者の結果は、以下の表に示されている。
【0258】
最初の被験者のデータに示されたように、刺激の1週間後(1週目)にOAHIが60.3%減少したことが観察できる。次の週(第2週目)の後、刺激なしでも、ベースライン(0週目)と比較してOAHIが依然として29.3%減少し続けた。
【0259】
2番目の被験者の結果は、以下の表に示されている。
【0260】
2番目の被験者のデータに示されたように、刺激の1週間後(1週目)にOAHIが78.2%減少したことが観察できる。次の週(2週目)の後、刺激なしでも、ベースライン(0週目)と比較してOAHIが依然として26.9%減少し続けた。
【0261】
これらの結果に示されたように、電気刺激が筋肉の再訓練を引き起こし、応答遅延効果をもたらし、連続する刺激セッション全体で刺激の有益な効果を改善し、刺激が終了した後でも効果が持続する。
【0262】
呼吸事象
終夜刺激のために6人の被験者を選択した。呼吸事象指数(OAHI-閉塞性無呼吸低呼吸指数)及び睡眠断片化指数(ArI-覚醒指数)の減少は、ベースライン値と比較して、2週間の刺激後、検査室ポリソムノグラフィー中に測定した。
【0263】
電気刺激は、それぞれ筋肉の運動点の上と下顎骨の後角に配置された2つの電極を介して咬筋に印加した。20mmの電極間距離、14mmの導電領域直径、粘着性湿潤ゲル、及び裏打ちされた泡沫バッキングの双極表面電極を通常の咬合状態で覚醒しているボランティアの顔面に取り付けた。参加者たちを、夜間刺激の休息期間が異なる2つの刺激プロトコルのいずれかに割り当てた(プロトコルA:5秒間オン/5秒間オフ、終夜に休息なし。プロトコルB:5秒間オン/5秒間オフ、終夜に1分間の刺激ごとに1分間休息)。その結果は、以下の表1に示されている。




【0264】
上記表1の結果に示されたように、咬筋に印加される経皮的電気刺激が、呼吸事象の発生と覚醒指数を大幅に減少するのに効果的である。該呼吸事象の発生と覚醒指数の減少は、各1分間の刺激に1分間の休息を行わなかった群にとってより重要であった。
【0265】
実施例4:刺激パラメーター
標的刺激ゾーンにおける電気刺激の実行は、様々な刺激パラメーターと電極セットアップを使用して、様々な被験者で評価した。その結果は、本実施例4を通して議論する。
【0266】
電極タイプ
双極表面電極を通常の咬合状態で覚醒しているボランティアの顔面に取り付けた。電気刺激は、40Hzの周波数、250μsの幅、5秒間の刺激と5秒間の休息の活性化期間の二相性パルス電流として印加された。顎の閉鎖力は、咬合に実行された圧力センサー(FUTEK先進センサー技術株式会社、米国カリフォルニア州アーバイン)を使用して評価した。電極を実施例2に記載の好ましい方法に従って咬筋及び側頭筋に配置した。その結果は、以下の表2に示されている。




【0267】
上記表2の結果に示されたように、20mmの電極間距離、14mmの導電領域直径、粘着性湿潤ゲル、及び裏打ちされた泡沫バッキングの、咬筋に取り付けられた双極表面電極は、最高レベルの快適性報告値(視覚スケールで10点中9点)を提供しながら、強力な顎の閉鎖力(42Nm)も刺激する。咬筋と側頭筋に取り付けられた同じ双極表面電極についても、同様の結果が得られた。
【0268】
電極の位置決め
20mmの電極間距離、14mmの導電領域直径、粘着性湿潤ゲル、及び裏打ちされた泡沫バッキングの双極表面電極を通常の咬合状態で覚醒しているボランティアの顔面に取り付けた。電気刺激は、40Hzの周波数、250μsの幅、5秒間の刺激と5秒間の休息の活性化期間の二相性パルス電流として印加された。顎の閉鎖力は、咬合に実行された圧力センサー(FUTEK先進センサー技術株式会社、米国カリフォルニア州アーバイン)を使用して評価した。その結果は、以下の表3に示されている。


【0269】
上記表3の結果に示されたように、実施例2に記載の方法に従って、咬筋上の標的刺激ゾーン、及び任意選択で側頭筋上の標的刺激ゾーンに取り付けられた双極表面電極は、最高レベルの快適性報告値(視覚的スケールで10点中9点)を提供しながら、強力な顎の閉鎖力(42Nm)も刺激する。
【0270】
刺激パラメーター
20mmの電極間距離、14mmの導電領域直径、粘着性湿潤ゲル、及び裏打ちされた泡沫バッキングの双極表面電極を通常の咬合状態で覚醒しているボランティアの顔面に取り付けた。該双極表面電極を実施例2に記載の方法に従って咬筋上の標的刺激ゾーンに取り付けた。電気刺激は、5秒間の刺激と5秒間の休息の活性化期間の二相性パルス電流として印加された。顎の閉鎖力は、咬合に実行された圧力センサー(FUTEK先進センサー技術株式会社、米国カリフォルニア州アーバイン)を使用して評価した。電極を実施例2に記載の好ましい方法に従って咬筋及び側頭筋に配置した。その結果は、以下の表4に示されている。
【0271】
上記表4の結果に示されたように、周波数40Hz及びパルス幅250μsの電気刺激は、最高レベルの快適性報告値(視覚スケールで10点中9点) を提供しながら、強力な顎の閉鎖力(42Nm)も刺激する。
【0272】
理解されるように、本実施例3の表2~4に示された実施形態は、本開示の装着可能な装置の好ましい実施形態を形成する。
【0273】
実施例5:感知ユニットのフィードバック
本開示の装着可能な装置(10)は、被験者の下顎の下顎骨運動を記録するように構成された感知ユニットを備えてもよい。例えば、前記感知ユニットは、少なくとも1つの電極(100)に取り付けられたジャイロスコープ及び/または加速度計、好ましくは少なくとも1つの電極(100)に取り付けられたジャイロスコープ及び/または加速度計の両方を備えてもよい。前記下顎骨運動は、被験者の下顎骨の位置のあらゆる変化、または被験者の下顎骨のあらゆる回転または変位を指し得る。前記下顎骨運動を感知ユニットによって下顎骨活動データとして記録してもよい。
【0274】
また、前記感知ユニットはまた、被験者の呼吸活動または睡眠活動に関連するデータを記録するように構成されてもよい。前記呼吸活動データは、呼吸速度や強度等、被験者の呼吸に関連する任意のデータを指し得る。前記呼吸活動データは、前記下顎骨活動データから導出してもよく、または前記下顎骨活動データと組み合わせてもよい。同様に、前記睡眠活動データは、睡眠関連の動き等、被験者の睡眠に関連する任意のデータを指し得る。前記睡眠活動データも、前記下顎骨活動データから導出してもよく、または前記下顎骨活動データと組み合わせてもよい。前記呼吸活動データは、前記睡眠活動データと組み合わせてもよい。
【0275】
前記下顎骨活動データ、呼吸活動データ、及び睡眠活動データを分析して、前記刺激器にフィードバックループを提供し、刺激効力を改善し、欠陥の発生を減らすことができる。本開示の好ましい実施形態によるフィードバックループの例示的な動作原理が図11に示されている。以下に、本発明に特に適していることが判明したいくつかの例示的な実施形態を提示する。しかし、当業者には明らかなように、本開示に記載された様々な実施形態は、本開示から任意の適切な方法で組み合わせ得ることが理解できる。
【0276】
特定の実施形態では、前記下顎骨活動データを分析して、被験者の下顎骨の挙上及び安定化を含み得る刺激応答を測定し、該被験者の下顎骨の挙上及び安定化を制御するために、1つまたは複数の刺激パラメーターを調整するように前記刺激器に指示してもよい。また、これを用いて、筋肉疲労の発生を測定してもよい。
【0277】
特定の実施形態では、前記呼吸活動データを分析して、呼吸努力の増加を特徴とする睡眠障害呼吸を測定し、1つまたは複数の刺激パラメーターを調整して該呼吸努力を軽減するように前記刺激器に指示してもよい。
【0278】
特定の実施形態では、前記呼吸活動データを分析して、睡眠時呼吸障害を測定し、1つまたは複数の刺激パラメーターを調整して、睡眠時呼吸障害の強度を減少するか、さらなる睡眠時呼吸障害の発生を防止するように前記刺激器に指示してもよい。
【0279】
特定の実施形態では、前記睡眠活動データを分析して、覚醒状態及び睡眠状態等の状態を測定してもよい。被験者が入眠したときに電気刺激を開始し、被験者が覚醒したときに電気刺激を終了するように前記刺激器に指示してもよい。
【0280】
特定の実施形態では、前記睡眠活動データを分析して、浅い睡眠(N1)段階、浅い睡眠(N2)段階、REM段階、及び/または深い睡眠(N3)段階を含み得る睡眠段階を測定してもよい。被験者が浅い睡眠(N1)段階、浅い睡眠(N2)段階、及び/またはREM段階に入ったときに電気刺激を開始し、被験者が深い睡眠(N3)段階に入ったときに電気刺激を終了するように前記刺激器に指示されてもよい。
【0281】
実施例6:睡眠段階の検出
睡眠段階測定モジュールの実行可能性を評価するために、以下のパラメーターに従って研究プロトコルを設定した。30人の参加者から下顎骨運動データ(MM)を収集した。各参加者には「顎センサー」及び「頬センサー」を提供した。前記頬センサーを、本開示の実施例2で論じた好ましい標的刺激ゾーン、即ち電極と同じ位置に配置した。本研究の目的は、前記顎センサー及び頬センサーから取得したMMデータに基づいて、睡眠の質に関する分析の違いを特定することであった。本明細書で開示される装着可能な装置における精確な睡眠段階測定モジュールを実行する実現可能性は、これらの結果に基づいて評価することができる。
【0282】
主な目的
- 十分な性能を用いて、頬由来のMMから睡眠状態/覚醒状態を検出すること。
- 前記顎センサーから、頬のMMデータに、睡眠/覚醒アルゴリズム分析を効率的に近似できる睡眠/覚醒検出ルールの決定すること。
【0283】
仮説
- 頬のMMセンサーと顎のMMセンサーの間の総睡眠時間(TST)の差は、スコアラー間の変動性から予想される値(約85%)を超えない。
- 頬由来のMM特徴に単純な検出ルールを適用すると、75%を超える精度で睡眠状態と覚醒状態を検出できるはずである。
【0284】
方法
前向き研究では、同意を得た成人患者について、2つの装置を用いた同時下顎骨運動(MM)記録で、一夜の検査室ポリソムノグラフィー(PSG)が行われた。3か月間にわたって、睡眠実験室で日常的に練習を受けた被験者を登録し、30人の参加者からデータサンプルを得た。
【0285】
研究装置は、睡眠技術者が参加者の顎(下唇溝とポゴニオンの間)と頬(咬筋の表面)にそれぞれ取り付けた2つの硬貨の大きさをした装置で構成された。
【0286】
結果と処理
選択された一人の参加者の、顎センサーで記録されたMMデータが、図12に示され、対応する頬センサーで記録されたMMデータが図13に示されている。これらの図は、夜の時間(x軸)に対する睡眠状態と閉塞性呼吸事象の発生を示している。前記センサーによって記録された覚醒状態と睡眠状態に基づいて、前記MMデータを3つの部分に分割した。閉塞性呼吸事象の発生は、前記MMデータで示され、差は、アルゴリズムのキャリブレーションに起因し得る。
【0287】
収集されたMMデータは、夜の終わりにクラウドベースのインフラストラクチャに自動的に転送され、専用の機械学習アルゴリズムでデータ分析が行われた。関連する非冗長特徴に基づいてMM生信号の連続する30秒間のエポックを覚醒または睡眠として正確に識別するために、前記アルゴリズムは、前記頬の装置からの時系列データを分析した。各30秒間のエポックは、ジャイロスコープ標準から抽出された11の特徴によって要約された。
a. 標準偏差
b. 隣接する30秒間のウィンドウにおける最小値と最小値の差
c. 隣接する30秒間のウィンドウにおける最大値と最大値の差
d. 隣接する30秒間のウィンドウにおける中央値と中央値の差
e. 隣接する30秒間のウィンドウにおける第1四分位数とQ1値の差
f. 隣接する30秒間のウィンドウにおける第3四分位数とQ3値の差
【0288】
該研究の目的のために、睡眠/覚醒の変化により敏感なジャイロスコープのデータを選択し、加速度計のデータを考慮しなかった。正規化された柱状図を作成し、睡眠と覚醒の両方におけるこれらの特徴の分布を調べた。
【0289】
アルゴリズム由来の睡眠/覚醒ラベルを前記顎センサーから抽出した。関連する特徴を対応するMM生信号の系列から抽出し、前記アルゴリズムの入力データとして使用し、それらが覚醒状態または睡眠状態に関係するかどうかを測定した。
【0290】
次に、頬由来のMM特徴を使用して、顎由来の睡眠/覚醒ラベルを最適に分類した。該調査により、ジャイロスコープによって記録されたMMデータの標準偏差(SD)と最大値(MAX)という、最も識別力の高い2つの特徴が選択された。処理されたデータは、図14~17に示されている。具体的には、図14は、睡眠(明)状態と覚醒(暗)状態の両方のSD値の頻度分布を示している。図15は、睡眠状態及び覚醒状態を検出するためのすべての可能なSD値にわたる感度/特異性を示している。図16は、睡眠(明)状態と覚醒(暗)状態の両方のMAX値の頻度分布を示している。最後に、図17は、睡眠状態と覚醒状態を検出するためのすべての可能なMAX値にわたる感度/特異性を示している。
【0291】
データ分析
前記データ分析アルゴリズムは、感度/特異性の値と処理された頬由来のMM特徴を考慮して、睡眠状態と覚醒状態を自動に検出するために構成されてもよい。また、睡眠状態/覚醒状態の検出を最適化するためのカットオフは、一般的に維持することも(即ち、カットオフをすべて人にわたって同じに維持する。図18)、または個別化することも(即ち、カットオフを個人の睡眠プロファイルに合わせて調整する。図22)できる。カットオフ値は、総睡眠時間 (TST)、即ち、計画された睡眠エピソード中に個人が実際に睡眠に費やした時間に影響を与える。次のパラメーターは、顎のTSTデータ値を頬のTSTデータ値、頬のSD値、及び頬のMAX値と比較することによって測定することができる:Diff_TSTは、「顎データ」と「頬データ」間の%差を示し、Diff_TST1は、「顎データ」と「頬SD」間の%差を示し、また、Diff_TST2 は、「顎データ」と「頬MAX」間の%差を示す。該データ分析アルゴリズムは、本開示の睡眠検出モジュールの構成として実行されてもよい。
【0292】
前記データ分析アルゴリズムには、次の3つの異なる実行が考えられる:
- 覚醒状態の検出:前記データ分析アルゴリズムは、感度を0.9に限定し、特異性を最大化することにより、覚醒状態を最適に検出するように構成されてもよい。該構成は、例えば、覚醒状態及び/または浅い睡眠段階での刺激を防止することにより、患者の快適性を最大化し得る。しかし、睡眠状態でのエピソードの発生が、誤って覚醒として分類され、刺激を終了することがある(それによって刺激効率が低下する)。
- 平衡された覚醒状態/睡眠状態の検出:前記データ分析アルゴリズムは、特異性と感度の平衡を実行することにより、覚醒状態と睡眠状態の平衡された検出のために構成されてもよい。該構成は、被験体の十分な快適性に対応しながら、十分な長さの刺激も提供することを目的としている。
- 睡眠状態の検出:前記データ分析アルゴリズムは、特異性を0.9に限定し、感度を最大化することにより、睡眠状態を最適に検出するように構成されてもよい。該構成は、例えば、呼吸エピソードの発生を防止することにより、刺激効率を最大化し得る。しかし、覚醒エピソードが、誤って睡眠として分類され、刺激を継続することがある(それによって被験者の快適性が低下する)。
【0293】
モデル1 - 固定されたカットオフ
第1モデルでは、睡眠状態/覚醒状態の検出を最適化するためのカットオフが、個人差に関係なく選択されている。単一の最適なカットオフがすべての患者に適用される。該カットオフ構成パラメーターは、図18に示されている。
【0294】
図19~21を参照してカットオフデータの選択について説明する。具体的には、図19は、50%の被験者では総睡眠時間(TST)に45%の差及び4時間未満の刺激期間をもたらした、覚醒状態を検出するために構成されたデータ分析アルゴリズムの表を示す。図20は、6.5%の被験者ではTSTに約15%の差及び4時間未満の刺激期間をもたらした、平衡された覚醒状態/睡眠状態を検出するために構成されたデータ分析アルゴリズムの表を示す。図21は、0%の被験者ではTSTに約7%の差及び4時間未満の刺激期間をもたらした、睡眠状態を検出するために構成されたデータ分析アルゴリズムの表を示す。
【0295】
モデル2 - 個別化されたカットオフ
第2モデルでは、睡眠状態/覚醒状態の検出を最適化するためのカットオフが各被験者ごとに個別に選択される。そのため、睡眠/覚醒の検出は、彼ら各自の睡眠プロファイルに合わせて個別化される。被験者ごとに異なる最適なカットオフが適用される。該カットオフ構成パラメーターは、図22に示されている。
【0296】
図23~25を参照してカットオフデータの選択について説明する。具体的には、図23は、43.5%の被験者では総睡眠時間(TST)に約44%の差及び4時間未満の刺激期間をもたらした覚醒状態を検出するために構成されたデータ分析アルゴリズムの表を示す。図24は、0%の被験者ではTSTに約15%の差及び4時間未満の刺激期間をもたらした平衡された覚醒状態/睡眠状態を検出するために構成されたデータ分析アルゴリズムの表を示す。図25は、0%の被験者ではTSTに約4.5%の差及び4時間未満の刺激期間をもたらした睡眠状態を検出するために構成されたデータ分析アルゴリズムの表を示す。
【0297】
結論
上記の結果に基づいて、睡眠を検出するための睡眠/覚醒検出カットオフの個別化された最適化は、睡眠と覚醒の両方の識別に関してより良い結果を提供し得るようである。この手順により、総睡眠時間(TST)のばらつきが、参照顎センサーのTSTの4.5%よりも低くなる。ブランド-アルトマン分析では、この差の分布が比較的密着し、系統的な偏りが0に近いことが明らかになった。
【0298】
比較のために、該分析は、次のペア変数の3つのブランド-アルトマングラフを示す:
- 図26は、顎センサーデータと頬センサーデータとの比較を示す。
- 図27は、頬センサーデータの標準偏差(SD)に基づく、顎センサーデータと睡眠/覚醒検出ルールとの比較を示す。
- 図28は、頬センサーデータの最大値(MAX)に基づく、顎センサーデータと睡眠/覚醒検出ルールとの比較を示す。
【0299】
全体として、これらのデータは、前記装着可能な装置に組み込まれ、刺激ゾーンの近くに取り付けられたMM記録装置を使用して、睡眠段階/覚醒段階を検出できることを示唆している。前記装置の主な目的は、患者が入眠するときに刺激が開始され、患者が覚醒するときに刺激が終了されるように前記刺激器を積極的に操縦するために、睡眠段階と覚醒段階を検出することである。
【0300】
考察
アルゴリズム解析の計算の複雑さを軽減するために、信号の30秒エポックごとにMM信号から単純な特徴 (標準偏差、最大値、最小値、平均値、中央値等) を抽出し、単純な式を適用して、頬由来のMM信号を、参照の顎由来のMM信号によって定義された覚醒ラベルと睡眠ラベルに最適に分類することが想定されていた。
【0301】
標準偏差及び最大値が、睡眠ラベル/覚醒ラベルを検出するための最も識別力が高いようであった。検出閾値を最適化するには、次の3つのシナリオが考えられる:
1. 覚醒検出の最大化及び一部の睡眠エピソードを静かな覚醒としての誤検出(刺激は、患者が明らかに睡眠中であるときにのみ開始されるため、治療中に時間枠が抑制される)。該シナリオでは、覚醒時の刺激時間を最小限に抑えることで快適性を優先する。
2. 覚醒と睡眠の平衡された検出。これにより、ほとんどの刺激が真の睡眠に制限され、刺激が睡眠期間の大部分にわたって持続する。
3. 睡眠検出の最大化及び静かな覚醒を睡眠としての誤検出(患者が静かに覚醒するときに刺激が開始され得る。これにより、覚醒から睡眠への移行が中断される)。該シナリオは、刺激時間を最大化することで治療効果を優先する。
【0302】
考察されたデータを考慮すると、次の理由から3番目のシナリオ(睡眠の最適化)が好ましいと思われる:
頬のMMセンサーと顎のMMセンサーの間のTSTの差は、スコアラー間の変動性から予想される値(約85%)よりも大きくない。
頬由来のMM特徴に単純な検出ルールを適用すると、当初の仮説どおり、75%を超える精度で睡眠状態と覚醒状態を検出できた。
シナリオ3では、0%の被験者でTSTの差が約4.5%になり、刺激期間が4時間未満になる(臨床では、OSAに毎日4時間の治療が推奨されている)。
【0303】
実行
これらのデータを考慮して、装着可能な装置の機能に実行するために、次の推奨事項を策定できる:
1. 刺激器には、起動するための2つの異なるモードを有し得る:ユーザーがいつ刺激を開始するかを決定できる手動モード及びユーザーのMMに応じて刺激を開始する知的モードである。
2. 手動モードは完全にプログラム可能である:
a. ユーザーは、刺激を直接に開始することを決定できる。
b. ユーザーは、刺激を遅らせて開始することを決定できる(例えば、刺激は初期化の20分間後に開始される)。
c. ユーザーは、最適な電流強度に到達するために漸進的なランプで刺激を開始することを決定できる。
3. 知的モードは次のように機能する:
a. MM信号は、最初の意図で30秒間のエポックによって処理される。この時間枠はプログラム可能である。
b. 30秒間のエポックから様々な特徴が抽出される。該特徴は、プログラム可能である。標準偏差と最大値は、最初の意図で抽出される。
c. 前記30秒間のエポックは、プログラム可能な間隔でオーバーラップし、ユーザーが刺激が停止するのに30秒間待つ必要がないように、連続してはならない。該30秒間のエポックは、最初の意図として毎秒更新される。
d. 知的刺激モードは、選択されたシナリオ(即ち、最適な睡眠検出)の上記のレポートにおいて、最も多くの睡眠/覚醒識別値を有する、固定の標準偏差及び最大値の閾値で実行される。
前記選択された閾値は、次のとおりである:
- ジャイロスコープ標準の標準偏差が1.17を超える場合、覚醒が検出される。
- ジャイロスコープ標準の最大値が14.35を超える場合、覚醒が検出される。
e. 知的刺激モードで実行された事前定義された睡眠/覚醒の閾値は、プログラム可能であり、患者ごとに個別化される。最初の刺激を行う夜に基づいてこれらの閾値を変更し、任意の特定ユーザーの睡眠または覚醒の検出を最適化する。最初の夜に、固定のパラメーターを用いて睡眠/覚醒を識別し、各患者に適応したカットオフポイントを抽出することが可能である。
4. 知的刺激モードもプログラム可能である:
a. ユーザーは、知的な刺激を直接に開始することを決定できる (即ち、検出ルールによる睡眠/覚醒検出は、初期化の直後に開始される)。
b. ユーザーは、知的刺激を遅らせて開始することを決定できる(即ち、検出ルールによる睡眠/覚醒検出は、初期化から間後に開始される)。
c. ユーザーは、最適な電流強度に到達するために漸進的なランプで知的刺激を開始することを決定できる(即ち、検出ルールによる睡眠/覚醒検出は開始後にプログラム可能な遅延(分単位)の後に開始され、電流は最適な強度まで漸進的に増加する)。
5. 両方の起動モードでの覚醒に続いて、プログラム可能な遅延(分単位)と覚醒の不検出の後に刺激が再開される。
【0304】
理解されるように、本実施例6に示される実施形態は、本開示の装着可能な装置の好ましい実施形態を形成する。

図1
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