IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住友ベークライト株式会社の特許一覧 ▶ エス・アンド・ジー・バイオテック・インコーポレイテッドの特許一覧

<>
  • 特許-ステント 図1
  • 特許-ステント 図2
  • 特許-ステント 図3
  • 特許-ステント 図4
  • 特許-ステント 図5
  • 特許-ステント 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】ステント
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/90 20130101AFI20240305BHJP
   A61F 2/04 20130101ALI20240305BHJP
【FI】
A61F2/90
A61F2/04
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019136843
(22)【出願日】2019-07-25
(65)【公開番号】P2021019709
(43)【公開日】2021-02-18
【審査請求日】2022-05-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】516375126
【氏名又は名称】エス・アンド・ジー・バイオテック・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】S&G BIOTECH,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100137589
【弁理士】
【氏名又は名称】右田 俊介
(72)【発明者】
【氏名】カン・ソングォン
(72)【発明者】
【氏名】小林 真
(72)【発明者】
【氏名】山辺 悦朗
(72)【発明者】
【氏名】福島 寛満
(72)【発明者】
【氏名】片山 貴博
【審査官】川上 佳
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-021504(JP,A)
【文献】特開2017-070406(JP,A)
【文献】特表2016-508432(JP,A)
【文献】特開2005-160708(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第0941714(EP,A1)
【文献】特開平9-168597(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/90
A61F 2/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤによって構成されてカバーで被覆されたメッシュ構造のステント本体を有する長尺のステントであって、
前記ワイヤは、直進部と屈曲部とを有して、前記ステント本体の周回方向に延在して、前記ステントの軸心方向において並列する複数の段を有し、
複数の段のそれぞれの前記ワイヤの部位は、
直進と屈曲を繰り返してジクザグに前記軸心方向に振れており、
隣接する段との間において、前記軸心方向に振れた先でそれぞれの前記屈曲部同士が絡んでおり、
前記ステント本体は、
少なくとも一端部に設けられて、一端に向かうにつれて拡径している形状のフレア部と、
前記一端部側にある前記フレア部に向かうにつれて縮径している形状のテーパ部と、
を備え、
前記メッシュ構造は、複数の網目を有して構成されており、
前記フレア部において、軸心方向に複数段に亘って前記網目が設けられており、前記一端側の前記網目が前記一端側とは逆側にある基端側の前記網目よりも大きいことを特徴とするステント。
【請求項2】
前記ワイヤは、前記ステント本体の軸心方向に隣接するワイヤの部位によって閉塞領域である複数のループ部を形成しており、
前記ループ部は、前記ステント本体の周回方向に複数設けられており、
前記フレア部における前記一端側において、前記ステント本体の周回方向に隣接する前記ループ部の間に、前記カバーが非形成である非カバー部が設けられている請求項1に記載のステント。
【請求項3】
前記非カバー部は、前記フレア部の全体に設けられている請求項2に記載のステント。
【請求項4】
前記非カバー部は、前記フレア部と、前記テーパ部との間にある境界部に至るまで設けられている請求項3に記載のステント。
【請求項5】
前記ステント本体には紐が取り付けられており、
該紐は、前記フレア部に一部を固定されて、前記フレア部において、前記ワイヤの外面側と内面側とを交互に行き来しつつ周回して、外部に延在している請求項1から4のいずれか一項に記載のステント。
【請求項6】
前記ワイヤは、前記ステント本体の軸心方向に隣接するワイヤとによって閉塞領域である複数のループ部を形成しており、
前記ループ部は、前記ステント本体の周回方向に複数設けられており、
前記フレア部における一端側において、前記ステント本体の周回方向に隣接する前記ループ部の間に、前記カバーが非形成である非カバー部が設けられており、
前記紐は、前記フレア部の軸心方向を基準とする位置関係において前記非カバー部と重なる位置にあり、前記フレア部を周回して外部に延在している請求項5に記載のステント。
【請求項7】
前記ステント本体には、径方向内側に窪んだ凹溝が設けられており、
前記凹溝は、前記フレア部と前記テーパ部とに跨るように延在している請求項1から6のいずれか一項に記載のステント。
【請求項8】
記ステント本体における前記フレア部と前記テーパ部との間にある境界部には、前記直進部が配設されている請求項1から7のいずれか一項に記載のステント。
【請求項9】
前記フレア部の少なくとも一部における前記網目の大きさは、前記ステント本体における他の部位における前記網目の大きさよりも大きい請求項1から8のいずれか一項に記載のステント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体腔内に留置可能なステントに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から癌等によって閉塞した消化管(食道、胃十二指腸、大腸、胆管等)の治療に、ステントを留置して消化管の閉塞を解消する手技が行われている。
このような手技は、開腹手術の適用が困難な末期の患者に実施するケースが多く、内視鏡及びX線照射器具等を用いてステントを留置できるため、身体への負担が大きくない。
【0003】
例えば、特許文献1には、狭窄血管の拡張処置のみならず、同時並行的に動脈瘤等の瘤成長回避処置等が可能なカバードステント(以下、単にステントという。)が開示されている。
具体的には、特許文献1に開示されたステントは、生体吸収性繊維を用いた編み目状組織の筒体により形成され、筒体の径が拡縮可能なステント本体と、ステント本体の筒体の内側表面に、筒体に螺旋状に巻き付けられたカバー(同文献には、カバー材と記載。)とを含んで構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-175776号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、同文献に係るカバーを備えるステントにおいては、留置対象部位である部位が、網目状組織に食い込むことをカバーが阻害することにより、ステントを所望の位置に好適に留置することについて、改善の余地があった。
例えば、膵癌による胆管下部狭窄に対して、十二指腸乳頭部に跨がるように留置したときに、十二指腸乳頭部に所定の部位が当接する状態を保持可能なステントが求められていた。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、ステントの位置ずれを制限しつつ、胆汁や膵液等の体液の流路を塞がないようにすることが可能なステントを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、ワイヤによって構成されてカバーで被覆されたメッシュ構造のステント本体を有する長尺のステントであって、前記ワイヤは、直進部と屈曲部とを有して、前記ステント本体の周回方向に延在して、前記ステントの軸心方向において並列する複数の段を有し、複数の段のそれぞれの前記ワイヤの部位は、直進と屈曲を繰り返してジクザグに前記軸心方向に振れており、隣接する段との間において、前記軸心方向に振れた先でそれぞれの前記屈曲部同士が絡んでおり、前記ステント本体は、少なくとも一端部に設けられて、一端に向かうにつれて拡径している形状のフレア部と、前記一端部側にある前記フレア部に向かうにつれて縮径している形状のテーパ部と、を備え、前記メッシュ構造は、複数の網目を有して構成されており、前記フレア部において、軸心方向に複数段に亘って前記網目が設けられており、前記一端側の前記網目が前記一端側とは逆側にある基端側の前記網目よりも大きいことを特徴とするステントが提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、フレア部とテーパ部が設けられていることで、ステントの位置ずれを制限しつつ、胆汁や膵液等の体液の流路を塞がないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態に係るステントの全体側面図である。
図2図1のII-II断面におけるステントの断面図である。
図3】カバーを透過させてワイヤを拡大して示す図であり、図1のIII部を示す図である。
図4】第1変形例に係るステントの近位端部を模式的に示す側面図である。
図5】紐が取り付けられたステントの近位端部を模式的に示す側面図である。
図6】第2変形例に係るステントの近位端部を模式的に示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
なお、以下に説明する実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。すなわち、以下に説明する部材の形状、寸法、配置等については、本発明の趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
また、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。なお、各図においては、各部の特徴的な構成の違いが明確となるように寸法比率を調整しているため、実際の寸法比率とは異なる場合がある。
【0011】
<概要>
はじめに、本実施形態に係るステント1の概要について、図1を主に参照して説明する。図1は、本発明の実施形態に係るステント1の全体側面図である。
本実施形態に係るステント1は、ワイヤ6によって構成されてカバー3で被覆されたメッシュ構造のステント本体2を有する長尺のステント1である。
ステント本体2は、少なくとも一端部に設けられて、一端に向かうにつれて拡径している形状のフレア部22と、一端部側(近位端部側)にあるフレア部22に向かうにつれて縮径している形状のテーパ部21と、を備えることを特徴とする。
【0012】
カバー3で被覆されたカバードタイプのステント1は、生体組織に食い込むベアタイプのステントと比較して、留置位置から動きやすい。
しかしながら、上記構成のように、フレア部22とテーパ部21が設けられていることで、留置部位との関係でステント1の動作を制限しつつ、胆汁や膵液等の体液の流路を塞がないようにすることができる。
【0013】
例えば、十二指腸乳頭部にフレア部22を引っ掛けるように、ステント1を配設したときに、テーパ部21があることで、胆汁や膵液等の流路を塞がないようすることができる。
なお、カバー3について「被覆」とは、被覆対象であるステント本体2の内面又は外面を覆っているものに限定されるものではなく、少なくとも一部を覆っていればよい。また、「被覆」には、ステント本体2がカバー3に埋設されているようなものも含まれ、カバー3が筒状体としてステント1を構成することを被覆という。
また、フレア部22は、ステント1の最も一端側に設けられるものに限定されない。例えば、フレア部22よりも一端側に、後述するストレート部20や他のテーパ部21が設けられていてもよい。
【0014】
<構成>
次に、ステント1の各部の構成について、図1に加えて、図2及び図3を主に参照して説明する。図2は、図1のII-II断面におけるステント1の断面図である。図3は、カバー3を透過させてワイヤ6を拡大して示す図であり、図1のIII部を示す図である。
本実施形態に係るステント本体2は、上記のテーパ部21及びフレア部22の他、テーパ部21よりも近位端部側(一端部側)にあるストレート部20を備える。
【0015】
本実施形態に係るステント本体2の軸心方向の長さに関して、フレア部22の長さは、テーパ部21の長さよりも短く、テーパ部21の長さは、ストレート部20の長さよりも短く形成されている。
しかしながら、本発明はこのような構成に限定されず、例えばテーパ部21の長さが、ストレート部20の長さに対して、同じか長く形成されていてもよい。つまり、例えばテーパ部21の長さが30mmであるときに、ストレート部20の長さが20mm、30mm又は40mmであってもよい。
テーパ部21は、ステント本体2の中央よりもフレア部22側(換言すると、ステント本体2の近位端部側のうち、フレア部22よりも遠位側)に設けられている。
【0016】
ストレート部20は、テーパ部21の遠位側に接続されており、ステント1の他端(遠位端)まで延在している。
ストレート部20においては、ワイヤ6及び樹脂膜であるカバー3は、長手方向における径方向の長さの変化はなく、ストレート部20は直管状に形成されている。
【0017】
なお、テーパ部21とフレア部22とは、本実施形態において、ステント1の軸心方向に隣接して形成されている。このように隣接して形成されていることで、直管状の部位を挟んで形成されているものと比較して、その境界部2bの外側の角度を鋭角にすることができる。このため、留置対象である部位、例えば十二指腸乳頭部の壁面に、境界部2bの外面を引っ掛けやすくなるため好適である。
しかし、このような構成に限定されず、テーパ部21とフレア部22とが離間して配置され、テーパ部21とフレア部22との間に直管状の部位等が形成されていてもよい。
本実施形態に係るカバー3は、例えば、シリコーンゴムにより形成されており、ディッピングによってステント本体2を被覆するように形成されている。
【0018】
ステント本体2には、図1及び図2に示すように、径方向内側に窪んだ凹溝2aが設けられている。凹溝2aは、断面U字状に形成されており、図1に示すように、フレア部22とテーパ部21とに跨るようにステント1の軸心方向に線状に延在している。
上記構成によれば、フレア部22とテーパ部21とに跨るように凹溝2aが形成されていることで、胆汁や膵液等の体液が、フレア部22とテーパ部21とに跨って設けられた凹溝2aを通るようにして、その流路を塞がないようにすることができる。
【0019】
なお、凹溝2aは、フレア部22とテーパ部21とに跨るように延在していればよく、ステント1の軸心方向に延在するものに限定されず、例えば、軸心方向に対して傾斜して延在していてもよい。その他、凹溝2aは、ステント1の周回方向に複数設けられていてもよく、線状ではなく、ブロック状に形成されていてもよい。
【0020】
ワイヤ6は、図1に示すように、直進部6aと屈曲部6bとを有して、ステント本体2の周回方向に延在して、ステント1の軸心方向において並列する複数の段を有する。
複数の段のそれぞれのワイヤ6の部位は、直進と屈曲を繰り返してジクザグに軸心方向に振れている。複数の段のそれぞれのワイヤ6の部位は、隣接する段との間において、軸心方向に振れた先でそれぞれの屈曲部6b同士が絡んでいる。
換言すると、複数段のそれぞれのワイヤ6は、隣接するワイヤ6と絡み合うことで、近位端側(又は遠位端側)に対して近接/離間を交互に繰り返すように振れるように延在しつつ、ステント1の周回方向に延在している。
特に、ステント本体2におけるフレア部22とテーパ部21との間にあり、くびれ部分である境界部2bには、直進部6aが配設されている。
【0021】
本実施形態に係るワイヤ6は、周回方向に対して対称な2つの傾斜角度で複数本がメッシュ状に交差するように配設されている。図1、後述する図4図5及び図6においては、複数のワイヤ6が単純交差しているように簡略化して示している。
しかし、実際には、図3に示すように、軸心方向に振れながら、振れた先で屈曲部6b同士が絡み合い、周回方向に延在して、一部が軸心方向に段を変えるように大きく延在して螺旋状に巻回されているものである。そして、メッシュ構造は、隣接するワイヤ6同士が絡み合って形成されるものである。
【0022】
上記構成によれば、フレア部22とテーパ部21との境界部2bに、ワイヤ6の直進部6aが配設されていることで、隣接するワイヤ6同士が絡み合う屈曲部6bが境界部2bに配設されているものと比較して、境界部2bの変形が抑制される。例えば、境界部2bが不図示の十二指腸乳頭部に配設されたときに、十二指腸乳頭部から加わる荷重による境界部2bの変形が抑制される。このため、十二指腸乳頭部からステント1が抜け出ることを抑制することができる。
【0023】
メッシュ構造は、複数の網目(ループ部20a、21a、22a)を有して構成されている。フレア部22の少なくとも一部における網目(ループ部22a)の大きさは、ステント本体2における他の部位(ストレート部20及びテーパ部21)における網目(ループ部20a、21a)の大きさよりも大きい。
上記構成によれば、フレア部22のループ部22aが大きいことで、フレア部22におけるワイヤ6の密度が小さくなり剛性が低くなるため、フレア部22を含むステント1を不図示のデリバリーシステムに装填しやすくなる。さらに、フレア部22を展開させる際に要する、デリバリーシステムを介して加える力を低減することができる。
【0024】
ここで、「網目」とは、ステント1を径方向に見たときに、近接するワイヤ6同士によって画定される閉塞領域をいう。例えば、ワイヤ6がそれぞれ設けられた二層で構成されるステントの場合には、層を重ねたときに、当該ステントの径方向から視認されるコイル同士によって画定される閉塞領域をいう。「網目の大きさ」とは、網目をステントの径方向に投影させたときの閉塞領域の面積をいうものとする。
【0025】
<第1変形例>
次に、第1変形例に係るステント1Xについて、図4及び図5を参照して説明する。図4は、第1変形例に係るステント1Xの近位端部(フレア部22近傍)を模式的に示す側面図、図5は、紐が取り付けられたステント1Xの近位端部(フレア部22近傍)を模式的に示す側面図である。
【0026】
上記の実施形態と同様に、ワイヤ6は、ステント本体2の軸心方向に隣接するワイヤ6の部位によって閉塞領域である複数のループ部20a、21a、22aを形成している。ループ部20a、21a、22aは、ステント本体2の周回方向に複数設けられている。
本変形例では、図4に示すように、フレア部22における一端側(近位端側、本変形例においては最近位端)において、ステント本体2の周回方向に隣接するループ部22aの間に、カバー3が非形成である三角形状の非カバー部22bが設けられている。
【0027】
上記構成によれば、周回方向に隣接するループ部22aの間に非カバー部22bが設けられていることで、フレア部22に向かって流れ込んでくる流動物の流れをカバー3によって阻害することを抑制できる。
具体的には、ステント1Xのフレア部22が、例えば不図示の十二指腸内に配設されたときに、フレア部22に向かってくる経口摂取物の流れを妨げることを抑制することができる。
【0028】
本変形例に係るステント本体2には、紐25が取り付けられていてもよい。紐25は、フレア部22に一部を固定されて、フレア部22において、ワイヤ6の外面側と内面側とを交互に行き来しつつ周回して、外部に延在している。ここで、「外部に延在」とは、紐25(より具体的には、紐25の周回部分よりも端部側)が、周回部分から更に外部に延びていることを意味する。
上記構成によれば、紐25(より具体的には、紐25における外部に延在する端部側)を引くことで、フレア部22を縮径させることができるとともに、留置しているステント1Xの抜去が容易となる。
【0029】
具体的には、不図示の内視鏡に設けられた鉗子で紐25を挟みつつ牽引して、ステント1Xを体腔内から抜去することができる。ただし、例えば不図示の十二指腸乳頭部から十二指腸内にフレア部22が突出するようにステント1Xが留置される場合には、紐25を把持しなくとも、十二指腸側からフレア部22を直接に把持することも可能である。このため、ステント1Xは必ずしも紐25を備える構成でなくてもよい。
【0030】
紐25は、フレア部22の軸心方向を基準とする位置関係において非カバー部22bと重なる位置にあり、フレア部22を周回して外部に延在している。換言すると、紐25は、フレア部22に設けられた非カバー部22bの少なくとも一部に重なるように周回している。本変形例において、紐25は、最近位端側にあるループ部22aの中央よりも近位側を通って周回している。
上記構成によれば、紐25が非カバー部22bと重なる位置で周回していることで、ユーザが紐25を引っ張ってフレア部22を縮径させる際に、フレア部22を円滑に縮径させることができる。具体的には、非カバー部22bにカバー3がないことで、フレア部22を縮径させる際にカバー3からの反力が加わることを抑制することができる。
【0031】
<第2変形例>
第1変形例に係る非カバー部22bは、フレア部22の最近位端部にのみ設けられていたが、本発明はこのような構成に限定されない。
次に、第2変形例に係るステント1Yについて図6を参照して説明する。図6は、第2変形例に係るステント1Yの近位端部を模式的に示す側面図である。
本変形例に係る非カバー部32bは、フレア部32の全体に設けられている。
このように、非カバー部32bが、フレア部32の全体に設けられていることで、経口摂取物の流れを阻害することをより抑制できる。
【0032】
特に、本変形例に係る非カバー部32bは、フレア部32と、テーパ部21との間にある境界部2bに至るまで設けられている。
上記構成によれば、境界部2bに非カバー部32bが設けられていることで、例えば、ステント1Yを十二指腸乳頭部に配設し、フレア部32が十二指腸乳頭部を閉塞したときでも、境界部2bを通る胆汁や膵液等の体液の流路を塞がないようにできる。
なお、「境界部2bに至るまで」とは、非カバー部32bが境界部2bよりも遠位側にまで形成されているものを含むものとする。
【0033】
上記実施形態に係るステント1、1X、1Yは、十二指腸乳頭部に取り付けるものに限定されず、胆管内に留置してもよく、その他の体腔内に留置するものであってもよい。
また、上記実施形態に係るワイヤ6の条数(本数)や、メッシュ数及び不図示の補強ワイヤコイルピッチは特に限定されない。ここで、メッシュ数とは、ワイヤ6の延在方向にみた単位長さ(1インチ)あたりの交差本数(目の数)をいう。
【0034】
例えば、ワイヤ6の他のワイヤを、ワイヤ6に絡ませるようにして、ステント1、1X、1Yの剛性を高めるようにしてもよい。
また、上記実施形態においては、テーパ部21及びフレア部22(、32)を一つずつ備える例を示したが、本発明はこのような構成に限定されない。例えば、フレア部22(、32)がステント1の両端に形成されていてもよい。
【0035】
本実施形態及び本製造方法は以下の技術思想を包含する。
(1)ワイヤによって構成されてカバーで被覆されたメッシュ構造のステント本体を有する長尺のステントであって、
前記ステント本体は、
少なくとも一端部に設けられて、一端に向かうにつれて拡径している形状のフレア部と、
前記一端部側にある前記フレア部に向かうにつれて縮径している形状のテーパ部と、
を備えることを特徴とするステント。
(2)前記ワイヤは、前記ステント本体の軸心方向に隣接するワイヤの部位によって閉塞領域である複数のループ部を形成しており、
前記ループ部は、前記ステント本体の周回方向に複数設けられており、
前記フレア部における前記一端側において、前記ステント本体の周回方向に隣接する前記ループ部の間に、前記カバーが非形成である非カバー部が設けられている(1)に記載のステント。
(3)前記非カバー部は、前記フレア部の全体に設けられている(2)に記載のステント。
(4)前記非カバー部は、前記フレア部と、前記テーパ部との間にある境界部に至るまで設けられている(3)に記載のステント。
(5)前記ステント本体には紐が取り付けられており、
該紐は、前記フレア部に一部を固定されて、前記フレア部において、前記ワイヤの外面側と内面側とを交互に行き来しつつ周回して、外部に延在している(1)から(4)のいずれか一項に記載のステント。
(6)前記ワイヤは、前記ステント本体の軸心方向に隣接するワイヤとによって閉塞領域である複数のループ部を形成しており、
前記ループ部は、前記ステント本体の周回方向に複数設けられており、
前記フレア部における一端側において、前記ステント本体の周回方向に隣接する前記ループ部の間に、前記カバーが非形成である非カバー部が設けられており、
前記紐は、前記フレア部の軸心方向を基準とする位置関係において前記非カバー部と重なる位置にあり、前記フレア部を周回して外部に延在している(5)に記載のステント。
(7)前記ステント本体には、径方向内側に窪んだ凹溝が設けられており、
前記凹溝は、前記フレア部と前記テーパ部とに跨るように延在している(1)から(6)のいずれか一項に記載のステント。
(8)前記ワイヤは、直進部と屈曲部とを有して、前記ステント本体の周回方向に延在して、前記ステントの軸心方向において並列する複数の段を有し、
複数の段のそれぞれの前記ワイヤの部位は、
直進と屈曲を繰り返してジクザグに前記軸心方向に振れており、
隣接する段との間において、前記軸心方向に振れた先でそれぞれの前記屈曲部同士が絡んでおり、
前記ステント本体における前記フレア部と前記テーパ部との間にある境界部には、前記直進部が配設されている(1)から(7)のいずれか一項に記載のステント。
(9)前記メッシュ構造は、複数の網目を有して構成されており、
前記フレア部の少なくとも一部における前記網目の大きさは、前記ステント本体における他の部位における前記網目の大きさよりも大きい(1)から(8)のいずれか一項に記載のステント。
【符号の説明】
【0036】
1、1X、1Y ステント
2 ステント本体
2a 凹溝
2b 境界部
3 カバー
6 ワイヤ
6a 直進部
6b 屈曲部
20 ストレート部
20a ループ部(網目)
21 テーパ部
21a ループ部(網目)
22 フレア部
22a ループ部(網目)
22b 非カバー部
25 紐
32 フレア部
32b 非カバー部
図1
図2
図3
図4
図5
図6