(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】印刷された可食体の製造方法および製造装置
(51)【国際特許分類】
A61J 3/06 20060101AFI20240305BHJP
B41M 3/14 20060101ALI20240305BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20240305BHJP
B41J 3/407 20060101ALI20240305BHJP
B41F 17/36 20060101ALN20240305BHJP
【FI】
A61J3/06 Q
B41M3/14
B41J2/01 109
B41J2/01 451
B41J2/01 203
B41J3/407
B41F17/36 B
(21)【出願番号】P 2020079956
(22)【出願日】2020-04-30
【審査請求日】2023-04-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000228110
【氏名又は名称】クオリカプス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001597
【氏名又は名称】弁理士法人アローレインターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】柳生 元啓
【審査官】岡本 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-202506(JP,A)
【文献】特開2017-158947(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61J 3/06
B41M 3/14
B41J 2/01
B41J 3/407
B41F 17/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外面に凹状の刻印部が形成された可食体に印刷することにより印刷可食体を製造する方法であって、
前記刻印部の輪郭を検出する検出工程と、
検出された前記刻印部の輪郭に沿って前記刻印部の内部に線状の印刷パターンを形成する印刷工程とを備え
、
前記刻印部は、断面円弧状の側壁を有し、
前記印刷工程は、前記側壁に前記印刷パターンを形成する印刷可食体の製造方法。
【請求項2】
前記刻印部は、複数の凹部からなり、
前記印刷工程は、一部の前記凹部のみに前記印刷パターンを形成する請求項1に記載の印刷可食体の製造方法。
【請求項3】
前記印刷工程は、前記刻印部の輪郭の一部のみに前記印刷パターンを形成する請求項1または2に記載の印刷可食体の製造方法。
【請求項4】
外面に凹状の刻印部が形成された可食体に印刷することにより印刷可食体を製造する装置であって、
前記刻印部の輪郭を検出する検出装置と、
検出された前記刻印部の輪郭に沿って前記刻印部の内部に線状の印刷パターンを形成する印刷装置とを備え
、
前記刻印部は、断面円弧状の側壁を有し、
前記印刷装置は、前記側壁に前記印刷パターンを形成する印刷可食体の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷された可食体の製造方法および製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、偽造医薬品の蔓延が発展途上国を中心に問題になっており、この対策が従来から検討されている。例えば特許文献1には、錠剤に対して、可視インクにて印刷処理された第1表示層と、不可視インクにて印刷処理された第2表示層とを形成する錠剤印刷方法が開示されている。この錠剤印刷方法は、全く同一に見える偽薬であっても、ブラックライト等の識別光を照射することで、目に見えない第2表示層の表示を確認することができるため、偽薬判定に有効に活用できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記従来の錠剤印刷方法は、偽薬判定を行うために識別光を照射する検査装置が必要になるため、判定作業が煩雑になるだけでなく、このような検査装置を所有しない消費者等が偽薬か否かを判別することが困難であった。
【0005】
そこで、本発明は、可食体の真贋を容易且つ正確に判別可能な印刷可食体の製造方法および製造装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の前記目的は、外面に凹状の刻印部が形成された可食体に印刷することにより印刷可食体を製造する方法であって、前記刻印部の輪郭を検出する検出工程と、検出された前記刻印部の輪郭に沿って前記刻印部の内部に線状の印刷パターンを形成する印刷工程とを備え、前記刻印部は、断面円弧状の側壁を有し、前記印刷工程は、前記側壁に前記印刷パターンを形成する印刷可食体の製造方法により達成される。
【0007】
この印刷可食体の製造方法において、前記刻印部が複数の凹部からなる場合、前記印刷工程は、一部の前記凹部のみに前記印刷パターンを形成することができる。
【0008】
前記印刷工程は、前記刻印部の輪郭の一部のみに前記印刷パターンを形成することができる。
【0009】
また、本発明の前記目的は、外面に凹状の刻印部が形成された可食体に印刷することにより印刷可食体を製造する装置であって、前記刻印部の輪郭を検出する検出装置と、検出された前記刻印部の輪郭に沿って前記刻印部の内部に線状の印刷パターンを形成する印刷装置とを備え、前記刻印部は、断面円弧状の側壁を有し、前記印刷装置は、前記側壁に前記印刷パターンを形成する印刷可食体の製造装置により達成される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、可食体の真贋を容易且つ正確に判別可能な印刷可食体の製造方法および製造装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態に係る印刷可食体の製造装置の概略構成図である。
【
図2】
図1に示す印刷可食体の製造装置の要部断面図である。
【
図4】刻印部に形成された印刷パターンの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
図1は、 本発明の一実施形態に係る印刷可食体の製造装置の概略構成図である。
図1に示すように、印刷可食体の製造装置1は、可食体を供給する供給装置10と、供給装置10から供給される可食体を矢示方向の回転により搬送する搬送ロール20とを備えている。可食体は、外面に凹状の刻印部が形成されたものであれば、その形態は特に限定されるものではなく、錠剤、カプセル剤、空カプセル、タブレット状食品等の定形性を有するものを好ましく例示することができる。本実施形態においては、印刷対象となる可食体として偏平な錠剤を使用する。
【0013】
図2に示すように、供給装置10は、可食体Eを貯留するホッパ11と、駆動モータやバイブレータ等の駆動源12により駆動されて振動する振動板13と、振動板13に固定されて振動板13と一体的に振動する複数の振動ガイド部材14と、可食体Eを搬送ロール20に向けて案内する複数のガイド板15とを備えている。複数の振動ガイド部材14は、搬送ロール20の軸方向に沿って間隔をあけて配置されており、それぞれの間に供給された可食体Eを、矢示A方向の振動により複数のガイド板15に向けて搬送する。複数のガイド板15は、振動ガイド部材14と搬送ロール20との間に若干の隙間をあけて介在されており、それぞれ搬送ロール20の軸方向に間隔をあけて、ホッパ11内に固定されている。供給装置10の構成は、特開2019-14594号公報で既に公知のため、詳細な説明を省略する。
【0014】
搬送ロール20は、外周面に沿って等間隔に複数形成されたポケット21を備えており、振動ガイド部材14から搬送された可食体Eが、各ガイド板15の間を通過してポケット21に収容される。ポケット21は、搬送ロール20の軸方向にも複数形成されており、それぞれ複数のガイド板15の間を通過するように配置されている。搬送ロール20の各ポケット21の底部は、径方向内方に延びる連通路22を介して、軸方向に延びる吸引路23に連通されている。各ポケット21は、搬送ロール20の矢示B方向の回転によりガイド板15を通過する間、吸引路23が吸引シュー24に一致して、収容された可食体Eが吸引保持される。
【0015】
ポケット21に収容された可食体Eは、搬送ロール20の回転によりガイド板15を通過すると、吸引保持およびガイド板15による縁部の保持がいずれも解除され、ブラシロール16によりポケット21内で搬送ロール20の軸方向に横倒される。横倒された可食体Eは、表裏面の一方を露出した状態で搬送ロール20により搬送される。
【0016】
図1に示す印刷可食体の製造装置1は、搬送ロール20から供給された可食体を、矢示方向の回転により順次搬送する第1の印刷用ロール30および第2の印刷用ロール40を備えている。第1の印刷用ロール30および第2の印刷用ロール40は、搬送ロール20と同様に、外周方向および軸方向に沿って複数のポケット(図示せず)が形成されており、各ポケットは吸引路(図示せず)に接続されている。第1の印刷用ロール30および第2の印刷用ロール40の吸引路は、可食体の受取位置の近傍から引渡位置の近傍まで設定された吸引シュー(図示せず)により吸引されて、横倒姿勢でポケットに収容された可食体を負圧により吸着搬送する。第1の印刷用ロール30および第2の印刷用ロール40により搬送される可食体の露出面は、第1の印刷用ロール30から第2の印刷用ロール40に可食体が引き渡される際に反転する。
【0017】
印刷可食体の製造装置1は、更に、第1の印刷用ロール30の近傍に搬送方向に沿って順次設けられた第1の検出装置31、第1の印刷装置32および第1の検査装置33と、第2の印刷用ロール40の近傍に搬送方向に沿って順次設けられた第2の検出装置41、第2の印刷装置42および第2の検査装置43とを備えており、これらの作動は不図示の制御装置により制御される。
【0018】
第1の検出装置31および第2の検出装置41は、例えばCCDカメラからなり、それぞれ第1の印刷用ロール30および第2の印刷用ロール40により搬送される可食体の露出面を撮像して、撮像データを取得する。制御装置は、取得された撮像データに基づき、可食体の露出面に刻印部が存在する場合に刻印部の輪郭を検出し、輪郭全体の位置情報を取得する。
【0019】
第1の印刷装置32および第2の印刷装置42は、例えばインクジェット印刷装置からなり、第1の印刷用ロール30および第2の印刷用ロール40により搬送される可食体の刻印部の輪郭が検出された場合に、輪郭の位置情報に基づき、刻印部の内部に輪郭に沿って線状の印刷パターンを形成する。第1の印刷装置32および第2の印刷装置42は、レーザ印刷装置など他の印刷装置であってもよく、刻印部の内部への印刷に加えて、可食体の刻印部以外の外面に文字や記号等を印刷してもよい。
【0020】
図3に示す本実施形態の可食体Eは、一方面のみに刻印部Sが形成されており、第1の検出装置31または第2の検出装置41のいずれかによって刻印部Sが検出されて、第1の印刷装置32または第2の印刷装置42による印刷が行われる。刻印部Sは、複数の凹部R1,R2,R3からなり、それぞれが1つの文字を表すように形成されている。各凹部は文字以外に、数字、マーク、記号、図形などであってもよく、これらを適宜組み合わせて刻印部Sを構成してもよい。あるいは、刻印部Sは、単一の凹部から構成してもよい。刻印部Sは、可食体Eの両面に形成されていてもよい。
【0021】
刻印部に対する印刷パターンの形成箇所は、刻印部の内部で刻印部の輪郭に沿ったものであれば、特に限定されない。例えば、
図4(a)に示すように、全ての凹部R1,R2,R3の輪郭全体に沿って、印刷パターンP1,P2,P3をそれぞれ形成することができる。印刷パターンP1,P2,P3の色は、同一であってもよく、あるいは、互いに異なってもよい。
【0022】
また、
図4(b)に示すように、一部の凹部R2のみに対して、輪郭全体に沿って印刷パターンP2を形成してもよい。あるいは、刻印部Sの輪郭の一部のみに印刷パターンを形成してもよく、例えば
図4(c)に示すように、輪郭に曲線部を有する凹部R2,R3に対して、当該曲線部に沿って印刷パターンP2,P3を形成することもできる。
図4(a)~(c)に示す線状の印刷パターンの幅は、特に限定されないが、例えば0.1~1.0mmである。
【0023】
図5(a)に示すように、印刷パターンPは、可食体Eに形成された刻印部Sの底壁BWに形成することができる。
図5(b)に示すように、刻印部Sが断面円弧状の側壁SWを有する場合には、側壁SWに印刷パターンPを形成してもよい。
【0024】
第1の検査装置33および第2の検査装置43は、例えばCCDカメラからなり、印刷パターンが形成された印刷可食体を撮像して、撮像データを取得する。制御装置は、取得された撮像データに基づき、可食体の刻印部の輪郭に対して印刷パターンが所定箇所に正しく形成されているかを判別し、良品のみを後工程で抽出する。
【0025】
上記の構成を備える印刷可食体の製造装置1は、第1の検出装置31または第2の検出装置41により、可食体の刻印部の輪郭を検出する検出工程が行われ、第1の印刷装置32または第2の印刷装置42により、検出された刻印部の内部に輪郭に沿って印刷パターンを形成する印刷工程が行われる。こうして製造された印刷可食体は、印刷パターンが、一般には小サイズの刻印部Sの内部で、且つ、刻印部Sの全体ではなく輪郭に沿って線状に形成されることから、第三者による印刷パターンの偽造が困難である。したがって、可食体の真贋の判別を、特別な装置を必要とすることなく目視によって容易且つ正確に行うことができる。
【0026】
また、
図4(b)および(c)に示すように、印刷パターンを、一部の凹部のみに形成した場合や、輪郭の一部のみに形成した場合は、上記の効果に加えて、刻印部の輪郭に対する印刷パターンの形成箇所からも可食体の真贋を判別することができるので、判別の正確性を高めることができる。
【0027】
本実施形態の印刷可食体の製造装置1は、刻印部の輪郭を検出する検出装置、および、刻印部に印刷パターンを形成する印刷装置を、搬送される可食体の表裏面に対応させてそれぞれ複数設けているが、可食体の両面に形成された刻印部の一方のみに印刷パターンを形成する場合や、可食体の表裏の向きを揃えて刻印部が常に露出するように搬送する場合などにおいては、検出装置および印刷装置はそれぞれ1つであってもよい。
【符号の説明】
【0028】
1 印刷可食体の製造装置
10 供給装置
20 搬送ロール
30 第1の印刷用ロール
31 第1の検出装置
32 第1の印刷装置
40 第2の印刷用ロール
41 第2の検出装置
42 第2の印刷装置
E 可食体
S 刻印部
R1,R2,R3 凹部