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特許7448302コイルスプリングの組付け方法、及びコイルスプリングの組付け用治具
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  • 特許-コイルスプリングの組付け方法、及びコイルスプリングの組付け用治具 図1
  • 特許-コイルスプリングの組付け方法、及びコイルスプリングの組付け用治具 図2
  • 特許-コイルスプリングの組付け方法、及びコイルスプリングの組付け用治具 図3
  • 特許-コイルスプリングの組付け方法、及びコイルスプリングの組付け用治具 図4
  • 特許-コイルスプリングの組付け方法、及びコイルスプリングの組付け用治具 図5
  • 特許-コイルスプリングの組付け方法、及びコイルスプリングの組付け用治具 図6
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】コイルスプリングの組付け方法、及びコイルスプリングの組付け用治具
(51)【国際特許分類】
   B25B 27/30 20060101AFI20240305BHJP
   F16F 9/32 20060101ALI20240305BHJP
   B23P 21/00 20060101ALI20240305BHJP
   B23P 19/00 20060101ALI20240305BHJP
   B62D 65/12 20060101ALI20240305BHJP
   B60G 3/04 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
B25B27/30
F16F9/32 A
B23P21/00 303B
B23P19/00 304Z
B62D65/12 A
B60G3/04
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020055653
(22)【出願日】2020-03-26
(65)【公開番号】P2021154418
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2023-02-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100196346
【弁理士】
【氏名又は名称】吉川 貴士
(72)【発明者】
【氏名】木村 勇斗
(72)【発明者】
【氏名】松浦 康晴
【審査官】山村 和人
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-062750(JP,A)
【文献】特開平11-051247(JP,A)
【文献】中国実用新案第207930604(CN,U)
【文献】韓国登録実用新案第20-0429929(KR,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25B 27/00 - 27/30
B23P 19/00 - 21/00
F16F 9/32
B62D 65/12
B60G 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ショックアブソーバーにコイルスプリングを組付けるための方法であって、
前記ショックアブソーバーに取り付けられた下側スプリングシート上に前記コイルスプリングを載置する工程と、
錘部材がスライド可能に設けられた前記コイルスプリングの組付け用治具を準備する工程と、
上側スプリングシートを前記錘部材と前記コイルスプリングとの間に介在させた状態で、軸部に前記上側スプリングシートを嵌め合わせた状態の前記組付け用治具の取付け部を前記ショックアブソーバーのロッド上端に取り付けて、前記錘部材の自重によるスライドで前記コイルスプリングを圧縮する向きに押圧する工程と、
前記コイルスプリングを圧縮する向きに押圧した状態で、前記上側スプリングシートと前記下側スプリングシートとを互いに接近させて、前記コイルスプリングを所定の寸法に圧縮する工程とを具備した、コイルスプリングの組付け方法。
【請求項2】
ショックアブソーバーにコイルスプリングを組み付ける際に使用する治具であって、
ショックアブソーバーのロッド上端に取付け可能な取付け部と、
前記取付け部を一端に有し上側スプリングシートを嵌合可能な軸部と、
前記取付け部を前記ロッド上端に取付けた状態で、前記軸部に嵌合している前記上側スプリングシートを前記取付け部の側に向けて押圧可能な錘部材とを備え、前記錘部材は前記軸部に対して軸方向にスライド可能に構成されるコイルスプリングの組付け用治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイルスプリングの組付け方法、及びコイルスプリングの組付け用治具に関し、特にショックアブソーバーに対して同軸にコイルスプリングを組付けるための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば自動車用サスペンションのうち、ストラット式サスペンションの組立てラインにおいては、当該サスペンションの構成要素であるショックアブソーバーに、同じくサスペンションの構成要素であるコイルスプリングを組付ける工程が実施されている。
【0003】
例えば特許文献1には、ショックアブソーバーに対するコイルスプリングの組付け方法の一例が記載されている。この特許文献に記載の組付け方法では、まず鉛直方向を向くように位置決めされたショックアブソーバーの下側スプリングシート(フランジ)に、無負荷状態のコイルスプリングを載置する。このとき、コイルスプリングの上端部はピストンロッドの上端部よりもさらに上方に位置している。この状態で、コイルスプリングに爪を軸方向で係合させ、相対的に爪を押し下げて、コイル上端部がピストンロッドの上端部よりも下方に位置する状態となるまで、コイルスプリングを押し縮めると共に、ピストン ロッドの上端部に上側スプリングシートを含むアッパーサポートアッシーを載置し、ナットでピストンロッドに固定する。以上の手順により、所定の長さ寸法にまで押し縮められた状態のコイルスプリングが、下側スプリングシートと上側スプリングシートとの間に挟持された状態でショックアブソーバーに組付けられる(特許文献1の図7等を参照)。
【0004】
また、特許文献1には、押し縮められた状態のコイルスプリングの側部に、鉛直方向に延びるガイド面を有するガイド部を配置し、爪の引き抜き時にコイルスプリングが鉛直方向に伸長するのをガイド部により案内することにより、コイルスプリングの倒れ込み(上側スプリングシートからコイルスプリングが外れる事態)を防止することが記載されている(特許文献1の図1等を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2001-62750号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、この種のサスペンションには、車両の要求特性に応じて例えば長さ寸法や外径寸法、ピッチなどが異なるコイルスプリングだけでなく、不均等ピッチのコイルスプリングや、中心軸線まわりに非対称なコイルスプリング(偏心コイルスプリング)、樽型など外径寸法が変化するコイルスプリングなど、様々な種類のコイルスプリングが用いられる場合がある。このような場合に、特許文献1に記載の如くガイド部を配置してコイルスプリングの組付け時の倒れ込みを防止しようとすると、コイルスプリングの種類に応じて爪だけでなくガイド部の径方向位置をその都度微調整する必要が生じるため、例えばサーボモータなど爪やガイド部をそれぞれ精度よく駆動するための設備が追加で必要となり、設備コストの高騰を招く。
【0007】
以上の事情に鑑み、本明細書では、コイルスプリングの種類に関係なく、簡易な構成でショックアブソーバー組付け時におけるコイルスプリングの倒れ込みを低コストに防止して、確実にコイルスプリングをショックアブソーバーに組付け可能とすることを、解決すべき技術課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題の解決は、本発明に係るコイルスプリングの組付け方法によって達成される。すなわち、この組付け方法は、ショックアブソーバーにコイルスプリングを組付けるための方法であって、ショックアブソーバーに取り付けられた下側スプリングシート上にコイルスプリングを載置する工程と、錘部材がスライド可能に設けられたコイルスプリングの組付け用治具を準備する工程と、上側スプリングシートを錘部材とコイルスプリングとの間に介在させた状態で、ショックアブソーバーのロッド上端に組付け用治具を取り付けて、錘部材の自重によるスライドでコイルスプリングを圧縮する向きに押圧する工程と、コイルスプリングを圧縮する向きに押圧した状態で、上側スプリングシートと下側スプリングシートとを互いに接近させて、コイルスプリングを所定の寸法に圧縮する工程とを具備した点をもって特徴付けられる。
【0009】
このように、本発明に係るコイルスプリングの組付け方法では、錘部材がスライド可能に設けられた組付け用治具を準備すると共に、上側スプリングシートを錘部材とコイルスプリングとの間に介在させた状態で、ショックアブソーバーのロッド上端に組付け用治具を取り付けて、錘部材の自重によるスライドでコイルスプリングを圧縮する向きに押圧するようにした。このように、錘部材がスライド可能に設けられた組付け用治具をロッド上端に取り付けて、錘部材の自重によるスライドでコイルスプリングを押圧することにより、錘部材の重みを利用して上側スプリングシートを強くコイルスプリングに押し当てることができる。これにより、上述した組付け用治具をロッド上端に取付けた時点で、スプリングを自動的に圧縮方向に押さえることができるので、コイルスプリングを下側スプリングシート上に載置してからコイルスプリングの圧縮が開始されるまでの間のコイルスプリングの傾きを抑制して、当該スプリングが上側スプリングシートから外れる事態を可及的に防止することができる。従って、コイルスプリング及び上側スプリングシートをそれぞれ適正な位置及び姿勢でショックアブソーバーに組付けることが可能となる。また、錘部材がスライド可能に設けられた組付け用治具を準備するだけで足りるので、例えばサーボモータ等でコイルスプリングの押さえ部材(爪など)を微調整する場合と比べて簡易な構成で低コストにコイルスプリングの倒れ込み防止対策を講じることが可能となる。
【0010】
また、前記課題の解決は、本発明に係るコイルスプリングの組付け用治具によっても達成される。すなわち、この組付け用治具は、ショックアブソーバーにコイルスプリングを組み付ける際に使用する治具であって、ショックアブソーバーのロッド上端に取付け可能な取付け部と、取付け部を一端に有し上側スプリングシートを嵌合可能な軸部と、取付け部をロッド上端に取付けた状態で、軸部に嵌合している上側スプリングシートを取付け部の側に向けて押圧可能な錘部材とを備え、錘部材は軸部に対して軸方向にスライド可能に構成される点をもって特徴付けられる。
【0011】
このように、本発明に係るコイルスプリングの組付け用治具は、ショックアブソーバーのロッド上端に取付け可能に構成されるもので、上側スプリングシートを嵌合可能な軸部と、取付け部をロッド上端に取付けた状態で、軸部に嵌合している上側スプリングシートを取付け部の側に向けて押圧可能な錘部材とを備え、かつ錘部材を軸部に対して軸方向にスライド可能に構成した。上記構成の組付け用治具を用いることで、例えば上側スプリングシートを軸部に嵌合させた状態の組付け用治具を、ショックアブソーバーのロッド上端に取り付けた際、錘部材の自重によるスライドで上側スプリングシートをコイルスプリングに向けて押圧することになる。そのため、錘部材の重みを利用して上側スプリングシートをコイルスプリングに強く押し当てることができる。これにより、上述した組付け用治具をロッド上端に取付けた時点で、スプリングを自動的に圧縮方向に押さえることができるので、コイルスプリングを下側スプリングシート上に載置してからコイルスプリングの圧縮が開始されるまでの間のコイルスプリングの傾きを抑制して、当該スプリングが上側スプリングシートから外れる事態を可及的に防止することができる。従って、コイルスプリング及び上側スプリングシートをそれぞれ適正な位置及び姿勢でショックアブソーバーに組付けることが可能となる。また、錘部材がスライド可能に設けられた組付け用治具であれば、例えばサーボモータ等でコイルスプリングの押さえ部材(爪など)を微調整する場合と比べて簡易な構成で低コストにコイルスプリングの倒れ込み防止対策を講じることが可能となる。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、本発明によれば、コイルスプリングの種類に関係なく、簡易な構成でショックアブソーバーへの組付け時におけるコイルスプリングの倒れ込みを低コストに防止して、確実にコイルスプリングをショックアブソーバーに組付けることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係るコイルスプリングの組付け用治具の正面図である。
図2図1に示す組付け用治具の平面図である。
図3図1に示す組付け用治具を用いたコイルスプリングの組付け方法の一例を説明するための図で、コイルスプリングを下側スプリングシート上に載置した状態を示す図である。
図4図1に示す組付け用治具を用いたコイルスプリングの組付け方法の一例を説明するための図で、ショックアブソーバーのロッド上端に図1の組付け用治具を取付けた状態を示す図である。
図5図1に示す組付け用治具を用いたコイルスプリングの組付け方法の一例を説明するための図で、双方のスプリングシートを接近させて、コイルスプリングを圧縮した状態を示す図である。
図6図1に示す組付け用治具を用いたコイルスプリングの組付け方法の一例を説明するための図で、コイルスプリングを圧縮した状態で組付け用治具を取り外した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態に係るコイルスプリングの組付け方法及びコイルスプリングの組付け用治具の内容を図面に基づいて説明する。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態に係るコイルスプリングの組付け用治具10の全体構成を示している。この組付け用治具10は、例えばストラット式などの車両用サスペンションを構成するショックアブソーバーにコイルスプリングを組付ける際に用いられるもので、ショックアブソーバー1のロッド2上端(ともに図3を参照)に取付け可能な取付け部11と、取付け部11を一端に有し上側スプリングシート6(図4を参照)を嵌合可能な軸部12と、取付け部11をロッド2上端に取付けた状態で、軸部12に嵌合している上側スプリングシート6を取付け部11の側に向けて押圧可能な錘部材13とを備える。
【0016】
取付け部11は、本実施形態では、ロッド2上端に設けられた嵌合凸部2aと嵌り合う嵌合凹部11aで構成されている。また、嵌合凸部2aに嵌合凹部11aを嵌め合わせて取付け部11をロッド2上端に取付けた状態では、組付け用治具10の中心線X1と、ロッド2の中心線X2とが平行(好ましくは一致)するようになっている。また、嵌合凹部11aの軸方向寸法t1は、嵌合凸部2aの軸方向寸法t2よりも大きい。そのため、嵌合凸部2aに嵌合凹部11aを嵌め合わせた状態では、取付け部11とロッド2とが軸方向に隙間なく当接した状態となる(後述する図4を参照)。
【0017】
軸部12は、その一端に取付け部11を有する。また、取付け部11を含め軸部12の外径寸法d1は一定であり、ロッド2の外径寸法d2と同じ大きさに設定されている。後述するが、本実施形態のように、軸部12に貫通長穴14が形成されている場合、少なくとも取付け部11から貫通長穴14のまでの軸方向領域において外径寸法d1が一定であることが好ましい。
【0018】
錘部材13は、軸部12の長手方向にスライド可能に構成されている。本実施形態では、錘部材13は、一又は複数の環状錘(本図示例では三つの環状錘15)で構成されており、一又は複数の環状錘15は、軸部12に嵌合可能とされている。また、環状錘15には直径方向に貫通する貫通穴16が形成されると共に、軸部12にはその軸方向に延びる貫通長穴14が形成されており、これら貫通穴16及び貫通長穴14にボルト17等を挿通することで、環状錘15が軸部12に対して軸方向にスライド可能とされている。
【0019】
なお、環状錘15の下面形状は任意であるが、後述するように当接対象となる上側スプリングシート6(本実施形態では上側スプリングシート6の上端に固定されるスラストベアリング7)と全周にわたって当接可能なように環状錘15の下面形状を設定するのがよい。
【0020】
次に、上記構成の組付け用治具10を用いたコイルスプリング5のショックアブソーバー1に対する組付け方法の一例を、主に図3図6に基づいて説明する。
【0021】
まず、図3に示すように、被組付け対象となるショックアブソーバー1をその中心線X2が鉛直方向を指向する姿勢に位置決め保持する。この際、シリンダ3が保持部20で保持されており、ロッド2が上方に突出した姿勢をなしている。また、シリンダ3外周の軸方向所定位置には下側スプリングシート4が取付けられている。このようにショックアブソーバー1を位置決め保持した状態で、シリンダ3外周に取付けられた下側スプリングシート4上に無負荷状態のコイルスプリング5を載置する。この状態で、コイルスプリング5の上端位置は、ロッド2上端の嵌合凸部2aよりも高い位置にある(図3を参照)。なお、図示は省略するが、この時点で、コイルスプリング5の上端部にスプリングインシュレータを取付けておいてもよい。
【0022】
このようにしてコイルスプリング5を下側スプリングシート4上に載置した後、組付け用治具10をロッド2の上端(ここでは嵌合凸部2a)に取付ける。ここでは、軸部12に上側スプリングシート6(本図示例ではスラストベアリング7を一体に有する上側スプリングシート6)を嵌め合わせた状態の組付け用治具10の取付け部11を、ロッド2上端に取付ける(図4を参照)。これにより、上側スプリングシート6がコイルスプリング5の上端に当接すると共に、上側スプリングシート6が錘部材13の自重によるスライドで下方に押し込まれて、上側スプリングシート6と当接するコイルスプリング5が圧縮する向きに押圧される。この状態で、コイルスプリング5の長さ寸法L1は、無負荷状態におけるコイルスプリング5の長さ寸法(自由長さ)L0よりも短い。また、コイルスプリング5の縮小分L0-L1に対応する弾性復元力と、上側スプリングシート6及び錘部材13の重量とが釣り合った状態にある。このように、錘部材13の重量が上側スプリングシート6を介してコイルスプリング5に作用することで、コイルスプリング5が上側スプリングシート6から外れて傾きにくい状態が形成される。
【0023】
然る後、図5に示すように、上側スプリングシート6を下側スプリングシート4に接近させて、上側スプリングシート6をロッド2外周の軸方向所定位置まで移動すると共に、コイルスプリング5を組付け時の寸法(図5に示す長さ寸法L2)にまで圧縮する。本実施形態では、上側スプリングシート6を一又は複数のクランプ部30でクランプして上側スプリングシート6の軸方向の移動を規制すると共に、ショックアブソーバー1を保持部20ごと上昇させることで、上側スプリングシート6を下側スプリングシート4に接近させて、上側スプリングシート6を組付け用治具10の軸部12外周からショックアブソーバー1のロッド2外周に乗り移らせる。この際、本実施形態のように軸部12の外径寸法d1とロッド2の外径寸法d2とを同一にし、また取付け部11とロッド2とを軸方向に隙間なく当接させることで、上述した軸部12外周からロッド2外周への上側スプリングシート6の乗り移りが円滑に行われる。
【0024】
上述のようにして上側スプリングシート6をロッド2外周の軸方向所定位置まで移動させた後、組付け用治具10をロッド2上端から取り外す。この組付け用治具10の取り外しは、図5に示すように、保持部20及びクランプ部30によるショックアブソーバー1と上側スプリングシート6とを保持した状態で行われる。これにより、ロッド2上端が露出した状態となるので、このロッド2上端にアッパーサポート(図示は省略)を載置して、ナットランナでロッド2上端にナットを締め付ける。これによりアッパーサポートがロッド2に固定されると共に、コイルスプリング5及び上側スプリングシート6が図6に示す状態でショックアブソーバー1に固定される。以上のようにしてショックアブソーバー1に対するコイルスプリング5の組付けが完了する。
【0025】
このように、本実施形態に係るコイルスプリング5の組付け方法によれば、錘部材13がスライド可能に設けられた組付け用治具10を準備すると共に、上側スプリングシート6を錘部材13とコイルスプリング5との間に介在させた状態で、ショックアブソーバー1のロッド2上端に組付け用治具10を取り付けて、錘部材13の自重によるスライドでコイルスプリング5を圧縮する向きに押圧するようにした。このように、錘部材13がスライド可能に設けられた組付け用治具10をロッド2上端に取り付けて、錘部材13の自重によるスライドでコイルスプリング5を押圧することにより、錘部材13の重みを利用して上側スプリングシート6をコイルスプリング5に強く押し当てることができる。これにより、上述した組付け用治具10をロッド2上端に取付けた時点で、コイルスプリング5を自動的に押さえることができるので、コイルスプリング5を下側スプリングシート4上に載置してからコイルスプリング5の圧縮が開始されるまでの間のコイルスプリング5の傾きを抑制して、コイルスプリング5が上側スプリングシート6から外れる事態を可及的に防止することができる。従って、コイルスプリング5及び上側スプリングシート6をそれぞれ適正な位置及び姿勢でショックアブソーバー1に組付けることが可能となる。また、錘部材13がスライド可能に設けられた組付け用治具10を準備するだけで足りるので、例えばサーボモータ等でコイルスプリング5の押さえ部材(爪など)を微調整する場合と比べて簡易な構成で低コストにコイルスプリング5の倒れ込み防止対策を講じることが可能となる。
【0026】
また、本実施形態のように、錘部材13を軸部12に嵌まり合う環状錘15で構成し、各環状錘15が貫通長穴14とボルト17との協働により軸方向にスライド可能な構成とすることで、例えばコイルスプリング5の諸元(長さやピッチなど)や特性(ばね定数など)に応じて環状錘15の数を変更するだけで、コイルスプリング5に適正な大きさの負荷を作用させることができる。よって、様々な種類のコイルスプリング5に対しても容易にかつ低コストに対応することが可能となる。
【0027】
以上、本発明の一実施形態について述べたが、本発明に係るコイルスプリングの組付け方法、及びコイルスプリングの組付け用治具は、その趣旨を逸脱しない範囲において、上記以外の構成を採ることも可能である。
【0028】
例えば、錘部材13のスライド機構について、上記実施形態では、軸部12に貫通長穴14を設け、錘部材13をなす環状錘15に直径方向に貫通する貫通穴16を設けると共に、貫通長穴14及び貫通穴16にボルト17を挿通して、ボルト17と貫通長穴14との協働により、環状錘15が貫通長穴14の長手方向、すなわち軸部12の長手方向に沿ってスライドし、かつ貫通長穴14の下端よりも下方への移動を規制可能としたが、もちろんこれ以外の構成により環状錘15を所定の範囲でスライド可能に構成することも可能である。例えば図示は省略するが、軸部12の外周で、かつ錘部材13と上側スプリングシート6との当接可能位置よりも上方に、環状錘15に連結した部材と軸方向で係合する部材を設けることで、環状錘15の所定位置より下方へのスライドを規制することが可能となる。要は、貫通長穴14や貫通穴16を設けずとも環状錘15のスライド可能範囲を規定することは可能である。
【0029】
もちろん、錘部材13は軸部12に嵌まり合う環状錘15にも限られない。組付け用治具10と共にロッド2上端に取付け可能で、ロッド2上端に取付けた状態でコイルスプリング5の上端に載置される上側スプリングシート6を自重により下方に押圧可能な限りにおいて、錘部材13は任意の構成をとり得る。
【0030】
また、上記実施形態では、クランプ部30で上側スプリングシート6を鉛直方向の所定位置に保持した状態で、保持部20を上昇させることで、ショックアブソーバー1及び下側スプリングシート4を上昇させて、上側スプリングシート6を下側スプリングシート4に接近させた場合を例示したが、もちろんこれには限られない。例えば図4に示す状態において、保持部20を鉛直方向の所定位置に保持した状態で、すなわちショックアブソーバー1及び下側スプリングシート4を保持した状態で、クランプ部30と共に上側スプリングシート6を下降させることによって、双方のスプリングシート6,4を接近させてもよい。
【符号の説明】
【0031】
1 ショックアブソーバー
2 ロッド
2a 嵌合凸部
3 シリンダ
4 下側スプリングシート
5 コイルスプリング
6 上側スプリングシート
7 スラストベアリング
10 組付け用治具
11 取付け部
11a 嵌合凹部
12 軸部
13 錘部材
14 貫通長穴
15 環状錘
16 貫通穴
17 ボルト
20 保持部
30 クランプ部
図1
図2
図3
図4
図5
図6