(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】マイクロニードルアプリケータ
(51)【国際特許分類】
A61M 37/00 20060101AFI20240305BHJP
【FI】
A61M37/00 510
(21)【出願番号】P 2018161450
(22)【出願日】2018-08-30
【審査請求日】2021-06-11
【審判番号】
【審判請求日】2022-12-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000135036
【氏名又は名称】ニプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001966
【氏名又は名称】弁理士法人笠井中根国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100103252
【氏名又は名称】笠井 美孝
(74)【代理人】
【識別番号】100147717
【氏名又は名称】中根 美枝
(72)【発明者】
【氏名】川邉 美波
(72)【発明者】
【氏名】土取 保紀
【合議体】
【審判長】佐々木 正章
【審判官】後藤 泰輔
【審判官】井上 哲男
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-23404(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロニードルが付勢手段によりハウジングから突出されるマイクロニードルアプリケータにおいて、
前記マイクロニードルの穿刺方向に移動可能に配された突出部材が前記付勢手段によって突出方向へ移動されることで、前記マイクロニードルが前記ハウジングから突出されるようになっていると共に、
該突出部材の基端側に配されて突出方向に弾性変形する圧縮ばね部材からなる緩衝手段が設けられており、前記付勢手段により前記ハウジングから突出された前記マイクロニードルに対して、突出方向への付加外力を
該緩衝手段を介し
て継続的に及ぼす
ことにより、該付勢手段により皮膚へ穿刺された該マイクロニードルを更に皮膚に押し付ける緩衝的外力付加機構を備えている
と共に、
該緩衝的外力付加機構が、前記付加外力を生ぜしめる付加外力発生部材を備えており、該付加外力発生部材によって生ぜしめられた該付加外力が前記緩衝手段を介して該マイクロニードルに及ぼされることを特徴とするマイクロニードルアプリケータ。
【請求項2】
前記付加外力発生部材が、圧縮状態に保持されることで前記付加外力を生ぜしめる圧縮ばね部材によって構成されており、該圧縮ばね部材における該付加外力が前記緩衝手段に対して加圧力伝達部材を介して及ぼされるようになっていると共に、該加圧力伝達部材の移動を阻止する移動ロック機構が解除可能に設けられている請求項
1に記載のマイクロニードルアプリケータ。
【請求項3】
前記緩衝手段が、前記付勢手段によって構成されている請求項
1又は2に記載のマイクロニードルアプリケータ。
【請求項4】
マイクロニードルが付勢手段によりハウジングから突出されるマイクロニードルアプリケータにおいて、
前記マイクロニードルの穿刺方向に移動可能に配された突出部材が前記付勢手段によって突出方向へ移動されることで、前記マイクロニードルが前記ハウジングから突出されるようになっていると共に、
該突出部材の基端側に配されて突出方向に弾性変形する圧縮ばね部材からなる緩衝手段が設けられており、前記付勢手段により前記ハウジングから突出された前記マイクロニードルに対して、突出方向への付加外力を
該緩衝手段を介し
て継続的に及ぼす
ことにより、該付勢手段により皮膚へ穿刺された該マイクロニードルを更に皮膚に押し付ける緩衝的外力付加機構を備えている
と共に、
該緩衝的外力付加機構が、外部からの操作により前記付加外力を及ぼす付加外力操作部材を備えており、該付加外力操作部材によって及ぼされた該付加外力が前記緩衝手段を介して該マイクロニードルに及ぼされることを特徴とするマイクロニードルアプリケータ。
【請求項5】
前記付加外力操作部材の操作を阻止する操作ロック機構が解除可能に設けられている請求項4に記載のマイクロニードルアプリケータ。
【請求項6】
前記付加外力操作部材における外部からの操作面が、少なくとも穿刺前の保管状態において、前記ハウジングの表面から内部に入り込んだ位置に設定されている請求項4又は5に記載のマイクロニードルアプリケータ。
【請求項7】
前記緩衝手段が、前記付勢手段とは別の弾性部材によって構成されている請求項
4~6の何れか1項に記載のマイクロニードルアプリケータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤などを経皮的に伝送するマイクロニードルの皮膚への穿刺を行うことのできるマイクロニードルアプリケータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、皮下注射や静脈注射といった経皮的な薬剤の投与方法が知られている。このような注射による経皮的な薬剤の投与は、例えば経口的な薬剤の投与に比べて、効果が迅速に発揮されたり、酵素などにより分解されないなどのメリットがあるが、侵襲的であり、痛みを伴うことが多かった。
【0003】
そこで、微小な針(マイクロニードル)を用いた経皮的な薬剤投与方法が提案されている。すなわち、薬剤を塗布したマイクロニードルを皮膚に穿刺したり、中空のマイクロニードルを皮膚に穿刺して当該マイクロニードルに設けられたルーメンを通じて薬剤を注入したりすることで、経皮的に薬剤が投与され得る。マイクロニードルを用いた薬剤投与方法を採用することで、痛みの少ない経皮的な治療が可能とされている。そして、かかるマイクロニードルを皮膚に穿刺するための装置として、例えば特表2016-511105号公報(特許文献1)に記載の如きマイクロニードルアプリケータが知られている。
【0004】
ところで、このようなマイクロニードルアプリケータは、例えばハウジングと、当該ハウジングに収容される付勢手段とを備えており、かかる付勢手段によりアプリケータに装着されるマイクロニードルがハウジングから突出して患者の皮膚に穿刺されるようになっている。すなわち、かかるマイクロニードルアプリケータでは、例えば圧縮コイルスプリングなどの付勢手段が復元変形してマイクロニードルが瞬間的に穿刺されるのみであることから、マイクロニードルに塗布された薬剤の経皮的な投与が十分でない場合があった。それ故、薬剤をより確実に経皮的に投与することのできるマイクロニードルアプリケータが求められていた。
【0005】
なお、上記特許文献1には、穿通の改善を目的として、複数のばねを用いて、第1のプランジャ要素(マイクロニードル)に対して追加のプランジャ要素を連続的に衝打または衝突させる態様が提案されている。ところが、かかる構造を採用すると、マイクロニードルに衝撃的な外力が及ぼされることから、患者が痛み等の違和感を感じるおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述の事情を背景に為されたものであって、その解決課題とするところは、患者の感じる痛み等の違和感を抑えつつ薬剤をより確実に経皮的に投与することのできる、新規な構造のマイクロニードルアプリケータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、このような課題を解決するために為された本発明の態様を記載する。なお、以下に記載の各態様において採用される構成要素は、可能な限り任意の組み合わせで採用可能である。
【0009】
本発明の第1の態様は、マイクロニードルが付勢手段によりハウジングから突出されるマイクロニードルアプリケータにおいて、前記マイクロニードルの穿刺方向に移動可能に配された突出部材が前記付勢手段によって突出方向へ移動されることで、前記マイクロニードルが前記ハウジングから突出されるようになっていると共に、該突出部材の基端側に配されて突出方向に弾性変形する圧縮ばね部材からなる緩衝手段が設けられており、前記付勢手段により前記ハウジングから突出された前記マイクロニードルに対して、突出方向への付加外力を該緩衝手段を介して継続的に及ぼすことにより、該付勢手段により皮膚へ穿刺された該マイクロニードルを更に皮膚に押し付ける緩衝的外力付加機構を備えていると共に、該緩衝的外力付加機構が、前記付加外力を生ぜしめる付加外力発生部材を備えており、該付加外力発生部材によって生ぜしめられた該付加外力が前記緩衝手段を介して該マイクロニードルに及ぼされることを特徴とするものである。
【0010】
本態様に従う構造とされたマイクロニードルアプリケータによれば、ハウジングから突出して皮膚に穿刺されたマイクロニードルに対して付加的な外力が継続的に及ぼされることから、マイクロニードルの皮膚への穿刺状態が維持されて、薬剤の経皮的な投与の安定化が図られ得る。また、穿刺されたマイクロニードルへの付加的な外力が、緩衝手段を介して及ぼされることから、マイクロニードルに対する衝撃力の作用が軽減されて、患者の痛み等の違和感が軽減され得る。
【0012】
また、本態様に従う構造とされたマイクロニードルアプリケータによれば、付加外力発生部材を備えていることから、使用者が外部から大きな付加外力を及ぼす必要がない。
【0013】
本発明の第2の態様は、前記第1の態様に係るマイクロニードルアプリケータにおいて、前記付加外力発生部材が、圧縮状態に保持されることで前記付加外力を生ぜしめる圧縮ばね部材によって構成されており、該圧縮ばね部材における該付加外力が前記緩衝手段に対して加圧力伝達部材を介して及ぼされるようになっていると共に、該加圧力伝達部材の移動を阻止する移動ロック機構が解除可能に設けられているものである。
【0014】
本態様に従う構造とされたマイクロニードルアプリケータによれば、加圧力伝達部材を利用して付加外力のマイクロニードルに対する作用を制御することが可能になる。
本発明の第3の態様は、前記第1又は2の態様に係るマイクロニードルアプリケータにおいて、前記緩衝手段が、前記付勢手段によって構成されているものである。
本態様に従う構造とされたマイクロニードルアプリケータによれば、緩衝手段と付勢手段とを同じ部材で構成することで、構造の簡略化や部品点数の削減が図られ得る。
【0015】
本発明の第4の態様は、マイクロニードルが付勢手段によりハウジングから突出されるマイクロニードルアプリケータにおいて、前記マイクロニードルの穿刺方向に移動可能に配された突出部材が前記付勢手段によって突出方向へ移動されることで、前記マイクロニードルが前記ハウジングから突出されるようになっていると共に、該突出部材の基端側に配されて突出方向に弾性変形する圧縮ばね部材からなる緩衝手段が設けられており、前記付勢手段により前記ハウジングから突出された前記マイクロニードルに対して、突出方向への付加外力を該緩衝手段を介して継続的に及ぼすことにより、該付勢手段により皮膚へ穿刺された該マイクロニードルを更に皮膚に押し付ける緩衝的外力付加機構を備えていると共に、前記緩衝的外力付加機構が、外部からの操作により前記付加外力を及ぼす付加外力操作部材を備えており、該付加外力操作部材によって及ぼされた該付加外力が前記緩衝手段を介して該マイクロニードルに及ぼされることを特徴とするものである。
【0016】
本態様に従う構造とされたマイクロニードルアプリケータによれば、付加外力操作部材を通じて外部から加える付加外力を適宜且つ容易に変更、調節などすることができる。
【0017】
本発明の第5の態様は、前記第4の態様に係るマイクロニードルアプリケータにおいて、前記付加外力操作部材の操作を阻止する操作ロック機構が解除可能に設けられているものである。
【0018】
本態様に従う構造とされたマイクロニードルアプリケータによれば、操作ロック機構により、付加外力操作部材による付加外力の意図しない付加が防止され得る。
【0019】
本発明の第6の態様は、前記第4又は5の態様に係るマイクロニードルアプリケータにおいて、前記付加外力操作部材における外部からの操作面が、少なくとも穿刺前の保管状態において、前記ハウジングの表面から内部に入り込んだ位置に設定されているものである。
【0020】
本態様に従う構造とされたマイクロニードルアプリケータによれば、少なくとも保管状態において、付加外力操作部材の意図しない操作が一層効果的に防止され得る。
【0021】
本発明の第7の態様は、前記第4~第6の何れかの態様に係るマイクロニードルアプリケータにおいて、前記緩衝手段が、前記付勢手段とは別の弾性部材によって構成されているものである。
【0022】
本態様に従う構造とされたマイクロニードルアプリケータによれば、例えば緩衝手段と付勢手段とが相互に異なる弾性部材により構成される場合には、緩衝手段と付勢手段との弾性等を各別に設定することができて、アプリケータの設計自由度が向上され得る。
【発明の効果】
【0025】
本発明に従う構造とされたマイクロニードルアプリケータによれば、皮膚に穿刺されたマイクロニードルに対する付加外力が緩衝的に及ぼされることから、患者が感じる痛み等の違和感を抑えつつ薬剤をより確実に経皮投与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の第1の実施形態としてのマイクロニードルアプリケータを使用前の保管状態で示す縦断面図。
【
図2】
図1に示されたマイクロニードルアプリケータの分解斜視図。
【
図3】
図1に示されたマイクロニードルアプリケータの要部を拡大して示す縦断面斜視図であって、可動シリンダのハウジング側への移動を阻止する移動制限手段を説明するための説明図。
【
図4】
図1に示されたマイクロニードルアプリケータからキャップとカバーをハウジングから取り外した使用前の初期状態を底面側から示す斜視図。
【
図5】
図4に示されたマイクロニードルアプリケータにおいて穿刺ロッドをハウジング内に押し込んだ状態を示す斜視図。
【
図6】
図5に示されたマイクロニードルアプリケータに対してマイクロニードルを保持するケースを装着する途中の状態を示す斜視図。
【
図7】
図6に示されたマイクロニードルアプリケータに対してマイクロニードルを保持するケースを装着した状態を示す斜視図。
【
図8】
図7に示されたマイクロニードルアプリケータにおいてマイクロニードルを保持するケースからケースカバーを外した状態を示す斜視図。
【
図9】
図8に示されたマイクロニードルアプリケータを平面側から示す斜視図。
【
図10】
図9におけるX-X断面を示す横断面斜視図。
【
図11】
図9に示されたマイクロニードルアプリケータにおいて可動シリンダをハウジング内へ押し込んだ状態を示す斜視図。
【
図12】
図11に示されたマイクロニードルアプリケータの縦断面図。
【
図13】
図12におけるXIII-XIII断面を示す横断面斜視図。
【
図14】
図1に示されたマイクロニードルアプリケータをマイクロニードルの穿刺状態で示す縦断面斜視図。
【
図15】
図14に示されたマイクロニードルアプリケータの縦断面図。
【
図16】
図14に示されたマイクロニードルアプリケータにおける斜視図において外側ハウジングを除いて示す図であって、加圧力伝達部材の移動を阻止する移動ロック機構を説明するための説明図。
【
図17】
図1に示されたマイクロニードルアプリケータにおいて穿刺後のマイクロニードルに対して付加外力を及ぼした状態を示す縦断面図。
【
図18】本発明の第2の実施形態としてのマイクロニードルアプリケータを示す斜視図であって、マイクロニードルの穿刺準備状態を示す図。
【
図19】
図18に示されたマイクロニードルアプリケータにおける斜視図において外側ハウジングおよびシリンダロックを除いて示す図であって、付加外力操作部材の操作を阻止する操作ロック機構を説明するための説明図。
【
図21】
図18に示されたマイクロニードルの縦断面斜視図であって、マイクロニードルの穿刺後、且つ付加外力を及ぼす前の状態を示す図。
【
図23】
図18に示されたマイクロニードルアプリケータにおいて穿刺後のマイクロニードルに対して付加外力を及ぼした状態を示す縦断面図。
【
図24】本発明の第3の実施形態としてのマイクロニードルアプリケータを使用前の保管状態で示す縦断面図。
【
図25】
図24に示されたマイクロニードルアプリケータの分解斜視図。
【
図26】
図24に示されたマイクロニードルアプリケータにおいてキャップとカバーを取り外して穿刺ロッドをハウジング側に押し込んだ状態を示す縦断面図。
【
図27】
図24に示されたマイクロニードルアプリケータにおいてマイクロニードルの穿刺状態を示す縦断面図。
【
図28】
図24に示されたマイクロニードルアプリケータにおいてマイクロニードルに対して付加外力を及ぼした状態を示す縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
【0028】
先ず、
図1には、本発明の第1の実施形態としてのマイクロニードルアプリケータ(以下、アプリケータ)10が示されている。なお、
図1では、アプリケータ10が、使用前の状態、例えば商品として市場に流通されて使用者に提供される保管状態で示されている。このアプリケータ10は、ハウジング12と、当該ハウジング12内に収容される付勢手段としての穿刺ばね14とを備えており、当該穿刺ばね14の付勢力により、マイクロニードル16(
図8など参照)をハウジング12から突出させて皮膚に穿刺することが可能とされている。これにより、マイクロニードル16に塗布された薬剤が、患者に経皮的に投与されるようになっている。なお、以下の説明において、上下方向とは、後述する穿刺ばね14の変形に伴う穿刺ロッド18の移動方向となる
図1中の上下方向をいう。また、上方とは、アプリケータ10が患者の皮膚に押し付けられる際に使用者が把持して押し付ける側(皮膚から遠い側)である
図1中の上方をいう一方、下方とは、患者の皮膚の位置する側である
図1中の下方をいう。さらに、前方とは、ハウジング12からの後述する穿刺ボタン122や加圧ボタン172の突出方向となる
図1中の左方をいう一方、後方とは、これら穿刺ボタン122や加圧ボタン172の押込方向となる
図1中の右方をいう。
【0029】
より詳細には、アプリケータ10は、全体として下方に開口する上下逆向きの略有底筒形状とされたハウジング12を備えている。本実施形態では、
図2にも示されるように、当該ハウジング12が、外周側に位置する外側ハウジング20と、内周側に位置する内側ハウジング22とを含んで構成されている。なお、アプリケータ10において、ばねを除く各部材は、硬質の合成樹脂等により形成されることが好ましい。
【0030】
外側ハウジング20は、全体として下方に開口する逆向きの略有底筒形状とされており、上底壁部24の外周縁部から周壁部26が下方に延びている。この上底壁部24は、平面視が略円環形状または略環状の正八角形とされて、上方に膨らんだドーム状とされており、中央には、上下方向に貫通する略正八角形状の貫通孔28が形成されている。また、上底壁部24において、貫通孔28よりも外周側には、周上の一部(
図1中の紙面奥方)において、上下方向に貫通する略矩形状の窓部29(
図11など参照)が形成されている。そして、かかる上底壁部24の外周縁部から下方に向かって略ストレートな筒形状の周壁部26が一体形成されている。
【0031】
また、上底壁部24の貫通孔28の開口周縁部には、下方に突出する係止爪30が設けられている。かかる係止爪30は、ハウジング12の軸直角方向となる径方向(
図1中の左右方向)に弾性変形可能とされている。なお、本実施形態では、4本の係止爪30が、周上で略等間隔(略90度毎)に形成されている。
【0032】
さらに、上底壁部24において係止爪30よりも外周側(係止爪30と周壁部26との径方向間)には、下方に突出する平板状又は湾曲板状の2つの支持壁部32a,32bが、径方向(
図1中の左右方向)で相互に対向して形成されている。すなわち、アプリケータ10の中央に設けられる穿刺ばね14や穿刺ロッド18などの部材を挟んで一方の側に支持壁部32aが設けられているとともに、他方の側に支持壁部32bが設けられている。本実施形態では、一方の支持壁部32aの上下方向寸法が、他方の支持壁部32bの上下方向寸法よりも大きくされている。なお、一方の支持壁部32aの幅方向(周方向)の中央部分には、外周側へ突出するガイド突起34(
図3など参照)が、上下方向に延びて形成されている。
【0033】
更にまた、外側ハウジング20の上下方向中間部分には、上底壁部24および/または周壁部26を厚さ方向に貫通する穿刺ボタン用孔36および加圧ボタン用孔38が形成されている。本実施形態では、両孔36,38が、それぞれ略横長の矩形状とされており、周上の一部(
図1中の左方)において、上下方向で相互に離隔して並列配置されている。特に、本実施形態では、穿刺ボタン用孔36が、加圧ボタン用孔38よりも僅かに大きい大きさをもって、加圧ボタン用孔38よりも下方に位置している。
【0034】
一方、内側ハウジング22は、全体として外側ハウジング20よりも小さな逆向きの略有底筒形状とされている。すなわち、内側ハウジング22の上端部分には、外側ハウジング20の貫通孔28と略同形状の蓋部40が設けられている。そして、蓋部40の下方において外側ハウジング20の係止爪30と対応する位置には、径方向に貫通する係止孔42が設けられている。さらに、蓋部40の内面(下面)には、後述する付加外力発生部材としての加圧ばね88を支持する略円柱または多角柱形状のばね支持部46が、下方に突出して一体的に設けられている。本実施形態では、かかるばね支持部46の下端が、ハウジング12の上下方向中間部分(外側ハウジング20における周壁部26の上下方向中間部分)にまで至っている。
【0035】
更にまた、蓋部40の外周から下方に延び出した周壁部分には、高さ方向の中間部分に段差が設けられており、段差より下方が大径の周壁部48とされている。この周壁部48は、略角丸の矩形状または略正八角形状とされており、外側ハウジング20における支持壁部32aの内側に位置する壁部50aと、支持壁部32bの内側に位置する壁部50bと、これらの径方向で対向位置する壁部50a,50bを相互に接続する一対の壁部50c,50cとを含んで構成されている。また、壁部50aの外面は、段差より下方において上端から下端近くにまで広がる縦平面とされており、当該縦平面の下端には、軸直角方向に広がる当接面が形成されている。
【0036】
さらに、壁部50aの内面における幅方向略中央には、段差より下方において上下方向の略全長に亘って延びて内方に開口するガイド凹溝52(
図10など参照)が形成されている。更にまた、周壁部48を構成する上記各壁部50a,50b,50c,50cには、それぞれ、段差より上側部分に位置して前述の係止孔42が形成されている。更に、壁部50bには、係止孔42から下方に延びる切欠き54が設けられていると共に、壁部50c,50cには、係止孔42,42から下方に延びる切欠き56,56が設けられている。また、本実施形態では、壁部50b,50c,50cの各外面において、部分的に上下方向に延びるリブが設けられている。さらに、内側ハウジング22の下端には、内周が広げられて下方に突出するカラー部58が形成されている。
【0037】
そして、前述の外側ハウジング20に対して上述の内側ハウジング22が下方から挿入されて組み付けられることでハウジング12が構成されている。また、外側ハウジング20の貫通孔28には、内側ハウジング22の蓋部40が嵌め入れられているとともに、各係止爪30が係止孔42に係止されている。
【0038】
そして、外側及び内側の両ハウジング20,22は、貫通孔28と蓋部40とにおいて径方向で重ね合わされた内外周面が非円形状(本実施形態では、それぞれ略正八角形状)とされることで周方向に位置決めされている。また、係止爪30の係止孔42への係止作用と、外側ハウジング20の支持壁部32aの下端と内側ハウジング22の壁部50aの下端に形成された前記当接面との当接作用とによって、外側ハウジング20と内側ハウジング22とが上下方向で位置決めされた状態で固定されている。なお、かかる固定状態では、外側ハウジング20の上端面(上底壁部24の上端面)と内側ハウジング22の上端面(蓋部40の上端面)とが、上下方向で略同じ位置となっている。
【0039】
さらに、ハウジング12の内部には、穿刺ロッド18が配されている。本実施形態では、穿刺ロッド18は、筒状部60と底壁部62を有しており、全体として上下方向に延びる略有底の筒形状とされている。筒状部60の外周形状は、内側ハウジング22の周壁部48の内周形状よりも僅かに小さくされている。
【0040】
筒状部60は、内側ハウジング22の内周側において壁部50a,50b,50c,50cとそれぞれ径方向で対向する各壁部として壁部64a,64b,64c,64cを備えている。なお、壁部64aの幅方向略中央には、上下方向の略全長に亘って延びるガイド凸条66が、外方に突設されている。また、壁部64bの上方部分には、壁部64bを貫通して貫通窓68が形成されている。さらに、壁部64cのそれぞれの上端部分には、外方に突出する位置決め突部70が設けられている。
【0041】
更にまた、底壁部62は、筒状部60よりも大きな外径の略円板形状とされて、穿刺ロッド18の下端においてフランジ状に突出している。なお、底壁部62の上面には、筒状部60内に突出して、穿刺ばね14の下端を支持する略筒状のばね支持部71が設けられている。
【0042】
以上の如き穿刺ロッド18は、筒状部60において内側ハウジング22の周壁部48に下方から差し入れられて組み付けられている。また、周壁部48の壁部50aの内面に設けられたガイド凹溝52に対して筒状部60の壁部64aの外面に設けられたガイド凸条66が差し入れられるとともに、壁部50cに設けられた切欠き56に対して壁部64cに設けられた位置決め突部70が差し入れられている。これにより、内側ハウジング22の蓋部40と穿刺ロッド18とが上下方向で対向しているとともに、穿刺ロッド18と内側ハウジング22とが上下方向で移動可能、即ち相互に接近する方向および相互に離隔する方向に相対移動可能とされている。
【0043】
なお、穿刺ロッド18における底壁部62の外径寸法は、内側ハウジング22のカラー部58における内径寸法よりも小さくされており、穿刺ロッド18の内側ハウジング22に対する上方への移動端は、例えば底壁部62の外周部分が周壁部48の下端部分に打ち当たることで規定されたり、穿刺ロッド18が後述する加圧力伝達部材としての加圧ロッド72と当接することで規定され得る。また、穿刺ロッド18の内側ハウジング22に対する下方への移動端は、例えば位置決め突部70が切欠き56の下端に打ち当たることなどで規定され得る。
【0044】
さらに、これら穿刺ロッド18と内側ハウジング22との上下方向間には、加圧力伝達部材としての加圧ロッド72が配されている。この加圧ロッド72は、全体として上方に開口する略有底の筒形状とされており、上下方向に延びる円筒状部74と、当該円筒状部74の下方開口部を閉塞する略円形の底板部76とを備えている。この円筒状部74の外径寸法は、穿刺ロッド18における筒状部60の内法寸法よりも小さくされているとともに、円筒状部74の内径寸法は、蓋部40から下方に突出するばね支持部46の外形寸法よりも大きくされている。
【0045】
また、かかる円筒状部74の上端部分は、外周側に折り返されるようにして下方に延びる外周筒部78を有しており、これら円筒状部74と外周筒部78との径方向間には、下方に開口して穿刺ばね14の上端部分を支持する、略環状のばね支持部80が形成されている。
【0046】
なお、かかる外周筒部78における周上の一部(
図1中の左方)には、厚さ寸法が大きくされた厚肉部82が設けられており、内側ハウジング22と加圧ロッド72との組付時において、かかる厚肉部82が、内側ハウジング22の壁部50aの内面に設けられたガイド凹溝52に差し入れられるようになっている。これにより、内側ハウジング22と加圧ロッド72とが周方向で相互に位置決めされて、上下方向で案内されつつ移動可能とされている。
【0047】
また、かかる外周筒部78における径方向1方向の両側(
図1中の紙面手前奥方向両側)には、外周側に突出する係止突部84が設けられている。本実施形態では、これら係止突部84,84が、内側ハウジング22における壁部50c,50cに設けられた切欠き56,56と対応する位置に形成されており、内側ハウジング22と加圧ロッド72との組付時において、各係止突部84がそれぞれの切欠き56内に位置している。特に、本実施形態において、係止突部84の上端面には、後述する加圧ボタン172の移動方向(
図1中の左方から右方に向かう方向)に向かって係止突部84の厚さ寸法(上下方向寸法)が小さくなる方向に傾斜する傾斜面86が形成されている。
【0048】
そして、これら内側ハウジング22と穿刺ロッド18と加圧ロッド72とが相互に組み付けられている。すなわち、内側ハウジング22の蓋部40から下方に突出するばね支持部46が、加圧ロッド72の円筒状部74に対して上方から挿入されているとともに、当該円筒状部74が、穿刺ロッド18の筒状部60における上方開口部から筒状部60の内部に挿入されており、これら内側ハウジング22と穿刺ロッド18と加圧ロッド72とが略同軸的に、上下方向で直列して配置されている。
【0049】
また、かかる穿刺ロッド18と加圧ロッド72との上下方向間には、圧縮コイルスプリングである穿刺ばね14が配されている。すなわち、穿刺ばね14が加圧ロッド72の円筒状部74に外挿されると共に穿刺ロッド18の筒状部60に内挿されて、穿刺ばね14の上端部分が加圧ロッド72のばね支持部80に固定されている一方、穿刺ばね14の下端部分が穿刺ロッド18のばね支持部71に固定されている。これにより、穿刺ばね14が圧縮されることで、穿刺ロッド18には下方への付勢力が及ぼされるようになっている。なお、
図1に示されるアプリケータ10の保管状態や、
図1に示される状態から後述するカバー194やキャップ192を取り外した初期状態(後述する
図4)では、穿刺ばね14が略自然長とされている。
【0050】
さらに、加圧ロッド72と内側ハウジング22との上下方向間には、付加外力発生部材としての加圧ばね88が配されている。本実施形態では、当該加圧ばね88が、圧縮ばね部材(圧縮コイルスプリング)によって構成されている。すなわち、加圧ばね88が、内側ハウジング22のばね支持部46に外挿されると共に加圧ロッド72の円筒状部74に内挿されて、加圧ばね88の上端部分が内側ハウジング22の蓋部40に固定されている一方、加圧ばね88の下端部分が加圧ロッド72の底板部76に固定されている。これにより、加圧ばね88が圧縮されることで、加圧ロッド72には下方への付勢力が及ぼされるようになっている。なお、かかる加圧ばね88は、
図1に示される保管状態において既に圧縮された状態で組み付けられている。
【0051】
更にまた、ハウジング12には、全体として略筒形状の可動シリンダ90が、上下方向で移動可能に組み付けられている。本実施形態では、周壁部92が略八角形状とされている。
【0052】
また、周壁部92の周上の一部(
図1中の左方)には、差入口94が設けられている。この差入口94は、下方に開放された切欠窓状とされている。後述するように、使用者は、可動シリンダ90の外部側方から、差入口94を通じて、可動シリンダ90の内部に手指を差し入れ易くなっている。
【0053】
また、周壁部92における周上の一部(
図1中の左方)は、上方に突出する当接板部96が形成されている。この当接板部96には、幅方向(周壁部92の周方向)の両側に突出する突出当接部98,98が設けられている。各突出当接部98は、当接板部96の上端から所定長さで下方に延びており、突出当接部98の下端が傾斜面100とされている。また、当接板部96の基端部分(下方部分)の幅方向両側には、突出当接部98が設けられておらず、切欠き状の当接回避領域102が形成されている。さらに、当接板部96の内面の幅方向略中央には、上下方向の略全長に亘って延びるガイド凹部104が形成されている。
【0054】
更にまた、周壁部92には、上方に開口する略筒状のばね収容部106が形成されている。本実施形態では、一対のばね収容部106,106が、周壁部92の軸直角方向(
図1中の紙面手前奥方向)に対向位置して設けられている。なお、本実施形態では、ばね収容部106が、可動シリンダ90の周壁部92よりも上方に突出している。また、一対のばね収容部106,106の相互の対向内面には、それぞれ押圧部108(
図13参照)が突設されている。なお、各押圧部108において、後述する穿刺ボタン122側の前面(
図1中の左方側の面)は、下方になるにつれて穿刺ボタン122から離れる後方(
図1中の右方)に向かって傾斜する傾斜面110(
図13参照)とされている。
【0055】
また、可動シリンダ90には、後述するマイクロニードル16のケース210を保持する一対のケース保持部112,112が、一対のばね収容部106,106の下方に突出して設けられている。各ケース保持部112は、略矩形の枠形状とされており、下辺部分の略中央には、内方に突出する爪部114が設けられている。特に、本実施形態では、爪部114の内面に凹凸が付されており、後述するようにマイクロニードル16のケース210の外周面に設けられた凹凸に係合可能とされている。
【0056】
さらに、可動シリンダ90の周壁部92において、差入口94と径方向で対向する後方側には、下方に突出するストッパ116が設けられている。かかるストッパ116により、後述するマイクロニードル16のケース210を可動シリンダ90へ装着する際に、ケース210を後方に向けて押し込む移動端が規定されるようになっている。
【0057】
そして、可動シリンダ90のハウジング12への組付状態では、可動シリンダ90の周壁部92が、外側ハウジング20の周壁部26と内側ハウジング22の周壁部48との間に位置している。また、可動シリンダ90の当接板部96に設けられたガイド凹部104には、外側ハウジング20における支持壁部32aのガイド突起34が差し入れられており、これらガイド突起34とガイド凹部104とのガイド作用により、可動シリンダ90が、ハウジング12に対して上下方向に対して傾くことなく移動可能とされている。
【0058】
また、可動シリンダ90とハウジング12との間には、一対のばね収容部106,106に各下部が差し入れられた一対の圧縮コイルスプリングからなる押さえばね118,118により、上下方向で互いに離隔する方向の付勢力が及ぼされている。すなわち、可動シリンダ90とハウジング12とが相互に接近する方向に相対移動することで押さえばね118,118が圧縮変形せしめられるとともに、当該押さえばね118,118の弾性的な復元変形により可動シリンダ90とハウジング12とが相互に離隔する方向に相対移動させられるようになっている。なお、各押さえばね118の上端部分は、例えば外側ハウジング20の上底壁部24から下方に突出するばね保持部120(
図10参照)に外挿されて、例えば押さえばね118の上端が上底壁部24の内面に固定されている。
【0059】
さらに、ハウジング12には、マイクロニードル16の穿刺作動を行う穿刺ボタン122とロックレバー124とが組み付けられている。穿刺ボタン122は、穿刺ボタン用孔36へ出入可能に嵌め入れられて外側ハウジング20の外へ突出する穿刺ボタン本体126と、穿刺ボタン用孔36の内側で広がって外側ハウジング20からの抜け出しを防止する鍔部128とを備えている。さらに、鍔部128の幅方向(
図1中の紙面手前奥方向)の両端部分には、内方に突出する係合突部130,130が設けられている。なお、各係合突部130の突出先端面には、突出高さが下方に向かって次第に大きくなる傾斜面132(
図2参照)が設けられている。
【0060】
一方、ロックレバー124は、全体として略矩形枠状の部材とされており、周壁部134が、前後方向で対向する略平板状の壁部136a,136bと、左右方向で対向する略平板状の壁部136c,136cとから構成されている。
【0061】
なお、周壁部134の前側の壁部136aには、穿刺ボタン122の係合突部130,130と対応する位置に、上方に開口する切欠き状の貫通溝138,138が設けられている。そして、穿刺ボタン122の鍔部128が壁部136aに対して外方から重ね合わされるとともに、係合突部130が貫通溝138に差し入れられてロックレバー124の周壁部134の内方に突出している。
【0062】
また、周壁部134の後側の壁部136bには、周方向の略中央から周壁部134の外方(後方)に突出するばね支持部140と、内方(前方)に突出する係止部142とが設けられている。更に、係止部142の突出先端における下面が、上方に行くに従って内方への突出高さが大きくなる傾斜面とされており、本実施形態では、湾曲しながら傾斜する傾斜湾曲面144とされている。一方、係止部142の上面は、略水平に広がる平坦面146とされている。
【0063】
更にまた、周壁部134における左右両側の壁部136c,136cのそれぞれには、外方に開口して上下方向の略全長に亘って延びる開口溝148が設けられている。本実施形態では、開口溝148における前方側の溝内面には、下方に行くに従って溝幅を狭くする方向に傾斜する傾斜面150(
図2参照)が設けられている。
【0064】
さらに、ロックレバー124の上方には、可動シリンダ90の上方への移動を阻止するシリンダロック152が配設されている。かかるシリンダロック152は、全体として略矩形枠状の部材とされており、周壁部154が、前後方向で対向する略平板状の壁部156a,156bと、左右方向で対向する一対の壁部156c,156cとから構成されている。
【0065】
そして、後側の壁部156bには、周方向の略中央から外方(後方)に突出するばね支持部158と、内方(前方)に突出する係合部160とが設けられている。なお、係合部160の突出先端における下面は、突出先端に行くに従って上方に傾斜する傾斜面とされており、本実施形態では、湾曲しながら傾斜する傾斜湾曲面162とされている。
【0066】
また、左右の壁部156c,156cのそれぞれには、下方に突出する当接突部164が設けられている。さらに、左右の壁部156c,156cのうちの一方の壁部156c(本実施形態では、
図1中の紙面奥方の壁部156c)において長さ方向(
図1中の左右方向)中間部分からは、上方に突出する係合爪部166が設けられている。この係合爪部166は、所定の幅方向寸法(
図1中の左右方向寸法)をもって上方に突出しており、その上端部には、左右の壁部156c,156cの対向方向内方に屈曲する屈曲部168が設けられている。本実施形態では、当該屈曲部168の上端面における前方部分が、後方部分とは異なる色で着色された着色部170(後述する
図16参照)とされている。なお、
図16中では、屈曲部168の上端面における後方部分が無色(白色)とされているとともに、前方部分(着色部170)が灰色に着色されているが、これら前方部分(着色部170)および後方部分の色は何等限定されるものではない。そして、
図1に示される保管状態や使用前の状態、具体的には穿刺ロッド18がハウジング12内に押し込まれる前の状態では、
図16中において窓部29により視認できる領域を破線で示すように、外側ハウジング20に設けられた窓部29を通じて、屈曲部168の上端面における後方部分の色(図中では、無色または白色)が視認されるようになっている。
【0067】
更にまた、シリンダロック152の上方には、加圧ロッド72の下方への移動を許容する加圧ボタン172が配設されている。かかる加圧ボタン172は、全体として略矩形枠状の周壁部174を備えており、当該周壁部174が、前方に位置してハウジング12の加圧ボタン用孔38から突出する加圧ボタン本体176aと、当該加圧ボタン本体176aと前後方向で対向する略平板状の壁部176bと、これら加圧ボタン本体176aと壁部176bとを接続して左右方向で対向する一対の壁部176c,176cとから構成されている。
【0068】
そして、これら左右の壁部176cの長さ方向(
図1中の左右方向)中間部分には、下方に突出する保持部178が、所定の幅寸法をもって設けられている。これら保持部178は、左右方向で所定距離を隔てて相互に対向しており、当該保持部178の内面には、対向方向内方に突出する係止突起180が形成されている。本実施形態では、係止突起180における下端の前方側端面に傾斜湾曲面182が設けられている。
【0069】
さらに、周壁部174における後側の壁部176bには、周方向の略中央から外方(後方)に突出するばね支持部184が形成されている。
【0070】
そして、これらロックレバー124とシリンダロック152と加圧ボタン172とはそれぞれ、それらを収容する外側ハウジング20に対して、何れも前後方向に伸びる圧縮コイルスプリングからなる穿刺ボタン用ばね186とロック用ばね188と加圧ボタン用ばね190と共に組み付けられている。穿刺ボタン用ばね186は、一端部がロックレバー124のばね支持部140に外挿されており、他端が外側ハウジング20の対向内面に支持されている。同様に、ロック用ばね188および加圧ボタン用ばね190は、一端がシリンダロック152のばね支持部158および加圧ボタン172のばね支持部184に外挿されており、他端が外側ハウジング20の対向内面に支持されている。
【0071】
これにより、
図1などに示される使用前の状態では、ロックレバー124とシリンダロック152と加圧ボタン172とが外側ハウジング20の前方に向けて付勢されており、ロックレバー124の前方に位置する穿刺ボタン122の穿刺ボタン本体126が、外側ハウジング20の穿刺ボタン用孔36から突出しているとともに、加圧ボタン172における加圧ボタン本体176aが、外側ハウジング20の加圧ボタン用孔38から突出している。
【0072】
また、ロックレバー124とシリンダロック152と加圧ボタン172とが上下方向で重ね合わされており、これら各部材124,152,172が、ハウジング12内において外側ハウジング20における支持壁部32bと内側ハウジング22における壁部50b(および当該壁部50bから外方に突出するリブ)とにより上下方向で挟まれて支持されているとともに、ロックレバー124の壁部136bから内方に突出する係止部142とシリンダロック152の壁部156bから内方に突出する係合部160とが、内側ハウジング22における壁部50bに設けられた切欠き54に差し入れられている。
【0073】
更にまた、シリンダロック152から上方に突出する係合爪部166が、加圧ボタン172の壁部176cに係合している(屈曲部168が壁部176cの上端面に当接している)と共に、加圧ボタン172の壁部176c,176cから下方に突出する保持部178,178が、シリンダロック152の壁部156c,156cの内方に差し入れられて内外で当接している。
【0074】
これにより、穿刺ボタン122、ロックレバー124、シリンダロック152、加圧ボタン172が、ハウジング12に対して上下方向で位置決めされた状態で組み付けられているとともに、各部材122,124,152,172が、穿刺ボタン用ばね186、ロック用ばね188、加圧ボタン用ばね190の変形を伴うことで前後方向に移動可能とされている。
【0075】
以上の如きアプリケータ10は、例えば外側ハウジング20に対して穿刺ボタン用ばね186、ロック用ばね188、加圧ボタン用ばね190と共に穿刺ボタン122、ロックレバー124、シリンダロック152、加圧ボタン172を組み付けた後に、外側ハウジング20の下方開口部から、内側ハウジング22、加圧ばね88、加圧ロッド72、押さえばね118,118、可動シリンダ90、穿刺ばね14、穿刺ロッド18を順に組み付けることで製造され得るが、組み付ける順番などは何等限定されるものではない。
【0076】
ここにおいて、
図1に示される使用前の状態では、内側ハウジング22と加圧ロッド72との上下方向間に設けられる加圧ばね88が圧縮状態で保持されている。すなわち、
図1に示される使用前の状態では、加圧ばね88の上端が固定される内側ハウジング22における蓋部40の下面と加圧ばね88の下端が固定される加圧ロッド72における底板部76の上面との離隔距離が、加圧ばね88の自然長よりも短くされており、加圧ロッド72には、加圧ばね88の弾性的な復元力に基づく下方への付勢力が及ぼされている。
【0077】
ここで、
図1に示される状態では、加圧ロッド72の下方への移動が防止されている。すなわち、アプリケータ10の使用前の状態では、後述する
図16にも示されているように、加圧ロッド72の外周筒部78から外周側に突出する係止突部84が、加圧ボタン172の左右壁部176cから内方に突出する係止突起180に係止されている。これにより、加圧ばね88による付勢力に基づく加圧ロッド72の下方への移動が、係止突部84が係止突起180に係止されることで阻止されている。すなわち、本実施形態では、加圧ロッド72を上方に位置決め保持せしめて、下方への移動を阻止する移動ロック機構191が、係止突部84と係止突起180とを含んで構成されている。
【0078】
なお、係止突部84の係止突起180への係止は、加圧ボタン172に対して加圧ロッド72を下方から押し込んで係止突部84が係止突起180を乗り越えることで実現されるようになっている。すなわち、加圧ボタン172が組み付けられた外側ハウジング20に対して加圧ロッド72を組み付けることで、加圧ロッド72の係止突部84の傾斜面86と加圧ボタン172の係止突起180の傾斜湾曲面182とが当接して、加圧ボタン172が加圧ボタン用ばね190の圧縮変形を伴いつつ後方に押し込まれる。これにより、加圧ロッド72の更なる上方への押込みが可能となり、係止突部84が係止突起180を乗り越えた時点で、加圧ボタン用ばね190の弾性的な復元変形に伴い加圧ボタン172が初期位置に復帰して係止突部84が係止突起180へ係止されるようになっている。
【0079】
一方、アプリケータ10の内部に設けられた穿刺ばね14、押さえばね118,118、穿刺ボタン用ばね186、ロック用ばね188、加圧ボタン用ばね190は、何れも自然長又は僅かな初期圧縮状態とされており、穿刺ロッド18および可動シリンダ90は何れもハウジング12から下方に突出している。特に、本実施形態では、使用前の状態において、穿刺ロッド18の底壁部62が、可動シリンダ90における周壁部92の内側に位置して外部空間に露呈しており、例えば可動シリンダ90の周壁部92に設けられた差入口94を通じて穿刺ロッド18の底壁部62へアクセスすることが可能とされている。尤も、使用前の状態において、穿刺ロッドは、可動シリンダよりも外方(下方)まで突出していてもよい。また、使用前の状態では、穿刺ボタン122(穿刺ボタン本体126)および加圧ボタン172(加圧ボタン本体176a)が、ハウジング12(外側ハウジング20)の穿刺ボタン用孔36および加圧ボタン用孔38から外方に突出した状態とされている。さらに、使用前の状態では、ロックレバー124やシリンダロック152が、それらの内方に設けられた係止部142および係合部160のそれぞれの突出先端に設けられた傾斜湾曲面144,162と、穿刺ロッド18における筒状部60の壁部64bとが上下方向の投影で重なる位置に配されている。
【0080】
ここにおいて、本実施形態では、ハウジング12から突出する穿刺ロッド18を外方から覆うキャップ192が設けられているとともに、ハウジング12の下方開口部を外方から覆うカバー194が設けられており、意図しない穿刺ロッド18の接触が防止されている。
【0081】
すなわち、このキャップ192は、底壁部196と略円筒形状の周壁部198とを有するカップ形状とされている。また、周壁部198の開口周縁部には、外周に突出する鍔部200が設けられている。かかる鍔部200の外径寸法は、可動シリンダ90の周壁部92の内径寸法と略等しくされており、キャップ192の開口部を上方に向けた状態で可動シリンダ90の下方開口部から挿入することで、キャップ192の鍔部200が可動シリンダ90の周壁部92に対して略嵌め入れられて、キャップ192が可動シリンダ90に対して取外し可能に組み付けられるようになっている。かかるキャップ192が装着されることで、ハウジング12から突出する穿刺ロッド18が外側から覆われるとともに、穿刺ロッド18とキャップ192との間に隙間が設定されて、キャップ192に加えられる外力が穿刺ロッド18に及ぼされないようになっている。
【0082】
また、
図1に示される保管状態では、ハウジング12に対して下方からカバー194が被せられている。このカバー194は、全体として略カップ形状とされており、略八角形状とされた底壁部202と周壁部204とを備えている。周壁部204は、ハウジング12(外側ハウジング20)の周壁部26に対して着脱可能に外嵌されて、可動シリンダ90や穿刺ロッド18に外力が及ぼされないようにして保護し得るようにされている。
【0083】
ここにおいて、
図1などに示される使用前の状態では、
図3に要部拡大図が示されているように、可動シリンダ90における当接板部96の上端である突出当接部98,98と、シリンダロック152の壁部156c,156cから下方に突出する当接突部164,164とが上下方向で相互に当接している。これにより、使用前の状態における可動シリンダ90のハウジング12側への移動が阻止されており、本実施形態では、可動シリンダ90のハウジング12側への移動を阻止する移動制限手段206が、これら可動シリンダ90の突出当接部98とシリンダロック152の当接突部164とを含んで構成されている。
【0084】
また、本実施形態では、後述するように、穿刺ロッド18をハウジング12側へ押し込むことで可動シリンダ90のハウジング12側への移動が許容されるようになっており、穿刺ロッド18の直接の接触を防止するキャップ192を含んで可動シリンダ90のハウジング12側への移動を阻止する移動制限手段206が構成されるようになっていてもよい。あるいは、ハウジング12の下方開口部がカバー194で覆われることで可動シリンダ90に対して直接的に外力を及ぼすことが不能とされることから、シリンダロック152やキャップ192を設けることなくカバー194により移動制限手段206が構成されるようになっていてもよいし、シリンダロック152やキャップ192を設けて更にカバー194を含んで移動制限手段206が構成されてもよい。
【0085】
また、かかる使用前の状態では、特に後述する
図10に示されるように、穿刺ボタン122から内方に突出する係合突部130が、ロックレバー124の壁部136aに設けられた貫通溝138を通じて周壁部134の内部まで延びており、係合突部130の突出先端が、壁部136aの内方に設けられた可動シリンダ90の当接板部96における突出当接部98に対して、前後方向で当接するようになっている。これにより、使用前の状態において、穿刺ボタン122の押込操作が不能とされており、本実施形態では、穿刺ボタン122を操作不能にする安全機構208が、これら穿刺ボタン122の係合突部130と可動シリンダ90の突出当接部98とを含んで構成されている。
【0086】
かかるアプリケータ10の使用に際しては、先ず、
図1に示される保管状態からカバー194、キャップ192を順次取り外して、
図4に示される使用前の初期状態とする。そして、かかる初期状態から、
図5に示されるように、穿刺ロッド18をハウジング12の内方に押し込む。すなわち、可動シリンダ90の差入口94から差し入れた手指で穿刺ロッド18の底壁部62を押圧操作することにより、穿刺ばね14を圧縮変形させつつ穿刺ロッド18をハウジング12の上方に押し込む。かかる穿刺ロッド18のハウジング12への押込みに際しては、穿刺ロッド18のガイド凸条66と内側ハウジング22のガイド凹溝52とのガイド作用、および穿刺ロッド18の位置決め突部70が内側ハウジング22の切欠き56に嵌まり込むことによるガイド作用により、穿刺ロッド18がハウジング12に対して傾くことなく押し込まれるようになっている。
【0087】
なお、
図4,5では、アプリケータ10が、
図1の状態から上下反転した状態で示されており、例えば
図4,5のようにアプリケータ10を上下反転させた状態で把持して、穿刺ロッド18を押し下げるように操作してもよいが、穿刺ロッド18の押込方向は何等限定されるものではない。
【0088】
かかる穿刺ロッド18のハウジング12内への押込操作により、穿刺ロッド18が上方に移動して、穿刺ロッド18における壁部64bの上端とロックレバー124から内方に突出する係止部142の傾斜湾曲面144とが当接する。かかる当接状態から穿刺ロッド18を更に押し込むことで、穿刺ボタン用ばね186が圧縮変形させられつつ、ロックレバー124が、後方に移動せしめられる。
【0089】
そして、穿刺ロッド18を更にハウジング12内へ押し込むことで、次に、穿刺ロッド18における壁部64bの上端とシリンダロック152から内方に突出する係合部160の傾斜湾曲面162とが当接する。かかる当接状態から穿刺ロッド18を更に押し込むことで、ロック用ばね188が圧縮変形させられつつ、シリンダロック152が、後方に移動せしめられる。これにより、可動シリンダ90のハウジング12側への移動を阻止する移動制限手段206における、可動シリンダ90の突出当接部98とシリンダロック152の当接突部164との当接が解除されて、可動シリンダ90のハウジング12側への移動が許容される。すなわち、本実施形態では、移動制限手段206を解除して可動シリンダ90のハウジング12側への移動を許容する解除手段が、突出当接部98と当接突部164とを非当接状態とする機構により構成されている。したがって、本実施形態では、可動シリンダ90とシリンダロック152との当接による可動シリンダ90の移動阻止と、可動シリンダ90とシリンダロック152との当接解除による可動シリンダ90の移動許容とが、シリンダロック152の移動により、選択的に実現されるようになっている。
【0090】
なお、シリンダロック152の移動前は、外側ハウジング20の窓部29からシリンダロック152における屈曲部168の上端面の後方部分が視認されていたが、シリンダロック152の移動後には、
図16中において窓部29により視認できる領域を示す破線部分が着色部170内に移動して、窓部29から、屈曲部168の上端面の後方部分とは色が異なる前方部分(着色部170)が視認されるようになっている。すなわち、窓部29から視認できる色に応じて、シリンダロック152が移動しているか否か、要するに穿刺ロッド18がハウジング12内に押し込まれているか否かを確認することができる。なお、このような窓部29によってシリンダロック152が移動しているか否かを確認する機構は必須なものではなく、即ち窓部29や着色部170は必須なものではない。
【0091】
また、押込み操作によって移動する穿刺ロッド18の壁部64bに設けられた貫通窓68がロックレバー124の位置にまで達すると、貫通窓68へロックレバー124の係止部142が入り込み、ロックレバー124が、穿刺ボタン用ばね186の弾性的な復元力に基づいて前方へ移動する。これにより、後述する
図12にも示されるように、係止部142の突出先端における平坦面146が貫通窓68の内面に当接して、係止部142が貫通窓68に係止されるようになっている。この結果、穿刺ロッド18の下方への移動が阻止されて、穿刺ロッド18が、ハウジング12内に押し込まれて穿刺ばね14による下方への付勢力が及ぼされた状態で保持される。
【0092】
このように穿刺ロッド18をハウジング12内に押し込んだ後、
図6~8に示されるように、アプリケータ10の可動シリンダ90に対して、マイクロニードル16を保持するケース210を装着する。本実施形態では、ケース210が、マイクロニードル16を保持するケース本体212と、当該ケース本体212を外側から覆うケースカバー214とを含んで構成されている。
【0093】
すなわち、本実施形態のケース本体212は、全体として略円環状とされており、筒壁部216の上方の端部には、外周フランジ部218と内周フランジ部220(
図12参照)が形成されている。なお、筒壁部216の外径寸法は、可動シリンダ90におけるケース保持部112,112の対向間距離と略等しくされているとともに、筒壁部216の内周フランジ部220の内径寸法が、穿刺ロッド18における底壁部62の外径寸法よりも大きくされている。特に、本実施形態では、筒壁部216の外周面に凹凸が付されている。
【0094】
そして、内周フランジ部220には、略円形の粘着シート222の外周部分が重ね合わされて固着されている。かかる粘着シート222の下面には、中央部分にマイクロニードル16が固定されて、内周フランジ部220の中心孔内に配されている。
【0095】
マイクロニードル16の具体的構造は限定されないが、本実施形態では、複数の微小な中実針からなる針本体224と、当該針本体224が固定されるベース部226とを含んで構成されており、針本体224には患者に投与される薬剤が塗布されている。
【0096】
一方、ケースカバー214は、全体として略コの字状とされており、ケース本体212を上下両側から挟んで覆う一対のカバー部228,228と、これらカバー部228,228を周上の一部で接続する接続部230とを備えている。そして、ケースカバー214は、ケース本体212から、側方に向けて取り外し可能とされている。
【0097】
そして、
図6,7に示されるように、ケース本体212にケースカバー214が装着された状態で、ケース210が可動シリンダ90に対して差入口94を通じて装着及び取り外し可能とされている。なお、ケース本体212は、可動シリンダ90への装着状態で、外周フランジ部218がケース保持部112の爪部114と周壁部92との上下方向間で挟まれるとともに、筒壁部216の外周面に設けられた凹凸と爪部114に設けられた凹凸とが相互に係合せしめられている。
【0098】
また、
図8に示されるように、差入口94を通じてケース本体212からケースカバー214を引き抜くことで、マイクロニードル16が外部に露出した状態とされる。
【0099】
さらに、マイクロニードル16を備えたケース本体212が装着されたアプリケータ10は、マイクロニードル16が露出された
図9,10の下面において、患者の皮膚に押し付けられる。すなわち、ケース本体212における筒壁部216の下端を患者の皮膚に当接させた状態でハウジング12を下方に押し下げて、ハウジング12とケース本体212とを相互に接近変位させる。なお、
図10および後述する
図13では、穿刺ばね14の内部に位置する加圧ロッド72、加圧ばね88、ばね支持部46の図示が省略されている。
【0100】
これにより、
図11~13に示されるように、可動シリンダ90がハウジング12側(上方)へ移動させられる。すなわち、可動シリンダ90をハウジング12側へ移動させることで、押さえばね118が圧縮変形させられつつ、可動シリンダ90の周壁部92の略全体がハウジング12内へ収容される。かかる可動シリンダ90のハウジング12内への移動は、ハウジング12のガイド突起34と可動シリンダ90のガイド凹部104とのガイド作用により、可動シリンダ90がハウジング12に対して上下方向に真っ直ぐ移動せしめられる。
【0101】
なお、
図1などに示される使用前の状態では、穿刺ボタン122の係合突部130と可動シリンダ90の突出当接部98とが相互に当接することで安全機構208が構成されて、穿刺ボタン122の押込操作が不能とされていたが、可動シリンダ90がハウジング12内を上方に移動(ハウジング12側に移動)することで、係合突部130と突出当接部98との当接が解除されて、係合突部130が突出当接部98の下方に位置する当接回避領域102に移動せしめられるようになっている。これにより、安全機構208が解除されて、穿刺ボタン122を、ハウジング12の穿刺ボタン用孔36を通じて内部に押し込むことができる。
【0102】
また、
図13に示されるように、可動シリンダ90がハウジング12へ入り込んだ穿刺準備状態では、可動シリンダ90におけるばね収容部106に設けられた押圧部108が、ロックレバー124における壁部136cに設けられた開口溝148内に入り込んでおり、押圧部108に設けられた傾斜面110と開口溝148に設けられた傾斜面150とが、前後方向で相互に離隔した状態で対向している。
【0103】
而して、穿刺準備状態とされたアプリケータ10において、穿刺ボタン122を押圧操作して押し込むことで、
図14,15に示されるようにマイクロニードル16が穿刺作動される。なお、
図14,15では、マイクロニードル16が穿刺された後、穿刺ボタン122の押圧を解除した状態が示されている。すなわち、
図11~13に示される状態から穿刺ボタン122および当該穿刺ボタン122の内方に位置するロックレバー124が、穿刺ボタン用ばね186の圧縮変形を伴いつつ後方に移動せしめられることで、貫通窓68による係止部142の係止が解除されて、穿刺ロッド18が、穿刺ばね14の弾性的な復元力に基づいて下方に移動させられる。
【0104】
なお、本実施形態では、かかる穿刺ボタン122の押込操作に伴うロックレバー124の移動により、可動シリンダ90における押圧部108の傾斜面110とロックレバー124の開口溝148の傾斜面150とが相互に当接するようになっている。このような当接構造を採用することにより、穿刺ボタン122の押圧を解除すると共にアプリケータ10を皮膚から離隔させて、穿刺ボタン用ばね186および押さえばね118の弾性的な復元力により可動シリンダ90やロックレバー124を初期位置へ移動させるに際して、これら両部材90,124の初期位置への移動が安定して実現され得る。
【0105】
このような穿刺ボタン122の押込操作により、穿刺ロッド18の下端部分がケース本体212の内部を通過して、穿刺ロッド18の底壁部62がマイクロニードル16をハウジング12から下方に突出させるとともに、マイクロニードル16を粘着シート222と共に皮膚に押し付けて穿刺するようになっている。なお、かかる穿刺ボタン122の押込操作から穿刺ボタン122の押圧を解除することで、
図14,15に示されるように、穿刺ボタン用ばね186の弾性的な復元力によりロックレバー124が初期位置に復帰するようになっている。また、穿刺ロッド18の下方への移動に伴い穿刺ロッド18の壁部64bとシリンダロック152の係合部160との当接も解除されることから、ロック用ばね188の弾性的な復元力によりシリンダロック152が初期位置に復帰するようになっており、これにより、外側ハウジング20の窓部29からは屈曲部168の上端面における後方部分の色(本実施形態では、無色(白色))が視認されるようになっている。
【0106】
なお、このように穿刺ボタン122を押し込んで貫通窓68による係止部142の係止を解除することで、穿刺ばね14の弾性的な復元力により穿刺ロッド18が下方に移動してマイクロニードル16は瞬間的に皮膚に穿刺されるものと考えられる。ここにおいて、マイクロニードル16の皮膚への穿刺深さの実現や穿刺状態の安定化を図ったりするために下記機構を採用してもよい。
【0107】
本実施形態では、穿刺ボタン122を操作し、穿刺ばね14の復元力を利用してマイクロニードル16を穿刺した後、更に加圧ボタン172を押込操作することで、マイクロニードル16に対してハウジング12からの突出方向(下方)の付加外力が及ぼされて、マイクロニードル16が更に皮膚に押し込まれて穿刺状態がより安定して維持される。すなわち、加圧ボタン172の押込操作前は、
図16に示されているように、加圧ロッド72における係止突部84と加圧ボタン172における係止突起180との当接により移動ロック機構191が構成されて、加圧ばね88の付勢力に伴う加圧ロッド72の下方への移動が防止されている。ここで、加圧ボタン172を後方に移動させることで、係止突部84と係止突起180との当接が解除されて、
図17に示されるように、加圧ばね88の弾性的な復元変形に伴って加圧ロッド72が下方に移動せしめられる。これにより、加圧ロッド72と穿刺ロッド18との間で支持される穿刺ばね14の圧縮量が増大せしめられることとなり、加圧ばね88の弾性復元力が、穿刺ばね14を介して、穿刺ロッド18およびマイクロニードル16を更に皮膚に押し付ける付加外力として作用することで、マイクロニードル16が皮膚に穿刺された状態に維持される。
【0108】
要するに、予め圧縮状態とされていた加圧ばね88の復元力が加圧ロッド72を介して付加外力として穿刺ばね14に及ぼされるようになっており、更に当該付加外力が穿刺ばね14を介してマイクロニードル16に緩衝的に及ぼされるようになっている。それ故、本実施形態では、付加外力をマイクロニードル16に対して緩衝的に及ぼす緩衝手段が、穿刺ばね14によって構成されているとともに、緩衝的な外力を付加する緩衝的外力付加機構が加圧ばね88と加圧ロッド72を含んで構成されている。特に、本実施形態では、穿刺ばね14が、マイクロニードル16を付勢する付勢手段としても機能しており、緩衝手段が、付勢手段によって構成されている。また、本実施形態では、付加外力を生ぜしめる付加外力発生部材が加圧ばね88によって構成されており、当該加圧ばね88が圧縮状態に保持されることで生ぜしめられた付加外力が、加圧力伝達部材としての加圧ロッド72を介して穿刺ばね14およびマイクロニードル16に及ぼされるようになっている。
【0109】
このようなマイクロニードル16の皮膚への穿刺状態は、使用者がアプリケータ10を皮膚に押し付けている場合に達成される。すなわち、使用者が、アプリケータ10を皮膚に押し付けて穿刺ばね14により穿刺した状態で、マイクロニードル16に対して加圧ばね88による付加的な外力を継続的に及ぼすことで、マイクロニードル16が所定深さで(例えばより根元まで)穿刺されることに加えて、マイクロニードル16の皮膚への穿刺状態も所定時間に亘って継続的に維持されることから、マイクロニードル16に塗布された薬剤の経皮的な投与がより確実に実現され得る。なお、マイクロニードル16を皮膚に押し付ける時間は何等限定されるものではないが、所定時間経過後、使用者はアプリケータ10を皮膚から取り外すこととなる。本実施形態では、アプリケータ10を取り外した後もマイクロニードル16が粘着シート222により皮膚に貼り付けられることで、皮膚への穿刺状態が維持され得る。
【0110】
なお、
図17では、加圧ロッド72が下方に移動した後、加圧ボタン172の押し込みを解除することで、加圧ボタン用ばね190の弾性的な復元力により加圧ボタン172が初期位置に復帰した状態が示されている。かかる状態では、加圧ボタン172における係止突起180に対して加圧ロッド72における係止突部84が下方から当接することになることから、加圧ロッド72の上方への移動も防止されて、マイクロニードル16の皮膚への穿刺状態が一層安定して維持される。
【0111】
また、穿刺ボタン122の押込操作前に加圧ボタン172が押込操作された場合には、穿刺ロッド18がロックレバー124に係止されてハウジング12内に保持された状態であることから、加圧ロッド72は穿刺ロッド18に当接して下方への移動を制限されている。すなわち、本実施形態では、穿刺ボタン122の押込操作前における加圧ボタン172の押込操作が制限されている。換言すれば、穿刺ボタン122を押し込むことにより、加圧ボタン172を押し込んで加圧ロッド72の下方への移動が許容(移動ロック機構191が解除)されるようになっている。
【0112】
以上の如き構造とされたアプリケータ10では、上述のように、所定時間に亘って継続的にマイクロニードル16の皮膚への穿刺状態が維持されることから、マイクロニードル16に塗布された薬剤の経皮的な投与がより確実に達成され得る。特に、マイクロニードル16の穿刺後、マイクロニードル16に付加的に外力を及ぼして皮膚へ押し付けることとなるが、かかる付加的な外力が、マイクロニードル16(穿刺ロッド18)に対して穿刺ばね14を介して緩衝的に及ぼされることとなる。それ故、マイクロニードル16に対して衝撃的な荷重が及ぼされることが回避されて、患者が痛みを感じるおそれが効果的に低減され得る。
【0113】
特に、本実施形態では、マイクロニードル16を付勢する付勢手段と、マイクロニードル16への付加外力を緩衝的に及ぼす緩衝手段が何れも同一の穿刺ばね14によって構成されることから、構造の簡略化や部材点数の削減が図られる。なお、穿刺ばね14によるマイクロニードル16の当初穿刺力と、加圧ばね88による付加外力は、穿刺ばね14と加圧ばね88のばね定数や圧縮率などを各別に設定することで、各別に適宜に調節することが可能である。
【0114】
また、本実施形態では、マイクロニードル16への付加外力を生ぜしめる付加外力発生部材としての加圧ばね88を備えており、加圧ボタン172の押込操作に従って、加圧ボタン172の押込解除後もマイクロニードル16への加圧状態が維持されることから、例えばハウジング12とマイクロニードル16との間に、付加外力としての人力による外力を及ぼし続ける等という面倒な操作が回避されて、良好な操作性が発揮され得る。
【0115】
さらに、本実施形態では、加圧ロッド72の移動を阻止する移動ロック機構191が設けられており、意図せず加圧ロッド72が移動することが防止されている。特に、本実施形態では、穿刺ボタン122の押込前において移動ロック機構191により加圧ロッド72が移動することが防止されていることから、マイクロニードル16が皮膚に穿刺される前に加圧ロッド72が移動することが防止されている。
【0116】
更にまた、本実施形態では、穿刺ロッド18のハウジング12内への押込前に可動シリンダ90がハウジング12内へ移動することが阻止されていることから、例えば穿刺ロッド18をハウジング12内へ押し込む前にマイクロニードル16(ケース210)が可動シリンダ90に装着されて当該状態でアプリケータ10を皮膚に押し付けることに伴うマイクロニードル16の誤穿刺が安定して防止され得る。
【0117】
次に、
図18には、本発明の第2の実施形態としてのマイクロニードルアプリケータ(以下、アプリケータ)240が、穿刺準備状態(穿刺ロッド18および可動シリンダ90がハウジング242側に押し込まれている状態)で示されているとともに、
図19には、当該アプリケータ240が、外側ハウジング244およびシリンダロック152が省略された状態で示されている。本実施形態のアプリケータ240は、前記第1の実施形態のアプリケータ(10)に比べて、穿刺されたマイクロニードル16に対して付加外力を及ぼして当該マイクロニードル16を皮膚に押し付ける機構が異なっている。すなわち、アプリケータ240にマイクロニードル16を保持するケース210を装着してマイクロニードル16を皮膚に穿刺する機構などは前記第1の実施形態と略同様であり、以下の説明において、前記実施形態と実質的に同一の部材および部位には、図中に、前記実施形態と同一の符号を付すことにより詳細な説明を省略する。
【0118】
すなわち、本実施形態の外側ハウジング244は、前記第1の実施形態における外側ハウジング(20)と略同様の構造であることから、詳細な説明を省略するが、前記第1の実施形態における外側ハウジング(20)と異なり、加圧ボタン用孔(38)を備えておらず、周壁部26に穿刺ボタン用孔36のみを備えている。
【0119】
一方、本実施形態の内側ハウジング246は、前記第1の実施形態と同様に、逆向きの略有底筒形状とされており、上底壁部に相当する蓋部40の中央には、上下方向に貫通する加圧ボス用孔248が形成されている。そして、かかる内側ハウジング246の内部には、全体として略逆向きの略有底筒形状とされた加圧ボス部材250が配設されており、加圧ボス部材250において筒状とされた加圧ボス本体252が、蓋部40中央の加圧ボス用孔248を通じて上方に突出している。また、加圧ボス部材250において、加圧ボス本体252の下端には、外周側に突出するフランジ状部254が設けられている。なお、当該フランジ状部254の外径寸法は、加圧ボス用孔248の内径寸法よりも大きくされており、加圧ボス部材250が加圧ボス用孔248を通じて外部に抜け落ちることが防止されている。
【0120】
また、かかるフランジ状部254の外周面には、外周側に開口して上下方向に延びる切欠き状の開口溝256が形成されており、本実施形態では、径方向1方向両側(
図19中の右下および左上)に一対の開口溝256,256が形成されている。さらに、当該開口溝256の前方側の内面における上端部分には、上方になるにつれて前方側に傾斜する傾斜面258が形成されている。
【0121】
そして、内側ハウジング246の内周側において、加圧ボス部材250と穿刺ロッド18との上下方向間に穿刺ばね14が配設されている。なお、加圧ボス部材250において、加圧ボス本体252の内径寸法に対してフランジ状部254の内径寸法の方が大きくされており、これら加圧ボス本体252の内周面とフランジ状部254の内周面との間には、軸直角方向(上下方向と直交する方向)に広がる円環形状の段差面260(
図21など参照)が形成されている。そして、穿刺ばね14の上端部分が、加圧ボス部材250の段差面260に固定されているとともに、穿刺ばね14の下端部分が、穿刺ロッド18のばね支持部71に固定されている。これにより、後述するように、加圧ボス部材250を上方から押圧することで、穿刺ロッド18が下方に付勢されるようになっている。
【0122】
また、本実施形態のロックレバー262は、前記第1の実施形態のロックレバー(124)と略同様の構造とされているが、周壁部134において左右方向で対向する壁部136cには、上方に突出する保持部264が設けられているとともに、当該保持部264の上端における内面には、係止突起266が内周側に突出して形成されている。特に、本実施形態では、係止突起266の下端面は、前方に向かって係止突起266の上下方向寸法が小さくなる傾斜湾曲面268(
図20参照)とされている。一方、本実施形態における穿刺ボタン122およびシリンダロック152は、前記実施形態と略同様の構造とされている。尤も、本実施形態のシリンダロック152では、周壁部154における左右一対の壁部156cのそれぞれから係合爪部166が上方に向かって突出して、シリンダロック152のハウジング
242への組付時に、例えば内側ハウジング246に係合されるようになっている。
【0123】
そして、本実施形態においても、
図20に示されるように、外側ハウジング244に対して、穿刺ボタン用ばね186およびロック用ばね188を介して穿刺ボタン122、ロックレバー262およびシリンダロック152が組み付けられるとともに、更に内側ハウジング246、加圧ボス部材250、押さえばね118,118、穿刺ばね14、穿刺ロッド18が組み付けられて、必要に応じてキャップ192やカバー194が組み付けられることで、本実施形態のアプリケータ240が構成されている。
【0124】
ここにおいて、特に
図19に示されるように、穿刺ボタン122を押圧操作してマイクロニードル16を穿刺する前の状態では、ロックレバー262の保持部264から内方に突出する係止突起266が、内側ハウジング246を構成する壁部50cに設けられた切欠き56を通じて内側ハウジング246の内部に突出しており、かかる内側ハウジング246の内部において加圧ボス部材250のフランジ状部254が、ロックレバー262の係止突起266に上下方向で当接して係止されている。それ故、本実施形態では、穿刺ボタン122を押圧操作してマイクロニードル16を穿刺する前の状態では、フランジ状部254と係止突起266との相互の当接により、加圧ボス部材250の下方への移動が阻止されている。すなわち、本実施形態では、後述する付加外力操作部材である加圧ボス部材250の操作(移動)を阻止する操作ロック機構270が、フランジ状部254と係止突起266とを含んで構成されている。
【0125】
以上の如き構造とされた本実施形態のアプリケータ240においても、穿刺ボタン122が押圧操作されることで、
図21,22に示されるように、マイクロニードル16の穿刺作動が実現される。すなわち、穿刺ボタン122が押圧操作されることで、穿刺ボタン用ばね186の圧縮変形を伴いつつロックレバー262が後方へ押し込まれ、ロックレバー262の係止部142における穿刺ロッド18の貫通窓68への係止が解除されて、穿刺ばね14の付勢力に従って穿刺ロッド18が下方に移動してマイクロニードル16が皮膚に穿刺される。そして、このようにロックレバー262が後方へ移動することで、ロックレバー262の係止突起266が加圧ボス部材250のフランジ状部254に設けられた開口溝256に入り込んで、フランジ状部254における係止が解除される。したがって、本実施形態では、加圧ボス部材250の操作(移動)を阻止する操作ロック機構270が、穿刺ボタン122の押圧操作に伴って解除可能とされている。
【0126】
これにより、
図23に示されるように、加圧ボス部材250を下方(ハウジング242内)に押し込むことが可能となる。この結果、加圧ボス部材250と穿刺ロッド18との間で穿刺ばね14が圧縮されて、その弾性的な復元力により穿刺ロッド18が下方に押圧されてマイクロニードル16が一層確実に皮膚に穿刺される。すなわち、マイクロニードル16の皮膚への穿刺後に、加圧ボス部材250を下方に押し込むことで、付加的な外力が、緩衝手段である穿刺ばね14を介して緩衝的に且つ継続的にマイクロニードル16に及ぼされることから、本実施形態においても前記第1の実施形態と同様の効果が発揮され得る。したがって、本実施形態では、付加的な外力が外部からの操作により及ぼされるようにされており、外部からの付加外力を及ぼす付加外力操作部材が、加圧ボス部材250を含んで構成されている。そして、緩衝的な外力を付加する緩衝的外力付加機構が、付加外力操作部材としての加圧ボス部材250を含んで構成されている。
【0127】
特に、本実施形態では、加圧ボス部材250を下方に押し込む間のみ付加外力がマイクロニードル16に及ぼされて、マイクロニードル16が皮膚に押し付けられるようになっている。すなわち、マイクロニードル16に対して付加的に外力を及ぼす時間を、使用する薬剤などに応じて使用者が容易に調節することも可能となる。
【0128】
次に、
図24には、本発明の第3の実施形態としてのマイクロニードルアプリケータ(以下、アプリケータ)280が使用前の保管状態で示されている。このアプリケータ280においても、前記第1や第2の実施形態のアプリケータ(10,240)と比べて、穿刺されたマイクロニードル16に対して付加外力を及ぼして当該マイクロニードル16を皮膚に押し付ける機構が異なっている。すなわち、アプリケータ280にマイクロニードル16を保持するケース210を装着してマイクロニードル16を皮膚に穿刺する機構などは前記第1や第2の実施形態と略同様であり、以下の説明において、前記実施形態と実質的に同一の部材および部位には、図中に、前記実施形態と同一の符号を付すことにより詳細な説明を省略する。
【0129】
ここで、本実施形態における外側ハウジング282における上底壁部24の中央部分には、上方に開口する略円形の円形凹部284が形成されているとともに、当該円形凹部284における底壁部の中央部分に貫通孔28が形成されている。そして、当該貫通孔28に内側ハウジング286における蓋部40が挿入されて固定されることで、外側ハウジング282と内側ハウジング286とが相互に固定されて、本実施形態のハウジング288が構成されている。なお、蓋部40の中央部分には、上下方向に貫通する加圧ボス用孔248が形成されている。
【0130】
また、かかる内側ハウジング286には、上方から付加外力操作部材としての加圧ボス部材290が挿通されている。本実施形態の加圧ボス部材290は、上下方向に延びるロッド状部292を備えているとともに、当該ロッド状部292の上下方向中間部分には段差状部294を有しており、段差状部294よりも上方が下方に比べて大径とされている。また、ロッド状部292の上端部分には、外周側に広がる略円形の押圧操作部296が設けられているとともに、ロッド状部292の下端部分には、外周側に突出する係合部298が設けられている。かかる押圧操作部296の上面296aが、後述するように、マイクロニードル16への外力の付加時に外部から直接操作される操作面とされている。
【0131】
一方、内側ハウジング286には、下方から穿刺ロッド300が挿入されている。この穿刺ロッド300は、前記第1や第2の実施形態と同様に筒状部60および底壁部62を備えているが、底壁部62の中央には筒状部60内に突出する略筒状のばね支持部302が設けられているとともに、当該ばね支持部302の上端部分には、内周側に突出する係合爪部304が設けられている。
【0132】
以上の如き構造とされた加圧ボス部材290のロッド状部292が、内側ハウジング286に対して上方から挿通されて下方に延びているとともに、加圧ボス部材290の押圧操作部296が、外側ハウジング282の円形凹部284内に位置している。一方、内側ハウジング286に対して下方から穿刺ロッド300が挿入されることで、穿刺ロッド300の筒状部60が加圧ボス部材290の外周側に位置しているとともに、ロッド状部292の下端部分が穿刺ロッド300におけるばね支持部302に挿入されて、係合部298と係合爪部304とが係合している。これにより、加圧ボス部材290と穿刺ロッド300とが抜出不能とされつつ上下方向で相対移動可能とされている。
【0133】
ここにおいて、内側ハウジング286の内部において、穿刺ばね14が、加圧ボス部材290のロッド状部292に外挿された状態で配されており、穿刺ばね14の上端部分が内側ハウジング286の蓋部40の内面に固定されているとともに、穿刺ばね14の下端部分が穿刺ロッド300のばね支持部302に外挿されて底壁部62の内面に固定されている。また、ロッド状部292において段差状部294よりも下方の小径とされた部分には、緩衝手段としての加圧ばね306が外挿されており、当該加圧ばね306の上端部分がロッド状部292における段差状部294に固定されているとともに、加圧ばね306の下端部分が穿刺ロッド300におけるばね支持部302に固定されている。
【0134】
すなわち、
図25にも示されているように、外側ハウジング282と内側ハウジング286とからなるハウジング288に対して、穿刺ボタン122、ロックレバー124およびシリンダロック152が、穿刺ボタン用ばね186およびロック用ばね188を介して組み付けられている。また、かかるハウジング288に対して、加圧ボス部材290と穿刺ロッド300とが、穿刺ばね14および加圧ばね306を介して上下方向から組み付けられているとともに、可動シリンダ90が、押さえばね118,118を介して下方から組み付けられている。
【0135】
ここで、
図24に示される使用前の保管状態では、穿刺ばね14および加圧ばね306が略自然長とされており、穿刺ロッド300の下端部分がハウジング288から突出して可動シリンダ90内に位置している。一方、本実施形態において、
図24に示される保管状態では、加圧ボス部材290の上端に位置する押圧操作部296が、外側ハウジング282における円形凹部284の底面に当接しており、外部からの操作面である押圧操作部296の上面296aが、ハウジング288の表面(例えば、外側ハウジング282の上底壁部24の上端面)から内部に入り込んだ位置に設定されている。そして、本実施形態では、ハウジング288から突出する穿刺ロッド300の下端部分を覆うキャップ192が可動シリンダ90に組み付けられているとともに、これら可動シリンダ90およびキャップ192を覆うカバー194が、ハウジング288(外側ハウジング282)の下方開口部を塞ぐように組み付けられている。
【0136】
以上の如き構造とされたアプリケータ280を使用するには、先ず、
図26に示されるように、カバー194とキャップ192とを取り外した後、穿刺ロッド300をハウジング288内に(上方に)押し込む。これにより、穿刺ばね14が圧縮されるとともに、穿刺ロッド300の貫通窓68にロックレバー124の係止部142が係止される。ここにおいて、穿刺ロッド300と加圧ボス部材290とは係合爪部304と係合部298とで係合していることから、穿刺ロッド300の上方への移動と共に加圧ボス部材290も上方に移動せしめられる。これにより、かかる状態では、加圧ボス部材290における押圧操作部296の上面296aが、ハウジング288の表面(例えば、外側ハウジング282の上底壁部24の上端面)と略等しい位置にあるか、僅かに上方に位置している。
【0137】
そして、このように穿刺ロッド300をハウジング288内に押し込むことで、可動シリンダ90のハウジング288内への(上方への)移動が許容される。かかる状態で、可動シリンダ90にマイクロニードル16(ケース210)を取り付けて穿刺ボタン122を押圧操作することで、
図27に示されるように、穿刺ばね14の弾性的な復元力に伴って穿刺ロッド300が下方に移動してマイクロニードル16が皮膚に穿刺される。なお、かかる穿刺ロッド300の下方への移動に伴い加圧ボス部材290も共に下方に移動することから、かかるマイクロニードル16の穿刺状態では、加圧ボス部材290の押圧操作部296が円形凹部284内に入り込んでおり、押圧操作部296の下面が、円形凹部284の底面に対して所定距離を隔てて上下方向で対向している。
【0138】
さらに、かかるマイクロニードル16の穿刺状態から、
図28に示されるように、押圧操作部296の上面(操作面)296aを直接手指で押し込むことで、加圧ボス部材290の段差状部294と穿刺ロッド300におけるばね支持部302との間に位置する加圧ばね306が圧縮される。そして、当該加圧ばね306の弾性的な復元作用により穿刺ロッド300が下方に押圧されて、穿刺状態のマイクロニードル16が一層皮膚に押し付けられる。これにより、マイクロニードル16による経皮的な薬剤な投与がより確実に達成される。特に、本実施形態においても、マイクロニードル16への付加的な外力が、緩衝手段である加圧ばね306を介して緩衝的に及ぼされることから、患者が痛みを感じるおそれが低減され得る。また、加圧ボス部材290に対して押込操作を行っている間、マイクロニードル16に対して継続的に付加的な外力が及ぼされることから、本実施形態のアプリケータ280においても前記第1の実施形態と同様の効果が発揮され得る。特に、本実施形態では、外部からの操作により付加的な外力を及ぼす付加外力操作部材が加圧ボス部材290によって構成されているとともに、当該付加外力操作部材(加圧ボス部材290)を含んで緩衝的な外力を付加する緩衝的外力付加機構が構成されている。
【0139】
また、本実施形態では、圧縮されることでマイクロニードル16(穿刺ロッド18)を下方に付勢する付勢手段が穿刺ばね14によって構成されているとともに、マイクロニードル16への付加的な外力を緩衝的に及ぼす緩衝手段が加圧ばね306によって構成されており、すなわち付勢手段と緩衝手段とが相互に異なる部材によって構成されている。これにより、例えば付勢手段(穿刺ばね14)のばね力(ばね定数)と緩衝手段(加圧ばね306)のばね力(ばね定数)を各別に設定することも可能となり、アプリケータ280の設計自由度の向上を図ることもできる。
【0140】
さらに、本実施形態では、
図24に示されるアプリケータ280の保管状態だけでなく、
図27に示されるマイクロニードル16の穿刺状態においても、押圧操作されて外力が直接及ぼされる操作面(押圧操作部296の上面296a)が、ハウジング288の表面(外側ハウジング282の上端面)よりも内部に入り込んだ位置に設定されている。それ故、アプリケータ280の保管状態だけでなく、マイクロニードル16の穿刺状態においても意図せず付加外力操作部材である加圧ボス部材290が押圧されるおそれが低減され得る。なお、本実施形態では、前記第2の実施形態の如き操作ロック機構(270)が設けられていないが、かかる操作ロック機構を設けて、穿刺ボタンの押込前における付加外力操作部材(加圧ボス部材)の操作を阻止するようにしてもよい。
【0141】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明はかかる実施形態における具体的な記載によって限定的に解釈されるものでなく、当業者の知識に基づいて種々なる変更、修正、改良などを加えた態様で実施可能である。
【0142】
たとえば、前記実施形態ではシリンダロック152が設けられて、シリンダロック152の当接突部164と可動シリンダ90における当接板部96の突出当接部98とが相互に当接することで、穿刺ロッド18,300のハウジング12,242,288内への押込前に可動シリンダ90のハウジング12,242,288内への移動を阻止する移動制限手段206が構成されていたが、かかる態様に限定されるものではない。また、前期実施形態では、キャップ192やカバー194を設けることで穿刺ロッド18,300のハウジング12,242,288内への押込みが阻止されることから、上記移動制限手段206がキャップ192やカバー194を含んで構成されると捉えることも可能であるが、かかる態様に限定されるものではない。すなわち、例えば穿刺ロッドのハウジング内への押込前に可動シリンダのハウジング内への移動を阻止する移動制限手段は設けられる必要はなく、シリンダロックやキャップ、カバーなどの部材は、本発明において必須なものではない。
【0143】
また、前記実施形態では、マイクロニードル16として中実針が採用されて、当該中実針に投与される薬剤が塗布されていたが、かかる態様に限定されるものではない。マイクロニードルは、例えばルーメンを有する中空針により構成されて、別途薬剤を保持するリザーバから穿刺された中空針のルーメンを通じて薬剤が投与される構造などを採用することも可能であり、マイクロニードルの形状や構造、数なども限定されない。
【0144】
さらに、穿刺ロッド、可動シリンダ、ロックレバー、ロック部材(シリンダロック)の付勢や緩衝などは、前記実施形態の如きばねに限定されるものではなく、例えばゴムやエラストマーなどの弾性体の他、磁石などにより達成されてもよい。すなわち、例えば付勢手段としてばねが採用されるとともに、緩衝手段としてばね以外の弾性体が採用されるなどしてもよいし、付勢手段としてばね以外の弾性体が採用されるとともに、緩衝手段としてばねが採用されてもよい。
【0145】
更にまた、前記第1の実施形態では、穿刺ばね14と加圧ばね88とが加圧ロッド72を挟んで上下方向で直列的に配置されていたとともに、前記第3の実施形態では、穿刺ばね14の内周側に加圧ばね306が並列的に配置されていたが、かかる態様に限定されるものではない。すなわち、前記第1の実施形態のように穿刺ばねと加圧ばねとが直列的に配置される場合には、加圧ばねの復元力が加圧ロッドを介して穿刺ばねに及ぼされればよく、穿刺ばねと加圧ばねは必ずしも上下方向に配置される必要はない。また、前記第3の実施形態のように穿刺ばねと加圧ばねとが並列的に配置される場合には、穿刺ばねの下端と加圧ばねの下端が穿刺ロッドに固定されてこれら穿刺ばねと加圧ばねが相互に独立して作動すればよく、必ずしも内外挿状態で配置される必要はない。
【符号の説明】
【0146】
10,240,280:マイクロニードルアプリケータ、12,242,288:ハウジング、14:穿刺ばね(付勢手段、緩衝手段)、16:マイクロニードル、72:加圧ロッド(緩衝的外力付加機構、加圧力伝達部材)、88:加圧ばね(緩衝的外力付加機構、付加外力発生部材)、191:移動ロック機構、250,290:加圧ボス部材(緩衝的外力付加機構、付加外力操作部材)、270:操作ロック機構、296a:上面(操作面)、306:加圧ばね(緩衝手段)