(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】指紋認証装置
(51)【国際特許分類】
B60R 25/25 20130101AFI20240305BHJP
【FI】
B60R25/25
(21)【出願番号】P 2018193672
(22)【出願日】2018-10-12
【審査請求日】2021-02-11
【審判番号】
【審判請求日】2022-11-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003551
【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001276
【氏名又は名称】弁理士法人小笠原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】太田 恭久
(72)【発明者】
【氏名】後藤 雄哉
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼田 直幸
(72)【発明者】
【氏名】安藤 喬彦
(72)【発明者】
【氏名】大橋 洋介
(72)【発明者】
【氏名】大脇 里仁
(72)【発明者】
【氏名】小川 大輔
【合議体】
【審判長】筑波 茂樹
【審判官】藤井 昇
【審判官】沼生 泰伸
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-256818(JP,A)
【文献】特開2008-56035(JP,A)
【文献】特開2001-143051(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0156149(US,A1)
【文献】特開2018-62306(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 25/00 - 25/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される指紋認証装置であって、
スタートスイッチの表面に設けられ、前記スタートスイッチに接触した指の指紋を検出する指紋検出処理を行う指紋センサと、
前記指紋検出処理によって検出された指紋に基づいて指紋認証処理を行う指紋認証部と、
前記指紋検出処理の実行の許可及び不許可を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、前記車両の速度が所定値以上であれば、前記指紋検出処理の実行を不許可と
し、
指紋認証の結果が複数の機能の許可に用いられる、指紋認証装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記車両の速度が所定値未満であっても、前記指紋検出処理が要求されない状態であると想定される所定の第1条件が成立した状態を検知すると、前記指紋検出処理の実行を不許可とする、請求項1に記載の指紋認証装置。
【請求項3】
前記第1条件は
前記車両の電源がオンであり、前記指紋認証処理が成功し、かつ、前記指紋センサが正規品であることである第2条件、および、
前記車両の電源がオンであり、かつ、前記指紋認証処理の代替となる所定の認証処理が成功したことである第3条件の、少なくとも一方が成立することである、請求項2に記載の指紋認証装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記指紋検出処理の実行を不許可としているときに、前記車両の速度が前記所定値未満であり、かつ、前記指紋検出処理が要求される状態であると想定される所定の第4条件が成立したことを検知すると、前記指紋検出処理の実行を許可する、請求項1~3のいずれかに記載の指紋認証装置。
【請求項5】
前記第4条件は、
ブレーキが動作中であること、
運転席のドアが閉状態から開状態へと変化したこと、
前記運転席のドアが開状態から閉状態へと変化したこと、
前記スタートスイッチがオフ状態からオン状態へと変化したこと、
他の機器から指紋認証要求を受け付けたこと、
前記車両の電源がオフ以外の状態からオフへと変化したこと、の少なくとも1つを満たすことである、請求項4に記載の指紋認証装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載される指紋認証装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ユーザーの指紋によって認証を行う指紋認証を利用した機器が提案されている。特許文献1は、車両の使用者の指紋の認証が必要なモードと、イグニッション・キーのみで車両の使用を許可するモードを切り替える認証装置を備えた車両を開示している。特許文献2は、握る力を検出する力センサを備え、ユーザーが握ることによって指紋センサが起動する電子機器を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2003-34235号公報
【文献】特表2017-537416号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
指紋認証装置において用いられる指紋センサは、指紋読み取り部分に指を接触させると指紋を検出する指紋検出処理を行う。このような指紋検出処理の仕組みには、静電容量式、電界強度式等の種類があるが、指紋検出処理実行時には指紋センサから電波ノイズが発生するおそれがある。車両に指紋認証装置を搭載した場合、ユーザーが不用意に指紋センサに触れた場合、指紋検出処理が不要であっても実行され、電波ノイズの影響でラジオの音声にノイズが発生して音質が低下する等、車内の快適性が低下するおそれがある。
【0005】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、指紋センサに不用意に触れたときに車内の快適性に影響を与えるおそれを抑制した指紋認証装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の一局面は、車両に搭載される指紋認証装置であって、接触した指の指紋を検出する指紋検出処理を行う指紋センサと、指紋検出処理によって検出された指紋に基づいて指紋認証処理を行う指紋認証部と、指紋検出処理の実行の許可及び不許可を制御する制御部とを備え、制御部は、車両の速度が所定値以上であれば、指紋検出処理の実行を不許可とする、指紋認証装置である。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、指紋センサに不用意に触れたときに車内の快適性に影響を与えるおそれを抑制した指紋認証装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態に係る指紋認証装置の機能ブロックを示す図
【
図2】本発明の一実施形態に係る指紋センサの状態遷移を示す図
【
図3】本発明の一実施形態に係る指紋認証装置の処理の例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0009】
(実施形態)
本発明の一実施形態に係る指紋認証装置は、指紋認証のための指紋検出処理が要求されることがないと想定される状況下では、指紋センサによる指紋検出処理が抑制される。これにより、指紋センサの指紋読み取り部分に、ユーザーが不用意に触れても、指紋センサが指紋検出処理を実行しないので、電波ノイズが発生せず、ラジオの音質が低下する等の車内の快適性が低下するおそれを抑制できる。以下、本実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0010】
<構成>
図1に、本実施形態に係る指紋認証装置1の機能ブロック図を示す。指紋認証装置1は、車両に搭載され、指紋センサ11と指紋認証部12と制御部14とを含む。
図1に示す例では、指紋センサ11は、プッシュスタートスイッチ13と一体的に形成され、指紋認証部12とともにセンサ部10を構成する。また、制御部14は、一例として後述する照合部20を構成する。
【0011】
指紋センサ11は、指紋読み取り部分に指を接触させると指の凹凸パターンを指紋としてキャプチャして検出する指紋検出処理を行う。具体的な指紋検出処理の方式は限定されない。指紋認証部12は、指紋センサ11の指紋検出処理によって検出された指紋に基づいてユーザーの指紋認証処理を行う。指紋認証部12による指紋認証方法は限定されないが、例えば、予め1つ以上の指紋を識別子と対応付けて登録しておき、検出された指紋と、登録されている指紋とを照合して、一致の度合いを所定の方法で算出し、一致の度合いが所定程度以上であれば、指紋認証成功とする。センサ部10は、指紋認証結果を照合部20に通知する。
【0012】
プッシュスタートスイッチ13は、押下されたことを検出して内部状態をオンとオフとの間で切り替えるスイッチである。指紋センサ11の指紋読み取り部分はプッシュスタートスイッチ13の表面に設けられる。すなわち、例えば、プッシュスタートスイッチ13が指によって押下されたときに指紋センサ11が指紋検出処理を実行することができる。
【0013】
照合部20は、スマートキーのような携帯機40との無線通信を用いた認証処理およびセンサ部10による指紋認証処理を制御する。これらの認証処理によって、取得したユーザーの情報と予め登録された正当な車両操作の権限を有するユーザーの情報とを照合することができる。照合部20は、照合結果に応じて、ユーザーによる車両操作の可否や車両の動作を決定する。照合部20は、このような処理に必要であれば、1つ以上の他の車載機器30と通信して、適宜車両の各種状態を取得したり、処理結果を通知したりすることができる。また、このような処理は、制御部14が全部行ってもよいし、照合部20が制御部14とは異なる図示しない他の制御部を備え、制御部14がセンサ部10の制御を含む一部の処理を行い、他の制御部が携帯機40や他の車載機器30との通信のような残りの処理を行ってもよい。
【0014】
<処理>
本実施形態では、指紋認証は、典型的には、イグニッションオン(レディオン)状態への移行を許可するか否かを判定するため実行される。指紋認証は、その他にも、ナビゲーション装置のような他の車内装置等が、ユーザーの認証を要求した場合にも、実行される。
【0015】
そこで、本実施形態では、照合部20の制御部14は、照合部20が取得する車両の状態等に基づいて、指紋センサ11を制御し、指紋認証が要求される可能性が高い状態では、指紋検出処理許可状態とし、指紋認証が要求されない状態では、指紋検出処理不許可状態とする。指紋検出処理許可状態では、指紋センサ11は指紋読み取り部分に指が接触すると、上述の指紋検出処理を実行する。指紋検出処理不許可状態では、指紋センサ11は指紋読み取り部分に指が接触しても、上述の指紋検出処理を実行しない。指紋検出処理不許可状態の実現方法は限定されないが、センサ部10のうち、電波ノイズを発生させるような、指紋センサ11の指紋検出処理の実行を抑制できればよく、例えば指紋センサ11への電力供給を制限すればよい。なお、指紋認証部12等、指紋センサ11以外の部分は、指紋検出処理不許可状態であっても、とくに動作を制限しなくてもよい。
【0016】
図2に、指紋センサ11の状態遷移図を示す。初期状態では指紋センサ11は、指紋検出処理不許可状態である。指紋検出処理不許可状態において、所定の許可条件が成立すると、指紋検出処理許可状態に遷移する。また、指紋検出処理許可状態において、所定の不許可条件が成立すると、指紋検出処理不許可状態に遷移する。
【0017】
以下に、許可条件および不許可条件の一例を説明する。
【0018】
まず、許可条件とは、指紋認証のために指紋検出処理が要求されることが想定される車両の状態を表す条件である。本実施形態では、一例として、許可条件は以下のとおりである。すなわち、許可条件は、以下の(1)が成立し、かつ(2)~(7)の少なくとも1つが成立することである。
(1)車両の速度が所定値未満(例えば5km/h未満)である。
(2)ブレーキが動作中である。
(3)運転席のドアが閉状態から開状態へと変化した。
(4)運転席のドアが開状態から閉状態へと変化した。
(5)プッシュスタートスイッチがオフ状態からオン状態へと変化した。
(6)他の車載機器から指紋認証要求を受け付けた。
(7)車両の電源がオフ以外の状態からオフ状態へと変化した。
【0019】
本実施形態では、指紋認証は、典型的には、車両の停止中にイグニッションオン(レディオン)状態への移行を許可するかどうかの判定のため実行される。また、車両の走行中に指紋認証を行うことは安全性向上のため抑制する。そのため、車両が停止していることを許可条件とすれば、指紋センサ11による指紋検出処理を抑制することができる。実際には、許可条件は、上述の(1)のように、車両の検出速度の誤差を考慮して、車両の速度が、例えば5km/hのようなごく小さい所定値未満であることとすればよい。さらに、(2)~(7)の内容によって許可条件を限定すれば、指紋検出処理が要求されることをより高い確からしさで想定できる場合に許可条件を限定することができ、より好適に指紋センサ11による指紋検出処理を抑制することができる。
【0020】
本実施形態では、イグニッションオン(レディオン)状態に移行するには、例えば、パーキングブレーキを動作させ、シフト位置をパーキングにし、ブレーキペダルを踏み込んだ状態のような所定の車両の状態で、プッシュスタートスイッチ13を押下してオン状態とし、指紋認証に成功することを必要とする操作仕様を想定している。そのため、許可条件は、上述の(1)を満たしている状況のもと、さらに上述の(2)のように、例えばブレーキが動作中であることによって限定することができる。
【0021】
あるいは、ユーザーが運転席に乗り込んだり、運転席に着座するユーザーが交代したりした場合に、その後イグニッションオン(レディオン)状態への移行を行う可能性が高い。そのため、許可条件は、上述の(1)を満たしている状況のもと、さらに上述の(3)または(4)のように、ユーザーの運転席への乗り込みや運転席に着座するユーザーの交代が発生した可能性が高い状況であることによって限定することができる。
【0022】
あるいは、許可条件は、上述の(1)を満たしている状況のもと、さらに上述の(5)のように、ユーザーがイグニッションオン(レディオン)状態への移行等のため、実際にプッシュスタートスイッチ13を押下してプッシュスタートスイッチ13がオフ状態からオン状態に変化したことによって限定することができる。
【0023】
あるいは、ユーザーは、車両の停止中に、例えばナビゲーション装置のような他の車載機器30を介して車外のサーバーとの通信による課金サービスを受けることが想定される。このようなサービス等において要求されるユーザー認証に、指紋認証装置1を利用することが考えられる。そのため、許可条件は、上述の(1)を満たしている状況のもと、さらに上述の(6)のように、他の車載機器30から指紋認証要求を受け付けたことによって限定することができる。
【0024】
あるいは、ユーザーは、例えば電源がオフ以外(イグニッションオン(レディオン)あるいはACCオン)の状態から、プッシュスタートスイッチ13を押下してオフ状態に移行する操作を行った後に、再びプッシュスタートスイッチ13を押下してイグニッションオン(レディオン)状態への移行を行う可能性がある。そのため、許可条件は、上述の(1)を満たしている状況のもと、さらに上述の(7)のように、車両の電源がオフ以外の状態からオフ状態へと変化したことによって限定することができる。
【0025】
以上のような許可条件によって、指紋認証のために指紋検出処理が要求されることが想定される場合には、指紋センサ11を指紋検出処理許可状態とし、指紋認証装置1による指紋認証が可能な状態とする。なお、許可条件は、上述のものに限定されず、車両の操作仕様等に基づき指紋認証が必要になる状況に対応して適宜設定すればよく、例えば上述の(1)~(7)の内容を適宜変更、削除してもよく、他の内容を追加してもよい。
【0026】
つぎに不許可条件とは、指紋認証のための指紋検出処理が要求されないことが想定される車両の状態を表す条件である。本実施形態では、一例として、不許可条件は以下のとおりである。すなわち、不許可条件は、以下の(8)~(10)の少なくともいずれか1つが成立することである。
(8)車両の速度が所定値以上(例えば5km/h以上)である。
(9)車両の電源がオン(ACCオン)であり、指紋認証部12による指紋認証処理が成功し、かつ、指紋センサ11が正規品である。
(10)車両の電源がオン(ACCオン)であり、指紋認証部12による指紋認証処理の所定の代替処理が成功したことである。
【0027】
本実施形態では、指紋認証は、上述したように典型的には車両の停止中にイグニッションオン(レディオン)状態への移行を許可するかどうかの判定のため実行される。また、車両の走行中に指紋認証を行うことは安全性向上のため抑制する。そのため、車両が走行中で上述の(8)を満たす場合、指紋検出処理は不要であると想定することができる。
【0028】
本実施形態では、所定の車両の状態で、プッシュスタートスイッチ13を押下しオン状態とすることで、ACCオン状態となり、指紋認証に成功すれば、ACCオン状態を経由してイグニッションオン(レディオン)状態に移行する操作仕様を想定している。そこで、上述の(8)の成否にかかわらず、(9)を満たしている場合、すでにイグニッションオン(レディオン)状態への移行が行われようとしている状況であり、この状況下では、さらなる指紋検出処理は不要であるため、指紋センサ11による指紋検出処理を抑制する。なお、指紋センサ11が正規品であるか否かは、例えば照合部20が指紋センサ11と所定の通信を行って指紋センサ11を認証することによって判定することできる。
【0029】
本実施形態では、所定の車両の状態で、プッシュスタートスイッチ13を押下しオン状態とすることで、ACCオン状態となり、指紋認証の代わりに携帯機40等に内蔵されたトランスポンダを用いた通信による認証に成功すれば、ACCオン状態を経由してイグニッションオン(レディオン)状態に移行する操作仕様を想定している。上述の(8)、(9)の成否にかかわらず、(10)を満たしている場合、すでにイグニッションオン(レディオン)状態への移行が行われようとしている状況であり、この状況下でさらなる指紋検出処理は不要であるため、指紋センサ11による指紋検出処理を抑制する。なお、指紋認証の代替となる処理は、トランスポンダを用いた通信による認証に限定されない。車両が提供する代替処理に応じて、不許可条件を設定すればよい。
【0030】
以上のような不許可条件によって、指紋認証のための指紋検出処理が要求されないことが想定される場合には、指紋センサ11を指紋検出処理不許可状態とし、指紋認証装置1による指紋認証を行わない状態とする。なお、不許可条件は、上述のものに限定されず、車両の操作仕様等に基づき指紋認証が不要となる状況に対応して適宜設定すればよく、例えば上述の(8)~(10)の内容を適宜変更、削除してもよく、他の内容を追加してもよい。
【0031】
<処理の例>
図3は、照合部20およびセンサ部10の処理シーケンスの一例を示す図である。
図3を参照して、処理の例を説明する。
【0032】
図3に示すステップのうち、ステップS101~S111のシーケンスは、ユーザーが車両に乗り込み、車両を走行させるまでの間に実行されるシーケンスである。ステップS101の開始時には、車両は停止しており、指紋センサ11が、指紋検出処理不許可状態となっている。
【0033】
(ステップS101):ユーザーが運転席ドアを開けて運転席に乗り込み、ブレーキペダルを踏み込む。照合部20は、他の車載機器30から車両のドアの開閉状態を取得し、車両の運転席のドアが閉状態から開状態となったこと、あるいは開状態から閉状態となったことを検出する。また、照合部20は、他の車載機器30からブレーキペダルの操作状態を取得し、ブレーキペダルが踏み込まれてブレーキが動作中であることを検出する。さらに、照合部20は、他の車載機器30からの車両の速度を取得し、車両が停止していることを検出する。これにより、許可条件を構成する上述の(1)、(2)かつ[(3)または(4)]の内容が成立する。なお、本ステップの実行の前に、携帯機40を所持したユーザーが車両に接近し、ドアハンドルを操作したときに、照合部20が携帯機40を車外の無線通信によって認証し、認証が成功することに基づいて、ドアの開閉動作を許可してもよい。
【0034】
(ステップS102):ステップS101において、許可条件が満たされたので、照合部20は、指紋センサ11を指紋検出処理許可状態とする通知をセンサ部10に対して行う。センサ部10は通知を受け、指紋センサ11を、指が接触すると指紋検出処理を実行する状態とする。
【0035】
(ステップS103):照合部20は、ユーザーによって車内に持ち込まれた携帯機40を車内の無線通信によって認証する。照合部20は、認証が成功することによって、携帯機40を所持するユーザーを、認証した携帯機40に予め対応付けて登録していたユーザーとして特定する。照合部20は、ユーザーとセンサ部10に登録されている指紋の識別子との対応付けを記憶しており、特定したユーザーの指紋に対応する識別子をセンサ部10に通知する。
【0036】
(ステップS104):照合部20は、センサ部10と通信して指紋センサ11を認証し、認証が成功することによって、指紋センサ11が付け替えされた不正品ではない正規品であることを確認する。
【0037】
(ステップS105):ユーザーが、プッシュスタートスイッチ13の、指紋センサ11の指紋読み取り部分にタッチすると、センサ部10はこれを検出する。
【0038】
(ステップS106):ユーザーが、引き続きプッシュスタートスイッチ13を押下してプッシュスタートスイッチ13がオフ状態からオン状態に変化すると、センサ部10はこれを照合部20に通知する。
【0039】
(ステップS107):照合部20は、車両の状態を電源オン(ACCオン)状態とすることを決定する。また、実際にこの状態にするために必要な通知を適宜他の車載機器30に行う。
【0040】
(ステップS108):ユーザーが引き続きプッシュスタートスイッチ13の、指紋センサ11の指紋読み取り部分へのタッチを継続すると、指紋センサ11は、指紋のキャプチャを行って指紋検出処理を行う。
【0041】
(ステップS109):指紋認証部12は、ステップS108で検出した指紋と、予め記憶している指紋のうち、ステップS103で通知された識別子に対応する指紋との一致度が所定程度以上であれば、ユーザーの認証を成功とし、結果を照合部20に通知する。
【0042】
(ステップS110):ステップS104、S107、S109の結果、上述の(9)の内容が成立するので、不許可条件が成立する。そこで、照合部20は、指紋センサ11を指紋検出処理不許可状態とする通知をセンサ部10に対して行う。センサ部10は通知を受け、指紋センサ11を、指が接触しても指紋検出処理を実行しない状態とする。
【0043】
(ステップS111):照合部20は、車両の状態をイグニッションオン(レディオン)状態とする条件をすべて満たしていることを確認し、イグニッションオン(レディオン)状態とすることを決定する。イグニッションオン(レディオン)状態にする条件とは、上述したように、例えば、パーキングブレーキを動作させ、シフト位置をパーキングにし、ブレーキペダルを踏み込んだ状態で、プッシュスタートスイッチ13を押下してオン状態とし、指紋認証に成功することである。また、照合部20は、実際にこの状態にするために必要な通知を適宜他の車載機器30に行う。これにより、車両は走行可能な状態となる。
【0044】
以上の処理により、車両の走行中は、プッシュスタートスイッチ13に設けられた指紋センサ11の指紋読み取り部分に、ユーザーが不用意に触れても、指紋センサ11が指紋検出処理を実行しないので、電波ノイズが発生せず、ラジオの音質が低下する等の、車内の快適性が低下するおそれを抑制できる。
【0045】
図3に示すステップのうち、ステップS201~S205のシーケンスは、車両の走行状態から、車両を停止させ電源をオフさせるまでの間に実行されるシーケンスである。ステップS201の開始時には、車両は走行しており、指紋センサ11が、指紋検出処理不許可状態となっている。
【0046】
(ステップS201):ユーザーがブレーキペダルを踏み込み車両を停止させる。照合部20は、車両の速度を取得し、車両が停止していることを検出する。
【0047】
(ステップS202):ユーザーがプッシュスタートスイッチ13にタッチすると、センサ部10はこれを検出する。
【0048】
(ステップS203):ユーザーが引き続きプッシュスタートスイッチ13を押下してプッシュスタートスイッチ13がオン状態からオフ状態に変化すると、センサ部10はこれを照合部20に通知する。なお、指紋センサ11は指紋検出処理不許可状態となっているので、指紋検出処理を行わない。
【0049】
(ステップS204):照合部20は、車両の状態を電源オフ状態とすることを決定する。また、実際にこの状態にするために必要な通知を適宜他の車載機器30に行う。
【0050】
(ステップS205):ステップS201で、許可条件を構成する上述の(1)の内容が成立し、ステップS204で、許可条件を構成する上述の(7)の内容が成立したことを検出する。照合部20は、許可条件が満たされたので、指紋センサ11を指紋検出処理許可状態とする通知をセンサ部10に対して行う。センサ部10は通知を受け、指紋センサ11を、指が接触すると指紋検出処理を実行する状態とする。本ステップ実行後、車両は、上述のステップS102実行後と同様の状態となり、再びイグニッションオン(レディオン)状態へ移行するためのシーケンスを実行することができる。
【0051】
なお、以上のシーケンスの任意のタイミングにおいて、照合部20は、携帯機40からの電波の受信状態に基づいて、携帯機40を所持したユーザーが降車し、あるいはさらに、車両から所定距離以上離れたと推定できる場合には、指紋センサ11を、上述の許可条件や不許可条件の成否にかかわらず、指紋検出処理不許可状態にしてもよい。また、各種認証に失敗した場合も、許可条件や不許可条件の成否にかかわらず、指紋検出処理不許可状態にしてもよい。
【0052】
また、照合部20は、指紋認証を用いたユーザー認証をカスタム機能とし、有効にするか無効にするかの設定を、ユーザーの指定に応じて行うようにしてもよい。この場合、上述の許可条件を、必須の条件として有効設定がされていることによって限定し、上述の不許可条件に、追加の代替条件として無効設定がされていることを追加すればよい。すなわち、指紋検出処理不許可状態において、無効設定されている場合は、必ず指紋検出処理不許可状態を維持するようにし、また、指紋検出処理許可状態において、有効設定から無効設定に変更された場合は、必ず指紋検出処理不許可状態に遷移するようにすればよい。これにより、無効設定されている場合は、指紋検出処理を全くしないので、電波ノイズによって車内の快適性が低下するおそれをより確実に抑制できる。
【0053】
また、照合部20は、指紋検出処理不許可状態において、指紋認証部12に登録されている指紋の数を取得し、指紋の数が0である場合は、上述の許可条件に関係なく、指紋検出処理不許可状態を維持してもよい。これにより、指紋認証が不可能で指紋検出処理を行う意義がない場合は指紋検出処理を全くしないので、電波ノイズによって車内の快適性が低下するおそれをより確実に抑制できる。
【0054】
<効果>
本実施形態によれば、指紋認証のための指紋検出処理が要求されることがないと想定される所定の状況下では、指紋センサ11による指紋検出処理が抑制される。これにより、指紋センサ11の指紋読み取り部分に、ユーザーが不用意に触れても、指紋センサ11が指紋検出処理を実行しないので、電波ノイズが発生せず、ラジオの音質が低下する等の車内の快適性が低下するおそれを抑制できる。また、指紋認証のための指紋検出処理が要求されると想定される所定の状況下では、指紋センサ11の指紋読み取り部分に、ユーザーが触れると、指紋センサ11が指紋検出処理を実行するので、指紋認証を好適に行うことができる。
【0055】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は、指紋認証装置、指紋認証装置のコンピュータが実行する指紋認証方法、指紋認証プログラムおよびこれを記憶したコンピュータ読み取り可能な非一時的な記録媒体、指紋認証システム、車両等として捉えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、車両等に搭載される指紋認証装置に有用である。
【符号の説明】
【0057】
1 指紋認証装置
10 センサ部
12 指紋認証部
13 プッシュスタートスイッチ
14 制御部
20 照合部
30 他の車載機器
40 携帯機