IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 高砂熱学工業株式会社の特許一覧

特許7448325空調システム、空調方法および空調システムの制御方法
<>
  • 特許-空調システム、空調方法および空調システムの制御方法 図1
  • 特許-空調システム、空調方法および空調システムの制御方法 図2
  • 特許-空調システム、空調方法および空調システムの制御方法 図3
  • 特許-空調システム、空調方法および空調システムの制御方法 図4
  • 特許-空調システム、空調方法および空調システムの制御方法 図5
  • 特許-空調システム、空調方法および空調システムの制御方法 図6
  • 特許-空調システム、空調方法および空調システムの制御方法 図7
  • 特許-空調システム、空調方法および空調システムの制御方法 図8
  • 特許-空調システム、空調方法および空調システムの制御方法 図9
  • 特許-空調システム、空調方法および空調システムの制御方法 図10
  • 特許-空調システム、空調方法および空調システムの制御方法 図11
  • 特許-空調システム、空調方法および空調システムの制御方法 図12
  • 特許-空調システム、空調方法および空調システムの制御方法 図13
  • 特許-空調システム、空調方法および空調システムの制御方法 図14
  • 特許-空調システム、空調方法および空調システムの制御方法 図15
  • 特許-空調システム、空調方法および空調システムの制御方法 図16
  • 特許-空調システム、空調方法および空調システムの制御方法 図17
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】空調システム、空調方法および空調システムの制御方法
(51)【国際特許分類】
   F24F 5/00 20060101AFI20240305BHJP
   F24F 3/00 20060101ALI20240305BHJP
   F24F 11/30 20180101ALI20240305BHJP
   F24F 11/65 20180101ALI20240305BHJP
   F24F 11/64 20180101ALI20240305BHJP
   F24F 11/85 20180101ALI20240305BHJP
   F24F 11/875 20180101ALI20240305BHJP
   F24F 140/20 20180101ALN20240305BHJP
   F24F 140/50 20180101ALN20240305BHJP
【FI】
F24F5/00 101A
F24F3/00 B
F24F5/00 102Z
F24F11/30
F24F11/65
F24F11/64
F24F11/85
F24F5/00 101B
F24F5/00 K
F24F11/875
F24F140:20
F24F140:50
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019175400
(22)【出願日】2019-09-26
(65)【公開番号】P2021050890
(43)【公開日】2021-04-01
【審査請求日】2022-08-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000169499
【氏名又は名称】高砂熱学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木村 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】平原 美博
【審査官】奈須 リサ
(56)【参考文献】
【文献】特許第6444747(JP,B2)
【文献】特開2017-150744(JP,A)
【文献】特開昭53-101837(JP,A)
【文献】特開昭49-016240(JP,A)
【文献】特開昭59-213332(JP,A)
【文献】特開2000-310433(JP,A)
【文献】特開昭56-037438(JP,A)
【文献】特開2012-233636(JP,A)
【文献】特開平10-132361(JP,A)
【文献】特開2010-084951(JP,A)
【文献】特開平06-307680(JP,A)
【文献】実開昭61-046309(JP,U)
【文献】実開昭57-121832(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 1/00-13/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
井水を利用する空調システムであって、
井戸の井水を送水する第一送水ポンプと、
前記第一送水ポンプにより送水される井水の熱を利用して温度調節された空気を空調対象空間に給気することにより、空調対象空間を空調する第一空調手段と、
前記第一送水ポンプにより送水される井水を貯水する蓄熱槽と、
前記蓄熱槽に貯められた井水を送水する第二送水ポンプと、
前記第二送水ポンプにより送水される井水の熱を利用して温度調節された空気を空調対象空間に給気することにより、前記空調対象空間を空調する第二空調手段と、を備え
前記第一空調手段が熱を利用する井水は、蓄熱槽で貯水されない井水である、
空調システム。
【請求項2】
井水を利用する空調システムであって、
井戸の井水を送水する第一送水ポンプと、
前記第一送水ポンプにより送水される井水の熱を利用して温度調節された空気を空調対象空間に給気することにより、空調対象空間を空調する第一空調手段と、
前記第一送水ポンプにより送水される井水を貯水する蓄熱槽と、
前記蓄熱槽に貯められた井水を送水する第二送水ポンプと、
前記第二送水ポンプにより送水される井水の熱を利用して温度調節された空気を空調対象空間に給気することにより、前記空調対象空間を空調する第二空調手段と、を備え、
前記第一空調手段は、前記第一送水ポンプにより送水される井水と空気とを第一熱媒体を介して熱交換することにより、空調対象空間を空調し、
前記第二空調手段は、前記第二送水ポンプにより送水される井水と空気とを第二熱媒体を介して熱交換することにより、前記空調対象空間を空調する、
空調システム。
【請求項3】
前記第一空調手段は、
前記第一送水ポンプにより送水される井水のうちの少なくとも一部と第一熱媒体とを熱交換させる第一熱交換器と、
第一熱媒体と熱交換した空気を前記空調対象空間へ給気する第一給気手段と、
前記第一熱交換器と前記第一給気手段との間で第一熱媒体を圧送して循環させる第一循
環ポンプと、を有する、
請求項2に記載の空調システム。
【請求項4】
前記第一送水ポンプは、第一送水モードと第二送水モードの二つの送水モードで動作し、
前記第一送水モードでは、前記第一熱交換器における前記第一熱媒体の出口温度が所定の温度となるように井水の送水量が調節され、
前記第二送水モードでは、前記蓄熱槽に貯められる貯水量が所定の量となるように井水の送水量が調節される、
請求項3に記載の空調システム。
【請求項5】
前記第一給気手段は、第一熱媒体と外気とを熱交換させることにより、外気を除湿処理して前記空調対象空間へ給気する外気処理機を含み、
前記第一循環ポンプは、前記外気処理機が吸込む外気のエンタルピーと、前記吸込まれる外気と熱交換して前記外気処理機から排出される排気の状態と、に基づいて前記外気処理機へ循環させる第一熱媒体の量を調節する、
請求項3又は4に記載の空調システム。
【請求項6】
前記第一給気手段は、前記空調対象空間内の夫々の場所へ個別に給気する複数の負荷を含み、
前記第二空調手段は、前記空調対象空間の全体の温度を一様に調節する手段を有する、
請求項3から5のうち何れか一項に記載の空調システム。
【請求項7】
前記第一循環ポンプは、前記複数の負荷の運転台数に基づいて前記複数の負荷へ循環させる第一熱媒体の量を調節する、
請求項6に記載の空調システム。
【請求項8】
前記複数の負荷のうちの少なくとも一部は、前記空調対象空間の天井裏、又は前記空調対象空間に配置される机に設置され、前記空調対象空間へ向けて給気する、
請求項6又は7に記載の空調システム。
【請求項9】
前記空調対象空間の天井裏に設置される前記複数の負荷のうちの少なくとも一部は、ファンコイルユニットを含み、
前記ファンコイルユニットは、
前記空調対象空間へ向けて空気を吹き出すファンと、
前記ファンから見て前記空調対象空間側に配置され、前記ファンから吹出される空気と熱交換する第一熱媒体が内部を通過するコイルと、
前記ファンと前記コイルとの間に設けられ、前記ファンから吹出される空気を遮るように配置される板面を有する板状部材と、を有する、
請求項6から8のうち何れか一項に記載の空調システム。
【請求項10】
前記第二空調手段は、
前記第二送水ポンプにより供給される井水と第二熱媒体とを熱交換させる第二熱交換器と、
前記第二熱交換器と前記第二空調手段との間で第二熱媒体を圧送して循環させる第二循環ポンプと、を有し、
前記第二送水ポンプは、前記第二熱交換器における第二熱媒体の出口温度が所定の温度となるように井水の送水量を調整する、
請求項1から9のうち何れか一項に記載の空調システム。
【請求項11】
井水を利用する空調方法であって、
第一送水ポンプにより送水される井戸の熱を利用して温度調節された空気を空調対象空間に給気することにより、空調対象空間を空調する第一空調工程と、
前記第一送水ポンプにより送水される井水を蓄熱槽に貯水する貯水工程と、
前記蓄熱槽に貯められた井水を送水する第二送水ポンプにより送水される井水の熱を利用して温度調節された空気を空調対象空間に給気することにより、前記空調対象空間を空調する第二空調工程と、を有し、
前記第一空調工程で熱を利用する井水は、蓄熱槽で貯水されない井水である、
空調方法。
【請求項12】
井水を利用する空調システムの制御方法であって、
第一送水ポンプにより送水される井戸の井水の熱を利用して温度調節された空気を空調対象空間に給気することにより、空調対象空間を空調する第一空調工程と、
前記第一送水ポンプにより送水されて貯水された井水を送水する第二送水ポンプにより送水される井水の熱を利用して温度調節された空気を空調対象空間に給気することにより、前記空調対象空間を空調する第二空調工程と、を有し、
前記第一空調工程で熱を利用する井水は、蓄熱槽で貯水されない井水である、
空調システムの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
井水を空調システムに利用する技術が開示されている(例えば特許文献1―2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-80252号公報
【文献】特許第6444747号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
空調システムにおいて空調対象空間へ給気される空気の温度調節に井水の熱を利用する場合、製造する熱量が低下するため省エネルギー化が実現されると考えられる。しかしながら、このように空調システムに井水を利用して省エネルギー化を図る場合、空調システムの稼働が低下する時間帯においては、井水を利用するメリットが低下することが考えられる。
【0005】
そこで、本願は、空調システムの稼働が低下する時間帯においても井水を有効利用し、さらなる省エネルギー化を実現する空調技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明は、井戸から汲み上げられる井水と、井戸から汲み上げられ、一旦貯水された井水と、を空調システムに利用することとした。
【0007】
詳細には、本発明は、井水を利用する空調システムであって、井戸の井水を送水する第一送水ポンプと、第一送水ポンプにより送水される井水と熱交換することにより、空調対象空間を空調する第一空調手段と、第一送水ポンプにより送水される井水を貯水する蓄熱槽と、蓄熱槽に貯められた井水を送水する第二送水ポンプと、第二送水ポンプにより送水される井水と熱交換することにより、空調対象空間を空調する第二空調手段と、を備える、空調システムである。
【0008】
このような空調システムの場合、第一空調手段及び第二空調手段と熱交換する熱媒体に井水を利用している。よって、第一空調手段及び第二空調手段と熱交換するために製造される熱量は節減されるため、省エネルギー化が実現される。
【0009】
さらに、空調システムの稼働が低下する時間帯に蓄熱槽に井水を貯水する場合、蓄熱槽に貯水される井水は周囲の大気の冷熱あるいは温熱を吸収する。よって、空調対象空間を蓄熱槽に近接する場所に設ける場合、空調対象空間の温度を調節することができる。よって、空調システムの稼働が低下する時間帯においても井水を有効利用することができる。
【0010】
また、蓄熱槽に貯水された井水は、第二空調手段と熱交換し、第二空調手段が空調対象空間を空調するために利用される。このような空調システムは、省エネルギー化を実現し、井水を無駄なく利用する効率的なシステムである。
【0011】
また、井水の汲み上げ量は、地盤沈下の発生の抑制のために規制されていることが考え
られる。よって、井戸から井水を汲み上げる量は制限される可能性がある。よって、蓄熱槽を備えず、井戸からそのまま送水された井水を、空調対象空間から発せられる温熱の吸収のために利用する空調システムでは、井水は当該温熱を所望の通り吸収しきれない可能性が考えられる。しかしながら、上記のような空調システムの場合、夜間に蓄熱槽に蓄えられた井水を、日中において空調対象空間から発せられる温熱の吸収に利用することができる。つまり、上記のような空調システムは、井水の汲み上げ量が規制されている場合に、日中に空調対象空間から多量の温熱が発生する状況であっても、このような状況に対応し、空調対象空間を所望の通り空調することのできるシステムである。
【0012】
また、第一空調手段は、第一送水ポンプにより送水される井水のうちの少なくとも一部と第一熱媒体とを熱交換させる第一熱交換器と、第一熱媒体と熱交換した空気を空調対象空間へ給気する第一給気手段と、第一熱交換器と第一給気手段との間で第一熱媒体を圧送して循環させる第一循環ポンプと、を有してもよい。
【0013】
このような空調システムによれば、井水を利用し、空調対象空間へ温度調節された空気を給気することができる。
【0014】
また、第一送水ポンプは、第一送水モードと第二送水モードの二つの送水モードで動作し、第一送水モードでは、第一熱交換器における第一熱媒体の出口温度が所定の温度となるように井水の送水量が調節され、第二送水モードでは、蓄熱槽に貯められる貯水量が所定の量となるように井水の送水量が調節されてもよい。
【0015】
このような空調システムによれば、第一送水モードにおいて井水を利用し、空調対象空間へ温度調節された空気を給気することができる。第二送水モードにおいて、蓄熱槽に貯水される井水が、蓄熱槽の周囲の大気の冷熱あるいは温熱を吸収する度合いを環境に応じて調節することができる。
【0016】
また、第一給気手段は、第一熱媒体と外気とを熱交換させることにより、外気を除湿処理して空調対象空間へ給気する外気処理機を含み、第一循環ポンプは、外気処理機が吸込む外気のエンタルピーと、吸込まれる外気と熱交換して外気処理機から排出される排気の状態と、に基づいて外気処理機へ循環させる第一熱媒体の量を調節してもよい。
【0017】
このような空調システムによれば、外気処理機によって外気の潜熱を除去可能なように第一循環ポンプが第一熱媒体の量を調節する場合、当該外気処理機においては除湿された冷気が給気されることになる。また、第二空調手段が当該外気処理機以外の給気手段であって、空気から顕熱を除去して冷気を生成する給気手段を含む場合、冷気を生成する際の顕熱処理と潜熱処理とを別々に行うことができる。また、このような場合、顕熱処理を行う給気手段に使用される熱媒体の温度は、潜熱処理を行う給気手段の熱媒体の温度よりも高くても問題ないことになる。つまり、潜熱処理を行う給気手段の熱媒体と熱交換する冷水に井戸から直接汲み上げられた井水を利用し、顕熱処理を行う給気手段の熱媒体と熱交換する冷水に貯水されて温熱が蓄熱された温度の高い井水を利用することができる。このような空調システムは、井水を無駄なく利用する効率的なシステムである。
【0018】
また、上述のように井戸から汲み上げる井水の量は制限される可能性がある。そして、このような井戸から汲み上げられ、そのまま送水される井水の温度は、貯水されて温熱が蓄熱された場合の井水の温度よりも低い。しかしながら、上記のような空調システムによれば、このような低温で水量に制限のある井水を、潜熱処理を行う外気処理機のために優先して利用することになる。つまり、井戸からの井水の汲み上げ量が規制されている場合であっても、所望の通り潜熱処理を行うことができる。よって、空調対象空間を所望の通り空調することができる。
【0019】
また、第一給気手段は、空調対象空間内の夫々の場所へ個別に給気する複数の負荷を含み、第二空調手段は、空調対象空間の全体の温度を一様に調節する手段を有してもよい。
【0020】
このような空調システムによれば、空調対象空間の温度を一様に調節するだけでなく、空調対象空間内の夫々の場所の温度を個別に調節可能となる。また、このような空調システムによれば、個別の温度調節が可能な第一給気手段に、井戸から汲み上げられ、そのまま送水された井水を利用することになる。一方で、空調対象空間の全体の温度を一様に調節する手段を有する第二空調手段に、蓄熱槽に貯水された井水を利用することになる。つまり、このような空調システムによれば、夜間に空調対象空間と熱交換することで蓄熱した井水を日中に再度利用して空調対象空間の全体の温度を一様に調節することができる。さらにその上で空調対象空間の夫々の場所にいるユーザの個別の需要に応ずるように、夫々の場所における温度調節が可能となる。つまり、このような空調システムによれば、経済的でありつつも個別のユーザの需要に応えることができる。
【0021】
また、上述のように井戸から汲み上げる井水の量は制限される可能性がある。そして、このような井戸から汲み上げられ、そのまま送水される井水の温度は、貯水されて温熱が蓄熱された場合の井水の温度よりも低い。しかしながら、上記のような空調システムによれば、このような低温で水量に制限のある井水を、空調対象空間の個別の温度調節が可能な第一給気手段のために優先して利用していることになる。つまり、井戸からの井水の汲み上げ量が規制されている場合であっても、ユーザの個別の需要に応ずることができる。
【0022】
また、第一循環ポンプは、複数の負荷の運転台数に基づいて複数の負荷へ循環させる第一熱媒体の量を調節してもよい。
【0023】
このような空調システムによれば、循環する第一熱媒体の量の無駄は節減される。
【0024】
また、複数の負荷のうちの少なくとも一部は、空調対象空間の天井裏、又は空調対象空間に配置される机に設置され、空調対象空間へ向けて給気してもよい。
【0025】
このような空調システムによれば、負荷が設置される机を使用するユーザに温度調節された空気が給気されることになる。また、負荷が設置される天井の下にユーザが居る場合、ユーザへ向けて温度調節された空気が給気されることになる。また、負荷が設置される机が複数配置される場合、又は天井裏に設置される負荷が複数存在する場合、夫々の負荷の給気方向に位置する空調対象空間内の夫々の場所が好適に温度調節される。よって、夫々の場所にユーザがおり、ユーザ自身が給気温度を調節可能である場合、空調対象空間が一台の給気手段によって一律に空調される場合と比較し、ユーザの快適性は向上する。
【0026】
また、空調対象空間の天井裏に設置される複数の負荷のうちの少なくとも一部は、ファンコイルユニットを含み、ファンコイルユニットは、空調対象空間へ向けて空気を吹き出すファンと、ファンから見て空調対象空間側に配置され、ファンから吹出される空気と熱交換する第一熱媒体が内部を通過するコイルと、ファンとコイルとの間に設けられ、ファンから吹出される空気を遮るように配置される板面を有する板状部材と、を有してもよい。
【0027】
このような空調システムによれば、板状部材がファンの動作音を吸収することができる。よって、空調対象空間に居るユーザが感じる快適性は向上する。また、ファンから吹き出された空気は、板状部材の板面に当たり、板面の側方向を通過してコイルへ向かうことになる。つまり、コイルへ向かう空気は整流されることになるため、コイルにおいて一様に当該空気は熱交換される。すなわち、コイルにおける熱交換の効率は向上する。
【0028】
また、第二空調手段は、第二送水ポンプにより供給される井水と第二熱媒体とを熱交換させる第二熱交換器と、第二熱交換器と第二空調手段との間で第二熱媒体を圧送して循環させる第二循環ポンプと、を有し、第二送水ポンプは、第二熱交換器における第二熱媒体の出口温度が所定の温度となるように井水の送水量を調整してもよい。
【0029】
このような空調システムによれば、蓄熱槽を空調対象空間に近接する場所に設ける場合、空調対象空間から発せられる温熱あるいは冷熱を蓄熱し、空調対象空間の温度を調節することができる。また、蓄熱槽に貯水された井水を再度、第二空調手段のために利用することが可能となる。つまり、このような空調システムは、井水を無駄なく利用する効率的なシステムである。
【0030】
また、第二空調手段は、第二熱媒体と熱交換し、空調対象空間へ熱放射する熱放射手段を含んでもよい。このような空調システムによれば、井水が蓄熱槽において温熱を蓄熱する場合、温度上昇した井水が第二熱交換器において第二熱媒体と熱交換することになる。よって、第二熱媒体が熱放射手段へ流入する温度は、第一熱媒体が第一空調手段へ流入する温度以上となる。しかしながら、熱放射手段は、熱放射することにより空調対象空間から顕熱を除去するため、当該温度の高い第二熱媒体を利用して空調対象空間を冷却することができる。つまり、このような空調システムは、井水を無駄なく利用する効率的なシステムである。また、このような空調システムは、第一給気手段に加えて熱放射手段によっても空調対象空間の温度を調節するため、空調効果を増大させることができる。
【0031】
また、蓄熱槽は、空調対象空間の床下に設置されてもよい。このような空調システムによれば、蓄熱槽に貯水される井水は、空調対象空間から温熱あるいは冷熱を吸収して蓄熱する。よって、空調対象空間の温度を調節することができる。さらに、蓄熱槽に貯水される井水は、第二空調手段へ利用される。つまり、このような空調システムは、空調効果が大きく、また井水を無駄なく利用する効率的なシステムである。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、空調システムの稼働が低下する時間帯においても井水を有効利用し、さらなる省エネルギー化を実現する空調技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1図1は、実施形態に係る空調システムの構成の概要の一例を示している。
図2図2は、実施形態に係る空調システムの構成の概要の一例を示している。
図3図3は、実施形態に係る空調システムの構成の概要の一例を示している。
図4図4は、DCFCUの概要の一例を模式的に例示する。(A)は、DCFCUの概要の一例として、長手方向の断面図の一例を示している。(B)は、DCFCUの概要の一例として、短手方向の断面図の一例を示している。
図5図5は、フェースパネルに設けられる孔の形態のバリエーションの一例を示している。(A)は、孔に旋回翼形状の部材が配置される一例を示している。(B)は、フェースパネルがパンチングメタルである一例を示している。(C)は、フェースパネルに複数の円形の孔が設けられる一例を示している。
図6図6は、DCFCUが後付けされた机の概要の一例を示している。(A)は、机の上面図の概要の一例を示している。(B)は、机の断面図の概要の一例を示している。
図7図7は、第一変形例に係るDCFCUの概要を示している。
図8図8は、第二変形例に係るDCFCUの概要を示している。
図9図9は、外気処理機の概要の一例を示している。
図10図10は、放射パネルユニットの概要の一例を示している。
図11図11は、外気処理機の概要の一例を示している。
図12図12は、給気手段が空調対象空間へ配置される概要の一例を示している。
図13図13は、給気手段が空調対象空間へ配置される概要の一例を示している。
図14図14は、給気手段が空調対象空間へ配置される概要の一例を示している。
図15図15は、給気手段が空調対象空間へ配置される概要の一例を示している。
図16図16は、DCFCUの動作のフローチャートの一例を示している。
図17図17は、DCFCUが動作している場合の給気の流れの概要の一例を示している。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態は、本発明の実施形態の一例であり、本発明の技術的範囲を以下の態様に限定するものではない。
【0035】
(システムの概要)
図1図3は、本実施形態に係る空調システム1の構成の概要の一例を示している。また、以下では、空調システム1は、例えば複数の空調対象空間へ冷気を供給するものとする。そして、空調システム1は、空調対象空間へ冷気を供給する複数の給気手段を備える。そして、空調システム1は、図1に示されるように、井戸の中から井水を汲み上げる井水汲み上げポンプ2を備え、各給気手段において冷気を生成する際に利用される冷水と熱交換させる熱媒体として井水を利用する。
【0036】
ここで、空調システム1は、複数の給気手段の一例として、空調対象空間の天井裏に設置され、空調対象空間へ向けて冷気を給気する直流ファンコイルユニット(以降、DCFCUという)20を備える。ここで、DCFCU20は、空調対象空間の全体を一様の温度に空調する。また、空調システム1は、複数の給気手段の一例として、空調対象空間内に配置され、DCFCU20と同タイプのDCFCU20Aが後付けされる机30を備える。また、空調システム1は、複数の給気手段の一例として、空調対象空間の天井裏に設置され、空調対象空間の夫々の場所へ向けて個別に冷気を給気し、空調対象空間の夫々の場所ごとの温度を調節するDCFCU20B(DCFCU20と同タイプ)を備える。また、空調システム1は、複数の給気手段の一例として、空調対象空間の天井裏に設置され、空調対象空間へ向けて熱を放射する放射パネルユニット40を備える。また、空調システム1は、複数の給気手段の一例として、外気を吸い込み、空調対象空間へ向けて冷気を給気する外気処理機60及び外気処理機80を備える。
【0037】
(各給気手段の説明)
<DCFCU20>
図4は、DCFCU20の概要の一例を模式的に例示する。図4(A)は、DCFCU20の概要の一例として、長手方向の断面図の一例を示している。図4(B)は、DCFCU20の概要の一例として、短手方向の断面図の一例を示している。図4に示されるように、DCFCU20は、空気を吸い込み、吹き出すファン201を備える。ここで、ファン201は、直流電流により羽根を駆動させる直流ファンである。また、ファン201は、空調対象空間へ向かう方向に対して側方向に空気を吹き出す。そして、ファン201は、長手方向に2つ並べて設けられる。
【0038】
また、DCFCU20は、ファン201から見て空調対象空間側に、ファン201と所定の空間を空けてコイル203を備える。コイル203の内部には、図4(A)に示され
るように、井水が通過することとなる。そして、コイル203は、ファンから吹き出される空気と熱交換し、吹き出し空気に含まれる顕熱を除去する。つまりコイル203は、ドライコイルである。また、ファン201とコイル203との間の所定の空間を上部チャンバ209する。
【0039】
また、DCFCU20は、上部チャンバ209にバッフル板202を備える。バッフル板202は、その板面がファン201と対向するようにそれぞれのファン201の吹出し口に対して設置される。つまり、ファン201から吹き出された空気は、バッフル板202によって整流され、コイル203へ向かうことになる。
【0040】
また、DCFCU20は、コイル203から見て空調対象空間側に所定の空間を空けてフェースパネル204を備える。そして、フェースパネル204には、コイル203と熱交換し、コイル203を形成する部材の隙間を通過した冷気が空調対象空間へ向かう時に通過する孔205を備える。また、コイル203とフェースパネル204との間の所定の空間を下部チャンバ213とする。
【0041】
図5は、フェースパネル204に設けられる孔205の形態のバリエーションの一例を示している。図5(A)は、孔205に複数の翼状の部材214が旋回するように配置され、旋回翼形状の部材214同士の間の隙間から冷気が吹出される一例を示している。図5(B)は、フェースパネル204がパンチングメタルである一例を示している。図5(C)は、フェースパネル204に複数の円形の孔が設けられる一例を示している。孔205が、図5(A)に示されるような形態の場合、孔205から吹き出された空気は、旋回するように空調対象空間へ送られるため、空調対象空間に居る人間が感じるドラフトは抑制される。よって、空調対象空間に居る人間が感じる快適性は向上する。また、孔205が、図5(B)に示されるような形態の場合、フェースパネル204の全面から一様に冷気が給気される。また、孔205が、図5(C)に示されるような形態の場合、多量の冷気を空調対象空間に供給可能である。
【0042】
また、図4に示されるように、DCFCU20は、フェースパネル204をDCFCU20の本体に引っ掛ける爪206を備える。また、DCFCU20は、DCFCU20本体に設置され、フェースパネル204をDCFCU20の本体に対して固定するオープンキャッチ207を備える。オープンキャッチ207は、フェースパネル204をくっつけて固定する磁石を備え、また当該磁石が設けられる部分を天井側へ押し、その後当該部分から手を離すと、空調対象空間側へ当該部分が飛び出すような機構を有する。つまり、ユーザは、フェースパネル204のオープンキャッチ207が設けられている部分を空調対象空間側から天井側へ押し、その後当該部分から手を離すことにより、当該部分が天井に対して空調対象空間側へ少し開き、その開いた隙間に手を差し込んで空調対象空間側へ引くことでフェースパネル204をオープンキャッチ207から離すことができる。その後、ユーザは、爪206をDCFCU20の本体から外すことにより、フェースパネル204を簡単に設置場所から外すことができる。また、DCFCU20は、天井裏とフェースパネル204とを繋ぎ、フェースパネル204が空調対象空間に落下することを防止する落下防止ワイヤ208を備える。つまり、フェースパネル204は、容易に交換可能となる。
【0043】
また、DCFCU20は、基板210を備える。基板210の実装面には、ファン201と電気的に接続し、ファン201の動作を制御する制御チップ211が実装される。また、基板210の実装面には、外部の端末と無線通信を行うことのできる無線モジュール212を備える。
【0044】
<机30>
図6は、DCFCU20Aが後付けされた机30の概要の一例を示している。図6(A)は、机30の上面図の概要の一例を示している。図6(B)は、机30の断面図の概要の一例を示している。
【0045】
図6に示されるように、DCFCU20Aは、机30の天板31の裏面に後付される。そして、DCFCU20Aは、ダクト302を備える。ダクト302には、ビスが貫通する孔が設けられ、机30の天板31の裏面の所定の位置に設けられた穴に当該孔を貫通したビスが係合されることによりダクト302は固定される。
【0046】
また、DCFCU20Aは、2つのファン303を備える。そして、図6に示されるように、ダクト302は、ファン303を収容する収容部304を備える。ファン303は、天板31の裏面方向に空気が吹出されるように、机30の横方向に並べて設置される。また、ファン303は、例えば直流の電流がファン303の内部に設けられるモータに印加されることにより、ファン303に設けられる羽根が回転する、いわゆる直流ファンであってもよい。
【0047】
また、DCFCU20Aは、収容部304に、ファン303が動作した場合に外部から空気を吸込む吸込み口341を備える。吸込み口341は、ファン303の下部の収容部304に設けられる。また、吸込み口341は、DCFCU20Aが机30の天板31の裏面に後付けされた場合に、机30の幕板32側に位置することになる。このように吸込み口341及びファン303を設けることで、収容部304を簡易な構造としつつ、薄型化することができる。また、ファン303が横方向に並べて設置されることで、収容部304の厚みは薄型化されつつも、吹出し空気量は増大することになる。
【0048】
また、DCFCU20Aは、コイル307を備える。コイル307は、板状であり、平面状に蛇行する流管部材371から形成される。また、コイル307の下部(図6(B)において収容部304の底面近傍に位置する部分)を形成する流管部材371の端には、冷水が流入する流入口373が設けられる。また、コイル307の上部を形成する流管部材371の端には、流管部材371の内部を通過した冷水が流出する流出口374が設けられる。つまり、冷水とファン303から吹出された空気とが流管部材371を介して熱交換することになる。また、コイル307は、平面状に蛇行する流管部材371の外表面372が、ファン303が設置される方向を向くように仰向けに設けられる。つまり、コイル307は、ファン303から吹出された空気を熱交換させるために水平面に対して直立するように設置されてはいない。よって、収容部304は薄型化される。
【0049】
また、DCFCU20Aのダクト302は、ファン303から吹出され、コイル307の流管部材371同士の間の隙間を通過した空気が着座者の方向へ向かう場合に通過する矩形状の管路305を備える。ここで、収容部304と管路305とは連通している。また、管路305は、その底部が収容部304の底面に対して机30の天板31の裏面方向に段差状に設けられる。また、ダクト302は、当該段差部分に、傾斜面306を備える。
【0050】
また、DCFCU20Aは、管路305の着座者が着座する側の机30の先端の下部に吹出しフェース319を備える。そして、吹出しフェース319は、複数の小さな孔が横に並んだ給気口320を備える。管路305を通過した吹出し空気は、給気口320を介して着座者へ給気される。ここで、吹出しフェース319は、水平面に対して傾斜した状態で設置されており、給気口320から吹出される空気は、着座者の上半身へ向けて斜め上方向に進行することになる。
【0051】
また、DCFCU20Aは、基板310を備える。基板310の実装面には、ファン3
03と電気的に接続し、ファン303の動作を制御する制御チップ311が実装される。また、基板310の実装面には、外部の端末と無線通信を行うことのできる無線モジュール312を備える。
【0052】
また、ダクト302の各部分の寸法に関し、管路305の着座者から見た奥行き方向の長さは、例えば380mm程度である。また、管路305の厚みは、例えば20mm程度である。また、収容部304、及び収容部304と管路305とが連通する段差部分の着座者から見た奥行き方向の長さの合計は、例えば270mm程度である。また、収容部304の厚みは、例えば80mm程度である。また、吹出しフェース319に設けられる給気口320の縦方向の長さは、例えば5mm程度である。
【0053】
また、図7は、変形例に係るDCFCU20AAを示している。図7に示されるように、DCFCU20AAは、管路305を備えず、奥行き寸法を例えば300mm程度に小さくした装置(厚みは、DCFCU20Aと同様に例えば80mm程度)である。このようなDCFCU20AAによれば、天板31の裏面に補強材33を有する机30Aに後付けされる場合、DCFCU20AAは、補強材33を回避することが可能となる。
【0054】
また、DCFCU20AAは、収容部304Aの着座側の側面の上部に、給気口320と同じように、複数の小さな孔が横に並んだ給気口320Aを備える。つまり、コイル307Aの流管部材371A同士の間の隙間を通過した空気が、給気口320Aを介して着座者へ給気される(詳細は後述する)。また、給気口320Aから吹出される空気は、着座者の上半身へ向けて斜め上方向に進行することになる。
【0055】
また、DCFCU20AAは、収容部304Aの内部であって給気口320Aの近傍にガイド321を備える。ガイド321は、コイル307Aの流管部材371A同士の間の隙間を通過した空気を給気口320Aへ案内する。また、ガイド321は、図示しないが、収容部304Aとの連結部分に回動部を備え、机30Aの横長方向を回転軸として回動可能に設置される。つまり、DCFCU20AAは、ガイド321の向きを変更することにより、コイル307Aの流管部材371A同士の間の隙間を通過した空気が給気口320Aへ流れ込む向きや量が調節される。よって、給気口320Aから吹出される空気の向きや量も調節されることになる。また、DCFCU20AAは、収容部304Aの着座側の側面に、傾斜がつけられている傾斜面306Aを備える。
【0056】
このようなDCFCU20AAは、図6に示されるDCFCU20Aの効果(後述する)と同様の効果を奏することができる。加えて、補強材33を備える机30Aに対しても、補強材33を避けるように管路305の寸法を変更することなく、簡易に机30Aに設置することができる。また、このようなDCFCU20AAによれば、収容部304Aの着座側の側面には、傾斜がつけられた傾斜面306Aが設けられているため、着座者が着座した場合に着座者の体の一部がDCFCU20AAの収容部304Aへ接触することは抑制される。つまり、このようなDCFCU20AAは、着座者へ快適性を提供することができる。
【0057】
また、このようなDCFCU20AAによれば、ガイド321を回動させることにより、給気口320Aから吹出される空気の向きや量が調節される。つまり、このようなDCFCU20AAは、給気の向き、給気量、給気される空気が当たる体の部位などの着座者の要望に対して柔軟に対応可能な装置である。
【0058】
また、図8は、別の変形例に係るDCFCU20ABの概要の一例を示している。図8(A)は、DCFCU20ABの断面図の概要の一例を示している。図8(B)は、DCFCU20ABの斜視図の一例を示している。図8に示されるように、DCFCU20A
Bは、机30Aに後付けされる。つまり、DCFCU20ABの管路305Bの途中に補強材33が位置することとなる。このような机30Aに後付けされるDCFCU20ABの管路305Bは、当該補強材33を覆う部分が布製のたわみ継手308によって形成される。
【0059】
上記のようなDCFCU20ABによれば、図6に示されるDCFCU20Aの効果(後述する)と同様の効果を奏することができる。加えて、管路305Bの薄型化が維持されつつも、ファン303Bの羽根が回転する場合の騒音は、当該騒音をなす空気の振動がたわみ継手に吸収される。よって、当該騒音が外部に漏れることが低減される。よって、着座者が着座した場合に、着座者がファン303Bの騒音を感じる度合いは低減される。よって、着座者が騒音を不快に感じることは抑制される。また、たわみ継手は、クッション性を有するため、着座者の体の一部が接触した場合であっても、着座者が不快に感じることは低減される。つまり、上記のようなDCFCU20ABによれば、着座者へ快適性を提供することができる。
【0060】
<外気処理機60>
図9は、外気処理機60の概要の一例を示している。図9に示されるように、外気処理機60は、外気と空調対象空間からの排気とを熱交換し、外気を除湿する全熱交換器601を備える。また、外気処理機60は、全熱交換器601を通過した外気と熱交換し、外気を加温する熱交換器603を備える。ここで、熱交換器603を形成するコイルの内部には、温水が供給される。また、外気処理機60は、空調対象空間から吸い込まれた室内空気と熱交換し、室内空気を冷却する熱交換器604を備える。ここで、熱交換器604を形成するコイル内部には、井水と熱交換した冷水が供給される。また、外気処理機60は、熱交換器603を通過し、加温された外気と、熱交換器604を通過し、冷却された室内空気とを熱交換するロータ602を備える。外気は、ロータ602を通過することにより、顕熱が除去されて冷却されることになる。また、外気から顕熱を除去し、昇温したロータ602の部分は室内空気が通過する流路へ回転させられる。そして、当該昇温した部分は、熱交換器604を通過し、冷却された室内空気によって冷却される。そして、当該部分は、再度外気が通過する流路へ回転させられ、外気から顕熱を除去する。上記のような外気処理機60は、外気から顕熱及び潜熱を除去する装置である。
【0061】
また、外気処理機60は、ロータ602を通過し、冷却された外気と、熱交換器604を通過する前の室内空気とを熱交換させる全熱交換器606を備える。また、外気処理機60は、全熱交換器606を通過した外気を空調対象空間へ吹き出すファン605を備える。つまり、外気は、外気処理機60によって除湿冷却された状態で空調対象空間へ給気されることになる。また、外気処理機60は、ロータ602を通過し、加温された室内空気を冷却する熱交換器608を備える。ここで、熱交換器608を形成するコイルには、井水と熱交換した冷水が供給されることになる。また、外気処理機60は、熱交換器608を通過した室内空気を全熱交換器601へ向けて排出するファン607を備える。つまり、全熱交換器601には、冷却された室内空気が流入することになる。
【0062】
<放射パネルユニット40>
図10は、放射パネルユニット40の概要の一例を示している。放射パネルユニット40は、空調対象空間の天井裏に設けられる。放射パネルユニット40は、平板状のコイル401と、井水と熱交換した冷水が通過するメイン配管402を備える。平板状のコイル401は、板面方向に3つ直列に並べられる。そして、放射パネルユニット40は、メイン配管402から分岐し、3つの平板状のコイル401へ冷水を供給する配管403を備える。また、配管403は、各コイル401を形成する流管が直列になるように一つのコイル401を形成する流管の終端と、他のコイル401を形成する流菅の先端とを連結する。また、図示しないが、配管403には配管403の内部を流れる冷水の量を調節する
バルブが設けられる。また、平板状のコイル401には、熱を放射する放射パネル404がそれぞれのコイル401に対して貼られる。つまり、放射パネル404は、コイル401と熱交換することにより冷却された状態で冷熱を放射する。ここで、放射パネルユニット40は、本発明の「熱放射手段」の一例である。
【0063】
<外気処理機80>
図11は、外気処理機80の概要の一例を示している。図11に示されるように、外気処理機80は、外気と空調対象空間からの排気とを熱交換し、外気を除湿する全熱交換器801を備える。また、外気処理機80は、全熱交換器801を通過した外気と熱交換し、外気を冷却する熱交換器802を備える。ここで、熱交換器802を形成するコイルの内部には、冷水が供給される。また、外気処理機80は、熱交換器802を通過した外気と熱交換し、外気を再加熱する熱交換器803を備える。ここで、熱交換器803を形成するコイル内部には、温水が供給される。また、外気処理機80は、熱交換器803を通過した外気を空調対象空間へ吹き出すファン804を備える。また、外気処理機80は、全熱交換器801を通過した室内空気を排気するファン805を備える。つまり、外気処理機80においては、外気から顕熱及び潜熱を除去するものとする。
【0064】
(システムの全体構成)
<井戸から汲み上げられた井水を直接利用する給気手段>
次に、上記の各給気手段から形成される空調システム1の全体構成の概要の一例を示す。空調システム1は、汲み上げ水槽3を備える。汲み上げ水槽3は、井水汲み上げポンプ2によって汲み上げられた井水を一時的に貯水する。また、井水汲み上げポンプ2は、汲み上げ水槽3の水位に応じて井戸から汲み上げる井水の量を調節する。
【0065】
また、空調システム1は、井水供給ポンプ4を備える。井水供給ポンプ4は、汲み上げ水槽3に貯水された井水を送水する。ここで、井水供給ポンプ4は、設定モードに応じて井水の送水量を調節する。
【0066】
また、空調システム1は、熱交換器5を備える。熱交換器5の一次側には、井水供給ポンプ4から送水された井水の少なくとも一部が流入する。また、空調システム1は、井水供給ポンプ4から熱交換器5へ送水される井水の送水量を調整する弁6を備える。ここで、熱交換器5は、本発明の「第一熱交換器」の一例である。
【0067】
一方、熱交換器5の二次側には、DCFCU20と同じタイプのファンコイルユニットであって、空調対象空間の天井裏に設けられるDCFCU20Bのコイル203Bと、熱交換器5との間を冷水が循環する循環配管が設けられる。つまり、熱交換器5では、井戸から直接供給される井水と、DCFCU20Bにおいて冷気を生成するために空気と熱交換する冷水とが熱交換することになる。ここで、熱交換器5の二次側の循環配管内を流れる冷水は、本発明の「第一熱媒体」の一例である。
【0068】
また、熱交換器5の二次側には、机30に後付けされたDCFCU20Aのコイル307を形成する流管部材371と、熱交換器5との間を冷水が循環する循環配管が設けられる。つまり、熱交換器5では、井戸から直接供給される井水と、DCFCU20Aにおいて冷気を生成するために空気と熱交換する冷水とが熱交換することになる。
【0069】
また、熱交換器5の二次側には、外気処理機60に設けられる熱交換器604、608と、熱交換器5との間を冷水が循環する循環配管が設けられる。つまり、熱交換器5では、井戸から直接供給される井水と、外気処理機60の熱交換器604、608を流れる冷水とが熱交換することになる。
【0070】
また、空調システム1は、熱交換器5の二次側において、DCFCU20Bのコイル203Bを流れる冷水、机30に後付けされたDCFCU20Aのコイル307を流れる冷水、及び外気処理機60に設けられる熱交換器604、608を流れる冷水を熱交換器5の二次側へ送水する直接供給系二次ポンプ21を備える。
【0071】
また、空調システム1は、空冷式のチラー70A、70B、及び熱交換器22を備える。熱交換器22は、直接供給系二次ポンプ21から熱交換器5へ送水され、熱交換器5において熱交換させられた水をさらに熱交換させる。熱交換器5の一次側へ供給される冷水は、空冷式のチラー70A、70Bによって生成される。また、空調システム1は、熱交換器22において熱交換させられた二次側の水をDCFCU20Bのコイル203B、机30に後付けされたDCFCU20Aのコイル307、及び外気処理機60に設けられる熱交換器604、608へ戻すポンプ23を備える。また、DCFCU20B、机30(DCFCU20A)、外気処理機60、直接供給系二次ポンプ21、及びポンプ23は、本発明の「第一空調手段」の一例である。また、DCFCU20B、机30(DCFCU20A)、及び外気処理機60は、本発明の「第一給気手段」の一例である。また、空冷式のチラー70A、70Bは、本発明の「冷温水供給装置」の一例である。
【0072】
<貯水されて蓄熱された井水を利用する給気手段>
また、空調システム1は、水槽10を備える。水槽10は、例えば空調対象空間の床下に設けられる。そして、水槽10には、井水供給ポンプ4から送水された井水の少なくとも一部が流入し、貯水される。そして、水槽10は、所定の期間蓄熱するために井水を貯水する蓄熱槽11と、井水を還元井戸へ還元するために貯水する還水槽12と、を備える。ここで、井水供給ポンプ4から送水された井水は、蓄熱槽11へ流入することになる。そして、蓄熱槽11に貯水される井水は、周囲の大気や還水槽12から熱を吸収して蓄熱する。また、空調システム1は、当該流入量を調節するための弁8を備える。また、還水槽12へ流入する井水は、井水供給ポンプ4から熱交換器5へ送水され、熱交換器5において二次側の水と熱交換された井水が流入することになる。ここで、空調システム1は、熱交換器5から還水槽12へ流入する井水の量を調整する弁7を備える。
【0073】
また、空調システム1は、蓄熱槽11に貯水されて蓄熱された井水を汲み上げ、送水する井水蓄熱汲み上げポンプ13を備える。また、空調システム1は、井水蓄熱汲み上げポンプ13から送水された井水が流入する熱交換器14を備える。ここで、熱交換器14の一次側には、井水蓄熱汲み上げポンプ13から送水された井水が流入する。ここで、熱交換器14は、本発明の「第二熱交換器」の一例である。
【0074】
また、空調システム1は、熱交換器14の一次側において熱交換器14から還水槽12へ戻る井水の量を調節する弁15を備える。また、空調システム1は、還水槽12へ戻る井水のうち、井水蓄熱汲み上げポンプ13によって汲み上げられ、蓄熱槽11から熱交換器14の一次側へ向かう井水に混合される量を調節する弁16を備える。
【0075】
一方、熱交換器14の二次側には、空調対象空間の天井裏に設けられる放射パネルユニット40のメイン配管402と、熱交換器14との間を冷水が循環する循環配管が設けられる。つまり、熱交換器14では、蓄熱槽11に貯水されて蓄熱された井水と、放射パネルユニット40の放射パネル404を冷却する冷水とが熱交換することになる。ここで、熱交換器14の二次側の循環配管内を流れる冷水は、本発明の「第二熱媒体」の一例である。
【0076】
また、熱交換器14の二次側には、空調対象空間の天井裏に設けられるDCFCU20のコイル203と、熱交換器14との間を冷水が循環する循環配管が設けられる。つまり、熱交換器14では、蓄熱槽11に貯水されて蓄熱された井水と、DCFCU20におい
て冷気を生成するために空気と熱交換する冷水とが熱交換することになる。
【0077】
また、熱交換器14の二次側には、空調対象空間へ給気する外気処理機80の熱交換器802と、熱交換器14との間を冷水が循環する循環配管が設けられる。つまり、熱交換器14では、蓄熱槽11に貯水されて蓄熱された井水と、外気処理機80の熱交換器802において冷気を生成するために外気と熱交換する冷水とが熱交換することになる。
【0078】
また、空調システム1は、上記の放射パネルユニット40、DCFCU20、及び外気処理機80を並列に並べ、熱交換器14の二次側から流出した冷水が夫々の装置へ供給されるように配置する。また、空調システム1は、上記の放射パネルユニット40、DCFCU20、及び外気処理機80の下流に外気処理機50を備える。外気処理機50は、例えばPMAC社製の外気処理機であってもよい。ここで、外気処理機50は、図示しないが熱交換器を備え、当該熱交換器のコイルに冷水が流入する。そして、当該熱交換器において冷水が外気と熱交換することにより、外気は冷却される。ここで、外気処理機50においては、外気から顕熱を除去するものとする。そして、冷却された外気は空調対象空間へ給気される。ここで、外気処理機50は、本発明の「熱放射手段と熱交換した第二熱媒体と更に熱交換する負荷」の一例である。
【0079】
また、空調システム1は、蓄熱系二次ポンプ41を備える。蓄熱系二次ポンプ41は、熱交換器14の二次側において、放射パネルユニット40、DCFCU20、あるいは外気処理機80において冷気を生成するために空気と熱交換し、さらに外気処理機50において冷気を生成するために空気と熱交換した冷水を熱交換器14の二次側へ送水する。
【0080】
また、空調システム1は、熱交換器42を備える。熱交換器42は、蓄熱系二次ポンプ41から熱交換器14へ送水され、熱交換器14において熱交換させられた水をさらに熱交換させる。熱交換器42の一次側へ供給される冷水は、空冷式のチラー70A、70Bによって生成される。また、空調システム1は、熱交換器42において熱交換させられた二次側の水を放射パネルユニット40、DCFCU20、及び外気処理機80へ戻すポンプ43を備える。また、DCFCU20、放射パネルユニット40、外気処理機50、外気処理機80、蓄熱系二次ポンプ41、及びポンプ43は、本発明の「第二空調手段」の一例である。
【0081】
また、空調システム1は、井水還水ポンプ17を備える。井水還水ポンプ17は、蓄熱槽11に貯水される井水を還元井戸へ送水することにより、蓄熱槽11において井水が貯水されて蓄熱が開始される時刻までに水槽10の排水が完了するよう、水槽10の起動水位を調節する。
【0082】
<その他の構成装置>
また、空調システム1は、外気処理機80と同じタイプの外気処理機80A,80Bを備える。外気処理機80A、例えば上記の給気手段が設置される空調対象空間とは異なる空調対象空間に設置される。異なる空調対象空間とは、例えば厨房であってもよい。そして、外気処理機80Aは、厨房に所望の温湿度の空気を給気する。また、外気処理機80Bは、例えば上記の空調対象空間とはフロアが異なる別の空調対象空間に設置され、所望の温湿度の空気を給気する。また、外気処理機80A、80Bに夫々設けられる熱交換器802A、802Bには、空冷式のチラー70A及び70Bにおいて生成された冷水が供給される。
【0083】
また、空調システム1は、貯湯槽90及び熱交換器91を備える。貯湯槽90には温水が貯水され、当該貯水される温水は、熱交換器91の一次側へ供給される。一方、熱交換器91の二次側には、外気処理機80A、80Bに夫々設けられる熱交換器803A、8
03Bと、熱交換器91との間を温水が循環する循環配管が設けられる。つまり、熱交換器91では、貯湯槽90に貯水された温水と、外気処理機80A、80Bの熱交換器803A、803Bにおいて暖気を生成するために外気と熱交換する温水とが熱交換することになる。
【0084】
また、熱交換器91の二次側には、外気処理機60に設けられる熱交換器603と、熱交換器91との間を温水が循環する循環配管が設けられる。つまり、熱交換器91では、貯湯槽90に貯水された温水と、外気処理機60の熱交換器603において外気を加熱するために外気と熱交換する温水とが熱交換することになる。
【0085】
また、空調システム1は、温水二次ポンプ94を備える。温水二次ポンプ94は、熱交換器91の二次側において、外気処理機80A、80Bに夫々設けられる熱交換器803A、803B、及び外気処理機60に設けられる熱交換器603において夫々熱交換した温水を熱交換器91の二次側へ送水する。
【0086】
また、空調システム1は、熱交換器91において熱交換させられた二次側の水を外気処理機80A、80Bに夫々設けられる熱交換器803A、803B、及び外気処理機60に設けられる熱交換器603へ戻すポンプ95を備える。
【0087】
また、空調システム1は、発電機92A,92Bを備える。発電機92A、92Bには、熱交換器91において熱交換させられた一次側の水が流入する。また、空調システム1は、熱交換器91において熱交換させられた一次側の水を発電機92A、92Bへ送る発電機排熱循環ポンプ93A,93Bを備える。そして、発電機92A、92Bに流入した水は、発電機における排熱を吸収し、加温される。そして、加温された水が貯湯槽90へ送られる。また、空調システム1は、一次乾燥機100を備える。そして、発電機排熱循環ポンプ93A,93Bは、熱交換器91において熱交換させられた一次側の水の少なくとも一部を一次乾燥機100へ送るように調節され得る。
【0088】
また、空調システム1は、蒸気ボイラー96、熱交換器97及び還水槽98を備える。熱交換器97の一次側には、蒸気ボイラー96において生成された蒸気が供給される。そして、熱交換器97において熱交換された蒸気は水となり、還水槽98へ貯水された後に蒸気ボイラー96へ戻される。また、空調システム1は、熱交換器97の二次側に、熱交換器91において熱交換させられた一次側の水を熱交換器97へ流入させる二次ポンプ99を備える。
【0089】
(各給気手段の配置例)
図12-図15は、上記の各給気手段が空調対象空間へ配置される概要の一例を示して
いる。図12に示される空調対象空間においては、外気処理機60が空調対象空間の近傍に配置される。そして、外気処理機60において生成された冷気が、空調対象空間の側面から空調対象空間へ向けて給気される。また、図12に示される空調対象空間においては、天井の隅にDCFCU20が2つ配置される。そして、DCFCU20において生成された冷気が、空調対象空間へ給気される。ここで、DCFCU20からの給気は、空調対象空間の全体の温度が一様となるように風向き、風量などが調節される。また、図12に示される空調対象空間の床下には、水槽10が設置される。
【0090】
図13に示される空調対象空間においては、複数のDCFCU20Bが天井裏に配置される。そして、DCFCU20Bにおいて生成された冷気が、空調対象空間の天井から空調対象空間の夫々の場所へ向けて別個に給気される。また、図13に示される空調対象空間においては、複数の机30が配置される。そして、机30に後付けされたDCFCU20Aにおいて生成された冷気が、夫々の着座者へ向けて給気される。また、図13に示さ
れる空調対象空間においては、外気処理機80が空調対象空間の近傍に配置される。そして、外気処理機80において生成された冷気が、空調対象空間の天井から空調対象空間へ向けて給気される。
【0091】
図14に示される空調対象空間においては、放射パネルユニット40が天井に配置される。そして、冷却された放射パネル404が空調対象空間へ向けて放熱する。また、図14に示される空調対象空間においては、複数の机30が配置される。そして、机30に後付けされたDCFCU20Aにおいて生成された冷気が、夫々の着座者へ向けて給気される。また、図14に示される空調対象空間においては、外気処理機80が空調対象空間の近傍に配置される。そして、外気処理機80において生成された冷気が、空調対象空間の天井から空調対象空間へ向けて給気される。
【0092】
図15に示される空調対象空間においては、複数の机30が配置される。そして、机30に後付けされたDCFCU20Aにおいて生成された冷気が、夫々の着座者へ向けて給気される。また、図15に示される空調対象空間においては、外気処理機80が空調対象空間の近傍に配置される。そして、外気処理機80において生成された冷気が、空調対象空間の天井から空調対象空間へ向けて給気される。また、図15に示される空調対象空間においては、外気処理機50が空調対象空間の近傍に配置される。そして、外気処理機50において生成された冷気が、空調対象空間の天井から空調対象空間へ向けて給気される。
【0093】
(日中動作例)
<井水供給ポンプ4>
次に、空調システム1の動作例を説明する。空調システム1は、例えば日中モードと夜間モードの2つの動作モードを備える。そして、日中モードにおいて、井戸から汲み上げられ、井水供給ポンプ4から熱交換器5の一次側へ送水される井水の送水量は、例えば、熱交換器5の二次側の出口温度A(図1)が設定値(例えば17度程度)となるように熱交換器5へ送水される井水の送水量を調節する。よって、井水供給ポンプ4から熱交換器5の一次側へ送水される井水は、例えば500L/minとなる。また、送水される井水の熱交換器5の一次側入口温度は、例えば16度程度となり、井水の熱交換器5の一次側出口温度は、例えば23度程度となる。また、日中は、井水供給ポンプ4から熱交換器5へ供給される井水が通過する配管に設けられる弁6は開けられているものとする。また、一方で、井水供給ポンプ4から蓄熱槽11へ向かう井水が通過する配管に設けられる弁8は閉じられているものとする。また、井水供給ポンプ4は、本発明の「第一送水ポンプ」の一例である。また、日中モードは、本発明の「第一送水モード」の一例である。
【0094】
<直接供給系二次ポンプ21>
日中モードにおいて熱交換器の二次側に配置される直接供給系二次ポンプ21が、熱交換器5と、熱交換器5の二次側の給気手段との間を循環させる冷水の水量は次のように設定される。すなわち、例えば、熱交換器5と、外気処理機60の熱交換器604及び熱交換器608との間を循環させる冷水の水量が、外気エンタルピーと全熱交換器601の出口空気C(図9)の状態に基づき、設定される。また、熱交換器5と、DCFCU20Bを形成する各コイル203Bと間を循環させる冷水の水量は、DCFCU20Bの運転台数に基づき設定される。また、熱交換器5と、机30に後付けされるDCFCU20Aのコイル307と間を循環させる冷水の水量は、机30の台数に基づき設定される。このようにして設定された冷水の総量は、例えば500L/minである。また、これら冷水の熱交換器5の二次側入口温度は、例えば24度程度となる。また、直接供給系二次ポンプ21は、本発明の「第一循環ポンプ」の一例である。
【0095】
<外気処理機60>
熱交換器5において冷却された冷水は、熱交換器22において、チラー70A,70Bにおいて生成された冷水とさらに熱交換され、冷却される。そして、例えば温度が17度程度の状態で外気処理機60の熱交換器604及び熱交換器608へ供給される。そして、外気処理機60においては、外気から潜熱が除去される。そして、除湿冷却された外気が図12に示される空調対象空間へ給気されることになる。
【0096】
また、外気処理機60は、定風量の冷気を空調対象空間へ給気可能である。また、外気処理機60は、空調対象空間の使用状況により、風量を段階的に変更することができる。また、給気温度は、熱交換器604及び熱交換器608を流れる冷水の量、及び熱交換器603を流れる温水の量を調節することにより調整可能である。また、外気処理機60は、空調対象空間の室内温度に応じて設定をリセットすることができる。また、外気処理機60は、熱交換器604及び熱交換器608を流れる冷水の量、及び熱交換器603を流れる温水の量を調節することにより給気露点温度も調節することができる。
【0097】
<DCFCU20B>
また、熱交換器5の二次側において冷却された冷水であって、熱交換器22においてチラー70A,70Bにおいて生成された冷水とさらに熱交換されて冷却された冷水は、DCFCU20Bを形成するコイル203Bへも供給される。ここで、DCFCU20Bは、図4に示されるDCFCU20と同じタイプのファンコイルユニットである。つまり、ファン201から吹き出された空気が、バッフル板202によって整流され、冷水が通過するコイル203へ向かう。そして、吹出し空気は、コイル203の表面を通過する際に冷却される。そして、冷気は、コイル203を形成する部材の隙間を通過し、フェースパネル204に設けられた孔205を介して空調対象空間へ給気される。ここで、DCFCU20Bは、空調対象空間の夫々の空間へ個別に冷気を給気する(図13)。
【0098】
<机30に後付けされたDCFCU20A>
熱交換器5の二次側において冷却され、熱交換器22においてチラー70A,70Bにおいて生成された冷水とさらに熱交換されて冷却された冷水は、机30に後付けされるDCFCU20Aを形成するコイル307へも供給される。ここで、図16は、DCFCU20Aの動作のフローチャートの一例を示している。また、図17は、DCFCU20Aが動作している場合の給気の流れの概要の一例を示している。
【0099】
図16に示されるように、ステップS101では、無線モジュール312が、着座者が所有するスマートフォンなどの端末からDCFCU20Aの動作を要求する動作要求信号を受信する(S101)。そして、ステップS102では、無線モジュール312が動作要求信号を制御チップ311へ転送する(S102)。
【0100】
そして、ステップS103では、制御チップ311が、動作要求信号に従い、ファン303の羽根を回転させる制御信号を生成する。よって、ファン303の羽根が回転することとなる。そして、ファン303の羽根が回転することにより、着座者の脚元空間から吸込み口341を介してファン303へ空気が吸込まれる。そして、図17に示されるように、ファン303の吹出し口309から空気は、着座者が着座する方向へ空気が吹き出される(S103)。ここで、コイル307の流管部材371の内部には、熱交換器5の二次側において冷却された冷水が通過する。ここで、冷水は、コイル307の下部を形成する流管部材371の端に設けられる流入口373から流管部材371内へ流入する。そして、ファン303から吹出される空気と熱交換しながら、コイル307の上部を形成する流管部材371内へ流れていく。そして、冷水はコイル307の上部を形成する流管部材371の端に設けられる流出口374から流出する。つまり、コイル307の下部を形成する流管部材371内を流れる冷水の温度は低く、コイル307の上方へ向かうに連れて冷水の温度は高くなる。
【0101】
ここで、ファン303から吹出された吹出し空気の少なくとも一部は、天板31の裏面方向に当たった後、コイル307の外表面372に沿って進行する。よって、吹出し空気が一様にコイル307と熱交換し、冷却されることになる。また、吹出し空気の進行方向の空間は、外表面372によって徐々に遮られているため、吹出し空気の流れは、スムーズになる。よって、吹出し空気の圧力損失は抑制される。また、冷却された吹出し空気は、流管部材371同士の隙間を通過する。
【0102】
そして、流管部材371同士の隙間を通過した吹出し空気は、収容部304と管路305とが連通する段差部分に達する。ここで、段差部分には、傾斜面306が設けられている。よって、段差部分に達した吹出し空気は、傾斜面306に沿って無駄なく自然に管路305の内部へ進行することになる。その後、吹出し空気は、管路305を通過し、給気口320を介して図13図15に示される空調対象空間に居る着座者へ給気される。ここで、DCFCU20Aは、給気口320にルーバ等の整流部材を備え、給気口320からの給気が着座者の首などの特定の部位へ集中するように調節されてもよい。
【0103】
ここで、DCFCU20Aは、着座者が所有するスマートフォンなどの端末から遠隔操作されているが、天井裏に設置されるDCFCU20Bが、DCFCU20Aと同様に、着座者が所有するスマートフォンなどの端末から遠隔操作されてもよい。
【0104】
<井水蓄熱汲み上げポンプ13>
ところで、空調システム1は、井水供給ポンプ4により直接井水を熱交換器5へ送水して利用するだけではなく、井水を水槽10に一旦貯水し、蓄熱されて温度上昇した井水も利用する。また、井水蓄熱汲み上げポンプ13が蓄熱槽11から汲み上げて熱交換器14の一次側へ送水する井水の送水量は、例えば、熱交換器14の二次側の出口温度B(図1)が設定値(例えば19度程度)となるように調節される。また、熱交換器14の二次側の出口温度がこのような設定温度の場合、井水蓄熱汲み上げポンプ13から熱交換器14の一次側へ送水される井水は、例えば330L/minとなる。このような場合、送水される井水の熱交換器14の一次側入口温度は、例えば18度程度となり、井水の熱交換器14の一次側出口温度は、例えば21度程度となる。ここで、井水蓄熱汲み上げポンプ13は、本発明の「第二送水ポンプ」の一例である。
【0105】
<蓄熱系二次ポンプ41>
蓄熱系二次ポンプ41が、熱交換器14と、熱交換器14の二次側の給気手段との間を循環させる冷水の量は次のように設定される。すなわち、例えば、外気処理機50が動作するために必要な冷水の最小流量(例えば180L/min)の60%の流量(例えば108L/min)と、外気処理機80が動作するために必要な冷水の最小流量との合計を、熱交換器14と、熱交換器14の二次側の給気手段との間を循環させる冷水の最小流量と設定する。そして、放射パネルユニット40のメイン配管402の制御バルブと、DCFCU20との運転台数に基づき、循環流量の変流量制御を行う。よって、蓄熱系二次ポンプ41が、熱交換器14と、熱交換器14の二次側の給気手段との間を循環させる冷水の量は、例えば380L/minとなる。また、これら冷水の熱交換器14の二次側入口温度は、例えば22度程度となる。ここで、蓄熱系二次ポンプ41は、本発明の「第二循環ポンプ」の一例である。
【0106】
<放射パネルユニット40>
熱交換器14の二次側において冷却された冷水の少なくとも一部は、さらに熱交換器42において、チラー70A,70Bにおいて生成された冷水と熱交換され、冷却される。そして、冷水は、例えば温度が19度程度の状態で放射パネルユニット40が備えるメイン配管402へ供給される。そして、冷水は、メイン配管402から分岐した配管403
を介してコイル401の内部へ流入する。よって、コイル401に貼られた放射パネル404は、コイル401と熱交換することにより冷却されることになる。そして、冷却された放射パネル404から冷熱が空調対象空間へ放射される。ここで、放射パネルユニット40は、配管403に設けられる弁の開度をインターバル制御することにより、放射パネル404の温度は、例えば19度から24度の間に調節される。
【0107】
<DCFCU20>
熱交換器14の二次側において冷却された冷水は、さらに熱交換器42においてチラー70A,70Bにおいて生成された冷水と熱交換され、冷却される。そして、冷水は、例えば温度が19度程度の状態でDCFCU20を形成するコイル203へ供給される。そして、図12に示される空調対象空間へ冷気が給気される。
【0108】
<外気処理機80>
熱交換器14の二次側において冷却された冷水は、さらに熱交換器42においてチラー70A,70Bにおいて生成された冷水と熱交換され、冷却される。そして、冷水は、例えば温度が19度程度の状態で外気処理機80に設けられる熱交換器802のコイルの内部へ供給される。つまり、熱交換器802を通過する外気は、冷却され、ファン804によって空調対象空間(図13図15)へ給気される。
【0109】
また、外気処理機80は、定風量の冷気を空調対象空間へ給気可能である。また、給気温度は、熱交換器802を流れる冷水の量、及び熱交換器803を流れる温水の量を調節することにより調整可能である。また、外気処理機80は、空調対象空間の室内温度に応じて設定をリセットすることができる。また、外気処理機80は、熱交換器802を流れる冷水の量、及び熱交換器803を流れる温水の量を調節することにより給気露点温度も調節することができる。
【0110】
<外気処理機50>
上記の放射パネルユニット40において、放射パネル404と熱交換したコイル401の内部を流れる冷水は、例えば温度が22度-23度程度となり、コイル401から流出する。そして、放射パネルユニット40から流出した当該冷水は、外気処理機50に設けられる熱交換器のコイルの内部へ供給される。よって、外気処理機50に吸込まれた外気は、熱交換器を通過する際に冷却され、図15に示される空調対象空間へ給気される。
【0111】
<その他の装置>
空冷式のチラー70A、70Bは、生成した冷水を外気処理機80A、80Bの熱交換器802A、802Bへも供給している。ここで、空冷式のチラー70A、70Bから熱交換器802A、802Bへ供給される冷水の量は、外気処理機80A、80Bが吸込む外気のエンタルピーに基づき決定される。また、外気処理機80Bは複数の空調対象空間の夫々に配置されてもよく、この場合、外気処理機80Bの全体の給気量は一定としつつも、各空調対象空間の使用状況により空調対象空間ごとに給気量を可変としてもよい。
【0112】
また、発電機排熱循環ポンプ93A,93Bは、熱交換器91の一次側において熱交換させられ、発電機92A、92Bへ戻る水の温度D(図3)が55度以下となるように動作する。そして、熱交換器91の一次側の出口温度E(図2)が上昇傾向である場合には、発電機92A、92Bへ戻る水の一部は、一次乾燥機100へ送られる。
【0113】
また、蒸気ボイラー96は、発電機92A、92Bが例えば保守作業中もしくは故障中で運転を停止している場合に稼働される。蒸気ボイラー96において生成される蒸気は、減圧装置(減圧弁もしくは蒸気発電装置)経由で熱交換器97の一次側へ供給される。そして、蒸気は熱交換器97において熱交換されて水となり、一次側の出口から流出する。
そして、流出した水は、還水槽98へ戻される。ここで、蒸気ボイラー96において出力される蒸気の量は、発電機92A、92Bの運転台数により変更される。また、二次ポンプ99は、定流量制御とし、熱交換器91において熱交換させられた一次側の水が熱交換器97へ戻る場合の戻り温度F(図3)が55度以下となるように、戻る水の一部を、一次乾燥機100へ送ってもよい。
【0114】
また、水槽10には、井水還水ポンプ17が起動する起動水位が設定される。起動水位は、例えば蓄熱槽11に井水が貯水されて蓄熱が開始されるまでの間に、水槽10に貯水された井水の排水が完了する水位に設定される。
【0115】
また、空調システム1は、図示しないが、VAV(Variable Air Volume)ユニットを備えてもよい。そして、VAVユニットは、各空調対象空間にいる人が所持するスマートフォンから位置情報を収集することにより各空調対象空間にいる人の人数を算出してもよい。そして、各部屋にいる人の人数に応じてVAVの設定値を切り替えてもよい。また、外気処理機60及びDCFCU20が設けられる空調対象空間は、当該空間において開催されるイベントに応じて、当該空間に給気される総給気量が変更されてもよい。
【0116】
(夜間動作例)
<井水供給ポンプ4>
夜間モードにおいては、井水供給ポンプ4から熱交換器5へ供給される井水が通過する配管に設けられる弁6は閉じられる。一方で、井水供給ポンプ4から蓄熱槽11へ向かう井水が通過する配管に設けられる弁8は開けられる。そして、井水供給ポンプ4は、蓄熱槽11に井水が設定量貯水されるまで、蓄熱槽11へ向けて井水を送水する。ここで、蓄熱槽11に貯水される井水の量は、例えば、翌日の天候(気温や湿度予報等)により決定されてもよい。ここで、蓄熱槽11は、図12に示されるように空調対象空間の床下に設置されている。よって、蓄熱槽11に貯水された井水は、夜間に空調対象空間から熱を吸収することになる。つまり、図12に示される空調対象空間は、少なくとも夜間においては蓄熱槽11に貯水される井水によって冷却されることになる。また、夜間モードは、本発明の「第二送水モード」の一例である。
【0117】
<作用効果>
上記のような空調システム1によれば、井水供給ポンプ4によって、熱交換器5の一次側へ井水が供給され、当該井水は熱交換器5の二次側へ流入する水を冷却するために利用されている。すなわち、熱交換器5の二次側へ流入した水を熱媒体として使用し、冷気を生成させることに井水が利用されていることになる。よって、上記のような空調システム1によれば、熱交換器5の二次側に配置されるDCFCU20B、机30(DCFCU20A)、および外気処理機60が冷気を生成するために使用する冷水と熱交換するために製造される熱量は節減される。よって、省エネルギー化が実現される。
【0118】
さらに、上記の空調システム1によれば、空調システム1の稼働が低下する夜間に水槽10に井水を貯水している。そして、水槽10は、図12に示されるように空調対象空間の床下に設置されている。よって、水槽10に貯水される井水は空調対象空間が含む熱を吸収して蓄熱することができる。よって、空調対象空間の温度を調節することができる。よって、空調システムの稼働が低下する夜間帯においても井水を有効利用することができる。
【0119】
また、水槽10に貯水された井水は、熱交換器14の一次側へ供給され、熱交換器14の二次側へ流入する水を冷却するために利用される。すなわち、熱交換器14の二次側へ流入した水を熱媒体として使用し、冷気を生成させることに井水が利用されていることに
なる。このような空調システムは、省エネルギー化を実現し、井水を無駄なく利用する効率的なシステムである。
【0120】
また、井水の汲み上げ量は、地盤沈下の発生の抑制のために規制されていることが考えられる。このような場合、井水汲み上げポンプ2による井水の汲み上げ量は制限されることになる。よって、水槽10を備えず、井戸からそのまま送水された井水を空調対象空間から発せられる温熱の吸収のために利用する空調システムでは、井水は当該温熱を所望の通り吸収しきれない可能性が考えられる。しかしながら、上記のような空調システム1によれば、夜間に水槽10に貯水された井水が、日中において熱交換器14の一次側へ供給され、熱交換器14の二次側へ流入する水を冷却するために利用されている。つまり、上記のような空調システム1によれば、井水の汲み上げ量が規制されている場合に、日中に空調対象空間から多量の温熱が発生する状況であっても、このような状況に対応し、空調対象空間を所望の通り空調することのできるシステムである。
【0121】
また、上述のように井水汲み上げポンプ2による井水の汲み上げ量が制限される可能性がある。そして、このような井戸から汲み上げられ、そのまま送水される井水の温度は、蓄熱槽11に貯水されて温熱が蓄熱された場合の井水の温度よりも低い。しかしながら、上記のような空調システム1によれば、このような低温で水量に制限のある井水を、潜熱処理を行う外気処理機60、空調対象空間に個別に冷気を給気するDCFCU20B及び机30(DCFCU20A)のために、空調対象空間を一様に温度調節するDCFCU20、放射パネルユニット40、及び外気処理機80のためよりも優先して利用している。つまり、上記のような空調システム1によれば、井戸からの井水の汲み上げ量が規制されている場合であっても、所望の通り潜熱処理を行い、空調対象空間を所望の通り空調することができる。また、個別のユーザの需要にも応ずることができる。
【0122】
また、熱交換器14の一次側へ供給される井水は、水槽10において温熱を蓄熱した水である。よって、温度上昇した井水が熱交換器14において二次側へ流入する水と熱交換することになる。よって、二次側へ流入した水が熱交換器14において井水と熱交換し、放射パネルユニット40、DCFCU20、外気処理機50、および外気処理機80へ流入する温度(19度程度)は、熱交換器5において井水と熱交換した水がDCFCU20B、机30(DCFCU20A)、および外気処理機60へ流入する温度(17度程度)
以上となる。しかしながら、放射パネルユニット40は、熱放射することにより空調対象空間から顕熱を除去するため、空調対象空間を冷却するために、このような当該温度の高い水を利用することができる。また、DCFCU20においても、空調対象空間から顕熱を除去するため、当該温度の高い水を利用することができる。つまり、このような空調システムは、井水を無駄なく利用する効率的なシステムである。また、このような空調システムは、井水を直接利用するDCFCU20B、机30(DCFCU20A)、および外気処理機60に加えて、蓄熱された井水を利用する放射パネルユニット40、DCFCU20、外気処理機50、および外気処理機80によっても空調対象空間の温度を調節するため、空調効果を増大させることができる。
【0123】
また、上記の空調システム1によれば、井水供給ポンプ4は、日中モードにおいて熱交換器5の二次側の出口温度Aが設定値(例えば17度程度)となるように熱交換器5へ送水される井水の送水量を調節している。よって、熱交換器5の二次側に配置されるDCFCU20B、机30(DCFCU20A)、外気処理機60は、冷気を生成するために使用する水を当該熱交換器5へ循環させることにより、17度程度の冷水を得ることができる。よって、熱交換器5の二次側に配置されるDCFCU20B、机30(DCFCU20A)、外気処理機60は、空調対象空間へ給気する冷気を生成することができる。
【0124】
また、上記の空調システム1によれば、直接供給系二次ポンプ21が、熱交換器5と、
外気処理機60との間を循環させる冷水の水量を、外気エンタルピーと全熱交換器601の出口空気C(図9)の状態に基づき設定している。よって、外気処理機60において、外気から潜熱を除去することのできる温度の冷水を直接供給系二次ポンプ21は供給することができる。よって、図12に示される空調対象空間では、DCFCU20によって空調対象空間の顕熱が除去され、外気処理機60によって、空調対象空間の潜熱が除去されることになる。
【0125】
また、上記の空調システム1によれば、外気処理機60などの潜熱処理を行う給気手段の熱媒体と熱交換する冷水に井戸から直接汲み上げられた井水を利用し、潜熱処理とは別に放射パネルユニット40などの顕熱処理を行う給気手段の熱媒体と熱交換する冷水に水槽10に貯水されて蓄熱された温度の高い井水を利用している。このような空調システム1は、井水を無駄なく利用する効率的なシステムである。
【0126】
また、上記の空調システム1によれば、空調対象空間の夫々の場所や夫々の着座者へ向けて個別に冷気を給気するDCFCU20B、及び机30(DCFCU20A)には、井戸から直接汲み上げられた井水が利用されている。一方で、空調対象空間の温度を一様に調節するDCFCU20、及び放射パネルユニット40には、井戸から汲み上げられ、蓄熱槽11に一旦貯水された井水が利用されている。つまり、上記のような空調システム1によれば、夜間に空調対象空間と熱交換することで蓄熱した井水を日中に再度利用し、空調対象空間の温度を一様にしている。さらにその上で空調対象空間内の夫々の場所にいるユーザの個別の需要に応ずるように井戸から汲み上げられてそのまま送水された井水を利用して夫々の場所での温度調節が可能となる。つまり、上記のような空調システム1によれば、経済的でありつつも個別のユーザの需要に応えることのできる空調システムである。
【0127】
また、上記のような空調システムによれば、外気処理機50へ流入する冷水は、放射パネルユニット40、DCFCU20、あるいは外気処理機80を通過した冷水である。つまり、外気処理機50では、他の装置において冷気を生成させるために使用した冷水を再度使用し、冷気を生成している。よって、このような空調システムは、冷水を無駄なく利用する効率的なシステムである。また、外気処理機50により、空調対象空間の空調効果は増大する。
【0128】
また、上記の空調システム1によれば、図13における空調対象空間において、DCFCU20Bは4台設けられている。そして、直接供給系二次ポンプ21が、熱交換器5と、DCFCU20Bとの間を循環させる冷水の水量を、DCFCU20Bの運転台数に基づき設定している。よって、上記の空調システム1によれば、空調対象空間のそれぞれの場所へDCFCU20Bから給気可能であり、また循環する冷水の量の無駄は節減される。
【0129】
また、上記の空調システム1によれば、図13図15に示されるように、DCFCU20Aが設置される机30を使用するユーザに温度調節された冷気が給気されることになる。また、図13に示されるように、空調対象空間の天井裏に複数のDCFCU20Bが設置されるため、空調対象空間に居るそれぞれのユーザへ向けて温度調節された好適な冷気が給気されることになる。つまり、空調対象空間内の夫々の場所が好適に温度調節される。また、空調対象空間内に複数のユーザが居り、ユーザ自身が給気温度を調節可能である場合、空調対象空間が一台の給気手段によって一律に空調される場合と比較し、ユーザの快適性は向上する。
【0130】
また、上記の空調システム1を形成するDCFCU20は、バッフル板202がファン201の動作音を吸収している。よって、空調対象空間に居るユーザが感じる快適性は向
上する。また、ファン201から吹き出された空気は、バッフル板202の板面に当たり、板面の側方向を通過してコイル203へ向かうことになる。つまり、コイル203へ向かう空気は整流されることになるため、コイル203において一様に当該空気と熱交換される。すなわち、コイル203における熱交換の効率は向上する。
【0131】
また、上記の空調システム1によれば、熱交換器5または熱交換器14において、井水と熱交換する二次側の水が所望の温度に調節されなかった場合であっても、当該水は、チラー70A、70Bから供給される冷温水と熱交換されるため、所望の温度に調節することができる。よって、このような空調システム1は、熱交換器5の二次側または熱交換器14の二次側から流出し、空調システム1を形成する各給気手段へ供給される冷水の温度の変動を抑制することができる。よって、各給気手段により生成される冷気の温度の変動は抑制される。よって、空調対象空間へは、温度変動が抑制された冷気が供給されることになり、空調対象空間に居るユーザが感じる快適性は保たれる。
【0132】
また、上記の空調システム1によれば、井水供給ポンプ4が、水槽10へ送る井水の量を調節している。よって、水槽10に貯水される井水により、水槽10の周囲(例えば図
12に示される空調対象空間)の熱を吸収し、蓄熱する度合いを環境に応じて調節するこ
とができる。
【0133】
また、上記の空調システム1を形成するDCFCU20に使用されるファン201は直流電流により動作するファンであるから省エネルギー化が実現される。また、DCFCU20に使用されるコイル203は、吹出される空気の顕熱を除去するドライコイルである。よって、コイル203の表面は乾いているため、当該表面に埃などが付着されることは抑制される。よって、DCFCU20は、コイル203よりも空調対象空間側へフィルタを備えずに済む。すなわち、DCFCU20は、フェースパネル204を開け、空調対象空間側から容易に各部品が交換可能な構造である。
【0134】
また、上記のような机30に後付けされるDCFCU20Aによれば、DCFCU20Aを机30に後付けした後にDCFCU20A又は机30の仕様が変更された場合であっても、DCFCU20Aと机30とを固定しているビスを外すことによってDCFCU20Aを机30から取り外すことができる。そして、仕様が変更されたDCFCU20Aを再度机30へ固定することが容易に行える。つまり、上記のようなDCFCU20Aによれば、仕様の変更に対して容易に対応可能となる。
【0135】
また、上記のようなDCFCU20Aは、ファン303及びコイル307から形成されるため、簡易な構造となる。よって、DCFCU20Aの重さは低減され、DCFCU20Aのレイアウトの変更は容易となる。また、上記のようなDCFCU20Aによれば、机30から取り外してメンテナンスを簡易に行うことができる。つまり、上記のようなDCFCU20Aによれば、取り扱いが簡易となる。
【0136】
また、上記のようなDCFCU20Aによれば、机30の天板31の裏面に後付けされるため、DCFCU20Aを収容するスペースを机30が備えている必要はなく、机30の選択の自由度は向上する。また、上記のようなDCFCU20Aによれば、机30の天板31の裏面に後付けされるため、机30に合わせてDCFCU20Aを形成する部品をカスタマイズせずに済む。よって、初期コストは抑制される。
【0137】
また、上記のようなDCFCU20Aによれば、ファン303は着座者から見て奥側に設置される。よって、着座者がファン303の動作音を感じる度合いは低減される。また、着座者から見て奥側の場所は、着座者が着座した場合に着座者の手前側の場所と比べて着座者の脚が接触しにくい場所である。よって、当該場所に設けられるファン303のサ
イズを大きくとった場合であっても、着座者が着座した場合に、着座者の脚がファン303を収容する収容部304の下面に当たることは抑制される。換言すれば、サイズの大きいファン303を設置することによりファン303の出力は抑制され、ファン303の動作音は低減される。
【0138】
また、上記のようなDCFCU20Aによれば、ファン303から吹出された空気が着座者の着座側へ進行する空間は、コイル307の外表面372によって当該進行する方向に狭められていく。よって、吹出し空気は、当該空間をスムーズに流れつつも、コイル307と一様に熱交換することになる。よって、吹出し空気とコイル307とが熱交換する効率の低下が抑制され、さらに吹出し空気の圧力損失も抑制される。
【0139】
また、上記のようなDCFCU20Aによれば、コイル307の外表面372が、ファン303が設置される方向を向くように仰向けに設けられるため、コイル307の高さ方向の寸法は抑制される。よって、DCFCU20Aの収容部304の薄型化が実現される。
【0140】
また、上記のようなDCFCU20Aによれば、管路305は矩形状であるため、吹出し空気の通過面積が確保されつつも薄型化されることになる。よって、着座者へ好適に冷気が給気されつつも、着座者の脚が管路305に接触し、着座者に不快感を与えることは抑制される。また、収容部304と管路305との連通部分の段差には傾斜面306がつけられているため、コイル307の流管部材371同士の間の隙間を通過した吹出し空気が、傾斜面306に沿って着座者の着座側へ無駄なく自然に進行することになる。よって、吹出し空気が収容部304から管路305へ侵入する場合に、当該段差に当たることにより圧力損失されることは抑制される。
【0141】
また、ファン303が設置される場所から着座者の着座側への方向に対する、収容部304の断面の大きさよりも、管路305の断面の大きさの方が小さいこととなる。よって、ファン303の吹出し口309から吹出された吹出し空気は、管路305へ侵入した場合にその流速が増大する。よって、着座者の着座側の管路305の末端の給気口320から着座者へ向けて好適な勢いの空気が給気される。
【0142】
また、上記のようなDCFCU20Aを備える机30によれば、着座者の脚元空間(天板の下方空間)からファン303へ空気が吸込まれ、着座者へ温度調節された空気が吹出されている。よって、着座者の脚元空間に暖気が溜まっている場合、当該暖気を取り除くとともに着座者へ冷風を給気することができる。つまり、上記のようなDCFCU20Aを備える机30は、着座者へ快適性を提供することができる。
【0143】
<その他変形例>
上記の実施形態では、第一空調手段は、DCFCU20B、机30(DCFCU20A)、外気処理機60、直接供給系二次ポンプ21、及びポンプ23により形成されているが、第一空調手段はこのような形成に限定されず、井水供給ポンプ4により送水される井水の少なくとも一部と熱交換することにより、空調対象空間を空調するように形成されていればよい。また、第二空調手段についても、上記の実施形態では、DCFCU20、放射パネルユニット40、外気処理機50、外気処理機80、蓄熱系二次ポンプ41、及びポンプ43により形成されるように記載されているが、このような形成例に限定されず、水槽10に貯水されて蓄熱され、井水蓄熱汲み上げポンプ13により送水される井水と熱交換することにより、空調対象空間を空調するように形成されていればよい。
【0144】
また、図14に示されるような空調対象空間に配置される机30に設けられるDCFCU20Aの流管部材371の内部を流れる水を、熱交換器14の二次側へ流入させ、蓄熱
槽11に貯水されて温熱が蓄熱された温度の高い井水と熱交換するようにしてもよい。なぜならば、図14に示されるような空調対象空間は、放射パネルユニット40が設置され、当該放射パネルユニット40により空調対象空間が一様に冷却されている。よって、井戸からそのまま送水される井水よりも温度の高い、蓄熱槽11に貯水された井水をDCFCU20Aのために利用しても空調効果は保てるからである。
【0145】
また、上記の実施形態では井水供給ポンプ4が2つのモードにおいて動作する例を示したが、動作モードは2つに限られない。また、上記の実施形態では、日中モードにおいて、熱交換器5における二次側の冷水の出口温度が所定の温度となるように、熱交換器5の一次側へ流入する井水の送水量が調節される例を示したが、熱交換器5の一次側へ流入する井水の送水量の調節はこのような例に限定されない。また、同様にして、井水蓄熱汲み上げポンプ13は、熱交換器14における二次側の冷水の出口温度が所定の温度となるように熱交換器14の一次側へ送水する井水の送水量を調整しているが、熱交換器14の一次側へ流入する井水の送水量の調節はこのような例に限定されない。また、上記の実施形態では、外気処理機60によって除湿冷却された外気が冷気として空調対象空間へ給気される例を示したが、空調システム1は外気処理機60を含まなくてもよい。
【0146】
また、上記の実施形態では、DCFCU20Bや机30(DCFCU20A)が空調対象空間に複数設けられているが、設けられる台数に制限はない。また、DCFCU20Bや机30(DCFCU20A)が設けられなくともよい。また、直接供給系二次ポンプ21が、熱交換器5と、DCFCU20Bとの間を循環させる冷水の水量を、DCFCU20Bの運転台数に基づき設定しているが、冷水の水量は運転台数に基づかなくてもよい。また、本発明の第二空調手段の一例としてDCFCU20、放射パネルユニット40、外気処理機50及び外気処理機80を挙げたが、第二空調手段は、空調対象空間の全体の温度を一様に調節せず、空調対象空間の夫々の場所の温度を個別に調節する手段であってもよい。
【0147】
また、上記の空調対象空間へ冷気を給気する各装置が配置される場所は、上記の空調対象空間の天井裏、空調対象空間に配置される机などに限定されない。また、放射パネルユニットは、複数の空調対象空間へ設けられてもよく、また放射パネルユニット自体が設けられなくともよい。
【0148】
また、放射パネルユニット40、DCFCU20、及び外気処理機80の下流には外気処理機50が設けられなくともよい。また、チラー70A、70Bは設けられなくともよい。すなわち、当該チラーから冷温水が供給される熱交換器22、42において各給気手段に使用される冷水との熱交換が行われなくともよい。また、水槽10が設置される場所は、空調対象空間の床下に限定されない。
【0149】
また、上記の実施形態では、各給気手段が空調対象空間へ冷気を給気する例を示したが、各給気手段は空調対象空間へ暖気を給気してもよい。そして、各給気手段において暖気を生成する熱交換器に流入する熱媒体と井水とが熱交換することにより、当該熱媒体を加温してもよい。また、水槽10における井水は空調対象空間から冷熱を吸収して蓄熱してもよい。
【0150】
また、上記の実施形態では、ファン303は、吹出される空気が、天板31の裏面を向くように設置されている。そして、流管部材371の外表面372が、ファン303が設置される方向を向くように仰向けに設けられる。しかし、ファン303の吹出し口309は、天板31の裏面を向いていなくともよい。また、外表面372は、ファン303が設置される方向を向くように仰向けに設けられていなくともよい。例えば、ファン303の吹出し口309が机の天板31の側方向を向いて設けられ、コイル307の外表面372
は、ファン303から見てファン303から吹出される吹出し空気の進行方向の空間を狭めていくように所定の角度をなして設けられていてもよい。
【0151】
また、上記の実施形態では、管路305の底部は、収容部304の底面に対して机30の天板31の裏面方向に段差状に設けられているが、当該段差部分は、設けられなくともよい。また、当該段差部分は設けられる場合に、段差部分に傾斜面306が設けられていなくともよい。
【0152】
また、上記の実施形態では、DCFCU20Aは、着座者が着座して使用する机30に後付けされる例を示したが、DCFCU20Aは、使用者が立った状態で使用する机に後付けされてもよい。
【0153】
以上、本発明の好ましい実施の形態の一例を説明したが、本発明は図示の形態に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。また、以上で開示した実施形態や変形例はそれぞれ組み合わせる事ができる。
【符号の説明】
【0154】
1・・空調システム:2・・井水汲み上げポンプ:3・・汲み上げ水槽:4・・井水供給ポンプ:5・・熱交換器:6・・弁:7・・弁:8・・弁:10・・水槽:11・・蓄熱槽:12・・還水槽:13・・井水蓄熱汲み上げポンプ:14・・熱交換器:15・・弁:16・・弁:17・・井水還水ポンプ:21・・供給系二次ポンプ:22・・熱交換器:23・・ポンプ:30・・机:31・・天板:32・・幕板:40・・放射パネルユニット:41・・蓄熱系二次ポンプ:42・・熱交換器:43・・ポンプ:50・・外気処理機:60・・外気処理機:70A、70B・・チラー:80、80A、80B・・外気処理機:90・・貯湯槽:91・・熱交換器:92A、92B・・発電機:93A、93B・・発電機排熱循環ポンプ:94・・温水二次ポンプ:95・・ポンプ:96・・蒸気ボイラー:97・・熱交換器:98・・還水槽:99・・二次ポンプ:100・・一次乾燥機:201・・ファン:202・・バッフル板:203、203B・・コイル:204・・フェースパネル:205・・孔:206・・爪:207・・オープンキャッチ:208・・落下防止ワイヤ:209・・上部チャンバ:210・・基板:211・・制御チップ:212・・無線モジュール:213・・下部チャンバ:214・・旋回翼形状の部材:302・・ダクト:303・・ファン:304・・収容部:305・・管路:306・・傾斜面:307・・コイル:309・・吹出し口:310・・基板:311・・制御チップ:312・・無線モジュール:319・・吹出しフェース:320・・給気口:341・・吸込み口:371・・流管部材:372・・外表面:373・・流入口:374・・流出口:401・・コイル:402・・メイン配管:403・・配管:404・・放射パネル:601・・全熱交換器:602・・ロータ:603・・熱交換器:604・・熱交換器:605・・ファン:606・・全熱交換器:607・・ファン:608・・熱交換器:801・・全熱交換器:802、802A、802B・・熱交換器:803、803A、803B・・熱交換器:804・・ファン:805・・ファン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17