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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】時間計測回路および超音波流量計
(51)【国際特許分類】
   G01F 1/66 20220101AFI20240305BHJP
【FI】
G01F1/66 101
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019185132
(22)【出願日】2019-10-08
(65)【公開番号】P2021060304
(43)【公開日】2021-04-15
【審査請求日】2022-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】小木曽 康弘
(72)【発明者】
【氏名】加藤 太一郎
(72)【発明者】
【氏名】栗林 英毅
【審査官】羽飼 知佳
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-238562(JP,A)
【文献】特開2007-051890(JP,A)
【文献】特開2019-049423(JP,A)
【文献】特開2008-014801(JP,A)
【文献】特開2000-213971(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01F 1/66-1/667
G01P 5/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1信号の入力から第2信号の入力があるまでの第1時間長を第1クロックに基づいて計時するように構成された第1タイマと、
前記第1信号の入力の後、かつ、前記第2信号の入力よりも前に入力される第3信号の入力から前記第2信号の入力があるまでの第2時間長を、前記第1クロックよりも高速の第2クロックに基づいて計時するように構成された第2タイマと、
前記第3信号の入力のタイミングに応じた、前記第2タイマによって計時される前記第2時間長の最小値と最大値との差が、前記第1タイマの1クロックと一致するように、前記第2タイマの1カウント分の時間を校正するように構成された校正回路と、
前記第1タイマにより計時された前記第1時間長と、前記第2タイマにより計時された前記第2時間長と、前記校正回路によって校正された前記第2タイマの1カウント分の時間とに基づいて、前記第1信号の入力から前記第3信号の入力までの時間長を算出するように構成された時間算出回路と
前記第3信号の入力から前記第1タイマが少なくとも2回カウントアップしたときに前記第2信号を生成するように構成されたカウンタ制御回路と
を備え
とを特徴とする時間計測回路。
【請求項2】
請求項1に記載の時間計測回路において、
前記第2タイマによって計時される前記第2時間長の前記最小値と前記最大値とは、前記第1クロックの1クロック分以上の差がある
ことを特徴とする時間計測回路。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の時間計測回路において、
前記時間算出回路は、前記校正回路によって校正された前記第2タイマの1カウント分の時間とに基づいて、前記第1時間長から前記第2時間長を減算することで、前記第1信号の入力から前記第3信号の入力までの前記時間長を算出する
ことを特徴とする時間計測回路。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載された時間計測回路と、
測定対象の流体が流れる配管に配置された1対のトランスデューサと、
前記1対のトランスデューサを駆動して前記1対のトランスデューサのそれぞれから超音波信号を送信させるように構成された送信回路と、
前記送信回路によって前記1対のトランスデューサの一方から送信された前記超音波信号を、前記1対のトランスデューサの他方より受信するように構成された受信回路と、
前記超音波信号の伝搬時間差に基づいて、前記流体の流量を計測するように構成された流量測定回路と
を備え、
前記第1信号は、前記送信回路が前記超音波信号を送信させたときに前記時間計測回路に入力され、
前記第3信号は、前記受信回路が、前記超音波信号を受信したときに前記時間計測回路に入力され、
前記伝搬時間差は、前記時間算出回路によって算出される前記第1信号の入力から前記第3信号の入力までの前記時間長に基づいて求められる
ことを特徴とする超音波流量計。
【請求項5】
請求項4に記載の超音波流量計において、
前記流量測定回路が計測した前記流体の流量を出力するように構成された出力装置をさらに備える
ことを特徴とする超音波流量計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時間計測回路および超音波流量計に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、流体の流量を計測する流量計として、超音波を用いて流体の流量を計測する超音波流量計が用いられている。この超音波流量計では、図6に示すように、測定対象の気体が流れる配管1に対し1対のトランスデューサ(超音波圧電素子)2,3が配置される。上流側のトランスデューサ2を例えば数百kHzの共振周波数で駆動し、トランスデューサ2から超音波を送信させる。超音波が配管1内の気体中を伝搬して下流側のトランスデューサ3を励起し、このトランスデューサ3の出力を増幅することで受信信号が得られる。超音波の送信タイミングから受信信号の到達タイミングの時間計測を行うことで、超音波の伝搬時間を計測できる。同様に、下流側のトランスデューサ3から超音波を送信し、上流側のトランスデューサ2で受信して、超音波の伝搬時間を計測する。
【0003】
トランスデューサ2からトランスデューサ3までの順方向(気体が流れる方向)の超音波の伝搬時間とトランスデューサ3からトランスデューサ2までの逆方向の超音波の伝搬時間とを比較することで、伝搬時間差が求められる。
【0004】
図6に示すように、トランスデューサ2とトランスデューサ3との間で互いに逆方向に伝搬する超音波の伝搬時間の差に基づいて流体の流速Vが測定され、この測定された流速Vと配管1の断面積Sとから流体の流量Qが求められる。
【0005】
ところで、より正確な流量計測を実現するためには、高分解能な時間計測を行うことが必要である。このような場合には、粗く時間を測る低速カウンタと、より精密に時間を測る高速カウンタとを併用してより高分解能な時間計測を行う場合がある。
【0006】
図7に示すように、従来の超音波流量計に用いられる時間計測回路では、まず送信信号の送信タイミングを低速カウンタの所定のタイミングに合わせ、送信と同時に低速カウンタでのカウントを開始する。その後、受信信号の受信が判定された瞬間から高速カウンタを起動して、低速カウンタの所定のタイミング(図7の例では、次の次の立ち上がり)でこれを止め、低速カウンタのカウントから高速カウンタのカウント値を引くことで、受信タイミングの時間計測が行われる。図7の例において、伝搬時間差Δt=t1-t2を行うことに相当する。
【0007】
流量ゼロの場合には、原理的には、伝搬時間差はゼロになり、流量が生じている場合には、伝搬時間差が流量に応じて生ずることになる。従来の時間計測回路で超音波の伝搬時間差を求める場合において、ゼロ流量時に、低速カウンタのカウントの瞬間に受信タイミングが到来した場合、順逆ともにゼロ流量時付近に受信判定が行われる(図8)。このとき、順逆の一方がこのカウントの前、他方が後に受信判定となった場合、ほぼ同じ伝搬時間にも関わらず、高速カウンタの動作時間が最小と最大とで分かれてしまい、伝搬時間の誤差が大きく現れてしまう。
【0008】
図8の(a)では、低速カウンタの立ち上がり直後に受信判定が行われるため、低速カウンタの次の次の立ち上がりの時間まで高速カウンタが動作する。一方、図8の(b)では、低速カウンタの立ち上がり直前に受信判定が行われるため、低速カウンタの次の次の立ち上がりまでの時間が、上記(a)の場合の半分程度の時間となる。
【0009】
図9は、基準となる時間(例えば、低速クロック)に対する順方向と逆方向との伝搬時間の誤差を模式的に示している。図8に示すように、伝搬時間の誤差は、伝搬時間の経過とともに増加し、高速カウンタの動作期間の切り替わりに応じて、伝搬時間の誤差が最大となり、その後、最小となっている。
【0010】
前述したように、流量ゼロの場合には、原理的には順方向と逆方向の伝搬時間は一致する。しかし、実際には、流量ゼロの場合であっても、順方向と逆方向に伝搬する超音波の伝搬時間は完全には一致せず、わずかながらオフセットがある(図8、「逆方向」の矢印と「順方向」の矢印に示す伝搬時間の違い)。また、超音波の音速は温度依存性があり、順方向と逆方向との超音波の伝搬時間差は、温度によって変化する。伝搬時間差の誤差が温度によって生じ、かつ、温度変化するため、特に流量ゼロの場合には伝搬時間差の誤差がより顕著に表れる問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開2019-124478号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、ゼロ流量時においても温度変化による超音波の伝搬時間差の誤差が抑えられた時間計測回路および超音波流量計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述した課題を解決するために、本発明に係る時間計測回路は、第1信号の入力から第2信号の入力があるまでの第1時間長を第1クロックに基づいて計時するように構成された第1タイマと、前記第1信号の入力の後、かつ、前記第2信号の入力よりも前に入力される第3信号の入力から前記第2信号の入力があるまでの第2時間長を、前記第1クロックよりも高速の第2クロックに基づいて計時するように構成された第2タイマと、前記第3信号の入力のタイミングに応じた、前記第2タイマによって計時される前記第2時間長の最小値と最大値との差が、前記第1タイマの1クロックと一致するように、前記第2タイマの1カウント分の時間を校正するように構成された校正回路と、前記第1タイマにより計時された前記第1時間長と、前記第2タイマにより計時された前記第2時間長と、前記校正回路によって校正された前記第2タイマの1カウント分の時間とに基づいて、前記第1信号の入力から前記第3信号の入力までの時間長を算出するように構成された時間算出回路と、前記第3信号の入力から前記第1タイマが少なくとも2回カウントアップしたときに前記第2信号を生成するように構成されたカウンタ制御回路とを備えることを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係る時間計測回路において、前記第2タイマによって計時される前記第2時間長の前記最小値と前記最大値とは、前記第1クロックの1クロック分以上の差があってもよい。
【0015】
また、本発明に係る時間計測回路において、前記時間算出回路は、前記校正回路によって校正された前記第2タイマの1カウント分の時間とに基づいて、前記第1時間長から前記第2時間長を減算することで、前記第1信号の入力から前記第3信号の入力までの前記時間長を算出してもよい。
【0016】
上述した課題を解決するために、本発明に係る超音波流量計は、上記時間計測回路と、測定対象の流体が流れる配管に配置された1対のトランスデューサと、前記1対のトランスデューサを駆動して前記1対のトランスデューサのそれぞれから超音波信号を送信させるように構成された送信回路と、前記送信回路によって前記1対のトランスデューサの一方から送信された前記超音波信号を、前記1対のトランスデューサの他方より受信するように構成された受信回路と、前記超音波信号の伝搬時間差に基づいて、前記流体の流量を計測するように構成された流量測定回路とを備え、前記第1信号は、前記送信回路が前記超音波信号を送信させたときに前記時間計測回路に入力され、前記第3信号は、前記受信回路が、前記超音波信号を受信したときに前記時間計測回路に入力され、前記伝搬時間差は、前記時間算出回路によって算出される前記第1信号の入力から前記第3信号の入力までの前記時間長に基づいて求められることを特徴とする。
【0017】
また、本発明に係る超音波流量計において、前記流量測定回路が計測した前記流体の流量を出力するように構成された出力装置をさらに備えていてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、第3信号の入力タイミングに応じた、第2タイマの計時する第2時間長の最小値と最大値との差が、第1クロックの1クロックと一致するように、第2タイマの1カウント分の時間を校正するので、ゼロ流量時においても温度変化による超音波の伝搬時間差の誤差が抑えられた時間計測回路および超音波流量計を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、本発明の実施の形態に係る超音波流量計の構成を示すブロック図である。
図2図2は、本発明の実施の形態に係るリングオシレータの特性を説明するための図である。
図3図3は、本発明の実施の形態に係る時間計測回路の動作を説明するための図である。
図4図4は、本発明の実施の形態に係る超音波流量計の動作を説明するためのフローチャートである。
図5図5は、本発明の実施の形態に係る時間計測回路を実現するコンピュータ構成の一例を示すブロック図である。
図6図6は、従来の超音波流量計の動作を説明するための図である。
図7図7は、従来の時間計測回路の動作を説明するための図である。
図8図8は、従来の時間計測回路の動作を説明するための図である。
図9図9は、従来の時間計測回路の動作を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図1から図5を参照して詳細に説明する。
まず、図1を参照して、本発明の実施の形態に係る時間計測回路5およびこれを用いた超音波流量計について説明する。
【0021】
[超音波流量計の概要]
まず、超音波流量計の概要について説明する。本実施の形態に係る超音波流量計は、トランスデューサ2,3と、トランスデューサ2,3が配置された配管1と、時間計測回路5を具備する流量演算装置4とを備えている。時間計測回路5は、流量演算装置4の処理タイミングを制御している。
【0022】
本実施の形態では、1対のトランスデューサ2,3を、配管1の円形断面の円周上の位置が同じで、かつ流体の流れる方向の位置が異なる箇所に配置する構成とする。そのため、超音波の送受信の伝搬経路は、図1に示すように配管1の内壁で反射させたV字型の伝搬路となる。すなわち、上流側のトランスデューサ2は、流体を介して対向する側の配管1の内壁に向けて超音波信号を送信すると同時に、下流側のトランスデューサ3は、流体を介して対向する側の配管1の内壁に向けて超音波信号を送信する。トランスデューサ2が超音波信号を送出する方向と配管1の内壁との成す角、およびトランスデューサ3が超音波信号を送出する方向と配管1の内壁との成す角の角度は、いずれもθである。
【0023】
図1において、トランスデューサ2から送信されて、トランスデューサ3で受信される超音波(上流側から下流側へと伝搬する超音波(順方向に伝搬する超音波))の伝搬時間T1(順方向伝搬時間)は、下記(1)式のように表される。
T1=L/(C+Vcosθ) ・・・(1)
ここで、Lは超音波伝搬距離[m]、Cは流体中の音速[m/s]である。超音波は流体の流れに乗って伝搬するため、流れが速いほど短い時間で伝搬する。
【0024】
同様に、トランスデューサ3より送信されてトランスデューサ2で受信される超音波(下流側から上流側へと伝搬する超音波(逆方向に伝搬する超音波))の伝搬時間(逆方向伝搬時間)T2は、下記(2)式のように表される。
T2=L/(C-Vcosθ) ・・・(2)
超音波は流体の流れに逆らって伝搬するため、流れが速いほど長い時間をかけて伝搬する。
【0025】
上記の(1),(2)式から、超音波の伝搬時間差ΔT=T2-T1と流速Vとの関係は、以下のようになる。
ΔT=T2-T1=2LVcosθ/(C2-V2cos2θ)
C>>Vであるので、
ΔT≒2LVcosθ/C2
したがって、
V≒C2/(2Lcosθ)ΔT ・・・(3)
【0026】
この流速Vに断面積Sと流量補正係数kを乗じると流量Qを求めることができる。
Q=kSV ・・・(4)
【0027】
流量補正係数kは、超音波ビームが流体を通る部分の平均流速と配管断面における平均流速との比を補正するための係数であり、配管内面の表面粗さとレイノルズ数の関数となっている。
【0028】
[流量演算装置の構成]
まず、流量演算装置4の構成について説明する。流量演算装置4は、時間計測回路5、送信回路6、受信回路7、流量測定回路8、および出力装置9を備える。流量演算装置4は、トランスデューサ2、3間の超音波信号の伝達を制御する電子回路である。時間計測回路5の構成は後述する。
【0029】
送信回路6は、トランスデューサ2またはトランスデューサ3に対して、駆動用の送信パルスを供給して、超音波信号を送信させる。送信回路6は、例えば、図示されない外部の水晶発振器で構成される基準クロックとしての低速クロック(第1クロック)に同期した送信パルスをトランスデューサ2、3に供給する。例えば、配管1の上流に配置されたトランスデューサ2は、送信回路6からの送信パルスに応じて、配管1内を流れる流体に対して斜め方向に超音波信号を送信する。送信回路6が送信パルスをトランスデューサ2,3に供給すると、超音波の送信を示す送信信号(第1信号)が時間計測回路5に入力される。
【0030】
受信回路7は、トランスデューサ2またはトランスデューサ3で得られた超音波受信信号に対して増幅などの処理を行う。例えば、配管1の下流に配置されたトランスデューサ3は、上流のトランスデューサ2からの超音波信号の反射信号を受信する。受信回路7で得られた超音波の受信を示す受信信号(第3信号)は、時間計測回路5に入力される。
【0031】
流量測定回路8は、受信回路7から出力された超音波の受信信号をもとに、流体の流量を算出する。より詳細には、流量測定回路8は、時間計測回路5によって計測された超音波の伝搬時間に基づいて、上述した式(1)から(4)を用いて、流量を算出する。
【0032】
出力装置9は、流量測定回路8により算出された流体の流量を出力する。例えば、出力装置9は、例えば、表示装置で構成され、表示画面に算出された流量を表示させることができる。
【0033】
[時間計測回路の構成]
時間計測回路5は、低速クロック(第1クロック)および高速クロック(第2クロック)に基づいて時間長を計測する。時間計測回路5は、低速カウンタ(第1タイマ)50、リングオシレータ51、高速カウンタ(第2タイマ)52、カウンタ制御回路53、校正回路54、および時間算出回路55を備える。
【0034】
低速カウンタ50は、送信回路6から入力される超音波の送信を示す送信信号(第1信号)の入力タイミングから、受信回路7より入力される超音波の受信信号(第3信号)の入力の後に、さらに予め設定された回数カウントアップするまでの第1時間長t1を低速クロックに基づいて計時する。
【0035】
低速カウンタ50は、外部の図示されない水晶発振回路などの発振器で生成される低速クロックと同期して動作する。低速カウンタ50は、低速クロックの立ち上がりのタイミングでカウントアップして計数結果を出力する。低速カウンタ50は、例えば、MHzオーダのカウンタを用いることができる。低速カウンタ50によるカウント値である第1時間長t1は、校正回路54および時間算出回路55に入力される。
【0036】
リングオシレータ51は、低速クロックよりも伝達時間が早い発振信号である高速クロックを生成する。リングオシレータ51は、カウンタ制御回路53により生成される発振許可信号および発振停止信号に基づいて動作する。
【0037】
高速カウンタ52は、受信回路7からの受信信号(第3信号)の入力があったときから低速カウンタ50が予め設定された回数カウントアップしたことを示すカウントアップ信号(第2信号)の入力があるまでの第2時間長t2を高速クロックに基づいて計時する。
【0038】
高速カウンタ52は、リングオシレータ51で生成される高速クロックと同期して動作する。高速カウンタ52は、高速クロックの立ち上がりをカウントして計数結果を第2時間長t2として出力する。高速カウンタ52の周波数としては、例えば、数百MHzオーダとすることができる。なお、リングオシレータ51の内部に設けたタップを用いて、例えば、高速カウンタ52の時間分解能を、数十GHzオーダとすることもできる。高速カウンタ52によるカウント値である第2時間長t2は、校正回路54に入力される。
【0039】
カウンタ制御回路53は、送信回路6および受信回路7から入力される超音波信号の送信信号および受信信号に基づいて、低速カウンタ50および高速カウンタ52を制御して、時間計測回路5における時間計測の開始および停止を制御する。
【0040】
カウンタ制御回路53は、リングオシレータ51を発振させる発振許可信号を受信回路7からの受信信号の入力タイミングで生成してリングオシレータ51に入力する。また、カウンタ制御回路53は、受信回路7からの受信信号(第3信号)の入力タイミングから、低速カウンタ50が予め設定された回数カウントアップしたことを示すカウントアップ信号(第2信号)のタイミングでリングオシレータ51の発振を停止させる発振停止信号を生成する。
【0041】
カウンタ制御回路53は、高速カウンタ52の動作期間が、例えば、低速カウンタ50の1周期以上3周期以下の期間となる発振停止信号を生成して、リングオシレータ51に入力することができる。すなわち、カウンタ制御回路53は、受信回路7からの超音波の受信信号の入力タイミングから、低速カウンタ50が1回から3回のいずれかの回数カウントアップしたタイミングでカウントアップ信号を生成して高速カウンタ52に入力し、高速カウンタ52をカウントアップさせることができる。
【0042】
校正回路54は、受信回路7からの受信信号の入力タイミングに応じた高速カウンタ52の最小動作期間での第2時間長t2(最小値)と最大動作期間での第2時間長t2(最大値)との差が、低速カウンタ50の1クロックと一致するように、高速カウンタ52の1カウント分の時間を校正する。
【0043】
前述したように、高速カウンタ52は、受信回路7が超音波を受信したことを示す受信信号の入力のタイミングからカウントを開始し、この受信信号の入力タイミングから低速カウンタ50が予め設定された回数カウントアップしたタイミングで高速カウンタ52は第2時間長t2のカウントを終了する。例えば、低速カウンタ50が、2回目の低速クロックの立ち上がりでカウントアップする設定である場合を考える。この場合、図8の(a)および(b)で説明したように、超音波の受信信号(第3信号)の入力タイミングによっては、高速カウンタ52の最大動作期間は、低速カウンタ50の2クロック分の期間となり、最小動作期間は低速カウンタ50の1クロック分の期間となる。
【0044】
ここで、高速カウンタ52、すなわち高速クロックを生成するリングオシレータ51は、起動後に安定するまで一定の時間を要する。図2は、高速カウンタ52の周波数と時間との関係を示しており、周波数が安定した後も完全に一定の周波数ではなく、少しずつ変化する(図2の「1CLK」と「2CLK」間の周波数の変化)。そのため、通常、高速カウンタ52の動作期間が長くなるほど実時間との誤差が大きくなっていく。
【0045】
校正回路54は、高速カウンタ52の動作期間が切り替わる点、すなわち、図2に示す高速カウンタ52の最小動作期間(1CLK)と最大動作期間(2CLK)とで、カウント値が連続になるように校正を行う。より詳細には、校正回路54は、高速カウンタ52での最大動作期間(max)2CLKと最小動作期間(min)1CLKとのカウント差が、低速カウンタ50の1CLK分と一致させる。
【0046】
校正回路54は、低速カウンタ50のnCLK(n=1,2,・・・)分の高速カウンタ52のカウント値をcount(nCLK)、低速カウンタ50のnCLK分の計測時間をt(nCLK)として、高速カウンタ52の1カウント分の時間を1LSBと表したときに、次式(5)により時間換算を求める。
1LSB=t(1CLK)/{count(2CLK)-count(1CLK)}
・・・(5)
【0047】
時間算出回路55は、超音波の送信信号の入力からカウントアップ信号のタイミングまでの第1時間長t1と、受信信号の入力からカウントアップ信号の入力までの第2時間長t2と、上式(5)を用いて校正された高速カウンタ52の1カウント分の時間とに基づいて、送信信号の入力から受信信号の入力までの時間長を算出する。
【0048】
より具体的には、時間算出回路55は、第1時間長t1から校正回路54によって校正された第2時間長t2を減算して、超音波の送信信号から受信信号までの時間長を算出する。時間算出回路55によって算出される時間長は、順方向または逆方向の伝搬時間(T1またはT2)を示す。
【0049】
図3は、校正回路54によって高速カウンタ52の動作期間の切り替わる点で上式(5)によりカウント値が連続になるように校正された後の、低速クロックと高速クロックとの誤差を示している。図9に示した従来の時間計測回路における誤差と時間との関係と比較して、本実施の形態による校正後の誤差は、より連続的な特性となっている。図3に概念的に示すように、順方向と逆方向との伝搬時間の誤差Eは、図9に示した従来例による校正を行わない場合の伝搬時間の誤差と比較してより小さくなっている。実際のゼロ流量時の順逆の伝搬時間差(ΔT=T1-T2)は、非常に小さいため、本実施の形態に係る校正回路54による効果は、ゼロ流量時においてより大きくなる。
【0050】
[超音波流量計の動作]
次に、上述した構成を有する超音波流量計の動作について図4のフローチャートを用いて説明する。
【0051】
まず、送信回路6は、トランスデューサ2に超音波を送信させる(ステップS1)。次に、送信回路6は、超音波の送信を示す送信信号を時間計測回路5に入力する(ステップS2)。その後、低速カウンタ50は、第1時間長t1の計時を開始する(ステップS3)。
【0052】
次に、トランスデューサ3は、超音波を受信する(ステップS4)。その後、受信回路7は、超音波が受信されたことを示す受信信号を時間計測回路5に入力する(ステップS5)。次に、高速カウンタ52は、受信信号が入力されたタイミングで第2時間長t2の計時を開始する(ステップS6)。
【0053】
その後、低速カウンタ50が、受信信号の入力タイミングから予め設定された回数カウントアップした場合(ステップS7:YES)、低速カウンタ50は第1時間長t1の計時を終了し、かつ、高速カウンタ52は、第2時間長t2の計時を終了する(ステップS8)。
【0054】
その後、校正回路54は、高速カウンタ52の最小動作期間での第2時間長t2と最大動作期間での第2時間長t2との差が、低速カウンタ50の1クロックと一致するように式(5)を用いて、高速カウンタ52の1カウント分の時間を校正する(ステップS9)。校正回路54は、校正時間に基づいて、校正後の第2時間長t2を求める。
【0055】
次に、時間算出回路55は、第1時間長t1から、ステップS9で校正された高速カウンタ52の第2時間長t2を減算して、超音波が送信されてから受信されるまでの伝搬時間を算出する(ステップS10)。順方向の伝搬時間T1の算出された後に、同様に、逆方向の伝搬時間T2についてもステップS1からステップS10までの処理を実行して算出する。
【0056】
次に、流量測定回路8は、時間算出回路55によって算出された順方向および逆方向の伝搬時間差から、上述した式(1)から(4)を用いて流量を算出する(ステップS11)。その後、出力装置9は、算出された流量を表示画面に表示して出力する(ステップS12)。
【0057】
本実施の形態で説明した時間計測回路5は、CPU、記憶装置およびインターフェースを備えたコンピュータと、これらのハードウェア資源を制御するプログラムによって実現することができる。このコンピュータ構成例を図5に示す。コンピュータは、CPU101と、記憶装置102と、インターフェース装置(I/F)103とを備えている。I/F103には、高速カウンタ52と低速カウンタ50とリングオシレータ51とが接続される。このようなコンピュータにおいて、本発明を実現させるためのプログラムは記憶装置102に格納される。CPU101は、記憶装置102に格納されたプログラムにしたがって、上述した実施の形態の処理を実行する。
【0058】
なお、流量演算装置4についても、図5と同様の、CPU、記憶装置およびインターフェースを備えたコンピュータと、これらのハードウェア資源を制御するプログラムによって実現される。
【0059】
以上説明したように、本実施の形態によれば、校正回路54が高速カウンタ52の最小動作期間で計時する第2時間長t2と、最大動作期間で計時する第2時間長t2との差が、低速カウンタ50の1クロックと一致するように高速カウンタ52の1カウント分の時間を校正する。そのため、ゼロ流量時に順逆で低速カウンタ50のカウントをまたいだ場合であっても、温度変化による超音波の伝搬時間差の誤差が抑えられる。
【0060】
また、本実施の形態によれば、校正回路54により校正された第2時間長t2に基づいて超音波の伝搬時間が算出されるので、超音波流量計で計測される流量の精度を向上させることができる。
【0061】
なお、説明した実施の形態では、校正回路54は、第1時間長t1および第2時間長t2が計時された毎に校正を行う場合を例示したが、校正処理は、任意の回数の伝搬時間の計測ごとに実行する構成とすることができる。
【0062】
以上、本発明の時間計測回路および超音波流量計における実施の形態について説明したが、本発明は説明した実施の形態に限定されるものではなく、請求項に記載した発明の範囲において当業者が想定し得る各種の変形を行うことが可能である。
【符号の説明】
【0063】
1…配管、2,3…トランスデューサ、4…流量演算装置、5…時間計測回路、6…送信回路、7…受信回路、8…流量測定回路、9…出力装置、50…低速カウンタ、51…リングオシレータ、52…高速カウンタ、53…カウンタ制御回路、54…校正回路、55…時間算出回路、101…CPU、102…記憶装置、103…I/F。
図1
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図9