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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】グロメット
(51)【国際特許分類】
   H02G 3/22 20060101AFI20240305BHJP
   H01B 17/58 20060101ALI20240305BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20240305BHJP
   B29C 45/37 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
H02G3/22
H01B17/58 C
B60R16/02 622
B29C45/37
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019206305
(22)【出願日】2019-11-14
(65)【公開番号】P2021083155
(43)【公開日】2021-05-27
【審査請求日】2022-10-17
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】木村 光利
【審査官】井上 弘亘
(56)【参考文献】
【文献】実開平06-028461(JP,U)
【文献】特開平06-070424(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/22
H01B 17/58
B60R 16/02
B29C 45/37
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性変形可能な筒状部を備えるグロメットであって、
前記筒状部は、
均一な厚さを有する筒壁から構成され、当該筒状部の筒軸に向けて突出し且つ前記筒軸周りを周回する複数の突条を、前記筒壁によって構成し、
前記複数の前記突条の各々は、
前記筒軸を含む平面によって前記筒状部を切ったときの断面視において、第1平坦部と、第2平坦部と、前記第1平坦部と前記第2平坦部とを繋ぐ曲面部と、を有し、前記第1平坦部と前記筒軸とのなす角度である第1角度が前記第2平坦部と前記筒軸とのなす角度である第2角度よりも小さく、且つ、前記曲面部の前記筒軸に最も近い箇所が前記筒軸に沿って並ぶように配置される、ように構成され、
前記複数の前記突条の各々は、前記筒状部の前記筒軸に直交する平面内にて前記筒軸周りを周回する突条であり、
前記第2角度は、略90度であ
前記複数の前記突条の各々は、
前記断面視において、前記第1平坦部が属する仮想上の平面よりも前記第2平坦部から遠ざかる側に前記曲面部の一部が位置し、及び/又は、前記第2平坦部が属する仮想上の平面よりも前記第1平坦部から遠ざかる側に前記曲面部の一部が位置する、ように構成される、
グロメット。
【請求項2】
請求項1記載のグロメットにおいて、
前記第1角度は、10度以上80度以下である、
グロメット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性変形可能な筒状部を備えるグロメットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両等に電線を配索する際の止水などを目的として、中空筒形状を有する弾性体から構成されたグロメットが提案されている。例えば、従来のグロメットの一つは、車両の車体からドアに向けて配索される電線が挿通された状態でドアの開閉に対応できるように、ドアの開閉に対応して湾曲可能な蛇腹状の筒状部を有している(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-204254号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、一般に、従来のグロメットの筒状部に電線を通す際には、筒状部を径方向外側に向けて押し広げて拡径した状態で、筒状部に電線が通されることになる。筒状部の拡径は、通常、専用の機器(いわゆる開閉機)を用いて行われる。具体的には、細い棒状の複数のアーム(爪)を拡径前の筒状部に挿入し、それら複数のアームを互いに離れるように筒状部の径方向外側に向けて移動させることで、筒状部が拡径されることになる。
【0005】
従来のグロメットの筒状部の内周面には、筒状部の蛇腹形状に対応した複数の凹凸(即ち、筒軸周りを周回する複数の突条)が存在する。そのため、開閉機のアームを筒状部に挿入する際、拡径前の筒状部の筒径がアームの太さに対して小さい場合などにおいて、アームが筒状部の内壁面に接触する可能性がある。例えば、アームの先端が、筒状部の内壁面に引っかかる場合がある。このような接触(引っかかり)は、筒状部の損傷の原因ともなり得る。一方、筒状部の内周面にアームが接触しないように過度に慎重に作業を行うと、作業に要する時間が増す原因となり得る。このように、グロメットの筒状部の損傷などを避けながら、アームの挿通作業の作業性(ひいては、グロメットを備えたワイヤハーネスの生産性)を向上させることは困難である。
【0006】
本発明の目的の一つは、グロメットが有する筒状部の損傷の抑制と、その筒状部に電線などを挿通させる作業の作業性の向上と、を両立可能なグロメット、の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した目的を達成するために、本発明に係るグロメットは、下記[1]~[]を特徴としている。
[1]
弾性変形可能な筒状部を備えるグロメットであって、
前記筒状部は、
均一な厚さを有する筒壁から構成され、当該筒状部の筒軸に向けて突出し且つ前記筒軸周りを周回する複数の突条を、前記筒壁によって構成し、
前記複数の前記突条の各々は、
前記筒軸を含む平面によって前記筒状部を切ったときの断面視において、第1平坦部と、第2平坦部と、前記第1平坦部と前記第2平坦部とを繋ぐ曲面部と、を有し、前記第1平坦部と前記筒軸とのなす角度である第1角度が前記第2平坦部と前記筒軸とのなす角度である第2角度よりも小さく、且つ、前記曲面部の前記筒軸に最も近い箇所が前記筒軸に沿って並ぶように配置される、ように構成され、
前記複数の前記突条の各々は、前記筒状部の前記筒軸に直交する平面内にて前記筒軸周りを周回する突条であり、
前記第2角度は、略90度であ
前記複数の前記突条の各々は、
前記断面視において、前記第1平坦部が属する仮想上の平面よりも前記第2平坦部から遠ざかる側に前記曲面部の一部が位置し、及び/又は、前記第2平坦部が属する仮想上の平面よりも前記第1平坦部から遠ざかる側に前記曲面部の一部が位置する、ように構成される、
グロメットであること。

上記[1]記載のグロメットにおいて、
前記第1角度は、10度以上80度以下である、
グロメットであること。
【0008】
上記[1]の構成のグロメットによれば、弾性変形可能な筒状部の内周面には、筒軸周りを周回する複数の突条が構成されている。これら突条の各々は、断面視において、第1平坦部、第2平坦部、及び、第1平坦部と第2平坦部とを繋ぐ曲面部を有する。ここで、第1平坦部と筒軸とのなす角度である第1角度が、第2平坦部と筒軸とのなす角度である第2角度よりも小さい(例えば、図5を参照)。そのため、筒状部の第1平坦部側の開口端から開閉機のアームを挿入すれば、仮にアームの先端が筒状部の第1平坦部に触れたとしても、第1平坦部に及ぼされる力のうちの径方向外側に向かう分力により、第1平坦部(ひいては突条の全体)が径方向外側に向けて逃げるように変形する。よって、アームの引っかかりが生じ難い。
【0009】
また、筒状部の筒壁の厚さが均一であることから、アームによって筒状部が拡径されたとき、筒状部の全体が同程度に引き伸ばされることになる。更に、各々の曲面部の筒軸に最も近い箇所が筒軸に沿って並ぶように配置されていることからも、同様に、筒状部の拡径時に筒状部の全体が同程度に引き伸ばされやすい。よって、筒状部の何れかの箇所に過大な応力集中が生じることを抑制し、拡径時の筒状部の破損などを抑制できる。
【0010】
したがって、本構成のグロメットは、グロメットが有する筒状部に電線などを挿通させる作業の作業性に優れている。
【0011】
なお、筒状部の筒壁の厚さが「均一」であるとは、グロメットの製造時に不可避的に生じ得る公差(いわゆる製造ばらつき)の範囲内において、その厚さが一様であることを表す。換言すると、筒状部の筒壁の幅が設計上で(例えば、設計図面に示される厚さの数値が)同じであることを表す。
更に、上記[1]の構成のグロメットによれば、突条の第2平坦部と筒軸とのなす第2角度が略90度である。これにより、第2角度が90度よりも過度に大きい場合に比べ、第1平坦部の径方向外側への変形(逃げ)を、第2平坦部が出来る限り妨げないようにすることができる。更に、第2角度が90度よりも過度に小さい場合に比べ、例えばグロメットを射出成形する際、いわゆるアンダーカットを避けることができて金型から第2平坦部を分離する作業を容易にできる。
なお、第2角度が「略」90度であるとは、グロメットの製造時に不可避的に生じ得る公差(いわゆる製造ばらつき)の範囲内において、第2角度が90度前後の角度であることを表す。また、グロメット形成用の金型からの分離性を考慮した勾配(いわゆる、抜きテーパ)に起因する90度からのズレは、「略」の範囲内であるとして許容し得ることを表す。換言すると、第2角度が設計上で(例えば、設計図面に示される第2角度の数値が)90度であることを表す。
【0014】
上記[]の構成のグロメットによれば、突条の第1平坦部と筒軸とのなす第1角度が10度以上80度以下である。これにより、筒状部の本来の機能(例えば、使用時に柔軟に湾曲可能であること)を保ちながら、開閉機のアームに接触した際の第1平坦部の変形(逃げ)を容易にすることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、グロメットが有する筒状部に電線などを挿通させる作業の作業性に優れたグロメット、を提供できる。
【0018】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、本発明の実施形態に係るグロメットを示す斜視図である。
図2図2は、図1に示すグロメットの筒状部を拡大した斜視図である。
図3図3は、図1に示すグロメットの筒状部のA-A断面の斜視図である。
図4図4は、図1に示すグロメットの筒状部のA-A断面の正面図である。
図5図5は、図4に示す筒状部の突条のA-A断面を拡大した正面図である。
図6図6は、開閉機の複数のアームを一方側の開口端からグロメットの筒状部に挿入する状態を示す図1のA-A断面に相当する断面図である。
図7図7は、筒状部に挿入した開閉機のアームが筒状部の突条の第1平坦部を押圧することで突条が変形した状態を示す図6に対応する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<実施形態>
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係るグロメット1について説明する。グロメット1は、樹脂成形品であり、弾性変形可能な円筒状の筒状部10を備えている。以下、説明の便宜上、図1等に示すように、筒状部10の延在方向の「一方側」及び「他方側」を定義する。
【0021】
筒状部10の一方側の端部には、拡径部20が一体に設けられている。拡径部20は、筒状部10より径が大きく、且つ、筒状部10の一方側の端部から一方側に向かうにつれて徐々に拡径する略円錐台状の形状を有する。グロメット1は、典型的には、車両の車体からドアに向けて配索される電線の止水などを目的として、当該電線(図示省略)が筒状部10に挿通され、拡径部20が車体側の部材(図示省略)に接続され、且つ、筒状部10の他方側の端部(図示省略)がドア側の部材(図示省略)に接続された状態で使用される。筒状部10は、ドアの開閉に対応して自由に湾曲するように弾性変形可能となっている。
【0022】
円筒状の筒状部10は、図2図4に示すように、蛇腹状の形状を有している。具体的には、図2及び図3に示すように、筒状部10の外周面には、筒状部10の延在方向に沿って、環状の突条11と、環状の溝部12とが交互に位置している。図3及び図4に示すように、筒状部10の内周面には、筒状部10の延在方向に沿って、突条11に対応して設けられた環状の溝部13と、溝部12に対応して設けられた環状の突条14とが交互に位置している。
【0023】
図4に示すように、筒状部10の筒壁の厚さは、筒状部10全体に亘って均一となっている。ここで、筒状部10の筒壁の厚さが「均一」であるとは、グロメット1の製造時に不可避的に生じ得る公差(いわゆる製造ばらつき)の範囲内において、その厚さが一様であることを表す。換言すると、筒状部10の筒壁の幅が設計上で(例えば、設計図面に示される厚さの数値が)一様であることを表す。
【0024】
以下、筒状部10の内周面に設けられた複数の突条14に着目する。図4及び図5に示すように、複数の突条14の各々は、筒状部10の筒軸Axを通る平面によって筒状部10を切ったときの断面視において、一方側の第1平坦部15と、他方側の第2平坦部16と、第1平坦部15と第2平坦部16とを繋ぐ曲面部17と、で構成されている。複数の突条14の各々は、曲面部17の頂部18(筒軸Axに最も近い箇所)が筒軸Axに沿って平行に並ぶように配置されている(図4参照)。
【0025】
図5に示すように、第1平坦部15と筒軸Axとのなす角度θ1は、第2平坦部16と筒軸Axとのなす角度θ2よりも小さい。本例では、角度θ1は、略45度であり、角度θ2は、略90度である。角度θ1は10度以上80度以下であることが好ましい。ここで、角度θ2が「略」90度であるとは、グロメット1の製造時に不可避的に生じ得る公差(いわゆる製造ばらつき)の範囲内において、角度θ2が90度前後の角度であることを表す。また、グロメット1成形用の金型からの分離性を考慮した勾配(いわゆる抜きテーパ)に起因する90度からのズレは、「略」の範囲内であるとして許容し得ることを表す。換言すると、角度θ2が設計上で(例えば、設計図面に示される角度θ2の数値が)90度であることを表す。角度θ1についても同様である。
【0026】
図5に示すように、複数の突条14の各々は、筒状部10の筒軸Axを通る平面によって筒状部10を切ったときの断面視において、曲面部17全体が、第1平坦部15が属する仮想上の平面P1よりも第2平坦部16に近い側(他方側)に位置し、且つ、第2平坦部16が属する仮想上の平面P2よりも第1平坦部15に近い側(一方側)に位置する、ように構成されている。換言すれば、曲面部17全体は、仮想上の平面P1よりも第1平坦部15側(一方側)には突出せず、且つ、仮想上の平面P2よりも第2平坦部16側(他方側)には突出していない。
【0027】
次いで、グロメット1の筒状部10に電線を通す際の作業について説明する。グロメット1の筒状部10に電線を通す際には、グロメット1の筒状部10を径方向外側に向けて押し広げて拡径した状態で、筒状部10に電線が通されることになる。筒状部10を径方向外側に向けて押し広げるためには、図6に示すように、専用の開閉機30が使用される。
【0028】
具体的には、開閉機30の細い棒状の複数のアーム31を、一方側の開口端から拡径前の筒状部10に挿入し、それら複数のアーム31を互いに離れるように筒状部10の径方向外側に向けて移動させることで、筒状部10が拡径される。
【0029】
このように、開閉機30のアーム31を一方側の開口端から筒状部10に挿入する際、特に拡径前の筒状部10の筒径が小さいと、アーム31の先端が、筒状部10の突条14における一方側の領域に位置する第1平坦部15に接触する場合がある。アーム31の先端が筒状部10の第1平坦部15に触れたとき、第1平坦部15に及ぼされる力のうちの径方向外側に向かう分力により、図7に示すように、第1平坦部15(ひいては突条14の全体)が径方向外側に向けて逃げるように変形する。
【0030】
このとき、第1平坦部15と筒軸Axとのなす角度θ1が、第2平坦部16と筒軸Axとのなす角度θ2よりも小さいこと(図5参照)に起因して、そうでない場合と比べて、第1平坦部15(ひいては突条14の全体)が径方向外側に向けて逃げるように変形し易い。更に、突条14の曲面部17全体が、仮想上の平面P1よりも第1平坦部15側(一方側)には突出していないこと(図5参照)に起因して、第1平坦部15が径方向外側に逃げるように変形した後、アーム31の先端が曲面部17に引っかかることがない。更に、仮想上の平面P2よりも第2平坦部16側(他方側)には突出していないこと(図5参照)に起因して、第1平坦部15が径方向外側に逃げるように変形するとき、曲面部17が他方側に隣接する第1平坦部15に接触して第1平坦部15の変形を妨げることがない。以上より、アーム31の引っかかりが生じ難いので、アーム31の挿通作業が極めて行い易く、且つ、アーム31のひっかかりに起因する筒状部10の損傷も生じ難い。
【0031】
更には、筒状部10の筒壁の厚さが均一であることから、アーム31によって筒状部10が拡径されたとき、筒状部10の全体が同程度に引き伸ばされることになる。換言すると、筒状部10の何れかの箇所に過大な応力集中が生じることを抑制し、拡径時の筒状部10の破損などを抑制できる。更に、突条14の各々の曲面部17の頂部18が、筒軸Axに沿って並ぶように配置されているため、アーム31を筒状部10に更に挿入し易い。このように、グロメット1は、筒状部10に電線などを挿通させる作業の作業性に優れている。
【0032】
<作用・効果>
以上、本実施形態に係るグロメット1によれば、弾性変形可能な筒状部10の内周面には、筒軸Ax周りを周回する複数の突条14が構成されている。これら突条14の各々は、断面視において、第1平坦部15、第2平坦部16、及び、第1平坦部15と第2平坦部16とを繋ぐ曲面部17を有する。ここで、第1平坦部15と筒軸Axとのなす角度θ1が、第2平坦部16と筒軸Axとのなす角度θ2よりも小さい(図5参照)。そのため、筒状部10の第1平坦部15側(一方側)の開口端から開閉機30のアーム31を挿入すれば、アーム31の先端が筒状部10の第1平坦部15に触れたとき、第1平坦部15に及ぼされる力のうちの径方向外側に向かう分力により、第1平坦部15(ひいては突条14の全体)が径方向外側に向けて逃げるように変形する。よって、アーム31の引っかかりが生じ難い。
【0033】
また、筒状部10の筒壁の厚さが均一であることから、アーム31によって筒状部10が拡径されたとき、筒状部10の全体が同程度に引き伸ばされることになる。換言すると、筒状部10の何れかの箇所に過大な応力集中が生じることを抑制し、拡径時の筒状部10の破損などを抑制できる。更に、各々の曲面部17の筒軸Axに最も近い頂部18が、筒軸Axに沿って並ぶように配置されているため、アーム31を筒状部10に更に挿入し易いことになる。したがって、本実施形態に係るグロメット1は、グロメット1が有する筒状部10に電線などを挿通させる作業の作業性に優れている。
【0034】
更に、本実施形態に係るグロメット1によれば、筒状部10の突条14が有する曲面部17が、断面視において、第1平坦部15が属する(例えば、第1平坦部15の表面を延長した)仮想上の平面P1よりも、第2平坦部16に近い側に存在する(図5参照)。換言すると、曲面部17は、その仮想上の平面P1よりも第1平坦部15側には突出しない。よって、開閉機30のアーム31が一方側から挿通向きに進行しながら第1平坦部15に接触したとき、第1平坦部15が径方向外側に逃げるように変形した後、アーム31の先端が曲面部17に引っかかることがない。その結果、本実施形態に係るグロメット1は、グロメット1が有する筒状部10に電線などを挿通させる作業の作業性に優れている。
【0035】
更に、本実施形態に係るグロメット1によれば、筒状部10の突条14が有する曲面部17が、断面視において、第2平坦部16が属する(例えば、第2平坦部16の表面を延長した)仮想上の平面P2よりも、第1平坦部15に近い側に存在する(図5参照)。換言すると、曲面部17は、その仮想上の平面P2よりも第2平坦部16側には突出しない。例えば、曲面部17が第2平坦部16側に突出していると、開閉機30のアーム31に押されて第1平坦部15が径方向外側に逃げるように変形するとき、突出している曲面部17が周辺の部材(例えば、他方側に隣接する第1平坦部15など)に接触し、第1平坦部15の変形を妨げることになる。曲面部17が仮想上の平面P2よりも第2平坦部16側には突出しないことで、そのような変形の妨げが生じ難い。その結果、本実施形態に係るグロメット1は、グロメット1が有する筒状部10に電線などを挿通させる作業の作業性に優れている。
【0036】
更に、本実施形態に係るグロメット1によれば、突条14の第1平坦部15と筒軸Axとのなす角度θ1が10度以上80度以下である。これにより、グロメット1の筒状部10の本来の機能(例えば、使用時に柔軟に湾曲可能であること)を保ちながら、開閉機30のアーム31に接触した際の第1平坦部15の変形(逃げ)を容易にすることができる。
【0037】
更に、本実施形態に係るグロメット1によれば、突条14の第2平坦部16と筒軸Axとのなす角度θ2が略90度である。これにより、角度θ2が90度よりも過度に大きい場合に比べ、第1平坦部15の径方向外側への変形を、第2平坦部16が出来る限り妨げないようにすることができる。更に、角度θ2が90度よりも過度に小さい場合(いわゆるアンダーカットが生じる場合)に比べ、グロメット1を射出成形する際、金型から第2平坦部16を分離する作業を容易にできる。
【0038】
<他の形態>
なお、本発明は上記各実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。例えば、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0039】
上記実施形態では、突条14の曲面部17全体が、仮想上の平面P1よりも第1平坦部15側(一方側)には突出しておらず、且つ、仮想上の平面P2よりも第2平坦部16側(他方側)には突出していない(図5参照)。これに対し、突条14の曲面部17の一部が、仮想上の平面P1よりも第1平坦部15側(一方側)に突出していてもよいし、仮想上の平面P2よりも第2平坦部16側(他方側)に突出していてもよい。
【0040】
更に、上記実施形態では、突条14の第1平坦部15と筒軸Axとのなす角度θ1が10度以上80度以下であり、かつ、突条14の第2平坦部16と筒軸Axとのなす角度θ2が略90度である。これに対し、突条14の第1平坦部15と筒軸Axとのなす角度θ1が10度未満又は80度よりも大きくてもよいし、突条14の第2平坦部16と筒軸Axとのなす角度θ2が略90度以外であってもよい。
【0041】
ここで、上述した本発明に係るグロメット1の実施形態の特徴をそれぞれ以下[1]~[5]に簡潔に纏めて列記する。
[1]
弾性変形可能な筒状部を備えるグロメット(1)であって、
前記筒状部(10)は、
均一な厚さを有する筒壁から構成され、当該筒状部(10)の筒軸(Ax)に向けて突出し且つ前記筒軸(Ax)周りを周回する複数の突条(14)を、前記筒壁によって構成し、
前記複数の前記突条(14)の各々は、
前記筒軸(Ax)を含む平面によって前記筒状部(10)を切ったときの断面視において、第1平坦部(15)と、第2平坦部(16)と、前記第1平坦部(15)と前記第2平坦部(16)とを繋ぐ曲面部(17)と、を有し、前記第1平坦部(15)と前記筒軸(Ax)とのなす角度である第1角度(θ1)が前記第2平坦部(16)と前記筒軸(Ax)とのなす角度である第2角度(θ2)よりも小さく、且つ、前記曲面部(17)の前記筒軸(Ax)に最も近い箇所(18)が前記筒軸(Ax)に沿って並ぶように配置される、ように構成される、
グロメット(1)。
[2]
上記[1]に記載のグロメットにおいて、
前記複数の前記突条(14)の各々は、
前記断面視において、前記第1平坦部(15)が属する仮想上の平面(P1)よりも前記第2平坦部(16)に近い側に前記曲面部(17)が位置する、ように構成される、
グロメット(1)。
[3]
上記[1]又は上記[2]に記載のグロメット(1)において、
前記複数の前記突条(14)の各々は、
前記断面視において、前記第2平坦部(16)が属する仮想上の平面(P2)よりも前記第1平坦部(15)に近い側に前記曲面部(17)が位置する、ように構成される、
グロメット(1)。
[4]
上記[1]から上記[3]の何れか一つに記載のグロメット(1)において、
前記第1角度(θ1)は、10度以上80度以下である、
グロメット(1)。
[5]
上記[1]から上記[4]の何れか一つに記載のグロメット(1)において、
前記第2角度(θ2)は、略90度である、
グロメット(1)。
【符号の説明】
【0042】
1 グロメット
10 筒状部
14 突条
15 第1平坦部
16 第2平坦部
17 曲面部
18 頂部(曲面部の筒軸に最も近い箇所)
Ax 筒軸
θ1 角度(第1角度)
θ2 角度(第2角度)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7