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  • 特許-工作機械システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】工作機械システム
(51)【国際特許分類】
   B23Q 11/00 20060101AFI20240305BHJP
   B23Q 17/00 20060101ALI20240305BHJP
   B23Q 17/24 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
B23Q11/00 N
B23Q17/00 A
B23Q17/24 Z
B23Q11/00 R
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019226301
(22)【出願日】2019-12-16
(65)【公開番号】P2021094625
(43)【公開日】2021-06-24
【審査請求日】2022-10-21
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 邦生
(74)【代理人】
【識別番号】100142789
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100163050
【弁理士】
【氏名又は名称】小栗 眞由美
(74)【代理人】
【識別番号】100201466
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】五十部 学
【審査官】亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-094420(JP,A)
【文献】特開2018-138327(JP,A)
【文献】特開2018-153872(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 11/00 - 11/14
B23Q 17/00
B23Q 17/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作機械本体と、制御装置とを備え、
前記工作機械本体が、加工領域を覆うカバーと、該カバーの内側の異なる複数の箇所に配置され、加工中に発生した切粉を排出する、排出能力を変更可能な切粉排出機構と、加工中における前記工作機械本体の上方から見た平面視における前記切粉の飛散方向の情報を取得する切粉情報取得部とを備え、
該切粉情報取得部が、前記切粉の飛散方向の情報に基づいて、前記上方から見た平面視において前記切粉が最も多く飛散している方向を算出し、
前記制御装置が、前記切粉が最も多く飛散している方向に対応する前記切粉排出機構の排出能力を他の前記切粉排出機構よりも大きくするよう制御する工作機械システム。
【請求項2】
前記切粉排出機構が、洗浄液を吐出するノズルを備え、
前記制御装置が、前記切粉が最も多く飛散している方向に対応する前記ノズルからの前記洗浄液の単位時間当たりの吐出量を他の前記ノズルよりも大きくするよう制御する請求項1に記載の工作機械システム。
【請求項3】
前記切粉情報取得部が、前記カバーの内側を上方から撮影するカメラと、該カメラにより取得された画像を処理して前記切粉が最も多く飛散している方向を算出する飛散方向算出部とを備える請求項1または請求項2に記載の工作機械システム。
【請求項4】
前記飛散方向算出部が、前記カメラにより取得された前記画像を処理して前記切粉を抽出し、抽出された前記切粉の大きさおよび数に基づいて、前記最も多く飛散している方向を算出する請求項3に記載の工作機械システム。
【請求項5】
前記工作機械本体が、前記加工領域内において鉛直方向に配置される主軸を有し、
前記切粉情報取得部が、前記切粉が最も多く飛散している方向として、前記平面視において前記主軸回りの周方向に配列する複数の領域の中から1つを選択する、請求項1から請求項4のいずれかに記載の工作機械システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、工作機械システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
切粉および切削液が飛散するのを防ぐカバーを備えた工作機械であって、カバー内部の状態を検出して、切粉の付着状態および堆積状態を判定し、洗浄液の吐出方向を変更する工作機械が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-94420号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
カバー内部に一旦堆積した切粉は、相互に絡み合って重量が増大するので、洗浄液の吐出によっても排出し難くなることがある。したがって、カバー内部に切粉が堆積する前に排出し、カバー内に残留する切粉を十分に低減することが好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様は、工作機械本体と、制御装置とを備え、前記工作機械本体が、加工領域を覆うカバーと、該カバーの内側の異なる複数の箇所に配置され、加工中に発生した切粉を排出する、排出能力を変更可能な切粉排出機構と、加工中における前記工作機械本体の上方から見た平面視における前記切粉の飛散方向の情報を取得する切粉情報取得部とを備え、該切粉情報取得部が、前記切粉の飛散方向の情報に基づいて、前記上方から見た平面視において前記切粉が最も多く飛散している方向を算出し、前記制御装置が、前記切粉が最も多く飛散している方向に対応する前記切粉排出機構の排出能力を他の前記切粉排出機構よりも大きくするよう制御する工作機械システムである。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本開示の一実施形態に係る工作機械システムを示す全体構成図である。
図2図1の工作機械システムの平面図である。
図3図1の工作機械システムのカメラにより取得された画像の一例を示す図である。
図4図3の画像を解析して選択された、切粉の多く飛散している領域をハッチングで示した図である。
図5図4において選択された領域に対応するノズルから洗浄液を多く吐出させている状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本開示の一実施形態に係る工作機械システム1について、図面を参照して以下に説明する。
本実施形態に係る工作機械システム1は、図1に示されるように、工作機械本体2と、制御装置3とを備えている。
【0008】
工作機械本体2は、加工対象となるワークW(図2,3,5参照。)を搭載するテーブル4と、コラム5に支持された主軸ヘッド6に取り付けられワークWを加工するための工具を取り付ける主軸7とを備え、ベッド8の上に設置されている。ワークWの加工が行われる加工領域は、加工中に発生した切粉Aあるいは切削液が周囲へ飛散するのを防止するカバー9によって覆われている。
【0009】
ベッド8には、前側から後側に向かって下降する方向に傾斜するスロープ10がテーブル4の両脇に設けられている。スロープ10は、加工中に発生した切粉Aあるいは切削液を一旦受け止めるとともに、後述するように供給される洗浄液(クーラント)Bによって、受け止めた切粉Aを流下させ、カバー9の外側に排出する。
【0010】
工作機械本体2のカバー9の内部には、図2に示されるように、洗浄液Bを吐出するノズル(切粉排出機構)11が複数個所に設けられている。図2に示す例では、ノズル11は、例えば、カバー9の前面側に2個、2つのスロープ10の上流位置、中央位置および下流位置にそれぞれ1個ずつ設けられている。各位置のノズル11は、例えば、3方向に吐出口を有している。これにより、広範囲にわたって洗浄液Bを供給し、広い範囲に付着している切粉A等を押し流すことができる。
【0011】
工作機械本体2は、加工中における切粉Aの飛散方向の情報を取得する切粉情報取得部14を備えている。切粉情報取得部14は、カバー9の内部の主軸ヘッド6の上方において、主軸ヘッド6およびワークWを上方から撮影するカメラ12と、カメラ12によって取得された画像(例えば、図3参照。)を処理する画像処理部(飛散方向算出部)13とを備えている。カメラ12には、画像処理部13が接続されている。
【0012】
画像処理部13は、画像を処理して切粉Aを抽出し、最も多くの切粉Aが飛散した方向を算出する。方向の情報としては、例えば、図4に示されるように、画像をノズル11の数の領域R1から領域R8に分割し、飛散した切粉Aの量が多い領域の番号を選択する。図4に示す例では領域R4が選択されている。選択された領域番号は制御装置3に送られる。
【0013】
制御装置3は、領域R1から領域R8に対応付けてノズル11の情報を記憶しており、画像処理部13により選択された領域の情報に応じて、その方向に対応するノズル11からの洗浄液Bの吐出量を他のノズル11からの吐出量よりも大きくするよう制御する。ここで、領域とノズル11との対応付けは、1:1であってもよいし、1対多であってもよい。
【0014】
このように構成された本実施形態に係る工作機械システム1によれば、工具によるワークWの切削が開始されると、上方に配置されたカメラ12によって、工具およびワークWを上方から撮影した画像が、例えば、所定のサンプリング間隔で取得される。取得された画像は画像処理部13に送られて、画像処理される。これにより、各画像内の切粉Aが抽出され、抽出された切粉Aの大きさおよび数に基づいて、切粉Aの総重量が最も多く飛散している方向を示す領域番号が選択される。
【0015】
選択された領域番号は制御装置3に送られる。制御装置3においては、送られてきた領域番号に対応するノズル11が選択され、例えば、図5に示されるように、選択されたノズル11からの洗浄液Bの単位時間当たりの吐出量を他のノズル11よりも大きくする。これにより、大量の切粉Aが飛散してカバー9の底部に落ちても、大量の洗浄液Bによって押し流されるので、切粉Aが堆積あるいは付着する前に、切粉Aを洗い流すことができるという利点がある。
【0016】
他のノズル11については、選択されたノズル11よりも小さい吐出量で洗浄液Bを吐出しておくことにより、少量の切粉Aを洗い流して、堆積あるいは付着を防止することができる。
【0017】
なお、本実施形態においては、画像処理部13により画像内の切粉Aを抽出して、切粉Aの大きさおよび数に基づいて、最も多く飛散している方向を算出した。画像処理部13における画像処理の方法は、任意でよいが、例えば、予め非切削加工時の画像を取得して記憶しておき、切削加工時に取得された画像と比較することにより切粉Aの飛散方向を推定してもよい。
【0018】
また、切粉Aの大きさおよび数に基づいて飛散方向を算出したが、長さの長い切粉Aは相互に絡んで堆積し易い性質があるため、画像から切粉Aの長さを抽出し、長さの長い切粉Aが飛散した方向のノズル11からの吐出量を増大させてもよい。
【0019】
また、本実施形態においては、切粉排出機構として洗浄液Bを吐出するノズル11を例示したが、これに限定されるものではなく、切粉Aを吸引する吸引手段あるいは切粉Aを搬送するチップコンベアを採用してもよい。
【符号の説明】
【0020】
1 工作機械システム
2 工作機械本体
3 制御装置
9 カバー
11 ノズル(切粉排出機構)
12 カメラ
13 画像処理部(飛散方向算出部)
14 切粉情報取得部
A 切粉
B 洗浄液
図1
図2
図3
図4
図5