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特許7448360複数のサンプルキャピラリを有する、サンプル分離デバイスと質量分析計との間のインタフェースデバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】複数のサンプルキャピラリを有する、サンプル分離デバイスと質量分析計との間のインタフェースデバイス
(51)【国際特許分類】
   H01J 49/16 20060101AFI20240305BHJP
   H01J 49/26 20060101ALI20240305BHJP
   H01J 49/04 20060101ALI20240305BHJP
   G01N 27/62 20210101ALI20240305BHJP
   G01N 30/72 20060101ALI20240305BHJP
   G01N 27/447 20060101ALI20240305BHJP
   G01N 30/60 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
H01J49/16
H01J49/26
H01J49/04
G01N27/62 X
G01N27/62 G
G01N27/62 F
G01N30/72 C
G01N30/72 G
G01N27/447 331E
G01N30/60 K
【請求項の数】 20
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020010554
(22)【出願日】2020-01-27
(65)【公開番号】P2020126836
(43)【公開日】2020-08-20
【審査請求日】2023-01-13
(31)【優先権主張番号】1901431.5
(32)【優先日】2019-02-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】399117121
【氏名又は名称】アジレント・テクノロジーズ・インク
【氏名又は名称原語表記】AGILENT TECHNOLOGIES, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【弁理士】
【氏名又は名称】徳本 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100180231
【弁理士】
【氏名又は名称】水島 亜希子
(74)【代理人】
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】ハンス‐ペーター・ツィンマーマン
【審査官】中尾 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2003-517576(JP,A)
【文献】特表2004-525483(JP,A)
【文献】特開2011-059031(JP,A)
【文献】特表2014-532966(JP,A)
【文献】特開2015-138616(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0026617(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 49/16
H01J 49/26
H01J 49/04
G01N 27/62
G01N 30/72
G01N 27/447
G01N 30/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプル分離デバイス(10)と質量分析計(102)との間に流体インタフェースを設けるインタフェースデバイス(100)であって、該インタフェースデバイス(100)は、
エミッタキャピラリ(104)と、
前記サンプル分離デバイス(10)から前記質量分析計(102)まで流体サンプルを移送するために前記エミッタキャピラリ(104)内に移動可能に配置される複数のサンプルキャピラリ(106)と、
を備える、インタフェースデバイス。
【請求項2】
請求項1に記載のインタフェースデバイス(100)であって、前記サンプルキャピラリ(106)の各々は、前記それぞれのサンプルキャピラリ(106)のサンプル出口開口部(108)が前記エミッタキャピラリ(104)の放出開口部(110)に配置される作動位置と、前記それぞれのサンプルキャピラリ(106)の該サンプル出口開口部(108)が前記エミッタキャピラリ(104)の該放出開口部(110)に対して後退する解除位置との間で移動可能である、インタフェースデバイス。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のインタフェースデバイス(100)であって、シース流体を前記エミッタキャピラリ(104)に供給するシース流体供給ユニット(161)を備える、インタフェースデバイス。
【請求項4】
請求項3に記載のインタフェースデバイス(100)であって、前記シース流体供給ユニット(161)は、前記シース流体キャピラリ(112)を通る前記シース流の流量が前記サンプルキャピラリ(106)のうちの少なくとも1つを通る流体サンプルの流量より多いような量のシース流体を与えるように構成される、インタフェースデバイス。
【請求項5】
請求項3又は4に記載のインタフェースデバイス(100)であって、前記シース流体供給ユニット(161)は、前記シース流体を前記エミッタキャピラリ(104)の内部(114)に与えるために前記エミッタキャピラリ(104)内にシース流体キャピラリ(112)を備える、インタフェースデバイス。
【請求項6】
請求項3又は4に記載のインタフェースデバイス(100)であって、前記シース流体供給ユニット(161)は、シース流体を前記エミッタキャピラリ(104)の内部(114)に供給するために前記エミッタキャピラリ(104)につながるシース流体供給導管(151)を備える、インタフェースデバイス。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載のインタフェースデバイス(100)であって、前記サンプルキャピラリ(106)に印加されることになる高電圧を与える高電圧源(120)を備える、インタフェースデバイス。
【請求項8】
請求項7に記載のインタフェースデバイス(100)であって、全てのサンプルキャピラリ(106)に対して共通に、共通高電圧源(120)が設けられる、インタフェースデバイス。
【請求項9】
請求項7又は8に記載のインタフェースデバイス(100)であって、前記サンプルキャピラリ(106)の各々は高電圧スイッチ(122)に結合され、該高電圧スイッチは、前記それぞれのサンプルキャピラリ(106)を前記高電圧源(120)と選択的に結合するか、又は前記それぞれのサンプルキャピラリ(106)を前記高電圧源(120)から選択的に切り離すように構成される、インタフェースデバイス。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載のインタフェースデバイス(100)であって、前記サンプルキャピラリ(106)は前記エミッタキャピラリ(104)の前記内部(114)において互いに並置される、インタフェースデバイス。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載のインタフェースデバイス(100)であって、電気泳動サンプル分離デバイス(10)、詳細には、キャピラリ電気泳動サンプル分離デバイスと、前記質量分析計(102)との間に流体インタフェースを設けるように構成される、インタフェースデバイス。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載のインタフェースデバイス(100)であって、クロマトグラフィサンプル分離デバイス(10)、詳細には、液体クロマトグラフィサンプル分離デバイスと、前記質量分析計(102)との間に流体インタフェースを設けるように構成される、インタフェースデバイス。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載のインタフェースデバイス(100)であって、以下の特徴、すなわち、
前記エミッタキャピラリ(104)及び前記サンプルキャピラリ(106)は、それぞれのサンプルキャピラリ(106)のサンプル出口開口部(108)を前記エミッタキャピラリ(104)の放出開口部(110)に動かすと、流体サンプルが前記サンプルキャピラリ(106)から流出し、イオン化されるように構成されることと、
前記エミッタキャピラリ(104)の一端が前記流体サンプルに基づいて生成されるエレクトロスプレー(143)を放出する放出開口部(110)を備え、前記エミッタキャピラリ(104)の反対に位置する他端が、詳細には前記放出開口部(110)より大きく、過剰なシース流体、及び/又は前記サンプルキャピラリ(106)のうちの少なくとも1つの現時点で解除されているサンプルキャピラリから流出する流体を排出する排出開口部(163)を有することと、
前記サンプルキャピラリ(106)のうちのそれぞれが前記エミッタキャピラリ(104)の放出開口部(110)に自らのサンプル出口開口部(108)を有するときに、前記サンプルキャピラリ(106)のうちの別のサンプルキャピラリのサンプル出口開口部(108)が前記放出開口部(110)に対して後退するように、前記サンプルキャピラリ(106)は反対方向に協調して移動可能であるように構成されることと、
前記インタフェースデバイス(100)は、前記サンプルキャピラリ(106)のうちのそれぞれを前記エミッタキャピラリ(104)に対して個々に動かす、詳細には、前記サンプルキャピラリ(106)を非循環的に動かすドライブユニット(124)を備えることと、
前記インタフェースデバイス(100)は、前記サンプルキャピラリ(106)を締結する、詳細には、クランプ固定するように構成される締結ユニット(126)、詳細にはクランプ固定ユニットを備えることと、
前記エミッタキャピラリ(104)の内径(D)は2mm未満であり、詳細には、1.5mm未満であることと、
前記サンプルキャピラリ(106)の外径(d)は600μm未満であり、詳細には、400μm未満であることと、
前記インタフェースデバイス(100)は、エレクトロスプレーインタフェースデバイス(100)として構成されることと、
前記エミッタキャピラリ(104)の放出開口部(110)が、先端が鋭い先細の端部を有することと、
前記サンプルキャピラリ(106)のうちの少なくとも1つが、流体サンプルの流出のための、先端が鋭い先細の端部を有することと、
シース流体キャピラリ(112)がシース流体の流出のための円筒形端部を有することと、
前記インタフェースデバイス(100)は、前記エミッタキャピラリ(104)に対する前記サンプルキャピラリ(106)の各々の協調的な動きを制御するように構成される制御ユニット(70)を備えることと、
のうちの少なくとも1つを含む、インタフェースデバイス。
【請求項14】
分析装置(130)であって、
流体サンプルを分離するサンプル分離デバイス(10)と、
前記分離された流体サンプルを分析する質量分析計(102)と、
前記流体サンプルを前記サンプル分離デバイス(10)から前記質量分析計(102)まで移送する、請求項1~13のいずれか一項に記載のインタフェースデバイス(100)と、
を備える、分析装置。
【請求項15】
請求項14に記載の分析装置(130)であって、前記インタフェースデバイス(100)は、流体サンプルを前記質量分析計(102)まで移送するために、前記サンプルキャピラリ(106)を協調して動作させるように、詳細には、前記サンプルキャピラリ(106)を交互に、又は同時に動作させるように構成される、分析装置。
【請求項16】
請求項14又は15に記載の分析装置(130)であって、流体サンプルを分離する更なるサンプル分離デバイス(10’)を備え、前記サンプル分離デバイス(10)は前記サンプルキャピラリ(106)のうちの少なくとも1つに接続され、前記更なるサンプル分離デバイス(10’)は前記サンプルキャピラリ(106)のうちの少なくとも別のサンプルキャピラリに接続される、分析装置。
【請求項17】
請求項16に記載の分析装置(130)であって、以下の特徴、すなわち、
前記サンプル分離デバイス(10)及び前記更なるサンプル分離デバイス(10’)はいずれも電気泳動サンプル分離デバイス、詳細には、キャピラリ電気泳動サンプル分離デバイスであることと、
前記サンプル分離デバイス(10)及び前記更なるサンプル分離デバイス(10’)はいずれもクロマトグラフィサンプル分離デバイス、詳細には、液体クロマトグラフィサンプル分離デバイス、更に詳細には、ナノ液体クロマトグラフィサンプル分離デバイスであることと、
前記サンプル分離デバイス(10)は電気泳動サンプル分離デバイス、詳細には、キャピラリ電気泳動サンプル分離デバイスであり、前記更なるサンプル分離デバイス(10’)は、クロマトグラフィサンプル分離デバイス、詳細には、液体クロマトグラフィサンプル分離デバイス、より詳細には、ナノ液体クロマトグラフィサンプル分離デバイスであることと、
のうちの1つを含む、分析装置。
【請求項18】
請求項14~17のいずれか一項に記載の分析装置(130)であって、前記サンプル分離デバイス(10)は、以下の特徴、すなわち、
サンプル分離ユニットが移動相の前記流体サンプルを画分に分離するように構成され、詳細には、クロマトグラフィサンプル分離ユニットとして構成され、より詳細には、クロマトグラフィ分離カラムとして構成されることと、
前記サンプル分離デバイス(10)は、前記流体サンプルの少なくとも1つの画分の少なくとも1つの物理的、化学的及び/又は生物学的パラメータを分析するように構成されることと、
前記サンプル分離デバイス(10)は、化学的、生物学的及び/又は薬学的分析のためのデバイス、電気泳動サンプル分離デバイス、詳細には、キャピラリ電気泳動サンプル分離デバイス、クロマトグラフィデバイス、詳細には、液体クロマトグラフィデバイス及びHPLCデバイスからなる群のうちの少なくとも1つを含むことと、
前記サンプル分離デバイス(10)はマイクロ流体デバイスとして構成されることと、
前記サンプル分離デバイス(10)はナノ流体デバイスとして構成されることと、
前記サンプル分離デバイス(10)は前記流体サンプルの分離された画分を検出する検出器を備えることと、
前記サンプル分離デバイス(10)は、前記流体サンプルを移動相に注入する注入器を備えることと、
のうちの少なくとも1つを含む、分析装置。
【請求項19】
サンプル分離デバイス(10)から質量分析計(102)まで流体サンプルを移送する方法であって、該方法は、複数のサンプルキャピラリ(106)のうちの現時点で作動しているサンプルキャピラリのサンプル出口開口部(108)が、該作動しているサンプルキャピラリ(106)によって流体サンプルを該サンプル分離デバイス(10)から該質量分析計(102)まで移送するためにエミッタキャピラリ(104)の放出開口部(110)と位置合わせされるように、該作動しているサンプルキャピラリ(106)を該エミッタキャピラリ(104)内で該エミッタキャピラリ(104)の該放出開口部(110)に向かって動かすことを含む、方法。
【請求項20】
以下の特徴、すなわち、
前記方法は、前記流体サンプルを移送した後に、前記現時点で作動しているサンプルキャピラリ(106)の前記サンプル出口開口部(108)が前記放出開口部(110)から離反するように、前記サンプルキャピラリ(106)を前記エミッタキャピラリ(104)に対して動かすことを含むことと、
前記方法は、前記流体サンプルを移送した後に、前記サンプルキャピラリ(106)の以前に解除されているサンプルキャピラリを作動させるために前記エミッタキャピラリ(104)の前記放出開口部(110)に向かって動かすことを含み、それにより、作動することになる該サンプルキャピラリ(106)によって更なる流体サンプルを前記サンプル分離デバイス(10)から、又は更なるサンプル分離デバイス(10’)から前記質量分析計(102)まで移送するために、作動することになる該サンプルキャピラリ(106)のサンプル出口開口部(108)が前記放出開口部(110)に向かって動かされることと、
のうちの少なくとも1つを含む、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インタフェースデバイス、分析装置、及びサンプル分離デバイスから質量分析計まで流体サンプルを移送する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液体クロマトグラフィでは、流体サンプル及び溶離液(液体移動相)が、導管、及びサンプル成分の分離が行われるカラム等の分離ユニットに送り込まれる場合がある。カラムは、流体サンプルの異なる成分を分離することができる材料を備えることができる。分離ユニットは、導管によって他の流体部材(サンプラ又は注入器、検出器)に接続される場合がある。流体サンプルが、流体ドライブユニット(詳細には、高圧ポンプ)と分離ユニットとの間の分離経路の中に導入される前に、所定の量の流体サンプルが、計量デバイス内のピストンの対応する動きによって、サンプル源(サンプル容器等)から注射針を介してサンプルループの中に取り込まれることになる。
【0003】
液体クロマトグラフィ質量分析法(liquid chromatography coupled with mass spectrometry)(LC/MS、HPLC-MS)は、液体クロマトグラフィと質量分析法とを組み合わせることによって、流体サンプルの画分(fraction)の成分を分離し、特定する分析方法である。この状況では、クロマトグラフィは、組成物内の分子を分離する役割を果たし、後続の質量分析法は、物質を識別し、及び/又は定量するために実施される。
【0004】
キャピラリ電気泳動法は、電気泳動に基づく分析分離方法である。その分離は、電解質溶液において細いキャピラリ管内に印加された電界の影響下で実行される。
【0005】
キャピラリ電気泳動質量分析法(CE-MS:capillary electrophoresis coupled with mass spectrometry)は、キャピラリ電気泳動法と、質量分析法とを結合するシステムである。一般に、サンプル体積は10nlの桁になる場合があるので、キャピラリ電気泳動サンプル分離デバイスの出口では、ごくわずかな量の液体しか得られない場合がある。それゆえ、キャピラリ電気泳動法と質量分析法との組み合わせは精巧である。
【0006】
非特許文献1は、シース液キャピラリ及びサンプルキャピラリを備えるエミッタキャピラリを開示している。
【0007】
しかしながら、サンプル分離デバイスと質量分析計とを組み合わせる分析装置において、サンプル処理量は制限される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【文献】Mike Knierman、「Developments in CE/MS analysis of Proteins」、CE Pharm Conference 2016、(https://cdn.ymaws.com/www.casss.org/resource/resmgr/ce_pharm_speaker_slides/2016_ce_knierman.pdf)
【発明の概要】
【0009】
本発明の目的は、サンプル処理量を改善しながら、サンプル分離デバイスと質量分析計とを組み合わせることを可能にすることである。この目的は、独立請求項による主題によって解決される。従属請求項において更なる実施形態が示される。
【0010】
本発明の例示的な実施形態によれば、サンプル分離デバイスと質量分析計との間に流体インタフェースを設けるインタフェースデバイスが提供され、インタフェースデバイスは、エミッタキャピラリと、サンプル分離デバイスから質量分析計まで流体サンプルを移送するためにエミッタキャピラリ内に(詳細には、完全に又は部分的に)移動可能に配置される複数のサンプルキャピラリとを備える。
【0011】
本発明の別の例示的な実施形態によれば、分析装置が提供され、その分析装置は、流体サンプルを分離するサンプル分離デバイスと、分離された流体サンプルを分析する質量分析計と、上記で言及された特徴(詳細には、少なくとも1つ又は全てのサンプルキャピラリが、サンプル分離デバイスの出口と、及び/又は少なくとも1つの更なるサンプル分離デバイスと流体結合され、エミッタキャピラリのエミッタ開口部が、質量分析計と流体結合される)を有し、流体サンプルをサンプル分離デバイスから質量分析計まで移送するように構成されるインタフェースデバイスとを備える。
【0012】
本発明の更に別の例示的な実施形態によれば、サンプル分離デバイスから質量分析計まで流体サンプルを移送する方法が提供され、その方法は、複数のサンプルキャピラリのうちの現時点で作動しているサンプルキャピラリのサンプル出口開口部が、作動しているサンプルキャピラリによって流体サンプルをサンプル分離デバイスから質量分析計まで移送するためにエミッタキャピラリの放出開口部と位置合わせされる(詳細には、放出開口部に配置される)ように、作動しているサンプルキャピラリをエミッタキャピラリ内でエミッタキャピラリの放出開口部に向かって動かすことを含む。
【0013】
本出願の状況において、「インタフェースデバイス」という用語は、一方にある、それぞれの流体サンプルを分離する1つ以上のサンプル分離デバイスのサンプル出口と、他方にある、質量分析計との間に流体インタフェースを設けるか、又は形成するデバイスを特に表すことができる。そのようなインタフェースデバイスは、分離された流体(詳細には液体)サンプルが質量分析計による更なる処理のために(特に、エレクトロスプレーの形に)調整されるように、分離された流体サンプルを少なくとも1つのサンプル分離デバイスの接続された出口において更に処理することができる。
【0014】
本出願の状況において、「サンプル分離デバイス」という用語は、流体(詳細には液体)サンプルを画分に分離するように構成されるデバイスを特に表すことができる。例えば、そのようなサンプル分離デバイスは、クロマトグラフィサンプル分離デバイス、又は電気泳動法の原理に基づいて機能するサンプル分離デバイスとすることができる。
【0015】
本出願の状況において、「質量分析計」という用語は、サンプルの画分の質量を測定するための、詳細には、原子又は分子の質量を測定するためのデバイスを特に表すことができる。分析されることになるサンプルの画分は気相に移行させることができ、イオン化することができる。イオンは電界によって実質的に加速させて、分析ユニットに供給することができ、分析ユニットにおいて、例えば、その質量対電荷比に応じてイオンを選別することができる。例えば、サンプルは、質量分析計によって、空間的に離間したビームに分離することができる。
【0016】
本出願の状況において、「エミッタキャピラリ」という用語は、サンプル分離デバイスにおいてあらかじめ分離された流体サンプルをエミッタキャピラリの放出先端又は開口部に向かって移送することができ、そこでイオン化されるようにする内腔又は内部空洞を備えるキャピラリを特に表すことができる。エミッタキャピラリの内部空洞又は内腔は、複数のサンプルキャピラリを同時に収容できるほど十分に大きいものとすることができる。
【0017】
本出願の状況において、「サンプルキャピラリ」という用語は、サンプル分離デバイスにおいてあらかじめ分離された流体サンプルを収容又は案内するキャピラリを特に表すことができる。そのようなサンプル分離デバイスの流体出口は、サンプルキャピラリのうちの1つ以上のサンプルキャピラリのそれぞれの入口に流体結合することができる。
【0018】
本発明の例示的な実施形態によれば、エミッタキャピラリの内部に複数のサンプルキャピラリを移動可能に配置することができる。複数のサンプルキャピラリのうちの個々のサンプルキャピラリは、同じサンプル分離デバイスと結合することができるか、又はそれぞれ別々のサンプル分離デバイスと結合することができる。サンプル分離デバイスから流出し、それぞれのサンプルキャピラリに流入する流体サンプルは、サンプルキャピラリを通してエミッタキャピラリ内に吐出することができ、質量分析計における更なる処理のために、エミッタキャピラリの放出開口部においてイオン化することができる。この措置を講じることによって、それぞれ動作中の(すなわち、現時点でサンプルを収容している)サンプルキャピラリは、サンプルキャピラリ内を案内された流体サンプルを吐出し、放出開口部に供給するために、放出開口部に向かって(詳細には個々に、又は選択的に)動くことができる。しかしながら、あらかじめ分離された流体サンプルをエミッタキャピラリの放出開口部に供給し、質量分析計に注入するために、現時点でサンプルキャピラリが必要とされないとき、このサンプルキャピラリは、エミッタキャピラリの内部に後退させる、すなわち後進させることができる。流体(例えば、未確定の組成を有する流体、又は現時点で対象外の流体サンプル)は、それにもかかわらず、エミッタキャピラリの放出開口部に達することなく、そのような現時点で解除されているサンプルキャピラリから流出することができる。この措置を講じることによって、本発明の例示的な実施形態によるインタフェースデバイスは、流体サンプルの処理量の増加に寄与することができる。すなわち、別のサンプルキャピラリが、更に処理されることになるサンプルを現時点で案内しないときであっても(例えば、割り当てられたサンプル分離デバイスが現時点で、あらかじめ分離されたサンプルを出口において与えないため)、各時点において、分離された流体サンプルをエミッタキャピラリの放出先端に案内するためにそれぞれのサンプルキャピラリを前進させることができる。さらに、例示的な実施形態によるインタフェースデバイスを用いて、唯一の質量分析計とともに、複数のサンプル分離デバイスを動作させることができる。質量分析計は、サンプル分離デバイスに比べて、多くの場合に構成するのに高い労力を要し、多くの場合に高いコストを伴う。それゆえ、複数のサンプル分離デバイスとともに動作するときに、そのような質量分析計が効率的に動作するほど、極めて有利である。さらに、インタフェースデバイスを用いて、全く同じ質量分析計とともに異なるタイプのサンプル分離デバイスも動作させることができる。例えば、エミッタキャピラリ内の第1のサンプルキャピラリを第1のタイプのサンプル分離デバイス(例えば、クロマトグラフィサンプル分離デバイス)の下流に接続し、配置することができる。同じエミッタキャピラリ内に同じく配置される第2のサンプルキャピラリを別の第2のタイプのサンプル分離デバイス(例えば、電気泳動サンプル分離デバイス)に割り当てることができる。
【0019】
以下において、インタフェースデバイス、分析装置及び方法の更なる例示的な実施形態が説明されることになる。
【0020】
一実施形態において、サンプルキャピラリの各々は、それぞれのサンプルキャピラリのサンプル出口開口部がエミッタキャピラリの放出開口部に配置される、それぞれのサンプルキャピラリの作動位置と、それぞれのサンプルキャピラリのサンプル出口開口部がエミッタキャピラリの放出開口部に対して後退する、それぞれのサンプルキャピラリの解除位置との間で、エミッタキャピラリに対して個々に移動可能である。それに応じて、その方法は、流体サンプルを質量分析計に移送した後に、このサンプルキャピラリのサンプル出口開口部が放出開口部から離反するように、現時点で作動しているサンプルキャピラリを動かすことを含むことができる。また、その方法は、流体サンプルを質量分析計に移送した後に、作動することになるサンプルキャピラリによって更なる流体サンプルをサンプル分離デバイスから質量分析計に移送するために、作動することになるサンプルキャピラリのサンプル出口開口部が放出開口部まで動かされるように、サンプルキャピラリのうちの現時点で解除されているサンプルキャピラリを作動させるためにエミッタキャピラリの放出開口部に向かって動かすことを含むことができる。例えば、各時点において、1つのサンプルキャピラリを作動位置において運用し、他の1つ以上のサンプルキャピラリを解除位置において運用することができる。サンプルキャピラリをエミッタキャピラリの内部において前後方向に単に長手方向運動させることによって、その際、それぞれのサンプルキャピラリを作動位置と解除位置との間で移行させるか、又は切り替えることができる。
【0021】
一実施形態において、インタフェースデバイスは、シース流体(sheath fluid)をエミッタキャピラリに供給するシース流体供給ユニットを備える。本出願の状況において、「シース流体」という用語は、接続される質量分析計における更なる処理に適するように流量を調整するために、それぞれのサンプルキャピラリから流出するあらかじめ分離された流体サンプルに追加することができるか、又は混合させることができる流体を特に表すことができる。例えば、シース流体は、水及び有機溶媒の混合物とすることができ、所望により、又は必要に応じて、少なくとも1つの添加剤を更に含む。そのようなシース流体は、エミッタキャピラリの中の流れを安定させることができ、結果として淀みのない流れを助長することができる。
【0022】
一実施形態において、シース流体供給ユニットは、シース流体キャピラリを通るシース流の流量がサンプルキャピラリのうちの少なくとも1つを通る流体サンプルの流量より多いような量のシース流体を与えるように構成される。詳細には、キャピラリ電気泳動法(極めて少ない流量を伴う場合がある)によってサンプル分離デバイスにおいて流体サンプルを分離するとき、シース流体を追加することによる流量の増加は、インタフェースデバイスの安定した動作にとって有利になる場合がある。
【0023】
一実施形態において、シース流体供給ユニットは、シース流体をエミッタキャピラリの内部に与えるためにエミッタキャピラリの内部にシース流体キャピラリを備える。シース流体はシース流体キャピラリ内を案内することができる。シース流体キャピラリは、エミッタキャピラリの内部に部分的に、若しくは完全に、及び/又は移動可能に、若しくは固定して配置することができる。例えば、シース流体キャピラリは、エミッタキャピラリの内部において、作動位置にあるサンプルキャピラリに対して空間的に後退し、解除位置にあるサンプルキャピラリに対して前方に変位するような位置に配置することができる。そのような措置を講じるとき、適切な流量を調整するために、前方に流れているシース流体を、作動位置にあるサンプルキャピラリにその後方から供給することができる。過剰なシース流体は、好ましくは後端において開口しているエミッタキャピラリから流出することができ、それにより、シース流体の能動制御又は計量を不要にすることができるようになっている。同時に、後方に流れ出る過剰なシース流体は、それとともに、現時点で解除位置にあるサンプルキャピラリから流出する流体(例えば、未確定の組成を有する流体)を取り込むことができ、それゆえ、そのような流体の後方における排出に寄与することができる。廃棄すべきこの流体の除去は、更に処理されることになる流体サンプルを乱すことなく、又は流体サンプルの純度を劣化させることなく、かつ現時点で作動位置にあるサンプルキャピラリから流出することなく成し遂げることができる。シース流体の流量の調整によって、放出開口部における流体の適切な全流量を確保することができる。結果として、インタフェースデバイスの出口において、安定した淀みのない流れを保証することができる。これは、エレクトロスプレーの生成にとって極めて有利である。
【0024】
一実施形態において、シース流体キャピラリの外壁は、サンプルキャピラリの外壁より高い導電率を有する。これは、生成されるエレクトロスプレーの特性に好影響を及ぼすことができる。
【0025】
別の実施形態において、シース流体供給ユニットは、エミッタキャピラリの内部にシース流体を供給するために、エミッタキャピラリにつながる(詳細には、エミッタキャピラリの側方領域、例えば、円筒面につながる)シース流体供給導管を備える。そのような実施形態では、その内部にサンプルキャピラリしか収容する必要がないので、エミッタキャピラリを極めてコンパクトに製造できるようになる場合がある。
【0026】
一実施形態において、インタフェースデバイスは、サンプルキャピラリに印加されることになる高電圧を与える高電圧源を備える。そのような高電圧によって、それぞれのサンプルキャピラリから流出する流体サンプルのイオン化を助長することができる。エミッタキャピラリの極端に先細の放出開口部に高い(例えば、2kV~3kVの範囲内の)電圧を印加することによって、既に分離されている流体サンプルのイオン化を助長することができ、適切なエレクトロスプレーを生成することができる。そのようなエレクトロスプレーは、質量分析計における分析にとって極めて有利である。エミッタキャピラリの放出先端において吐出することができるエレクトロスプレーの流量は、例えば、100nl/min~500nl/minの範囲内、例えば、300nl/minにすることができる。
【0027】
一実施形態において、全てのサンプルキャピラリに対して共通に、共通高電圧源が設けられる。全てのサンプルキャピラリに対して唯一の共通の高電圧源を設けることにより、インタフェースデバイスを極めてコンパクトに構成できるようになる。好ましくは、各時点において、サンプルキャピラリのうちの1つだけが作動位置にあるので、単一の高電圧源で十分な場合がある。現時点で解除位置にある1つ以上のサンプルキャピラリにおいて高電圧は不要である。
【0028】
一実施形態において、サンプルキャピラリの各々はそれぞれ高電圧スイッチに結合され、高電圧スイッチは、それぞれのサンプルキャピラリを高電圧源と選択的に結合するか、又はそれぞれのサンプルキャピラリを高電圧源から選択的に切り離すように構成される。高電圧スイッチを設けることによって、単一の高電圧源を、現時点で作動位置にあるそれぞれのサンプルキャピラリに都合よく結合することができ、現時点で解除位置にある1つ以上の更なるサンプルキャピラリから切り離すことができる。
【0029】
一実施形態において、サンプルキャピラリはエミッタキャピラリの内部において互いに並置される。シース流体キャピラリが存在するとき、シース流体キャピラリもサンプルキャピラリに並置することができる。エミッタキャピラリの内部にサンプルキャピラリを、そして好ましくはシース流体キャピラリを並置することは、省スペースのコンパクトな構成を助長し、それに加えて、エミッタキャピラリの内部においてサンプルキャピラリのうちのそれぞれ1つの単純な前進又は後進を可能にする。
【0030】
一実施形態において、エミッタキャピラリ及びサンプルキャピラリは、それぞれのサンプルキャピラリのサンプル出口開口部をエミッタキャピラリの放出開口部まで動かすと、流体サンプルがサンプルキャピラリから流出し、イオン化されるように構成される。これは、出口開口部におけるエミッタキャピラリの著しく先細の先端、それぞれの出口開口部におけるそれぞれのサンプルキャピラリの著しく先細の先端、及び/又は高電圧の印加によって達成することができる。好ましくはシース流体と混合されるイオン化された流体サンプルは、その後、エレクトロスプレーの形で得られ、エレクトロスプレーは、質量分析計における更なる処理のために適切に調整される。
【0031】
一実施形態において、エミッタキャピラリの一端は、エレクトロスプレーを含む流体サンプルを放出する放出開口部を備える。エミッタキャピラリの後端(例えば、反対に位置する他端)は、過剰なシース流体、及び/又はサンプルキャピラリのうちの少なくとも1つの現時点で解除されているサンプルキャピラリから流出する流体を排出する排出開口部(詳細には、放出開口部より大きい)を有することができる。背面を介してエミッタキャピラリの流体の排出をトリガすることによって、シース流体の厳密な計量を不要にすることができる。更に有利には、これは、インタフェースデバイスの常圧動作(pressureless operation)を可能にする。これは更に、インタフェースデバイスを製造し、動作させる労力を軽減する。更なる利点として、この実施形態によれば、現時点で作動しているサンプルキャピラリが放出開口部に流体を吐出している間に、現時点で解除されているサンプルキャピラリから(例えば、未確定の)流体が流出できないようにするのを不要にすることもできる。現時点で解除されているサンプルキャピラリが現時点で作動しているサンプルキャピラリに対して後方に変位するので、エミッタキャピラリの背面を介して流れ出る過剰なシース流体が、それとともに、現時点で解除されているサンプルキャピラリから流出する流体を取り込むことができる。結果として、そのような未確定の流体が、更に処理されることになり、現時点で作動しているサンプルキャピラリから現時点で流出している流体サンプルを乱すことがなくなる。
【0032】
一実施形態において、サンプルキャピラリは、サンプルキャピラリのうちのそれぞれがエミッタキャピラリの放出開口部に自らのサンプル出口開口部を有するときに、サンプルキャピラリのうちの別のサンプルキャピラリのサンプル出口開口部が放出開口部に対して後退するように協調して移動可能であるように構成される。そのように協調して動作することによって、質量分析計において更に特徴付けられることになる流体サンプルの処理量を更に高めることができる。
【0033】
一実施形態において、インタフェースデバイスは、キャピラリ電気泳動サンプル分離デバイスと、質量分析計との間に流体インタフェースを設けるように構成される。キャピラリ電気泳動サンプル分離デバイスの出口は、その際、1つ以上のそれぞれのサンプルキャピラリの入口と流体結合することができる。詳細には、キャピラリ電気泳動法の場合に典型的である流量(例えば、100nl/min~500nl/min)は、特にシース流体とともに、インタフェースデバイスにおいて処理するのに適している。
【0034】
一実施形態において、インタフェースデバイスは、クロマトグラフィサンプル分離デバイスと、質量分析計との間に流体インタフェースを設けるように構成される。クロマトグラフィサンプル分離デバイスの出口は、その際、1つ以上のそれぞれのサンプルキャピラリの入口と流体結合することができる。クロマトグラフィサンプル分離デバイスの出口における分離された流体サンプルの流量はml/minの桁にすることができるが、本発明の例示的な実施形態によるインタフェースデバイスはまた、所望によりシース流体とともに、そのような高い流量のあらかじめ分離されたクロマトグラフィサンプルも処理できることがわかった。
【0035】
一実施形態において、インタフェースデバイスは、特にサンプルキャピラリを非循環的に動かす(すなわち、1つのサンプルキャピラリを前方に動かし、同時に別のサンプルキャピラリを後方に動かす)ために、サンプルキャピラリのそれぞれを個々に動かすドライブユニットを備える。詳細には、ドライブユニットは、リニアアクチュエータとして構成することができる。好ましくはリニアアクチュエータとして構成される、そのようなドライブユニットは、前方及び後方に特に正確に運動できるようにするために、ステップモータとして構成することができる。
【0036】
一実施形態において、インタフェースデバイスは、サンプルキャピラリ、そして任意選択でシース流体キャピラリも締結する(詳細にはクランプ固定する)ように構成される締結ユニット、特にクランプ固定ユニットを備えることができる。締結ユニットにおいてそれぞれのサンプルキャピラリ又はシース流体キャピラリを単にクランプ固定することによって、ユーザが、エミッタキャピラリ内のサンプルキャピラリ又はシース流体キャピラリの組立又は交換を、損傷の危険性を伴うことなく簡単に実行できるようになる。さらに、締結ユニットにおいてサンプルキャピラリ及び任意選択でシース流体キャピラリを側方で締結することによって、それぞれのキャピラリの目標位置を正確に調整することができる。これは、エミッタキャピラリ内の異なるキャピラリ間の望ましくない相互作用を生じることなく、それぞれのキャピラリの単純な可動性を助長することができる。
【0037】
一実施形態において、エミッタキャピラリの内径は2mm未満、詳細には1.5mm未満である。それに加えて、又はその代わりに、サンプルキャピラリの外径は600μm未満、詳細には400μm未満とすることができる。存在する場合には、シース流体キャピラリの外径も、600μm未満、詳細には400μm未満とすることができる。エミッタキャピラリ及びサンプルキャピラリの言及された寸法によって(そして、任意選択のシース流体キャピラリの対応する方法において)、エミッタキャピラリ内に、複数のサンプルキャピラリを、それらのサンプルキャピラリ間で望ましくない相互作用を生じさせることなく、極めてコンパクトに収容することができる。
【0038】
一実施形態において、インタフェースデバイスは、エレクトロスプレーインタフェースデバイスとして構成することができる。言い換えると、インタフェースデバイスは、作動位置にあるサンプルキャピラリの先端から流出するあらかじめ分離された流体サンプルをエミッタキャピラリの放出開口部に向かって与えるように、かつそのような流体サンプルを質量分析計によって更に処理されることになるエレクトロスプレーの形で移送するように構成することができる。
【0039】
一実施形態において、エミッタキャピラリの放出開口部は先細の端部を有することができる。それに加えて、又はその代わりに、サンプルキャピラリのうちの少なくとも1つは、流体サンプルの流出のための先細の端部を有することができる。一実施形態において、シース流体キャピラリは、シース流体の流出のための円筒形(すなわち、非先細の)端部を有することができる。有利には、サンプルキャピラリの端部及びエミッタキャピラリの端部は、極端に先細にすることができ、小さい端部径を有することができる。サンプルキャピラリ及びエミッタキャピラリは、例えば、シリカから形成されるキャピラリとすることができ、任意選択で、曲げを助長し、及び/又は摩擦を軽減するコーティング(例えば、ポリイミドからなるコーティング)を設けることができ、それにより、それぞれのキャピラリの機械的なロバスト性を高めることもできる。
【0040】
例えば、サンプルキャピラリは、30μm、より一般的には10μm~100μmの内径を有することができる。開口端におけるそれぞれのサンプルキャピラリの外径は、例えば、40μm~80μmの範囲内に、詳細には、50μm~70μmの範囲内にすることができる。
【0041】
端部を極端に先細にする結果として、局所的に高い電界強度を生成することができ、それにより、既に適度なシース流体供給量においてエレクトロスプレーを生成できるようになる場合があるので、エミッタキャピラリの著しく先細の端部が特に有利である。シース流体として、例えば、任意選択で酢酸を含む、水とエタノールとの混合物を使用することができる。シース流体は、記述的に言うと、エミッタキャピラリの放出開口部において安定して流れるようにする役割を果たし、流体の流れに望ましくない淀みが生じないようにすることができる。しかしながら、シース流体は分析されることになる流体サンプルを希釈もするので、適度な量において追加されるべきである。これを達成するために、エミッタキャピラリの先端を、30μm~50μmの範囲内の外径、例えば、40μmの外径を有するような寸法にすることができる。エミッタキャピラリは、その後に質量分析計に注入されるエレクトロスプレーが放出されるキャピラリを表すことができる。
【0042】
一実施形態において、インタフェースデバイスは、サンプルキャピラリが協調して動作するように、詳細には、流体サンプルを質量分析計に移送するためにサンプルキャピラリが交互に、又は同時に動作するように構成される。このようにして、質量分析計によって更に処理されることになる流体サンプルの量を増やすことができ、高い処理量を得ることができる。これにより、質量分析計を特に効率的に動作させることが可能である。
【0043】
一実施形態において、分析装置は、流体サンプルを分離する更なるサンプル分離デバイスを備え、サンプル分離デバイスはサンプルキャピラリのうちの1つに接続され、更なるサンプル分離デバイスはサンプルキャピラリのうちの別のサンプルキャピラリに接続される。
【0044】
一実施形態において、サンプル分離デバイス及び更なるサンプル分離デバイスはいずれも電気泳動サンプル分離デバイス(詳細には、キャピラリ電気泳動サンプル分離デバイス)である。代替的には、サンプル分離デバイス及び更なるサンプル分離デバイスはいずれもクロマトグラフィサンプル分離デバイス(詳細には、液体クロマトグラフィサンプル分離デバイス、更に詳細には、ナノ液体クロマトグラフィサンプル分離デバイス)である。更に別の実施形態では、サンプル分離デバイスは、電気泳動サンプル分離デバイス(詳細には、キャピラリ電気泳動サンプル分離デバイス)であり、更なるサンプル分離デバイスはクロマトグラフィサンプル分離デバイス(詳細には、液体クロマトグラフィサンプル分離デバイス、より詳細には、ナノ液体クロマトグラフィサンプル分離デバイス)である。キャピラリ電気泳動技術では、流出側における流体サンプルの流量は通常、100nl/min~500nl/minの範囲内に、例えば、200nl/minにすることができる。シース流体の流量は通常、1μl/min~5μl/minの範囲内にある。液体クロマトグラフィでは、その流量は著しく多くすることもできる。そのような異なる流量にもかかわらず、サンプルキャピラリのうちの1つに対応する液体クロマトグラフィと、サンプルキャピラリのうちの別のサンプルキャピラリによるキャピラリ電気泳動との組み合わせも可能であることがわかった。
【0045】
この状況では、エミッタキャピラリの後端、すなわち、その放出開口部の反対に位置するエミッタキャピラリの端部は開口することができ、エミッタキャピラリからの過剰な流体を単に常圧で排出できるようになる場合があるという利点もあり得る。詳細には、このようにして、現時点で使用されていないサンプルキャピラリを、エミッタキャピラリ内で放出開口部に対して後方において動かすことができる場合がある。現時点で解除されているサンプルキャピラリから流出する未確定の組成を有する流体サンプル又は流体が、その後、エミッタキャピラリの放出開口部に達することなく、エミッタキャピラリから流出することができる。それゆえ、サンプルキャピラリの選択的な前後運動によって、現時点で作動しており、それゆえ、前方に位置するサンプルキャピラリの端部から流出する所望の流体サンプルのみがエミッタキャピラリの放出開口部に向かって実際に流れるのを確実にすることができる。
【0046】
本発明の一例示的な実施形態によるインタフェースデバイスによれば、複数のサンプル分離手順(例えば、並列処理)を実行することができ、分離されたサンプルをその後に更に分析するために質量分析計の中に移送できる場合がある。このために、分析されることになるサンプルは、エミッタキャピラリの放出開口部に向かって前進したサンプルキャピラリから吐出することができる。エミッタキャピラリ内で使用されていない後退位置まで動かされた別のサンプルキャピラリは、その分離された流体サンプル又は移動相が現時点で質量分析計において分析されていないときであっても、流れに淀みを生じることなく運用することができる。現時点で使用されていないサンプルキャピラリから流出するそのような流体は、例えば、その大きい背面開口部を介してエミッタキャピラリから流出することができる。また、過剰なシース流体もこのようにしてエミッタキャピラリの背面開口部を介して流れ出ることができ、それにより、シース流体の厳密な計量を不要にする。
【0047】
上記の分析装置の実施形態はサンプル分離デバイスとともに動作することができ、それは、Agilent 1200 Series Rapid Resolution LC system又はAgilent 1150 HPLC series(いずれも出願人Agilent Technologies社によって提供される。www.agilent.comを参照されたい。いずれも引用することにより本明細書の一部をなすものとする)等の従来から市販されるHPLCシステムにおいて実現することができる。
【0048】
サンプル分離デバイスの1つの実施形態は、ポンプ作動チャンバ内の液体を液体の圧縮率が顕著になる高圧まで圧縮するために、ポンプ作動チャンバ内で往復運動するポンプピストンを有する流体ドライブユニットとしてのポンピング装置を備える。このポンピング装置は、溶媒特性を知る(作業者の入力、その計器の別のモジュールからの通知等による)か、又は別の方法で溶媒特性を導出するように構成することができる。
【0049】
サンプル分離デバイスの分離ユニットは、固定相を与えるクロマトグラフィカラム(例えば、http://en.wikipedia.org/wiki/Column_chromatographyを参照)を備えることが好ましい。カラムは、ガラス若しくは鋼管(例えば、50μm~5mmの直径と1cm~1mの長さとを有する)、又はマイクロ流体カラム(例えば、欧州特許第1577012号において開示されているもの、又は出願人Agilent Technologies社によって提供されるAgilent 1200 Series HPLC-Chip/MS System)とすることができる。個々の成分は、溶離液とともにカラムの中を異なる速度において伝搬しながら、固定相によって異なるように保持され、少なくとも部分的に互いに分離する。カラムの端部において、それらの成分は1つずつ溶離するか、又は少なくとも全く同時には溶離しない。全クロマトグラフィプロセス中に、溶離液も一連の画分内に収集することができる。カラムクロマトグラフィ内の固定相又は吸着剤は通常、固形物である。カラムクロマトグラフィのための最も一般的な固定相は、シリカゲル、表面修飾シリカゲルと、その後のアルミナである。これまでは、多くの場合にセルロース粉末が使用されてきた。また、イオン交換クロマトグラフィ、逆相クロマトグラフィ(RP:reversed-phase chromatography)、親和性クロマトグラフィ又は膨張層吸着(EBA:expanded bed adsorption)も可能である。固定相は通常、細かくすり潰された粉末又はゲルであり、及び/又は表面を大きくするために細孔性である。
【0050】
移動相(又は溶離液)は純粋な溶媒、又は異なる溶媒(水、及びACN(アセトニトリル)等の有機溶媒等)の混合物とすることができる。例えば、それは、対象とする化合物の保持を最小化し、及び/又はクロマトグラフィを実行する移動相の量を最小化するように選択することができる。また、移動相は、流体サンプルの異なる化合物又は画分を実効的に分離できるように選択することもできる。移動相は、多くの場合に水で希釈された、例えば、メタノール又はアセトニトリル等の有機溶媒を含むことができる。グラジエント動作の場合、水及び有機化合物が別々のボトルにおいて送達され、そこから、グラジエントポンプが、計画された混合物をシステムに送達する。他の一般的に使用される溶媒はイソプロパノール、THF、ヘキサン、エタノール及び/又はその任意の組み合わせ、又はこれらの溶媒と上記の溶媒との任意の組み合わせとすることができる。
【0051】
流体サンプルは、限定はしないが、任意のタイプの処理液、ジュース等の天然サンプル、血漿等の体液を含むことができるか、又は発酵ブロスから等の反応の結果物とすることができる。
【0052】
移動相において、流体ドライブユニットによって生成されるような圧力は、2MPa~200MPa(20bar~2000bar)、詳細には10MPa~150MPa(150bar~1500bar)、より詳細には、50MPa~120MPa(500bar~1200bar)の範囲とすることができる。
【0053】
サンプル分離デバイス、例えば、HPLCシステムは、流体サンプルの分離された化合物を検出する検出器、流体サンプルの分離された化合物を出力する分留ユニット、又はその任意の組み合わせを更に備えることができる。そのようなHPLCシステムの更なる詳細は、www.agilent.comにおいて、いずれも出願人Agilent Technologies社によって提供される、Agilent 1200 Series Rapid Resolution LC system又はAgilent 1150 HPLC seriesに関して開示され、それらは引用することにより本明細書の一部をなすものとする。
【0054】
本発明の実施形態は、1つ以上の適切なソフトウェアプログラムによって部分的に、又は完全に具現又はサポートすることができ、ソフトウェアプログラムは、任意の種類のデータキャリアに記憶することができるか、又は別の方法によって与えることができ、任意の適切なデータ処理ユニットにおいて、又はそのようなデータ処理ユニットによって実行することができる。ソフトウェアプログラム又はルーチンは、制御ユニットにおいて、又は制御ユニットによって適用できることが好ましい。
【0055】
本発明の実施形態の他の目的、及び付随する利点の多くが、添付の図面との関連において、実施形態の以下のより詳細な説明を参照することにより、容易に認識され、より深く理解されることになる。実質的に、又は機能的に同じか、又は類似の特徴は、同じ参照符号によって参照される。
【図面の簡単な説明】
【0056】
図1】本発明の例示的な実施形態による、分析装置を示す図である。
図2】第1の動作モードにおける本発明の例示的な実施形態によるインタフェースデバイスの断面図である。
図3】第2の動作モードにおける図2によるインタフェースデバイスを示す図である。
図4図2及び図3によるインタフェースデバイスを用いて、キャピラリ電気泳動分析と、後続の質量分析法とによって取得することができる電気泳動図である。
図5図2及び図3によるインタフェースデバイスを用いて、キャピラリ電気泳動分析と、後続の質量分析法とによって取得することができる電気泳動図である。
図6図2及び図3によるインタフェースデバイスを用いて、キャピラリ電気泳動分析と、後続の質量分析法とによって取得することができる電気泳動図である。
図7】エミッタキャピラリにシース流体を供給する側方シース流体供給管を備える、本発明の別の例示的な実施形態によるインタフェースデバイスを示す図である。
図8】本発明の例示的な実施形態による、インタフェースデバイスの一部の3次元断面図である。
図9図8のインタフェースデバイスのエミッタキャピラリを示す図である。
図10図8及び図9によるインタフェースデバイスの3次元図である。
【発明を実施するための形態】
【0057】
図面における例示は概略的なものである。
【0058】
図を更に詳細に説明する前に、例示的な実施形態が展開された際に基礎となった、本発明のいくつかの基本的な検討事項が要約される。
【0059】
本発明の例示的な実施形態によれば、エレクトロスプレー-質量分析計(ESI-MS)インタフェースを形成するインタフェースデバイスが提供される。この状況では、ESI(エレクトロスプレー)は、流体サンプルをイオン化し、その後、検出のためにサンプルイオンを質量分析計(MS)に導入する方法に関連する。イオン化のために、サンプルを供給する噴射ノズルと、MSのオリフィス入口との間に高電圧(例えば、1.5kV~5kVの範囲内にある)を印加することができる。ノズルとオリフィスとの間の電界に起因して、液体がテイラーコーン(Taylor cone)を形成することができ、テイラーコーンの先端において、帯電した液滴を放出し、MSオリフィスに向かって加速させることができる。液滴内の溶媒が気化することに起因して、液滴内部の電荷がより高密度になることができる。液滴内の電荷密度がレイリー限界(Rayleigh limit)に達すると、液滴が爆発して単一電荷の被分析物イオンになり、MS内部で検出することができる。
【0060】
上記で言及されたESI-MSインタフェースは、典型的なLC-ESI-MSインタフェース、すなわち、液体クロマトグラフィ(LC)サンプル分離デバイスと質量分析計との間のエレクトロスプレー生成インタフェースを示す。
【0061】
キャピラリ電気泳動(CE)が流体サンプルを分離する分離技法として使用されることになる場合には、CEがその端部においてCEキャピラリの電気接地を伴う場合があることから、MSへのESIインタフェースはより複雑になる場合がある。また、CE内の流量(例えば、50nl/min~250nl/minの範囲内にある)は、ESIに適している流量よりはるかに少ない可能性がある。流量のこの障壁を橋渡しするために、付加的なシース流体(詳細にはシース液)を供給して、CEキャピラリへの接地を形成することができ、流量及びESIスプレー条件(詳細には、pH値又は有機化合物特性に関する)を適合させることもできる。
【0062】
次に、ナノCE-ESIインタフェースが説明される。上記で言及されたように、CE内の通常の流量は、CEキャピラリの一般に小さい内径(例えば、25μm~50μmの範囲内)に起因して、50nl/min~250nl/minの範囲内にある。したがって、流量をESIに関する通常の流量(例えば、4μl/min~10μl/minの範囲内)に適合させるために、シース流が好都合な場合がある。そのようなシース流体(詳細にはシース液)の利点は、適切なエレクトロスプレーを得るために、サンプルのpH値及び有機化合物含有量を調整することができるか、更には最適化できることである。適切なエレクトロスプレーのための流量は、エレクトロスプレーの噴射ノズルを先細りにする、詳細には30μm~80μmの範囲内の直径まで縮径することによって減少させることができる。例えば、50μmノズルの場合のESI流量は約300nl/minとすることができる。
【0063】
本発明の例示的な実施形態によれば、一方にある、1つ以上のサンブル分離デバイスと、他方にある、単一の質量分析計との間の流体インタフェースを構成することができるインタフェースデバイスを提供することができ、流体サンプルの移送は、インタフェースデバイスの単一エミッタキャピラリ内にある複数のサンプルキャピラリによって成し遂げることができる。詳細には、そのようなインタフェースデバイスは、マルチサンプルキャピラリナノCE-ESI-MSインタフェースとして構成することができる。
【0064】
有利には、例示的な実施形態は、質量分析計機器をより効率的に使用し、より高い処理量を得るために、エミッタキャピラリ内部でサンプルキャピラリを動かす(詳細には、質量分析計内部の望ましくないバックグラウンド及び塩を除去する)手法と、1つのエミッタキャピラリ内部でシリアル注入を実施する更なる手法とを組み合わせることができる。これは、単一のエミッタキャピラリ内に複数のサンプルキャピラリを配置し、複数の分離を並列に実行することによって達成することができる。
【0065】
以下の例は、2つのキャピラリ電気泳動サンプルキャピラリが共通のエミッタキャピラリ内で並列に、そして少なくとも部分的に動作する実施形態に関連する。両方のキャピラリ電気泳動サンプルキャピラリ上で、分離が進行している場合があり、高電圧が印加される場合がある。2つのサンプルキャピラリの接地はシース液キャピラリを介して行うことができ、シース液にわたる電圧降下がごく僅かである(negligible)ように、シース液キャピラリはサンプルキャピラリに比べて著しく高い導電率を有することが好ましい場合がある。また、シース流量は、キャピラリ電気泳動法によって分離されるサンプルキャピラリを通る流体サンプルの流量に比べて著しく多くすることもでき、それにより、サンプルキャピラリのうちの第2のサンプルキャピラリから溶離される流体サンプルをエミッタキャピラリから噴出できるようになっている。エレクトロスプレー流に起因して、エミッタキャピラリ先端から流体サンプルを取り出すことができ、イオン化できるように、サンプルキャピラリのうちの第1のサンプルキャピラリをエミッタキャピラリ先端に向かって動かすことができる。したがって、第1のサンプルキャピラリ及び第2のサンプルキャピラリは、時間をシフトしながらキャピラリ電気泳動サンプル分離を実行することができ、それにより、サンプルがキャピラリ端に達すると、第2のサンプルキャピラリをエミッタキャピラリのエミッタ先端に動かすことができるようになっている。
【0066】
1つのインタフェースデバイス(ESI-MSインタフェース等)上で並列に複数の(例えば、キャピラリ電気泳動)分離を伴うそのような実施形態は、流体サンプルの効率及び処理量を高める。対象とするそれぞれのサンプルキャピラリ(すなわち、現時点で作動しているサンプルキャピラリ)は、全てのサンプルキャピラリを収容するエミッタキャピラリのエミッタ先端又は放出開口部に(例えば、リニアアクチュエータによって)動かすことができる。全ての他のサンプルキャピラリは、「オフ」位置に、すなわち解除状態(deactivation state)にすることができる。
【0067】
有利には、全てのサンプル分離キャピラリを並列に動作させるのに、1つの高電圧(例えば、±30kVの高電圧を与える)電源だけで十分な場合がある。各サンプル分離キャピラリは自らの高電圧スイッチを有することができ、それにより、注入又はサンプルキャピラリ分離中に、高電圧をオフに切り替えることができる。
【0068】
更なる利点として、サンプルキャピラリ交換をユーザにとって簡単にすることができ、事前の位置合わせは不要である。全ての他のサンプルキャピラリは、スイッチオフ位置に、すなわち解除状態に動かすことができる。ユーザは、機械的係止部に達するまでそれぞれのサンプルキャピラリを挿入し、その後、サンプルキャピラリをリニアアクチュエータ又は他の適切なドライブユニットにクランプ固定すれば十分な場合がある。リニアアクチュエータ(又は他の適切なドライブユニット)が、選択されたサンプルキャピラリを動かし、目標位置(すなわち、オン若しくはオフ位置、又は言い換えると、作動若しくは解除状態)に戻すことができる。
【0069】
それゆえ、本発明の例示的な実施形態によれば、特に、マルチサンプラが2つの注入ポートを、それゆえ、2つの並列に動作するキャピラリ電気泳動分離をサポートするときに、高性能の分析装置を実現することができる。
【0070】
図1は、本発明の例示的な実施形態による、分析装置130を示す。
【0071】
例示される分析装置130は、2つのサンプル分離デバイス10、10’を備え、各々が、それぞれの流体サンプルをそれぞれの画分に分離するように構成される。例えば、2つのサンプル分離デバイス10、10’は2つのキャピラリ電気泳動サンプル分離デバイス、2つの液体クロマトグラフィサンプル分離デバイス、又は、1つのキャピラリ電気泳動サンプル分離デバイス及び1つの液体クロマトグラフィサンプル分離デバイスである。
【0072】
さらに、分析装置130は、サンプル分離デバイス10、10’によって分離された流体サンプルを質量分析法に従って分析する単一の共通の共用質量分析計102を備える。
【0073】
分析装置130のインタフェースデバイス100は、流体サンプルをそれぞれのサンプル分離デバイス10又は10’から質量分析計102に移送する役割を果たす。言い換えると、インタフェースデバイス100は、分離された液体サンプルを与えるサンプル分離デバイス10、10’のそれぞれのサンプル分離デバイスのそれぞれの出口と、更なる分析のためにエレクトロスプレー143を必要とする質量分析計102との間の流体インタフェースとして機能する。図1の詳細図141に示されるように、インタフェースデバイス100は、エミッタキャピラリ104と、エミッタキャピラリ104内に部分的に、又は完全に、移動可能に配置される2つのサンプルキャピラリ106とを備える。サンプルキャピラリ106のうちの一方のサンプルキャピラリの入口は、サンプル分離デバイス10の出口に流体結合することができ、サンプル分離デバイス10によって先行して分離された流体サンプルを供給される。サンプルキャピラリ106のうちの他方のサンプルキャピラリの入口は、他方のサンプル分離デバイス10’の出口に流体結合され、他方のサンプル分離デバイス10’から、分離された流体サンプルを供給される。
【0074】
代替的には、いずれのサンプルキャピラリ106も、同じサンプル分離デバイス10に結合することができる。
【0075】
図1を再び参照すると、サンプルキャピラリ106の各々は、それぞれの流体サンプルを、サンプル分離デバイス10、10’のうちのそれぞれ結合されたサンプル分離デバイスから質量分析計102まで移送する役割を果たす。エミッタキャピラリ104の放出先端110において、エレクトロスプレーを生成する技術分野の当業者によって知られているようにして、個々に分離された流体サンプルに基づいて、イオンエレクトロスプレー143が生成される。エレクトロスプレー143は、質量分析法の技術分野の当業者によって知られているようにして、質量分析計102において更に処理される。安定したエレクトロスプレー143の生成は、同じくエミッタキャピラリ104内に少なくとも部分的に位置するシース流体キャピラリ112によって助長される。シース流体キャピラリ112は、シース流体キャピラリ112の出口先端117において、シース流体(詳細にはシース液)をエミッタキャピラリ100の内部114に追加することができる。より一般的には、インタフェースデバイス100は、シース流体キャピラリ112を含み、シース流体キャピラリ112によってシース流体をエミッタキャピラリ104に供給するように構成されるシース流体供給ユニット161を備える。シース流体はそれぞれの流体サンプルと混合することができ、十分に高い流量を確保し、放出先端110における淀みのない流れに寄与する。
【0076】
高電圧源120によって、例えば、3kVの高電圧をサンプルキャピラリ106に印加することができる。好ましくは、全てのサンプルキャピラリ106に対して共通に、単一の共用高電圧源120を設けることができる。例えば、サンプルキャピラリ106の各々は、個別の、又は1つの共通の高周波スイッチ122と結合することができ、そのスイッチは、それぞれのサンプルキャピラリ106を高電圧源120に選択的に結合するように、又はそれぞれのサンプルキャピラリ106を高電圧源120から選択的に切り離すように構成することができる。
【0077】
インタフェースデバイス100は、複数のサンプルキャピラリ106の協調した動作に従って動作することができる。より具体的には、インタフェースデバイス100は、流体サンプルを質量分析計102に移送するために、複数のサンプルキャピラリ106を交互に、又は同時に動作させる役割を果たす。
【0078】
本発明の例示的な実施形態は、複数の異なるサンプル分離デバイス10、10’からの流体サンプルが複数のサンプルキャピラリ106を介してエミッタキャピラリ104の内部114に結合されるときであっても、インタフェースデバイス100の上記の構成に起因して、エレクトロスプレー143の流れが中断される必要がないという特有の利点を有する。
【0079】
図1は、2つの異なるサンプル分離デバイス10、10’から流出するあらかじめ分離された流体サンプルを、インタフェースデバイス100にいかに供給できるかを示す。インタフェースデバイス100において、制御ユニット70によって、それぞれ作動しているサンプルキャピラリ106に高電圧が印加され、制御ユニットは、高電圧源120及びスイッチ122も制御する。図1に示されるように、制御ユニット70は、分析装置130の他の構成要素も制御する。スイッチ122の対応するスイッチ位置において、高電圧源120によって高電圧を供給することができる。サンプルキャピラリ106の各々は、エミッタキャピラリ104の内部114において図1の水平方向に沿って長手方向に前後に動かすことができる。正面に向かって作動位置まで動かされたサンプルキャピラリ106のうちの1つ(図1によれば、2つのサンプルキャピラリ106のうちの下側)が、そのサンプル出口先端108、より厳密には放出開口部又は放出先端110に直に隣接して、エミッタキャピラリ104の内腔又は内部114の中にサンプルを吐出することができる。
【0080】
長手方向に見て、一方で作動位置にあるサンプルキャピラリ100の出口先端108と、他方で解除位置にある他方のサンプルキャピラリ106の出口先端108との間に位置する出口先端117を有するシース流体キャピラリ112によって、シース流体(例えば、水及び有機溶媒の混合物)を与えることができ、作動しているサンプルキャピラリ106から流出する流体サンプルと混合することができる。放出開口部又は放出先端110における流体サンプル及びシース流体の混合物の流量は、質量分析計102に向かって安定し、連続した流れを可能にするために適切に設定することができる。過剰なシース流体は、後側において開口しているエミッタキャピラリ104から、排出開口部163において、後側を通して流出することができる(図2及び図3を対照されたい)。任意選択で、現時点で解除位置にあるサンプルキャピラリ106から流出する流体(例えば、未確定の組成を有する流体)が、上記で言及された過剰なシース流体とともに、エミッタキャピラリ104の開口した後側を通って流出することができる。有利には、過剰なシース流体又は未確定の流体と、更に分析されることになり、それゆえ、エレクトロスプレー143に変換される流体サンプルとの一切の望ましくない相互作用を、それにより簡単に防ぐことができる。エミッタキャピラリ104の排出開口部163に起因して、インタフェースデバイス100は、常圧で、かつシース流体の量を厳密に計量する必要なく、動作することができる。
【0081】
詳細図141において両方向矢印によって示されるように、サンプルキャピラリ106の各々は、放出先端110に向かって前方に、又は放出先端141から離れるように後方に個々に動かすことができる。図示される実施形態において、シース流体キャピラリ112は、エミッタキャピラリ104の内部114において定位置に静止したままである。
【0082】
生成されたエレクトロスプレー143は、質量分析計102において更に処理又は分析することができる。
【0083】
図2は、第1の動作モードにおける本発明の例示的な実施形態によるインタフェースデバイス100を示す。図3は、第2の動作モードにおける図2によるインタフェースデバイス100を示す。
【0084】
サンプルキャピラリ106の各々は、作動位置と解除位置との間で長手方向に移動可能であるように構成される。作動位置において(図2による上側のサンプルキャピラリ106を対照されたい)、それぞれの作動しているサンプルキャピラリ106のサンプル出口開口部又は出口先端108が、エミッタキャピラリ104の放出開口部又は放出先端110に直接位置する。解除位置において(図2による下側のサンプルキャピラリ106を対照されたい)、それぞれのサンプルキャピラリ106のサンプル出口開口部又は出口先端108は、作動位置と比べるときに、エミッタキャピラリ104の排出開口部163に関連する後端に向かって後退する。
【0085】
シース流体キャピラリ112の外壁は、サンプルキャピラリ106の外壁より高い導電率を有することが好ましい。サンプルキャピラリ106及びシース流体キャピラリ112は有利には、キャピラリ電気泳動分離に寄与するように構成されるときに、シース流体キャピラリ112を通るシース流体の流量がサンプルキャピラリ106のうちのそれぞれを通る流体サンプルの流量より多くなるように構成することができる。図2及び図3に示されるように、サンプルキャピラリ106及びシース流体キャピラリ112は、エミッタキャピラリ104の内部114において、互いに並列に延在するように位置合わせすることができるか、又は向きを合わせることができる。
【0086】
エミッタキャピラリ104及びサンプルキャピラリ106並びにシース流体キャピラリ112は、それぞれのサンプルキャピラリ106のサンプル出口開口部108をエミッタキャピラリ104の放出先端110まで動かすと、流体サンプルがサンプルキャピラリ106から流出し、シース流体がシース流体キャピラリ112から流出し、これらの流体が結合又は混合し、イオン化し、それによりエレクトロスプレー143を形成するように相互作用することができる。
【0087】
この状況では、サンプルキャピラリ106及びシース流体キャピラリ112は、サンプルキャピラリ106のうちのそれぞれがエミッタキャピラリ104の放出開口部110に自らのサンプル出口開口部108を有するときに、サンプルキャピラリ106のうちの別のサンプルキャピラリのサンプル出口開口部108が同時に放出開口部110に対して後退するように、制御ユニット70(図1に示す)による制御によって協調して動くことができる。シース流体キャピラリ112の出口先端117は、それにより、それぞれ作動しているサンプルキャピラリ106の出口先端108に対して後退し、それぞれ解除されているサンプルキャピラリ106の出口先端108に対して前方に変位する。
【0088】
例えば、エミッタキャピラリ104の内径Dは1.5mm未満にすることができる。サンプルキャピラリ106の各々及びシース流体キャピラリ112の外径dは、400μm未満にすることができる。
【0089】
動作中に、インタフェースデバイス100は、1つ又は複数のサンプル分離デバイス10、10’から質量分析計102まで流体サンプルを移送する役割を果たす。この状況では、複数のサンプルキャピラリ106のうちの現時点で作動しているサンプルキャピラリは、作動しているサンプルキャピラリ106のサンプル出口開口部108が放出開口部110に位置するか、又は近接して位置するように、エミッタキャピラリ104内でエミッタキャピラリ104の放出開口部110に向かって動かされる。作動しているサンプルキャピラリ106によって、流体サンプルをサンプル分離デバイス10又は10’から質量分析計102の中に移送することができ、その間、付随するシース流体キャピラリ112が、流れを安定させるシース流体を、エレクトロスプレー143に変換されることになる流体サンプルに追加することができる。
【0090】
現時点で作動しているサンプルキャピラリ106によって流体サンプルを移送した後に、このサンプルキャピラリ106は、そのサンプル出口開口部108が放出開口部110から離反するように動かすことができる。さらに、流体サンプルを質量分析計102の中に移送した後に、作動することになるこのサンプルキャピラリ106のサンプル出口開口部108が放出開口部110に位置するか、又は近接して位置するように、エミッタキャピラリ104の放出開口部110に向かって、以前に、又は現時点で解除されているが、これから作動することになるサンプルキャピラリ108の運動を実行することができる。その後、更なる流体サンプルを割り当てられ、接続されるサンプル分離デバイス10、10’から質量分析計102まで移送するために、以前に解除されているが、これから作動するサンプルキャピラリ106を使用することができる。これから作動するサンプルキャピラリ106によって、この更なる流体サンプルをサンプル分離デバイス10、10’から質量分析計102の中に供給することができる。同時に、付随するシース流体キャピラリ112が、流れを安定させる更なるシース流体を、エレクトロスプレー143に変換されることになる更なる流体サンプルに追加することができる。
【0091】
図2及び図3は、サンプルキャピラリ106をエミッタキャピラリ104に対して単に長手方向に個別に協調して変位させることによって、個々のサンプルキャピラリ106を作動位置と解除位置との間で変換又は移行できることを示す。この措置を講じることによって、インタフェースデバイス100は、流体サンプルを概ね連続して(すなわち、一切の実質的なデッドタイムを生じることなく)処理することができ、質量分析計102において更に処理するために流体サンプルを適切に調整することができる。
【0092】
図2及び図3によれば、エミッタキャピラリ104及びサンプルキャピラリ106の出口先端108、110は円錐形に先細りにされ、非常に細い。エミッタキャピラリ104において、これは結果として、放出開口部110において特に高い電界強度を生成し、それゆえ、エレクトロスプレー143を効率的に生成する。また、サンプルキャピラリ106の鋭い、又は尖った開口部も、エレクトロスプレー143のこの効率的な生成に寄与する。しかしながら、シース流体キャピラリ112は、円筒形の形状を有することができ、すなわち、前側において先細りの先端を用いることなく設けることができる。
【0093】
図4図6は、図2及び図3によるインタフェースデバイス100を用いて、キャピラリ電気泳動分析と、後続の質量分析法とによって取得することができる電気泳動図200、210、220を示す。電気泳動図200、210、220の横座標202に沿って時間がプロットされ、一方、縦座標204に沿って信号がプロットされる。
【0094】
図4及び図5は、サンプルキャピラリ106のうちの1つのみを介してサンプル分離デバイス10をインタフェースデバイス100に接続するときに取得することができる電気泳動図200、210を示す。図6は、更なる処理のために接続される質量分析計102に向かって、最初にサンプルキャピラリ106のうちの一方から流体サンプルを移送し、その後他方のサンプルキャピラリ106から更なる流体サンプルを移送するために、サンプルキャピラリ106の作動状態及び解除状態を時間的に交互に入れ替えることによって、単一のインタフェースデバイス100を用いてサンプル分離デバイス10を動作させることができることを示す。これにより、対応する範囲191は、サンプル分離デバイス10から流出する流体サンプルがインタフェースデバイス100のサンプルキャピラリ106のうちの一方を介して質量分析計102の中に移送される動作状態に対応する。範囲193は、流体サンプルが他方のサンプルキャピラリ106を介してサンプル分離デバイス10から流出する、別のその後の時間間隔に対応する。参照符号195は、サンプルキャピラリ変更又はサンプルキャピラリ切替状態に対応する時間間隔を示す。
【0095】
図7は、エミッタキャピラリ104にシース流体を供給する側方供給管151を備える、本発明の別の例示的な実施形態によるインタフェースデバイス100を示す。図7に示されるように、そして図1図3の上記で説明された実施形態の代替形態として、エミッタキャピラリ104内に別のシース流体キャピラリ112を設けることを不要にすることができる。これとは対照的に、図7は、エミッタキャピラリ104に側方からつながり、エミッタキャピラリ104の内部114にシース流体を供給する側方供給管151を設ける。
【0096】
図8は、本発明の例示的な実施形態による、インタフェースデバイス100の3次元断面図を示し、図9は部分図を示し、図10は3次元図を示す。
【0097】
インタフェースデバイス100内にドライブユニット124を実装することができ、サンプルキャピラリ106のうちの異なるサンプルキャピラリを同時に、又は順次に反対方向に動かすように構成することができる(そして所望により、シース流体キャピラリ112も動かすことができるが、それは任意選択であり、又はシース流体キャピラリ112はエミッタキャピラリ104に対して静止位置に保持することができる)。例えば、ドライブユニット124は、リニアアクチュエータとして構成することができる。
【0098】
さらに、インタフェースデバイス100は、締結ユニット126を備えることができ、締結ユニットは、サンプルキャピラリ106及びシース流体キャピラリ112をクランプ固定タイプで締結するか、又は組み付けるように構成することができる。
【0099】
図8図10は、本発明の例示的な実施形態による、インタフェースデバイス100のコンパクトで、ロバストな構成を実証する。図示される実施形態において、内部にサンプルキャピラリ106及びシース流体キャピラリ112を備えるエミッタキャピラリ104をハウジング194の内部に収容し、保護することができる。締結ユニット126によって、単なるクランプ固定作業によって、間違って組み付ける危険を伴うことなく、ユーザがサンプルキャピラリ106及びシース流体キャピラリ112を組み付けるか、又は構成できるようになる。それに応じて取り付けられるサンプルキャピラリ106は、ドライブユニット124によって前方及び後方に簡単に動かすことができる。ドライブユニット124は、ステップモータとして構成されるリニアドライブとすることができる。代替的には、エミッタキャピラリ104内でサンプルキャピラリ106をユーザが手動で動かすこともできる。そのような実施形態では、サンプルキャピラリ106の望ましくない過剰な前方又は後方への動きを機械的に不可能にすることができる1つ以上のストッパユニットを設けることができる。この措置を講じることによって、インタフェースデバイス100は、手動操作に関しても、安全に損傷を防ぐことができる。
【0100】
図10を参照すると、エミッタキャピラリ104の内部114におけるサンプルキャピラリ106の動きは、例えば、リニアステップモータを用いて直線的にスライドさせることによって実行することができる。代替的には、サンプルキャピラリ106の変位はユーザが手動で実行することができる。この構成では、サンプルキャピラリ104が前方又は後方に過剰に変位できないようにするストッパユニット(図10には示されない)をインタフェースデバイス100に設けることが有利である可能性がある。このようにして、インタフェースデバイス100の動作の安全性を改善することができる。
【0101】
記述的に言うと、図8図10は、キャピラリ電気泳動法のために構成される2つの並列なサンプルキャピラリ106を備える「マルチキャピラリナノCE-ESI-MS」の構成を示す。エミッタ針又はエミッタキャピラリ104はアダプタ(例えば、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)から形成することができる)に挿入することができ、アダプタは、エミッタキャピラリ104の内部でキャピラリ106、112を一か所に集める管(例えば、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)から形成することができる)を保持することもできる。例えば、エミッタ寸法は、内径1.2mm及び外径1.6mmとすることができ、エミッタキャピラリ104の先端径は、例えば、50μmとすることができる。サンプルキャピラリ106は、360μmの外径及び25μmの内径を有することができる。シースキャピラリ112は、360μmの外径及び100μmの内径を有することができる。サンプルキャピラリ106の端部は、70μmの外径及び12度の円錐角を有する先端まで先細にすることができる。したがって、キャピラリ106、112はエミッタキャピラリ104の内部に容易に収めることができる。
【0102】
「備える/含む」という用語は、他の要素又はステップを排除するものではなく、「一("a" or "an")」は、複数を排除するものではないことに留意すべきである。また、種々の実施形態に関連した説明した要素は、組み合わせることができる。特許請求の範囲における参照符号は、特許請求の範囲の適用範囲を限定するものと解釈されるべきでないことにも留意すべきである。
【符号の説明】
【0103】
100 インタフェースデバイス
104 エミッタキャピラリ
106 サンプルキャピラリ
108 出口先端
110 放出先端
112 シース流体キャピラリ
114 内部
117 出口先端
163 排出開口部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10