(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】絶縁油を再利用する方法
(51)【国際特許分類】
H01F 27/14 20060101AFI20240305BHJP
H01F 41/00 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
H01F27/14 C
H01F41/00 Z
(21)【出願番号】P 2020014261
(22)【出願日】2020-01-31
【審査請求日】2023-01-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000116666
【氏名又は名称】愛知電機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】横地 智宏
(72)【発明者】
【氏名】加藤 雅彦
【審査官】久保田 昌晴
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-022692(JP,A)
【文献】特開2005-197461(JP,A)
【文献】特開昭62-237712(JP,A)
【文献】特開昭51-056000(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0278096(US,A1)
【文献】中国実用新案第203338910(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 27/14、41/00
H01B 3/20-3/24
C10M 175/00-175/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設の油入電気機器のタンクに収容された絶縁油を、前記タンクから前記絶縁油を真空ポンプによって減圧された送油配管によって油処理タンクに移送する工程、
前記油処理タンク内の送油配管の先端に取り付けられたノズルから絶縁油を噴霧して
水分および分解ガスを除去する除去工程、
真空ポンプにより油処理タンク内を減圧することで前記絶縁油に含まれる
水分および分解ガスをさらに除去する脱気工程と、脱気工程終了後、前記絶縁油と補充のための新しい絶縁油を送油ポンプで送油して
、前記絶縁油に含まれる固形分を除去するフィルタでろ過した後、
前記油入電気機器のタンクに注油する浄油工程を有することで絶縁油を再利用する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変圧器などの油入電気機器に使用された絶縁油を再利用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から電力用油入変圧器などの油入電気機器をオーバーホールする場合には、絶縁油を電気機器から一度抜き取り、電気機器の保守点検を行った後、電気機器から抜き取った絶縁油を浄化して再度電気機器に戻している。(下記特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
然るに、上記特許文献1記載の装置は、絶縁油を集油タンク12と浄化塔16間を循環させて浄化させるため、沈降しやすい金属粉、スラッジなどが集油タンク12の底部に貯まるため完全に取り除くことができない。また、油抜き、油戻しで接続配管10を共用するため、油抜き時に金属粉、スラッジが付着する可能性がある。このため、浄化処理した集油タンク12内の絶縁油をオーバーホールした電気機器に再度戻す際に、接続配管10に付着したスラッジなどや集油タンク12の底部に貯まったスラッジなどが混入する可能性がある。
【0005】
本発明は、前述の問題点を解決できるものであり、絶縁油中のスラッジなどを確実に浄化できる方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、既設の油入電気機器のタンクに収容された絶縁油を、前記タンクから前記絶縁油を真空ポンプによって減圧された送油配管によって油処理タンクに移送する工程、前記油処理タンク内の送油配管の先端に取り付けられたノズルから絶縁油を噴霧して水分および分解ガスを除去する除去工程、真空ポンプにより油処理タンク内を減圧することで前記絶縁油に含まれる水分および分解ガスをさらに除去する脱気工程と、脱気工程終了後、前記絶縁油と補充のための新しい絶縁油を送油ポンプで送油して、前記絶縁油に含まれる固形分を除去するフィルタでろ過した後、前記油入電気機器のタンクに注油する浄油工程を有することを特徴とする絶縁油を再処理方法。
【発明の効果】
【0007】
請求項1記載の発明によれば、脱気工程で水分及び分解ガスなどを除去した後、送油ポンプでカーボン、スラッジなどの固形分をフィルタでろ過処理した絶縁油を電気機器に注油することで、金属粉、カーボン、スラッジなどの固形分の混入を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施例に係る絶縁油の再処理工程の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施例について
図1を用いて説明する。
図1は本発明の実施形態に関わる絶縁油の再処理工程の構成を示している。
図1において、Aは変圧器などの油入電気機器であり、1は油入電気機器Aのケース、ケース1内にコイル、鉄心などから成る電気機器本体と絶縁油が収納されている。
【0010】
油入電気機器Aをオーバーホールする場合には、ケース1内に送油配管2を入れ、バルブ3を開き、真空ポンプ4を駆動させて油処理タンク5内を減圧しながら、送油配管2と接続されたバルブ6を開くことでケース1内の絶縁油を油処理タンク5に移送する。その際、油処理タンク5内の送油配管2先端部(絶縁油吐出部)に取り付けられたノズル7から絶縁油をシャワー状または霧状に噴出することにより、絶縁油に含まれる水分及び分解ガスが除去される。絶縁油の移送が終了した後、ケース1とコイル、鉄心などから成る電気機器本体のオーバーホールを行う。
【0011】
ケース1内の絶縁油が油処理タンク5に移送された後、バルブ6を閉めて真空ポンプ4で油処理タンク5内の所定の圧力まで減圧させたら、所定の時間、油処理タンク5内を真空ポンプ4で減圧し続けることで、油処理タンク5内の前記絶縁油に含まれる水分及び分解ガスなどが前記絶縁油からさらに除去される。油処理タンク5に取り付けられた圧力計8により、油処理タンク5内の圧力を計測できる。
【0012】
前記絶縁油からの水分及び分解ガスなどの除去が終了した後、オーバーホールが終了した油入電気機器Aに前記絶縁油を注油する際には、バルブ9を開き、油処理タンク5内を大気圧に戻した後、三方弁10の油処理タンク5からフィルタ11への流路を開放して、バルブ12、バルブ13を開き、送油ポンプ14を駆動することで、油処理タンク5内の絶縁油がフィルタ11でろ過され、カーボンやスラッジなどの固形分が除去される。
【0013】
続いて、フィルタ11で固形分が除去された絶縁油は、注油配管15を通ってケース1内に注がれる。なお、油処理タンク5への絶縁油抜き取り工程での鉄心などから成る電気機器本体、油処理タンク5、各配管などへの付着により、ケース1へ注油する定量よりもろ過された絶縁油は少なくなるので、三方弁10の新油タンク16からフィルタ11への流路を開放して、送油ポンプ14を駆動して新油タンク16内の新品の絶縁油をフィルタ11でろ過して注油することで不足分を補充する。
【0014】
以上に説明したように、水分及び分解ガスなどを除去した絶縁油をフィルタでろ過してカーボン、スラッジなどの固定分を除去し、直接、オーバーホールした油入電気機器のケース1に注油することで、前記絶縁油の再処理工程でカーボン、スラッジなどの固定分が混入することを防ぐことができる。
【0015】
さらに、油処理タンク5にヒータなどの加熱装置を備え、油処理タンク5内の前記絶縁油を所定の温度まで加熱しながら、真空ポンプ4で油処理タンク5内を減圧させることで、季節に左右されることなく効率良く前記絶縁油に含まれる水分及び分解ガスなどを除去することができる。
【産業上の利用可能性】
【0016】
変圧器などの油入電気機器に使用された絶縁油を再利用すること適応できる。
【符号の説明】
【0017】
1 ケース
2 送油配管
3、6、9、12、13 バルブ
4 真空ポンプ
5 油処理タンク
7 ノズル
8 圧力計
10 三方弁
11 フィルタ
14 送油ポンプ
15 注油配管
16 新油タンク
A 油入電気機器