(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】手動用ダイヤフラムバルブ
(51)【国際特許分類】
F16K 35/00 20060101AFI20240305BHJP
F16K 7/16 20060101ALI20240305BHJP
F16K 31/60 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
F16K35/00 A
F16K7/16 Z
F16K31/60 B
(21)【出願番号】P 2020020872
(22)【出願日】2020-02-10
【審査請求日】2023-02-02
(73)【特許権者】
【識別番号】501417929
【氏名又は名称】株式会社キッツエスシーティー
(74)【代理人】
【識別番号】100081293
【氏名又は名称】小林 哲男
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 久修
【審査官】大内 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-079875(JP,A)
【文献】中国実用新案第208565776(CN,U)
【文献】国際公開第2019/026417(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0131607(US,A1)
【文献】特開2000-291824(JP,A)
【文献】米国特許第04953586(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 7/16
F16K 31/44-31/62
F16K 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バルブ本体は、ボデー内部に装着されたダイヤフラムよりなる弁体と、前記ボデーに昇降動可能に螺着されて前記弁体を前記ボデー内部に装着された弁座に接離させるスピンドルとを備え、前記バルブ本体の上方には、前記スピンドルを手動で回転操作するハンドルが取付けられ
てこのハンドルの底面と前記バルブ本体の上面側とが対向状態に装着され、前記ハンドル底面に設けられたピンが、前記バルブ本体上面側に形成された略円弧状の溝部に係合されて前記ハンドルの開閉時の回転領域が設定されると共に、前記溝部の内方の一端に設けられた弁閉側端面と、前記溝部の外方の他端に直線状に形成された進退領域を有し、かつ、前記溝部と連通した連通孔と、この連通孔の内周面に設けた雌ねじと、前記連通孔の外端より挿入され先端に当接部を有する雄ねじである止めねじと、を備え、この止めねじを前記連通孔内の進退領域で直線状に進退自在に螺合して微調整させ、前記ピンが全閉位置で前記弁閉側端面に当接し、かつ、前記ピンが全開位置で前記当接部に当接可能に調整した状態で前記止めねじで固定することにより前記バルブ本体の個体差を解消するようにしたことを特徴とする手動用ダイヤフラムバルブ。
【請求項2】
前記連通孔に前記雌ねじを備えたインサートナットが装着された請求項1に記載の手動用ダイヤフラムバルブ。
【請求項3】
前記ハンドルの弁閉状態から弁開状態までの回転角度は、略90°、又は0°よりも大きく360°よりも小さい任意の角度である請求項1又は請求項2に記載の手動用ダイヤフラムバルブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、半導体製造装置に使用され、ハンドルなどの手動操作により流路を開閉する手動用ダイヤフラムバルブに関し、特に、全開時の流量を高精度に調整可能とした手動用ダイヤフラムバルブに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の手動用ダイヤフラムバルブは、半導体製造用ガス供給系の元弁として使用されることが多く、ステム(操作杆)の上部に設けられた手動ハンドルの操作によりステムを昇降動させ、流路が全開又は全閉状態とされる。通常、この手動用ダイヤフラムバルブが設置された流路の二次側には、分岐流路が並列状に分岐して設けられ、各分岐流路に同じ流量が流れるように設けられる。各分岐流路には、自動操作可能な自動ダイヤフラムバルブが接続され、各自動ダイヤフラムバルブによって、これらバルブよりも二次側への流量がそれぞれ調整されることが多い。
このため、手動用ダイヤフラムバルブを元弁として使用するときには、二次側の各ダイヤフラムで流量制御を高精度におこなうために、その一次側である手動用ダイヤフラムバルブの全開時の流量が正確に設定されていることが要求される。
【0003】
元弁として使用される手動用ダイヤフラムバルブとして、例えば、本出願人は、特許文献1のバルブを出願している。このダイヤフラムバルブは、弁軸の上部に手動用ハンドル本体が取り付けられ、このハンドル本体を略90°の回転角度で回動させることにより弁軸を通して弁体(ダイヤフラム)を動作させ、流路を開閉操作する。この場合、ハンドル本体の回動範囲を規制することで、弁体の開閉範囲を設定できることが一般に知られており、このようなハンドルの回転規制構造として、ハンドルの底面に連結ピンを突出させて取付け、一方、バルブ本体の上面に略90°の角度で連結ピン溝を形成し、連結ピンを連結ピン溝に案内させることで、ハンドル本体の回転領域を設定する場合がある。これによると、コンパクト性を維持しつつ、凹凸部分(連結ピン、連結ピン溝)の係合による簡易な構造で弁体の開閉動作を規制し、全開時の流量を設定可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ダイヤフラムバルブを構成する各部品は、製造時に寸法差を生じるため、組立後のバルブ内部の寸法を完全に一致させることは難しく、例えば、ダイヤフラムの僅かな歪みや形状のばらつきや、弁座をボデーにかしめ等により固定したときの弁座の形状や高さのばらつきなどが生じる。これらのバルブの内部形状の個体差は、バルブ全開時の開度に大きく影響し、例えば、前述した特許文献1の手動用ダイヤフラムバルブに対して凹凸部分(連結ピン、連結ピン溝)の係合による回転規制構造を設け、この回転規制構造によってハンドルの回転角度を90°に規制しようとするときには、その回転角度に誤差が生じてバルブごとに全開時の流量に個体差が発生するおそれがある。
【0006】
その結果、二次側に接続された自動ダイヤフラムバルブ以降の半導体製造プロセス結果に差があらわれる可能性があることから、製造プロセスを均一化させるために、二次側の全ての自動ダイヤフラムバルブを個別に流量調整する必要が生じることもある。
このように、ハンドル側とバルブ本体側とを凹凸状の係合部等によりハンドル本体の回転角度を調整不能に規制した場合には、バルブの個体差によるCv値の差異を抑えることが難しくなり、また、二次側の自動ダイヤフラムバルブをそれぞれ流量調整する場合、大変手間がかかるという問題もある。
【0007】
さらに、半導体製造用バルブは、200℃、或はそれ以上の高温領域で使用されることが多く、このように高温になると、手動用ダイヤフラムバルブのダイヤフラムや弁座も熱により膨張・変形するため、ばらつきがさらに複雑になり、Cv値がさらに大きな影響を受け、一次側のバルブとして弁開時の適切な流量を確保できなくなることもある。
これらの理由から、バルブの内部形状の個体差に影響を受けることなく全開時の流量を十分に確保し、全開時の流量を任意に調整できる機能を備えた手動用ダイヤフラムバルブの開発が強く望まれていた。
【0008】
本発明は、従来の課題を解決するために開発したものであり、その目的とするところは、簡単な構造によりコンパクト性を維持しつつ弁体の開閉範囲を設定でき、バルブの内部形状の個体差に影響を受けることなく全開時の流量を十分に確保し、全開時の流量を任意に調整することも可能な手動用ダイヤフラムバルブを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、請求項1に係る発明は、バルブ本体は、ボデー内部に装着されたダイヤフラムよりなる弁体と、ボデーに昇降動可能に螺着されて弁体をボデー内部に装着された弁座に接離させるスピンドルとを備え、バルブ本体の上方には、スピンドルを手動で回転操作するハンドルが取付けられてこのハンドルの底面とバルブ本体の上面側とが対向状態に装着され、ハンドル底面に設けられたピンが、バルブ本体上面側に形成された略円弧状の溝部に係合されてハンドルの開閉時の回転領域が設定されると共に、溝部の内方の一端に設けられた弁閉側端面と、溝部の外方の他端に直線状に形成された進退領域を有し、かつ、溝部と連通した連通孔と、この連通孔の内周面に設けた雌ねじと、連通孔の外端より挿入され先端に当接部を有する雄ねじである止めねじと、を備え、この止めねじを連通孔内の進退領域で直線状に進退自在に螺合して微調整させ、ピンが全閉位置で弁閉側端面に当接し、かつ、ピンが全開位置で当接部に当接可能に調整した状態で止めねじで固定することによりバルブ本体の個体差を解消するようにした手動用ダイヤフラムバルブである。
【0010】
請求項2に係る発明は、連通孔に雌ねじを備えたインサートナットが装着された手動用ダイヤフラムバルブである。
【0011】
請求項3に係る発明は、ハンドルの弁閉状態から弁開状態までの回転角度は、略90°、又は0°よりも大きく360°よりも小さい任意の角度である手動用ダイヤフラムバルブである。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に係る発明によると、バルブ本体の上部付近に全開位置調整機構を設けることで、簡単な構造によりコンパクト性を維持しつつ弁体の全開位置を高精度に設定でき、組立後のバルブの内部形状に寸法差などの個体差が生じた場合にも、全開位置調整機構によりハンドルの弁開操作側の回転を調節して全開時の流量を調整し、バルブの内部形状の個体差に影響を受けることなく全開時の流量を十分に確保できる。さらに、全開位置調整機構により全開時の流量を任意に高精度に調整して、所望のCv値の特性が得られるダイヤフラムバルブを提供することも可能となる。
この場合、外方よりドライバーなどで雄ねじである止めねじを回動させ、この雄ねじと雌ねじとの螺合により当接部をピンの移動方向に進退させることで連通孔内の進退領域での螺入位置の調整が容易となり、これら雄ねじと雌ねじとにより当接部を微調整することでハンドルの弁開操作側の回転を簡便に拡大又は縮小し、全開位置又は所望のハンドルの回転角度の範囲でハンドルを停止でき、簡単な構造で弁体の開閉動作を規制して個体差を解消可能なダイヤフラムバルブを提供できる。これにより、ハンドルの全開時には、当接部にピンが当接してその回転位置の上限を確実かつ高精度に設定して全開時に正確な流量を確保できる。
しかも、止めねじをバルブ本体の側面から簡単に挿入でき、この止めねじを雄ねじと雌ねじとの螺合により進退することで螺入位置の調整が容易となり、これら雄ねじと雌ねじとにより当接部の微調整を簡単におこなえるから、全体高さの増長も抑えてバルブ本体の外部にピンや雄ねじを含む全開位置調整機構を配置するための領域を確保する必要がなく、これらをバルブ本体の上部に配置してコンパクト性を維持してバルブ本体の大型化を防ぐことができる。
【0017】
請求項2に係る発明によると、ハンドルを構成する材料の強度が弱い場合でも、インサートナットにより雌ねじの強度を向上させて、この雌ねじのつぶれ等を防止して確実に止めねじを所望の位置まで挿入でき、雄ねじと雌ねじのリード誤差や角度誤差を吸収して止めねじの位置ずれを防ぎ、この止めねじによるハンドルの全開位置の規制を維持できる。
【0018】
請求項3に係る発明によると、ハンドルの弁閉状態から弁開状態までの回転角度を略90°に調整することでクォーターターン型のバルブに適用でき、このようにハンドルの回転角度が少ない場合にも、全開時には正確な流量を確保する。また、ハンドルの弁閉状態から弁開状態までの回転角度を0°~360°の任意の角度に設けることができ、この場合、クォーターターン型のバルブよりも全開時の流量を小さく又は大きく設定した上で、この全開時の流量を高精度に調整して所望のCv値に設定できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の手動用ダイヤフラムバルブの第1実施形態を示す正面図である。
【
図3】
図1のハンドルを取り外した模式平面図である。
【
図5】
図1の平面図である。(a)は、ハンドルの開状態を示す平面図である。(b)は、ハンドルの閉状態を示す平面図である。
【
図7】(a)は、本発明の手動用ダイヤフラムバルブの第2実施形態を示す斜視図である。(b)は、(a)の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本発明における手動用ダイヤフラムバルブの実施形態を図面に基づいて説明する。
図1、2においては、本発明のダイヤフラムバルブの第1実施形態を示し、
図3は、
図1のハンドルを取り外した模式平面図を示し、
図4は、バルブ本体の一部切欠き斜視図をそれぞれ示している。
【0025】
図において、本発明における手動用ダイヤフラムバルブは、バルブ本体1、ハンドル2を備え、このうち、バルブ本体1は、ボデー10、キャップ11、弁体12、スピンドル13、弁座14、ボンネット15、押圧部材16、スピンドルキャップ17、皿ばね18を有している。バルブ本体1の上部付近には、全開位置調整機構20が設けられ、バルブ本体1は、ハンドル2の開閉角度略90°により開閉操作される。
【0026】
ボデー10は、上部ボデー10a、下部ボデー10bからなり、これらはねじ込みにより一体化される。ボデー10の内部には、ダイヤフラムよりなる略円板状の弁体12が装着され、この弁体12の上部側には、スピンドル13が昇降動可能に螺着される。ボデー10内部の弁体12の下方位置には弁座14が装着され、スピンドル13の昇降動により弁体12が弁座14に接離されることで、ボデー10内部に形成された流路10cが開閉可能に設けられる。ボデー10の上部には、キャップ11が固着されている。
【0027】
図6に示したハンドル2は、セレーション構造によりスピンドル13の上端側に着脱可能に一体に取り付けられ、これによりバルブ本体1の上方に配置される。ハンドル2の装着後には、このハンドル2の底面2aと、バルブ本体1上部のキャップ11の上面11a側とが対向した状態となり、セレーション構造によって緩みや空転が阻止された状態でハンドル2の回転によりスピンドル13が一体に回転可能に設けられる。
【0028】
ハンドル2上部には摘み部2bが形成され、この摘み部2bを把持して回転操作することで、ハンドル2の回転と共にスピンドル13が回動しながら昇降動して弁体12を開閉操作可能となる。
ハンドル底面2aには、所定の外径及び長さに形成されたピン19が、下方に突出するように取り付けられる。
【0029】
図3、
図4において、キャップ11は、ボデー10の上部付近に装着されてバルブ本体1上部に設けられ、このキャップ11には、全開位置調整機構20が設けられる。全開位置調整機構20は、キャップ11における弁開操作側に設けられ、この全開位置調整機構20により、上記ハンドル2の弁開操作側の回転が調整され、弁体12の全開時の流量が調整される。
【0030】
キャップ上面11aにおいて、ピン19が対応する位置には、略円弧状の溝部30が形成される。溝部30は、ピン19を案内可能な幅及び深さにより略90°の角度の範囲に設けられ、この溝部30の一端側が弁開操作側、他端側が弁閉操作側となり、全開側にピン19が到達したときには、このピン19が全開位置調整機構20側に当接し、一方、全閉側にピン19が到達したときには、ピン19が弁閉側端面30aに当接する。
【0031】
図5において、ハンドル2は、左回転(反時計回り)したときに弁開操作され、また、右回転(時計回り)したときに弁閉操作されるように設けられる。ハンドル2を左回転し、
図5(a)の全開状態としたときには、ピン19が略3時の方向に位置し、
図3において全開位置構成機構20によりハンドル2の全開位置が調整可能に設けられる。一方、
図5(a)の全開状態からハンドル2を右回転し、
図5(b)の全閉状態としたときには、ピン19が略6時の方向に位置し、
図3において弁閉側端面30aへのピン19の当接によりハンドル2のそれ以上の回転が阻止される。これらにより、ハンドル2の
図5(a)の弁開状態から
図5(b)の弁閉状態までのハンドル2の回転角度θが、略90°に設定される。
【0032】
図3の溝部30の全開側の終端位置からキャップ11の側面11bにかけては、直線状の連通孔31が連通して形成され、この連通孔31にはメネジ部31aが形成され、このメネジ部31aにインサートナット(埋め込み用ナット)32が螺着により装着される。本実施形態では、このインサートナット32としてスプリューが用いられ、さらにはロックタイプと呼ばれる緩み止め効果を高めたスプリューが使用される。このインサートナット(スプリュー)32の内周には雌ねじ33が設けられ、この雌ねじ33が連通孔31の一部に配置される。
【0033】
上記した全開位置調整機構20は、調整部材35を備え、この調整部材35により全開状態のピン19の位置が調整可能となる。調整部材35には、ピン19の移動方向に進退可能な状態で、このピン19が当接される当接部36が形成されている。
【0034】
本例における調整部材35は、止めねじからなり、この止めねじ35は、インサートナット32の雌ねじ33に螺合可能な雄ねじ37を備え、これら雄ねじ37と雌ねじ33とにより、連通孔31に対して進退自在になっている。これにより、止めねじ35は、連通孔31の任意の位置に挿入可能となる。
【0035】
止めねじ35の螺入側端面は、前述した当接部36となり、この当接部36にピン19が当接される。これにより、雄ねじ37と雌ねじ33とにより止めねじ35を連通孔31に進退させて当接部36の位置を調整し、この当接部36にハンドル2が全開状態のときのピン19を当接させてハンドル2の回転を規制する。このように、全開位置調整機構20は、止めねじ35の位置調整によってハンドル2の弁開操作側の回転を任意に調整し、このハンドル2及びスピンドル13の回転角度θを設定して弁体12の開度を規制し、全開時の流量の上限を設定可能になっている。
【0036】
この場合、止めねじ35の全開位置の調整範囲内に、弁体12が全開となるときのスピンドル13の角度(弁閉状態に対して略90°)が含まれるように、雌ねじ33の形成領域を予め設定しておくようにする。これにより、全開位置の調整時には、弁体12が全開まで到達していない状態で、ピン19が当接部36に当接するように止めねじ35の挿入位置を調節することにより、バルブ本体1の流量上限を調整できる。
【0037】
さらに、望ましくは、雌ねじ33の形成領域は、バルブ本体1の個体差を考慮して、スピンドル13の理論上の全開角度である90°を含んだ90°以下から90°以上の範囲に及ぶように設けるとよい。これによると、組立て後のバルブ本体1の全開時のスピンドル13の回転角度θに大きな差異が生じた場合に、それに対応して全開位置調整機構20により全開位置を90°よりも大きく又は小さく設定することが可能になる。
【0038】
雌ねじ33と雄ねじ37との間には接着剤38を塗布してもよく、この場合、接着剤38によって止めねじ35がインサートナット32に位置決め状態で固定される。
【0039】
ボデー10内のボンネット15は、外周に段差部を有する略環状に形成され、上部ボデー10aと下部ボデー10bとの間に挟着されて固定される。ボンネット15の中央には貫通穴15aが形成され、この貫通穴15aには略円柱状の押圧部材16が昇降動可能に装着され、この押圧部材16の底面側には、ボンネット15と下部ボデー10bとの間に外周側が挟まれた状態で、弁体(ダイヤフラム)12が取り付けられる。
さらに、押圧部材16とスピンドル13との間には、複数の皿ばね18に装着された状態で、スピンドル13の下部側を覆うようにスピンドルキャップ17が装着される。
【0040】
これらの内部構造により、ハンドル2を弁閉方向に回転させたときには、スピンドル13がボデー10に対して回転しつつ降下し、このスピンドル13の降下により皿ばね18、スピンドルキャップ17を通して押圧部材16が押し下げられ、この押圧部材16により弁体12の中央付近が押圧されて弁座14に圧着し、流路10cが封止される。
【0041】
一方、ハンドル2を弁開方向に回転させたときには、スピンドル13がボデー10に対して回転しつつ上昇し、このスピンドル13の上昇により弁体12への押圧力が解除され、縮んでいた皿ばね18が元の形状に戻った後に、スピンドルキャップ17が上昇し、これと共に押圧部材16が上昇しつつ弁体12が開状態の形状に復帰し、流路10cが開状態となる。
【0042】
なお、上記実施形態では、バルブ本体1に設けたキャップ11の上面に溝部30が形成されているが、キャップ11を設けることなくボデー10の上面に直接溝部30を設ける構成としてもよい。
【0043】
また、ハンドル底面2aにピン19が取り付けられ、キャップ上面11a側に略円弧状の溝部30が形成されているが、ハンドル底面2aに溝部が形成され、キャップ上面11a側(バルブ本体1の上面側)にピン19が取り付けられていてもよい(図示せず)。これらのように、ハンドル底面2a又はボデー上面側の何れか一方にピン19が設けられ、このピン19が他方側に形成された略円弧状の溝部30に係合されてハンドル2の開閉時の回転領域の一部が設定されていればよい。
【0044】
連通孔31にインサートナット32を装着することなく、連通孔31に形成したメネジ部31aを、雄ねじ37が螺着する雌ねじとしてもよい。さらに、これらの何れの場合にも、雄ねじと雌ねじとの間への接着剤の塗布を省略してもよく、この場合には、調整後の止めねじ35を再度回動させて当接部36の位置を調整変更できる。一方、接着剤38以外の固着手段により、雄ねじと雌ねじとを固着するようにしてもよい。
【0045】
ハンドル2の弁閉状態から弁開状態までの開閉角度は90°以外であってもよく、この場合、溝部30を形成する角度を、0°よりも大きく360°よりも小さい任意の角度に設定することで対応可能となる。
【0046】
次いで、本発明の手動用ダイヤフラムバルブの上記実施形態における動作及び作用を説明する。
上記バルブ本体1は、このバルブ本体1を構成する各部品に個体差がある場合でも、その組立て後に、全開位置調整機構20によって弁体12の全開時の流量を高精度に調整できる。この場合、全開位置調整機構20の止めねじからなる調整部材35を、雄ねじ37と雌ねじ33との螺合を通して連通孔31に対して進退させ、この止めねじ35の螺入側端面である当接部36の位置を移動させることで、この当接部36に当接するピン19の当接位置を調節し、ピン19が取付けられたハンドル2の弁開操作側の回転を調整することにより、全開時の流量を任意に設定可能となる。
【0047】
具体的には、バルブ本体1の組立て後に、このバルブ本体1内に流体を流した状態で止めねじ35の挿入位置を調整し、所望の流量に合致したときに止めねじ35の進退による調整を停止し、その位置をバルブ本体1の全開位置として設定する。
【0048】
例えば、ハンドル2の全開状態で流体温度200℃のCv値が0.62となるように設定する場合、Cv値0.62となる位置に止めねじ35を進退させて当接部36を調節する。これによって、ハンドル2の全開時には、ピン19が当接部36に当接してその回転が規制され、全開時におけるCv値が確実に0.62に設定されたバルブ本体1を提供できる。バルブ本体1の組立て後に、個体差により全開時のハンドル2及びスピンドル13の回転角度θが異なる場合であっても、全開時の流量を全開位置調整機構20で調整し、一定のCv値を発揮する。
【0049】
これによって、バルブ本体1の二次側に図示しない複数のバルブを並列状態で接続した場合には、これら二次側バルブを個別に流量調整することなく、バルブ本体1の全開時に二次側バルブに所望の流量の流体を供給でき、二次側バルブ以降のプロセスの安定化も図れる。さらには、全開位置調整機構20によりバルブ本体1の全開時のCv値を正確に設定することで、異なる温度や流体圧の流体を流す場合にも対応している。
【0050】
全開時に所望のCv値を得るために、その全開位置を90°から減少させることもでき、例えば、全開時のCv値を0.5に設定する場合には、全開位置調整機構によりハンドルの全開時の角度を約75°に調整すればよい。
【0051】
本実施形態のバルブ本体1のように、ハンドル2の開閉時の回転角度θを略90°の範囲に設定した場合には、バルブ本体1をクォーターターン型とし、このようにハンドル2の少ない回転角度により弁体12を開閉制御する場合にも、Cv値を高精度に設定できる。クォーターターン型のバルブ本体1の場合、ハンドル2の摘み部2bの向きを外方から視認することで、開閉状態の確認も容易となる。
【0052】
ハンドル2の弁開状態から弁閉状態までの回転角度θを0°から360°までの任意の角度に設けたときには、クォーターターン型に対して全開時の流量を小さく又は大きく設定でき、この場合にも全開時の流量を高精度に設定できる。
【0053】
ピン19や止めねじ35を、ハンドル底面2aとキャップ上面11aとが対向するハンドル2の回動領域内に設けているので、バルブ本体1の外部に全開位置調整機構20を配置するための領域を確保する必要がなく、バルブ本体1の大型化を防いでコンパクト性にも優れている。
【0054】
連通孔31に、ロックタイプのスプリューからなるインサートナット32を挿入し、このスプリュー32の内周を雄ねじ37が螺合する雌ねじ33としているので、この雌ねじ33に止めねじ35を螺入して位置調整した後に緩みにくくなり、仮に、外部から激しい振動や衝撃が加わったとしても止めねじ35の緩みを確実に防止する。これにより、調整後の止めねじ35の位置を強固に保持できる。さらに、雄ねじ37と雌ねじ33との間に接着剤38を塗布することで固着力が一層高まり、止めねじ35の位置ずれをより確実に防止する。一方、スプリュー32を用いたことで、接着剤38の塗布を省略することもでき、この場合にも十分な保持力を発揮して、調整後の止めねじ35の位置ずれを防止できる。
【0055】
図7(a)、
図7(b)においては、本発明の手動用ダイヤフラムバルブの第2実施形態を示している。なお、この実施形態において、前記実施形態と同一部分は同一符号によって表し、その説明を省略する。
【0056】
この実施形態におけるバルブ本体40は、全開位置調整機構41を備え、この全開位置調整機構41では、
図9に示す調整部材42を備えている。調整部材42は、円筒部43と、この円筒部43の外周側に形成された突出片44とを備え、バルブ本体40のキャップ45上面側に装着可能に設けられる。
【0057】
図8に示すように、キャップ45側においては、前記実施形態と略同様に円弧状に形成された溝部46から、弁開操作側の円周方向に延長するように、溝部46よりもやや広がる溝状の収容部47が形成される。溝部46よりも内径側には、収容部47とその一部が連通する円周溝48が形成され、この円周溝48は、調整部材42の円筒部43が遊嵌状態で収容可能な大きさ及び深さに設けられる。キャップ45外周側には、円周溝48に連通するように略90°の角度で2箇所にねじ孔49が形成され、このねじ孔49には、止めねじ部材50が進退自在に螺着されて挿入される。
【0058】
調整部材42は、円筒部43がその回転軸を中心に回転可能な状態で円周溝48に装入され、突出片44が収容部47内を進退可能な状態で装着された状態で、キャップ45上面側に収容される。突出片44は、ハンドルのピン19に対向した状態となり、このピン19との対向側が当接部51となる。
調整部材42は、2つの止めねじ部材50により締付け可能に設けられ、この2箇所からの固着により円筒部43がキャップ45内に位置ずれが防がれた状態で固定され、突出片44が収容部47内に固定される。
【0059】
上記の構成により、バルブ本体40の組立後には、円筒部43を円周溝48内で回転させて突出片44(当接部51)を収容部47内の所望の位置に調節し、止めねじ部材50で円筒部43を固定することで、当接部51をバルブ全開位置に調整可能となる。ハンドルの全開時には、ピン19が当接部51に当接し、ハンドルの回転が規制されることで全開時のCv値を正確に設定可能となる。
【0060】
このバルブ本体40の場合、例えば、ハンドルの全開状態で流体温度200℃のCv値が約0.25程度であるとき、全開位置調整機構41によりハンドルの開閉可能角度が90°であったものを約70°程度に調整することにより、Cv値を0.20程度に調整できる。
【0061】
以上、本発明の実施の形態について詳述したが、本発明は、前記実施の形態記載に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲に記載されている発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の変更ができるものである。
【符号の説明】
【0062】
1 バルブ本体
2 ハンドル
2a 底面
10 ボデー
11 キャップ
11a 上面
12 ダイヤフラム(弁体)
13 スピンドル
14 弁座
19 ピン
20 全開位置調整機構
30、46 溝部
31 連通孔
32 インサートナット
33 雌ねじ
35 止めねじ(調整部材)
36 螺入側端面(当接部)
37 雄ねじ
38 接着剤
42 調整部材
43 円筒部
44 突出片
48 円周溝
51 当接部
θ ハンドルの回転角度