(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】加工装置および加工材料の製造方法
(51)【国際特許分類】
B23Q 11/00 20060101AFI20240305BHJP
B23Q 17/00 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
B23Q11/00 C
B23Q17/00 D
(21)【出願番号】P 2020022544
(22)【出願日】2020-02-13
【審査請求日】2022-08-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000175560
【氏名又は名称】三協立山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】弁理士法人英知国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】横山 健治
(72)【発明者】
【氏名】島田 真之
【審査官】小川 真
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-322942(JP,A)
【文献】特開2008-018473(JP,A)
【文献】特開平07-328894(JP,A)
【文献】特開平07-299690(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 11/00
B23Q 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工装置本体部とセッティング台とプロジェクターと加工位置画像生成部を備え、
加工装置本体部は、加工工具を有し、
セッティング台は、
形材を固定するバイスを有し、
バイスは、
形材を動かさず、
形材の固定位置を変更可能にする移動部を有し、
加工位置画像生成部は、
形材の上に投影する加工位置画像を加工データに基づき生成するものであって、加工位置画像をプロジェクターに送る送信部を有し、
加工位置画像は、加工工具が
形材上を動くことで加工がなされる加工領域を含む画像であり、
プロジェクターは、
形材の上に加工位置画像を投影できる位置に取り付けられて
おり、
投影された加工位置画像と形材を固定するバイスの固定位置が重なる場合、干渉しない位置までバイスを移動させることを特徴とする加工装置。
【請求項2】
セッティング台に
形材を載置する工程、
加工工具が
形材上を動くことで加工がなされる加工領域を含む加工位置画像を、加工データから生成する工程、
次いで、
形材の上に加工位置画像を投影する工程、
次いで、投影された加工位置画像と
形材を固定するバイスの固定位置が重なる場合、干渉しない位置までバイスを移動させる工程、
次いで、バイスで
形材を固定する工程、
次いで、加工工具で
形材を加工する工程
を含む
形材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、形材などの加工材料の加工装置および加工材料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アルミ押出形材などの加工材料の加工には、次のような加工装置が用いられてきた。
加工材料は、加工装置のセッティング台の載置面上に置かれ、複数箇所でバイスにより固定される。バイスは、バイスの下部に設置されたバイス移動レール上を動くことができるように構成されており、加工材料を所定の位置で固定することができるように構成されている。そして、加工装置のヘッドには、エンドミルなどの加工工具が装着されており、加工装置が有するY軸コラム、X軸コラムにより、加工工具を動かすことができる。さらに、加工装置のヘッドを垂直(Z軸方向)に動かして、加工深さを制御する。加工装置には、NCデータなどの加工データが入力され、加工材料を動かすことなく、加工工具が動くことにより加工データ通りに加工材料上の所定の加工領域を切削等する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来から用いられている加工装置では、加工材料上の所定の加工位置(領域)を加工するために当該加工材料の上を加工工具が動き、加工材料のバイスで挟まれた領域と当該加工位置が重なる(干渉する)と困ることが起き得る。
このような干渉が起きると、加工装置のヘッド等が加工材料の上に飛び出たバイスに当たり、加工装置が故障することが起き得る。また、バイスで挟んだ加工材料の側面を切削すべく加工工具が動くことにより、加工工具がバイスに当たり破損するなど、バイスと加工装置の干渉による破損、故障が起きる。
そのため、従来はセッティング台に加工材料をセットしバイスで挟む際に、作業員が、図面を出して加工位置をチェックし、バイスで挟む領域と加工位置が干渉しないようバイス移動レールに沿ってバイスを動かして調整していた。
また、加工位置が加工材料の中間部にあるような場合にあっては、図面で示された加工位置とセッティング台上の加工材料の加工位置をメジャー等で確認する必要もあった。
これらの作業のため、作業効率が落ちていた。
【0004】
本発明の解決しようとする課題は、バイスで挟む領域と加工位置が干渉しないように確認する作業の効率化を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、加工装置本体部とセッティング台とプロジェクターと加工位置画像生成部を備え、加工装置本体部は、加工工具を有し、セッティング台は、形材を固定するバイスを有し、バイスは、形材を動かさず、形材の固定位置を変更可能にする移動部を有し、加工位置画像生成部は、形材の上に投影する加工位置画像を加工データに基づき生成するものであって、加工位置画像をプロジェクターに送る送信部を有し、加工位置画像は、加工工具が形材上を動くことで加工がなされる加工領域を含む画像であり、プロジェクターは、形材の上に加工位置画像を投影できる位置に取り付けられており、投影された加工位置画像と形材を固定するバイスの固定位置が重なる場合、干渉しない位置までバイスを移動させることを特徴とする加工装置とすることで、前述の課題を解決した。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、加工位置画像が加工材料に投影されるため、図面を出して確認する作業を省くことができる上に、加工位置画像を避けるようにバイスで固定するだけでよく、作業効率を向上できるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図3】(A)加工装置の平面図(B)加工装置の正面図
【
図4】(A)加工位置画像生成部の説明図(B)加工位置画像生成部をネットワーク上に配置した概念図
【
図5】(A)加工材料の斜視図(B)ヘッドとバイスの干渉についての説明図(C)干渉領域の説明図
【
図7】加工材料と加工位置画像の説明図(A)加工材料の側壁に加工位置画像を投影した説明図(B)加工材料の高さの異なる面と側壁に加工位置画像を投影した説明図
【
図9】様々な形状の加工材料に対する加工プログラムの例を示す概念図
【発明を実施するための形態】
【0008】
(実施例)
以下、図面を使って説明するが、以下の図面は説明を目的に作成されたもので、分かりやすくするため、説明に不要な部材を意図的に図示していない場合がある。また、分かりやすくするため、部材を意図的に大きくまたは小さく図示している場合があり、正確な縮尺を示す図面ではない。
(バイスとセッティング台)
実施例においては、アルミサッシの押出アルミ形材を加工材料2としている。また、加工工具12として、エンドミルを取り付けている。
図1の拡大図を参照されたい。各バイス113には、固定顎部1131とシリンダ1133が設けられた移動顎部1132が備わっている。右の固定顎部1131と移動顎部1132との間には、加工材料2が載置面114に載置されており、加工材料2を挟む前の状態が示されている。その左側には、別の加工材料2を固定するバイス113の移動顎部1132とシリンダ1133のみが図示されている。
実施例では、作業効率を上げるため、X軸方向に延びる加工材料2をY軸方向にずれて並列にもう一列、加工材料2をセッティングできるようになっているバイス113が設けられている。
図2を用いて具体的に説明する。X軸方向に長尺の加工材料2が1つ、X軸上に並んだバイス113で挟まれている様子が図示されている。一つの加工材料2を固定するX軸方向に並んだバイス113の数は、この実施例においては3つであるが、最後の1つのバイス113を説明のために省略してある。
他方、一つのセッティング枠111内には、加工材料2を固定しているバイス113とは別に加工材料2を挟んでいないバイス113が図示されている。加工材料2を挟んでいないため、バイス113の固定顎部1131と移動顎部1132との間に載置面114が露出している。
【0009】
図2に示されているように、バイス113は、セッティング枠111の中に収められており、セッティング枠111の上面が加工材料2の載置面114となる。バイス113の移動顎部1132を広げれば、載置面114も広がる。また、バイス113の下部には、バイス基部1138があり、これもまた、バイス113に備えられた部材である。Y軸方向にずれたに位置に同様の別のセッティング枠111が設けられており、1つの加工材料2を複数のセッティング枠111の載置面114に載せて複数バイス113で固定する。
【0010】
ここで、セッティング枠111とセッティング台11の関係を説明する。
図2に示されているように、1つの加工材料2はバイス113を収めたセッティング枠111を複数用いてセッティング枠111上面の載置面114上に載せられる。このように、バイス113を収めた複数のセッティング枠111で構成されるセッティング枠のセットがセッティング台11となる。
1つの加工材料2を固定するバイス113を収めたセッティング枠111の数は、適宜増減できる。
【0011】
図2に示されているように、セッティング枠111の下部にはバイス移動レール(移動部)1135が設けられており、バイス基部1138の下面に設けられた車輪1136(移動部)とで構成される移動部により、バイス113をセッティング枠111ごと移動できるようになっている。
正面視でみると、
図3(B)のように、バイス移動レール(移動部)1135とバイス113が配置されている。
図3(B)には、加工装置本体部14の加工工具12の下に1つの加工材料2が載置され、3つのバイス113で固定されている状態が示されている。また、加工装置本体部14の左側には、別の加工材料2が載置され、3つのバイス113で固定されている状態が示されている。この実施例では、一つのX軸方向に延びる列に2つの加工材料2をセッティングできるように構成されており、作業効率の向上が図られている。X軸方向に載置される加工材料2の数は適宜増減でき、例えば、きわめて長尺な加工材料2の場合、1つだけ載置することもあり得る。バイス113の数を増減してもよい。
実施例では、
図2で説明したようにX軸方向に延びる加工材料2とは別にY方向にずれて並列にもう一列(加工材料2が載置されていない列)加工材料2をセットすることができるから、合計4つの加工材料2を各々3つのバイス113で固定できる。
【0012】
(加工データ)
加工データ4は、実施例では3次元加工データを使用するが、加工材料2が平坦な板状の部材である等の場合は、Z軸方向のデータを含まない2次元加工データでもよい。
【0013】
(加工装置本体部)
図1に記載のように、加工装置本体部14のヘッド13の下端には、加工工具12が取り付けてある。実施例では、前述したようにエンドミルを加工工具12として取り付けているが、ドリル、レーザ切断装置のレーザ光出射口、リーマなど、どのような加工工具12であってもかまわない。自動的に加工工具12を交換できる装置を取り付けてもよい。
加工装置本体部14は、
図3(A)に図示されているX軸方向とY軸方向にヘッド13を動かせるX軸コラム(図示せず)とY軸コラム(図示せず)を具備しており、加えてZ軸方向(垂直方向:
図3(B)参照)にもヘッド13を動かせる移動機構を具備している。そのため、加工材料2を動かさずに加工を行うことができる。
また、
図3(A)のスライドカバー19は、その下にある加工装置本体移動レール(図示しておらず)に切削屑等が付着するのを防ぐために設けられている。以上のように、加工装置1は、スライドカバー19の下の図示していない加工装置本体移動レールを用い、加工装置本体部14をX軸方向に大きく移動できる移動機構を具備している。
以上のような移動機構を用いて、加工装置1は、加工材料2を動かさずに、加工装置本体部14のヘッド13をXYZ軸方向に動かすことで加工を行うことができる。
【0014】
加工装置1には、操作部/表示部17が備えられており、加工装置本体部14の作業状況を確認することができ、また、操作を行うことができる。
加工装置1には、加工データ4(
図4(B)参照)が送られており、セッティング台11上の加工材料2に対して、加工データ4のとおりの位置で切削等の加工ができるようになっている。なお、実施例では、操作部/表示部17に後述する加工位置画像生成部5とその送信部51が取り付けてある。
【0015】
(プロジェクター)
加工装置1には、支柱32が設けられており、
図3(B)に記載のように、2本の支柱32で支えられた支持材33に、加工材料2の上方から投影可能なように2台のプロジェクター3が取り付けられている。なお、支柱32を設けずプロジェクター3を天井等に取り付けてもよい。
いずれにせよ、プロジェクター3は、加工材料2の上に加工位置画像54を投影できる位置に取り付けられている。
プロジェクター3からは、
図2にクロスハッチングで図示されているように、加工材料2の上に加工位置画像54が投影される。
加工作業時には、例えば、ヘッド13が加工材料2の上に飛び出たバイス113に当たり(干渉)、加工装置1が故障することが起き得る。また、バイス113で挟んだ加工材料2の側面を切削すべく加工工具12が動くことにより、加工工具12がバイス113に当たり(干渉)、加工工具12が破損するなどのことが起きる。
この加工位置画像54を頼りに作業者は、バイス移動レール1135とバイス基部1138の下部に設けられた車輪1136とで構成される移動部を用いて、セッティング台11を構成する、バイス113を収めたセッティング枠111ごとX軸方向に動かすことで、バイス113の位置を加工位置と干渉しない(重ならない)ように移動できる。従来のように、図面を出して、バイス113の位置を調整するなどの作業を不要にできる。
【0016】
(加工材料のセッティング)
加工材料2は、
図3(B)の拡大図に示すように、加工材料2の端部が、位置決め部材112と当接するようにセットされる。加工装置本体部14が受け取った加工データ4上の加工材料2の端部の位置と、位置決め部材112に当接する加工材料2の端部の位置が一致するように、加工装置1を予め調整しておく。加工装置1に加工材料2をセッティングする順番は予めスケジューリングされており、スケジュールに従って加工材料2をセッティングする。常に、セッティングされた加工材料2と対応する加工データ4が、加工装置1に送られるようになっているから、加工材料2を変え(例えば、短尺な加工材料2を長尺なものと変える)ても、加工ができるようになっている。この位置決め部材112を用いた調整作業により、どのような長さの加工材料2がセットされても、加工データ4上の加工材料2の端部の位置と、位置決め部材112と当接するようにセットされた現実の加工材料2の端部の位置は、必ず一致する。前記調整後の加工装置1に、加工材料2の端部を前記したように位置決め部材112と当接するようにセットすれば、加工材料2と対応する加工データ4に従って、加工データ4の位置のとおりに加工を行うことができる。
また、位置決め部材112は、加工材料2をバイス113で固定した後に、加工材料2の端部から退避するように構成されている。仮に、位置決め部材112と加工材料2が当接する位置が加工位置となっていたとしても、位置決め部材112が退避することで干渉が起きないように工夫されている。
【0017】
(加工位置画像生成部)
図4(A)は、加工位置画像生成部5の説明図であり、加工位置画像生成部5は、加工しようとしている加工材料2の加工データ4を受け取り、加工位置を示す加工位置画像54を生成する。そして、送信部51は、生成した加工位置画像54をプロジェクター3に送信する。
加工位置画像生成部5には、後述する画像補正部57および色補正部58を備えていてもよい。
実施例では、説明上、
図3(B)に図示するように加工装置1の操作部/表示部17内に加工位置画像生成部5を設けているが、どこに設けてもよく、プロジェクター3に設けてもよい。また、加工位置画像生成部5、画像補正部57および色補正部58は、装置または部品のような実体物として存在してもよいが、ソフトウエアとして存在してもよい。
図4(B)は加工位置画像生成部5をネットワーク6上に配置した概念図であり、ネットワーク6上のサーバ61に、加工位置画像生成部5を(ソフトウエアとして)設けて、サーバ61に記憶された加工データ4を用いて生成された加工位置画像54を加工装置1へ送信するようにしてもよく、このような場合であっても、加工位置画像生成部5は、機能的に加工装置1に備えられたものといえる。加工データ4や加工位置画像生成部5をクラウド化してネットワーク6上に分散配置してもよい。
また、加工位置画像生成部5を加工装置1内に設ける場合には、加工データ4をサーバ61から加工位置画像生成部5を送信するようにしてもよい。加工装置1には、加工工具12で加工するための加工データ4が送られており、この加工データ4を加工位置画像生成部5が取得するようにしてもよい。いずれにせよ、加工データ4を加工位置画像生成部5へ送る手法は任意である。
加工位置画像生成部5は、プロジェクター3へ加工位置画像54を送信する送信部51を備える。(
図4(A)、
図3(B)参照)
【0018】
[加工位置画像]
加工位置画像54の一つの態様は、少なくとも加工工具12が加工材料2上を動くことで加工がなされる加工領域55を含む画像である。加工装置1の種類によっては、加工装置本体部14(特に、ヘッド13)が加工作業時にバイス113と当接(干渉)することがある。
図5(A)は加工材料2の斜視図である。図示されているように、加工工具12が加工材料2上を動くことで加工がなされる加工領域55が低い箇所に存在する。
図5(B)は、ヘッド13とバイス113の干渉についての説明図である。鎖線で示めされるのは、加工時にヘッド13の下端が移動する移動軌跡である。加工領域55を加工するために加工工具12が下降してもバイス113と干渉しないが、ヘッド13の下端はバイス113と干渉してしまう。
作業者は、投影された加工位置画像54と加工材料2を固定するバイス113の固定位置1134が重なる場合、加工材料2上に投影された加工領域55を含む加工位置画像54を見て、ヘッド13と干渉する位置を見込んでバイス113を移動することができる。
【0019】
より正確に、干渉位置を把握した場合、加工位置画像54の別の態様として、少なくとも前記加工領域55に加えて加工工具12が加工材料2上を動くときにバイス113と加工装置本体部14の一部(例えば、ヘッド13)が干渉する干渉領域56を含む画像を加工位置画像54とすることができる。
図5(C)は、干渉領域56の説明図である。加工領域55の右側にヘッド13とバイス113が干渉する干渉領域56を含む加工位置画像54が投影される。
加工位置画像生成部5は、加工装置本体部14の構成部材の内から干渉が起き得る部材の位置データを予め取得しており、当該部材の位置データと加工データ4に照らして、干渉領域56と加工領域55含む加工位置画像54を生成する。
干渉領域56を正確に把握することができる加工位置画像54により、作業者はバイス113を移動することができ、作業効率が向上すとともに、干渉を確実に防止できる。
なお、加工装置1の種類によって、バイス113と干渉を起こす部材は変わり得るものであり、ヘッド13に限られないことは言うまでもない。
【0020】
[画像補正部]
次に、加工位置画像生成部5で行われる画像補正について説明する。
実際の加工材料2は、
図2に示されるように、凹凸があり必ずしも平坦な表面のものばかりとは限らない。
図3(B)のように、プロジェクター3のレンズ(図示せず)から出射された投影光31は、レンズからZ軸方向に離れるほど広がるように出射される。プロジェクター3のレンズに近い(加工面が高い)ほど、レンズから遠い(加工面が低い)ものと比べて、加工材料2に投影される加工位置画像54は縮小された画像となる。
この関係は相対的なものであって、レンズから遠い(加工面が低い)ほど、レンズに近い(加工面が高い)ものと比べて、加工材料2に投影される加工位置画像54は拡大された画像となるということもできる。
加工材料2の上に凹凸がある場合、投影光31の前記性質から、加工材料2の上の凹凸により像が歪み正確な加工位置を表さない。
これは、バイス113位置を調整する作業上好ましくないことであり、加工位置画像54を加工材料2の上の凹凸に合わせて画像を補正する必要がある。
【0021】
基準面52について説明する。加工材料2の上の凹凸は、前述したように相対的なものに過ぎない。
図2に、見かけ上の凸部21および見かけ上の凹部22が図示されているが、例えば、載置面114を基準とした場合、見かけ上の凹部22は高さの低い凸部であり、見かけ上の凸部21は高さの高い凸部ということもでき、双方とも凸部になる。
加工材料2の凹凸に対応する加工位置画像54を補正するために所定の高さの基準面52をまず決める。
図6は、基準面52の説明図であり、載置面114よりZ軸方向にhだけ高い位置に基準面52を設けている。加工位置画像生成部5には、画像補正部57が備えられている。(
図4(A)参照)
基準面52が設定されると、加工データ4を取得した加工位置画像生成部5の画像補正部57は、加工データ4の加工位置の高さを基準面52からの高さ基準として計算する。そして、加工データ4に基づき、基準面52から加工位置が高いほどを拡大し、低いほどを縮小することでZ軸方向の画像の歪みを補正した加工位置画像54を作成する。
基準面52とは、加工材料2の加工位置の高さが変化することにより、加工位置画像54の歪みを防ぐ目的で拡大率を決める単なる基準であり、目的に合致する限り任意の位置に決めることができる。例えば、載置面114を基準面52としてもよい。
なお、Y軸方向およびX軸方向にも画像は歪むが、市販のプロジェクター3にも搭載されているようにレンズによる補正が可能である。必要ならば、加工位置画像生成部5は、加工データ4に基づき加工位置画像54をX軸方向およびY軸方向にも補正する機能をさらに搭載した画像補正部57を備えてもよい。
前述の「(加工材料のセッティング)」でも述べたように、加工材料2の端部と加工データ4上の加工材料2の端部は位置合わせされている。加工装置1は、どのような長さの加工材料2がセッティングされても、プロジェクター3から正確な位置に加工位置画像54を投影できる。
【0022】
図7は、加工材料2と加工位置画像54の説明図であり、様々な形状の加工材料2に本発明が適用できることを示す図面である。
図7(A)は、加工材料2の側壁に加工位置画像54を投影した説明図である。そして、
図7(B)は加工材料2の高さの異なる面と側壁に加工位置画像54を投影した説明図である。前述したように、加工データ4に基づき、加工材料2の加工位置が基準面52より高いときは加工位置画像54を拡大し、加工位置が基準面52より低いときは加工位置画像54を縮小する画像補正部57を加工位置画像生成部5が備えるため、側壁であっても高い精度で、画像の歪みを補正できる。また、
図7(B)に図示されているように、低い面と高い面に補正位置画像54が投影されている。従来、高低差のある面に投影すると、補正位置画像54が面からはみ出たりすることがあったが、画像補正部57で補正された補正位置画像54を用いると正確に投影することができる。
【0023】
後述する(作業工程)に記すように(
図2参照)、投影された加工位置画像54と加工材料2を固定するバイス113の固定位置1134が重なる場合、加工位置画像54を頼りに、加工装置本体部14のヘッド13や加工工具12と干渉しない位置までセッティング枠111に収められたバイス113を、セッティング枠111ごと移動部(バイス移動レール1135と車輪1136)を用いて移動する。
【0024】
[色補正部]
加工材料2の表面色は、様々であり得る。プロジェクター3から投影される加工位置画像54の色が加工材料2の表面色に近い場合、加工位置画像54の視認性が低下してしまう。加工データ4には、加工材料2の表面色のデータが含まれており、加工位置画像生成部5は、前記表面色のデータを取り込むことで前記表面色に対して視認性の良い表示色を選び、加工位置画像54を生成する色補正部58を更に有してもよい。(
図4(A)参照)
加工材料2の色に応じて加工位置画像54の色を変更する色補正部58を設けることで、作業者には、加工材料2の表面色が変わっても、常に視認性の良い加工位置画像5が提供され、作業効率が向上する。
【0025】
(加工プログラム)
図8は、加工プログラムの一例を示す概念図である。この例では、加工材料2上に加工位置画像54が投影された第1加工領域551、第2加工領域552および第3加工領域553が図示されると共に、これらの領域を加工するプログラムが示されている。
ここで、XYZ軸座標は加工装置本体部14のヘッド13に取り付けた加工工具12の位置座標を示す。これに対して、UVW軸座標は、載置面114に載置された加工材料2の加工幅となる位置座標を示す。実施例では、XYZ軸座標は、加工材料2のセッティング位置および3次元の加工データ4に基づき、加工材料2の端部の一点がX0、Y0に設定される。
まず、第1加工領域551に対する加工について説明する。最初に、加工工具12を(X0、Y0、Z110)の座標(単位はmm)に動かすように命令が実行される。Z軸方向が110mmなのは、移動に際し加工工具12が加工材料2に当たらぬよう十分高い位置に加工工具12を位置させるためである。次いで、
図8に図示された第1加工領域551に対する加工命令が実行される。加工工具12が最初に加工する座標は(X0、Y0、H40)であり、これが第1加工領域551に対するUVW座標軸の原点となる。第1加工領域551のUVW軸座標の原点を基準として、[U50.V60.W38.H40]という命令に従い、(X軸0mmからU軸50mmに渡って)×(Y軸0mmからV軸60mmに渡って)×(H(高さ)40mmからW軸38mmに渡って)加工するように加工工具12が動作する。終了命令はM99である。
第1加工領域551の加工が終了すると、第2加工領域552を加工すべく、ヘッド13に取り付けられた加工工具12が(X0、Y77、Z110)の位置に移動する。命令に従い、H(高さ)10mmに位置する第2加工領域552へと加工工具2が降下する。(X0、Y77、H10)の位置が、第2加工領域522におけるUVW軸座標の原点となる。次いで、[U50.V7.W7.H10]という命令に従い、(X軸0mmからU軸50mmに渡って)×(Y軸77mmからV軸7mmに渡って)×(H(高さ)10mmからW軸7mmに渡って)加工するように加工工具12が動作する。
第3加工領域553に対する加工も同様である。
【0026】
図9は、様々な形状の加工材料2に対する加工プログラムの例を示す概念図である。図中には、加工前の加工材料23と共に、加工位置画像54が投影された加工材料2が図示されている。
以上は、加工プログラムの一例であって、座標軸を含め様々な仕様で加工プログラムを作り得ることは言うまでもない。
【0027】
(プロジェクターの初期設定)
プロジェクター3から正確な投影を行うため、作業開始前に初期設定を行う。
図10は、初期設定(Z軸)の説明図である。実施例では、載置面114より下に基準面52を設定している。プロジェクター3より、100mm×100mm格子の投影を行い、基準面52で100mm角となるように較正する。
次いで、XY軸の較正を行う。
図11は、初期設定(XY軸)の説明図である。実際の加工材料2をバイス113の固定顎部1131および移動顎部1132で固定し、当該加工材料2の加工データ4から生成された加工位置画像54を投影する。そして、X基準(位置決め部材112と加工材料2との当接面)を合わせ、さらに、Y軸基準(固定顎部面1131a)を合わせる。
標準となる角材状の加工材料2を用い、加工材料2の上面すべてに加工位置画像54を投影すると効率的に初期設定ができる。
【0028】
(作業工程)
次いで、加工材料の製造方法における作業工程について説明する。
1.セッティング工程
作業者は、
図2で示されるように複数のセッティング枠111で構成されるセッティング台11の載置面114(セッティング枠111の上面)に加工材料2をセットする。その際に、
図3(B)拡大図で示される位置決め部材112に加工材料2の一方の端面を当接させ、バイス113の固定顎部1131に加工材料2の側面が当接するようにセットする工程を行う。
加工装置1に加工材料2をセッティングする順番は予めスケジューリングされており、スケジュールに従って、多種ある加工材料2の中から正しい加工材料2をセットする必要がある。確認のため、セットすべき加工材料2の情報を操作部/表示部17に表示するようにしてもよい。
実施例においては、
図2で示すように1つのセッティング枠111内に2つのバイス113が収められており、X軸方向に延びる加工材料2が2つY軸方向にずれて並列に並ぶ。一方のバイス113を干渉しないように移動すると、セッティング枠111も移動し、他方のバイス113も併せて移動してしまう。したがって、実施例で加工材料をセットする場合、同じ位置に加工領域54を有する同種の加工材料2をセットすることが好ましい。そうすると、一方の加工材料2を投影された加工位置画像54に従い、セッティング枠111に収めたバイス113をセッティング枠111ごと移動させれば、他方の加工材料2にも必然的に同じ位置に加工位置画像54が投影されているため、他方の加工材料2に投影された加工位置画像54を確認せずともバイス113を固定できるので作業効率がさらに向上する。
2.加工位置画像生成工程
前記セッティング工程の前、後、あるいは、同時に、加工位置画像生成部5はセッティング台11にセットされる加工材料2の加工データ4を取得する。加工位置画像生成部5は、加工データ4に基づき加工材料2の上に投影する加工位置画像54を生成する工程を行う。ここで、加工位置画像54とは、加工工具12が加工材料2上を動くことで加工がなされる加工領域55を含む画像または加工領域55に加えて加工工具12が加工材料2上を動くときにバイス113と加工装置本体部14が干渉する干渉領域56を少なくとも含む画像である。
このように、加工工具12が加工材料2上を動くことで加工がなされる加工領域56を含む加工位置画像54を、加工データ4から生成する工程を行う。
3.投影工程
次いで、加工位置画像54は、プロジェクター3に送られる。プロジェクター3は、セッティング台11にセットされた加工材料2の上に加工位置画像54を投影する工程を行う。
4.バイス移動工程
図2に示すように、加工材料2の表面に投影された加工位置画像54を頼りに、投影された加工位置画像54と加工材料2を固定するバイス113の固定位置1134が重なる場合、干渉しない位置までバイス113を移動させる。具体的には、加工装置本体部14のヘッド13や加工工具12が、バイス113と干渉しない位置までセッティング枠111に収められたバイス113を、セッティング枠111ごと移動部(バイス移動レール1135と車輪1136)を用いて移動する工程を行う。この工程では、バイス113とセッティング枠111は移動するが、加工材料2は動くことがなく。セッティング枠111とバイス113のみが移動する。
5.バイス固定工程
次いで、バイス113の移動顎部1132に設けられたシリンダ1133を駆動させ、加工材料2を固定する工程を行う。
6.加工工程
次いで、加工装置本体部14のヘッド13に装着した加工工具12により、加工材料2を加工する工程を行う。
【0029】
前述の「(加工位置画像生成部)」で説明したように、加工材料2の上の凹凸に合わせて加工位置画像54の歪みを補正する場合には、前記「2.加工位置画像生成工程」において、加工データ4に基づき、加工材料2の加工位置が基準面52より高いときは加工位置画像54を拡大し、加工位置が基準面52より低いときは加工位置画像54を縮小する、加工位置画像を補正して加工位置画像54を生成する工程を加えてもよい。
【0030】
また、加工材料2の色に応じて加工位置画像54の色を変更する場合にあっては、前記「2.加工位置画像生成工程」において、加工材料2の色に応じて加工位置画像54の色を変更して加工位置画像54を生成する工程を加えてもよい。
【0031】
以上、本発明に係る実施例の加工装置1や加工材料2の製造方法について、図面を参照して詳述し、多様な変更可能な態様を説明してきたが、具体的な構成は、これらの実施の態様に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
【0032】
また、前述の実施例および多様な態様は、その目的および構成等に特に矛盾や問題がない限り、互いの技術を流用して組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0033】
1 加工装置
11 セッティング台
111 セッティング枠
112 位置決め部材
113 バイス
1131 固定顎部
1131a 固定顎部面
1132 移動顎部
1134 固定位置
1133 シリンダ
1135 バイス移動レール(移動部)
1136 車輪(移動部)
1138 バイス基部
114 載置面
12 加工工具
13 ヘッド
14 加工装置本体部
17 操作部/表示部
19 スライドカバー
2 加工材料
21 見かけ上の凹部
22 見かけ上の凸部
23 加工前の加工材料
3 プロジェクター
31 投影光
32 支柱
33 支持材
4 加工データ
5 加工位置画像生成部
51 送信部
52 基準面
54 加工位置画像
55 加工領域
551 第1加工領域
552 第2加工領域
553 第3加工領域
56 干渉領域
57 画像補正部
58 色補正部
6 ネットワーク
61 サーバ