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特許7448388成形体着色用樹脂組成物、成形体、およびマスターバッチ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】成形体着色用樹脂組成物、成形体、およびマスターバッチ
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/12 20060101AFI20240305BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20240305BHJP
   C08K 9/02 20060101ALI20240305BHJP
   C08J 3/22 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
C08L101/12
C08K3/013
C08K9/02
C08J3/22 CEZ
C08J3/22 CER
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020050870
(22)【出願日】2020-03-23
(65)【公開番号】P2021147557
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2022-12-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000219912
【氏名又は名称】東京インキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】本間 保和
(72)【発明者】
【氏名】井上 敦志
(72)【発明者】
【氏名】早川 孝
(72)【発明者】
【氏名】吉田 圭
(72)【発明者】
【氏名】高橋 昌太郎
【審査官】内田 靖恵
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-066893(JP,A)
【文献】特開2001-026077(JP,A)
【文献】特開平07-052335(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L
C08K
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パール顔料と、熱可塑性樹脂と、前記パール顔料以外の顔料と、を含む成形体着色用樹脂組成物であって、
当該パール顔料のレーザー回折散乱法による体積基準の積算分率における累積50%に相当する粒径をD50とし、当該累積75%に相当する粒径をD75としたとき、
(a)D50が、μm以上、25μm以下であり、かつ
(b)(D75-D50)/D50が、0.4以下であり、
前記パール顔料の含有量が、成形体全体に対して、0.001質量%以上、0.4質量%以下となるように構成された、成形体着色用樹脂組成物。
【請求項2】
前記顔料の合計の含有量が、前記成形体全体に対して、0.01質量%以上、10質量%以下となるように構成された、請求項1に記載の成形体着色用樹脂組成物。
【請求項3】
前記パール顔料は、基材表面が金属酸化物で被覆されたものである、請求項1または2に記載の成形体着色用樹脂組成物。
【請求項4】
前記基材は、マイカ、雲母、ガラス、アルミナ、及びシリカの中から選ばれる1種または2種以上である、請求項3に記載の成形体着色用樹脂組成物。
【請求項5】
前記熱可塑性樹脂が、ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、及びポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)の中から選ばれる1種または2種以上を含む、請求項1乃至いずれか一項に記載の成形体着色用樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1乃至いずれか一項に記載の成形体着色用樹脂組成物を用いてなるマスターバッチ。
【請求項7】
請求項1乃至いずれか一項に記載の成形体着色用樹脂組成物を用いてなる成形体。
【請求項8】
請求項1乃至5いずれか一項に記載の成形体着色用樹脂組成物を用いて、成形体のブロンズ現象を低減する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形体着色用樹脂組成物、成形体、およびマスターバッチに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、パール顔料は金属光沢を呈するものとして知られ、パール顔料を用いた種々の樹脂成形体が開発されている。例えば、特許文献1には、合成マイカパール顔料0.5~50質量%配合した熱可塑性樹脂組成物による成形品が、金属光沢を有することが開示されている。
【0003】
一方で、立体加工が施された樹脂成形体においては、使用者が観察する角度の違いによって光の反射が変化する。そのため、使用者が感じられる色味、印象、美感等が異なる現象が生じ、その結果、外観上の品質イメージが低下し、統一感が損なわれる場合があった。このような現象の原因として、金属光沢に似たブロンズ現象が知られている。
ブロンズ現象の発生要因は様々あり、そのメカニズムの詳細は明らかではないが、要因の一つとして、樹脂成形体に対する光の反射や樹脂成形体に対する視覚角度が多方向となることにより、色相の変色等が見られる結果、ブロンズ現象が観察されることが推測される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-9035号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明者らは、樹脂成形体におけるブロンズ現象を抑制すべく鋭意検討を行った結果、従来技術に反し、特定の粒度分布を有するパール顔料を樹脂成形体に配合することにより、パール顔料による金属光沢を抑制しつつ、ブロンズ現象を低減できる、という新たな知見を得た。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、パール顔料と、熱可塑性樹脂と、を含む成形体着色用樹脂組成物であって、
当該パール顔料のレーザー回折散乱法による体積基準の積算分率における累積50%に相当する粒径をD50とし、当該累積75%に相当する粒径をD75としたとき、
(a)D50が、1.0μm以上、35μm以下であり、かつ
(b)(D75-D50)/D50が、0.5以下である、
成形体着色用樹脂組成物を提供する。
【0007】
本発明は、上記成形体着色用樹脂組成物を用いてなる成形体を提供する。
【0008】
本発明は、上記成形体着色用樹脂組成物を用いてなるマスターバッチを提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ブロンズ現象を抑制できる成形体着色用樹脂組成物、マスターバッチ、及び成形体が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、説明する。なお、本明細書中、「略」という用語は、特に明示的な説明の無い限りは、製造上の公差や組立て上のばらつき等を考慮した範囲を含むことを表す。本明細書中、数値範囲の説明における「a~b」との表記は、特に断らない限り、a以上b以下のことを表す。例えば、「1~5質量%」とは「1質量%以上5質量%以下」を意味する。
【0011】
<成形体着色用樹脂組成物>
本実施形態において、成形体着色用樹脂組成物は、パール顔料と、熱可塑性樹脂と、を含み、当該パール顔料は所定の粒度分布を有する。本実施形態の成形体着色用樹脂組成物は、主に、ブロンズ現象の抑制が好まれる成形体に用いられることが好適である。以下、各成分について、詳述する。
【0012】
[パール顔料]
本実施形態において、パール顔料は、ブロンズ現象を抑制するために用いられるものである。パール顔料とは、真珠のような光沢を呈する顔料である。
本実施形態のパール顔料は、レーザー回折散乱法による累積粒度分布の体積基準の積算分率における累積50%に相当する粒径をD50とし、当該累積75%に相当する粒径をD75としたとき、
(a)D50が、1.0μm以上、35μm以下であり、かつ
(b)(D75-D50)/D50が、0.5以下である。
【0013】
すなわち、条件(a)により、パール顔料の中心的な粒径を特定しつつ、条件(b)により、粒径のばらつきを抑制し、パール顔料の粒度分布において粒径が大きい側の割合を低減し、かつ粒度分布のばらつきを抑制している。これにより、パール顔料が有する光沢(光の反射や干渉)を利用することでブロンズ感を低減しつつ、パール顔料によるぎらつきを効果的に抑制できると推測される。
なかでも、ブロンズ現象の発生要因は様々ありそのメカニズムの詳細までは明らかではないものの、本実施形態においては、以下の理由により、パール顔料の粒径・粒度分布を制御することで、ブロンズの抑制を抑制できると推測される。すなわち、ブロンズと感じられる色において生じる見る角度によって変化する色と、パール顔料に起因する角度の違いによって感じられる色の変化(すなわち、パール顔料が有する光の反射や干渉による金属光沢)が適合し、成形体全体において光の反射が適度に制御されると推測される。
【0014】
50の下限値は、パール顔料によるブロンズ抑制作用を得る観点から、1.0μm以上であり、好ましくは5.0μm以上であり、より好ましくは9.0μm以上である。一方、D50の上限値は、パール顔料による金属光沢やぎらつきの発生を抑制する観点から、35μm以下であり、好ましくは30μm以下であり、より好ましくは25μm以下である。
また、(D75-D50)/D50は、粒径が大きい側における粒度分布のばらつきを抑制することで、パール顔料によるぎらつきを効果的に抑制する観点から、0.5以下であり、0.4以下が好ましく、0.3以下がより好ましい。
【0015】
パール顔料としては、基材表面が金属酸化物で被覆されたもの、塩基性炭酸鉛、砒酸水素鉛、酸化塩化ビスマスなどの鱗片状箔片、魚鱗粉、貝殻片、および真珠片などが挙げられる。なかでも、パール顔料の呈する色相やパール感を調整でき、安定的にブロンズ現象を抑制する点から、基材表面が金属酸化物で被覆されたものが好ましい。
上記の金属酸化物としては、酸化チタン、または酸化鉄が挙げられる。金属酸化物は、一層または二層以上であってもよく、例えば、酸化チタン層の上に、酸化鉄層が積層したものであってもよい。効果的にブロンズ現象を抑制する点から、酸化チタン層により基材が被覆されていることが好ましい。なお、被覆とは、全体が連続する場合に限られず、一部に非被覆領域を有するものであってもよい。
また、金属酸化物層の厚みを調整することにより、パール顔料の色相とパール色を制御しやすくなる。金属酸化物層の厚みとしては、用途・目的に応じて適宜調整されるが、例えば、40~160nmが挙げられる。
また、上記の基材としては、白雲母、黒雲母、金雲母、及び合成金雲母等の雲母、マイカ、ガラス、アルミナ、並びにシリカの中から選ばれる1種または2種以上が挙げられる。基材の形状は、パール顔料に特有の光沢を呈する観点から、薄片状であることが挙げられる。
【0016】
パール顔料のアスペクト比は、特に限定されないが、例えば、5~100であってもよく、10~80であってもよい。
【0017】
また、パール顔料の含有量は、成形体に対して、0.001質量%以上が好ましく、0.002質量%以上がより好ましく、0.003質量%以上がさらに好ましい。これにより、パール顔料によるぎらつき抑制を保持しつつ、ブロンズ現象を効果的に抑制できる。
一方、パール顔料の含有量は、成形体に対して、10質量%以下が好ましく、5質量%以下上がより好ましく、1質量%以下がさらに好ましく、0.4質量%以下がことさらに好ましい。これにより、ブロンズ現象を抑制しつつ、パールによるぎらつきを低減できる。
すなわち、本実施形態の成形体着色用樹脂組成物を用いて得られる成形体の全質量に対するパール顔料の質量を制御することで、ブロンズ現象を効果的に抑制できる。
【0018】
なお、本実施形態の成形体着色用樹脂組成物は、後述するパール顔料以外の顔料をさらに含んでもよい。この場合、顔料の合計の含有量は、成形体に対して、0.01質量%以上が好ましく、0.02質量%以上がより好ましく、0.03質量%以上がさらに好ましい。一方、顔料の合計の含有量は、成形体に対して、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましく、3質量%以下がさらに好ましく、1質量%以下がことさらに好ましい。
【0019】
[熱可塑性樹脂]
熱可塑性樹脂としては、成形体着色用樹脂組成物に用いられる樹脂であれば、特に限定されず公知の樹脂を用いることができる。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、及びポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)の中から選ばれる1種または2種以上が挙げられる。なかでも、効果的にブロンズ現象を抑制する点から、ポリオレフィン樹脂が好ましく、ポリエチレン樹脂、またはポリプロピレン樹脂がより好ましい。
【0020】
[成形体着色用樹脂組成物の使用]
本実施形態の成形体着色用樹脂組成物は、公知の方法で製造することができ、例えば、後述するマスターバッチとして使用されてもよく、各種任意成分とともにコンパウンドに使用されてもよい。
なお、コンパウンドとは、成形体の原料となる樹脂組成物全量を意味する。コンパウンドは、着色成分として、粉末状のドライカラーを含んでもよい。また、ドライカラーは、金属石鹸、硬化ひまし油及びポリエチレンワックス等で顔料をくるんだものである。
【0021】
<マスターバッチ>
本実施形態のマスターバッチは、上記の成形体着色用樹脂組成物を用いてなるものであり、必要に応じて加えられる各種添加剤と共に、ペレット化されたものである。マスターバッチは濃縮されたものであるため、成形体製造時には希釈用樹脂により希釈されて使用される。
【0022】
マスターバッチに含まれるパール顔料の濃度は、最終的に得られる成形体に合わせて設定されるが、例えば、以下のように設定してもよい。
マスターバッチに含まれるパール顔料の濃度は、例えば、マスターバッチ全体に対して、0.01~30質量%が好ましく、0.05~20質量%がより好ましく、0.5~15質量%がさらに好ましい。上記パール顔料の濃度を、上記下限値以上とすることにより、ブロンズ現象を抑制しやすくなり、上記上限値以下とすることにより、パール顔料によるぎらつきを安定的に抑制できる。
【0023】
マスターバッチには、本発明の効果を損なわない範囲で、パール顔料以外の顔料、エステル系ワックス、金属石鹸、ポリエチレンワックス、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤等各種安定剤、難燃剤、界面活性剤等各種の添加剤を加えてもよい。
【0024】
パール顔料以外の顔料としては、無機顔料、及び有機顔料のいずれであってもよい。例えば、カーボンブラック、黒酸化鉄(四三酸化鉄)、黒酸化チタン、銅マンガンブラック、銅クロムブラック、及びコバルトブラックなどの黒色無機顔料:シアニンブラック、及びアニリンブラックなどの黒色有機顔料:フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン等のフタロシアニン顔料:アゾイエローレーキ、アゾレーキレッド、モノアゾイエロー等のアゾ顔料:キナクリドン顔料、ペリレン顔料、キノフタロン顔料、アントラキノン顔料等の多環式顔料:群青、コバルト、弁柄、酸化チタン、ニッケルチタンイエロー、クロムチタンイエロー等の無機顔料などを含有してもよい。これら顔料は、1種または2種以上を用いることができる。
なかでも、パール顔料との相乗効果により、ブロンズ現象を効果的に抑制する観点から、黒色顔料、フタロシアニン顔料、群青、コバルトなどを含むことが好ましい。また、パール顔料の光のL色座標における色相と、パール顔料以外の顔料のメインのL色座標における色相を、適切に組み合わせることが好ましい。
【0025】
顔料全体(パール顔料およびパール顔料以外の顔料の合計)の含有量は、マスターバッチの熱可塑性樹脂100質量部に対して、1質量部以上であることが好ましく、2質量部以上であることが好ましく、4質量部以上であることがより好ましい。これにより、ブロンズ現象を抑制しつつ、所望の色に成形体を着色することができる。
一方、顔料全体(パール顔料およびパール顔料以外の顔料の合計)の含有量は、マスターバッチの熱可塑性樹脂100質量部に対して、50質量部以下であることが好ましく、20質量部以下であることがより好ましい。これにより、熱可塑性樹脂に対し顔料を良好に混練できる。
【0026】
エステル系ワックスは、顔料の均一な配合をしやすくするために用いられる。エステル系ワックスとしては、軟化温度100℃程度以下であることが好ましい。例えば、常温で固体のモンタン酸ワックス、硬化ヒマシ油等が好ましく、モンタン酸とエチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール等の一種又はそれ以上との脂肪族二価アルコールとのエステルであることがより好ましい。市販品としては、ヘキスト社商品「ヘキストワックスE」、BASF社商品「EワックスBASF」等が挙げられる。
【0027】
また、ポリエチレンワックスは、顔料の均一な配合をしやすくするために用いられる。ポリエチレンワックスとしては、軟化点115℃以下であることが好ましい。エチレンを高温高圧下で重合したもの、ポリエチレン重合物の低分子量成分を分離精製したもの、あるいはポリエチレンを熱分解したもの等が挙げられ、顔料の分散性を良好にする観点から、エチレンを高温高圧下で重合したものが好ましい。また、得られた重合体を酸化したり、酸変性してもよい。市販品としては三井化学社製「ハイワックス」、ハネウェル社製「A-C」等が挙げられる。
【0028】
[マスターバッチの製造方法]
本実施形態におけるマスターバッチは、以下のようにして製造される。
まず、例えば、バンバリミキサー、ニーダー、二軸押出機等といった通常の混練機を用い、パール顔料、熱可塑性樹脂及びその他必要に応じた添加剤を混練し、熱可塑性樹脂にパール顔料を練り込む。つぎに、パール顔料及び熱可塑性樹脂の混合物を混練機のダイスより吐出することによってマスターバッチが得られる。
【0029】
[希釈用樹脂]
希釈用樹脂は、後述する成形体の材料となる主原料であり、成形体の成形時に上記のマスターバッチを希釈するための樹脂である。
希釈用樹脂としては、上述した熱可塑性樹脂と同様のものが用いられ、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポスチレン樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、及びポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。なかでも、ブロンズ発生を効果的に抑制する点から、ポリオレフィン樹脂であることが好ましい。
また、希釈用樹脂は、マスターバッチに含まれる熱可塑性樹脂と同じであってもよく、異なるものであってもよいが、成形体の各種特性を良好にする観点から、同じ種類の熱可塑性樹脂であることが好ましい。
【0030】
また、本実施形態において、マスターバッチは、希釈用樹脂により、5~100倍に希釈されることが好ましく、10~50倍に希釈されることがより好ましい。
【0031】
<成形体>
成形体は、上記の成形体着色用樹脂組成物からなる。
また、成形体の製造方法は、公知の方法を用いることができる。例えば、上記成形体着色用樹脂組成物を、必要に応じた添加剤とともに、ブロー成形、押出成形、インフレーション成形、Tダイによるフィルム成形、及び射出成形する方法や金型内に配置してプレス成型する方法が挙げられる。いずれの方法においても、ブロンズ現象発生の抑制効果が得られる。
【0032】
本実施形態の成形体は、ブロンズ現象が抑制されたものである。外観が重視され、様々な形状に加工される電子・電気・OA機器、家具、及び雑貨類、自動車外装・内装部品等の分野で使用することができる。
【0033】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
以下、参考形態の例を付記する。
1.
パール顔料と、熱可塑性樹脂と、を含む成形体着色用樹脂組成物であって、
当該パール顔料のレーザー回折散乱法による体積基準の積算分率における累積50%に相当する粒径をD 50 とし、当該累積75%に相当する粒径をD 75 としたとき、
(a)D 50 が、1.0μm以上、35μm以下であり、かつ
(b)(D 75 -D 50 )/D 50 が、0.5以下である、成形体着色用樹脂組成物。
2.
前記パール顔料の含有量が、前記成形体全体に対して、0.001質量%以上、10質量%以下である、1.に記載の成形体着色用樹脂組成物。
3.
前記パール顔料は、基材表面が金属酸化物で被覆されたものである、1.または2.に記載の成形体着色用樹脂組成物。
4.
前記基材は、マイカ、雲母、ガラス、アルミナ、及びシリカの中から選ばれる1種または2種以上である、3.に記載の成形体着色用樹脂組成物。
5.
前記パール顔料以外の顔料をさらに含む、1.乃至4.いずれか一つに記載の成形体着色用樹脂組成物。
6.
前記熱可塑性樹脂が、ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、及びポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)の中から選ばれる1種または2種以上を含む、1.乃至5.いずれか一つに記載の成形体着色用樹脂組成物。
7. 1.乃至6.いずれか一つに記載の成形体着色用樹脂組成物を用いてなるマスターバッチ。
8. 1.乃至6.いずれか一つに記載の成形体着色用樹脂組成物を用いてなる成形体。
【実施例
【0034】
次に、実施例により本発明を詳しく説明するが、本発明の内容は実施例に限られるものではない。
【0035】
<実施例及び比較例>
(材料)
実施例及び比較例で使用した材料は、以下の通りである。
[熱可塑性樹脂]
・ポリエチレン「ペトロセン353」製造元:東ソー株式会社製
[パール顔料]
・「Iriodin(R) 221 Rutile Fine Blue」(イリオジン221)製造元:メルク株式会社製
・「Iriodin(R) 289 Rutile Fine Blue」(イリオジン289)製造元:メルク株式会社製
[その他顔料]
・顔料(青)「群青No.8000」製造元:第一化成工業株式会社製
・顔料(青)「Lionol Blue SL」製造元:トーヨーカラー株式会社社製
・顔料(赤)「Cinquasia Pink K4430FP」製造元:BASF社製
・顔料(黒)「カーボン#30B」製造元:三菱ケミカル株式会社製
・顔料(黒)「カーボンBP880」製造元:Cabot社製
【0036】
(マスターバッチの作成)
上記の材料を用い、表1の組成(質量%、なお表中の「%」は「質量%」を示す)となるように、パール顔料と、その他顔料と、熱可塑性樹脂とを、二軸押出機を用いて、成型温度を50~160℃、押出機回転数200rpmで混練し、得られた混練物をダイスより吐出することによってマスターバッチを得た。
【0037】
(成形体の作成)
得られた各マスターバッチに1質量部対して、表1に示す希釈濃度となるように希釈用樹脂としてポリエチレン樹脂(「ペトロセン353」東ソー株式会社製)をそれぞれ混合して、成形材料を作製した。得られた成形材料を、射出成形機にて成形体(樹脂プレート:大きさ80×50mm、厚み2mm)を作成した。
【0038】
<評価>
パール顔料、樹脂プレートについて、それぞれ以下の評価を行った。結果を表1に示す。
【0039】
(パール顔料のレーザー回折散乱法による粒度回析)
レーザー回折散乱法(レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置、HORIBA社製、「LA-960」)により粒度回析を行い、パール顔料のD50(μm)、D75(μm)を求めた。
【0040】
(ブロンズ現象の評価)
作成した各樹脂プレートの表面色を専門家5名がさまざまな角度から目視で観察し、測色計では測定できないほどの微妙な色相の変化(ブロンズ現象)の有無を観察し、以下の基準で評価した。結果を、表1に示す。
◎:専門家5名が色相の変化がないと判断した。
〇:専門家5名のうち3名が色相の変化がないと判断したが、2名が色相の変化があると判断した。
×:専門家5名が色相の変化があると判断した。
【0041】
【表1】
【0042】
実施例1~5はいずれもブロンズ現象が抑制されていたのに対し、比較例1~4はブロンズ現象が観察された。詳細には、実施例1~4は、角度を変えても黒の色味は変化しなかった。実施例5は、ブロンズ現象は抑制されているが、光輝材が配合されていることが感じられる場合があるという意見があった。比較例1,2,4は、角度によって黒と、黄味の黒にブロンズした。比較例3は、パール顔料のD50が大きく、パール色と他の顔料の色が同調していない為に、ブロンズ感が強く感じられた。