(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】成形システム
(51)【国際特許分類】
B21D 26/033 20110101AFI20240305BHJP
B21D 43/00 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
B21D26/033
B21D43/00 E
B21D43/00 G
(21)【出願番号】P 2020057621
(22)【出願日】2020-03-27
【審査請求日】2022-09-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162640
【氏名又は名称】柳 康樹
(72)【発明者】
【氏名】板垣 昂
(72)【発明者】
【氏名】山内 啓
(72)【発明者】
【氏名】鴻上 清正
【審査官】石川 健一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/173575(WO,A1)
【文献】特開2015-080796(JP,A)
【文献】特開2018-039023(JP,A)
【文献】特開2009-220141(JP,A)
【文献】実開昭58-066037(JP,U)
【文献】特開昭59-124550(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 26/033
B21D 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属材料を膨張変形させて成形を行う成形システムであって、
前記成形を行う成形装置と、
前記金属材料を搬送する少なくとも一つの搬送装置と、を備え、
前記搬送装置は、
前記金属材料を保持した状態で前記成形装置へ搬送し、
且つ、成形の前処理を行う前処理装置が存在する場合は、前記搬送装置は前記金属材料を保持した状態で前記前処理装置へ搬送し、
前記搬送装置によって何れかの装置に前記金属材料が搬送される搬送工程から、前記何れかの装置での処理工程に至るまでの間において、前記搬送装置、及び前記何れかの装置の少なくとも一方が前記金属材料を保持し続ける、成形システム。
【請求項2】
前記前処理装置の一部に前記金属材料の位置決めを行う位置決め部を更に備え、
前記搬送装置は、前記位置決め部において位置決めがなされた状態の前記金属材料を保持し、
前記金属材料は、前記位置決め部で前記搬送装置に保持されてから、成形装置で前記成形が行われるまでの間、前記搬送装置、前記成形装置、及び前記前処理装置が存在する場合は当該前処理装置の何れかに保持され続ける、請求項1に記載の成形システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、成形システムとして、特許文献1に記載されたものが知られている。この成形システムは、金属材料を加熱する加熱部と、加熱された金属材料に流体を供給する流体供給部と、加熱された金属材料を成形する成形金型と、を有する。成形装置は、加熱された金属材料に成形金型の成形面を接触させることで、金属材料の形状を成形面に対応する形状とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、上述の特許文献1に記載の成形システムは、金属材料を膨張変形させて成形を行うものである。このようなタイプの成形システムでは、成形時に金属材料を膨張させる必要があるため、成形工程の前段階において、基準位置を明確にするための基準穴を形成することができない。このような基準穴を設けることができない状況下でも、成形品を用いた製品の精度を向上することが求められる。
【0005】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、成形品を用いた製品の精度を向上できる成形システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る成形システムは、金属材料を膨張変形させて成形を行う成形システムであって、成形を行う成形装置と、金属材料を搬送する少なくとも一つの搬送装置と、を備え、搬送装置は、金属材料を保持した状態で成形装置へ搬送し、且つ、成形の前処理を行う前処理装置が存在する場合は、搬送装置は金属材料を保持した状態で前処理装置へ搬送し、搬送装置によって何れかの装置に金属材料が搬送される搬送工程から、何れかの装置での処理工程に至るまでの間において、搬送装置、及び何れかの装置の少なくとも一方が金属材料を保持し続ける。
【0007】
成形システムにおいて、搬送装置は、金属材料を保持した状態で成形装置へ搬送し、且つ、成形の前処理を行う前処理装置が存在する場合は、搬送装置は金属材料を保持した状態で前処理装置へ搬送する。これに対し、搬送装置によって何れかの装置に金属材料が搬送される搬送工程から、何れかの装置での処理工程に至るまでの間において、搬送装置、及び何れかの装置の少なくとも一方が金属材料を保持し続ける。すなわち、搬送装置によって成形装置に搬送される搬送工程から、成形装置での成形処理工程に至るまでの間において、搬送装置、及び成形装置の少なくとも一方が金属材料を保持し続ける。また、前処理装置が存在する場合、搬送装置によって前処理装置に搬送される搬送工程から、前処理装置での前処理工程に至るまでの間において、搬送装置、及び前処理装置の少なくとも一方が金属材料を保持し続ける。この場合、搬送工程の前段階で金属材料の位置決めが行われていた場合、成形システムは、金属材料の位置が合わせられた状態を維持しながら、処理工程を実行することができる。すなわち、成形装置や前処理装置での金属材料の位置ずれや位相ずれを抑制するように拘束し続け、成形処理や前処理を実行することが可能となる。以上より、成形品を用いた製品の精度を向上できる。
【0008】
成形システムは、前処理装置の一部に金属材料の位置決めを行う位置決め部を更に備え、搬送装置は、位置決め部において位置決めがなされた状態の金属材料を保持し、金属材料は、位置決め部で搬送装置に保持されてから、成形装置で成形が行われるまでの間、搬送装置、成形装置、及び前処理装置が存在する場合は当該前処理装置の何れかに保持され続けてよい。この場合、成形システムは、金属材料が位置決め部で位置が合わせられた状態を維持しながら、成形装置での成形処理を行うことができる。
【0009】
本発明に係る成形システムは、金属材料を膨張変形させて成形を行う成形システムであって、成形を行う成形装置と、成形装置で成形された成形品の加工を行う後加工装置と、を備え、成形装置は、成形品に対してマーキングを行い、後加工装置は、マーキングによって形成されたマークを検出する。
【0010】
成形システムにおいて、成形装置は、成形品に対してマーキングを行い、後加工装置は、マーキングによって形成されたマークを検出する。膨張変形を伴う成形工程の前段階で金属材料に基準穴などを形成することはできないが、ここでは、成形装置が、膨張変形後の成形品にマーキングを行っている。マーキングは製品形状に対して精密な相対位置を記す役割を果たす。従って、成形工程の後工程では、後加工装置が、マーキングによる情報を用いて、精度の良い加工を行うことができる。以上より、成形品を用いた製品の精度を向上できる。
【0011】
後加工装置は、マークを検出し、当該検出結果に基づいて、成形品の加工の位置補正を行い、所定の加工を行ってよい。これにより、後加工装置は、マークの検出結果に基づいて、精度の良い加工を行うことができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、成形品を用いた製品の精度を向上できる成形システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本実施形態に係る成形システムで用いられている成形装置の概略図である。
【
図2】本実施形態に係る成形システムの構成を示す概念図の例である。
【
図3】各装置における金属パイプ材料の保持状態を示す模式図である。
【
図4】成形後の成形品の処理工程を示す模式図である。
【
図5】成形装置のマーキング部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、各図において同一部分又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0015】
図1は、本実施形態に係る成形システム100で用いられている成形装置1の概略図である。
図1に示すように、成形装置1は、加熱された金属材料を成形金型で成形する装置である。本実施形態では、成形装置1として、加熱された金属パイプ材料に流体を供給して成形金型の成形面に接触させることで成形及び焼き入れを行うSTAF成形装置が採用されている。本実施形態では、成形装置1は、水平面上に設置される。成形装置1は、成形金型2と、駆動機構3と、保持部4と、流体供給部6と、冷却部7と、制御部8と、を備える。なお、本明細書において、金属パイプ材料40(金属材料)は、成形装置1での成形完了前の中空物品を指す。金属パイプ材料40は、焼入れ可能な鋼種のパイプ材料である。また、水平方向のうち、成形時において金属パイプ材料40が延びる方向を「長手方向」と称し、長手方向と直交する方向を「幅方向」と称する場合がある。
【0016】
成形金型2は、金属パイプ材料40から製品を成形する型であり、上下方向に互いに対向する下側の金型11及び上側の金型12を備える。下側の金型11及び上側の金型12は、鋼鉄製ブロックで構成される。下側の金型11及び上側の金型12のそれぞれには、金属パイプ材料40の成形面を有する凹部が設けられる。下側の金型11と上側の金型12は、互いに密接した状態(型閉状態)で、各々の凹部が金属パイプ材料を成形すべき目標形状の空間を形成する。従って、各々の凹部の表面が成形金型2の成形面となる。下側の金型11は、ダイホルダ等を介して基台13に固定される。上側の金型12は、ダイホルダ等を介して駆動機構3のスライドに固定される。
【0017】
駆動機構3は、下側の金型11及び上側の金型12の少なくとも一方を移動させる機構である。
図1では、駆動機構3は、上側の金型12のみを移動させる構成を有する。駆動機構3は、下側の金型11及び上側の金型12同士が合わさるように上側の金型12を移動させるスライド21と、上記スライド21を上側へ引き上げる力を発生させるアクチュエータとしての引き戻しシリンダ22と、スライド21を下降加圧する駆動源としてのメインシリンダ23と、メインシリンダ23に駆動力を付与する駆動源24と、を備えている。
【0018】
保持部4は、下側の金型11及び上側の金型12の間に配置される金属パイプ材料40を保持する機構である。保持部4は、成形金型2の長手方向における一端側にて金属パイプ材料40を保持する保持部材26及び保持部材27と、長手方向の両側の保持部材26及び保持部材27は、金属パイプ材料40の端部付近を上下方向から挟み込むことによって、当該金属パイプ材料40を保持する。なお、保持部材26の上面及び保持部材27の下面には、金属パイプ材料40の外周面に対応する形状を有する溝部が形成される。保持部材26及び保持部材27には、図示されない駆動機構が設けられており、それぞれ独立して上下方向へ移動することができる。
【0019】
流体供給部6は、下側の金型11及び上側の金型12の間に保持された金属パイプ材料40内に高圧の流体を供給するための機構である。流体供給部6は、加熱されて高温状態となった金属パイプ材料40に高圧の流体を供給して、金属パイプ材料40を膨張させる。流体供給部6は、成形金型2の長手方向の両端側に設けられる。流体供給部6は、金属パイプ材料40の端部の開口部から当該金属パイプ材料40の内部へ流体を供給するノズル31と、ノズル31を金属パイプ材料40の開口部に対して進退移動させる駆動機構32と、ノズル31を介して金属パイプ材料40内へ高圧の流体を供給する供給源33と、を備える。駆動機構32は、流体供給時及び排気時にはノズル31を金属パイプ材料40の端部にシール性を確保した状態で密着させ、その他の時にはノズル31を金属パイプ材料40の端部から離間させる。なお、流体供給部6は、流体として、高圧の空気や不活性ガスなどの気体を供給してよい。また、流体供給部6は、金属パイプ材料40を上下方向へ移動する機構を有する保持部4とともに、同一装置としても良い。この場合、流体供給部6を支持するベース部材38と保持部4とを接続部材39で接続して良い。
【0020】
冷却部7は、成形金型2を冷却する機構である。冷却部7は、成形金型2を冷却することで、膨張した金属パイプ材料40が成形金型2の成形面と接触したときに、金属パイプ材料40を急速に冷却することができる。冷却部7は、下側の金型11及び上側の金型12の内部に形成された流路36と、流路36へ冷却水を供給して循環させる水循環機構37と、を備える。
【0021】
制御部8は、成形装置1全体を制御する装置である。制御部8は、駆動機構3、保持部4、流体供給部6、及び冷却部7を制御する。制御部8は、金属パイプ材料40を成形金型2で成形する動作を繰り返し行う。
【0022】
具体的に、制御部8は、例えば、ロボットアーム等の搬送装置からの搬送タイミングを制御して、開いた状態の下側の金型11及び上側の金型12の間に金属パイプ材料40を配置する。また、制御部8は、長手方向の両側の保持部材26で金属パイプ材料40を支持し、その後に保持部材27を降ろして当該金属パイプ材料40を挟むように、保持部4のアクチュエータ等を制御する。
【0023】
制御部8は、駆動機構3を制御して上側の金型12を降ろして下側の金型11に近接させ、成形金型2の型閉を行う。その一方、制御部8は、流体供給部6を制御して、ノズル31で金属パイプ材料40の両端の開口部をシールすると共に、流体を供給する。これにより、加熱により軟化した金属パイプ材料40が膨張して成形金型2の成形面と接触する。そして、金属パイプ材料40は、成形金型2の成形面の形状に沿うように成形される。なお、フランジ付きの金属パイプを形成する場合、下側の金型11と上側の金型12との間の隙間に金属パイプ材料40の一部を進入させた後、更に型閉を行って、当該進入部を押しつぶしてフランジ部とする。金属パイプ材料40が成形面に接触すると、冷却部7で冷却された成形金型2で急冷されることによって、金属パイプ材料40の焼き入れが実施される。
【0024】
上述のように、成形装置1は、金属パイプ材料40を膨張変形させて成形を行うものである。このため、成形装置1にて金属パイプ材料40が膨張する前段階に、金属パイプ材料40に穴をあけて流体が漏れる構造とすることができない。そのため、成形の前段階に、位置決め用の穴を金属パイプ材料40に形成することができない。そのため、本実施形態に係る成形システム100は、金属パイプ材料40の位置決めをした状態で成形装置1での成形を行うための構造を備えている。
【0025】
図2は、本実施形態に係る成形システム100の構成を示す概念図の例である。
図2に示すように、成形システム100は、金属パイプ材料準備エリアE1と、加熱エリアE2と、成形エリアE3と、集積エリアE4と、処理エリアE5と、加工エリアE6と、を備える。また、成形システム100は、金属パイプ材料準備エリアE1の位置決め部50と、加熱エリアE2の加熱装置60と、成形エリアE3の成形装置1と、集積エリアE4の集積部70と、処理エリアE5の検査装置81、スケール除去装置82、及び集積部83と、加工エリアE6の後加工装置90と、各エリアに配置された搬送装置110A~110Dと、を備える。搬送装置110A~110Dは、ロボット等の搬送装置によって構成される。
【0026】
金属パイプ材料準備エリアE1では、金属パイプ材料40の準備が行われる。また、金属パイプ材料準備エリアE1では、
図3(a)に示すような位置決め部50によって、金属パイプ材料40の位置決めが行われる。位置決め部50は、例えば
図3(a)に示すように、三点支持によって金属パイプ材料40を位置決めする。すなわち、位置決め部50は、金属パイプ材料40の両端部を支持する支持部51A,51Bと、金属パイプ材料40の長手方向の中央位置を支持する支持部51Cと、を備える。例えば、位置決め部50は、支持部51A,51B,51Cにより、金属パイプ材料40の位相を決めることができる。また、位置決め部50では、金属パイプ材料40の一方の端部を壁部52に押し当てることで、長手方向の位置決めがされる。
【0027】
図2に戻り、位置決め部50で位置決めされた金属パイプ材料40は、搬送装置110Aによって加熱エリアE2の加熱装置60へ搬送される。加熱エリアE2では、加熱装置60によって金属パイプ材料の加熱が行われる。加熱装置60は、
図3(c)に示すように、電極61,62を二セット備えている。一方の電極61,62は、金属パイプ材料40の一端部を挟み込んで把持する。他方の電極61,62は、金属パイプ材料40の他端部を挟み込んで把持する。加熱装置60は、電極61,62を介して金属パイプ材料40へ通電することで当該金属パイプ材料40を加熱する機構である。加熱装置60は、一方の電極61,62と他方の電極61,62との間に高電流を流す。これにより、金属パイプ材料40に軸方向の電流が流れ、金属パイプ材料40自身の電気抵抗により、金属パイプ材料40自体がジュール熱によって発熱する。
【0028】
図2に戻り、加熱装置60で加熱された金属パイプ材料40は、搬送装置110Bによって成形エリアE3の成形装置1へ搬送される。成形エリアE3では、成形装置1によって金属パイプ材料40の成形が行われる。これにより、成形品41が形成される(
図4参照)。
【0029】
成形装置1で成形された成形品41は、搬送装置110Cによって集積エリアE4の集積部70に集積される。集積部70は、複数の成形品41を集積する装置である。
図4(а)に示すように、集積部70において、搬送装置110Cは、成形装置1で成形された成形品41を把持し、集積台車71に載せる。搬送装置110Cは、当該動作を繰り返すことで、集積台車71に成形品41を積み上げることで集積する。
【0030】
図2に戻り、作業者は、集積部70において成形品41が集積された集積台車71を処理エリアE5の検査装置81へ搬送する。検査装置81は、成形品41の検査を行う。検査装置81は、成形品41の形状などについて検査を行い、所定の基準を満たしていないものについては、エラー表示をする。次に、作業者は、合格した成形品41をスケール除去装置82へ搬送する。スケール除去装置82は、成形時に成形品41に発生した酸化スケールを除去する。スケール除去装置82は、例えばショットブラストやウェットブラストによってスケールを除去する。作業者は、スケールが除去された成形品41を集積部83の集積台車に集積する。
【0031】
集積部83の成形品41は、搬送装置110Dによって加工エリアE6の後加工装置90へ搬送される。加工エリアE6の後加工装置90は、
図2に示すように、レーザーを成形品41に照射することで、穴あけ、切り欠き形成、及び切断などの加工を行う。
図4(b)(c)に示すように、後加工装置90は、レーザーヘッド91(加工部)を備える。後加工装置90は、レーザーヘッド91から成形品41に照射させながら、加工内容に応じて当該レーザーヘッド91を移動させる。
【0032】
本実施形態に係る成形システム100は、成形装置1で成形を行うまでの間に、位置決めが行われた金属パイプ材料40の相対位置及び相対位相の変化が無いように拘束する機能を有する。
【0033】
具体的に、成形システム100において、金属パイプ材料40は、搬送装置110A,110Bによって何れかの装置1,60に金属パイプ材料40が搬送される搬送工程から、何れかの装置1,60での処理工程に至るまでの間において、搬送装置110A,110B、及び何れかの装置1,60の少なくとも一方に把持され続ける。金属パイプ材料40は、位置決め部50で搬送装置110Aに把持されてから、成形装置1で成形が行われるまでの間、搬送装置110A,110B、成形装置1、及び加熱装置60の何れかに把持され続ける。
【0034】
より詳細には、
図3(b)に示すように、搬送装置110Aは、位置決め部50にて位置決めされた状態の金属パイプ材料40を把持部材101,102で挟み込むことで、当該金属パイプ材料40を把持する。このとき、搬送装置110Aは、位置決め部50上の金属パイプ材料40を把持前後で把持部材101,102に対する位置や角度がずれない構造とする。搬送装置110Aは、金属パイプ材料40を把持部材101,102で把持したまま、加熱装置60へ搬送する。なお、搬送装置110Aは、搬送中に金属パイプ材料40の把持を解除したり、把持状態を変えたり(例えば把持する位置や角度の変更)しない。
【0035】
図3(c)に示すように、搬送装置110Aは、金属パイプ材料40を把持したまま、加熱装置60に対して位置決めを行う。このとき、搬送装置110Aは、金属パイプ材料40を把持している位置や角度などの情報に基づき、位置決めを行う。搬送装置110Aの位置決めが完了したら、加熱装置60は、金属パイプ材料40の両端を電極61,62で把持する。
図3(d)に示すように、当該電極61,62で把持が完了したら、把持部100Aは、金属パイプ材料40の把持を解除して、把持部材101,102を再び位置決め部50へ戻す。
【0036】
次に、搬送装置110Bは、加熱後の金属パイプ材料40を把持部材101,102で挟み込むことで、当該金属パイプ材料40を把持する。このとき、搬送装置110Bは、加熱装置60上の金属パイプ材料40を把持前後で把持部材101,102に対する位置や角度がずれない構造とする。加熱装置60は、搬送装置110Bによる把持が完了したら、電極61,62による把持を解除する。搬送装置110Bは、金属パイプ材料40を把持部材101,102で把持したまま、成形装置1へ搬送する。なお、搬送装置110Bは、搬送中に金属パイプ材料40の把持を解除したり、把持状態を変えたり(例えば把持する位置や角度の変更)しない。
【0037】
図3(e)に示すように、搬送装置110Bは、金属パイプ材料40を把持したまま、成形装置1に対して位置決めを行う。このとき、搬送装置110Bは、金属パイプ材料40を把持前後で把持部材101,102に対する位置や角度がずれない構造とする。搬送装置110Bの位置決めが完了したら、成形装置1は、金属パイプ材料40の両端を保持部材26,27で把持する。
図3(f)に示すように、当該把持が完了したら、把持部100Bは、金属パイプ材料40の把持を解除して、把持部材101,102を再び加熱装置60側へ戻す。成形装置1に配置された金属パイプ材料40は、成形後は成形品41となる。
【0038】
また、成形装置1は、成形品41に対してマーキングを行う。
図5に示すように、成形装置1は、マーキング部120を有する。マーキング部120は、成形品41の外周面にマーキングを行う。マーキング部120は、ピンで刻印する場合を例にとると、ピン121と、ピン支持機構122と、油圧室123と、作動油供給部124と、を備える。ピン121は、下型11内に配置されており、上下方向に往復移動可能である。ピン121は、マーキングを行わないときは、成形面11aから突出しないように下型11内に収容される。ピン121は、マーキングを行うときは、成形面11aから突出する。ピン支持機構122は、ピン121を下型11内で支持する機構である。ピン支持機構122は、ピン121を上下方向に往復移動可能に支持する。また、ピン支持機構122は、バネ部材122aを備えている。バネ部材122aは、ピン121が成形面11aから突出した場合に、当該ピン121を元の位置に戻す方向へ弾性力を付与する。油圧室123は、下型11内に形成された内部空間である。油圧室123には、ピン121の基端部が露出している。作動油供給部124は、油圧室123に作動油を供給する。
【0039】
これにより、作動油供給部124が油圧室123に作動油を供給したら、ピン121の基端部が圧力を受け、ピン121が成形面11aから突出する。これにより、成形品41の外周面に窪み、または貫通穴によるマークが形成される。作動油が油圧室123から排出されると、ピン121の基端部に対する圧力が解除され、ピン121が元の位置に復帰する。なお、上述のような油圧機構は、下型11内に内蔵される必要はなく、ダイホルダやプレス装置に内蔵されてもよい。なお、ピン121が成形面から突出してマーキングを行うタイミングは特に限定されない。ただし、ピン121は、成形が終わって、成形品41の温度がある程度下がったタイミングでマーキングを行ってよい。この場合、加熱によって膨張していた成形品41が冷却によって収縮した後に、マークを付すことができる。
【0040】
上述のマーキング部120は、成形装置1の成形時には、ピン121を下型11内に収容しておく。マーキング部120は、成形が完了した後に、ピン121を成形面11aから突出させて、成形品41にピン121を押し当てる。これにより、成形品41にマークが付与される。マーキング部120は、例えば、下型11のうち、成形品41の両端部に該当する箇所や、成形品41の中央位置に該当する箇所に設けられてよい。また、マーキング部120は、上型12のうち、成形品41の両端部に該当する箇所や、成形品41の中央位置に該当する箇所に設けられてよい。ただし、マーキング部120の数、及び場所は特に限定されない。例えば、マーキング部120は、なるべく離れた位置を含めた二箇所以上であることが好ましい。また、マークは、座標が特定できる手段であれば何でもよく、例えば、ピンによる刻印の他、ケガキによる交差線でもよいし、穴あけでもよい。
【0041】
図4(b)(c)に示すように、後加工装置90は、マーキングによって形成されたマークMKを検出する。また、後加工装置90は、マークMKを検出し、当該検出結果に基づいて、レーザーヘッド91と成形品41との間の位置補正を行う。
図4(b)に示すように、後加工装置90は、マークMKを検出する検出部92を備える。検出部92は、例えばカメラによって構成される。検出部92は、撮影した画像に基づいて、マークMKの位置を検出する。そして、後加工装置90は、検出したマークMKの位置に基づいて、プリセットされた加工作業軌跡と後加工装置90内で把持されている成形品41との相対ずれを演算し、加工作業軌跡の補正量を演算する。そして、
図4(c)に示すように、レーザーヘッド91と切断ラインCLとの間にずれが生じている場合、後加工装置90は、レーザーヘッド91を切断ラインCLの位置まで移動させることにより、ずれを補正する。
【0042】
次に、本実施形態に係る成形システム100の作用・効果について説明する。
【0043】
成形システム100は、金属パイプ材料40を膨張変形させて高圧気体膨張成形を行うものである。このようなタイプの成形システム100では、成形時に金属材料を膨張させる必要があるため、成形工程の前段階において、基準位置を明確にするための基準穴を形成することができない。仮に、基準穴を設けることができれば、当該基準穴に位置決めピンなどを差し込むことで容易に金属パイプ材料40の位置決めを行うことができ、後加工装置90での加工においても、当該基準穴を用いて成形品41の位置決めを行うことができる。しかし、高圧気体膨張成形では、このような基準穴が金属パイプ材料40に形成されていては、当該基準穴から高圧の気体が漏れてしまい、成形を行うことができない。
【0044】
これに対し、本実施形態に係る成形システム100は、金属パイプ材料40を膨張変形させて成形を行う成形システム100であって、成形を行う成形装置1と、金属パイプ材料40を搬送する搬送装置と、を備え、搬送装置は、金属パイプ材料40を把持した状態で成形装置1へ搬送し、且つ、成形の前処理を行う加熱装置(前処理装置)が存在する場合は、金属パイプ材料40を把持した状態で加熱装置60へ搬送し、搬送装置によって何れかの装置1,60に金属パイプ材料40が搬送される搬送工程から、何れかの装置1,60での処理工程に至るまでの間において、搬送装置、及び何れかの装置1,60の少なくとも一方が金属パイプ材料40を把持し続ける。
【0045】
成形システム100において、搬送装置によって何れかの装置1,60に金属パイプ材料40が搬送される搬送工程から、何れかの装置1,60での処理工程に至るまでの間において、搬送装置、及び何れかの装置1,60の少なくとも一方が金属パイプ材料40を把持し続ける。すなわち、搬送装置110Bによって成形装置1に搬送される搬送工程から、成形装置1での成形処理工程に至るまでの間において、搬送装置110B、及び成形装置1の少なくとも一方が金属パイプ材料40を把持し続ける。また、加熱装置60が存在する場合、搬送装置110Aによって加熱装置60に搬送される搬送工程から、加熱装置60での加熱工程に至るまでの間において、搬送装置110A、及び加熱装置60の少なくとも一方が金属パイプ材料40を把持し続ける。この場合、搬送工程の前段階で金属パイプ材料40の位置決めが行われていた場合、成形システム100は、金属パイプ材料40の位置が合わせられた状態を維持しながら、処理工程を実行することができる。すなわち、成形装置1や加熱装置60での金属パイプ材料40の位置ずれや位相ずれが無いように拘束し続け、成形処理や加熱処理を実行することが可能となる。以上より、成形品41を用いた製品の精度を向上できる。
【0046】
成形システム100は、前処理装置の一部に金属パイプ材料40の位置決めを行う位置決め部50を更に備え、搬送装置110A,110Bは、位置決め部50において位置決めがなされた状態の金属パイプ材料40を把持し、金属パイプ材料40は、位置決め部50で搬送装置110A,110Bに把持されてから、成形装置1で成形が行われるまでの間、搬送装置110A,110B、成形装置1、及び加熱装置60が存在する場合は当該加熱装置60の何れかに把持され続ける。この場合、搬送装置110Aでの搬送工程、加熱装置60での加熱工程、搬送装置110Bでの搬送工程、及び成形装置1での成形工程において、金属パイプ材料40の位置ずれ及び位相のずれが無いように拘束し続け、繰り返し精度を担保することができる。従って、成形システム100は、金属パイプ材料40が位置決め部50で位置が合わせられた状態を維持しながら、成形装置1での成形処理を行うことができる。
【0047】
実施形態に係る成形システム100は、金属パイプ材料40を膨張変形させて成形を行う成形システム100であって、成形を行う成形装置1と、成形装置1で成形された成形品41の加工を行う後加工装置90と、を備え、成形装置1は、成形品41に対してマーキングを行い、後加工装置90は、マーキングによって形成されたマークを検出して、マーキング位置を基準に加工位置の補正演算を行って、所定の加工を行う。
【0048】
成形システム100において、成形装置1は、成形品41に対してマーキングを行い、後加工装置90は、マーキングによって形成されたマークを検出する。膨張変形を伴う成形工程の前段階で金属パイプ材料40に基準穴などを形成することはできないが、ここでは、成形装置1が、膨張変形後の成形品41にマーキングを行っている。マーキングは製品形状に対して精密な相対位置を記す役割を果たす。従って、成形工程の後工程では、後加工装置90が、マーキングによる情報を用いて、精度の良い加工を行うことができる。また、後加工装置90がマーキングの検出結果を用いて基準穴や切欠加工を行うことで、従来のカーボディーアセンブリー工程と同様の組立プロセスを利用することができる。特に本実施形態では、上述のように、成形装置1は、位置決め部50での位置決め状態を維持しつつ、成形を行うことができる。そのため、成形装置1は、位置ずれ及び位相のずれが抑制された状態の成形品41に対してマーキングを行うことができる。従って、後加工装置90は、金型成形面に対して精確な相対位置に記されているマーキングの位置情報を用いて、加工を行うことができる。以上より、成形品41を用いた製品の精度を向上できる。
【0049】
後加工装置90は、マークを検出し、当該検出結果に基づいて、成形品41に対する加工位置を精確なお相対位置に記されるマーク位置を基に加工の相対位置補正を行い、所定の加工を行う。これにより、後加工装置90は、マークの検出結果に基づいて、精度の良い加工を行うことができる。
【0050】
本発明に係る成形システムは、金属材料を膨張変形させて成形を行う成形システムであって、成形を行う成形装置と、金属材料を搬送する搬送装置と、成形装置で成形された成形品の加工を行う後加工装置と、を備え、搬送装置は、金属材料を保持した状態で成形装置へ搬送し、且つ、成形の前処理を行う前処理装置が存在する場合は、金属材料を保持した状態で前処理装置へ搬送し、金属材料は、搬送装置によって何れかの装置に金属材料が搬送される搬送工程から、何れかの装置での処理工程に至るまでの間において、搬送装置、及び何れかの装置の少なくとも一方に保持され続け、成形装置は、成形品に対してマーキングを行い、後加工装置は、マーキングによって形成されたマークを検出する。
【0051】
この成形システムによれば、上述の成形システムと同趣旨の作用・効果を得ることができる。
【0052】
本発明は、上述の実施形態に限定されるものではない。
【0053】
例えば、成形装置の上流側に、前処理装置が存在していなくともよい。すなわち、加熱装置は存在していなくともよい。この場合、成形装置が通電加熱用の電極を有する。また、前処理装置として、加熱装置以外の装置が存在してもよい。
【0054】
搬送装置は、ロボット等に限定されない。すなわち、搬送装置は、少なくとも位置と位相を維持した状態で金属パイプ材料を保持しながら搬送できるものであればよい。
【0055】
マーキングを行う機構は、上述の実施形態に限定されるものではない。例えば、上述の実施形態では、成形時はマーキングが行われず、成形が完了した後で、駆動機構がピンを駆動させて、マーキングを行っていた。しかし、このような駆動機構を省略し、成形面に常時、ピンが突き立っている構成が採用されてもよい。この場合、金属パイプ材料が成形面に接触すると同時にマーキングが行われる。なお、駆動機構を設ければ、冷却収縮などの影響が少ない製品形状凍結後にマーキングを施すことが可能となる。
【0056】
後加工装置は、カメラによる撮影以外の方法で、マークを検出してもよい。例えば、後加工装置は、接触センサなどによってマークを検出してもよい。
【0057】
例えば、成形装置として高圧気体膨張成形を行うものを例示したが、膨張変形によって成形を行う成形方法であれば、特に限定されない。例えばハイドロフォーミングなどによる成形方法が採用されてもよい。
【0058】
加工部は、後加工装置に限定されず、他の加工方法による装置が採用されてもよい。
【符号の説明】
【0059】
1…成形装置、60…加熱装置(前処理装置)、90…後加工装置、91…レーザーヘッド(加工部)、100…成形システム、110A,110B,110C,110D…搬送装置。