(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】燃焼装置用消音器
(51)【国際特許分類】
F23J 13/00 20060101AFI20240305BHJP
【FI】
F23J13/00 B
(21)【出願番号】P 2020061558
(22)【出願日】2020-03-30
【審査請求日】2022-12-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】畑中 清成
【審査官】古川 峻弘
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-196413(JP,A)
【文献】特開平05-126433(JP,A)
【文献】特開昭58-079891(JP,A)
【文献】特開平07-091225(JP,A)
【文献】特開2005-226465(JP,A)
【文献】特開2016-042007(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23J 13/00
F24H 9/00
F01N 1/00-1/24,13/00-13/20
F02C 7/24
F01D 25/00,25/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料を燃焼して燃焼ガスを排出する燃焼装置に取り付けられ、燃焼ガスの燃焼音を低減する燃焼装置用消音器であって、
無機繊維を含む材料からなり、
前記燃焼装置から排出された燃焼ガスが導入されるガス流入口と、前記燃焼ガスを外部に排出するガス排出口と、前記ガス流入口と前記ガス排出口とを連通するガス流路と、前記ガス流路を構成する壁の少なくとも一部に隣接する共鳴室と、が設けられた箱体を有し、
前記ガス流路と前記共鳴室との間に位置する前記壁には穴が設けられており、前記壁における前記穴を除く少なくとも一部の領域には、前記ガス流路側の表面に硬化層が形成さ
れ、前記硬化層は、前記共鳴室から前記壁を通過した燃焼音を前記共鳴室に向けて反射する、燃焼装置用消音器。
【請求項2】
前記穴は、径の異なる複数の穴から構成される、請求項1に記載の燃焼装置用消音器。
【請求項3】
前記共鳴室は、前記ガス排出口よりも前記ガス流入口に近い位置に設けられている、請求項1又は2に記載の燃焼装置用消音器。
【請求項4】
前記共鳴室が複数設けられている、請求項1又は2に記載の燃焼装置用消音器。
【請求項5】
前記箱体の内部に、無機繊維を含む材料からなり、前記ガス流路を屈曲させる開口部が形成された仕切り板を有し、
前記箱体の一部と前記仕切り板とは一体成形されている、請求項1~4のいずれか1項に記載の燃焼装置用消音器。
【請求項6】
前記箱体は、前記共鳴室を構成する共鳴室用部材と、前記共鳴室用部材に積層される底部材と、前記底部材に積層される枠部材と、を有し、
前記共鳴室用部材は一面が開口された器状であり、
前記底部材は前記共鳴室用部材の開口を覆う前記壁を有し、
前記底部材と前記壁とが一体成形されているとともに、
前記仕切り板と前記枠部材とが一体成形されている、請求項5に記載の燃焼装置用消音器。
【請求項7】
前記箱体は、前記共鳴室用部材と、前記壁と一体成形された前記底部材と、前記仕切り板と一体成形された複数の前記枠部材と、が積層されてなり、
隣り合う2枚の前記仕切り板の開口部が、積層方向から見た平面視で異なる位置に設けられることにより、蛇行した前記ガス流路が構成される、請求項6に記載の燃焼装置用消音器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃焼ガスを燃焼させて燃焼ガスを排出する燃焼装置に取り付けられ、燃焼ガスの燃焼音を低減する燃焼装置用消音器に関する。
【背景技術】
【0002】
一般家庭及び工場等で使用されている給湯機等には、燃焼ガスを燃焼させて熱交換する燃焼装置が使用されているものがある。従来より、燃焼ガスの燃焼時、及び燃焼排ガスの排出時に発生する騒音を低減するために、燃焼装置に取り付けられる種々の消音器が開示されている。
【0003】
例えば、特許文献1及び2には、燃焼ガスの導入口及び排出口を有する箱体と、その内部に配置され開口部を有する複数の仕切り板とを有し、導入口から排出口までの屈曲通路が構成された消音器が提案されている。
なお、上記特許文献1に記載された消音器は、箱体及び仕切り板が吸音材で形成されており、吸音材の表面には、鋼板又は多孔鋼板がライニングされている。
また、上記特許文献2に記載された消音器は、外壁を構成するケース及び屈曲通路を構成する筒状の排気通路部材は、部分的に複数の貫通孔を有する金属板から形成され、ケースと金属板との間に、例えば、ロックウールに熱硬化性樹脂がバインダとして加えられて板状に成形された吸音材が充填されている。
【0004】
このように構成された従来の消音器においては、屈曲通路内において、鋼板(金属板)に形成された複数の孔から燃焼ガスを吸音材に流入させることができ、吸音材により、騒音の消音効果を得ることができる。
【0005】
一方、特許文献3には、円筒形状の消音筒部と、消音筒部の一方の開口端に設けられた円板状の流入側板と、他方の開口端に設けられた円板状の流出側板と、を有し、ロックウールにより形成された消音器が提案されている。なお、流出側板の中央部には排気流出口及が形成されており、流入側板の中央部には中央開口が形成され、中央開口の周囲には複数の側部開口が形成されている。
このように構成された特許文献3に記載の消音器は、排気流入側に流入側板が設けられているため、燃焼音の音波の一部はこの流入側板で反射される。また、反射されなかった音波は、中央開口及び側部開口を通って内部に伝播され、広い周波数に渡って音波の共鳴が起こり、消音される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平11-159739号公報
【文献】特開2016-42007号公報
【文献】特開2004-308988号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1及び2に記載された消音器は、吸音材と鋼板とを用いて製造されており、組立が複雑となる。
また、特許文献3に記載された消音器は、3つの部品から構成されており、極めて簡単な構造であるものの、燃焼ガスの通路長が短いため、十分な消音効果を得ることができない。
【0008】
本発明は、上述した状況に鑑みてなされたものであり、簡単な構造であって、消音効果を向上させることができる燃焼装置用消音器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的は、本発明に係る下記(1)の燃焼装置用消音器により達成される。
【0010】
(1) 燃料を燃焼して燃焼ガスを排出する燃焼装置に取り付けられ、燃焼ガスの燃焼音を低減する燃焼装置用消音器であって、
無機繊維を含む材料からなり、
前記燃焼装置から排出された燃焼ガスが導入されるガス流入口と、前記燃焼ガスを外部に排出するガス排出口と、前記ガス流入口と前記ガス排出口とを連通するガス流路と、前記ガス流路を構成する壁の少なくとも一部に隣接する共鳴室と、が設けられた箱体を有し、
前記ガス流路と前記共鳴室との間に位置する前記壁には穴が設けられており、前記壁における前記穴を除く少なくとも一部の領域には、前記ガス流路側の表面に硬化層が形成されている、燃焼装置用消音器。
【0011】
また、本発明の燃焼装置用消音器は、下記(2)~(7)のいずれかであることが好ましい。
【0012】
(2) 前記穴は、径の異なる複数の穴から構成される、(1)に記載の燃焼装置用消音器。
【0013】
(3) 前記共鳴室は、前記ガス排出口よりも前記ガス流入口に近い位置に設けられている、(1)又は(2)に記載の燃焼装置用消音器。
【0014】
(4) 前記共鳴室が複数設けられている、(1)又は(2)に記載の燃焼装置用消音器。
【0015】
(5) 前記箱体の内部に、無機繊維を含む材料からなり、前記ガス流路を屈曲させる開口部が形成された仕切り板を有し、
前記箱体の一部と前記仕切り板とは一体成形されている、(1)~(4)のいずれか1つに記載の燃焼装置用消音器。
【0016】
(6) 前記箱体は、前記共鳴室を構成する共鳴室用部材と、前記共鳴室用部材に積層される底部材と、前記底部材に積層される枠部材と、を有し、
前記共鳴室用部材は一面が開口された器状であり、
前記底部材は前記共鳴室用部材の開口を覆う前記壁を有し、
前記底部材と前記壁とが一体成形されているとともに、
前記仕切り板と前記枠部材とが一体成形されている、(5)に記載の燃焼装置用消音器。
【0017】
(7) 前記箱体は、前記共鳴室用部材と、前記壁と一体成形された前記底部材と、前記仕切り板と一体成形された複数の前記枠部材と、が積層されてなり、
隣り合う2枚の前記仕切り板の開口部が、積層方向から見た平面視で異なる位置に設けられることにより、蛇行した前記ガス流路が構成される、(6)に記載の燃焼装置用消音器。
【発明の効果】
【0018】
本発明の燃焼装置用消音器によれば、ガス流路と、ガス流路を構成する壁の少なくとも一部に隣接する共鳴室と、が設けられた箱体を有し、上記壁には穴が設けられており、この穴を除く領域におけるガス流路側に硬化層が形成されているため、共鳴室に進入した燃焼音がガス流路側に戻りにくくなり、簡単な構造で消音効果を向上させることができる。また、箱体は無機繊維を含む材料からなるため、少ない部品点数で、ガス流路全面において吸音することができる。従って、優れた消音効果を得ることができる。
【0019】
また、本発明の好ましい実施形態に係る燃焼装置用消音器によれば、穴が径の異なる複数の穴から形成されているため、穴の径によって通過する周波数領域が異なり、広い周波数領域の音を吸音することができる。
【0020】
また、本発明の好ましい実施形態に係る燃焼装置用消音器によれば、共鳴室はガス排出口よりもガス流入口に近い位置に設けられているため、燃焼音が大きい箇所で共鳴室に吸音されるため、より高い消音効果を得ることができる。
【0021】
更に、本発明の好ましい実施形態に係る燃焼装置用消音器によれば、共鳴室が複数設けられているため、異なる周波数領域の音を効果的に消音することができる。
【0022】
更に、本発明の好ましい実施形態に係る燃焼装置用消音器によれば、ガス流路を屈曲させる開口部が形成された仕切り板を有し、箱体の一部と仕切り板とが一体成形されているため、組み立てるだけで所望のガス流路を構成することができ、簡単な構造で優れた消音効果を有する消音器を得ることができる。
【0023】
また、本発明の好ましい実施形態に係る燃焼装置用消音器によれば、底部材と、仕切り板と一体成形された枠部材とを積層するのみでガス流路が構成され、枠部材の数は自由に設計できるため、必要に応じて種々のガス流路長を有する消音器を容易に組み立てることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態に係る燃焼装置用消音器における成形体を模式的に示す断面図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す燃焼装置用消音器における成形体の構造を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、本発明の第2実施形態に係る燃焼装置用消音器における成形体を模式的に示す断面図である。
【
図4】
図4は、
図3に示す燃焼装置用消音器における成形体の構造を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本願発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、無機繊維を含む材料からなり、ガス流路と共鳴室とが設けられた箱体を有し、ガス流路と共鳴室との間に位置する壁に穴を設けるとともに、穴を除く少なくとも一部の領域のガス流路側の表面に硬化層を形成することにより、簡単な構造であっても消音効果を向上させることができることを見出した。
【0026】
本発明の第1実施形態に係る燃焼装置用消音器について、以下に詳細に説明する。
【0027】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る燃焼装置用消音器の成形体を模式的に示す断面図であり、
図2は、
図1に示す燃焼装置用消音器の成形体の構造を示す斜視図である。燃焼装置用消音器は、例えば金属製の筐体(図示せず)に消音機能を有する成形体が格納されたものであり、燃焼装置の側面に形成された燃焼ガスの出口に連通するように取り付けられる。
【0028】
成形体91は、燃焼装置から排出される燃焼ガスが導入されるガス流入口51と、燃焼ガスを外部に排出するガス排出口102と、ガス流入口51とガス排出口102とを連通するガス流路100aと、ガス流路100aに隣接する共鳴室34が設けられた箱体90を有する。
なお、ガス流入口51とガス排出口102とは、箱体90における互いに対向する面に設けられている。
【0029】
以下、
図2を参照して、第1実施形態に係る燃焼装置用消音器の成形体の構造を更に詳細に説明する。
直方体形状の成形体91は、器状の共鳴室用部材31、底部材92及び蓋部材9がこの順に積層されたものである。なお、これらの部材は、例えばロックウール等の無機繊維と、熱硬化性樹脂からなるバインダとを有する材料を、所望の形状に形成した金型に吸引ろ過させて乾燥させることにより、それぞれ一体成形されたものである。なお、無機繊維としては、アルミナファイバー、RCF(Refractory Ceramic Fiber)、AES(Alkaline.Earth Silicate)ファイバー、バサルトファイバー、シリカファイバー、ジルコニアファイバー、グラスウール、ロックウールなどから選ばれる少なくとも一つが選択可能であり、また、これらを組み合わせて用いてもよい。
【0030】
共鳴室用部材31は、矩形の共鳴室底31aと、共鳴室底31aの四辺から立ち上がる形状の共鳴室壁31bとを有し、ガス流入口及びガス排出口等は設けられておらず、一面が開口された器状である。
【0031】
底部材92は、矩形の底部92aと、底部92aの四辺から立ち上がる形状の壁部92bとを有する器状であり、壁部92bの一部に切り欠きが設けられてガス排出口102が形成されている。更に、底部材92の底部92aには、互いに径が異なる複数の穴93a、93b、93c及び93dが設けられている。更に、底部92aにおけるガス流路100a側には、穴93a~93dを除く領域に、無機バインダを塗布することで硬化層95が形成されている。
なお、底部材92の底部92aは、共鳴室用部材31の開口(共鳴室壁31bにおける周縁端面31c)と同一の外寸であり、共鳴室用部材31の開口を覆う形状である。従って、共鳴室用部材31に底部材92を積層したときに両者が確実に重なって、共鳴室用部材31と底部材92の底部92aとの間に、共鳴室34が構成される。
【0032】
蓋部材9は底部材92と類似した形状で上下を逆に配置したものであり、上底部9aとその四辺に設けられた壁部9bとを有する器状である。また、底部材92と同様に、壁部9bの一部に切り欠きが設けられて、ガス流入口51が形成されている。なお、底部材92の壁部92bは蓋部材9の壁部9bと同一の外寸であり、底部材92に蓋部材9を積層したときに、ガス流入口51及びガス排出口102を除く領域で、両者が確実に重なり、底部材92と蓋部材9との間にガス流路100aが構成される。
【0033】
そして、上述の通り、共鳴室用部材31、底部材92及び蓋部材9がこの順に積層されて成形体91をなし、この成形体91が金属製の筐体(図示せず)に格納されることにより、消音器が構成される。なお、この筐体は、成形体91を格納したときに、成形体91のガス流入口51及びガス排出口102に対応する位置に開口が設けられており、その他の部分については完全に成形体91を覆う形状である。
【0034】
このように構成された消音器においては、ガス流入口51から燃焼ガス8が導入されると、蓋部材9と底部材92との間のガス流路100aを燃焼ガス8が流通する。その後、燃焼ガス8の一部は、直接、ガス排出口102から排出され、その他の燃焼ガス8は穴93a~93dを介して共鳴室34に流入する。そして、共鳴室34に流入した燃焼ガス8の一部は、共鳴室34の壁面である共鳴室底31a及び共鳴室壁31bにより反射された後、再び穴93a~93dを介してガス流路100aに戻り、ガス排出口102から排出される。
【0035】
本実施形態においては、共鳴室用部材31、底部材92及び蓋部材9がいずれも、吸音性の高い無機繊維とバインダとを有する材料からなるものであるため、燃焼ガス8がガス流路100aを通過する際に、全壁面において燃焼音が吸収される。
また、本実施形態では、ガス流路100aを構成する壁(底部材92の底部92a)に共鳴室34が隣接しており、底部92aには穴93a~93dが設けられているため、燃焼ガス8が共鳴室34内の壁で反射したり、穴93a~93dを出入りする際に、音波が打ち消し合って、高い消音効果を得ることができる。
【0036】
更に、本実施形態においては、底部材92の底部92aにおけるガス流路100a側には、硬化層95が形成されている。従って、燃焼ガス8とともに共鳴室34に進入した燃焼音が、底部92aにおける穴93a~93d以外の領域をガス流路100aに向けて通過しようとした場合に、硬化層95によって反射され、共鳴室34内の壁で反射を繰り返す。その結果、硬化層95が形成されていない場合と比較して、簡単な構造で消音効果を著しく向上させることができる。
また、穴93a~93dはそれぞれ異なる径を有しており、穴の径によって通過する周波数領域が異なるため、広い周波数領域の音を吸音することができる。なお、穴の形状は、円形又は正方形とすることが好ましい。
【0037】
(第2実施形態)
図3は、本発明の第2実施形態に係る燃焼装置用消音器の成形体を模式的に示す断面図であり、
図4は、
図3に示す燃焼装置用消音器の成形体の構造を示す斜視図である。なお、第2実施形態において、上記第1実施形態と同一又は同等部分については、図面に同一符号を付してその説明を省略あるいは簡略化する。
【0038】
成形体101は、燃焼装置から排出される燃焼ガスが導入されるガス流入口11と、燃焼ガスを外部に排出するガス排出口102と、ガス流入口11とガス排出口102とを連通するガス流路20a、20b、20c、20d及び20eと、壁(底部92a)を介してガス流路20eに隣接する共鳴室34と、が設けられた組立構造の箱体110を有する。
また、箱体110の内部には、開口部13が形成された仕切り板6と、開口部14が形成された仕切り板7と、ガス流路20eと共鳴室34との間に位置する壁(底部92a)とが所望の間隔を開けて略平行に配置されている。
【0039】
なお、仕切り板6の開口部13は、箱体110におけるガス流入口11側の壁に接近して形成されており、仕切り板7の開口部14は、箱体110におけるガス排出口102側の壁に接近して形成されている。
【0040】
以下、
図4を参照して、第2実施形態に係る燃焼装置用消音器の成形体の構造を更に詳細に説明する。
直方体形状の成形体101は、第1実施形態と同様の共鳴室用部材31及び底部材92に、第1の枠部材3、第2の枠部材4及び蓋部材5がこの順に積層されたものである。なお、これらの全ての部材は、例えば上述の無機繊維と、熱硬化性樹脂からなるバインダとを有する材料を、所望の形状に形成した金型に吸引ろ過させて乾燥させることにより、それぞれ一体成形されたものである。なお、底部材92の底部92aには、複数の穴93a、93b、93c及び93dが形成されており、これらの複数の穴93a~93dを除く領域には、硬化層95が形成されている。
【0041】
底部材92に積層される第1の枠部材3は、底面となる矩形の仕切り板6と、仕切り板6の四辺から立ち上がる形状の壁部3bとを有する器状である。但し、仕切り板6は、ガス排出口102が形成されている面と対向する面に近接する位置に開口部13が形成されている。なお、第1の枠部材3の底面は、底部材92の壁部92bにおける周縁端面92cと同一の外寸であり、底部材92に第1の枠部材3を積層したときに、両者が確実に重なるように設計されている。
【0042】
第2の枠部材4は、底面となる矩形の仕切り板7と、仕切り板7の四辺から立ち上がる形状の壁部4bとを有する器状である。但し、壁部4bには、ガス排出口102が形成されている面に対向する面の一部が切り欠かれてガス流入口11が形成されている。また、仕切り板7には、ガス流入口11が形成されている面と対向する面に近接する位置に開口部14が形成されている。なお、第2の枠部材4の底面は、第1の枠部材3の壁部3bにおける周縁端面3cと同一の外寸であり、第1の枠部材3に第2の枠部材4を積層したときに、両者が確実に重なるように設計されている。
【0043】
蓋部材5は矩形の板状である。また、蓋部材5は、第2の枠部材4の壁部4bにおける周縁端面4cと同一の外寸であり、第2の枠部材4に蓋部材5を積層したときに、両者が確実に重なるように設計されている。
そして、上述の通り、共鳴室用部材31、底部材92、第1の枠部材3、第2の枠部材4及び蓋部材5が、この順に積層されて成形体101をなし、この成形体101を金属製の筐体(図示せず)に格納されることにより、消音器が構成される。なお、この筐体は、成形体101を格納したときに、成形体101のガス流入口11及びガス排出口102に対応する位置に開口が設けられており、その他の部分については完全に成形体101を覆う形状である。
【0044】
このように構成された消音器においては、ガス流入口11から燃焼ガス8が導入されると、蓋部材5と仕切り板7との間のガス流路20aを燃焼ガス8が流通し、ガス流路20bとなる開口部14を通過することにより、燃焼ガス8は屈曲して進行方向を転換し、仕切り板7と仕切り板6との間のガス流路20cを流通する。その後、燃焼ガス8はガス流路20dとなる開口部13を通過することにより屈曲して、更に進行方向を転換し、仕切り板6と底部材92の底部92aとの間のガス流路20eに到達する。
【0045】
その後、燃焼ガス8の一部は、直接、ガス排出口102から排出され、その他の燃焼ガス8は穴93a~93dを介して共鳴室34に流入する。そして、共鳴室34に流入した燃焼ガス8の一部は、共鳴室34の壁面である共鳴室底31a及び共鳴室壁31bにより反射された後、再び穴93a~93dを介してガス流路20eに戻り、ガス排出口102から排出される。
【0046】
本実施形態においても、第1実施形態と同様に、ガス流路20eを構成する壁(底部材92の底部92a)に共鳴室34が隣接しており、燃焼音が穴93a~93dへの通過及び共鳴室34内への出入りによって打ち消し合われるため、高い消音効果を得ることができる。また、底部材92の底部92aにおけるガス流路20e側には硬化層95が形成されているため、穴93a~93dが形成されている領域以外の領域では、共鳴室34に進入した燃焼音が共鳴室34からガス流路20eに向かって透過されにくくなる。従って、簡単な構造で消音効果を著しく向上させることができる。
【0047】
更に、本実施形態では、仕切り板6の開口部13と、仕切り板7の開口部14とが、積層方向から見た平面視で異なる位置に設けられており、また、ガス流入口11から離れた位置に開口部14が配置され、ガス排出口12から離れた位置に開口部13が配置されているため、蛇行した長いガス流路が構成される。そして、これらのガス流路を構成する共鳴室用部材31、底部材92、第1の枠部材3、第2の枠部材4及び蓋部材5の全ての部材が無機繊維を含む材料からなるものであるため、全壁面において燃焼音が吸収され、十分な消音効果を得ることができる。
【0048】
また、本実施形態では、仕切り板6と壁部3bとが一体成形されて第1の枠部材3が形成され、仕切り板7と壁部4bとが一体成形されて第2の枠部材4が形成されているとともに、ガス流路20eと共鳴室34との間に位置する壁(底部材92の底部92a)と壁部92bとが一体成形され、底部材92が形成されている。このように、成形体101は、共鳴室用部材31、底部材92、第1の枠部材3、第2の枠部材4及び蓋部材5のいずれも簡単な構造である5つの部材により構成することができる。そして、これらの部材を重ね合わせて(積層して)筐体に格納するだけで、消音器を組み立てることができるため、組立の工程数が減少し、製造工程を著しく簡略化することができる。
【0049】
なお、本実施形態では、2つの枠部材3及び枠部材4を使用した例を示したが、本発明はこれに限定されず、枠部材は1つであっても3以上であっても、本発明の消音器を構成することができる。
例えば、1つの枠部材で構成する場合には、
図3及び
図4に示す共鳴室用部材31、底部材92、第2の枠部材4及び蓋部材5を使用し、底部材92に第2の枠部材4を積層する際に、ガス流入口11がガス排出口102と同一の方向となるように配置する。これにより、ガス流入口11から導入された燃焼ガス8は、蓋部材5と仕切り板7との間のガス流路を流通し、開口部14を通過することにより屈曲して進行方向を転換した後、仕切り板7と底部材92の底部92aとの間のガス流路を流通して、一部は共鳴室34に出入りした後、ガス排出口102から排出される。
【0050】
また、3つの枠部材で構成する場合には、
図3及び
図4に示す共鳴室用部材31、底部材92、第1の枠部材3、第1の枠部材3と同一の形状の枠部材(図示せず)、第2の枠部材4及び蓋部材5を使用し、ガス流入口11と、隣り合う枠部材の開口部と、ガス排出口12とが、積層方向から見た平面視で互い違いになるように配置する。これにより、より長い蛇行したガス流路が構成され、消音効果をより一層向上させることができる。
更に同様にして、第1の枠部材3と同一の形状の枠部材を増加させることにより、ガス流路を簡単に延長することができるため、他の形状の枠部材を製造するための金型を準備する必要がない。従って、必要に応じて大きさが異なる筐体を準備するだけで、性能が異なる種々の大きさの消音器を容易に製造することができる。
【0051】
また、本実施形態では、共鳴室用部材31、底部材92、第1の枠部材3、第2の枠部材4及び蓋部材5の5種類の形状の金型を用いて、それぞれの部材を作製したが、例えば、ガス流入口11、開口部、穴93a~93d及びガス排出口12が形成されていない共鳴室用部材31と同一の形状の器状部材を作製し、所望の箇所に硬化層95を形成したり、ガス流入口、開口部、穴及びガス排出口等を必要に応じた箇所で切除することにより、底部材及び枠部材を製造することができる。これにより、極めて少ない金型で消音器を製造することができる。
【0052】
更に、本実施形態では、最上段に矩形の蓋部材5を積層したが、本発明は必ずしもこの蓋部材5を積層する必要はない。例えば、上部が解放した金属製の容器に、共鳴室用部材31、底部材92、第1の枠部材3及び第2の枠部材4を格納し、金属製の蓋で閉塞することにより、上記第2実施形態と同様の機能を得ることができる。
【0053】
なお、上述の第1及び第2実施形態では、径が異なる複数の穴93a~93dを有する底部材92を用いたが、本発明では穴を複数設ける必要はなく、1つでもよい。また、穴の形状についても、円形に限定されず、楕円形、多角形等の種々の形状で形成することができる。
【0054】
また、ガス流路を構成する壁に隣接するものであれば、複数の箇所に複数の共鳴室を設けてもよく、共鳴室の数及び形成箇所について特に制限されない。具体的には、複数の共鳴室と流路との間に位置する壁に穴が設けられており、例えば、複数の共鳴室毎に異なる径を有する穴を形成し、穴を除く領域の少なくとも一部に硬化層が形成される構成とすることができる。例えば、
図3及び
図4に示す共鳴室用部材31の内部に、共鳴室壁31bに平行な方向で複数の壁を設けることにより、複数の共鳴室を設けることができ、1つの共鳴室を設ける場合と比較して、より一層広い周波数領域の音を効果的に消音させることができる。
更に、第1及び第2実施形態では、共鳴室34はガス排出口102に近い位置に配置したが、ガス排出口102よりもガス流入口11に近い位置に共鳴室が設けられていると、燃焼音が大きい箇所で共鳴室に吸音されるため、より高い消音効果を得ることができる。
【0055】
また、本発明では、硬化層の材質及び硬化層を形成する方法も限定されない。例えば、無機バインダの塗布や噴霧でも形成することができる。
【0056】
また、第1及び第2実施形態では、共鳴室底31aが水平となるように共鳴室用部材31を配置し、その上に、底部材32を配置して、必要に応じて第1の枠部材3及び第2の枠部材4を積層し、更に蓋部材5又は蓋部材9等を積層した構成としたが、本発明はこれに限定されない。例えば、
図1に示す成形体91又は
図3に示す成形体101を、時計回り又は反時計回りに90°回転させた状態で使用することができる。即ち、不図示の燃焼装置から排出される燃焼ガスの出口が、燃焼装置の側面に形成されている場合だけでなく、上記燃焼ガスの出口が燃焼装置の上方又は下方に形成されている場合であっても、本発明に係る燃焼装置用消音器を取り付けることができる。
【符号の説明】
【0057】
3,4 枠部材
5,9 蓋部材
6,7 仕切り板
8 燃焼ガス
11,51 ガス流入口
13,14 開口部
20a,20b,20c,20d,20e,100a ガス流路
31 共鳴室用部材
34 共鳴室
90,110 箱体
91,101 成形体
92 底部材
93a,93b,93c,93d 穴
95 硬化層
102 ガス排出口