(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】燃焼装置用消音器
(51)【国際特許分類】
F23J 13/00 20060101AFI20240305BHJP
【FI】
F23J13/00 B
(21)【出願番号】P 2020061559
(22)【出願日】2020-03-30
【審査請求日】2022-12-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】畑中 清成
【審査官】古川 峻弘
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-196413(JP,A)
【文献】実開昭58-030143(JP,U)
【文献】特公昭46-007846(JP,B1)
【文献】特開2016-042007(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23J 13/00
F24H 9/00
F01N 1/00-1/24,13/00-13/20
F02C 7/24
F01D 25/00,25/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料を燃焼させて燃焼ガスを排出する燃焼装置に取り付けられ、燃焼ガスの燃焼音を低減する燃焼装置用消音器であって、
前記燃焼装置から排出された燃焼ガスが導入されるガス流入口と、前記燃焼ガスを外部に排出するガス排出口と、前記ガス流入口と前記ガス排出口とを連通するガス流路と、が設けられた箱体を有し、
前記ガス流路を構成する壁面は無機繊維を含む材料からなり、
前記ガス流路は少なくとも一対の対向する第1壁面及び第2壁面を有し、
前記第1壁面及び前記第2壁面は、前記燃焼ガスが流れる方向に略直交する方向に延びる突状部と凹状部とが繰り返される波形状を有
し、
前記第1壁面の前記突状部と、前記第2壁面の前記突状部とが平面視で一致する位置である場合には、測定する前記突状部に隣接する前記凹状部の底面間の距離を前記ガス流路の高さとし、
前記第1壁面の前記突状部と、前記第2壁面の前記凹状部とが平面視で一致する位置である場合には、前記第1壁面を燃焼ガスが流れる方向に半位相ずらし、前記第1壁面の前記突状部と前記第2壁面の前記突状部とが平面視で一致する位置にあるものと仮定した状態での前記凹状部の底面間の距離を前記ガス流路の高さとし、
前記第1壁面に設けられている前記突状部の高さと、前記第2壁面における対向する位置、又は対向する位置から半位相ずれた位置に設けられている前記突状部の高さとの和が、前記ガス流路の高さに対して15~40%となるように、前記突状部を形成する、燃焼装置用消音器。
【請求項2】
燃料を燃焼させて燃焼ガスを排出する燃焼装置に取り付けられ、燃焼ガスの燃焼音を低減する燃焼装置用消音器であって、
前記燃焼装置から排出された燃焼ガスが導入されるガス流入口と、前記燃焼ガスを外部に排出するガス排出口と、前記ガス流入口と前記ガス排出口とを連通するガス流路と、が設けられた箱体を有し、
前記ガス流路を構成する壁面は無機繊維を含む材料からなり、
前記ガス流路は少なくとも一対の対向する第1壁面及び第2壁面を有し、
前記第1壁面及び前記第2壁面は、前記燃焼ガスが流れる方向に略直交する方向に延びる突状部と凹状部とが繰り返される波形状を有し、
前記第1壁面及び前記第2壁面における突状部の頂点と、前記突状部に隣接する凹状部の底点との高さの差は、前記ガス流入口から前記ガス排出口に近づくに従って小さくなるように形成される、燃焼装置用消音器。
【請求項3】
燃料を燃焼させて燃焼ガスを排出する燃焼装置に取り付けられ、燃焼ガスの燃焼音を低減する燃焼装置用消音器であって、
前記燃焼装置から排出された燃焼ガスが導入されるガス流入口と、前記燃焼ガスを外部に排出するガス排出口と、前記ガス流入口と前記ガス排出口とを連通するガス流路と、が設けられた箱体を有し、
前記ガス流路を構成する壁面は無機繊維を含む材料からなり、
前記ガス流路は少なくとも一対の対向する第1壁面及び第2壁面を有し、
前記第1壁面及び前記第2壁面は、前記燃焼ガスが流れる方向に略直交する方向に延びる突状部と凹状部とが繰り返される波形状を有し、
前記箱体の内部に、前記ガス流路を屈曲させる開口部が形成された仕切り板を有し、
前記仕切り板は、前記燃焼ガスが流れる方向に略直交する方向に延びる前記凹状部と前記突状部が繰り返される波板形状を有し、
前記第1壁面及び前記第2壁面は、前記箱体の内壁面及び前記仕切り板の表面のいずれかにより構成され、
前記仕切り板の一方の面における前記突状部と、前記仕切り板の他方の面における前記凹状部が互いに対応した位置に形成されており、
前記突状部の曲率半径と、前記凹状部の曲率半径が互いに異なる、燃焼装置用消音器。
【請求項4】
前記第1壁面と前記第2壁面とが対向する方向から見た平面視で、前記第1壁面の突状部と、前記第2壁面の凹状部とが、略一致する位置に形成される、請求項1
~3のいずれか1項に記載の燃焼装置用消音器。
【請求項5】
前記第1壁面と前記第2壁面とが対向する方向から見た平面視で、前記第1壁面の突状部と、前記第2壁面の突状部とが、略一致する位置に形成される、請求項1
~3のいずれか1項に記載の燃焼装置用消音器。
【請求項6】
前記第1壁面における突状部の頂点を繋いだ面を第1仮想面とし、前記第2壁面における突状部の頂点を繋いだ面を第2仮想面としたとき、前記第1仮想面は前記第2仮想面よりも前記第1壁面側に位置する、
請求項4又は5に記載の燃焼装置用消音器。
【請求項7】
前記箱体と前記仕切り板とは無機繊維を含む材料からなり、
前記箱体の一部と前記仕切り板とは一体成形されている、
請求項3に記載の燃焼装置用消音器。
【請求項8】
前記箱体は、底部材と、前記底部材に積層される枠部材と、を有し、
前記仕切り板と前記枠部材とが一体成形されている、
請求項7に記載の燃焼装置用消音器。
【請求項9】
前記箱体は、前記底部材に、前記仕切り板と一体成形された前記枠部材が複数積層されてなり、
隣り合う2枚の前記仕切り板の開口部が、積層方向から見た平面視で異なる位置に設けられることにより、蛇行した前記ガス流路が構成される、
請求項8に記載の燃焼装置用消音器。
【請求項10】
前記箱体は、更に、無機繊維を含む材料からなる蓋部材を有し、
前記底部材、前記枠部材、前記蓋部材がこの順に積層されており、
前記底部材、前記枠部材及び前記蓋部材のいずれか1つに前記ガス流入口が設けられ、前記底部材、前記枠部材及び前記蓋部材のいずれか1つに前記ガス排出口が設けられている、
請求項8又は9に記載の燃焼装置用消音器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料を燃焼させて燃焼ガスを排出する燃焼装置に取り付けられ、燃焼ガスの燃焼音を低減する燃焼装置用消音器に関する。
【背景技術】
【0002】
一般家庭及び工場等で使用されている給湯機等には、燃焼ガスを燃焼させて熱交換する燃焼装置が使用されているものがある。従来より、燃焼ガスの燃焼時、及び燃焼排ガスの排出時に発生する騒音を低減するために、燃焼装置に取り付けられる種々の消音器が開示されている。
【0003】
例えば、特許文献1及び2には、燃焼ガスの導入口及び排出口を有する箱体と、その内部に配置され開口部を有する複数の仕切り板とを有し、導入口から排出口までの屈曲通路が構成された消音器が提案されている。
なお、上記特許文献1に記載された消音器は、箱体及び仕切り板が吸音材で形成されており、吸音材の表面には、鋼板又は多孔鋼板がライニングされている。
また、上記特許文献2に記載された消音器は、外壁を構成するケース及び屈曲通路を構成する筒状の排気通路部材が、部分的に複数の貫通孔を有する金属板から形成され、ケースと金属板との間に、例えば、ロックウールに熱硬化性樹脂がバインダとして加えられて板状に成形された吸音材が充填されている。
【0004】
このように構成された従来の消音器においては、屈曲通路内において、鋼板(金属板)に形成された複数の孔から燃焼ガスを吸音材に流入させることができ、吸音材により、騒音の消音効果を得ることができる。
【0005】
一方、特許文献3には、円筒形状の消音筒部と、消音筒部の一方の開口端に設けられた円板状の流入側板と、他方の開口端に設けられた円板状の流出側板と、を有し、ロックウールにより形成された消音器が提案されている。なお、流出側板の中央部には排気流出口及が形成されており、流入側板の中央部には中央開口が形成され、中央開口の周囲には複数の側部開口が形成されている。
このように構成された特許文献3に記載の消音器は、排気流入側に流入側板が設けられているため、燃焼音の音波の一部はこの流入側板で反射される。また、反射されなかった音波は、中央開口及び側部開口を通って内部に伝播され、広い周波数に渡って音波の共鳴が起こり、消音される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平11-159739号公報
【文献】特開2016-42007号公報
【文献】特開2004-308988号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1及び2に記載された消音器は、吸音材と鋼板とを用いて製造されており、構造が複雑であるため、組立作業が煩雑となる。
また、特許文献3に記載された消音器は、3つの部品から構成されており、極めて簡単な構造であるものの、燃焼ガスの通路長が短いため、十分な消音効果を得ることができない。
【0008】
本発明は、上述した状況に鑑みてなされたものであり、簡単な構造であって、消音効果を向上させることができる燃焼装置用消音器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的は、本発明に係る下記(1)の燃焼装置用消音器により達成される。
【0010】
(1) 燃料を燃焼させて燃焼ガスを排出する燃焼装置に取り付けられ、燃焼ガスの燃焼音を低減する燃焼装置用消音器であって、
前記燃焼装置から排出された燃焼ガスが導入されるガス流入口と、前記燃焼ガスを外部に排出するガス排出口と、前記ガス流入口と前記ガス排出口とを連通するガス流路と、が設けられた箱体を有し、
前記ガス流路を構成する壁面は無機繊維を含む材料からなり、
前記ガス流路は少なくとも一対の対向する第1壁面及び第2壁面を有し、
前記第1壁面及び前記第2壁面は、前記燃焼ガスが流れる方向に略直交する方向に延びる突状部と凹状部とが繰り返される波形状を有する、燃焼装置用消音器。
【0011】
また、本発明の燃焼装置用消音器は、下記(2)~(11)のいずれかであることが好ましい。
【0012】
(2) 前記第1壁面と前記第2壁面とが対向する方向から見た平面視で、前記第1壁面の突状部と、前記第2壁面の凹状部とが、略一致する位置に形成される、(1)に記載の燃焼装置用消音器。
【0013】
(3) 前記第1壁面と前記第2壁面とが対向する方向から見た平面視で、前記第1壁面の突状部と、前記第2壁面の突状部とが、略一致する位置に形成される、(1)に記載の燃焼装置用消音器。
【0014】
(4) 前記第1壁面における突状部の頂点を繋いだ面を第1仮想面とし、前記第2壁面における突状部の頂点を繋いだ面を第2仮想面としたとき、前記第1仮想面は前記第2仮想面よりも前記第1壁面側に位置する、(2)又は(3)に記載の燃焼装置用消音器。
【0015】
(5) 前記第1壁面及び前記第2壁面における突状部の頂点と、前記突状部に隣接する凹状部の底点との高さの差は、前記ガス流入口から前記ガス排出口に近づくに従って小さくなるように形成される、(1)~(4)のいずれか1つに記載の燃焼装置用消音器。
【0016】
(6) 前記箱体の内部に、前記ガス流路を屈曲させる開口部が形成された仕切り板を有し、
前記仕切り板は、前記燃焼ガスが流れる方向に略直交する方向に延びる前記凹状部と前記突状部が繰り返される波板形状を有し、
前記第1壁面及び前記第2壁面は、前記箱体の内壁面及び前記仕切り板の表面のいずれかにより構成される、(1)~(5)のいずれか1つに記載の燃焼装置用消音器。
【0017】
(7) 前記仕切り板の一方の面における前記突状部と、前記仕切り板の他方の面における前記凹状部が互いに対応した位置に形成されており、
前記突状部の曲率半径と、前記凹状部の曲率半径が互いに異なる、(6)に記載の燃焼装置用消音器。
【0018】
(8) 前記箱体と前記仕切り板とは無機繊維を含む材料からなり、
前記箱体の一部と前記仕切り板とは一体成形されている、(6)又は(7)に記載の燃焼装置用消音器。
【0019】
(9) 前記箱体は、底部材と、前記底部材に積層される枠部材と、を有し、
前記仕切り板と前記枠部材とが一体成形されている、(8)に記載の燃焼装置用消音器。
【0020】
(10) 前記箱体は、前記底部材に、前記仕切り板と一体成形された前記枠部材が複数積層されてなり、
隣り合う2枚の前記仕切り板の開口部が、積層方向から見た平面視で異なる位置に設けられることにより、蛇行した前記ガス流路が構成される、(9)に記載の燃焼装置用消音器。
【0021】
(11) 前記箱体は、更に、無機繊維を含む材料からなる蓋部材を有し、
前記底部材、前記枠部材、前記蓋部材がこの順に積層されており、
前記底部材、前記枠部材及び前記蓋部材のいずれか1つに前記ガス流入口が設けられ、前記底部材、前記枠部材及び前記蓋部材のいずれか1つに前記ガス排出口が設けられている、(9)又は(10)に記載の燃焼装置用消音器。
【発明の効果】
【0022】
本発明の燃焼装置用消音器によれば、ガス流路を構成する壁面は無機繊維を含む材料からなり、ガス流路を構成する第1壁面に複数の突状部と凹状部とが繰り返し形成され、第2壁面にも複数の突状部と凹状部とが繰り返し形成される波形状を有しているため、燃焼ガスが突状部に衝突しつつ、ガス流路を通過する。従って、優れた消音効果を得ることができる。
【0023】
また、本発明の好ましい実施形態に係る燃焼装置用消音器によれば、第1壁面の突状部と、第2壁面の凹状部とが、平面視で略一致する位置に形成されているため、燃焼ガスがガス流路内において小刻みに蛇行しながらガス流路を通過する。従って、見かけ上のガス流路長を長くすることができ、より一層優れた消音効果を得ることができる。
【0024】
更に、本発明の好ましい実施形態に係る燃焼装置用消音器によれば、第1壁面の突状部と、第2壁面の突状部とが、平面視で略一致する位置に形成されているため、ガス流路の断面積が流路の位置によって変化し、吸収される音の共振周波数が変化する。従って、広い周波数領域で優れた消音効果を得ることができる。
【0025】
更に、本発明の好ましい実施形態に係る燃焼装置用消音器によれば、突状部の頂点と、この突状部に隣接する凹状部の底点との高さの差は、ガス流入口からガス排出口に近づくに従って小さくなるように形成されている。従って、ガス流入口に近く、燃焼音が大きい領域で、燃焼ガスは大きい突状部に衝突しつつガス流路を流通するため、より効果的に燃焼ガスの燃焼音を低減することができる。
【0026】
更に、本発明の好ましい実施形態に係る燃焼装置用消音器によれば、箱体の内部に、ガス流路を屈曲させる開口部が形成された仕切り板を有し、箱体の一部と仕切り板とが一体成形されているため、組み立てるだけで所望のガス流路を構成することができ、簡単な構造で、優れた消音効果を有する消音器を容易に製造することができる。
【0027】
また、本発明の好ましい実施形態に係る燃焼装置用消音器によれば、底部材と、仕切り板と一体成形された枠部材とを積層するだけでガス流路が構成され、枠部材の数は自由に設計できるため、必要に応じて種々のガス流路長を有する消音器を容易に組み立てることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態に係る燃焼装置用消音器の成形体を模式的に示す断面図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す燃焼装置用消音器の成形体の構造を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、本発明の第2実施形態に係る燃焼装置用消音器の成形体を模式的に示す断面図である。
【
図4】
図4は、本発明の第3実施形態に係る燃焼装置用消音器の成形体を模式的に示す断面図である。
【
図5】
図5は、本発明の第4実施形態に係る燃焼装置用消音器の成形体を模式的に示す断面図である。
【
図6】
図6は、
図5に示す燃焼装置用消音器の成形体の構造を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本願発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、ガス流路を構成する壁面を、無機繊維を含む材料からなる一対の第1壁面及び第2壁面により構成されるものとし、第1壁面及び第2壁面が、燃焼ガスが流れる方向に略直交する方向に延びる凹状部と突状部が繰り返される波板形状を有するものとすることにより、簡単な構造であっても消音効果を向上させることができることを見出した。
【0030】
本発明の第1実施形態に係る燃焼装置用消音器について、以下に詳細に説明する。
【0031】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る燃焼装置用消音器の成形体を模式的に示す断面図であり、
図2は、
図1に示す燃焼装置用消音器の成形体の構造を示す斜視図である。
燃焼装置用消音器は、例えば金属製の筐体(図示せず)に消音機能を有する成形体が格納されたものであり、例えば、燃焼装置の側面に形成された燃焼ガスの出口に連通するように取り付けられる。
【0032】
成形体161は、燃焼装置から排出される燃焼ガス8が導入されるガス流入口171と、燃焼ガス8を外部に排出するガス排出口172と、ガス流入口171とガス排出口172とを連通するガス流路170aと、が設けられた箱体160を有する。
なお、ガス流路170aは一対の対向する第1壁面173及び第2壁面174を有している。また、ガス流入口171とガス排出口172とは、箱体160における互いに対向する面に設けられている。
【0033】
以下、
図2を参照して、第1実施形態に係る燃焼装置用消音器の成形体の構造を更に詳細に説明する。
直方体形状の成形体161は、底部材162及び蓋部材169がこの順に積層されたものである。なお、これらの部材は、例えばロックウール等の無機繊維と、熱硬化性樹脂からなるバインダとを有する材料を、所望の形状に形成した金型に吸引ろ過させて乾燥させることにより、それぞれ一体成形されたものである。なお、無機繊維としては、アルミナファイバー、RCF(Refractory Ceramic Fiber)、AES(Alkaline.Earth Silicate)ファイバー、バサルトファイバー、シリカファイバー、ジルコニアファイバー、グラスウール、ロックウールなどから選ばれる少なくとも一つが選択可能であり、また、これらを組み合わせて用いてもよい。
【0034】
底部材162は、矩形の底部162aと、底部162aの四辺から立ち上がる形状の壁部162bとを有する器状であり、壁部162bの一部に切り欠きが設けられてガス排出口172が形成されている。また、底部材162の底部162aにおけるガス流路170a側の面(第1壁面173)には、燃焼ガス8が流れる方向に直交する方向に延びる突状部173aと凹状部173bとが繰り返し形成されており、第1壁面173は連続した波形状となっている。
【0035】
蓋部材169は底部材162と同様の形状で上下左右を逆に配置したものであり、上底部169aとその四辺に設けられた壁部169bとを有する器状である。また、底部材162と同様に、壁部169bの一部に切り欠きが設けられて、ガス流入口171が形成されている。更に、蓋部材169の上底部169aにおけるガス流路170a側の面(第2壁面174)にも、燃焼ガス8が流れる方向に直交する方向に延びる突状部174aと凹状部174bとが繰り返し形成されており、第2壁面174も連続した波形状となっている。
【0036】
なお、底部材162の壁部162bは蓋部材169の壁部169bと同一の外寸であり、底部材162に蓋部材169を積層したときに、ガス流入口171及びガス排出口172を除く領域で、両者が確実に重なるように設計されている。また、本実施形態では、第1壁面173と第2壁面174とが対向する方向から見た平面視で、第1壁面173の突状部173aと、前記第2壁面174の凹状部174bとが、一致する位置に形成されている。
以下、本願明細書において、ガス流路を構成する第1壁面と第2壁面と対向する方向から見た平面視を、単に平面視ということがある。
【0037】
そして、上述の通り、底部材162及び蓋部材169がこの順に積層されて成形体161をなし、この成形体161が金属製の筐体(図示せず)に格納されることにより、消音器が構成される。なお、この筐体は、成形体161を格納したときに、成形体161のガス流入口171及びガス排出口172に対応する位置に開口が設けられており、その他の部分については完全に成形体161を覆う形状である。
【0038】
このように構成された消音器においては、ガス流入口171から燃焼ガス8が導入されると、蓋部材169と底部材162との間のガス流路170aを燃焼ガス8が流通し、ガス排出口172から排出される。
【0039】
本実施形態においては、ガス流路170aを構成する壁面が、吸音性の高い無機繊維を含む材料からなるとともに、波形状を有しているため、燃焼ガスが波形状の壁面に衝突しつつガス流路170aを通過する。従って、全壁面において燃焼音が吸収され、金属製の壁を有する消音器と比較して、消音効果を著しく向上させることができる。
【0040】
また、本実施形態では、ガス流路170aを構成する第1壁面173に複数の突状部173aと凹状部173bとが繰り返し形成され、第2壁面174にも複数の突状部174aと凹状部174bとが繰り返し形成され、第1壁面173及び第2壁面174はいずれも、波形状を有している。そして、本実施形態では、第1壁面173の突状部173aと第2壁面174の凹状部174bとが一致する位置に形成されているため、燃焼ガス8は蛇行しながらガス流路170aの内部を通過する。
【0041】
なお、本実施形態において、第1壁面173における突状部173aの頂点を繋いだ面を第1仮想面175とし、第2壁面174における突状部174aの頂点を繋いだ面を第2仮想面176としたとき、第1仮想面175は第2仮想面176よりも第1壁面173側に位置するように設計されている。即ち、流路170a内における燃焼ガス8の主流方向は、突状部173a及び突状部174aにより変えられることなく、燃焼ガス8はガス排出口に向かって小刻みに蛇行しながら通過する。従って、燃焼ガス8が突状部173a及び突状部174aに衝突することにより得られる消音効果に加えて、本実施形態では見かけ上のガス流路長が長くなるため、消音器の消音効果をより一層向上させることができる。
【0042】
なお、上述の第1実施形態において、第1壁面173の突状部173aと第2壁面174の凹状部174bとを、平面視で完全に一致する位置に形成したが、本発明は両者の位置を完全に一致させる必要はなく、略一致する位置であればよい。即ち、燃焼ガス8がガス排出口172に向かって小刻みに蛇行しながら、流路170a内を通過するように、突状部173aと凹状部174bの相対位置を決定すればよい。
【0043】
(第2実施形態)
図3は、本発明の第2実施形態に係る燃焼装置用消音器の成形体を模式的に示す断面図である。なお、第2実施形態並びに以降の第3及び第4実施形態において、上記第1実施形態と同一又は同等部分については、図面に同一符号を付してその説明を省略あるいは簡略化する。
【0044】
第2実施形態は第1実施形態の変形例であり、第1実施形態と同様に、成形体181は、底部材162及び蓋部材169がこの順に積層されたものである。また、底部材162の底部162aにおけるガス流路170a側の面(第1壁面183)には、燃焼ガス8が流れる方向に直交する方向に延びる突状部183aと凹状部183bとが繰り返し形成されており、第1壁面183は連続した波形状となっている。
【0045】
一方、蓋部材169の上底部169aにおけるガス流路170a側の面(第2壁面184)にも、燃焼ガス8が流れる方向に直交する方向に延びる突状部184aと凹状部184bとが繰り返し形成されており、第2壁面184も連続した波形状となっている。
但し、第2実施形態では、突状部183aと突状部184aとの相対位置が第1実施形態と異なり、第1壁面183の突状部183aと、第2壁面184の突状部184aとが、平面視で一致する位置に形成されている。
【0046】
また、本実施形態においても、第1壁面183における突状部183aの頂点を繋いだ面を第1仮想面175とし、第2壁面184における突状部184aの頂点を繋いだ面を第2仮想面176としたとき、第1仮想面175は第2仮想面176よりも第1壁面173側に位置するように設計されている。これにより、第1壁面183の突状部183aと、第2壁面184の突状部184aとの間に隙間が形成されるため、燃焼ガス8を流通させることができる。
なお、本実施形態では、第1壁面183の突状部183aと、第2壁面184の突状部184aとが、平面視で一致する位置に形成されているため、第1仮想面175と第2仮想面176とが接近した位置にあると、ガス流路170aが部分的に著しく狭くなり、燃焼ガス8の流通性が低下する。従って、ガス流路170aの流通性を阻害しないように、突状部183a及び突状部184aの高さを設計することが好ましい。
【0047】
このように構成された第2実施形態に係る消音器においても、ガス流入口171から燃焼ガス8が導入されると、蓋部材169と底部材162との間のガス流路170aを燃焼ガス8が流通し、ガス排出口172から排出される。このとき、ガス流路170aを構成する壁面が、吸音性の高い無機繊維とバインダとを有する材料からなるとともに、波形状を有しているため、燃焼ガス8が波形状の壁面に衝突しつつ、ガス流路170aを通過する。従って、消音効果を著しく向上させることができる。
【0048】
また、本実施形態では、突状部183aと突状部184aとが、対向する第1壁面183と第2壁面184において平面視で一致する位置に形成されている。従って、燃焼ガス8は、その流れる位置によって、ガス流路170aの断面積が変化する。即ち、ガス流路170aを構成する第1壁面183及び第2壁面184において、突状部183a及び突状部184aが対向して形成されている領域では、燃焼ガス8の一部は突状部183a及び突状部184aに衝突した後、狭い流路を通過し、更に、凹状部183b及び凹状部184bが対向して形成された広い流路を通過するため、流路の断面積が大きく変化する。その結果、吸収される音の共振周波数が変化するため、広い周波数領域において消音効果を向上させることができる。
【0049】
なお、上述の第2実施形態において、第1壁面183の突状部183aと、第2壁面184の突状部184aとを、平面視で一致する位置に形成したが、本発明は両者の位置を完全に一致させる必要はなく、略一致する位置であればよい。即ち、ガス流路170aの断面積が変化するように、突状部183a及び突状部184aの相対位置を決定すればよい。
【0050】
上記第1及び第2実施形態に示すように、本発明は、要求される消音器の特性に応じて、対向する壁面における波形状の相対位置を自由に設計することができる。例えば、燃焼ガスの流通性を重視する場合には、ガス流路の阻害が小さい第1実施形態を適用することが好ましく、広い周波数領域での消音効果を目的とする場合には、第2実施形態を適用することが好ましい。
なお、第1及び第2実施形態では、予め、対向する壁面における波形状の相対位置を決定しておけば、底部材162と同一の形状で蓋部材169を作製することができる。従って、複数の形状の金型を準備する必要がなく、極めて簡単な構造で、優れた消音機能を有する消音器を容易に製造することができる。
【0051】
(第3実施形態)
図4は、本発明の第3実施形態に係る燃焼装置用消音器の成形体を模式的に示す断面図である。
【0052】
第3実施形態は第2実施形態の変形例であり、第2実施形態と同様に、成形体191は、底部材162及び蓋部材169がこの順に積層されたものである。また、底部材162の底部162aにおけるガス流路170a側の面(第1壁面193)には、燃焼ガス8が流れる方向に直交する方向に延びる突状部193a、193cと凹状部193b、193dとが繰り返し形成されており、第1壁面193は連続した波形状となっている。
【0053】
一方、蓋部材169の上底部169aにおけるガス流路170a側の面(第2壁面194)にも、燃焼ガス8が流れる方向に直交する方向に延びる突状部194a、194cと凹状部194b、194dとが繰り返し形成されており、第2壁面194も連続した波形状となっている。
また、突状部193a、193cと突状部194a、194cとの相対位置は、第2実施形態と同様に、第1壁面193の突状部193aと、第2壁面194の突状部194aとが、平面視で一致する位置に形成され、第1壁面193の突状部193cと、第2壁面194の突状部194cとが、平面視で一致する位置に形成されている。
【0054】
但し、第3実施形態では、同一壁面内で突状部の大きさが異なる。例えば、第1壁面193においては、ガス排出口172に近い位置に形成されている突状部193cの高さは、ガス流入口171に近い位置に形成されている突状部193aの高さよりも小さくなるように形成されている。同様に、第2壁面194においては、ガス排出口172に近い位置に形成されている突状部194cの高さは、ガス流入口171に近い位置に形成されている突状部194aの高さよりも小さくなるように形成されている。
【0055】
なお、本実施形態における突状部の高さとは、突状部の頂点と、この突状部に隣接する凹状部の底点との高さの差をいう。また、突状部に隣接する凹状部とは、突状部の上流側に隣接する凹状部、及び突状部の下流側に隣接する凹状部のうち、その底点と突状部の頂点との高さの差が大きい方の凹状部を選択するものとする。
【0056】
このように構成された第3実施形態に係る消音器においても、ガス流路170aを構成する壁面が、吸音性の高い無機繊維とバインダとを有する材料からなるとともに、波形状を有しているため、燃焼ガス8が波形状の壁面に衝突しつつ、ガス流路170aを通過する。従って、消音効果を著しく向上させることができる。
また、本実施形態では、ガス流入口171に近い突状部193a及び突状部194aの高さが、ガス排出口172に近い突状部193c及び突状部194cの高さよりも高くなるように形成されている。従って、消音器に導入されたばかりで大きい騒音を発生する燃焼ガス8が大きい突状部193a及び突状部194aに衝突し、効果的に消音させることができる。また、ガス排出口172の近辺では、燃焼ガス8が発生する騒音は小さくなっているため、小さい突状部193c及び突状部194cにより消音効果を維持しつつ、燃焼ガス8の流通性を向上させることができる。
【0057】
図4に示す第3実施形態において、ガス流入口171からガス排出口172に近づくに従って、突状部193a及び突状部194aの高さは徐々に低くなり、小さい突状部193c及び突状部194cとなるように形成されているが、本発明はこれに限定されない。例えば、2種類の高さの突状部を形成する場合には、ガス流路170aの上流側では大きい突状部193a及び突状部194aを形成し、下流側では小さい突状部193c及び突状部194cを形成すればよく、徐々に大きさを変更する必要はない。
【0058】
上記第1~第3実施形態では、なだらかな突状部となだらかな凹状部とが連続的に繰り返された波形状の壁面を有する消音器を示したが、本発明において、突状部及び凹状部は
図1~4に示す形状に限定されない。例えば、半円柱状に突出した複数の突状部を形成することにより、隣り合う突状部間を凹状部としてもよい。また、半円柱状に窪んだ形状の複数の凹状部を形成することにより、隣り合う凹状部間を突状部としてもよい。更に、突出及び窪みの形状も特に限定されず、断面V字状及び四角柱形状等、種々の形状を選択することができる。
【0059】
また、上記第1~第3実施形態では、底部162aが水平となるように底部材162を配置し、その上に蓋部材169を配置した構成としたが、本発明はこれに限定されない。例えば、成形体161、成形体181又は成形体191を、
図1、
図3及び
図4に示す位置から時計回り又は反時計回りに90°回転させた状態で使用することができる。即ち、不図示の燃焼装置から排出される燃焼ガスの出口が、燃焼装置の側面に形成されている場合だけでなく、上記燃焼ガスの出口が燃焼装置の上方又は下方に形成されている場合であっても、本発明に係る燃焼装置用消音器を取り付けることができる。
【0060】
(第4実施形態)
図5は、本発明の第4実施形態に係る燃焼装置用消音器の成形体を模式的に示す断面図であり、
図6は、
図5に示す燃焼装置用消音器の成形体の構造を示す斜視図である。
【0061】
成形体121は、燃焼装置から排出される燃焼ガスが導入されるガス流入口111と、燃焼ガスを外部に排出するガス排出口172と、ガス流入口111とガス排出口172とを連通するガス流路20a、20b、20c、20d及び20eと、が設けられた組立構造の箱体120を有する。
また、箱体120の内部には、開口部113が形成された仕切り板106と、開口部114が形成された仕切り板107とが、所望の間隔を開けて略平行に配置されている。なお、仕切り板106の開口部113は、箱体120におけるガス流入口111側の壁に接近して形成されており、仕切り板107の開口部114は、箱体120におけるガス排出口172側の壁に接近して形成されている。
【0062】
以下、
図6を参照して、第4実施形態に係る燃焼装置用消音器の成形体の構造を更に詳細に説明する。
直方体形状の成形体121は、底部材162、第1の枠部材103、第2の枠部材104及び蓋部材105がこの順に積層されたものである。
【0063】
底部材162は、矩形の底部162aと底部162aの四辺から立ち上がる形状の壁部162bとを有する器状であり、壁部162bの一部に切り欠きが設けられてガス排出口172が形成されている。また、底部材162の底部162aにおけるガス流路170a側の面(第1壁面183)には、燃焼ガス8が流れる方向に直交する方向に延びる突状部183aと凹状部183bとが繰り返し形成されており、第1壁面183は連続した波形状となっている。
【0064】
第1の枠部材103は、底面となる矩形の仕切り板106と、仕切り板106の四辺から立ち上がる形状の壁部103bとを有する器状である。但し、仕切り板106は、ガス排出口172が形成されている面と対向する面に近接する位置に開口部113が形成されている。また、仕切り板106は、燃焼ガス8が流れる方向に直交する方向に延びる突状部と凹状部とが繰り返される波板形状を有している。
具体的には、仕切り板106のガス流路20e側の面は、半円柱状に窪んだ形状の凹状部135bと、隣り合う凹状部135b間に形成された突状部135aとが繰り返され、仕切り板106のガス流路20c側の面は、なだらかな突状部134aと、なだらかな凹状部134bとが繰り返されており、仕切り板106全体として、波板形状が構成されている。
【0065】
なお、第1の枠部材103の底面は、底部材162の壁部162bにおける周縁端面162cと同一の外寸であり、底部材162に第1の枠部材103を積層したときに、両者が確実に重なるように設計されている。
【0066】
第2の枠部材104は、底面となる矩形の仕切り板107と、仕切り板107の四辺から立ち上がる形状の壁部104bとを有する器状である。但し、壁部104bには、ガス排出口172が形成されている面に対向する面の一部が切り欠かれてガス流入口111が形成されている。また、仕切り板107には、ガス流入口111が形成されている面と対向する面に近接する位置に開口部114が形成されている。また、仕切り板107は、燃焼ガス8が流れる方向に直交する方向に延びる突状部と凹状部とが繰り返される波板形状を有している。
具体的には、仕切り板107のガス流路20c側の面は、半円柱状に窪んだ形状の凹状部133bと、隣り合う凹状部133b間に形成された突状部133aとが繰り返され、仕切り板107のガス流路20a側の面は、なだらかな突状部132aと、なだらかな凹状部132bとが繰り返されており、仕切り板107全体として、波板形状が構成されている。
【0067】
なお、第2の枠部材104の底面は、第1の枠部材103の壁部103bにおける周縁端面103cと同一の外寸であり、第1の枠部材103に第2の枠部材104を積層したときに、両者が確実に重なるように設計されている。
【0068】
蓋部材105は矩形の板状であり、ガス流路20a側の面には、燃焼ガス8が流れる方向に直交する方向に延びる突状部131aと凹状部131bとが繰り返し形成されており、ガス流路20a側の面が連続した波形状となっている。
なお、蓋部材105は、第2の枠部材104の壁部104bにおける周縁端面104cと同一の外寸であり、第2の枠部材104に蓋部材105を積層したときに、両者が確実に重なるように設計されている。
即ち、ガス流路20aは一対の対向する第1壁面132及び第2壁面131を有し、ガス流路20cは一対の対向する第1壁面134及び第2壁面133を有し、ガス流路20eは一対の対向する第1壁面183及び第2壁面135を有している。そして、いずれの壁面も突状部と凹状部とが繰り返し形成された波形状を有している。
【0069】
また、ガス流路20aを構成する第1壁面132の突状部132aと、第2壁面131の突状部131aとは、平面視で一致する位置に形成されている。同様に、ガス流路20cを構成する第1壁面134の突状部134aと、第2壁面133の突状部133aとは、平面視で一致する位置に形成されている。更に、ガス流路20eを構成する第1壁面183の突状部183aと、第2壁面135の突状部135aとは、平面視で一致する位置に形成されている。
【0070】
そして、上述の通り、底部材162、第1の枠部材103、第2の枠部材104及び蓋部材105が、この順に積層されて成形体121をなし、この成形体121が金属製の筐体(図示せず)に格納されることにより、消音器が構成される。なお、この筐体は、成形体121を格納したときに、成形体121のガス流入口111及びガス排出口172に対応する位置に開口が設けられており、その他の部分については完全に成形体121を覆う形状である。
【0071】
このように構成された消音器においては、ガス流入口111から燃焼ガス8が導入されると、蓋部材105と仕切り板107との間のガス流路20aを燃焼ガス8が流通し、ガス流路20bとなる開口部114を通過することにより、燃焼ガス8は屈曲して進行方向を転換し、仕切り板107と仕切り板106との間のガス流路20cを流通する。その後、燃焼ガス8はガス流路20dとなる開口部113を通過することにより屈曲して、更に進行方向を転換し、仕切り板106と底部材162の底部162aとの間のガス流路20eを流通し、ガス排出口172から排出される。
【0072】
本実施形態においても、ガス流路20a~20eを構成する全ての部材が、無機繊維を含む材料からなるとともに、第1壁面及び第2壁面が波形状を有しているため、燃焼ガス8が波形状の壁面に衝突しつつ、ガス流路20a~20eを通過する。また、仕切り板106の開口部113と、仕切り板107の開口部114とが、積層方向から見た平面視で異なる位置に設けられているとともに、ガス流入口111から離れた位置に開口部114が配置され、ガス排出口172から離れた位置に開口部113が配置されているため、第1~第3実施形態と比較して、蛇行した長いガス流路が構成されるため、より一層優れた消音効果を得ることができる。
更に、本実施形態においては、ガス流路20a、ガス流路20c及びガス流路20eを構成する第1壁面及び第2壁面の対向する位置に、複数の突状部131a、132a、133a、134a、135a及び183aが形成されているため、燃焼ガス8の一部は狭い流路及び広い流路を繰り返し通過する。従って、第1~第3実施形態と比較して、より一層広い周波数領域において優れた消音効果を得ることができる。
【0073】
また、本実施形態において、仕切り板106及び仕切り板107の凹凸形状は、一方の面と他方の面とで異なり、一方の面(仕切り板106のガス流路20c側及び仕切り板107のガス流路20a側)の突状部134a及び突状部132aの曲率半径は、他方の面(仕切り板106のガス流路20e側及び仕切り板107のガス流路20c側)の凹状部135b及び凹状部133bの曲率半径よりも大きく設計されている。
これにより、仕切り板106及び仕切り板107にかかる応力を緩和することができる。また、凹状部135b及び凹状部133bが形成されている面を含むガス流路20e及びガス流路20cは、なだらかな突状部131a及び突状部132aが形成されている面のみを含むガス流路20aと比較して、音が散乱しやすくなるため消音効果を得ることができる。
【0074】
また、成形体121は、底部材162、第1の枠部材103、第2の枠部材104及び蓋部材105の4つの部材からなり、いずれも簡単な構造であって、重ね合わせて(積層して)筐体に格納するだけで、組み立てることができる。従って、組立の工程数が減少し、製造工程を著しく簡略化することができる。
【0075】
本実施形態において、上記成形体121を構成する各部材は、第1~第4実施形態と同様にして、例えば、例えば上述の無機繊維と、熱硬化性樹脂からなるバインダとを有する材料を、所望の形状に形成した金型に吸引ろ過させて乾燥させることにより、それぞれ一体成形することができる。なお、仕切り板106及び仕切り板107の波板形状については、金型における吸引ろ過する面に、所望の方向に延びる複数本の半円柱状の突出部を設けることにより、成形することができる。
【0076】
また、上記第4実施形態では、一対の対向する第1壁面及び第2壁面に形成された突状部は、平面視で一致する位置に形成されたものとしたが、本発明はこれに限定されず、第1壁面における突状部と第2壁面における凹状部とが一致する位置に形成されたものでもよい。このような構成とした場合には、第1実施形態と同様の効果を得ることができ、主流方向であるガス流路20a~20e内において、小刻みに蛇行しながらガス排出口172に向けて燃焼ガスが通過する。従って、見かけ上のガス流路長をさらに一層長くすることができ、優れた消音効果を得ることができる。
【0077】
また、第1~第3実施形態では、枠部材及び仕切り板がない消音器を示し、第4実施形態では、2つの枠部材(枠部材103及び枠部材104)を使用した例を示したが、本発明はこれに限定されず、枠部材は1つであっても3以上であっても、本発明の消音器を構成することができる。
例えば、1つの枠部材で構成する場合には、
図5及び
図6に示す底部材162、第2の枠部材104及び蓋部材105を使用し、底部材162に第2の枠部材104を積層する際に、ガス流入口111がガス排出口172と同一の方向となるように配置する。これにより、ガス流入口111から導入された燃焼ガスは、蓋部材105と仕切り板107との間のガス流路を流通し、開口部114を通過することにより屈曲して進行方向を転換した後、仕切り板107と底部材162の底部162aとの間のガス流路を流通して、ガス排出口172から排出される。
【0078】
また、3つの枠部材で構成する場合には、
図2に示す底部材162、第1の枠部材103、第1の枠部材103と同一の形状の枠部材(図示せず)、第2の枠部材104及び蓋部材105を使用し、ガス流入口111と、隣り合う枠部材の各開口部と、ガス排出口172とが、積層方向から見た平面視で互い違いになるように配置する。これにより、より長い蛇行したガス流路が構成され、消音効果をより一層向上させることができる。
更に同様にして、第1の枠部材103と同一の形状の枠部材を増加させることにより、ガス流路を簡単に延長することができる。
いずれの場合であっても、ガス流路を構成する一対の第1壁面及び第2壁面に、突状部と凹状部とが繰り返される波形状が形成されているため、優れた消音効果を得ることができる。
【0079】
なお、3つ以上の枠部材で構成する場合に、上述の通り、第1の枠部材103と同一の形状の複数の枠部材を使用することにより、ガス流路を延長することができるため、他の形状の枠部材を製造するための金型を準備する必要がない。従って、必要に応じて大きさが異なる筐体を準備するだけで、性能が異なる種々の大きさの消音器を容易に製造することができる。
【0080】
また、第4実施形態では、底部材162、第1の枠部材103、第2の枠部材104及び蓋部材105の4種類の形状の金型を用いて、それぞれの部材を作製したが、例えば、ガス流入口111、開口部及びガス排出口172が形成されていない器状部材を作製し、ガス流入口、開口部及びガス排出口等を必要に応じた箇所で切除することにより、底部材及び枠部材を製造することができる。従って、極めて少ない金型で消音器を製造することができる。なお、このように共通の金型を使用して成形体121の各部材を成形した場合には、底部材162の外側の面(流路20e側と反対側の面)及び蓋部材105の外側の面(流路20a側と反対側の面)にも、凹状部が形成されることとなるが、成形体121は最終的に筐体に格納されるため、本発明の効果に影響はない。
【0081】
更に、上記第4実施形態では、最上段として、突状部131a及び凹状部131bが繰り返し形成された波形状を有する蓋部材105を積層したが、本発明は必ずしもこの蓋部材105を積層する必要はない。例えば、成形体121は金属製の筐体に格納されるが、上部が解放した金属製の容器に底部材162及び枠部材103及び枠部材104を格納し、蓋部材5を積層せずに金属製の蓋で閉塞することにより、上記第4実施形態と同様の機能を得ることができる。
【0082】
更にまた、上記第4実施形態においては、底部162aが水平となるように底部材162を配置し、その上に、仕切り板106及び仕切り板107が水平となるように枠部材103及び枠部材104を積層し、更に蓋部材105を積層した構成としたが、本発明はこれに限定されない。例えば、成形体121を、時計回り又は反時計回りに90°回転させた状態で使用することができるため、燃焼ガスの出口が燃焼装置の上方又は下方に形成されている場合であっても、本発明に係る燃焼装置用消音器を取り付けることができる。
【0083】
なお、上記第1~第4実施形態においては、突状部及び凹状部は、燃焼ガスが流れる方向に直交する方向に延びるものとしたが、本発明においては、燃焼ガスが流れる方向に完全に直交する方向である必要はない。また、突状部及び凹状部は、燃焼ガスが流れる方向に直交する方向(箱体の幅方向)全域にわたって延びるように形成される必要はなく、幅方向の一部に突状部と凹状部とが形成されているものでも、本発明の効果を得ることができる。
【0084】
更に、上記第1~第4実施形態において、第1壁面に設けられている突状部の高さと、第2壁面における対向する位置、又は対向する位置から半位相ずれた位置に設けられている突状部の高さとの和は、ガス流路の高さに対して、15~40%であることが好ましく、25~33%であることがより好ましい。本発明における突状部の高さとは、上述の通りである。また、ガス流路の高さとは、第1壁面の突状部と第2壁面の突状部とが平面視で一致する位置である場合(
図3~
図6に示す第2~第4実施形態である場合)には、測定する突状部に隣接する凹状部の底面間の距離をいうものとする。但し、第1壁面の突状部と第2壁面の凹状部とが平面視で一致する位置である場合(
図1及び
図2に示す第1実施形態である場合)には、第1壁面を燃焼ガスが流れる方向に半位相ずらし、第1壁面の突状部と第2壁面の突状部とが平面視で一致する位置にあるものと仮定した状態での凹状部の底面間の距離をガス流路の高さとする。
【符号の説明】
【0085】
8 燃焼ガス
20a,20b,20c,20d,20e,170a ガス流路
103,104 枠部材
105,169 蓋部材
106,107 仕切り板
111,171 ガス流入口
113,114 開口部
120,160 箱体
121,161,181,191 成形体
131a,132a,133a,134a,135a,173a、183a,193a,193c 突状部
131b,132b,133b,134b,135b,173b、183b,193b,193d 凹状部
162 底部材
172 ガス排出口
175,176 仮想面