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  • 特許-伸縮フィルム及びその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】伸縮フィルム及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/18 20060101AFI20240305BHJP
   C08J 9/00 20060101ALI20240305BHJP
   B29C 55/06 20060101ALI20240305BHJP
   C08L 23/16 20060101ALI20240305BHJP
   C08L 23/14 20060101ALI20240305BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20240305BHJP
   B29K 23/00 20060101ALN20240305BHJP
   B29L 7/00 20060101ALN20240305BHJP
【FI】
C08J5/18 CES
C08J9/00 A
B29C55/06
C08L23/16
C08L23/14
C08K3/013
B29K23:00
B29L7:00
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020070204
(22)【出願日】2020-04-09
(65)【公開番号】P2021167365
(43)【公開日】2021-10-21
【審査請求日】2022-10-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000108719
【氏名又は名称】タキロンシーアイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森 恵一
【審査官】加賀 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-017534(JP,A)
【文献】特開2016-204625(JP,A)
【文献】特開2005-058755(JP,A)
【文献】特開平01-123838(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 5/18
C08J 9/00
B29C 55/06
C08L 23/16
C08L 23/14
C08K 3/013
B29K 23/00
B29L 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オレフィン系エラストマーと無機充填剤との混合物を含有する伸縮フィルムであって、
50%伸長時の応力が6.0N以上15.0N以下であり、透湿度が1000g/(m・24h)以上であり、永久歪みが25%以下であることを特徴とする伸縮フィルム。
【請求項2】
前記オレフィン系エラストマーが、プロピレン系エラストマーであることを特徴とする請求項1に記載の伸縮フィルム。
【請求項3】
少なくとも1軸方向に延伸され、延伸方向における50%伸長時の応力が6.0N以上15.0N以下であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の伸縮フィルム。
【請求項4】
複数の貫通孔が形成されていることを特徴とする請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の伸縮フィルム。
【請求項5】
フィルム全体の厚みが10μm~80μmであることを特徴とする請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の伸縮フィルム。
【請求項6】
請求項1に記載の伸縮フィルムの製造方法であって、
前記オレフィン系エラストマーと前記無機充填剤とを含有する原反フィルムを用意する工程と、
前記原反フィルムに対して、一軸延伸処理を行う工程と
を少なくとも備え、
前記一軸延伸処理によるフィルム成形時の延伸温度が20℃以上70℃未満であるとともに、延伸倍率が1.8倍以上4.5倍以下であることを特徴とする伸縮フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伸縮フィルム及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、衛生分野(生理用品、失禁用品等)や医療分野(外科用ドレープ等)においては、伸縮性を有するエラストマーで形成された伸縮フィルムや、この伸縮フィルムを不織布とラミネートした複合体が広く用いられている。
【0003】
この伸縮フィルムとしては、例えば、オレフィン系樹脂と充填剤を含み、オレフィン系樹脂100重量部に対して充填剤の含有量が100~300重量部であり、表面に空隙を有するものが提案されている。そして、このような構成により、優れた伸縮性および優れた透湿性(通気性)を有する伸縮性フィルムを提供することができると記載されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-204634号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1に記載の伸縮フィルムにおいては、フィルム製造時における巻き取り工程や伸縮フィルムを用いて衛生用品等を製造する際に、延びやすいため、所望の寸法に成形することができないという問題があった。また、この伸縮フィルムは、未延伸フィルムを作製後、当該未延伸フィルムに対して延伸処理を行うことにより得られるが、延伸処理後に収縮してしまうため、延伸を行うことにより表面に生じた空隙が小さくなる、または消失してしまい、所望の透湿性を確保することができないという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、上記問題を鑑みてなされたものであり、フィルムの延びを防止して、優れた伸縮性と透湿性を両立することができる伸縮フィルム及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の伸縮フィルムは、オレフィン系エラストマーと無機充填剤とを含有し、50%伸長時の応力が6.0N以上15.0N以下であり、透湿度が1000g/(m・24h)以上であることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の伸縮フィルムの製造方法は、オレフィン系エラストマーと無機充填剤とを含有する原反フィルムを用意する工程と、原反フィルムに対して、一軸延伸処理を行う工程とを少なくとも備え、一軸延伸処理によるフィルム成形時の延伸温度が20℃以上60℃以下であるとともに、延伸倍率が1.8倍以上4.5倍以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、優れた伸縮性と透湿性を両立することができる伸縮フィルム及びその製造方法を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係る伸縮フィルムを説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の伸縮フィルムについて具体的に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において、適宜変更して適用することができる。
【0012】
本発明の伸縮フィルムは、オレフィン系エラストマーと無機充填剤とを含有するフィルム状の成形体である。
【0013】
<オレフィン系エラストマー>
本発明で使用するオレフィン系エラストマーは、炭素数3以上のオレフィンを主成分とした共重合体又は単独重合体、並びにエチレンを主成分とした炭素数3以上のオレフィンとの共重合体等が挙げられる。
【0014】
より具体的には、例えば、(1)立体規則性が低いプロピレン単独重合体や1-ブテン単独重合体等のα-オレフィン単独重合体、(2)プロピレン-エチレン共重合体、プロピレン-エチレン-1-ブテン共重合体、1-ブテン-エチレン共重合体、1-ブテン-プロピレン共重合体、4-メチルペンテン-1-プロピレン共重合体、4-メチルペンテン-1-1-ブテン共重合体、4-メチルペンテン-1-プロピレン-1-ブテン共重合体、プロピレン-1-ブテン共重合体、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-ヘキセン共重合体、及びエチレン-オクテン共重合体等のα-オレフィン共重合体、(3)エチレン-プロピレン-エチリデンノルボルネン共重合体、エチレン-プロピレン-ブタジエン共重合体、エチレン-プロピレン-イソプレン共重合体等のエチレン-α-オレフィン-ジエン三元共重合体等が挙げられる。また、結晶性ポリオレフィンのマトリクスに上述のエラストマーが分散したエラストマーを使用してもよい。なお、オレフィン系エラストマーは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0015】
オレフィン系エラストマーは、一般的に力学的性質などの基本物性を支配するハードセグメントと、ゴム的な性質である伸縮性を支配するソフトセグメントによって構成される。オレフィン系エラストマーのハードセグメントがポリプロピレンからなるものをプロピレン系エラストマーといい、ハードセグメントがポリエチレンからなるものをエチレン系エラストマーという。オレフィン系エラストマーのソフトセグメントには、EPDM、EPM、EBM、IIR、水添スチレンブタジエンゴム(HSBR)、NBR、アクリルゴム(ACM)が挙げられる。プロピレン系エラストマーの場合、全単位に対するプロピレン単位含有率は、70質量%~95質量%が好ましく、80質量%~90質量%がより好ましい。ハードセグメントであるプロピレン単位含有率が70質量%以上であれば、強度が向上するため、優れた成形性が得られ、95質量%以下であれば、ソフトセグメントの弾性により、優れた伸縮性が得られる。
【0016】
また、優れた伸縮性を得るとの観点から、伸縮フィルム全体に対するオレフィン系エラストマーの含有量は、伸縮フィルム100質量%のうち、15質量%以上50質量%以下が好ましく、20質量%以上40質量%以下がより好ましい。プロピレン系エラストマーの含有量が上記範囲内であれば、エラストマーが含有するソフトセグメントの弾性により、優れた伸縮性が得られる。
【0017】
(無機充填剤)
無機充填材は、多孔化による貫通孔の形成を行うための成分であり、この無機充填剤を含有する状態で延伸処理を行うことにより、本発明の伸縮性フィルムは、優れた透湿性を発現し得る。
【0018】
この無機充填材としては、炭酸カルシウム、ゼオライト、シリカ、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、クレー、マイカ、硫酸バリウム、及び水酸化マグネシウム等が挙げられる。なお、無機充填材は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0019】
また、伸縮フィルム全体に対する無機充填剤の含有量は、伸縮フィルム100質量%のうち、40質量%以上70質量%以下が好ましい。無機充填剤の含有量が上記範囲内であれば、延伸処理を行うことにより、優れた伸縮性が得られる。
【0020】
また、無機充填材の平均粒子径は、0.8~10μmが好ましい。無機充填材の平均粒子径が0.8μm以上であれば、無機充填材の二次凝集等を抑制して、樹脂への分散性が良好となり、10μm以下であれば、押出し時のドローダウンによる穴空き等が無く、成型性に優れる。
【0021】
なお、ここでいう「平均粒子径」は、粒度分布計により測定した粒度分布における50%の粒度の粒子径のことをいう。
【0022】
<他の成分>
伸縮フィルムには、伸縮フィルムの伸縮性を損なわない範囲において、上述のオレフィン系エラストマー以外の他の成分が含有されていてもよい。
【0023】
他の成分としては、オレフィン系樹脂、アマイド系アンチブロッキング剤(ステアリン酸アマイド等)、可塑剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、耐候安定剤、帯電防止剤、着色剤、防曇剤、金属石鹸、ワックス、防カビ剤、抗菌剤、造核剤、難燃剤、滑剤等が挙げられる。なお、他の成分は、マスターバッチ化して伸縮フィルム用の材料に添加してもよい。
【0024】
(オレフィン系樹脂)
オレフィン系樹脂としては、上述のオレフィン系エラストマーと相溶性を有するものが好ましく、例えば、ポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂が好ましい。なお、オレフィン系樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0025】
例えば、ポリエチレン樹脂としては、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、及び超低密度ポリエチレン(ULDPE)等を使用することができる。
【0026】
また、孔の固定化に寄与することにより透湿度を向上させるとの観点から、伸縮フィルム全体に対するオレフィン系樹脂の含有量は、伸縮フィルム100質量%のうち、10質量%以下が好ましい。これは、10質量%よりも大きい場合は、通常のポリエチレン自体には伸縮性がないため、フィルムの伸縮性が著しく悪化してしまう場合があるためである。
【0027】
(貫通孔)
図1は、本発明の伸縮フィルムを示す模式図である。図1に示すように、本発明の伸縮フィルム1には、複数の貫通孔2が形成されている。この貫通孔2は、後述のごとく、多孔化前の原反フィルムに対して延伸処理を行うことにより形成される。そして、本発明の伸縮フィルム1においては、原反フィルムが上述の無機充填剤3を含有する状態で延伸処理を行うことにより多孔化される構成となっている。
【0028】
貫通孔の直径は、1μm~100μmが好ましい。直径が1μm以上あれば、エラストマーのような伸縮性のある材料においても孔が塞がることなく優れた透湿性を得ることができ、100μm以下であれば、防水性を有することができる。
【0029】
なお、貫通孔2の直径は、無作為に選択した50箇所の貫通孔2の開口直径の平均値である。
【0030】
<伸縮フィルムの製造方法>
次に、本発明の伸縮フィルムの製造方法について、詳細に説明する。
【0031】
本発明の伸縮フィルムは、上述のオレフィン系エラストマーと無機充填剤とを含有する原料を、押出機を用いてフィルム状に成形することにより製造される。
【0032】
より具体的には、まず、オレフィン系エラストマー、無機充填剤、及び必要に応じて、上述のオレフィン系樹脂等の他の成分を所定の配合比率で混合し、ストランドダイを備えた同方二軸押出機等にてストランド状に押し出ししてカットし、ペレットを得る。
【0033】
次に、このペレットを、Tダイを備えた単軸押出機にて溶融押し出しによりフィルム状に成形し、当該フィルムを巻取りロールで巻き取ることにより、多孔化前の原反フィルムを得る。
【0034】
そして、原反フィルムに対して、一軸延伸処理を行うことにより、原反フィルムを多孔化し、図1に示す、複数の貫通孔2が形成された伸縮フィルム1が製造される。
【0035】
なお、上述の一軸延伸処理は、図1に示す、フィルムの機械軸(長手)方向(以下、「MD」という。)、またはこれと直交する方向(以下、「TD」という。)のいずれか一方の方向に行われる延伸処理のことである。
【0036】
ここで、本発明者らは、伸縮フィルムにおいて、優れた伸縮性と透湿性を両立することができる条件を検討したところ、上記の一軸延伸処理によるフィルム成形時の温度(延伸温度)と延伸倍率を制御することにより、伸縮フィルムの延びを防止して、優れた伸縮性と透湿性を両立することができることを見出した。
【0037】
より具体的には、一軸延伸処理における延伸温度は、20℃以上70℃未満である。これは、20℃未満の場合は、オレフィン系エラストマーの伸縮性に起因して形成された貫通孔が塞がってしまい、十分な透湿度を得られない場合があるためである。また、延伸温度が70℃以上の場合は、伸縮フィルムが溶融して破断する場合があるためである。
【0038】
また、オレフィン系エラストマーがプロピレン系エラストマーの場合、延伸温度はプロピレン系エラストマーの融点以上である50℃以上70℃未満が好ましい。融点以上で延伸を行うと、樹脂が配向するため、延伸方向の応力が向上する。また、融点以上で延伸を行うと、永久歪みが大きくなり、伸縮フィルムの伸縮性が低下するため、無機充填剤と樹脂との乖離状態が固定化されやすく、透湿性が向上する。
【0039】
なお、「融点」とは、DSCチャートの融解開始温度のことを意味し、プロピレン系エラストマーの融解開始温度は、一般的に40℃以上50℃以下である。
【0040】
また、一軸延伸処理における延伸倍率は、1.8倍以上4.5倍以下である。これは、延伸倍率が1.8倍以上であれば、延伸処理による多孔化が促進されて、伸縮フィルムの透湿度がさらに向上するが、4.5倍よりも大きい場合は、フィルムを伸長した場合に破断する場合があるためである。なお、ここでいう「延伸倍率」とは、延伸方向における、延伸前のフィルムの長さに対する延伸後のフィルムの長さの倍数のことをいう。
【0041】
このように、本発明においては、延伸温度を20℃以上70℃未満に設定するとともに、伸縮倍率を1.8倍以上4.5倍以下に設定することにより、フィルムの延びを防止して、優れた伸縮性と透湿性を両立することができる伸縮フィルムを得ることが可能になる。
【0042】
そして、本発明の伸縮フィルムは、一軸延伸処理によるフィルムの延伸方向(例えば、MD)における50%伸長時の応力が6.0N以上15.0N以下となるため、フィルム製造時における巻き取り工程や、伸縮フィルムを用いて衛生用品等を製造する際に、フィルムの延びが防止され、優れた伸縮性を得ることが可能になる。
【0043】
なお、上記「延伸方向における50%伸長時の応力」は、後述の実施例において記載した方法で求めることができる。
【0044】
また、本発明の伸縮フィルムは、透湿度が1000g/(m・24h)以上となるため、優れた透湿性を得ることが可能になる。
【0045】
なお、上記「透湿度」は、JIS Z 0208(防湿包装材料の透湿度試験方法(カップ法))に準拠して測定されたものをいう。
【0046】
また、伸縮フィルムを小さい力で延ばすとの観点から、一軸延伸処理によるフィルムの延伸方向(例えば、MD)と直交する方向(例えば、TD)における50%伸長時の応力が3.0N以下が好ましい。
【0047】
また、同様の観点から、一軸延伸処理によるフィルムの延伸方向(例えば、MD)と直交する方向(例えば、TD)における100%伸長時の応力が3.0N以下が好ましい。
【0048】
なお、上記「延伸方向と直交する方向における50%伸長時の応力」、及び「延伸方向と直交する方向における100%伸長時の応力」は、後述の実施例において記載した方法で求めることができる。
【0049】
また、伸縮フィルムを製造する場合、伸縮フィルムの永久歪みは、25%以下が好ましい。伸縮フィルムの永久ひずみが25%以下であれば、優れた伸縮性を有する伸縮フィルムを得ることができる。
【0050】
なお、ここでいう「永久歪み」とは、以下の方法により算出されるものをいう。
【0051】
伸縮フィルムから機械軸方向(MD)に25mm、機械軸方向に直交する方向(TD)に100mmの短冊状試験片を切り取り、試験片を試験装置(精密万能試験機)のつかみ具につかみ具間距離が25mmとなるように固定する。そして、試験片をTDに速度254mm/分の条件で、下記式(1)で算出される伸び(伸長倍率)が100%となるように伸長した後、直ちに試験片を同速度にて収縮させる。そして、下記式(2)から永久歪み[%]を算出する。
【0052】
[数1]
伸び[%]=(L1-L0)/L0×100 (1)
【0053】
[数2]
永久歪み[%]=(L2-L0)/L0×100 (2)
【0054】
ただし、L0は、伸長する前のつかみ具間距離(mm)であり、L1は、伸長した後のつかみ具間距離(mm)であり、L2は、収縮させる際に試験片の荷重(N/25mm)が0になるときのつかみ具間距離(mm)である。
【0055】
また、製造される伸縮フィルムの厚みは、10~80μmが好ましく、20~60μmがより好ましい。伸縮フィルムの厚みが10μm以上であれば、巻取り時のシワや、スリット時のトリミングのカット性などのハンドリング性を確保できる。また、伸縮フィルムの厚みが80μm以下であれば、十分な透湿性を得ることができる。
【0056】
以上の方法により、本発明においては、フィルムの延びを防止して、優れた伸縮性と透湿性を両立することができる伸縮フィルムを得ることができる。
【0057】
なお、伸縮フィルム層は、単層であってもよく、2層以上の複層であってもよい。伸縮フィルム層が複層の場合、各層の組成や厚みは同じであってもよく、異なっていてもよい。伸縮フィルム層が複層である場合の伸縮フィルム層の厚みとは、この複層の全体の厚みのことを意味する。
【実施例
【0058】
以下に、本発明を実施例に基づいて説明する。なお、本発明は、これらの実施例に限定されるものではなく、これらの実施例を本発明の趣旨に基づいて変形、変更することが可能であり、それらを本発明の範囲から除外するものではない。
【0059】
伸縮フィルムの作製に使用した材料を以下に示す。
(1)プロピレン系エラストマー(Vistamaxx(登録商標)6102FL(ExxonMobil社製、プロピレン-エチレン共重合体、エチレン単位含有率:16質量%)
(2)LLDPE:直鎖状低密度ポリエチレン、密度:0.902g/cm、MFR:3.0g/10分(Dow Chemical社製、商品名:Affinity、PL1850G)
(3)LDPE:低密度ポリエチレン、密度:0.922g/cm、MFR:0.3g/10分(住友化学社製、商品名:スミカセン、F101-1)
(4)ULDPE:超低密度ポリエチレン、密度:0.915g/cm、MFR:2.2g/10分(日本ポリエチレン社製、商品名:カーネルKF282)
(5)エチレン系エラストマー:密度:0.867g/cm、MFR(230℃):7.0g/10分(三井化学社製、商品名:タフマーPN-2070)
(6)滑剤:LDPEをベースレジンとするマスターバッチ(理研ビタミン社製、商品名:リケマスター、ELM080)
(7)無機充填剤:炭酸カルシウム(白石カルシウム社製、商品名:PO-150B-10)
【0060】
(実施例1)
<伸縮フィルムの作製>
まず、表1に示す各材料を混合して、表1に示す組成(質量部)を有する実施例1の材料を用意した。次に、この材料を、200℃の条件下において、ストランドダイを備えた同方二軸押出機(JSW社製、商品名:TEX28V-42CW-4V)にてストランド状に押し出してカットし、ペレットを得た。
【0061】
次に、このペレットを、Tダイを備えた単軸押出機(永田製作所社製)にて、溶融押し出し(押出温度:200℃)によりフィルム状に成形し、当該フィルムを巻取りロールで巻き取ることにより、多孔化前の原反フィルムを得た。
【0062】
そして、この原反フィルムに対して、表1に示す延伸温度(室温:23℃±2℃)と延伸倍率の条件で、MDに一軸延伸処理を行うことにより、原反フィルムを多孔化し、複数の貫通孔が形成された伸縮フィルムを作製した。
【0063】
<延伸方向(MD)における50%伸長時の応力の測定>
MDにおけるヒステリシス試験において、作製した伸縮フィルムをTDに25mm、MDに100mm切り出した試験片を用意し、チャック間距離が25mm、試験速度が254mm/minの条件にて、チャック間が50mm(100%)まで試験片をMDに延伸し、その状態を保持せずにチャック間距離を25mmへ戻した。そして、チャック間50mm(100%)まで試験片をMDに延伸する途中のチャック間距離が37.5mmの時(50%伸長時)のMDの応力[MPa]を、精密万能試験機(島津製作所社製、商品名:オートグラフAG-5000A)を用いて測定した。以上の結果を表1に示す。
【0064】
<延伸方向と直交する方向(TD)における50%伸長時の応力>
TDにおけるヒステリシス試験において、作製した伸縮フィルムをMDに25mm、TDに100mm切り出した試験片を用意し、チャック間距離が25mm、試験速度が254mm/minの条件にて、チャック間が50mm(100%)まで試験片をTDに延伸し、その状態を保持せずにチャック間距離を25mmへ戻した。そして、チャック間50mm(100%)まで試験片をTDに延伸する途中のチャック間距離が37.5mmの時(50%伸長時)のTDの応力[MPa]を、精密万能試験機(島津製作所社製、商品名:オートグラフAG-5000A)を用いて測定した。以上の結果を表1に示す。
【0065】
<延伸方向と直交する方向(TD)における100%伸長時の応力>
TDにおけるヒステリシス試験において、作製した伸縮フィルムをMDに25mm、TDに100mm切り出した試験片を用意し、チャック間距離が25mm、試験速度が254mm/minの条件にて、チャック間が50mm(100%)まで試験片をTDに延伸し、その状態を保持せずにチャック間距離を25mmへ戻した。そして、チャック間距離が50mmの時(100%伸長時)のTDの応力[MPa]を、精密万能試験機(島津製作所社製、商品名:オートグラフAG-5000A)を用いて測定した。以上の結果を表1に示す。
【0066】
<永久歪みの測定>
作製した伸縮フィルムから、延伸方向(MD)に25mm、延伸方向と直交する方向(TD)に100mmの短冊状試験片を切り取り、この試験片を精密万能試験機(島津製作所社製、オートグラフAG-5000A)のつかみ具につかみ具間距離が25mmとなるように固定した。そして、試験片をTDに速度254mm/分の条件で、上記式(1)で算出される伸び(伸長倍率)が100%となるように伸長した後、直ちに試験片を同速度にて収縮させた。そして、上記式(2)から永久歪み[%]を算出した。なお、試験は、室温(23℃±2℃)で行った。以上の結果を表1に示す。
【0067】
<透湿度の測定>
JIS Z 0208(防湿包装材料の透湿度試験方法(カップ法))に準拠して、作製した伸縮フィルムの透湿度[g/(m・24h)]を測定した。なお、吸湿剤として塩化カルシウムを15g使用し、温度40℃、相対湿度90%の恒温恒湿環境下で測定した。以上の結果を表1に示す。
【0068】
(実施例2~5)
MDへの一軸延伸処理の条件を表1に示す条件に変更したこと以外は、上述の実施例1と同様にして、表1に示す厚みを有する伸縮フィルムを作製した。
【0069】
そして、上述の実施例1と同様にして、各応力の測定、永久歪みの測定、及び透湿度の測定を行った。以上の結果を表1に示す。
【0070】
(実施例6)
材料の組成を表1に示す組成(質量部)に変更するとともに、MDへの一軸延伸処理の条件を表1に示す条件に変更したこと以外は、上述の実施例1と同様にして、表1に示す厚みを有する伸縮フィルムを作製した。
【0071】
そして、上述の実施例1と同様にして、各応力の測定、永久歪みの測定、及び透湿度の測定を行った。以上の結果を表1に示す。
【0072】
(比較例1)
材料の組成を表2に示す組成(質量部)に変更するとともに、MDへの一軸延伸処理を行わなかったこと以外は、上述の実施例1と同様にして、表2に示す厚みを有する伸縮フィルムを作製した。
【0073】
そして、上述の実施例1と同様にして、各応力の測定、永久歪みの測定、及び透湿度の測定を行った。以上の結果を表2に示す。
【0074】
(比較例2)
MDへの一軸延伸処理を行わなかったこと以外は、上述の実施例1と同様にして、表2に示す厚みを有する伸縮フィルムを作製した。
【0075】
そして、上述の実施例1と同様にして、各応力の測定、永久歪みの測定、及び透湿度の測定を行った。以上の結果を表2に示す。
【0076】
(比較例3~9)
MDへの一軸延伸処理の条件を表2に示す条件に変更したこと以外は、上述の実施例1と同様にして、表2に示す厚みを有する伸縮フィルムを作製した。
【0077】
そして、上述の実施例1と同様にして、各応力の測定、永久歪みの測定、及び透湿度の測定を行った。以上の結果を表2に示す。
【0078】
(比較例10)
材料の組成を表2に示す組成(質量部)に変更するとともに、MDへの一軸延伸処理の条件を表2に示す条件に変更したこと以外は、上述の実施例1と同様にして、表2に示す厚みを有する伸縮フィルムを作製した。
【0079】
そして、上述の実施例1と同様にして、各応力の測定、永久歪みの測定、及び透湿度の測定を行った。以上の結果を表2に示す。
【0080】
【表1】
【0081】
【表2】
【0082】
表1に示すように、実施例1~6の伸縮フィルムにおいては、MDにおける50%伸長時の応力が6.0N以上15.0N以下であるとともに、透湿度が1000g/(m・24h)以上であり、フィルムの延びを防止して、優れた伸縮性と透湿性を両立することができることが分かる。
【0083】
一方、表2に示すように、比較例1の伸縮フィルムにおいては、フィルムの材料にポリエチレン樹脂が含有されておらず、また、MDへの一軸延伸処理が行われていないため、MDにおける50%伸長時の応力が6.0N未満であるとともに、貫通孔が形成されず(すなわち、透湿度が0g/(m・24h))、伸縮性と透湿性に乏しいことが分かる。
【0084】
また、比較例2の伸縮フィルムにおいては、MDへの一軸延伸処理が行われていないため、貫通孔が形成されず(すなわち、透湿度が0g/(m・24h))、透湿性に乏しいことが分かる。
【0085】
また、比較例3,5,7の伸縮フィルムにおいては、一軸延伸処理によるフィルム成形時の延伸倍率が4.5倍よりも大きいため、フィルムの延伸時にフィルムが破断した。
【0086】
また、比較例4,6の伸縮フィルムにおいては、一軸延伸処理によるフィルム成形時の延伸倍率が1.8倍よりも小さいため、一軸延伸処理による多孔化が促進されず、透湿度が1000g/(m・24h))未満となり、透湿性に乏しいことが分かる。
【0087】
また、比較例8~9の延伸フィルムにおいては、一軸延伸処理によるフィルム成形時の延伸温度が70℃以上のため、伸縮フィルムが溶融して破断した。
【0088】
また、比較例10の延伸フィルムにおいては、延伸温度がエラストマーの融点未満のため、熱による配向状態の固定化が進行せず、残留歪みが減少することにより低応力化し、またエラストマーの伸縮性に起因して形成された貫通孔が塞がるため、MDにおける50%伸長時の応力が6.0N未満であるとともに、透湿度が1000g/(m・24h)未満となり、伸縮性と透湿性に乏しいことが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0089】
以上説明したように、本発明は、衛生分野(生理用品、失禁用品等)や医療分野(外科用ドレープ等)等に利用される伸縮フィルム及びその製造方法に適している。
【符号の説明】
【0090】
1 伸縮フィルム
2 貫通孔
3 無機充填剤
図1