(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】プロテクタ
(51)【国際特許分類】
H02G 3/04 20060101AFI20240305BHJP
【FI】
H02G3/04 037
(21)【出願番号】P 2020075775
(22)【出願日】2020-04-22
【審査請求日】2023-03-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】平川 晋次
【審査官】東 昌秋
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-54588(JP,A)
【文献】特開2016-195480(JP,A)
【文献】特開2019-113134(JP,A)
【文献】特開2017-59421(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/00-3/04
B60R 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤハーネスを収容し、前記ワイヤハーネスを結束バンドで固定するハーネス固定部を有するプロテクタであって、
前記ハーネス固定部は、プロテクタ本体におけるワイヤハーネスの軸方向の端部において、前記ワイヤハーネスの軸方向及び半径方向に、前記プロテクタ本体の両側壁及び底壁より外側へ突出するように設けられ、
前記ハーネス固定部は、前記ワイヤハーネスの周方向に沿って形成される内側ガイド壁と外側ガイド壁とを備え、
前記両側壁の一方の側壁寄りに前記内側ガイド壁と前記外側ガイド壁とで囲まれて前記結束バンドの先端部が挿入されるバンド挿入口が設けられ、
前記両側壁の他方の側壁寄りに前記内側ガイド壁と前記外側ガイド壁とで囲まれて前記結束バンドの先端部が取り出されるバンド取出口が設けられ、
前記内側ガイド壁は、前記底壁よりも前記一方の側壁側に設けられ、
前記バンド取出口は、前記底壁側から前記他方の側壁側にかけて広く開口していて、
前記結束バンドを前記内側ガイド壁と前記外側ガイド壁との間に挿通した際に、前記結束バンドの先端部の挿入方向と取り出し方向が略平行になるようにしたプロテクタ。
【請求項2】
前記内側ガイド壁は、前記外側ガイド壁よりも周方向の長さが短く形成されている、請求項1に記載のプロテクタ。
【請求項3】
前記外側ガイド壁の内周面は、前記ワイヤハーネスの周方向に沿うように湾曲して形成されている、請求項1又は2に記載のプロテクタ。
【請求項4】
前記外側ガイド壁の内周面は、前記内側ガイド壁側に向かって突出するリブを有する、請求項1から3のいずれか1項に記載のプロテクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部に収容されているワイヤハーネスを結束バンドの巻き付けにより固定するプロテクタに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のプロテクタとして、特許文献1に開示されたものがある。この特許文献1に開示されたプロテクタは、ワイヤハーネスを収容する本体部と、この本体部に設けられ、結束バンドの巻き回しによりワイヤハーネスを固定する固定部と、結束バンドをワイヤハーネスに沿うように案内する内側及び外側ガイド部と、を備えている。
【0003】
そして、内側ガイド部と外側ガイド部との間に結束バンドの先端部を挿入して、プロテクタの本体部内に収容されたワイヤハーネスに結束バンドを巻き回すことで、プロテクタに対してワイヤハーネスを固定できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来のプロテクタでは、結束バンドを上から内側ガイド部と外側ガイド部の間に挿入した際に、その先端部が外側ガイド部に沿って横の方に出るため、結束バンドの先端部を上に持っていかなければならず、巻き付け作業性が悪い。また、結束バンドを内側ガイド部と外側ガイド部の間に通した際に、その先端部を外側ガイド部の内周面に沿わせて挿入するため、結束バンドの先端部が外側ガイド部の内周面との接触による摩擦抵抗により挿通し難くなり、作業性が低下する。
【0006】
本発明は、このような従来技術が有する課題に鑑みてなされたものである。そして本発明の目的は、ハーネス固定部にワイヤハーネスを結束バンドの巻き付けにより容易に固定することができるプロテクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の態様に係るプロテクタは、ワイヤハーネスを収容し、前記ワイヤハーネスを結束バンドで固定するハーネス固定部を有するプロテクタであって、前記ハーネス固定部は、前記ワイヤハーネスの周方向に沿って形成される内側ガイド壁と外側ガイド壁とを備え、前記結束バンドを前記内側ガイド壁と前記外側ガイド壁との間に挿通した際に、前記結束バンドの先端部の挿入方向と取り出し方向が略平行になるようにしたものである。
【0008】
前記内側ガイド壁は、前記外側ガイド壁よりも周方向の長さが短く形成されていることが好ましい。
【0009】
前記外側ガイド壁の内周面は、前記ワイヤハーネスの周方向に沿うように湾曲して形成されていることが好ましい。
【0010】
前記外側ガイド壁の内周面は、前記内側ガイド壁側に向かって突出するリブを有することが好ましい。
【0011】
前記ハーネス固定部は、プロテクタ本体の端部において該プロテクタ本体の両側壁及び底壁より外へ突出するように設けられ、前記両側壁の一方の側壁寄りに前記内側ガイド壁と前記外側ガイド壁とで囲まれて前記結束バンドの先端部が挿入されるバンド挿入口が設けられ、前記両側壁の他方の側壁寄りに前記内側ガイド壁と前記外側ガイド壁とで囲まれて前記結束バンドの先端部が取り出されるバンド取出口が設けられ、前記バンド取出口は、前記底壁側から前記他方の側壁側にかけて広く開口していることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ハーネス固定部にワイヤハーネスを結束バンドの巻き付けにより容易に固定することができるプロテクタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態に係るプロテクタの一例を示す斜視図である。
【
図3】小径のワイヤハーネスを結束バンドで固定する前の状態を示す
図1中A-A線に沿う断面図である。
【
図4】上記小径のワイヤハーネスを結束バンドで固定した状態を示す
図1中A-A線に沿う断面図である。
【
図5】大径のワイヤハーネスを結束バンドで固定した状態を示す
図1中A-A線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を用いて本発明の実施形態に係るプロテクタについて詳細に説明する。
【0015】
図1は本発明の実施形態に係るプロテクタの一例を示す斜視図である。
図2はプロテクタの平面図である。
図3は小径のワイヤハーネスを結束バンドで固定する前の状態を示す
図1中A-A線に沿う断面図である。
図4は小径のワイヤハーネスを結束バンドで固定した状態を示す
図1中A-A線に沿う断面図である。
図5は大径のワイヤハーネスを結束バンドで固定した状態を示す
図1中A-A線に沿う断面図である。
【0016】
図1~
図3に示すように、プロテクタ10は、複数の電線束からなるワイヤハーネスW/Hを収容する正面U字状で合成樹脂製のプロテクタ本体11を備えている。このプロテクタ本体11は、底壁12と、底壁12の両側から突設する両側壁13,14と、を有していて、これら底壁12と両側壁13,14との間がワイヤハーネスW/Hを収容する空間になっている。
【0017】
そして、
図1、
図2に示すように、プロテクタ本体11の端部11aには、収容されたワイヤハーネスW/Hを結束バンド30のバンド部31で結束して固定する正面U字形状のハーネス固定部20を有している。このハーネス固定部20は、プロテクタ本体11の端部11aにおいてプロテクタ本体11の底壁12及び両側壁13,14より外へ突出するように一体形成されている。
【0018】
図2、
図3に示すように、ハーネス固定部20は、ワイヤハーネスW/Hの周方向に沿ってそれぞれ形成された内側ガイド壁21及び外側ガイド壁22と、前壁23と、後壁24と、を備えている。これら内側ガイド壁21と外側ガイド壁22と前壁23及び後壁24とで形成された空間が結束バンド30のバンド部31を挿通させるバンド挿通空間25になっている。なお、
図1~
図3に示すように、前壁23と後壁24は、中央がプロテクタ本体11の底壁12から下へ突出していて、両側がプロテクタ本体11の両側壁13,14の中途の位置から外へ平行に突出したU字板状にそれぞれ形成されている。
【0019】
図1、
図3に示すように、内側ガイド壁21は、外側ガイド壁22よりも周方向の長さが極端に短く形成されている。また、内側ガイド壁21の内周面21aは、結束バンド30のバンド部31の幅よりも広い幅を有した案内面となって湾曲面状に形成されている。また、
図1に示すように、内側ガイド壁21の外周面21bは、プロテクタ本体11の底壁12の内面及び両側壁13,14の内面の中途まで面一に連なっている。そして、
図4に示すように、内側ガイド壁21の外周面21bに、結束バンド30のバンド部31で結束されたワイヤハーネスW/Hが圧接されて固定されるようになっている。
【0020】
図1~
図3に示すように、外側ガイド壁22の内周面22aは、ワイヤハーネスW/Hの周方向に沿うように湾曲して形成されている。すなわち、外側ガイド壁22の内周面22aは、結束バンド30のバンド部31の幅よりも広い幅を有した案内面となって湾曲面状に形成されている。また、
図2、
図3に示すように、外側ガイド壁22の内周面22aの中央には、内側ガイド壁21側に向かって突出するリブ22bが一体形成されている。
【0021】
図1、
図2に示すように、プロテクタ本体11の一方の側壁13寄りの位置には、内側ガイド壁21と外側ガイド壁22と前壁23及び後壁24で囲まれて形成され、結束バンド30のバンド部31の先端部31aが挿入されるバンド挿入口26が設けられている。このバンド挿入口26は、矩形で水平に開口している。また、プロテクタ本体11の他方の側壁14寄りの位置には、内側ガイド壁21と外側ガイド壁22と前壁23及び後壁24で囲まれて形成され、結束バンド30のバンド部31の先端部31aが取り出されるバンド取出口27が設けられている。このバンド取出口27は、プロテクタ本体11の底壁12側から他方の側壁14側にかけて広く開口している。
【0022】
そして、
図3に示すように、結束バンド30のバンド部31をバンド挿入口26から内側ガイド壁21と外側ガイド壁22との間に挿通させ、バンド取出口27から取り出す際に、バンド部31の先端部31aの挿入方向Sと取り出し方向Tが略平行になっている。
【0023】
図3~
図5に示すように、結束バンド30は、帯状に形成されたバンド部31と、このバンド部31を係止可能に形成された筒状のバンド固定部32と、を有している。
【0024】
以上実施形態のプロテクタ10によれば、
図3に示すように、ハーネス固定部20のバンド挿入口26に結束バンド30のバンド部31を挿入すると、バンド部31の先端部31aが外側ガイド壁22の内周面22aに沿って外に立ち上がる。バンド挿入口26を広くし、バンド挿入口26側の外側ガイド壁22の内周面22aの傾斜角度を緩やかな角度にすることで、バンド取出口27への結束バンド30の通し作業がし易くなっている。
【0025】
また、バンド部31の先端部31aが外側ガイド壁22の内周面22aに沿って外に立ち上がり、作業者の手元に戻るため、従来の作業より作業性が向上する。さらに、外側ガイド壁22の内周面22aに設けられたリブ22bにより、外側ガイド壁22と結束バンド30のバンド部31の接触面積を減らすことができる。これにより、結束バンド30の挿入時の摩擦抵抗を減らすことができ、結束バンド30のバンド部31をバンド挿通空間25から外へスムーズに挿通させることができる。
【0026】
そして、結束バンド30のバンド部31の先端部31aを筒状のバンド固定部32に差し込んで結束することで、プロテクタ本体11の端部11aに設けられたハーネス固定部20にワイヤハーネスW/Hを簡単に固定することができる。また、ハーネス固定部20の内側ガイド壁21を外側ガイド壁22より短くしたことで、図4に示すように、小径のワイヤハーネスW/Hでも、図5に示すように、大径のワイヤハーネスW/Hでも、結束バンド30を用いて確実に固定することができる。このように、電線サイズが違うワイヤハーネスW/Hであっても、ハーネス固定部20の内側ガイド壁21の外周面21bに結束バンド30を介して各種のワイヤハーネスW/Hを簡単かつ確実に固定することができる。
【0027】
さらに、
図4及び
図5に示すように、ハーネス固定部20の外側ガイド壁22が結束バンド30のバンド部31の外側を覆うようになっているため、プロテクタ10の落下等に対するハーネス固定部20の強度も確保することができる。
【0028】
以上、本実施形態を説明したが、本実施形態はこれらに限定されるものではなく、本実施形態の要旨の範囲内で種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0029】
10 プロテクタ
11 プロテクタ本体
11a 端部
12 底壁
13,14 両側壁
13 一方の側壁
14 他方の側壁
20 ハーネス固定部
21 内側ガイド壁
22 外側ガイド壁
22a 内周面
22b リブ
26 バンド挿入口
27 バンド取出口
30 結束バンド
31a 先端部
W/H ワイヤハーネス
S 挿入方向
T 取り出し方向