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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】出没式筆記具
(51)【国際特許分類】
   B43K 24/12 20060101AFI20240305BHJP
【FI】
B43K24/12
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020096706
(22)【出願日】2020-06-03
(65)【公開番号】P2021187109
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2023-05-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000108328
【氏名又は名称】ゼブラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】弁理士法人英知国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】月岡 之博
【審査官】市川 勝
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-120490(JP,A)
【文献】実開平07-018394(JP,U)
【文献】特開2006-337564(JP,A)
【文献】特開2007-203658(JP,A)
【文献】実開昭59-140879(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B43K 24/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸筒と、前記軸筒の周壁に挿通されて進退可能な押子と、前記押子に接続された筆記芯と、前記押子及び前記筆記芯を後方へ付勢する付勢部材とを備え、前記押子を前進させる操作により前記筆記芯を前記軸筒の前端から突出させるようにした出没式筆記具であって、
前記付勢部材は、引張バネであり、その前端側を前記押子に掛止するとともに後端側を不動部位に掛止し、
前記押子には、組立時に後方から挿入される前記付勢部材を自動的に掛止する自動掛止部が内在していることを特徴とする出没式筆記具。
【請求項2】
前記付勢部材の前端側には、掛合部が設けられ、
前記自動掛止部は、前記掛合部を掛止する被掛止部と、組立時に後方から挿入される前記掛合部を前記被掛止部によって掛止可能な位置まで案内するガイド部とを有することを特徴とする請求項1記載の出没式筆記具。
【請求項3】
前記被掛止部は、懐部分を前方へ向けたフック状に形成され、
前記ガイド部は、前進する前記掛合部の進行方向を曲げて前記被掛止部の懐部分へ導くことを特徴とする請求項2記載の出没式筆記具。
【請求項4】
前記押子の後端側には、前記付勢部材を前後方向へ貫通する付勢部材挿通部が設けられ、前記被掛止部は、前記付勢部材挿通部よりも前側で押子外に露出していることを特徴とする請求項2又は3記載の出没式筆記具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、選択された押子の操作により筆記部を出没する出没式筆記具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の発明には、例えば特許文献1に記載されるように、軸筒と、この軸筒内にスライド可能に係合するとともに該軸筒の外周面から露出して周方向に複数並ぶ押子と、軸筒内で複数の前記押子にそれぞれ接続された筆記芯と、筆記芯毎に環状に装着されて前記押子及び前記筆記芯を後方へ付勢する圧縮コイルバネとを備え、複数の前記押子の何れかをスライドさせる操作により該押子に接続された筆記芯の筆記部を軸筒前端から突出させるようにした筆記具がある。
ところで、このような筆記具によれば、筆記芯の外周に圧縮コイルバネを装着するスペースを要するため、軸筒径が大きくなってしまう傾向がある。
そこで、例えば特許文献2に記載の発明では、前記圧縮コイルバネに換えて、押子よりも後側に引張コイルバネを設け、この引張コイルバネによって押子を後方へ引っ張るようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-111876号公報
【文献】特開2016-093976号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、後者従来技術では、製造時に小径の引張コイルバネを押子に掛止する作業が困難である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような課題に鑑みて、本発明は、以下の構成を具備するものである。
軸筒と、前記軸筒の周壁に挿通されて進退可能な押子と、前記押子に接続された筆記芯と、前記押子及び前記筆記芯を後方へ付勢する付勢部材とを備え、前記押子を前進させる操作により前記筆記芯を前記軸筒の前端から突出させるようにした出没式筆記具であって、前記付勢部材は、引張バネであり、その前端側を前記押子に掛止するとともに後端側を不動部位に掛止し、前記押子には、組立時に後方から挿入される前記付勢部材を自動的に掛止する自動掛止部が内在していることを特徴とする出没式筆記具。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、以上説明したように構成されているので、付勢部材を押子に掛止する作業を容易化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明に係る出没式筆記具の一例を示す半断面である。
図2】同出没式筆記具の要部を拡大して示す半断面図である。
図3】押子に付勢部材を接続する手順を(a)~(b)に順次に示す図であり、押子のみ断面図で示している。
図4】自動掛止部の一例を示す拡大図であり、押子を断面で示している。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本実施の形態では、以下の特徴を開示している。
第1の特徴は、軸筒と、前記軸筒の周壁に挿通されて進退可能な押子と、前記押子に接続された筆記芯と、前記押子及び前記筆記芯を後方へ付勢する付勢部材とを備え、前記押子を前進させる操作により前記筆記芯を前記軸筒の前端から突出させるようにした出没式筆記具であって、前記付勢部材は、引張バネであり、その前端側を前記押子に掛止するとともに後端側を不動部位に掛止し、前記押子には、組立時に後方から挿入される前記付勢部材を自動的に掛止する自動掛止部が設けられている(図1図4参照)。
【0009】
第2の特徴として、前記付勢部材の前端側には、掛合部が設けられ、前記自動掛止部は、前記掛合部を掛止する被掛止部と、組立時に後方から挿入される前記掛合部を前記被掛止部によって掛止可能な位置まで案内するガイド部とを有する(図4参照)。
【0010】
第3の特徴として、前記被掛止部は、懐部分を前方へ向けたフック状に形成され、前記ガイド部は、前進する前記掛合部の進行方向を曲げて前記被掛止部の懐部分へ導く(図4参照)。
【0011】
第4の特徴として、前記押子の後端側には、前記付勢部材を前後方向へ貫通する付勢部材挿通部が設けられ、前記被掛止部は、前記付勢部材挿通部よりも前側で押子外に露出している(図1図4参照)。
【0012】
<具体的実施態様>
次に、上記特徴を有する具体的な実施態様について、図面に基づいて詳細に説明する。
本明細書中、軸筒軸方向とは軸筒の中心線が延びる方向を意味し、軸筒周方向とは軸筒の外周を回る方向を意味する。また、「前」とは、軸筒軸方向の一方側であって筆記部が突出する方向を意味し、「後」とは、前記一方側に対する逆方向側を意味する。
また、軸筒径方向とは軸筒の中心線に直交する軸筒の直径方向を意味し、軸筒径方向外側とは軸筒径方向に沿って軸筒中心から離れる方向を意味し、軸筒径方向内側とは軸筒径方向に沿って軸筒中心に向かう方向を意味する。
【0013】
この出没式筆記具Aは、軸筒10と、軸筒10後端側の周壁に径方向へ挿通されるとともに該周壁に沿って進退可能な複数の押子20と、軸筒10内で複数の押子20にそれぞれ接続された複数の筆記芯30と、複数の押子20及び筆記芯30をそれぞれ後方へ付勢する付勢部材40とを備え、選択された押子20を前進させる操作により、この前進した押子20に対応する筆記芯30の筆記部31を軸筒10の前端から突出させる。
【0014】
軸筒10は、前後方向へわたる略円筒状に形成され、前軸11と、この前軸11の後端側に螺合接続された後軸12とから構成される。
なお、図示例以外の態様としては、この軸筒10を単一の部材から形成したり、三以上の部材から形成することも可能である。
【0015】
前軸11は、硬質合成樹脂材料から略円筒状に形成され、その前端側に、先口部11aを有する。先口部11aは、前端を開口した先細筒状に形成される。
【0016】
後軸12は、硬質合成樹脂材料から前後方向へわたる略円筒状に成形される。
【0017】
後軸12の周壁の後端側には、押子20を嵌め合わせて前後にスライドさせる押子ガイド部12bが、周方向に間隔を置いて複数設けられる。
各押子ガイド部12bは、前後方向へ長尺状に延設され、後軸12の周壁を径方向に貫通している。この押子ガイド部12bの後端部は、後方向きに開口している。
【0018】
また、後軸12の内周面には、前進して軸筒内へ沈み込んだ際の押子20を係止するための段状の被係止部12eが設けられる。
【0019】
後軸12における押子ガイド部12bよりも後側には、縮径されて後方へ突出した嵌合筒部12cが設けられる。
この嵌合筒部12cには、尾栓14が環状に嵌め合わせられる。尾栓14は後方を底部とした有底筒状に形成される。
【0020】
また、嵌合筒部12cの周壁には、付勢部材40を掛止するための被掛止部12dが、押子ガイド部12b毎に対応するように、周方向に所定間隔を置いて複数設けられる。これら複数の嵌合筒部12cは、図2に示すように、尾栓14内の空間に位置する。
各被掛止部12dは、嵌合筒部12cから径方向外側へ突出して突端側を後方へ向けたフック状に形成され、後軸12に一体に設けられている。
【0021】
押子20は、硬質合成樹脂材料から前後方向へわたる長尺状に形成され、その前端側に筆記芯30の後端部を嵌合し、後端側に後述する付勢部材40を内在している。
この押子20は、操作部21が前方へ押される操作により前進した際に軸筒内へ沈み込んで、後端側の係止部22を、後軸12内の段状の被係止部12eに係止する。そして、この係止状態において、他の押子が前進した際には、この前進した押子に当接されることで、前記係止状態を解除する。
【0022】
この押子20の後端側には、組立時に後方から挿入される付勢部材40を自動的に掛止する自動掛止部23が設けられている。
自動掛止部23は、付勢部材40を前後方向へ貫通する付勢部材挿通部23aと、付勢部材挿通部23aよりも前側で押子外に露出した被掛止部23bと、付勢部材40の前側掛合部42を被掛止部23bによって掛止可能な位置まで案内するガイド部23cとを有する。
【0023】
詳細に説明すれば、押子20の長手方向の途中箇所には、径方向内側を向く切欠部20aが設けられ、この切欠部20aよりも後側分に、付勢部材挿通部23aが設けられ、切欠部20a内の前寄りに、ガイド部23cが設けられる。
【0024】
付勢部材挿通部23aは、押子20の後端側部分を前後方向へ貫通する孔であり、付勢部材40を遊挿可能な内径を有する。
この付勢部材挿通部23aは、好ましくは、付勢部材40の全長の半分以上を内在する長さを有する。
【0025】
被掛止部23bは、切欠部20aの上底面から軸筒径方向内側へ突出するとともに、その突端側及び懐部分を前方へ向けたフック状の突起である。
この被掛止部23bは、後端側に、前方斜め軸筒径方向内側へ向かうガイド傾斜面23b1を有する(図4参照)。このガイド傾斜面23b1は、後方から当接する前側掛合部42を前方斜め軸筒径方向内側へ導く。
【0026】
ガイド部23cは、フック状の被掛止部23bにおける突端側部分及び懐部分との間に所定幅の空間を置くようにして設けられる。
このガイド部23cは、前進する前側掛合部42を沿わせて、この前側掛合部42の進行方向を、軸筒径方向外側へ曲げて被掛止部23bの懐部分へ導く(図4参照)。
図示例によれば、このガイド部23cは、横向き略U字状の案内路を形成している。
【0027】
筆記芯30は、インク収容管の前端側に筆記部であるボールペンチップを接続したボールペン用リフィールである。
複数の筆記芯30は、前記ボールペン用リフィールや、図示しないシャープペンシル用リフィール、電子ペン用筆記芯等を適宜に組み合わせて構成すればよい。
【0028】
付勢部材40は、引張コイルバネであり、その前端側を押子20に掛止するとともに後端側を押子20から後方へ突出して軸筒10(詳細には後軸12)に掛止している。
この付勢部材40は、コイル状の付勢部材本体41と、付勢部材本体41の前端から前方へ突出する前側掛合部42と、付勢部材本体41の後端から後方へ突出する後側掛合部43とを一体に有する。
【0029】
付勢部材本体41は、引張バネとしてコイル状に構成される。この付勢部材本体41は、図示例によれば、全長の半分以上が、押子20の付勢部材挿通部23aに挿通される。
【0030】
前側掛合部42と後側掛合部43は、それぞれ、環状に形成され、付勢部材本体41の径方向外側寄りから、前方と後方へ突出している。これら前側掛合部及び後側掛合部の他例としては、フック状に形成された態様や、付勢部材本体41の径方向中央寄りから突出する態様等とすることも可能である。
【0031】
上記構成によれば、付勢部材40を前進させると、この前進する付勢部材40の前側掛合部42が、ガイド部23cに導かれて、被掛止部23bの懐部分まで移動し、被掛止部23bによって掛止される。
この後、付勢部材挿通部23aから後方へ突出する後側掛合部43が、不動部位に掛止され、後軸12に対し尾栓14が装着される。
ここで、前記不動部位は、後側掛合部43に対し前後に動かない部位であればよく、図示例によれば、後軸12の後端側の被掛止部12dとしているが、他例としては、尾栓14やその他の不動な部位にすることが可能である。
【0032】
なお、図中、符号50は、複数の筆記芯30を、それぞれ長手方向の中央側で、前後方向へ進退自在に挿通する筆記芯ガイド部材である。
【0033】
<作用効果>
次に、上記構成の出没式筆記具Aについて、その機能、及び作用効果等を詳細に説明する。
選択した押子20を手で前進させれば、押子20が軸筒10内に沈みこんで、軸筒10内の被係止部12eに係止される。
この後、他の押子20を前進させれば、この前進した押子20が、先に前進した押子20に当接して該押子20の係止状態を解除する。このため、係止解除された押子20は、付勢部材40の引張力によって初期位置まで後退する。
【0034】
上記構成の出没式筆記具Aによれば、複数の付勢部材40を、それぞれ、対応する押子20に内在するようにしている。
このため、付勢部材40が軸筒10内周や隣接する他の付勢部材40に干渉するのを防ぐことができる上、押子20の後側に位置する付勢部材40によって軸筒全体が長くなってしまうのを防ぐことができる。よって、動作性が良好な上、軸筒を小径化及び短縮化したり、逆に筆記芯を大型化してインク量を増大したりすることが可能になる。
【0035】
また、出没式筆記具Aによれば、押子20の付勢部材挿通部23aに付勢部材40を挿入し、この付勢部材40を前方へ押せば、付勢部材40の前側掛合部42が、ガイド傾斜面23b1に沿って軸筒径方向内側へ弾性的に曲げられ(図4参照)、この後、ガイド部23cに沿うようにして弾性的に復元し、被掛止部23bの懐部分に入り込む。よって、当該出没式筆記具Aの製造時に、付勢部材40の前側掛合部42を押子20に掛止する作業を容易化することができる。
しかも、前側掛合部42の掛止箇所が、押子20外に露出するため(図2参照)、掛止部分を目視し易くすることができる。
【0036】
<変形例>
上記出没式筆記具Aでは、付勢部材40の前半部側を部分的に押子20に内在するようにしたが、他例としては、付勢部材40の全体を押子20に内在する態様や、付勢部材40前側における図示よりも少ない範囲を押子20に内在する態様等とすることも可能である。
【0037】
また、上記出没式筆記具Aでは、付勢部材40におけるコイル状の付勢部材本体41の一部を押子20に内在したが、他例としては、付勢部材本体41の全部を押子20に内在するようにしてもよい。
【0038】
また、上記出没式筆記具Aでは、付勢部材40を、付勢部材本体41と前側掛合部42と後側掛合部43によって構成したが、他例としては、前側掛合部42及び後側掛合部43を省き、付勢部材本体41の前端側を押子20に直接掛止するとともに同付勢部材本体41の後端側を軸筒10に直接掛止した態様とすることも可能である。
【0039】
また、本発明は上述した実施態様に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0040】
10:軸筒
11:前軸
12:後軸
12d:被掛止部
20:押子
23:自動掛止部
23a:付勢部材挿通部
23b:被掛止部
23c:ガイド部
30:筆記芯
40:付勢部材
41:付勢部材本体
42:前側掛合部
43:後側掛合部
A:出没式筆記具
図1
図2
図3
図4