(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】後処理テープ
(51)【国際特許分類】
A61F 13/551 20060101AFI20240305BHJP
【FI】
A61F13/551 100
(21)【出願番号】P 2020103033
(22)【出願日】2020-06-15
【審査請求日】2023-04-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000183462
【氏名又は名称】日本製紙クレシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】小川 秀憲
【審査官】須賀 仁美
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-157728(JP,A)
【文献】特開2017-086469(JP,A)
【文献】特開平10-071173(JP,A)
【文献】特開平05-093174(JP,A)
【文献】特開2019-162415(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F13/15-13/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙おむつ用の後処理テープにおいて、
不織布から構成された帯状の外形形状を有し、一端が紙おむつ外装体表面に固定された固定端であり、
前記固定端から他端に向かって、幅方向に延在する第1の折り目及び第2の折り目が離設され、全体として断面視Z字型に折り畳まれたZ型折り畳み構造を含み、
前記固定端から前記第1の折り目までを第1の領域、前記第1の折り目から前記第2の折り目までを第2の領域、及び前記第2の折り目から前記他端までを第3の領域としたときに、
前記第3の領域の前記第2の領域に対面する面に設けられた接着層と、
前記第2の領域の前記第3の領域に対面する面に設けられ、前記接着層に向かって隆起して接触する凸状のエンボスと、
前記第2の折り目付近で前記第1の領域と前記第2の領域とを接合する熱溶着部と、を備え
、
前記不織布は、スパンボンド不織布と、前記スパンボンド不織布の一面に設けられたパルプ繊維層と、の水流交絡一体化物としての、パルプ含有複合型不織布であり、
前記後処理テープの前記紙おむつ外装体表面への固定面が、水流交絡処理面の逆面であることを特徴とする、後処理テープ。
【請求項2】
前記熱溶着部の接合強度が8N/cm以下である、
請求項1に記載の後処理テープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙おむつに用いられる後処理テープに関する。
【背景技術】
【0002】
紙おむつは、一般的に、着用者が体外に排出する尿等の体液を吸収及び保持する吸収パッドと、パンツ状の外形を有し、その内面に吸収パッドを支持する外装体と、を備え、着用者の肌や衣服を体液で汚すことなく、体液を吸収できることから、高齢者、要介護者、乳幼児等の代替下着として広く利用されている。そして、使用済紙おむつは、吸収パッドや外装体に不織布等の水不溶性の素材が用いられていることから、体液を保持した吸収パッドを内側にして手作業で丸め、体液臭の漏れ難い袋等に収納して廃棄されている。使用済紙おむつを丸めて固定するために、外装体の外表面に備えられた後処理テープが用いられている。
【0003】
特許文献1には、長手方向の断面視(又は側面視)Z字状に折り畳まれたZ型折り畳み構造を含む後処理テープが開示されている。後処理テープは、紙おむつ着用時は折り畳まれた状態で、また、廃棄時はZ型構造が開放され、丸めた紙おむつをくるむための長さになり、先端に設けられた接着層により紙おむつを丸めた状態で固定することができるようになっている。
【0004】
また、特許文献2には、廃棄固定用粘着テープを剥離開放するときの剥離性を向上させるために、紙おむつに固着されるテープ本体と、テープ本体の一面に設けられた接着層と、テープ本体の他面に設けられた剥離性シリコーン層と、を備え、テープ本体が伸張性を有する基材からなる後処理テープが開示されている(請求項1、4、段落0028)。ここで、伸張性を有する基材としては、ホモポリプロピレン、ランダムポリプロピレン、低密度ポリエチレン、リニヤ低密度ポリエチレン等のオレフィン系樹脂からなるフィルムが用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平7-157728号公報
【文献】特開2001-342443号公報(請求項1、4、段落0028)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、紙おむつは、紙おむつを構成する不織布の品質向上に伴い、より柔らかく、履き心地のよいものになっている。これに対し、特許文献1のような従来の後処理テープには、一般的に、紙おむつ全体に比べて剛度の高い硬質のフィルム素材が用いられることから、紙おむつの着用時及び廃棄時の肌触りを低下させる原因となっていた。
【0007】
肌触りの良好な後処理テープを検討する際、硬質フィルムの代替として、柔らかい素材である不織布を基材として採用することが考えられる。しかしながら、Z型構造を剥離開放するために、不織布に特許文献2のようにシリコーンを塗布すると、不織布を構成する繊維間空隙にシリコーンが沈み込んでしまい、不織布上に均一で良好なシリコーン層を形成できないという問題があった。このため、不織布を基材とする後処理テープには、シリコーン塗布は使用できず、剥離性を向上させる代替案が求められていた。
【0008】
本発明の目的は、柔らかく、肌への刺激が少なく、且つ、剥離性良好な後処理テープを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、後処理テープの素材に不織布を用い、少なくとも2つの互いに離隔した折り目を有する、断面視Z型折り畳み構造(以下単に「Z型折り畳み構造」ともいう)において、接着層を有するA面と、A面側に隆起する凸部を有するB面とがA面の接着層を介して対面し、A面は接着層と面接触し、B面は凸部の頂部が接着層と点接触するようにして、A面の接着層に接触する面積と、B面の凸部が接着層に接触する面積と、の間に面積差を生じさせ、A面よりもB面の方が接着層から剥離しやすくなるように構成することで、Z型折り畳み構造を保ちつつ、シリコーン層等の剥離層を設けることなく、Z型折り畳み構造を容易に展開できることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は下記の後処理テープに係る。
【0010】
(1)紙おむつ用の後処理テープにおいて、
不織布から構成された帯状の外形形状を有し、一端が紙おむつ外装体表面に固定された固定端であり、
前記固定端から他端に向かって、幅方向に延在する第1の折り目及び第2の折り目が離設され、全体として断面視Z字型に折り畳まれたZ型折り畳み構造を含み、
前記固定端から前記第1の折り目までを第1の領域、前記第1の折り目から前記第2の折り目までを第2の領域、及び前記第2の折り目から前記他端までを第3の領域としたときに、
前記第3の領域の前記第2の領域に対面する面に設けられた接着層と、
前記第2の領域の前記第3の領域に対面する面に設けられ、前記接着層に向かって隆起して接触する凸状のエンボスと、
前記第2の折り目付近で前記第1の領域と前記第2の領域とを接合する熱溶着部と、を備えることを特徴とする、後処理テープ。
(2)前記不織布は、スパンボンド不織布と、前記スパンボンド不織布の一面に設けられたパルプ繊維層と、の水流交絡一体化物としての、パルプ含有複合型不織布であり、前記後処理テープの前記紙おむつ外装体表面への固定面が、水流交絡処理面の逆面である、上記(1)の後処理テープ。
(3)前記熱溶着部の接合強度が8N/cm以下である、上記(1)又は(2)の後処理テープ。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、柔らかく、肌への刺激が少なく、且つ、剥離性良好な後処理テープが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明に係る紙おむつの一実施形態の構成を模式的に示す斜視図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係る後処理テープの構成を示す模式断面図である。
【
図3】本発明の第2実施形態に係る後処理テープの構成を示す模式断面図である。
【
図4】第1実施形態に係る後処理テープの製造における第1工程を示す模式図である。(a)は展開図、(b)はY
1-Y
1切断線での長手方向断面図である。
【
図5】第1実施形態に係る後処理テープの製造における第2工程を示す模式図である。(a)は展開図、(b)はY
1-Y
1切断線での長手方向断面図である。
【
図6】第1実施形態に係る後処理テープの製造における第3工程を示す模式図である。(a)は展開図、(b)はY
1-Y
1切断線での長手方向断面図である。
【
図7】第1実施形態に係る後処理テープの製造における第4工程を示す模式図である。(a)は展開図、(b)はY
1-Y
1切断線での長手方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書において、体液とは、尿、血液や軟便中の水分等の体内から体外に排出された液体をいう。
図1は、本実施形態の後処理テープ1を備えた紙おむつ50の外観を示す。紙おむつ50は、本実施形態では一般的なパンツ型紙おむつである。
図2は、本実施形態の後処理テープ1を示す。本実施形態の後処理テープ1は、帯状の不織布を長手方向に2回以上折り畳んだ断面視(又は側面視)Zの字状の折り畳み構造(以下「Z型折り畳み構造」ともいう)を有し、長手方向の一端(固定端)10aが、パンツ型紙おむつ50の外装体51の外表面51aに固定されることにより、パンツ型紙おむつ50に取り付けられている。そして、紙おむつ50の使用終了後は、例えば、後処理テープ1の他端を手指で摘まんでZ型折り畳み構造を展開して紐状にし、紙おむつ50の吸収パッド(不図示)を内側にして紙おむつ50を丸めて紐状の後処理テープ1で内部が開かないように括り、そして廃棄する。
【0014】
<紙おむつ>
本実施形態の後処理テープ1を備える紙おむつ50は、本実施形態のパンツ型紙おむつに限定されず、テープ止め紙おむつでもよい。また、紙おむつ50は、使い捨てタイプでも、非使い捨てタイプでもよい。非使い捨てタイプは、複数回の使用の後、へたりや汚れの付着等に伴って廃棄されるので、そのときに後処理テープ1を利用することができる。
【0015】
紙おむつ50の構造は特に限定されず、従来から周知の構造をいずれも利用可能であるが、例えば、吸収パッド(不図示)と、吸収パッドをその内面で支持し、パンツ型の外形形状を有する外装体51と、を備えるものが挙げられる。吸収パッドは、液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、これらの間に配置され、トップシートを介して浸透してきた体液を吸収及び保持する吸収体と、を少なくとも備えている。吸収体は、フラッフパルプ、アセテートトウ開繊体等の吸収基材を含み、吸収成分として高吸収性ポリマーを含むことができる。外装体51としては、例えば、着用者の腹部に主に当接する腹側領域と、着用者の背部に主に当接する背側領域と、腹側領域と背側領域との間に介在し、着用者の股間部に主に当接し、吸収パッドを主に支持する股下領域と、に区分され、腹側領域及び背側領域の幅方向各両縁を接合したサイドシール部を備え、胴回り開口部及び幅方向一対の脚回り開口部を有する外装体が挙げられる。ここで、腹側領域及び背側領域は、股下領域を中心にして略対称である。また、外装体51は、例えば、外装不織布シーと内装不織布シートとを2層に積層した領域と、補助不織布シートをさらに含んで3層に積層した領域とを含む。外装不織布シート、内装不織布シート、及び補助不織布シートには、例えば、サーマルボンド不織布、エアスルー不織布、スパンボンド不織布等の不織布等を使用できる。
【0016】
<後処理テープ>
図2に示す後処理テープ1は、テープ本体10を折り畳んだZ型折り畳み構造19を有し、テープ本体10は、不織布から構成された帯状の外形形状を有し、一端(以下「固定端」ともいう)10aの、紙おむつ外装体51の外表面51aとの対向面には接着層18が設けられ、固定端10aが外表面51aに固定されている。接着層18には、例えば、ホットメルト接着剤等が用いられる。本実施形態では、後処理テープ1の長手方向が紙おむつ50の長手方向(紙おむつ50を身体に着用したときに着用者の股間部を介して身体の前後に亘る方向)と一致するように後処理テープ1を固定しているが、これに限定されず、その長手方向が紙おむつ50の長手方向と交差する方向に固定してもよい。
【0017】
テープ本体10の固定端10aから他端に向かって(すなわちテープ本体10の長手方向)、幅方向に延在する第1の折り目13及び第2の折り目14が離設され、全体としてZ型折り畳み構造19を含むように構成されている。本実施形態では、テープ本体10の長手方向において、テープ本体10の接着層18と接する側の面をテープ本体の外表面とした場合、テープ本体10は、固定端10aから第1の折り目13までのテープ本体10の第1の領域と、第1の折り目13から第2の折り目14までのテープ本体10の第2の領域と、第2の折り目14から他端(テープ本体10の遊離端)までのテープ本体10の第3の領域と、を含んでいる。
【0018】
そして、第1の領域のテープ本体10の外表面20には、後処理テープ1を外装体51の外表面51aに固着するための接着層18が設けられている。第2の領域のテープ本体10の外表面11には、対向面である外表面12側に突出する、複数の凸状エンボス16が設けられている。第3の領域のテープ本体10の外表面12には、接着層15が設けられている。凸状エンボス16の頂部付近が接着層15と接触して所定の強度で固着することにより、外表面12を含むテープ本体10の部分が第2の折り目14付近から外方に開放されるのを防止している。
【0019】
第2の領域の外表面11に形成される本実施形態の凸状エンボス16は、外表面12の接着層15と対向する位置に千鳥格子状に複数配置され、接着層15に向けて隆起し、その頂部付近は接着層15と接触し、凸状エンボス16と接着層15とは仮止めされた接着状態を維持している。凸状エンボス16の隆起形状は本実施形態の半球状に限定されず、例えば、円錐状、角柱状、角錐状、錐台状、円柱状等の種々の立体形状とすることができる。2種以上の立体形状を併用してもよい。また、凸状エンボス16の配置パターンは、本実施形態の千鳥格子状に限定されず、例えば、正方格子状、矩形格子状、平行体格子状、同心円状、不規則状等の種々の配置パターンにすることができる。凸状エンボス16は、例えば、不織布のエンボス加工法により形成することができる。凸状エンボス16の接着層15と接触する面の合計面積は、例えば、接着層15の頂部の面積の30%以上50%以下の範囲である。この範囲とすることにより、第2の領域である外表面11と第3の領域である外表面12との剥離性ひいては後処理テープ1の展開性を向上させることができるとともに、紙おむつ50を丸めたあとに、接着層15で後処理テープを外装体51に固定し括りつけておくための接着力を有することができる。
【0020】
第3領域の外表面12に形成される接着層15は、凸状エンボス16との接着による後処理テープ1の不要な開放を防止するとともに、紙おむつ50の廃棄時に紙おむつ50を丸めて紙処理テープ1で固定するときの、接着剤としても機能する。接着層15は、例えば、ホットメルト接着剤からなる。ホットメルト接着剤としては融点が100℃以上180℃以下のものを特に限定なく使用でき、例えば、スチレン-ブタジエン-スチレン系共重合体、スチレン-イソプレン-スチレン系共重合体等の合成ゴム系ホットメルト接着剤、エチレン-酢酸ビニル共重合体等のオレフィン系ホットメルト接着剤等が挙げられる。ホットメルト接着剤の塗布方法としては、ノズルから溶融状態のホットメルト接着剤を非接触式で塗布するカーテンコート法やスパイラル法、接触式で塗布するスロット法等、公知の方法が利用できる。上述の接着層18も、同様にして形成できる。
【0021】
以上の構成により、外表面12は接着層15と面で接触し、複数の凸状エンボス16は接着層15と点で接触することから、外表面12の接着層15との接触面積は、複数の凸状エンボス16の接着層15との接触面積よりも大きくなる。このため、紙おむつ50の着用中には接着層15と複数の凸状エンボス16との接着により、Z型折り畳み構造19が維持されるとともに、後処理テープ1を展開するために後処理テープ1の遊離端を引っ張ったときには、比較的弱い力で、接着層15と複数の凸状エンボス16との接触界面の破断が発生し、後処理テープ1を容易に展開することができる。
【0022】
また、第2の折り目14付近には、第1の領域の外表面20の反対側面と、第2の領域の外表面11の反対側面とを、テープ本体10の幅方向に接合する熱溶着部17が設けられている。熱溶着部17によりZ型折り畳み構造19が形成され、維持される。
【0023】
本実施形態の熱溶着部17は、テープ本体10の長手方向に延びる複数の帯状の溶着体が、幅方向に所定の間隔を空けて配置されたものである。溶着体は、例えば、熱溶着、超音波溶着等の方法により、その部分の不織布を構成する樹脂が溶融固化した樹脂塊である。溶着体の平面形状は、本実施形態の長円(四角形の短辺が半円状に突出した形状)に限定されず、例えば、楕円形、長方形、4角が丸まった角丸四角形等、テープ本体10の長手方向に長い形状であればよい。また、溶着体の長手方向寸法は例えば3mm以上5mm以下の範囲であり、幅方向寸法は例えば0.3mm以上2mm以下の範囲である。一の溶着体と幅方向に隣り合う他の溶着体との間隔は、例えば1mm以上3mm以下の範囲である。これらの寸法で溶着体を複数形成することにより、複数の溶着体の集合体である熱溶着部17が好適に機能する。
【0024】
熱溶着部17の接合強度は、例えば、8N/cm以下の範囲又は0.7N/cm以上8N/cm以下の範囲である。接合強度が前述の範囲であるとき、熱溶着部17は、接着層15と複数の凸状エンボス16との接着界面の破断や、破断が起きたときの、後処理テープ1の展開を防止する。接合強度が8N/cmを超えると、後処理テープ1の展開に力を要する傾向があり、また、紙おむつ50の風合いや着用感を低下させる傾向がある。熱溶着部17の接合強度は、JIS K6854-3に規定されたT型剥離試験法により測定したものである。熱溶着部17が形成された部分の不織布を25mm幅に裁断して試料とし、得られた試料を万能試験機(商品名:テンシロン万能試験機、株式会社エー・アンド・デイ製)にて、300mm/minの速度で剥離強度(N/25mm)としてを測定する。
【0025】
本実施形態によれば、後処理テープ1の素材に不織布を用い、Z型折り畳み構造19において、第3の領域であり、接着層15が配設されたテープ本体10の外表面12に対向する第2の領域である外表面11に、外表面12側に隆起して接着層15に接着する複数の凸状エンボス16を配設し、接着層15に接触する外表面11(第2の領域)と外表面12(第3の領域)と間に接触面積差を設けることで、シリコーン層を設けることなく、Z型折り畳み構造19を保ちつつ、Z型折り畳み構造19を含む後処理テープ1の第3の領域の第2の領域に対する接着強度が最適化され、Z型折り畳み構造19を開放した際、接着層15が第2の領域に追随することなく、必然的に第3の領域に追随させることができる、柔らかく、肌への刺激が少なく、且つ、剥離性良好な後処理テープを提供できる。
【0026】
すなわち、本実施形態によれば、構成素材として不織布を用いることにより、柔らかく、肌への刺激が少なく、且つ、剥離性良好な後処理テープ1を提供でき、また、第2の領域(外表面11)に凸状エンボス16を設け、接着層15と接する面積をコントロールすることにより、第2の領域と接着層15との接着強度が最適化され、シリコーン層を用いることなく、接着層15が第3の領域の外表面12側に残り、第2の領域の外表面11と第3の領域の外表面12との剥離性、及び後処理テープ1の展開性が顕著に向上する。
【0027】
(不織布)
本実施形態において、テープ本体10に用いられる不織布としては特に限定されず、例えば、エアスルー不織布、ポイントボンド不織布、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布、パルプ含有複合型不織布等の不織布や、スパンボンド不織布/メルトブロー不織布積層体、スパンボンド不織布/メルトブロー不織布/スパンボンド不織布積層体等の複合不織布等が挙げられる。これらの中でも、パルプ含有複合型不織布が好ましい。
【0028】
本実施形態のパルプ含有複合型不織布は、スパンボンド不織布と、スパンボンド不織布の一面に設けられたパルプ繊維層と、の水流交絡一体化物であり、後処理テープ1の紙おむつ外装体表面51aへの固定面がスパンボンド不織布の面になっている。本実施形態の後処理テープ1の特有の構造から、外装体表面51aへの固定面がスパンボンド不織布の面である場合、外表面11及び外表面12もスパンボンド不織布の面である。また、パルプ含有複合型不織布は、水流交絡法でスパンボンド不織布の一面にパルプ繊維層を一体化することにより、パルプ繊維層がスパンボンド不織布に強固に積層されて密着するとともに、パルプ繊維の一部が、スパンボンド不織布を厚み方向に貫通し、パルプ繊維層が積層されていないスパンボンド不織布の水流交絡処理面の逆面(以下「スパンボンド面」ともいう)に突き抜けて存在している。ここで、一体化とは、後処理テープ1の製造から使用終了までの間で、上述の構造及びそれに起因する効果が持続することをいう。
【0029】
本発明者の研究によれば、次のような知見が得られた。すなわち、一般的な不織布を用いると、熱溶着部17は外表面11及び外表面12の各構成繊維が溶融固化することで形成される樹脂塊となっているため、熱溶着部17は高強度となり、後処理テープ1を展開するときに比較的強い力で引っ張る必要が生じる。これに対し、パルプ含有複合型不織布の、パルプ繊維が露出したスパンボンド面を用いると、パルプ繊維のないスパンボンド不織布に比べ、後処理テープ1を展開するときに要する引張力が、パルプ繊維の存在により、比較的小さくて済み、剥離性が向上する。すなわち、後処理テープ1自体を外装体表面51aから引き剥がす力よりも、後処理テープ1を展開させる力を相対的に弱くすることができ、後処理テープ1を展開するときに、誤って後処理テープ1を引き剥がすことを確実に防止できる。
【0030】
パルプ含有複合型不織布のスパンボンド不織布としては、特に限定なく使用できるが、その材質としては、例えば、ナイロン(商標名)、ビニロン、ポリエステル、アクリル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等の合成樹脂を好ましく使用できる。スパンボンド不織布は、複数の合成樹脂繊維を含んでいてもよい。これらの中でも、強度、柔らかさ等の観点から、ポリプロピレン繊維を含むスパンボンド不織布が好ましく、構成繊維が全てポリプロピレン繊維であるスパンボンド不織布がより好ましい。また、スパンボンド不織布の坪量は特に限定されないが、引張強度と触感の柔らかさの観点から、例えば、7g/m2以上30g/m2以下である。
【0031】
パルプ繊維層を構成するパルプ繊維としては特に限定されないが、例えば、ラジアータパイン、スラッシュパイン、サザンパイン、ロッジポールパイン、スプルースおよびダグラスファー等の針葉樹晒クラフトパルプ(以下「NBKP」ともいう)が挙げられる。NBKPは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。パルプ繊維層の坪量は特に限定されないが、均一性、触感、吸収性等の観点から、例えば30g/m2以上70g/m2以下である。
【0032】
パルプ含有複合型不織布におけるパルプ繊維の含有量は、例えば、65質量%以上90質量%以下の範囲であり、残部がスパンボンド不織布であり、又は70質量%以上85質量%以下の範囲であり、残部がスパンボンド不織布である。パルプ繊維の含有量が65質量%未満であると、スパンボンド面に露出するパルプ繊維の量が少なくなり、熱溶着部17等の接合強度が必要以上に高くなる傾向があり、90質量%超えるとパルプ含有複合型不織布が硬くなり、Z型折り畳み構造19を形成し難くなる傾向がある。
【0033】
パルプ含有複合型不織布全体としての坪量は、例えば、40g/m2以上85g/m2以下の範囲、又は40g/m2以上60g/m2以下の範囲である。40g/m2未満であるとパルプ含有複合型不織布が柔らかくなりすぎる傾向があり、85g/m2を超えるとパルプ含有複合型不織布が硬くなりすぎる傾向がある。
【0034】
スパンボンド不織布とパルプ繊維層との一体化は、例えば、水流交絡法により行われる。水流交絡法によれば、バインダーや接着剤を用いることなく、スパンボンド不織布の一面に水流と共にパルプ繊維を吹き付けることで、パルプ繊維層中にてパルプ繊維が絡み合うとともに、スパンボンド不織布の構成繊維とパルプ繊維とが絡み合い、スパンボンド不織布の水流交絡処理側面の他面にパルプ繊維の一部が露出した、スパンボンド不織布とパルプ繊維層とが強固に一体化した水流交絡一体化物が得られる。
【0035】
図3は、第2実施形態の後処理テープ2を示している。後処理テープ2は、後処理テープ1の変形例であり、第1の折り目13付近でありかつ接着層15よりもテープ本体10の遊離端側に、第2の領域である外表面11と第3の領域である外表面12とを接合する熱溶着部17aが形成されている以外は、後処理テープ1と同じ構成を有している。第2実施形態における熱溶着部17aは、第1実施形態の熱溶着部17と同じ構成である。第2実施形態によれば、後処理テープ2の展開性を損なうことなく、外力による後処理テープ2の不要な展開をより確実に防止することができる。
より具体的には、熱溶着部17aは、例えば、接着層15と複数の凸状エンボス16との接着を補強し、テープ本体10の遊離端が着用者の衣類や、手足等と強く接触したときに、接着層15と複数の凸状エンボス16との接着界面の破断を防止し、また、破断が起こったとしても、後処理テープ1が不要な展開を起こすのを防止するように機能する。
【0036】
<後処理テープの製造方法>
本実施形態の後処理テープ1、2は、例えば、
図4~
図7に示す工程を含む製造方法により製造できる。
図4は第1工程、
図5は第2工程、
図6は第3工程、及び
図7は第4工程をそれぞれ示す。なお、
図4~
図7の各図において、矢印は後処理テープの原料である不織布のロールのМD方向を示しており、後処理テープ1においては幅方向を示している。
【0037】
(第1工程)
図4に示す第1工程では、まず、折り畳み構造を展開したときの後処理テープの長手方向の長さと同じ幅の不織布を用意する。次に、不織布の幅方向の所定領域に連続的にエンボス加工を施し、不織布の表面から外方に突出した複数の所定形状の凸状エンボス16を所定配置パターンで形成する。その後、第2工程に移行する。凸状エンボス16が形成された面は後の外表面11(第2の領域)となる。凸状エンボス16の大きさは、接着層15との剥離性と、Z型折り畳み構造19の保持とのバランスがとれるように調整する。本実施形態では、凸状エンボス16は半球状であるが、上述したように、種々の形状とすることができる。後工程で形成される第2の領域と第3の領域との剥離性の観点から、複数の凸状エンボス16の接着層15との接触面積の合計が、接着層15の凸状エンボス16と接する面の面積の30%以上50%以下になるように調整する。
【0038】
(第2工程)
図5に示す第2工程では、凸状エンボス16形成面(後の第2の領域の外表面11)の、テープ本体10の固定端10a側を凸状エンボス16形成面と厚み方向に重なるように折り曲げて第1の折り目13とし、後の接着層18形成面である第1の領域の外表面20を形成した後、凸状エンボス16形成面のテープ本体10他端(固定端10aとは反対側の端部)側の近傍領域に、第1の領域の内周面と第2の領域の内周面とを溶着し、テープ本体10の幅方向に延びる熱溶着部17を形成する。次に第3工程に移行する。ここでの溶着法としては特に制限されず、ヒートシール法、超音波溶着法等の公知の溶着法を利用できるが、後処理テープ1が軟らかい風合いに仕上がることから、超音波溶着法が望ましい。
【0039】
(第3工程)
図6に示す第3工程では、熱溶着層17のテープ本体10他端側に、第2の折り目形成予定領域を残して、後の外表面12となる領域に接着層15を形成する。その後、第4工程に移る。
【0040】
(第4工程)
図7に示す第4工程では、外表面11(凸状エンボス16)と外表面12(接着層15)とが厚み方向に対向するように、第2の折り目形成予定領域を外表面11側に折り曲げ、第2の折り目14を形成し、Z型折り畳み構造19を得る。そして、必要に応じて、所定の圧力で加圧し、凸状エンボス16と接着層15とを接着してもよい。こうして、第1実施形態の後処理テープ1を得ることができる。さらに、凸状エンボス16と接着層15との接着領域の、テープ本体10他端側に、外表面11と外表面12とを接合する熱溶着部17aを設けることで、第2実施形態の後処理テープ2を得ることができる。
このようにして形成されたZ型折り畳み構造19を有する後処理テープ1、2は、ロール状に巻き取られ、例えば紙おむつ製造工程で所定の長さで、CD方向に所定幅にカットされ接着剤(接着層18)で紙おむつに設置される。
【0041】
以上、本発明を、実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記の実施形態に記載の発明の範囲には限定されないことは言うまでもなく、上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。また、そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0042】
1、2 後処理テープ
10 テープ本体
11、12、20 外表面
13 第1の折り目
14 第2の折り目
15、18 接着層
16 凸状エンボス
17、17a 熱溶着部
19 Z型折り畳み構造