IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 水ing株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-脱水システム 図1
  • 特許-脱水システム 図2
  • 特許-脱水システム 図3
  • 特許-脱水システム 図4
  • 特許-脱水システム 図5
  • 特許-脱水システム 図6
  • 特許-脱水システム 図7
  • 特許-脱水システム 図8
  • 特許-脱水システム 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】脱水システム
(51)【国際特許分類】
   C02F 11/121 20190101AFI20240305BHJP
   C02F 11/14 20190101ALI20240305BHJP
【FI】
C02F11/121 ZAB
C02F11/14
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020112795
(22)【出願日】2020-06-30
(65)【公開番号】P2021037508
(43)【公開日】2021-03-11
【審査請求日】2022-05-06
(31)【優先権主張番号】P 2019157715
(32)【優先日】2019-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】591030651
【氏名又は名称】水ing株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118500
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 哲也
(74)【代理人】
【氏名又は名称】渡邉 勇
(72)【発明者】
【氏名】飯倉 智弘
(72)【発明者】
【氏名】古賀 大輔
(72)【発明者】
【氏名】萩野 隆生
(72)【発明者】
【氏名】森本 雄也
【審査官】高橋 成典
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05380440(US,A)
【文献】国際公開第2010/106838(WO,A1)
【文献】特開2019-051458(JP,A)
【文献】特開平04-083504(JP,A)
【文献】特開平06-304546(JP,A)
【文献】特開2000-024797(JP,A)
【文献】特開平06-281570(JP,A)
【文献】特開2018-001130(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109231780(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 11/00 - 11/20
1/00
B01D 17/00 - 17/12
21/00 - 21/34
23/00 - 35/04
35/08 - 37/08
G06Q 50/06
G01N 15/00 - 15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
懸濁液から液体を除去するための脱水システムであって、
懸濁液を貯留する懸濁液貯留槽と、
前記懸濁液と凝集剤を攪拌して凝集物を形成する凝集装置と、
前記凝集物から液体を除去し、濃度3~50wt%の濁質残渣を形成するスクリュープレスと、
前記懸濁液、前記凝集物、前記濁質残渣、および前記懸濁液から除去された液体のうちの少なくとも1つの画像データと、前記スクリュープレスのスクリュー羽根が内部に配置されたろ過筒の外面の画像データを含む画像データを生成する撮像装置と、
機械学習アルゴリズムにより構築された学習済みモデルを有する制御システムを備え、
前記制御システムは、前記学習済みモデルが格納された記憶装置と、前記画像データおよび状態データを前記学習済みモデルに入力し、前記スクリュープレスから排出される濁質残渣の含水率を目標範囲内に収めることができる前記脱水システムの最適な運転パラメータを前記学習済みモデルから出力するための演算を実行する処理装置を備えており、
前記状態データは、前記凝集装置への前記懸濁液の流量、前記懸濁液の性状、および前記凝集剤の流量を含む、脱水システム。
【請求項2】
懸濁液から液体を除去するための脱水システムであって、
懸濁液を貯留する懸濁液貯留槽と、
前記懸濁液と凝集剤を攪拌して凝集物を形成する凝集装置と、
前記凝集物から液体を除去し、濃度3~15wt%の濃縮物を形成する濃縮装置と、
前記濃縮物から液体を除去し、濃度3~50wt%の濁質残渣を形成するスクリュープレスと、
前記懸濁液、前記凝集物、前記濃縮物、前記濁質残渣、および前記懸濁液から除去された液体のうちの少なくとも1つの画像データと、前記スクリュープレスのスクリュー羽根が内部に配置されたろ過筒の外面の画像データを含む画像データを生成する撮像装置と、
機械学習アルゴリズムにより構築された学習済みモデルを有する制御システムを備え、
前記制御システムは、前記学習済みモデルが格納された記憶装置と、前記画像データおよび状態データを前記学習済みモデルに入力し、前記スクリュープレスから排出される濁質残渣の含水率を目標範囲内に収めることができる前記脱水システムの最適な運転パラメータを前記学習済みモデルから出力するための演算を実行する処理装置を備えており、
前記状態データは、前記凝集装置への前記懸濁液の流量、前記懸濁液の性状、および前記凝集剤の流量を含む、脱水システム。
【請求項3】
前記濃縮装置は、回転円板式脱液装置である、請求項2に記載の脱水システム。
【請求項4】
前記画像データは、前記凝集物の画像データを含み、前記凝集物の画像データは、前記懸濁液と前記凝集剤を攪拌する凝集混和槽内の凝集物の画像データ、前記凝集混和槽から排出された凝集物の画像データのうちの少なくとも1つである、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の脱水システム。
【請求項5】
前記画像データは、前記懸濁液から除去された液体の画像データを含み、前記懸濁液から除去された液体の前記画像データは、前記スクリュープレスから排出されたろ液の画像データである、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の脱水システム。
【請求項6】
前記学習済みモデルから出力される前記運転パラメータは、
前記凝集装置への懸濁液の流量の適正範囲に対する過不足、
前記凝集剤の適合性に対する適不適、
前記凝集剤の流量の適正範囲に対する過不足、
前記凝集装置の攪拌速度の適正範囲に対する過不足、
前記凝集装置に供給される水の流量の適正範囲に対する過不足、
のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の脱水システム。
【請求項7】
前記スクリュープレスは、前記ろ過筒内に配置されたスクリュー軸と、前記スクリュー軸の外面に固定された前記スクリュー羽根を備えたスクリュープレスであり、
前記学習済みモデルから出力される前記運転パラメータは、
前記スクリュー軸の回転速度の適正範囲に対する過不足、
前記スクリュー軸の回転トルクの適正範囲に対する過不足、
のうちの少なくとも1つをさらに含む、請求項1に記載の脱水システム。
【請求項8】
前記スクリュープレスは、前記ろ過筒内に配置された、懸濁液を移送する第1スクリューおよび第2スクリューを備えた二段式スクリュープレスであり、
前記学習済みモデルから出力される前記運転パラメータは、
前記第1スクリューの回転速度の適正範囲に対する過不足、
前記第2スクリューの回転速度の適正範囲に対する過不足、
前記第1スクリューの回転トルクの適正範囲に対する過不足、
前記第2スクリューの回転トルクの適正範囲に対する過不足、
のうちの少なくとも1つをさらに含む、請求項1に記載の脱水システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚泥またはスラリーなどの懸濁液を濁質と液体とに分離させる脱水システムに関し、特に最適な自動運転をすることができる脱水システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、下水処理場、し尿処理場、産業排水処理場などの液体処理施設から排出される懸濁液(例えば汚泥)を圧搾して、該懸濁液から水を分離する(すなわち、脱水する)脱水機が使用されている。脱水工程においては、凝集剤が注入された懸濁液を凝集槽にて攪拌し、凝集フロックを形成し固液分離をし易い状態にした後に、濃縮装置あるいは脱水装置により脱水をする。
【0003】
脱水装置の一例であるスクリュープレスは、汚泥脱水機として知られている。このスクリュープレスは、スクリーン(多孔板)から形成されたろ過筒と、ろ過筒の内部に配置されたスクリューとを備えており、スクリューを回転させることにより、ろ過筒に投入された汚泥を圧搾し、脱水する。ろ過筒の下流側開口端には、汚泥を堰き止める背圧板が配置され、この背圧板により、回転するスクリューにより送られてくるケーキ(脱水された汚泥)を滞留させ、ケーキからなるプラグ(栓)を形成する。このプラグは、後から送り込まれるケーキに背圧を加えて、ケーキをさらに圧搾する。プラグを形成するケーキは、後続のケーキに押されてろ過筒から少しずつ排出される。このようにして低含水率のケーキがスクリュープレスによって形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-111065号公報
【文献】特開2000-246147号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
汚泥の脱水処理によって最終的に得られるケーキの含水率を低く維持することで、廃棄等の対象となるケーキ量を削減することができる。ケーキの含水率を可能な限り低く安定に維持するためには、汚泥性状や負荷に応じた凝集、脱水のそれぞれの工程での汚泥の状態を最適にするための運転操作が重要になる。しかしながら、ケーキの含水率は、日々変動する汚泥性状や各工程の設備の運転状態等のさまざまな要因によって変わり得る。
【0006】
一方で、下水処理施設内外にある種々の情報を収集し、収集した情報を活用して脱水装置の適切な運転パターンを設定(或いは、再設定)することで全自動化運転を実現可能にしたAI(人工知能)制御方式の脱水方式がある(例えば特許文献1参照)。しかしながら、収集する種々の情報を基に運転を制御しても、日々異なる人間生活の結果下水等として排出される様々な物質を由来とする汚泥性状を完全に把握することは困難である。脱水装置の運転最適化のためには、実際には現状の汚泥を運転員が目視で確認することにより、各工程での汚泥の状態を感覚で把握する必要がある。
【0007】
しかしながら、運転員が汚泥の目視に基づいて運転状態を最適化するためには、運転員の豊富な経験とノウハウが必要とされる。さらに、運転員によって運転状態が異なることがあり、結果としてケーキの含水率が安定しないことがあった。
【0008】
そこで、本発明は、汚泥やスラリーなどの懸濁液の状態を画像データとして取得し、画像データに基づき、運転状態の良し悪しを判断し、濁質残渣(例えばケーキ)の含水率を目標範囲内に収め、かつ安定して維持することができる脱水システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一態様では、懸濁液から液体を除去するための脱水システムであって、懸濁液を貯留する懸濁液貯留槽と、前記懸濁液と凝集剤を攪拌して凝集物を形成する凝集装置と、前記凝集物から液体を除去し、濃度3~50wt%の濁質残渣を形成する脱水装置と、前記懸濁液、前記凝集物、前記濁質残渣、および前記懸濁液から除去された液体のうちの少なくとも1つの画像データを生成する撮像装置と、機械学習アルゴリズムにより構築された学習済みモデルを有する制御システムを備え、前記制御システムは、前記学習済みモデルが格納された記憶装置と、前記画像データを前記学習済みモデルに入力し、前記脱水装置から排出される濁質残渣の含水率を目標範囲内に収めることができる前記脱水システムの最適な運転パラメータを前記学習済みモデルから出力するための演算を実行する処理装置を備えている、脱水システムが提供される。
【0010】
一態様では、懸濁液から液体を除去するための脱水システムであって、懸濁液を貯留する懸濁液貯留槽と、前記懸濁液と凝集剤を攪拌して凝集物を形成する凝集装置と、前記凝集物から液体を除去し、濃度3~15wt%の濃縮物を形成する濃縮装置と、前記濃縮物から液体を除去し、濃度3~50wt%の濁質残渣を形成する脱水装置と、前記懸濁液、前記凝集物、前記濃縮物、前記濁質残渣、および前記懸濁液から除去された液体のうちの少なくとも1つの画像データを生成する撮像装置と、機械学習アルゴリズムにより構築された学習済みモデルを有する制御システムを備え、前記制御システムは、前記学習済みモデルが格納された記憶装置と、前記画像データを前記学習済みモデルに入力し、前記脱水装置から排出される濁質残渣の含水率を目標範囲内に収めることができる前記脱水システムの最適な運転パラメータを前記学習済みモデルから出力するための演算を実行する処理装置を備えている、脱水システムが提供される。
【0011】
一態様では、前記濃縮装置は、回転円板式脱液装置である。
一態様では、前記制御システムは、前記画像データと、前記脱水システムの状態データを前記学習済みモデルに入力し、前記脱水装置から排出される濁質残渣の含水率を目標範囲内に収めることができる前記脱水システムの最適な運転パラメータを前記学習済みモデルから出力するための演算を前記処理装置に実行させるように構成されている。
【0012】
一態様では、懸濁液から液体を除去するための脱水システムであって、懸濁液と凝集剤を攪拌して凝集物を形成する凝集装置と、前記凝集物から液体を除去し、濁質残渣を形成する脱水装置と、前記脱水装置から排出された前記濁質残渣の画像データを生成する撮像装置と、機械学習アルゴリズムにより構築された学習済みモデルを有する制御システムを備え、前記制御システムは、前記学習済みモデルが格納された記憶装置と、前記画像データを前記学習済みモデルに入力し、前記脱水システムの運転状態が正常または異常であることを示す運転指標値を前記学習済みモデルから出力するための演算を実行する処理装置を備えている、脱水システムが提供される。
【0013】
一態様では、前記制御システムは、前記運転指標値の移動平均を算定するように構成されている。
一態様では、前記制御システムは、前記運転指標値の移動平均がしきい値を越えたときに、前記脱水システムの運転に異常が起きていることを決定する。
一態様では、前記制御システムは、前記運転指標値の移動平均が所定の正常レベルにまで低下すると、前記脱水システムの運転異常の決定動作をリセットする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、機械学習アルゴリズムにより構築された学習済みモデルは、懸濁液(例えば汚泥)から液体を除去した後に残る濁質残渣(例えばケーキ)の含水率を目標範囲内に収めることができる最適な運転パラメータを生成し、上記運転パラメータを凝集装置および/または脱水装置に適用することで、脱水システムの全体の運転を最適化することができる。
【0015】
特に、本発明によれば、従来ベテランの運転員が懸濁液の目視に基づいて決定していた運転パラメータに代えて、脱水システムは、学習済みモデルを用いて、濁質残渣の含水率を目標範囲内に収めることができる最適な運転パラメータを生成することができる。したがって、脱水システムは、ベテランの運転員と同等、あるいは同等以上に正確に、凝集剤添加率の過不足の判定、凝集のための攪拌速度の調整、脱水装置の運転パラメータの調整等をリアルタイムに行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】脱水システムの一実施形態を示す図である。
図2】学習済みモデルの一例を示す模式図である。
図3】脱水システムの他の実施形態を示す図である。
図4】脱水システムのさらに他の実施形態を示す図である。
図5】脱水システムを用いた実施結果を示すグラフである。
図6】脱水システムを用いた実施結果を示すグラフである。
図7】脱水システムを用いた実施結果を示すグラフである。
図8】脱水システムの運転中に第2学習済みモデルから出力された運転指標値の時間変化を示すグラフである。
図9図8に示す運転指標値の移動平均の時間的変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、脱水システムの一実施形態を示す図である。脱水システムは、懸濁液を貯留する懸濁液貯留槽1と、凝集剤を懸濁液に注入し、凝集剤と懸濁液を攪拌することにより凝集物を形成する凝集装置3と、凝集物から液体を除去し、濃縮物を形成する濃縮装置4と、濃縮された凝集物からなる濃縮物から液体をさらに除去して濁質残渣を形成する脱水装置5と、凝集装置3、濃縮装置4、および脱水装置5の動作を制御する制御システム6を備えている。濃縮装置4は、凝集装置3によって形成された凝集物から液体を除去し、濃度3~15wt%の濃縮物を形成する装置であり、脱水装置5は、凝集装置3によって形成された凝集物、または濃縮装置4によって形成された濃縮物から液体を除去し、濃度3~50wt%の濁質残渣を形成する装置である。
【0018】
濁質残渣は、懸濁液から液体を除去した後に残る低含水率の物質である。脱水装置5によって懸濁液から液体を除去した後に残る濁質残渣は、一般に、ケーキと呼ばれる。以下の説明では、懸濁液を汚泥と呼び、濁質残渣をケーキと呼ぶ。汚泥の具体例としては、下水またはし尿、工場排水の処理時に発生する汚泥が挙げられる。また、汚泥以外の懸濁液の例としては、食料品、化粧品、紙などの工業製品の製造時に発生する産業廃棄物、またはスラリーが挙げられる。
【0019】
本実施形態では、濃縮装置4は、回転円板式脱液装置(例えば株式会社研電社製のスリットセーバー)である。このタイプの濃縮装置4は、濃縮汚泥の状態変化が把握しやすいために好ましいが、濃縮装置4のタイプは特に限定されない。例えば、濃縮装置4は、ドラム式、スクリュー式、またはベルト式であってもよい。本実施形態の脱水装置5は、汚泥を加圧して脱水するスクリュープレスから構成される。スクリュープレスは、汚泥を脱水する加圧脱水機の一例である。スクリュープレスは圧入式、軸摺動式、2段式を使用することができる。図1に示す脱水装置5は、軸摺動式のスクリュープレスである。また、加圧脱水機として、スクリュープレス以外にも、フィルタープレス、遠心分離機などの他のタイプのものを使用することもできる。
【0020】
図1に示すように、凝集装置3は、汚泥を収容し、汚泥を凝集剤と混合する凝集混和槽7と、凝集混和槽7内の汚泥を攪拌するための攪拌機8と、凝集混和槽7に接続された汚泥導入管(懸濁液導入管)14と、汚泥導入管14に設けられたポンプ12を備えている。攪拌機8は、凝集混和槽7内に配置された攪拌羽根9と、攪拌羽根9に連結された攪拌モータ10を備えている。懸濁液貯留槽1は、汚泥導入管14によって凝集混和槽7に接続されている。汚泥は、ポンプ12により汚泥導入管14を通じて懸濁液貯留槽1から凝集混和槽7に移送される。凝集混和槽7への汚泥の流量は、ポンプ12の運転によって調整することが可能である。
【0021】
ポンプ12は制御システム6に接続されており、ポンプ12の動作、すなわち凝集混和槽7への汚泥の流量は、制御システム6によって制御される。汚泥導入管14には温度センサ22が取り付けられている。この温度センサ22は、凝集混和槽7に導入される汚泥の温度を測定するように構成されている。さらに、汚泥導入管14には汚泥濃度計(懸濁液濃度計)24が取り付けられており、凝集混和槽7に導入される汚泥中の懸濁物質の濃度は汚泥濃度計24によって測定される。
【0022】
脱水システムは、懸濁液貯留槽1内の汚泥(処理前の懸濁液)の画像データを生成する懸濁液撮像装置29を備えている。懸濁液撮像装置29は、対象物の静止画像または連続画像を生成することができるイメージセンサ(例えばCCDイメージセンサまたはCMOSイメージセンサ)を備えたデジタルカメラである。あるいは、懸濁液撮像装置29は、光を波長ごとに分解して対象物を撮像することができるハイパースペクトルカメラであってもよい。懸濁液撮像装置29は、制御システム6に接続されており、懸濁液撮像装置29によって生成された汚泥(懸濁液)の画像データは、制御システム6に送られるようになっている。
【0023】
凝集装置3は、凝集混和槽7に接続された水供給ライン26と、水供給ライン26に取り付けられた流量制御弁27をさらに備えている。水供給ライン26は、水を凝集混和槽7内に供給し、凝集混和槽7内の汚泥を希釈する。水供給ライン26を通って凝集混和槽7に供給される水の流量は流量制御弁27によって調整される。流量制御弁27は制御システム6に接続されており、流量制御弁27の動作、すなわち水の流量は、制御システム6によって制御される。一実施形態では、水供給ライン26を汚泥導入管14に接続し、水を汚泥導入管14に直接供給してもよい。
【0024】
凝集装置3は、凝集混和槽7に接続された凝集剤供給装置28をさらに備えている。この凝集剤供給装置28は、凝集剤を予め定められた流量で凝集混和槽7内の汚泥に注入するように構成されている。凝集混和槽7内の汚泥に注入される凝集剤の流量は、凝集剤供給装置28によって調整される。この凝集剤供給装置28は制御システム6に接続されており、凝集剤供給装置28の動作、すなわち凝集剤の流量は、制御システム6によって制御される。汚泥は凝集剤とともに攪拌機8によって攪拌される。凝集混和槽7内で凝集剤と汚泥を攪拌することにより、汚泥内の懸濁物質が集合した凝集物が形成される。凝集混和槽7内で形成される凝集物は、一般に、凝集フロックと呼ばれる。
【0025】
脱水システムは、凝集装置3によって形成された凝集物の画像データを生成する凝集物撮像装置31を備えている。凝集物撮像装置31は、対象物の静止画像または連続画像を生成することができるイメージセンサ(例えばCCDイメージセンサまたはCMOSイメージセンサ)を備えたデジタルカメラである。あるいは、凝集物撮像装置31は、光を波長ごとに分解して対象物を撮像することができるハイパースペクトルカメラであってもよい。
【0026】
凝集物撮像装置31は、凝集混和槽7の内部を向いており、凝集混和槽7内の凝集物の画像データを生成するように配置されている。凝集物撮像装置31は、制御システム6に接続されており、凝集物撮像装置31によって生成された凝集物の画像データは、制御システム6に送られるようになっている。一実施形態では、凝集物撮像装置31は、凝集混和槽7の出口を向き、凝集混和槽7から排出された凝集物の画像データを生成するように配置されてもよい。
【0027】
図1に示される凝集混和槽7は単段の槽であるが、凝集混和槽7は、複数段の槽であってもよい。汚泥の攪拌強度は、攪拌機8の回転速度によって調整することができる。攪拌機8は制御システム6に接続されており、攪拌機8の動作、すなわち汚泥の攪拌強度は、制御システム6によって制御される。凝集混和槽7は、その内部の凝集物の状態を観察できるように、サイドグラスが設置されてもよい。
【0028】
凝集混和槽7は、汚泥移送管18によって濃縮装置4に連結されている。濃縮装置4は、凝集装置3と脱水装置5との間に配置されている。凝集装置3によって形成された凝集物からなる汚泥は、汚泥移送管18を通って濃縮装置4に移送される。凝集物は、濃縮装置4によって濃縮され、脱水される。濃縮装置4の一例としては、回転円板式脱液装置が挙げられる。
【0029】
脱水システムは、濃縮装置4によって形成された濃縮物(濃縮された凝集物)の画像データを生成する濃縮物撮像装置32をさらに備えている。濃縮物撮像装置32は、対象物の静止画像または連続画像を生成することができるイメージセンサ(例えばCCDイメージセンサまたはCMOSイメージセンサ)を備えたデジタルカメラである。あるいは、濃縮物撮像装置32は、光を波長ごとに分解して対象物を撮像することができるハイパースペクトルカメラであってもよい。
【0030】
濃縮物撮像装置32は、濃縮装置4に隣接して配置されている。より具体的には、濃縮物撮像装置32は、濃縮装置4の内部を向いており、濃縮装置4によって濃縮される工程中の凝集物の画像データを生成するように配置されている。一実施形態では、濃縮物撮像装置32は、濃縮装置4の入口、または濃縮装置4の入口から濃縮装置4の上部を向き、凝集物から液体が除去されている状態の濃縮物の画像データを生成するように配置されてもよいし、または濃縮物撮像装置32は、濃縮装置4の出口を向き、濃縮装置4によって濃縮された後の凝集物、すなわち濃縮物の画像データを生成するように配置されてもよい。濃縮物撮像装置32は、制御システム6に接続されており、濃縮物撮像装置32によって生成された濃縮物の画像データは、制御システム6に送られるようになっている。
【0031】
脱水システムは、濃縮装置4によって凝集物から分離された液体の画像データを生成する分離液撮像装置33をさらに備えている。分離液撮像装置33は、対象物の静止画像または連続画像を生成することができるイメージセンサ(例えばCCDイメージセンサまたはCMOSイメージセンサ)を備えたデジタルカメラである。あるいは、分離液撮像装置33は、光を波長ごとに分解して対象物を撮像することができるハイパースペクトルカメラであってもよい。分離液撮像装置33は、濃縮装置4の排液ドレイン4aに隣接して配置されており、濃縮装置4から排出された液体の画像データを生成するように配置されている。一実施形態では、濃縮装置4は、濃縮装置4から排出された液体を受ける液体受け(図示せず)を有し、分離液撮像装置33はこの液体受けの内部を向いて配置されてもよい。分離液撮像装置33は、制御システム6に接続されており、分離液撮像装置33によって生成された液体の画像データは、制御システム6に送られるようになっている。
【0032】
濃縮装置4の出口は、脱水装置5の投入口35の上方に配置されており、濃縮装置4によって形成された濃縮物からなる汚泥は、脱水装置5の投入口35に投入される。本実施形態では、脱水装置5は、スクリュープレスである。スクリュープレスとしての脱水装置5は、ろ過筒36と、ろ過筒36内に同心状に配置されたスクリュー軸37と、スクリュー軸37の外面に固定されたスクリュー羽根38と、スクリュー軸37およびスクリュー羽根38を回転させて汚泥を排出室41に向かって送るスクリューモータ40と、スクリューモータ40に連結された軸摺動アクチュエータ42を備えている。
【0033】
ろ過筒36は、パンチングメタルなどの多孔板から構成されている。ろ過筒36の一端は閉塞壁44によって密封されており、ろ過筒36の他端は排出室41に接続されている。投入口35はろ過筒36に形成されており、かつ閉塞壁44に隣接している。
【0034】
スクリュー軸37は、ろ過筒36内を貫通して延びている。スクリュー軸37は、下流側に向かってその径が徐々に大きくなる円錐台形状を有している。スクリュー軸37は閉塞壁44を貫通して延びており、スクリュー軸37の端部はスクリューモータ40に連結されている。スクリューモータ40には、インバータ(図示せず)が内蔵されている。スクリューモータ40は制御システム6に接続されており、スクリューモータ40の動作、すなわちスクリュー軸37およびスクリュー羽根38の回転速度は、制御システム6によって制御される。
【0035】
スクリュー羽根38は、スクリュー軸37の長手方向に沿って螺旋状に延びる一枚羽根である。ろ過筒36の内面とスクリュー羽根38との間には微小な隙間が形成されており、スクリュー羽根38はろ過筒36に接触することなく回転することができる。投入口35からろ過筒36内に投入された汚泥は、回転するスクリュー羽根38によりろ過筒36内を排出室41に向かって移送される。
【0036】
汚泥がろ過筒36内で移送される空間は、ろ過筒36の内面と、スクリュー羽根38と、スクリュー軸37とによって形成される。この空間の容積は、汚泥の進行方向に沿って漸次減少する。したがって、この空間をスクリュー羽根38によって移動されるに従って、汚泥は圧搾され、脱水される。ろ過筒36を通過したろ液は、ろ過筒36の下方に配置されたろ液受け45によって回収された後に、ドレイン46を通じて排出される。
【0037】
ろ過筒36の下流側端部に対向して環状の背圧板50が配置されている。この背圧板50は、ろ過筒36内を移送された脱水汚泥を受けるためのテーパー面を有する円錐台の形状を有している。背圧板50の中央部には、スクリュー軸37が貫通する貫通孔が形成されており、背圧板50はスクリュー軸37と同心状に配置されている。背圧板50はスクリュー軸37に固定されておらず、背圧板50は回転しない。
【0038】
背圧板50は、背圧板駆動装置51に連結されている。この背圧板駆動装置51は、背圧板50を、スクリュー軸37の軸方向に移動させるように構成されている。背圧板50とろ過筒36の下流側端部との間の隙間は、背圧板駆動装置51によって調整される。背圧板駆動装置51は、例えば油圧シリンダーまたは電動シリンダーなどから構成されている。背圧板駆動装置51は制御システム6に接続されており、背圧板駆動装置51の動作、すなわち背圧板50の軸方向の位置は、制御システム6によって制御される。
【0039】
軸摺動アクチュエータ42は、スクリューモータ40をスクリュー軸37の軸方向に移動させるように構成されている。軸摺動アクチュエータ42がスクリューモータ40を軸方向に移動させると、スクリューモータ40に連結されたスクリュー軸37およびスクリュー羽根38は、ろ過筒36内でスクリュー軸37の軸方向に移動される。
【0040】
次に、脱水装置5の動作について説明する。濃縮装置4によって形成された濃縮物からなる汚泥は、投入口35からろ過筒36内に投入される。汚泥は、回転するスクリュー羽根38によりろ過筒36内を排出室41に向かって移送される。ろ過筒36内を移動されるに従って、汚泥は圧搾され、脱水される。ろ過筒36を通過したろ液は、ろ液受け45によって回収され、ドレイン46を通じて排出される。汚泥は、ろ過筒36内で脱水されてケーキを形成する。洗浄装置55は、予め設定された時間間隔で、ろ過筒36の外周面に洗浄液を供給する。
【0041】
ろ過筒36内を移動してきたケーキは、背圧板50に押し付けられる。ケーキは、その移動を背圧板50によって妨げられることで圧縮される。この圧縮されたケーキは、ろ過筒36の下流側端部をシールするプラグ52を形成する。プラグ52は、後続のケーキに背圧を加えることにより、ろ過筒36内のケーキの含水率を低下させる。ケーキは、ろ過筒36内でプラグ52を形成しながら、後続のケーキにより押されて背圧板50とろ過筒36の下流側端部との間の隙間を通過して、少しずつ排出室41に排出される。ケーキは、排出室41の下部に設けられた排出口53を通って排出室41から排出される。このようにして、汚泥から液体が除去されて、低含水率のケーキが形成される。
【0042】
背圧板50の軸方向の位置によって背圧板50とろ過筒36の下流側端部との間の隙間が変わり、結果として、ろ過筒36内の汚泥に加わる圧縮力が変わる。より具体的には、背圧板50とろ過筒36の下流側端部との間の隙間が小さくなると、プラグ52を押し出すのにより大きな力が必要となるので、ろ過筒36内の汚泥に加わる圧縮力が増加する。よって、スクリュー羽根38の回転速度のみならず、背圧板50の位置によっても、汚泥に加わる圧縮力を調整することができる。ろ過筒36内には圧力センサ61が配置されており、ろ過筒36内の汚泥の圧力は、圧力センサ61によって測定される。圧力センサ61は制御システム6に接続されており、汚泥の圧力の測定値は制御システム6に送られるようになっている。圧力センサ61の位置はろ過筒36内であれば特に限定されず、ろ過筒36内の前段、中段、または後段のいずれであってもよく、複数の圧力センサ61がろ過筒36内に配置されてもよい。
【0043】
プラグ52は、低含水率のケーキから形成されている。プラグ52を形成しているケーキの含水率が低下すると、プラグ52が硬くなり、ろ過筒36の下流側端部を閉塞してしまうことがある。このような場合は、軸摺動アクチュエータ42は、スクリュー軸37およびスクリュー羽根38を軸方向に移動させることで、硬い低含水率のケーキを強制的に排出することができる。結果として、脱水装置5は、安定した連続運転が可能となる。
【0044】
脱水システムは、脱水装置5によって形成されたケーキ(低含水率の濁質残渣)の画像データを生成するケーキ撮像装置64と、脱水装置5から排出されたろ液の画像データを生成する脱水ろ液撮像装置65を備えている。ケーキ撮像装置64および脱水ろ液撮像装置65は、対象物の静止画像または連続画像を生成することができるイメージセンサ(例えばCCDイメージセンサまたはCMOSイメージセンサ)を備えたデジタルカメラである。あるいは、ケーキ撮像装置64および脱水ろ液撮像装置65は、光を波長ごとに分解して対象物を撮像することができるハイパースペクトルカメラであってもよい。
【0045】
ケーキ撮像装置64は、脱水装置5の排出口53に隣接して配置されてもよいし、またはケーキが排出される背圧板50に隣接して配置されてもよい。さらに、ケーキ撮像装置64は、排出口53または排出室41内に配置されてもよい。脱水ろ液撮像装置65は、脱水装置5のドレイン46に隣接して配置されている。一実施形態では、脱水ろ液撮像装置65は、ろ液受け45の内部を向いて配置され、ろ液受け45に受けられたろ液の画像データを生成してもよい。さらに、一実施形態では、脱水ろ液撮像装置65は、ろ過筒36の下面を向いて配置されてもよい。ケーキ撮像装置64および脱水ろ液撮像装置65は、制御システム6に接続されており、ケーキ撮像装置64および脱水ろ液撮像装置65によって生成されたケーキの画像データおよびろ液の画像データは、制御システム6に送られるようになっている。
【0046】
脱水システムは、ろ過筒36の外面の画像データを生成するろ過筒撮像装置66をさらに備えている。ろ過筒撮像装置66は、対象物の静止画像または連続画像を生成することができるイメージセンサ(例えばCCDイメージセンサまたはCMOSイメージセンサ)を備えたデジタルカメラである。あるいは、ろ過筒撮像装置66は、光を波長ごとに分解して対象物を撮像することができるハイパースペクトルカメラであってもよい。
【0047】
ろ過筒撮像装置66は、ろ過筒36の上方に配置され、脱水装置5が汚泥を圧搾しているときのろ過筒36の外面の画像データを生成する。より具体的には、ろ過筒撮像装置66は、ろ過筒36から漏れ出る濁質(汚泥中の固形物)の画像データを生成するように配置されている。一実施形態では、ろ過筒撮像装置66は、ろ過筒36の側方または下方に配置されてもよい。ろ過筒撮像装置66は、制御システム6に接続されており、ろ過筒撮像装置66によって生成されたろ過筒36の外面の画像データは、制御システム6に送られるようになっている。
【0048】
脱水装置5で形成されるケーキ(濁質残渣)の含水率は、凝集装置3に導入される汚泥の状態、および脱水システムの運転状態(すなわち、凝集装置3、濃縮装置4、脱水装置5の運転状態)に依存して変わる。
【0049】
そこで、制御システム6は、上述した撮像装置29,31,32,33,64,65,66によって生成された画像データを取得し、これら画像データに基づいて脱水システムの運転パラメータを最適化するように構成されている。制御システム6は、機械学習アルゴリズムにより構築された学習済みモデルが格納された記憶装置6aと、画像データを学習済みモデルに入力し、脱水装置5から排出されるケーキ(濁質残渣)の含水率を目標範囲内に収めることができる脱水システムの最適な運転パラメータを学習済みモデルから出力するための演算を実行する処理装置6bを備えている。
【0050】
記憶装置6aは、処理装置6bがアクセス可能な主記憶装置と、プログラム、学習済みモデル、データを格納する補助記憶装置を備えている。主記憶装置は、例えばランダムアクセスメモリ(RAM)であり、補助記憶装置は、ハードディスクドライブ(HDD)またはソリッドステートドライブ(SSD)などのストレージ装置である。処理装置6bは、CPU(中央処理装置)またはGPU(グラフィックプロセッシングユニット)などから構成されている。
【0051】
制御システム6は、少なくとも1台のコンピュータから構成されている。前記少なくとも1台のコンピュータは、1台のサーバまたは複数台のサーバであってもよい。制御システム6は、撮像装置29,31,32,33,64,65,66に通信線で接続されたエッジサーバであってもよいし、インターネットなどのネットワークによって撮像装置29,31,32,33,64,65,66に接続されたクラウドサーバであってもよいし、あるいは撮像装置29,31,32,33,64,65,66に接続されたネットワーク内に設置されたフォグコンピューティングデバイス(ゲートウェイ、フォグサーバ、ルーターなど)であってもよい。制御システム6は、インターネットなどのネットワークにより接続された複数のサーバであってもよい。例えば、制御システム6は、エッジサーバとクラウドサーバとの組み合わせであってもよい。
【0052】
学習済みモデルは、ニューラルネットワークから構成されている。記憶装置6aには、学習済みモデルを機械学習アルゴリズムに従って構築するためのプログラムが格納されている。処理装置6bは、プログラムに含まれる命令に従って演算を実行することによって学習済みモデルを構築する。機械学習アルゴリズムに従って学習済みモデルを構築することは、ニューラルネットワークの重みなどのパラメータを最適化する工程を含む。
【0053】
機械学習アルゴリズムの例としては、SVR法(サポートベクター回帰法)、PLS法(部分最小二乗法:Partial Least Squares)、ディープラーニング法(深層学習法)、ランダムフォレスト法、または決定木法などが挙げられるが、特にディープラーニング法が好適である。ディープラーニング法は、隠れ層が多層化されたニューラルネットワークをベースとする学習法である。本明細書では、入力層と、二層以上の隠れ層と、出力層で構成されるニューラルネットワークを用いた機械学習をディープラーニングと称する。ディープラーニング法を用いることで、これまで人の目と経験を基に判定していた汚泥、凝集物、濃縮物などの状態を、画像データに基づいてコンピュータにより判定が可能となる。
【0054】
学習済みモデルは、撮像装置29,31,32,33,64,65,66によって生成された過去の画像データと、脱水装置5から排出されるケーキ(濁質残渣)の含水率を目標範囲内に収めることができる脱水システムの最適な運転パラメータとの複数の組み合わせを含む学習データを用いて、機械学習アルゴリズムに従って構築されたモデルである。上記撮像装置によって生成された過去の画像データは説明変数であり、脱水装置5から排出されるケーキ(濁質残渣)の含水率を目標範囲内に収めることができる脱水システムの最適な運転パラメータは目的変数である。学習データを構成する最適な運転パラメータは、正解データであり、熟練した運転員が汚泥、凝集物、濃縮物などの状態と、脱水装置5から排出されたケーキの含水率に基づいて決定した運転パラメータである。学習データは、訓練データまたは教師データとも呼ばれる。
【0055】
学習済みモデルのパラメータ(重みなど)を最適化するために、撮像装置29,31,32,33,64,65,66によって生成された画像データと、ケーキの含水率を目標範囲内に収めることができる最適な運転パラメータとの多数の組み合わせを含む学習データが用意される。制御システム6は、この学習データを用いて機械学習アルゴリズムにより学習済みモデルを構築する。学習済みモデルのパラメータには、重みの他に、バイアスが含まれることがある。このようにして構築された学習済みモデルは、記憶装置6a内に格納される。
【0056】
制御システム6は、画像データを所定の周期で上記撮像装置29,31,32,33,64,65,66から取得し、記憶装置6a内に記憶する。制御システム6は、画像データを学習済みモデルに入力し、ケーキの含水率を目標範囲内に収めることができる最適な運転パラメータを学習済みモデルから出力する。
【0057】
本実施形態では、上述した撮像装置29,31,32,33,64,65,66のすべてによって生成された画像データが学習済みモデルに入力されるが、一実施形態では、撮像装置29,31,32,33,64,65,66のうちの少なくとも1つによって生成された画像データが学習済みモデルに入力されてもよい。この場合、学習済みモデルの構築には、その学習済みモデルに入力される画像データと同種の画像データが使用される。例えば、凝集物撮像装置31および濃縮物撮像装置32によって生成された画像データが学習済みモデルに入力される場合は、凝集物撮像装置31および濃縮物撮像装置32によって生成された過去の画像データを含む学習データを用いて学習済みモデルが構築される。
【0058】
図2は、学習済みモデルの一例を示す模式図である。学習済みモデルは、入力層201と、複数の隠れ層(中間層ともいう)202と、出力層203を有したニューラルネットワークである。図2に示すモデルは、4つの隠れ層202を有しているが、学習済みモデルの構成は図2に示す実施形態に限られない。学習済みモデルは、5つ以上の隠れ層202を有してもよい。
【0059】
学習済みモデルの入力層201には画像データが入力される。より具体的には、画像データを構成する各ピクセルの数値が入力層201に入力される。画像データがカラー画像データである場合は、各ピクセルの赤色、緑色、青色を表す数値が学習済みモデルの入力層201の対応するノード(ニューロン)に入力される。少なくとも1台のコンピュータから構成された制御システム6は、ニューラルネットワークを構成する多層パーセプトロンのアルゴリズムに従って演算を実行し、学習済みモデルの出力層203は、脱水装置5から排出されるケーキの含水率を目標範囲内に収めることができる運転パラメータを表す数値を出力する。ただし、図2に示す学習済みモデルの構成は一例であって、本発明は、図2に示す例に限定されない。
【0060】
学習済みモデルから出力される運転パラメータの具体例は、次の通りである。
・凝集混和槽7への汚泥の流量の適正範囲に対する過不足
→ポンプ12の回転速度の増加、または維持、または減少
・凝集剤の適合性に対する適不適
→凝集剤の使用を維持、または凝集剤の種類の変更
・凝集剤の流量の適正範囲に対する過不足
→凝集剤供給装置28の運転速度の増加、または維持、または減少
・攪拌機8の攪拌速度の適正範囲に対する過不足
→攪拌モータ10の回転速度の増加、または維持、または減少
・凝集混和槽7に供給される水の流量の適正範囲に対する過不足
→流量制御弁27の開度の増加、または維持、または減少
・濃縮装置4の運転速度の適正範囲に対する過不足
→増加、または維持、または減少
・濃縮装置4の調整変数(例えば圧搾板圧力調整)の適正範囲に対する過不足
→増加、または維持、または減少
・スクリュー軸37の回転速度の適正範囲に対する過不足
→スクリューモータ40の回転速度の増加、または維持、または減少
・背圧板50の開度の適正範囲に対する過不足
→増加、または維持、または減少
・スクリュー軸37の回転トルクの適正範囲に対する過不足
→スクリューモータ40への電流の増加、または維持、または減少
【0061】
上述した運転パラメータは例であり、学習済みモデルから出力される運転パラメータは、上記運転パラメータのうちのいずれかのみであってもよい。
【0062】
従来は、熟練した運転員が、凝集物、濃縮物、ケーキなどの状態を目視により判断し、経験に基づいて上記運転パラメータを適宜設定していたのに対して、本実施形態では、制御システム6は、凝集物、濃縮物、ケーキなどの画像データをモデルに入力し、最適な運転パラメータを学習済みモデルから出力させる。これら運転パラメータを凝集装置3、濃縮装置4、および脱水装置5に適用することで、脱水システムの全体の運転を最適化することができる。
【0063】
より最適化された運転パラメータを学習済みモデルから出力するために、学習済みモデルの構築に使用される学習データは、過去の画像データに加え、過去の画像データが生成されたときの脱水システムの状態データを含んでもよい。脱水システムの状態データの具体例は、次の通りである。
・汚泥の温度(温度センサ22によって測定される)
・凝集混和槽7への汚泥の流量(ポンプ12の回転速度から推定される)
・汚泥の性状(pH、アルカリ度、TS、VTS、SS、VSS、浮遊物質量)
・凝集剤の物性(カチオン度、分子量)
・凝集剤の流量(凝集剤供給装置28の運転速度)
・攪拌機8の攪拌速度(攪拌モータ10の回転速度)
・凝集混和槽7への水の流量(流量制御弁27の開度)
・濃縮装置4の運転速度(濃縮装置4の駆動モータの回転速度)
・濃縮装置4の運転トルク(濃縮装置4の駆動モータへの電流値)
・濃縮装置4によって分離された液体の流量(図示しない流量計によって測定される)
・濃縮装置4によって濃縮された汚泥濃度(図示しない濃度センサによって測定される)
・スクリュー軸37の回転速度
・スクリューモータ40への電流値(トルク値)
・ろ過筒36内の汚泥の圧力(圧力センサ61によって測定される)
・背圧板50の開度(背圧板駆動装置51の設定値)
・背圧板50の圧力(図示しない圧力センサによって測定される)
・ケーキ含水率の測定値(図示しない測定装置または手動によって測定される)
【0064】
上述した脱水システムの状態データの項目は例であり、脱水システムの状態データは、上記項目のうちのいずれかのみであってもよい。
【0065】
学習済みモデルは、撮像装置29,31,32,33,64,65,66のうちの少なくとも1つによって生成された過去の画像データと、過去の画像データが生成されたときの脱水システムの状態データと、脱水装置5から排出されるケーキの含水率を目標範囲内に収めることができる脱水システムの最適な運転パラメータとの複数の組み合わせを含む学習データを用いて、機械学習アルゴリズムに従って構築される。過去の画像データと、過去の画像データが生成されたときの脱水システムの状態データは、説明変数であり、脱水装置5から排出されるケーキの含水率を目標範囲内に収めることができる脱水システムの最適な運転パラメータは、目的変数である。脱水システムの運転中、制御システム6は、撮像装置29,31,32,33,64,65,66のうちの少なくとも1つによって生成された現在の画像データと、脱水システムの現在の状態データを学習済みモデルに入力し、脱水システムの最適な運転パラメータを学習済みモデルから出力するための演算を処理装置6bに実行させる。
【0066】
図3は、脱水システムの他の実施形態を示す図である。図3に示す脱水システムは、脱水装置5として二段式スクリュープレスを採用している点で、軸摺動型のスクリュープレスを採用している図1の実施形態と相違する。本実施形態では、図1に示す軸摺動アクチュエータ42は設けられていない。特に説明しない実施形態の構成および動作は、図1および図2に示す実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。
【0067】
二段式スクリュープレスから構成された脱水装置5は、ろ過筒36と、ろ過筒36内で、該ろ過筒36と同心状に配置され、汚泥を移送する第1スクリュー71および第2スクリュー72と、第1スクリュー71を回転させる第1スクリューモータ75と、第1スクリュー71とは独立に第2スクリュー72を回転させる第2スクリューモータ76を備えている。第1スクリューモータ75と第2スクリューモータ76の動作は、制御システム6によって制御される。
【0068】
第1スクリューモータ75および第2スクリューモータ76は、第1スクリュー71および第2スクリュー72にそれぞれ直接連結されてもよいし、またはチェーンおよびスプロケットなどから構成されるトルク伝達機構を介して第1スクリュー71および第2スクリュー72にそれぞれ連結されてもよい。
【0069】
ろ過筒36は、パンチングメタルなどのスクリーン(多孔板)から形成されている。ろ過筒36の上流側端部には、投入口35が形成されている。投入口35からろ過筒36に投入された汚泥は、回転する第1スクリュー71および第2スクリュー72によりろ過筒36内で所定の移送方向に移送される。ろ過筒36の下流側端部は排出室41に接続されている。
【0070】
第2スクリュー72は、第1スクリュー71とは独立に回転可能なように、第1スクリュー71に連結されている。第1スクリュー71および第2スクリュー72は、ろ過筒36および排出室41をそれぞれ貫通して延びている。排出室41は、ろ過筒36に接続されている。この排出室41に、ケーキから構成されたプラグ77がろ過筒36から排出される。第2スクリュー72の軸方向の長さは、第1スクリュー71の軸方向の長さよりも短い。第1スクリュー71は、汚泥の移送方向に沿ってその径が徐々に大きくなる円錐台形状の第1スクリュー軸71Aと、第1スクリュー軸71Aの外面に固定された第1スクリュー羽根71Bとを有している。第2スクリュー72は、円筒形状の第2スクリュー軸72Aと、第2スクリュー軸72Aの外面に固定された第2スクリュー羽根72Bとを有している。
【0071】
ろ過筒36の上流側端部は閉塞壁44によって密封されている。第1スクリュー軸71Aの上流側端部はこの閉塞壁44を貫通して延び、第1スクリュー71を回転させるための第1スクリューモータ75に連結されている。第2スクリュー72の第2スクリュー軸72Aは、第1スクリュー軸71Aと同心状に配置される。第2スクリュー軸72Aの外径は第1スクリュー軸71Aの最大径と同一である。第2スクリュー軸72Aの下流側端部は、排出室41を構成する壁41Aを貫通して延び、第2スクリュー72を回転させるための第2スクリューモータ76に連結されている。排出室41の下部は、排出口53に接続されている。
【0072】
第1スクリューモータ75は、上記制御システム6に接続されている。第1スクリューモータ75には、インバータ(図示せず)が内蔵されており、制御システム6は、インバータを介して第1スクリューモータ75の動作を制御することができるように構成されている。すなわち、制御システム6は、インバータを介して第1スクリューモータ75の回転速度および回転方向を制御することができる。制御システム6は第1スクリューモータ75に指令を発して、第1スクリュー71を第2スクリュー72とは独立して回転させることが可能である。
【0073】
第2スクリューモータ76も、上記制御システム6に接続される。第2スクリューモータ76には、インバータ(図示せず)が内蔵されており、制御システム6は、インバータを介して第2スクリューモータ76の動作を制御することができるように構成されている。すなわち、制御システム6は、インバータを介して第2スクリューモータ76の回転速度および回転方向を制御することができる。制御システム6は第2スクリューモータ76に指令を発して、第2スクリュー72を第1スクリュー71とは独立して回転させることが可能である。
【0074】
第1スクリュー羽根71Bは、第1スクリュー軸71Aの軸方向に沿って螺旋状に延びており、第2スクリュー羽根72Bは、第2スクリュー軸72Aの軸方向に沿って螺旋状に延びている。第1スクリュー羽根71Bが固定されている第1スクリュー71の部分と、第2スクリュー羽根72Bが固定されている第2スクリュー72の部分を合計した長さは、ろ過筒36の軸方向の長さと同一か、または長い。
【0075】
ろ過筒36の内面と第1スクリュー羽根71Bとの間には微小な隙間が形成されており、第1スクリュー羽根71Bはろ過筒36に接触することなく回転することができるようになっている。同様に、ろ過筒36の内面と第2スクリュー羽根72Bとの間には微小な隙間が形成されており、第2スクリュー羽根72Bはろ過筒36に接触することなく回転することができるようになっている。ろ過筒36の上流側端部に形成された投入口35からろ過筒36に投入された汚泥を、回転する第1スクリュー羽根71Bおよび第2スクリュー羽根72Bによって排出室41に向かって移送することができる。
【0076】
第2スクリュー羽根72Bのピッチは、第1スクリュー羽根71Bのピッチよりも小さい。さらに、第2スクリュー羽根72Bは、その巻数が3巻き未満である。本実施形態では、第2スクリュー羽根72Bの巻き方向(すなわち、螺旋方向)は、第1スクリュー羽根71Bの巻き方向とは逆である。したがって、投入口35から投入された汚泥を、排出室41へ送り出すときは、図3に示されるように、第2スクリュー72を第1スクリュー71とは逆方向に回転させる。
【0077】
第2スクリュー羽根72Bの巻き方向を、第1スクリュー羽根71Bの巻き方向と同一にしてもよい。この場合、投入口35から投入された汚泥を、排出室41へ送り出すときは、第2スクリュー72を第1スクリュー71と同方向に回転させる。
【0078】
ろ過筒36は、第1スクリュー71が配置された脱水領域1Aと、第2スクリュー72が配置されたプラグ形成領域1Bとに分割される。脱水領域1Aで汚泥が移送される空間は、ろ過筒36の内面と、第1スクリュー羽根71Bと、第1スクリュー軸71Aとによって形成される。この移送空間の断面積は、図3に示すように、汚泥の移送方向に沿って漸次減少する。したがって、投入口35から投入された汚泥がこの移送空間を第1スクリュー羽根71Bによって移送されるに従って、汚泥は圧搾され、脱水される。ろ過筒36を通過したろ液は、ろ過筒36の下方に配置されたろ液受け45によって回収される。ろ液受け45には、ドレイン46が接続されており、ろ液受け45によって回収されたろ液は、ドレイン46を介して脱水装置5から排出される。
【0079】
プラグ形成領域1Bで汚泥が移送される空間は、ろ過筒36の内面と、第2スクリュー羽根72Bと、第2スクリュー軸72Aとによって形成される。図3に示すように、この移送空間の断面積は一定である。プラグ形成領域1Bでは、脱水領域1Aで脱水された汚泥(すなわち、ケーキ)によって、プラグ77が形成される。プラグ77は、後続のケーキに背圧を加えることにより、ろ過筒36内のケーキの含水率を低下させる。ケーキは、プラグ形成領域1B内でプラグ77を形成しながら、後続のケーキにより押されて、少しずつ排出室41に排出される。ケーキは、排出室41の下部に設けられた排出口53を通って排出室41から排出される。このようにして、汚泥から液体が除去されて、低含水率のケーキが形成される。
【0080】
図1に示す実施形態と同様に、制御システム6は、汚泥、凝集物、濃縮物などの画像データを学習済みモデルに入力し、脱水装置5から排出されるケーキの含水率を目標範囲内に収めることができる最適な運転パラメータを出力するように構成されている。
学習済みモデルから出力される運転パラメータの具体例は、次の通りである。
・凝集混和槽7への汚泥の流量の適正範囲に対する過不足
→ポンプ12の回転速度の増加、または維持、または減少
・凝集剤の適合性に対する適不適
→凝集剤の使用を維持、または凝集剤の種類の変更
・凝集剤の流量の適正範囲に対する過不足
→凝集剤供給装置28の運転速度の増加、または維持、または減少
・攪拌機8の攪拌速度の適正範囲に対する過不足
→攪拌モータ10の回転速度の増加、または維持、または減少
・凝集混和槽7に供給される水の流量の適正範囲に対する過不足
→流量制御弁27の開度の増加、または維持、または減少
・濃縮装置4の運転速度の適正範囲に対する過不足
→増加、または維持、または減少
・濃縮装置4の調整変数(例えば圧搾板圧力調整)の適正範囲に対する過不足
→増加、または維持、または減少
・第1スクリュー71の回転速度の適正範囲に対する過不足
→第1スクリューモータ75の回転速度の増加、または維持、または減少
・第2スクリュー72の回転速度の適正範囲に対する過不足
→第2スクリューモータ76の回転速度の増加、または維持、または減少
・第1スクリュー71の回転トルクの適正範囲に対する過不足
→第1スクリューモータ75への電流の増加、または維持、または減少
・第2スクリュー72の回転トルクの適正範囲に対する過不足
→第2スクリューモータ76への電流の増加、または維持、または減少
【0081】
上述した運転パラメータは例であり、学習済みモデルから出力される運転パラメータは、上記運転パラメータのうちのいずれかのみであってもよい。
【0082】
より最適化された運転パラメータをモデルから出力するために、学習済みモデルの構築に使用される学習データは、過去の画像データに加え、過去の画像データが生成されたときの脱水システムの状態データを含んでもよい。脱水システムの状態データの具体例は、次の通りである。
・汚泥の温度(温度センサ22によって測定される)
・凝集混和槽7への汚泥の流量(ポンプ12の回転速度)
・汚泥の性状(pH、アルカリ度、TS、VTS、SS、VSS、浮遊物質量)
・凝集剤の物性(カチオン度、分子量)
・凝集剤の流量(凝集剤供給装置28の運転速度)
・攪拌機8の攪拌速度(攪拌モータ10の回転速度)
・凝集混和槽7への水の流量(流量制御弁27の開度)
・濃縮装置4の運転速度(駆動モータの回転速度)
・濃縮装置4の運転トルク(駆動モータへの電流値)
・濃縮装置4によって分離された液体の流量(図示しない流量計によって測定される)
・濃縮装置4によって濃縮された汚泥濃度(図示しない濃度センサによって測定される)
・第1スクリュー71の回転速度
・第1スクリューモータ75への電流値(トルク値)
・第2スクリュー72の回転速度
・第2スクリューモータ76への電流値(トルク値)
・ろ過筒36内の汚泥の圧力(圧力センサ61によって測定される)
・ケーキ含水率の測定値(図示しない測定装置または手動によって測定される)
【0083】
上述した脱水システムの状態データの項目は例であり、脱水システムの状態データは、上記項目のうちのいずれかのみであってもよい。
【0084】
学習済みモデルは、撮像装置29,31,32,33,64,65,66のうちの少なくとも1つによって生成された過去の画像データと、過去の画像データが生成されたときの脱水システムの状態データと、脱水装置5から排出されるケーキの含水率を目標範囲内に収めることができる脱水システムの最適な運転パラメータとの複数の組み合わせを含む学習データを用いて、機械学習アルゴリズムに従って構築される。脱水システムの運転中、制御システム6は、撮像装置29,31,32,33,64,65,66のうちの少なくとも1つによって生成された現在の画像データと、脱水システムの現在の状態データを学習済みモデルに入力し、脱水システムの最適な運転パラメータを学習済みモデルから出力するための演算を処理装置6bに実行させる。
【0085】
図1および図3に示す実施形態では、脱水システムは濃縮装置4を備えているが、一実施形態では、濃縮装置4を省略してもよい。この場合は、凝集装置3で形成された凝集物(凝集フロック)は、汚泥移送管18を通って脱水装置5の投入口35に移送される。
【0086】
図4は、脱水システムの他の実施形態を示す図である。図4に示す脱水システムにおいては、脱水装置5としてベルトプレス型脱水装置が採用されている。上述した濃縮装置4は設けられていない。特に説明しない実施形態の構成および動作は、図1および図2に示す実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。
【0087】
凝集装置3は、汚泥を収容する造粒槽80と、造粒槽80内の汚泥を攪拌するための攪拌機8と、造粒槽80に接続された汚泥導入管14と、汚泥導入管14に設けられたポンプ12を備えている。攪拌機8は、造粒槽80内に配置された攪拌羽根9と、攪拌羽根9に連結された攪拌モータ10を備えている。懸濁液貯留槽1は、汚泥導入管14によって凝造粒槽80に接続されている。汚泥はポンプ12により汚泥導入管14を通じて懸濁液貯留槽1から造粒槽80に移送される。造粒槽80への汚泥の流量は、ポンプ12の運転によって調整することが可能である。
【0088】
ポンプ12は制御システム6に接続されており、ポンプ12の動作、すなわち造粒槽80への汚泥の流量は、制御システム6によって制御される。汚泥導入管14には温度センサ22が取り付けられている。この温度センサ22は、造粒槽80に導入される汚泥の温度を測定するように構成されている。さらに、汚泥導入管14には汚泥濃度計(懸濁液濃度計)24が取り付けられており、造粒槽80に導入される汚泥中の懸濁物質の濃度は汚泥濃度計24によって測定される。
【0089】
凝集装置3は、造粒槽80に接続された凝集剤供給装置28をさらに備えている。この凝集剤供給装置28は、凝集剤を予め定められた流量で造粒槽80内の汚泥に注入するように構成されている。造粒槽80内の汚泥に注入される凝集剤の流量は、凝集剤供給装置28によって調整される。この凝集剤供給装置28は制御システム6に接続されており、凝集剤供給装置28の動作、すなわち凝集剤の流量は、制御システム6によって制御される。汚泥は凝集剤とともに攪拌機8の攪拌羽根9によって攪拌される。造粒槽80内で凝集剤と汚泥を攪拌することにより、汚泥内の懸濁物質が集合した凝集物が形成される。造粒槽80内で形成される凝集物は、一般に、ペレットと呼ばれる。
【0090】
脱水システムは、懸濁液貯留槽1内の汚泥(処理前の懸濁液)の画像データを生成する懸濁液撮像装置29を備えている。懸濁液撮像装置29は、対象物の静止画像または連続画像を生成することができるイメージセンサ(例えばCCDイメージセンサまたはCMOSイメージセンサ)を備えたデジタルカメラである。あるいは、懸濁液撮像装置29は、光を波長ごとに分解して対象物を撮像することができるハイパースペクトルカメラであってもよい。懸濁液撮像装置29は、制御システム6に接続されており、懸濁液撮像装置29によって生成された汚泥(懸濁液)の画像データは、制御システム6に送られるようになっている。
【0091】
脱水システムは、凝集装置3によって形成された凝集物(ペレット)の画像データを生成する凝集物撮像装置31を備えている。凝集物撮像装置31は、造粒槽80の内部を向いており、造粒槽80内の凝集物の画像データを生成するように配置されている。一実施形態では、凝集物撮像装置31は、造粒槽80の出口を向き、造粒槽80から排出された凝集物の画像データを生成するように配置されてもよい。凝集物撮像装置31は、制御システム6に接続されており、凝集物撮像装置31によって生成された凝集物の画像データは、制御システム6に送られるようになっている。
【0092】
汚泥の攪拌強度は、攪拌機8の回転速度によって調整することができる。攪拌機8は制御システム6に接続されており、攪拌機8の動作、すなわち汚泥の攪拌強度は、制御システム6によって制御される。
【0093】
造粒槽80は、汚泥移送管18によってベルトプレス型脱水装置5に連結されている。脱水装置5は、無端状の前処理ろ布ベルト82と、前処理ろ布ベルト82を支持する複数の支持ローラ83a~83cと、無端状の第1ろ布ベルト86と、第1ろ布ベルト86を支持する第1ガイドローラ88a~88eと、無端状の第2ろ布ベルト90と、第2ろ布ベルト90を支持する第2ガイドローラ91a~91fと、第1ろ布ベルト86および第2ろ布ベルト90を支持する複数の圧搾ローラ95A~95Eと、第1ろ布ベルト86および第2ろ布ベルト90を移動させる駆動装置98を備えている。
【0094】
前処理ろ布ベルト82は、汚泥の移送方向において、圧搾ローラ95A~95Eの上流側に配置されている。前処理ろ布ベルト82の一部は、汚泥の移送方向に沿って上方に傾斜した傾斜部82Aを形成するように、支持ローラ83a,83bによって支持されている。支持ローラ83aは、電動機100の駆動軸に連結されている。電動機100が支持ローラ83aを回転させると、前処理ろ布ベルト82は、傾斜部82A上の汚泥が上昇する方向に移動する。
【0095】
駆動装置98は、電動機98Aと、電動機98Aの駆動軸に固定された駆動ホイール98Bと、駆動ホイール98Bに支持された駆動力伝達部材としてのベルト98Cを備えている。ベルト98Cに代えてチェーンが用いられてもよい。ベルト98Cは、第1ガイドローラ88cに連結され、さらに第2ガイドローラ91fに連結されている。電動機98Aが駆動ホイール98Bを回転させると、駆動ホイール98Bの回転はベルト98Cによって第1ガイドローラ88cおよび第2ガイドローラ91fに伝達される。第1ガイドローラ88cおよび第2ガイドローラ91fは同じ速度で回転し、これにより第1ろ布ベルト86および第2ろ布ベルト90は同じ方向に同じ速度で進む。
【0096】
第1ろ布ベルト86は、第1ガイドローラ88a~88eと、複数の圧搾ローラ95A~95Eとにより支持されている。第1ガイドローラ88dは、第1ろ布緊張装置101に連結されている。この第1ろ布緊張装置101は、第1ガイドローラ88dの位置を移動させることで、第1ろ布ベルト86の緊張を調整するように構成されている。
【0097】
第2ろ布ベルト90は、第2ガイドローラ91a~91fと、複数の圧搾ローラ95A~95Eとにより支持されている。第2ガイドローラ91aは、第2ろ布緊張装置102に連結されている。この第2ろ布緊張装置102は、第2ガイドローラ91aの位置を移動させることで、第2ろ布ベルト90の緊張を調整するように構成されている。
【0098】
凝集装置3によって形成された凝集物(ペレット)からなる汚泥は、汚泥移送管18を通って前処理ろ布ベルト82上に移送される。汚泥は、前処理ろ布ベルト82の傾斜部82Aを上昇しながら、重力により汚泥中の液体が落下する。この工程は、重力脱水工程である。
【0099】
前処理ろ布ベルト82の移動により、前処理ろ布ベルト82上の汚泥は、第1ろ布ベルト86上に移される。複数の圧搾ローラ95A~95Eの間を延びる第1ろ布ベルト86および第2ろ布ベルト90は、互いに対向している。第1ろ布ベルト86が移動されるにつれて、汚泥は第1ろ布ベルト86と第2ろ布ベルト90との間に挟まれる。第1ろ布ベルト86および第2ろ布ベルト90は圧搾ローラ95A~95Eに巻きつけられながら、汚泥は第1ろ布ベルト86と第2ろ布ベルト90との間に挟まれ、圧搾される。その結果、汚泥は低含水率のケーキ(濁質残渣)となる。低含水率のケーキは、排出口53から排出される。
【0100】
圧搾ローラ95A~95Eの下方には、ろ液受け45が配置されている。汚泥から除去されたろ液は、ろ液受け45によって回収される。ろ液受け45には、ドレイン46が接続されており、ろ液受け45によって回収されたろ液は、ドレイン46を介して脱水装置5から排出される。
【0101】
脱水システムは、脱水装置5によって形成されたケーキ(低含水率の濁質残渣)の画像データを生成するケーキ撮像装置64と、脱水装置5から排出されたろ液の画像データを生成する脱水ろ液撮像装置65を備えている。ケーキ撮像装置64は、脱水装置5の排出口53に隣接して配置されており、脱水ろ液撮像装置65は、脱水装置5のドレイン46に隣接して配置されている。ケーキ撮像装置64は、排出口53内に配置されてもよい。ケーキ撮像装置64および脱水ろ液撮像装置65は、制御システム6に接続されており、ケーキ撮像装置64および脱水ろ液撮像装置65によって生成されたケーキの画像データおよびろ液の画像データは、制御システム6に送られるようになっている。
【0102】
制御システム6は、撮像装置29,31,64,65によって生成された画像データを撮像装置29,31,64,65から取得し、この画像データに基づいて脱水システムの運転パラメータを最適化するように構成されている。制御システム6は、機械学習アルゴリズムにより構築された学習済みモデルが格納された記憶装置6aと、画像データを学習済みモデルに入力し、脱水装置5から排出されるケーキ(濁質残渣)の含水率を目標範囲内に収めることができる脱水システムの最適な運転パラメータを学習済みモデルから出力するための演算を実行する処理装置6bを備えている。
【0103】
学習済みモデルは、撮像装置29,31,64,65によって生成された過去の画像データと、脱水装置5から排出されるケーキ(濁質残渣)の含水率を目標範囲内に収めることができる脱水システムの最適な運転パラメータとの複数の組み合わせを含む学習データを用いて、機械学習アルゴリズムに従って構築されたモデルである。撮像装置29,31,64,65によって生成された過去の画像データは説明変数であり、脱水装置5から排出されるケーキ(濁質残渣)の含水率を目標範囲内に収めることができる脱水システムの最適な運転パラメータは目的変数である。学習データを構成する最適な運転パラメータは、正解データであり、熟練した運転員が汚泥、凝集物などの状態と、脱水装置5から排出されたケーキの含水率に基づいて決定した運転パラメータである。
【0104】
学習済みモデルのパラメータ(重みなど)を最適化するために、撮像装置29,31,64,65によって生成された画像データと、ケーキの含水率を目標範囲内に収めることができる最適な運転パラメータとの多数の組み合わせを含む学習データが用意される。制御システム6は、この学習データを用いて機械学習アルゴリズムにより学習済みモデルを構築する。学習済みモデルのパラメータには、重みの他に、バイアスが含まれることがある。このようにして構築された学習済みモデルは、記憶装置6a内に格納される。
【0105】
制御システム6は、画像データを所定の周期で撮像装置29,31,64,65から取得し、記憶装置6a内に記憶する。制御システム6は、画像データを学習済みモデルに入力し、ケーキの含水率を目標範囲内に収めることができる最適な運転パラメータを学習済みモデルから出力する。
【0106】
本実施形態では、上述した撮像装置29,31,64,65のすべてによって生成された画像データが学習済みモデルに入力されるが、一実施形態では、撮像装置29,31,64,65のうちの少なくとも1つによって生成された画像データが学習済みモデルに入力されてもよい。この場合、学習済みモデルの構築には、その学習済みモデルに入力される画像データと同種の画像データが使用される。例えば、凝集物撮像装置31によって生成された画像データが学習済みモデルに入力される場合は、凝集物撮像装置31によって生成された過去の画像データを含む学習データを用いて学習済みモデルが構築される。
【0107】
図1に示す実施形態と同様に、制御システム6は、画像データを学習済みモデルに入力し、脱水装置5から排出されるケーキの含水率を目標範囲内に収めることができる最適な運転パラメータを学習済みモデルから出力するように構成されている。
学習済みモデルから出力される運転パラメータの具体例は、次の通りである。
・造粒槽80への汚泥の流量の適正範囲に対する過不足
→ポンプ12の回転速度の増加、または維持、または減少
・凝集剤の適合性に対する適不適
→凝集剤の使用を維持、または凝集剤の種類の変更
・凝集剤の流量の適正範囲に対する過不足
→凝集剤供給装置28の運転速度の増加、または維持、または減少
・攪拌機8の攪拌速度の適正範囲に対する過不足
→攪拌モータ10の回転速度の増加、または維持、または減少
・第1ろ布ベルト86および第2ろ布ベルト90の移動速度
→電動機98Aの回転速度の増加、または維持、または減少
・第1ろ布ベルト86および第2ろ布ベルト90の緊張力
→ガイドローラ88d,91aの位置の変更、または維持
【0108】
上述した運転パラメータは例であり、学習済みモデルから出力される運転パラメータは、上記運転パラメータのうちのいずれかのみであってもよい。
【0109】
より最適化された運転パラメータをモデルから出力するために、モデルの構築に使用される学習データは、過去の画像データに加え、過去の画像データが生成されたときの脱水システムの状態データを含んでもよい。脱水システムの状態データの具体例は、次の通りである。
・汚泥の温度(温度センサ22によって測定される)
・造粒槽80への汚泥の流量(ポンプ12の回転速度)
・汚泥の性状(pH、アルカリ度、TS、VTS、SS、VSS、浮遊物質量)
・凝集剤の物性(カチオン度、分子量)
・凝集剤の流量(凝集剤供給装置28の運転速度)
・攪拌機8の攪拌速度(攪拌モータ10の回転速度)
・第1ろ布ベルト86および第2ろ布ベルト90の移動速度(電動機98Aの回転速度)
・ガイドローラ88d,91aの位置
【0110】
上述した脱水システムの状態データの項目は例であり、脱水システムの状態データは、上記項目のうちのいずれかのみであってもよい。
【0111】
学習済みモデルは、撮像装置29,31,64,65のうちの少なくとも1つによって生成された過去の画像データと、過去の画像データが生成されたときの脱水システムの状態データと、脱水装置5から排出されるケーキの含水率を目標範囲内に収めることができる脱水システムの最適な運転パラメータとの複数の組み合わせを含む学習データを用いて、機械学習アルゴリズムに従って構築される。脱水システムの運転中は、制御システム6は、撮像装置29,31,64,65のうちの少なくとも1つによって生成された現在の画像データと、脱水システムの現在の状態データを学習済みモデルに入力し、脱水システムの最適な運転パラメータをモデルから出力するための演算を処理装置6bに実行させる。
【実施例
【0112】
汚泥をポリマーなどの凝集剤で凝集させて凝集フロックを形成し、その凝集フロックを含む汚泥を固液分離する場合の固液分離性能は、汚泥の種類や性状、使用する凝集剤、固液分離装置のタイプ等により異なる。その固液分離状態に関して状況変化が生じた場合に現場のプラント運転員が素早くその変化を察知し適宜運転条件を調整変更し、できるだけ連続的に固液分離性の最適化状態を維持する必要がある。この「汚泥の固液分離状態」に関して判断、評価する場合、その状態変化が色濃く強く出る箇所は汚泥の種類によって大きく異なるため、実施例は以下の3種類の異なる汚泥をそれぞれ対象とする脱水処理施設で行った。なお、これら3つの実施例で入力信号として採用し取込んだ項目は、汚泥性状の季節変動や運転環境の変化により増加、または減少させることにより効率化を図れる場合があることは言うまでもない。
【0113】
【表1】
【0114】
上記実施例1~3では、3種類の異なる汚泥をそれぞれ対象とする脱水処理施設で稼働している図1に記載の軸摺動式のスクリュープレスを運転管理している各熟練運転員が、一定期間を通じて上述した運転パラメータ、及び前記画像データ(7ヶ所)を参考にしながら運転条件の最適化を行った。最適化のために運転条件を変更する度に、どの運転パラメータおよび画像データを根拠にして運転条件の変更を行ったかを記録し、それらの記録の統計データを基に多変量解析を行った。さらに、運転最適化のための運転操作項目変更の根拠となった各運転パラメータまたは各画像データの寄与度を統計的に整理し、3つの当該汚泥脱水処理施設においてそれぞれ特に重要かつ必要な採用入力データとしての運転パラメータまたは画像データを抽出した。その結果、各処理施設ごとに以下に示す入力データは、運転最適化にほぼ必要十分なデータであることが分かった。これらのデータを本脱水システムへの入力データとして取込み、出力データとして出された運転パラメータ内容が熟練運転員の実際の操作内容と合致する確率は、3処理施設ともに93%以上を示した。以下に実施例1~3の運転状況を個別に解説する。
【実施例1】
【0115】
運転記録データ、本脱水システム採用による出力データ、及びそれらの統計解析結果より、実施例1の下水混合生汚泥では、「脱水装置内圧力」、「スクリュー軸トルク」、「スクリュー出口付近ろ液排出画像」の3つの要素により、おおよその固液分離状態を判断、評価することができることが分かった。この3つの入力データを用いた脱水システムの出力データと熟練運転員の実際の操作内容の合致率は94%に達した。図5に実施例1の試験結果を示す。一般的に、混合生汚泥は固液分離性に寄与する74μm以上粗浮遊物(大きいほど固液分離性良好)が10~40%と比較的多く、コシのある強固な脱水ケーキを形成し、ケーキ含水率は60~70%程度まで脱水される。このため、その脱水性能が脱水装置内の圧力やスクリュー軸トルクに強く反映され、また脱水ろ液画像(後段)により脱水工程の最終段階での固液分離状態(ろ液の滴り具合)が特徴的に画像として現れたと考えられる。
尚、本試験の運転期間における脱水ケーキの含水率は所定の汚泥流量に対して、目標の含水率を達成した。
【実施例2】
【0116】
運転記録データ、本脱水システム採用による出力データ、及びそれらの統計解析結果より、実施例2の混合バイオマスメタン発酵系汚泥では、「濃縮装置上部画像」のみでおおよその固液分離状態を判断、評価することができることが分かった。この入力データのみを用いた本脱水システムの出力データと熟練運転員の実際の操作内容の合致率は93%に達した。図6に実施例2の試験結果を示す。
【0117】
一般的に、混合バイオマスメタン発酵系汚泥中には、塩類濃度が比較的大きい食品加工品や食品残査が多いことから、凝集剤の適性添加率が対固形物当たり4%を超える場合もある。さらに、日々メタン発酵槽に投入する有機物は質も量も変動が大きく、凝集剤の注入率を適正範囲内に制御することが該汚泥の固液分離性にとって最も重要である。その適正注入率変動具合をリアルタイムで正確に表現できていたのが濃縮装置水切りゾーンにおける凝集凝縮汚泥の動き(広がり、転がり方、固液界面等)であったと考えられる。熟練運転員としてはこの濃縮装置水切りゾーンの上部からの画像を常時監視することで凝集剤の適正注入率の変動を主たる原因とする固液分離性変化を素早く察知し、脱水システムの運転条件を再度最適化することができていたと考えられる。
尚、本試験の運転期間における脱水ケーキの含水率は所定の汚泥流量に対して、目標の含水率を達成した。
【実施例3】
【0118】
運転記録データ、本脱水システム採用による出力データ、及びそれらの統計解析結果より、実施例3の飲料水製造工場廃水の活性汚泥処理施設における余剰汚泥では、「凝集混和槽内の凝集フロックの画像」、「濃縮装置の上部画像」、「脱水装置からの濁質リーク状態」、「脱水ろ液の濁度を示す画像」、及び「汚泥のpH」と「脱水装置内圧力」の計6つの要素を見て総合的に評価することで、おおよその固液分離状態を判断、評価することができることが分かった。この6つの入力データを用いた本脱水システムの出力データと熟練運転員の実際の操作内容の合致率は95%に達した。図7に実施例3の試験結果を示す。今回対象とした飲料水製造工場廃水処理施設の余剰汚泥は、固液分離性に寄与する74μm以上粗浮遊物が3%未満と非常に小さく、同じく固液分離性に影響するVTS(小さいほど固液分離性良好)も88%と比較的大きく、難脱水性の汚泥性状であったが、熟練運転員が経験的に知る凝集フロックの形状や質感、濃縮装置上部での汚泥の動き、脱水装置からのSSリーク状態等の画像を中心としたデータを基にして本脱水システムにより最適運転パラメータを出力させることにより、この難脱水性汚泥の特徴を読み込んだ熟練運転員並みの運転操作が可能になったと考えられる。
尚、本試験の運転期間における脱水ケーキの含水率は所定の汚泥流量に対して、目標の含水率を達成した。
【0119】
上述の実施形態は、目標含水率を達成しながら現状の最適な運転パラメータを出力するものであるが、将来の運転状態の予測に応用することも可能であり、例えば、本脱水システムにおける将来の排出される脱水ケーキの含水率や将来起こり得る脱水工程における設備の運転不良の予測も可能である。
【0120】
一実施形態では、制御システム6は、脱水システムの最適な運転パラメータを出力する上述した学習済みモデルに加えて、または代えて、脱水システムの運転が正常であるか異常であるかを判定するための学習済みモデルを備えてもよい。脱水システムの運転状態に異常が起こると、得られる脱水ケーキの含水率が高くなり、後段の処理に多大な影響を及ぼすことがある。このような運転異常は、頻度は高くないものの、脱水システムの運転異常が起きた場合には、これを正しく検出することが重要である。
【0121】
そこで、本実施形態は、学習済みモデルを用いて、脱水システムの運転異常を正しく検出することができる脱水システムを提供する。以下の説明では、脱水システムの最適な運転パラメータを出力する上述した学習済みモデルを第1学習済みモデルと称し、脱水システムの運転が正常または異常であるかを判定するための学習済みモデルを第2学習済みモデルと称する。
【0122】
制御システム6の記憶装置6aには、第2学習済みモデルが格納されている。一例では、第2学習済みモデルは、ニューラルネットワークから構成されている。記憶装置6aには、第2学習済みモデルを機械学習アルゴリズムに従って構築するためのプログラムが格納されている。処理装置6bは、プログラムに含まれる命令に従って演算を実行することによって第2学習済みモデルを構築する。第2学習済みモデルの詳細は、第1学習済みモデルと同様であるので、その重複する説明を省略する。
【0123】
第2学習済みモデルは、ケーキ撮像装置64によって生成された過去の画像データと、脱水システムの運転状態が正常または異常であることを示す運転指標値との複数の組み合わせを含む学習データを用いて、機械学習アルゴリズムに従って構築されたモデルである。ケーキ撮像装置64は、図1図3、および図4に示すように、脱水装置5によって形成されたケーキ(低含水率の濁質残渣)の画像データを生成するように配置されている。一例では、ケーキ撮像装置64は、脱水装置5によって形成されたケーキを搬出するための排出コンベヤ(図示せず)の上方に配置され、排出コンベヤ上のケーキの画像データを生成するように配置されてもよい。
【0124】
ケーキ撮像装置64によって生成された過去の画像データは説明変数であり、脱水システムの運転状態が正常または異常であることを示す運転指標値は目的変数である。脱水システムの運転状態が正常または異常であるかは、運転員によって決定される。運転指標値の例としては、脱水システムの運転状態が正常であることを示す第1数値(例えば0)と、脱水システムの運転状態が異常であることを示す第2数値(例えば1)が挙げられる。脱水システムの運転状態が異常である原因としては、凝集剤の溶解濃度不良、想定外の汚泥濃度変動、脱水装置5内での汚泥の詰まりなどが挙げられる。
【0125】
第2学習済みモデルのパラメータ(重みなど)を最適化するために、ケーキ撮像装置64によって生成された画像データと、脱水システムの運転状態が正常または異常であることを示す運転指標値との多数の組み合わせを含む学習データ(訓練データまたは教師データともいう)が用意される。制御システム6は、この学習データを用いて機械学習アルゴリズムにより第2学習済みモデルを構築する。第2学習済みモデルのパラメータには、重みの他に、バイアスが含まれることがある。このようにして構築された第2学習済みモデルは、記憶装置6a内に格納される。
【0126】
脱水システムの運転中、制御システム6は、現在の画像データを所定の周期でケーキ撮像装置64から取得し、記憶装置6a内に記憶する。制御システム6は、画像データを第2学習済みモデルに入力し、脱水システムの運転状態が正常または異常であることを示す運転指標値を第2学習済みモデルから出力するための演算を処理装置6bに実行させる。
【0127】
図8は、脱水システムの運転中に第2学習済みモデルから出力された運転指標値の時間変化を示すグラフである。図8において、縦軸は、運転指標値を表し、横軸は運転時間を表す。第2学習済みモデルによる判定結果の出力の間隔は適宜設定される。図8では、秒単位の例を示しているが、より間隔を開けて、分単位、時間単位、日単位としてもよい。図8のグラフの前半では、運転が正常であることを示す数値0が続くが、徐々に運転異常を示す数値1が出力される。図8に示すように、同じ数値が連続的に第2学習済みモデルから出力される間、時々異なる数値が出力されることがある。これは、第2学習済みモデルが脱水システムの運転状態を正しく判定できなかったためである。
【0128】
図9は、図8に示す運転指標値の移動平均の時間的変化を示すグラフである。図8において、縦軸は、運転指標値の移動平均を表し、横軸は運転時間を表す。制御システム6は、第2学習済みモデルから出力された運転指標値の移動平均を算定する。移動平均の時間間隔は適宜設定される。制御システム6は、運転指標値の移動平均をしきい値と比較し、運転指標値の移動平均がしきい値を超えたときに、脱水システムの運転に異常が起きていることを決定する。そして、制御システム6は、脱水システムの運転異常を示す警報を発する。運転員は、警報により、脱水システムの運転に異常が起きていることを知ることができるので、処理システムに対して適切な処置を施すことにより、運転異常を解消することができる。
【0129】
図9から分かるように、運転指標値の移動平均は、一旦しきい値を超えた後も変動し続けるので、しきい値を超えたり、下回ったりする。そこで、制御システム6は、脱水システムの運転に異常が起きていることを一旦決定すると、運転指標値の移動平均が所定の正常レベルにまで低下しない限り、運転異常の決定動作をせず、警報を解除しない。脱水システムの運転異常が解消されると、運転指標値の移動平均は徐々に低下する。制御システム6は、運転指標値の移動平均が所定の正常レベルにまで低下すると、脱水システムの運転異常の決定動作をリセットし、運転異常の決定動作を再開する。さらに、制御システム6は、警報を解除する。
【0130】
本実施形態によれば、制御システム6は、第2学習済みモデルから出力された運転指標値に基づいて、脱水システムに異常が起きていることを正しく決定することができる。
【0131】
制御システム6は、脱水システムの最適な運転パラメータを出力する第1学習済みモデルと、脱水システムの運転が正常であるか異常であるかを判定する第2学習済みモデルのいずれか、または両方を備えてもよい。
【0132】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうる。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲に解釈されるものである。
【符号の説明】
【0133】
1 懸濁液貯留槽
3 凝集装置
4 濃縮装置
5 脱水装置
6 制御システム
6a 記憶装置
6b 処理装置
7 凝集混和槽
8 攪拌機
9 攪拌羽根
10 攪拌モータ
12 ポンプ
14 汚泥導入管
18 汚泥移送管
22 温度センサ
24 汚泥濃度計
26 水供給ライン
27 流量制御弁
28 凝集剤供給装置
29 懸濁液撮像装置
31 凝集物撮像装置
32 濃縮物撮像装置
33 分離液撮像装置
35 投入口
36 ろ過筒
37 スクリュー軸
38 スクリュー羽根
40 スクリューモータ
41 排出室
42 軸摺動アクチュエータ
44 閉塞壁
45 ろ液受け
46 ドレイン
50 背圧板
51 背圧板駆動装置
52 プラグ
53 排出口
55 洗浄装置
61 圧力センサ
64 ケーキ撮像装置
65 脱水ろ液撮像装置
66 ろ過筒撮像装置
71 第1スクリュー
71A 第1スクリュー軸
71B 第1スクリュー羽根
72 第2スクリュー
72A 第2スクリュー軸
72B 第2スクリュー羽根
75 第1スクリューモータ
76 第2スクリューモータ
77 プラグ
80 造粒槽
82 前処理ろ布ベルト
83a~83c 支持ローラ
86 第1ろ布ベルト
88a~88e 第1ガイドローラ
90 第2ろ布ベルト
91a~91f 第2ガイドローラ
95A~95E 圧搾ローラ
98 駆動装置
98A 電動機
98B 駆動ホイール
98C ベルト
100 電動機
101 第1ろ布緊張装置
102 第2ろ布緊張装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9