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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/535 20060101AFI20240305BHJP
   A61F 13/534 20060101ALI20240305BHJP
   A61F 13/539 20060101ALI20240305BHJP
   A61F 13/53 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
A61F13/535 100
A61F13/534 110
A61F13/539
A61F13/53 100
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020126788
(22)【出願日】2020-07-27
(65)【公開番号】P2022023679
(43)【公開日】2022-02-08
【審査請求日】2023-06-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000183462
【氏名又は名称】日本製紙クレシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】蓑田 哲宏
【審査官】須賀 仁美
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-000236(JP,A)
【文献】特開2012-010951(JP,A)
【文献】特表平09-505218(JP,A)
【文献】実開昭63-018122(JP,U)
【文献】特開平10-099372(JP,A)
【文献】特開2004-230064(JP,A)
【文献】特開2016-112047(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F13/15-13/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、これらの間に配置された吸収体と、を備える吸収性物品であって、
前記吸収体は、
着用者の肌側から非肌側に向けて、第1シートと、前記第1シートよりも幅広の第2シートと、前記第2シートよりも幅広の第3シートと、をこの順に重ね合わせた3層積層体を含み、前記第1シート、前記第2シート、及び前記第3シートは、いずれも、2枚の親水性不織布の間に高吸収性ポリマーを固着担持させた高吸収性シートであり、
前記第1シート、前記第2シート、及び前記第3シートには、それぞれ、幅方向に対向し、長さ方向に円弧状に延びて、それ以外の領域よりも前記高吸収性ポリマーの目付量が低い、一対の第1剛性緩衝部、一対の第2剛性緩衝部、及び一対の第3剛性緩衝部が設けられ、
前記第1剛性緩衝部と前記第2剛性緩衝部とは厚み方向に重なり合う、領域Xを有し、前記第2剛性緩衝部と前記第3剛性緩衝部とは厚み方向に重なり合う、領域Yを有し、かつ
前記吸収体は、長さ方向一端から長さ方向他端に向けて直線状に延びる折り目状の緩衝線を更に備え、前記緩衝線は、前記第1シート、前記第2シート、及び前記第3シートの少なくとも1つにおいて、幅方向中心に設けられた中央緩衝線及び/又は幅方向端部付近に設けられた端部緩衝線であることを特徴とする、吸収性物品。
【請求項2】
前記第1剛性緩衝部、前記第2剛性緩衝部、及び前記第3剛性緩衝部は、それぞれ、前記高吸収ポリマーの目付60g/m以下、曲率半径360mm以上830mm以下、長さ150mm以上450mm以下、及び幅10mm以上45mm以下である、請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記領域Xの平面視面積は前記第1剛性緩衝部の平面視面積の30%以上65%以下であり、前記領域Yの平面視面積は前記第2剛性緩衝部の平面視面積の30%以上65%以下である、請求項1又は2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記第2剛性緩衝部の長さ及び幅はそれぞれ前記第1剛性緩衝部の長さ及び幅よりも大きく、前記第3剛性緩衝部の長さ及び幅はそれぞれ前記第2剛性緩衝部の長さ及び幅よりも大きい、請求項1~3のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記第2剛性緩衝部の幅方向外側の縁辺は、前記第1の剛性緩衝部の幅方向外側の縁辺よりも幅方向外側に位置し、前記第3剛性緩衝部の幅方向外側の縁辺は、前記第2の剛性緩衝部の幅方向外側の縁辺よりも幅方向外側に位置する、請求項1~4のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記親水性不織布はエアスルー不織布である、請求項1~5のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
吸収性物品は、一般に、液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、これらの間に配置された吸収体と、を備え、トップシートを透過した尿等の体液を、吸収体で吸収及び保持するように構成されている。吸収性物品には、成人用又は幼児用を問わず、テープタイプの紙おむつ、パンツタイプの紙おむつ、尿取りパッド、軽失禁パッド等、用途に応じて様々な種類が存在する。
【0003】
従来から、吸収体としては、フラッフパルプと高吸収性ポリマー(Super Absorbent Polymer、以下「SAP」ともいう)とを併用することが一般的である。フラッフパルプとSAPとを含むフラッフパルプ吸収体は、良好な吸収性能や肌触り、装着感を有するものの、最近では、吸収性物品を着けていることが目立たず、着用時に違和感がなく、つけている感がない薄型の吸収性物品が望まれている。また、要介護者にとっても、フィット性の良好な薄型の吸収性物品は心地よく、体の向きを変えやすく、望ましいものである。
【0004】
吸収性物品を薄型化する上では、吸収性物品の大部分を占める吸収体の薄型化が大きな課題になる。このような薄型吸収体として、例えば、2枚の不織布と、これらの間にホットメルト接着剤により固着担持されたSAP粒子と、を含む高吸収性シート(以下「SAPシート」ともいう)、及びSAPシートを吸収体として用いた吸収性物品がそれぞれ提案されている。
【0005】
特許文献1には、吸収体の厚みの増加を防止しつつ、体液吸収量を向上させることを目的として、液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、これらの間に配置された吸収体とを備え、吸収体は、着用者の非肌側に位置する下層吸収体と、着用者の肌側に位置し、下層吸収体の肌側面の長手方向及び幅方向の中央部に配置された上層吸収体とを有し、上層吸収体は、第1の不織布と、第2の不織布と、これらの間に保持されたSAP粒子とを含むSAPシートであり、下層吸収体はフラッフパルプ吸収体であり、上層吸収体の幅方向両端部に設けられ、上層吸収体と下層吸収体とを接合した2つの接合部と、これらの接合部の間を上層吸収体の長手方向の一端から他端まで延びるように設けられ、上層吸収体と下層吸収体とを接合していない非接合部と、を有する吸収性物品が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2018-164633号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1では、上層吸収体である薄型のSAPシートと、下層吸収体であるフラッフパルプ吸収体との組み合わせにより、体液吸収量の向上を図っている。しかしながら、フラッフパルプ吸収体とSAPシートとでは構造や強度、密度、体液吸収後の性状等が全く異なることから、体液を複数回吸収する間に全体としての吸収体に変形を生じ、体液の漏れ、吸収速度や吸収量等の吸収性能の低下、装着感やフィット性の低下といった問題が生じやすくなる。特許文献1では、上層吸収体と下層吸収体との間に上述の接合部と非接合部とを設けているが、このような構造は吸収体の変形を助長することがある。
【0008】
また、複数のSAPシートを積層して吸収体を構成した場合、従来のフラッフパルプ吸収体より薄くなるが、吸収体の剛性が比較的高くなる傾向があり、良好なフィット性を保てなくなる。吸収性物品の長時間着用を想定する場合、特に体液吸収後のSAPの膨潤によるフィット性の低下を抑制することが求められている。
【0009】
本発明の目的は、薄型で、繰返し吸収速度や体液吸収量等の吸収性能に優れ、液戻りが防止され、体液吸収後でもフィット性の良好な吸収性物品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、3層の高吸収性シートを厚み方向に重ね合わせた3層積層体を含み、各高吸収性シートを着用者の肌側から非肌側に向けて順次幅広とし、かつ各高吸収性シートの所定位置に、所定の形状及び寸法を有し、それ以外の領域よりも高吸収性ポリマーの目付が低い一対の剛性緩衝部を設け、さらに所定の剛性緩衝部が厚み方向に部分的に重なり合うように構成した吸収体を用いることにより、薄型で所望の特性を有する吸収性物品が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち本発明は、下記の吸収性物品に係る。
【0011】
(1)液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、これらの間に配置された吸収体と、を備える吸収性物品であって、
前記吸収体は、
着用者の肌側から非肌側に向けて、第1シートと、前記第1シートよりも幅広の第2シートと、前記第2シートよりも幅広の第3シートと、をこの順に重ね合わせた3層積層体を含み、前記第1シート、前記第2シート、及び前記第3シートは、いずれも、2枚の親水性不織布の間に高吸収性ポリマーを固着担持させた高吸収性シートであり、
前記第1シート、前記第2シート、及び前記第3シートには、それぞれ、幅方向に対向し、長さ方向に円弧状に延びて、それ以外の領域よりも前記高吸収性ポリマーの目付量が低い、一対の第1剛性緩衝部、一対の第2剛性緩衝部、及び一対の第3剛性緩衝部が設けられ、
前記第1剛性緩衝部と前記第2剛性緩衝部とは厚み方向に重なり合う、領域Xを有し、前記第2剛性緩衝部と前記第3剛性緩衝部とは厚み方向に重なり合う、領域Yを有し、かつ
前記吸収体は、長さ方向一端から長さ方向他端に向けて直線状に延びる折り目状の緩衝線を更に備え、前記緩衝線は、前記第1シート、前記第2シート、及び前記第3シートの少なくとも1つにおいて、幅方向中心に設けられた中央緩衝線及び/又は幅方向端部付近に設けられた端部緩衝線であることを特徴とする、吸収性物品。
(2)前記第1剛性緩衝部、前記第2剛性緩衝部、及び前記第3剛性緩衝部は、それぞれ、前記高吸収ポリマーの目付60g/m以下、曲率半径360mm以上830mm以下、長さ150mm以上450mm以下、及び幅10mm以上45mm以下である、上記(1)の吸収性物品。
(3)前記領域Xの平面視面積は前記第1剛性緩衝部の平面視面積の30%以上65%以下であり、前記領域Yの平面視面積は前記第2剛性緩衝部の平面視面積の30%以上65%以下である、上記(1)又は(2)の吸収性物品。
(4)前記第2剛性緩衝部の長さ及び幅はそれぞれ前記第1剛性緩衝部の長さ及び幅よりも大きく、前記第3剛性緩衝部の長さ及び幅はそれぞれ前記第2剛性緩衝部の長さ及び幅よりも大きい、上記(1)~(3)のいずれかの吸収性物品。
(5)前記第2剛性緩衝部の幅方向外側の縁辺は、前記第1の剛性緩衝部の幅方向外側の縁辺よりも幅方向外側に位置し、前記第3剛性緩衝部の幅方向外側の縁辺は、前記第2の剛性緩衝部の幅方向外側の縁辺よりも幅方向外側に位置する、上記(1)~(4)のいずれかの吸収性物品。
(6)前記親水性不織布はエアスルー不織布である、上記(1)~(5)のいずれかの吸収性物品。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、薄型で、繰返し吸収速度や体液吸収量等の吸収性能に優れ、液戻りが防止され、体液吸収後でもフィット性の良好な吸収性物品が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第1実施形態に係る吸収性物品の構成を示す模式平面図である。
図2図1に示すX-X切断線における幅方向の模式断面図である。
図3図1に示す吸収性物品中吸収体の構成を示す模式平面図である。
図4図1に示す吸収性物品中吸収体の模式展開図である。
図5図1に示す吸収性物品中吸収体の各高吸収性シートの剛性緩衝部の厚み方向の重なりを示す模式平面図である。(a)から(c)はいずれも模式平面図である。
図6】第1シート、第2シート及び第3シートに設けられた中央緩衝線及び端部緩衝線の構成を示す模式平面図である。(a)は第1シート、(b)は第2シート、(c)は第3シートである。
図7】本実施形態の吸収体の作用効果を説明する、図3のX-X切断線での幅方向模式断面図である。(a)は模式断面図である。(b)は吸収体の変形を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書において、吸収性物品の着用とは、体液の吸収前後を問わず、吸収性物品を身体に装着した状態をいう。吸収性物品において、長さ方向(又は長手方向)とは吸収性物品を身体に着用したときに着用者の股間部を介して身体の前後に亘る、図中Yで示す方向であり、幅方向とは長さ方向に対して直交する、図中Xで示す方向であり、厚み方向とは各構成部材を積層する、図中Zで示す方向である。肌側面とは、吸収性物品を着用したときに、着用者の肌に当接する表面及び肌を臨む表面であり、非肌側面とは、着用者の衣服に接触する表面又は衣服を臨む表面である。体液とは、尿や血液、軟便中の水分等の体内から体外に排出された液体をいう。
【0015】
<吸収性物品(第1実施形態)>
以下、図面を参照しつつ、本実施形態の吸収性物品50について説明する。図1及び図2は、第1実施形態に係る吸収性物品50を示す。図3図6は、吸収体20を示す。これらの図面は吸収性物品50中の各構成部材の形状や寸法、大小関係等を規定するものではない。
【0016】
本実施形態の吸収性物品50は、ベビー用又は成人用を問わず種々の吸収性物品として使用できるが、代表的には、軽失禁パッド、尿吸収パッド、パンツ型紙おむつ、テープ止め紙おむつ等が挙げられる。アウターとしての各種紙おむつと、インナーとしての吸収性物品50とを組み合わせてもよい。吸収性物品50は、例えば、寝たきりではなく介助付きであればトイレ誘導可能な被介護者、仰臥位が主な使用シーンである寝たきりの介護者等に好適に使用されるが、着用を気付かれたくない介護不要者にも使用可能である。吸収性物品50の、長さ(長さ方向寸法、以下同じ)、及び幅(幅方向寸法、以下同じ)はいずれも特に限定されないが、例えば、100mm以上800mm以下の範囲、及び50mm以上500mm以下の範囲である。吸収性物品50の寸法を前記の範囲に調整することで、種々の用途の吸収性物品を容易に得ることができる。
【0017】
吸収性物品50は、図1及び図2に示すように、吸収性物品50を着用したときに相対的に肌側に位置する、液透過性のトップシート10と、トップシート10に対向して配置され、吸収性物品50を着用したときに相対的に非肌側に位置する液不透過性のバックシート30と、トップシート10とバックシート30との間に配置された吸収体20と、トップシート10の肌側表面に設けられた一対の立体ギャザー40と、を備える。吸収体20はトップシート10とバックシート30との間に挟まれた構造となり、尿等の体液はトップシート10を通して吸収体20に吸収及び保持される。吸収性物品50の用途やタイプに応じて、レッグギャザー、ウエストギャザー、サイドフラップ等を適宜設けることができる。
【0018】
以下、シート状の各構成部材について、トップシート10、吸収体20、バックシート30及び立体ギャザー40の順でさらに詳しく説明する。なお、これらの構成部材は、シート状以外の立体構造を有していてもよい。
【0019】
(トップシート)
トップシート10は、吸収体20に向けて体液を速やかに通過させる液透過性のシート状部材であり、吸収体20を挟んで、バックシート30に対向して配置される。トップシート10は、着用者の肌に当接する場合があることから、柔らかな感触で、肌に刺激を与えないような性質を有する基材が好ましい。該基材としては、例えば、親水性シート、同種又は異種の親水性シートの積層体である複合不織布、開口ポリエチレンフィルム等の開口性フィルム、ポリエチレンフォーム、ウレタンフォーム等の発泡フィルム等が挙げられる。親水性シートとしては、例えば、ポリプロピレンやポリエチレン、ポリエステル等の合成樹脂からなる合成繊維、レーヨン等の再生繊維、綿等の天然繊維等の1種又は2種以上を用いて作製された、エアスルー不織布、サーマルボンド不織布、スパンレース不織布、スパンボンド不織布等が挙げられる。
【0020】
トップシート10には、液透過性を向上させる観点から、公知の方法に従ってエンボス加工や穿孔加工を表面に施してもよい。また、肌への刺激を低減させる観点から、トップシート10には、ローション、酸化防止剤、抗炎症成分、pH調整剤、抗菌剤、保湿剤等の1種又は2種以上を含有させてもよい。トップシート10の坪量は、強度、加工性及び液戻り量の観点から、例えば、15g/m以上40g/m以下の範囲である。トップシート10の形状は特に制限されず、漏れがないように体液を吸収体20へと誘導するために必要とされる、吸収体20の一部又は全部を覆う形状であればよい。
【0021】
(吸収体)
吸収体20は、長さが例えば100mm以上800mm以下の範囲、150mm以上500mm以下の範囲、又は270mm以上500mm以下の範囲であり、幅が例えば50mm以上500mm以下の範囲、60mm以上400mm以下の範囲、又は90mm以上190mm以下の範囲である。また、吸収体20の平面視形状が砂時計型である場合は、長さが180mm以上480mm以下の範囲、着用者の腹部及び背部にそれぞれ当接する腹側部及び背側部の幅がともに60mm以上160mm以下の範囲であり、着用者の股間部に当接する股部の幅が50mm以上140mm以下の範囲である。また、吸収体20の厚みは、後述する構成を採用することにより、例えば、2.1mm以上5.4mm以下の範囲の、薄型にすることができる。吸収体20の全面又は一部にエンボス加工を施してもよい。吸収体20の平面視形状としては、例えば、砂時計型、Iの字状、長方形、4角が丸まった角丸四角形、長円等が挙げられる。
【0022】
(第1シート、第2シート、及び第3シート)
本実施形態の吸収体20は、図3図5に示すように、吸収性物品50を身体に着用したときに、着用者の肌側から非肌側に向けて、第1シート60、第1シート60よりも幅広の第2シート70、及び第2シート70よりも幅広の第3シート80をこの順に厚み方向に積層した3層積層体(以下単に「3シート積層体」ともいう)を含む。すなわち、第1シート60は着用者の最も肌側に位置し、第3シート80は着用者の最も非肌側に位置し、第2シート70は第1シート60と第3シート80との間に位置し、それぞれの幅が肌側から非肌側に向けて段階的に大きくなるように構成している。着用者の肌側から非肌側に向かうにつれて3シート積層体の幅を広げると、着用者の股間部(股ぐり)にフィットし、後述する剛性緩衝部、緩衝線と協働して、体液吸収の前後に関係なく可動性が高まりフィット性が向上し、体液拡散性も向上するため、3シート積層体の吸収能力を余さず有効に活かすことができる。また、第1シート60、第2シート70、及び第3シート80のすべてが、トップシート10を介して供給される体液を直接受け止める肌側の露出面を有することになり、吸収体20全体としての体液拡散性を向上させることができる。
【0023】
第1シート60、第2シート70、及び第3シート80は、それぞれ、肌側に位置する肌側親水性不織布(不図示)と、肌側親水性不織布の非肌側において、肌側親水性不織布と対向配置される非肌側親水性不織布(不図示)と、これらの間に設けられた、高吸収性ポリマーを固着担持するSAP中間層63、73、83とを含み、フラッフパルプを含まない高吸収性シートである。なお、図5及び図7では、肌側親水性不織布及び非肌側親水性不織布の図示を省略している。本実施形態の吸収体20は、高吸収性シートの3層積層体とすることで、それ自体、ひいては吸収性物品50を薄型化することができる。肌側及び非肌側の親水性不織布、及びSAP中間層63、73、83の詳細は後述する。
【0024】
第1シート60、第2シート70、及び第3シート80の平面視形状は、いずれも長方形であるが、本実施形態に限定されず、例えば、砂時計型、Iの字状、長方形、4角が丸まった角丸四角形、長円等が挙げられる。第1シート60、第2シート70、及び第3シート80は同じ平面視形状であるが、本実施形態に限定されず、異なる平面視形状を有していてもよい。本実施形態の第1シート60、第2シート70、及び第3シート80は、各幅方向中心線及び各長さ方向中心線が厚み方向に重なるように積層されているが、これに限定されず、各幅方向中心線及び各長さ方向中心線の少なくとも1つが厚み方向に重ならないように積層してもよい。さらに、本実施形態の第1シート60、第2シート70、及び第3シート80は、肌側から非肌側に向けて、長さが段階的に大きくなるように構成しているが、これらは、同じ長さを有していてもよい。
【0025】
(剛性緩衝部)
図3に示すように、第1シート60には、一対の第1剛性緩衝部61、62が設けられている。第1剛性緩衝部61、62は、第1シート60のSAP中間層63において、周囲(以下「通常散布域」ともいう)よりも高吸収性ポリマーの目付を低く設定した、平面視が部分円弧線状の領域である。第1剛性緩衝部61、62を通常散布域よりも低目付とすることにより、第1剛性緩衝部61、62に起因する吸収体20の変形自由度が大きくなる。第1剛性緩衝部61、62は、第1シート60において、長さ方向の略中央部であり、かつ長さ方向中心線を対称軸にして、幅方向両側のほぼ対称な位置に、部分円弧線が幅方向に凸状に対向するように設けられている。また、第1剛性緩衝部61、62は、平面視形状、曲率半径、長さ、及び幅が略同じに構成されているが、異なるように構成してもよい。第1剛性緩衝部61、62の平面視形状は三日月状等でもよい。また、部分円弧線状の第1剛性緩衝部61、62に代えて、長さ方向中央部で幅方向両側から凸状に対向する図形状の第1剛性緩衝部61、62を設けてもよく、ひょうたん型、砂時計型等が挙げられる。
【0026】
第2シート70の一対の第2剛性緩衝部71、72は、第1剛性緩衝部61、62と同じ構成及び変形例を有する。好ましい実施形態では、長さ(部分円弧状線を直線状に伸ばした長さ)、幅が第1剛性緩衝部61、62よりも大きい。この実施形態によれば、第1剛性緩衝部61、62に起因する吸収体20の変形自由度が向上する。第3シート80の一対の第3剛性緩衝部81、82は、第1剛性緩衝部61、62と同じ構成及び変形例を有する。好ましい実施形態では、長さ(部分円弧状線を直線状に伸ばした長さ)、幅が第2剛性緩衝部71、72よりも大きい。この実施形態によれば、第2剛性緩衝部71、72に起因する吸収体20の変形自由度が向上する。
【0027】
第1剛性緩衝部61、62、第2剛性緩衝部71、72、及び第3剛性緩衝部81、82(以下これらを総称して「3シート剛性緩衝部」ともいう)を設けることで、着用者が吸収性物品50を着用したときに、主に3シート剛性緩衝部とその周囲の通常散布域との高吸収性ポリマーの目付の違いに起因して、着用者の股間部の幅方向両縁に沿い、吸収体20が着用者の股間部に対応して適度に変形することから、吸収体20ひいては吸収性物品50のフィット性が向上する。
【0028】
別の好ましい実施形態では、図3に示すように、3シート積層体を厚み方向に透視したときに、第2剛性緩衝部71、72の幅方向外側の縁辺は、第1の剛性緩衝部61、62の幅方向外側の縁辺よりも幅方向外側に位置し、第3剛性緩衝部81、82の幅方向外側の縁辺は、第2の剛性緩衝部71、72の幅方向外側の縁辺よりも幅方向外側に位置する。この実施形態によれば、吸収体20の強度を損なうことなく、3シート剛性緩衝部の可動域を大きくし、着用者の体形に合わせた変形が容易になる。
【0029】
第1剛性緩衝部61、62、第2剛性緩衝部71、72、及び第3剛性緩衝部81、82は、それぞれ、高吸収ポリマーの目付が60g/m以下の範囲又は10g/m以上40g/m以下の範囲であり、曲率半径が360mm以上830mm以下の範囲又は440mm以上780mm以下の範囲から選択され、部分円弧線を直線状に延ばしたときの長さ150mm以上450mm以下の範囲又は210mm以上390mm以下の範囲から選択され、及び幅10mm以上45mm以下の範囲又は12mm以上20mm以下の範囲から選択される。高吸収性ポリマーの目付を前述の範囲にすると、体液を吸収した後でも3シート剛性緩衝部の可動域が比較的大きくなり、着用者の体形に合わせて吸収体20が変形しやすくなる。曲率半径を前述の範囲にすると、3シート剛性緩衝部が着用者の股間部の幅方向両縁に沿い易くなる。長さ及び幅を前述の範囲にすると、吸収体20の強度を損なうことなく、吸収体20が適度に変形する。
【0030】
(積層面積率)
第1剛性緩衝部61は、第2剛性緩衝部71と厚み方向に重なり合う、領域Xを有し、同様に、第1剛性緩衝部62は、第2剛性緩衝部72と厚み方向に重なり合う、領域Xを有する。すなわち、領域Xは、第1剛性緩衝部61又は第1剛性緩衝部62の一部である。第2剛性緩衝部71は、第3剛性緩衝部81と厚み方向に重なり合う、領域Yを有し、同様に、第2剛性緩衝部72は、第3剛性緩衝部82と厚み方向に重なり合う、領域Yを有する。すなわち、領域Yは、第2剛性緩衝部71又は第2剛性緩衝部72の一部である。
【0031】
領域Xは、本実施形態では、第1剛性緩衝部61、62の各幅方向外側縁部が、第2剛性緩衝部71、72の各幅方向内側縁部と厚み方向に重なり、長さ方向に部分円弧線状に延びる帯状領域である。同様に、領域Yは、本実施形態では、第2剛性緩衝部71、72の各幅方向外側縁部が、第3剛性緩衝部81、82の各幅方向内側縁部と厚み方向に重なり、長さ方向に部分円弧線状に延びる帯状領域である。このように、第1剛性緩衝部61、62と第2剛性緩衝部71、72とが、第1剛性緩衝部61、62の幅方向両外側で部分的に重なり合い、かつ第2剛性緩衝部71、72と第3剛性緩衝部81、82とが、第2剛性緩衝部71、72の幅方向両外側で部分的に重なり合うことにより、吸収体20が変形するときにこれらが連動して変形するので、違和感なくフィット性を向上させることができる。
【0032】
本明細書では、領域Xの面積(平面視面積、以下同じ)は第1剛性緩衝部61、62の面積との割合であり、積層面積率として次の式で表される。ここで、第1剛性緩衝部面積とは、第1剛性緩衝部61の面積又は第1剛性緩衝部62の面積であり、これらの面積を「1単位の面積」ともいう。
積層面積率(%)=(領域Xの面積/第1剛性緩衝部面積)×100
また、領域Yの面積は第2剛性緩衝部71、72の面積との割合であり、積層面積率として次の式で表される。ここで、第2剛性緩衝部面積とは、第2剛性緩衝部71の面積又は第2剛性緩衝部72の面積であり、これらの面積を「1単位の面積」ともいう。
積層面積率(%)=(領域Yの面積/第2剛性緩衝部面積)×100
ここで、領域Xの面積、領域Yの面積、第1剛性緩衝部面積、及び第2剛性緩衝部面積は、例えば、3D形状測定マイクロスコープ ワンショットVR-3000(商品名、製造元:株式会社キーエンス)を用いて求めることができる。
【0033】
本実施形態では、領域X及び領域Yの積層面積率は、それぞれ、30%以上65%以下である。領域X及び領域Yの積層面積率を前述の範囲にすると、3シート剛性緩衝部が変形するときの連動性が高まり、違和感のない良好なフィット性を得ることができる。領域X及び/又は領域Yの積層面積率が30%未満であると、変形の自由度が低下し、良好なフィット性が得られない傾向がある。領域X及び/又は領域Yの面積が65%を超えると、変形の自由度が大きくなりすぎ、個別の変形が起こりやすくなり、特に体液吸収後に耐久性が低下しヨレを生じやすくなり、良好なフィット性が得られない傾向がある。
【0034】
(緩衝線)
本実施形態では、図6に示すように、吸収体20は、長さ方向一端から長さ方向他端に向けて直線状に延びる折り目状の緩衝線を備えている。該緩衝線としては、第1シート60、第2シート70、及び第3シート80の少なくとも1つにおいて、幅方向中心から長さ方向に延びる中央緩衝線A(以下単に「緩衝線A」ともいう)、幅方向一端部付近から長さ方向に延びる一端部緩衝線B(以下単に「緩衝線B」ともいう)、幅方向他端部付近から長さ方向に延びる他端部緩衝線(以下単に「緩衝線C」ともいう)等が挙げられる。ここで、緩衝線B、及び緩衝線Cは、それぞれ、1本でも複数本でもよい。また、緩衝線Aと同じ位置にある幅方向の中心線からの幅方向の距離が異なる位置に、緩衝線B及び/又は緩衝線Cをそれぞれ1又は複数本設けてもよい。
【0035】
図6は、第1シート60、第2シート70、及び第3シート80に、緩衝線A、緩衝線B、及び緩衝線Cの少なくとも1つを設けた状態の吸収体20を示す模式平面図である。図6(a)に示すように、第1シート60は、1本の緩衝線Aを有する。図6(b)に示すように、第2シート70は、緩衝線A、緩衝線B、及び緩衝線Cをそれぞれ1本ずつ有する。緩衝線B、及び緩衝線Cは、緩衝線A(又は幅方向中心線)を対称軸にして幅方向に対称な位置に設けてある。図6(c)に示すように、第3シート80は、1本緩衝線A、2本の緩衝線B、及び2本の緩衝線Cを有する。緩衝線Bには、幅方向外側に位置する外側緩衝線Bと、幅方向内側に位置する内側緩衝線Bとがある。同様に、緩衝線Cには、幅方向外側に位置する外側緩衝線Cと、幅方向内側に位置する内側緩衝線Cとがある。外側緩衝線B、及び外側緩衝線Cは、緩衝線A(又は幅方向中心線)を対称軸にして幅方向に対称な位置に設けてあり、内側緩衝線B、及び内側緩衝線Cは、緩衝線A(又は幅方向中心線)を対称軸にして幅方向に対称な位置に設けてある。
【0036】
好ましい実施形態では、図7(a)に示すように、3シート積層体において、第1シート60には緩衝線Aが設けられ、第2シート70には、緩衝線Aが設けられるとともに、第1シート60の幅方向両側の縁辺に沿うように緩衝線B及び緩衝線Cが設けられ、第3シート80には、緩衝線Aが設けられるとともに、3シート積層体を透視したときに、第1シート60の幅方向両側の縁辺と厚み方向に重なるように内側緩衝線B及び内側緩衝線Cが設けられ、さらに、第2シート70の幅方向両側の縁辺に沿うように外側緩衝線B及び外側緩衝線Cが設けられている。
【0037】
図7(a)に示す吸収体20の変形を、図7(b)で示している。図7では、第1シート60、第2シート70、及び第3シート80に含まれる肌側及び非肌側の親水性不織布の図示を省略している。上述のように、吸収体20を構成する第1シート60は第1剛性緩衝部61、62と共に緩衝線Aを有し、第2シート70は第2剛性緩衝部71、72と共に緩衝線A、緩衝線B及び緩衝線Cをそれぞれ1本ずつ有し、第3シート80は第3剛性緩衝部81、82と共に緩衝線A、2本の緩衝線B及び2本の緩衝線Cを有している。
【0038】
図7(b)に示すように、吸収性物品50を身体に着用したとき、吸収体20はトップシート10を介して着用者の股間部に対面し、股間部の形状に合わせて変形する。このとき、第1剛性緩衝部61、62、第2剛性緩衝部71、72及び第3剛性緩衝部81、82がそれぞれ肌側親水性不織布(不図示)の非肌側面付近を起点にして幅方向に拡がる。これでも、吸収体20の着用者の股間部へのフィット性は十分に向上するが、ここでは第1シート60、第2シート70、及び第3シート80に設けられた緩衝線A、緩衝線B、及び緩衝線Cに沿ってジグザグに折れ曲がり、着用者の股間部の形状に合わせて吸収体20を変形させる。その結果、吸収体20を備えた吸収性物品50は、着用者の股間部に密接にフィットし、非常に良好な、付けていないようなフィット性を実現できる。
【0039】
(親水性不織布)
第1シート60、第2シート70、及び第3シート80の肌側及び非肌側に用いられる親水性不織布としては、この分野で常用されるものをいずれも使用でき、例えば、サーマルボンド不織布、スパンボンド不織布、エアレイド不織布、エアスルー不織布、パルプ含有不織布等が挙げられる。親水性不織布の坪量は20g/m以上80g/m以下の範囲である。これらの親水性不織布の中でも、体液拡散性や強度の観点から、エアスルー不織布が好ましい。エアスルー不織布を構成する繊維の太さは、例えば、1.6dtex以上14dtex以下の範囲、1.8dtex以上9.0dtex以下の範囲又は2.0dtex以上6.0dtex以下の範囲である。
【0040】
(SAP中間層)
SAP中間層63は、第1剛性緩衝部61、62と、その周囲に設けられた通常散布域(不図示)と、を含む。SAP中間層73は、第2剛性緩衝部71、72と、その周囲に設けられた通常散布域(不図示)と、を含む。SAP中間層83は、第1剛性緩衝部81、82と、その周囲に設けられた通常散布域(不図示)と、を含む。SAP中間層63、73、83に含まれる高吸収性ポリマーとしては、尿等の体液を吸収し、かつ、体液の逆流を防止できるものであれば特に制限はなく、ポリアクリル酸塩、ポリアスパラギン酸塩、(デンプン・アクリル酸)グラフト共重合体、(アクリル酸・ビニルアルコール)共重合体、(イソブチレン・無水マレイン酸)共重合体及びそのケン化物等が挙げられる。これらの中でも、重量当たりの吸収量の観点から、ポリアクリル酸塩が好ましく、ポリアクリル酸ナトリウムがより好ましい。通常散布域の高吸収性ポリマーの目付は、例えば、150g/m以上800g/m以下の範囲であり、第1剛性緩衝部61、62、第2剛性緩衝部71、72、及び第3剛性緩衝部81、82はそれよりも低目付である。
【0041】
また、粉体としての流動性が悪い微粉末の高吸収性ポリマーの使用を避けることにより、吸収に関する基本性能を高め、かつ、高吸収性シート60、70、80が硬くなることにより発生するごつごつとした触感を低減する観点から、高吸収性ポリマーとしては中位粒子径を有する粒子状の高吸収性ポリマーを用いることが好ましい。該中位粒子径は、例えば、50μm以上600μm以下の範囲又は100μm以上500μm以下の範囲である。
【0042】
高吸収性ポリマーは、ホットメルト接着剤により、SAP中間層63、73、83に固着担持されている。なお、高吸収性ポリマーの吸収性を阻害せず、かつ、着用時の肌触りを損なわないという観点から、ホットメルト接着剤の含有量は例えば10g/m以下の範囲である。ホットメルト接着剤としては融点が100℃以上180℃以下のものを特に限定なく使用でき、例えば、スチレン-ブタジエン-スチレン系共重合体、スチレン-イソプレン-スチレン系共重合体等の合成ゴム系ホットメルト接着剤、エチレン-酢酸ビニル共重合体等のオレフィン系ホットメルト接着剤等が挙げられる。ホットメルト接着剤の塗布方法としては、ノズルから溶融状態のホットメルト接着剤を非接触式で塗布するカーテンコート法やスパイラル法、接触式で塗布するスロット法等、公知の方法が利用できる。
【0043】
本実施形態では、高吸収性ポリマーの脱落防止や吸収体20の形状の安定化等の観点から、吸収体20の全体を包むキャリアシート(不図示)を用いてもよい。キャリアシートの基材としては親水性を有するものであればよく、ティシュー、吸収紙、エアレイド不織布等の親水性不織布等が挙げられる。キャリアシートを複数備える場合は、複数のキャリアシートの基材は同一のものであっても異なるものであってもよい。
【0044】
(バックシート)
バックシート30は、吸収体20が保持している体液が衣類を濡らさないような液不透過性を備えた基材を用いて形成されればよく、該基材としては、例えば、樹脂フィルム、樹脂フィルムと不織布との積層体である複合シート等が挙げられる。複合シートに用いられる不織布としては、製法を特に限定せず、例えば、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布、スパンボンド不織布/メルトブロー不織布の積層体である複合不織布、スパンボンド不織布/メルトブロー不織布/スパンボンド不織布の積層体である複合不織布、これらの2種以上の積層体である複合材料等が挙げられる。また、樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリエチレン、ポリプロピレン等のフィルム、ポリエチレンとポリプロピレンとの複合フィルム等が挙げられる。
【0045】
バックシート30の坪量は、例えば強度及び加工性の点から、15g/m以上40g/m以下の範囲である。また、装着時の蒸れを防止する観点から、通気性を有するバックシート30が好ましい。バックシート30に通気性を付与するには、例えば、樹脂フィルムにフィラーを配合する方法、バックシート30に穿孔のためにエンボス加工を施す方法等を利用できる。ここで、フィラーとしては炭酸カルシウムが挙げられ、フィラーを公知の方法に従って配合できる。
【0046】
(立体ギャザー)
吸収性物品50は、図1に示すように、例えば、使用者の排泄した体液の横漏れを防止するため、吸収性物品50の長手方向に沿って、トップシート10の肌側面の両側端部付近に、一対の立体ギャザー40を備えている。本実施形態の立体ギャザー40は、幅方向一端がバックシート30の肌側面の両側端部付近に固定され、幅方向途中部がトップシート10の肌側面の両側端部付近に固定され、その幅方向他端はトップシート10に固定されない自由端40aである。自由端40a付近に弾性伸縮部材(不図示)を長手方向に沿って配設すると、自由端40aに起立性を付与し、着用者の体型に合わせて変形可能なものとなる。
【0047】
立体ギャザー40の幅方向一端の固定位置は、本実施形態に限定されず、例えば、バックシート30の非肌側面の幅方向両端付近、トップシート10とバックシート30との各縁辺を部分的又は全体的に接合し、内部に吸収体20を収納した袋体の幅方向両端付近、トップシート10の肌側面の幅方向両端付近等が挙げられる。なお、本実施形態の吸収性物品50は、立体ギャザー40を含まない実施形態をも包含する。
【0048】
立体ギャザー40を構成するシート部材としては、疎水性繊維にて形成された撥水性及び/又は液不透過性の不織布を特に限定なく使用でき、例えば、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布、スパンボンド不織布/メルトブロー不織布/スパンボンド不織布の積層体である複合不織布等が挙げられる。弾性伸縮部材としては、この分野での常用品を特に限定なく使用でき、例えば、ポリウレタン糸、帯状のポリウレタンフィルム、糸状又は帯状の天然ゴム等が挙げられる。
【0049】
<吸収性物品の製造方法>
吸収性物品50は、公知の製造方法により製造できるが、例えば、吸収体20をトップシート10とバックシート30との間に配置する工程と、トップシート10とバックシート30とを一部又は全周に亘ってホットメルト接着剤やヒートエンボス、超音波エンボス、高周波エンボス等を用いて固定する工程と、バックシート30及びトップシート10の所定位置に立体ギャザー40を設置する工程と、を含む製造方法が挙げられる。そして、吸収性物品50が尿取りパッドや軽失禁パッドである場合は、これを包装体に個別包装した後、長手方向に3つ折りにして折りたためばよい。また、レッグギャザー、ウエストギャザー、サイドフラップ等を必要に応じて設けることができる。
【0050】
以上、本発明を、実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記の実施形態に記載の発明の範囲には限定されないことは言うまでもなく、上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。また、そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【実施例
【0051】
以下、本実施形態について、実施例及び比較例を挙げて詳細に説明する。なお、本実施形態は、以下に示す実施例に何ら限定されるものではない。
【0052】
(実施例1及び比較例1~5)
トップシートとしてエアスルー不織布(坪量25g/m)を用い、表1、2、3に記載の構成を有する吸収体を用い、液不透過性のバックシートとして、通気性ポリエチレンシート(坪量30g/m)を用い、立体ギャザーとして、スパンボンド不織布/メルトブローン不織布/スパンボンド不織布の積層体である複合不織布(坪量15g/m)を用いて、実施例1及び比較例1~5のパッドタイプ紙おむつである吸収性物品を作製した。なお、比較例1では、表1及び表2に示すように、フラッフパルプと高吸収性ポリマーとからなる層を2層積層したフラッフパルプ吸収体を吸収体として用いた。
【0053】
実施例1及び比較例1~5のパッドタイプ紙おむつについて、次の評価を実施した。結果を表4に示す。
〔荷重下厚み〕)
35gf/cmの荷重下における吸収体中央の厚みを測定した。
〔モニターの装着感評価〕
実施例1及び比較例1~5のパッドタイプ紙おむつについて、被介護者及び介護者モニター回答を得、装着感及びモレの有無を評価した。
ある施設において比較的尿量の多い8人の被介護者モニターの協力の下、実施例1及び比較例1~5のパッドタイプ紙おむつを着用してもらい、一晩装着時の装着感を評価し、1週間使用を継続し、次の基準で評価した。
「違和感が少ない」の評価が6人以上8人以下のときを「〇」、「違和感が少ない」の評価が3人以上5人以下のときを「△」、「違和感が少ない」の評価が1人若しくは2人のとき又は「違和感が少ない」の評価が1人もいないときを「×」とした。
また、モレの有無については、介護者モニターが被介護者モニターのモレの状態を確認し、「モレが少ない」の評価が6人以上8人以下のときを「〇」、「モレが少ない」の評価が3人以上5人以下のときを「△」、「モレが少ない」の評価が1人若しくは2人のとき又は「違和感が少ない」の評価が1人もいないときを「×」とした。
【0054】
〔吸収速度(繰返し吸収速度)〕
実施例1及び比較例1~5のパッドタイプ紙おむつを平面に伸ばして広げた状態で固定し、その肌側面の幅方向、長さ方向の中央に内径30mmの筒状の吸収速度治具を設置し、1回あたり150mlの0.9%生理食塩水を注入し、紙おむつ表面に液面が吸収されるまでの時間を計測した。吸収後から3分後に次の150mlを注入し、同様に吸収されるまでの時間を計測した。この操作を繰り返し、150ml×3回の吸収に要する時間の合計を吸収速度(秒)とした。吸収速度治具の重量により35g/cm加圧下で測定を行った。
【0055】
〔逆戻り量〕
実施例1及び比較例1~5のパッドタイプ紙おむつを平面に伸ばして広げた状態で固定し、パッドタイプ紙おむつの肌側面の幅方向、長さ方向の中央に0.9%生理食塩水150mlを3分間隔で8回注水し、注水完了後10分間静置した。パッドタイプ紙おむつの肌側面の幅方向、長さ方向の中央に濾紙を置き、さらにその上へ35g/m荷重となる重りを置いて1分間静置した。その後に重りを取りのぞき、濾紙が吸収した0.9%生理食塩水の重量を、吸収前後の重量差より求め、逆戻り量(ウエットバック、g)とした。
【0056】
【表1】
【0057】
【表2】
【0058】
【表3】
【0059】
【表4】
【0060】
より具体的には、実施例1及び比較例1~6の各吸収体は、次のような結果を有するものであった。
(実施例1)吸収体は、肌側から非肌側に向けて高吸収性シートの幅が広がる3シート積層構造と、第1剛性緩衝部、第2剛性緩衝部及び第3剛性緩衝部の働きにより、吸収体の装着感、フィット性が向上した。
(比較例1)フラッフパルプ吸収体の2層積層体である吸収体は、着用したときに、厚くて違和感があり、吸収後に着用による負荷で第1剛性緩衝部が変形し潰れてしまい、モレに至った。
(比較例2)肌側から非肌側に向けて高吸収性シートの幅を狭めた3シート積層構造である吸収体は、フィット性が悪く、違和感があり、適正な着用状態がとれず、第1剛性緩衝部が尿の拡散を促進できず、モレが見られた。
(比較例3)第1、第2、第3剛性緩衝部が厚み方向に重ならない吸収体は、フィット性は良好であるものの、着用状態で第1剛性緩衝部に起因するシワが幅方向に発生し、モレに至った。
(比較例4)第1、第2、第3剛性緩衝部が厚み方向に完全に重なる吸収体は、吸収後に着用者の股間部付近でヨレが生じ、濡れ感がより一層感じられ、該股間部に対面する吸収体の股部中央付近に吸収の偏りがみられた。
(比較例5)第1、第2及び第3シートが中央緩衝線及び端部緩衝線を有しない吸収体は、吸収後に幅方向端部まで膨潤して稼働域への剛性が高まり、違和感が強くなった。
(比較例6)
第1剛性緩衝部の高吸収性ポリマーの目付を100g/mとした吸収体は、第1剛性緩衝部の変形性が不十分で違和感が生じ、また、繰り返し吸収後の体液拡散が乏しくモレに至った。
【符号の説明】
【0061】
10 トップシート
20 吸収体
30 バックシート
40 立体ギャザー
40a 自由端
50 吸収性物品
60 第1シート
61、62 第1剛性緩衝部
63 SAP中間層
70 第2シート
71、72 第2剛性緩衝部
73 SAP中間層
80 第3シート
81、82 第3剛性緩衝部
83 SAP中間層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7