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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】インクジェットプリンタ
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20240305BHJP
   F26B 3/02 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
B41J2/01 125
B41J2/01 305
F26B3/02
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020134646
(22)【出願日】2020-08-07
(65)【公開番号】P2022030550
(43)【公開日】2022-02-18
【審査請求日】2023-05-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000116057
【氏名又は名称】ローランドディー.ジー.株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121500
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100189887
【弁理士】
【氏名又は名称】古市 昭博
(72)【発明者】
【氏名】徳永 行洋
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 昭洋
【審査官】牧島 元
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-215428(JP,A)
【文献】特開2011-051131(JP,A)
【文献】特開2019-147370(JP,A)
【文献】特開2010-158839(JP,A)
【文献】特開2001-235930(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01 - 2/215
F26B 3/02
B41J 29/377
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体が載置されるプラテンと、
前記プラテンより上方に配置され、主走査方向に移動可能なキャリッジと、
前記キャリッジに搭載され、前記主走査方向と直交する副走査方向に搬送される前記記録媒体にインクを吐出するインクヘッドと、
前記プラテンより前記副走査方向の下流側に配置され、上面が前記副走査方向の上流側から前記下流側に向けて斜め下方に傾き、前記記録媒体の移動をガイドするガイド部材と、
前記ガイド部材の少なくとも一部の上方に配置され、前記ガイド部材によってガイドされる前記記録媒体に向けて風を送る乾燥装置と、を備え、
前記乾燥装置は、
前記主走査方向に延びる本体ケースと、
前記本体ケースに設けられたファンと、を備え、
前記本体ケースは、
前記本体ケースの前記主走査方向の一方側の端部に形成された吸気口と、
前記本体ケースに形成され、前記主走査方向に延びかつ前記ガイド部材に向けて開口する排気口と、
前記本体ケースを、前記吸気口を含む第1室と、前記第1室よりも前記副走査方向の前記上流側に位置しかつ前記排気口を含む第2室とに仕切り、かつ、前記第1室と前記第2室とを連通する前記主走査方向に並ぶ複数の連通孔が形成された仕切り壁と、を備え、
前記ファンは、前記吸気口の側方に位置するように前記第1室に配置され、前記吸気口から空気を吸引して複数の前記連通孔を介して前記排気口から空気を排出させるように構成され、
前記吸気口、前記ファンおよび複数の前記連通孔は、前記主走査方向の一方側から他方側に向けてこの順で並ぶように配置され、
複数の前記連通孔は、前記ファンから離れるほど前記連通孔同士の間隔が広くなるように形成されている、インクジェットプリンタ。
【請求項2】
複数の前記連通孔は、前記ファンから離れるほど前記主走査方向の長さが短くなるように形成されている、請求項1に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項3】
前記本体ケースは、前記仕切り壁よりも上方かつ少なくとも一部が前記副走査方向の前記上流側に位置する上壁と、前記上壁の前記副走査方向の前記上流側の端部から下方に延びる後壁と、前記上壁よりも下方かつ前記仕切り壁よりも前記副走査方向の前記上流側に位置する下壁と、前記後壁と前記下壁との間に設けられた隙間と、を有し、
前記上壁、前記後壁、前記仕切り壁および前記下壁は、前記第2室を区画し、
前記排気口は、前記隙間に形成され、かつ、複数の前記連通孔より下方に位置する、請求項1または2に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項4】
前記本体ケースは、前記排気口よりも前記副走査方向の前記下流側に位置し、かつ、前記下壁から上方かつ前記主走査方向に延びる縦壁を有する、請求項3に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項5】
前記下壁は、前記副走査方向の前記上流側から前記下流側に向けて斜め下方に傾く第1部分を有している、請求項3または4に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項6】
前記下壁は、前記第1部分の前記副走査方向の前記下流側の端部から下方に向けて延びる第2部分を有している、請求項5に記載のインクジェットプリンタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、インクジェット方式によって記録媒体に印刷するインクジェットプリンタが知られている。この種のインクジェットプリンタは、例えば、記録媒体が載置されるプラテンと、プラテンに載置された記録媒体にインクを吐出するインクヘッドとを備えている。また、使用するインクの種類によっては、記録媒体に吐出されたインクを乾燥させるヒーターやファン等の乾燥装置を備えたインクジェットプリンタも存在する。
【0003】
例えば、特許文献1には、記録媒体に吐出されたインクの乾燥を促進する手段として複数のファンを有する乾燥装置を備えたインクジェットプリンタが開示されている。かかる乾燥装置は、記録媒体の上方から記録媒体に向けて風を送るように構成されているため、記録媒体に吐出されたインクの乾燥を効率的に行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-159482号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に開示された乾燥装置では、インクヘッドの移動方向である主走査方向に複数のファンを並べることによって、記録媒体に向けて風量のムラなく(好ましくは均一に)風を送ることができる。しかしながら、ファンを複数個設ける必要があるため、乾燥装置が大型化する傾向にある。また、プラテンの主走査方向の長さが長くなるほど、ファンの数を増やす必要があるため、プリンタの大型化に伴い乾燥装置も大型化してしまう虞がある。
【0006】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、記録媒体に吐出されたインクの乾燥を促進させると共に大型化を抑制することが可能な乾燥装置を備えたインクジェットプリンタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るインクジェットプリンタは、記録媒体が載置されるプラテンと、前記プラテンより上方に配置され、主走査方向に移動可能なキャリッジと、前記キャリッジに搭載され、前記主走査方向と直交する副走査方向に搬送される前記記録媒体にインクを吐出するインクヘッドと、前記プラテンより前記副走査方向の下流側に配置され、上面が前記副走査方向の上流側から前記下流側に向けて斜め下方に傾き、前記記録媒体の移動をガイドするガイド部材と、前記ガイド部材の少なくとも一部の上方に配置され、前記ガイド部材によってガイドされる前記記録媒体に向けて風を送る乾燥装置と、を備えている。前記乾燥装置は、前記主走査方向に延びる本体ケースと、前記本体ケースに設けられたファンと、を備えている。前記本体ケースは、前記本体ケースの前記主走査方向の一方側の端部に形成された吸気口と、前記本体ケースに形成され、前記主走査方向に延びかつ前記ガイド部材に向けて開口する排気口と、前記本体ケースを、前記吸気口を含む第1室と、前記第1室よりも前記副走査方向の前記上流側に位置しかつ前記排気口を含む第2室とに仕切り、かつ、前記第1室と前記第2室とを連通する前記主走査方向に並ぶ複数の連通孔が形成された仕切り壁と、を備えている。前記ファンは、前記吸気口の側方に位置するように前記第1室に配置され、前記吸気口から空気を吸引して複数の前記連通孔を介して前記排気口から空気を排出させるように構成されている。前記吸気口、前記ファンおよび複数の前記連通孔は、前記主走査方向の一方側から他方側に向けてこの順で並ぶように配置されている。複数の前記連通孔は、前記ファンから離れるほど前記連通孔同士の間隔が広くなるように形成されている。
【0008】
本発明のインクジェットプリンタによると、乾燥装置は吸気口の側方に配置されたファンによって吸気口から空気を吸引して、第1室内において主走査方向に空気を流すことができる。そして、第1室内を流れる空気は、複数の連通孔を介して排気口から記録媒体に向けて排出される。ここで、複数の連通孔はファンから離れるほど連通孔同士の間隔が広くなるように形成されているため、ファンから主走査方向に送られる空気が各連通孔を通過するときの空気量が凡そ同じとなる。そして、連通孔を通過した空気は第2室において整流されて主走査方向に延びる排気口から排出されるため、記録媒体の主走査方向に亘って凡そ均一な風を送ることができる。これにより、記録媒体の全体に亘って記録媒体の乾燥を促進することができる。なお、排出口を複数設け、各排出口にファンを配置することによっても記録媒体の主走査方向に亘って凡そ均一な風を送ることができる。しかしながら、この場合には、排出口の数だけファンが必要となり、乾燥装置が大型化する虞がある。一方で、印刷後の乾燥に必要な風の強さは微弱であって、排出口に設けたファンは微弱な風を送るだけのために設ける必要があり、ファンが有する能力を最大限活用することができないため、改善が望まれていた。そこで、上述のように、本体ケースを第1室と第2室とに仕切る仕切り壁に形成された複数の連通孔の配置を適切に設定することで、本体ケースに複数のファンを設けなくても、吸気口の側方に配置されたファンによって記録媒体に凡そ均一な風を送ることができ、乾燥装置の大型化を抑制することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、記録媒体に吐出されたインクの乾燥を促進させると共に大型化を抑制することが可能な乾燥装置を備えたインクジェットプリンタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一実施形態に係るプリンタの斜視図である。
図2】一実施形態に係るプリンタの正面図である。
図3A図2中のA-Aに沿う断面図である。
図3B】一実施形態に係る乾燥装置の断面図である。
図4】一実施形態に係る乾燥装置の断面斜視図である。
図5図3B中のB-B線に沿う断面図である。
図6図3B中のC-C線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係るインクジェットプリンタ(以下単に「プリンタ」と称する)について説明する。なお、ここで説明される実施形態は、当然ながら特に本発明を限定することを意図したものではない。また、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付し、重複する説明は適宜省略または簡略化する。
【0012】
図1は、本実施形態に係るプリンタ10を示す斜視図である。プリンタ10は、記録媒体5(図2参照)に印刷を行う。記録媒体5は、例えば、記録紙である。ただし、記録媒体5は、記録紙に限定されない。記録媒体5には、普通紙やインクジェット用印刷紙等の紙類以外に、ポリ塩化ビニル(PVC)やポリエステル等の樹脂材料から形成されたものや、アルミや鉄等から形成された金属板、ガラス板、木材板および段ボール等から形成されたものが含まれる。
【0013】
以下の説明では、左、右、上、下とは、プリンタ10の正面にいる作業者から見た左、右、上、下をそれぞれ意味することとする。また、作業者がプリンタ10の正面を向いているときにプリンタ10の後部から作業者に向かう方向を前方、作業者からプリンタ10の後部に向かう方向を後方とする。図面中の符号F、Rr、L、R、U、Dは、それぞれ前、後、左、右、上、下を表す。後述するキャリッジ30(図2参照)は、左方および右方に移動可能に設けられている。プリンタ10の後側を上流側と称し、プリンタ10の前側を下流側としたとき、記録媒体5は、上流側から下流側に向けて搬送される。本実施形態では、キャリッジ30の移動方向を主走査方向Yといい、記録媒体5の搬送方向を副走査方向Xという。ここでは、主走査方向Yは左右方向に対応し、副走査方向Xは前後方向に対応する。主走査方向Yと副走査方向Xとは直交している。ただし、主走査方向Yおよび副走査方向Xは特に限定される訳ではなく、プリンタ10の形態等に応じて適宜に設定可能である。
【0014】
図1に示すように、プリンタ10は、本体部10aと、脚11と、操作パネル12と、を備えている。本体部10aは、主走査方向Yに延びたケーシングを有する。脚11は、本体部10aを支持するものであり、本体部10aの下面に設けられている。操作パネル12は、例えば本体部10aの右側の前面に設けられている。ただし、操作パネル12の位置は特に限定されない。操作パネル12は、ユーザが印刷に関する操作を行うものである。図示は省略するが、操作パネル12には、例えば、解像度、インクの濃さなどの印刷に関する情報や、印刷中のプリンタ10のステータスなどが表示される表示部、および、印刷に関する情報を入力するための入力部などが備えられている。
【0015】
図3Aに示すように、プリンタ10は、プラテン16を備えている。プラテン16には、記録媒体5が載置される。記録媒体5への印刷は、プラテン16上で行われる。プラテン16は主走査方向Yに延びている。プラテン16は、本体部10aの中央部に設けられている。プラテン16は、上面16Aが平坦状に形成されている。
【0016】
図3Aに示すように、プリンタ10は、上流側ガイド部材17および下流側ガイド部材18を備えている。上流側ガイド部材17は、プラテン16より後方(即ち副走査方向Xの上流側)に配置されている。上流側ガイド部材17の上面17Aは後方から前方(即ち副走査方向Xの上流側から下流側)に向けて斜め上方に傾いている。上流側ガイド部材17は、例えば横断面円弧状に形成されている。上流側ガイド部材17は、プラテン16から離れるほど下方に向かうように湾曲している。上流側ガイド部材17は、記録媒体5の移動をガイドする。即ち、上流側ガイド部材17は、プラテン16への記録媒体5の移動をガイドする。下流側ガイド部材18は、プラテン16より前方(即ち副走査方向Xの下流側)に配置されている。下流側ガイド部材18の上面18Aは後方から前方(即ち副走査方向Xの上流側から下流側)に向けて斜め下方に傾いている。下流側ガイド部材18は、例えば横断面円弧状に形成されている。下流側ガイド部材18は、プラテン16から離れるほど下方に向かうように湾曲している。下流側ガイド部材18は、記録媒体5の移動をガイドする。即ち、下流側ガイド部材18は、プラテン16からの記録媒体5の移動をガイドする。ここでは、下流側ガイド部材18は、プラテン16に載置された記録媒体5を巻き取る巻き取り装置19(図1参照)に記録媒体5をガイドする。下流側ガイド部材18は、ガイド部材の一例である。
【0017】
図2に示すように、プリンタ10は、インクを吐出するインクヘッド35を備えている。インクヘッド35は、副走査方向Xに搬送される記録媒体5にインクを吐出する。インクヘッド35は、プラテン16より上方に配置されている。インクヘッド35は、主走査方向Yに移動可能に設けられている。本実施形態では、インクヘッド35は、図示しないインク供給路によって、インクカートリッジ37と接続されている。インクカートリッジ37は、例えば本体部10aの左端部に着脱可能に配置されている。なお、インクの材料は何ら限定されず、従来からインクジェットプリンタのインクの材料として用いられている各種の材料を使用することができる。上記インクは、例えば、ソルベント系(溶剤系)顔料インクや水性顔料インクであってもよいし、水性染料インク、あるいは、紫外線を受けて硬化する紫外線硬化型顔料インクなどであってもよい。
【0018】
図2に示すように、プリンタ10は、ヘッド移動機構31と、媒体搬送機構32とを備えている。ヘッド移動機構31は、プラテン16に載置された記録媒体5に対してインクヘッド35を相対的に主走査方向Yに移動させる機構である。本実施形態では、ヘッド移動機構31は、インクヘッド35を主走査方向Yに移動させる。ここでは、ヘッド移動機構31は、ガイドレール20と、第1プーリ21と、第2プーリ22と、無端状のベルト23と、第1駆動モータ24と、キャリッジ30と、を有している。ガイドレール20は、キャリッジ30の主走査方向Yへの移動をガイドするものである。図3Aに示すように、ガイドレール20は、プラテン16の上方に配置されている。図2に示すように、ガイドレール20は、主走査方向Yに延びている。第1プーリ21は、ガイドレール20の左端部分に設けられている。第2プーリ22は、ガイドレール20の右端部分に設けられている。ベルト23は、第1プーリ21と第2プーリ22とに巻き掛けられている。本実施形態では、第2プーリ22には、第1駆動モータ24が接続されている。ただし、第1駆動モータ24は、第1プーリ21に接続されていてもよい。第1駆動モータ24が駆動して、第2プーリ22が回転することで、第1プーリ21と第2プーリ22との間においてベルト23が走行する。
【0019】
キャリッジ30は、ベルト23に取り付けられている。キャリッジ30は、プラテン16より上方に配置されている。図3Aに示すように、キャリッジ30は、ガイドレール20に係合しており、ガイドレール20に摺動自在に設けられている。キャリッジ30には、インクヘッド35が搭載されている。本実施形態では、ヘッド移動機構31は、第1駆動モータ24の駆動によってベルト23が走行して、キャリッジ30が主走査方向Yに移動することに伴い、キャリッジ30に搭載されたインクヘッド35を主走査方向Yに移動させる。
【0020】
媒体搬送機構32は、プラテン16に載置された記録媒体5をインクヘッド35に対して相対的に副走査方向Xに移動させるものである。ここでは、媒体搬送機構32は、プラテン16に載置された記録媒体5を副走査方向Xに移動させる。なお、媒体搬送機構32の構成は特に限定されない。図3Aに示すように、本実施形態では、媒体搬送機構32は、グリットローラ25と、ピンチローラ26と、グリットローラ25を駆動する第2駆動モータ(図示せず)とを有している。グリットローラ25は、プラテン16に設けられている。ここでは、グリットローラ25の少なくとも一部はプラテン16に埋設されている。ピンチローラ26は、記録媒体5を上から押さえつけるものである。ピンチローラ26は、グリットローラ25の上方に配置されている。ピンチローラ26は、グリットローラ25と対向する位置に設けられている。ピンチローラ26は、上下方向に移動可能に構成されている。グリットローラ25とピンチローラ26との間に記録媒体5が挟まれた状態で、第2駆動モータが駆動してグリットローラ25が回転すると、記録媒体5は副走査方向Xに搬送される。なお、グリットローラ25およびピンチローラ26のそれぞれの設置位置および数は特に限定されない。
【0021】
図1に示すように、プリンタ10は、乾燥装置50を備えている。乾燥装置50は、記録媒体5に吐出されたインクを乾燥させる装置である。乾燥装置50は、下流側ガイド部材18によってガイドされる記録媒体5に向けて風を送る。図3Aに示すように、乾燥装置50は、プラテン16より前方(即ち副走査方向Xの下流側)に配置されている。乾燥装置50は、下流側ガイド部材18の少なくとも一部の上方に配置されている。乾燥装置50の一部は、平面視で下流側ガイド部材18と重なる。図2に示すように、乾燥装置50の一部は、正面視で下流側ガイド部材18と重なる。乾燥装置50は、本体部10aに着脱可能に設けられている。
【0022】
図1に示すように、乾燥装置50は、主走査方向Yに延びる本体ケース51と、本体ケース51に設けられたファン55(図5参照)と、を備えている。本体ケース51は、本体ケース51の右端部に形成された吸気口52と、本体ケース51に形成された排気口53(図4参照)と、本体ケース51を第1室61(図4参照)と第2室62(図4参照)とに仕切る仕切り壁54(図4参照)と、を備えている。
【0023】
図1に示すように、本体ケース51は、主走査方向Yに延びかつ上下方向に延びる前壁51Aと、前壁51Aの上端から後方(即ち副走査方向Xの上流側)に延びる上壁51Bと、上壁51Bの後端から下方に延びる後壁51C(図3B参照)と、前壁51Aの下端から後方(即ち副走査方向Xの上流側)に延びる第1下壁51D(図3B参照)と、上壁51Bよりも下方かつ仕切り壁54よりも後方(即ち副走査方向Xの上流側)に位置する第2下壁51E(図3B参照)と、前壁51Aの右端から後方に延びる右壁51Fと、前壁51Aの左端から後方に延びる左壁51G(図5参照)と、第2下壁51Eから上方に延びる縦壁51H(図4参照)と、を有する。前壁51A、上壁51B、仕切り壁54、第1下壁51D、右壁51Fおよび左壁51Gは、第1室61(図4参照)を区画している。上壁51B、仕切り壁54、後壁51C、第2下壁51E、右壁51Fおよび左壁51Gは、第2室62(図4参照)を区画している。第2室62は、第1室61より後方に位置する。
【0024】
図4に示すように、上壁51Bは、仕切り壁54より上方に位置する。上壁51Bの一部は、仕切り壁54より後方(即ち副走査方向Xの上流側)に位置する。上壁51Bの他の一部は、仕切り壁54より前方(即ち副走査方向Xの下流側)に位置する。上壁51Bは、主走査方向Yおよび副走査方向Xに延びる。後壁51Cは、上壁51Bの後端から後方に向けて斜め下方に傾く第1部分51CAと、第1部分51CAの下端から前方に向けて斜め下方に傾く第2部分51CBとを有する。第1下壁51Dは、主走査方向Yおよび副走査方向Xに延びる。第2下壁51Eは、主走査方向Yに延びる。第2下壁51Eは、後方から前方に向けて斜め下方に傾く第1部分51EAと、第1部分51EAの前端から下方に向けて延びる第2部分51EBとを有する。縦壁51Hは、主走査方向Yに延びる。縦壁51Hは、排気口53よりも前方に位置する。縦壁51Hの上端は、連通孔65より下方に位置する。
【0025】
図1に示すように、吸気口52は、本体ケース51の右端部に形成されている。より詳細には、吸気口52は、本体ケース51の前壁51Aの右端部および右壁51Fにそれぞれ形成されている。前壁51Aに形成された吸気口52は前方に向けて開口する。右壁51Fに形成された吸気口52は右方に向けて開口する。なお、吸気口52が開口する方向は上記の方向に限定されない。吸気口52は、スリット状に形成されている。吸気口52は、第1室61(図3A参照)に含まれる。吸気口52は、本体ケース51の外部と第1室61とを連通する。なお、吸気口52は、本体ケース51の左端部に形成されていてもよい。
【0026】
図3Bに示すように、本体ケース51は、後壁51Cと第2下壁51Eとの間に設けられた隙間を有している。排気口53は、隙間に形成されている。排気口53は、上記隙間の幅で主走査方向Yに延びかつ下流側ガイド部材18に向けて開口する。本実施形態では、排気口53は下方に向けて開口する。排気口53は、スリット状に形成されている。排気口53は、後述する複数の連通孔65より下方に位置する。排気口53は、下流側ガイド部材18の上方に位置する。排気口53は、第2室62に含まれる。排気口53は、第2室62と本体ケース51の外部とを連通する。
【0027】
図3Bに示すように、仕切り壁54は、副走査方向Xに関して前壁51Aと後壁51Cとの間に位置する。仕切り壁54は、主走査方向Yおよび上下方向に延びる。図5に示すように、仕切り壁54には、第1室61と第2室62とを連通する複数の連通孔65が形成されている。連通孔65は、主走査方向Yに並ぶ。連通孔65は、矩形状に形成されている。図6に示すように、連通孔65は、仕切り壁54の上部に形成されている。本実施形態では、連通孔65は、第1連通孔65A~第7連通孔65Gを含む。第1連通孔65A~第7連通孔65Gは、右方から左方に向けてこの順で形成されている。以下の説明では第1連通孔65A~第7連通孔65Gをまとめて連通孔65と称することがある。なお、連通孔65の数は7個に限定されない。図5に示すように、複数の連通孔65は、ファン55から離れるほど連通孔65同士の間隔が広くなるように形成されている。より詳細には、第1連通孔65Aと第2連通孔65Bとの間隔をL1とし、第2連通孔65Bと第3連通孔65Cとの間隔をL2とし、第3連通孔65Cと第4連通孔65Dとの間隔をL3とし、第4連通孔65Dと第5連通孔65Eとの間隔をL4とし、第5連通孔65Eと第6連通孔65Fとの間隔をL5とし、第6連通孔65Fと第7連通孔65Gとの間隔をL6としたとき、L6>L5>L4>L3>L2>L1の関係が成り立つように連通孔65が形成されている。また、図6に示すように、複数の連通孔65は、ファン55から離れるほど主走査方向Yの長さが短くなるように形成されている。より詳細には、第1連通孔65A~第7連通孔65Gの主走査方向Yの長さをそれぞれM1~M7としたとき、M1>M2>M3>M4>M5>M6>M7の関係が成り立つように連通孔65が形成されている。即ち、第1連通孔65Aの開口面積が最も大きく、第7連通孔65Gの開口面積が最も小さくなるように設定されている。
【0028】
図5に示すように、ファン55は第1室61に配置されている。ファン55は吸気口52の側方に位置するように配置されている。ここでは、ファン55は、吸気口52の左方に配置されている。本実施形態では、吸気口52、ファン55および複数の連通孔65は、右方から左方に向けてこの順で並ぶように配置されている。ファン55は、吸気口52から空気を吸引して複数の連通孔65を介して排気口53から空気を排出させるように構成されている。
【0029】
次に、乾燥装置50の吸気口52から吸引された空気の流れについて詳細に説明する。まず、図6の矢印F1に示すように、ファン55は吸気口52から吸引した空気を第1室61内において主走査方向Yに流す。第1室61内を流れる空気は、図6の矢印F2に示すように、複数の連通孔65を介して第2室62内に流れ込む。ここで、ファン55から流れる空気によって第1室61の右側(即ちファン55に近い側)と第1室61の左側(即ちファン55から離れる側)とでは内部圧力に差が生じるため、例えば、同じ形状の連通孔が主走査方向Yに等間隔に並ぶ場合には、第1室61の左側に形成された連通孔からより多くの空気が第2室62に流れてしまう。即ち、第2室62に流れ込む空気にむらが生じてしまう。そこで、上述したように複数の連通孔65のそれぞれの間隔を不均一にし、開口面積も異ならせることによって、内部圧力が比較的小さい第1室61の右側においてより多くの空気を第2室62に流すことができる。即ち、単一のファン55によっても連通孔65から第2室62に流出する空気の均一化を図ることができる。そして、第2室62に流入した空気の一部は、図3Bの矢印F3に示すように、縦壁51Hに当たり、第2下壁51Eの内壁に沿って第2室内62内を対流する。これにより、第2室62内から排気口53を介して外部に排出される空気の流速が高まる。ここで、第2下壁51Eの第1部分51EAは、後方から前方に向けて斜め下方に傾いているため、図3Bの矢印F4に示すように、排気口53から排出された空気は、第1部分51EAに沿って流れる。そして、第1部分51EAに沿って流れた空気は、第1部分51EAの前端から下方に向けて延びる第2部分51EBに衝突し、図3Bの矢印F5に示すように、下流側ガイド部材18にガイドされている記録媒体5に向けて流れる。このように、乾燥装置50から排出される風は、下流側ガイド部材18にガイドされている記録媒体5に向けて流れるが、プラテン16の方向(即ち副走査方向Xの上流側)には流れないように設計されている。
【0030】
以上のように、本実施形態のプリンタ10によると、乾燥装置50は吸気口52の側方に配置されたファン55によって吸気口52から空気を吸引して、第1室61内において主走査方向Yに空気を流すことができる。そして、第1室61内を流れる空気は、複数の連通孔65を介して排気口53から記録媒体5に向けて排出される。ここで、複数の連通孔65はファン55から離れるほど連通孔65同士の間隔が広くなるように形成されているため、ファン55から主走査方向Yに送られる空気が各連通孔65を通過するときの空気量が凡そ同じとなる。そして、連通孔65を通過した空気は第2室62において整流されて主走査方向Yに延びる排気口53から排出されるため、記録媒体5の主走査方向Yに亘って凡そ均一な風を送ることができる。これにより、記録媒体5の全体に亘って記録媒体5の乾燥を促進することができる。なお、排出口を複数設け、各排出口にファンを配置することによっても記録媒体5の主走査方向Yに亘って凡そ均一な風を送ることができる。しかしながら、この場合には、排出口の数だけファンが必要となり、乾燥装置が大型化する虞がある。一方で、印刷後の乾燥に必要な風の強さは微弱であって、排出口に設けたファンは微弱な風を送るだけのために設ける必要があり、ファンが有する能力を最大限活用することができないため、改善が望まれていた。そこで、上述のように、本体ケース51を第1室61と第2室62とに仕切る仕切り壁54に形成された複数の連通孔65の配置を適切に設定することで、本体ケース51に複数のファン55を設けなくても、吸気口52の側方に配置されたファン55によって記録媒体5に凡そ均一な風を送ることができ、乾燥装置50の大型化を抑制することができる。
【0031】
本実施形態のプリンタ10では、複数の連通孔65は、ファン55から離れるほど主走査方向Yの長さが短くなるように形成されている。これにより、ファン55から主走査方向Yに送られる空気が各連通孔65を通過するときの空気量がより均一となる。この結果、記録媒体5の主走査方向Yに亘ってより均一な風を送ることができる。これにより、記録媒体5に吐出されたインクの乾燥にムラが発生することを抑制することができる。
【0032】
本実施形態のプリンタ10では、排気口53は、本体ケース51の後壁51Cと第2下壁51Eとの間に設けられた隙間に形成され、かつ、複数の連通孔65より下方に位置する。これにより、複数の連通孔65を通過した空気を効率よく排気口53から排出することができる。
【0033】
本実施形態のプリンタ10では、本体ケース51は、排気口53よりも副走査方向Xの下流側に位置し、かつ、第2下壁51Eから上方かつ主走査方向Yに延びる縦壁51Hを有する。複数の連通孔65を通過した空気の一部は縦壁51Hに当たる。これにより、第2室62において空気が整流されて排気口53から排出される空気の流速を高めることができる。
【0034】
本実施形態のプリンタ10では、第2下壁51Eは、後方から前方(即ち副走査方向Xの上流側から下流側)に向けて斜め下方に傾く第1部分51EAを有している。これにより、第2室62において縦壁51Hに当たった空気は第1部分51EAの内壁に沿って流れるため、より第2室62内の空気が整流される。また、排気口53から排出された空気は、第1部分51EAの外壁に沿って流れるため、排気口53から排出された空気がプラテン16側に流れることを抑制することができる。即ち、インクヘッド35からインクを吐出するときに不要な空気の流れによるインクの着弾位置のずれが発生することを抑制することができる。
【0035】
本実施形態のプリンタ10では、第2下壁51Eは、第1部分51EAの前端(即ち副走査方向Xの下流側の端部)から下方に向けて延びる第2部分51EBを有している。これにより、排気口53から排出されて第1部分51EAに沿って流れる空気は、第2部分51EBに当たって下方に流れる。この結果、下流側ガイド部材18にガイドされる記録媒体5に効率よく風を送ることができる。
【0036】
以上、本発明の好適な実施形態について説明した。しかし、上述の実施形態は例示に過ぎず、本発明は他の種々の形態で実施することができる。
【0037】
上述したプリンタ10において、乾燥装置50は、本体ケース51内に配置され、排気口53から排出される空気を加熱する加熱機構を備えていてもよい。加熱機構としては、例えば、ニクロム線ヒーター等が挙げられる。これにより、記録媒体5に加熱された風を送ることができるため、記録媒体5に吐出されたインクの乾燥をより促進することができる。
【0038】
上述した実施形態では、本体ケース51の上壁51Bは、第1室61および第2室62をそれぞれ区画しているが、第1室61を区画する上壁と、第2室62を区画する上壁とは別部材であってもよい。
【0039】
上述した実施形態では、排気口53は、下方に向けて開口していたがこれに限定されない。排気口53は、下流側ガイド部材18に向けて開口していればよいため、例えば、排気口53は、後方に向けて水平に開口していてもよいし、後斜め下方あるいは上方に向けて開口していてもよい。
【符号の説明】
【0040】
10 プリンタ(インクジェットプリンタ)
16 プラテン
18 下流側ガイド部材
30 キャリッジ
35 インクヘッド
50 乾燥装置
51 本体ケース
52 吸気口
53 排気口
54 仕切り壁
55 ファン
61 第1室
62 第2室
65 連通孔
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6