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特許7448439接合体の製造方法、溶接用金属体および接合子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】接合体の製造方法、溶接用金属体および接合子
(51)【国際特許分類】
   B23K 11/20 20060101AFI20240305BHJP
   B23K 11/11 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
B23K11/20
B23K11/11 540
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020134665
(22)【出願日】2020-08-07
(65)【公開番号】P2022030565
(43)【公開日】2022-02-18
【審査請求日】2022-12-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000005256
【氏名又は名称】株式会社アーレスティ
(74)【代理人】
【識別番号】110000534
【氏名又は名称】弁理士法人真明センチュリー
(72)【発明者】
【氏名】青山 俊三
(72)【発明者】
【氏名】近藤 吉輝
【審査官】柏原 郁昭
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0216956(US,A1)
【文献】特開2018-126752(JP,A)
【文献】韓国公開特許第2018-0044622(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 11/20
B23K 11/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄系金属製の相手部材と、前記相手部材に面する所定面を含む非鉄金属材と、を接合した接合体を製造する方法であって、
鉄系金属製の接合子を前記非鉄金属材の前記所定面に圧入する圧入工程と、
前記非鉄金属材に圧入された前記接合子の露出部分と前記相手部材との間に溶融部を形成する溶接工程と、を備え、
前記圧入工程前の前記接合子は、
仮想軸線と直交する平面状に形成される接合面と、前記接合面の外周縁に連なって前記仮想軸線を取り囲む外周面とを含む本体部と、
前記外周面に連なる外面を含み、前記仮想軸線の周りに前記仮想軸線から離れて位置するように前記本体部のうち前記接合面とは反対側から突出する脚部と、を備え、
前記圧入工程前において、前記本体部の前記外周面は、前記仮想軸線を含む断面において前記仮想軸線と平行な平行部と、前記接合面から離れるにつれて前記仮想軸線から離れる傾斜部と、の少なくとも一方により形成され、前記接合面から離れるにつれて前記仮想軸線側へ近づく部位が無く、
前記圧入工程後において、前記接合面を含む前記接合子の一部が前記所定面から露出し、前記接合子の残部が露出せずに前記非鉄金属材に埋まり、
前記接合子の前記残部は、前記所定面を向く面を含む引掛部を備えていることを特徴とする接合体の製造方法。
【請求項2】
前記圧入工程前の前記非鉄金属材のうち前記圧入工程で前記接合子が圧入される部分を加熱する加熱工程を備えることを特徴とする請求項1記載の接合体の製造方法。
【請求項3】
所定面を含む非鉄金属材と、
炭素含有量が0.4質量%以下の低炭素鋼製の接合子と、を備え、
前記接合子は、
仮想軸線と直交する平面状に形成される接合面と、前記接合面の外周縁に連なって前記仮想軸線を取り囲む外周面とを含む本体部と、
前記外周面に連なる外面を含み、前記仮想軸線の周りに前記仮想軸線から離れて位置するように前記本体部のうち前記接合面とは反対側から突出する脚部と、を備え、
前記本体部の前記外周面は、前記仮想軸線を含む断面において前記仮想軸線と平行な平行部と、前記接合面から離れるにつれて前記仮想軸線から離れる傾斜部と、の少なくとも一方により形成され、前記接合面から離れるにつれて前記仮想軸線側へ近づく部位が無く、
前記接合面を含む前記接合子の一部が前記所定面から露出し、前記接合子の残部が露出せずに前記非鉄金属材に埋まるように前記所定面に前記接合子が圧入されており、
前記接合子の前記残部は、前記所定面を向く面を含む引掛部を備えていることを特徴とする溶接用金属体。
【請求項4】
非鉄金属材の所定面に圧入され、鉄系金属製の相手部材に溶接される鉄系金属製の接合子であって、
仮想軸線と直交する平面状に形成される接合面と、前記接合面の外周縁に連なって前記仮想軸線を取り囲む外周面とを含む本体部と、
前記外周面に連なる外面を含み、前記仮想軸線の周りに前記仮想軸線から離れて位置するように前記本体部のうち前記接合面とは反対側から突出する脚部と、を備え、
前記本体部の前記外周面は、前記仮想軸線を含む断面において前記仮想軸線と平行な平行部と、前記接合面から離れるにつれて前記仮想軸線から離れる傾斜部と、の少なくとも一方により形成され、前記接合面から離れるにつれて前記仮想軸線側へ近づく部位が無いことを特徴とする接合子。
【請求項5】
非鉄金属材の所定面に圧入され、鉄系金属製の相手部材に溶接される鉄系金属製の接合子であって、
仮想軸線と直交する平面状に形成される接合面と、前記接合面の外周縁に連なって前記仮想軸線を取り囲む外周面とを含む本体部と、
前記外周面に連なる外面を含み、前記仮想軸線の周りに位置するように前記本体部のうち前記接合面とは反対側から突出する脚部と、を備え、
前記外周面は、前記仮想軸線を含む断面において前記仮想軸線と平行な平行部と、
前記接合面から離れるにつれて前記仮想軸線から離れる傾斜部と、の少なくとも一方により形成され、
前記脚部の前記外面が連なる位置の前記外周面は、前記接合面の外周縁に連なる前記傾斜部を含むことを特徴とする接合子。
【請求項6】
前記本体部は、前記接合面とは反対側の面であって前記脚部から前記仮想軸線側へ延びた裏面を含み、
前記傾斜部と前記接合面との境界は、前記裏面と前記脚部との境界よりも前記仮想軸線から離れた位置にあることを特徴とする請求項5記載の接合子。
【請求項7】
非鉄金属材の所定面に圧入され、鉄系金属製の相手部材に溶接される鉄系金属製の接合子であって、
仮想軸線と直交する平面状に形成される接合面と、前記接合面の外周縁に連なって前記仮想軸線を取り囲む外周面とを含む本体部と、
前記外周面に連なる外面を含み、前記仮想軸線の周りに位置するように前記本体部のうち前記接合面とは反対側から突出する脚部と、を備え、
前記外周面は、前記仮想軸線を含む断面において前記仮想軸線と平行な平行部と、
前記接合面から離れるにつれて前記仮想軸線から離れる傾斜部と、の少なくとも一方により形成され、
前記脚部は、前記仮想軸線を全周に亘って取り囲む筒状に形成され、
前記接合面、前記外周面または前記外面に開口する貫通孔が前記脚部の内側に連通することを特徴とする接合子。
【請求項8】
非鉄金属材の所定面に圧入され、鉄系金属製の相手部材に溶接される鉄系金属製の接合子であって、
仮想軸線と直交する平面状に形成される接合面と、前記接合面の外周縁に連なって前記仮想軸線を取り囲む外周面とを含む本体部と、
前記外周面に連なる外面を含み、前記仮想軸線の周りに位置するように前記本体部のうち前記接合面とは反対側から突出する脚部と、を備え、
前記外周面は、前記仮想軸線を含む断面において前記仮想軸線と平行な平行部と、
前記接合面から離れるにつれて前記仮想軸線から離れる傾斜部と、の少なくとも一方により形成され、
前記脚部は、前記仮想軸線を全周に亘って取り囲む筒状に形成され、
前記本体部は、前記接合面とは反対側の面であって前記脚部から前記仮想軸線側へ延びた裏面を含み、
前記裏面の少なくとも一部が凸状に形成されていることを特徴とする接合子。
【請求項9】
前記脚部は、前記仮想軸線を取り囲む円筒状であることを特徴とする請求項4から8のいずれかに記載の接合子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガルバニック腐食を低減できる接合体の製造方法、溶接用金属体および接合子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えばアルミニウム、マグネシウム、亜鉛などの非鉄金属材と、鉄系金属材(鉄鋼)により形成される相手部材とを直接溶接することが難しいため、非鉄金属材に鉄系金属製の接合子を溶接以外の方法で接合し、その接合子と相手部材とを溶接することが知られている。この工法には、非鉄金属材のうち相手部材に面する表面とは反対側の裏面に、鉄系金属製の接合子を突入させて押込み、非鉄金属材の表面まで貫通した接合子を相手部材に抵抗スポット溶接する工法がある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-87281号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の工法では、鉄系金属製の接合子のうち相手部材に溶接された部位とは反対側の部位が、非鉄金属材の裏面から露出している。そのため、非鉄金属材の裏面側で非鉄金属材と接合子との間のガルバニック腐食の対策を講じる必要があり、その対策に伴って作業工程の増加やコスト上昇を招くという問題点がある。
【0005】
本発明は上述した問題点を解決するためになされたものであり、ガルバニック腐食を低減できる接合体の製造方法、溶接用金属体および接合子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために本発明の接合体の製造方法は、鉄系金属製の相手部材と、相手部材に面する所定面を含む非鉄金属材と、を接合した接合体を製造する方法であって、鉄系金属製の接合子を非鉄金属材の所定面に圧入する圧入工程と、非鉄金属材に圧入された接合子の露出部分と相手部材との間に溶融部を形成する溶接工程と、を備え、圧入工程後において、所定面から接合子の一部が露出し、接合子の残部が露出せずに非鉄金属材に埋まり、接合子の残部は、所定面を向く面を含む引掛部を備えている。
【0007】
本発明の溶接用金属体は、所定面を含む非鉄金属材と、炭素含有量が0.4質量%以下の低炭素鋼製の接合子と、を備え、所定面から接合子の一部が露出し、接合子の残部が露出せずに非鉄金属材に埋まるように所定面に接合子が圧入されており、接合子の残部は、所定面を向く面を含む引掛部を備えている。
【0008】
本発明の接合子は、非鉄金属材の所定面に圧入され、鉄系金属製の相手部材に溶接される鉄系金属製のものであって、仮想軸線と直交する平面状に形成される接合面と、接合面の外周縁に連なって仮想軸線を取り囲む外周面とを含む本体部と、外周面に連なる外面を含み、仮想軸線の周りに位置するように本体部のうち接合面とは反対側から突出する脚部と、を備え、外周面は、仮想軸線を含む断面において仮想軸線と平行な平行部と、接合面から離れるにつれて仮想軸線から離れる傾斜部と、の少なくとも一方により形成されている。
【発明の効果】
【0009】
請求項1記載の接合体の製造方法によれば、圧入工程では、接合子を非鉄金属材の所定面に圧入する。接合子において非鉄金属材に埋まった部分は、引掛部が所定面を向く面を含むので、非鉄金属材から接合子を抜け難くできる。
【0010】
圧入工程後において所定面から接合子の一部が露出し、その部分と相手部材との間に溶融部を形成する溶接工程が行われ、接合体が製造される。接合子の残部は露出せずに非鉄金属材に埋まっているので、ガルバニック腐食を低減できる。また、請求項1記載の接合体の製造方法によれば、後述の請求項4記載の接合子と同様の効果を奏する。
【0011】
請求項2記載の接合体の製造方法によれば、加熱工程では、圧入工程前の非鉄金属材のうち圧入工程で接合子が圧入される部分を加熱する。これにより、非鉄金属材のうち加熱工程によって延性を高めた部分に、接合子を圧入するので、請求項1の効果に加え、接合子が圧入された非鉄金属材を割れ難くできる。
【0012】
請求項3記載の溶接用金属体によれば、非鉄金属材の所定面に接合子が圧入されている。接合子において非鉄金属材に埋まった部分は、引掛部が所定面を向く面を含むので、非鉄金属材から接合子を抜け難くできる。非鉄金属材の所定面から接合子の一部が露出しているので、その部分に相手部材を溶接できる。接合子の残部が露出せずに非鉄金属材に埋まっているので、ガルバニック腐食を低減できる。
【0013】
さらに、接合子は、炭素含有量が0.4質量%以下の低炭素鋼といった溶接に適した素材により形成されているので、相手部材と接合子との溶接に伴う熱影響により、接合子を硬く脆くなり過ぎないようにできる。その結果、溶接時の硬化に伴う接合子の溶接割れや靭性の低下を抑制できるので、接合子を介した相手部材と非鉄金属材との接合強度を確保できる。また、請求項3記載の溶接用金属体によれば、後述の請求項4記載の接合子と同様の効果を奏する。
【0014】
請求項4記載の接合子によれば、本体部のうち接合面とは反対側から突出する脚部が、接合面と直交する仮想軸線の周りに仮想軸線から離れて位置する。接合子や非鉄金属材の寸法設定などにもよるが、接合面を押して脚部から非鉄金属材の所定面に接合子を圧入することで、接合子が非鉄金属材を打ち抜くことなく、非鉄金属材に接合子が圧入される。これにより、相手部材に溶接される接合面を非鉄金属材から露出させつつ、脚部や本体部の裏面を非鉄金属材から露出しないようにできる。そのため、接合子を非鉄金属材に圧入したものにおいて、ガルバニック腐食を低減できる。
【0015】
外周面は、仮想軸線を含む断面において仮想軸線と平行な平行部と、接合面から離れるにつれて仮想軸線から離れる傾斜部と、の少なくとも一方により形成され、接合面から離れるにつれて仮想軸線側へ近づく部位が無い。この外周面に連なる外面を含む脚部が本体部から突出している。脚部の外面から外側へ広がる鍔(接合面から離れるにつれて仮想軸線側へ近づく部位)が本体部にある場合と比べて、非鉄金属材の所定面に接合子を本体部まで圧入し易くできる。
【0016】
請求項5記載の接合子によれば、脚部の外面が連なる位置の外周面は、接合面の外周縁に連なる傾斜部を含む。これにより、接合面を押して脚部から非鉄金属材に接合子を圧入するとき、本体部が脚部に押されて盛り上がろうとする変形を、傾斜部が接合面と面一に近づく変形で吸収できる。その結果、非鉄金属材に圧入された接合子の接合面と相手部材とをより面接触させ易くできるので、請求項4と同様の効果に加え、接合子と相手部材との溶接強度を向上できる。
【0017】
請求項6記載の接合子によれば、本体部は、接合面とは反対側の面であって脚部から仮想軸線側へ延びた裏面を含む。傾斜部と接合面との境界は、本体部の裏面と脚部との境界よりも仮想軸線から離れた位置にある。これにより、接合面を押して脚部から非鉄金属材に接合子を圧入するとき、脚部を仮想軸線の軸方向に延長した位置で接合面を押すことができる。その結果、請求項5の効果に加え、非鉄金属材に圧入した接合子の本体部を脚部の内側で陥没し難くできる。
【0018】
請求項7記載の接合子によれば、脚部は、仮想軸線を全周に亘って取り囲む筒状に形成されているので、接合子を脚部から非鉄金属材に圧入したとき、脚部の内側における本体部と非鉄金属材との間に空気が残ることがある。しかし、本体部の接合面や外周面、又は、脚部の外面に開口する貫通孔が脚部の内側に連通するので、圧入後に、本体部と非鉄金属材との間に空気が残り難くなる。これにより、接合面に当てた相手部材と接合子とを溶接するとき、接合子から非鉄金属材への熱の移動が、本体部と非鉄金属材との間の空気によって妨げられ難くなる。これにより、溶接時の接合子の冷却が安定し、接合子と相手部材との間の溶融部の形状や大きさが安定する。その結果、請求項4と同様の効果に加え、接合子と相手部材との溶接強度を向上できる。
【0019】
請求項8記載の接合子によれば、脚部が仮想軸線を全周に亘って取り囲む筒状に形成され、接合面とは反対側の面である本体部の裏面が脚部から仮想軸線側へ延びている。そのため、接合子を脚部から非鉄金属材に圧入したとき、脚部の内側における本体部の裏面と非鉄金属材との間に空気が残ることがある。しかし、本体部の裏面の少なくとも一部が凸状に形成されているので、その凸の周縁部と非鉄金属材との間に空気が集まり、凸の中央部が非鉄金属材に密着し易くなる。これにより、接合面に当てた相手部材と接合子とを溶接するとき、接合子から非鉄金属材へ熱を移動させ易くできるので、溶接時の接合子の冷却が安定し、接合子と相手部材との間の溶融部の形状や大きさが安定する。その結果、請求項4と同様の効果に加え、接合子と相手部材との溶接強度を向上できる。
【0020】
請求項9記載の接合子によれば、脚部が仮想軸線を取り囲む円筒状であるので、脚部の剛性を周方向で略均一にしつつ、仮想軸線の軸方向における脚部の剛性を確保できる。これにより、接合面を押して脚部から非鉄金属材に接合子を圧入するとき、脚部を座屈や破断し難くでき、脚部を非鉄金属材に確実に食い込ませることができる。よって、請求項4から8のいずれかの効果に加え、非鉄金属材と接合子との接合強度を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】第1実施形態における接合子および非鉄金属材の断面図である。
図2】非鉄金属材に接合子を圧入した溶接用金属体の断面図である。
図3】溶接用金属体に相手部材を溶接した接合体の断面図である。
図4】(a)は第2実施形態における接合子の断面図であり、(b)は接合体の断面図である。
図5】第3実施形態における接合体の断面図である。
図6】第4実施形態における接合体の断面図である。
図7】(a)は第5実施形態における接合子の断面図であり、(b)は接合体の断面図である。
図8】(a)は第6実施形態における接合子の断面図であり、(b)は接合体の断面図である。
図9】(a)は第7実施形態における接合子の断面図であり、(b)は接合体の断面図である。
図10】変形例を示した接合子の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の好ましい実施の形態について添付図面を参照して説明する。まず図1を参照して接合子10と、接合子10が圧入される非鉄金属材21とについて説明する。図1は接合子10及び非鉄金属材21の断面図である。接合子10は、互いに異種金属から構成される非鉄金属材21と相手部材2(図3参照)とを接合するための部材である。詳しくは図3を参照して後述するが、接合子10は、非鉄金属材21に圧入された後、相手部材2に溶接されることで接合体1を形成する。
【0023】
接合子10は、鉄系金属製である。本実施形態では低炭素鋼により接合子10が形成される。低炭素鋼は、炭素含有量が0.4質量%以下の鋼である。低炭素鋼の炭素含有量は、0.2質量%以下であることが好ましい。低炭素鋼としては、S15C鋼やSS400鋼が例示される。
【0024】
接合子10は、円板状の本体部11と、その本体部11から突出する円筒状の脚部16とを備え、それらが一体成形されている。接合子10は、仮想軸線Aに関して軸対称に形成されている。図1には、この仮想軸線Aを含む断面が示されている。
【0025】
本体部11は、接合面12と、接合面12とは反対側の裏面13と、接合面12の外周縁に連なって裏面13を取り囲む外周面と、を含む。円形状の接合面12の中心を仮想軸線Aが通り、接合面12が仮想軸線Aと直交する平面状に形成され、本体部11の外周面が仮想軸線Aを取り囲む。裏面13は、径方向中央(仮想軸線A)へ向かうにつれて接合面12側へ凹んだ凹状に形成されている。
【0026】
本体部11の外周面は、仮想軸線Aを含む断面において仮想軸線Aと平行な平行部14と、接合面12から離れるにつれて仮想軸線Aから離れる傾斜部15とにより形成されている。傾斜部15は、接合面12の外周縁の全周に連なる。平行部14は、傾斜部15の裏面13側の端縁の全周に連なる。
【0027】
脚部16は、本体部11の裏面13の外周側から突出する部位であり、仮想軸線Aを中心とする円筒状に形成されている。この脚部16の上端から裏面13が径方向内側(仮想軸線A側)へ延びている。脚部16が円筒状なので、接合子10を圧造によって形成し易くできる。脚部16の内側が空洞になっているので、接合面12を大きくしても、脚部16の内側が詰まっている場合と比べて、接合子10を軽くできる。脚部16の外周面(外面)17は、本体部11の平行部14(外周面)に全周に亘って連なる。外周面17は、仮想軸線Aを含む断面において、仮想軸線Aと平行であり、平行部14と共に直線状に形成されている。
【0028】
脚部16の内周面は、本体部11から離れた脚部16の先端19へ向かうにつれて次第に拡径する。脚部16の内周面は、環状の先端19に全周に亘って連なる先端内面18aと、先端内面18aの全周と本体部11の裏面13とを連結する基端内面18bと、を含む。仮想軸線Aを含む断面において、仮想軸線Aに対する傾斜角度は、先端内面18aの方が基端内面18bよりも大きい。
【0029】
なお、仮想軸線Aを含む断面において、脚部16の内周面(基端内面18b)と裏面13とが曲線で接続されている場合、その曲線の接線と仮想軸線Aとのなす角度が45度の位置を、脚部16と本体部11の裏面13との境界B1とする。この境界B1よりも、傾斜部15と接合面12との境界B2(接合面12の外周縁)が仮想軸線Aから離れた位置にある。即ち、脚部16を仮想軸線A方向に延長した位置に接合面12の一部がある。
【0030】
非鉄金属材21は、アルミニウムやマグネシウム、亜鉛、それらを主成分とする合金など、特に鉄系金属との溶接が難しい非鉄金属製の部材である。本実施形態では、非鉄金属材21は、アルミニウム合金製の鋳造品であり、接合子10が圧入される部分が板状に形成されている。非鉄金属材21は、接合子10が圧入される表面(所定面)22と、表面22とは板厚方向の反対側の裏面23と、を含む。接合子10が圧入される前の非鉄金属材21は、厚さが略一定に形成されている。
【0031】
図1及び図2を参照し、非鉄金属材21に接合子10を圧入して溶接用金属体20を形成する工程について説明する。図2は溶接用金属体20の断面図である。図2には、図1と同様に、仮想軸線Aを含む断面が示されている。図1に示した接合子10を非鉄金属材21の表面22に圧入することにより、図2に示す溶接用金属体20が形成される。
【0032】
接合子10を圧入するには具体的に、まず、裏面23に接するダイ(図示せず)と、表面22に接する円筒状のクランパー(材料押さえ、図示せず)とで非鉄金属材21を挟み込む。次いで、接合子10の平行部14及び外周面17がクランパーの内周面を摺動し、接合子10の脚部16の先端19が表面22に当たるように、接合子10をクランパー内にセットする。
【0033】
この状態では、表面22が仮想軸線Aに垂直な平面であり、クランパーが仮想軸線Aを中心とする円筒状である。クランパー内を仮想軸線A方向に摺動するパンチ(図示せず)で接合面12を押すことで、接合子10が非鉄金属材21を打ち抜くことなく、脚部16から非鉄金属材21に接合子10が圧入される。接合面12を含む接合子10の一部が非鉄金属材21から露出しつつ、接合子10の残部(接合子10のうち、非鉄金属材21から露出した一部以外の部位)が非鉄金属材21から露出しないように埋まり、溶接用金属体20が形成される。
【0034】
なお、非鉄金属材21の素材によっては、非鉄金属材21に接合子10を圧入するとき、非鉄金属材21が割れることがある。この割れを低減するために一般的には、非鉄金属材21の全体に熱処理を施すことで金属組織などを変化させ、非鉄金属材21の延性を高めている。また、熱処理をしなくても、圧入時に割れが発生し難い素材を非鉄金属材21に用いることで、圧入時の割れを低減している。
【0035】
これらの方法に対し本実施形態では、接合子10が圧入される前の非鉄金属材21のうち、接合子10が圧入される部分を予め加熱して高延性部21aを形成する。これにより、非鉄金属材21の全体に熱処理を施さなくても、接合子10の圧入時に非鉄金属材21を割れ難くできる。図1の二点鎖線よりも仮想軸線A側が高延性部21aである。
【0036】
例えば高延性部21aを形成するには、まず、非鉄金属材21の表面22に接合子10の先端19を当てた状態で、電源25に繋がる電極26,27をそれぞれ接合子10及び非鉄金属材21に接続する。電極26,27間に電気を流して先端19近傍に集中抵抗を発生させ、その集中抵抗により非鉄金属材21の一部を抵抗加熱する。非鉄金属材21の一部を軟化する温度まで抵抗加熱することで、高延性部21aが形成される。ダイ及びクランパーで挟んだ非鉄金属材21の一部を軟化させて高延性部21aを形成し、その高延性部21aに接合子10を圧入することで、高延性部21aを割れ難くできる。
【0037】
なお、非鉄金属材21の一部の加熱方法には、抵抗加熱以外に、レーザ加熱や電磁誘導加熱、ハロゲン光などを用いた光加熱、高温媒体の接触による接触加熱などが挙げられる。また、高延性部21aは、高温状態で軟化している部位に限らず、加熱および冷却に伴う金属組織の変化によって延性が向上した部位でも良い。非鉄金属材21の素材に応じて、接合子10が圧入される部分を適切な温度で加熱し、又は加熱後に冷却して高延性部21aを形成することで、非鉄金属材21の素材の自由度を向上できる。
【0038】
図2に示すように、溶接用金属体20は、接合面12と表面22とが面一になるように接合子10が非鉄金属材21に圧入されている。なお、本明細書において、接合面12と表面22とが面一とは、表面22から接合面12の浮きが1mm以内であることを示す。
【0039】
溶接用金属体20において、接合子10が圧入された位置の非鉄金属材21の裏面23が周囲に対して盛り上がり、その盛り上がった部分によって非鉄金属材21に被覆部24が形成される。接合子10の外径よりも大きい径の窪みがダイに形成されており、接合子10の圧入によって押し出される非鉄金属材21が窪みを埋めることで被覆部24が形成される。接合面12を含む接合子10の一部が非鉄金属材21の表面22から露出し、接合子10の残部が非鉄金属材21の裏面23から露出しないように、接合子10の裏面13や脚部16を被覆部24が覆う。被覆部24における裏面23は、仮想軸線Aと垂直な平面、即ち接合面12や表面22と平行な平面である。
【0040】
図1に示す圧入前の脚部16の先端内面18a及び基端内面18bが先端19へ向かうにつれて次第に拡径しているので、接合子10の圧入時に非鉄金属材21から脚部16へ径方向外側の力が加わる。そのため、図2に示す溶接用金属体20において、非鉄金属材21に埋まった脚部16は、先端19へ向かうにつれて外周面17が径方向外側へ湾曲(傾斜)するように塑性変形している。この脚部16によって、非鉄金属材21の表面22を向く外周面17を含む引掛部が形成されるので、非鉄金属材21から接合子10を抜け難くできる。なお、引掛部における表面22を向く外周面17は、非鉄金属材21の表面22側から接合子10を抜こうとしたときに非鉄金属材21に引っ掛かるように、僅かでも表面22を向いていれば良い。例えば、仮想軸線Aを含む断面において、仮想軸線Aに対する外周面17の傾斜角度が1°程度でも、その外周面17が表面22を向いているという。
【0041】
また、仮想軸線Aを含む断面において、仮想軸線Aに対する先端内面18aの傾斜角度は、仮想軸線Aに対する基端内面18bの傾斜角度よりも大きい。そのため、基端内面18bにおける脚部16の肉厚を確保して脚部16の剛性を確保しつつ、先端内面18aによって先細りさせた脚部16の先端19を非鉄金属材21に食い込ませ易くできる。さらに、脚部16が仮想軸線Aを取り囲む円筒状であるので、脚部16の剛性を周方向で略均一にしつつ、仮想軸線A方向における脚部16の剛性を確保できる。これにより、接合面12を押して脚部16から非鉄金属材21に接合子10を圧入するとき、脚部16を座屈や破断し難くでき、脚部16を非鉄金属材21に確実に食い込ませることができる。その結果、非鉄金属材21と接合子10との接合強度を確保できる。
【0042】
なお、JISZ2244:2009(ISO6507-1及びISO6507-4)に準拠した接合子10の素材のビッカース硬さは、アルミニウム合金製の非鉄金属材21に圧入するものとして最適な310~370HV10に設定されている。接合子10のビッカース硬さがこの範囲内であれば、脚部16を座屈させずに、アルミニウム合金製鋳造品の非鉄金属材21に脚部16を食い込ませることができると共に、圧入時に非鉄金属材21内で脚部16を径方向外側へ十分に塑性変形させることができる。
【0043】
接合子10の脚部16の内側の空間は殆どが非鉄金属材21によって満たされる。これにより、径方向外側へ塑性変形した脚部16が径方向内側へ変形して戻り難くなる。そのため、径方向外側へ広がった脚部16による非鉄金属材21と接合子10との接合強度を確保できる。
【0044】
図1に示す圧入前の接合子10の本体部11の外周面が平行部14及び傾斜部15により形成され、接合面12から離れるにつれて仮想軸線A側へ向かう傾斜面がない。そして、この本体部11の外周面(平行部14)に連なる外周面17を含む脚部16が本体部11の裏面13から突出している。これらの結果、脚部16の外周面17から外側へ広がる鍔が本体部11にある場合と比べて、非鉄金属材21の表面22に接合子10を本体部11まで圧入し易くできる。
【0045】
接合面12を押して脚部16から非鉄金属材21に接合子10を圧入するとき、脚部16からの仮想軸線A方向の反力が本体部11に加わる。そのため、本体部11が脚部16に押され、接合面12の外周縁がパンチとクランパーとの間に入り込むように盛り上がろうとする。しかし、脚部16の外周面17が連なる位置の本体部11の外周面は、接合面12の外周縁に連なる傾斜部15を含む。これにより、本体部11が脚部16に押されて盛り上がろうとする変形を、傾斜部15が接合面12と面一に近づく変形で吸収できる。その結果、非鉄金属材21に圧入した接合子10の接合面12を平面状に保つことができる。特に、接合子10が310~370HV10と比較的柔らかい素材であっても、非鉄金属材21に圧入した接合子10の接合面12を傾斜部15により平面状に保つことができる。なお、接合面12と面一になった傾斜部15は、接合面12の一部となる。
【0046】
傾斜部15と接合面12との境界B2(接合面12の外周縁)は、脚部16と本体部11の裏面13との境界B1よりも仮想軸線Aから離れた位置にある。これにより、接合面12を押して脚部16から非鉄金属材21に接合子10を圧入するとき、脚部16を仮想軸線A方向に延長した位置で接合面12を押すことができる。その結果、非鉄金属材21に圧入した接合子10の本体部11を脚部16の内側で陥没し難くできる。
【0047】
次に図3を参照して、溶接用金属体20に相手部材2を接合した接合体1について説明する。図3は接合体1の断面図である。図3には、図1,2と同様に、仮想軸線Aを含む断面が示されている。相手部材2は、鉄系金属製の部材であり、溶接用金属体20に溶接される部分が板状に形成されている。
【0048】
接合体1を形成するには、まず、相手部材2が重ねられる非鉄金属材21の表面22や接合子10の接合面12に防錆用のシーラ(図示せず)を塗布する。このシーラは、接合子10と非鉄金属材21との間や、非鉄金属材21と相手部材2との間でガルバニック腐食を低減するためのものである。
【0049】
次いで、非鉄金属材21の表面22に相手部材2を重ねる。表面22から露出した接合子10と相手部材2とをスポット溶接することで、同種の金属同士である接合子10と相手部材2との間に溶融部4を形成する。このようにして、接合子10を介して非鉄金属材21と相手部材2とを接合した接合体1が形成される。
【0050】
本実施形態では相手部材2と接合子10との溶接に、接合面12の仮想軸線A方向の両側から溶接用金属体20及び相手部材2を挟み込んだ一対の電極28,29間に電流を流すダイレクト式の抵抗スポット溶接を用いる。相手部材2に当たる電極28の先端は、フラットに形成されている。よって、電極28による圧痕を相手部材2に残り難くできる。
【0051】
電極29が当たる被覆部24の裏面23が仮想軸線Aと垂直な平面なので、電極29による加圧や電極29と裏面23との接地面積をコントロールし易い。裏面23のうち周囲の部位に対して被覆部24が盛り上がっているので、被覆部24は電極29を当てる位置の目印になる。
【0052】
被覆部24の裏面23に当たる電極29の先端は、ドーム状に形成されている。非鉄金属材21のうち脚部16の内側の部位を電極29で押すことができるので、非鉄金属材21を接合子10の本体部11の裏面13に密着させ易くできる。これにより、電極29から非鉄金属材21を介して接合子10へ給電し易くできるので、抵抗スポット溶接を安定化できる。
【0053】
なお、インダイレクト式やシリーズ式、パラレル式の抵抗スポット溶接によって接合子10と相手部材2とを溶接しても良い。また、レーザ溶接やアーク溶接、ガス溶接によって接合子10と相手部材2とを溶接しても良い。接合面12の一部に突起を設けたり、接合面12に当たる突起を相手部材2に設けたりして、接合子10と相手部材2とをプロジェクション溶接しても良い。
【0054】
以上のような接合体1によれば、非鉄金属材21の表面22から露出した接合子10の一部に相手部材2が溶接され、接合子10の残部が非鉄金属材21から露出せずに非鉄金属材21に埋まっている。これにより、非鉄金属材21と接合子10との間のガルバニック腐食を低減できる。よって、この非鉄金属材21の裏面23側のガルバニック腐食の対策に伴う作業工程の増加やコスト上昇を抑制できる。
【0055】
上述した通り、接合面12の外周縁に連なる傾斜部15によって接合面12の一部の盛り上がりを低減できるので、接合面12と相手部材2とを面接触させ易くできる。その結果、接合子10と相手部材2との溶接強度を向上できる。さらに、接合面12と非鉄金属材21の表面22とが略面一であるので、接合面12に重ねた相手部材2と接合子10とを溶接したとき、非鉄金属材21の表面22と相手部材2との間に隙間を殆ど生じないようにできる。その隙間から水分などが浸入することに起因して接合子10を腐食し難くできるので、接合子10の耐久性を向上できる。その結果、接合子10を介した相手部材2と非鉄金属材21との接合強度を向上できる。さらに、非鉄金属材21の表面22と相手部材2との間にシーラを塗布し、それらの間から接合子10側へ水分を浸入し難くすることで、接合子10をより腐食し難くできる。
【0056】
溶融部4が形成される領域における接合子10の厚さT1は、その領域における相手部材2の厚さT2の0.8~2倍であることが好ましい。なお、溶融部4が形成される領域における各部の厚さT1,T2とは、溶融部4が形成される前の各部の厚さを示している。特に、溶融部4は中央部分で最も大きくなり易いので、溶融部4が形成される領域の中央部分において、接合子10の厚さT1が相手部材2の厚さT2の0.8~2倍であることが好ましい。図3には、溶融部4が形成される前の接合子10と相手部材2との接触面を二点鎖線で示し、電極28による圧痕が形成される前の相手部材2の表面を破線で示している。
【0057】
厚さT1が厚さT2の0.8倍以上であれば、接合子10と相手部材2との間に形成される溶融部4の位置やサイズを適切に調整でき、溶融部4を非鉄金属材21まで達し難くできる。これにより、接合子10の強度や、接合子10と非鉄金属材21との接合強度を確保できる。また、厚さT1が厚さT2の2倍以下であれば、接合子10の接合面12と非鉄金属材21の表面22とが略面一になるまで接合子10を非鉄金属材21に圧入するときの力を低減できると共に、接合子10を軽くできる。
【0058】
接合子10は、上述した通り炭素含有量0.4質量%以下の低炭素鋼により形成されているので、相手部材2と接合子10との溶接に伴う熱影響によって接合子10を硬く脆くなり過ぎないようにできる。低炭素鋼の炭素含有量が0.2質量%以下であれば、溶接の熱影響による接合子10の硬化を十分に抑制できる。これらの結果、溶接時の硬化に伴う接合子10の溶接割れや靭性の低下を抑制できるので、接合子10を介した相手部材2と非鉄金属材21との接合強度を確保できる。
【0059】
次に図4(a)及び図4(b)を参照して第2実施形態について説明する。第1実施形態では、接合子10の本体部11の外周面が平行部14及び傾斜部15により形成され、脚部16の外周面17が仮想軸線Aに沿っている場合について説明した。これに対して第2実施形態では、接合子30の本体部31の外周面が傾斜部32により形成され、脚部34の外周面17が仮想軸線Aに対して傾斜する場合について説明する。なお、第1実施形態と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。
【0060】
図4(a)は第2実施形態における接合子30の断面図である。図4(b)は、接合子30を介して相手部材2と非鉄金属材42とを接合した接合体40の断面図である。なお、図4(b)では、電極28,29(図3参照)による圧痕の図示を省略している。
【0061】
図4(a)に示すように、接合子30は、円板状の本体部31と、その本体部31から突出する筒状の脚部34とを備え、それらが炭素含有量0.4質量%以下の低炭素鋼によって一体成形されている。接合子30は、仮想軸線Aに関して軸対称に形成されている。図4(a)及び図4(b)には、この仮想軸線Aを含む断面が示されている。
【0062】
本体部31は、接合面12と、接合面12とは反対側の裏面13と、接合面12の外周縁に連なって裏面13を取り囲む外周面と、を含む。本体部31の外周面は、接合面12から離れるにつれて仮想軸線Aから離れる傾斜部32により形成されている。傾斜部32は、接合面12の外周縁の全周に連なる。
【0063】
脚部34は、本体部31の裏面13の外周側から突出する筒状の部位である。脚部34の外周面(外面)35は、本体部31の傾斜部32に全周に亘って連なる。脚部34の外周面35及び内周面36は、接合面12から離れるにつれて仮想軸線Aから離れる面であり、本体部31から離れた脚部34の先端37へ向かうにつれて次第に拡径する。脚部34は、先端37へ向かうにつれて肉厚が薄くなっている。外周面35は、仮想軸線Aを含む断面において、傾斜部32と共に直線状に形成されている。
【0064】
図4(b)に示すように、接合子30を非鉄金属材42に圧入して溶接用金属体41を形成し、溶接により溶接用金属体41の接合子30と相手部材2との間に溶融部4を形成することで接合体40が製造される。非鉄金属材42は、第1実施形態における非鉄金属材21に対して厚く形成された点以外の構成が非鉄金属材21と同一である。非鉄金属材42の厚さは、接合子30の接合面12から先端37までの仮想軸線A方向の寸法の2倍以上である。そのため、接合子30を非鉄金属材42に圧入しても、非鉄金属材42の裏面23が殆ど盛り上がらない。
【0065】
図4(a)に示す圧入前の脚部34の内周面36が先端37へ向かうにつれて次第に拡径しているので、接合子30の圧入時に非鉄金属材42から脚部34へ径方向外側の力が加わる。そのため、図4(b)に示す溶接用金属体41において、非鉄金属材42に埋まった脚部34は、先端37へ向かうにつれて径方向外側へ湾曲するように塑性変形している。この脚部34によって、非鉄金属材42の表面22を向く外周面35を含む引掛部が形成されるので、非鉄金属材42から接合子30を抜け難くできる。
【0066】
圧入前の脚部34の外周面35が先端37へ向かうにつれて次第に拡径しているので、脚部34から接合子30を非鉄金属材42に圧入するとき、非鉄金属材42から脚部34が受ける反力のうち、本体部31の接合面12の盛り上がりに寄与しようとする仮想軸線A方向の成分を低減できる。その結果、接合面12を平面状に保ち易くできる。
【0067】
次に図5を参照して第3実施形態について説明する。第1実施形態では、非鉄金属材21への接合子10の圧入に伴って脚部16が塑性変形することで、非鉄金属材21の表面22を向く面を含む引掛部が形成された接合体1について説明した。これに対して第3実施形態では、圧入の前後で殆ど脚部54が塑性変形しない接合子52によって相手部材2と非鉄金属材42とが接合された接合体50について説明する。なお、第1,2実施形態と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。
【0068】
図5は第3実施形態における接合体50の断面図である。図5では、電極28,29(図3参照)による圧痕の図示を省略している。接合体50は、相手部材2と、非鉄金属材42に接合子52が圧入された溶接用金属体51と、を備える。溶接用金属体51の接合子52に相手部材2を溶接して溶融部4を形成することで、接合体50が製造される。
【0069】
接合子52は、円板状の本体部11と、その本体部11の裏面13の外周側から突出する円筒状の脚部54とを備え、それらが炭素含有量0.4質量%以下の低炭素鋼によって一体成形されている。接合子52は、仮想軸線Aに関して軸対称に形成されている。図5には、この仮想軸線Aを含む断面が示されている。
【0070】
脚部54の内周面58は、仮想軸線Aを含む断面において、裏面13から脚部の先端59に亘って仮想軸線Aと平行に形成される。そのため、接合子52を非鉄金属材42に圧入するとき、脚部54を径方向外側へ広げ難くできる。圧入の前後で脚部54が塑性変形し難いので、塑性変形に伴う微視的な金属組織のせん断などを抑制でき、脚部54の耐久性を確保できる。
【0071】
脚部54の外面は、本体部11の平行部14に全周に亘って連なる第1外面55と、脚部54の先端59に全周に亘って連なる第2外面56とを備える。第1外面55は、仮想軸線Aを含む断面において、仮想軸線Aと平行に形成される。第2外面56は、先端59から離れるにつれて仮想軸線Aから離れ、即ち先端59から離れるにつれて次第に拡径する。第1外面55の先端59側の端縁から垂直に段差状に張り出す面によって、第1外面55と第2外面56とが接続される。この段差状の面を含む部位が引掛部57である。
【0072】
このような接合子52を非鉄金属材42に圧入するとき、第2外面56は、非鉄金属材42から円筒状の脚部54の径方向内側へ向かう反力を受ける。これにより、圧入の前後で脚部54をより塑性変形し難くできるので、脚部54の耐久性を確保できる。また、脚部54は、非鉄金属材42の表面22を向く面を含む引掛部57を備えているので、非鉄金属材42から接合子52を抜け難くできる。
【0073】
次に図6を参照して第4実施形態について説明する。第1実施形態では、本体部11の裏面13の外周側から脚部16が突出した接合子10を用いた接合体1について説明した。これに対して第4実施形態では、脚部を有しない接合子62を用いた接合体60について説明する。なお、第1,2実施形態と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。
【0074】
図6は第実施形態における接合体60の断面図である。図6では、電極28,29(図3参照)による圧痕の図示を省略している。接合体60は、相手部材2と、非鉄金属材42に接合子62が圧入された溶接用金属体61と、を備える。溶接用金属体61の接合子62に相手部材2を溶接して溶融部4を形成することで、接合体60が製造される。
【0075】
接合子62は、円柱状の本体部63と、その本体部63の外周面である平行部14から突出する複数の引掛部65と、を備え、それらが炭素含有量0.4質量%以下の低炭素鋼によって一体成形されている。接合子62は、本体部63の接合面12と直交する仮想軸線Aに関して軸対称に形成されている。図6には、この仮想軸線Aを含む断面が示されている。
【0076】
本体部63は、第1実施形態における本体部11に対し、厚く形成されている点以外は、本体部11と同一に構成されている。なお、図6は、接合面12と本体部63の外周面との角にあった傾斜部15(図1参照)が、接合子62の非鉄金属材42への圧入に伴って変形し、接合面12と面一になった状態を示している。
【0077】
引掛部65は、接合子62のうち非鉄金属材42に埋まる部分に形成されている。非鉄金属材42に接合子62が埋まった状態で、引掛部65は、非鉄金属材42の表面22を向く面を含むので、非鉄金属材42から接合子62を抜け難くできる。
【0078】
接合子62は、第1~3実施形態における脚部16,34,54を備えた接合子10,30,52に対して、円柱状といったシンプルな形状である。そのため、接合子62の製造を容易にできる。また、接合子62は、脚部の座屈を考慮した設計を不要にできる。
【0079】
次に図7(a)及び図7(b)を参照して第5実施形態について説明する。第1実施形態では、接合子10の本体部11が円板状である場合について説明した。これに対して第5実施形態では、接合子80の本体部81の径方向の中央に貫通孔82が形成されて本体部81が円環板状になる場合について説明する。なお、第1実施形態と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。図7(a)は第5実施形態における接合子80の断面図である。図7(b)は接合体70の断面図である。図7(b)では、電極28,29(図3参照)による圧痕の図示を省略している。
【0080】
図7(a)に示すように、接合子80は、径方向の中央に貫通孔82が形成された円環板状の本体部81と、その本体部81から突出する円筒状の脚部83とを備え、それらが炭素含有量0.4質量%以下の低炭素鋼によって一体成形されている。接合子80は、仮想軸線Aに関して軸対称に形成されている。図7(a)及び図7(b)には、この仮想軸線Aを含む断面が示されている。また、図7(a)及び図7(b)には、本体部81と脚部83との境界87が二点鎖線で示される。
【0081】
本体部81は、接合面12と、接合面12の外周縁に連なって仮想軸線Aを取り囲む外周面としての平行部14と、を含む。貫通孔82は、接合面12に開口し、脚部83の内側(仮想軸線A側)に連通する。
【0082】
脚部83は、本体部81のうち接合面12とは反対側から突出する円筒状の部位である。脚部83の外周面(外面)17は、本体部81の平行部14に全周に亘って連なる。仮想軸線Aに面する脚部83の内周面は、本体部81から離れた脚部83の先端19へ向かうにつれて次第に拡径する。脚部83の内周面は、環状の先端19に全周に亘って連なる第1内面84と、第1内面84の全周から本体部81側へ延びる第2内面85と、第2内面85の全周と本体部81の貫通孔82の内壁面の全周とを連結する第3内面86と、を含む。
【0083】
図7(b)に示すように、接合子80を非鉄金属材21に圧入して溶接用金属体71を形成し、溶接により溶接用金属体71の接合子80と相手部材2との間に溶融部4を形成することで接合体70が製造される。図7(a)に示す圧入前の脚部83の第1内面84、第2内面85及び第3内面86が先端19へ向かうにつれて次第に拡径しているので、接合子80の圧入時に非鉄金属材21から脚部83へ径方向外側の力が加わる。そのため、図7(b)に示す溶接用金属体71において、非鉄金属材21に埋まった脚部83は、先端19へ向かうにつれて外周面17が径方向外側へ湾曲するように塑性変形している。この脚部83によって、非鉄金属材21の表面22を向く外周面17を含む引掛部が形成されるので、非鉄金属材21から接合子80を抜け難くできる。
【0084】
図7(a)に示す圧入前の脚部83に関し、仮想軸線Aを含む断面において、仮想軸線Aに対する傾斜角度は、第2内面85、第3内面86、第1内面84の順番で大きくなっている。さらに、第1内面84の軸方向寸法と、第2内面85の軸方向寸法との和よりも、第3内面86の軸方向寸法が大きい。このように、脚部83のうち第3内面86により肉厚が大きくなった部分の軸方向寸法が確保されたので、圧入時に脚部83を座屈し難くできる。また、第1内面84によって先細りさせた脚部83の先端19を非鉄金属材21に食い込ませ易くできる。さらに、傾斜角度の関係によって、第3内面86における脚部83に対して第2内面85における脚部83が径方向外側へ曲がり易いので、脚部83を非鉄金属材21から抜け難くできる。
【0085】
脚部83が仮想軸線Aを全周に亘って取り囲む筒状に形成されているので、接合子80を脚部83から非鉄金属材21に圧入したとき、本体部81に貫通孔82が無ければ、脚部83の内側における本体部81と非鉄金属材21との間に空気が残ることがある。なお、貫通孔82が無くても、真空中で接合子80を非鉄金属材21に圧入すれば、圧入後に本体部81と非鉄金属材21との間に空気を残らないようにできる。
【0086】
本実施形態では、接合面12に開口する貫通孔82が脚部83の内側に連通するので、非鉄金属材21への接合子80の圧入を真空中で行わなくても、圧入後に本体部81と非鉄金属材21との間に空気が残り難くなる。これにより、接合面12に当てた相手部材2と接合子80とを溶接するとき、接合子80から非鉄金属材21への熱の移動が、本体部81と非鉄金属材21との間の空気によって妨げられ難くなる。これにより、溶接時の接合子80の冷却が安定し、接合子80と相手部材2との間の溶融部4の形状や大きさが安定する。その結果、接合子80と相手部材2との溶接強度を向上できる。
【0087】
貫通孔82の内壁面が全周に亘って脚部83の第3内面86に連なるので、非鉄金属材21への接合子80の圧入時、貫通孔82の周囲の本体部81が脚部83の内側の非鉄金属材21で押され難くなり、接合面12の一部を盛り上がり難くできる。その結果、非鉄金属材21に圧入された接合子80の接合面12と相手部材2とを面接触させ易くできるので、接合子80と相手部材2との溶接強度を向上できる。
【0088】
貫通孔82の内壁面は、仮想軸線Aを含む断面において仮想軸線Aと平行である。これにより、パンチ等で接合面12を押して接合子80を非鉄金属材21に圧入するとき、脚部83から本体部81を介してパンチ等へ加わる仮想軸線Aの軸方向の力を接合面12の全体で均一に近づけることができる。その結果、圧入時に接合子80を座屈し難くできる。さらに、仮想軸線Aと平行な貫通孔82の内壁面は、非鉄金属材21から仮想軸線Aの軸方向の力を受け難いので、接合面12の一部が盛り上がり難くなる。
【0089】
次に図8(a)及び図8(b)を参照して第6実施形態について説明する。第5実施形態では、貫通孔82の内壁面が、仮想軸線Aを含む断面において仮想軸線Aと平行である場合について説明した。これに対して第6実施形態では、貫通孔94の内壁面が、仮想軸線Aを含む断面において脚部83へ向かうにつれて仮想軸線A側へ傾斜する場合について説明する。なお、第1,5実施形態と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。図8(a)は第6実施形態における接合子92の断面図である。図8(b)は接合体90の断面図である。図8(b)では、電極28,29(図3参照)による圧痕の図示を省略している。
【0090】
図8(a)に示すように、接合子92は、径方向の中央に貫通孔94が形成された円環板状の本体部93と、その本体部93から突出する円筒状の脚部83とを備え、それらが炭素含有量0.4質量%以下の低炭素鋼によって一体成形されている。接合子92は、仮想軸線Aに関して軸対称に形成されている。図8(a)及び図8(b)には、この仮想軸線Aを含む断面が示されている。また、図8(a)及び図8(b)には、本体部93と脚部83との境界95が二点鎖線で示される。
【0091】
本体部93は、接合面12と、接合面12の外周縁に連なる傾斜部15と、傾斜部15と脚部83の外周面17とを連結する平行部14と、を含む。貫通孔94は、接合面12に開口し、脚部83の内側(仮想軸線A側)に連通する。
【0092】
貫通孔94の内壁面は、仮想軸線Aを含む断面において仮想軸線Aと非平行であり、脚部83へ向かうにつれて仮想軸線A側へ傾斜する。貫通孔94の内壁面の下端は、全周に亘って脚部83の第3内面86に連なる。貫通孔94の内壁面の上端は、接合面12の外周縁に連なる。これにより、貫通孔94が形成された接合面12は、外周縁による線状の部位が残る。
【0093】
図8(b)に示すように、接合子92を非鉄金属材21に圧入して溶接用金属体91を形成し、溶接により溶接用金属体91の接合子92と相手部材2との間に溶融部4を形成することで接合体90が製造される。第5実施形態と同様に、非鉄金属材21に埋まった脚部83が引掛部を形成するので、非鉄金属材21から接合子92を抜け難くできる。さらに、本体部93に形成された貫通孔94によって、圧入後に本体部93と非鉄金属材21との間に空気が残り難くなる。
【0094】
接合子92を非鉄金属材21に圧入するとき、貫通孔94の形成により線状に残った接合面12の近傍が潰れて、接合面12の幅が若干広がる。それでも接合面12の幅が十分に狭いので、スポット溶接時、プロジェクション溶接のように、相手部材2に接触している狭い接合面12に電流が集中する。そのため溶接時、径方向の発熱の中心位置が安定すると共に、周方向に亘って発熱量が均一に近づく。その結果、接合子92と相手部材2との間の溶融部4を周方向に亘って均質化できるので、接合子92と相手部材2との接合強度を向上できる。
【0095】
次に図9(a)及び図9(b)を参照して第7実施形態について説明する。第1実施形態では、本体部11の裏面13が凹状である場合について説明した。これに対して第7実施形態では、本体部11の裏面103が凸状である場合について説明する。なお、第1実施形態と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。図9(a)は第7実施形態における接合子102の断面図である。図9(b)は接合体100の断面図である。図9(b)では、電極28,29(図3参照)による圧痕の図示を省略している。
【0096】
図9(a)に示すように、接合子102の本体部11の裏面103は、その全体が、径方向中央(仮想軸線A)へ向かうにつれて接合面12とは反対側へ膨らんだ凸状に形成されている。接合子102は、裏面103の形状以外が第1実施形態における接合子10と同一に構成される。
【0097】
図9(b)に示すように、接合子102を非鉄金属材21に圧入して溶接用金属体101を形成し、溶接により溶接用金属体101の接合子102と相手部材2との間に溶融部4を形成することで接合体100が製造される。脚部16が仮想軸線Aを全周に亘って取り囲む筒状に形成されているので、非鉄金属材21への接合子102の圧入後に、脚部16の内側における本体部11の裏面103と非鉄金属材21との間に空気が残ることがある。
【0098】
しかし、裏面103が凸状に形成されているので、その凸の周縁部(脚部16側)と非鉄金属材21との間に空気が集まり、凸の中央部(裏面103の径方向中央部)が非鉄金属材21に密着し易くなる。これにより、接合面12に当てた相手部材2と接合子102とを溶接するとき、接合子102から非鉄金属材21へ熱を移動させ易くできるので、溶接時の接合子102の冷却が安定し、接合子102と相手部材2との間の溶融部4の形状や大きさが安定する。その結果、接合子102と相手部材2との溶接強度を向上できる。
【0099】
さらに、接合子102には、第5,6実施形態のように接合面12に貫通孔82,94が開口していないので、貫通孔82,94がある場合と比べて溶融部4を大きくし易い。これにより、接合子102と相手部材2との溶接強度を向上できる。
【0100】
接合子102の裏面103と非鉄金属材21との接触部分の周縁よりも径方向内側に溶融部4が位置するように、裏面103の凸形状や溶接条件などを設定することが好ましい。これにより、接合子102と相手部材2との溶接時に発熱量が最も大きくなる部分であって溶融部4を形成しようとする部分(接合子102の径方向の中央部分)の熱を非鉄金属材21へ移動させ易くできる。その結果、溶接時の接合子102の冷却がより安定し、接合子102と相手部材2との間の溶融部4の形状や大きさがより安定する。
【0101】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。例えば、相手部材2のうち接合子10,30,52,62,80,92,102に溶接される部分が板状である場合に限らず、接合子10,30,52,62,80,92,102と溶接可能であれば、相手部材2の形状を自由に設定しても良い。また、非鉄金属材21,42のうち接合子10,30,52,62,80,92,102が圧入される部分が板状である場合に限らず、接合体1,40,50,60,70,90,100を形成したときに相手部材2に面する所定面を含んでいれば、非鉄金属材21,42の形状を自由に設定しても良い。非鉄金属材を2枚以上重ねた部分に接合子10,30,52,62,80,92,102を圧入しても良い。
【0102】
アルミニウム合金製の非鉄金属材21への圧入に適したビッカース硬さの素材によって接合子10が形成される場合について説明したが、非鉄金属材21を形成する金属素材に応じて、接合子10の素材のビッカース硬さを適宜変更しても良い。また、比較的溶接が簡単な低炭素鋼により接合子10が形成される場合について説明したが、必ずしもこれに限らない。溶接方法などに応じて、炭素含有量が0.4質量%よりも多い鋼によって接合子10を形成しても良い。
【0103】
上記形態では、接合面12が平面状である場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。相手部材2との関係で、接合面を湾曲面状などに形成しても良い。接合面が湾曲面状である場合の仮想軸線Aとは、その湾曲面の所定位置の接平面と直交する軸である。また、接合面12の一部に突起や凹みを設けても良い。
【0104】
接合子10,30,52,62,80,92,102は、非鉄金属材21,42に圧入されたとき、非鉄金属材21,42の表面(所定面)22を向く面を含む引掛部を備えていれば、本体部11,31,63,81,93や脚部16,34,54,83の形状を適宜変更しても良い。例えば、四角平板状の本体部の表面を接合面12とし、本体部の裏面の中心から突出する脚部の先端に引掛部を設けて接合子を形成しても良い。
【0105】
上記第1~3,5~7実施形態では、接合子10,30,52,80,92,102の脚部16,34,54,83が仮想軸線Aを中心とする筒状である場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。脚部16,34,54を仮想軸線Aまわりに断続的に設けても良い。この場合、貫通孔82,94がなくても、断続的に設けた脚部16,34,54の間から、本体部11,31,81,93と非鉄金属材21との間の空気を抜くことができる。
【0106】
また、脚部16,34,54,83を角筒状に形成しても良い。板状の脚部16,34,54を仮想軸線Aを挟んだ両側に設けても良い。この脚部16,34,54,83の外周面17,35(第1外面55)が連なる位置における本体部11,31,81,93の外周面に、接合面12に連なる傾斜部15,32があることが好ましい。これにより、接合子を非鉄金属材21,42に圧入するとき、本体部11,31,81,93が脚部16,34,54,83に押されて盛り上がろうとする変形を、傾斜部15,32の変形によって吸収できる。
【0107】
脚部16,34,54の有無にかかわらず、接合面12に連なる傾斜部15,32を設けなくても良い。また、脚部16,34,54,83に対して径方向外側へ張り出す鍔を本体部11,31,81,93に設けても良い。この場合、本体部11,31,81,93のうち圧入時に脚部16,34,54,83に押される部分よりも外側に鍔があるので、接合面12の外周縁をパンチとクランパーとの間に入り込み難くできる。
【0108】
上記形態では、接合面12と非鉄金属材21,42の表面22とが面一になるまで、接合子10,30,52,62,80,92,102を非鉄金属材21,42に圧入する場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。表面22から接合子10,30,52,62,80,92,102が1mm以上出ていても良い。
【0109】
上記第5,6実施形態では、本体部81,93に設けた貫通孔82,94の内壁面が脚部83の内面(第3内面86)に全周に亘って連なり、脚部83の内側に裏面13(図1等参照)が残っていない場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。貫通孔の内壁面が脚部83の内面に連ならず、脚部83の内側に裏面13が残るように、貫通孔を本体部81,93に形成しても良い。この場合、複数の貫通孔を本体部81,93に形成しても良い。また、第1~4実施形態における接合子10,30,52,62の本体部11,31,63に貫通孔を形成しても良い。
【0110】
例えば、図10に示すように、本体部11の径方向の中央に貫通孔111を設けた接合子110を形成しても良い。接合子110は、本体部11に貫通孔111が形成された点以外は、第1実施形態における接合子10と同一に構成される。貫通孔111は、接合面12に開口し、脚部16の内側に連通するように裏面13に開口する。貫通孔111の内径は、仮想軸線Aの軸方向に亘って一定であり、脚部16の内径よりも小さい。この貫通孔111の内径は、接合子110の圧造時に形成可能な最小寸法(例えば2mm程度)に設定される。これにより、貫通孔111を設けた接合子110を圧造により形成できると共に、貫通孔111を設けた接合子110を相手部材2に溶接するとき、溶融部4の形成に対する貫通孔111の影響を最小限に抑えることができる。
【0111】
また、貫通孔82,94,111が接合面12に開口する場合に限らず、本体部11,31,63,81,93の外周面(平行部14や傾斜部15,32)又は脚部16,34,54,83の外周面17,35に貫通孔を開口させても良い。この開口位置が接合面12に近い程、圧入後に本体部11,31,63,81,93と非鉄金属材21との間に空気を残り難くできる。
【0112】
さらに、貫通孔が脚部16,34,54,83の内側に連通すれば、脚部16,34,54,83の内周面(先端内面18aや基端内面18b、第1内面84等)に貫通孔を開口させても良い。なお、この開口位置が、裏面13や境界87,95に近い程、圧入後に本体部11,31,63,81,93と非鉄金属材21との間に空気を残り難くできる。
【0113】
上記第7実施形態では、本体部11の裏面103の全体が径方向中央(仮想軸線A)へ向かうにつれて接合面12とは反対側へ膨らんだ凸状に形成されている場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。第2実施形態における本体部31等に凸状の裏面103を設けても良い。また、本体部11,31の裏面の一部が、その周囲の部位に対して接合面12とは反対側へ膨らんでいれば良い。例えば、仮想軸線Aと垂直な平坦面を含む凸部を、本体部11,31の裏面の一部を段差状に膨らませることで形成しても良い。
【符号の説明】
【0114】
1,40,50,60,70,90,100 接合体
2 相手部材
4 溶融部
10,30,52,62,80,92,102,110 接合子
11,31,63,81,93 本体部
12 接合面
13,103 裏面
14 平行部
15,32 傾斜部
16,34,83 脚部(引掛部)
17,35 外周面(外面)
20,41,51,61,71,91,101 溶接用金属体
21,42 非鉄金属材
22 表面(所定面)
54 脚部
55 第1外面(外面の一部)
56 第2外面(外面の一部)
57,65 引掛部
82,94,111 貫通孔
A 仮想軸線
B1,B2 境界
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10