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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】コネクタのハウジング
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/42 20060101AFI20240305BHJP
【FI】
H01R13/42 E
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020135596
(22)【出願日】2020-08-11
(65)【公開番号】P2022032101
(43)【公開日】2022-02-25
【審査請求日】2023-06-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】中村 将寿
(72)【発明者】
【氏名】石川 淳
【審査官】高橋 学
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-232582(JP,A)
【文献】特開平09-147954(JP,A)
【文献】特開昭62-190673(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/40-13/533
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
端子収容部とリテーナ収容部とヒンジ係止部とを具備するハウジング本体と、
前記リテーナ収容部に収容されることで前記端子収容部に収容された端子を係止するリテーナと、
前記リテーナと前記ハウジング本体とをつないでいるヒンジ部と、
前記ヒンジ部に設けられ前記リテーナが前記リテーナ収容部に収容されるときに前記ヒンジ係止部に係止される被係止部と、
を有し、
前記ヒンジ部は、前記ハウジング本体から延出している第1のヒンジ本体部と、この第1のヒンジ本体部から突出している中間部と、この中間部から延出している第2のヒンジ本体部とを備えて構成されており、
前記被係止部が前記中間部に設けられており、
前記第1のヒンジ本体部が変形することで、前記ヒンジ係止部に前記被係止部が係止されるように構成されており、
前記ヒンジ係止部に前記被係止部が係止されている状態で、前記第2のヒンジ本体部が第1の変形をすることで、前記リテーナが前記リテーナ収容部に係合し、この係合によって、前記端子を前記端子収容部に収容するときのガイド部が前記リテーナによって形成されるように構成されているコネクタのハウジング。
【請求項2】
前記第2のヒンジ本体部が第2の変形をすることで、前記リテーナが前記リテーナ収容部に収容され、前記リテーナが前記端子収容部に収容された端子を係止するように構成されている請求項に記載のコネクタのハウジング。
【請求項3】
前記リテーナが前記リテーナ収容部に収容され前記リテーナが前記端子収容部に収容された端子を係止している状態で、前記端子が前記ハウジング本体から抜ける方向の力が前記端子にかかった場合、前記力が前記リテーナと前記第2のヒンジ本体部と前記被係止部とを介して前記ハウジング本体のヒンジ係止部に伝達され、前記リテーナの、前記力の方向での移動が阻止されるように構成されている請求項に記載のコネクタのハウジング。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタのハウジングに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ハウジング本体と、リテーナと、リテーナとハウジング本体とをつないでいるヒンジ部とを備えたコネクタのハウジングが知られている(特許文献1参照)。ヒンジ部は、ヒンジ本体部と連結部とで構成されている。ヒンジ本体部は可撓性を備えておりハウジング本体につながっている。連結部は、ヒンジ本体部とリテーナとをつないでいる。
【0003】
ハウジング本体には、端子が収容される端子収容部とリテーナが収容されるリテーナ収容部とが設けられている。そして、端子収容部に端子が収容された状態で、ヒンジ本体部が撓んで変形しリテーナがリテーナ収容部に収容されるようになっている。この収容されたリテーナによって端子収容部に収容された端子を係止するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-220143号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来のコネクタのハウジングでは、上述したように、ヒンジ本体部を変形させることで、リテーナをリテーナ収容部に収容している。また、従来のコネクタのハウジングでは、リテーナ収容部の下方にリテーナが位置しないように形成している。そして、アンダーカットが発生することを防ぎコネクタのハウジングの成形をしやすくしている。このように形成されていることで、ハウジング本体とリテーナとの距離の値(ヒンジ部の長さ寸法の値)が大きくなっている。これにより、リテーナがリテーナ収容部に収容されている状態で、ヒンジ部がハウジング本体から離れヒンジ部のハウジング本体からの浮き上がりが発生するおそれがある。
【0006】
そして、ヒンジ部の浮き上がりによって、リテーナ収容部に収容されているリテーナの、ハウジング本体(リテーナ収容部)に対する位置ずれ等が発生し、リテーナによる端子の保持機能が悪化する(端子保持力が弱まる)おそれがある。
【0007】
本発明は、リテーナがリテーナ収容部に収容されている状態でのヒンジ部の浮き上がりを防止することで、リテーナによる端子の保持機能を維持することができるコネクタのハウジングを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の態様に係るコネクタのハウジングは、端子収容部とリテーナ収容部とヒンジ係止部とを具備するハウジング本体と、前記リテーナ収容部に収容されることで前記端子収容部に収容された端子を係止するリテーナと、前記リテーナと前記ハウジング本体とをつないでいるヒンジ部と、前記ヒンジ部に設けられ前記リテーナが前記リテーナ収容部に収容されるときに前記ヒンジ係止部に係止される被係止部とを有する。
【0009】
また、本発明の態様に係るコネクタのハウジングでは、前記ヒンジ部が、前記ハウジング本体から延出している第1のヒンジ本体部と、この第1のヒンジ本体部から突出している中間部と、ここの中間部から延出している第2のヒンジ本体部とを備えて構成されており、前記被係止部が前記中間部に設けられている。
【0010】
また、本発明の態様に係るコネクタのハウジングでは、前記第1のヒンジ本体部が変形することで、前記ヒンジ係止部に前記被係止部が係止されるように構成されており、前記ヒンジ係止部に前記被係止部が係止されている状態で、前記第2のヒンジ本体部が第1の変形をすることで、前記リテーナが前記リテーナ収容部に係合し、この係合によって、前記端子を前記端子収容部に収容するときのガイド部が前記リテーナによって形成されるように構成されている。
【0011】
また、本発明の態様に係るコネクタのハウジングでは、前記第2のヒンジ本体部が第2の変形をすることで、前記リテーナが前記リテーナ収容部に収容され、前記リテーナが前記端子収容部に収容された端子を係止するように構成されている。
【0012】
また、本発明の態様に係るコネクタのハウジングでは、前記リテーナが前記リテーナ収容部に収容され前記リテーナが前記端子収容部に収容された端子を係止している状態で、前記端子が前記ハウジング本体から抜ける方向の力が前記端子にかかった場合、前記力が前記リテーナと前記第2のヒンジ本体部と前記被係止部とを介して前記ハウジング本体のヒンジ係止部に伝達され、前記リテーナの、前記力の方向での移動が阻止されるように構成されている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、リテーナがリテーナ収容部に収容されている状態でのヒンジ部の浮き上がりを防止することで、リテーナによる端子の保持機能を維持することができるコネクタのハウジングを提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態に係るコネクタのハウジングと端子との斜視図である。
図2図1におけるII矢視図である。
図3図2におけるIII-III断面を示す図である。
図4図3におけるIV部の拡大図である。
図5】本発明の実施形態に係るコネクタのハウジングに収容される端子の斜視図である。
図6図3に対応する図であって、ヒンジ部で1段目の曲げがされた状態を示す図である。
図7図3に対応する図であって、ヒンジ部で2段目の曲げがされ、端子が端子収容部に収容される前の状態を示す図である。
図8図3に対応する図であって、ヒンジ部で2段目の曲げがされ、端子が端子収容部に収容された後の状態を示す図である。
図9図3に対応する図であって、ヒンジ部で3段目の曲げがされた状態を示す図である。
図10図9におけるX部の拡大図である。
図11】比較例に係るコネクタのハウジングを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施形態に係るコネクタのハウジング1は、図1図4で示すように、ハウジング本体3と端子係止部5とリテーナ7とヒンジ部9と被係止部11とを備えて構成されている。なお、端子係止部5を第1の端子係止部もしくはランスと呼んでもよいし、リテーナ7を第2の端子係止部と呼んでもよいし、被係止部11を係止片もしくはヒンジ被係止部と呼んでもよい。
【0016】
ここで、説明の便宜にために、コネクタのハウジングにおける所定の一方向を前後方向とし、この前後方向に対して直交する所定の他の一方向を縦方向とし、前後方向と縦方向に対して直交する方向を横方向とする。
【0017】
ハウジング本体3は、端子収容部13とリテーナ収容部15とヒンジ係止部17とを具備している。端子収容部13には、端子19が収容されるようになっている。端子(たとえば端子金具)19は、図5で示すように、電線21の端部に設置されている。
【0018】
第1の端子係止部5は、ハウジング本体3に設けられており、端子収容部13に収容された端子19を係止(1次係止)するようになっている。そして、端子19の抜け止めをするようになっている。第2の端子係止部7は、リテーナ収容部15に収容されることで端子収容部13に収容された端子19を係止(2次係止)するようになっている。そして、端子19の抜け止めをするようになっている。
【0019】
第1の端子係止部5と第2の端子係止部7とによって、端子収容部13に収容された端子19の抜け止めが2重にされるようになっている。また、第1の端子係止部5による端子19の抜け止めは、端子19を端子収容部13に挿入するだけでされるようになっている。第2の端子係止部7による端子19の抜け止めは、端子19の端子収容部13への挿入完了後、リテーナ7をリテーナ収容部15に設置することでされるようになっている。
【0020】
ヒンジ部9は、リテーナ7とハウジング本体3とをつないでいる。ヒンジ部9はハウジング本体3から所定の長さだけ延出しており、ヒンジ部9の基端はハウジング本体3の所定の部位に接続されている。リテーナ7はヒンジ部9の先端から所定の長さだけ突出しており、リテーナ7の基端はヒンジ部9の先端に接続されている。
【0021】
被係止部11は、ヒンジ部9に設けられている。被係止部11は、リテーナ7がリテーナ収容部15に収容されるときおよびリテーナ7がリテーナ収容部15に収容されたときに、ヒンジ係止部17に係止されるようになっている。
【0022】
コネクタのハウジング1は、金型(図示せず)を用いて合成樹脂で一体成形されている。金型から出てきた状態であってコネクタのハウジング1に重力以外の力がなんら加わっていない状態では、図3で示す形状になっている。
【0023】
すなわち、コネクタのハウジング1の成形に使用する金型のコアとキャビティとで形成される空間の形状が、図3で示すコネクタのハウジング1の形状になっている。ここで、金型から出てきた状態であってコネクタのハウジング1に重力以外の力がなんら加わっていない状態を、コネクタのハウジング金型開放状態とする。
【0024】
ハウジング本体3の端子収容部13は、前後方向に延びている四角柱状の凹部23で形成されている。リテーナ収容部15は、ハウジング本体3に形成された貫通孔25で構成されている。貫通孔25は、ハウジング本体3を縦方向で貫通して端子収容部13とハウジング本体3の外側に空間とをつないでいる。
【0025】
さらに、リテーナ収容部15の貫通孔25は、縦方向で端子収容部13の凹部23の一方の側である第1の側(図3では下側)からハウジング本体3の第1の側の外部に向かって、ハウジング本体3の薄い肉部を貫通している。
【0026】
コネクタのハウジング金型開放状態でのコネクタのハウジング1は、縦方向の第1の側で、リテーナ7とヒンジ部9とが、ハウジング本体3から離れる方向に延びている。さらに説明すると、リテーナ7とヒンジ部9とが、ハウジング本体3の第1の側の外面から縦方向に直線状になってハウジング本体3から離れる方向(図3では下側)に延びている。
【0027】
また、コネクタのハウジング金型開放状態でのコネクタのハウジング1では、ヒンジ部9とリテーナ7とに、成形のときのアンダーカットが発生しない形状になっている。
【0028】
コネクタのハウジング金型開放状態でのコネクタのハウジング1は、前後方向で、リテーナ7およびヒンジ部9と、リテーナ収容部15の貫通孔25の位置とがお互いにずれている。すなわち、前後方向で、リテーナ7およびヒンジ部9が、リテーナ収容部15の貫通孔25から前後方向の前側に離れている。
【0029】
コネクタのハウジング1において、仮に、リテーナ収容部15の貫通孔25の下方(図3における貫通孔25のほぼ真下)にリテーナ7が位置するように形成する。すると、貫通孔25を成形する金型の部位がリテーナ7に干渉してしまい、上記部位をそのまま下方に抜くことが出来ず、所謂アンダーカットが発生してしまう。
【0030】
上記形態で、金型の開き位置を変えたり分割したりすれば、コネクタのハウジング1を金型から取り出すことはできるが、金型の構造が複雑化してしまう。
【0031】
これに対してコネクタのハウジング1では、貫通孔25の下方の領域に干渉しないようにリテーナ7を配置しているので、アンダーカットが発生せず、コネクタのハウジング1の成形がし易くなっている。
【0032】
ヒンジ部9は、第1のヒンジ本体部27と中間部29と第2のヒンジ本体部31とを備えて構成されている。第1のヒンジ本体部27は、ハウジング本体3から所定の長さだけ延出している。中間部29は、第1のヒンジ本体部27から所定の長さだけ突出している。第2のヒンジ本体部31は、中間部29から所定の長さだけ延出している。
【0033】
第1のヒンジ本体部27の基端はハウジング本体3に接続されている。中間部29の基端は第1のヒンジ本体部27の先端に接続されている。第2のヒンジ本体部31の基端は中間部29の先端に接続されている。リテーナ7は第2のヒンジ本体部31の先端から所定の長さだけ突出しており、リテーナ7の基端は第2のヒンジ本体部31の先端に接続されている。
【0034】
すなわち、第1のヒンジ本体部27と中間部29と第2のヒンジ本体部31とリテーナ7とがこの順につながってハウジング本体3から延出している。また、ヒンジ部9の長手方向(図3では上下方向)で、中間部29はヒンジ部9の中央に配置されている。被係止部11は、中間部29に設けられている。ヒンジ部9の長手方向は、コネクタのハウジング金型開放状態では縦方向と一致している。
【0035】
また、第1のヒンジ本体部27と第2のヒンジ本体部31とは可撓性(弾性)を備えている。中間部29とリテーナ7とは、ごく僅かな弾性を備えているが、第1のヒンジ本体部27および第2のヒンジ本体部31と比べると、ほぼ剛体とみなせる程度の剛性を備えている。ハウジング本体3も当然、ほぼ剛体とみなせる程度の剛性を備えている。
【0036】
ハウジング本体3と第1のヒンジ本体部27と中間部29と第2のヒンジ本体部31とリテーナ7とは同一材料で一体成形されている。したがって、ハウジング本体3と第1のヒンジ本体部27と中間部29と第2のヒンジ本体部31とリテーナ7との剛性はもっぱらこれらの形状によって異なっているのである。また、第1のヒンジ本体部27と第2のヒンジ本体部31とお互いが独立して変形(弾性変形)可能になっている。
【0037】
コネクタのハウジング1では、第1のヒンジ本体部27が変形することで、図6で示すように、ヒンジ係止部17に被係止部11が係止されるように構成されている。すなわち、ヒンジ部9で1段目の曲げがされることで、ヒンジ係止部17に被係止部11が係止されるように構成されている。
【0038】
また、コネクタのハウジング1では、ヒンジ係止部17に被係止部11が係止されている状態で、第2のヒンジ本体部31が第1の変形をすることで、リテーナ7がリテーナ収容部15に係合するように構成されている。すなわち、ヒンジ部9で2段目の曲げがされることで、リテーナ7がリテーナ収容部15に係合するように構成されている。
【0039】
リテーナ7のリテーナ収容部15への係合によって、リテーナ7が第1の係止状態になる。そして、図7図8で示すように、リテーナ収容部15の貫通孔25が塞がれ、端子19を端子収容部13に収容するときのガイド部33がリテーナ7によって形成されるように構成されている。
【0040】
さらに説明すると、端子収容部13は、上述したように、ハウジング本体3に形成されているたとえば四角柱状の凹部23で形成されている。リテーナ収容部15は、ハウジング本体3に形成され端子収容部13とハウジング本体3の外側に空間とをつないでいる貫通孔25で形成されている。そして、リテーナ7が第1の係止状態になっていることで、リテーナ収容部15を構成している貫通孔25が塞がれる。これにより、端子収容部13の四角柱側面状の内壁が、凹凸が被存在である滑らかな形状になる。すなわち、第1の端子係止部5を除けば、端子収容部13の内壁が四角柱の側面形状になる。
【0041】
端子収容部13の内壁が滑らかな形状になっていることで、リテーナ収容部15の貫通孔25が塞がれていない状態に比べ、ハウジング本体3に端子19を挿入して設置するときの端子19の引っ掛かりが無くなる。
【0042】
なお、リテーナ7が第1の係止状態になっているときに、リテーナ収容部15を構成している貫通孔25が必ずしも完全に塞がれている必要はない。すなわち、リテーナ7が第1の係止状態になっている状態で、ハウジング本体3に端子19を挿入して設置するときの端子19の引っ掛かりが無くすることができるのであれば、貫通孔25が完全に塞がれている必要はない。たとえば、端子収容部13の内壁の一部に端子19が引っ掛からない程度の小さい凹部(リテーナ収容部15の貫通孔25のなごり)が存在していてもよい。
【0043】
また、コネクタのハウジング1では、リテーナ7が第1の係止状態になっている状態で、第2のヒンジ本体部31が第2の変形をすると、リテーナ7がリテーナ収容部15に収容されるように構成されている。すなわち、ヒンジ部9に3段目の曲げがされることで、リテーナ7がリテーナ収容部15に収容され、リテーナ7が第2の係止状態になって、ハウジング本体3に係止されるように構成されている。そして、リテーナ7が端子収容部13に収容された端子19を係止するように構成されている。
【0044】
リテーナ収容部15には、当接部35が設けられており、リテーナ7には、被当接部37が設けられている。リテーナ7がリテーナ収容部15に収容されリテーナ7が端子収容部13に収容された端子19を係止している状態をリテーナ7の端子係止状態とする。リテーナ7の端子係止状態で端子19がハウジング本体3から抜ける方向の力が端子19にかかった場合、上記力がリテーナ7に伝達される。このときに、被当接部37が当接部35に当接し、リテーナ7の、上記力の方向での移動が阻止されるように構成されている。なお、上記力の方向は、前後方向で後側から前側に向かう方向の力である。
【0045】
また、リテーナ7の端子係止状態で、端子19がハウジング本体3から抜ける方向の力が端子19にかかった場合、上記力がリテーナ7と第2のヒンジ本体部31と被係止部11とを介してハウジング本体3のヒンジ係止部17に伝達されるようになっている。これにより、リテーナ7の、上記力の方向での移動が阻止されるように構成されている。
【0046】
被係止部11は、中間部29に設けられている凸部39で構成されており、ヒンジ係止部17は、ハウジング本体3に設けられている凹部41で構成されている。ヒンジ係止部17に被係止部11が係止されている状態では、被係止部11を構成している凸部39がヒンジ係止部17を構成している凹部41に入り込む方向の付勢力が付与されるように構成されている。上記付勢力は、第1のヒンジ本体部27の復元力により付与されるように構成されている。
【0047】
また、リテーナ7の端子係止状態での、端子19がハウジング本体3から抜ける方向の力は、被係止部11を構成している凸部39がヒンジ係止部17を構成している凹部41に入り込む方向の力と一致している。
【0048】
なお、被係止部11が中間部29に設けられている凹部で構成されており、ヒンジ係止部17がハウジング本体3に設けられている凸部で構成されていてもよい。この場合も、上記付勢力と同様な付勢力が付与されるようになっている。
【0049】
コネクタのハウジング1についてさらに詳しく説明すると、ハウジング本体3は概ね直方体状に形成されている。
【0050】
端子収容部13は、上述したように、前後方向に細長い四角柱状の凹部23で構成されている。凹部23は、ハウジング本体3の、前後方向の前端から後側に向かって凹んでいる。凹部23の後端には、当接壁43が設けられている。端子収容部13に端子19を設置し終えた状態では、端子19の後端が当接壁43に当接するようになっている。
【0051】
当接壁43には、貫通孔45が設けられている。この貫通孔45を通して、ハウジング本体3の後側から前側に向かってオス端子(図示せず)挿入されることで、上記オス端子がコネクタのハウジング1に設置され、上記オス端子が端子19に接続されるようになっている。
【0052】
第1の端子係止部5は、片持ち梁状に形成されており、リテーナ収容部15内に配置されている。端子19を端子収容部13に挿入しているときに端子19によって押されることで第1の端子係止部5は撓むようになっている。
【0053】
端子19を端子収容部13に挿入し終えたときに第1の端子係止部5が復元する。そして、第1の端子係止部5の後端部に設けられている当接壁47(図8参照)が端子19の被当接部(第1の被当接部;係止部)49(図5参照)に当接し、端子19のコネクタのハウジング1からの抜け止めがされるようになっている。
【0054】
また、端子収容部13は、図2で示すように、複数設けられており、横方向で所定の間隔をあけて配置されている。第1の端子係止部5は、複数の端子収容部13のそれぞれに設けられている。リテーナ7およびヒンジ部9および被係止部11およびヒンジ係止部17は、複数の端子収容部13に対して1つ設けられている。
【0055】
なお、リテーナ7およびヒンジ部9および被係止部11およびヒンジ係止部17が、複数設けられていてもよい。たとえば、複数の端子収容部13のそれぞれに、リテーナ7およびヒンジ部9および被係止部11およびヒンジ係止部17が設けられていてもよい。また、リテーナ7およびヒンジ部9および被係止部11およびヒンジ係止部17が、複数の端子収容部13のうちの一群の複数の端子収容部13に対して1つ設けられていてもよい。
【0056】
図5で示すように、端子19は、概ね四角柱状に形成されており、上述した第1の被当接部49と第2の被当接部51とが設けられている。第2の被当接部51は、リテーナ7の端子係止状態でリテーナ7に当接するようになっている。また、端子19からは電線21が延出している。
【0057】
ハウジング本体3の縦方向の第1の側には、図3等で示すように、矩形な板状の突部53が設けられている。突部53は、前後方向では前端部に位置している。ヒンジ係止部17は、突部53に設けられた凹部(たとえば貫通孔)41で構成されている。貫通孔41は、四角柱状に形成されており、前後方向で突部53を貫通している。
【0058】
ヒンジ部9は、薄板状の第1のヒンジ本体部27と直方体状の中間部29と薄板状の第2のヒンジ本体部31とを備えて構成されている。コネクタのハウジング金型開放状態では、第1のヒンジ本体部27の厚さ方向が前後方向になっており、第2のヒンジ本体部31の厚さ方向も前後方向になっている。
【0059】
被係止部11は、図4で示すように、中間部29に形成されている凸部39を備えて構成されており、凸部39に脇には、被当接部55が形成されている。図6で示すように、被係止部11がヒンジ係止部17に係止された状態では、凸部39が凹部41に嵌り込んでいる。また、被係止部11がヒンジ係止部17に係止された状態では、被当接部55が、突部53の、凹部41の脇に設けられている当接部56に当接している。なお、被係止部11がヒンジ係止部17に係止された状態で、凸部39が凹部41に締り嵌め状態で嵌り込んでいてもよいし、中間嵌め状態で嵌り込んでいてもよいし、隙間嵌め状態で嵌り込んでいてもよい。
【0060】
リテーナ7は、図4で示すように、横方向に対して直交する断面の形状が、後述する突部57を除くと台形に近似した所定形状になっている。また、突部57はリテーナ7の先端から突出している。リテーナ7の1つの辺部(台形の上底に相当)には、ガイド部33を構成する溝状の凹部59が形成されている。台形の他の1つの辺部には、被係止片(被係止部)61、63が設けられている。台形のさらなる他の1つの辺部は、被当接部37になっている。
【0061】
リテーナ収容部15を構成している貫通孔25には、当接部35と係止片(係止部)65とが設けられている。当接部35は、貫通孔25の後側の斜面で形成されており、係止片65は、貫通孔25の後側の面67とこの後側の面67から突出している突部69とを備えて構成されている。
【0062】
突部57は、図9で示すように、リテーナ7の端子係止状態で、ハウジング本体3に当接し、リテーナ7の端子係止状態よりもリテーナ7が、図9の上方にさらに回動することを規制している。被係止片61は、図7図8で示すように、第2のヒンジ本体部31が第1の変形をしている状態(ヒンジ部9で2段目の曲げがされている状態)で、係止片65に係止されるようになっている。
【0063】
被係止片63は、図9図10で示すように、リテーナ7の端子係止状態で、係止片65に係止されるようになっている。また、被係止片61は、リテーナ7の端子係止状態で、端子19に当接し、端子19が後側に移動することを防止するようになっている。すなわち、端子19の抜け止めをするようになっている。
【0064】
次に、コネクタのハウジング1への端子19の設置について説明する。
【0065】
初期状態として、コネクタのハウジング1は、図3で示すように、コネクタのハウジング金型開放状態になっており、端子19は、コネクタのハウジング1に設置されていないものとする。
【0066】
上記初期状態で、ヒンジ部9で1段目の曲げをし(図3の矢印A3を参照)、被係止部11をヒンジ係止部17に係止する(図6参照)。
【0067】
続いて、ヒンジ部9で2段目の曲げをすると(図6の矢印A6を参照)、リテーナ7が第1の係止状態になる(図7参照)。リテーナ7が第1の係止状態になっている状態で、端子19を設置する(図8参照)。
【0068】
続いて、ヒンジ部で3段目の曲げをすると(図8の矢印A8を参照)、リテーナ7が第2の係止状態になり(図7参照)、端子19のコネクタのハウジング1への設置が終了する(図9図10参照)。
【0069】
コネクタのハウジング1には、リテーナ7とハウジング本体3とをつないでいるヒンジ部9と、ヒンジ部9に設けられリテーナ7がリテーナ収容部15に収容されるときにヒンジ係止部17に係止される被係止部11とが設けられている。これにより、リテーナ7がリテーナ収容部15に収容されている状態で、ヒンジ部9のハウジング本体3からの浮き上がりが防止される。そして、ヒンジ部9の浮き上がりが防止されることで、リテーナ7による端子19の保持機能(端子保持力)を維持することができる。
【0070】
比較例に係るコネクタのハウジング301は、図11で示すように、ハウジング本体303と、リテーナ305と、リテーナ305とハウジング本体303とをつないでいるヒンジ部307とを備えている。ヒンジ部307は、ヒンジ本体部309と連結部311とで構成されている。ヒンジ本体部309は可撓性を備えておりハウジング本体303につながっている。連結部311は、ヒンジ本体部309とリテーナ305とをつないでいる。
【0071】
ハウジング本体303には、端子が収容される端子収容部313とリテーナ305が収容されるリテーナ収容部315とが設けられている。そして、端子収容部313に端子が収容された状態で、ヒンジ本体部309が撓んで変形しリテーナ305がリテーナ収容部315に収容されるようになっている。この収容されたリテーナ305によって端子収容部313に収容された端子を係止するようになっている。
【0072】
比較例に係るコネクタのハウジング301は、上述したように、ヒンジ本体部309を変形させることで、リテーナ305をリテーナ収容部315に収容している。しかし、比較例に係るコネクタのハウジング301では、リテーナ収容部315の下方(図11(a)おけるリテーナ収容部315のほぼ真下)にリテーナ305が位置しないように形成している。そして、アンダーカットが発生することを防ぎコネクタのハウジング301の成形をしやすくしている。このように形成されていることで、ハウジング本体303とリテーナ305との距離の値(ヒンジ部307の長さ寸法の値)が大きくなっている。これにより、リテーナ305がリテーナ収容部315に収容されている状態で、ヒンジ部307のハウジング本体303からの浮き上がりが発生するおそれがある。
【0073】
また、コネクタのハウジング1では、被係止部11が、ヒンジ部9の中間に位置している中間部29に設けられている。これにより、ヒンジ部9の長手方向の中間部29をハウジング本体3に係止することができ、ヒンジ部9の浮き上がりを一層的確に防止することができる。
【0074】
また、コネクタのハウジング1では、第1のヒンジ本体部27が変形することで、ヒンジ係止部17に被係止部11が係止されるように構成されている。これにより、ヒンジ部9の可撓性を有する部位が第2のヒンジ本体部31のみになり、ヒンジ部9の長さが短くなったことと同様の形態になる。これにより、リテーナ7のリテーナ収容部15への係合がしやすくなる。
【0075】
また、コネクタのハウジング1では、ヒンジ係止部17に被係止部11が係止されている状態で、第2のヒンジ本体部31が第1の変形をすることで、リテーナ7がリテーナ収容部15に係合するようになっている。そして、上記係合によって、端子19を端子収容部13に収容するときのガイド部33がリテーナによって形成されるように構成されている。これにより、リテーナ7を有効活用することで、端子収容部13への端子19の収容するときの端子19の引っかかりが無くなり端子19の設置を容易にすることができる。
【0076】
また、コネクタのハウジング1では、第2のヒンジ本体部31が第2の変形をすることで、リテーナ7がリテーナ収容部15に収容され、リテーナ7が端子収容部13に収容された端子19を係止するように構成されている。これにより、端子収容部13への端子19の収容がされた後の端子19の抜け止めを、端子19をガイドすることができるリテーナ7によって確実にすることができる。
【0077】
また、コネクタのハウジング1では、端子19がハウジング本体3から抜ける方向の力が端子19にかかった場合、上記力がリテーナ7と第2のヒンジ本体部31と被係止部11とを介してハウジング本体3のヒンジ係止部17に伝達される。そして、リテーナ7の、上記力の方向での移動が阻止されるように構成されている。これにより、ハウジング本体3のリテーナ収容部15へのリテーナ7の収容状態を確実に維持することができる。
【0078】
また、コネクタのハウジング1では、被係止部11が中間部29に設けられている凸部39で構成されており、ヒンジ係止部17が、ハウジング本体3に設けられている凹部41で構成されている。そして、ヒンジ係止部17に被係止部11が係止されている状態では、被係止部11を構成している凸部39がヒンジ係止部17を構成している凹部41に入り込む方向の付勢力が、第1のヒンジ本体部27の復元力により付与されるように構成されている。これにより、被係止部11がヒンジ係止部17に係止されている状態を確実に維持することができる。
【0079】
以上、本実施形態を説明したが、本実施形態はこれらに限定されるものではなく、本実施形態の要旨の範囲内で種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0080】
1 コネクタのハウジング
3 ハウジング本体
7 リテーナ
9 ヒンジ部
11 被係止部(ヒンジ被係止部)
13 端子収容部
15 リテーナ収容部
17 ヒンジ係止部
19 端子
27 第1のヒンジ本体部
29 中間部
31 第2のヒンジ本体部
33 ガイド部
39 凸部
41 凹部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11