(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】固体含有液体移送装置、および固体含有液体移送方法
(51)【国際特許分類】
C02F 11/00 20060101AFI20240305BHJP
B01D 21/24 20060101ALI20240305BHJP
B01D 21/30 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
C02F11/00 A
B01D21/24 D ZAB
B01D21/24 H
B01D21/24 S
B01D21/30 F
B01D21/30 G
(21)【出願番号】P 2020158358
(22)【出願日】2020-09-23
【審査請求日】2023-02-02
(73)【特許権者】
【識別番号】591030651
【氏名又は名称】水ing株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118500
【氏名又は名称】廣澤 哲也
(74)【代理人】
【氏名又は名称】渡邉 勇
(72)【発明者】
【氏名】新井 稔
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 隆洋
【審査官】▲高▼橋 明日香
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-045804(JP,A)
【文献】特開2001-029704(JP,A)
【文献】特開2012-021483(JP,A)
【文献】特開2002-362739(JP,A)
【文献】特開2014-083501(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 11/00ー11/20
B01D 21/00-21/34
E03F 1/00-11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
沈砂および/またはし渣を含む液体を固液分離装置に移送する装置であって、
前記固液分離装置よりも低い位置に配置される密閉タンクと、
前記密閉タンクに前記沈砂および/またはし渣を含む液体を供給する液体供給機構と、
前記密閉タンクから前記固液分離装置に前記沈砂および/またはし渣を含む液体を移送し、前記固液分離装置から前記密閉タンクに前記沈砂および/またはし渣が除去された液体を戻すことで、前記密閉タンクと前記固液分離装置との間で前記液体を循環させる液体循環機構と、
前記液体供給機構、および前記液体循環機構の動作を制御する制御装置と、を備え、
前記液体循環機構は、
前記密閉タンクから前記固液分離装置まで延びて、前記沈砂および/またはし渣を含む液体が流れる液体
移送配管と、
前記固液分離装置から前記密閉タンクまで延びて、前記沈砂および/またはし渣が除去された液体が流れる液体戻り配管と、を有し、
前記制御装置は、
前記密閉タンクを前記沈砂および/またはし渣を含む液体で満たした後で、前記液体移送配管と前記戻り配管とを介して、前記密閉タンクを前記固液分離装置と連通させ、
前記密閉タンクと前記固液分離装置との間の高低差に起因する位置エネルギによって、前記密閉タンク内の液体の圧力を上昇させてから、前記液体循環機構を動作させる、装置。
【請求項2】
前記液体供給機構は、
沈砂池から前記密閉タンクまで延びる液体供給配管と、
前記沈砂池に配置され、前記液体供給配管に接続される水中ポンプと、を備えている、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記液体供給機構は、
沈砂池から前記密閉タンクまで延びる液体供給配管と、
前記密閉タンクに接続される真空配管と、
前記真空配管を介して前記密閉タンク内に真空を発生させる真空源と、を備えている、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記液体供給機構は、
前記密閉タンクに接続されるし渣供給配管と、
前記し渣供給配管に配置されるし渣供給バルブと、を備えている、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記液体循環機構は、さらに、
前記液体
移送配管に配置される吐出
バルブと、
前記液体戻り配管に配置される循環ポンプおよび戻り弁と、を備えている、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
沈砂および/またはし渣を含む液体を固液分離装置に移送する方法であって、
前記固液分離装置よりも低い位置に配置される密閉タンクに前記沈砂および/またはし渣を含む液体を供給し、
前記密閉タンクを前記沈砂および/またはし渣を含む液体で満たした後で、前記密閉タンクから前記固液分離装置まで延びて、前記沈砂および/またはし渣を含む液体が流れる液体
移送配管と、前記固液分離装置から前記密閉タンクまで延びて、前記沈砂および/またはし渣が除去された液体が流れる液体戻り配管と、を介して、前記密閉タンクを前記固液分離装置と連通させ、
前記密閉タンクと前記固液分離装置との間の高低差に起因する位置エネルギによって、前記密閉タンク内の液体の圧力を上昇させてから、前記密閉タンクから前記固液分離装置に前記沈砂および/またはし渣を含む液体を移送し、前記固液分離装置から前記密閉タンクに前記沈砂および/またはし渣が除去された液体を戻すことで、前記密閉タンクと前記固液分離装置との間で前記液体を循環させる、方法。
【請求項7】
前記密閉タンクに前記沈砂および/またはし渣を含む液体を供給する工程は、沈砂池から前記密閉タンクまで延びる液体供給配管と、前記沈砂池に配置され、前記液体供給配管に接続される水中ポンプと、を用いて行われる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記密閉タンクに前記沈砂および/またはし渣を含む液体を供給する工程は、沈砂池から前記密閉タンクまで延びる液体供給配管と、前記密閉タンクに接続される真空配管と、前記真空配管を介して前記密閉タンク内に真空を発生させる真空源と、を用いて行われる、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記密閉タンクに前記沈砂および/またはし渣を含む液体を供給する工程は、前記密閉タンクに接続されるし渣供給配管と、前記し渣供給配管に配置されるし渣供給バルブと、を用いて行われる、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記密閉タンクと前記固液分離装置との間で前記液体を循環させる工程は、前記液体戻り配管に配置される循環ポンプを用いて行われる、請求項6乃至9のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、沈砂および/またはし渣などの固体が含まれた液体(例えば、汚水)を、沈砂池などの所定の貯留場所から、固液分離装置などの処理装置に移送する装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、下水などの汚水(すなわち、液体)に含まれる砂およびし渣などの固体を、液体から除去するために沈砂処理設備が用いられている。沈砂処理設備は、例えば、砂およびし渣などの固体を含む液体を貯留する沈砂池と、該沈砂池に沈降した砂(すなわち、沈砂)および沈砂池内を浮遊するし渣(例えば、髪の毛および繊維状物質)を液体とともに沈砂池から排出する揚砂装置と、該揚砂装置から排出された液体から固体を分離する固液分離装置と、を備えている。
【0003】
液体から分離された固体の回収を容易にするために、固液分離装置は、トラックなどの輸送車両がアクセスしやすい通常フロアレベルに配置されている。一方で、沈砂池は、自然流下を利用して液体を沈砂池に流れ込ませるために、通常フロアレベルよりも低い位置に配置される。すなわち、沈砂池は、固液分離装置よりも低い位置に配置されるのが一般的である。そのため、揚砂装置は、固体を含む液体に、該液体を沈砂池から固液分離装置まで移送するための相当のエネルギを与える必要がある。このような揚砂装置の例としては、沈砂池内に配置された大型のサンドポンプ(例えば、特許文献1参照)、またはジェットポンプ(例えば、特許文献2参照)が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第3315489号公報
【文献】特公平7-121325号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の揚砂装置である大型のサンドポンプは、沈砂およびし渣などの異物が液体とともにインペラを通過することを許容するために低効率のインペラを採用していることが多く、その運転に大きな動力を必要とする。さらに、従来の沈砂処理設備では、固液分離装置で分離された液体をそのまま沈砂池に戻してしまう。そのため、大きな動力を使って固液分離装置まで液体を移送したにも拘わらず、液体が有する位置エネルギが無駄に消費されていた。このような沈砂処理設備の運転方法は、ランニングコストの増大をまねくだけでなく、近年注目されている環境問題になんら配慮していない運転方法である。これらの欠点は、揚砂装置として配管輸送を用いる従来の様々な沈砂処理設備の運転方法に当てはまる。
【0006】
そこで、本発明は、低いランニングコストで、省エネルギ運転が可能な固体含有液体移送装置、および固体含有液体移送方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一態様では、沈砂および/またはし渣を含む液体を固液分離装置に移送する装置であって、前記固液分離装置よりも低い位置に配置される密閉タンクと、前記密閉タンクに前記沈砂および/またはし渣を含む液体を供給する液体供給機構と、前記密閉タンクから前記固液分離装置に前記沈砂および/またはし渣を含む液体を移送し、前記固液分離装置から前記密閉タンクに前記沈砂および/またはし渣が除去された液体を戻すことで、前記密閉タンクと前記固液分離装置との間で前記液体を循環させる液体循環機構と、前記液体供給機構、および前記液体循環機構の動作を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記密閉タンクを前記沈砂および/またはし渣を含む液体で満たした後で、前記密閉タンクを前記固液分離装置と連通させて、前記液体循環機構を動作させる、装置が提供される。
【0008】
一態様では、前記液体供給機構は、沈砂池から前記密閉タンクまで延びる液体供給配管と、前記沈砂池に配置され、前記液体供給配管に接続される水中ポンプと、を備えている。
一態様では、前記液体供給機構は、沈砂池から前記密閉タンクまで延びる液体供給配管と、前記密閉タンクに接続される真空配管と、前記真空配管を介して前記密閉タンク内に真空を発生させる真空源と、を備えている。
【0009】
一態様では、前記液体供給機構は、前記密閉タンクに接続されるし渣供給配管と、前記し渣供給配管に配置されるし渣供給バルブと、を備えている。
一態様では、前記液体循環機構は、前記密閉タンクから前記固液分離装置まで延びて、前記沈砂および/またはし渣を含む液体が流れる液体供給配管と、前記液体供給配管に配置される吐出弁と、前記固液分離装置から前記密閉タンクまで延びて、前記沈砂および/またはし渣が除去された液体が流れる液体戻り配管と、前記液体戻り配管に配置される循環ポンプおよび戻り弁と、を備えている。
【0010】
一態様では、沈砂および/またはし渣を含む液体を固液分離装置に移送する方法であって、前記固液分離装置よりも低い位置に配置される密閉タンクに前記沈砂および/またはし渣を含む液体を供給し、前記密閉タンクを前記沈砂および/またはし渣を含む液体で満たした後で、前記密閉タンクを前記固液分離装置と連通させ、前記密閉タンクから前記固液分離装置に前記沈砂および/またはし渣を含む液体を移送し、前記固液分離装置から前記密閉タンクに前記沈砂および/またはし渣が除去された液体を戻すことで、前記密閉タンクと前記固液分離装置との間で前記液体を循環させる、方法が提供される。
【0011】
一態様では、前記密閉タンクに前記沈砂および/またはし渣を含む液体を供給する工程は、沈砂池から前記密閉タンクまで延びる液体供給配管と、前記沈砂池に配置され、前記液体供給配管に接続される水中ポンプと、を用いて行われる。
一態様では、前記密閉タンクに前記沈砂および/またはし渣を含む液体を供給する工程は、沈砂池から前記密閉タンクまで延びる液体供給配管と、前記密閉タンクに接続される真空配管と、前記真空配管を介して前記密閉タンク内に真空を発生させる真空源と、を用いて行われる。
【0012】
一態様では、前記密閉タンクに前記沈砂および/またはし渣を含む液体を供給する工程は、前記密閉タンクに接続されるし渣供給配管と、前記し渣供給配管に配置されるし渣供給バルブと、を用いて行われる。
一態様では、前記密閉タンクと前記固液分離装置との間で前記液体を循環させる工程は、前記密閉タンクから前記固液分離装置まで延びて、前記沈砂および/またはし渣を含む液体が流れる液体供給配管と、前記固液分離装置から前記密閉タンクまで延びて、前記沈砂および/またはし渣が除去された液体が流れる液体戻り配管と、前記液体戻り配管に配置される循環ポンプと、を用いて行われる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、密閉タンクと固液分離装置との高低差に起因する位置エネルギを利用して、沈砂および/またはし渣を含む液体が固液分離装置まで移送される。したがって、固体含有液体移送装置を低いランニングコストで、省エネルギ運転することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る固体含有液体移送装置を備えた沈砂処理設備を示す模式図である。
【
図2】
図2は、他の実施形態に係る固体含有液体移送装置を備えた沈砂処理設備を示す模式図である。
【
図3】
図3は、固液分離装置の他の例を示す模式図である。
【
図4】
図4は、
図1に示す固体含有液体移送装置の変形例が適用されたし渣処理設備を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について
図1乃至
図4を参照して説明する。
図1乃至
図4において、同一または対応する部材については同一の符号を付して、重複する説明を省略する。
図1は、一実施形態に係る固体含有液体移送装置を備えた沈砂処理設備を示す模式図である。
図1に示す沈砂処理設備は、下水などの汚水(すなわち、液体)を貯留する沈砂池1と、沈砂池1に沈澱した砂(すなわち、沈砂)、および沈砂池1内の汚水に浮遊するし渣などの固体が液体とともに移送される固液分離装置2と、を含んでいる。
【0016】
図1に示す固液分離装置2は、沈砂およびし渣を含む液体から該沈砂およびし渣を分離させる固液分離槽2aと、固液分離槽2aで分離された液体が流入するオーバーフロー槽2bと、固液分離槽2aの底部から外部に延びるコンベア3と、を備えている。固液分離槽2aで液体から分離された沈砂およびし渣は、固液分離槽2aの底部に堆積し、コンベア3によってホッパ5に搬送される。
【0017】
図1に示す沈砂処理設備の固体含有液体移送装置は、沈砂池1の近傍に配置される密閉タンク7と、沈砂池1内に配置される水中ポンプ10と、該水中ポンプ10から密閉タンク7まで延びる液体供給配管30と、液体供給配管30に配置された液体供給バルブ31と、密閉タンク7から固液分離装置2の固液分離槽2aまで延びる液体移送配管40と、液体移送配管40に配置された吐出バルブ43と、固液分離装置2のオーバーフロー槽2bから密閉タンク7まで延びる戻り配管11と、戻り配管11に配置された循環ポンプ8および戻りバルブ18と、を備える。
【0018】
固体含有液体移送装置は、さらに、固液分離装置2のオーバーフロー槽2bに水を供給するための給水配管45と、給水配管45に配置された給水バルブ46と、密閉タンク7の上部に接続され、大気に連通する空気抜き管50と、空気抜き管50に配置される通気バルブ51と、密閉タンク7に水を供給するタンク給水配管55と、タンク給水配管55に配置されるタンク給水バルブ56と、を備えている。液体供給バルブ31、吐出バルブ43、戻りバルブ18、給水バルブ46、通気バルブ51、およびタンク給水バルブ56は、それぞれ自動バルブであり、図示しない信号線で制御装置4に接続されている。制御装置4は、これらバルブ31,43,18,46,51,56の開閉動作を制御するように構成されている。さらに、水中ポンプ10および循環ポンプ8も、制御装置4に接続されており、制御装置4は、これらポンプ10,8の動作も制御する。
【0019】
密閉タンク7は、固液分離装置2よりも下方に位置している。本実施形態では、密閉タンク7は、沈砂池1と同一のフロアレベルに設置されている。より具体的には、密閉タンク7は、沈砂池1が掘られた地面に配置されている。密閉タンク7は、その底部に接続されたドレン配管25と、ドレン配管25に配置されたドレンバルブ26を有している。ドレンバルブ26も図示しない信号線で制御装置4に接続されており、制御装置4は、ドレンバルブ26の開閉動作を制御可能に構成されている。
【0020】
液体移送配管40の一端は、密閉タンク7に接続され、他端は、固液分離装置2の固液分離槽2aに接続される。戻り配管11の一端は、オーバーフロー槽2bの下部に接続され、他端は、密閉タンク7に接続される。
【0021】
次に、
図1を参照して、固体含有液体移送装置を用いた沈砂処理設備の運転方法について説明する。
図1に示す沈砂処理設備は、沈砂池1に堆積した沈砂、および沈砂池1を浮遊するし渣などの固体を固液分離装置2を用いて液体から分離する装置である。本実施形態に係る固体含有液体移送装置は、沈砂池1から固液分離装置2まで沈砂およびし渣を含む液体を移送する。詳細は後述するが、この目的を達成するために、固体含有液体移送装置の制御装置4は、最初に、密閉タンク7内を沈砂およびし渣を含む液体で完全に満たし、その後、密閉タンク7を固液分離装置2と連通させる。次いで、制御装置4は、密閉タンク7から固液分離装置2に沈砂およびし渣を含む液体を移送し、固液分離装置2から密閉タンク7に沈砂およびし渣が除去された液体を戻すことで、密閉タンク7と固液分離装置2との間で液体を循環させる。
【0022】
固体含有液体移送装置を起動する前は、全ての自動バルブ31,43,18,46,51,56,26が閉じられている。制御装置4は、最初に、液体供給バルブ31を開き、水中ポンプ10を起動させる。この動作によって、沈砂池1内の液体が沈砂およびし渣とともに密閉タンク7に移送される。この際、制御装置4は、通気バルブ51を開き、密閉タンク7への液体の供給を容易にする。
【0023】
水中ポンプ10は、例えば、固体を含有する液体を移送可能なサンドポンプである。サンドポンプは、異物の通過を許容する比較的低効率のインペラを有するポンプであるが、密閉タンク7は、沈砂池1の近傍に配置されているため、本実施形態では、揚程の小さなサンドポンプを選定することができる。したがって、従来の沈砂処理設備で用いられていた高揚程のサンドポンプよりも、水中ポンプ10の運転で消費される動力を大幅に低減することができる。
【0024】
密閉タンク7は、該密閉タンク7内の液体の高水位Hと低水位Lを検出可能な液面計49を有している。液面計49も、図示しない信号線を介して制御装置4に接続されている。液面計49から高水位Hを示す信号が制御装置4に送信されると、制御装置4は、水中ポンプ10の運転を停止させるとともに、液体供給バルブ31を閉じる。
【0025】
次いで、制御装置4は、タンク給水配管55に配置されるタンク給水バルブ56を開く。タンク給水配管55は、給水源(図示せず)に連結されており、タンク給水バルブ56を開くと、密閉タンク7に水が供給される。この動作によって、密閉タンク7を沈砂およびし渣を含む液体で完全に満たすことができる。本実施形態では、水中ポンプ10、液体供給配管30、液体供給バルブ31、タンク給水配管55、およびタンク給水バルブ56によって、密閉タンク7に沈砂およびし渣を含む液体を供給する液体供給機構が構成される。
【0026】
密閉タンク7の内部が沈砂およびし渣を含む液体で完全に満たされると、制御装置4は、タンク給水バルブ56を閉じて、密閉タンク7への水の供給を停止する。さらに、制御装置4は、通気バルブ51を閉じて、密閉タンク7の内部を大気から隔離する。このとき、密閉タンク7内の液体の圧力は大気圧に等しい。
【0027】
次いで、制御装置4は、戻りバルブ18を開く。この動作により、密閉タンク7が固液分離装置2のオーバーフロー槽2bと連通し、密閉タンク7内の液体の圧力が固液分離装置2と密閉タンク7との間の高低差に起因する位置エネルギによって上昇する。
【0028】
なお、固液分離装置2のオーバーフロー槽2bには、該オーバーフロー槽2bの高水位Hと低水位Lを検出可能な液面計48が配置されている。この液面計48も図示しない信号線を介して制御装置4に接続されている。密閉タンク7がオーバーフロー槽2bと連通することにより、オーバーフロー槽2bの液面が低水位Lよりも低下した場合は、制御装置4は、給水配管45に配置された給水バルブ46を開く。給水配管45は、図示しない給水源に接続されており、給水バルブ46を開くことにより、オーバーフロー槽2bに水が供給される。制御装置4は、オーバーフロー槽2b内の液面が高水位Hと低水位Lとの間に位置するように、給水バルブ46の開閉動作を制御する。
【0029】
次いで、制御装置4は、液体移送配管40に配置された吐出バルブ43を開くとともに、戻り配管11に配置された循環ポンプ8を起動させる。この動作によって、密閉タンク7から固液分離装置2の固液分離槽2aに沈砂およびし渣を含む液体が移送され、固液分離槽2aから沈砂およびし渣が除去された液体がオーバーフロー槽2bに流れ、固液分離装置2のオーバーフロー槽2bから密閉タンク7に沈砂およびし渣が除去された液体が戻される。すなわち、密閉タンク7と固液分離装置2との間で液体が循環させられる。本実施形態では、液体移送配管40、吐出バルブ43、戻り配管11、循環ポンプ8、および戻りバルブ18によって、密閉タンク7から固液分離装置2に沈砂およびし渣を含む液体を移送し、固液分離装置2から密閉タンク7に沈砂およびし渣が除去された液体を戻すことで、密閉タンク7と固液分離装置2との間で液体を循環させる液体循環機構が構成される。
【0030】
密閉タンク7内の液体の圧力は、固液分離装置2と密閉タンク7との間の高低差に起因する位置エネルギによって既に上昇しているので、液体を循環させるための循環ポンプ8の実揚程(
図1参照)を大幅に低減することができる。したがって、循環ポンプ8として揚程の小さなポンプを選定することができる。
【0031】
このように、本実施形態に係る固体含有液体移送装置は、密閉タンク7と固液分離装置2との高低差に起因する位置エネルギを利用して、沈砂およびし渣を含む液体を固液分離装置2まで移送する。さらに、水中ポンプ10も揚程の小さなサンドポンプを選定することができる。したがって、循環ポンプ8の運転および水中ポンプ8の運転に必要な動力が大幅に低減されるので、固体含有液体移送装置を低いランニングコストで、省エネルギ運転することができる。
【0032】
本実施形態では、循環ポンプ8は、戻り配管11に配置されている。戻り配管11を流れる液体は、沈砂およびし渣などの固体が除去された液体であるため、循環ポンプ8として、高効率のインペラを有するポンプを選定できる。その結果、固体含有液体移送装置をさらに省エネルギで運転することができる。
【0033】
液体の循環運転を行うと、液体に含まれる沈砂およびし渣などの固体が固液分離装置2に回収されるので、循環する液体の量が減少する。制御装置4は、液体の循環運転中もオーバーフロー槽2bに配置された液面計48で該オーバーフロー槽2bの液面を監視しており、オーバーフロー槽2b内の液面が高水位Hと低水位Lとの間に位置するように、給水バルブ46の開閉動作を制御する。すなわち、制御装置4は、オーバーフロー槽2b内の液面が高水位Hと低水位Lとの間に位置するように、オーバーフロー槽2bに水を補充する。一実施形態では、制御装置4は、オーバーフロー槽2b内の液面が高水位Hを維持するように、給水バルブ46の開閉動作を制御してもよい。
【0034】
密閉タンク7と固液分離装置2との間の液体の循環運転が所定時間行われると、制御装置4は、循環ポンプ8の運転を停止する。次いで、制御装置4は、戻りバルブ18および吐出バルブ43を閉じ、その後、ドレンバルブ26および通気バルブ51を開く。制御装置4は、液面計49を用いて密閉タンク7内の液面を監視しており、密閉タンク7内の液面が低水位Lに達した後で、さらに所定時間経過後にドレンバルブ26を閉じる。この動作により、密閉タンク7内の液体が外部に排出される。本実施形態では、ドレンバルブ26が配置されるドレン配管25は、沈砂池1に連通しており、密閉タンク7内の液体は、沈砂池1に戻される。この動作によって、密閉タンク7内の液体が抜かれ、密閉タンク7は、次の揚液運転のために待機する。
【0035】
図2は、他の実施形態に係る固体含有液体移送装置を備えた沈砂処理設備を示す模式図である。
図2に示す固体含有液体移送装置は、液体供給機構で水中ポンプ10に代えて、真空ポンプ(真空源)61を用いている点で
図1に示す液体含有液体移送装置と異なる。液体供給機構以外の構成は、
図1を参照して説明された固体含有液体移送装置の構成と同様であるので、その重複する説明を省略する。
【0036】
図2に示す固体含有液体移送装置の液体供給機構は、沈砂池から密閉タンク7まで延びる液体供給配管30と、液体供給配管30に配置された液体供給バルブ31と、密閉タンク7に接続される真空配管60と、真空配管60に配置される真空ポンプ61および真空バルブ63と、を備えている。液体供給バルブ31、真空ポンプ61、および真空バルブ63は、図示しない信号線によって制御装置4に接続されており、制御装置4は、液体供給バルブ31および真空バルブ63の開閉動作と、真空ポンプ61の動作と、を制御可能に構成されている。真空ポンプ61は、真空配管60を介して密閉タンク7内に真空を発生させる真空源として機能する。
【0037】
沈砂池1内の液体を沈砂およびし渣とともに密閉タンク7に移送する際は、制御装置4は、真空バルブ63を開くともに、真空ポンプ61を起動する。この動作によって、密閉タンク7内に真空が発生する。次いで、制御装置4は、液体供給バルブ31を開く。この動作によって、沈砂池1内の沈砂およびし渣を含む液体が密閉タンク7に吸い込まれる。この際、制御装置4は、密閉タンク内1の真空を破壊しないように、通気バルブ51を閉じた状態に維持する。
【0038】
液面計49から高水位Hを示す信号が制御装置4に送信されると、制御装置4は、真空ポンプ61の運転を停止させるとともに、液体供給バルブ31および真空バルブ63を閉じる。さらに、制御装置4は、タンク給水配管55に配置されるタンク給水バルブ56と、通気バルブ51とを開き、タンク給水配管55を介して密閉タンク7に水を供給する。この動作によって、密閉タンク7を沈砂およびし渣を含む液体で完全に満たすことができる。
【0039】
真空ポンプ61は、密閉タンク7内に沈砂池1から液体を吸い込むことが可能な真空を発生させるだけでよい。したがって、従来の沈砂処理設備で用いられていた大型のサンドポンプよりも、真空ポンプ61の運転で消費される動力を大幅に低減することができる。その結果、本実施形態でも、循環ポンプ8の運転および真空ポンプ61の運転に必要な動力が大幅に低減されるので、固体含有液体移送装置を低いランニングコストで、省エネルギ運転することができる。
【0040】
図3は、固液分離装置の他の例を示す模式図である。
図3に示す固液分離装置は、サイクロン70を備えたサイクロン分離装置である。沈砂処理設備は、
図3に示すサイクロン分離装置を、
図1および
図2に示す固液分離装置2に代えて用いることができる。
【0041】
図3に示すサイクロン分離装置は、サイクロン70と、バッファ槽72とを備えている。サイクロン70は、下方に向かって縮径する円筒形状を有するサイクロン本体70aと、サイクロン本体70aの下端に接続されたボトムノズル70bと、サイクロン本体70aの上部に接続されたトップノズル70cと、サイクロン本体70aに沈砂およびし渣を含む液体を導入するための入口ノズル70dを有する。
【0042】
上述した液体移送配管40は、密閉タンク7からサイクロン70の入口ノズル70dまで延びる。液体移送配管40を介して密閉タンク7から移送された沈砂およびし渣を含む液体は、サイクロン本体70a内で渦流を形成する。サイクロン本体70a内で、液体の渦流が形成されると、液体と、該液体に含まれる沈砂およびし渣などの固体とに遠心力が作用する。
【0043】
サイクロン本体70a内で、液体よりも大きい比重を有する沈砂およびし渣は、サイクロン本体70aの内周壁面に沿って螺旋状に発生する下降流にのってボトムノズル70bに向かって移動し、該ボトムノズル70bから排出される。ボトムノズル70bの下方には、ホッパ5(
図1参照)が配置されており、液体から分離された沈砂およびし渣はホッパ5に回収される。一方で、沈砂およびし渣よりも小さい比重を有する液体は、サイクロン本体70aの中心部に発生する上昇流にのってトップノズル70cから排出される。
【0044】
トップノズル70cには、上述した戻り配管11が接続されている。本実施形態では、この戻り配管11の途中に、バッファ槽72が配置されており、トップノズル70cから排出された液体は、一旦、バッファ槽72に貯められる。バッファ槽72には、上述した給水配管45が接続されており、さらに、液面計48が配置されている。制御装置4(
図1参照)は、バッファ槽72内の液面が高水位Hと低水位Lとの間に位置するように、給水バルブ46の開閉動作を制御する。
【0045】
このようなサイクロン分離装置を用いても、液体から沈砂およびし渣を分離することができる。また、本実施形態でも、密閉タンク7内の液体の圧力は、サイクロン分離装置(固液分離装置)と密閉タンク7との間の高低差に起因する位置エネルギによって既に上昇しているので、液体を循環させるための循環ポンプ8の実揚程(
図3参照)を大幅に低減することができる。したがって、循環ポンプ8として揚程の小さなポンプを選定することができるため、固体含有液体移送装置を低いランニングコストで、省エネルギ運転することができる。なお、本実施形態における循環ポンプ8の実揚程は、バッファ槽72の液面とサイクロン70の入口ノズル70dとの間の位置ヘッドに相当する。
【0046】
図4は、
図1に示す固体含有液体移送装置の変形例が適用されたし渣処理設備を示す模式図である。
図4に示す固体含有液体移送装置は、液体供給機構が
図1に示す固体含有液体移送装置と異なる。液体供給機構以外の構成は、
図1を参照して説明された固体含有液体移送装置の構成と同様であるので、その重複する説明を省略する。
【0047】
図4に示すし渣処理設備は、し渣を含む液体を搬送するし渣コンベア65と、し渣コンベアによって搬送されたし渣を破砕する破砕機66を有する。本実施形態に係る固体含有液体移送装置は、破砕機66で破砕されたし渣を含む液体を固液分離装置2に移送する。
【0048】
本実施形態では、液体供給機構は、破砕機66から密閉タンク7まで延びるし渣供給配管67と、し渣供給配管67に配置されたし渣供給バルブ68と、を備えている。本実施形態では、液体供給機構は、さらに、破砕機66に送られるし渣を含む液体に水を供給するためのし渣給水配管80と、し渣給水配管80に配置されるし渣給水バルブ81と、を備える。し渣給水配管80およびし渣給水バルブ81は、し渣コンベア65から排出されたし渣が破砕機66に到達するまでの間に、し渣を含む液体に水を供給するために設けられる。し渣供給バルブ68およびし渣給水バルブ81は、図示しない信号線を介して制御装置4に接続されており、制御装置4は、し渣供給バルブ68およびし渣給水バルブ81の開閉動作を制御可能に構成されている。さらに、し渣コンベア65および破砕機66も制御装置4に接続されており、制御装置4は、し渣コンベア65および破砕機66の動作も制御可能に構成されている。
【0049】
し渣を含む液体を密閉タンク7に移送する際は、制御装置4は、し渣供給バルブ68を開くともに、し渣コンベア65および破砕機66を起動する。さらに、制御装置4は、し渣給水バルブ81を開く。これらの動作によって、密閉タンク7内に、破砕機66によって破砕されたし渣、およびし渣給水配管80から供給された水を含む液体が供給される。この際、制御装置4は、通気バルブ51を開き、密閉タンク7への液体の供給を容易にするのが好ましい。
【0050】
液面計49から高水位Hを示す信号が制御装置4に送信されると、制御装置4は、し渣コンベア65および破砕機66の運転を停止させるとともに、し渣供給バルブ68を閉じる。さらに、制御装置4は、タンク給水配管55に配置されるタンク給水バルブ56を開き、タンク給水配管55を介して密閉タンク7に水を供給する。この動作によって、密閉タンク7をし渣を含む液体で完全に満たすことができる。
【0051】
本実施形態でも、固体含有液体移送装置は、密閉タンク7と固液分離装置2との高低差に起因する位置エネルギを利用して、し渣を含む液体を固液分離装置2まで移送する。したがって、循環ポンプ8の運転に必要な動力が大幅に低減されるので、固体含有液体移送装置を低いランニングコストで、省エネルギ運転することができる。
【0052】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうる。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲に解釈されるものである。
【符号の説明】
【0053】
1 沈砂池
2 固液分離装置
3 コンベア
4 制御装置
5 ホッパ
7 密閉タンク
8 循環ポンプ
10 水中ポンプ
11 戻り配管
18 戻りバルブ
30 液体供給配管
31 液体供給バルブ
40 液体移送配管
43 吐出バルブ
55 タンク給水配管
56 タンク給水バルブ
60 真空配管
61 真空ポンプ
63 真空バルブ
65 し渣コンベア
66 破砕機
67 し渣供給配管
68 し渣供給バルブ