(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】カリウムイオンチャネル及びTRPV1チャネルのモジュレーター、並びにその使用
(51)【国際特許分類】
C07C 237/20 20060101AFI20240305BHJP
A61K 31/165 20060101ALI20240305BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240305BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240305BHJP
A61P 25/04 20060101ALI20240305BHJP
A61P 25/02 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
C07C237/20 CSP
A61K31/165
A61P43/00 111
A61P29/00
A61P25/04
A61P25/02
(21)【出願番号】P 2020519431
(86)(22)【出願日】2018-10-09
(86)【国際出願番号】 IL2018051094
(87)【国際公開番号】W WO2019073471
(87)【国際公開日】2019-04-18
【審査請求日】2021-10-05
(32)【優先日】2017-10-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】501177609
【氏名又は名称】ラモット・アット・テル・アビブ・ユニバーシテイ・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】RAMOT AT TEL AVIV UNIVERSITY LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ペレツ アッシャー
(72)【発明者】
【氏名】アタリ バーナード
【審査官】早乙女 智美
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-529037(JP,A)
【文献】国際公開第2007/138110(WO,A2)
【文献】特表2008-521862(JP,A)
【文献】特表2014-513671(JP,A)
【文献】特表2013-509376(JP,A)
【文献】特表2007-517045(JP,A)
【文献】国際公開第2009/037707(WO,A2)
【文献】特表2006-513154(JP,A)
【文献】特表2006-515846(JP,A)
【文献】REGISTRY(STN)[online],Entered STN:2017年2月21日以前,2022年08月22日,CAS登録番号2072941-08-1, 2072445-93-1, 2072306-55-7,2071975-66-9, 2069878-53-9, 2069842-55-1, 2069548-26-9, 2069409-67-0, 2069212-73-1, 2068684-43-3, 2062384-90-9, 2061686-48-2, 2061670-36-6, 2060533-99-3, 2059844-79-8, 2058747-74-1, 2072979-95-2, 2071830-29-8, 2070283-91-7, 2069752-61-8, 2068997-54-4, 2060827-71-4, 2072948-64-0, 2071540-56-0, 2060104-79-0, 2058843-78-8
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
C07D
A61K
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式から選択される、
化合物。
【化1】
【請求項2】
請求項1に記載の化合物と薬学的に許容し得る担体とを含む医薬組成物。
【請求項3】
電圧依存性カリウムチャネルの活性及び/又はTRPV1チャネルの活性の調節に使用される、
請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
電圧依存性カリウムチャネル及び/又はTRPV1チャネルの活性に関連する病態の治療に使用される、
請求項1または3に記載の化合物。
【請求項5】
前記病態は神経障害性疼痛である、
請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
電圧依存性カリウムチャネル及び/又はTRPV1チャネルの活性の調節、及び/又は電圧依存性カリウムチャネル及び/又はTRPV1チャネルの活性に関連する病態の治療に使用される、
請求項2に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、その幾つかの実施形態では、新規のジフェニルアミン誘導体に関し、より詳細には、カリウムイオンチャネル及びTRPV1チャネルの両方のモジュレーターとしての二重活性を特徴とするジフェニルアミン誘導体に関するが、これに限定されない。このジフェニルアミン誘導体は、このようなチャネルに関連する様々な病態(例えば、神経障害性疼痛等)の治療に使用可能である。
【背景技術】
【0002】
電圧依存性カリウム(Kv)チャネルは、膜電圧の変化に反応して細胞膜を介してカリウムイオン(K+)を伝導し、それによって細胞の電気的活動を調節(増加又は減少)して細胞の興奮性を調節することができる。
【0003】
機能性Kvチャネルは、4種のαサブユニットと4種のβサブユニットに関連して形成される多量体構造として存在する。αサブユニットは、6種の膜貫通ドメイン、細孔形成ループ及び電圧センサーを含み、中央の細孔の周囲に対称的に配置されている。βサブユニット、即ち補助サブユニット、はαサブユニットと相互作用し、チャネル複合体の特性を変更することができ、例えば、チャネルの電気生理学的又は生物物理学的特性、発現レベル又は発現パターンを変化させることができるが、これらに限定されない。
【0004】
機能性Kvチャネルは、同一又は異なるKvα及び/又はKvβサブユニットに関連して形成される多量体構造として存在することができる。
【0005】
9種のKvチャネルαサブユニットファミリーが特定されており、Kv1~Kv9と称されている。このように、サブファミリーの多重度、サブファミリー内のホモマー及びヘテロマーサブユニットの形成、及びβサブユニットに関連する付加的作用の結果として生じるKvチャネル機能には非常に多様性がある[M. J. Christie, Clinical and Experimental Pharmacology and Physiology, 1995, 22 (12), 944-951]。
【0006】
Kv7チャネルファミリーは、次の哺乳類チャネル:Kv7.1、Kv7.2、Kv7.3、Kv7.4、Kv7.5、及び哺乳類又は非哺乳類の等価物又はそのバリアント(スプライスバリアントを含む)の1種以上を含む、少なくとも5種のメンバーで構成されている。或いは、このファミリーのメンバーは、それぞれKCNQ1、KCNQ2、KCNQ3、KCNQ4及びKCNQ5と称される[Dalby-Brown et al., Current Topics in Medicinal Chemistry, 2006, 6, 999-1023]。
【0007】
このファミリーの5種のメンバーはその発現パターンが異なる。Kv7.1の発現は、心臓、末梢上皮及び平滑筋に限定される。一方、Kv7.2~Kv7.4の発現は、海馬、皮質ニューロン及び後根神経節ニューロンを含む神経系に限定される[概説に関しては、例えば、Delmas.P & Brown.D, Nature, 2005, 6, 850-862を参照]。
【0008】
神経Kv7チャネルは神経興奮の制御に重要な役割を果たすことが実証されている。Kv7チャネル、特にKv7.2/Kv7.3ヘテロ二量体は、M電流、即ち多くの神経細胞型で見られる非活性化カリウム電流の根底にある。この電流には複数の興奮性刺激に反応して膜電位の安定化をもたらす特徴的な時間及び電圧依存性がある。このように、M電流は神経興奮性を制御する上での中心となる[概説に関しては、例えば、Delmas.P & Brown.D, Nature, 2005, 6, 850-862を参照]。
【0009】
カリウムチャネルは、心拍の調節、動脈の拡張、インスリンの放出、神経細胞の興奮性、腎臓電解質輸送の調節等、多くの生理学的プロセスに関連している。従って、カリウムチャネルのモジュレーターは主要な薬剤候補であり、治療剤としての新しいモジュレーターの開発に向けて研究努力が進行中である。
【0010】
従って、神経系におけるKv7チャネルの重要な生理学的役割とこのようなチャネルの多くの疾患での関与を考慮すると、Kv7チャネルのモジュレーターの開発は非常に望ましい。
【0011】
カリウムチャネルモジュレーターはチャネル開口薬とチャネル遮断薬に分かれている。多くの注目を集めているカリウムチャネル開口薬はレチガビン(N-(2-アミノ-4-(4-フルオロベンジルアミノ)-フェニル)カルバミン酸エチルエステル)である。レチガビンは、サブユニットKv7.2及びKv7.3で構成されるKCNQ型カリウムチャネルに対して非常に選択的であり、1993年にEP0554543号で最初に記載された。神経障害性疼痛の治療用のレチガビンの使用は、例えば、米国特許第6,117,900号及びEP1223927号に開示された。レチガビンに関連する化合物もカリウムチャネルモジュレーターとしての使用が提案されている(例えば、米国特許第6,472,165号を参照)。
【0012】
しかし、レチガビンは神経細胞では複数の作用があると報告されている。このような作用としては、ナトリウム及びカルシウムチャネル遮断活性(Rundfeldt, C, 1995, Naunyn-Schmiederberg’s Arch Pharmacol, 351 (Suppl): R160)や、ラットニューロンにおけるGABA(γ-アミノ酪酸)合成及び伝達への影響(Kapetanovic, I.M., 1995, Epilepsy Research, 22, 167-173, Rundfeldt, C, 1995, Naunyn-Schmiederberg’s Arch Pharmacol, 351 (Suppl):R160)が挙げられる。
【0013】
他のKCNQカリウムチャネルモジュレーターについては、例えば、米国特許出願第10/075,521号(Kv7モジュレーターとして2,4-二置換ピリミジン-5-カルボキサミド誘導体を教示)、米国特許出願第10/160,582号(電圧依存性カリウムチャネルモジュレーターとしてシンナミド誘導体を教示)、米国特許第5,565,483号及び米国特許出願第10/312,123号、第10/075,703号及び第10/075,522号(電圧依存性カリウムチャネルモジュレーターとして3-置換オキシインドール誘導体を教示)、米国特許第5,384,330号(カリウムチャネルモジュレーターとして1,2,4-トリアミノ-ベンゼン誘導体を教示)、及び米国特許第6,593,349号(電圧依存性カリウムチャネルモジュレーターとしてビスアリールアミン誘導体を教示)に記載されている。米国特許第6,291,442号は、2種又は3種の芳香環を含み、遊離カルボキシル又はカルボキシルがエステル結合を介して低級アルキルエステルに連結し、環の1種に結合した、電圧ゲートカリウムチャネルのシェーカークラスの調節用の化合物を教示する。
【0014】
WO2004/035037号及び米国特許出願公開第20050250833号は、カリウムチャネル開口薬(特にKv7.2l、Kv7.3及びKCv7.2/7.3チャネル等の電圧依存性カリウムチャネル)として、N-フェニルアントラニル酸及び2-ベンズイミダゾロンの誘導体、更にはニューロン活性モジュレーターを教示する。
【0015】
WO2009/037707号は、カリウムチャネル及び/又はTRPV1モジュレーターとして、N-フェニルアントラニルの更なる誘導体を教示する。WO2009/037707号に開示の例示的なモジュレーターはNH29と称される。
【0016】
【0017】
WO2009/071947号及びWO2010/010380号は、カリウムチャネルモジュレーターとして、ジフェニルアミンの誘導体を教示する。WO2009/037707号に開示の例示的なモジュレーターは、NH34及びNH43と称される。
【0018】
【0019】
一過性受容体電位バニロイド1型(TRPV1)受容体は、熱(通常43℃超)、低pH(<6)及び内因性脂質分子(例えば、アナンダミド、N-アラキドノイル-ドーパミン、N-アシル-ドーパミン、及びエンドバニロイドと称されるリポキシゲナーゼの生成物(例えば、12-及び15-(S)-HPETE))によって活性化されるリガンド依存性非選択的カチオンチャネルである。末梢一次求心性ニューロンや後根神経節とは別に、TRPV1受容体は脳全体で発現する。最近の証拠から、エンドカンナビノイド又はカプサイシンによるTRPV1受容体刺激が鎮痛につながり、この効果が吻側延髄腹内側部(RVM)でのグルタミン酸の増加とOFF細胞集団の活性化に関連することが分かっている。
【0020】
TRPV1は、体温の調節、不安、及び海馬における長期抑圧(LTD)の仲介にも関与していることが分かっている。TRPV1チャネルは膀胱を刺激する感覚求心路にも存在する。TRPV1の阻害は尿失禁の症状を改善することが示されている。
【0021】
TRPV1モジュレーターは、例えば、WO2007/054480号に記載されており、ここには、TRPV1関連疾患の治療における2-(ベンズイミダゾール-1-イル)-アセトアミド誘導体の効果が教示されている。WO2008/079683号には、TRPV1受容体を阻害するためのシクロヘキシル及びフェニルの共役二環式である化合物が教示されている。EP01939173号には、TRPV1受容体拮抗薬としてのO-置換-ジベンジル尿素又はチオ尿素誘導体が教示されている。WO2008/076752号には、ベンゾイミダゾール化合物が強力なTRPV1モジュレーターとして教示されており、EP01908753には、ヘテロシクリデンアセトアミド誘導体がTRPV1モジュレーターであることが教示されている。
【0022】
カリウムチャネルKv7.2/3とカチオン非選択的チャネルTRPV1は、末梢侵害受容系(DRG感覚ニューロン)の主な疼痛経路で同時発現し、疼痛シグナルを伝達し、反対の機能を有する。TRPV1チャネルは疼痛シグナルを引き起こすが、Kv7.2/3チャネルはそれを阻害する。Kv7.2の開口薬とTRPV1の遮断薬として同時に機能する化合物は、神経障害性疼痛等の神経興奮性亢進を阻害できる。
【発明の概要】
【0023】
本発明の幾つかの実施形態の様相によれば、下記式I:
【化3】
(式中、
AとBは各々独立してアリール及びヘテロアリールから選択され、
Dは(CRdRe)uであり、
Eは(CRfRg)vであり、
uとvは各々独立して0又は1であり、
nは1~5の整数であり、
mは0~5の整数であり、
Re、Rd、Rf及びRgは各々独立して水素、アルキル、シクロアルキル、ハロ、ハロアルキル、ハロアルコキシ、アルコキシ、アリール、ヘテロアリール、ヘテロアリサイクリック、アリールオキシ、ヒドロキシ、アミン、アルキルアミン、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、シアノ、カルボキシレート、アミド、カルバメート、スルホニル及びスルホンアミドから選択され、
RaとRbは各々独立してアルキル、シクロアルキル、ハロ、ハロアルキル、ハロアルコキシ、アルコキシ、アリール、ヘテロアリール、ヘテロアリサイクリック、アリールオキシ、ヒドロキシ、アミン、アルキルアミン、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、シアノ、カルボキシレート、アミド、カルバメート、スルホニル及びスルホンアミドから選択される置換基であるか、或いは、Ra置換基、Re、Rd及びR
1の内の少なくとも2種は一緒になって脂環又は複素環(alicyclic or heterocyclic ring)を形成し、及び/又はRb置換基、Rf及びRgの内の少なくとも2種は一緒になって脂環又は複素環を形成し、nが1より大きい場合には、各Raは同一又は異なる置換基であり、mが1より大きい場合には、各Rbは同一又は異なる置換基であり、
R
1は水素、アルキル、シクロアルキル又はアリールであり、
Vは(CR
2R
3)k-C(=O)-NR
4-Zであり、且つN-R
1に対してメタ位にあり、
kは0~2の整数であり、
R
2とR
3は各々独立して水素、ハロ、アルキル、シクロアルキル及びアリールから選択され、
R
4は水素、アルキル、シクロアルキル又はアリールである)で表される化合物であって、
前記Zは式IIで表され、
【化4】
(式中、
wとqは各々独立して0~4の整数であり(但し、w+qは少なくとも2である)、
XはO及びNR
9から選択されるか、又は存在せず、
YはOR
10及びSR
10から選択され、
R
5、R
6、R
7及びR
8は各々独立して水素、ハロ、アルキル、ハロアルキル、シクロアルキル、ヘテロアリサイクリック、アリール、アルキルアミノ、アルコキシ、ハロアルコキシ及びアリールオキシから選択されるか、或いは、R
5、R
6、R
7、R
8及びR
9の内の2種は一緒になって脂環又はヘテロ脂環を形成し、
R
10は水素、アルキル、シクロアルキル及びアリールから選択されるか、或いは、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9及びR
10の内の2種は一緒になって脂環又はヘテロ脂環を形成する)、
但し、
Raの少なくとも1種はアルキル、ハロアルキル、シクロアルキル及びアリールから選択される、及び/又は
Rbの少なくとも1種はハロである、及び/又は
R
5、R
6、R
7及びR
8の内の少なくとも1種はアルキル、シクロアルキル、ヘテロアリサイクリック又はアリールである、及び/又は
R
5、R
6、R
7、R
8及びR
9の内の少なくとも2種は一緒になって脂環又はヘテロ脂環を形成する化合物が提供される。
【0024】
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、Aはアリールである。
【0025】
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、Bはアリールである。
【0026】
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、AとBは各々アリールである。
【0027】
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、AとBは各々フェニルである。
【0028】
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、R1は水素である。
【0029】
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、uは0である。
【0030】
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、vは0である。
【0031】
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、uとvの各々は0である。
【0032】
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、AとBは各々フェニルであり、R1は水素であり、uとvの各々は0である。
【0033】
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、mは0以外の整数であり、Rb置換基の少なくとも1種はハロである。
【0034】
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、mは1である。
【0035】
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、ハロはNR1に対してパラ位にある。
【0036】
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、ハロはフルオロである。
【0037】
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、nは3、4又は5であり、好ましくは3である。
【0038】
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、Ra置換基の少なくとも2種はハロ及びアルコキシから選択される。
【0039】
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、Ra置換基の少なくとも2種は各々ハロである。
【0040】
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、ハロはクロロである。
【0041】
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、Ra置換基の少なくとも1種はアルキル、ハロアルキル、シクロアルキル、アリール、アルコキシ、アルキルアミノ、ヘテロアリール及びヘテロアリサイクリックから選択されるか、或いは2種のRa置換基が一緒になって環を形成する。
【0042】
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、Ra置換基の少なくとも1種はアルキル、ハロアルキル、シクロアルキル及びアリールから選択される。
【0043】
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、Ra置換基の少なくとも1種はアルキル又はシクロアルキルである。
【0044】
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、Ra置換基の少なくとも1種はNR1に対してオルト位にある。
【0045】
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、Ra置換基の少なくとも1種は、アルキル、ハロアルキル、シクロアルキル、アリール、アルコキシ、アルキルアミノ、ヘテロアリール又はヘテロアリサイクリックであり、且つNR1に対してオルト位にある。
【0046】
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、nは3であり、Ra置換基の1種は、アルキル、ハロアルキル、シクロアルキル、アリール、アルコキシ、アルキルアミノ、ヘテロアリール又はヘテロアリサイクリックであり、且つNR1に対してオルト位にあり、Ra置換基の他の2種は各々ハロである。
【0047】
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、nは3であり、Ra置換基の1種は、アルキル、ハロアルキル、シクロアルキル、アリール、アルコキシ、アルキルアミノ、ヘテロアリール又はヘテロアリサイクリックであり、且つNR1に対してオルト位にあり、Ra置換基の他の2種は各々ハロであり、mは1であり、RbはハロであってNR1に対してパラ位にある。
【0048】
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、kは1である。
【0049】
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、R2とR3は各々水素である。
【0050】
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、Xは存在しない。
【0051】
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、XはOである。
【0052】
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、R5、R6、R7及びR8の内の少なくとも1種は独立してアルキル、ハロアルキル及びハロから選択され、及び/又はR5、R6、R7及びR8の内の少なくとも2種は一緒になって脂環を形成する。
【0053】
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、R5、R6、R7及びR8の内の少なくとも2種は独立してアルキル、ハロアルキル及びハロから選択される。
【0054】
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、R5、R6、R7及びR8の内の少なくとも2種は各々独立してアルキルである。
【0055】
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、qは1であり、R7とR8の内の少なくとも1種又はその各々はアルキルである。
【0056】
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、wは1又は2である。
【0057】
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、R5とR6は各々水素である。
【0058】
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、R5、R6、R7及びR8の内の少なくとも2種は一緒になって脂環を形成する。
【0059】
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、Ra置換基の少なくとも1種はアルキル、ハロアルキル、シクロアルキル、アリール、アルコキシ、アルキルアミノ、ヘテロアリール及びヘテロアリサイクリックから選択されるか、或いは2種のRa置換基が一緒になって環を形成する。
【0060】
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、YはOR10であり、R10は水素である。
【0061】
本発明の幾つかの実施形態の様相によれば、本明細書において、各実施形態のいずれか及びその任意の組み合わせに記載の化合物と薬学的に許容し得る担体とを含む医薬組成物が提供される。
【0062】
本発明の幾つかの実施形態の様相によれば、電圧依存性カリウムチャネルの活性を調節するのに使用される、本明細書において各実施形態のいずれか及びその任意の組み合わせに記載の化合物又は組成物が提供される。
【0063】
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、カリウムチャネルはKv7.2/7.3である。
【0064】
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、調節はチャネルを開くことを含む。
【0065】
本発明の幾つかの実施形態の様相によれば、TRPV1の活性を調節するのに使用される、本明細書において、各実施形態のいずれか及びその任意の組み合わせに記載の化合物又は組成物が提供される。
【0066】
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、調節はTRPV1の活性を(遮断する)阻害することを含む。
【0067】
本発明の幾つかの実施形態の様相によれば、電圧依存性カリウムチャネルとTRPV1の両方の活性を調節するのに使用される、本明細書において、各実施形態のいずれか及びその任意の組み合わせに記載の化合物又は組成物が提供される。
【0068】
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、電圧依存性カリウムチャネルの活性の調節はチャネルを開くことを含み、TRPV1チャネルの活性の調節はチャネルの活性を阻害することを含む。
【0069】
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、カリウムチャネルはKv7.2/7.3である。
【0070】
本発明の幾つかの実施形態の様相によれば、電圧依存性カリウムチャネル及び/又はTRPV1チャネルの活性に関連する病態を治療するのに使用される、本明細書において、各実施形態のいずれか及びその任意の組み合わせに記載の化合物又は組成物が提供される。
【0071】
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、病態は神経障害性疼痛である。
【0072】
特に定義しない限り、本明細書で使用する全ての技術および/または科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者により通常理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載のものと同様のまたは等価な方法および材料を、本発明の実施形態の実践または試験に使用することができるが、例示的な方法および/または材料を下記に記載する。矛盾する場合、定義を含む特許明細書が優先する。加えて、材料、方法、および実施例は単なる例示であり、必ずしも限定を意図するものではない。
【0073】
本発明のいくつかの実施形態について、その例示のみを目的として添付の図面を参照して本明細書に記載する。以下、特に図面を詳細に参照して示す細部は、例示を目的とし、また本発明の実施形態の詳細な説明を目的とすることを強調する。同様に、図面と共に説明を見ることで、本発明の実施形態をどのように実践し得るかが当業者には明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【
図1A】
図1A~Bは、表Aに示すジフェニルアミン誘導体を調製するのに用いられる一般的な合成経路の例を示す。
【
図1B】
図1A~Bは、表Aに示すジフェニルアミン誘導体を調製するのに用いられる一般的な合成経路の例を示す。
【
図3-1】
図3はNH82とNH83の合成の例を示す。
【
図3-2】
図3はNH82とNH83の合成の例を示す。
【
図8】
図8のA~Cは、組換えKv7.2/3電流の振幅(
図8A)と電圧依存性(
図8B)に対する5μMのNH66の効果、及び前述のジフェニルアミン化合物NH43の効果(
図8C)を示す比較プロットである。
【
図9】
図9は、0.1μMのカプサイシン(CAP)で活性化された組換えTRPV1電流に対する5μMのNH66の効果を示すプロットである。
【
図10】
図10のA~Bは、ラットDRGニューロンの誘発スパイク放電に対する1μMのNH43(
図10A)と1μMのNH66(
図10B)の効果を示すプロットである。
【
図11-1】
図11のA、Bは、組換えKv7.2/3の振幅(
図11A)と電圧依存性(
図11B)に対するNH82の効果を示す比較プロットである。
【
図12】
図12のA~Bは、組換えKv7.2/3チャネルの-40mVでの振幅(
図12A)と電圧依存性(
図12B)に対するNH91の効果を示す比較プロットである。
【
図13】
図13のA~Cは、組換えKv7.2/3チャネルの-40mVでの振幅(
図13A)と電圧依存性(
図13B及び13C)に対するNH101の効果を示す比較プロットである。
【
図14】
図14のA~Bは、組換えKv7.2/3チャネルの-40mVでの振幅(
図14A)と電圧依存性(
図14B)に対するNH110の効果を示す比較プロットである。
【
図15】
図15のA~Cは、NH91によるDRG誘発スパイク放電の阻害(
図15A)、及びDRGニューロンにおいて内向きの電圧依存性Ca
2+及びNa
+電流に対してNH91(5μM)による効果がないこと(
図15B~C)を示す比較プロットである。
【
図16】
図16は、NH110によるDRG誘発スパイク放電の阻害を示す比較プロットである。
【
図17A-1】
図17Aは、NH91によってもたらされたカプサイシン誘発DRGスパイクの阻害が、既知のTRPV1拮抗薬AMG517と比較して有意により強力であることを示す比較プロット(
図17A)である。
【
図17A-2】
図17Aは、NH91によってもたらされたカプサイシン誘発DRGスパイクの阻害が、既知のTRPV1拮抗薬AMG517と比較して有意により強力であることを示す比較プロット(
図17A)である。
【
図17B】
図17Bは、NH91によってもたらされたカプサイシン誘発DRGスパイクの阻害が、既知のTRPV1拮抗薬AMG517と比較して有意により強力であることを示す棒グラフ(
図17B)である。
【
図18】
図18は、Kv7.2/3チャネル遮断薬XE991(10μM)の存在下でNH91がカプサイシン誘発DRGスパイク放電を阻害する(50%)ことを示す比較プロット(
図18A)および棒グラフ(
図18B)である。
【
図19-1】
図19は、本発明の幾つかの実施形態に係る例示的な化合物の化学構造と特性を示す。
【
図19-2】
図19は、本発明の幾つかの実施形態に係る例示的な化合物の化学構造と特性を示す。
【
図19-3】
図19は、本発明の幾つかの実施形態に係る例示的な化合物の化学構造と特性を示す。
【
図19-4】
図19は、本発明の幾つかの実施形態に係る例示的な化合物の化学構造と特性を示す。
【
図19-5】
図19は、本発明の幾つかの実施形態に係る例示的な化合物の化学構造と特性を示す。
【
図19-6】
図19は、本発明の幾つかの実施形態に係る例示的な化合物の化学構造と特性を示す。
【
図20-1】表Aは、後述する実施例1及び2に記載のスクリーニングアッセイで試験した化合物の化学構造と分子量を示す。
【
図20-2】表Aは、後述する実施例1及び2に記載のスクリーニングアッセイで試験した化合物の化学構造と分子量を示す。
【
図20-3】表Aは、後述する実施例1及び2に記載のスクリーニングアッセイで試験した化合物の化学構造と分子量を示す。
【
図20-4】表Aは、後述する実施例1及び2に記載のスクリーニングアッセイで試験した化合物の化学構造と分子量を示す。
【
図20-5】表Aは、後述する実施例1及び2に記載のスクリーニングアッセイで試験した化合物の化学構造と分子量を示す。
【
図20-6】表Aは、後述する実施例1及び2に記載のスクリーニングアッセイで試験した化合物の化学構造と分子量を示す。
【
図20-7】表Aは、後述する実施例1及び2に記載のスクリーニングアッセイで試験した化合物の化学構造と分子量を示す。
【
図20-8】表Aは、後述する実施例1及び2に記載のスクリーニングアッセイで試験した化合物の化学構造と分子量を示す。
【発明を実施するための形態】
【0075】
本発明は、その幾つかの実施形態では、新規のジフェニルアミン誘導体に関し、より詳細には、カリウムイオンチャネルとTRPV1チャネルの両方のモジュレーターとしての二重活性を特徴とするジフェニルアミン誘導体に関するが、これに限定されない。このジフェニルアミン誘導体は、このようなチャネルに関連する様々な病態(例えば、神経障害性疼痛等)の治療に使用可能である。
【0076】
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、本発明は、必ずしもその用途が、以下の記載に示す、および/または図面および/または実施例で例示する、構成の詳細および要素の配置および/または方法に限定されるものではないことを理解するべきである。本発明は、他の実施形態が可能であり、また、さまざまな手段で実施または実行することが可能である。
【0077】
本発明者らは、二重チャネル標的化を使用し、同一分子によってKv7.2の活性化とTRPV1の阻害を行い、(例えば、相加性/相乗作用によって)薬物の効力を増加させ、それによって投与量を抑えることを可能とし、オフターゲットのリスクを低減させるワンツーパンチ戦略を考案した。
【0078】
本発明の実施形態は、本明細書において、各実施形態のいずれか及びその任意の組み合わせに記載の式Iで表されるようなジ(アリール/ヘテロアリール)アミド骨格(例えば、ジフェニルアミン骨格)を有する新たに設計された化合物に関すると共に、電圧依存性カリウムチャネル(例えば、Kv7.2/7.3)及び/又はTRPV1の活性の調節や、このようなチャネルの活性に関連する病態の治療におけるこの化合物の使用に関する。本発明の実施形態は更に、開示された化合物を調製するプロセスに関する。
【0079】
本発明の幾つかの実施形態の様相によれば、下記式I:
【化5】
(式中、
A及びBは各々独立してアリール及びヘテロアリールから選択され、
Dは(CRdRe)uであり、
Eは(CRfRg)vであり、
u及びvは各々独立して0又は1であり、
nは1~5の整数であり、
mは0~5の整数であり、
Re、Rd、Rf及びRgは各々独立して水素、アルキル、シクロアルキル、ハロ、ハロアルキル、ハロアルコキシ、アルコキシ、アリール、ヘテロアリール、ヘテロアリサイクリック、アリールオキシ、ヒドロキシ、アミン、アルキルアミン、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、シアノ、カルボキシレート、アミド、カルバメート、スルホニル及びスルホンアミドから選択され、
Ra及びRbは各々独立してアルキル、シクロアルキル、ハロ、ハロアルキル、ハロアルコキシ、アルコキシ、アリール、ヘテロアリール、ヘテロアリサイクリック、アリールオキシ、ヒドロキシ、アミン、アルキルアミン、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、シアノ、カルボキシレート、アミド、カルバメート、スルホニル及びスルホンアミドから選択される置換基であるか、或いは、Ra置換基、Re、Rd及びR
1の内の少なくとも2種は一緒になって脂環又は複素環を形成し、及び/又はRb置換基、Rf及びRgの内の少なくとも2種は一緒になって脂環又は複素環を形成し、nが1より大きい場合には、各Raは同一又は異なる置換基であり、mが1より大きい場合には、各Rbは同一又は異なる置換基であり、
R
1は水素、アルキル、シクロアルキル又はアリールであり、
Vは(CR
2R
3)k-C(=O)-NR
4-Zであり、且つN-R
1に対してメタ位にあり、
kは0~2の整数であり、
R
2とR
3は各々独立して水素、ハロ、アルキル、シクロアルキル及びアリールから選択され、
R
4は水素、アルキル、シクロアルキル又はアリールである)で集合的に表される化合物であって、
Zは下記式IIで表され、
【化6】
(式中、
wとqは各々独立して0~4の整数であり(但し、w+qは少なくとも2であり)、
XはO及びNR
9から選択されるか、又は存在せず、
YはOR
10及びSR
10から選択され、
R
5、R
6、R
7及びR
8は各々独立して水素、ハロ、アルキル、ハロアルキル、シクロアルキル、ヘテロアリサイクリック、アリール、アルキルアミノ、アルコキシ及びアリールオキシから選択されるか、或いは、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8及びR
9の内の2種は一緒になって脂環又はヘテロ脂環を形成し(環を形成するR
4、R
5、R
6、R
7、R
8及びR
9置換基の性質に応じて)、
R
10は水素、アルキル、シクロアルキル及びアリールから選択されるか、或いは、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9及びR
10の内の2種は一緒になって脂環又はヘテロ脂環を形成する)で表される化合物が提供される。
【0080】
本発明の幾つかの実施形態によれば、本実施形態の化合物は以下の事項の内の少なくとも1種、少なくとも2種、少なくとも3個、又は全てを特徴とする。
Ra置換基の少なくとも1種はアルキル、ハロアルキル、シクロアルキル、アリール、アルコキシ、アルキルアミノ、ヘテロアリール及びヘテロアリサイクリックから選択されるか、或いは2種のRa置換基が一緒になって環を形成する、及び/又は
Rb置換基の少なくとも1種はハロである、及び/又は
R5、R6、R7及びR8の内の少なくとも1種はアルキル、ハロ、ハロアルキル、シクロアルキル、ヘテロサイクリック又はアリールである、及び/又は
R5、R6、R7、R8及びR9とR10(存在する場合)の内の少なくとも2種は一緒になって脂環又はヘテロ脂環を形成する。
【0081】
本発明の幾つかの実施形態によれば、本実施形態の化合物は以下の事項の内の少なくとも1種、少なくとも2種、少なくとも3個、又は全てを特徴とする。
Ra置換基の少なくとも1種は、D(存在する場合)又はNR1(Dが存在しない場合)に対してオルト位にあり、このオルト位のRa置換基は、アルキル、ハロアルキル、シクロアルキル、アリール、アルコキシ、アルキルアミノ、ヘテロアリール及びヘテロアリサイクリックから選択されるか、或いは本明細書に記載のように、オルト位のRa置換基は他のRa置換基と一緒になって環を形成する、及び/又は
Rb置換基の少なくとも1種はハロであり、可変基Vに対してオルト位にある、及び/又は
R5、R6、R7及びR8の内の少なくとも1種はアルキル、ハロ、ハロアルキル、シクロアルキル、ヘテロアリサイクリック又はアリールである、及び/又は
R5、R6、R7、R8及びR9とR10(存在する場合)の内の少なくとも2種は一緒になって脂環又はヘテロ脂環を形成する。
【0082】
本発明の幾つかの実施形態によれば、本実施形態の化合物は以下の事項の内の少なくとも1種、少なくとも2種、少なくとも3個、又は全てを特徴とする。
Ra置換基の少なくとも1種は、D(存在する場合)又はNR1(Dが存在しない場合)に対してオルト位にあり、このオルト位のRa置換基は、アルキル、ハロアルキル、シクロアルキル及びアリールから選択される、及び/又は
Rb置換基の少なくとも1種はハロ、好ましくはフルオロであり、且つ可変基Vに対してオルト位にある、及び/又は
R5、R6、R7及びR8の内の少なくとも1種はアルキル、ハロ、ハロアルキル、シクロアルキル、ヘテロサイクリック又はアリールである、及び/又は、R5、R6、R7及びR8の内の少なくとも2種は一緒になって脂環又はヘテロ脂環を形成する。
【0083】
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、Aはアリールである。
【0084】
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、Bはアリールである。
【0085】
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、Aはアリールであり、Bはアリール又はヘテロアリール(例えば、ピリジン)である。
【0086】
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、A及びBは各々アリールである。
【0087】
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、A及び/又はBに関して、アリールはフェニルである。
【0088】
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、A及び/又はBに関して、ヘテロアリール環はピリジンである。
【0089】
AとBの一方又は両方がヘテロアリールの場合、ヘテロアリールの1種以上のヘテロ原子は2種の環を連結する基D-NR1-Eに対して任意の位置をとることができる。
【0090】
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、AとBは各々フェニルである。
【0091】
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、Dは(CRdRe)uであり、Rd及びReは各々水素である。或いは、Rd及びReの一方又は両方はアルキルであり、好ましくは非置換アルキルであり、好ましくは本明細書で定義の低級アルキルであり、好ましくは低級非置換アルキルである。これらの実施形態の幾つかでは、uは1である。幾つかの実施形態では、uは0であり、Dは存在しない。
【0092】
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、Eは(CRfRg)vであり、Rf及びRgは各々水素である。或いは、RfとRgの一方又は両方はアルキルであり、好ましくは非置換アルキルであり、好ましくは本明細書で定義の低級アルキルであり、好ましくは低級非置換アルキルである。これらの実施形態の幾つかでは、vは1である。幾つかの実施形態では、vは0であり、Eは存在しない。
【0093】
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、u及びvの各々は0であり、D及びEは両方とも存在しない。
【0094】
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、A及びBは各々フェニルであり、DとEは両方とも存在しない。
【0095】
これらの実施形態に係る化合物はジフェニルアミン誘導体であり、下記式Iaで集合的に表すことができる。
【化7】
(式中、Ra、Rb、n、m、R
1及びXは式Iに関して、各実施形態のいずれか及びその任意の組み合わせで記載した通りである。)
【0096】
本明細書に記載の実施形態の幾つかでは(例えば、式I及びIaの場合)、R1は水素又はアルキルであり、好ましくは非置換アルキルであり、好ましくは本明細書で定義の低級アルキルであり、好ましくは低級非置換アルキルである。
【0097】
本明細書に記載の実施形態の幾つかでは(例えば、式I及びIaの場合)、R1は水素である。
【0098】
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、B環上に少なくとも1種の置換基が存在し、mは0以外の整数である(例えば、1、2、3又は4である)。
【0099】
これらの実施形態の幾つかによれば、式I又はIaにおいて、Rb置換基の少なくとも1種は、-E-NR1-D基に対して又は(Eが存在しない場合には)-NR1-に対してパラ位にあるか、又はVに対してオルト位にある。
【0100】
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、mは0以外の整数であり、Rb置換基の少なくとも1種はハロである。
【0101】
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、式I又はIaにおいて、mは0以外であり、Rb置換基の少なくとも1種はハロであり、ハロ置換基は-E-NR1-D基に対して又は(Eが存在しない場合には)-NR1-に対してパラ位にあるか、又はVに対してオルト位にある。
【0102】
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、mは1であり、B環上にはVに加えて1種の置換基が存在する。
【0103】
これらの実施形態の幾つかによれば、Rb置換基はハロである。
【0104】
これらの実施形態の幾つかによれば、式I又はIaにおいて、Rb置換基は-E-NR1-D基に対して又は(Eが存在しない場合には)-NR1-に対してパラ位にあるか、又はVに対してオルト位にある。
【0105】
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、式I又はIaにおいて、mは1であり、Rb置換基はハロであり、且つ-E-NR1-D基に対して又は(Eが存在しない場合には)-NR1-に対してパラ位にあるか、又はVに対してオルト位にある。
【0106】
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、mが1であり、且つRbがハロである場合、ハロはフルオロである。
【0107】
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、式I又はIaにおいて、mは1であり、Rbはフルオロであり、且つ-E-NR1-D基に対して又は(Eが存在しない場合には)-NR1-に対してパラ位にあるか、又はVに対してオルト位にある。
【0108】
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、mは0以外の整数であり、B環上には1種以上のRb置換基が存在し、1種以上のRb置換基は同じであってもよく、互いに異なっていてもよい。これらの実施形態の幾つかでは、式I又はIaにおいて、Rb置換基の1種は-E-NR1-D基に対して又は(Eが存在しない場合には)-NR1-に対してパラ位にあるか、又はVに対してオルト位にある。
【0109】
幾つかの実施形態では、1種以上のRb置換基は、例えば、ハロ、アルキル、ハロアルキル、シクロアルキル、ヘテロアリサイクリック、アリール、ヘテロアリール、シアノ、アルキルアミン等から選択することができる、又は2種のRb置換基は一緒になって本明細書で定義の環を形成することができる。
【0110】
本発明の幾つかの実施形態によれば、mは1であり、Rb置換基はハロ、アルキル、ハロアルキル、シクロアルキル、ヘテロアリサイクリック、アリール、ヘテロアリール、シアノ、アルキルアミンとすることができる。これらの実施形態の幾つかによれば、式I又はIaにおいて、Rb置換基は-E-NR1-D基に対して又は(Eが存在しない場合には)-NR1-に対してパラ位にあるか、又はVに対してオルト位にある。
【0111】
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、式I中のA環上に少なくとも1種のRa置換基が存在する、即ち、nは1、2、3、4又は5である。
【0112】
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、Ra置換基の少なくとも1種は、-D-NR1-E基に対して、又は(Dが存在しない場合には)-NR1-基に対して、オルト位にある。
【0113】
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、A環上に少なくとも2種のRa置換基が存在する、即ち、nは2、3、4又は5である。これらの実施形態の幾つかによれば、Ra置換基の少なくとも1種は、-D-NR1-E基に対して、又は(Dが存在しない場合には)-NR1-基に対して、オルト位にある。
【0114】
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、A環上に少なくとも3個のRa置換基が存在する、即ち、nは3、4又は5である。これらの実施形態の幾つかによれば、Ra置換基の少なくとも1種は、-D-NR1-E基に対して、又は(Dが存在しない場合には)-NR1-基に対して、オルト位にある。
【0115】
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、A環上に3個のRa置換基が存在する、即ち、nは3である。これらの実施形態の幾つかによれば、Ra置換基の少なくとも1種は、-D-NR1-E基に対して、又は(Dが存在しない場合には)-NR1-基に対して、オルト位にある。
【0116】
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、Ra置換基はハロ、アルコキシ、ハロアルキル、アルキル、シクロアルキル、アミン(好ましくはアルキルアミン)、ヘテロアリサイクリック、アリール及びヘテロアリールとすることでき、nが2、3、4、5の場合には、上述のものの任意の組み合わせとすることができ、或いは2種のRa置換基が環を形成することができる。これらの実施形態の幾つかによれば、Ra置換基の少なくとも1種は、-D-NR1-E基に対して、又は(Dが存在しない場合には)-NR1-基に対して、オルト位にある。
【0117】
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、nが2、3、4又は5の場合(好ましくは3の場合)には、2種以上のRa置換基はハロ及びアルコキシから選択され、即ち、Ra置換基は、2種のハロ置換基、2種のアルコキシ置換基、又は1種のハロ置換基と1種のアルコキシ置換基を含むことができる。本明細書に記載の実施形態の幾つかでは、Ra置換基がアルコキシの場合、アルコキシは本明細書で定義のハロアルコキシである。
【0118】
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、nは2、3、4又は5、好ましくは3であり、Ra置換基の少なくとも2種は各々ハロである。
【0119】
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、nは2、3、4又は5、好ましくは3であり、Ra置換基の少なくとも2種は各々クロロである。或いは、ハロ置換基の一方又は両方はフルオロである。
【0120】
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、Ra置換基の少なくとも1種はアルキル、ハロアルキル、シクロアルキル、アリール、アルコキシ、アルキルアミノ、ヘテロアリール及びヘテロアリサイクリックから選択されるか、或いは2種のRa置換基が一緒になって環を形成する。
【0121】
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、Ra置換基の少なくとも1種はアルキル、ハロアルキル、シクロアルキル及びアリールから選択される。
【0122】
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、Ra置換基の少なくとも1種はアルキル又はシクロアルキルである。
【0123】
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、Ra置換基の少なくとも1種は、アルキル、ハロアルキル、シクロアルキル、アリール、アルコキシ、アルキルアミノ、ヘテロアリール又はヘテロアリサイクリックであり、且つ-D-NR1-E基に対して、又は(Dが存在しない場合には)-NR1-基に対して、オルト位にある。
【0124】
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、nは3であり、Ra置換基の1種は、アルキル、ハロアルキル、シクロアルキル、アリール、アルコキシ、アルキルアミノ、ヘテロアリール又はヘテロアリサイクリックであり、且つ-D-NR1-E基に対して、又は(Dが存在しない場合には)-NR1-基に対して、オルト位にあり、他の2種のRa置換基は各々ハロ(例えば、クロロ)である。
【0125】
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、nが2、3、4又は5である場合、Ra置換基の少なくとも1種は、-D-NR1-E基に対して、又は(Dが存在しない場合には)-NR1-基に対して、オルト位にあり、他の1種以上の置換基は他の任意の位置にある。幾つかの実施形態では、他の1種以上の置換基は、-D-NR1-E基に対して、又は(Dが存在しない場合には)-NR1-基に対して、オルト及び/又はパラ位にある。
【0126】
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、nが3である場合、Ra置換基の各々はハロ、例えば、クロロ及び/又はフルオロであるか、又は各々がクロロである。
【0127】
これらの実施形態の幾つかでは、ハロ置換基は、-D-NR1-E基に対して、又は(Dが存在しない場合には)-NR1-基に対して、オルト及びパラ位にある。
【0128】
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、nは3であり、Ra置換基の1種は、アルキル、ハロアルキル、シクロアルキル、アリール、アルコキシ、アルキルアミノ、ヘテロアリール又はヘテロアリサイクリックであり、且つ-D-NR1-E基に対して又は(Dが存在しない場合には)-NR1-基に対してオルト位にあり、他の2種のRa置換基は、各々、本明細書に記載の通りハロである。これらの実施形態の幾つかでは、2種のハロRa置換基は、-D-NR1-E基に対して、又は(Dが存在しない場合には)-NR1-基に対して、オルト及びパラ位にある。
【0129】
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、nは3であり、Ra置換基の1種は、アルキル、好ましくは低級アルキル又はシクロアルキルであり、且つ-D-NR1-E基に対して、又は(Dが存在しない場合には)-NR1-基に対して、オルト位にあり、他の2種のRa置換基は、各々、本明細書に記載の通りハロである。これらの実施形態の幾つかでは、2種のハロRa置換基は、-D-NR1-E基に対して、又は(Dが存在しない場合には)-NR1-基に対して、オルト及びパラ位にある。
【0130】
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば(例えば、式I又はIaに関して)、nは3であり、Ra置換基の1種は、アルキル、ハロアルキル、シクロアルキル、アリール、アルコキシ、アルキルアミノ、ヘテロアリール又はヘテロアリサイクリックであり、且つ-D-NR1-E基に対して、又は(Dが存在しない場合には)-NR1-基に対して、オルト位にあり、他の2種のRa置換基は、各々、本明細書に記載の通りハロであり、mは1であり、Rbはハロ(例えば、フルオロ)であり、且つ-E-NR1-D-基に対して、又は(Eが存在しない場合には)-NR1-に対して、パラ位にある。
【0131】
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば(例えば、式I又はIaに関して)、nは3であり、Ra置換基の1種は、アルキル、ハロアルキル、シクロアルキル、アリール、アルコキシ、アルキルアミノ、ヘテロアリール又はヘテロアリサイクリックであり、且つ-D-NR1-E基に対して、又は(Dが存在しない場合には)-NR1-基に対して、オルト位にあり、他の2種のRa置換基は、各々、本明細書に記載の通りハロであり、mは1であり、Rb置換基は、-E-NR1-D-基に対して、又は(Eが存在しない場合には)-NR1-に対して、パラ位にある。
【0132】
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば(例えば、式I又はIaに関して)、nは3であり、Ra置換基の1種は、アルキル、ハロアルキル、シクロアルキル、アリール、アルコキシ、アルキルアミノ、ヘテロアリール又はヘテロアリサイクリックであり、且つ-D-NR1-E基に対して、又は(Dが存在しない場合には)-NR1-基に対して、オルト位にあり、他の2種のRa置換基は、各々、本明細書に記載の通りハロであり、mは1であり、Rb置換基はハロ(例えば、フルオロ)である。
【0133】
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば(例えば、式I又はIaに関して)、Ra置換基の1種は、アルキル、ハロアルキル、シクロアルキル、アリール、アルコキシ、アルキルアミノ、ヘテロアリール又はヘテロアリサイクリック、好ましくはアルキル(例えば、低級アルキル)又はシクロアルキルであり、且つ-D-NR1-E基に対して、又は(Dが存在しない場合には)-NR1-基に対して、オルト位にあり、mは1であり、Rbはハロ(例えば、フルオロ)であり、且つ-E-NR1-D-基に対して、又は(Eが存在しない場合には)-NR1-に対して、パラ位にある。
【0134】
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば(例えば、式I又はIaに関して)、Ra置換基の1種は、アルキル、ハロアルキル、シクロアルキル、アリール、アルコキシ、アルキルアミノ、ヘテロアリール又はヘテロアリサイクリック、好ましくはアルキル(例えば、低級アルキル)又はシクロアルキルであり、且つ-D-NR1-E基に対して、又は(Dが存在しない場合には)-NR1-基に対して、オルト位にあり、mは1であり、Rb置換基は-E-NR1-D-基に対して、又は(Eが存在しない場合には)-NR1-に対して、パラ位にある。
【0135】
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば(例えば、式I又はIaに関して)、Ra置換基の1種は、アルキル、ハロアルキル、シクロアルキル、アリール、アルコキシ、アルキルアミノ、ヘテロアリール又はヘテロアリサイクリック、好ましくはアルキル(例えば、低級アルキル)又はシクロアルキルであり、mは1であり、Rb置換基はハロ(例えば、フルオロ)である。
【0136】
実施形態の幾つかでは、2種のハロRa置換基が存在する場合、2種のハロRa置換基は、-D-NR1-E基に対して、又は(Dが存在しない場合には)-NR1-基に対して、オルト及びパラ位にある。
【0137】
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、kは1である。場合によっては、kは0である。
【0138】
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、kが0以外の場合、R2及びR3は各々水素である。或いは、R2とR3の一方又は両方はアルキル又はハロアルキル、好ましくは低級アルキルである。
【0139】
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、kは1であり、R2及びR3は各々水素である。
【0140】
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、R4は水素である。場合によっては、R4はアルキル、好ましくは低級アルキルである。更に場合によっては、R4はR5、R6、R7及びR8の内の1種以上、又はR5、R6、R7、R8、R9(存在する場合)及びR10(水素以外の場合)の内の1種以上と一緒になって複素環、好ましくはヘテロ脂環を形成する。
【0141】
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、kは1であり、R2及びR3は各々水素であり、R4は水素である。
【0142】
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、Xは存在せず、Zはアルキレン鎖又はYで置換された脂環(シクロアルキル)、又はYと場合によってはNR4が環の一部を形成するヘテロ脂環である。
【0143】
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、XはOであり、ZはYで終結するアルキレングリコール鎖、又は、XとYとの間に形成されるヘテロ脂環に連結するか、又は2種のR7、R8(例えば、qが1を超える場合)の間に形成される脂環に連結するアルキレン鎖(CR5R6)wである。
【0144】
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、XはOであり、ZはYで終結するアルキレングリコール鎖である。これらの実施形態の幾つかでは、wは1、2又は3,好ましくは2であり、qは1、2又は3、好ましくは2である。
【0145】
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、Xは存在せず、Zは(CR5R6)wと(CR7R8)qで構成されるアルキレン鎖である。
【0146】
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、Xは存在せず、Zは脂環(シクロアルキル)であり、(CR5R6)wと(CR7R8)qで形成されており、R5、R6、R7及びR8の内の2種以上が環を形成しており、Yで置換されている。
【0147】
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、wとqの合計は少なくとも2であり、幾つかの実施形態では、少なくとも3であり、例えば、3、4、5又は6又はそれ以上である。
【0148】
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、R5、R6、R7及びR8の内の少なくとも1種は独立してアルキル、ハロアルキル及びハロから選択される、及び/又はR5、R6、R7及びR8の内の少なくとも2種は一緒になって脂環を形成する。
【0149】
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、R5、R6、R7及びR8の内の少なくとも2種は独立してアルキル、ハロアルキル及びハロから選択される。
【0150】
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、R5、R6、R7及びR8の内の少なくとも2種は各々独立してアルキル、好ましくは低級アルキルである。
【0151】
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、qは1であり、R7及びR8の少なくとも1種又はその各々はアルキル、好ましくは低級アルキルである。
【0152】
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、wは1又は2である。
【0153】
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、R5及びR6は、各々、水素である。
【0154】
wが1以外の場合、2種以上の(CR5R6)基で構成され、これらの基の各々のR5及びR6は同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0155】
qが1以外の場合、2種以上の(CR7R8)基で構成され、これらの基の各々のR7及びR8は同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0156】
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、qは1であり、wは1又は2である。
【0157】
これらの実施形態の幾つかによれば、R7及びR8の少なくとも一方(好ましくは両方)は水素以外であり、好ましくはアルキル(例えば、メチル等の低級アルキル)である。或いは又は更には、1種の(CR5R6)基中のR5及びR6の少なくとも一方(好ましくは両方)は水素以外であり、好ましくはアルキル(例えば、メチル等の低級アルキル)である。
【0158】
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、qは1であり、wは2である。
【0159】
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、qは2であり、wは2である。
【0160】
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、少なくとも1種の(CR7R8)基において、R7及びR8の少なくとも一方(好ましくは両方)は水素以外であり、好ましくはアルキル(例えば、メチル等の低級アルキル)である。或いは又は更には、1種の(CR5R6)基中のR5及びR6の少なくとも一方(好ましくは両方)は水素以外であり、好ましくはアルキル(例えば、メチル等の低級アルキル)である。
【0161】
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、Xは存在せず、R5、R6、R7及びR8の内の少なくとも2種が一緒になって脂環を形成する。これらの実施形態の幾つかでは、wは1であり、qは1であり、R5、R6、R7及びR8は一緒になって脂環を形成する。
【0162】
これらの実施形態の幾つかでは、wは2であり、qは1であり、NR4に連結していない(CR5R6)基によって脂環が形成される。或いは、wは1であり、qは2であり、Yに連結していない(CR7R8)基によって脂環が形成される。
【0163】
本明細書に記載の実施形態の幾つかでは、Zが脂環を含む場合には、この環は3~6員環であるか、又は5員環又は6員環である。
【0164】
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、Xは存在せず、R5、R6、R7及びR8の内の少なくとも2種は一緒になって脂環(シクロアルキル)を形成する。これらの実施形態の幾つかでは、w及びqは各々1であり、幾つかの他の実施形態では、qは1であり、wは1又は2である。これらの実施形態の幾つかでは、R7及びR8は一緒になって脂環(シクロアルキル)を形成し、幾つかの実施形態では、R5、R6、R7及びR8の全てが一緒になって脂環を形成する。脂環の炭素原子数は3、4、5、6又はそれ以上とすることができる。
【0165】
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、XはOであり、R5、R6、R7及びR8の1種以上、好ましくはR7及び/又はR8は水素以外(例えば、アルキル、シクロアルキル、アリール)である。
【0166】
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、XはOであり、wは2以上であり、R5及びR6の2種は一緒になって脂環を形成する。
【0167】
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、XはOであり、qは2以上であり、R7及びR8の2種は一緒になって脂環を形成する。
【0168】
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、XはNR9であり、R9はR5、R6、R7及びR8の1種以上と一緒になってヘテロ脂環を形成する。
【0169】
本明細書に記載の実施形態の幾つかでは、R5、R6、R7及びR8の内の少なくとも1種は独立してアルキル、ハロアルキル及びハロから選択され、及び/又はR5、R6、R7及びR8の内の少なくとも2種は一緒になって脂環を形成し、Ra置換基の少なくとも1種は、アルキル、ハロアルキル、シクロアルキル、アリール、アルコキシ、アルキルアミノ、ヘテロアリール及びヘテロアリサイクリックから選択される、或いは2種のRa置換基が一緒になって環を形成する。これらの実施形態の幾つかでは、Ra置換基は、本明細書に記載の通り、-D-NR1-E-基に対してオルト位にある。これらの実施形態の幾つかでは、mは1であり、Rb置換基は、本明細書で各実施形態のいずれかに記載の通り、ハロ、例えば、フルオロである。
【0170】
本明細書に記載の実施形態の幾つかでは、R5、R6、R7及びR8の内の少なくとも1種は独立してアルキルである、及び/又はR5、R6、R7及びR8の内の少なくとも2種は一緒になって脂環を形成し、Ra置換基の少なくとも1種はアルキル、ハロアルキル、シクロアルキル、アリール、アルコキシ、アルキルアミノ、ヘテロアリール及びヘテロアリサイクリックから選択される、或いは2種のRa置換基が一緒になって環を形成する。これらの実施形態の幾つかでは、Ra置換基は、本明細書に記載の通り、-D-NR1-E-基に対してオルト位にある。これらの実施形態の幾つかでは、mは1であり、Rb置換基は、本明細書で各実施形態のいずれかに記載の通り、ハロ、例えば、フルオロである。
【0171】
本明細書に記載の実施形態の幾つかでは、R5、R6、R7及びR8の内の少なくとも1種は独立してアルキル、ハロアルキル及びハロから選択され、及び/又はR5、R6、R7及びR8の内の少なくとも2種は一緒になって脂環を形成し、Ra置換基の少なくとも1種はアルキル、ハロアルキル及びシクロアルキルから選択される。これらの実施形態の幾つかでは、Ra置換基は、本明細書に記載の通り、-D-NR1-E-基に対してオルト位にある。これらの実施形態の幾つかでは、mは1であり、Rb置換基は、本明細書で各実施形態のいずれかに記載の通り、ハロ、例えば、フルオロである。
【0172】
本明細書に記載の実施形態の幾つかでは、R5、R6、R7及びR8の内の少なくとも1種は独立してアルキルである、及び/又はR5、R6、R7及びR8の内の少なくとも2種は一緒になって脂環を形成し、Ra置換基の少なくとも1種はアルキル、ハロアルキル及びシクロアルキルから選択される。これらの実施形態の幾つかでは、Ra置換基は、本明細書に記載の通り、-D-NR1-E-基に対してオルト位にある。これらの実施形態の幾つかでは、mは1であり、Rb置換基は、本明細書で各実施形態のいずれかに記載の通り、ハロ、例えば、フルオロである。
【0173】
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、Yはヒドロキシ、即ち、YはOR10であり、R10は水素である。
【0174】
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、本明細書に記載の式I又はIaの化合物は、オクタノールと水について求められるLogP値が少なくとも3、好ましくは少なくとも4、例えば、4~5であることを特徴とする。
【0175】
【0176】
本実施形態に係る化合物の例としては、本明細書に記載の化合物NH66、NH91、NH101、NH110、NH83.1、NH83.2、NH83.3、NH82.1、NH82.2、NH82.3及びNH160が挙げられる。
【0177】
本実施形態に係る化合物の例としては、本明細書に記載の化合物NH91、NH101、NH110、NH83.1、NH83.2、NH83.3、NH82.1、NH82.2及びNH82.3が挙げられる。
【0178】
本実施形態に係る化合物の例としては、本明細書に記載の化合物NH91、NH101、NH110、NH83.1、NH83.2及びNH83.3が挙げられる。
【0179】
本実施形態に係る化合物の例としては、本明細書に記載の化合物NH91、NH101及びNH110が挙げられる。
【0180】
本実施形態に係る化合物の例としては、本明細書に記載の化合物NH91及びNH101が挙げられる。
【0181】
本実施形態の化合物は、当技術分野で既知の方法によって容易に調製できる。通常、互いに結合して-D-NR1-E-基を形成可能な反応基を適切な位置で使用しつつ、式Iにおいて環Bに対応する1種の出発材料と、環Aに対応する1種の出発材料とをカップリングさせて、調製する。
【0182】
カップリングは、環Bに対応する出発材料が本明細書で定義のV基を既に含んでいるか、或いは、その出発材料がアミドの代わりに対応するエステル又はカルボン酸を含み得るものとして行うことができる。適切なアミンをカップリングしてV中にアミドを形成することは、環Aに対応する出発材料へのカップリングの後に行う。
【0183】
幾つかの実施形態では、D及びEの両方が存在しない場合、環Bに対応する出発材料は各位置(Vに対してメタ位)にアミン基を含んでおり、環Aに対応する出発材料は、求核カップリング反応に関与し得る、本明細書で定義の脱離基を含んでいる。
【0184】
合成経路の例を以下の実施例の項に記載する。
【0185】
本明細書に記載の実施形態のいずれか及びその任意の組み合わせに関して、化合物は塩、例えば、薬学的に許容し得る塩の形態とすることができる。
【0186】
本明細書で使用する「薬学的に許容し得る塩」という語句は、親化合物の荷電種とその対イオンを意味し、これは通常、親化合物の溶解特性の調整、及び/又は親化合物による生物へのいずれかの大きな刺激を低減するために使用されるが、投与化合物の生物学的活性や特性を無効にはしない。本明細書に記載の化合物の薬学的に許容し得る塩は、例えば、反応混合物からの化合物の単離又は化合物の再結晶化の過程等、化合物の合成中に形成することもできる。
【0187】
本実施形態の幾つかの状況では、本明細書に記載の化合物の薬学的に許容し得る塩は、必要に応じて、正に荷電した状態の(例えば、塩基性基がプロトン化している)化合物の少なくとも1種の塩基性基(例えば、複素環基中のアミン及び/又はアミド及び/又は窒素原子)と、薬学的に許容し得る塩を形成する、選択された酸由来の少なくとも1種の対イオンとの組み合わせを含む、酸付加塩とすることができる。
【0188】
従って、本明細書に記載の化合物の酸付加塩は、化合物の1種以上の塩基性基と1当量以上の酸との間で形成される複合体とすることができる。
【0189】
化合物中の荷電基と塩中の対イオンとの間の化学量論比に応じて、酸付加塩は、単付加塩又は重付加塩とすることができる。
【0190】
本明細書で使用される「単付加塩」という語句は、対イオンと荷電状態の化合物との化学量論比が1:1である塩を意味し、付加塩は、化合物の1モル当量当たり1モル当量の対イオンを含む。
【0191】
本明細書で使用される「重付加塩」という語句は、対イオンと荷電状態の化合物との化学量論比が1:1より大きく、例えば2:1、3:1、4:1等である塩を意味し、付加塩は、化合物の1モル当量当たり2モル当量以上の対イオンを含む。
【0192】
薬学的に許容し得る塩の例として、アンモニウムカチオン又はグアニジニウムカチオンとその酸付加塩が挙げられるが、これに限定されない。
【0193】
酸付加塩は様々な有機酸や無機酸を含むことができ、例えば、塩酸付加塩をもたらす塩酸、臭化水素酸付加塩をもたらす臭化水素酸、酢酸付加塩をもたらす酢酸、アスコルビン酸付加塩をもたらすアスコルビン酸、ベシル酸塩付加塩をもたらすベンゼンスルホン酸、カンファースルホン酸付加塩をもたらすカンファースルホン酸、クエン酸付加塩をもたらすクエン酸、マレイン酸付加塩をもたらすマレイン酸、リンゴ酸付加塩をもたらすリンゴ酸、メタンスルホン酸(メシレート)付加塩をもたらすメタンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸付加塩をもたらすナフタレンスルホン酸、シュウ酸付加塩をもたらすシュウ酸、リン酸付加塩をもたらすリン酸、p-トルエンスルホン酸付加塩をもたらすトルエンスルホン酸、コハク酸付加塩をもたらすコハク酸、硫酸付加塩をもたらす硫酸、酒石酸付加塩をもたらす酒石酸、及びトリフルオロ酢酸付加塩をもたらすトリフルオロ酢酸が挙げられるが、これらに限定されない。これらの酸付加塩の各々は、これらの用語が本明細書で定義されている通り、単付加塩又は重付加塩とすることができる。
【0194】
本実施形態は更に、本明細書に記載の化合物の任意の鏡像異性体、ジアステレオマー、プロドラッグ、溶媒和物、水和物及び/又は薬学的に許容し得る塩を包含する。
【0195】
本明細書で使用される「鏡像異性体」という用語は、互いの完全な反転/反射(鏡像)によってのみ、その対応物に重ねることができる化合物の立体異性体を意味する。鏡像異性体には「利き手」があると言われており、右利きと左利きのように互いに言及される。鏡像異性体は、全ての生物系等、それ自体が利き手を有する環境に存在する場合を除いて、同一の化学的及び物理的特性を有する。本実施形態の状況では、化合物が1種以上のキラル中心を示し、その各々がR配置又はS配置及び任意の組み合わせを示すことがあり、本発明の幾つかの実施形態に係る化合物は、R配置又はS配置を示す任意のキラル中心を有することがある。
【0196】
本明細書で使用される「ジアステレオマー」という用語は、互いに鏡像異性体ではない立体異性体を意味する。ジアステレオマーが生じるのは、化合物の2種以上の立体異性体が等価な(関連する)立体中心の1種以上(全てではない)で異なる配置を持っているが、互いに鏡像ではない場合である。2種のジアステレオマーが1種の立体中心のみで互いに異なっている場合、それらはエピマーである。各立体中心(キラル中心)によって2種の異なる立体配置が生じるため、2種の異なる立体異性体が生じる。本発明の状況では、本発明の実施形態は、任意の立体配置の組み合わせで生じる複数のキラル中心を有する化合物、即ち、任意のジアステレオマーを包含する。
【0197】
「プロドラッグ」という用語は、インビボで活性化合物(活性親薬物)に変換する薬剤を意味する。プロドラッグは通常、親薬物の投与を容易にするのに有用である。プロドラッグは、例えば、経口投与により生体利用可能となるが、親薬物はそうではない。プロドラッグは、医薬組成物中の親薬物と比較して溶解性が改善されていることもある。プロドラッグを使用してインビボでの活性化合物の持続放出を得ることも多い。
【0198】
「溶媒和物」という用語は、溶質(本発明の化合物)と溶媒によって形成されており、これによって溶媒が溶質の生物活性を妨げることのない、可変化学量論(例えば、ジ、トリ、テトラ、ペンタ、ヘキサ等)の複合体を意味する。適切な溶媒としては、例えば、エタノール、酢酸等が挙げられる。
【0199】
「水和物」という用語は、溶媒が水である、上で定義されたような溶媒和物を意味する。
【0200】
本発明の幾つかの実施形態の様相によれば、本明細書に記載の化合物と薬学的に許容し得る担体を含む医薬組成物が提供される。
【0201】
本発明の幾つかの実施形態の様相によれば、電圧依存性カリウムチャネルの活性を調節するのに使用される、本明細書に記載の化合物又は本明細書に記載の医薬組成物が提供される。
【0202】
本発明の幾つかの実施形態の様相によれば、電圧依存性カリウムチャネルの活性を調節する方法であって、カリウムチャネルを本明細書に記載の化合物又は医薬組成物と接触させることを含む方法が提供される。この接触は、インビトロでは、例えば、チャネルを発現する細胞、組織又は器官を化合物又は組成物と接触させて行うことができ、インビボでは、治療有効量の化合物又は組成物をそれを必要とする対象に投与して行うことができる。
【0203】
幾つかの実施形態では、カリウムチャネルはKv7.2/7.3である。
【0204】
幾つかの実施形態では、調節はカリウムチャネルを開くことを含む。
【0205】
本発明の幾つかの実施形態の様相によれば、TRPV1チャネルの活性を調節するのに使用される、本明細書に記載の化合物又は本明細書に記載の医薬組成物が提供される。
【0206】
本発明の幾つかの実施形態の態様によれば、TRPV1チャネルの活性を調節する方法であって、TRPV1チャネルを本明細書に記載の化合物又は医薬組成物と接触させることを含む方法が提供される。この接触は、インビトロでは、例えば、チャネルを発現する細胞、組織又は器官を化合物又は組成物と接触させて行うことができ、インビボでは、治療有効量の化合物又は組成物をそれを必要とする対象に投与して行うことができる。
【0207】
幾つかの実施形態では、調節は、TRPV1チャネルの活性を阻害する(チャネルを遮断する)ことを含む。
【0208】
本発明の幾つかの実施形態の様相によれば、本明細書で各実施形態のいずれかに記載の電圧依存性カリウムチャネル及びTRPV1チャネルの両方の活性の調節に使用るための、本明細書に記載の化合物又は本明細書に記載の医薬組成物が提供される。
【0209】
本発明の幾つかの実施形態の様相によれば、電圧依存性カリウムチャネル及びTRPV1チャネルの活性を調節する方法であって、これらのチャネルを本明細書に記載の化合物又は医薬組成物と接触させることを含む方法が提供される。この接触は、インビトロでは、例えば、これらのチャネルを発現する細胞、組織又は器官を化合物又は組成物と接触させて行うことができ、インビボでは、治療有効量の化合物又は組成物をそれを必要とする対象に投与して行うことができる。
【0210】
本発明の幾つかの実施形態の様相によれば、電圧依存性カリウムチャネル及び/又はTRPV1チャネルの活性に関連する病態の治療に使用するための、本明細書に記載の化合物又は本明細書に記載の医薬組成物が提供される。
【0211】
本発明の幾つかの実施形態の様相によれば、電圧依存性カリウムチャネルとTRPV1チャネルの活性に関連する病態の治療に使用するための、本明細書に記載の化合物又は本明細書に記載の医薬組成物が提供される。
【0212】
本発明の幾つかの実施形態の様相によれば、電圧依存性カリウムチャネル及び/又はTRPV1チャネルの活性に関連する病態の治療を必要とする対象について、その病態を治療するための方法であって、本明細書で各実施形態のいずれか及びその任意の組み合わせに記載の化合物又は医薬組成物の治療有効量を対象に投与することを含む方法が提供される。
【0213】
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、病態は、本明細書に記載のように、電圧依存性カリウムチャネル及びTRPV1チャネルの一方、好ましくはその両方の活性を調節することが有益となるようなものである。
【0214】
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、病態は、本明細書に記載のように、電圧依存性カリウムチャネルを開き、TRPV1チャネルを遮断(阻害)することが有益となるようなものである。
【0215】
病態の一例は神経障害性疼痛である。
【0216】
本明細書に記載のTRPV1チャネル機能及び/又は電圧依存性カリウムチャネルに関連する他の任意の病態(病状、状態、疾患及び/又は障害)が企図される。
【0217】
本明細書に記載のTRPV1阻害剤(遮断薬)(一般式Iを有する化合物)によって有益に治療可能な病態の例としては、てんかん、神経原性疼痛等の疼痛関連病態、神経障害性疼痛、異痛症、炎症に関連する疼痛、及び膵炎に関連する疼痛、双極性障害、気分障害、精神病性障害、統合失調症、不安及び運動ニューロン疾患、膀胱過活動、尿失禁、持続性内臓過敏症、例えば、過敏性腸症候群(IBD)、慢性咳嗽、及び癌(例えば、扁平上皮癌、前立腺癌、膵臓癌)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0218】
カリウムチャネル機能の欠陥に関連する多くの病状、病態及び障害が存在する。他のカリウムチャネル開口化合物と同様に、本明細書に記載の化合物は、カリウムチャネル機能の欠陥に関連する病状、病態、疾患及び障害の治療の枠組み内で使用して、人間を含む動物の病態と病状の作用を処理、改善、予防、阻害又は制限するためのものである。
【0219】
本明細書に記載のカリウムチャネル開口薬によって有益に治療可能な病態の例としては、中枢又は末梢神経系障害、例えば、虚血性脳卒中、片頭痛、運動失調、パーキンソン病、双極性障害、三叉神経痛、痙攣、気分障害、脳腫瘍、精神病性障害、統合失調症、ミオキミア、神経原性疼痛、神経障害性疼痛、発作、てんかん、聴覚及び視力喪失、不安及び運動ニューロン疾患が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書に記載の化合物は、神経保護剤として(例えば、脳卒中等を防止するのに)更に有益に使用することができる。本明細書に記載の化合物は、胃食道逆流障害や胃腸運動機能障害等の疾患状態の治療にも有用である。
【0220】
本明細書に開示の化合物は、皮質及び/又は末梢ニューロン活性の抑制が有益である様々な病態、例えば、てんかん、虚血性脳卒中、片頭痛、運動失調、ミオキミア、神経原性疼痛、神経障害性疼痛、パーキンソン病、双極性障害、三叉神経痛、痙攣、気分障害、精神病性障害、統合失調症、脳腫瘍、聴覚及び視力喪失、不安及び運動ニューロン疾患を治療するための強力な候補として使用することもできる。
【0221】
本発明の幾つかの実施形態の様相によれば、本明細書に記載の化合物又は組成物は、皮質及び/又は末梢ニューロン活性を抑制するのに使用する、及び/又は、本明細書に記載のように、対象において皮質及び/又は末梢ニューロン活性の抑制が有益である病態を治療するのに使用するものである。
【0222】
本明細書で使用される「医薬組成物」とは、(有効成分として)本発明の化合物の1種以上、その生理学的に許容し得る塩、又はそのプロドラッグと、他の化学成分(例えば、生理学的に適切な担体、賦形剤、潤滑剤、緩衝剤、抗菌剤、充填剤(例えば、マンニトール)、抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸や重亜硫酸ナトリウム)、抗炎症剤、抗ウイルス剤、化学療法剤、抗ヒスタミン剤等が挙げられるが、これらに限定されない)との調製物を意味する。医薬組成物の目的は、対象への化合物の投与を容易にすることである。
【0223】
「有効成分」という用語は、生物学的作用を担う化合物を意味する。
【0224】
互換的に使用することができる「生理学的に許容し得る担体」と「薬学的に許容し得る担体」という用語は、生物に対して大きな刺激を引き起こさず、投与された化合物の生物活性及び特性を無効にしない担体又は希釈剤を意味する。
【0225】
本明細書における「賦形剤」という用語は、薬物の投与を更に容易にするために医薬組成物に添加される不活性物質を意味する。賦形剤の例としては、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、様々な種類の糖及びデンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、植物油及びポリエチレングリコールが挙げられるが、これらに限定されない。
【0226】
薬物の処方と投与に関する技法は「Remington’s Pharmaceutical Sciences」Mack Publishing Co.(ペンシルバニア州イーストン)最新版に見出すことができるが、これを本明細書の一部を構成するものとして援用する。
【0227】
本発明に従って使用する医薬組成物は、薬学的に使用可能な製剤への化合物の処理を容易にする、賦形剤と補助剤を含む1種以上の薬学的に許容し得る担体を使用し、従来の方法で処方することができる。適切な処方は選択した投与経路に依存する。投与量は使用する剤形と利用する投与経路に応じて異なり得る。正確な処方、投与経路及び投与量は、患者の状態を考慮して個々の医師が選択することができる(例えば、Fingl et al., 1975, in “The Pharmacological Basis of Therapeutics”, Ch. 1 p.1を参照)。
【0228】
医薬組成物は、局所又は全身治療又は投与のどちらが選択されるかに応じて、及び治療される領域に応じて1種以上の経路での投与用に処方することができる。投与は、経口的に、吸入により、又は非経口的に、例えば、静脈内点滴又は腹腔内、皮下、筋肉内又は静脈内注射により、又は局所的(点眼、経膣、直腸、鼻腔内を含む)に行うことができる。
【0229】
局所投与用の製剤としては、ローション、軟膏、ゲル、クリーム、坐剤、ドロップ、液剤、噴霧剤及び散剤を挙げることができるが、これらに限定されない。従来の医薬担体、水性、粉末又は油性基剤、増粘剤等が必要又は望ましい場合がある。
【0230】
経口投与用の組成物としては、散剤又は顆粒剤、水又は非水性媒体中の懸濁剤又は溶液剤、サシェ剤、丸剤、カプレット剤、カプセル剤又は錠剤が挙げられる。増粘剤、希釈剤、香味料、分散助剤、乳化剤又は結合剤が望ましい場合がある。
【0231】
非経口投与用の製剤は、緩衝液、希釈剤及び他の適切な添加剤を含むこともできる滅菌溶液剤を挙げることができるが、これに限定されない。徐放性組成物が治療用に想定されている。
【0232】
投与する組成物の量は、当然のことながら、治療する対象、苦痛の重症度、投与方法、処方する医師の判断等に依存する。
【0233】
本発明の幾つかの実施形態では、治療効果を得るために必要な投与する組成物の量(例えば、本明細書に記載の化合物の投与量又は治療有効量)は、同様の治療効果を示すことが知られている前述の化合物の量よりも少なくとも20%、又は少なくとも30%少ない。
【0234】
本発明の組成物は、必要に応じて、有効成分を含有する1種以上の単位剤形を含むことができる、FDA(米国食品医薬品局)承認キット等のパック又はディスペンサー装置で提供することができる。パックは、例えば、金属又はプラスチック箔(ブリスターパックや加圧容器(吸入用)等が挙げられるが、これらに限定されない)を含むことができる。パック又はディスペンサー装置には投与用の説明書を添付することができる。パック又はディスペンサーには、医薬品の製造、使用又は販売を規制する政府機関によって規定された形式の容器に関する通知(この通知は、ヒト又は動物への投与用組成物の形態の政府機関による承認を反映している)を添付することもできる。このような通知は、例えば、処方薬物に関する米国食品医薬品局によって承認された表示、又は承認製品の掲載とすることができる。適合性のある医薬担体に配合された本発明のSRIを含む組成物は、上で詳述したように調製し、適切な容器に入れ、特定の病態、疾患又は障害の治療用に表示することもできる。
【0235】
医薬組成物は、更なる医薬活性剤又は不活性剤(例えば、抗菌剤、抗酸化剤、緩衝剤、増量剤、界面活性剤、抗炎症剤、抗ウイルス剤、化学療法剤及び抗ヒスタミン剤が挙げられるが、これらに限定されない)及び/又は本明細書に記載の病態、疾患又は障害の治療に使用可能な更なる剤を更に含むことができる。
【0236】
本明細書で使用する「約」は、±10%または±5%を指す。
【0237】
用語「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含む(includes)」、「含む(including)」、「有する(having)」およびその活用形は、「限定されるものではないが、含む(including but not limited to)」を意味する。
【0238】
「からなる」という用語は、「含み、限定される」ことを意味する。
【0239】
「から実質的になる」という用語は、組成物、方法または構造が追加の成分、工程および/または部分を含み得ることを意味する。但しこれは、追加の成分、工程および/または部分が、請求項に記載の組成物、方法または構造の基本的かつ新規な特性を実質的に変更しない場合に限られる。
【0240】
本明細書において、単数形を表す「a」、「an」および「the」は、文脈が明らかに他を示さない限り、複数をも対象とする。例えば、「化合物(a compound)」または「少なくとも1種の化合物」には、複数の化合物が含まれ、それらの混合物をも含み得る。
【0241】
本願全体を通して、本発明のさまざまな実施形態は、範囲形式にて示され得る。範囲形式での記載は、単に利便性および簡潔さのためであり、本発明の範囲の柔軟性を欠く制限ではないことを理解されたい。したがって、範囲の記載は、可能な下位の範囲の全部、およびその範囲内の個々の数値を特異的に開示していると考えるべきである。例えば、1~6といった範囲の記載は、1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6等の部分範囲のみならず、その範囲内の個々の数値、例えば1、2、3、4、5および6も具体的に開示するものとする。これは、範囲の大きさに関わらず適用される。
【0242】
本明細書において数値範囲を示す場合、それは常に示す範囲内の任意の引用数(分数または整数)を含むことを意図する。第1の指示数と第2の指示数「との間の範囲」という表現と、第1の指示数「から」第2の指示数「までの範囲」という表現は、本明細書で代替可能に使用され、第1の指示数および第2の指示数と、それらの間の分数および整数の全部を含むことを意図する。
【0243】
本明細書で使用する「方法」という用語は、所定の課題を達成するための様式、手段、技術および手順を意味し、化学、薬理学、生物学、生化学および医療の各分野の従事者に既知のもの、または既知の様式、手段、技術および手順から従事者が容易に開発できるものが含まれるが、これらに限定されない。
【0244】
異常な活性、疾病または病態と関連して本明細書で使用する「治療する」という用語は、病態の進行の抑止、実質的な阻害、遅延または逆転、病態の臨床的または審美的な症状の実質的な寛解、あるいは病態の臨床的または審美的な症状の悪化の実質的な予防を含む。
【0245】
本明細書で使用される「アルキル」という用語は、直鎖基及び分岐鎖基を含む飽和脂肪族炭化水素を意味する。アルキル基は1~20個の炭素原子を有することが好ましい。本明細書に記載の数値範囲が、例えば「1~20」の場合、これは基(この場合はアルキル基)が1個の炭素原子、2個の炭素原子、3個の炭素原子等、最大20個の炭素原子を含むことを意味する。1~10個の炭素原子を有する中程度のアルキルであることがより好ましい。1~4個の炭素原子を有する低級アルキルであることが最も好ましい。アルキル基は置換されていてもよく、置換されていなくてもよい。置換されている場合、置換基は、例えば、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロアリサイクリック、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、シアノ、ハロ、カルボニル、チオカルボニル、O-カルバミル、N-カルバミル、O-チオカルバミル、N-チオカルバミル、C-アミド、N-アミド、C-カルボキシ、O-カルボキシ、ニトロ、スルホンアミド、トリハロメタンスルホンアミド、シリル、グアニル、グアニジノ、ウレイド、アミノ又はNRaRb(Ra及びRbは各々独立して水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、カルボニル、スルホニル、トリハロメチルスルホニル及び複合5員又は6員ヘテロ脂環)とすることができる。
【0246】
「ハロアルキル」基とは、本明細書で定義のアルキルが、本明細書で定義の1個以上のハロ置換基で置換されたものを表す。幾つかの実施形態では、ハロアルキルは、2個以上又は3個以上のハロ置換基で置換されたアルキルである。幾つかの実施形態では、ハロ置換基の各々はフルオロである。幾つかの実施形態では、ハロアルキルは-CF3又は-CF2Hである。
【0247】
「シクロアルキル」基とは、環の1個以上が完全共役π電子系(脂環)を有しない、全炭素単環式又は縮合環(即ち、隣接する炭素原子の対を共有する環)基を意味する。シクロアルキル基の例としては、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロペンテン、シクロヘキサン、シクロヘキサジエン、シクロヘプタン、シクロヘプタトリエン及びアダマンタンが挙げられるが、これらに限定されない。シクロアルキル基は置換されていてもよく、置換されていなくてもよい。置換されている場合、置換基は、例えば、アルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロアリサイクリック、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、シアノ、ハロ、カルボニル、チオカルボニル、C-カルボキシ、O-カルボキシ、O-カルバミル、N-カルバミル、C-アミド、N-アミド、ニトロ、アミノ及び上述のNRaRbとすることができる。
【0248】
「アルケニル」基とは、少なくとも2個の炭素原子と少なくとも1個の炭素-炭素二重結合で構成されるアルキル基を意味する。
【0249】
「アルキニル」基とは、少なくとも2個の炭素原子と少なくとも1個の炭素-炭素三重結合で構成されるアルキル基を意味する。
【0250】
幾つかの実施形態では、アルキル置換基が示される場合、それは本明細書で定義のアルキニル又はアルキニルで置換することができる。
【0251】
「アリール」基とは、完全共役π電子系を有する全炭素単環式又は縮合環多環式(即ち、隣接する炭素原子の対を共有する環)基を意味する。アリール基の例としては、フェニル、ナフタレニル及びアントラセニルが挙げられるが、これらに限定されない。アリール基は置換されていてもよく、置換されていなくてもよい。置換されている場合、置換基は、例えば、ハロ、トリハロメチル、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオカルボニル、C-カルボキシ、O-カルボキシ、O-カルバミル、N-カルバミル、O-チオカルバミル、N-チオカルバミル、C-アミド、N-アミド、スルフィニル、スルホニル、アミノ及び上述のNRaRbとすることができる。
【0252】
「ヘテロアリール」基とは、例えば、窒素、酸素及び硫黄等の1個以上の原子を環内に有し、更に完全共役π電子系を有する単環式又は縮合環(即ち、隣接する原子の対を共有する環)基を意味する。ヘテロアリール基の例として、ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、ピラゾール、ピリジン、ピリミジン、キノリン、イソキノリン及びプリンが挙げられるが、これらに限定されない。ヘテロアリール基は置換されていてもよく、置換されていなくてもよい。置換されている場合、置換基は、例えば、アルキル、シクロアルキル、ハロ、トリハロメチル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオカルボニル、スルホンアミド、C-カルボキシ、O-カルボキシ、スルフィニル、スルホニル、O-カルバミル、N-カルバミル、O-チオカルバミル、N-チオカルバミル、C-アミド、N-アミド、アミノ又は上述のNRaRbとすることができる。
【0253】
「ヘテロアリサイクリック」基とは、窒素、酸素及び硫黄等の1個以上の原子を環内に有する単環式又は縮合環基を意味する。環は1個以上の二重結合を有することもできる。しかし、環は完全共役π電子系を有していない。ヘテロアリサイクリック基は置換されていてもよく、置換されていなくてもよい。置換されている場合、置換基は、例えば、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ハロ、トリハロメチル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、シアノ、ニトロ、カルボニル、チオカルボニル、C-カルボキシ、O-カルボキシ、O-カルバミル、N-カルバミル、O-チオカルバミル、N-チオカルバミル、スルフィニル、スルホニル、C-アミド、N-アミド、アミノ及び上述のNRaRbとすることができる。
【0254】
本明細書で使用される「環状基」とは、アリサイクリック基(シクロアルキル)、アリール、ヘテロアリール又はヘテロアリサイクリックを表す。
【0255】
「ヒドロキシ」基とは-OH基を意味する。
【0256】
「アジド」基とは-N=N基を意味する。
【0257】
「アルコキシ」基とは、本明細書で定義の-O-アルキル基と-O-シクロアルキル基の両方を意味する。
【0258】
「ハロアルコキシ」基は、アルキルが本明細書に記載のハロアルキルであるO-アルキル基を表す。
【0259】
「アリールオキシ」基とは、本明細書で定義の-O-アリール基と-O-ヘテロアリール基の両方を意味する。
【0260】
「チオヒドロキシ」又は「チオール」基とは-SH基を意味する。
【0261】
「チオアルコキシ」基とは、本明細書で定義の-S-アルキル基と-S-シクロアルキル基の両方を意味する。
【0262】
「チオアリールオキシ」基とは、本明細書で定義の-S-アリール基と-S-ヘテロアリール基の両方を意味する。
【0263】
「カルボニル」基とは、R’が水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール(環炭素によって結合)又は本明細書に定義のヘテロアリサイクリック(環炭素によって結合)である-C(=O)-R’基を意味する。
【0264】
「アルデヒド」基とは、R’が水素であるカルボニル基を意味する。
【0265】
「チオカルボニル」基とは、R’が本明細書で定義の通りである-C(=S)-R’基を意味する。
【0266】
「カルボキシレート」という用語は、C-カルボキシレートとO-カルボキシレートを包含する。
【0267】
「C-カルボキシ」基とは、R’が本明細書で定義の通りである-C(=O)-O-R’基を意味する。
【0268】
「O-カルボキシ」基とは、R’が本明細書で定義の通りであるR’C(=O)-O-基を意味する。
【0269】
「カルボン酸」基とは、R’が水素であるC-カルボキシル基を意味する。
【0270】
「ハロ」基とは、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素を意味する。
【0271】
「トリハロメチル」基とは、Xが本明細書で定義のハロ基である-CX3基を意味する。
【0272】
「トリハロメタンスルホニル」基とは、Xが本明細書で定義のハロ基であるX3CS(=O)2-基を意味する。
【0273】
「スルフィニル」基とは、R’が本明細書で定義の通りである-S(=O)-R’基を意味する。
【0274】
「スルホニル」基とは、R’が本明細書で定義の通りである-S(=O)2-R’基を意味する。
【0275】
「スルホニルアミド」という用語は、S-スルホニルアミドとN-スルホニルアミドを包含する。
【0276】
「S-スルホンアミド」基とは、R’が本明細書で定義の通りであり、R’’がR’について定義された通りである-S(=O)2-NR’R’’基を意味する。
【0277】
「N-スルホンアミド」基とは、R’とR’’が本明細書で定義の通りであるR’S(=O)2-NR’’基を意味する。
【0278】
「トリハロメタンスルホンアミド」基とは、R’とXが本明細書で定義の通りであるX3CS(=O)2NR’-基を意味する。
【0279】
「カルバメート」という用語は、O-カルバミルとN-カルバミルを包含する。
【0280】
「O-カルバミル」基とは、R’とR’’が本明細書で定義の通りである-OC(=O)-NR’R’’基を意味する。
【0281】
「N-カルバミル」基とは、R’とR’’が本明細書で定義の通りであるR’OC(=O)-NR’’-基を意味する。
【0282】
「チオカルバメート」という用語は、O-チオカルバミルとN-チオカルバミルを包含する。
【0283】
「O-チオカルバミル」基とは、R’とR’’が本明細書で定義の通りである-OC(=S)-NR’R’’基を意味する。
【0284】
「N-チオカルバミル」基とは、R’とR’’が本明細書で定義の通りであるR’’OC(=S)NR’-基を意味する。
【0285】
「アミノ」基とは、R’とR’’が本明細書で定義の通りである-NR’R’’基を意味する。
【0286】
「アルキルアミノ」基とは、R’とR’’の一方がアルキル(モノアルキルアミン)又はR’とR’’の両方が各々独立してアルキル(ジアルキルアミン)であるアミン基を意味する。
【0287】
「アミド」という用語はC-アミドとN-アミドを包含する。
【0288】
「C-アミド」基とは、R’とR’’が本明細書で定義の通りである-C(=O)-NR’R’’基を意味する。
【0289】
「N-アミド」基とは、R’とR’’が本明細書で定義の通りであるR’C(=O)-NR’’基を意味する。
【0290】
「4級アンモニウム」基とは、R’とR’’が独立してアルキル、シクロアルキル、アリール又はヘテロアリールである-NHR’R’’+基を意味する。
【0291】
「ウレイド」基とは、R’とR’’が本明細書で定義の通りであり、R’’’がR’又はR’’として定義された通りである-NR’C(=O)-NR’’R’’’基を意味する。
【0292】
「グアニジノ」基とは、R’、R’’及びR’’’が本明細書で定義の通りである-R’NC(=N)-NR’’R’’’基を意味する。
【0293】
「グアニル」基とは、R’とR’’が本明細書で定義の通りであるR’R’’NC(=N)-基を意味する。
【0294】
「ニトロ」基とは-NO2基を意味する。
【0295】
「シアノ」基とは-C≡N基を意味する。
【0296】
「シリル」基とは、R’、R’’及びR’’’が本明細書で定義の通りである-SiR’R’’R’’’を意味する。
【0297】
本明細書及び当技術分野で使用される「脱離基」は、化学反応中に有機分子から容易に脱離する不安定な原子、基又は化学部分を表すが、脱離は通常、脱離原子、基又はその部分の相対的安定性によって促進される。通常、強酸の共役塩基である任意の基が脱離基として作用することができる。本実施形態の幾つかに係る適切な脱離基の代表的な例としては、トリクロロアセトイミデート、アセテート、トシレート、トリフレート、スルホネート、アジド、ハライド(ハロ、好ましくはブロモ又はヨード)、ヒドロキシ、チオヒドロキシ、アルコキシ、シアネート、チオシアネート、ニトロ及びシアノが挙げられるが、これらに限定されない。
【0298】
明確さのために別個の実施形態に関連して記載した本発明の所定の特徴はまた、1つの実施形態において、これら特徴を組み合わせて提供され得ることを理解されたい。逆に、簡潔さのために1つの実施形態に関連して記載した本発明の複数の特徴はまた、別々に、または任意の好適な部分的な組み合わせ、または適当な他の記載された実施形態に対しても提供され得る。さまざまな実施形態に関連して記載される所定の特徴は、その要素なしでは特定の実施形態が動作不能でない限り、その実施形態の必須要件であると捉えてはならない。
【0299】
上述したように、本明細書に記載され、特許請求の範囲に請求される本発明のさまざまな実施形態および態様は、以下の実施例によって実験的に支持されるものである。
【0300】
実施例
ここで、上記の記載と共に本発明を限定することなく説明する以下の実施例に参照する。
【実施例1】
【0301】
構造活性相関の検討-化学合成
本発明者らは、ほぼ50種のジ(アリール/ヘテロアリール)アミン誘導体のライブラリーを設計及び合成し、これらの化合物をそのインビトロでの活性に関して、CHO細胞で発現する組換えKv7.2/3及びTRPV1チャネルでスクリーニングした。
【0302】
化合物のライブラリーは一般式Aに基づいて設計した。
【0303】
【化8】
式中、
AとBは各々独立してアリール及びヘテロアリールから選択され、
DとEは各々独立して(CRdRe)uであり、RdとReは各々独立して水素、アルキル、シクロアルキル、ハロアルキル、ハロ等であり、uは独立して0又は1であり(好ましくはRdとReは各々水素であり)、
nは1~5の整数であり、
mは0~5の整数であり、
RaとRbは式Iで定義された通りであるか、又は各々独立してアルキル、シクロアルキル、ハロ、ハロアルキル、ハロアルコキシ、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヒドロキシ、アミン、アルキルアミン、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、シアノ、カルボキシレート、アミド、カルバメート、スルホニル及びスルホンアミド(好ましくは水素、アルキル、ハロ、ハロアルキル及びハロアルコキシ)から選択され、nが1より大きい場合には、各置換基Raは同一又は異なっており、mが2より大きい場合には、各置換基Rbは同一又は異なっており、
GはNR
1及びOから選択され、
R
1は水素、アルキル、シクロアルキル又はアリール(好ましくは水素)であり、
Vは(CR
2R
3)k-C(=O)-NR
4-Zであり、且つGに対してオルト、メタ又はパラ位にあり、
kは0~2の整数であり、
R
2とR
3は各々独立して水素、ハロ、アルキル、シクロアルキル及びアリールから選択され(好ましくは水素又はアルキルであり)、
R
4は水素、アルキル、シクロアルキル又はアリール(好ましくは水素、又は以下に記載のようにR
5、R
6、R
7及びR
8とヘテロ脂環を形成するアルキル)、であり
Zは下記式IIで表される。
【化9】
(式中、
wとqは各々独立して0~8、又は0~6、又は0~4の整数であり(但し、w+qは少なくとも2(例えば、2、3又は4)に等しい)、
XはO及びNR
9から選択されるか、又は存在せず、
YはOR
10、SR
10及びNR
10R
11から選択され、
R
5、R
6、R
7及びR
8は各々独立して水素、ハロ、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアリサイクリック、アリール、アルキルアミノ、アルコキシ及びアリールオキシから選択される(好ましくは水素又はアルキルである)、或いはR
5、R
6、R
7、R
8及びR
9の内の2種が一緒になって脂環又はヘテロ脂環を形成し、
R
10とR
11は各々独立して水素又はアルキルであるか、或いは、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10及びR
11の内の2種が一緒になって脂環又はヘテロ脂環を形成する。)
【0304】
ライブラリーの設計は、スクリーニングされた化合物の以下の構造的特徴の1種以上が互いに異なるように行った。
Gに対する可変基Vの位置
Gの性質
D及び/又はEの有無
Ra置換基の数と性質及びその位置
Rb置換基の有無、及びその性質と位置
A環とB環の性質
可変基Vの化学構造
【0305】
設計されたライブラリー中の例示的な化合物の化学構造を表Aに示す。
【0306】
表に示すように、殆どの化合物はA環とB環がフェニル環であることを特徴としており、D基とE基は存在せず、GはNR1であり、R1は水素である。このような化合物は、本明細書ではジフェニルアミン化合物又は誘導体とも称する。
【0307】
図1A~Bは、表Aに示すジフェニルアミン誘導体を調製するのに用いる一般的な合成経路の例を示す。
【0308】
図1Aにおいて、例示的な合成経路は、置換されたフェニルのカルボン酸誘導体に各アミンをカップリングすることによって開始し、当該置換されたフェニルは、式Aで定義された(Rb)mによって置換され、更に式A中の可変基Vに対する基NR1の位置に対応する位置(例えば、オルト又はメタ)のニトロ基で置換されたフェニルであるアミド結合の形成に使用可能な任意の試薬又は試薬系を用いてこのカップリングを行うことができる。非限定的な試薬の例としてはHATUが挙げられるが、他の如何なるカップリング試薬又は試薬系(例えば、ペプチドカップリング用)も企図される。合成では還元剤又は還元系を使用してニトロ基をアミン基に変換する。例示的な還元系は水素ガス、Pd/C及び必要に応じてメタノール等のアルコール溶媒を含むが、ニトロをアミンに変換するのに適した他の如何なる還元剤又は還元系も企図される。合成では次に、式Aで定義された(Ra)nで置換され、脱離基(
図1AでLとして示す)で更に置換されたフェニル環を各アミンとカップリングする。カップリングは、当技術分野で既知の適切なカップリング試薬又は系の存在下、求核反応によって行う。例示的な系は、Pd(dba)
3、キサントホス、K
2CO
3、ジオキサン及び熱(例えば、160℃でのマイクロ波加熱)を含むが、他の如何なる試薬又は試薬系も企図される。
【0309】
図1Bにおいて、例示的な合成経路は、置換されたフェニルのカルボン酸誘導体のエステル化によって開始し、当該置換されたフェニルは、式Aで定義された(Rb)mによって置換され、更に式A中の可変基Vに対する基NR1の位置に対応する位置(例えば、オルト又はメタ)のニトロ基で置換されたフェニルである。エステル化で使用可能な如何なる試薬又は試薬系も企図される。例示的なエステル化は硫酸等の酸を使用して行う。合成の進行は、ニトロ基をアミン基に還元し、式Aで定義されたように(Ra)nで置換され、
図1Aに記載のように更に脱離基で置換されたフェニル環に得られたアミンをカップリングして行う。これに続いて、当技術分野で既知の方法及び試薬を使用して形成した化合物の脱エステル化を行い、得られたカルボン酸を各アミンとカップリングして、
図1Aに記載のように式A中の可変基Vを有するアミドを形成する。
【0310】
アリール環(式Aの可変基RaとRbに相当)及び/又はアミド(式Aの可変基Vに相当)の特定の置換基を特徴とする出発材料と試薬を選択することによって、式Aの各ジフェニルアミン化合物を調製した。
【0311】
図2~6は代表的なジフェニルアミン誘導体の合成の例を示す。NH66(
図2)、NH82とNH82(
図3)、NH91(
図4)、HN101(
図5)及びNH110(
図6)。
【0312】
同様の合成経路を用いて以下の化合物を調製する。
【0313】
【0314】
式A中のの環A及びBの1種としてのヘテロアリール、及び/又はNH以外の可変基G、及び/又は存在する可変基D及び/又はEを特徴とする化合物は、これらの経路を僅かに変更して調製した。
【0315】
図7は、環Bとしてのヘテロアリールを特徴とする例示的な化合物(NH106と表示)を調製するための合成経路を示す。
【実施例2】
【0316】
構造活性相関の検討
カリウムKv7.2/3チャネル及びTRPV1チャネルの調節における実施例1に記載の化合物の二重活性を、以下のプロトコルを用いて試験した。
【0317】
チャイニーズハムスター卵巣CHO細胞を、2mMグルタミン、10%ウシ胎仔血清及び抗生物質を添加したダルベッコ改変イーグル培地で増殖させた。即ち、24マルチウェルプレートのポリ-D-リジン被覆カバーガラス(直径13mm)に播種した40,000個の細胞に、トランスフェクション用マーカーとしてのpIRES-CD8(0.3μg)、0.5μgのKv7.2及び0.5μgのKv7.3をトランスフェクトした。3.6μLのX-tremeGENE9(Roche)を使用し、製造業者のプロトコルに従ってトランスフェクションを行った。電気生理学に関しては、抗CD8抗体被覆ビーズ法を用い、トランスフェクションの約40時間後にトランスフェクトした細胞を可視化した。
【0318】
Kv7.2カリウム電流記録に関しては、パッチピペットをホウケイ酸ガラス(Warner Instrument Corp)から3~7MΩの抵抗で引っ張り、130mMのKCl、5mMのMgATP、5mMのEGTA、10mMのHEPES、pH7.3(KOHで調整)を充填し、スクロースを添加してモル浸透圧濃度を290mOsmolに調整した。外部溶液には140mMのNaCl、4mMのKCl、1.2mMのMgCl2、1.8mMのCaCl2、11mMのグルコース、5.5mMのHEPES、pH7.3(NaOHで調整)が含まれており、スクロースを添加してモル浸透圧濃度を310mOsmolに調整した。細胞を-90mVで保持し、1.5秒間で-70mVから+30mVまで10mVずつ増加させ、-60mVで再分極させた。TRPV1電流記録に関しては、細胞外溶液に脱感作を制限するCaCl2が含まれておらず、1mMのEGTAと1mMのMgCl2が含まれていた以外は、Kv7.2に使用したものと同じ溶液を使用した。
【0319】
得られたデータの分析に続いて、特定のジ(アリール/ヘテロアリール)アミン誘導体を、二重チャネル標的化を示し、Kv7.2を活性化し、TRPV1を阻害する薬物候補とする、下記の幾つかの構造的特徴を特定した。
式Aのアリール/ヘテロアリール環Bのアミド置換基(式Aの可変基V)を、2個のアリール/ヘテロアリール環を架橋する基(式Aの可変基G)に対してメタ位に有する;
アミドのヒドロキシアルキル又はアルキレングリコール置換基(式Aの可変基Z)に対して、(R5、R6、R7及びR8の1種以上として)アルキル又はシクロアルキル官能性を導入する;
アミド置換基を持たないアリール/ヘテロアリール環(式Aの環A)の基Gに対してオルト位に、(Ra置換基としての)アルキル又はシクロアルキル置換基を導入する;及び/又は
アミド置換基(式Aの可変基V)に対してオルト位で、式Aの環Bに(Rb置換基としての)ハロ(例えば、フルオロ)置換基を導入する。
【0320】
更に、式Aの可変基A、B、D、E及びGとして他の基を特徴とする、本明細書で定義のジフェニルアミド誘導体以外の化合物は、ジフェニルアミン誘導体よりも劣ることが示された。
【0321】
次の化合物:NH66、NH82、NH83、NH91、NH101及びNH110は、二重チャネル標的化を示し、Kv7.2を活性化し、TRPV1を阻害するのに最も強力であることが分かった(表Aを参照)。更に比較研究を行った。
【実施例3】
【0322】
活性アッセイ
チャイニーズハムスター卵巣CHO細胞を、2mMグルタミン、10%ウシ胎仔血清及び抗生物質を添加したダルベッコ改変イーグル培地で増殖させた。即ち、24マルチウェルプレートのポリ-D-リジン被覆カバーガラス(直径13mm)に播種した40,000個の細胞に、トランスフェクション用マーカーとしてのpIRES-CD8(0.3μg)、0.5μgのKv7.2及びKv7.3cDNAプラスミドをトランスフェクトした。3.6μLのX-tremeGENE9(Roche)を使用し、製造業者のプロトコルに従ってトランスフェクションを行った。電気生理学に関しては、抗CD8抗体被覆ビーズ法を用い、トランスフェクションの約40時間後にトランスフェクトした細胞を可視化した。パッチクランプ技法の全細胞構成を使用して記録を行った。Axopatch 200Bパッチクランプ増幅器(Axon Instruments)を使用してシグナルを増幅し、5kHzでサンプリングし、4極ベッセルローパスフィルターを介して2.4kHzでフィルターをかけた。pClamp10.5ソフトウェアをDigiData1440Aインターフェイスと組み合わせて使用してデータを取得した。パッチピペットをホウケイ酸ガラス(Harvard Apparatus)から3~7メガオームの抵抗で引っ張った。細胞内ピペット溶液には、130mMのKCl、5mMのK2-ATP、5mMのEGTA(又は指示された場合は5mMのBAPTA)、10mMのHEPES、pH7.3(KOHで調整)、CaCl2(MAXCHELATORソフトウェアに従って異なる遊離Ca2+濃度値が必要な場合)が含まれており、スクロースを添加してモル浸透圧濃度を290mosmolに調整した。外部溶液には、140mMのNaCl、4mMのKCl、1.8mMのCaCl2、1.2mMのMgCl2、11mMのグルコース、5.5mMのHEPESが含まれており、NaOHでpH7.3(310mOsM)に調整した。直列抵抗を補正し(75~90%)、定期的にモニターした。Clampfitプログラム(pClamp10.5、Axon Instruments)、Microsoft Excel(ワシントン州レドモンド、Microsoft)、及びPrism5.0(カリフォルニア州サンディエゴ、GraphPad Software,Inc.、)を使用してデータ分析を行った。pClamp10.5ソフトウェアのClampfitプログラムを使用し、リーク減算をオフラインで行った。細胞を-90mVで保持し、-70mVから+30mVまで10mVずつ増加させ、-60mVで再分極させた。
【0323】
薬物の非存在下及び存在下での細胞に関して、正規化コンダクタンスを試験電圧の関数としてプロットした。コードコンダクタンス(G)は次の式を使用して計算した:G=I/(V-Vrev)(式中、Iはパルス終了時に測定された電流振幅に相当し、VrevはCHO細胞において-90mVと想定される計算逆転電位である)。様々な試験電圧(V)でGを推定した後、最大コンダクタンス値Gmaxに正規化した。活性化曲線はボルツマン分布:G/Gmax=1/{1+exp[(V50-V)/s]}(式中、V50は電流が半分活性化する電圧であり、sは勾配係数である)でフイッテッィングした。
【0324】
組換えTRPV1チャネルの阻害については上述の実施例2に記載のように試験した。
【0325】
TRPV1全細胞電流は、トランスフェクトしたCHO細胞を-60mVの保持電位で0.5μMのカプサイシンに曝露して活性化した。心臓チャネルHerg電流の記録は以下のように行った。細胞を-90mVで保持し、1.5秒間で-70mVから+30mVまで10mVずつ増加させ、-60mVで再分極させた。
【0326】
侵害受容性後根(DRG)感覚ニューロンの誘発スパイク放電の阻害については、以下のように試験した。DRGニューロンの電流クランプ記録に関しては、パッチピペットを135mMのKCl、1mMのK2ATP、1mMのMgATP、2mMのEGTA、1.1mMのCaCl2、5mMのグルコース(遊離[Ca2+]i=87nM)、10mMのHEPES(KOHでpH7.4(315mOsm)に調整)で充填した。外部溶液には、150mMのNaCl、2.5mMのKCl、2mMのCaCl2、2mMのMgCl2、15mMのグルコース、10mMのHEPES(NaOHでpH7.4(325mOsm)に調整)が含まれていた。高速灌流システム(AutoMate Scientific)による迅速な適用によって薬物曝露を引き起こした。
【0327】
結果:
図8A~Cは、組換えKv7.2/3電流の振幅(
図8A)及び電圧依存性に対する5μMのNH66の効果、上述のジフェニルアミン化合物NH43の効果(
図8C)を示す。
【0328】
図示したように、5μMのNH43とNH66は、CHO細胞で発現する組換えKv7.2/3電流の振幅を-40mVで約3.5倍増加させ、その電圧依存性を-10mVより大きく左シフトさせる。
【0329】
図9は、0.1μMのカプサイシン(CAP)によって活性化された組換えTRPV1電流に対する5μMのNH66の効果を示す。
図9には、0.1μMのカプサイシンをトランスフェクトCHO細胞に適用して誘発されたTRPV1電流を示す。上のパネルには、0.1μMのカプサイシンの適用によってのみ誘発された電流を示す。中央のパネルには、0.1μMのカプサイシン+5μMのNH66の適用によって最初に誘発され、次に0.1μMのカプサイシンのみによって誘発された電流示す。下のパネルは、最初に0.1μMのカプサイシン、次に0.1μMのカプサイシン+5μMのNH66によって誘発された電流を示す。
【0330】
図示したように、NH43と同様に、NH66は0.1μMのカプサイシンによって活性化された組換えTRPV1電流を0.3μMのIC50で阻害する。
【0331】
図10A~Bは、ラットDRGニューロンの誘発スパイク放電に対する1μMのNH43(
図10A)と1μMのNH66(
図10B)の効果を示す。
【0332】
図示したように、NH43とNH66は、侵害受容性後根(DRG)感覚ニューロンの誘発スパイク放電をそれぞれ0.3μM及び0.5μMのIC50で阻害する。
【0333】
【0334】
図11C~Dは、DRG誘発スパイク放電に対するNH82(
図11C)及びNH83(
図11D)の効果を示す。図示したように、NH82は組換えKv7.2/3チャネルとTRPV1チャネルの両方とDRG誘発スパイク放電に影響を及ぼし、NH83はDRG誘発スパイク放電での僅かな活性改善を示す。更なるアッセイでは、NH91、NH101及びNH110が、組換えチャネルとDRG誘発スパイク放電の両方に対して試験した最も強力な化合物として特定された。
【0335】
【0336】
図12A~B、13A~C及び14A~Bはそれぞれ、Kv7.2/3チャネルの-40mVでの振幅(
図12A、13A及び14A)と電圧依存性(
図12B、13B~C及び14B)に対するNH91、NH101及びNH110の効果を示し、これらの化合物が振幅を強力に増加させ、活性化の電圧依存性を左シフトさせることが分かる。
【0337】
図15Aは、NH91がDRG誘発スパイク放電を顕著に阻害することを示す。
図15B~Cは、NH91(5μM)が、DRGニューロンにおける内向きの電圧依存性Ca
2+及びNa
+電流に影響を及ぼさなかったことを示し、Kv7.2/3電流とTRPV1電流に対するその特異性を示す。
【0338】
図16は、NH110もDRG誘発スパイク放電を阻害することを示す。NH91の二重標的化及び相乗効果は
図17A~Bと18A~Bに更に示されており、これは、1μMのカプサイシンによるTRPV1チャネルの活性化によって誘発されるDRGニューロンスパイク放電に対する作用によるものである。
【0339】
図17Aと17Bは、NH91によってもたらされたカプサイシン誘発DRGスパイクの阻害が、既知のTRPV1拮抗薬AMG517と比較して有意により強力であることを示す。
【0340】
TRPV1拮抗薬AMG517(0.1μM、そのIC50の100倍)はカプサイシン誘発DRGスパイクを42%阻害したが(n=11、一元配置分散分析、P<0.0001)、NH91は有意により強力な88%の阻害をもたらした(n=10、一元配置分散分析、P<0.0001)。これらのデータから、AMG517のような典型的な高親和性の至適基準TRPV1拮抗薬と比較して、NH91がDRGで明確な相乗効果を示すことが分かる。これは、TRPV1チャネルの阻害とKv7.2/3チャネルの活性化によるNH91の相乗作用を示唆している。
【0341】
この主張の更なるサポートを
図18A~Bに示すが、これはKv7.2/3チャネル遮断薬XE991(10μM)の存在下でもカプサイシン誘発DRGスパイク放電がNH91によって阻害される(50%)ことによるものであり、TRPV1チャネルの強力な阻害も示される(n=11、両側独立t検定、P<0.0001)。
【0342】
リード化合物についてその心臓オフターゲットHergへの親和性を更に試験し、この心臓チャネルに対して起こり得る悪影響を評価した。
【0343】
以下の表1にインビトロ研究で示された主なパラメータをまとめる。二重チャネル標的化を示す2種の初期ヒットNH29とNH34(Kv7.2/3の開口薬とTRPV1の遮断薬)から始まり、本発明の基礎となるSAR研究によって、約50種のNCEの合理的な化学設計から一連の潜在的なリードの特定につながった。
【0344】
2種の標的(Kv7.2/3とTRPV1)に対する幾分低い親和性と心臓オフターゲットHergに対するマイクロモル親和性を示した初期ヒットとは対照的に、潜在的なリード化合物は標的に対する有意に高い親和性(0.2~1μM)と心臓Hergチャネルに対する非常に低い親和性(35~135μM、IC50)を示し、これによって良好な心臓安全性、これらの化合物の効力の改善、及び治療指数の全体的な改善がもたらされる。
【0345】
最適化されたNCEは、二重チャネル標的化、Kv7.2の活性化及びTRPV1の阻害を示す。
【0346】
【0347】
本発明をその特定の実施形態との関連で説明したが、多数の代替、修正および変種が当業者には明らかであろう。したがって、そのような代替、修正および変種の全ては、添付の特許請求の範囲の趣旨および広い範囲内に含まれることを意図するものである。
【0348】
本明細書で言及した全ての刊行物、特許および特許出願は、個々の刊行物、特許および特許出願のそれぞれについて具体的且つ個別の参照により本明細書に組み込む場合と同程度に、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。加えて、本願におけるいかなる参考文献の引用または特定は、このような参考文献が本発明の先行技術として使用できることの容認として解釈されるべきではない。また、各節の表題が使用される範囲において、必ずしも限定として解釈されるべきではない。