(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】偏光素子並びにそれを用いた偏光板及び光学部材等
(51)【国際特許分類】
G02B 5/30 20060101AFI20240305BHJP
G02F 1/1335 20060101ALI20240305BHJP
C09B 31/08 20060101ALI20240305BHJP
C09B 31/30 20060101ALI20240305BHJP
C09B 35/50 20060101ALI20240305BHJP
C09B 67/22 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
G02B5/30
G02F1/1335 510
C09B31/08
C09B31/30
C09B35/50
C09B67/22 C
(21)【出願番号】P 2020541280
(86)(22)【出願日】2019-09-04
(86)【国際出願番号】 JP2019034840
(87)【国際公開番号】W WO2020050333
(87)【国際公開日】2020-03-12
【審査請求日】2022-07-01
(31)【優先権主張番号】P 2018165753
(32)【優先日】2018-09-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004086
【氏名又は名称】日本化薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】望月 典明
(72)【発明者】
【氏名】服部 由侑
(72)【発明者】
【氏名】中村 光則
(72)【発明者】
【氏名】樋下田 貴大
【審査官】小西 隆
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/152026(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/079651(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/135391(WO,A1)
【文献】特開2017-072823(JP,A)
【文献】国際公開第2016/186183(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/117131(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
G02F 1/1335
C09B 31/08
C09B 31/30
C09B 35/50
C09B 67/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で表されるアゾ化合物またはその塩と、式(2)で表されるアゾ化合物またはその塩と、基材を含む偏光素子:
【化1】
(式(1)中、Ar
1は置換基を有するフェニル基または置換基を有するナフチル基を表し、Rr
1~Rr
4はそれぞれ独立に、水素原子、C1~4アルキル基、C1~4
アルコキシ基またはスルホ基を有するC1~4
アルコキシ基を表し、Xr
1は置換基を有してもよいアミノ基、置換基を有してもよいフェニルアミノ基、置換基を有してもよいフェニルアゾ基、置換基を有してもよいベンゾイル基、置換基を有してもよいベンゾイルアミノ基または置換基を有してもよいナフトトリアゾール基を表し、mは0または1を表す);
【化2】
(式(2)中、Ab
1は置換基を有するフェニル基または置換基を有するナフチル基を表し、Ab
1が置換基を有するフェニル基である場合、その置換基としてスルホ基、カルボキシル基、C1~4アルキル基、C1~4アルコキシ基、スルホ基を有するC1~4アルコキシ基、ニトロ基、ベンゾイル基、アミノ基、アセチルアミノ基およびC1~4アルキルアミノ基置換アミノ基 の少なくとも1つを有し、Rb
1~Rb
5はそれぞれ独立に、水素原子、C1~4アルキル基、C1~4
アルコキシ基またはスルホ基を有するC1~4の
アルコキシ基を表し、Xb
1は置換基を有してもよいアミノ基、置換基を有してもよいフェニルアミノ基、置換基を有してもよいフェニルアゾ基、置換基を有してもよいベンゾイル基、置換基を有してもよいベンゾイルアミノ基または置換基を有してもよいナフトトリアゾール基を表す)。
【請求項2】
式(2)で表されるアゾ化合物またはその塩が、式(3)
【化3】
(式(3)中、Ab
1、Rb
1~Rb
5およびXb
1は、上記式(2)に記載のものと同じである)
で表されるアゾ化合物またはその塩である、請求項1に記載の偏光素子。
【請求項3】
Rb
5がメトキシ基である、請求項1または2に記載の偏光素子。
【請求項4】
式(4)
【化4】
(式(4)中、Ay
1はスルホ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、C1~4アルキル基またはC1~4
アルコキシ基を表し、Ry
1~Ry
4はそれぞれ独立に、水素原子、C1~4アルキル基またはC1~4
アルコキシ基を表し、pは1、2、又は3を表す)
で表されるアゾ化合物をさらに含む請求項1~3のいずれか一項に記載の偏光素子。
【請求項5】
上記基材がポリビニルアルコール系樹脂を含むフィルムである、請求項1~4のいずれか一項に記載の偏光素子。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の偏光素子と、該偏光素子の片面または両面に設けられた透明保護層とを備える偏光板。
【請求項7】
請求項1~5のいずれか一項に記載の偏光素子または請求項6に記載の偏光板を備える光学部材、機器、又は装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、染料系の偏光素子並びにそれを用いた偏光板及び光学部材等に関する。
【背景技術】
【0002】
偏光素子は、一般に、二色性色素であるヨウ素または二色性染料をポリビニルアルコール樹脂等の基材フィルムに吸着配向させることにより製造されている。この偏光素子の少なくとも片面に接着剤層を介してトリアセチルセルロースなどからなる保護フィルムを貼合して偏光板が製造される。偏光板は、液晶表示装置などに用いられる。二色性色素としてヨウ素を用いた偏光板は、ヨウ素系偏光板と呼ばれる一方、二色性色素として二色性染料を用いた偏光板は、染料系偏光板と呼ばれる。これらのうち、染料系偏光板は、高耐熱性、高湿熱耐久性、高安定性を有し、また、二色性色素の配合による色の選択性が高いという特徴がある。
また、特許文献1~4、非特許文献1および2には、アゾ化合物を含有する染料系偏光素子が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平11-218611号公報
【文献】特開2001-033627号公報
【文献】特開2004-251962号公報
【文献】特開2004-075719号公報
【文献】特開平08-291259号公報
【文献】特開2002-275381号公報
【非特許文献】
【0004】
【文献】細田豊著、「染料化学」、技報堂出版株式会社、1957年、621-626頁
【文献】入江正浩監修、「機能性色素の応用」(第1刷発行版)、株式会社シーエムシー出版、2002年6月、p.98-104
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、従来と同等又はそれより優れた光学特性(偏光性能、コントラストなど)を有する偏光素子、偏光板、及び光学部材等(以後、「偏光素子等」ともいう)を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、特定の構造を有する2種類のアゾ化合物を組み合わせることにより、偏光素子の光学特性を向上させることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、以下発明1~7に関するがそれらに限定されない。
[発明1]
式(1)で表されるアゾ化合物またはその塩と、式(2)で表されるアゾ化合物またはその塩と、基材を含む偏光素子:
【化1】
(式(1)中、Ar
1は置換基を有するフェニル基または置換基を有するナフチル基を表し、Rr
1~Rr
4はそれぞれ独立に、水素原子、C1~4アルキル基、C1~4アルコキシル基またはスルホ基を有するC1~4アルコキシル基を表し、Xr
1は置換基を有してもよいアミノ基、置換基を有してもよいフェニルアミノ基、置換基を有してもよいフェニルアゾ基、置換基を有してもよいベンゾイル基、置換基を有してもよいベンゾイルアミノ基または置換基を有してもよいナフトトリアゾール基を表し、mは0または1を表す);
【化2】
(式(2)中、Ab
1は置換基を有するフェニル基または置換基を有するナフチル基を表し、Rb
1~Rb
5はそれぞれ独立に、水素原子、C1~4アルキル基、C1~4アルコキシル基またはスルホ基を有するC1~4のアルコキシル基を表し、Xb
1は置換基を有してもよいアミノ基、置換基を有してもよいフェニルアミノ基、置換基を有してもよいフェニルアゾ基、置換基を有してもよいベンゾイル基、置換基を有してもよいベンゾイルアミノ基または置換基を有してもよいナフトトリアゾール基を表す)。
[発明2]
式(2)で表されるアゾ化合物が、式(3)
【化3】
(式(3)中、Ab
1、Rb
1~Rb
5およびXb
1は、上記式(2)に記載のものと同じである)
で表されるアゾ化合物である、発明1に記載の偏光素子。
[発明3]
Rb
5がメトキシ基である、発明1または2に記載の偏光素子。
[発明4]
式(4)
【化4】
(式(4)中、Ay
1はスルホ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、C1~4アルキル基またはC1~4アルコキシル基を表し、Ry
1~Ry
4はそれぞれ独立に、水素原子、C1~4アルキル基またはC1~4アルコキシル基を表し、pは1、2、又は3を表す)
で表されるアゾ化合物をさらに含む発明1~3のいずれか一項に記載の偏光素子。
[発明5]
上記基材がポリビニルアルコール系樹脂を含むフィルムである、発明1~4のいずれか一項に記載の偏光素子。
[発明6]
発明1~5のいずれか一項に記載の偏光素子と、該偏光素子の片面または両面に設けられた透明保護層とを備える偏光板。
[発明7]
発明1~5のいずれか一項に記載の偏光素子または発明6に記載の偏光板を備える光学部材、機器、又は装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、光学特性に優れた偏光素子等を提供できる。一態様において、本発明の偏光素子等は耐久性(耐湿性、耐熱性など)に優れる。一態様において、本発明の偏光素子等は、偏光性能、コントラストが良く、近年の高精細ディスプレイの要望に応えることができる。一態様において、本発明の偏光素子等は、タッチパネルや有機ELディスプレイ等で近年要望される、高い透過率並びに高温及び/又は高湿環境下での偏光度変化の少なさ、を有する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本願明細書においては、アゾ化合物のフリー体、アゾ化合物の塩、フリー体(遊離酸または遊離塩基)と塩との混合物、等を含め、「アゾ化合物」と記載することがある。また、本願明細書において、「置換基」には、便宜上、水素原子が含まれる。
【0010】
<偏光素子>
本発明の偏光素子は、基材と、上記式(1)で表されるアゾ化合物と、上記式(2)で表されるアゾ化合物とを含んでいる。上記式(1)で表されるアゾ化合物が、上記式(3)で表されるアゾ化合物である場合、より高い偏光度を有する偏光素子を実現できる。本発明の偏光素子は、上記式(1)および式(2)でそれぞれ表されるアゾ化合物に加えて、上記式(4)で表されるアゾ化合物を含むことが、更に好ましい。これにより、さらに高い偏光度を有する偏光素子を実現できる。すなわち、上記式(1)、式(2)および式(4)でそれぞれ表されるアゾ化合物を上記基材に含んでいることが特に好ましい。本発明に用いるアゾ化合物が、ヒドロキシル基、カルボキシル基、スルホ基等の官能基を有する場合、遊離酸として用いてもよいし、塩として用いてもよいし、あるいは遊離酸と塩の混合物として用いてもよい。
【0011】
上記アゾ化合物の塩としては、例えば、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩;カルシウム塩などのアルカリ土類金属塩;アンモニウム塩;アルキルアミン塩、アルカノールアミン塩などの有機塩等が挙げられ、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、またはアンモニウム塩であることが好ましく、リチウム塩またはナトリウム塩であることがより好ましく、ナトリウム塩であることがさらに好ましい。
【0012】
上記アゾ化合物は、一般的には、当該技術分野において公知のアゾ化合物の合成手段(例えば、非特許文献1の626頁)に従い、公知のジアゾ化、カップリングを行うことにより合成することができる。アゾ化合物を溶液に溶解し、染色工程にて基材に含浸させて偏光素子を作製することができる。
【0013】
上記式(1)で表されるアゾ化合物について説明する。
【0014】
上記式(1)中、Ar1は置換基を有するフェニル基または置換基を有するナフチル基を表す。
【0015】
Ar1が置換基を有するフェニル基である場合、置換基としてスルホ基、カルボキシル基、C1~4アルキル基、C1~4アルコキシ基、スルホ基を有するC1~4アルコキシ基、ニトロ基、ベンゾイル基、アミノ基、アセチルアミノ基およびC1~4アルキルアミノ基置換アミノ基の少なくとも1つを有することが好ましく、スルホ基またはカルボキシル基を少なくとも1つ有することがより好ましい。該フェニル基が置換基を2つ以上有する場合は、置換基の少なくとも1つがスルホ基またはカルボキシル基であり、その他の置換基としては、スルホ基、カルボキシル基、C1~4アルキル基、C1~4アルコキシル基、スルホ基を有するC1~4アルコキシル基、ニトロ基、ベンゾイル基、アミノ基、アセチルアミノ基およびC1~4アルキルアミノ基置換アミノ基が好ましく、より好ましくは、スルホ基、メチル基、エチル基、メトキシ基、エトキシ基、カルボキシル基、ニトロ基、ベンゾイル基およびアミノ基であり、特に好ましくはスルホ基、メチル基、メトキシ基、エトキシ基、ベンゾイル基、カルボキシル基である。上記スルホ基を有するC1~4アルコキシル基としては、直鎖アルコキシル基が好ましく、スルホ基の置換位置はアルコキシル基末端が好ましく、より好ましくは3-スルホプロポキシ基および4-スルホブトキシ基であり、特に好ましくは3-スルホプロポキシ基である。上記置換基を有するフェニル基が有するスルホ基の数は1または2が好ましく、置換位置については特に限定はないが、式(1)におけるCONH部位との結合位置を1位とした場合、4位のみ、2位と4位の組合せ、および3位と5位の組合せが好ましい。
【0016】
上記式(1)中、Ar1が置換基を有するナフチル基である場合、ナフチル基はその1位でCONH部位と結合してもよく、2位で結合してもよい。好ましくは、ナフチル基はその2位でCONH部位と結合する。ナフチル基は置換基としてスルホ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、およびスルホ基を有するC1~4アルコキシ基の少なくとも1つを有することが好ましく、スルホ基またはカルボキシ基を少なくとも1つ有することがより好ましい。置換基を2つ以上有する場合、好ましくは、置換基の少なくとも1つがスルホ基でありその他の置換基がスルホ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、およびスルホ基を有するC1~4アルコキシル基から選択される。スルホ基を有するC1~4アルコキシル基としては、直鎖アルコキシル基が好ましく、スルホ基の置換位置はアルコキシル基末端が好ましく、より好ましくは3-スルホプロポキシ基および4-スルホブトキシ基であり、特に好ましくは3-スルホプロポキシ基である。上記置換基を有するナフチル基が置換基として有するスルホ基の数が2の場合、該ナフチル基上のスルホ基の位置は、CONH部位との結合位置を2位とした場合、4,8位の組合せ、および6,8位の組合せが好ましく、6,8位の組合せがより好ましい。ナフチル基が有するスルホ基の数が3の場合、式(1)におけるCONH部位との結合位置を2位とした場合、スルホ基の置換位置として好ましくは3位、6位、8位の組合せが特に好ましい。
【0017】
上記式(1)中、Rr1~Rr4はそれぞれ独立に、水素原子、C1~4アルキル基、C1~4アルコキシル基、またはスルホ基を有するC1~4アルコキシル基を表す。Rr1~Rr4はそれぞれ独立に、好ましくは水素原子、C1~4アルキル基、またはC1~4アルコキシル基であり、より好ましくは水素原子、メチル基、またはメトキシ基である。上記スルホ基を有するC1~4アルコキシル基としては、直鎖アルコキシル基が好ましく、スルホ基の置換位置はアルコキシル基末端が好ましく、より好ましくは3-スルホプロポキシ基および4-スルホブトキシ基であり、特に好ましくは3-スルホプロポキシ基である。
【0018】
上記式(1)中、mは0または1を表す。mが0の場合は、波長依存性の少ない偏光板、即ちニュートラルグレイ色を有する偏光素子または偏光板の作製が容易になり、mが1の場合は、高い偏光度を示すため、それぞれ好ましい形態の一つである。
【0019】
上記式(1)中、Xr1は、置換基を有してもよいアミノ基、置換基を有してもよいフェニルアミノ基、置換基を有してもよいフェニルアゾ基、置換基を有してもよいベンゾイル基、置換基を有してもよいベンゾイルアミノ基または置換基を有してもよいナフトトリアゾール基を表し、好ましくは置換基を有してもよいフェニルアミノ基である。
【0020】
Xr1が置換基を有してもよいナフトトリアゾール基の場合、ナフトトリアゾールは1,2-ナフトトリアゾール又は2,3-ナフトトリアゾールであり、好ましくは2,3-ナフトトリアゾールである。Xr1とナフチル基との結合位置は特に限定されないが、トリアゾール環部の2位(中央の窒素原子)が好ましい。
【0021】
上記置換基を有してもよいアミノ基は、好ましくは、水素原子、ヒドロキシ基、カルボキシ基、スルホ基を有してもよいC1~4アルキル基、及びスルホ基を有してもよいC1~4アルコキシル基からなる群から選択される1つまたは2つの置換基を有してもよいアミノ基であり、より好ましくは、水素原子、メチル基、エチル基、メトキシ基、エトキシ基からなる群から選択される1つまたは2つの置換基を有してもよいアミノ基である。上記置換基を有してもよいフェニルアミノ基は、好ましくは、水素原子、C1~4アルキル基、C1~4アルコキシル基、スルホ基、アミノ基、ヒドロキシル基およびC1~4アルキルアミノ基からなる群から選択される1つまたは2つの置換基を有してもよいフェニルアミノ基であり、より好ましくは、水素原子、メチル基、メトキシ基、スルホ基、およびアミノ基からなる群から選択される1つまたは2つの置換基を有してもよいフェニルアミノ基である。上記置換基を有してもよいフェニルアゾ基は、好ましくは、水素原子、ヒドロキシ基、C1~4アルキル基、C1~4アルコキシ基、アミノ基およびカルボキシエチルアミノ基からなる群から選択される1~3つを有するフェニルアゾ基である。上記置換基を有してもよいベンゾイル基は、好ましくは、水素原子、ヒドロキシル基、スルホ基、アミノ基、およびカルボキシエチルアミノ基からなる群から選択される1つを有するベンゾイル基である。上記置換基を有してもよいベンゾイルアミノ基は、好ましくは、水素原子、ヒドロキシル基、アミノ基、およびカルボキシエチルアミノ基からなる群から選択される1つを有するベンゾイルアミノ基である。置換基を有してもよいナフトトリアゾール基は、好ましくは、水素原子、ヒドロキシ基、カルボキシ基、C1~4アルキル基、C1~4アルコキシ基、スルホ基、アミノ基、及びカルボキシエチルアミノ基からなる群から選択される1~3つを有するナフトトリアゾール基であり、より好ましくはスルホ基を1~3つ有するナフトトリアゾール基である。Xr
1は、好ましくは、置換基を有してもよいベンゾイルアミノ基または置換基を有してもよいフェニルアミノ基であり、より好ましくは、置換基を有してもよいフェニルアミノ基である。置換基を有してもよいフェニルアミノ基、置換基を有してもよいフェニルアゾ基、置換基を有してもよいベンゾイル基、又は置換基を有してもよいベンゾイルアミノ基における置換基の位置は特に限定されないが、置換基が1つの場合は、上記式(1)におけるナフタレン環に結合するアミノ基、アゾ基、カルボニル基、又はアミド基の結合位置に対してp位に置換することが特に好ましい。置換基を有してもよいナフトトリアゾール基における置換位置は特に限定されないが、置換基が1つの場合は、トリアゾール環との縮環位置を「1位及び2位」又は「2位及び3位」と番号付けされる場合におけるナフタレン環部の4位又は6位が好ましく、置換基が2つの場合は、5位と7位の組合せ、又は、6位と8位の組合せが好ましい(下図参照)。
【化5】
【0022】
上記式(1)で示されるアゾ化合物を得る方法としては、特許文献5や特許文献6等に記載されている方法が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0023】
上記式(1)で示されるアゾ化合物のさらなる具体例を以下に示す。
【0024】
【0025】
上記式(2)で表されるアゾ化合物について説明する。
【0026】
上記式(2)において、Ab1は置換基を有するフェニル基または置換基を有するナフチル基を表す。
【0027】
Ab1が置換基を有するフェニル基である場合、該フェニル基が置換基としてスルホ基、カルボキシル基、C1~4アルキル基、C1~4アルコキシ基、スルホ基を有するC1~4アルコキシ基、ニトロ基、ベンゾイル基、アミノ基、アセチルアミノ基およびC1~4アルキルアミノ基置換アミノ基 の少なくとも1つを有することが好ましく、スルホ基またはカルボキシル基を少なくとも1つ有することがより好ましい。該フェニル基が置換基を2つ以上有する場合、それら置換基の少なくとも1つがスルホ基またはカルボキシル基であり、他の置換基がスルホ基、カルボキシル基、C1~4アルキル基、C1~4アルコキシル基、スルホ基を有するC1~4アルコキシル基、ニトロ基、ヒドロキシル基、アミノ基または置換アミノ基(特に、アセチルアミノ基またはC1~4アルキルアミノ基)であることが好ましく、スルホ基、カルボキシル基、メチル基、エチル基、メトキシ基、エトキシ基、ニトロ基、ヒドロキシル基またはアミノ基であることがより好ましく、スルホ基、カルボキシル基、メチル基、エチル基、メトキシ基、エトキシ基、ニトロ基またはアミノ基であることがさらに好ましく、スルホ基、カルボキシル基、メチル基、メトキシ基またはエトキシ基であることが特に好ましい。また、他の置換基は、スルホ基、C1~4アルキル基またはC1~4アルコキシル基であることも好ましい。また、スルホ基を有するC1~4アルコキシル基としては、直鎖アルコキシル基が好ましく、スルホ基の置換位置は、アルコキシル基末端であることが好ましい。スルホ基を有するC1~4アルコキシル基としては、3-スルホプロポキシ基または4-スルホブトキシ基がより好ましく、3-スルホプロポキシ基が特に好ましい。上記置換基を有するフェニル基上の置換基数は、1または2であることが好ましく、2であることがより好ましい。該フェニル基上の置換基の位置は、特に限定されないが、上記式(2)におけるアゾ結合位置に対して4位のみであるか、2位と4位との組合せまたは3位と5位との組合せであることが好ましく、2位と4位との組合せであることが特に好ましい。
【0028】
上記式(2)において、Ab1が置換基を有するナフチル基である場合、該ナフチル基が置換基としてスルホ基を少なくとも1つ有することが好ましく、該ナフチル基が置換基を2つ以上有する場合、それら置換基の少なくとも1つがスルホ基であり、他の置換基が、スルホ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基またはスルホ基を有するC1~4アルコキシル基であることが好ましい。また、スルホ基を有するC1~4アルコキシル基としては、直鎖アルコキシル基が好ましく、スルホ基の置換位置は、アルコキシル基末端であることが好ましい。上記スルホ基を有するC1~4アルコキシル基としては、3-スルホプロポキシ基または4-スルホブトキシ基がより好ましく、3-スルホプロポキシ基が特に好ましい。上記置換基を有するナフチル基上のスルホ基の置換数が2である場合、スルホ基の置換位置は、上記式(2)におけるアゾ結合位置を2位とした場合、4位と8位との組合せまたは6位と8位との組合せであることが好ましく、6位と8位との組合せであることが特に好ましい。ナフチル基上のスルホ基数が3である場合、スルホ基の置換位置は、1位と3位と6位との組合せであることが特に好ましい。
【0029】
上記式(2)において、Xb1は、置換基を有してもよいアミノ基、置換基を有してもよいフェニルアミノ基、置換基を有してもよいフェニルアゾ基、置換基を有してもよいベンゾイル基、置換基を有してもよいベンゾイルアミノ基または置換基を有してもよいナフトトリアゾール基を表し、置換基を有してもよいベンゾイルアミノ基、置換基を有してもよいフェニルアミノ基、置換基を有してもよいフェニルアゾ基、または置換基を有してもよいナフトトリアゾール基であることが好ましく、置換基を有してもよいベンゾイルアミノ基、置換基を有してもよいフェニルアミノ基、または置換基を有してもよいフェニルアゾ基であることがより好ましく、置換基を有してもよいフェニルアミノ基であることが特に好ましい。
【0030】
上記アミノ基は1~2つの置換基を有することが好ましい。置換基としては、水素原子、メチル基、メトキシ基、スルホ基、アミノ基、又はC1~4アルキルアミノ基が好ましい。
【0031】
上記フェニルアミノ基は1~2つの置換基を有することが好ましい。置換基としては、水素原子、C1~4アルキル基、C1~4アルコキシル基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、スルホ基、アミノ基、又は置換アミノ基が好ましく、水素原子、メチル基、メトキシ基、スルホ基、アミノ基、又は置換アミノ基がより好ましく、水素原子、メチル基、メトキシ基、スルホ基、アミノ基、又はC1~4アルキルアミノ基がさらに好ましく、水素原子、メトキシ基、又はアミノ基が特に好ましい。
【0032】
上記フェニルアゾ基は1~3つの置換基を有することが好ましい。置換基としては、水素原子、C1~4アルキル基、C1~4アルコキシル基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、スルホ基、アミノ基、又は置換アミノ基が好ましく、水素原子、ヒドロキシ基、カルボキシ基、C1~4アルキル基、C1~4アルコキシル基、アミノ基、又はカルボキシエチルアミノ基がより好ましく、水素原子、ヒドロキシル基、アミノ基、メチル基、メトキシ基、又はカルボキシル基であることがさらに好ましく、ヒドロキシル基が特に好ましい。
【0033】
上記ベンゾイル基は置換基を1つ有することが好ましい。置換基としては、水素原子、C1~4アルキル基、C1~4アルコキシル基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、スルホ基、アミノ基、又は置換アミノ基が好ましく、水素原子、アミノ基、置換アミノ基、又はヒドロキシル基がより好ましく、水素原子、アミノ基、又はカルボキシエチルアミノ基がさらに好ましく、アミノ基が特に好ましい。
【0034】
上記ベンゾイルアミノ基は置換基を1つ有することが好ましい。置換基としては、水素原子、C1~4アルキル基、C1~4アルコキシル基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、スルホ基、アミノ基、又は置換アミノ基が好ましく、水素原子、アミノ基、置換アミノ基、又はヒドロキシル基がより好ましく、水素原子、アミノ基、又はカルボキシエチルアミノ基がさらに好ましく、アミノ基が特に好ましい。
【0035】
Xb1が置換基を有してもよいナフトトリアゾール基の場合、ナフトトリアゾールは1,2-ナフトトリアゾール又は2,3-ナフトトリアゾールであり、好ましくは2,3-ナフトトリアゾールである。Xb1とナフチル基との結合位置は特に限定されないが、トリアゾール環部の2位(中央の窒素原子)が好ましい。ナフトトリアゾール基は置換基を1~3つ有することが好ましく、2つの置換基を有することがより好ましい。置換基としては、水素原子、ヒドロキシ基、カルボキシ基、C1~4アルキル基、C1~4アルコキシ基、スルホ基、アミノ基、又はカルボキシエチルアミノ基が好ましく、スルホ基がより好ましい。
【0036】
上記Xb1が置換基を有するフェニルアミノ基、置換基を有するフェニルアゾ基、置換基を有するベンゾイル基、又は置換基を有するベンゾイルアミノ基であり、かつ、置換基が1つである場合、置換基の位置は特に限定されないが、該フェニルアミノ基、該フェニルアゾ基、該ベンゾイル基、又は該ベンゾイルアミノ基のアミノ基、アゾ基、カルボニル基、又はアミド基に対してp位であることが好ましい。上記Xb1が置換基を有するナフトトリアゾール基の場合、置換位置は特に限定されないが、置換基が1つの場合は、トリアゾール環との縮環位置を「1位及び2位」又は「2位及び3位」と番号付けされる場合におけるナフタレン環部の4位又は6位が好ましく、置換基が2つの場合は、5位と7位の組合せ、又は、6位と8位の組合せが好ましい 。
【0037】
上記式(2)において、Rb1~Rb5はそれぞれ独立に、水素原子、C1~4アルキル基、C1~4アルコキシル基またはスルホ基を有するC1~4アルコキシル基を表し、水素原子、C1~4アルキル基またはC1~4アルコキシル基であることが好ましく、水素原子、メチル基またはメトキシ基であることがより好ましい。上記スルホ基を有するC1~4アルコキシル基としては、直鎖アルコキシル基が好ましく、スルホ基の置換位置は、アルコキシル基末端であることが好ましい。スルホ基を有するC1~4アルコキシ基の好ましい例としては、3-スルホプロポキシ基または4-スルホブトキシ基が挙げられ、3-スルホプロポキシ基が特に好ましい。また、Rb5がメトキシ基である場合、偏光素子の偏光性能が特に向上するため、特に好ましい。
【0038】
上記式(2)で表されるアゾ化合物が、上記式(3)で表されるアゾ化合物である場合、偏光素子の偏光性能がさらに向上する。上記式(3)中、Ab1、Rb1~Rb5およびXb1は、上記式(2)に記載のものと同じである。
【0039】
上記偏光素子の光学特性をさらに向上させるには、上記式(2)が、下記式(5)で表されるアゾ化合物であることが好ましい。
【0040】
【0041】
上記式(5)中、Ab1、Rb2、Rb4およびXb1は、それぞれ上記式(2)に記載のものと同じである。
【0042】
上記式(5)において、Rb2およびRb4はそれぞれ独立に、水素原子、C1~4アルキル基、C1~4アルコキシル基またはスルホ基を有するC1~4アルコキシル基を表すが、水素原子、メチル基またはメトキシ基であることが好ましく、水素原子またはメチル基であることがより好ましい。上記式(2)で表されるアゾ化合物が、上記式(5)で表されるような構造を有する場合、特に偏光特性を向上させることが可能であることから好ましい。
【0043】
上記式(2)、式(3)および式(5)で表されるアゾ化合物は、例えば、非特許文献1に記載されるような合成方法や、国際公開第2012/108169号、国際公開第2012/108173号などに記載されているジアゾ化、カップリングを行うことにより合成できる。上記式(2)、式(3)および式(5)で表されるアゾ化合物の合成方法は、上記文献に記載された方法に限定されるものではない。また、上記式(2)、式(3)および式(5)で表されるアゾ化合物は、硫酸銅等で処理して銅錯塩化合物とすることもできる。
【0044】
上記式(2)で表されるアゾ化合物の具体例を以下に挙げる。なお、以下の化合物例では、スルホ基およびヒドロキシル基を遊離酸の形で表しているが、塩の形であってもよい。
【0045】
【0046】
上記偏光素子において、上記式(2)で表されるアゾ化合物の含有量は、上記式(1)で表されるアゾ化合物100重量部に対して、10~5000重量部の範囲内であることが好ましく、20~3000重量部の範囲内であることがより好ましい。
【0047】
上記偏光素子は、上記式(4)で表されるアゾ化合物をさらに含むことができる。
【0048】
上記式(4)で表されるアゾ化合物の合成方法としては、例えば、非特許文献1に記載の合成方法や、国際公開第2007/138980号に記載されている方法が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0049】
上記式(4)で表されるアゾ化合物としては、例えば、C.I.ダイレクト・イエロー12、C.I.ダイレクト・イエロー72、C.I.ダイレクト・オレンジ39(CAS番号:1325-54-8)、国際公開第2007/138980号に記載されているアゾ化合物などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0050】
上記式(4)で表されるアゾ化合物の具体例を以下に挙げる。なお、以下の化合物例では、スルホ基およびカルボキシル基を遊離酸の形で表しているが、スルホ基やカルボキシル基は塩の形であってもよい。
【0051】
【0052】
上記偏光素子において、上記式(4)で表されるアゾ化合物の含有量は、上記式(1)で表されるアゾ化合物100重量部に対して、1~1000重量部の範囲内であることが好ましく、5~800重量部の範囲内であることがより好ましい。
【0053】
上記偏光素子において、色調整等に応じて、上記式(1)、式(2)および式(4)でそれぞれ表されるアゾ化合物以外の他の有機染料(特にアゾ化合物)、例えば非特許文献2に記載のアゾ化合物など1種以上を、上記式(1)および式(2)でそれぞれ表されるアゾ化合物と併用、あるいは、上記式(1)、式(2)、式(4)でそれぞれ表されるアゾ化合物と併用してもよい。併用する上記他の有機染料としては、特に制限されないが、親水性高分子を染色可能なものであり、上記式(1)および式(2)でそれぞれ表されるアゾ化合物の吸収波長領域と異なる波長領域に光吸収を有する染料であり、かつ二色性の高いものが好ましい。他の有機染料の具体例としては、例えば、非特許文献2に記載のアゾ化合物(例えば、C.I.ダイレクト・イエロー28)や、C.I.ダイレクト・レッド2、C.I.ダイレクト・レッド31、C.I.ダイレクト・レッド79、C.I.ダイレクト・レッド247、C.I.ダイレクト・グリーン80、C.I.ダイレクト・グリーン59、C.I.ダイレクト・ブルー202、C.I.ダイレクト・バイオレット9などのアゾ化合物が挙げられる。これらのアゾ化合物は、遊離酸の形、あるいは、アルカリ金属塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩)、アンモニウム塩、アミン類の塩等の塩の形で用いられる。必要に応じて、他の有機染料を併用する場合、目的とする偏光素子が、より中性色な偏光素子、特徴ある色を有する偏光素子、液晶プロジェクター用カラー偏光素子およびその他のカラー偏光素子の何れであるかにより、それぞれ配合する他の有機染料の種類を変更することができる。上記他の有機染料の配合量(二種以上の場合にはそれらの合計配合量)は、特に限定されるものではないが、一般的には、上記式(1)、式(2)および式(4)でそれぞれ表されるアゾ化合物の合計量100重量部に対して、0.1~1000重量部の範囲であることが好ましい。
【0054】
上記基材としては、親水性高分子が好ましい。親水性高分子としては、特に限定されないが、例えば、ポリビニルアルコールまたはその誘導体、アミロース系樹脂、デンプン系樹脂、セルロース系樹脂、ポリアクリル酸塩系樹脂などが挙げられるが、上記アゾ化合物を含ませる基材としては、染色性や樹脂架橋性などから、ポリビニルアルコールまたはその誘導体(以下、「ポリビニルアルコール系樹脂」と称する)が最も好ましい。上記基材をフィルム形状にし、上記アゾ化合物および他の配合物をフィルム形状の基材に吸着させ、延伸等の配向処理を適用することにより、上記偏光素子を作製できる。
【0055】
上記ポリビニルアルコール系樹脂の製造方法としては、特に限定されるものではなく、公知の製造方法を採用できる。ポリビニルアルコール系樹脂の製造方法としては、例えば、ポリ酢酸ビニル系樹脂(酢酸ビニルの単独重合体または共重合体)をケン化することにより得ることができる。上記ポリ酢酸ビニル系樹脂としては、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニル、酢酸ビニルと共重合可能な他の単量体の共重合体などが挙げられる。酢酸ビニルと共重合可能な他の単量体の共重合体としては、例えば、不飽和カルボン酸類、オレフィン類、ビニルエーテル類、不飽和スルホン酸類の共重合体などが挙げられる。上記ポリビニルアルコール系樹脂は変性されていてもよく、例えば、アルデヒド類で変性したポリビニルホルマールやポリビニルアセタールなどであってもよい。
【0056】
上記ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度は限定されないが、ポリビニルアルコール系樹脂の溶出、光学特性の面内ムラ、染色工程での染色性の低下、又は延伸工程での切断の誘発によって生産性が著しく低下するのを防止する観点から、通常85%以上が好ましく、95モル%以上がより好ましく、99モル%以上であることがさらに好ましく、99.5モル%以上が特に好ましい。
【0057】
上記ポリビニルアルコール系樹脂の重合度は限定されないが、ポリビニルアルコール系樹脂が硬くなること又は成膜性や延伸性が低下することによって生産性が低下するのを防止する工業的観点から、10000以下であることが好ましい。上記偏光素子の光学特性を向上するためには、上記ポリビニルアルコール系樹脂の重合度が、1000~10000であることが好ましく、2000~10000であることがより好ましく、3500~10000であることがさらに好ましく、5000~10000であることが特に好ましい。上記ポリビニルアルコール系樹脂の重合度は、粘度平均重合度を示し、当該技術分野において周知の手法によって求めることができる。
【0058】
以下、基材がポリビニルアルコール系樹脂からなるフィルムである場合を例にして、具体的な偏光素子の製造方法を説明する。
【0059】
まず、上記ポリビニルアルコール系樹脂を成膜することにより、ポリビニルアルコール系樹脂からなるフィルム原反を得る。ポリビニルアルコール系樹脂の成膜方法としては、含水ポリビニルアルコール系樹脂を溶融押出する方法、流延成膜法、湿式成膜法(貧溶媒中への吐出により成膜する方法)、ゲル成膜法(ポリビニルアルコール系樹脂の水溶液を一旦冷却ゲル化した後、溶媒を抽出除去する方法)、キャスト成膜法(ポリビニルアルコール系樹脂の水溶液を基板上に流し、乾燥させる方法)、およびこれらの組合せによる方法などを採用できるが、これらの方法に限定されない。
【0060】
上記成膜の際に溶剤を使用する場合、その溶剤としては、特に限定されるものではなく、例えば、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、エチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリメチロールプロパン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、水等が挙げられる。該溶剤は、1種で使用してもよいし、2種以上を混合して使用することもできる。成膜の際に用いる溶剤の量は限定されないが、成膜原液の粘度が高くなり、調製時の濾過や脱泡が困難となり、異物や欠点のないフィルム原反を得ることが困難となることを防止する観点から、成膜原液(成膜に使用されるポリビニルアルコール系樹脂および溶剤を含む混合液)全体に対して70重量%以上が好ましい。また、成膜原液の粘度が低くなり過ぎて、目的とする厚み制御が難しく、乾燥時の風による表面の揺らぎの影響が大きくなり、乾燥時間が長くなり生産性が低下するのを防止する観点から、溶剤の量は95重量%以下が好ましい。
【0061】
上記フィルム原反を製造する際、可塑剤を使用してもよい。可塑剤としては、グリセリン、ジグリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、低分子量ポリエチレングリコール等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。該可塑剤の使用量も、特に制限されないが、通常は、上記ポリビニルアルコール系樹脂100重量部に対して、5~15重量部の範囲内が好適である。
【0062】
上記成膜後のフィルム原反の乾燥方法としては、例えば、熱風による乾燥や、熱ロールを用いた接触乾燥や、赤外線ヒーターによる乾燥等が挙げられるが、限定されない。また、これら乾燥方法のうちの1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。乾燥温度についても、特に制限はないが、50~70℃の範囲内が好ましい。
【0063】
上記乾燥を行った後のフィルム原反は、その膨潤度を後述する所定の範囲に制御するために、熱処理を行うことが好ましい。熱処理方法としては、例えば、熱風による方法や、熱ロールにフィルム原反を接触させる方法などが挙げられ、熱により処理ができる方法であれば特に限定されない。また、これらの方法のうちの1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。熱処理温度は、特に制限はないが、110~140℃の範囲内が好ましい。熱処理の時間は、おおむね1~10分間が好適であるが、特に限定されない。
【0064】
上記工程で得られたフィルム原反の厚みは限定されないが、フィルムの破断が発生し易くなるのを防止する観点から、20μm以上が好ましい。また、延伸時にフィルムにかかる応力が大きくなり、延伸工程での機械的負荷が大きくなり、その負荷に耐えうるための大規模な装置が必要となるのを防止する観点から、100μm以下が好ましい。20~80μmであることがより好ましく、20~60μmであることがさらに好ましい。
【0065】
上記工程で得られたポリビニルアルコール系樹脂からなる原反フィルムに対して、次に膨潤工程を施す。
【0066】
上記膨潤工程は、ポリビニルアルコール系樹脂からなる原反フィルムを20~50℃の溶液に30秒~10分間浸漬させることにより行われる。該溶液は、水溶液であることが好ましい。フィルムの膨潤はアゾ化合物の染色処理時にも起こりうるので、偏光素子の製造に要する時間を短縮しようとする場合には、該膨潤工程を省略することもできる。
【0067】
上記フィルム原反の膨潤度Fは限定されないが、延伸時の伸度が著しく低下し、破断する可能性が高くなり、充分な延伸を行うことが困難となるのを防止する観点から、180%以上が好ましく、より好ましくは200%以上である。また、顕著にシワやたるみ、延伸時の切断を防止する観点から、260%以下が好ましく、より好ましくは240%以下である。200~240%であることがより好ましく、210~230%であることがさらに好ましい。膨潤度Fを制御するためには、例えば、成膜後のフィルム原反を熱処理する際の、温度および時間で好適な膨潤度Fを選択することができる。
【0068】
上記フィルム原反の膨潤度Fは、当該技術分野において周知の手法によって測定することができるが、例えば、次の方法により測定される。まず、フィルム原反を5cm×5cmにカットし、30℃の蒸留水1リットルに4時間浸漬する。この浸漬したフィルムを蒸留水中から取り出し、2枚の濾紙で挟んでフィルム表面の水滴を濾紙に吸収させた後に、水に浸漬されていたフィルムの重さ[β(g)]を測定する。さらに、浸漬されて水滴を吸収したフィルムを105℃の乾燥機で20時間乾燥し、デシケーターで30分間冷却した後、乾燥後のフィルムの重さ[γ(g)]を測定する。そして、下記数式(v)によりフィルム原反の膨潤度Fを算出する。
膨潤度 F=100×β/γ(%) ・・・(v)
【0069】
上記工程の後に、染色工程を施す。染色工程では、式(1)および式(2)でそれぞれ表されるアゾ化合物および必要に応じて他のアゾ化合物(上記式(4)で表されるアゾ化合物や、上記他の有機染料等)(以後、「式(1)等のアゾ化合物」ともいう)と共に、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムに吸着させることができる。
【0070】
上記染色工程は、式(1)等のアゾ化合物をポリビニルアルコール系樹脂フィルムに吸着させ得る方法であれば、特に限定されないが、例えば、式(1)等のアゾ化合物を含んだ溶液にポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬させることによって行われる。この染色工程での溶液温度は、5~60℃が好ましく、20~50℃がより好ましく、35~50℃が特に好ましい。溶液に浸漬する時間は、適度に調節できるが、30秒間~20分間で調節するのが好ましく、1~10分間がより好ましい。染色方法としては、上記溶液にポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬する方法が好ましいが、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムに該溶液を塗布する方法であってもよい。
【0071】
式(1)等のアゾ化合物を含んだ溶液は、染色助剤として、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、無水硫酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウムなどを含ませることができる。該染色助剤の含有量は、染色性による染色の時間および温度に応じて任意の濃度に調整できるが、0~5重量%が好ましく、0.1~2重量%がより好ましい。
【0072】
上記染色工程の後、洗浄工程(以下、「洗浄工程1」という)を行うことができる。洗浄工程1は、染色工程でポリビニルアルコール系樹脂フィルムの表面に付着した染料溶媒を洗浄液で洗浄する工程である。該洗浄工程1を行うことにより、次に処理する液中に染料が移行するのを抑制することができる。該洗浄工程1では、一般的には、洗浄液として水が用いられる。洗浄工程1の具体的工程としては、特に限定されず、洗浄液に浸漬する方法が好ましいが、洗浄液をポリビニルアルコール系樹脂フィルムに塗布する方法も用いることができる。洗浄工程1に要する時間は、特に限定されないが、好ましくは1~300秒間、より好ましくは1~60秒間である。洗浄工程1での洗浄液の温度は、親水性高分子が溶解しない温度であることが必要であり、一般的には5~40℃である。
【0073】
上記染色工程の後あるいは洗浄工程1の後に、少なくとも1種の架橋剤および/または耐水化剤をポリビニルアルコール系樹脂フィルムに含ませる工程を行うことができる。該架橋剤としては、例えば、ホウ酸、ホウ砂またはホウ酸アンモニウムなどのホウ素化合物、グリオキザールまたはグルタルアルデヒドなどの多価アルデヒド、ビウレット型、イソシアヌレート型またはブロック型などの多価イソシアネート系化合物、チタニウムオキシサルフェイトなどのチタニウム系化合物などを用いることができ、他にもエチレングリコールグリシジルエーテル、ポリアミドエピクロルヒドリンなどを用いることができるが、ホウ酸が好ましい。該耐水化剤としては、過酸化コハク酸、過硫酸アンモニウム、過塩素酸カルシウム、ベンゾインエチルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、塩化アンモニウムまたは塩化マグネシウムなどが挙げられる。
【0074】
上記架橋剤および/または耐水化剤をポリビニルアルコール系樹脂フィルムに含ませる工程で用いる上記架橋剤および/または耐水化剤は、通常、溶媒に溶解させた溶液の状態で使用される。該溶媒としては、水が好ましいが、限定されるものではない。該工程における、上記溶液中の架橋剤および/または耐水化剤の含有濃度は、ホウ酸を例にして示すと、溶媒に対して0.1~6.0重量%が好ましく、1.0~4.0重量%がより好ましい。該工程に用いる上記溶液の温度は、5~70℃が好ましく、5~50℃がより好ましい。ポリビニルアルコール系樹脂フィルムに架橋剤および/または耐水化剤を含ませる方法は、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを架橋剤および/または耐水化剤の溶液に浸漬する方法が好ましいが、該溶液をポリビニルアルコール系樹脂フィルムに塗布または塗工する方法でもよい。該工程に要する時間は、30秒間~6分間が好ましく、1~5分間がより好ましい。ただし、架橋剤および/または耐水化剤をポリビニルアルコール系樹脂フィルムに含ませることは必須でなく、偏光素子の製造時間を短縮したい場合や、架橋処理あるいは耐水化処理が不必要な場合等においては、該工程を省略してもよい。
【0075】
上記染色工程の後、または上記洗浄工程1の後、あるいは上記架橋剤および/または耐水化剤を含ませる工程の後に、延伸工程を行う。該延伸工程は、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを1軸に延伸する工程である。延伸方法は、湿式延伸法および乾式延伸法のどちらでも良い。延伸倍率は3倍以上であれば本発明を達成しうるが、好ましくは5倍~7倍である。延伸工程は、1段の延伸により行うことができるが、2段以上の多段延伸により行うこともできる。
【0076】
上記乾式延伸法の場合において、延伸加熱媒体が空気媒体の場合、延伸する際の空気媒体の温度は、常温~180℃が好ましい。また、湿度20~95%RHの雰囲気中で延伸処理することが好ましい。具体的延伸方法としては、例えば、ロール間ゾーン延伸法、ロール加熱延伸法、圧延伸法、赤外線加熱延伸法などが挙げられるが、限定されるものではない。
【0077】
上記湿式延伸法の場合、水、水溶性有機溶剤またはそれらの混合溶液中でポリビニルアルコール系樹脂フィルムを延伸し、上記架橋剤および/または耐水化剤を含んだ溶液中に、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬しながら延伸処理を行うことが好ましい。架橋剤、および/または耐水化剤としては上記に記載されているものを用いることが出来るが、好ましくはホウ酸、または硼砂が良く、特にホウ酸が好ましい。少なくとも1種以上の架橋剤および/または耐水化剤を含有した溶液中でポリビニルアルコール系樹脂フィルムの延伸を行う。前記延伸工程での架橋剤および/または耐水化剤の濃度は、例えば、0.5~15重量%が好ましく、2.0~8.0重量%がより好ましい。延伸倍率は、2~9倍が好ましく、5~8倍がより好ましい。延伸温度は、40~70℃が好ましく、45~60℃がより好ましい。延伸時間は、通常30秒間~20分間であるが、1~5分間がより好ましい。湿式延伸工程は、1段の延伸により行うことができるが、2段以上の多段延伸により行うこともできる。
【0078】
上記延伸工程を行った後、フィルム表面に架橋剤および/または耐水化剤の析出あるいは異物が付着することがあるため、フィルム表面を洗浄する洗浄工程(以下、「洗浄工程2」という)を行うことができる。該洗浄工程2に要する時間は、1秒間~5分間が好ましい。該洗浄工程2における洗浄方法としては、洗浄液に浸漬する方法が好ましいが、洗浄液をポリビニルアルコール系樹脂フィルムに塗布または塗工する方法も用いることができる。該洗浄工程2は、1段の処理とすることもできるし、2段以上の多段処理とすることもできる。該洗浄工程2に用いる洗浄液の温度は、特に限定されないが、通常5~50℃、好ましくは10~40℃である。
【0079】
上記各工程で用いうる溶媒としては、例えば、水;ジメチルスルホキシド;N-メチルピロリドン;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリメチロールプロパン等のアルコール類;エチレンジアミンまたはジエチレントリアミン等のアミン類などの溶媒が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、2種以上のこれら溶媒の混合物を用いることもできる。最も好ましい溶媒は、水である。
【0080】
上記延伸工程または洗浄工程2の後、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの乾燥工程を行う。該乾燥工程は、自然乾燥を採用することもできるが、より乾燥効率を高めるために、ロールによる圧縮、エアーナイフ、吸水ロール等により、表面の水分除去を行うことができ、また、水分除去と共に、あるいは、該水分除去に代えて、送風乾燥を行うこともできる。該乾燥工程の温度としては、20~100℃であることが好ましく、60~100℃であることがより好ましい。該乾燥工程に要する時間は、30秒間~20分間の範囲内とすることができるが、5~10分であることが好ましい。
【0081】
本発明の偏光素子は、基材とともに、式(1)で表されるアゾ化合物と式(2)で表されるアゾ化合物とを使用することにより、光学特性を向上させることができる。一態様において、本発明の偏光素子は耐久性も優れる。
【0082】
<偏光板>
本発明の偏光板は、上記偏光素子と、該偏光素子の片面または両面に設けられた透明保護層とを備えている。該透明保護層は、透明ポリマーによる塗布層としてまたは透明フィルムのラミネート層として設けることができる。該透明保護層を形成する透明ポリマーまたは透明フィルムとしては、機械的強度が高く、熱安定性が良好な透明ポリマーまたは透明フィルムが好ましい。該透明保護層に用いる透明ポリマーまたは透明フィルムとしては、例えば、トリアセチルセルロースやジアセチルセルロースのようなセルロースアセテート樹脂またはそのフィルム、アクリル樹脂またはそのフィルム、ポリ塩化ビニル樹脂またはそのフィルム、ナイロン樹脂またはそのフィルム、ポリエステル樹脂またはそのフィルム、ポリアリレート樹脂またはそのフィルム、ノルボルネンのような環状オレフィンをモノマーとする環状ポリオレフィン樹脂またはそのフィルム、ポリエチレン、ポリプロピレン、シクロ系ないしはノルボルネン骨格を有するポリオレフィンまたはその共重合体、主鎖または側鎖がイミドおよび/またはアミドの重合体(または樹脂)またはそのフィルムなどが挙げられる。また、上記透明保護層として、液晶性を有する樹脂またはそのフィルムを設けることもできる。上記保護フィルムの厚みは、例えば、0.5~200μm程度である。偏光素子の片面に樹脂またはフィルムを1層設けてもよく、偏光素子の片面に同種または異種の樹脂またはフィルムを2層以上設けてもよく、偏光素子の両面に同種または異種の樹脂またはフィルムを1層以上設けてもよい。
【0083】
上記透明保護層を偏光素子と貼り合わせるために、接着剤を用いることができる。該接着剤としては、特に限定されないが、ポリビニルアルコール接着剤が好ましい。該ポリビニルアルコール接着剤としては、例えば、ゴーセノール(登録商標)NH-26(日本合成化学工業株式会社製)、エクセバール(登録商標)RS-2117(株式会社クラレ製)などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。該接着剤には、架橋剤および/または耐水化剤を添加することができる。該ポリビニルアルコール接着剤には、無水マレイン酸-イソブチレン共重合体を混合することができ、その場合、さらに必要により架橋剤を混合させることができる。該無水マレイン酸-イソブチレン共重合体として、例えば、イソバン(登録商標)#18(株式会社クラレ製)、イソバン(登録商標)#04(株式会社クラレ製)、アンモニア変性イソバン(登録商標)#104(株式会社クラレ製)、アンモニア変性イソバン(登録商標)#110(株式会社クラレ製)、イミド化イソバン(登録商標)#304(株式会社クラレ製)、イミド化イソバン(登録商標)#310(株式会社クラレ製)などが挙げられる。必要により無水マレイン酸-イソブチレン共重合体に混合される架橋剤としては、水溶性多価エポキシ化合物を用いることができる。該水溶性多価エポキシ化合物とは、例えば、デナコールEX-521(ナガセケムテックス株式会社製)、テトラード(TETRAD)(登録商標)-C(三菱ガス化学株式会社製)などが挙げられる。また、上記接着剤としては、ウレタン系接着剤、アクリル系接着剤、エポキシ系接着剤といった、ポリビニルアルコール接着剤以外の公知の接着剤を用いることもできる。また、接着剤の接着力の向上または耐水性の向上を目的として、亜鉛化合物、塩化物、ヨウ化物等の添加物を接着剤に0.1~10重量%程度の濃度で含ませることもできる。該添加物についても、限定されるものではない。上記偏光素子の片面または両面に透明保護層を接着剤で貼り合せた後、適した温度で乾燥または熱処理することにより、上記偏光板が得られる。
【0084】
上記偏光板は、必要に応じ、例えば、液晶表示装置、有機エレクトロルミネッセンス(有機発光ダイオード)表示装置等の表示装置に貼り合わせる場合、貼り合わせた後に非露出面となる透明保護層の表面に視野角改善および/またはコントラスト改善のための各種機能性層、輝度向上性を有する層またはフィルムを設けることもできる。偏光板を、これらの層またはフィルムや、表示装置に貼り合せるには粘着剤を用いるのが好ましい。該粘着層の構成材料の例としては、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエーテル、フッ素樹脂、ゴムなどの適宜な重合体をベース重合体とするものなどが挙げられ、好ましくはアクリル樹脂を用いたアクリル(共)重合樹脂組成物が挙げられ、アクリル(共)重合樹脂組成物を用いた技術としては、特開昭59-111114号公報、特開平4-254803号公報に記載されている技術が例示されるが特に限定されるものではない。
【0085】
上記偏光板は、上記透明保護層におけるもう一方の表面、すなわち露出面上に、反射防止層や防眩層、ハードコート層など、各種の公知の機能性層を備えたものであってもよい。この各種機能性層を作製するには、塗工方法が好ましいが、その機能を有するフィルムを上記接着剤または上記粘着剤を介して貼り合わせる方法を用いることもできる。また、該機能性層は、位相差を制御する層またはフィルムとすることができる。
【0086】
基材とともに式(1)で表されるアゾ化合物及び式(2)で表されるアゾ化合物を含む偏光素子と、該偏光素子の片面または両面に設けられた透明保護層とを備える本発明の偏光板において、式(1)で表されるアゾ化合物と式(2)で表されるアゾ化合物とを使用していることで、光学特性が向上する。一態様において、本発明の偏光素子は光や熱、湿度に対する耐久性も優れる。
【0087】
<光学部材等>
本発明の偏光素子および偏光板は、光学部材、機器、又は装置(光学部材等)に用いることができる。本発明の偏光素子あるいは偏光板を用いた光学部材等は、高コントラストを有する。一態様において、本発明の光学部材等は耐久性が高く、当該高コントラストを長期的に有する。
【0088】
また、本発明の偏光素子および偏光板はそれぞれ、必要に応じて保護層あるいは機能層および支持体等を設け、液晶プロジェクター、電卓、時計、ノートパソコン、ワープロ、液晶テレビ、偏光レンズ、偏光メガネ、ヘッドアップディスプレイ、カーナビゲーション、有機エレクトロルミネッセンスディスプレイおよび屋内外の計測器や表示器等に使用される表示装置、またはそれに類する光学装置に用いることが出来る。
【0089】
本発明の偏光板の適用方法として、本発明の偏光板を支持体に貼付して支持体付き偏光板として使用してもよい。該支持体は、偏光板が貼付されるため、平面部を有しているものが好ましい。また、該支持体は、光学用途であるため、ガラス成形品が好ましい。該ガラス成形品としては、例えば、ガラス板、レンズ、プリズム(例えば、三角プリズム、キュービックプリズムなど)等が挙げられる。例えば、レンズに偏光板を貼付したものは液晶プロジェクターにおいて偏光板付のコンデンサレンズとして利用し得る。また、プリズムに偏光板を貼付したものは液晶プロジェクターにおいて偏光板付きの偏光ビームスプリッタや偏光板付ダイクロイックプリズムとして使用し得る。また、偏光板を液晶セルに貼付してもよい。該ガラス成形品の材質としては、例えば、ソーダガラス、ホウ珪酸ガラス、水晶、サファイヤ等の無機系のガラスや、アクリル樹脂、ポリカーボネート等の有機系のポリマーが挙げられるが、無機系のガラスが好ましい。上記ガラス板の厚さや大きさは、目的の応じた所望のサイズを用いてもよい。また、ガラスからなる支持体を備える支持体付き偏光板には、単板光透過率をより向上させるために、そのガラス面および偏光板面の一方または両方に反射防止層(AR層)を設けることが好ましい。この場合、上記支持体の表面に、例えば支持体の平面部の表面に、透明な接着(粘着)剤を塗布し、ついでこの塗布面に本発明の偏光板を貼付する。また、偏光板に透明な接着(粘着)剤を塗布し、ついでこの塗布面に支持体を貼付してもよい。ここで使用する接着(粘着)剤は、例えば、アクリル酸エステル系のものが好ましい。なお、この偏光板を位相差板と組み合わせて楕円偏光板として使用する場合、楕円偏光板の位相差板側を支持体に貼付するのが通常であるが、楕円偏光板の偏光板側を支持体に貼付してもよい。
【0090】
本発明の偏光素子または本発明の偏光板を備える表示装置も本発明の形態の一つである。また、特に好ましい本発明の偏光板の用途の一つとして液晶表示装置が挙げられる。液晶表示装置は、例えば、液晶セルと、液晶セルの片側または両側に配置されている本発明の偏光素子または本発明の偏光板を備える反射型、透過型または透過・反射両用型等の液晶表示装置とすることができる。上記液晶セルを用いることは任意であり、例えば、薄膜トランジスタ型に代表されるアクティブマトリクス駆動型の液晶セル、ツイストネマチック型やスーパーツイストネマチック型に代表される単純マトリクス駆動型の液晶セルなどの適宜なタイプの液晶セルを用いたものであって良い。本発明の偏光素子、または偏光板を備えた表示装置は高い偏光度、即ちコントラストを提供するだけでなく、高い耐久性を提供することも出来る。その耐久性とは115℃、または相対湿度85%の85℃の環境においても変色、およびコントラストの低下がない表示装置を提供するに至る。コントラスト値が100以上、かつ、偏光度が98%以上であると、表示装置として好ましく、コントラスト値が1000以上、かつ、偏光度が99%以上であることが更に好ましく、コントラスト値が1100以上、かつ、偏光度が99.9%以上であることが極めて好ましい。
【0091】
さらに、本発明の液晶表示装置において、例えばプリズムアレイシートやレンズアレイシート、光拡散板やバックライトなどの適宜な他の光学部材を適宜な位置に1つまたは2つ以上配置することもできる。本発明の偏光素子または本発明の偏光板や、他の光学部材を設ける場合、それらは、両側で同じものであってもよいし、両側で異なるものであってもよい。
【0092】
本発明の液晶表示装置は、本発明の偏光素子または本発明の偏光板の片側または両側に液晶セル等の他の部材と粘着させるための粘着層を有するものとすることもできる。該粘着層の形成には、任意の粘着性物質や粘着剤を用いることができ、特に限定はない。該粘着層の構成材料の例としては、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエーテル、フッ素樹脂、ゴムなどの適宜な重合体をベース重合体とするものなどが挙げられる。
【0093】
本発明の液晶表示装置は、ツイストネマチック方式(TN)、スーパーツイストネマチック方式(STN)、薄膜トランジスタ方式(TFT)、バーチカルアライメント方式(VA)、インプレーンスイッチング方式(IPS)等の液晶表示装置全般に使用することができる。
【実施例】
【0094】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。なお、実施例および比較例で得られた偏光板の透過率、偏光度およびコントラスト値の評価は以下のようにして行った。
【0095】
〔偏光板の透過率および偏光度の測定方法〕
1枚の偏光板の各波長における透過率を単体透過率Ts、2枚の偏光板をそれらの吸収軸方向が同一となるように重ねた場合の各波長における透過率を平行位透過率Tp、2枚の偏光板をそれらの吸収軸が直交するように重ねた場合の各波長における透過率を直交位透過率Tc、色度関数(C光源2°視野)により視感度補正された単体透過率をYs、色度関数(C光源2°視野)により視感度補正された平行位透過率をYp、色度関数(C光源2°視野)により視感度補正された直交位透過率をYcとした。それぞれの透過率Ts、Tp、Tc、Ys、YpおよびYcを、分光光度計(株式会社日立ハイテクノロジーズ製の「U-4100」)を用いて、5nm間隔の各波長で測定した。
【0096】
偏光板の偏光度ρy(%)を、視感度補正された平行位透過率Ypおよび視感度補正された直交位透過率Ycから、下記式(6)により求めた。
ρy(%)={(Yp-Yc)/(Yp+Yc)}1/2×100 …(6)
【0097】
コントラスト値CRを、視感度補正された平行位透過率Ypおよび視感度補正された直交位透過率Ycから、下記式(7)により算出した。
CR=Yp/Yc …(7)
【0098】
〔実施例1〕
<偏光素子の作製>
ケン化度が99%以上で膜厚が60μmのポリビニルアルコールフィルム(株式会社クラレ製の「VF-PE♯6000」;以下、単に「フィルム」と称する)を基材として用いた。それを35℃の温水に3分間浸漬し膨潤処理をした。上記式(1)で表されるアゾ化合物として本願化合物例1-3(特開平8-291259 実施例1において、1-アミノ-2-メトキシ-5-メチルベンゼン 6.9部を1-アミノ-5-メチルベンゼン 5.4部に変えて合成して得られた)0.25重量部と、上記式(2)で表されるアゾ化合物として本願化合物例2-4のアゾ化合物(国際公開第2012/108169号の化合物例45に記載の式(2)のアゾ化合物)1.5重量部と、上記式(4)で表されるアゾ化合物として本願化合物例4-2のアゾ化合物(国際公開第2007/138980号の実施例1に記載の式(2)のアゾ化合物)0.14重量部と、トリポリ燐酸ナトリウム2.0重量部と、水2000重量部とを混合して、45℃の水溶液を調製した。この45℃の水溶液に、上記膨潤処理したフィルムを浸漬し、上記各アゾ化合物をフィルムに吸着させた。上記各アゾ化合物が吸着されたフィルムを水にて洗浄した後、2重量%のホウ酸を含んだ40℃の水溶液に1分間浸漬した(ホウ酸処理)。ホウ酸処理して得られたフィルムを、6.0倍に延伸しながらホウ酸3.0重量%を含んだ58℃の水溶液中に5分間浸漬した(ホウ酸処理)。ホウ酸処理して得られたフィルムの緊張状態を保ちつつ、常温の水に20秒間浸漬した(洗浄処理)。洗浄処理して得られたフィルムを直ちに60℃で5分間乾燥処理を行い、単体透過率が約41%、膜厚23μmの偏光素子を得た。以上の方法で、式(1)、式(2)および式(4)でそれぞれ表されるアゾ化合物を含む、ポリビニルアルコールフィルムを用いた偏光素子を作製した。
【0099】
<偏光板の作製>
上記で得られた偏光素子の両面に対して、アルカリ処理した膜厚80μmのトリアセチルセルロースフィルム(富士フイルム株式会社製の「TD-80U」;以下、「TAC」と略記する)を、ポリビニルアルコール接着剤を用いて接着することにより、TAC/接着層/偏光素子/接着層/TACという構成で積層(ラミネート)した。これにより、偏光板を得た。得られた偏光板を測定試料とした。
【0100】
〔実施例2〕
上記式(2)で表されるアゾ化合物として、実施例1の本願化合物例2-4のアゾ化合物に代えて、本願化合物例2-19(国際公開第2012/108169号 実施例4において、式(70)から式(71)を得る工程で用いている2,5-ジメチルアニリン 7.7部を、2,5-ジメトキシアニリン 9.7部に変えて合成して得られた) 2.2重量部のアゾ化合物を使用したこと以外は、実施例1と同様にして、上記式(1)、式(2)および式(4)でそれぞれ表されるアゾ化合物を含む、ポリビニルアルコールフィルムを用いた、単体透過率が約41%、膜厚23μmの偏光素子を作製すると共に偏光板を作製し、測定試料とした。
【0101】
〔実施例3〕
上記式(2)で表されるアゾ化合物として、実施例1の本願化合物例2-4のアゾ化合物に代えて、本願化合物例2-13(国際公開第2012/108169号 実施例3において、式(70)から式(71)を得る工程で用いている2,5-ジメチルアニリン 7.7部を、2,5-ジメトキシアニリン 9.7部に変えて合成して得られた) 2.1重量部のアゾ化合物を使用したこと以外は、実施例1と同様にして、上記式(1)、式(2)および式(4)でそれぞれ表されるアゾ化合物を含む、ポリビニルアルコールフィルムを用いた、単体透過率が約41%、膜厚23μmの偏光素子を作製すると共に偏光板を作製し、測定試料とした。
【0102】
〔実施例4〕
上記式(2)で表されるアゾ化合物として、実施例1の本願化合物例2-4のアゾ化合物に代えて、本願化合物例2-17(国際公開第2012/108169号 実施例1において、式(70)から式(71)を得る工程で用いている2,5-ジメチルアニリン 7.7部を、2,5-ジメトキシアニリン 9.7部に変え、さらに4次カップラーの6-フェニルアミノ-1-ナフトールー3-スルホン酸 16.1部を6-[(4-ヒドロキシフェニル)アゾ]-1-ナフトールー3-スルホン酸 17.6部に変えて合成して得られた) 1.45重量部のアゾ化合物を使用したこと以外は、実施例1と同様にして、上記式(1)、式(2)および式(4)でそれぞれ表されるアゾ化合物を含む、ポリビニルアルコールフィルムを用いた、単体透過率が約41%、膜厚23μmの偏光素子を作製すると共に偏光板を作製し、測定試料とした。
【0103】
〔実施例5〕
上記式(2)で表されるアゾ化合物として、実施例1の本願化合物例2-4のアゾ化合物に代えて、本願化合物例2-25(国際公開第2012/108173号 実施例2において、式(68)から式(69)を得る工程で用いている2,5-ジメチルアニリン 7.7部を、2,5-ジメトキシアニリン 9.7部に変えて合成して得られた) 1.9重量部のアゾ化合物を使用したこと以外は、実施例1と同様にして、上記式(1)、式(2)および式(4)でそれぞれ表されるアゾ化合物を含む、ポリビニルアルコールフィルムを用いた、単体透過率が約41%、膜厚23μmの偏光素子を作製すると共に偏光板を作製し、測定試料とした。
【0104】
〔実施例6〕
上記式(1)で表されるアゾ化合物として、実施例1の本願化合物例1-3のアゾ化合物に代えて、本願化合物例1-9(特開平8-291259 実施例1において、スルファニル酸 34.6部を5-アミノイソフタル酸 36.2部に変えて、かつ1-アミノ-2-メトキシー5-メチルベンゼン 6.9部を1-アミノ-5-メチルベンゼン 5.4部に変えて合成して得られた) 0.18重量部のアゾ化合物を使用したこと以外は、実施例1と同様にして、上記式(1)、式(2)および式(4)でそれぞれ表されるアゾ化合物を含む、ポリビニルアルコールフィルムを用いた、単体透過率が約42%、膜厚23μmの偏光素子を作製すると共に偏光板を作製し、測定試料とした。
【0105】
〔実施例7〕
上記式(1)で表されるアゾ化合物として、実施例1の本願化合物例1-3のアゾ化合物に代えて、本願化合物例1-8(特開平8-291259 実施例1において、スルファニル酸 34.6部を 2, 4-ジスルホアニリン 51.0部に変えて、かつ1-アミノ-2-メトキシー5-メチルベンゼン 6.9部をアニリン 4.7部に変えて、さらに1-ヒドロキシナフタレンー6-フェニルアミノ-3-スルホン酸 15.8部を1-ヒドロキシナフタレンー6-メチルアミノ-3-スルホン酸12.7部に変えて合成して得られた) 0.25部のアゾ化合物を使用したこと以外は、実施例1と同様にして、上記式(1)、式(2)および式(4)でそれぞれ表されるアゾ化合物を含む、ポリビニルアルコールフィルムを用いた、単体透過率が約41%、膜厚23μmの偏光素子を作製すると共に偏光板を作製し、測定試料とした。
【0106】
〔実施例8〕
上記式(1)で表されるアゾ化合物として、実施例1の本願化合物例1-3のアゾ化合物に代えて、本願化合物例1-17(国際公開第2015/152026号 実施例1における式(80)の合成において用いた6-(4-アミノベンゾイルアミノ)-4-ヒドロキシナフタレンー2-スルホン酸 39.8部を、6-(4-アミノベンゾイルアミノ)-4-ヒドロキシナフタレンー2-スルホン酸 48.7部に変えて、かつ式(81)の合成において用いた3-メチルアニリン 12.1部をアニリン 10.5部に変えて合成して得られた) 0.21部のアゾ化合物を使用したこと以外は、実施例1と同様にして、上記式(1)、式(2)および式(4)でそれぞれ表されるアゾ化合物を含む、ポリビニルアルコールフィルムを用いた、単体透過率が約41%、膜厚23μmの偏光素子を作製すると共に偏光板を作製し、測定試料とした。
【0107】
〔実施例9〕
上記式(1)で表されるアゾ化合物として、実施例1の本願化合物例1-3のアゾ化合物に代えて、本願化合物例1-21(国際公開第2015/152026号 実施例2における式(82)の合成において用いた7-(4-アミノベンゾイルアミノ)-4-ヒドロキシナフタレンー2-スルホン酸 39.8部を、6-(4-アミノベンゾイルアミノ)-4-ヒドロキシナフタレンー2-スルホン酸 48.7部に変えて、式(83)の合成において用いた2,5-ジメチルアニリン 12.1部をアニリン 10.5部に変えて、式(84)の合成において用いた2,5-ジメチルアニリン 9.7部をアニリン 8.4部に変えて、かつ7-フェニルアミノー4-ヒドロキシナフタレンー2-スルホン酸 17.7部を7-(4-アミノベンゾイルアミノ)ー4-ヒドロキシナフタレンー2-スルホン酸 20.1部に変えて合成して得られた) 0.29部のアゾ化合物を使用したこと以外は、実施例1と同様にして、上記式(1)、式(2)および式(4)でそれぞれ表されるアゾ化合物を含む、ポリビニルアルコールフィルムを用いた、単体透過率が約42%、膜厚23μmの偏光素子を作製すると共に偏光板を作製し、測定試料とした。
【0108】
〔実施例10〕
上記式(4)で表されるアゾ化合物として、実施例1の本願化合物例4-2のアゾ化合物に代えて、本願化合物例4-1に記載のアゾ化合物 0.20重量部を使用したこと以外は、実施例1と同様にして、上記式(1)、式(2)および式(4)でそれぞれ表されるアゾ化合物を含む、ポリビニルアルコールフィルムを用いた、単体透過率が約41%、膜厚23μmの偏光素子を作製すると共に偏光板を作製し、測定試料とした。尚、本願化合物例4-1は下記の合成法により得られたものを用いた。まず、スルファニル酸 10.8部を水500部に加え、水酸化ナトリウムで溶解した。冷却し10℃以下で、35%塩酸32部を加え、次に亜硝酸ナトリウム6.9部を加え、5~10℃で1時間攪拌した。そこへアニリン-ω-メタンスルホン酸ソーダ20.9部を加え、20~30℃で攪拌しながら、炭酸ナトリウムを加えてpH3.5とした。さらに攪拌してカップリング反応を完結させ、濾過して、モノアゾ化合物17部を得た。得られたモノアゾ化合物12部、4,4’-ジニトロスチルベン-2,2’-スルホン酸21部を水300部に溶解させた後、水酸化ナトリウム12部を加え、90℃で縮合反応させた。続いて、グルコース9部で還元し、塩化ナトリウムで塩析した後、濾過して本願化合物例4-1に示されるアゾ化合物16部を得た。
【0109】
〔実施例11〕
実施例1の本願化合物例4-2のアゾ化合物に代えて、非特許文献2に記載されているC.I.ダイレクト・イエロー28を使用したこと以外は、実施例1と同様にして、上記式(1)および式(2)でそれぞれ表されるアゾ化合物を含む、ポリビニルアルコールフィルムを用いた、単体透過率が約41%、膜厚23μmの偏光素子を作製すると共に偏光板を作製し、測定試料とした。
【0110】
〔実施例12〕
実施例1の本願化合物例4-2のアゾ化合物に代えて、C.I.ダイレクト・オレンジ72を使用したこと以外は、実施例1と同様にして、上記式(1)および式(2)でそれぞれ表されるアゾ化合物を含む、ポリビニルアルコールフィルムを用いた、単体透過率が約41%、膜厚23μmの偏光素子を作製すると共に偏光板を作製し、測定試料とした。
【0111】
〔比較例1〕
特開平11-218611号公報の実施例2に記載のアゾ化合物を用いて、単体透過率が約40%、膜厚23μmの偏光素子を作製すると共に偏光板を作製し、作製した偏光板を測定試料とした。
【0112】
〔比較例2〕
特開2001-033627号公報の実施例3に記載のアゾ化合物を用いて、単体透過率が約41%、膜厚23μmの偏光素子を作製すると共に偏光板を作製し、作製した偏光板を測定試料とした。
【0113】
〔比較例3〕
特開2004-251962号公報の実施例1に記載のアゾ化合物を用いて、単体透過率が約41%、膜厚23μmの偏光素子を作製すると共に偏光板を作製し、作製した偏光板を測定試料とした。
【0114】
〔比較例4〕
実施例1の化合物例1-3のアゾ化合物に代えて、実施例1の染色時間で単体透過率が41%に調整できるように、同色のジスアゾ色素であるC.I.ダイレクト・レッド81を0.2重量部使用したこと以外は、実施例1と同様にして、アゾ化合物を含むポリビニルアルコールフィルムを用いた、単体透過率が約41%、膜厚23μmの偏光素子を作製すると共に偏光板を作製し、測定試料とした。
【0115】
〔比較例5〕
実施例1の化合物例2-4のアゾ化合物に代えて、実施例1の染色時間で単体透過率が41%に調整できるように、同色の青色を示すアゾ化合物である特公昭64-5623号公報の実施例1に記載の染料(アゾ化合物)0.2重量部を使用したこと以外は、実施例1と同様にして、アゾ化合物を含むポリビニルアルコールフィルムを用いた、単体透過率が約41%、膜厚23μmの偏光素子を作製すると共に偏光板を作製し、測定試料とした。
【0116】
<光学性能評価>
表1に、実施例1~12および比較例1~5の偏光板における単体透過率Ys(%)、平行位透過率Yp(%)、直交位透過率Yc(%)、偏光度ρy(%)およびコントラスト値CRの測定結果を示す。
【0117】
【0118】
表1から分かるように、実施例1~12の本発明の偏光板は、従来のアゾ化合物を用いた偏光板よりも偏光性能およびコントラストが向上した偏光板であることが分かる。
【0119】
<耐久性評価>
次に、実施例1~12、比較例1~5の偏光板を、115℃で1000時間と、温度85℃および湿度85%の環境で1000時間保持したときの、光学特性の変化を確認した。その結果、本願の偏光板は115℃、並びに85℃、85%RHの環境下でコントラスト、並びに偏光度の低下は見られなかった。
【0120】
以上の実施例1~12および比較例1~5の結果から明らかなように、本発明の偏光素子および偏光板は、光学特性および耐久性が向上していることが分かる。したがって、この偏光素子や偏光板を用いることによって、偏光特性に優れ、耐久性の高い液晶表示装置および偏光レンズを得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0121】
本発明は、従来と同等又はそれより優れた光学特性を有する偏光素子、偏光板および光学部材等を提供できる。本発明の偏光素子、または偏光板は、液晶プロジェクター、電卓、時計、ノートパソコン、ワープロ、液晶テレビ、偏光レンズ、偏光メガネ、ヘッドアップディスプレイ、カーナビゲーション、有機エレクトロルミネッセンスディスプレイ(通称 OLED)および屋内外の計測器や表示器等に使用される表示装置、またはそれに類する光学装置に用いることが出来る。本発明の偏光素子または本発明の偏光板を備える液晶表示装置が本発明の形態の一つである。また、特に好ましい本発明の偏光板の用途の一つとして本発明の偏光素子または偏光板を備えた表示装置は高い偏光度、即ちコントラストを提供するだけでなく、高い耐久性を提供することも出来る。その耐久性とは115℃、または相対湿度85%の85℃の環境においても変色、およびコントラストの低下がない表示装置を提供するに至る。特に好ましい用途としては車載ディスプレイ、液晶プロジェクター、ヘッドアップディスプレイ、屋外ディスプレイ等、高いコントラストだけでなく、耐熱性、耐湿熱性、耐光性が求められる分野で好適に用いられることが出来る。