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特許7448489安定化されたフルオロオレフィン成物、並びにその生成、保管、及び使用方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】安定化されたフルオロオレフィン成物、並びにその生成、保管、及び使用方法
(51)【国際特許分類】
   C09K 5/04 20060101AFI20240305BHJP
   F25B 1/00 20060101ALI20240305BHJP
   C10M 105/38 20060101ALI20240305BHJP
   C10N 40/30 20060101ALN20240305BHJP
【FI】
C09K5/04 F
F25B1/00 396Z
C10M105/38
C10N40:30
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020566788
(86)(22)【出願日】2019-10-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-06
(86)【国際出願番号】 US2019058435
(87)【国際公開番号】W WO2020222864
(87)【国際公開日】2020-11-05
【審査請求日】2022-10-21
(31)【優先権主張番号】PCT/US2019/029777
(32)【優先日】2019-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515269383
【氏名又は名称】ザ ケマーズ カンパニー エフシー リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ション ペン
(72)【発明者】
【氏名】ルーク デイビッド シモーニ
【審査官】黒川 美陶
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-098280(JP,A)
【文献】特開2011-057885(JP,A)
【文献】特表2014-528987(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 5/
C10M
C10N
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのフルオロオレフィンと、少なくとも1つの潤滑剤と、有効量の少なくとも1つのヒドロフルオロオレフィンのオリゴマー又はポリマーへの変換を排除とはいかないまでも低減する阻害剤と、を含み、
前記フルオロオレフィンが、少なくとも99.5重量%超の純度を有するHFO-1234yfと、任意選択的にHFO-1234zeを含み
前記阻害剤が、リモネン及びα-テルピネンのうちの少なくとも1つを10~500ppmの量で含み、
前記潤滑剤が、ポリオールエステルを含む、冷媒組成物であって、
前記組成物は、0.03重量%未満の、少なくとも1つのフルオロオレフィン由来のオリゴマー、ホモポリマー、又は他のポリマー生成物を含む、冷媒組成物。
【請求項2】
空気、酸素、クメンヒドロペルオキシド、及びフルオロオレフィンポリペルオキシド、過酸化物、ヒドロペルオキシド、過硫酸塩、過炭酸塩、過ホウ酸塩、及びヒドロペルサルフェートからなる群から選択される少なくとも1つの構成要素を更に含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
少なくとも1つの気相フルオロオレフィンと、少なくとも1つの液相フルオロオレフィンと、を含み、前記阻害剤が、前記液相フルオロオレフィン及び前記潤滑剤中に存在する、請求項1又は2に記載の冷媒組成物。
【請求項4】
前記阻害剤の10~80重量%が、液体フルオロオレフィン相中に存在し、残りは潤滑剤相中に存在する、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記気相フルオロオレフィンが、前記阻害剤を実質的に含まない、請求項3又は4に記載の組成物。
【請求項6】
前記気相フルオロオレフィン中の阻害剤の量が、10ppm未満である、請求項5に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2019年4月30日に出願された国際出願第PCT/2019/02977号の利益を主張する。国際出願第PCT/2019/02977号の開示は、参照により本明細書に援用される。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、広くは、少なくとも1つのフルオロオレフィンと、少なくとも1つの潤滑剤と、リモネン、α-テルピネン、α-トコフェロール、ブチル化ヒドロキシトルエン、4-メトキシフェノール、ベンゼン-1,4-ジオールからなる群から選択される少なくとも1つの構成要素を含む少なくとも1つの阻害剤と、を含む、安定化された冷媒組成物であって、阻害剤が、液相フルオロオレフィン及び潤滑剤中に存在する冷媒組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
冷媒に対する新たな環境規制によって、冷蔵及び空調産業は、地球温暖化係数(global warming potential、GWP)の低い新規冷媒を探さなければならなくなっている。
【0004】
低GWP、非毒性、不燃性、合理的なコスト、及び優れた冷蔵性能を有する代替冷媒が求められている。
【0005】
フルオロオレフィンは、単独で又は混合物中で冷媒として提案されている。これらの製品は、空調又は冷蔵システムで典型的に使用される材料との化学的安定性及び適合性について広範に試験されており(「1234yf-A Low GWP Refrigerant For MAC,Honeywell/DuPont Joint Collaboration」、JAMA/JARIAへの発表、2007年10月3日を参照)、典型的な動作条件下で安定していることが示されている。しかしながら、特定のフルオロオレフィンは、極端な温度、又は汚染された系内での他の化合物(様々な汚染物質の中でも、例えば、過剰な酸素、酸化化学物質、若しくはラジカル生成化合物)との接触などの異常な条件下で、劣化を示し得る及び/又は不必要な副生成物を生成し得ることが観察されており、これは、特定の使用及び/又は用途において予想外に起こり得る。このような劣化は、フルオロオレフィンを冷媒又は伝熱流体として利用するときに生じ得る。この劣化は、任意の数の異なる機序によって生じ得る。安定化された冷媒組成物の例は、特開2009-298918号、米国特許第6,969,701号、同第8,133,407号、米国特許出願公開第2006/0022166号、同第2006/0043330号、同第2008/0157022号、及び国際公開第2007/126760号、並びに欧州特許第2057245号、米国特許第8101094号、同第8535555号、同第8097181号、及び同第8075796号に開示されており、これらの開示は、参照により本明細書に援用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2009-298918号
【文献】米国特許第6,969,701号
【文献】米国特許第8,133,407号
【文献】米国特許出願公開第2006/0022166号
【文献】米国特許出願公開第2006/0043330号
【文献】米国特許出願公開第2008/0157022号
【文献】国際公開第2007/126760号
【文献】欧州特許第2057245号
【文献】米国特許第8101094号
【文献】米国特許第8535555号
【文献】米国特許第8097181号
【文献】米国特許第8075796号
【非特許文献】
【0007】
【文献】「1234yf-A Low GWP Refrigerant For MAC,Honeywell/DuPont Joint Collaboration」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特定の異常な条件下且つ反応開始剤として機能し得る望ましくない汚染物質の存在下で、フルオロオレフィンは、存在する可能性のある特定の汚染物質の存在下でオリゴマー化又はホモ重合することがある。したがって、この技術分野では、オリゴマー化又はホモ重合する可能性が排除とはいかないまでも低減されている安定化されたフルオロオレフィン含有冷媒組成物が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、液状フルオロオレフィン及び潤滑剤中に存在する少なくとも1つの阻害剤を提供することによって、重合開始に関連する問題を解決することができる。特に、本発明は、少なくとも1つの阻害剤をフルオロオレフィン含有冷媒組成物に添加することによって、ヒドロフルオロオレフィン含有冷媒組成物が異常な状態に持ちこたえる能力を改善することができ、また、フルオロオレフィン(例えば、テトラフルオロプロペン)をオリゴマー化又はホモ重合させるという反応開始剤(例えば、汚染物質)に関連する潜在的な問題を解決する。「阻害剤」とは、ヒドロフルオロオレフィンのオリゴマー又はポリマーへの変換を排除とはいかないまでも低減する、本発明による少なくとも1つの化合物を指すことを意味する。オリゴマー化又はホモ重合反応は比較的高い温度により加速され得るが、このような反応はまた、反応開始剤(例えば、汚染物質)の濃度及び種類に応じて周囲条件下で発生し得る。阻害剤は、ラジカル阻害剤として、冷媒組成物の冷蔵性能にも冷媒油及び部品との適合性にも影響を及ぼすことなく機能することができる。安定化された冷媒組成物は、冷却システムにおいて、且つより高い地球温暖化係数を有する既存の冷媒の代替品として、有用であり得る。
【0010】
フルオロオレフィンの起こり得る不安定性を回避するために、特定の阻害剤化合物、すなわち環状モノテルペンのうちの少なくとも1つを含む炭化水素、α-トコフェロールなどのトコフェロールを含む親油性有機化合物、フェノール、ベンゼン-1,4-ジオールを含む少なくとも1つの化学部分C(OH)を有する芳香族有機化合物を、フルオロオレフィン含有冷媒組成物に添加することにより、冷蔵又は空調システム用途での包装、保管、及び使用時の安定性が向上することが見出されている。阻害剤化合物の具体例は、リモメン、α-テルピネン、α-トコフェロール、ブチル化ヒドロキシトルエン、4-メトキシフェノール、ベンゼン-1,4-ジオールからなる群から選択される少なくとも1つの構成要素を含む。本発明の一実施形態では、本発明の阻害剤組成物は、約-100~約220℃、約-90~約200℃、場合によっては約-80~約185℃の温度で液体を含む。
【0011】
具体的な一実施形態では、本発明は、O及びフルオロオレフィンポリペルオキシドと相互作用又は反応し、次に、このような化合物とヒドロフルオロオレフィンとの反応を阻害又は防止することができる阻害剤を含むフルオロオレフィン含有冷媒組成物に関する。このような阻害剤の例は、リモネン及びα-テルピネンのうちの少なくとも1つを含む。リモネン及びα-テルピネンは、以下の構造を有する:
【0012】
【化1】
【0013】
本発明の一実施形態では、阻害剤は、α-テルピネンを含む。理論又は説明に束縛されるものではないが、その構造中に共役二重結合が存在することにより、α-テルピネンは、酸化時に芳香環を形成することができると考えられる。
【0014】
本発明の一実施形態では、任意選択的に酸化防止剤を含むリモネン又はα-テルピネンは、数ppmレベルであっても独特の芳香を有する。この心地良い匂いは、ヒドロフルオロオレフィン(例えば、1234yf、1234ze、及びこれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを含む)に基づく冷媒及びブレンドによる冷媒漏れの検出に利用することができる。これは、パラプロフェッショナルな電子的漏れ検出器がいずれの場所でも利用できないことが多いため、家庭用空調装置又は可搬式空調装置における冷媒漏れを早期に検出するのに特に有益である。
【0015】
本発明の一実施形態は、
a.少なくとも1つのフルオロオレフィンと、
b.少なくとも1つの潤滑剤と、
c.有効量の少なくとも1つの阻害剤であって、環状モノテルペンを含む炭化水素、α-トコフェロールを含むトコフェロールを含む親油性有機化合物、フェノール、ベンゼン-1,4-ジオールを含む化学式C(OH)を有する芳香族有機化合物を含む、阻害剤と、を含む冷媒組成物であって、阻害剤が、液体フルオロオレフィン及び潤滑剤中に存在する冷媒組成物に関する。
【0016】
本発明の一実施形態は、少なくとも1つの酸化防止剤を更に含む、前述の冷媒組成物のうちのいずれかに関する。任意の好適な酸化剤を用いることができるが、好適な酸化剤の例は、数あるフェノールの中でも、ブチル化ヒドロキシトルエン、ブチル化ヒドロキシアニソール、三級ブチルヒドロキノン、没食子酸塩、2-フェニル-2-プロパノール、1-(2,4,5-トリヒドロキシフェニル)-1-ブタノン、ビスフェノールメタン誘導体、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの構成要素を含む。
【0017】
具体的な一実施形態は、リモネン及びα-テルピネンのうちの少なくとも1つを含む阻害剤と共に、前述の酸化防止剤を使用することに関する。
【0018】
本発明の別の実施形態は、少なくとも1つのフルオロオレフィンを含む冷媒組成物を安定化させる方法であって、有効量の少なくとも1つの阻害剤であって、環状モノテルペン、α-トコフェロールを含むトコフェロールを含む親油性有機化合物、フェノール、及びベンゼン-1,4-ジオールを含む化学式C(OH)を有する芳香族有機化合物、並びにこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの構成要素を含む炭化水素である、阻害剤を、少なくとも1つのフルオロオレフィンを含む当該組成物に添加することを含む、方法に関する。
【0019】
本発明の別の実施形態は、フルオロオレフィン含有冷媒組成物を取り扱うために使用される導管、ライン、及び他のシステム;包装(容器)、及び冷蔵、空調、又はヒートポンプのシステムのうちの少なくとも1つに存在する偶発的な又は望ましくない汚染物質の存在によって引き起こされる、少なくとも1つのフルオロオレフィンを含む冷媒組成物のオリゴマー化又はホモ重合を低減する方法であって、環状モノテルペン、α-トコフェロールを含むトコフェロールを含む親油性有機化合物、フェノール、ベンゼン-1,4-ジオールを含む化学式C(OH)を有する芳香族有機化合物、及びこれらの混合物を含む少なくとも1つの炭化水素を含む阻害剤を、当該システム、容器、及び少なくとも1つのフルオロオレフィンを含む組成物のうちの少なくとも1つに添加することを含む、方法に関する。
【0020】
本発明の更なる実施形態は、容器内のフルオロオレフィン含有冷媒組成物であって、本発明の阻害剤組成物を含まない組成物と比べて、当該フルオロオレフィンがオリゴマー化又はホモ重合する可能性が低減されている、フルオロオレフィン含有冷媒組成物に関する。
【0021】
本発明の一実施形態は、少なくとも1つのフルオロオレフィンと有効量の少なくとも1つの阻害剤とを含む冷媒組成物であって、当該フルオロオレフィンに由来するオリゴマー、ホモポリマー、又は他のポリマー生成物を実質的に含まない、組成物に関する。
【0022】
本発明の別の実施形態は、約0.03重量%未満のオリゴマー、ホモポリマー、又は他のポリマー生成物を含む、前述の冷媒組成物のうちのいずれかに関する。
【0023】
本発明の別の実施形態は、空気、酸素、クメンヒドロペルオキシド、及びフルオロオレフィンポリペルオキシド、過酸化物、ヒドロペルオキシド、過硫酸塩、過炭酸塩、過ホウ酸塩、及びヒドロペルサルフェートからなる群から選択される少なくとも1つの構成要素を更に含む、前述の冷媒組成物のうちのいずれかに関する。
【0024】
本発明の別の実施形態は、阻害剤が、リモメン、α-テルピネン、α-トコフェロール、ブチル化ヒドロキシトルエン、4-メトキシフェノール、ベンゼン-1,4-ジオールからなる群から選択される少なくとも1つの構成要素を含む、前述の冷媒組成物のうちのいずれかに関する。
【0025】
本発明の別の実施形態は、フルオロオレフィンが、HFO-1234yf及びHFO-1234zeのうちの少なくとも1つの構成要素を含む、前述の冷媒組成物のうちのいずれかに関する。
【0026】
本発明の別の実施形態は、HFC-32、HFC-125、HFC-134a、HFC-152a、HFC-227ea、及び二酸化炭素からなる群から選択される少なくとも1つの構成要素を更に含む、前述の冷媒組成物のうちのいずれかに関する。
【0027】
本発明の別の実施形態は、HFC-134a、HFO-1243zf、HFO1225ye、HFO-1234ze、3,3,3-トリフルオロ-1-プロピン、HCFO-1233xf、HFC-244bb、及びHFC-245cbからなる群から選択される少なくとも1つの構成要素を更に含む、前述の冷媒組成物のうちのいずれかに関する。
【0028】
本発明の別の実施形態は、HCC-40、HCFC-22、CFC-115、HCFC-124、HCFC-1122、及びCFC-1113からなる群から選択される少なくとも1つの構成要素を更に含む、前述の冷媒組成物のうちのいずれかに関する。
【0029】
本発明の別の実施形態は、阻害剤が、約30~約3,000ppmの量で存在する、前述の冷媒組成物のうちのいずれかに関する。
【0030】
本発明の別の実施形態は、ブチル化ヒドロキシトルエン、ブチル化ヒドロキシアニソール、三級ブチルヒドロキノン、没食子酸塩、2-フェニル-2-プロパノール、1-(2,4,5-トリヒドロキシフェニル)-1-ブタノン、フェノール、ビスフェノールメタン誘導体、及び2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)からなる群から選択される少なくとも1つの構成要素を更に含む、前述の冷媒組成物のうちのいずれかに関する。
【0031】
本発明の別の実施形態は、阻害剤が、リモネン及びα-テルピネンのうちの少なくとも1つを含む、前述の冷媒組成物のうちのいずれかに関する。
【0032】
本発明の別の実施形態は、阻害剤が、約-80~180℃の温度で液体を含む、前述の冷媒組成物のうちのいずれかに関する。
【0033】
本発明の別の実施形態は、任意選択的に少なくとも1つの酸化防止剤を更に含む、前述の冷媒組成物のうちのいずれかに関する。
【0034】
本発明の別の実施形態は、HFO-1225yeZ、HFO-1243zf、HFO-1234ze、HFC-236ea、HFC-245fa、及び3,3,3-トリフルオロプロピンからなる群から選択される少なくとも1つの構成要素を更に含む、前述の冷媒組成物のうちのいずれかに関する。
【0035】
本発明の別の実施形態は、構成要素が、HFO-1234ze、HFO-1225yeZ、及び3,3,3-トリフルオロプロピンを含む、前述の冷媒組成物のうちのいずれかに関する。
【0036】
本発明の別の実施形態は、当該組成物が、アンモニア及びCF3Iのうちの少なくとも1つを実質的に含まない、前述の冷媒組成物のうちのいずれかに関する。
【0037】
本発明の別の実施形態は、当該組成物が、HFO-1234yf及びリモネンから本質的になり、且つ、アンモニア又はCF3Iを含有しない、前述の冷媒組成物のうちのいずれかに関する。
【0038】
本発明の別の実施形態は、当該組成物が、HFO-1234yf、3,3,3-トリフルオロプロピン、及びリモネンから本質的になる、前述の冷媒組成物のうちのいずれかに関する。
【0039】
本発明の一実施形態は、オリゴマー及びホモポリマーの形成を低減する方法であって、少なくとも1つのフルオロオレフィンを含む冷媒組成物を、オリゴマー又はホモポリマーの形成を低減するのに有効な量の、リモメン、α-テルピネン、α-トコフェロール、ブチル化ヒドロキシトルエン、4-メトキシフェノール、及びベンゼン-1,4-ジオールからなる群から選択される少なくとも1つの構成要素と接触させることを含む、方法に関する。
【0040】
本発明の別の実施形態は、当該冷媒組成物が、当該接触の前に、空気、酸素、クメンヒドロペルオキシド、及びフルオロオレフィンポリペルオキシド、過酸化物、ヒドロペルオキシド、過硫酸塩、過炭酸塩、過ホウ酸塩、及びヒドロペルサルフェートからなる群から選択される少なくとも1つの構成要素に曝露されている、前述の方法のうちのいずれかに関する。
【0041】
本発明の別の実施形態は、加熱又は冷却のために前述の冷媒組成物のうちのいずれかを用いる、前述の方法のうちのいずれかに関する。
【0042】
本発明の別の実施形態は、前述の冷媒組成物のうちのいずれかを含む冷媒を含む容器に関する。
【0043】
本発明の実施形態は、単独で又は互いに組み合わせて使用することができ、その異なる実施形態を組み合わせ、本発明の一部を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1】R-1234yf/潤滑剤の実験VLEに対するNRTLフィットのグラフ表示である。
図2】R-1234yf/d-リモネンの実験VLEに対するNRTLフィットのグラフ表示である。
図3】ラウル(Raoult)の法則からの負の偏差を示すR-1234yf/d-リモネンのR-1234yfリッチドメインの拡大図のグラフ表示である。
図4】計算されたd-リモネン/POE32-3MAF VLEデータを使用したNRTLフィットのグラフ表示である。
図5】R-1234yf/1000ppm d-リモネン/POE32-3MAFの三元VLLE計算のグラフ表示である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
本発明は、少なくとも1つのフルオロオレフィンと、少なくとも1つの潤滑剤と、有効量の少なくとも1つの阻害剤と、を含む安定化された冷媒組成物を提供し、この阻害剤は、液体フルオロオレフィン及び潤滑剤中に存在する。「安定化された」とは、フルオロオレフィンが別の化合物と相互作用し、ダイマー、オリゴマー、ホモポリマー、又はポリマー生成物を形成することを排除とはいかないまでも阻害する、有効量の少なくとも1つの阻害剤化合物を含む組成物を指すことを意味する。このような相互作用を引き起こし得るこのような化合物の例としては、数ある反応開始剤の中でも、空気、酸素、クメンヒドロペルオキシド、及びフルオロオレフィンポリペルオキシド、過酸化物、ヒドロペルオキシド、過硫酸塩、過炭酸塩、過ホウ酸塩、ヒドロペルサルフェートなどの酸化剤が挙げられる。反応開始剤化合物は、重量基準で約10~約15,000ppm、約1,000~約10,000ppm、場合によっては約1,000~約3,000ppm、いくつかの実施形態では、30~2,000ppmの量で存在し得る。このような反応開始剤化合物は、フルオロオレフィン含有冷媒組成物を処理するために使用される導管、ライン、及び他のシステム、包装(容器)、並びに冷蔵、空調、又はヒートポンプのシステムのうちの少なくとも1つに汚染物質として存在し得る。理論又は説明に束縛されるものではないが、特定の汚染物質はラジカル反応開始剤として機能し、それによって、フルオロオレフィンをオリゴマー化させる、ホモ重合させる、又は他のポリマー生成物を形成させると考えられる。
【0046】
本発明の一実施形態では、本発明の冷媒組成物は、ヒドロフルオロオレフィンに由来するオリゴマー、ホモポリマー、又は他のポリマー生成物を実質的に含まない。「実質的に含まない」とは、組成物が、IR又はNMRによって測定されるとき、約1重量%未満、約0.07重量%未満、約0.03重量%未満、場合によっては約0ppmのこのような生成物を含有することを意味する。
【0047】
本発明の別の実施形態では、本発明の冷媒組成物は、ファメソール(famesol)、ファメセン(famesene)からなる群から選択される少なくとも1つの構成要素などのセスキテルペン化合物;[CHCO、[HSO、[CHOSO、[COSO、[AlCl、[CO2-、[HCO、[NO、[NO、[SO2-、[PO3-、[HPO2-、[HPO、[HSO3]、及び特定のフッ素化アニオンであって、[BF、[PF、[SbF、[CFSO、[HCFCFSO、[CFHFCCFSO、[HCClFCFSO、[(CFSON]、[(CFCFSON]、[(CFSOC]、[CFCO、[CFOCFHCFSO、[CFCFOCFHCFSO、[CFCFHOCFCFSO、[CFHCFOCFCFSO、[CFICFOCFCFSO、[CFCFOCFCFSO、[(CFHCFSON]、[(CFCFHCFSON]及びそれらの混合物からなる群から選択される、フッ素化アニオンからなる群から選択されるアニオンを含むイオン液体などのイオン性液体を含む特定の従来の阻害剤化合物を実質的に含まない。実質的に含まないとは、本発明の冷媒組成物が、約500ppm未満、典型的には約250ppm未満、場合によっては約100ppm、場合によっては約0ppmのこのような従来の阻害剤を含有することを意味する。
【0048】
本発明の冷媒組成物は、特に、伝熱媒体(冷蔵システム、冷蔵庫、空調システム、ヒートポンプ、冷却機などで使用するための伝熱流体及び冷媒など)を含む様々なユーティリティを有する。本発明の化合物は、可搬式空調システムにおける使用のために、且つ固定式伝熱システムにおける使用のための冷媒ブレンドを作製するための成分として、特に適している。
【0049】
伝熱媒体(本明細書では伝熱流体、伝熱組成物、又は伝熱流体組成物とも称される)は、熱源からヒートシンクに熱を運ぶために使用される作動流体である。
【0050】
冷媒は、流体が液体から気体(又は蒸気)に相変化し、元に戻るサイクルにおいて伝熱流体として機能する化合物又は化合物の混合物である。阻害剤は、少なくとも冷媒の液体フルオロオレフィン含有相、並びに冷媒の潤滑剤成分中に存在する。一実施形態では、約10~約80重量%、約25~約75重量%、及び場合によっては、約45~約60重量%の阻害剤が、液体フルオロオレフィン相中に存在し、残りは主に潤滑剤相中に存在する。一実施形態では、気相は、阻害剤を実質的に含まない。「実質的に含まない」とは、蒸気フルオロオレフィン相中の阻害剤の量が、約10ppm未満、場合によっては約5未満、典型的には約2ppm未満であることを意味する。一実施形態では、冷媒は、少なくとも1つのフルオロオレフィンを含む気相、及び少なくとも1つのフルオロオレフィンと、少なくとも1つの潤滑剤と、少なくとも1つの阻害剤と、を含む液相を含み、場合によっては、気相は、阻害剤を実質的に含まない。
【0051】
本明細書で使用するとき、「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含む(includes)」、「含む(including)」、「有する(has)」、「有する(having)」という用語、又はこれらの他の任意の変化形は、非排他的な包含を網羅することを意図する。例えば、列挙する要素を含む、組成物、プロセス、方法、物品、若しくは機器は、必ずしもそれらの要素のみに限定されるものではなく、明示的に列挙されない他の要素、又はそのような組成物、プロセス、方法、物品、若しくは機器などに伴われる他の要素を包含し得る。更に、明示的にこれに反する記載がない限り、「又は」は、包括的な「又は」を指し、排他的な「又は」を指すものではない。例えば、条件A又はBは、以下、すなわち、Aが真であり(又は存在し)且つBが偽である(又は存在しない)、Aが偽であり(又は存在しない)且つBが真である(又は存在する)、並びにA及びBの両方が真である(又は存在する)のいずれか1つにより満たされる。
【0052】
「からなる」という移行句は、特定されていないいかなる要素、工程、又は成分も除外する。特許請求の範囲における場合には、材料に通常付随する不純物を除き、このような語句は、列挙された材料以外の材料の包含を特許請求項から締め出すものである。「からなる」という句がプリアンブルの直後ではなく請求項の本文の節内で現れる場合、この語句はその節の中に示される要素のみを限定するものであり、他の要素が特許請求の範囲全体から除外されるわけではない。
【0053】
「から本質的になる」という移行句は、文字どおり開示されているものに加えて、材料、工程、特徴、成分、又は要素を含む、組成物、方法を定義するために使用されるが、ただし、これらの追加的に含まれる材料、工程、特徴、成分、又は要素は、請求される発明の基本的及び新規の特徴(複数可)、特に本発明のプロセスのいずれかの所望の結果を達成するための行動様式に実質的に影響を及ぼす。「から本質的になる」という用語は、「含む」と「からなる」との間の中間の立場を占める。
【0054】
出願人らが、発明又はその一部を、「含む」などの非限定的な用語で定義していた場合、(特に明記しない限り)その記載は、「から本質的になる」又は「からなる」という用語を使用する発明も含むと解釈すべきであることが容易に理解されるべきであろう。
【0055】
また、「a」又は「an」の使用は、本明細書に記載された要素及び成分を記述するために用いられる。これは、単に便宜上なされるものであり、及び本発明の範囲の一般的な意味を与えるためのものである。この記載は、1つ又は少なくとも1つを含むものと解釈されるべきであり、単数形は、別の意味を有することが明白でない限り、複数形も含む。
【0056】
本明細書で使用するとき、フルオロオレフィンという用語は、炭素原子、フッ素原子、及び任意選択的に水素原子を含む化合物を説明する。一実施形態では、本発明の冷媒組成物で使用されるフルオロオレフィンは、2~12個の炭素原子を有する化合物を含む。別の実施形態では、フルオロオレフィンは、3~10個の炭素原子を有する化合物を含み、更に別の実施形態では、フルオロオレフィンは、3~7個の炭素原子を有する化合物を含む。代表的なフルオロオレフィンとしては、表1、表2、及び表3に列挙される全ての化合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0057】
本発明の一実施形態は、式E-又はZ-RCH=CHR(式I)(式中、R及びRは、独立して、C~Cペルフルオロアルキル基である)を有するフルオロオレフィンを提供する。R基及びR基の例としては、CF、C、CFCFCF、CF(CF、CFCFCFCF、CF(CF)CFCF、CFCF(CF、C(CF、CFCFCFCFCF、CFCFCF(CF、C(CF、CFCFCFCFCFCF、CF(CF)CFCF、及びC(CFCFが挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態では、式Iのフルオロオレフィンは、分子中に少なくとも約4個の炭素原子を有する。別の実施形態では、式Iのフルオロオレフィンは、分子中に少なくとも約5個の炭素原子を有する。例示的な非限定的な式Iの化合物を表1に提示する。
【0058】
【表1-1】
【0059】
【表1-2】
【0060】
式Iの化合物は、式RIのペルフルオロアルキルヨージドを式RCH=CHのペルフルオロアルキルトリヒドロオレフィンと接触させて、式RICHCHIRのトリヒドロヨードペルフルオロアルカンを形成することによって調製することができる。次いで、このトリヒドロヨードペルフルオロアルカンを脱ヨウ化水素化(dehydroiodinated)させて、RCH=CHRを形成することができる。代替的に、オレフィンRCH=CHRは、次に式RIのペルフルオロアルキルヨージドを式RCH=CHのペルフルオロアルキルトリヒドロオレフィンと反応させることによって形成される式RICHICHのトリヒドロヨードペルフルオロアルカンを脱ヨウ化水素化させることによって調製することもできる。
【0061】
ペルフルオロアルキルヨージドとペルフルオロアルキルトリヒドロオレフィンとの当該接触は、反応温度で反応物質及び生成物の自己圧力下で操作することができる好適な反応槽において反応物質を合わせることによってバッチモードで行ってよい。好適な反応槽は、(特にオーステナイト系の)ステンレス鋼、並びに周知の高ニッケル合金、例えば、Monel(登録商標)ニッケル-銅合金、Hastelloy(登録商標)ニッケル系合金、及びInconel(登録商標)ニッケル-クロム合金などから製作されるものが挙げられる。
【0062】
代替的に、反応温度でポンプなどの好適な添加装置によってペルフルオロアルキルトリヒドロオレフィン反応物質をペルフルオロアルキルヨージド反応物に添加するセミバッチモードで、反応を行ってもよい。
【0063】
ペルフルオロアルキルヨージドのペルフルオロアルキルトリヒドロオレフィンに対する比は、約1:1~約4:1、好ましくは約1.5:1~2.5:1でなければならない。1.5:1未満の比では、Jeanneaux,et.al.in Journal of Fluorine Chemistry,Vol.4,pages 261-270(1974)に報告されているように、多量の2:1付加物が生じる傾向がある。
【0064】
当該ペルフルオロアルキルヨージドを当該ペルフルオロアルキルトリヒドロオレフィンと接触させるための好ましい温度は、好ましくは約150℃~300℃、好ましくは約170℃~約250℃、最も好ましくは約180℃~約230℃の範囲内である。ペルフルオロアルキルヨージドとペルフルオロアルキルトリヒドロオレフィンとの反応に好適な接触時間は、約0.5時間~18時間、好ましくは約4~約12時間である。
【0065】
ペルフルオロアルキルヨージドとペルフルオロアルキルトリヒドロオレフィンとの反応によって調製されるトリヒドロヨードペルフルオロアルカンは、脱ヨウ化水素化工程において直接使用してもよく、又は好ましくは、脱ヨウ化水素化工程の前に蒸留によって回収及び精製してもよい。
【0066】
脱ヨウ化水素化工程は、トリヒドロヨードペルフルオロアルカンを塩基性物質と接触させることによって行われる。好適な塩基性物質としては、アルカリ金属水酸化物(例えば、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウム)、アルカリ金属酸化物(例えば、酸化ナトリウム)、アルカリ土類金属水酸化物(例えば、水酸化カルシウム)、アルカリ土類金属酸化物(例えば、酸化カルシウム)、アルカリ金属アルコキシド(例えば、ナトリウムメトキシド又はナトリウムエトキシド)、アンモニア水溶液、ナトリウムアミド、又はソーダ石灰などの塩基性物質の混合物が挙げられる。好ましい塩基性物質は、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムである。トリヒドロヨードペルフルオロアルカンと塩基性物質との当該接触は、好ましくは両方の反応物質の少なくとも一部を溶解することができる溶媒の存在下で、液体相中で行ってよい。脱ヨウ化水素化工程に好適な溶媒としては、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、及び三級ブタノール)、ニトリル(例えば、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、ベンゾニトリル、又はアジポニトリル)、ジメチルスルホキシド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、又はスルホランなどの1つ以上の極性有機溶媒が挙げられる。溶媒の選択は、沸点生成物及び精製中の生成物からの微量の溶媒を分離する容易さに依存し得る。典型的には、エタノール又はイソプロパノールが、この反応についての良溶媒である。
【0067】
典型的には、脱ヨウ化水素化反応は、好適な反応容器内で反応物質(塩基性物質又はトリヒドロヨードペルフルオロアルカンのいずれか)のうちの1つを他の反応物質に添加することによって実施することができる。この反応は、ガラス、セラミック、又は金属から製作されてもよく、好ましくはインペラ又は撹拌機構で撹拌される。
【0068】
脱ヨウ化水素化反応に好適な温度は、約10℃~約100℃、好ましくは約20℃~約70℃である。脱ヨウ化水素化反応は、周囲気圧又は減圧若しくは高圧で実施してよい。式Iの化合物が形成される際に反応槽から蒸留される脱ヨウ化水素化反応に注目すべきである。
【0069】
代替的に、脱ヨウ化水素化反応は、相間移動触媒の存在下、アルカン(例えば、ヘキサン、ヘプタン、又はオクタン)、芳香族炭化水素(例えば、トルエン)、ハロゲン化炭化水素(例えば、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、又はペルクロロエチレン)、又はエーテル(例えば、ジエチルエーテル、メチルtert-ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタン、ジグリム、又はテトラグリム)などのより極性の低い1つ以上の有機溶媒中で、当該塩基性物質の水溶液をトリヒドロヨードペルフルオロアルカンの溶液と接触させることによって実施してもよい。好適な相間移動触媒としては、四級アンモニウムハロゲン化物(例えば、テトラブチルアンモニウムブロミド、テトラブチルアンモニウムヒドロサルフェート、トリエチルベンジルアンモニウムクロリド、ドデシルトリメチルアンモニウムクロリド、及びトリカプリリルアンモニウムクロリド)、四級ホスホニウムハロゲン化物(例えば、トリフェニルメチルホスホニウムブロミド及びテトラフェニルホスホニウムクロリド)、又はクラウンエーテル(例えば、18-クラウン-6及び15-クラウン-5)として当該技術分野において既知の環状ポリエーテル化合物が挙げられる。
【0070】
代替的に、トリヒドロヨードペルフルオロアルカンを固体又は液体の塩基性物質に添加することによって、溶媒の非存在下で脱ヨウ化水素化反応を実施してもよい。
【0071】
脱ヨウ化水素化反応に好適な反応時間は、反応物質の溶解度に応じて約15分間~約6時間、又はそれ以上である。典型的には、脱ヨウ化水素化反応は、急速であり、完了のために約30分間~約3時間必要である。
【0072】
式Iの化合物は、水の添加後相分離によって、蒸留によって、又はこれらの組み合わせによって、脱ヨウ化水素化反応混合物から回収することができる。
【0073】
本発明の別の実施形態では、フルオロオレフィンは、環状フルオロオレフィン(シクロ-[CX=CY(CZW)-](式II)(式中、X、Y、Z、及びWは、独立して、H及びFから選択され、nは、2~5の整数である)を含む。一実施形態では、式IIのフルオロオレフィンは、分子中に少なくとも約3個の炭素原子を有する。別の実施形態では、式IIのフルオロオレフィンは、分子中に少なくとも約4個の炭素原子を有する。更に別の実施形態では、式IIのフルオロオレフィンは、分子中に少なくとも約5個の炭素原子を有する。式IIの代表的な環状フルオロオレフィンを表2に列挙する。
【0074】
【表2】
【0075】
本発明の冷媒組成物は、式I若しくは式IIの単一の化合物、例えば、表1又は表2中の化合物のうちの1つを含んでいてもよく、又は式I若しくは式IIの化合物の組み合わせを含んでいてもよい。
【0076】
別の実施形態では、フルオロオレフィンは、表3に列挙する化合物を含んでいてもよい。
【0077】
【表3-1】
【0078】
【表3-2】
【0079】
【表3-3】
【0080】
【表3-4】
【0081】
表2及び表3に列挙した化合物は、市販されているか、又は当該技術分野において既知のプロセスによって若しくは本明細書に記載のとおり調製することもできる。
【0082】
1,1,1,4,4-ペンタフルオロ-2-ブテンは、室温にて蒸気相中において固体KOHで脱フッ化水素化することによって、1,1,1,2,4,4-ヘキサフルオロブタン(CHFCHCHFCF)から調製することができる。1,1,1,2,4,4-ヘキサフルオロブタンの合成は、参照により本明細書に援用される米国特許第6,066,768号に記載されている。
【0083】
1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンは、約60℃において相間移動触媒を使用してKOHと反応させることによって、1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ヨードブタン(CFCHICHCF)から調製することができる。1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ヨードブタンの合成は、約200℃、自己圧力下で約8時間、ペルフルオロメチルヨージド(CFI)及び3,3,3-トリフルオロプロペン(CFCH=CH)を反応させることによって実施することができる。
【0084】
3,4,4,5,5,5-ヘキサフルオロ-2-ペンテンは、固体KOHを使用して又は200~300℃において炭素触媒で、1,1,1,2,2,3,3-ヘプタフルオロペンタン(CFCFCFCHCH)を脱フッ化水素化することによって調製することができる。1,1,1,2,2,3,3-ヘプタフルオロペンタンは、3,3,4,4,5,5,5-ヘプタフルオロ-1-ペンテン(CFCFCFCH=CH)を水素化することによって調製することができる。
【0085】
1,1,1,2,3,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンは、固体KOHを使用して、1,1,1,2,3,3,4-ヘプタフルオロブタン(CHFCFCHFCF)を脱フッ化水素化することによって調製することができる。
【0086】
1,1,1,2,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンは、固体KOHを使用して、1,1,1,2,2,4,4-ヘプタフルオロブタン(CHFCHCFCF)を脱フッ化水素化することによって調製することができる。
【0087】
1,1,1,3,4,4-ヘキサフルオロ2-ブテンは、固体KOHを使用して、1,1,1,3,3,4,4-ヘプタフルオロブタン(CFCHCFCHF)を脱フッ化水素化することによって調製することができる。
【0088】
1,1,1,2,4-ペンタフルオロ-2-ブテンは、固体KOHを使用して、1,1,1,2,2,3-ヘキサフルオロブタン(CHFCHCFCF)を脱フッ化水素化することによって調製することができる。
【0089】
1,1,1,3,4-ペンタフルオロ-2-ブテンは、固体KOHを使用して、1,1,1,3,3,4-ヘキサフルオロブタン(CFCHCFCHF)を脱フッ化水素化することによって調製することができる。
【0090】
1,1,1,3-テトラフルオロ-2-ブテンは、1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン(CFCHCFCH)を120℃でKOH水溶液と反応させることによって調製することができる。
【0091】
1,1,1,4,4,5,5,5-オクタフルオロ-2-ペンテンは、約60℃において相間移動触媒を使用してKOHと反応させることによって(CFCHICHCFCF)から調製することができる。4-ヨード-1,1,1,2,2,5,5,5-オクタフルオロペンタンの合成は、約200℃、自己圧力下で約8時間、ペルフルオロエチルヨージド(CFCFI)及び3,3,3-トリフルオロプロペンを反応させることによって実施することができる。
【0092】
1,1,1,2,2,5,5,6,6,6-デカフルオロ-3-ヘキセンは、約60℃において相間移動触媒を使用してKOHと反応させることによって、1,1,1,2,2,5,5,6,6,6-デカフルオロ-3-ヨードヘキサン(CFCFCHICHCFCF)から調製することができる。1,1,1,2,2,5,5,6,6,6-デカフルオロ-3-ヨードヘキサンの合成は、約200℃、自己圧力下で約8時間、ペルフルオロエチルヨージド(CFCFI)及び3,3,4,4,4-ペンタフルオロ-1-ブテン(CFCFCH=CH)を反応させることによって実施することができる。
【0093】
1,1,1,4,5,5,5-ヘプタフルオロ-4-(トリフルオロメチル)-2-ペンテンは、イソプロパノール中KOHで1,1,1,2,5,5,5-ヘプタフルオロ-4-ヨード-2-(トリフルオロメチル)-ペンタン(CFCHICHCF(CF)を脱フッ化水素化することによって調製することができる。CFCHICHCF(CFは、高温、例えば、約200℃で、(CFCFIをCFCH=CHと反応させることから作製される。
【0094】
1,1,1,4,4,5,5,6,6,6-デカフルオロ-2-ヘキセンは、1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン(CFCH=CHCF)をテトラフルオロエチレン(CF=CF)及び五フッ化アンチモン(SbF)と反応させることによって調製することができる。
【0095】
2,3,3,4,4-ペンタフルオロ-1-ブテンは、高温においてフッ化アルミナで1,1,2,2,3,3-ヘキサフルオロブタンを脱フッ化水素化することによって調製することができる。
【0096】
2,3,3,4,4,5,5,5-オクタフルオロ-1-ペンテンは、固体KOHで2,2,3,3,4,4,5,5,5-ノナフルオロペンタンを脱フッ化水素化することによって調製することができる。
【0097】
1,2,3,3,4,4,5,5-オクタフルオロ-1-ペンテンは、高温においてフッ化アルミナで2,2,3,3,4,4,5,5,5-ノナフルオロペンタンを脱フッ化水素化することによって調製することができる。
【0098】
2,3,3,3-テトラフルオロ-1-プロペンは、HCFC-244bb又はHFC-245ebのうちの少なくとも1つをHFO-1234yfに変換することによって調製することができる。
【0099】
1,3,3,3-テトラフルオロ-1-プロペンは、HFC-245faによってHFO-1234zeに調製することができる。
【0100】
式I、式II、表1、表2、及び表3の化合物の多くは、異なる立体配置の異性体又は立体異性体として存在する。特定の異性体が指定されていない場合、本発明は、全ての単一の立体配置の異性体、単一の立体異性体、又はこれらの任意の組み合わせを含むことを意図する。例えば、F11Eは、E異性体、Z異性体、又は任意の比率の両異性体の任意の組み合わせ若しくは混合物を表すことを意味する。別の例として、HFO-1225yeは、E異性体、Z異性体、又は任意の比率の両異性体の任意の組み合わせ若しくは混合物を表すことを意味する。
【0101】
具体的な一実施形態では、本発明の組成物のフルオロオレフィン成分は、HFO-1234yf及び/又はHFO-1234zeを含む。別の具体的な実施形態では、フルオロオレフィンは、99重量%超の純度、99.5重量%超の純度、場合によっては99.5~99.98パーセント超の純度を有するHFO-1234yf及び/又はHFO-1234zeを含む。別の具体的な実施形態では、フルオロレフィンは、少なくとも99.5重量%の1234yf又は1234zeと、0.5未満且つ0.0001重量%超、0.3未満、場合によっては0.2未満の他のフルオロオレフィンと、を含む。
【0102】
別の具体的な実施形態では、フルオロオレフィン成分は、米国特許第8,147,709号及び同第8,877,086号に開示される冷媒組成物を含み得、これらは参照により本明細書に援用される。
【0103】
別の具体的な実施形態では、フルオロオレフィン成分は、約99.5重量%超のHFO-1234yfと、HFO-1225ye、HFO-1243zf、HFO-1234ze、HFC-236ea、HFC-244bb、HFC-245fa、HFC-245eb、HFC-245cb、3,3,3-トリフルオロプロピン、及びこれらの混合物からなる群から選択される1つ以上の構成要素と、を含む。HFO-1225ye(E/Z異性体)の量は、重量基準で0超~約200ppm、約1~約150ppm、場合によっては約5~約50ppmの範囲であり得る。HFO1243zfの量は、約0.1~約250ppm、約10~約200ppm、場合によっては約15~約150ppmの範囲であり得る。HFO-1234ze(E異性体)の量は、約1~約1,500ppm、約5~約1,000ppm、場合によっては約50~500ppmの範囲であり得る。HFC-236eaの量は、約1~約50ppm、約5~約25、場合によっては約10~約20ppmの範囲であり得る。HFC-245fa、HFC-245eb及び/又はHFC-245cbの量は、約0~約20、約1~約15、場合によっては約5~約10ppmの範囲であり得る。3,3,3-トリフルオロプロピンの量は、約0~約500ppm、約1~約300ppm、場合によっては約5~約100ppmの範囲であり得る。
【0104】
別の実施形態では、フルオロオレフィン成分は、HFO-1234yfと、1114、1123、1131a、1131trans、1140、1214ya、1216、1224yd、1225ye(E)、1233zd(E)、1234ze(E)、1252、143a、225、245eb、254eb、263fb、CF3CF2I、236fa、142b、244cc、1223、1132a、2316、1327異性体、1336mzzE、1336異性体、1234zeZ、及び1224異性体からなる群から選択される少なくとも1つの追加の化合物とを含む。具体的な一実施形態では、フルオロオレフィン成分は、HFO-1234yfと、0超且つ約1重量%未満、約0.5重量%未満、場合によっては0.25重量%未満の追加の化合物を含む。更なる実施形態では、本発明の阻害剤は、HCFO-1233zd及びHCFO-1224ydのうちの少なくとも1つ、並びにHCFO-1233zd及びHCFO-1224ydのうちの少なくとも1つを含むブレンドの冷媒組成物と共に使用することができる。
【0105】
任意の好適な有効量の阻害剤を、少なくとも1つのフルオロオレフィンを含む前述の冷媒組成物において使用することができる。本明細書に記載のとおり、「有効量」という句は、少なくとも1つのフルオロオレフィンを含む組成物に添加されたときに、フルオロオレフィンが反応開始剤と相互作用しない、及び/又は劣化して、例えば、阻害剤を含まない組成物と比較して、冷却装置で使用したときに、性能を大幅に低下させることのない組成物が得られる、本発明の阻害剤の量を指し、液相フルオロオレフィン及び潤滑剤中に存在する。冷却装置の場合、そのような有効な阻害剤の量は、標準試験ASHRAE 97-2007(RA2017)の条件で試験する方法で決定することができる。本発明の特定の実施形態では、有効量は、その量の阻害剤が、少なくとも1つのフルオロオレフィン及び潤滑剤を含む冷媒組成物を含む成分として含まれるときに、過去に類似のシステムでどの冷媒が使用されていた可能性があるかに応じて、1,1,1,2-テトラフルオロエタン(R-134a)又は他の標準的な冷媒(R-12、R-22、R-502、R-507A、R-508、R401A、R401B、R402A、R402B、R408、R-410A、R-404A、R407C、R-413A、R-417A、R-422A、R-422B、R-422C、R-422D、R-423、R-114、R-11、R-113、R-123、R-124、R236fa、又はR-245fa)を含む組成物を作動流体として利用したかのように、当該少なくとも1つのフルオロオレフィン及び潤滑剤を含む冷媒組成物を利用する冷却装置に、同レベルの冷蔵性能及び冷却能力を発揮させることができると言うことができる。
【0106】
本発明は、有効量の前述の阻害剤のうちの少なくとも1つを用いる。任意の好適な有効量を用いることができるが、有効量は、本明細書に記載の少なくとも1つのフルオロオレフィンを含有する冷媒組成物を含む冷媒組成物の総重量に基づいて、約0.001重量%~約10重量%、約0.01重量%~約5重量%、約0.3重量%~約4重量%、約0.3重量%~約1重量%を構成する。一実施形態では、有効量は、重量基準で約10~約2,000ppm、約10~約1,000ppm、場合によっては約10~約500ppmの少なくとも1つの反応開始剤を含む。
【0107】
本発明の一実施形態では、阻害剤は、2つの液相、すなわち、液相フルオロオレフィンと潤滑剤との間に分配される。フルオロオレフィンの液相中に存在する阻害剤の量は、約10~約80重量%、約25~約75重量%、及び場合によっては約45~約60重量%の阻害剤の範囲であり得、残りの阻害剤は、主に潤滑剤相中に存在する。
【0108】
本発明の一実施形態は、少なくとも1つの酸化防止剤を更に含む、前述の冷媒組成物のうちのいずれかに関する。任意の好適な酸化剤を用いることができるが、好適な酸化剤の例は、ブチル化ヒドロキシトルエン、ブチル化ヒドロキシアニソール、三級ブチルヒドロキノン、没食子酸塩、2-フェニル-2-プロパノール、1-(2,4,5-トリヒドロキシフェニル)-1-ブタノン、フェノール、ビスフェノールメタン誘導体、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの構成要素を含む。酸化防止剤の量は、重量基準で約0.01~約5,000ppm、約0.03~約2,000ppm、場合によっては約0.05~約1,000ppmの範囲であり得る。具体的な一実施形態の例は、α-テルピネン及びリモネンを含む少なくとも1つの阻害剤と共に、前述の酸化防止剤を使用することに関する。具体的な一実施形態の例は、α-テルピネン及びリモネンのうちの少なくとも1つを含む阻害剤と共に、前述の酸化防止剤を使用することに関する。
【0109】
一実施形態では、本発明の前述の冷媒組成物は、フルオロオレフィン(本明細書に前述したような)、ヒドロフルオロカーボン、炭化水素、ジメチルエーテル、CFI、アンモニア、二酸化炭素(CO)、及びこれらの混合物、すなわち、この段落に列挙される追加の化合物のいずれかの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの追加の化合物を更に含んでいてもよい。追加の化合物の量は、約1~約90重量%、約5~約75%、場合によっては約10~約50%の範囲であり得る。
【0110】
一実施形態では、追加の化合物は、ヒドロフルオロカーボンを含む。本発明のヒドロフルオロカーボン(HFC)化合物は、炭素、水素、及びフッ素を含有する飽和化合物を含む。特に有用なのは、1~7個の炭素原子を有し、約-90℃~約80℃の標準沸点を有するヒドロフルオロカーボンである。ヒドロフルオロカーボンは、多くの供給源から入手可能な市販品であるか、又は当該技術分野において既知の方法によって調製することができる。代表的なヒドロフルオロカーボン化合物としては、フルオロメタン(CHF、HFC-41)、ジフルオロメタン(CH、HFC-32)、トリフルオロメタン(CHF、HFC-23)、ペンタフルオロエタン(CFCHF、HFC-125)、1,1,2,2-テトラフルオロエタン(CHFCHF、HFC-134)、1,1,1,2-テトラフルオロエタン(CFCHF、HFC-134a)、1,1,1-トリフルオロエタン(CFCH、HFC-143a)、1,1-ジフルオロエタン(CHFCH、HFC-152a)、フルオロエタン(CHCHF、HFC-161)、1,1,1,2,2,3,3-ヘプタフルオロプロパン(CFCFCHF、HFC-227ca)、1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン(CFCHFCF、HFC-227ea)、1,1,2,2,3,3,-ヘキサフルオロプロパン(CHFCFCHF、HFC-236ca)、1,1,1,2,2,3-ヘキサフルオロプロパン(CFCFCHF、HFC-236cb)、1,1,1,2,3,3-ヘキサフルオロプロパン(CFCHFCHF、HFC-236ea)、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン(CFCHCF、HFC-236fa)、1,1,2,2,3-ペンタフルオロプロパン(CHFCFCHF、HFC-245ca)、1,1,1,2,2-ペンタフルオロプロパン(CFCFCH、HFC-245cb)、1,1,2,3,3-ペンタフルオロプロパン(CHFCHFCHF、HFC-245ea)、1,1,1,2,3-ペンタフルオロプロパン(CFCHFCHF、HFC-245eb)、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン(CFCHCHF、HFC-245fa)、1,2,2,3-テトラフルオロプロパン(CHFCFCHF、HFC-254ca)、1,1,2,2-テトラフルオロプロパン(CHFCFCH、HFC-254cb)、1,1,2,3-テトラフルオロプロパン(CHFCHFCHF、HFC-254ea)、1,1,1,2-テトラフルオロプロパン(CFCHFCH、HFC-254eb)、1,1,3,3-テトラフルオロプロパン(CHFCHCHF、HFC-254fa)、1,1,1,3-テトラフルオロプロパン(CFCHCHF、HFC-254fb)、1,1,1-トリフルオロプロパン(CFCHCH、HFC-263fb)、2,2-ジフルオロプロパン(CHCFCH、HFC-272ca)、1,2-ジフルオロプロパン(CHFCHFCH、HFC-272ea)、1,3-ジフルオロプロパン(CHFCHCHF、HFC-272fa)、1,1-ジフルオロプロパン(CHFCHCH、HFC-272fb)、2-フルオロプロパン(CHCHFCH、HFC-281ea)、1-フルオロプロパン(CHFCHCH、HFC-281fa)、1,1,2,2,3,3,4,4-オクタフルオロブタン(CHFCFCFCHF、HFC-338pcc)、1,1,1,2,2,4,4,4-オクタフルオロブタン(CFCHCFCF、HFC-338mf)、1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン(CFCHCHF、HFC-365mfc)、1,1,1,2,3,4,4,5,5,5-デカフルオロペンタン(CFCHFCHFCFCF、HFC-43-10mee)、及び1,1,1,2,2,3,4,5,5,6,6,7,7,7-テトラデカフルオロヘプタン(CFCFCHFCHFCFCFCF、HFC-63-14mee)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0111】
別の実施形態では、追加の化合物は、炭化水素を含む。本発明の炭化水素は、炭素及び水素のみを有する化合物を含む。特に、3~7個の炭素原子を有する化合物が有用である。炭化水素は、多数の化学供給元を介して市販されている。代表的な炭化水素としては、プロパン、n-ブタン、イソブタン、シクロブタン、n-ペンタン、2-メチルブタン、2,2-ジメチルプロパン、シクロペンタン、n-ヘキサン、2-メチルペンタン、2,2-ジメチルブタン、2,3-ジメチルブタン、3-メチルペンタン、シクロヘキサン、n-ヘプタン、及びシクロヘプタンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0112】
別の実施形態では、追加の化合物は、ジメチルエーテル(DME、CHOCHなどのヘテロ原子を含有している炭化水素を含む。DMEは市販されている。
【0113】
別の実施形態では、追加の化合物は、様々な供給源から市販されているか、又は当該技術分野において既知の方法によって調製することができるヨードトリフルオロメタン(CFI)を含む。
【0114】
別の実施形態では、追加の化合物は、様々な供給源から市販されているか、又は当該技術分野において既知の方法によって調製することができる二酸化炭素(CO)を含む。一般に、追加の化合物の量が、液相オレオレフィンと潤滑剤との間の阻害剤の前述の分配を排除しない限り、任意の好適な追加化合物を用いることができる。
【0115】
別の実施形態では、本発明の前述の冷媒組成物は、追加の化合物を実質的に含まず、特に、ジメチルエーテル、CF3I、アンモニア、及び二酸化炭素のうちの少なくとも1つを実質的に含まない。この実施形態の好ましい一態様では、前述の冷媒組成物は、CF3Iを実質的に含まない。「追加の化合物を実質的に含まない」とは、冷媒組成物及び阻害剤が、約10%未満、通常約5%未満、場合によっては0%の追加の化合物を含むことを意味する。
【0116】
特に注目すべきは、HFO-1234yf及び/又はHFO-1234zeと、HFO-1225ye及びHFC-32;HFO-1225ye及びHFC-134a;HFO-1225ye、HFC-134a、及びHFC-32;HFO-1225ye及びHFO-1234yf;HFO-1225ye、HFC-32;HFO-1225ye、HFO-1225ye、及びHFC-125を含む追加の化合物と、を含む冷媒組成物である。更なる冷媒組成物は、HFO-1234yf及びHFO-1234zeと、i)134a、32、及び125;ii)134a;iii)227ea;iv)236fa、並びにv)134のうちの少なくとも1つとのブレンドを含む。
【0117】
本発明の他の実施形態では、冷媒組成物のフルオロオレフィン成分は、少なくとも約99質量%のHFO-1234yfと、0超であるが1質量%未満の、HFC-134a、HFO-1243zf、HFO-1225ye、HFO-1234ze、3,3,3-トリフルオロ-1-プロピン、HCFO-1233xf、HFC-245cb、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの構成要素と、を含む。
【0118】
本発明の他の実施形態では、冷媒組成物のフルオロオレフィン成分は、少なくとも約99質量%のHFO-1234zeと、0超であるが1質量%未満の、HFO-1234yf、HFC-245fa、HFC-236fa、HFO-1234ye、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの構成要素と、を含む。
【0119】
本発明の他の実施形態では、冷媒組成物のフルオロオレフィン成分は、少なくとも1つのヒドロフルオロカーボンとブレンドされた前述のフルオロオレフィンのうちの1つ以上を含む。好適なヒドロフルオロカーボンの例は、HFC-32、HFC-125、HFC-134a、HFC-152a、236fa、及びHFC-227eaからなる群から選択される少なくとも1つの構成要素を含む。ヒドロフルオロカーボンの量は、約25~約75、約30~約60、場合によっては約30~約50の範囲であり得る。具体的な一実施形態では、前述の量のヒドロフルオロカーボンを、HFO-1234yf及びHFO-1234zeのうちの少なくとも1つとブレンドする。
【0120】
所望される場合、ブレンドされた組成物は、HCC-40、HCFC-22、CFC-115、HCFC-124、HCFC-1122、及びCFC-1113からなる群から選択される少なくとも1つの追加の構成要素を更に含み得る。追加の構成要素の量は、0超~約5重量%、約0~約2重量%、場合によっては約0~約0.5重量%を構成し得る。具体的な一実施形態では、前述の量の追加の構成要素を、HFO-1234yf及びHFO-1234zeのうちの少なくとも1つとブレンドする。別の具体的な実施形態では、前述の量の追加の構成要素を、HFO-1234yf及びHFO-1234zeのうちの少なくとも1つ、並びにHFC-32、HFC-125、HFC-134a、HFC-152a、236fa及びHFC-227eaからなる群から選択される少なくとも1つのヒドロフルオロカーボンとブレンドし、場合によっては、二酸化炭素と合わせる。
【0121】
冷媒組成物の潤滑剤成分は、冷蔵又は空調装置と共に使用するのに好適なものを含むことができる。これらの潤滑剤の中でも、クロロフルオロカーボン冷媒を利用する圧縮冷凍装置において従来用いられているものである。このような潤滑剤及びその特性は、参照により本明細書に援用される1990 ASHRAE Handbook,Refrigeration Systems and Applications、第8章、表題「Lubricants in Refrigeration Systems」、8.1~8.21頁で論じられている。本発明の潤滑剤は、圧縮冷蔵潤滑の分野において「鉱油」として一般的に知られているものを含み得る。鉱油は、パラフィン(すなわち、直鎖状及び分枝状炭素鎖の飽和炭化水素)、ナフテン(すなわち、環状又は環構造飽和炭化水素、パラフィンであり得る)、並びに芳香族(すなわち、交互二重結合を特徴とする1つ以上の環を含有する不飽和環状炭化水素)を含む。本発明の潤滑剤は、圧縮冷蔵潤滑の分野において「合成油」として一般的に知られているものを更に含む。合成油は、アルキルアリール(すなわち、直鎖状及び分枝状アルキルアルキルベンゼン)、合成パラフィン及びナフテン、シリコーン、並びにポリ-アルファ-オレフィンを含む。本発明の代表的な従来の潤滑剤は、市販されているBVM 100 N(BVA Oilsによって販売されているパラフィン系鉱油)、Crompton Co.によって商標名Suniso(登録商標)3GS及びSuniso(登録商標)5GSとして市販されているナフテン系鉱油、商標名Sontex(登録商標)372LTとしてPennzoilから市販されているナフテン系鉱油、商標名Calumet(登録商標)RO-30としてCalumet Lubricantsから市販されているナフテン系鉱油、商標名Zerol(登録商標)75、Zerol(登録商標)150、及びZerol(登録商標)500としてShrieve Chemicalsから市販されている直鎖状アルキルベンゼン、並びにHAB22としてNippon Oilによって販売されている分枝状アルキルベンゼンである。
【0122】
別の実施形態では、本発明の冷媒組成物の潤滑剤成分は、ヒドロフルオロカーボン冷媒と共に使用するために設計されており、且つ圧縮冷蔵及び空調装置の動作条件下で本発明の冷媒及び阻害剤と混和できるものを含むことができる。このような潤滑剤及びその特性は、「Synthetic Lubricants and High-Performance Fluids」、R.L.Shubkin、Marcel Dekker編、1993年で論じられている。このような潤滑剤としては、Castrol(登録商標)100(Castrol,United Kingdom)などのポリオールエステル(POE)、Dow(Dow Chemical,Midland,Michigan)製のRL-488Aなどのポリアルキレングリコール(PAG)、及びポリビニルエーテル(PVE)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0123】
本発明の潤滑剤は、所与の圧縮機の要件、及び潤滑剤が曝されるであろう環境を考慮することによって選択される。潤滑剤の量は、約1~約50、約1~約20、場合によっては約1~約3の範囲であり得る。具体的な一実施形態では、前述の冷媒組成物は、内燃機関を有する自動車用A/Cシステムで使用するためのPAG潤滑剤と組み合わされる。別の具体的な実施形態では、前述の冷媒組成物は、電気又はハイブリッド電気ドライブトレインを有する自動車用A/Cシステムで使用するためにPOE潤滑剤と組み合わされる。
【0124】
阻害剤は、潤滑剤中に阻害剤の一部が存在するように、潤滑剤中に十分な混和性を有する。潤滑剤中に存在する阻害剤の量は、冷媒組成物が作動流体又は伝熱媒体として用いられるときに変化し得る。
【0125】
本発明の一実施形態では、本発明の阻害剤に加えて、冷媒組成物は、冷媒及び空調システムの寿命並びに圧縮機の耐久性を改善することができる少なくとも1つの添加剤を含み得ることが望ましい。本発明の一態様では、前述の冷媒組成物は、酸スカベンジャ、性能向上剤、及び火炎抑制剤からなる群から選択される少なくとも1つの構成要素を含む。
【0126】
冷媒及びA/Cの寿命並びに圧縮機の耐久性を改善することができる添加剤が望ましい。本発明の一態様では、本発明の冷媒組成物を使用して、A/Cシステムの中に潤滑剤、並びに他の添加剤、例えば、a)酸スカベンジャ、b)性能向上剤、及びc)火炎抑制剤を導入する。
【0127】
酸スカベンジャは、シロキサン、活性化芳香族化合物、又は両方の組み合わせを含んでもよい。参照によって本明細書に援用されるSerranoら(米国特許出願公開第2011/0272624(A1)号の段落38)には、シロキサンはシロキシ官能基を有する任意の分子であり得ることが開示されている。シロキサンは、アルキルシロキサン、アリールシロキサン、又はアリール及びアルキル置換基の混合物を含有するシロキサンを含んでもよい。例えば、シロキサンは、ジアルキルシロキサン又はポリジアルキルシロキサンを含むアルキルシロキサンであってよい。好ましいシロキサンとしては、2つのケイ素原子と結合した酸素原子、すなわち構造:SiOSiを有する基が挙げられる。例えば、シロキサンは、式IV:R1[Si(R2R3)4O]nSi(R2R3)R4(式中、nは1以上である)のシロキサンであってよい。式IVのシロキサンは、好ましくは2以上、より好ましくは3以上(例えば、約4以上)であるnを有する。式IVのシロキサンは、好ましくは約30以下、より好ましくは約12以下、最も好ましくは約7以下であるnを有する。好ましくは、R4基はアリール基又はアルキル基である。好ましくは、R2基は、アリール基若しくはアルキル基、又はこれらの混合物である。好ましくは、R3基は、アリール基若しくはアルキル基、又はこれらの混合物である。好ましくは、R4基はアリール基又はアルキル基である。好ましくは、R1、R2、R3、R4、又はこれらの任意の組み合わせは水素ではない。分子内のR2基は、同じであっても異なっていてもよい。好ましくは、分子内のR2基は同じである。分子内のR2基は、R3基と同じであっても異なっていてもよい。好ましくは、分子内のR2基とR3基とは同じである。好ましいシロキサンとしては、R1、R2、R3、R4、R5、又はこれらの任意の組み合わせが、メチル、エチル、プロピル、若しくはブチル基、又はこれらの任意の組み合わせである、式IVのシロキサンが挙げられる。使用されてもよい例示的なシロキサンとしては、ヘキサメチルジシロキサン、ポリジメチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン、ドデカメチルペンタシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、又はこれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0128】
先行して援用されるSerranoらから、本発明の一態様では、シロキサンは、約1~約12個の炭素原子を含有するアルキルシロキサン、例えば、ヘキサメチルジシロキサンであることに留意する。シロキサンはまた、ポリジアルキルシロキサンなどのポリマーであってもよく、ここでアルキル基は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、又はこれらの任意の組み合わせである。好適なポリジアルキルシロキサンは、約100~約10,000の分子量を有する。非常に好ましいシロキサンとしては、ヘキサメチルジシロキサン、ポリジメチルシロキサン、及びこれらの組み合わせが挙げられる。シロキサンは、ポリジメチルシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、又はこれらの組み合わせから本質的になっていてよい。
【0129】
活性化芳香族化合物は、フリーデル・クラフツ付加反応に向けて活性化された任意の芳香族分子、又はその混合物であってよい。フリーデル・クラフツ付加反応に向けて活性化された芳香族分子は、鉱酸と付加反応することができる任意の芳香族分子であると定義される。特に、適用環境(ACシステム)において又はASHRAE 97:2007「Sealed Glass Tube Method to Test the Chemical Stability of Materials for Use within Refrigerant Systems」の熱安定化試験中のいずれかに鉱酸と付加反応することができる任意の芳香族分子である。このような分子又は化合物は、典型的には、以下の基、すなわちNH2、NHR、NRz、ADH、AD、NHCOCH3、NHCOR、4OCH3、OR、CH3、4C2H5、R、又はC6H5(式中、Rは炭化水素(好ましくは、約1~約100個の炭素原子を含有する炭化水素)である)のうちの1つで芳香環の水素原子を置換することによって活性化される。活性化された芳香族分子は、酸素原子(すなわち、アルコール又はエーテル基の酸素原子)が芳香族基に直接結合しているアルコール又はエーテルであってもよい。活性化された芳香族分子は、窒素原子(すなわち、アミン基の窒素原子)が芳香族基に直接結合しているアミンであってもよい。例えば、活性化芳香族分子は式ArXRnを有していてもよく、式中XはO(すなわち酸素)又はN(すなわち窒素)であり、XがOの場合、nは1であり、XがNの場合、nは2であり、Arは芳香族基(すなわちC6H5基)であり、RはH又は炭素含有基であってもよく、n:2のとき、R基は同一であっても異なっていてもよい。例えば、RはH(すなわち水素)、Ar、アルキル基、又はこれらの任意の組み合わせであってよく、本明細書における教示に係る冷媒組成物において用いられてもよい例示的な活性化された芳香族分子としては、ジフェニルオキシド(すなわち、ジフェニルエーテル)、メチルフェニルエーテル(例えば、アニソール)、エチルフェニルエーテル、ブチルフェニルエーテル、又はこれらの任意の組み合わせが挙げられる。フリーデル・クラフツ付加反応に向けて活性化された非常に好ましい一芳香族分子は、ジフェニルオキシドである。
【0130】
先行して参照によって援用されるSerranoらから、酸スカベンジャ(例えば、活性化された芳香族化合物、シロキサン、又は両方)は、任意の濃度で存在してよく、その結果、全酸価が比較的低くなる、全ハロゲン化物濃度が比較的低くなる、全有機酸濃度が比較的低くなる、又はこれらの任意の組み合わせになる。好ましくは、酸スカベンジャは、冷媒組成物の総重量に基づいて、約0.0050重量%超、より好ましくは約0.05重量%超、更により好ましくは約0.1重量%超(例えば、約0.5重量%超)の濃度で存在する。酸スカベンジャは、冷媒組成物の総重量に基づいて、好ましくは約3重量%未満、より好ましくは約2.5重量%未満、最もより好ましくは約2重量%未満(例えば約1.8重量%未満)の濃度で存在する。
【0131】
冷媒組成物中に含まれてもよく、且つ好ましくは冷媒組成物から排除される酸スカベンジャの追加例としては、フェニルグリシジルエーテル、アルキルグリシジルエーテル、アルキレングリコールグリシジルエーテル、シクロヘキセンオキシド、オトレノキシド(otolenoxides)、又はエポキシ化大豆油などのエポキシ化合物のうちの1つ以上などの、Kaneko(参照により本明細書に明示的に援用される、米国特許出願公開第2007/0290164号として公開された、米国特許出願第11/575,256号のパラグラフ42)によって記載されるもの、及びSinghら(参照により本明細書に明示的に援用される、米国特許出願公開第2006/0116310号として公開された、米国特許出願第11/250,219号のパラグラフ34~42)によって記載されるものが挙げられる。
【0132】
好ましい添加剤としては、米国特許第5,152,926号、同第4,755,316号に記載されているものが挙げられ、これらは参照により本明細書に援用される。特に、好ましい極圧添加剤としては、(A)トリルトリアゾール若しくはその置換誘導体と、(B)アミン(例えば、Jeffamine M-600)と、(C)(i)エトキシ化リン酸エステル(例えば、Antara LP-700型)若しくは(ii)リン酸アルコール(例えば、ZELEC 3337型)若しくは(iii)亜鉛ジアルキルジチオリン酸(例えば、Lubrizol 5139、5604、5178、又は5186型)若しくは(iv)メルカプトベンゾチアゾール若しくは(v)2,5-ジメルカプト-1,3,4-トリアジアゾール誘導体(例えば、Curvan 826)又はこれらの混合物である第3の成分との混合物が挙げられる。使用され得る添加剤の追加的な例は、米国特許第5,976,399号(Schnur,5:12-6:51、参照により本明細書に援用される)に記載されている。
【0133】
酸価は、ASTM D664-01に従ってmg KOH/gの単位で測定される。全ハロゲン化物濃度、フッ素イオン濃度、及び全有機酸濃度は、イオンクロマトグラフィによって測定される。冷媒系の化学安定性は、ASHRAE 97:2007(RA2017)「Sealed Glass Tube Method to Test the Chemical Stability of Materials for Use within Refrigerant Systems」に従って測定される。潤滑油の粘度は、ASTM D-7042に従って40℃で試験される。
【0134】
Mouliら(国際公開第2008/027595号及び同第2009/042847号)には、フルオロオレフィンを含有する冷媒組成物における安定剤としてのアルキルシランの使用が教示されている。リン酸塩、亜リン酸塩、エポキシド、及びフェノール系添加剤もまた、特定の冷媒組成物において用いられている。これらは、例えばKaneko(米国特許出願公開第2007/0290164号として公開された、米国特許出願第11/575,256号)、及びSinghら(米国特許出願公開第2006/0116310号として公開された、米国特許出願第11/250,219号)によって説明されている。これら上述の出願は全て、参照によって本明細書に明示的に援用される。
【0135】
好ましい火炎抑制剤としては、同様に参照により援用され、特許出願「Refrigerant compositions comprising fluoroolefins and uses thereof(国際公開第2009/018117(A1)号)」に記載されている、HFC-125及び/又はKrytox(登録商標)潤滑油などのフッ素化生成物と共に、参照により援用される特許出願「Refrigerant compositions containing fluorine substituted olefins(カナダ特許第2557873(A1)号」に記載されているものが挙げられる。
【0136】
本発明の冷媒組成物は、所望の量の個々の成分を合わせるための任意の簡便な方法によって調製することができる。好ましい方法は、所望の成分量を計量し、その後、適切な容器内で成分を混ぜ合わせることである。所望される場合、撹拌を用いてもよい。
【0137】
本発明は更に、少なくとも1つのフルオロオレフィンと、少なくとも1つの潤滑剤と、有効量の阻害剤と、を含む、冷媒組成物を凝縮させ、その後、冷却される本体付近で当該組成物を蒸発させることを含む、冷却を生じさせるためのプロセスに関する。
【0138】
冷却される本体は、冷蔵又は空調を必要とする任意の空間、場所、又は物体であってよい。固定式用途では、本体は、構造、すなわち、住宅若しくは商業構造の内部、又は食品若しくは医薬品などの腐敗しやすいもののための保管場所に存在していてよい。可搬式冷蔵用途では、本体は、道路、鉄道、海上、又は航空用の輸送ユニットに組み込まれていてよい。特定の冷蔵システムは、任意の可動キャリアに対して独立して動作し、これらは「インターモーダル」システムとして知られている。かかる複合一貫輸送システムとしては、「コンテナ」(海上/陸上複合輸送)、並びに「スワップボディ」(道路及び鉄道複合輸送)が挙げられる。
【0139】
本発明は更に、加熱される本体付近で、少なくとも1つのフルオロオレフィンと、少なくとも1つの潤滑剤と、有効量の、リモネン及びα-テルピネンのうちの少なくとも1つを含む阻害剤と、を含む、冷媒組成物を凝縮させ、その後、当該組成物を蒸発させることを含む、加熱を生じさせるためのプロセスに関する。
【0140】
加熱される物体は、熱を必要とする任意の空間、場所、又は物体であってよい。これらは、冷却される本体と同様の方法で住宅又は商業用のいずれかの構造の内部に存在していてよい。更に、冷却について説明したような可搬式ユニットは、加熱を必要とするものと同様であってよい。特定の輸送ユニットは、輸送される材料が輸送コンテナ内で固化するのを防止するために加熱を必要とする。
【0141】
本発明の別の実施形態は、前述の冷媒組成物を含む空調又は冷凍装置に関する。
【0142】
本発明の別の実施形態は、気相及び/又は液相中の酸素及び/又は水濃度が約25℃の温度で約3体積ppm~約3,000体積ppm未満、約5体積ppm~約1,000体積ppm未満、場合によっては約5体積ppm~約500体積ppm未満の範囲である密閉容器内で気相及び/又は液相中に前述の冷媒組成物を保管することに関する。
【0143】
前述の冷媒組成物を保管するためのコンテナは、気相及び液相を維持しながら冷媒組成物を密封することができる任意の好適な材料及び設計で構築することができる。好適なコンテナの例は、タンク、充填シリンダ、及び二次充填シリンダなどの耐圧コンテナを含む。コンテナは、炭素鋼、マンガン鋼、クロム-モリブデン鋼、特に低合金鋼、ステンレス鋼、場合によってはアルミニウム合金などの任意の好適な材料から構築することができる。コンテナは、可燃性物質を分配するのに好適な穿孔上部又は弁を備えていてよい。
【0144】
本発明の冷媒組成物を調製するために任意の好適な方法を用いることができるが、このような方法の例としては、好適な方法の中でも特に、前述の阻害剤を前述のフルオロオレフィン組成物とブレンドすること、ライン及び容器を、阻害剤(例えば、窒素キャリアを含む阻害剤、又は本発明の安定化組成物)を含む材料でパージすること、及び潤滑剤と組み合わせることが挙げられる。
【0145】
一実施形態では、本発明の組成物は、阻害剤をフルオロオレフィン成分及び潤滑剤のうちの少なくとも1つに添加し、次いでフルオロオレフィン成分を潤滑剤と組み合わせることによって調製される。この場合、阻害剤は、フルオロオレフィン又は潤滑剤のうちの1つのみに添加され、次いでフルオロオレフィンと潤滑剤とが組み合わされ、阻害剤は、阻害剤がフルオロオレフィン及び潤滑剤中に存在するように分配される。別の実施形態では、阻害剤は、少なくとも1つのフルオロオレフィン成分及び少なくとも1つの潤滑剤を含む組成物に添加することができる。
【0146】
以下の実施例は、本発明の特定の実施形態を例示するために提供され、添付の特許請求の範囲を限定するものではない。実施例1は、フルオロオレフィンを有する阻害剤の有効性を示しており、実施例2は、フルオロオレフィン及び潤滑剤を有する阻害剤の有効性を示しており、実施例3は、三元R-1234yf/d-リモネン/潤滑剤(POE32-3MAFとして市販されている)システムによる相平衡及びACサイクル性能を示している。
【実施例1】
【0147】
HFO-1234yf(少なくとも99.5重量%の純度を有する30g)と反応開始剤との混合物(且つ阻害剤あり、及び阻害剤なし)を、表4に示す温度及び時間で210mLの振盪管内で加熱した。振盪管を、ポリマー形成について、従来の方法に従ってNMRを使用して、目視検査した。ポリマーはまた、従来のIR法を用いることによって検出することもできる。
【0148】
HFO-1234yfは、99.7重量%のHFO-1234yfと、1,000ppmのHFO-1234zeと、150ppのHFO-1225yeZと、3ppmのトリフルオロプロピンとを含んでおり、残りは、混合物の冷凍性能又は阻害剤の活性に影響を及ぼさない化合物を含む。
【0149】
【表4】
【実施例2】
【0150】
HFO-1234yf(実施例1の組成物を有する30g)と、少なくとも1つの追加の化合物と、反応開始剤との混合物を含む(且つ阻害剤を含まない)冷媒ブレンドを、表5に示す温度及び時間で210mLの振盪管内で加熱した。実施例1~6は、Opteon(商標)XP-10冷媒(R513a)及び市販の潤滑剤を含む阻害剤を評価する。実施例7~12は、Opteon(商標)XP-40冷媒(R449a)及び市販の潤滑剤を含む阻害剤を評価する。実施例13~18は、HFO-1234yf及び市販の潤滑剤を含む阻害剤を評価する。XP10冷媒は、56重量%のHFO1234yf及び44重量%のHFC-134aを含み、XP40冷媒は、24.3重量%のR32、24.7重量%のR125、25.3重量%の1234yf、及び25.7重量%の134aを含む。XP10及びXP40冷媒は、Chemours Companyから市販されている。振盪管を、ポリマー形成について、及びNMRを使用することによって、目視検査した。以下に報告するデータは、重量基準のppmである。
【0151】
【表5】
【実施例3】
【0152】
二相挙動
R-1234yf/d-リモネン/潤滑剤(POE32-3MAF)システムの相挙動及びd-リモネン分配を分析するために、NRTL二元相互作用パラメータを以下の二元データに適合させた。
1)-25~75℃のR-1234yf/POE32-3MAF VLE溶解度データを測定した。NRTL二元相互作用パラメータは、VLEに適合し、VLLEの予測をもたらし、液-液相分離は、組成物ドメインのR-1234yfリッチ側に向かって予測される。適合品質は、データからの2.1% AARDの偏差と優れており、図1のデータと共に示されている。
2)R-1234yf/d-リモネン-VLEバブルポイントデータを50℃で測定し、NRTL二元相互作用パラメータを、2.1% AARDの精度に適合する実験データに適合させた。組成物空間のd-リモネン系領域では、ラウルの法則からの負の偏差は、0~約9mol%のd-リモネンで観察され、R-1234yf/d-リモネン相互作用がR-1234yf/R-1234yf及びd-リモネン/d-リモネン相互作用よりも強いことを示している。これは、予想される挙動ではなく、d-リモネン活性は、液体R-1234yf付近でより局所的に優勢になる。これらのデータ及びモデルフィットを図2に示す。ラウルの法則からの負の偏差を図3に示す。
3)d-リモネン/POE32-3MAPを、VLE挙動を計算するために、コンピュータソフトウェアベースのパラメータ化を使用して決定した。計算されたVLEを図4に示す。
【0153】
三相挙動
実験的バブルポイント圧力を、R-1234yfの重量基準で1000ppmのd-リモネンの二元混合物を用いた様々なPOE32-3MAF含有量で実験的に測定した。NRTLモデルを使用して、この三元系のLLEを計算した。次に、図5に示すように、R-1234yf/POE32-3MAF、d-リモネン/POE32-3MAF及びR-1234yf/d-リモネンの二元相互作用パラメータデータ(図1~3に示す)を使用して、R-1234yf/d-リモネン/POE32-3MAF系の三元相挙動を計算している。
【0154】
図1~5に示されるデータ及び計算を用いて、1,000ppm未満及び1,000ppm超の量のd-リモネンの相挙動(分配影響)及びA/C性能を決定することができる。
【0155】
図1~5に示されるデータ及び計算はまた、蒸気がd-リモネンを実質的に含まないR-1234yfになるようなになるようなd-リモネンの気液平衡分配を示しており、d-リモネンは、蒸発器又は圧縮機油サンプのいずれかにおいて主に液相中に残存し、A/Cシステム内を循環する蒸気は、d-リモネンを実質的に含まない。結果として、d-リモネンが主に液相中に存在するため、d-リモネンは、A/Cシステムの電力効率又は容量に有意な影響を及ぼさない。
【0156】
特定の態様、実施形態、及び原理を上に記載してきたが、本明細書は例示のためだけに作成されたものであり、本発明又は添付の特許請求の範囲の範囲を限定するものではないと理解される。前述の様々な態様、実施形態、及び原理は、単独で、及び互いに組み合わせて使用することができる。
図1
図2
図3
図4
図5