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特許7448508信号処理装置、RoF送受信機、光ファイバ無線システム、及び信号処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】信号処理装置、RoF送受信機、光ファイバ無線システム、及び信号処理方法
(51)【国際特許分類】
   H04B 7/005 20060101AFI20240305BHJP
   H04B 7/15 20060101ALI20240305BHJP
   H04B 10/2575 20130101ALI20240305BHJP
【FI】
H04B7/005
H04B7/15
H04B10/2575 120
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021144438
(22)【出願日】2021-09-06
(65)【公開番号】P2023037699
(43)【公開日】2023-03-16
【審査請求日】2023-01-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 敏訓
(72)【発明者】
【氏名】相葉 孝充
【審査官】前田 典之
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-098130(JP,A)
【文献】特開2005-354336(JP,A)
【文献】特開平11-225113(JP,A)
【文献】特開2013-046388(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/005
H04B 7/15
H04B 10/2575
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線信号を送受信する送受信機に備えられた信号処理装置であって、
送信信号を分岐し、分岐信号を取得する分岐部と、
前記分岐信号を検波し、前記分岐信号の電圧値を取得する検波部と、
前記分岐信号の前記電圧値を、あらかじめ記憶部に記憶された閾値電圧と比較し、前記分岐信号の前記電圧値が、前記閾値電圧以上であるか否かを判定する判定部と、
前記判定部で判定された判定結果に応じて、前記送受信機の受信信号用増幅器の電源のオンオフを制御する電源制御部と、を備え
前記閾値電圧は、前記送受信機を備える光ファイバ無線システムの最小受信電力値に前記光ファイバ無線システムの伝送経路の利得を加えた閾値基準電力値を、あらかじめ定められた入力電力及び出力電圧の対応関係に基づいて変換した値である信号処理装置。
【請求項2】
基地局と、端末との間の無線通信における無線信号を、光ファイバ伝送路を介して中継伝送するためのRoF(Radio over Fiber)送受信機であって、
前記無線信号を送信及び/又は受信するアンテナ部と、
受信信号を増幅し、第1電気信号を生成する第1増幅器と、
前記第1増幅器で増幅された前記第1電気信号を送信光信号に変換し、前記光ファイバ伝送路に前記送信光信号を送信する電気光変換部と、
前記光ファイバ伝送路を介して受信した受信光信号を第2電気信号に変換する光電気変換部と、
前記第2電気信号を増幅し、送信信号を生成する第2増幅器と、
前記第2増幅器で増幅された前記送信信号を入力する信号処理装置と、を備え、
前記信号処理装置は、
前記送信信号を分岐し、分岐信号を取得する分岐部と、
前記分岐信号を検波し、前記分岐信号の電圧値を取得する検波部と、
前記分岐信号の前記電圧値を、あらかじめ記憶部に記憶された閾値電圧と比較し、前記分岐信号の前記電圧値が、前記閾値電圧以上であるか否かを判定する判定部と、
前記判定部で判定された判定結果に応じて、前記第1増幅器の電源のオンオフを制御する電源制御部と、
を有し、
前記閾値電圧は、前記送受信機を備える光ファイバ無線システムの最小受信電力値に前記光ファイバ無線システムの伝送経路の利得を加えた閾値基準電力値を、あらかじめ定められた入力電力及び出力電圧の対応関係に基づいて変換した値であるRoF送受信機。
【請求項3】
請求項に記載されたRoF送受信機であって、前記基地局と無線通信を行う第1送受信機と、端末と無線通信を行う第2送受信機と、を備え、
前記第1送受信機、及び前記第2送受信機は、前記光ファイバ伝送路を介して接続される光ファイバ無線システム。
【請求項4】
コンピュータによって実行される信号処理方法であって、
送信信号を分岐し、分岐信号を取得するステップと、
前記分岐信号を検波し、前記分岐信号の電圧値を取得するステップと、
前記分岐信号の前記電圧値を、あらかじめ記憶部に記憶された閾値電圧と比較し、前記分岐信号の前記電圧値が、前記閾値電圧以上であるか否かを判定するステップと、
判定された判定結果に応じて、受信信号用増幅器の電源のオンオフを制御するステップと、を備え
前記閾値電圧は、送受信機を備える光ファイバ無線システムの最小受信電力値に前記光ファイバ無線システムの伝送経路の利得を加えた閾値基準電力値を、あらかじめ定められた入力電力及び出力電圧の対応関係に基づいて変換した値である信号処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、信号処理装置、RoF送受信機、光ファイバ無線システム、及び信号処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、無線信号を遠方へ中継伝送するための手段として、光ファイバ伝送路を介して無線信号を送受信する光ファイバ無線(RoF:Radio over Fiber)技術が提案されている。この光ファイバ無線においては、送信アンテナから送信された信号の一部が、直接的又は反射等により間接的に受信アンテナに同一周波数で入力される、いわゆる信号の回り込みが発生する場合がある。特許文献1には、回り込み光ファイバ無線信号による信号品質の劣化を防止するための回り込み信号除去機が開示されている。特許文献1に開示された回り込み信号除去機は、送信機から送出する信号の一部を受信側に抑圧信号として戻し、回り込みが発生した受信信号と合成することで発信を抑制する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-153945号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された回り込み信号除去機は、回り込んだ信号のレベルと遅延時間とをそれぞれモニタリングする必要があり、さらに、周波数に応じて遅延回路を設ける必要がある。すなわち、従来の回り込み信号除去機においては、回路規模や計算処理数が膨大になることでコストが増大し、さらに、信号処理に伴う遅延が発生する。
【0005】
本発明は、このような従来技術が有する課題に鑑みてなされたものである。そして本発明の目的は、簡易な構成で回り込み信号を抑圧することが可能な信号処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様に係る信号処理装置は、無線信号を送受信する送受信機に備えられた信号処理装置であって、送信信号を分岐し、分岐信号を取得する分岐部と、分岐信号を検波し、分岐信号の電圧値を取得する検波部と、分岐信号の電圧値を、あらかじめ記憶部に記憶された閾値電圧と比較し、分岐信号の電圧値が、閾値電圧以上であるか否かを判定する判定部と、判定部で判定された判定結果に応じて、送受信機の受信信号用増幅器の電源のオンオフを制御する電源制御部と、を備える。
【0007】
本発明の他の態様に係るRoF送受信機は、基地局と、端末との間の無線通信における無線信号を、光ファイバ伝送路を介して中継伝送するためのRoF(Radio over Fiber)送受信機であって、無線信号を送信及び/又は受信するアンテナ部と、受信信号を増幅し、第1電気信号を生成する第1増幅器と、第1増幅器で増幅された第1電気信号を送信光信号に変換し、光ファイバ伝送路に送信光信号を送信する電気光変換部と、光ファイバ伝送路を介して受信した受信光信号を第2電気信号に変換する光電気変換部と、第2電気信号を増幅し、送信信号を生成する第2増幅器と、第2増幅器で増幅された送信信号を入力する信号処理装置と、を備え、信号処理装置は、送信信号を分岐し、分岐信号を取得する分岐部と、分岐信号を検波し、分岐信号の電圧値を取得する検波部と、分岐信号の電圧値を、あらかじめ記憶部に記憶された閾値電圧と比較し、分岐信号の電圧値が、閾値電圧以上であるか否かを判定する判定部と、判定部で判定された判定結果に応じて、第1増幅器の電源のオンオフを制御する電源制御部と、を有する。
【0008】
本発明の他の態様に係る光ファイバ無線システムは、上記RoF送受信機であって、基地局と無線通信を行う第1送受信機と、端末と無線通信を行う第2送受信機と、を備え、第1送受信機、及び第2送受信機は、光ファイバ伝送路を介して接続される。
【0009】
本発明の他の態様に係る信号処理方法は、コンピュータによって実行される信号処理方法であって、送信信号を分岐し、分岐信号を取得するステップと、分岐信号を検波し、分岐信号の電圧値を取得するステップと、分岐信号の電圧値を、あらかじめ記憶部に記憶された閾値電圧と比較し、分岐信号の電圧値が、閾値電圧以上であるか否かを判定するステップと、判定された判定結果に応じて、受信信号用増幅器の電源のオンオフを制御するステップと、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、簡易な構成で回り込み信号を抑圧することが可能な信号処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施形態に係る光ファイバ無線システムの構成を示す図である。
図2】本実施形態に係る信号処理装置の機能的構成を示す図である。
図3A】本実施形態に係る送信信号について説明するための図である。
図3B】本実施形態に係る送信信号の包絡線について説明するための図である。
図4】本実施形態に係る光ファイバ無線システムの入力電力と出力電圧との関係を説明するための図である。
図5】本実施形態に係る光ファイバ無線システムにおける自由空間の基本伝搬損失について説明するための図である。
図6】本実施形態に係る信号処理装置の処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を用いて本実施形態に係る光ファイバ無線システム10について詳細に説明する。なお、図面の寸法比率は説明の都合上誇張されており、実際の比率と異なる場合がある。また、以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。
【0013】
(光ファイバ無線システム10の概要)
図1は、本実施形態に係る光ファイバ無線システム10の構成を示す図である。光ファイバ無線システム10は、第1送受信機12a、第2送受信機12b、及び光ファイバ伝送路11を含んで構成される。
【0014】
図1に示す光ファイバ無線システム10においては、基地局20が送信した無線信号を第1送受信機12aのアンテナ部200で受信し、第1送受信機12aにおいて、無線信号が光信号に変換される。第1送受信機12aで変換された光信号は、光ファイバ伝送路11を介して、第2送受信機12bに送られる。光ファイバ無線システム10においては、第1送受信機12aと、第2送受信機12bとは、離れた場所に設置され、遠方の通信を可能とする。第2送受信機12bは、光ファイバ伝送路11を介して受信した光信号を電気信号に変換し、さらに無線信号として、携帯端末(モバイル端末)などの端末30に送信する。
【0015】
また、光ファイバ無線システム10は、端末30が送信した無線信号を第2送受信機12bのアンテナ部200で受信し、第2送受信機12bにおいて、無線信号が光信号に変換される。第2送受信機12bで変換された光信号は、光ファイバ伝送路11を介して、第1送受信機12aに送られる。第1送受信機12aは、光ファイバ伝送路11を介して受信した光信号を電気信号に変換し、さらに無線信号として、基地局20に送信する。
【0016】
すなわち、光ファイバ無線システム10は、基地局20と、端末30との間の通信を中継伝送するためのシステムである。さらには、光ファイバ無線システム10は、無線信号(RF信号、Radio Frequency)を、光ファイバ伝送路11を介して遠方に送るためのRoF(Radio over Fiber、又はRadio on Fiber)システムである。RoFシステムである光ファイバ無線システム10は、無線高周波信号を光ファイバに乗せて長距離伝送を可能とする。また、光ファイバ無線システム10は、低損失、広帯域な光ファイバの特徴を生かして直接電波が届かない場所(不感地帯)へ電波を届けることを可能とする。
【0017】
一般的なRoFシステムは、アンテナ部200から送出した無線信号の電力の一部が、アンテナ部200を介して戻ることにより、信号のループが発生し、発振が起こる場合がある。また、一般的なRoFシステムにおいては、アンテナ部200を介した信号のループだけでなく、例えば、サーキュレータ300から第1増幅器410への信号のループにより、発振が起こる場合がある。本実施形態に係る光ファイバ無線システム10は、このような発振を防ぐために信号処理装置100を備えるものである。
【0018】
(RoF送受信機12の構成)
次に本実施形態に係る信号処理装置100について説明する。図1に示すように信号処理装置100は、第1送受信機12a及び第2送受信機12bに備えられる。なお、本実施形態において第1送受信機12a及び第2送受信機12bは、同じ構成であるものとする。以降、第1送受信機12a及び第2送受信機12bを、それぞれを区別して説明する必要がない場合は、「RoF送受信機12」と表記する。
【0019】
RoF送受信機12は、信号処理装置100と、アンテナ部200と、サーキュレータ300と、第1増幅器410と、第2増幅器420と、電気光変換部500(E/O変換部)と、光電気変換部600(O/E変換部)とを含んで構成される。信号処理装置100の詳細については後述する。
【0020】
アンテナ部200は、無線信号を送受信するために用いられる。アンテナ部200は、電気信号を無線信号に変換、又は、無線信号を電気信号に変換する。
【0021】
サーキュレータ300は、アンテナ部200を介して送信する無線信号、及びアンテナ部200を介して受信する無線信号に対し、送信、及び受信を切り替える。すなわち、無線信号の受信時には、無線信号(受信信号)は、サーキュレータ300を介して、第1増幅器410に送られる。一方で、無線信号の送信時には、第2増幅器420からの無線信号(送信信号)は、サーキュレータ300を介してアンテナ部200へ送られ、アンテナ部200より送信される。
【0022】
すなわち、サーキュレータ300を用いることで、アンテナ部200を介して無線信号の送信及び受信の両方を行うことが可能となる。なお、本実施形態においては、アンテナ部200及びサーキュレータ300を備える構成としているが、この構成は、実施形態の構成を限定するものではない。例えば、RoF送受信機12は、サーキュレータ300を設けず、送信用のアンテナ、及び受信用のアンテナをそれぞれ設ける構成としてもよい。この場合、受信用のアンテナは、RoF送受信機12の第1増幅器410と接続され、送信用のアンテナは、RoF送受信機12の信号処理装置100の分岐部111(図2参照)を介した第2増幅器420と、接続されるものとする。
【0023】
第1増幅器410は、アンテナ部200及びサーキュレータ300を介して受信した無線信号を増幅する。本実施形態において、第1増幅器410は、一般的なアンプ(高周波アンプ、RFアンプ)で構成される。また、第1増幅器410は、電源回路(図示なし)から供給される電圧によって、信号の増幅機能をオンオフ(有効、無効)とすることができる。なお、第1増幅器410で増幅することで生成された信号は、第1電気信号に相当する。また、受信信号用増幅器は、第1増幅器410に相当する。
【0024】
電気光変換部500は、第1増幅器410で増幅された電気信号を光信号に変換し、光ファイバ伝送路11に光信号を送信する。なお、電気光変換部500から光ファイバ伝送路11に送信される光信号は、送信光信号に相当する。
【0025】
光電気変換部600は、光ファイバ伝送路11を介して受信した光信号を電気信号に変換する。なお、光電気変換部600が光ファイバ伝送路11から受信する光信号は、受信光信号に相当する。また、光電気変換部600で変換された電気信号は、第2電気信号に相当する。
【0026】
第2増幅器420は、光電気変換部600で変換された電気信号を増幅する。本実施形態において、第2増幅器420は、一般的なアンプ(高周波アンプ、RFアンプ)で構成される。
【0027】
(信号処理装置100の構成)
次に、信号処理装置100の詳細について説明する。図2は、図1の第2送受信機12bを拡大した模式図であり、第2送受信機12bにおける信号処理装置100の構成を示すブロック図である。図2に示すように、信号処理装置100は、制御部110と、記憶部120とを備える。
【0028】
制御部110は、例えば、汎用のマイクロコンピュータとして構成してもよい。この場合、マイクロコンピュータには、信号処理装置100として機能させるためのコンピュータプログラムがインストールされていてもよい。コンピュータプログラムを実行することにより、マイクロコンピュータは、信号処理装置100が備える複数の情報処理回路として機能する。また、制御部110は、ソフトウェアによって信号処理装置100が備える複数の情報処理回路を実現してもよいし、あるいは専用のハードウェアを用意して、情報処理回路を構成することも可能である。また、複数の情報処理回路を個別のハードウェアにより構成してもよい。
【0029】
記憶部120は、例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、ハードディスク等であり得る。また、記憶部120は、後述の閾値電圧をあらかじめ記憶する。
【0030】
(信号処理装置100の機能)
図2に示すように、信号処理装置100の制御部110は、分岐部111と、検波部112と、判定部113と、電源制御部114と、を機能として備える。
【0031】
分岐部111は、送信信号を分岐し、分岐信号を取得する。分岐部111が取得する分岐信号は、送信信号に対する分岐比に応じた電力レベルを有する。本実施形態において、分岐部111は、例えば、カプラで構成される。また、分岐比は、信号処理装置100に適用する分岐部111の特性等により定まる値である。
【0032】
検波部112は、分岐部111で取り出した分岐信号に対し、包絡線検波を行い、信号レベルを算出する。図3A及び図3Bは、それぞれ入力信号、及び包絡線検波について説明するための模式図である。なお、図3A及び図3Bに示す入力信号は、説明のために簡略化して表記されているが実際に光ファイバ無線システム10で取り扱う信号は、複雑に振幅を繰り返すものであるとする。
【0033】
図3Aは、分岐部111で取り出した分岐信号の例を示す。検波部112は、図3Aに示す分岐信号に対し、包絡線を算出し、算出した包絡線に基づいて、分岐信号の電力(信号レベル)を算出する。
【0034】
また、検波部112は、分岐信号の電力(信号レベル)に基づいて、電圧値を算出する。具体的には、検波部112は、図4に示すような入力電力(dBm)と、出力電圧(V)との対応関係に基づいて、分岐信号の電圧値を算出する。ここで、dBmは、1mWを基準とするdB単位の電力レベルである。
【0035】
判定部113は、分岐信号の電圧値をあらかじめ記憶部120に記憶された閾値電圧と比較し、分岐信号の電圧値が閾値電圧以上であるか否かを判定する。本実施形態において閾値電圧は、後述の閾値基準電力を電圧値に変換した値として用いられる。
【0036】
本実施形態において、閾値基準電力は、アンテナ部200で受信される最小受信電力値(Pin_min)に、光ファイバ無線システム10の伝送経路における利得RoF_Gを加えた電力以上の電力値であって、任意に設定可能な電力値である。すなわち、閾値基準電力をPとすると、閾値基準電力Pは以下の式(1)で示される。
P ≧ Pin_min + RoF_G ・・・(1)
【0037】
なお、最小受信電力値(Pin_min)は、光ファイバ無線システム10における受信感度であり、どのくらい弱い電波まで受信できるかという能力を示し、決められた誤り条件を満たす最小の入力レベルである。本実施形態において、最小受信電力値は、光ファイバ無線システム10が設置された環境に応じて、あらかじめ定まるものとする。
【0038】
利得RoF_Gは、光ファイバ無線システム10の第1増幅器410、電気光変換部500、光ファイバ伝送路11、光電気変換部600、及び第2増幅器420における利得である。
【0039】
本実施形態における利得RoF_Gは、RoF送受信機12から信号を送信した場合に、送信後に加わる空間減衰を補償するだけの利得である。図5に自由空間における基本伝搬損失の例を示す。図5に示す損失Lは、以下の式(2)で示される。ここで、dは距離(m)を示す。また、λは、波長(m)を示す。
L = (4πd/λ) ・・・(2)
【0040】
図5に示すように、距離dに応じて、損失Lは異なる。よって、本実施形態においては、光ファイバ無線システム10が設置される場所と、基地局20、及び/又は端末30との距離dに基づいて、定まる損失Lを補償するだけの値を利得RoF_Gとして定める。
【0041】
閾値電圧は、上述の式(1)で定められた閾値基準電力Pを電圧値に変換したものである。閾値基準電力Pから閾値電圧への変換は、図4に示す入力電力及び出力電圧の関係により定まる。本実施形態において、閾値電圧は、上述の式(1)、式(2)、及び図4に示す関係に基づいて、ユーザ等によりあらかじめ定められ、記憶部120に記憶される。
【0042】
なお、閾値電圧は、光ファイバ無線システム10の受信電力に比例など、相関する関係が好ましい。例えば、図4に示すように、入力電力と、出力電圧との関係が、ある程度相関のあるものとすることで、閾値電圧における複雑な設定を防ぎ、より簡易な構成で回り込み信号を抑圧することが可能となる信号処理装置100を実現することができる。
【0043】
電源制御部114は、判定部113で判定された判定結果に応じて、受信信号の第1増幅器410の電源のオンオフを制御する。具体的には、電源制御部114は、判定部113で送信信号の信号レベルを示す電圧の値が、閾値電圧以上であると判定された場合には、第1増幅器410の電源をオフにするように制御する。一方で、電源制御部114は、判定部113で送信信号の信号レベルを示す電圧の値が、閾値電圧より低いと判定された場合には、第1増幅器410の電源をオンにするように制御する。
【0044】
なお、電源制御部114による第1増幅器410の電源のオンオフ制御は、例えば、第1増幅器410の電源電圧を生成する電源回路(図示なし)を制御することで実現される。あるいは、電源制御部114による第1増幅器410の電源のオンオフ制御は、第1増幅器410に供給される電源電圧に対し、電磁リレーなどで物理的に導通を遮断する構成としてもよい。あるいは、電源制御部114による第1増幅器410の電源のオンオフ制御は、第1増幅器410に供給される電源に対し、トランジスタなどを利用した半導体スイッチで構成してもよい。
【0045】
(信号処理装置100の処理フローの概略)
次に、図6に示すフローチャートを用いて信号処理装置100における処理の流れを示す。図6のフローチャートに示す信号処理装置100の一連の動作は、信号処理装置100が起動されると開始され、作業終了により処理を終了する。また、図6に示すフローチャートは、電源オフや処理終了の割り込みによっても処理は終了する。また、以下のフローチャートの説明において、上述の光ファイバ無線システム10及び信号処理装置100の説明で記載した内容と同じ内容については、省略又は簡略化して説明する。
【0046】
ステップS601において、分岐部111は、送信信号に対し、分岐処理を行う。具体的には、分岐部111は、送信信号を分岐し、分岐信号を取得する。その後、処理は、ステップS602に進む。
【0047】
ステップS602において、検波部112は、分岐信号に対して検波処理を行う。具体的には、検波部112は、分岐部111で取り出した分岐信号に対し、包絡線検波を行い、信号レベルを算出する。また、ステップS602において、検波部112は、分岐信号の電力(信号レベル)に基づいて、電圧値を算出する。その後、処理は、ステップS603に進む。
【0048】
ステップS603において、判定部113は、検波部112で算出された分岐信号の信号レベルの電圧値が、あらかじめ記憶部120に記憶された閾値電圧以上であるか否かを判定する。ステップS603において、判定部113は、分岐信号の信号レベルの電圧値が、閾値電圧以上であると判定した場合(ステップS603:YES)には、処理はステップS604に進む。一方で、ステップS603において、判定部113は、分岐信号の信号レベルの電圧値が、閾値電圧より低いと判定した場合(ステップS603:NO)には、処理はステップS605に進む。
【0049】
ステップS604において、電源制御部114は、第1増幅器410に対して電源制御処理を行う。具体的には、電源制御部114は、第1増幅器410の電源回路に対し、第1増幅器410へ供給される電源電圧をオフとするように制御する。次に処理は、ステップS606に進む。
【0050】
ステップS605において、電源制御部114は、第1増幅器410に対して電源制御処理を行う。具体的には、電源制御部114は、第1増幅器410の電源回路に対し、第1増幅器410へ供給される電源電圧をオンとするように制御する。次に処理はステップS606に進む。
【0051】
ステップS606において、制御部110は、信号処理装置100において、制御が終了したか否かを判定する。ステップS606において、制御部110は、信号処理装置100において制御が終了したと判定した場合(ステップS606:YES)には、処理は、ステップS607に進む。一方で、ステップS606において、制御部110は、信号処理装置100において制御が終了していないと判定した場合(ステップS606:NO)には、処理は、ステップS603に戻り、ステップS603からの処理を繰り返す。
【0052】
ステップS607において、電源制御部114は、第1増幅器410に対して電源制御処理を行う。具体的には、電源制御部114は、第1増幅器410の電源回路に対し、第1増幅器410へ供給される電源電圧をオンとするように制御する。これにより、光ファイバ無線システム10においては、通常の無線通信が行われるものとする。
【0053】
上述の通り、信号処理装置100は、無線信号を送受信する送受信機に備えられた信号処理装置100であって、分岐部111と、検波部112と、判定部113と、電源制御部114と、を備える。分岐部111は、送信信号を分岐し、分岐信号を取得する。検波部112は、分岐信号を検波し、分岐信号の電圧値を取得する。判定部113は、分岐信号の電圧値を、あらかじめ記憶部120に記憶された閾値電圧と比較し、分岐信号の電圧値が、閾値電圧以上であるか否かを判定する。電源制御部114は、判定部113で判定された判定結果に応じて、送受信機の受信信号用増幅器の電源のオンオフを制御する。
【0054】
これにより、信号処理装置100は、周波数に応じた複数の遅延回路を設ける必要はなく、簡易な構成で回り込み信号を抑圧することが可能となる。
【0055】
また、信号処理装置100の、閾値電圧は、送受信機を備える光ファイバ無線システムの最小受信電力値、及び光ファイバ無線システムの伝送経路の利得に基づいて定まる値であってもよい。これにより、信号処理装置100は、光ファイバ無線システムに応じた閾値電圧を用いることが可能となり、システムに応じたより正確な閾値判定を行うことが可能となる。
【0056】
(他の実施形態)
実施形態につき、図面を参照しつつ詳細に説明したが、以上の実施形態に記載した内容により本実施形態が限定されるものではない。また、上記に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、上記に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、実施形態の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0057】
上述の実施形態においては、信号処理装置100が、第1送受信機12a、第2送受信機12b、及び光ファイバ伝送路11を含んで構成される光ファイバ無線システム10に適用される例を示した。この信号処理装置100は、光ファイバ伝送路11を介して中継伝送するシステムだけでなく、例えば、高周波同軸ケーブルやツイストペアケーブル等のケーブルを介して中継伝送するシステムに用いてもよい。
【0058】
上述した信号処理装置100における処理(信号処理方法)をコンピュータに実行させるコンピュータプログラム(信号処理プログラム)、及びそのプログラムを記録したコンピュータで読み取り可能な記録媒体は、本実施形態の範囲に含まれる。ここで、コンピュータで読み取り可能な記録媒体の種類は任意である。また、上記コンピュータプログラムは、上記記録媒体に記録されたものに限られず、電気通信回線、無線又は有線通信回線、インターネットを代表とするネットワーク等を経由して伝送されるものであってもよい。
【0059】
以下に、信号処理装置100、RoF送受信機12、光ファイバ無線システム10、及び信号処理方法の特徴について記載する。
【0060】
第1の態様に係る信号処理装置100は、無線信号を送受信する送受信機に備えられた信号処理装置100であって、送信信号を分岐し、分岐信号を取得する分岐部111と、分岐信号を検波し、分岐信号の電圧値を取得する検波部112と、を備える。また、信号処理装置100は、分岐信号の電圧値を、あらかじめ記憶部120に記憶された閾値電圧と比較し、分岐信号の電圧値が、閾値電圧以上であるか否かを判定する判定部113を備える。さらに、信号処理装置100は、判定部113で判定された判定結果に応じて、送受信機の受信信号用増幅器の電源のオンオフを制御する電源制御部114と、とを備える。
【0061】
上記構成によれば、信号処理装置100は、周波数に応じた複数の遅延回路を設ける必要はなく、簡易な構成で回り込み信号を抑圧することが可能となる。
【0062】
第2の態様に係る信号処理装置100の閾値電圧は、送受信機を備える光ファイバ無線システムの最小受信電力値、及び光ファイバ無線システムの伝送経路の利得に基づいて定まる値であってもよい。
【0063】
上記構成によれば、信号処理装置100は、光ファイバ無線システムに応じた閾値電圧を用いることが可能となり、システムに応じたより正確な閾値判定を行うことが可能となる。
【0064】
第3の態様に係るRoF送受信機12は、基地局20と、端末30との間の無線通信における無線信号を、光ファイバ伝送路11を介して中継伝送するためのRoF(Radio over Fiber)送受信機である。RoF送受信機12は、無線信号を送信及び/又は受信するアンテナ部200と、受信信号を増幅し、第1電気信号を生成する第1増幅器410と、を備える。また、RoF送受信機12は、第1増幅器410で増幅された第1電気信号を送信光信号に変換し、光ファイバ伝送路11に送信光信号を送信する電気光変換部500を備える。また、RoF送受信機12は、光ファイバ伝送路11を介して受信した受信光信号を第2電気信号に変換する光電気変換部600を備える。さらに、RoF送受信機12は、第2電気信号を増幅し、送信信号を生成する第2増幅器420と、第2増幅器420で増幅された送信信号を入力する信号処理装置100と、を備える。信号処理装置100は、送信信号を分岐し、分岐信号を取得する分岐部111と、分岐信号を検波し、分岐信号の電圧値を取得する検波部112と、を有する。また、信号処理装置100は、分岐信号の電圧値を、あらかじめ記憶部120に記憶された閾値電圧と比較し、分岐信号の電圧値が、閾値電圧以上であるか否かを判定する判定部113を有する。さらに、信号処理装置100は、判定部113で判定された判定結果に応じて、第1増幅器410の電源のオンオフを制御する電源制御部114を有する。
【0065】
上記構成によれば、信号処理装置100を備えるRoF送受信機12は、周波数に応じた複数の遅延回路を設ける必要はなく、簡易な構成で回り込み信号を抑圧することが可能となる。
【0066】
第4の態様に係る光ファイバ無線システム10は、上記RoF送受信機12であって、基地局20と無線通信を行う第1送受信機12aと、端末30と無線通信を行う第2送受信機12bと、を備える。また、光ファイバ無線システム10の、第1送受信機12a、及び第2送受信機12bは、光ファイバ伝送路11を介して接続される。
【0067】
上記構成によれば、RoF送受信機12を備える光ファイバ無線システム10は、周波数に応じた複数の遅延回路を設ける必要はなく、簡易な構成で回り込み信号を抑圧することが可能となる。
【0068】
第5の態様に係る信号処理方法は、コンピュータによって実行される信号処理方法であって、送信信号を分岐し、分岐信号を取得するステップと、分岐信号を検波し、分岐信号の電圧値を取得するステップと、を含む。また、信号処理方法は、分岐信号の電圧値を、あらかじめ記憶部120に記憶された閾値電圧と比較し、分岐信号の電圧値が、閾値電圧以上であるか否かを判定するステップを含む。さらに、信号処理方法は、判定された判定結果に応じて、受信信号用増幅器の電源のオンオフを制御するステップを含む。
【0069】
上記構成によれば、信号処理方法を用いることにより、周波数に応じた複数の遅延回路を設ける必要はなく、簡易な構成で回り込み信号を抑圧することが可能となる。
【符号の説明】
【0070】
10 光ファイバ無線システム
12 RoF送受信機
12a 第1送受信機
12b 第2送受信機
100 信号処理装置
111 分岐部
112 検波部
113 判定部
114 電源制御部
120 記憶部
410 第1増幅器
420 第2増幅器
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6