(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】シート材の取付け構造
(51)【国際特許分類】
F16B 5/10 20060101AFI20240305BHJP
H01M 50/507 20210101ALI20240305BHJP
【FI】
F16B5/10 D
H01M50/507
(21)【出願番号】P 2021197119
(22)【出願日】2021-12-03
【審査請求日】2023-03-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 潤之
(72)【発明者】
【氏名】片岡 良太
【審査官】杉山 豊博
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-085846(JP,A)
【文献】特開2021-118152(JP,A)
【文献】特開平03-113108(JP,A)
【文献】特開2016-143584(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 5/10
H01M 50/507
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート材に設けられ、大径穴と小径穴とが連通部により連通された取付け穴部と、
前記取付け穴部に対応して被取付け部材に設けられ、前記取付け穴部を係止して前記被取付け部
材に前記シート材を取付ける係止部と、
前記連通部に設けられ、前記連通部の幅を前記小径穴の内径よりも狭める凸片と、
前記係止部に設けられ、前記小径穴に挿通される柱部と、前記柱部の先端部に形成され、前記大径穴に挿通されるとともに前記小径穴の開口縁に係止される頭部と、前記柱部の側面に形成され、前記連通部に前記柱部を通過させる際には前記柱部に接触した前記凸片を前記シート材の厚み方向に撓ませる傾斜面を有する挿入ガイド部と、
を備えたシート材の取付け構造。
【請求項2】
前記凸片における前記小径穴側の側縁には、先端が前記小径穴側に突出した返し形状部が形成され、
前記柱部には、前記返し形状部に対応する係止凹部が形成されている、
請求項1に記載のシート材の取付け構造。
【請求項3】
前記係止部を挟んで前記被取付け部材に設けられ、前記小径穴の開口縁が前記頭部に対して接触するように前記シート材を支持する一対の支持凸部を備えた、
請求項1又は2に記載のシート材の取付け構造。
【請求項4】
前記シート材は、前記被取付け部材としての樹脂ケースに設けられた前記係止部に取付けられる前記取付け穴部が形成された取付け固定部を有する絶縁樹脂シートである、
請求項1~3の何れか一項に記載のシート材の取付け構造。
【請求項5】
前記絶縁樹脂シートは、前記取付け固定部に連設されて前記樹脂ケースのバスバー収容部を覆う蓋体部を有する、
請求項4に記載のシート材の取付け構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート材の取付け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
シート材を被取付け部材に取付けるシート材の取付け構造としては、シート材に貫通孔を形成し、被取付け部材に形成した熱かしめ突起を貫通孔に貫通した状態で加熱、溶融することにより、シート材を被取付け部材に熱かしめ固定する構成が知られている。
また、シート材を被取付け部材に対して熱溶着したり、接着剤を用いて接着したりする方法や、被取付け部材と他の部材とでシート材を挟み込んで取り付ける方法も知られている。
【0003】
更に、保持クリップを用いた取付け構造も知られている(例えば特許文献1参照)。この保持クリップは、飾板(シート材)を挟持して保持するための頭部と、パネル板(被取付け部材)の取付孔に挿入して嵌着するための胴部とを有し、飾板をパネル板に固定する構成とされている。また、飾板には、大きい方の孔(大径穴)と小さい方の孔(小径穴)とこれらを連通する連通部とからなるダルマ穴が穿設されている。
そして、飾板に穿設されたダルマ孔のうち、大きい方の孔に保持クリップの頭部を挿入して、そのままの状態で胴部のネックを、連通部を通過して小さい方の孔に移行させることにより、小さい方の孔に保持クリップのネックが嵌着される。なお、連通部は、保持クリップのネックの径よりも狭い幅とされることで、保持クリップのネックが不用意に連通部を通過し、大きい方の孔に移行して脱落することを防止できる。
【0004】
また、電動モータを用いて走行する電気自動車や、エンジンと電動モータとを併用して走行するハイブリッド自動車等の各種車両に搭載される電源装置は、複数の単電池(セル)からなる電池集合体(組電池)の上部にバスバーモジュールが組付けられている。このバスバーモジュールは、複数の単電池の電極に電気的に接続される複数のバスバーを有している。これらのバスバーは、電池集合体の上部に取り付けられる樹脂ケースのバスバーケース(バスバー収容部)に収容されて保持される(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
そして、このようなバスバーモジュールにおいても、バスバーケースに設けた貫通孔に樹脂ケースの突起部が挿通されて、樹脂ケースにバスバーケースが係止される取付け構造が用いられている。樹脂ケースに設けられた突起部は、円柱状の軸部と、軸部の先端に一体的に形成されたフランジ部とを備えている。バスバーケースに設けられた貫通孔は、突起部のフランジ部が挿通する形状であり、突起部の軸部を中心にバスバーケースが上下左右に移動可能な形状である。なお、樹脂ケースに取り付けられた保護カバーの側縁部がバスバーケースの上方に位置することにより、バスバーケースが樹脂ケースから脱落することを防止できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平3-113108号公報
【文献】特開2016-143584号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述したシート材の取付け構造のように、シート材を被取付け部材に対して熱かしめ固定したり、熱溶着したり、接着剤を用いて接着したりする方法は、設備が必要となり、取付け工数が増大するため製造コストが上昇する。更に、シート材の厚さや材質等のシート要件にも制約がある。また、被取付け部材と他の部材とでシート材を挟み込んだり、飾板保持クリップでシート材を取り付けたりする方法は、2部品化による部品費アップや重量アップを招くという問題がある。
【0008】
また、シート材の脱落を防止するため、ダルマ孔の連通部の幅を保持クリップのネックの径よりも狭い幅とした場合、取付け時に連通部が拡幅するように弾性変形させながら保持クリップのネックを通過させなければならず、取付け作業性がよくない。例えば、ダルマ孔の連通部に保持クリップのネックを無理に通過させると、連通部が塑性変形したり、破損したりする可能性がある。
【0009】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、被取付け部材に対してシート材を確実、且つ着脱容易に取付けることができるシート材の取付け構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前述した目的を達成するために、本発明に係るシート材の取付け構造は、下記を特徴としている。
シート材に設けられ、大径穴と小径穴とが連通部により連通された取付け穴部と、
前記取付け穴部に対応して被取付け部材に設けられ、前記取付け穴部を係止して前記被取付け部材に前記シート材を取付ける係止部と、
前記連通部に設けられ、前記連通部の幅を前記小径穴の内径よりも狭める凸片と、
前記係止部に設けられ、前記小径穴に挿通される柱部と、前記柱部の先端部に形成され、前記大径穴に挿通されるとともに前記小径穴の開口縁に係止される頭部と、前記柱部の側面に形成され、前記連通部に前記柱部を通過させる際には前記柱部に接触した前記凸片を前記シート材の厚み方向に撓ませる傾斜面を有する挿入ガイド部と、
を備えたシート材の取付け構造。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るシート材の取付け構造によれば、被取付け部材に対してシート材を確実、且つ着脱容易に取付けることができるという効果を奏する。
【0012】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係るシート材固定構造を用いたバスバーモジュールが組電池に取付けられた状態を示す全体斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示したバスバーモジュールの分解斜視図である。
【
図3】
図3は、
図1に示したシート材を樹脂ケースに取付ける前の状態を示す部分拡大図である。
【
図7】
図7は、
図3に示したシート材における取付け固定部の要部正面図である。
【
図8】
図8は、
図4に示した係止部の柱部に対して取付け固定部における取付け穴部の大径穴が挿通された状態を示す拡大斜視図である。
【
図10】
図10は、
図8に示した係止部の柱部に対して取付け穴部の連通部が通過した状態を示す拡大斜視図である。
【
図12】
図12は、
図10に示した係止部の柱部に対して取付け穴部の小径穴が挿通された状態を示す拡大斜視図である。
【
図14】
図14は、
図12に示した係止部の頭部に対して小径穴の開口縁が接触してシート材が取り付けられた状態を示す拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に関する具体的な実施形態について、各図を参照しながら以下に説明する。
図1は本発明の一実施形態に係るシート材固定構造を用いたバスバーモジュール200が組電池100に取付けられた状態を示す全体斜視図、
図2は
図1に示したバスバーモジュール200の分解斜視図である。なお、本明細書中、前後方向、上下方向、左右方向は
図1に示した矢印の方向に従うものとする。
【0015】
図1に示すように、本実施形態に係るバスバーモジュール200は、複数個(本例では18個)のセル(単電池)10を前後方向に並設した組電池100に適用される。これらバスバーモジュール200と組電池100とは、電池モジュール1を構成する。更に、これら複数の電池モジュール1を組み合わせることで、電池パックが構成される。
【0016】
本実施形態において、組電池100を構成するセル10は、直方体状に形成され、矩形平面となる上端面の長手方向の両端に、正極の電極11及び負極の電極13が設けられた角型セルである。(
図2参照)。これらセル10は、正極の電極11と負極の電極13とが隣り合うように交互に逆向きに重ね合わされて配置される。
なお、組電池100を構成するセル10は、角型セルに限らず、ラミネート型セルや円筒形セル等の種々の単電池を用いることができる。
【0017】
バスバーモジュール200は、
図2に示すように、複数のバスバー収容部21を有する絶縁樹脂製の樹脂ケース(被取付け部材)20と、隣り合うセル10の電極間を電気的に接続する導電金属製のバスバー30と、電圧を検出するための検出端子40と、樹脂ケース20の上部を覆うカバー(シート材)50と、を有する。
【0018】
本実施形態に係るシート材固定構造の被取付け部材である樹脂ケース20は、バスバーモジュール200の本体として、絶縁樹脂により一体成形される。樹脂ケース20には、セル10の並び方向(前後方向)に沿って、矩形箱状の複数のバスバー収容部21が公差吸収部23を介して連結されて2列で平行に設けられている。
【0019】
2列で平行に設けられた複数のバスバー収容部21の下方には、隣接するセル10の正極の電極11と負極の電極13とが配置される。各バスバー収容部21の底壁には、各セル10の正極の電極11及び負極の電極13に対応する複数の端子用開口25が形成されている。そして、各バスバー収容部21には、端子用開口25から露出した正極の電極11と負極の電極13とを接続するための導電性金属板からなるバスバー30が収容される。
【0020】
各バスバー収容部21に収容されたバスバー30は、銅または銅合金等の導電性金属材料を板状に形成したものである。バスバー30は、正極の電極11と負極の電極13とに溶接されることで、これら正極の電極11と負極の電極13とを電気的に接続する。複数のバスバー30は、組電池100の互いに隣り合うセル10の正極の電極11と負極の電極13とに接続されることで、各セル10を直列に接続する。
【0021】
なお、組電池100の前端側(
図2中、左端側)に配置されたセル10における負極の電極13に接続されるバスバー33は総負極端子となり、組電池100の後端側(
図2中、右端側)に配置されたセル10における正極の電極11に接続されるバスバー31は総正極端子となる。
【0022】
ところで、組電池100の構成は、複数のセル10が直列に接続されるものに限らず、種々の構成を採りうる。
例えば、互いに隣り合う複数のセル10毎に電極の極を揃えて並列とし、この電極の極が並列に揃えられた複数のセル10で一つの電池セットを構成することもできる。そして、互いに隣接するセル10の電池セットは、電極の極が互い違いとなるように配置されて組電池を構成する。
【0023】
更に、バスバー31(31,33)上には、電線41の一端に電気的に接続された検出端子40が溶接される。検出端子40に一端が接続された電線41は、それぞれバスバー収容部21のスリット開口から導出され、2列で平行に設けられた複数のバスバー収容部21の間に画成されてセル10の並び方向に沿って延びる中央溝27に配索される(
図1参照)。
【0024】
各バスバー収容部21は、セル10と反対側の上面が矩形開口部となって開放されている。複数のバスバー収容部21の矩形開口部は、平行に設けられた列毎に、それぞれカバー50により覆われている。
【0025】
図3は、
図1に示したカバー50を樹脂ケース20に取付ける前の状態を示す部分拡大図である。
図4は
図3に示した係止部60の拡大斜視図、
図5は
図4におけるV-V断面矢視図である。
図6は、
図3に示した係止部60の拡大正面図である。
図7は、
図3に示したカバー50における取付け固定部51の要部正面図である。
【0026】
本実施形態に係るシート材固定構造のシート材であるカバー50は、
図2及び
図3に示すように、樹脂ケース20に設けられた複数の係止部60に取付けられる複数の取付け穴部70が形成された取付け固定部51と、取付け固定部51の長手方向側縁から垂直に連設されて樹脂ケース20のバスバー収容部21を覆う蓋体部53と、を有する断面L字形状の長尺状部材である。カバー50は、例えばPET(ポリエチレンテレフタレート)等の絶縁樹脂製のシート材により形成される。
【0027】
取付け穴部70は、
図3及び
図7に示すように、大径穴71と小径穴73とが、連通部75により連通された開口形状を有する所謂ダルマ穴である。
取付け穴部70の連通部75には、連通部75の幅W1を小径穴73の内径D2よりも狭める一対の凸片77が設けられている。更に、凸片77における小径穴73側の側縁77aには、先端が小径穴73側に突出した返し形状部77bが形成されている。
【0028】
図3~
図6に示すように、本実施形態に係るシート材固定構造の係止部60は、カバー50の取付け穴部70に対応して、樹脂ケース20の長手方向(前後方向)に沿う外側面に複数設けられている。カバー50は、取付け穴部70が係止部60に係止されることで、樹脂ケース20に着脱自在に取付けられる。
【0029】
係止部60は、樹脂ケース20の長手方向に沿う外側面に垂設された柱部61と、小径穴73に挿通される柱部61の先端部に形成された頭部63と、柱部61の側面に形成された挿入ガイド部65と、を備える。
【0030】
柱部61は、挿入ガイド部65が設けられた側面とは反対側の側面に、カバー50の返し形状部77bに対応する係止凹部68が形成されている(
図9、参照)。
柱部61の先端部に形成された頭部63は、小径穴73の内径D2よりも大きく、大径穴71の内径D3よりも小さい直径D1を有する略円錐体形状を有し、大径穴71に挿通されるとともに小径穴73の開口縁に係止される。
【0031】
挿入ガイド部65は、連通部75の幅W1よりも狭い狭幅部67と、連通部75に柱部61を通過させる際には柱部61に接触した凸片77を取付け固定部51の厚み方向に撓ませるために狭幅部67の幅方向両側に形成された一対の傾斜面69と、を有する(
図9、参照)。
【0032】
更に、樹脂ケース20の長手方向に沿う外側面には、長手方向(前後方向)に係止部60を挟んで配置された一対の支持凸部80が、係止部60の近傍にそれぞれ突設されている。
支持凸部80は、
図4及び
図5に示すように、樹脂ケース20の上下方向に延びる直方体状のリブ突起であり、例えば係止部60における柱部61の高さH1よりもカバー50の厚さ分だけ低い高さとされる(
図15、参照)。なお、支持凸部80は、直方体状のリブ突起に限らず、円柱状のボス突起等の種々の形状を採りうることは云うまでもない。
【0033】
次に、
図8~
図15を参照しながらカバー50を樹脂ケース20に取り付ける取付け手順を説明する。
図8は
図4に示した係止部60の柱部61に対して取付け固定部51における取付け穴部70の大径穴71が挿通された状態を示す拡大斜視図、
図9は
図8におけるIX-IX断面矢視図である。
【0034】
先ず、
図3に示したように、樹脂ケース20の左右方向に沿ってカバー50の取付け固定部51を樹脂ケース20の長手方向に沿う外側面に近づけ、複数の係止部60の頭部63をそれぞれ対応する取付け穴部70の大径穴71に挿入する。この際、頭部63が略円錐体形状を有しているので、係止部60を大径穴71にスムーズに挿入することができる。
【0035】
次に、取付け穴部70の近傍における取付け固定部51を樹脂ケース20側へ押さえ付ける。すると、係止部60を挟んで配置された一対の支持凸部80に支持されている取付け固定部51は、
図8及び
図9に示したように、樹脂ケース20側へ撓んで内面が樹脂ケース20の外側面に当接する。
【0036】
図10は
図8に示した係止部60の柱部61に対して取付け穴部70の連通部75が通過した状態を示す拡大斜視図、
図11は
図10におけるXI-XI断面矢視図である。
そして、
図10及び
図11に示すように、取付け固定部51の内面を樹脂ケース20の外側面に摺接させながら(勿論、樹脂ケース20側へ撓んだ取付け固定部51の内面は、樹脂ケース20の外側面に非接触でもよい)カバー50を下方向へ移動し、係止部60の柱部61に対して取付け穴部70の連通部75を通過させる。
【0037】
取付け穴部70の連通部75における一対の凸片77に対向する柱部61の側面には、連通部75の幅W1よりも狭い狭幅部67と、狭幅部67の幅方向両側に形成された一対の傾斜面69とを有する挿入ガイド部65が設けられている。
そこで、取付け穴部70の連通部75を通過する係止部60の柱部61は、先ず、狭幅部67が一対の凸片77の間に進入する。この際、連通部75の幅W1よりも狭い狭幅部67は、取付け穴部70の連通部75を誘い込み易い。
【0038】
そして、カバー50が下方向へさらに移動すると、一対の傾斜面69がそれぞれ一対の凸片77に接触して凸片77を取付け固定部51の厚み方向(
図10中、右方向)に撓ませる。カバー50が下方向へさらに移動すると、一対の凸片77は、取付け固定部51の厚み方向に撓みながら係止部60の柱部61を通過する。この際、連通部75は、一対の凸片77が撓ませられて幅W1を広げた状態なので、係止部60の柱部61をスムーズに通過することができる。
【0039】
図12は
図10に示した係止部60の柱部61に対して取付け穴部70の小径穴73が挿通された状態を示す拡大斜視図、
図13は
図12におけるXIII-XIII断面矢視図である。
そして、カバー50が下方向へさらに移動されると、
図12及び
図13に示すように、係止部60がそれぞれ対応する取付け穴部70の小径穴73に移行し、撓み変形されていた一対の凸片77は、元の状態に復帰する。この際、凸片77の返し形状部77bが係止部60の係止凹部68に係止され、係止部60の柱部61は不用意に連通部75を通過して大径穴71に移行することが阻止される。
【0040】
図14は
図12に示した係止部60の頭部63に対して小径穴73の開口縁が接触してカバー50が取り付けられた状態を示す拡大斜視図、
図15は
図14におけるXV-XV断面矢視図である。
そして、カバー50の取付け固定部51を樹脂ケース20側へ押さえ付けていた押圧力を解除すると、
図14及び
図15に示すように、樹脂ケース20側へ撓んでいた取付け固定部51は、元の状態に復帰する。この際、係止部60を挟んで配置された一対の支持凸部80に支持されたカバー50の取付け固定部51は、小径穴73の開口縁近傍が頭部63の下面に対して確実に接触した状態となる。そこで、樹脂ケース20の係止部60に取付けられたカバー50は、樹脂ケース20の外側面に対して傾いたり、ガタついたりすることが防止される。
【0041】
次に、本実施形態に係るシート材固定構造を用いたバスバーモジュール200の作用効果を説明する。
上述したように、本実施形態に係るシート材固定構造を用いたバスバーモジュール200によれば、カバー50を樹脂ケース20に取り付ける際、係止部60の柱部61の側面に形成された傾斜面69を有する挿入ガイド部65が取付け穴部70の凸片77を取付け固定部51の厚み方向に撓ませる。
【0042】
すると、凸片77は、取付け固定部51の厚み方向に撓みながら係止部60の柱部61を通過する。取付け穴部70の連通部75は、凸片77が撓ませられて幅W1が広げられた状態なので、係止部60の柱部61をスムーズに通過することができる。
そこで、カバー50を樹脂ケース20に取り付ける際には、連通部70の凸片77が塑性変形したり、破損したりする虞がなく、樹脂ケース20にカバー50を確実、且つ着脱容易に取付けることができる。
【0043】
また、本実施形態に係るシート材固定構造を用いたバスバーモジュール200によれば、凸片77における小径穴73側の側縁77aには、先端が小径穴73側に突出した返し形状部77bが形成され、柱部61には、返し形状部77bに対応する係止凹部68が形成されている。
そこで、樹脂ケース20に取り付けられたカバー50は、凸片77の返し形状部77bが係止部60の係止凹部68に係止され、係止部60の柱部61が不用意に連通部75を通過し、大径穴71に移行して脱落することを確実に防止できる。
【0044】
また、本実施形態に係るシート材固定構造を用いたバスバーモジュール200によれば、係止部60を挟んで樹脂ケース20に設けられた一対の支持凸部80が、小径穴73の開口縁が頭部63に対して接触するようにカバー50を支持する。
そこで、樹脂ケース20の係止部60に取付けられたカバー50は、樹脂ケース20の外側面に対して傾いたり、ガタついたりすることが防止される。
【0045】
従って、本実施形態に係るシート材固定構造を用いたバスバーモジュール200によれば、被取付け部材である樹脂ケース20に対してシート材であるカバー50を確実、且つ着脱自在に取付けることができる。
【0046】
尚、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0047】
上記実施形態では、バスバーモジュール200における樹脂ケース20のバスバー収容部21を覆うカバー50を例にシート材を説明したが、例えば、シート材を樹脂ケース20の中央溝27を覆うカバーや、樹脂ケース20に適宜取付けられるシート部材とすることもできる。また、被取付け部材として樹脂ケース20を例に説明したが、本発明はこれに限るものではなく、被取付け部材は種々の形態を採りうる。更に、シート材は、絶縁樹脂製に限るものではなく、金属板等の種々の材質を用いることができる。
従って、本実施形態に係るシート材固定構造は、種々のシート材を種々の被取付け部材に取付ける場合に適用できる。
【0048】
ここで、上述した本発明に係るシート材の取付け構造の実施形態の特徴をそれぞれ以下[1]~[5]に簡潔に纏めて列記する。
[1] シート材(カバー50)に設けられ、大径穴(71)と小径穴(73)とが連通部(75)により連通された取付け穴部(70)と、
前記取付け穴部(70)に対応して被取付け部材(樹脂ケース20)に設けられ、前記取付け穴部(70)を係止して前記被取付け部材(樹脂ケース20)に前記シート材(カバー50)を取付ける係止部(60)と、
前記連通部(75)に設けられ、前記連通部(75)の幅(W1)を前記小径穴(73)の内径(D2)よりも狭める凸片(77)と、
前記係止部(60)に設けられ、前記小径穴(73)に挿通される柱部(61)と、前記柱部(61)の先端部に形成され、前記大径穴(71)に挿通されるとともに前記小径穴(73)の開口縁に係止される頭部(63)と、前記柱部(61)の側面に形成され、前記連通部(75)に前記柱部(61)を通過させる際には前記柱部(61)に接触した前記凸片(77)を前記シート材(カバー50)の厚み方向に撓ませる傾斜面(69)を有する挿入ガイド部(65)と、
を備えたシート材の取付け構造。
[2] 前記凸片(77)における前記小径穴(73)側の側縁(77a)には、先端が前記小径穴(73)側に突出した返し形状部(77b)が形成され、
前記柱部(61)には、前記返し形状部(77b)に対応する係止凹部(68)が形成されている、
上記[1]に記載のシート材の取付け構造。
[3] 前記係止部(60)を挟んで前記被取付け部材(樹脂ケース20)に設けられ、前記小径穴(73)の開口縁が前記頭部(63)に対して接触するように前記シート材(カバー50)を支持する一対の支持凸部(80)を備えた、
上記[1]又は[2]に記載のシート材の取付け構造。
[4] 前記シート材(カバー50)は、前記被取付け部材としての樹脂ケース(20)に設けられた前記係止部(60)に取付けられる前記取付け穴部(70)が形成された取付け固定部(51)を有する絶縁樹脂シートである、
上記[1]~[3]の何れか一つに記載のシート材の取付け構造。
[5] 前記絶縁樹脂シートは、前記取付け固定部(51)に連設されて前記樹脂ケース(20)のバスバー収容部(21)を覆う蓋体部(53)を有する、
上記[4]に記載のシート材の取付け構造。
【符号の説明】
【0049】
20…樹脂ケース(被取付け部材)
50…カバー(シート材)
60…係止部
61…柱部
63…頭部
65…挿入ガイド部
69…傾斜面
70…取付け穴部
71…大径穴
73…小径穴
75…連通部
77…凸片