(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】ヘテロ環式化合物
(51)【国際特許分類】
C07D 498/14 20060101AFI20240305BHJP
C07D 513/14 20060101ALI20240305BHJP
C07D 519/00 20060101ALI20240305BHJP
A61K 31/519 20060101ALI20240305BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240305BHJP
A61P 7/04 20060101ALI20240305BHJP
A61K 35/19 20150101ALN20240305BHJP
C12N 5/078 20100101ALN20240305BHJP
【FI】
C07D498/14 CSP
C07D513/14
C07D519/00 301
A61K31/519
A61P43/00 105
A61P7/04
A61K35/19
C12N5/078
(21)【出願番号】P 2021512830
(86)(22)【出願日】2019-09-06
(86)【国際出願番号】 JP2019035233
(87)【国際公開番号】W WO2020050409
(87)【国際公開日】2020-03-12
【審査請求日】2022-09-02
(31)【優先権主張番号】P 2018167488
(32)【優先日】2018-09-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000206956
【氏名又は名称】大塚製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】大達 一弘
(72)【発明者】
【氏名】藤森 悠介
(72)【発明者】
【氏名】牧田 直也
(72)【発明者】
【氏名】古関 教孝
(72)【発明者】
【氏名】林 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】坂元 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】峰野 くるみ
(72)【発明者】
【氏名】多賀 亮介
【審査官】阿久津 江梨子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/138485(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/082997(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/195397(WO,A2)
【文献】国際公開第2016/204256(WO,A1)
【文献】国際公開第2010/059401(WO,A1)
【文献】Science,2014年,Vol. 345, No. 6203,p. 1509-1512
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
A61K
A61P
C12N
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式[I]:
【化1】
〔式中、
R
1およびR
2は、同一または異なり、それぞれ独立して、水素またはC
1-6アルキルを表し;
R
3およびR
4は、同一または異なり、それぞれ独立して、水素またはC
1-6アルキルであり、またはR
3およびR
4は一体となって結合してC
2-5アルキレンを形成し;
XはO、SまたはS(O)を表し;
nは1、2または3を表し;
環Aは、場合により置換されていてよい炭化水素環(ただし、シクロヘキサンおよびシクロヘキセンを除く)または場合により置換されていてよいヘテロ環式環(ただし、チオフェンおよびキノリンを除く)を表し、該炭化水素環および該ヘテロ環式環は、場合により置換されていてよい炭化水素環および/または場合により置換されていてよいヘテロ環式環がさらに結合していてもよい、そして
環Bは、場合により置換されていてもよい炭化水素環または場合により置換されていてもよいヘテロ環式環を表し、該炭化水素環および該ヘテロ環式環は、場合により置換されていてよい炭化水素環および/または場合により置換されていてよいヘテロ環式環がさらに結合していてもよい〕
で表される化合物またはその塩。
【請求項2】
環Aが、ベンゼン、ピリジン、イミダゾピリジンまたはトリアゾロピリジンであり、これらの各々は、1~4個の同一または異なる、それぞれ独立して、ハロゲン、場合によりハロゲンで置換されていてよいC
1-6アルキル、-CN、-OR
5、-SR
5、-COOR
5、-C
1-6アルキレン-CONR
5R
6、-C
1-6アルキレン-OCOR
5、-CONR
5R
6、-NR
5COOR
6、-SO
2R
5または-NR
5R
6(R
5およびR
6は同一または異なり、それぞれ独立して水素または場合によりハロゲンで置換されていてよいC
1-6アルキルを表す)である置換基で、環上で場合により置換されていてよいものである、請求項1に記載の化合物またはその塩。
【請求項3】
環Aが、ベンゼンまたはピリジンであり、これらの各々は、1~4個の同一または異なる、それぞれ独立して、ハロゲン、場合によりハロゲンで置換されていてよいC
1-6アルキルまたは-CNである置換基で、環上で場合により置換されていてよいものである、請求項2に記載の化合物またはその塩。
【請求項4】
環Bが、ベンゼン、ビフェニル、ピリジニルベンゼン、チエニルベンゼン、ベンゾチエニルベンゼン、インドールまたは3,4-ジヒドロ-1H-キノリン-2-オンであり、これらの各々は、1~4個の同一または異なる、それぞれ独立して、ハロゲン、場合によりハロゲンで置換されていてよいC
1-6アルキル、-CN、-OR
5、-SR
5、-COOR
5、-C
1-6アルキレン-CONR
5R
6、-C
1-6アルキレン-OCOR
5、-CONR
5R
6、-NR
5COOR
6、-SO
2R
5または-NR
5R
6(R
5およびR
6は同一または異なり、それぞれ独立して水素または場合によりハロゲンで置換されていてよいC
1-6アルキルを表す)である置換基で、環上で場合により置換されていてよいものである、請求項1~3のいずれかに記載の化合物またはその塩。
【請求項5】
環Bが、ベンゼン、ビフェニル、ピリジニルベンゼン、チエニルベンゼン、ベンゾチエニルベンゼンまたはインドールであり、これらの各々は、1~4個の同一または異なる、それぞれ独立して、ハロゲン、場合によりハロゲンで置換されていてよいC
1-6アルキル、-CN、-OR
5または-SO
2R
5(R
5は、水素または場合によりハロゲンで置換されていてよいC
1-6アルキルを表す)である置換基で、環上で場合により置換されていてよいものである、請求項4に記載の化合物またはその塩。
【請求項6】
R
1およびR
2が、同一または異なり、それぞれ独立して、水素またはメチルであり;
R
3およびR
4が、それぞれ水素であり;
XがOまたはSであり;そして
nが1である、
請求項1~5のいずれかに記載の化合物またはその塩。
【請求項7】
環Bが、次の式:
【化2】
〔式中、
R
7は、ハロゲン、場合によりハロゲンで置換されていてよいC
1-6アルキル、-CN、-OR
5または-SO
2R
5(R
5は、水素または場合によりハロゲンで置換されていてよいC
1-6アルキルを表す)であり;
mは0、1または2であり、mが2であるとき、R
7はそれぞれ独立して、同一または異なる置換基を表す〕
により表されるものである、請求項1~6のいずれかに記載の化合物またはその塩。
【請求項8】
下記化合物群からなる群から選択される、請求項1~7のいずれかに記載の化合物またはその塩。
【化3】
【化4】
【請求項9】
請求項1~8のいずれかに記載の化合物またはその塩の
、インビトロにおける芳香族炭化水素受容体アンタゴニストとしての使用。
【請求項10】
請求項1~8のいずれかに記載の化合物またはその塩を含む、血小板産生促進剤。
【請求項11】
1または2種類以上のTPOまたはTPO受容体アゴニスト、1または2種類以上のROCK阻害剤および/または1または2種類以上のADAM阻害剤をさらに含む、請求項10に記載の血小板産生促進剤。
【請求項12】
インビトロにおいて血小板産生を促進させるための、請求項1~8のいずれかに記載の化合物またはその塩の使用。
【請求項13】
1または2種類以上のTPOまたはTPO受容体アゴニスト、1または2種類以上のROCK阻害剤および/または1または2種類以上のADAM阻害剤とともに使用するための請求項12に記載の使用。
【請求項14】
請求項1~8のいずれかに記載の化合物またはその塩の存在下、血小板前駆細胞を培養することを含む、
インビトロにおける血小板の製造方法。
【請求項15】
1または2種類以上のTPOまたはTPO受容体アゴニスト、1または2種類以上のROCK阻害剤および/または1または2種類以上のADAM阻害剤とともに使用される請求項14に記載の方法。
【請求項16】
血小板産生を促進させるための血小板前駆体の
、インビトロにおける培養方法であって、請求項1~8に記載の化合物またはその塩の存在下、血小板前駆細胞を培養する方法。
【請求項17】
1または2種類以上のTPOまたはTPO受容体アゴニスト、1または2種類以上のROCK阻害剤および/または1または2種類以上のADAM阻害剤とともに使用される請求項16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘテロ環式化合物に関する。より具体的には、本発明は、芳香族炭化水素受容体(AhR)アンタゴニスト活性を有し、インビトロにおいて巨核球のような血小板前駆細胞からの血小板の産生を促進する化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
血小板製剤は、手術時または傷害時に大量出血を有する、または抗がん剤治療後の血小板減少により出血する傾向がある患者に対し、その症状の治療および予期せぬ出血に対する予防のために投与される。
現在、血小板製剤は献血に依存しており、その保存期間は約4日であり、極めて短期間である。さらに、血小板製剤を献血のみにより供給する限り、献血者数の減少により、近い将来、血小板製剤が不足し得ると予測される。
これらのニーズに応えるために、インビトロで血小板を産生する方法が研究されている。
インビトロで血小板を産生する方法として、種々の幹細胞を分化させることにより巨核球を得て、これらを培養して血小板を培地に放出させる方法が開発されている。例えば、タカヤマらが、ヒトES細胞の巨核球および血小板への分化を誘発させることに成功している(非特許文献1)
さらに、インビトロで造血前駆細胞から血小板を産生する方法として、芳香族炭化水素受容体アンタゴニストおよびトロンボポエチン(TPO)またはRho関連コイルドコイル形成キナーゼ(ROCK)阻害剤の存在下で造血前駆細胞を培養する方法が提案されている(特許文献1、2および3ならびに非特許文献2、3および4)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2014/138485号
【文献】国際公開第2016/204256号
【文献】国際公開第2010/059401号
【非特許文献】
【0004】
【文献】Takayama et al., Blood, 111, 5298 (2008)
【文献】Boitano et al., Science, 329, 1345 (2010)
【文献】Strassel et al., Blood, 127, 2231 (2016)
【文献】Ito et al., Cell, 174, 636 (2018)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、芳香族炭化水素受容体アンタゴニスト活性を有し、血小板産生の促進に有用な新規なヘテロ環式化合物またはその塩を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために幅広い研究を実施した結果、本発明の発明者らは、下記の式で表される化合物が優れた芳香族炭化水素受容体アンタゴニスト活性を有し、血小板産生を促進する効果を有することを見いだし、それにより、本発明の完成に至った。
【0007】
すなわち、本発明は、次の態様を含む。
[1]一般式[I]:
【化1】
〔式中、
R
1およびR
2は、同一または異なり、それぞれ独立して、水素またはC
1-6アルキルを表し;
R
3およびR
4は、同一または異なり、それぞれ独立して、水素またはC
1-6アルキルを表し、またはR
3およびR
4は一体となって結合してC
2-5アルキレンを形成し;
XはO、SまたはS(O)を表し;
nは1、2または3を表し;および
環Aおよび環Bは、同一または異なり、それぞれ独立して、場合により置換されていてよい炭化水素環または場合により置換されていてよいヘテロ環式環を表し、該炭化水素環および該ヘテロ環式環は、場合により置換されていてよい炭化水素環および/または場合により置換されていてよいヘテロ環式環と、場合によりさらに結合していてよい〕
で表される化合物またはその塩。
[2]環Aが、ベンゼン、ピリジン、シクロヘキサン、シクロヘキセン、チオフェン、イミダゾピリジン、トリアゾロピリジンまたはキノリンであり、これらの各々は、1~4個の同一または異なる、それぞれ独立して、ハロゲン、場合によりハロゲンで置換されていてよいC
1-6アルキル、-CN、-OR
5、-SR
5、-COOR
5、-C
1-6アルキレン-CONR
5R
6、-C
1-6アルキレン-OCOR
5、-CONR
5R
6、-NR
5COOR
6、-SO
2R
5または-NR
5R
6(R
5およびR
6は同一または異なり、それぞれ独立して水素またはハロゲンで置換されていてよいC
1-6アルキルを表す)である置換基で、環上で場合により置換されていてよいものである、[1]に記載の化合物またはその塩。
[3]環Aが、ベンゼンまたはピリジンであり、これらの各々は、1~4個の同一または異なる、それぞれ独立して、ハロゲン、場合によりハロゲンで置換されていてよいC
1-6アルキルまたは-CNである置換基で、環上で場合により置換されていてよいものである、[2]に記載の化合物またはその塩。
[4]環Bが、ベンゼン、ビフェニル、ピリジニルベンゼン、チエニルベンゼン、ベンゾチエニルベンゼン、インドールまたは3,4-ジヒドロ-1H-キノリン-2-オンであり、これらの各々は1~4個の同一または異なる、それぞれ独立して、ハロゲン、場合によりハロゲンで置換されていてよいC
1-6アルキル、-CN、-OR
5、-SR
5、-COOR
5、-C
1-6アルキレン-CONR
5R
6、-C
1-6アルキレン-OCOR
5、-CONR
5R
6、-NR
5COOR
6、-SO
2R
5または-NR
5R
6(R
5およびR
6は同一または異なり、それぞれ独立して水素または場合によりハロゲンで置換されていてよいC
1-6アルキルを表す)である置換基で、環上で場合により置換されていてよいものである、[1]~[3]のいずれかに記載の化合物またはその塩。
[5]環Bが、ベンゼン、ビフェニル、ピリジニルベンゼン、チエニルベンゼン、ベンゾチエニルベンゼンまたはインドールであり、これらの各々は、1~4個の同一または異なる、それぞれ独立して、ハロゲン、場合によりハロゲンで置換されていてよいC
1-6アルキル、-CN、-OR
5または-SO
2R
5(R
5は水素または場合によりハロゲンで置換されていてよいC
1-6アルキルを表す)である置換基で、環上で場合により置換されていてよいものである、[4]に記載の化合物またはその塩。
[6]R
1およびR
2が、同一または異なり、それぞれ独立して、水素またはメチルを表し;
R
3およびR
4が、それぞれ水素を表し;
XがOまたはSであり;
nが1である、
[1]~[5]のいずれかに記載の化合物またはその塩。
[7]環Bが、次の式:
【化2】
〔式中、
R
7は、ハロゲン、場合によりハロゲンで置換されていてよいC
1-6アルキル、-CN、-OR
5または-SO
2R
5(R
5は、水素または場合によりハロゲンで置換されていてよいC
1-6アルキルを表す)であり;そして
mは0、1、または2であり、mが2であるとき、R
7はそれぞれ独立して、同一または異なる置換基を表す〕
により表されるものである、[1]~[6]のいずれかに記載の化合物またはその塩。
【発明の効果】
【0008】
本発明の化合物またはその塩は、優れた芳香族炭化水素受容体アンタゴニスト活性を有する。さらに、本発明の化合物またはその塩は、血小板前駆細胞から血小板の産生を促進する効力を有する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書において使用される用語および語句を、以下に詳述する。
【0010】
本明細書において、「ハロゲン」は、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素である。好ましくはフッ素、塩素または臭素であり、より好ましくはフッ素または塩素である。
【0011】
本明細書において、「C1-6アルキル」は、1~6個の炭素原子(C1-6)を有する直鎖または分枝鎖状アルキルであり、その具体例は、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、n-ヘキシル、イソヘキシル、3-メチルペンチルなどを含む。
さらに、「C1-6アルキル」は、1~7個の水素原子が重水素原子に置換されたC1-6アルキルを含む。
【0012】
本明細書において、「場合によりハロゲンで置換されていてよいC1-6アルキル」は、1~4個、好ましくは1~3個のハロゲンで場合により置換されていてよい1~6個の炭素原子(C1-6)を有する直鎖または分枝鎖状アルキルであり、その具体例は、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、sec-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、n-ヘキシル、イソヘキシル、3-メチルペンチル、フルオロメチル、クロロメチル、ブロモメチル、ヨードメチル、ジフルオロメチル、ジクロロメチル、ジブロモメチル、トリフルオロメチル、トリクロロメチル、2-フルオロエチル、2-クロロエチル、2,2,2-トリフルオロエチル、2,2,2-トリクロロエチル、1,1,2,2-テトラフルオロエチル、3-クロロプロピル、2,3-ジクロロプロピル、4,4,4-トリクロロブチル、4-フルオロブチル、5-クロロペンチル、3-クロロ-2-メチルプロピル、5-ブロモヘキシル、5,6-ジブロモヘキシルなどを含む。
【0013】
本明細書において、「C1-6アルキレン」は、1~6個の炭素原子(C1-6)を有する直鎖または分枝鎖状アルキレンであり、その具体例は、メチレン、エチレン、1-メチルエチレン、2-メチルエチレン、トリメチレン、2-メチルトリメチレン、2,2-ジメチルトリメチレン、1-メチルトリメチレン、メチルメチレン、エチルメチレン、ジメチルメチレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレンなどを含む。
【0014】
本明細書において、「C2-5アルキレン」は、2~5個の炭素原子(C2-5)を有する直鎖または分枝鎖状アルキレンであり、その具体例は、エチレン、1-メチルエチレン、2-メチルエチレン、トリメチレン、2-メチルトリメチレン、2,2-ジメチルトリメチレン、1-メチルトリメチレン、メチルメチレン、エチルメチレン、ジメチルメチレン、テトラメチレン、ペンタメチレンなどを含む。
【0015】
本明細書において、「炭化水素環」は、飽和または不飽和の単環式または多環式である炭化水素環であり、例えば、飽和または不飽和の3~15員の単環式、二環式または三環式炭化水素環を含む。「不飽和」の環とは、芳香環、または芳香環の環原子間結合が部分的に水素化された環をいう。炭化水素環の環原子はオキソで置換されてオキシドまたはジオキシドを形成し得る。「炭化水素環」の具体例は、次のものを含む:
(a)飽和または不飽和の3員~8員(好ましくは5員または6員)の単環式炭化水素環;具体的には、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン、ベンゼンならびにこれらのオキシドおよびジオキシドを含む;ならびに
(b)飽和または不飽和の7~15員の二環式または三環式炭化水素環、好ましくは飽和または不飽和の7~12員の二環式炭化水素環;具体的には、インデン、ジヒドロインデン、ナフタレン、ジヒドロナフタレン、テトラヒドロナフタレン、アントラセン、フェナントレンならびにこれらのオキシドおよびジオキシドを含む。
【0016】
本明細書において、「ヘテロ環式環」は、環構成ヘテロ原子として窒素、酸素および硫黄から成る群から独立して選択される1~5個のヘテロ原子を含有する飽和または不飽和の単環式または多環式のヘテロ環式環であり、例えば、飽和または不飽和の3~15員単環式、二環式または三環式ヘテロ環式環を含む。「不飽和」の環とは、芳香環、または芳香環の環原子間結合が部分的に水素化された環をいう。「含窒素ヘテロ環式環」とは、環構成ヘテロ原子として少なくとも1個の窒素を含有するヘテロ環式環をいう。ヘテロ環式環の環原子はオキソで置換されてオキシドまたはジオキシドを形成し得る。「ヘテロ環式環」の具体例は、次のものを含む:
(a)環構成ヘテロ原子として1個~4個の窒素原子のみを含有する飽和または不飽和の3員~8員、好ましくは3員~6員、より好ましくは5員または6員単環式ヘテロ環式環;具体的には、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、テトラヒドロピリジン、ピリミジン、ピラジン、ピリダジン、トリアゾール、テトラゾール、ジヒドロトリアジン、アゼチジン、ピロリジン、イミダゾリジン、ピペリジン、ピラゾリジン、ピペラジン、アゼパン、1,4-ジアゼパンならびにこれらのオキシドおよびジオキシドを含む;
(b)環構成ヘテロ原子として1個~5個の窒素原子のみを含有する飽和または不飽和の7員~15員二環式または三環式ヘテロ環式環、好ましくは環構成ヘテロ原子として1個~3個の窒素原子のみを含有する飽和または不飽和の7~12員二環式または三環式ヘテロ環式環;具体的には、インドール、インドリン(ジヒドロインドール)、イソインドール、イソインドリン(ジヒドロイソインドール)、ベンゾイミダゾール、ジヒドロベンゾイミダゾール、インダゾール、インダゾリン(ジヒドロインダゾール)、キノリン、ジヒドロキノリン、テトラヒドロキノリン、デカヒドロキノリン、イソキノリン、ジヒドロイソキノリン、テトラヒドロイソキノリン、ベンゾトリアゾール、テトラゾロピリジン、テトラゾロピリダジン、ジヒドロトリアゾロピリダジン、イミダゾピリジン、ナフチリジン、テトラヒドロナフチリジン、ヘキサヒドロナフチリジン、シンノリン、キノキサリン、ジヒドロキノキサリン、テトラヒドロキノキサリン、キナゾリン、ジヒドロキナゾリン、テトラヒドロキナゾリン、ピラゾロピリジン、テトラヒドロピリドインドール、ベンゾアゼピン、テトラヒドロベンゾアゼピン、カルバゾール、フェナントリジン、ジヒドロフェナントリジンならびにこれらのオキシドおよびジオキシドを含む;
(c)環構成ヘテロ原子として1個または2個の酸素原子のみを含有する飽和または不飽和の3員~8員(好ましくは5員または6員)単環式ヘテロ環式環;具体的には、フラン、テトラヒドロピラン、テトラヒドロフラン、ジオキサンならびにこれらのオキシドおよびジオキシドを含む;
(d)環構成ヘテロ原子として1個~3個の酸素原子のみを含有する飽和または不飽和の7員~12員二環式ヘテロ環式環;具体的には、ベンゾフラン、ジヒドロベンゾフラン、クロマン、ベンゾジオキソール、ベンゾジオキサンならびにこれらのオキシドおよびジオキシドを含む;
(e)環構成ヘテロ原子として1個の硫黄原子のみを含有する飽和または不飽和の3員~8員(好ましくは5員または6員)単環式ヘテロ環式環;具体的には、チオフェンならびにこれらのオキシドおよびジオキシドを含む;
(f)環構成ヘテロ原子として1個~3個の硫黄原子のみを含有する飽和または不飽和の7員~12員二環式ヘテロ環式環;具体的には、ベンゾチオフェンならびにこれらのオキシドおよびジオキシドを含む;
(g)環構成ヘテロ原子として1個または2個の酸素原子と1個~3個の窒素原子を含有する飽和または不飽和の3員~8員(好ましくは5員または6員)単環式ヘテロ環式環;具体的には、オキサゾール、イソオキサゾール、オキサジアゾール、モルホリンならびにこれらのオキシドおよびジオキシドを含む;
(h)環構成ヘテロ原子として1個または2個の酸素原子と1個~3個の窒素原子を含有する飽和または不飽和の7員~12員二環式ヘテロ環式環;具体的には、ベンゾオキサゾール、ジヒドロベンゾオキサゾール、ベンゾオキサジアゾール、ベンゾイソオキサゾール、ベンゾオキサジン、ジヒドロベンゾオキサジン、フロピリジン、フロピロール、ベンゾオキサゼピン、テトラヒドロベンゾオキサゼピンならびにこれらのオキシドおよびジオキシドを含む;
(i)環構成ヘテロ原子として1個または2個の硫黄原子と1個~3個の窒素原子を含有する飽和または不飽和の3員~8員(好ましくは5員または6員)単環式ヘテロ環式環;具体的には、チアゾール、チアゾリン(ジヒドロチアゾール)、チアジアゾール、イソチアゾール、チアゾリジンならびにこれらのオキシドおよびジオキシドを含む;
(j)環構成ヘテロ原子として1個または2個の硫黄原子と1個~3個の窒素原子を含有する飽和または不飽和の7員~12員二環式ヘテロ環式環;具体的には、ベンゾチアゾール、ジヒドロベンゾチアゾール、ベンゾチアジアゾール、チエノピリジン、イミダゾチアゾール、ジヒドロイミダゾチアゾール、チエノピラジン、ベンゾチアジン、ジヒドロベンゾチアジン、ベンゾチアゼピン、テトラヒドロベンゾチアゼピンならびにこれらのオキシドおよびジオキシドを含む;ならびに
(k)環構成ヘテロ原子として1個または2個の酸素原子と1個~3個の硫黄原子とを含有する飽和または不飽和の7員~12員二環式ヘテロ環式環;具体的には、ベンゾオキサチインならびにそのオキシドおよびジオキシドを含む。
【0017】
一般式[I]により表される本発明の化合物(以下、「本発明の化合物[I]」と称する)における各置換基について、以下に説明する。
【0018】
本発明の化合物[I]における環Aは、場合により置換されていてよい炭化水素環または場合により置換されていてよいヘテロ環式環であり、該炭化水素環および該ヘテロ環式環は、場合により置換されていてよい炭化水素環および/または場合により置換されていてよいヘテロ環式環が場合によりさらに結合していてよく、環Aは、例えば、ベンゼン、ピリジン、シクロヘキサン、シクロヘキセン、チオフェン、イミダゾピリジン、トリアゾロピリジンまたはキノリンであり、好ましくは、ベンゼンまたはピリジンである。
【0019】
本発明の化合物[I]における環Bは、場合により置換されていてよい炭化水素環または場合により置換されていてよいヘテロ環式環であり、該炭化水素環および該ヘテロ環式環は、場合により置換されていてよい炭化水素環および/または場合により置換されていてよいヘテロ環式環が場合によりさらに結合していてよく、環Bは、例えば、ベンゼン、ビフェニル、ピリジニルベンゼン、チエニルベンゼン、ベンゾチエニルベンゼン、インドールまたは3,4-ジヒドロ-1H-キノリン-2-オンであり、好ましくはベンゼン、ビフェニル、ピリジニルベンゼンまたはインドールである。
【0020】
本明細書において、環Aおよび環B上の一部または全ての水素は、場合により重水素に置換されていてよい。
【0021】
本発明の化合物[I]における環Aおよび環Bは、1~4個の同一または異なる、それぞれ独立した置換基で、環上で場合により置換されていてよい。該置換基は、例えば、ハロゲン、場合によりハロゲンで置換されていてよいC1-6アルキル、-CN、-OR5、-SR5、-COOR5、-C1-6アルキレン-CONR5R6、-C1-6アルキレン-OCOR5、-CONR5R6、-NR5COOR6、-SO2R5または-NR5R6である。
環A上の置換基は、好ましくは、ハロゲン、場合によりハロゲンで置換されていてよいC1-6アルキルまたは-CNである。
環B上の置換基は、好ましくは、ハロゲン、場合によりハロゲンで置換されていてよいC1-6アルキル、-OR5または-CNである。
ここで、R5およびR6は、同一または異なり、それぞれ独立して、水素または場合によりハロゲンで置換されていてよいC1-6アルキルである。
【0022】
本発明の化合物[I]におけるR1およびR2は、同一または異なり、それぞれ独立して、水素またはC1-6アルキルであり、好ましくは、水素またはメチルである。
【0023】
本発明の化合物[I]におけるR3およびR4は、同一または異なり、それぞれ独立して、水素またはC1-6アルキル、またはR3とR4が結合したC2-5アルキレンであり、好ましくはR3およびR4はそれぞれ、水素またはR3とR4が結合したエチレンであり、さらに好ましくは、R3およびR4はそれぞれ、水素である。
【0024】
本発明の化合物[I]におけるXはO、SまたはS(O)であり、好ましくはOまたはSである。
【0025】
本発明の化合物[I]におけるnは1、2または3であり、好ましくは1である。
【0026】
本発明の化合物[I]の好ましい態様を下記に示す。
(1)式[I]中、環Aはベンゼンまたはピリジンであり、該ベンゼンまたは該ピリジンの環上の水素は、場合によりフッ素、メチルまたは-CNで置換されていてよく;
(2)式[I]中、環Bは次の式:
【化3】
〔式中、
R
7は、ハロゲン、場合によりハロゲンで置換されていてよいC
1-6アルキル、-CN、-OR
5、-SR
5、-COOR
5、-C
1-6アルキレン-CONR
5R
6、-C
1-6アルキレン-OCOR
5、-CONR
5R
6、-NR
5COOR
6、-SO
2R
5または-NR
5R
6(R
5およびR
6は、同一または異なり、それぞれ独立して水素または場合によりハロゲンで置換されていてよいC
1-6アルキルを表す)であり、
mは0、1、または2であり、mが2であるとき、R
7はそれぞれ独立して、同一または異なる置換基であり、
例えば、(R
7)
mは、フッ素、2個のフッ素、塩素、メチル、エチル、トリフルオロメチル、ヒドロキシ、メトキシ、-CN、-CON(CH
3)
2、-CH
2CON(CH
3)
2、メチルスルホニルまたは各々1個のフッ素と-CN置換を表す〕
により表され;
(3)式[I]中、R
1およびR
2は、同一または異なり、それぞれ独立して、水素またはメチルであり;
(4)式[I]中、R
3およびR
4の各々は水素であり;
(5)式[I]中、XはOまたはSであり;そして
(6)式[I]中、nは1である。
【0027】
本発明の化合物[I]のさらに好ましい態様を以下に示す。
(1)式[I]中、環Aはベンゼンまたはピリジンであり、該ベンゼンまたは該ピリジンの環上で、同一または異なる、それぞれ独立した1または2個のフッ素、メチルまたは-CNで場合により置換されていてよく;
(2)式[I]中、環Bは次の式
【化4】
〔式中、
R
7は、ハロゲン、場合によりハロゲンで置換されていてよいC
1-6アルキル、-CN、-OR
5または-SO
2R
5(R
5は、水素または場合によりハロゲンで置換されていてよいC
1-6アルキルを表す)であり、
mは0、1、または2であり、mが2であるとき、R
7はそれぞれ独立して、同一または異なる置換基であり、
例えば、(R
7)
mは、フッ素、2個のフッ素、塩素、メチル、エチル、トリフルオロメチル、ヒドロキシ、メトキシ、-CN、メチルスルホニルまたは、各々1個のフッ素および-CN置換を表す〕
により表され;
(3)式[I]中、R
1およびR
2は、同一または異なり、それぞれ独立して、水素またはメチルであり;
(4)式[I]中、R
3およびR
4は、それぞれ水素であり
(5)式[I]中、XはOまたはSであり
(6)式[I]中、nは1である。
【0028】
本発明の別の好ましい態様を以下に示す。
次の化合物から成る群から選択される化合物またはその塩。
【化5】
【化6】
【化7】
【0029】
本明細書において、本発明の化合物、方法および組成物の種々の特徴は組合せることが可能であり、これらの本質と矛盾しない限り、種々の特徴についての好ましい態様および選択肢の組合せの提示もまた、含まれる。
【0030】
以下、本発明の化合物[I]の製造方法について記載する。本発明の化合物[I]は、例えば下記に示す製造方法に基づき製造され得る。下記に示す製造方法は例示であり、化合物[I]の製造方法はこれらに限定されない。
【0031】
下記の反応式において、アルキル化反応、加水分解反応、アミノ化反応、エステル化反応、アミド化反応、エーテル化反応、求核置換反応、付加反応、酸化反応、還元反応などを行う場合、これらの反応は、自体既知の方法に従って行われる。このような方法の例は、実験化学講座(第5版、日本化学会編、丸善株式会社)、Organic Functional Group Preparations, 2nd edition, Academic Press, Inc. (1989);Comprehensive Organic Transformations, VCH Publishers Inc. (1989);Greene’s Protective Groups in Organic Synthesis, 4th edition, (2006)、P.G.M. WutsおよびT.W. Greene著;などに記載の方法を含む。
【0032】
化合物[I]の一般的な合成経路
【化8】
〔式中、
環A、環B、R
1、R
2、R
3、R
4、nおよびXは上記で定義されるとおりであり、
Yは脱離基を表す〕
上記合成経路で示される反応により、本発明の化合物[I]が製造され得る。具体的には、脱離基(Y)を有する化合物[II]は、パラジウム化合物の存在下で化合物[III]と鈴木クロスカップリングに供され、化合物[I]が製造され得る。
【0033】
上記反応において使用される「脱離基」の具体例は、ハロゲン、C1-18アルカンスルホニル、低級アルカンスルホニルオキシ、アリールスルホニルオキシ、アラルキルスルホニルオキシ、ペルハロアルカンスルホニルオキシ、スルホニオ、トルエンスルホキシなどを含む。本反応における好ましい脱離基は、ハロゲンである。
【0034】
「ハロゲン」は、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素である。
【0035】
「C1-18アルカンスルホニル」の例は、1~18個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖状アルカンスルホニルを含み、その具体例は、メタンスルホニル、1-プロパンスルホニル、2-プロパンスルホニル、ブタンスルホニル、シクロヘキサンスルホニル、ドデカンスルホニル、オクタデカンスルホニルなどを含む。
【0036】
「低級アルカンスルホニルオキシ」の例は、1~6個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖状アルカンスルホニルオキシを含み、その具体例は、メタンスルホニルオキシ、エタンスルホニルオキシ、1-プロパンスルホニルオキシ、2-プロパンスルホニルオキシ、1-ブタンスルホニルオキシ、3-ブタンスルホニルオキシ、1-ペンタンスルホニルオキシ、1-ヘキサンスルホニルオキシなどを含む。
【0037】
「アリールスルホニルオキシ」の例は、フェニル環上の置換基として1~6個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖状アルキル、1~6個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖状アルコキシ、ニトロおよびハロゲンから成る群から選択される1~3個の基を場合により有していてよいフェニルスルホニルオキシ、ナフチルスルホニルオキシなどを含む。「場合により置換基を有していてよいフェニルスルホニルオキシ」の具体例は、フェニルスルホニルオキシ、4-メチルフェニルスルホニルオキシ、2-メチルフェニルスルホニルオキシ、4-ニトロフェニルスルホニルオキシ、4-メトキシフェニルスルホニルオキシ、2-ニトロフェニルスルホニルオキシ、3-クロロフェニルスルホニルオキシなどを含む。「ナフチルスルホニルオキシ」の具体例は、α-ナフチルスルホニルオキシ、β-ナフチルスルホニルオキシなどを含む。
【0038】
「アラルキルスルホニルオキシ」の例は、フェニル環上の置換基として1~6個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖状アルキル、1~6個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖状アルコキシ、ニトロおよびハロゲンから成る群から選択される1~3個の基を場合により有していてよいフェニルで置換された、1~6個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖状アルカンスルホニルオキシ;および、ナフチルで置換された1~6個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖状アルカンスルホニルオキシなどを含む。「フェニルで置換されたアルカンスルホニルオキシ」の具体例は、ベンジルスルホニルオキシ、2-フェニルエチルスルホニルオキシ、4-フェニルブチルスルホニルオキシ、4-メチルベンジルスルホニルオキシ、2-メチルベンジルスルホニルオキシ、4-ニトロベンジルスルホニルオキシ、4-メトキシベンジルスルホニルオキシ、3-クロロベンジルスルホニルオキシなどを含む。「ナフチルで置換されたアルカンスルホニルオキシ」の具体例は、α-ナフチルメチルスルホニルオキシ、β-ナフチルメチルスルホニルオキシなどを含む。
【0039】
「ペルハロアルカンスルホニルオキシ」の具体例は、トリフルオロメタンスルホニルオキシなどを含む。
【0040】
「スルホニオ」の具体例は、ジメチルスルホニオ、ジエチルスルホニオ、ジプロピルスルホニオ、ジ(2-シアノエチル)スルホニオ、ジ(2-ニトロエチル)スルホニオ、ジ-(アミノエチル)スルホニオ、ジ(2-メチルアミノエチル)スルホニオ、ジ-(2-ジメチルアミノエチル)スルホニオ、ジ-(2-ヒドロキシエチル)スルホニオ、ジ-(3-ヒドロキシプロピル)スルホニオ、ジ-(2-メトキシエチル)スルホニオ、ジ-(2-カルバモイルエチル)スルホニオ、ジ-(2-カルバモイルエチル)スルホニオ、ジ-(2-カルボキシエチル)スルホニオ、ジ-(2-メトキシカルボニルエチル)スルホニオまたはジフェニルスルホニオなどを含む。
【0041】
本反応において使用される「パラジウム化合物」は、特に限定されないが、その例は、ヘキサクロロパラジウム(IV)酸ナトリウム四水和物、ヘキサクロロパラジウム(IV)酸カリウムのような4価パラジウム触媒;[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)ジクロリド ジクロロメタン付加物(Pd(dppf)Cl2・CH2Cl2)、(2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,4’,6’-トリイソプロピル-1,1’-ビフェニル)[2-(2’-アミノ-1,1’-ビフェニル)]パラジウム(II) メタンスルホネート(XPhos Pd G3)、塩化パラジウム(II)、臭化パラジウム(II)、酢酸パラジウム(II)、パラジウムアセチルアセトナート(II)、ジクロロビス(ベンゾニトリル)パラジウム(II)、ジクロロビス(アセトニトリル)パラジウム(II)、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)、ジクロロテトラアンミンパラジウム(II)、ジクロロ(シクロオクタ-1,5-ジエン)パラジウム(II)、トリフルオ酢酸パラジウム(II)のような2価パラジウム触媒;トリス(ジベンジリデンアセトン)二パラジウム(0)(Pd2(dba)3)、トリス(ジベンジリデンアセトン)二パラジウムクロロホルム錯体(0)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(Pd(PPh3)4)のような0価パラジウム触媒を含む。これらのパラジウム化合物は、単独でまたは2以上の混合物として使用される。
【0042】
本反応において、使用されるパラジウム化合物の量は、特に限定されないが、通常は1モルの化合物[II]につき、パラジウムの単位で0.000001~20モルの範囲である。より好ましくは、使用されるパラジウム化合物の量は、1モルの化合物[II]につき、パラジウムの単位で0.0001~5モルの範囲である。
【0043】
本反応において使用される「塩基」の例は、無機塩基、有機塩基などを含む。「無機塩基」の例は、アルカリ金属水酸化物(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム)、アルカリ土類金属水酸化物(例えば、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム)、アルカリ金属炭酸塩(例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム)、アルカリ土類金属炭酸塩(例えば、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム)、アルカリ金属炭酸水素塩(例えば、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム)、アルカリ金属リン酸塩(例えば、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム)、アルカリ土類金属リン酸塩(例えば、リン酸マグネシウム、リン酸カルシウム)を含む。「有機塩基」の例は、トリアルキルアミン(例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン)、ピコリン、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノン-5-エン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンおよび1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エンなどを含む。
【0044】
本反応において使用される「ボロン酸」または「ボロン酸エステル」は別個に製造され、単離および精製され得る。例えば、パラジウム化合物存在下、ビスピナコールジボランを前駆体としてのハロゲン化化合物と反応させ、得られた化合物を単離精製することなく鈴木クロスカップリングさせる。
【0045】
本反応において使用される「溶媒」は、反応に不活性な溶媒であり得て、その例は、水、エーテル(例えば、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、1,2-ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテルおよびエチレングリコールジメチルエーテル)、ハロ炭化水素(例えば、塩化メチレン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタンおよび四塩化炭素)、芳香族炭化水素(例えば、ベンゼン、トルエンおよびキシレン)、低級アルコール(例えば、メタノール、エタノールおよびイソプロパノール)、および極性溶剤(例えば、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N-メチルピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ヘキサメチルリン酸トリアミドおよびアセトニトリル)を含む。これらの溶媒は、単独でまたは2以上の混合物として使用される。
【0046】
他の反応条件(反応温度、反応時間など)は、既知の鈴木クロスカップリング反応に基づいて適宜決定され得る。
【0047】
アミン側鎖-三環系付加反応
【化9】
〔式中、
環B、R
1、R
2、R
3、R
4、n、XおよびYは上記で定義されるとおりであり、
Y’は脱離基を表す〕
上記合成経路で示される反応により、本発明の化合物[I]が製造され得る。具体的には、塩基存在下、化合物[IV]を化合物[V]と付加反応させることにより、中間体[II]が製造され得る。
【0048】
脱離基(Y’)は、上記脱離基(Y)と類似の基を含む。YとY’は、上記反応が進行する限り、同一であっても異なっていてもよい。
【0049】
本反応において使用される「塩基」の例は、例えば、無機塩基、有機塩基などを含む。「無機塩基」の例は、アルカリ金属水酸化物(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム)、アルカリ土類金属水酸化物(例えば、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム)、アルカリ金属炭酸塩(例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム)、アルカリ土類金属炭酸塩(例えば、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム)、アルカリ金属炭酸水素塩(例えば、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム)、アルカリ金属リン酸塩(例えば、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム)、アルカリ土類金属リン酸塩(例えば、リン酸マグネシウム、リン酸カルシウム)を含む。「有機塩基」の例は、トリアルキルアミン(例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン)、ピコリン、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノン-5-エン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンおよび1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エンを含む。
【0050】
本反応において使用される「溶媒」は、反応に不活性な溶媒であり得て、例えば、水、エーテル(例えば、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、1,2-ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテルおよびエチレングリコールジメチルエーテル)、ハロ炭化水素(例えば、塩化メチレン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタンおよび四塩化炭素)、芳香族炭化水素(例えば、ベンゼン、トルエンおよびキシレン)、低級アルコール(例えば、メタノール、エタノールおよびイソプロパノール)、極性溶剤(例えば、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N-メチルピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ヘキサメチルリン酸トリアミドおよびアセトニトリル)を含む。これらの溶媒は、単独でまたは2以上の混合物として使用される。
【0051】
他の反応条件(反応温度、反応時間など)は、既知の付加反応に基づいて適宜決定され得る。
【0052】
三環式系の一般的な合成経路1(X=O)
【化10】
〔式中、
R
1、R
2およびnは上記で定義されるとおりであり、
Halはハロゲンを表す〕
上記合成経路で示される反応により、本発明の化合物[I]の中間体化合物[IVa]が製造され得る。具体的には、塩基存在下または非存在下、目的の化合物を製造するのに適したアルカノールアミンを2,5-ジアミノ-4,6-ジクロロピリミジンと置換させ、その後、1,1’-カルボニルジイミダゾール(CDI)との反応により塩基処理する。その後、得られた生成物をトリフェニルホスフィン存在下、アゾジカルボン酸ジエステルを用いて光延反応により閉環させる。さらに、ザンドマイヤー反応によりアミンを亜硝酸化合物でジアゾ化し、得られた生成物をその後ハロゲン化銅との反応によりハロゲン化し、それにより合成が達成される。
上記の光延反応による閉環反応と、上記のザンドマイヤー反応によるハロゲン化は、順序を入れ替えてもよいことに留意するべきである。すなわち、閉環反応の前にハロゲン化を行ってもよい。
【0053】
本反応において使用される「アルカノールアミン」は、所望の骨格を構成するものであり、その例は、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール、2-アミノエタノール、3-アミノ-1-プロパノール、3-アミノ-3-メチル-1-ブタノール、(2R)-2-アミノ-1-ヒドロキシプロパン、(2S)-2-アミノ-1-ヒドロキシプロパン、4-アミノ-1-ブタノールを含む。
【0054】
本反応の塩基存在下で使用される「塩基」の例は、無機塩基、有機塩基を含む。「無機塩基」の例は、アルカリ金属水酸化物(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム)、アルカリ土類金属水酸化物(例えば、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム)、アルカリ金属炭酸塩(例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム)、アルカリ土類金属炭酸塩(例えば、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム)、アルカリ金属炭酸水素塩(例えば、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム)、アルカリ金属リン酸塩(例えば、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム)、アルカリ土類金属リン酸塩(例えば、リン酸マグネシウム、リン酸カルシウム)を含む。「有機塩基」の例は、トリアルキルアミン(例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン)、ピコリン、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノン-5-エン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンおよび1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エンを含む。
【0055】
本反応において使用される「アゾジカルボン酸ジエステル」の例は、アゾジカルボン酸ジメチル、アゾジカルボン酸ジエチル、アゾジカルボン酸ジイソプロピル、アゾジカルボン酸ジ-tert-ブチル、アゾジカルボン酸ビス-2-メトキシエチルを含む。
【0056】
本反応における「溶媒」は、反応に不活性な溶媒であり得て、例えば、水、エーテル(例えば、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、1,2-ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテルおよびエチレングリコールジメチルエーテル)、ハロ炭化水素(例えば、塩化メチレン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタンおよび四塩化炭素)、芳香族炭化水素(例えば、ベンゼン、トルエンおよびキシレン)、低級アルコール(例えば、メタノール、エタノールおよびイソプロパノール)、極性溶剤(例えば、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N-メチルピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ヘキサメチルリン酸トリアミドおよびアセトニトリル)を含む。これらの溶媒は、単独でまたは2以上の混合物として使用される。あるいは、反応は無溶媒で実施され得る。
【0057】
ザンドマイヤー反応に使用される「亜硝酸化合物」の例は、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウム、亜硝酸メチル、亜硝酸エチル、亜硝酸n-プロピル、亜硝酸イソプロピル、亜硝酸イソブチル、亜硝酸n-ブチル、亜硝酸tert-ブチル、亜硝酸n-ペンチルおよび亜硝酸イソアミルを含む。
【0058】
ザンドマイヤー反応に使用される「ハロゲン化銅」は、フッ化銅、塩化銅、臭化銅、ヨウ化銅を含む。
【0059】
他の反応条件(反応温度、反応時間など)は、既知の反応に基づいて適宜決定され得る。
【0060】
三環式系の一般的な合成経路2(X=S)
【化11】
〔式中、
R
1、R
2およびnは上記で定義されるとおりであり、
Halはハロゲンを表す〕
上記合成経路で示される反応により、本発明の化合物[I]の中間体化合物[IVb]が製造され得る。具体的には、目的の化合物を製造するのに適したアルカノールアミンを2,5-ジアミノ-4,6-ジクロロピリミジンと置換させ、その後、1,1’-チオカルボニルジイミダゾール(TCDI)と反応させる。閉環が達成されないならば、得られた生成物を塩基と反応させるか、塩基処理後、トリフェニルホスフィン存在下、アゾジカルボン酸ジエステルを用いて光延反応により閉環させる。さらに、ザンドマイヤー反応により亜硝酸化合物を用いてアミンをジアゾ化し、得られた化合物をその後ハロゲン化銅と反応させハロゲン化し、それにより合成が達成される。
上記の光延反応による閉環反応と、上記のザンドマイヤー反応によるハロゲン化は、順序を入れ替えてもよいことに留意するべきである。
【0061】
本反応において使用される「アルカノールアミン」は、所望の骨格を構成するものであり、その例は、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール、2-アミノエタノール、3-アミノ-1-プロパノール、3-アミノ-3-メチル-1-ブタノール、(2R)-2-アミノ-1-ヒドロキシプロパン、(2S)-2-アミノ-1-ヒドロキシプロパン、4-アミノ-1-ブタノールを含む。
【0062】
本反応の塩基存在下で使用される「塩基」の例は、無機塩基、有機塩基などを含む。「無機塩基」の例は、アルカリ金属水酸化物(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム)、アルカリ土類金属水酸化物(例えば、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム)、アルカリ金属炭酸塩(例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム)、アルカリ土類金属炭酸塩(例えば、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム)、アルカリ金属炭酸水素塩(例えば、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム)、アルカリ金属リン酸塩(例えば、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム)、アルカリ土類金属リン酸塩(例えば、リン酸マグネシウム、リン酸カルシウム)を含む。「有機塩基」の例は、トリアルキルアミン(例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン)、ピコリン、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノン-5-エン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンおよび1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エンを含む。
【0063】
本反応において使用される「アゾジカルボン酸ジエステル」の例は、アゾジカルボン酸ジメチル、アゾジカルボン酸ジエチル、アゾジカルボン酸ジイソプロピル、アゾジカルボン酸ジ-tert-ブチル、アゾジカルボン酸ビス-2-メトキシエチルを含む。
【0064】
本反応における「溶媒」は、反応に不活性な溶媒であり得て、その例は、水、エーテル(例えば、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、1,2-ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテルおよびエチレングリコールジメチルエーテル)、ハロ炭化水素(例えば、塩化メチレン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタンおよび四塩化炭素)、芳香族炭化水素(例えば、ベンゼン、トルエンおよびキシレン)、低級アルコール(例えば、メタノール、エタノールおよびイソプロパノール)、極性溶剤(例えば、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N-メチルピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ヘキサメチルリン酸トリアミドおよびアセトニトリル)を含む。これらの溶媒は、単独でまたは2以上の混合物として使用される。あるいは、反応は無溶媒で実施され得る。
【0065】
ザンドマイヤー反応において使用される「亜硝酸化合物」は、例えば、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウム、亜硝酸メチル、亜硝酸エチル、亜硝酸n-プロピル、亜硝酸イソプロピル、亜硝酸イソブチル、亜硝酸n-ブチル、亜硝酸tert-ブチル、亜硝酸n-ペンチルおよび亜硝酸イソアミルを含む。
【0066】
ザンドマイヤー反応に使用される「ハロゲン化銅」は、フッ化銅、塩化銅、臭化銅、ヨウ化銅を含む。
【0067】
他の反応条件(反応温度、反応時間など)は、既知の反応に基づいて適宜決定され得る。
【0068】
三環式系の一般的な合成経路3(X=SO)
【化12】
〔式中、
R
1、R
2およびnは上記で定義されるとおりであり、
Halはハロゲンを表す〕
上記合成経路で示される反応により、過酸化物を用いて化合物[IVb]を酸化させることにより、本発明の化合物[I]の中間体化合物[IVc]が製造され得る。
【0069】
本反応において使用される「過酸化物」は、Sオキシドが形成され得る限り特に限定されないが、その例は、ペルオキシ一硫酸カリウム(Oxone(登録商標))、m-クロロ過安息香酸(MCPBA)、過安息香酸、過酢酸、トリフルオロ過酢酸、過ヨウ素酸ナトリウム、過酸化水素、3,3-ジメチルジオキシラン、N-(ベンゼンスルホニル)-3-フェニルオキサジリジン、モノペルオキシフタル酸マグネシウム六水和物、tert-ブチルヒドロペルオキシド、臭素酸ナトリウム、過マンガン酸カリウム、二酸化マンガン、二酸化セレン、三酸化クロム、過ホウ酸ナトリウム、過ルテニウム酸テトラプロピルアンモニウムなどを含む。
【0070】
本反応における「溶媒」は、反応に不活性な溶媒であり得て、その例は、水、エーテル(例えば、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、1,2-ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテルおよびエチレングリコールジメチルエーテル)、ハロ炭化水素(例えば、塩化メチレン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタンおよび四塩化炭素)、芳香族炭化水素(例えば、ベンゼン、トルエンおよびキシレン)、低級アルコール(例えば、メタノール、エタノールおよびイソプロパノール)、極性溶剤(例えば、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N-メチルピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ヘキサメチルリン酸トリアミドおよびアセトニトリル)を含む。これらの溶媒は、単独でまたは2以上の混合物として使用される。
【0071】
他の反応条件(反応温度、反応時間など)は、既知の酸化反応に基づいて適宜決定され得る。
【0072】
アミン側鎖の一般的な合成経路
【化13】
〔式中、R
7、Yおよびmは上記と同義である。環B
1は、環Bの炭化水素環またはヘテロ環式環に場合によりさらに結合していてもよい炭化水素環またはヘテロ環式環を表す〕
上記合成経路で示される反応により、本発明の化合物[I]の中間体化合物[Va]が製造され得る。具体的には、tert-ブチル N-[2-(3-ブロモ-4-ヒドロキシフェニル)エチル]カルバメートのヒドロキシを適切な保護基を用いて保護し、その後、目的の置換基が導入された化合物[VIII]をパラジウム化合物存在下、鈴木クロスカップリングさせる。その後、得られた生成物を脱保護し、目的の化合物[Va]が合成され得る。
化合物[Va]は、酸付加塩を含む。「酸」の例は、無機酸(例えば、塩酸、臭化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸など);および有機酸(例えば、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、酢酸、クエン酸、酒石酸、マレイン酸、フマル酸、リンゴ酸、乳酸など)などを含む。
【0073】
本反応において使用される「パラジウム化合物」は、特に限定されないが、その例は、ヘキサクロロパラジウム(IV)酸ナトリウム四水和物、ヘキサクロロパラジウム(IV)酸カリウムのような4価パラジウム触媒;[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)ジクロリド ジクロロメタン付加物(Pd(dppf)Cl2・CH2Cl2)、(2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,4’,6’-トリイソプロピル-1,1’-ビフェニル)[2-(2’-アミノ-1,1’-ビフェニル)]パラジウム(II) メタンスルホネート(XPhos Pd G3)、塩化パラジウム(II)、臭化パラジウム(II)、酢酸パラジウム(II)、パラジウムアセチルアセトナート(II)、ジクロロビス(ベンゾニトリル)パラジウム(II)、ジクロロビス(アセトニトリル)パラジウム(II)、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)、ジクロロテトラアンミンパラジウム(II)、ジクロロ(シクロオクタ-1,5-ジエン)パラジウム(II)、トリフルオ酢酸パラジウム(II)のような2価パラジウム触媒;トリス(ジベンジリデンアセトン)二パラジウム(0)(Pd2(dba)3)、トリス(ジベンジリデンアセトン)二パラジウムクロロホルム錯体(0)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(Pd(PPh3)4)のような0価パラジウム触媒を含む。これらのパラジウム化合物は、単独でまたは2以上の混合物として使用される。
【0074】
本反応の塩基存在下で使用される「塩基」の例は、無機塩基、有機塩基を含む。「無機塩基」の例は、アルカリ金属水酸化物(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム)、アルカリ土類金属水酸化物(例えば、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム)、アルカリ金属炭酸塩(例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム)、アルカリ土類金属炭酸塩(例えば、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム)、アルカリ金属炭酸水素塩(例えば、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム)、アルカリ金属リン酸塩(例えば、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム)、アルカリ土類金属リン酸塩(例えば、リン酸マグネシウム、リン酸カルシウム)を含む。「有機塩基」の例は、トリアルキルアミン(例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン)、ピコリン、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノン-5-エン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンおよび1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エンを含む。
【0075】
本反応において使用される「保護基」は、保護基として機能する限り特に限定されないが、その例は、アルキル基(例えば、メチル、エチル、イソプロピル、tert-ブチル、トリフルオロメチル、ヒドロキシメチル、2-ヒドロキシエチル、アセチルメチル);アルキル(アルケニル)カルボニル基(例えば、アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、ペンタノイル、ピバロイル、バレリル、イソバレリル、クロロアセチル、ジクロロアセチル、トリクロロアセチル、トリフルオロアセチル、メトキシアセチル、アクリロイル、プロピオロイル、メタクリロイル、クロトノイル、イソクロトノイル、(E)-2-メチル-2-ブテノイル);アリールカルボニル基(例えば、ベンゾイル、α-ナフトイル、β-ナフトイル、2-ブロモベンゾイル、4-クロロベンゾイル、2,4,6-トリメチルベンゾイル、4-トルオイル、4-アニソイル、4-ニトロベンゾイル、2-ニトロベンゾイル、2-(メトキシカルボニル)ベンゾイル、4-フェニルベンゾイル);テトラヒドロ(チオ)ピラニル(フラニル)基(例えば、テトラヒドロピラン-2-イル、3-ブロモテトラヒドロピラン-2-イル);シリル基(例えば、トリメチルシリル、トリエチルシリル、イソプロピルジメチルシリル、tert-ブチルジメチルシリル、メチルジイソプロピルシリル、メチルジtert-ブチルシリル、トリイソプロピルシリル、ジフェニルメチルシリル、ジフェニルブチルシリル、ジフェニルイソプロピルシリル、フェニルジイソプロピルシリル);アルコキシメチル基(例えば、メトキシメチル、1,1-ジメチル-1-メトキシメチル、エトキシメチル、プロポキシメチル、イソプロポキシメチル、ブトキシメチル、tert-ブトキシメチル、2-メトキシエトキシメチル、2,2,2-トリクロロエトキシメチル、ビス(2-クロロエトキシ)メチル);アラルキル基(例えば、ベンジル、α-ナフチルメチル、β-ナフチルメチル、ジフェニルメチル、トリフェニルメチル、α-ナフチルジフェニルメチル、9-アンスリルメチル、4-メチルベンジル、2,4,6-トリメチルベンジル、3,4,5-トリメチルベンジル、4-メトキシベンジル、4-メトキシフェニルジフェニルメチル、2-ニトロベンジル、4-ニトロベンジル、4-クロロベンジル、4-ブロモベンジル、4-シアノベンジル)などを含む。
【0076】
上記反応において使用される化合物[VIII]は、場合により置換されていてよいアリールボロン酸および場合により置換されていてよいヘテロアリールボロン酸を含む。
「場合により置換されていてよいアリールボロン酸」の例は、フェニルボロン酸、2-フルオロフェニルボロン酸、3-フルオロフェニルボロン酸、4-フルオロフェニルボロン酸、2,3-ジフルオロフェニルボロン酸、2,4-ジフルオロフェニルボロン酸、2,5-ジフルオロフェニルボロン酸、2,6-ジフルオロフェニルボロン酸、3,4-ジフルオロフェニルボロン酸、3,5-ジフルオロフェニルボロン酸、3-シアノ-2-フルオロフェニルボロン酸、5-シアノ-2-フルオロフェニルボロン酸、3-シアノ-5-フルオロフェニルボロン酸、2-クロロフェニルボロン酸、3-クロロフェニルボロン酸、4-クロロフェニルボロン酸、2-メチルフェニルボロン酸、3-メチルフェニルボロン酸、4-メチルフェニルボロン酸、2-エチルフェニルボロン酸、3-エチルフェニルボロン酸、4-エチルフェニルボロン酸、3-トリフルオロメチルフェニルボロン酸、2-ヒドロキシフェニルボロン酸、3-ヒドロキシフェニルボロン酸、4-ヒドロキシフェニルボロン酸、2-メトキシフェニルボロン酸、3-メトキシフェニルボロン酸、4-メトキシフェニルボロン酸、2-シアノフェニルボロン酸、3-シアノフェニルボロン酸、4-シアノフェニルボロン酸、3-メチルスルホニルフェニルボロン酸、3-(2-ジメチルアミノ)-2-オキソエチル)フェニルボロン酸、3-(ジメチルカルバモイル)フェニルボロン酸、3-エトキシカルボニルフェニルボロン酸などを含む。
「場合により置換されていてよいヘテロアリールボロン酸」の例は、例えば、3-ピリジルボロン酸、5-フルオロ-3-ピリジルボロン酸、5-メチル-3-ピリジルボロン酸、5-エチル-3-ピリジルボロン酸、5-シアノ-3-ピリジルボロン酸、2-チエニルボロン酸、3-チエニルボロン酸、3-ベンゾチエニルボロン酸などを含む。
【0077】
上記反応において使用される「溶媒」は、反応に不活性な溶媒である限り特に限定されないが、その例は、水、エーテル(例えば、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、1,2-ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテルおよびエチレングリコールジメチルエーテル)、ハロ炭化水素(例えば、塩化メチレン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタンおよび四塩化炭素)、芳香族炭化水素(例えば、ベンゼン、トルエンおよびキシレン)、C1-6アルコール(例えば、メタノール、エタノールおよびイソプロパノール)、極性溶剤(例えば、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N-メチルピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ヘキサメチルリン酸トリアミドおよびアセトニトリル)を含む。これらの溶媒は、単独でまたは2以上の混合物として使用される。
【0078】
他の反応条件(反応温度、反応時間など)は、既知の保護、脱保護および鈴木クロスカップリング反応に基づいて適宜決定され得る。
【0079】
三環式部分との縮合後、炭化水素環またはヘテロ環式環は、本反応を用いて伸長され得る。
【0080】
上記反応式の各反応において、生成物はその反応液として、またはその粗生成物として次反応に用いられ得る。しかしながら、生成物は従来の方法に従って反応混合物から単離され得るか、通常の分離手段により容易に精製され得る。通常の分離手段の例は、再結晶、蒸留、クロマトグラフィーを含む。
【0081】
上記工程における出発原料化合物、中間体化合物および目的化合物ならびに本発明の化合物[I]は、幾何異性体、立体異性体、光学異性体および互変異性体を含む。種々の異性体は一般的な光学分割法により分離され得る。また、適切な光学活性な原料化合物により製造され得る。
【0082】
本発明の化合物[I]は、上記の反応式により示された合成方法またはそれに類似する方法により製造され得る。
【0083】
本発明の化合物[I]の製造において使用される原料化合物を製造するための具体的な製造方法が記載されないとき、原料化合物は市販で入手可能な製品であり得るか、自体既知の方法またはそれに類似する方法により製造されたものであり得る。
【0084】
上記工程における出発原料化合物および目的化合物は、適切な塩形態で使用され得る。このような塩の例は、本発明の化合物[I]の塩として次に例示されるものと同様の塩を含む。
【0085】
本発明の化合物[I]は、酸付加塩を含むその塩の形態を含むか、置換基の種類により、塩基との塩が形成され得る。「酸」の例は、無機酸(例えば、塩酸、臭化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸など);および有機酸(例えば、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、酢酸、クエン酸、酒石酸、マレイン酸、フマル酸、リンゴ酸、乳酸など)などを含む。「塩基」の例は、無機塩基(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムなど);および有機塩基(例えば、メチルアミン、ジエチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、N,N’-ジベンジルエチレンジアミン、グアニジン、ピリジン、ピコリン、コリンなど);およびアンモニウム塩などを含む。さらに、リジン、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸などのようなアミノ酸との塩が形成され得る。
【0086】
本発明はまた、化合物[I]およびその塩の種々の水和物または溶媒和物、ならびにそれらの結晶多形の物質を包含する。
【0087】
本発明の化合物[I]は、1個または複数の原子を1個または複数の同位体原子で置換された化合物を含む。同位体原子の例は、重水素(2H)、三重水素(3H)、13C、15N、18Oなどを含む。
【0088】
本発明の化合物[I]はまた、薬学的に許容されるプロドラッグを含む。プロドラッグを形成するために修飾される置換基の例は、-OH、-COOH、アミノなどのような反応性官能基を含む。これらの官能基の修飾基は、本明細書における「置換基」から適宜選択され得る。
【0089】
本発明の化合物[I]またはその塩は、共結晶または共結晶塩であり得る。共結晶または共結晶塩は、各々が異なる物理的特性(例えば、構造、融点、融解熱など)を有する、室温で2つ以上の固有の固体から構成される結晶性物質を意味する。共結晶および共結晶塩は、既知の共結晶化法を適用することにより製造され得る。
【0090】
本発明の化合物[I]またはその塩は、芳香族炭化水素受容体アンタゴニスト活性を有し、血小板前駆細胞から血小板の産生を促進する機能を有する。
本発明の化合物[I]またはその塩は、造血幹細胞の増殖促進活性、ES細胞からNK細胞への分化促進活性、T細胞の分化制御活性、関節リウマチの増悪抑制作用、抗腫瘍活性、抗ウィルス活性、抗炎症活性(例えば、アトピー性皮膚炎など)および神経保護活性を有する。
【0091】
本発明の化合物[I]またはその塩を用いて血小板前駆細胞から血小板を産生する方法について、以下に記載する。
【0092】
血小板は、1種または2種以上の本発明の化合物またはその塩を用いて、これに/これらに巨核球(血小板前駆細胞の一種)またはその前駆細胞を接触させることにより生成され得る。本発明の化合物またはその塩の濃度は特に限定されず、化合物に応じて当業者により適宜決定され得る。例えば、その濃度は1nM~10μM、好ましくは10nM~1μM、さらに好ましくは100nMの範囲であるが、所望の効果を奏する限り、この範囲外であってもよい。
【0093】
さらに、本発明の化合物またはその塩は、巨核球からの血小板産生量を増大させ得る。本発明の化合物またはその塩は、限定されないが、例えば、対照と比較して200%以上、好ましくは300%以上、さらに好ましくは500%以上まで血小板数を増大させ得る。
【0094】
本発明の化合物[I]またはその塩を添加するタイミングは、所望の効果を奏する限り、特に限定されない。例えば、本発明の化合物[I]またはその塩は、巨核球またはその前駆細胞に添加される。巨核球は、多核性のものまたは多核化したものであり得て、多核化した巨核球は、血小板産生中のものであり得る。後に記載するとおり、巨核球より未分化な細胞において、癌遺伝子、ポリコーム遺伝子およびアポトーシス抑制遺伝子から成る群から選択される少なくとも1つの遺伝子を強制的に発現させることにより不死化巨核球を調製し、その後強制発現を終了して不死化巨核球の多核化を進める場合、強制発現の終了後(終了と同時を含む)に、培地に本発明の化合物またはその塩を添加することが好ましい。
【0095】
本発明に使用可能な巨核球として既知の細胞が使用され得て、例えば、国際公開第2016/204256号で開示された方法を用いて、不死化巨核球が調製され得る。
【0096】
巨核球またはその前駆細胞の由来は、血小板を産生する能力を有する限り特に限定されず、その例は、多能性幹細胞、特に誘導多能性幹細胞(iPS細胞)または胚性幹細胞(ES細胞)を含む。iPS細胞およびES細胞の由来は特に限定されず、その例は、ヒト由来細胞を含む。
【0097】
本発明の化合物またはその塩は、1種または2種類以上のトロンボポエチン(TPO)またはTPO受容体アゴニスト、1種または2種類以上のRho関連コイルドコイル形成キナーゼ(ROCK)阻害剤、および/または1種または2種類以上のディスインテグリンおよびメタロプロテアーゼ(ADAM)阻害剤などと組み合わせて、血小板産生促進剤として使用され得る。これらの組み合わせに加えて、既知の芳香族炭化水素受容体アンタゴニストもまた組み合わせられ、血小板産生促進剤として使用され得る。
【0098】
ROCK阻害剤の例は、限定されないが、Y27632、Y39983、ファスジル塩酸塩、リパスジル、SLX-2119、RKI-1447、Azaindole 1、SR-3677、スタウロスポリン、H1152二塩酸塩、AR-1 2286、INS-117548などを含む。ROCK阻害剤の濃度は特に限定されず、化合物に応じて当業者により適宜決定され得る。その濃度は、例えば、1.0nM~1.0mM、10nM~0.1mM、100nM~0.1mMまたは100nM~0.01mMの範囲であるが、所望の効果を奏する限り、この範囲外であってよい。
【0099】
トロンボポエチンは、トロンボポエチン(TPO)およびヒトリコンビナントトロンボポエチンを含む。TPO受容体アゴニストの例は、限定されないが、TA-316などを含む。TPOおよびヒトリコンビナントTPOの濃度は特に限定されず、当業者により適宜決定され得る。TPOおよびヒトリコンビナントTPOの濃度は、例えば、0.5ng/mL~5μg/mL、好ましくは5~500ng/mL、さらに好ましくは50ng/mLとすることができるが、所望の効果を奏する限り、この範囲外の量であってよい。TPO受容体アゴニストの濃度は特に限定されず、化合物に応じて当業者により適宜決定され得る。TPO受容体アゴニストの濃度は、例えば、0.1ng/mL~1mg/mL、好ましくは1ng/mL~100μg/mL、さらに好ましくは10ng/mL~10μg/mLの範囲であるが、所望の効果を奏する限り、この範囲外であってよい。
【0100】
ADAM阻害剤の例は、限定されないが、KP-457などを含む。ADAM阻害剤の濃度は特に限定されず、化合物に応じて当業者により適宜決定され得る。その濃度は、例えば、1.0nM~1.0mM、好ましくは10nM~0.1mM、さらに好ましくは100nM~0.1mMの範囲であるが、所望の効果を奏する限り、この範囲外であってもよい。
【0101】
芳香族炭化水素受容体アンタゴニストの例は、限定されないが、SR-1、GNF351、CH-223191、6,2’,4’-トリメトキシフラボン(TMF)、3’,4’-ジメトキシフラボン(DMF)などを含む。
【0102】
本発明の化合物またはその塩は、1種または2種類以上のTPOまたはTPO受容体アゴニスト、1種または2種類以上のROCK阻害剤、および/または1種または2種類以上のADAM阻害剤などと組み合わせたキットに製造され得る。これらの組み合わせに加えて、既知の芳香族炭化水素受容体アンタゴニストもまた、キットに製造され得る。
【0103】
組み合わせて使用される化合物を添加するタイミングは、所望の効果を奏する限り特に限定されない。組み合わせて使用される化合物は、本発明の化合物またはその塩の培地への添加前、添加後、または添加と同時に、培地に添加され得る。巨核球より未分化な細胞において、癌遺伝子、ポリコーム遺伝子、およびアポトーシス抑制遺伝子から成る群から選択される少なくとも1つの遺伝子を強制的に発現させて不死化巨核球を作製し、その後強制発現を終了して不死化巨核球の多核化を進める場合には、強制発現の終了後(終了と同時を含む)に、培地に添加することが好ましい。
【0104】
上記強制発現の期間は特に限定されず、当業者により適宜決定され得る。さらに、強制発現後に、細胞を継代培養してよく、最後の継代から強制発現を終了する日までの期間は特に限定されないが、その期間は、例えば、1日間、2日間または3日間以上であり得る。
【0105】
強制発現の終了後に本発明の化合物またはその塩を培地に添加するとき、強制発現終了後から本発明の化合物またはその塩を培地に添加する日までの期間は特に限定されないが、例えば、1日、2日、または3日以内に本発明の化合物またはその塩存在下で、培養が開始され得る。本発明の化合物またはその塩の存在下で細胞を培養する期間もまた、特に限定されない。通常、本発明の化合物またはその塩を培地に添加後約3日目に、機能的な血小板が徐々に放出され、血小板数は培養日数とともに増大する。本発明の化合物またはその塩の存在下で細胞を培養する期間は、例えば、5~10日間であるが、培養期間は短縮されても延長されてもよい。本発明の化合物またはその塩は、培養期間中、1回以上追加で培地に添加され得る。
【0106】
細胞の培養条件は、通常の培養期間中に使用される条件であり得る。例えば、温度は約35℃~約42℃、好ましくは約36℃~約40℃、さらに好ましくは約37℃~約39℃であり得て、培養は、5% CO2および/または20% O2の存在下で実施され得る。培養は、静置培養で実施されても、振とう培養で実施されてもよい。振とう培養の場合の振とう速度は特に限定されず、例えば、10rpm~200rpm、好ましくは30rpm~150rpmが使用され得る。
【0107】
巨核球および/またはその前駆細胞を本発明の化合物またはその塩と接触させて、その後培養すると、成熟した巨核球が得られ、その細胞質から血小板が産生される。ここで、巨核球の成熟とは、巨核球が多核化し、血小板を放出できるようになることをいう。
【0108】
巨核球を培養するときの培地は特に限定されず、巨核球からの血小板が産生に適切な既知の培地やそれに類似する培地が適宜使用され得る。例えば、動物細胞の培養に使用される培地が基礎培地として調製され得る。基礎培地の例は、例えばIMDM培地、199培地、イーグル最小必須培地(EMEM)、αMEM培地、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、ハムF12培地、RPMI1640培地、フィッシャー培地、Neurobasal培地(ライフテクノロジーズ株式会社)およびこれらの混合培地を含む。
【0109】
培地は、血清でも血漿でもよく、あるいは無血清でもよい。血清を用いる場合、ウシ胎児血清(FBS)、ヒト血清が使用され得る。必要に応じて、培地は、アルブミン、インスリン、トランスフェリン、セレン、脂肪酸、微量元素、2-メルカプトエタノール、チオールグリセロール、モノチオグリセロール(MTG)、脂質、アミノ酸(例えば、L-グルタミン)、アスコルビン酸、ヘパリン、非必須アミノ酸、ビタミン、増殖因子、低分子化合物、抗生物質、抗酸化剤、ピルビン酸、緩衝剤、無機塩類、サイトカインのような1つ以上の物質を含み得る。サイトカインは、血球分化を促進するタンパク質であり、その例は、VEGF、TPO、TPO受容体アゴニスト、SCF、インスリン-トランスフェリン-セレナイト(ITS)サプリメント、ADAM阻害剤などを含む。
【0110】
本明細書において引用されるすべての特許文献および非特許文献の開示は、参照により全体を本明細書に包含させる。
【実施例】
【0111】
本発明は、次の試験例、参考例および実施例により詳細に説明されるが、これらは限定的なものと解釈されるべきではなく、本発明の範囲内で変化し得る。
【0112】
本明細書において、次の略語が使用され得る。
【表1-1】
【表1-2】
【0113】
以下の実施例における「室温」は、一般に、約10℃~約35℃を示す。混合溶媒について示された比は、特に断らない限り、体積比を示す。%は、特に断らない限り、重量%を示す。
1HNMR(プロトン核磁気共鳴スペクトル)はフーリエ変換型NMR(Bruker AVANCE III 400 (400 MHz)およびBruker AVANCE III HD (500 MHz)のいずれか)で測定した。
質量スペクトル(MS)は、LC/MS (ACQUITY UPLC H-Class)により測定した。イオン化法として、ESI法を使用した。データは実測値(found)を示す。一般に、分子イオンピーク([M+H]+、[M-H]-など)が観測される。塩の場合、一般に、遊離形態の分子イオンピークもしくはフラグメントイオンピークが観測される。
シリカゲルカラムクロマ卜グラフィーにおいて、塩基性と示すとき、アミノプロピルシラン結合シリカゲルを使用した。
化合物の絶対配置は、既知のX線結晶構造解析法(例えば、大場茂および矢野重信著、「化学者のための基礎講座12 X線結晶構造解析」(第1版、1999年))により決定、またはempirical rule of Shi asymmetric epoxidation (Waldemar Adam, Rainer T. Fell, Chantu R. Saha-Moller and Cong-Gui Zhao: Tetrahedron: Asymmetry 1998, 9, 397-401; Yuanming Zhu, Yong Tu, Hongwu Yu, Yian Shi: Tetrahedron Lett. 1988, 29, 2437-2440)から推定した。
【0114】
参考例
参考例1
2-アミノ-6-クロロ-9-(1-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-2-イル)-7H-プリン-8-オンの合成
2,5-ジアミノ-4,6-ジクロロピリミジン(10.0g)および2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール(11.7ml)のNMP(10ml)溶液を140℃で終夜撹拌した。反応混合物をカラムクロマトグラフィー(Hexane/AcOEt/MeOH)により精製した。生成物のTHF(150ml)溶液に、0℃でCDI(19.9g)を添加し、混合物を1時間撹拌した。50%MeOH水溶液(300ml)、5N NaOH水溶液(44.7ml)を添加し、混合物を1時間撹拌した。反応混合物を濃縮し、残渣に5N HCl水溶液を添加し、その後析出固体をろ過により回収し、目的物(10.9g)を得た。
【0115】
参考例2
2-アミノ-6-クロロ-9-(3-ヒドロキシプロピル)-7H-プリン-8-オンの合成
2,5-ジアミノ-4,6-ジクロロピリミジン(1.00g)、3-アミノ-1-プロパノール(0.86ml)およびDIPEA(2.44ml)のNMP(10ml)溶液を150℃で終夜撹拌した。反応混合物をカラムクロマトグラフィー(Hexane/AcOEt/MeOH)により精製した。生成物のTHF(15ml)溶液に、CDI(2.72g)を添加し、混合物を30分間撹拌した。混合物に50%MeOH水溶液(5ml)、5N NaOH水溶液(4.47ml)を添加し、終夜撹拌した。反応混合物を濃縮し、残渣に5N HCl水溶液を加え、析出固体をろ過により回収し、目的化合物(1.11g)を得た。
【0116】
参考例3
2-アミノ-6-クロロ-9-(4-ヒドロキシ-2-メチルブタン-2-イル)-7H-プリン-8-オンの合成
2,5-ジアミノ-4,6-ジクロロピリミジン(1.20g)、3-アミノ-3-メチル-1-ブタノール塩酸塩(1.03g)およびDIPEA(2.93ml)のNMP(6ml)溶液を150℃で終夜撹拌した。反応混合物をカラムクロマトグラフィー(Hexane/AcOEt/MeOH)により精製した。生成物のTHF(15ml)溶液に、CDI(2.17g)を添加し、混合物を30分間撹拌した。50%MeOH水溶液(20ml)、5N NaOH水溶液(5.36ml)を添加し、終夜撹拌した。反応混合物を濃縮し、残渣に5N HCl水溶液を添加し、AcOEtで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過し、ろ液を濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(AcOEt/Hexane)により精製し、目的化合物(345mg)を得た。
【0117】
参考例7
4-クロロ-2-ヨード-9,9-ジメチル-7,8-ジヒドロプリノ[8,9-b][1,3]オキサジンの合成
窒素雰囲気下、0℃で、6-クロロ-9-(4-ヒドロキシ-2-メチルブタン-2-イル)-2-ヨード-7H-プリン-8-オン(180mg)のTHF(5ml)溶液に、アゾジカルボン酸ジ-tert-ブチル(163mg)およびトリフェニルホスフィン(185mg)を添加し、混合物を2時間撹拌した。反応混合物を濃縮し、残渣をカラムクロマトグラフィー(Hexane/AcOEt)により精製し、目的化合物(163mg)を得た。
【0118】
参考例8
4-クロロ-2-ヨード-8,8-ジメチル-7H-プリノ[8,9-b][1,3]オキサゾールの合成
窒素雰囲気下、0℃で、2-アミノ-6-クロロ-9-(1-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-2-イル)-7H-プリン-8-オン(10.90g)およびトリフェニルホスフィン(13.31g)のTHF(200ml)懸濁溶液に、アゾジカルボン酸ジイソプロピル(40%トルエン溶液)(26.7ml)を滴下添加し、混合物を2時間撹拌した。反応混合物を濃縮し、残渣をカラムクロマトグラフィー(Hexane/AcOEt)により精製した。生成物のTHF(200ml)溶液にヨウ化銅(I)(8.06g)、ジヨードメタン(10.24ml)および亜硝酸tert-ブチル(7.55ml)を添加し、混合物を60℃で5時間撹拌した。反応混合物をセライトでろ過し、ろ液を濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(Hexane/AcOEt)により精製し、目的化合物(9.29g)を得た。
【0119】
参考例10
(8R)-4-クロロ-8-メチル-7,8-ジヒドロプリノ[8,9-b][1,3]チアゾール-2-アミンの合成
2,5-ジアミノ-4,6-ジクロロピリミジン(2.00g)および(2R)-2-アミノ-1-ヒドロキシプロパン(1.91ml)のNMP(3ml)溶液を140℃で終夜撹拌した。反応混合物をカラムクロマトグラフィー(Hexane/AcOEt/MeOH)により精製した。生成物のTHF(30ml)溶液に、0℃でTCDI(5.58g)を徐々に添加し、混合物を30分間撹拌し、その後室温で終夜撹拌した。反応混合物を濃縮後、0℃で水を添加し、析出固体をろ過により回収し、目的化合物(1.53g)を得た。
【0120】
参考例13
4-クロロ-8,9-ジヒドロ-7H-プリノ[8,9-b][1,3]チアジン-2-アミンの合成
2,5-ジアミノ-4,6-ジクロロピリミジン(1.00g)および3-アミノ-1-プロパノール(0.940ml)を140℃で4時間撹拌した。反応混合物をカラムクロマトグラフィー(Hexane/AcOEt/MeOH)により精製した。生成物のTHF(10ml)溶液に、0℃でTCDI(2.49g)を徐々に添加し、混合物を30分間撹拌した。撹拌した混合物を室温まで昇温し、そこへDMF(15ml)を添加し、終夜撹拌した。そこへK2CO3(0.93g)を添加し、混合物を1時間撹拌した。反応混合物を濃縮し、そこに水を添加し、混合物をAcOEtで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過し、ろ液を濃縮した。得られた固体をIPEで分散洗浄し、目的化合物(646mg)を得た。
【0121】
参考例14
4-クロロ-2-ヨード-8,8-ジメチル-7H-プリノ[8,9-b][1,3]チアゾールの合成
4-クロロ-8,8-ジメチル-7H-プリノ[8,9-b][1,3]チアゾール-2-アミン(1.93g)、ヨウ化銅(I)(1.44g)、ジヨードメタン(2.44ml)および亜硝酸tert-ブチル(1.35ml)のTHF(30ml)懸濁液を60℃で終夜撹拌した。反応混合物をセライトでろ過し、ろ液を濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(Hexane/AcOEt)により精製し、目的化合物(1.63g)を得た。
【0122】
参考例19
4-クロロ-2-ヨード-7,8,9,10-テトラヒドロプリノ[8,9-b][1,3]チアゼピンの合成
2,5-ジアミノ-4,6-ジクロロピリミジン(1.00g)および4-アミノ-1-ブタノール(1.13ml)のNMP(1.5ml)溶液を140℃で終夜撹拌した。反応混合物をカラムクロマトグラフィー(Hexane/AcOEt/MeOH)により精製した。生成物のTHF(15ml)溶液に、0℃でTCDI(2.49g)を徐々に添加し、混合物を30分間撹拌し、その後室温で終夜撹拌した。反応混合物を濃縮後、そこへ水を添加し、析出固体をろ過により回収した。これをTHF/MeOH(3/1)(20ml)に懸濁し、そこへ0℃で5N NaOH水溶液(2.24ml)を滴下添加し、混合物を室温で終夜撹拌した。反応混合物を濃縮し、0℃で残渣に5N HCl水溶液を添加した。析出固体をろ過により回収した。生成物のTHF(20ml)溶液に、0℃でトリフェニルホスフィン(1.47g)およびアゾジカルボン酸ジイソプロピル(40%トルエン溶液)(2.94ml)を滴下添加し、混合物を4時間撹拌した。反応混合物を濃縮し、残渣に水を添加し、混合物をDCMで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過し、ろ液を濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(Hexane/AcOEt)により精製した。生成物のTHF(20ml)溶液にヨウ化銅(I)(1.06g)、ジヨードメタン(1.35ml)および亜硝酸tert-ブチル(1.00ml)を添加し、混合物を60℃で3時間撹拌した。反応混合物をセライトでろ過し、ろ液を濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(Hexane/AcOEt)により精製し、目的化合物(196mg)を得た。
【0123】
参考例20
4-クロロ-2-ヨード-8,8-ジメチル-7H-プリノ[8,9-b][1,3]チアゾール6-オキシドの合成
4-クロロ-2-ヨード-8,8-ジメチル-7H-プリノ[8,9-b][1,3]チアゾール(100mg)のTHF/水(2/1)(3ml)溶液に、Oxone(登録商標)(184mg)を添加し、混合物を2時間撹拌した。60℃で1時間撹拌し、その後反応混合物に水を添加し、混合物をAcOEtで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過し、ろ液を減圧濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(Hexane/AcOEt)により精製し、目的化合物(70mg)を得た。
【0124】
参考例21
(8R)-4-クロロ-2-ヨード-8-メチル-7,8-ジヒドロプリノ[8,9-b][1,3]チアゾール 6-オキシドの合成
(8R)-4-クロロ-2-ヨード-8-メチル-7,8-ジヒドロプリノ[8,9-b][1,3]チアゾール(200mg)のDCM(4ml)溶液に、MCPBA(180mg)を添加し、混合物を終夜撹拌した。反応混合物に飽和NaHCO3水溶液を添加し、混合物をAcOEtで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過し、ろ液を濃縮し、目的化合物(150mg)を得た。
【0125】
参考例22
tert-ブチル N-[2-[3-ブロモ-4-(メトキシメトキシ)フェニル]エチル]カルバメートの合成
tert-ブチル N-[2-(3-ブロモ-4-ヒドロキシフェニル)エチル]カルバメート(9.40g)のDCM(150ml)溶液に、0℃でDIPEA(7.79ml)およびクロロメチルメチルエーテル(2.94ml)を添加し、混合物を室温で3日間撹拌した。反応混合物を濃縮し、その後残渣をカラムクロマトグラフィー(Hexane/AcOEt)により精製し、目的化合物(10.9g)を得た。
【0126】
参考例23
tert-ブチル N-[2-[4-(メトキシメトキシ)-3-フェニルフェニル]エチル]カルバメートの合成
窒素雰囲気下、tert-ブチル N-[2-[3-ブロモ-4-(メトキシメトキシ)フェニル]エチル]カルバメート(500mg)、フェニルボロン酸(254mg)、K3PO4(589mg)、Pd(dppf)Cl2・CH2Cl2(113mg)およびDME/水(4/1)(5ml)の混合物を還流下で5時間加熱した。反応混合物を濃縮し、その後残渣をカラムクロマトグラフィー(Hexane/AcOEt)により精製し、目的化合物(455mg)を得た。
【0127】
参考例27
tert-ブチル N-[2-[3-(5-シアノ-2-フルオロフェニル)-4-(メトキシメトキシ)フェニル]エチル]カルバメートの合成
窒素雰囲気下、tert-ブチル N-[2-[3-ブロモ-4-(メトキシメトキシ)フェニル]エチル]カルバメート(50mg)、5-シアノ-2-フルオロフェニルボロン酸(29.8mg)、XPhos Pd G3(11.75mg)、K3PO4(58.9mg)およびTHF/水(4/1)(2ml)の混合物を還流下で終夜加熱した。反応混合物を濃縮し、その後残渣をカラムクロマトグラフィー(Hexane/AcOEt)により精製し、目的化合物(37mg)を得た。
【0128】
参考例37
2-(2-フルオロフェニル)-4-[2-[(2-ヨード-8,8-ジメチル-7H-プリノ[8,9-b][1,3]オキサゾール-4-イル)アミノ]エチル]フェノールの合成
4-クロロ-2-ヨード-8,8-ジメチル-7H-プリノ[8,9-b][1,3]オキサゾール(150mg)、4-(2-アミノエチル)-2-(2-フルオロフェニル)フェノール塩酸塩(172mg)およびDIPEA(0.22ml)のDMSO(1ml)溶液を80℃で終夜撹拌した。反応混合物をカラムクロマトグラフィー(Hexane/AcOEt)により精製し、目的化合物(135mg)を得た。
【0129】
参考例46
2-(5-フルオロピリジン-3-イル)-4-[2-[(2-ヨード-8,8-ジメチル-7H-プリノ[8,9-b][1,3]チアゾール-4-イル)アミノ]エチル]フェノールの合成
4-クロロ-2-ヨード-8,8-ジメチル-7H-プリノ[8,9-b][1,3]チアゾール(100mg)、4-(2-アミノエチル)-2-(5-フルオロピリジン-3-イル)フェノール二塩酸塩(108mg)およびDIPEA(0.14ml)のIPA(2ml)懸濁液を80℃で終夜撹拌した。混合物に水を添加し、析出固体をろ過により回収し、目的化合物(154mg)を得た。
【0130】
参考例60
N-[2-(1H-インドール-3-イル)エチル]-2-ヨード-8,9-ジヒドロ-7H-プリノ[8,9-b][1,3]オキサジン-4-アミンの合成
4-クロロ-2-ヨード-8,9-ジヒドロ-7H-プリノ[8,9-b][1,3]オキサジン(244mg)、トリプタミン塩酸塩(214mg)およびDIPEA(0.25ml)のIPA/DMSO(5/1)(6ml)溶液を70℃で終夜撹拌した。反応混合物に水を添加し、混合物をAcOEtで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過し、ろ液を濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(Hexane/AcOEt)により精製し、目的化合物(133mg)を得た。
【0131】
参考例78
tert-ブチル 3-[1-[[(2-メチルプロパン-2-イル)オキシカルボニルアミノ]メチル]シクロプロピル]インドール-1-カルボキシレートの合成
窒素雰囲気下、-5℃で、LAH(0.14g)のTHF(10ml)懸濁液に濃硫酸(0.10ml)を滴下添加し、混合物を30分間撹拌した。その後、tert-ブチル 3-(1-シアノシクロプロピル)インドール-1-カルボキシレート(0.67g)のTHF(5ml)溶液を滴下添加し、混合物を室温で2時間撹拌した。そこへ50%THF水溶液、5N NaOH水溶液を添加し、混合物をセライトでろ過した。ろ液を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過し、ろ液を濃縮した。残渣のEtOH(10ml)溶液にDIBOC(0.66ml)を添加し、混合物を室温で1時間撹拌した。反応混合物を濃縮し、その後残渣をカラムクロマトグラフィー(Hexane/AcOEt)により精製し、目的化合物(0.30g)を得た。
【0132】
参考例79
[1-(1H-インドール-3-イル)シクロプロピル]メタンアミン塩酸塩の合成
tert-ブチル 3-[1-[[(2-メチルプロパン-2-イル)オキシカルボニルアミノ]メチル]シクロプロピル]インドール-1-カルボキシレート(0.30g)のAcOEt/EtOH(1/1)(10ml)溶液に4N HCl/AcOEt(6ml)を添加し、混合物を50℃で6時間撹拌した。反応混合物を濃縮し、目的化合物(0.18g)を得た。
【0133】
参考例80
tert-ブチル N-[2-[3-(2-フルオロフェニル)-4-(メトキシメトキシ)フェニル]エチル]カルバメートの合成
窒素雰囲気下、tert-ブチル N-[2-[3-ブロモ-4-(メトキシメトキシ)フェニル]エチル]カルバメート(1.00g)、2-フルオロフェニルボロン酸(621mg)、Pd(PPh3)4(160mg)、Na2CO3(883mg)および1,4-ジオキサン/水(4/1)(10ml)の混合物を90℃で6時間撹拌した。反応混合物に水を添加し、混合物をAcOEtで抽出した。有機層を濃縮し、その後残渣をカラムクロマトグラフィー(Hexane/AcOEt)により精製し、目的化合物(1.14g)を得た。
【0134】
参考例81
tert-ブチル N-[2-[3-(2-クロロフェニル)-4-(メトキシメトキシ)フェニル]エチル]カルバメートの合成
窒素雰囲気下、tert-ブチル N-[2-[3-ブロモ-4-(メトキシメトキシ)フェニル]エチル]カルバメート(500mg)、2-クロロフェニルボロン酸(239mg)、Pd(dppf)Cl2・CH2Cl2(56.7mg)、K3PO4(589mg)および1,4-ジオキサン/水(4/1)(5ml)の混合物を90℃で2時間撹拌した。そこへ2-クロロフェニルボロン酸(195mg)を添加し、混合物を90℃で4時間撹拌した。反応混合物を濃縮し、その後残渣をカラムクロマトグラフィー(Hexane/AcOEt)により精製した。窒素雰囲気下、生成物、2-クロロフェニルボロン酸(434mg)、Pd(dppf)Cl2・CH2Cl2(56.7mg)、K3PO4(589mg)および1,4-ジオキサン/水(4/1)(5ml)の混合物を90℃で終夜撹拌した。反応混合物を濃縮し、その後残渣をカラムクロマトグラフィー(Hexane/AcOEt)により精製し、目的化合物(487mg)を得た。
【0135】
参考例90
tert-ブチル N-[2-[3-(3-シアノフェニル)-4-(メトキシメトキシ)フェニル]エチル]カルバメートの合成
窒素雰囲気下、tert-ブチル N-[2-[3-ブロモ-4-(メトキシメトキシ)フェニル]エチル]カルバメート(350mg)、3-シアノフェニルボロン酸(186mg)、K3PO4(412mg)、Pd(dppf)Cl2・CH2Cl2(39.7mg)および1,4-ジオキサン/水(4/1)(5ml)の混合物を90℃で4時間撹拌した。反応混合物を濃縮し、その後残渣をカラムクロマトグラフィー(Hexane/AcOEt)により精製し、目的化合物(366mg)を得た。
【0136】
参考例100
tert-ブチル N-[2-[3-(5-フルオロピリジン-3-イル)-4-(メトキシメトキシ)フェニル]エチル]カルバメートの合成
窒素雰囲気下、tert-ブチル N-[2-[3-ブロモ-4-(メトキシメトキシ)フェニル]エチル]カルバメート(600mg)、5-フルオロピリジン-3-ボロン酸(352mg)、Pd(PPh3)4(96mg)、Na2CO3(530mg)および1,4-ジオキサン/水(4/1)(10ml)の混合物を90℃で2時間撹拌した。反応混合物を濃縮し、その後残渣をカラムクロマトグラフィー(Hexane/AcOEt)により精製し、目的化合物(643mg)を得た。
【0137】
参考例106
4-(2-アミノエチル)-2-(2-フルオロフェニル)フェノール塩酸塩の合成
tert-ブチル N-[2-[3-(2-フルオロフェニル)-4-(メトキシメトキシ)フェニル]エチル]カルバメート(1.14g)のEtOH(5ml)溶液に4N HCl/AcOEt(5ml)を添加し、混合物を室温で終夜撹拌した。反応混合物を濃縮し、その後残渣をHexane/AcOEtで分散させ、洗浄し、目的化合物(686mg)を得た。
【0138】
参考例109
4-(2-アミノエチル)-2-(3-クロロフェニル)フェノール塩酸塩の合成
tert-ブチル N-[2-[3-(3-クロロフェニル)-4-(メトキシメトキシ)フェニル]エチル]カルバメート(534mg)のEtOH(3ml)溶液に4N HCl/AcOEt(3ml)を添加し、混合物を室温で終夜撹拌した。反応混合物を濃縮し、目的化合物(408mg)を得た。
【0139】
参考例117
3-[5-(2-アミノエチル)-2-ヒドロキシフェニル]ベンゾニトリル塩酸塩の合成
tert-ブチル N-[2-[3-(3-シアノフェニル)-4-(メトキシメトキシ)フェニル]エチル]カルバメート(364mg)のEtOH(2ml)溶液に4N HCl/AcOEt(2ml)を添加し、混合物を室温で7時間撹拌した。反応混合物を濃縮し、目的化合物(242mg)を得た。
【0140】
参考例127
4-(2-アミノエチル)-2-(5-フルオロピリジン-3-イル)フェノール二塩酸塩の合成
tert-ブチル N-[2-[3-(5-フルオロピリジン-3-イル)-4-(メトキシメトキシ)フェニル]エチル]カルバメート(641mg)のEtOH(4ml)溶液に4N HCl/AcOEt(4ml)を添加し、混合物を室温で3時間撹拌した。反応混合物を濃縮し、その後残渣をHexane/AcOEtで分散させ、洗浄し、目的化合物(477mg)を得た。
【0141】
参考例132
3-[5-(2-アミノエチル)-2-ヒドロキシフェニル]-N,N-ジメチルベンズアミド塩酸塩の合成
エチル 3-[2-(メトキシメトキシ)-5-[2-[(2-メチルプロパン-2-イル)オキシカルボニルアミノ]エチル]フェニル]ベンゾエート(758mg)のEtOH(7ml)溶液に5N NaOH水溶液(0.642ml)を添加し、混合物を室温で1時間撹拌した。そこへ5N NaOH水溶液(0.642ml)を添加し、混合物を室温で4時間撹拌した。反応混合物に5N HCl水溶液(1.3ml)および水を添加し、混合物をAcOEtで抽出した。有機層を濃縮し、その後残渣をDMF(7ml)に溶解し、そこへWSC塩酸塩(462mg)、HOBt(326mg)および50%ジメチルアミン水溶液(0.488ml)を添加し、混合物を室温で3日間撹拌した。反応混合物に水を添加し、混合物をAcOEtで抽出した。有機層を水および飽和食塩水で洗浄し、その後濃縮した。残渣をEtOH(4ml)に溶解し、そこへ4N HCl/AcOEt(4ml)を添加し、混合物を室温で5時間撹拌した。反応混合物を濃縮し、目的化合物(589mg)を得た。
【0142】
参考例142
3-[2-ヒドロキシ-5-[2-[(2-ヨード-8,8-ジメチル-7H-プリノ[8,9-b][1,3]オキサゾール-4-イル)アミノ]エチル]フェニル]ベンゾニトリルの合成
4-クロロ-2-ヨード-8,8-ジメチル-7H-プリノ[8,9-b][1,3]オキサゾール(150mg)、3-[5-(2-アミノエチル)-2-ヒドロキシフェニル]ベンゾニトリル塩酸塩(153mg)、DIPEA(0.22ml)のIPA(2ml)懸濁液を80℃で終夜撹拌した。水を添加し、析出固体をろ過により回収し、目的化合物(211mg)を得た。
【0143】
参考例146
4-[2-[(2-ヨード-8,8-ジメチル-7H-プリノ[8,9-b][1,3]オキサゾール-4-イル)アミノ]エチル]-2-チオフェン-2-イルフェノールの合成
4-クロロ-2-ヨード-8,8-ジメチル-7H-プリノ[8,9-b][1,3]オキサゾール(200mg)、4-(2-アミノエチル)-2-チオフェン-2-イルフェノール塩酸塩(207mg)およびIPA(2ml)を混合し、そこへDIPEA(0.298ml)を添加し、混合物を80℃で終夜撹拌した。反応混合物を室温まで冷却し、その後析出固体をろ過により回収し、目的化合物(223mg)を得た。
【0144】
参考例152
2-(5-フルオロピリジン-3-イル)-4-[2-[(2-ヨード-8,8-ジメチル-7H-プリノ[8,9-b][1,3]オキサゾール-4-イル)アミノ]エチル]フェノール合成
4-クロロ-2-ヨード-8,8-ジメチル-7H-プリノ[8,9-b][1,3]オキサゾール(200mg)、4-(2-アミノエチル)-2-(5-フルオロピリジン-3-イル)フェノール二塩酸塩(226mg)、DIPEA(0.30ml)のIPA(3ml)溶液を80℃で終夜撹拌した。反応混合物を濃縮し、その後残渣をカラムクロマトグラフィー(Hexane/AcOEt)により精製し、目的化合物(212mg)を得た。
【0145】
参考例159
N-[2-(3-ブロモ-4-フェニルメトキシフェニル)エチル]-2-(5-フルオロピリジン-3-イル)-8,8-ジメチル-7H-プリノ[8,9-b][1,3]オキサゾール-4-アミンの合成
2-ブロモ-4-[2-[[2-(5-フルオロピリジン-3-イル)-8,8-ジメチル-7H-プリノ[8,9-b][1,3]オキサゾール-4-イル]アミノ]エチル]フェノール(107mg)のDMF(1ml)溶液に、K2CO3(38.5mg)および臭化ベンジル(0.028ml)を添加し、室温で2時間撹拌した。反応混合物に水およびIPEを添加し、析出固体をろ過により回収し、目的化合物(111mg)を得た。
【0146】
参考例160
2-(5-フルオロピリジン-3-イル)-N-[2-[3-(3-メトキシフェニル)-4-フェニルメトキシフェニル]エチル]-8,8-ジメチル-7H-プリノ[8,9-b][1,3]オキサゾール-4-アミンの合成
窒素雰囲気下、N-[2-(3-ブロモ-4-フェニルメトキシフェニル)エチル]-2-(5-フルオロピリジン-3-イル)-8,8-ジメチル-7H-プリノ[8,9-b][1,3]オキサゾール-4-アミン(109mg)、3-メトキシフェニルボロン酸(30.9mg)、Pd(dppf)Cl2・CH2Cl2(7.6mg)、K3PO4(79.0mg)および1,4-ジオキサン/水(4/1)(1ml)の混合物を90℃で3時間撹拌した。そこへ3-メトキシフェニルボロン酸(25.3mg)を添加し、混合物を90℃で終夜撹拌した。反応混合物をカラムクロマトグラフィー(Hexane/AcOEt)により精製し、目的化合物(104mg)を得た。
【0147】
参考例1~3、7、8、10、13、14、19~23、27、37、46、60、78~81、90、100、106、109、117、127、132、142、146、152、159および160と同様の方法で、参考例4~6、9、11、12、15~18、24~26、28~36、38~45、47~59、61~77、82~89、91~99、101~105、107、108、110~116、118~126、128~131、133~141、143~145、147~151、153~158および161~167の化合物を製造した。参考例1~167の化合物の構造式および物理化学的データを表1-1~1-29に示す。
【0148】
【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
【表2-4】
【表2-5】
【表2-6】
【表2-7】
【表2-8】
【表2-9】
【表2-10】
【表2-11】
【表2-12】
【表2-13】
【表2-14】
【表2-15】
【表2-16】
【表2-17】
【表2-18】
【表2-19】
【表2-20】
【表2-21】
【表2-22】
【表2-23】
【表2-24】
【表2-25】
【表2-26】
【表2-27】
【表2-28】
【表2-29】
【0149】
実施例1
4-[2-[[2-(5-フルオロピリジン-3-イル)-8,8-ジメチル-7H-プリノ[8,9-b][1,3]オキサゾール-4-イル]アミノ]エチル]-2-フェニルフェノールの合成
窒素雰囲気下、4-[2-[(2-ヨード-8,8-ジメチル-7H-プリノ[8,9-b][1,3]オキサゾール-4-イル)アミノ]エチル]-2-フェニルフェノール(60.0mg)、5-フルオロピリジン-3-ボロン酸(24.1mg)、Pd(dppf)Cl2・CH2Cl2(9.3mg)、K3PO4(48.3mg)およびDME/水(4/1)(2ml)の混合物を加熱還流下で2時間撹拌した。反応混合物を濃縮し、その後残渣をカラムクロマトグラフィー(Hexane/AcOEt)により精製した。生成物をHexane/AcOEtで洗浄し、目的化合物(39.0mg)を得た。
【0150】
実施例2
2-(2-フルオロフェニル)-4-[2-[[2-(5-フルオロピリジン-3-イル)-8,8-ジメチル-7H-プリノ[8,9-b][1,3]オキサゾール-4-イル]アミノ]エチル]フェノールの合成
窒素雰囲気下、2-(2-フルオロフェニル)-4-[2-[(2-ヨード-8,8-ジメチル-7H-プリノ[8,9-b][1,3]オキサゾール-4-イル)アミノ]エチル]フェノール(60.0mg)、5-フルオロピリジン-3-ボロン酸(23.3mg)、Pd(dppf)Cl2・CH2Cl2(9.0mg)、K3PO4(46.7mg)およびDME/水(4/1)(2ml)の混合物を加熱還流下で2時間撹拌した。反応混合物を濃縮し、その後残渣をカラムクロマトグラフィー(Hexane/AcOEt)により精製した。生成物をHexane/AcOEtで洗浄し、目的化合物(36.0mg)を得た。
【0151】
実施例13
4-[2-[[2-(5-フルオロピリジン-3-イル)-8,8-ジメチル-7H-プリノ[8,9-b][1,3]オキサゾール-4-イル]アミノ]エチル]-2-(3-メトキシフェニル)フェノールの合成
水素雰囲気下、2-(5-フルオロピリジン-3-イル)-N-[2-[3-(3-メトキシフェニル)-4-フェニルメトキシフェニル]エチル]-8,8-ジメチル-7H-プリノ[8,9-b][1,3]オキサゾール-4-アミン(102mg)のTHF/EtOH(2ml)溶液に水酸化パラジウム担持炭素(102mg)を添加し、混合物を室温で3時間撹拌した。そこへAcOH(0.5ml)を添加し、さらに3時間撹拌した。反応混合物をろ過し、ろ液を濃縮し、その後残渣をカラムクロマトグラフィー(Hexane/AcOEt)により精製した。生成物をEtOH/水で結晶化し、目的化合物(52.1mg)を得た。
【0152】
実施例17
3-[5-[2-[[2-(5-フルオロピリジン-3-イル)-8,8-ジメチル-7H-プリノ[8,9-b][1,3]オキサゾール-4-イル]アミノ]エチル]-2-ヒドロキシフェニル]ベンゾニトリルの合成
窒素雰囲気下、3-[2-ヒドロキシ-5-[2-[(2-ヨード-8,8-ジメチル-7H-プリノ[8,9-b][1,3]オキサゾール-4-イル)アミノ]エチル]フェニル]ベンゾニトリル(244mg)、5-フルオロピリジン-3-ボロン酸(93mg)、Pd(dppf)Cl2・CH2Cl2(18.0mg)、K3PO4(188mg)および1,4-ジオキサン/水(4/1)(1ml)の混合物を90℃で3時間撹拌した。反応混合物をカラムクロマトグラフィー(Hexane/AcOEt)により精製した。生成物をHexane/AcOEtで洗浄し、目的化合物(197mg)を得た。
【0153】
実施例19
4-[2-[[2-(5-フルオロピリジン-3-イル)-8,8-ジメチル-7H-プリノ[8,9-b][1,3]オキサゾール-4-イル]アミノ]エチル]-2-(4-ヒドロキシフェニル)フェノールの合成
窒素雰囲気下、2-(4-ヒドロキシフェニル)-4-[2-[(2-ヨード-8,8-ジメチル-7H-プリノ[8,9-b][1,3]オキサゾール-4-イル)アミノ]エチル]フェノール(70.0mg)、5-フルオロピリジン-3-ボロン酸(27.2mg)、Pd(dppf)Cl2・CH2Cl2(5.3mg)、K3PO4(54.7mg)および1,4-ジオキサン/水(4/1)(1ml)の混合物を90℃で2時間撹拌した。そこへ水、N-アセチル-L-システイン(21.0mg)を添加し、混合物を室温まで冷却し、析出固体をろ過により回収し、目的化合物(58.2mg)を得た。
【0154】
実施例32
4-[2-[[2-(5-フルオロピリジン-3-イル)-8,8-ジメチル-7H-プリノ[8,9-b][1,3]オキサゾール-4-イル]アミノ]エチル]-2-ピリジン-3-イルフェノールの合成
窒素雰囲気下、4-[2-[(2-ヨード-8,8-ジメチル-7H-プリノ[8,9-b][1,3]オキサゾール-4-イル)アミノ]エチル]-2-ピリジン-3-イルフェノール(88.8mg)、5-フルオロピリジン-3-ボロン酸(35.5mg)、Pd(dppf)Cl2・CH2Cl2(6.9mg)、K3PO4(71.4mg)および1,4-ジオキサン/水(4/1)(1ml)の混合物を90℃で2時間撹拌した。反応混合物をカラムクロマトグラフィー(Hexane/AcOEt/MeOH)により精製した。生成物をEtOH/水で洗浄し、DMEに溶解し、そこへ2,4,6-メルカプトトリアジン担持シリカゲルを添加し、混合物を室温で1時間撹拌した。不溶物をろ過により除去した後、ろ液を濃縮した。残渣をHexaneで洗浄し、目的化合物(2.2mg)を得た。
【0155】
実施例43
2-(5-フルオロピリジン-3-イル)-4-[2-[[2-(5-フルオロピリジン-3-イル)-8,8-ジメチル-7H-プリノ[8,9-b][1,3]オキサゾール-4-イル]アミノ]エチル]フェノールの合成
窒素雰囲気下、2-(5-フルオロピリジン-3-イル)-4-[2-[(2-ヨード-8,8-ジメチル-7H-プリノ[8,9-b][1,3]オキサゾール-4-イル)アミノ]エチル]フェノール(82.6mg)、5-フルオロピリジン-3-ボロン酸(32.0mg)、Pd(dppf)Cl2・CH2Cl2(6.2mg)、K3PO4(64.2mg)および1,4-ジオキサン/水(4/1)(1.5ml)の混合物を90℃で2時間撹拌した。反応混合物をカラムクロマトグラフィー(Hexane/AcOEt)により精製した。生成物をHexane/AcOEtで洗浄し、目的化合物(62.9mg)を得た。
【0156】
実施例46
5-[4-[2-(4-ヒドロキシ-3-フェニルフェニル)エチルアミノ]-8,8-ジメチル-7H-プリノ[8,9-b][1,3]オキサゾール-2-イル]ピリジン-3-カルボニトリルの合成
窒素雰囲気下、4-[2-[(2-ヨード-8,8-ジメチル-7H-プリノ[8,9-b][1,3]オキサゾール-4-イル)アミノ]エチル]-2-フェニルフェノール(84.0mg)、5-シアノピリジン-3-ボロン酸(35.3mg)、Pd(dppf)Cl2・CH2Cl2(13.0mg)、K3PO4(67.6mg)およびDME/水(4/1)(3ml)の混合物を加熱還流下で5時間撹拌した。反応混合物をセライトろ過し、ろ液を濃縮した。これをMeOH/AcOEtで洗浄し、目的化合物(44.6mg)を得た。
【0157】
実施例62
3-[5-[2-[[2-[5-(ジフルオロメチル)ピリジン-3-イル]-8,8-ジメチル-7H-プリノ[8,9-b][1,3]オキサゾール-4-イル]アミノ]エチル]-2-ヒドロキシフェニル]ベンゾニトリルの合成
窒素雰囲気下、5-ジフルオロメチルピリジン-3-ブロミド(56.5mg)、ビスピナコールジボラン(83.0mg)、Pd(dppf)Cl2・CH2Cl2(29.6mg)、AcOK(71.1mg)および1,4-ジオキサン(4ml)の混合物を100℃で2時間撹拌した。混合物を室温まで冷却し、そこへ3-[2-ヒドロキシ-5-[2-[(2-ヨード-8,8-ジメチル-7H-プリノ[8,9-b][1,3]オキサゾール-4-イル)アミノ]エチル]フェニル]ベンゾニトリル(100mg)、Pd(dppf)Cl2・CH2Cl2(14.8mg)、K3PO4(77.0mg)および水(1ml)を添加し、混合物を100℃で16時間撹拌した。セライトろ過し、ろ液を濃縮後、残渣をカラムクロマトグラフィー(Hexane/AcOEt)により精製した。これをDCM/hexaneで洗浄し、目的化合物(63.2mg)を得た。
【0158】
実施例121
2-シクロヘキシル-N-[2-(1H-インドール-3-イル)エチル]-8,8-ジメチル-7H-プリノ[8,9-b][1,3]オキサゾール-4-アミンの合成
2-(シクロヘキセン-1-イル)-N-[2-(1H-インドール-3-イル)エチル]-8,8-ジメチル-7H-プリノ[8,9-b][1,3]オキサゾール-4-アミン(30mg)のTHF/EtOH(1/1)(2ml)溶液に、水酸化パラジウム担持炭素(15mg)を添加し、水素雰囲気下、混合物を室温で5時間撹拌した。反応混合物をろ過し、ろ液を濃縮し、その後残渣をカラムクロマトグラフィー(Hexane/AcOEt)により精製した。生成物をHexane/AcOEtで洗浄し、目的化合物(21mg)を得た。
【0159】
実施例127
2-ブロモ-4-[2-[[2-(5-フルオロピリジン-3-イル)-8,8-ジメチル-7H-プリノ[8,9-b][1,3]オキサゾール-4-イル]アミノ]エチル]フェノールの合成
0℃で、4-[2-[[2-(5-フルオロピリジン-3-イル)-8,8-ジメチル-7H-プリノ[8,9-b][1,3]オキサゾール-4-イル]アミノ]エチル]フェノール(388mg)のDMF(10ml)溶液にNBS(181mg)を添加し、混合物を0℃で1時間撹拌した。その後、そこへNBS(57mg)を分割して添加し、混合物を終夜撹拌した。反応混合物に水を添加し、混合物をAcOEtで抽出した。有機層を水および飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過し、ろ液を濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(Hexane/AcOEt)により精製し、目的化合物(155mg)を得た。
【0160】
実施例139
N-[2-(1H-インドール-3-イル)エチル]-8,8-ジメチル-2-[5-(メチルアミノ)ピリジン-3-イル]-7H-プリノ[8,9-b][1,3]オキサゾール-4-アミンの合成
tert-ブチル N-[5-[4-[2-(1H-インドール-3-イル)エチルアミノ]-8,8-ジメチル-7H-プリノ[8,9-b][1,3]オキサゾール-2-イル]ピリジン-3-イル]-N-メチルカルバメート(55mg)のMeCN(3ml)懸濁液にヨウ化ナトリウム(74.3mg)とトリメチルシリルクロリド(0.051ml)を添加し、混合物を室温で16時間撹拌した。反応混合物に水を添加し、混合物をAcOEtで抽出した。有機層を水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過し、ろ液を濃縮した。残渣にMeCN(3ml)を添加し、そこへ0℃で、炭酸銀(54.7mg)を添加し、混合物を80℃で2時間撹拌した。不溶物をろ過し、ろ液を濃縮し、その後残渣をカラムクロマトグラフィー(Hexane/AcOEt)により精製した。得られた固体をDCM/Hexaneで洗浄し、目的化合物(13.7mg)を得た。
【0161】
実施例1、2、13、17、19、32、43、46、62、121、127および139と同様の方法で、実施例3~12、14~16、18、20~31、33~42、44~45、47~61、63~120、122~126、128~138および140~146の化合物を製造した。実施例1~146の化合物の構造式および物理化学的データを表2-1~2-34に示す。
【0162】
【表3-1】
【表3-2】
【表3-3】
【表3-4】
【表3-5】
【表3-6】
【表3-7】
【表3-8】
【表3-9】
【表3-10】
【表3-11】
【表3-12】
【表3-13】
【表3-14】
【表3-15】
【表3-16】
【表3-17】
【表3-18】
【表3-19】
【表3-20】
【表3-21】
【表3-22】
【表3-23】
【表3-24】
【表3-25】
【表3-26】
【表3-27】
【表3-28】
【表3-29】
【表3-30】
【表3-31】
【表3-32】
【表3-33】
【表3-34】
【0163】
試験例
下記に本発明の代表的化合物についての薬理試験結果を示し、該化合物についての薬理的効果を記載するが、本発明はこれらの試験例に限定されるものではない。
【0164】
試験例1(芳香族炭化水素受容体アンタゴニスト活性)
1.AhRレポーター細胞の調製
Lipofectamin 3000(#100022050(Invitrogen))を用いて、6ウェルプレート(#3810-006(イワキ))に1.2×106細胞/ウェルで播種したHepG2(American Type Culture Collection/ATCC由来)に発現ベクターhCYP1A1/pGL4.27を導入した。Garrion PMら、Fundam Appl Toxicol, 30, 194(1996)を参照し、ベクターhCYP1A1/pGL4.27はAhR結合領域であるダイオキシン応答配列(DRE)領域を含むヒトCYP1A1プロモーター領域をpGL4.27(#E8451(Promega))のXhoI-BglII制限酵素サイトに組み入れた。24時間後に培地-1を交換し、48時間後にハイグロマイシンB(200~1000μg/mL)を含む培地-1を薬物処理した。ハイグロマイシンBを含む培地を用いた培養を約1か月間継続し、薬物耐性を示す24のクローンをクローニングした。AhRアゴニストである2,3,7,8-テトラクロロジベンゾ-p-ジオキシン/TCDD(#ED-901-B、CIL)に対するルシフェラーゼ活性(Dual-Glo ルシフェラーゼ物質、#E297A(Promega))を指標として用いて、高いレポーター活性を示す細胞株(DRE-Luc HepG2)を選択した。
2.AhRレポーター遺伝子アッセイ
225cm2のフラスコ(#11-0005(イワキ))中で継代したDRE-Luc HepG2細胞をPBS(#1419-144(Gibco)、ロット:1896207)で洗浄し、そこへトリプシン-EDTA(0.05%)(#25300-054(Gibco))8mLを添加した。その後、過剰の液体を混合物から除去し、細胞を室温で5分静置した。そこへ10mLの培地-2を添加し、セルストレーナー(#352350(Falcon)、70μm)により細胞を回収し、血球計算盤を用いて細胞数を計測した。3×105細胞/mLの細胞懸濁液を調製し、100μL/ウェルの細胞懸濁液を96ウェルホワイトプレート(#136101、F96 Microwell(Nunc))に播種し、その後CO2インキュベーター(5%CO2、37℃)で細胞を培養した。
24時間後、培地を吸引し、そこへ本発明の化合物を含むアッセイ培地溶液を100μL添加し、CO2インキュベーター(5%CO2、37℃)で細胞を培養した。24時間後、そこへ5×10-10MのTCDD(#ED-901-B(CIL))を含むアッセイ培地溶液を11μL添加し、CO2インキュベーターで(5%CO2、37℃)細胞を培養した。24時間後、ホタルルシフェラーゼ酵素反応用の反応基質(#E253B、Steady-Gloルシフェラーゼ物質(Promega))を50μL、各ウェルに添加し、5分間振とう後、Wallac ARVO 1420sx(PerkinElmer)を用いて発光強度を計測した。
ルシフェラーゼの酵素反応阻害率に関する濃度反応曲線に基づいて、本発明の化合物のIC50値および95%信頼区間を統計解析ソフトSAS(リリース8.1(SAS Institute Japan))の4パラメータ・ロジスティック・モデルにより計算した。
【0165】
培地
培地-1
・MEM培地(ナカライテスク、#21443-15、ロット:L8A4310) 500mL
・FBS(Gibco、#26140-079、FBS US origin、ロット:1876851) 55mL
・ペニシリン-ストレプトマイシン溶液(100×)(和光、#168-23191、ロット:APR7005) 5mL
・ピルビン酸ナトリウム溶液(100×)(ナカライテスク、#06977-34、ロット:L7N2959) 5mL
培地-2
・MEM培地(ナカライテスク、#21443-15、ロット:L8A4310) 500mL
・FBS(Gibco、#26140-079、FBS US origin、ロット:1876851) 55mL
・ペニシリン-ストレプトマイシン溶液(100×)(和光、#168-23191、ロット:APR7005) 5mL
・ピルビン酸ナトリウム溶液(100×)(ナカライテスク、#06977-34、ロット:L7N2959) 5mL
・ハイグロマイシンB(Invitrogen、#10687-010、ロット:H044-06US) 2mL
アッセイ培地
・MEM培地(ナカライテスク、#21443-15、ロット:L8A4310) 500mL
・FBS(Gibco、#12676-029、Charcol Stripped FBS、ロット:184-1094) 55mL
・ペニシリン-ストレプトマイシン溶液(100×)(和光、#168-23191、ロット:APR7005) 5mL
・ピルビン酸ナトリウム溶液(100×)(ナカライテスク、#06977-34、ロット:L7N2959) 5mL
【0166】
【0167】
試験例2(血小板産生:静置培養)
国際公開第2016/204256号に記載の方法に従って得られた不死化巨核球株(SeV2-MKCL)を、D-PBS(-)で2回洗浄し、その後ドキシサイクリンを含まない培地中で培養し、強制発現を終了させた。培養は、24ウェルプレート(#662160(Greiner bio-one))に1×105細胞/mLの播種密度で、1mL/ウェルで播種し、下記に示す培地中で静置培養することにより実施した。
【0168】
培地は、基本培地として機能するIMDMに次の成分を添加することにより得た(濃度は最終濃度を表す)。
FBS 15%
L-グルタミン 2mM
ITS 100倍希釈
MTG 450μM
アスコルビン酸 50μg/mL
SCF 50ng/mL
TPO 50ng/mL
ADAM阻害剤 15μΜ
Y-27632 10μΜ(#034-24024(和光純薬工業株式会社))
【0169】
培養は、37℃、5% CO2の条件下で実施した。同時に、本発明の化合物(最終濃度0.1μΜ)またはDMSO(対照)を添加し、6~7日間培養した。その後、血小板(CD41、CD42b、CD42a陽性細胞)の数を測定した。測定方法を下記に示す。対照を用いて同様の方法を実施した。
【0170】
遺伝子発現を終了する培養6~7日後に培養物上清の一部を回収し、次の抗体と懸濁して染色した。
抗CD42a抗体 eFluor 450標識(#48-0428-42(eBioscience))
PE標識抗CD42b抗体(#303906(BioLegend))
APC標識抗CD41抗体(#303710(BioLegend))
【0171】
染色反応30分後、BD社製のFACSVerseを用いて血小板数を計測した。なお、血小板数の測定においてはFlow-countビーズ(#7547053(Beckman Coulter))を用いて細胞数を補正した。
FACS測定によって得られたサンプル中の血小板数に基づいて、1つの巨核球細胞から産生された血小板数を計算し、これを血小板産生効率(PLT/MK)と定義して化合物の薬効評価に使用した。また、対照の血小板産生効率を1としたときの比活性を増加倍率として示した。
その結果を、次の表4に示す。
【表5】
【0172】
試験例3(血小板産生:振とう培養)
24ウェルプレートに代えてE125フラスコ(#431143(Corning))に、25mL/フラスコおよび1×105細胞/mLの播種密度で細胞を播種した後に100rpmで振とう培養したことを除いて、試験例2と同様の方法で実験を実施し、本発明の化合物(最終濃度0.1μΜ)において産生された血小板数を計算した。
【産業上の利用可能性】
【0173】
本発明の化合物またはその塩は、優れた芳香族炭化水素受容体アンタゴニスト活性を有するため、血小板前駆細胞からの血小板の産生を促進し得る。